(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H02P 21/32 20160101AFI20241015BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20241015BHJP
H02P 6/185 20160101ALI20241015BHJP
B65H 3/06 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
H02P21/32
G03G21/14
H02P6/185
B65H3/06 350A
(21)【出願番号】P 2021040472
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 茂美
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-115087(JP,A)
【文献】特開2019-103326(JP,A)
【文献】特開2014-197322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H1/00-3/68
G03G13/34
15/00
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
H02P4/00
6/00-6/34
21/00-25/03
25/04
25/08-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体が積載される積載部と、
前記積載部に積載された記録媒体を給送するピックアップローラと、
前記ピックアップローラを駆動するモータと、
前記ピックアップローラによって給送された記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
ユーザによって操作される操作部であって前記画像形成手段による画像形成の条件を設定する操作部と、
前記画像形成手段による画像形成の開始の指示を受信する受信部と、
前記モータの巻線が励磁されていない状態において前記受信部が前記指示を受信する前に前記操作部が操作されると、前記モータの回転子が停止している停止状態における当該モータの巻線に電流を供給することにより当該巻線に流れる電流に基づいて前記停止状態における前記回転子の位相を決定する初期動作を実行
し、前記受信部が前記指示を受信したことに応じて、
前記初期動作において決定された位相に基づいて前記停止状態における前記回転子が回転するように前記巻線に供給するべき電流を制御する制御手段と、を有
し、
前記制御手段は、前記初期動作において決定された位相に基づいて、前記巻線に供給するべき電流を所定の大きさの電流に基づいて制御する第1制御モードで前記モータの駆動を開始することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
記録媒体が積載される積載部と、
前記積載部に積載された記録媒体を給送するピックアップローラと、
前記ピックアップローラを駆動するモータと、
前記ピックアップローラによって給送された記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
人を検知する人感センサと、
前記画像形成手段による画像形成の開始の指示を受信する受信部と、
前記モータの巻線が励磁されていない状態において前記受信部が前記指示を受信する前に前記人感センサが前記
人を検知すると、前記モータの回転子が停止している停止状態における当該モータの巻線に電流を供給することにより当該巻線に流れる電流に基づいて前記停止状態における前記回転子の位相を決定する初期動作を実行
し、前記受信部が前記指示を受信したことに応じて、前記決定された位相に基づいて前記停止状態における前記回転子が回転するように前記巻線に供給
するべき電流を制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記初期動作において決定された位相に基づいて、前記巻線に供給するべき電流を所定の大きさの電流に基づいて制御する第1制御モードで前記モータの駆動を開始することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記初期動作によって前記位相が決定されてから所定時間が経過するまでの期間中、前記回転子が第1の位相に保持されるように前記巻線に供給される電流を制御し、
前記制御手段は、前記期間中に前記受信部が前記指示を受信しない場合は、前記回転子
を前記第1の位相に保持
する動作を解除することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記巻線に流れる電流を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出される電流に基づいて回転中の前記回転子の回転位相を決定する位相決定手段と、
前記制御手段は、前記第1制御モードで前記モータの駆動を開始した後に、前記モータを駆動する制御モードを前記第1制御モードから前記巻線に供給する電流をトルク電流成分と励磁電流成分とに基づいて制御する第2制御モードに切り替えるものであり、
前記トルク電流成分は、前記位相決定手段により決定される回転位相に基づく回転座標系で表され、前記回転子にトルクを発生させる電流成分であり、
前記励磁電流成分は、前記回転座標系で表され、前記巻線を貫く磁束の強度に影響する電流成分であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1の制御モードで前記モータの駆動を開始した後に前記回転子の回転速度に対応する値が所定値以上になると、前記制御モードを前記第1の制御モードから前記第2の制御モードに切り替えることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第2の制御モードにおいて、前記検出手段により検出される電流のトルク電流成分の値と前記トルク電流成分の目標値との偏差が小さくなるように前記巻線に供給する電流を制御するものであり、
前記トルク電流成分の目標値は、前記位相決定手段により決定される回転位相と前記回転子の回転位相の目標位相を表す指令位相との偏差が小さくなるように設定されることを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記回転子の回転速度を決定する速度決定手段を有し、
前記制御手段は、前記第2の制御モードにおいて、前記検出手段により検出される電流のトルク電流成分の値と前記トルク電流成分の目標値との偏差が小さくなるように前記巻線に供給する電流を制御するものであり、
前記トルク電流成分の目標値は、前記速度決定手段により決定される回転速度と前記回転子の回転速度の目標速度を表す指令速度との偏差が小さくなるように設定されることを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成装置は、
前記ピックアップローラによって給送された記録媒体を搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラを駆動する第2モータと、
前記受信部が前記指示を受信したことに基づいて、前記第2モータの回転子が停止している第2停止状態における当該第2モータの巻線に電流を供給することにより当該第2モータの巻線に流れる電流に基づいて前記第2停止状態における前記第2モータの回転子の位相を決定する第2初期動作を実行し、前記第2初期動作によって決定された位相に基づいて、前記第2停止状態における前記第2モータの回転子が回転するように前記第2モータの巻線に供給される電流を制御する第2制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記搬送ローラは、前記記録媒体を前記画像形成装置の外部へ排出する排紙ローラであることを特徴とする請求項
8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記モータはブラシレスDCモータであることを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記モータはステッピングモータであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置におけるモータの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシレスDCモータを起動する際に、ロータの位置に応じてインダクタンスが変化することを利用して、ブラシレスDCモータのロータの停止位置(初期位置)を推定する技術が知られている。特許文献1には、ブラシレスDCモータの巻線に電圧を印加したときの電流の応答性に基づいて初期位置を推定し、推定された初期位置に基づいてブラシレスDCモータの駆動を開始する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
初期位置を推定する動作には、所定の時間を要する。従来の画像形成装置においては、記録媒体に画像を形成するジョブを開始する指示が入力された後に初期位置を推定する動作が行われていた。即ち、従来の画像形成装置においては、初期位置を推定する動作に要する時間により、ジョブの開始が指示されてから記録媒体が出力されるまでの時間であるFPOT(First Print Output Time)が増大していた。そこで、画像形成装置におけるFPOTをより短縮できる構成が求められていた。
【0005】
上記課題に鑑み、本発明は、画像形成装置におけるFPOTを短縮することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる画像形成装置は、
記録媒体が積載される積載部と、
前記積載部に積載された記録媒体を給送するピックアップローラと、
前記ピックアップローラを駆動するモータと、
前記ピックアップローラによって給送された記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
ユーザによって操作される操作部であって前記画像形成手段による画像形成の条件を設定する操作部と、
前記画像形成手段による画像形成の開始の指示を受信する受信部と、
前記モータの巻線が励磁されていない状態において前記受信部が前記指示を受信する前に前記操作部が操作されると、前記モータの回転子が停止している停止状態における当該モータの巻線に電流を供給することにより当該巻線に流れる電流に基づいて前記停止状態における前記回転子の位相を決定する初期動作を実行し、前記受信部が前記指示を受信したことに応じて、前記初期動作において決定された位相に基づいて前記停止状態における前記回転子が回転するように前記巻線に供給するべき電流を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記初期動作において決定された位相に基づいて、前記巻線に供給するべき電流を所定の大きさの電流に基づいて制御する第1制御モードで前記モータの駆動を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像形成装置におけるFPOTを短縮することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図3】人体検知センサの検知領域を説明する図である。
【
図4】モータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】ロータの停止位置と励磁相との関係を示す図である。
【
図7】U相、V相、W相と、d軸及びq軸によって表される回転座標系との関係を示す図である。
【
図8】ベクトル制御部の構成を説明するブロック図である。
【
図9】第1実施形態におけるモータの駆動シーケンスを説明する図である。
【
図10】モータの駆動シーケンスを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の形状及びそれらの相対配置などは、この発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲が以下の実施の形態に限定される趣旨のものではない。
【0010】
〔第1実施形態〕
[画像形成装置]
図1は、本実施形態で用いられるカラーの電子写真方式の複写機(以下、画像形成装置と称する)100の構成を示す断面図である。なお、画像形成装置は複写機に限定されず、例えば、ファクシミリ装置、印刷機、プリンタ等であっても良い。また、記録方式は、電子写真方式に限らず、例えば、インクジェット等であっても良い。更に、画像形成装置の形式はモノクロ及びカラーのいずれの形式であっても良い。
【0011】
以下に、
図1を用いて、画像形成装置100の構成および機能について説明する。
図1に示すように、画像形成装置100は、原稿給送装置201及び読取装置202を含む原稿読取装置200及び画像印刷装置301を有する。
【0012】
<原稿読取装置>
原稿給送装置201の原稿積載部2に積載された原稿Pは、ピックアップローラ3によって1枚ずつ給送され、その後、給送ローラ4によって更に下流へと搬送される。給送ローラ4と対向する位置には、給送ローラ4に圧接する分離ローラ5が設けられている。分離ローラ5は、該分離ローラ5に所定のトルク以上の負荷トルクがかかると回転する構成となっており、2枚重なった状態で給送された原稿を分離する機能を有する。
【0013】
ピックアップローラ3と給送ローラ4は揺動アーム12によって連結されている。揺動アーム12は、給送ローラ4の回転軸を中心にして回動できるように給送ローラ4の回転軸に支持されている。
【0014】
原稿Pは、給送ローラ4等によって搬送されて、排紙ローラ11によって排紙トレイ10へ排紙される。
【0015】
読取装置202には、搬送される原稿の第1面の画像を読み取る原稿読取部16が設けられている。原稿読取部16に読み取られた画像情報は、画像印刷装置301へ出力される。
【0016】
また、原稿給送装置201には、搬送される原稿の第2面の画像を読み取る原稿読取部17が設けられている。原稿読取部17に読み取られた画像情報は、原稿読取部16において説明した方法と同様にして画像印刷装置301へ出力される。
【0017】
前述の如くして、原稿の読取が行われる。
【0018】
また、原稿の読取モードとして、第1読取モードと第2読取モードがある。第1読取モードは、上述した方法で搬送される原稿の画像を読み取るモードである。第2読取モードは、読取装置202の原稿ガラス214上に載置された原稿の画像を、一定速度で移動する原稿読取部16によって読み取るモードである。通常、シート状の原稿の画像は第1読取モードで読み取られ、本や冊子等の綴じられた原稿の画像は第2読取モードで読み取られる。
【0019】
<画像印刷装置>
画像印刷装置301の内部には、記録媒体を収納するシート収納トレイ18が設けられている。なお、記録媒体とは、画像形成装置によって画像が形成されるものであって、例えば、用紙、樹脂シート、布、OHPシート、ラベル等は記録媒体に含まれる。
【0020】
シート収納トレイ18に収納された記録媒体は、ピックアップローラ19によって送り出され、搬送ローラ39、40、41、42等によってレジストレーションローラ20へ送り出される。
【0021】
また画像印刷装置301には、記録媒体を積載する手差しトレイ44が設けられている。手差しトレイ44に積載された記録媒体は、ピックアップローラ43によって送り出され、搬送ローラ44、42等によってレジストレーションローラ20へ送り出される。
【0022】
プレレジストレーションローラ37によって搬送される記録媒体は、当該記録媒体の先端がレジストレーションローラ20に突き当たる。その結果、レジストレーションローラ20とプレレジストレーションローラ37との間でループが形成され、記録媒体の斜行が補正(低減)される。
【0023】
原稿読取装置200から出力された画像信号は、半導体レーザ及びポリゴンミラーを含む光走査装置21Y、21M、21C、21Kに色成分ごとに入力される。具体的には、原稿読取装置200から出力されたイエローに関する画像信号は光走査装置3Yに入力され、原稿読取装置200から出力されたマゼンタに関する画像信号は光走査装置3Mに入力される。また、原稿読取装置200から出力されたシアンに関する画像信号は光走査装置3Cに入力され、原稿読取装置200から出力されたブラックに関する画像信号は光走査装置3Kに入力される。なお、以下の説明においては、イエローの画像が形成される構成について説明するが、マゼンタ、シアン、ブラックについても同様の構成である。
【0024】
感光ドラム22Yは、帯電器23Yによって外周面が帯電される。感光ドラム22Yの外周面が帯電された後、原稿読取装置200から光走査装置21Yに入力された画像信号に応じたレーザ光が、光走査装置21Yからポリゴンミラー及びミラー等の光学系を経由し、感光ドラム22Yの外周面に照射される。この結果、感光ドラム22Yの外周面に静電潜像が形成される。
【0025】
続いて、静電潜像が現像部としての現像器24Yのトナーによって現像され、感光ドラム22Yの外周面にトナー像が形成される。感光ドラム22Yに形成されたトナー像は、感光ドラム22Yと対向する位置に設けられた転写ローラ25Yによって中間転写体としての転写ベルト27に転写される。なお、トナー像が転写ベルト27に転写された後に感光ドラム22Yの外周面に残留したトナーは、クリーニング部26Yによって回収される。
【0026】
転写ベルト27に転写されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像は、転写ローラ対28によって記録媒体に転写される。転写ローラ対28には高電圧が印加されており、当該高電圧に起因してトナー像が記録媒体に転写される。この転写タイミングに合わせて、レジストレーションローラ20は記録媒体を転写ローラ対28へ送り込む。
【0027】
前述の如くして、トナー像が転写された記録媒体は、定着部としての定着器29へ送り込まれ、定着器29によって加熱加圧されて、トナー像が記録媒体に定着される。このようにして、画像形成装置100によって記録媒体に画像が形成される。
【0028】
片面印刷モードで画像形成が行われる場合は、定着器29を通過した記録媒体は、排紙ローラ30によって排紙トレイ31へ排紙される。また、両面印刷モードで画像形成が行われる場合は、定着器29によって記録媒体の第1面に定着処理が行われた後に、記録媒体は反転ローラ38によって反転パス32へと搬送される。反転パス32へと搬送された記録媒体は、反転ローラ38によって第1面と第2面とが反転されて搬送ローラ33、34、35、36が設けられた搬送ガイドへと搬送される。記録媒体は、搬送ローラ33、34、35、36等によって再度レジストレーションローラ20へと搬送され、前述した方法で記録媒体の第2面に画像が形成される。その後、記録媒体は、排紙ローラ30によって排紙トレイ31へ排出される。
【0029】
以上が画像形成装置100の構成および機能についての説明である。
【0030】
<画像形成装置の制御構成>
図2は、画像形成装置100の制御構成の例を示すブロック図である。システムコントローラ151は、
図2に示すように、CPU151a、ROM151b、RAM151cを備えている。また、システムコントローラ151は、画像処理部112、操作部152、アナログ・デジタル(A/D)変換器153、高圧制御部155、モータ制御装置157、158、センサ類159、ACドライバ160と接続されている。システムコントローラ151は、接続された各ユニットとの間でデータやコマンドの送受信をすることが可能である。
【0031】
CPU151aは、ROM151bに格納された各種プログラムを読み出して実行することによって、予め定められた画像形成シーケンスに関連する各種シーケンスを実行する。
【0032】
RAM151cは記憶デバイスである。RAM151cには、例えば、高圧制御部155に対する設定値、モータ制御装置157、158に対する指令値及び操作部152から受信される情報等の各種データが記憶される。
【0033】
システムコントローラ151は、画像処理部112における画像処理に必要となる、画像形成装置100の内部に設けられた各種装置の設定値データを画像処理部112に送信する。更に、システムコントローラ151は、センサ類159からの信号を受信して、受信した信号に基づいて高圧制御部155の設定値を設定する。
【0034】
高圧制御部155は、システムコントローラ151によって設定された設定値に応じて、高圧ユニット156(帯電器23Y、23M、23C、23K、現像器24Y、24M、24C、24K、転写ローラ対28等)に必要な電圧を供給する。
【0035】
モータ制御装置157は、CPU151aから出力された指令に応じて、ブラシレスDCモータを制御する。また、モータ制御装置158は、CPU151aから出力された指令に応じて、ブラシレスDCモータ403を制御する。なお、
図2においては、モータ制御装置が2個しか記載されていないが、3個以上のモータ制御装置が画像形成装置に設けられていてもよい。また、
図2においては、モータが2個しか記載されていないが、実際には、3個以上のモータが画像形成装置に設けられている。また、1個のモータ制御装置が複数個のモータを制御してもよい。
【0036】
A/D変換器153は、定着ヒータ161の温度を検出するためのサーミスタ154が検出した検出信号を受信し、検出信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してシステムコントローラ151に送信する。システムコントローラ151は、A/D変換器153から受信したデジタル信号に基づいてACドライバ160の制御を行う。ACドライバ160は、定着ヒータ161の温度が定着処理を行うために必要な温度となるように定着ヒータ161を制御する。なお、定着ヒータ161は、定着処理に用いられるヒータであり、定着器29に含まれる。
【0037】
システムコントローラ151は、使用する記録媒体の種類(以下、紙種と称する)等の画像形成条件の設定をユーザが行うための操作画面を、操作部152に設けられた表示部に表示するように、操作部152を制御する。システムコントローラ151は、ユーザが設定した情報を操作部152から受信し、ユーザが設定した情報に基づいて画像形成装置100の動作シーケンスを制御する。また、システムコントローラ151は、画像形成装置の状態を示す情報を操作部152に送信する。なお、画像形成装置の状態を示す情報とは、例えば、画像形成枚数、画像形成動作の進行状況、原稿読取装置201及び画像印刷装置301におけるシートのジャムや重送等に関する情報である。操作部152は、システムコントローラ151から受信した情報を表示部に表示する。なお、本実施形態では、操作部152が操作されている期間中、操作部152における設定データ等が操作部52からCPU151aに所定の時間間隔で送信される。
【0038】
また、本実施形態における画像形成装置100には、人体検知センサ162が設けられている。人体検知センサ162は、赤外線を受光する赤外線センサがマトリクス状に配列されたセンサであり、人から放射される赤外線を受光することによって人を検知する。人体検知センサ(人感センサ)162は、検知結果をCPU151aに送信する。
【0039】
図3は、人体検知センサ162の検知領域を説明する図である。人体検知センサ162は、検知領域300内に人がいるか否かを検知する。
【0040】
前述の如くして、システムコントローラ151は画像形成装置100の動作シーケンスを制御する。
【0041】
[モータ制御装置]
次に、モータ制御装置157について説明する。なお、モータ制御装置158はモータ制御装置157と同じ構成であるため説明を省略する。以下に説明するブラシレスDCモータ402(以下、モータ402と称する)及びブラシレスDCモータ403(以下、モータ403と称する)には、モータの回転子の回転位相を検出するためのホール素子などのセンサは設けられていない。
【0042】
図4は、モータ制御装置157の構成の例を示すブロック図である。なお、モータ制御装置157は、少なくとも1つのASICで構成されており、以下に説明する各機能を実行する。
【0043】
モータ制御装置157は、処理部500を備えている。処理部500は、基準クロック生成部501、カウンタ503、ADコンバータ504、不揮発メモリ506及びベクトル制御部507を備えている。
【0044】
基準クロック生成部501は、水晶発振子502からの信号に基づき、基準クロックを生成する。カウンタ503は、CPU151aから出力されるパルス信号をカウントし、カウント値と基準クロックとに基づいてパルス信号の周期を決定する。
【0045】
パルス幅変調(PWM)ポート505は、3相インバータ600の各スイッチング素子を駆動するためのPWM信号を出力する。3相インバータ600のスイッチング素子は、例えば、FETであり、FETがPWM信号により駆動されることで、モータ402の複数の巻線701(U相)、702(V相)及び703(W相)に電流が供給される。
【0046】
各巻線701、702、703に供給された電流は、抵抗601及びADコンバータ504によって検出される。具体的には、抵抗601の両端電圧がADコンバータ504によってアナログ値からデジタル値に変換されることにより、各巻線701、702、703に供給された電流が検出される。
【0047】
なお、本実施形態では、U相、V相、W相の配線が接続された点に設けられた抵抗601によって、各相の巻線に流れる電流が検出されるが、この限りではない。例えば、U相の配線、V相の配線に設けられた抵抗によって検出された電流に基づいてW相の巻線に流れる電流が算出されたり、U相、V相、W相それぞれに設けられた抵抗によって各相の巻線に流れる電流が検出されたりしてもよい。即ち、公知の技術によって各相に流れる電流が検出されればよい。
【0048】
<モータの構造>
図5は、モータ402(モータ403)の構造を説明する図である。本実施形態において、モータ402には、ステータに巻かれた3相(U、V、W)の各巻線701、702、703が設けられている。
【0049】
ロータ705は、永久磁石により構成され、N極とS極を有する。ロータ705の停止位置(停止時の回転位相)は、励磁されている巻線701、702、703の組み合わせ、つまり、励磁相により決まる。ここで、以下の説明において、X-Y相を励磁するとは、X相がN極、Y相がS極となる様に励磁することを意味するものとする。
【0050】
<停止位置の検出>
次に、ロータ705が停止している状態におけるロータ705の位相(停止位置)の検出について説明する。本実施形態では、ロータ705の停止位置に応じて各巻線701、702、703のインダクタンスが変化することを利用して、ロータ705の停止位置が検出される。
【0051】
一般的に、巻線は電磁鋼板を積層したコアに巻かれた銅線によって構成される。また、電磁鋼板の透磁率は外部磁界が有る場合には小さくなる。即ち、外部磁界がある場合、コアの透磁率に比例する巻線のインダクタンスも小さくなる。
【0052】
例えば、
図5に示す様に、V相の巻線702の対向位置にロータ705のS極の領域の中心が位置する様にロータ705が停止している場合、ロータ705による外部磁界の影響が大きいため、巻線702のインダクタンスの低下率は大きい。
【0053】
インダクタンスの低下率は、V相の巻線702に流す電流の向きによっても変化する。具体的には、巻線702に流れる電流による磁界の方向がロータ705からの外部磁界と同じ方向である場合、巻線702に流れる電流による磁界の方向がロータ705からの外部磁界とは逆方向である場合よりもインダクタンスの低下率が大きい。即ち、
図5の場合、V相(巻線702)がN極に励磁された場合のほうが、V相(巻線702)がS極に励磁された場合よりもインダクタンスの低下率が大きい。
【0054】
一方、
図5の状態において、W相(巻線703)には、ロータ705のS極とN極の両方が対向している。よって、ロータ705による外部磁界の影響が小さく、巻線703のインダクタンスの低下率は小さい。
【0055】
このように、ロータ705の停止位置に応じて、各巻線701、702、703のインダクタンスは異なる値となる。
【0056】
図6(A)は、ロータ705の停止位置と、励磁相の1つであるU-V相の合成インダクタンスの関係を示している。なお、以後の説明において、ロータ705の停止位置をその励磁相により示すものとする。また、U-V相の合成インダクタンスとは、U相をN極、V相をS極とする様に電流を流して測定した巻線701と巻線702の合成インダクタンスを意味するものとする。
【0057】
本実施形態では、インダクタンスの変化に応じて変化する物理量が検出されることによりインダクタンスが検出される。例えば、インダクタンスの値により、巻線に流れる電流(電圧)の立ち上がりの早さは異なるため、この立ち上がりの早さが測定される。
【0058】
具体的には、
図6(B)に示す様に、処理部500は、PWM信号を所定の期間TsonだけONにする。そして、処理部500は、PWM信号をONにしたタイミングから所定時間後(時間Tsns後)に、抵抗601に生じる電圧をADコンバータ504によって検出することで、立ち上がりの早さを測定する。なお、所定期間Tsonは、発生したトルクによりロータ705が動くことがない期間とする。ロータ705の停止位置と、電流を流す励磁相と、抵抗601に発生する電圧との関係は、予め不揮発性メモリ507に格納されている。
【0059】
図6(C)は、ロータ705の停止位置と、U-V相に電流を流した際に抵抗601に生じる電圧と、の関係を示している。5(C)に示す様に、U-V相に電流が流れる際に抵抗601に生じる電圧は、ロータ705の停止位置がU-V相の位置である場合に最大となる。この様に、ロータ705の停止位置に応じて抵抗601に生じる電圧が異なるため、処理部500は、抵抗601の電圧によりロータ705の停止位置を判定することができる。具体的には、例えば、1つ以上の励磁相に電流を流したときの所定時間後の抵抗601の電圧(即ち、巻線に流れる電流)を測定し、不揮発性メモリ507に格納されている情報からロータ705の停止位置を判定できる。
【0060】
なお、上述した停止位置の検出方法は本実施形態における一例であり、これに限定されるわけではない。即ち、停止状態のロータの停止位置を検出するためのホール素子やロータリエンコーダを用いずに、巻線に流れる電流に基づいて当該停止位置を検出する公知の技術が用いられれば良い。
【0061】
<モータの制御>
{同期制御}
モータ制御装置157は、ロータ705の停止位置が検出された後、当該停止位置にロータ705を固定するための励磁相を決定し、決定した励磁相に電流が供給されるように3相インバータ600を制御する。
【0062】
CPU151aは、モータ402の動作シーケンスに基づいて、パルス信号をモータ制御装置157に出力する。パルス信号の数は、ロータ705の目標位相に対応し、パルス信号の周波数はロータ705の目標速度に対応する。
【0063】
モータ制御装置157は、CPU151aからパルス信号が入力されるたびに、励磁相を切り替えていく。例えば、モータ制御装置157は、U-V相を励磁した後にパルス信号が入力されると、U-W相を励磁するように3相インバータ600を制御する。更にパルス信号が入力されると、モータ制御装置157は、V-W相を励磁するように3相インバータ600を制御する。本実施形態では、モータ制御装置157は、ロータ705の停止位置を検出した後、上述のようにしてCPU151aから出力されるパルス信号に応じてモータ402を駆動する同期制御を行う。なお、同期制御においては、あらかじめ決められた大きさの電流が巻線(巻線)701、702、703に流れるように、巻線(巻線)701、702、703に流れる駆動電流が制御される。具体的には、ロータにかかる負荷トルクの変動が起こったとしてもモータが脱調しないように、ロータの回転に必要と想定されるトルクに所定のマージンが加算されたトルクに対応する大きさ(振幅)を持った駆動電流が巻線に供給される。これは、同期制御では、決定(推定)された回転位相や回転速度に基づいて駆動電流の大きさが制御される構成は用いられない(フィードバック制御が行われない)ので、ロータにかかる負荷トルクに応じて駆動電流を調整できないからである。なお、電流の大きさが大きいほど回転子に与えるトルクは大きくなる。また、振幅は電流ベクトルの大きさに対応する。
【0064】
{ベクトル制御}
本実施形態では、モータ制御装置157が同期制御を実行している状態において、CPU151aから出力されるパルスの周波数(即ち、ロータ705の目標速度に対応する値)が所定値以上になると、モータ制御装置157はベクトル制御部507によるベクトル制御を行う。なお、モータ制御装置157は、モータ制御装置157がベクトル制御を実行している状態において、CPU151aから出力されるパルスの周波数が所定値より小さくなると同期制御を行う。
【0065】
図7は、U相、V相、W相と、d軸及びq軸によって表される回転座標系との関係を示す図である。
図7では、静止座標系において、U相の巻線に対応した軸であるα軸と、α軸に直交する軸であるβ軸とが定義されている。また、
図7では、ロータ705に用いられている永久磁石の磁極によって作られる磁束の方向に沿ってd軸が定義され、d軸から反時計回りに90度進んだ方向(d軸に直交する方向)に沿ってq軸が定義されている。α軸とd軸との成す角度はθと定義され、ロータ705の回転位相は角度θによって表される。ベクトル制御では、回転位相θを基準とした回転座標系が用いられる。具体的には、ベクトル制御では、巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルの、回転座標系における電流成分であって、回転子にトルクを発生させるq軸成分(トルク電流成分)と巻線を貫く磁束の強度に影響するd軸成分(励磁電流成分)とが用いられる。なお、
図7では、ロータ705が反時計回りに回転する方向を正方向として記載している。
【0066】
ベクトル制御とは、ロータの目標速度を表す指令速度と実際の回転速度との偏差が小さくなるようにトルク電流成分の値と励磁電流成分の値とを制御する速度フィードバック制御を行うことによってモータを制御する制御方法である。また、ロータの目標位相を表す指令位相と実際の回転位相との偏差が小さくなるようにトルク電流成分の値と励磁電流成分の値とを制御する位相フィードバック制御を行うことによってモータを制御する方法もある。
【0067】
図8は、ベクトル制御部507の構成の例を示すブロック図である。なお、ベクトル制御部507は、少なくとも1つのASICで構成されており、以下に説明する各機能を実行する。
【0068】
ベクトル制御部507は、ベクトル制御を行う回路として、速度制御器801、電流制御器802、座標逆変換器803、804、座標変換器805、806等を有する。座標変換器805は、モータ402のU相、V相、W相の巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルを、クラーク変換によりα軸及びβ軸で表される静止座標系に変換する。座標変換器806は、座標変換器804によってα軸及びβ軸で表される静止座標系に変換された電流値をq軸及びd軸で表される回転座標系に座標変換する。この結果、巻線に流れる駆動電流は、回転座標系における電流値であるq軸成分の電流値(q軸電流)とd軸成分の電流値(d軸電流)とによって表される。なお、q軸電流は、モータ402のロータ705にトルクを発生させるトルク電流に相当する。また、d軸電流は、モータ402の巻線を貫く磁束の強度に影響する励磁電流に相当する。ベクトル制御部507は、q軸電流及びd軸電流をそれぞれ独立に制御することができる。この結果、ベクトル制御部507は、ロータ705にかかる負荷トルクに応じてq軸電流を制御することによって、ロータ705が回転するために必要なトルクを効率的に発生させることができる。即ち、ベクトル制御においては、
図7に示す電流ベクトルの大きさは、ロータ705にかかる負荷トルクに応じて変化する。
【0069】
ベクトル制御部507は、モータ402のロータ705の回転位相θ、回転速度ωを後述する方法により決定し、その決定結果に基づいてベクトル制御を行う。
【0070】
前述のように、カウンタ503は、CPU151aから出力されたパルス信号の周波数を算出する。ベクトル制御部507には、カウンタ503によって算出されたパルス信号の周波数に対応する値、即ち、ロータ705の目標速度を表す指令速度ω_refが入力される。
【0071】
減算器101は、モータ402のロータ705の回転速度ωと指令速度ω_refとの偏差Δωを演算して出力する。
【0072】
速度制御器801は、偏差Δωを周期T(例えば、200μs)で取得する。速度制御器801は、比例制御(P)、積分制御(I)、微分制御(D)に基づいて、減算器101から出力される偏差が小さくなるように、q軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成して出力する。具体的には、速度制御器801は、P制御、I制御、D制御に基づいて減算器101から出力される偏差が0になるように、q軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成して出力する。なお、P制御とは、制御する対象の値を指令値と推定値との偏差に比例する値に基づいて制御する制御方法である。また、I制御とは、制御する対象の値を指令値と推定値との偏差の時間積分に比例する値に基づいて制御する制御方法である。また、D制御とは、制御する対象の値を指令値と推定値との偏差の時間変化に比例する値に基づいて制御する制御方法である。本実施形態における速度制御器801は、PID制御に基づいてq軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、速度制御器801は、PI制御に基づいてq軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成しても良い。なお、ロータに永久磁石を用いる場合、通常は巻線を貫く磁束の強度に影響するd軸電流指令値id_refは0に設定されるが、これに限定されるものではない。
【0073】
モータ402のU相、V相、W相の巻線に流れる駆動電流は、ADコンバータ504によってアナログ値からデジタル値へと変換される。なお、ADコンバータ504が電流をサンプリングする周期は、例えば、速度制御器801が偏差Δωを取得する周期T以下の周期(例えば、25μs)である。
【0074】
ADコンバータ504によってアナログ値からデジタル値へと変換された駆動電流の電流値iu、iv、iwは、座標変換器805に入力される。
【0075】
座標変換器805は、入力された電流値iu、iv、iwを次式によって、静止座標系における電流値iα及びiβに変換する。
【0076】
【0077】
【0078】
iu+iv+iw=0 (3)
【0079】
なお、静止座標系における電流値iα及びiβは、U相、V相、W相の巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルの大きさI及び電流ベクトルの位相θeにより、次式のように表される。なお、電流ベクトルの位相θeは、α軸と電流ベクトルとの成す角度と定義される。
【0080】
iα=I*cos(θe) (4)
iβ=I*sin(θe) (5)
これらの電流値iα及びiβは、座標変換器806と誘起電圧決定器807とに入力される。
【0081】
座標変換器806は、静止座標系における電流値iα及びiβを、次式によって、回転座標系におけるq軸電流の電流値iq及びd軸電流の電流値idに変換する。
id=iα*cosθ+iβ*cosθ (6)
iq=-iα*sinθ+iβ*cosθ (7)
【0082】
減算器102には、速度制御器801から出力されたq軸電流指令値iq_refと座標変換器806から出力された電流値iqとが入力される。減算器102は、q軸電流指令値iq_refと電流値iqとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器802に出力する。
【0083】
また、減算器103には、速度制御器801から出力されたd軸電流指令値id_refと座標変換器806から出力された電流値idとが入力される。減算器103は、d軸電流指令値id_refと電流値idとの偏差を演算し、該偏差を電流制御器802に出力する。
【0084】
電流制御器802は、PID制御に基づいて、減算器102から出力される偏差が小さくなるように駆動電圧Vqを生成する。具体的には、電流制御器802は、減算器102から出力される偏差が0になるように駆動電圧Vqを生成して座標逆変換器505に出力する。
【0085】
また、電流制御器802は、PID制御に基づいて、減算器103から出力される偏差が小さくなるように駆動電圧Vdを生成する。具体的には、電流制御器802は、減算器103から出力される偏差が0になるように駆動電圧Vdを生成して座標逆変換器803に出力する。
【0086】
なお、本実施形態における電流制御器802は、PID制御に基づいて駆動電圧Vq及びVdを生成しているが、これに限定されるものではない。例えば、電流制御器802は、PI制御に基づいて駆動電圧Vq及びVdを生成しても良い。
【0087】
座標逆変換器803は、電流制御器802から出力された回転座標系における駆動電圧Vq及びVdを、次式によって、静止座標系における駆動電圧Vα及びVβに逆変換する。
Vα=Vd*cosθ-Vq*sinθ (8)
Vβ=Vd*sinθ+Vq*cosθ (9)
【0088】
座標逆変換器803は、逆変換された駆動電圧Vα及びVβを誘起電圧決定器512及び座標逆変換器804に出力する。
座標逆変換器804は、入力された駆動電圧Vα、Vβを、次式によって、U相駆動電圧Vu、V相駆動電圧Vv、W相駆動電圧Vwに変換する。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
座標逆変換器804は、変換された駆動電圧Vu、Vv、Vwを3相インバータ600に出力する。
【0093】
3相インバータ600は、座標逆変換器804から入力された駆動電圧Vu、Vv、Vwに基づくPWM信号によって駆動される。その結果、3相インバータ600は、駆動電圧Vu、Vv、Vwに応じた駆動電流iu、iv、iwを生成し、駆動電流iu、iv、iwをモータ402の各相の巻線に供給することによって、モータ402を駆動させる。
【0094】
次に、回転位相θを決定する構成について説明する。ロータ705の回転位相θの決定には、ロータ705の回転によってモータ402のU相、V相、W相の巻線に誘起される誘起電圧に対応する値Eα及びEβの値が用いられる。Eα、Eβは、それぞれ、α軸、β軸に対応する誘起電圧の値である。誘起電圧の値は誘起電圧決定器807によって決定(算出)される。具体的には、誘起電圧Eα及びEβは、座標変換器805から出力された電流値iα及びiβと、座標逆変換器803から出力された駆動電圧Vα及びVβとから、次式によって決定される。
【0095】
【0096】
【0097】
ここで、Rは巻線レジスタンス、Lは巻線インダクタンスである。巻線レジスタンスR及び巻線インダクタンスLの値は使用されているモータ402に固有の値であり、ROM151b又はモータ制御装置157に設けられたメモリ(不図示)等に予め格納されている。
【0098】
誘起電圧決定器807によって決定された誘起電圧Eα及びEβは位相決定器808に出力される。
【0099】
位相決定器808は、誘起電圧決定器807から出力された誘起電圧Eαと誘起電圧Eβとの比に基づいて、次式によってモータ402のロータ705の回転位相θを決定する。
【0100】
【0101】
なお、本実施形態においては、位相決定器808は、式(15)に基づく演算を行うことによって回転位相θを決定したが、この限りではない。例えば、位相決定器808は、誘起電圧Eα及び誘起電圧Eβと誘起電圧Eα及び誘起電圧Eβとに対応する回転位相θとの関係を示すテーブルを参照することによって回転位相θを決定してもよい。
【0102】
前述の如くして得られた回転位相θは、速度決定器809、座標逆変換器803及び座標変換器805に入力される。
【0103】
速度決定器809は、位相決定器808から出力された回転位相θの時間変化に基づいて回転速度ωを決定する。速度の決定には、以下の式(16)が用いられる。
【0104】
【0105】
前述の如くして得られた回転位相ωは、減算器101に入力される。
【0106】
ベクトル制御部507は、ベクトル制御を行う場合は、上述の制御を繰り返し行う。
【0107】
以上のように、本実施形態におけるベクトル制御部507は、指令速度ω_refと回転速度ωとの偏差が小さくなるように回転座標系における電流値を制御する速度フィードバック制御を用いたベクトル制御を行う。ベクトル制御を行うことによって、モータが脱調状態となることや、余剰トルクに起因してモータ音が増大すること及び消費電力が増大することを抑制することができる。
【0108】
なお、本実施形態では、式(13)~(16)に基づいて、回転位相θ及び回転速度ωが決定されたが、この限りではない。即ち、回転位相θ及び回転速度ωは、公知の方法によって決定されればよい。
【0109】
[モータの駆動シーケンス]
次に、本実施形態におけるモータ402の駆動シーケンスについて説明する。本実施形態では、以下の構成が適用されることによって、画像形成装置におけるFPOTが短縮される。なお、以下の説明においては、モータ402はピックアップローラ19を駆動する。
【0110】
図9は、モータの駆動シーケンスを説明する図である。本実施形態では、操作部152が操作されている期間中、操作部152における設定データ等が操作部52から受信部としてのCPU151aに所定の時間間隔で送信される。モータ制御装置157は、モータ402の巻線への励磁が行われていない(駆動されていない)状態において操作部152が操作されていることが操作部152から通知されると(時刻T1)、モータ402のロータの停止位置を検出する動作を開始する(初期動作)。
【0111】
モータ402のロータの停止位置の検出が完了すると(時刻T2)、モータ制御装置157は、モータ402のロータを所定の位相に保持するように、検出された停止位置に基づいて電流を制御する。
【0112】
その後、時刻T2から所定時間Tthが経過するまでの期間に印刷ジョブを開始する指示が操作部152または外部機器から入力されると(時刻T3)、モータ制御装置157は、同期制御によるモータ402の駆動を行い、その後、ベクトル制御を実行する。そして、所定の回転速度でモータ402が駆動される。なお、時刻T2から所定時間Tthが経過するまでの期間に印刷ジョブを開始する指示が入力されない場合、モータ制御装置157は、励磁をOFFにする。
【0113】
その後、画像形成シーケンスに基づいてモータ402の駆動が終了すると、モータ制御装置157は、モータ402を減速させ、モータ402の巻線への励磁をOFFにする(時刻T4)。
【0114】
図10は、モータの駆動シーケンスを説明するフローチャートである。以下に、
図10を用いて、本実施形態におけるモータ402の駆動シーケンスについて説明する。
図10の処理は、モータ402の巻線への励磁がOFFである状態で行われる。なお、
図10の処理は、CPU151aによって実行される。
【0115】
S101において、操作部152が操作されたことが通知されると、S102において、CPU151aは、モータ制御装置157に、モータ402の停止位置の検知動作を実行させる。
【0116】
その後、S103において、CPU151aは、モータ402のロータを所定の位相に保持するようにモータ制御装置157を制御する。
【0117】
S104において、印刷ジョブを開始する指示が入力されると、S105において、CPU151aは、画像系絵師装置100による画像形成動作を実行する。
【0118】
S107において、印刷ジョブが終了すると、CPU151aは、このフローチャートの処理を終了する。
【0119】
また、S104において、印刷ジョブを開始する指示が入力されない場合は、処理はS107に進む。
【0120】
S107において、モータ402のロータの保持が行われてから所定時間Tthが経過していない場合はCPU151aは処理をS104に戻す。
【0121】
また、S107において、モータ402のロータの保持が行われてから所定時間Tthが経過した場合は、S108において、CPU151aは、ロータの保持を解除する(励磁をOFFにする)ようにモータ制御装置157を制御する。このように、モータ402のロータの保持が行われてから所定時間Tthが経過しても印刷ジョブが入力されない場合は励磁をOFFにすることにより、消費電力が増大することを抑制することができる。
【0122】
次に、S109において、S108の処理から所定時間Tresetが経過すると、処理はS101に戻る。このように、S108の処理から所定時間Tresetが経過したら処理がS101に戻ることにより、ユーザが再度操作部152を操作した際に、印刷ジョブが開始する前にモータ402のロータの停止位置の検出動作が開始される。
【0123】
一方、S101において、操作部152が操作されたことが通知されない場合は、処理はS1110に進む。
【0124】
S110において、印刷ジョブを開始する指示が入力されない場合は、処理はS101に戻る。
【0125】
また、S110において、印刷ジョブを開始する指示が入力されると、S111において、CPU151aは、モータ制御装置157に、モータ402の停止位置の検知動作を実行させる。
【0126】
その後、S112において、CPU151aは、モータ402のロータを所定の位相に保持するようにモータ制御装置157を制御する。
【0127】
そして、S113において、CPU151aは、画像系絵師装置100による画像形成動作を実行する。
【0128】
S114において、印刷ジョブが終了すると、CPU151aは、このフローチャートの処理を終了する。
【0129】
以上のように、本実施形態では、モータ制御装置157は、モータ402の巻線への励磁が行われていない状態において操作部152が操作されていることが操作部152から通知されると、モータ402のロータの停止位置を検出する動作を開始する。即ち、モータ制御装置157は、印刷ジョブの開始が指示される可能性がある場合に、印刷ジョブの開始が指示される前にモータ402のロータの停止位置を検出する動作を開始する。このように、本実施形態では、印刷ジョブにおいて記録媒体を搬送する搬送ローラのうち最も上流側にある搬送ローラであるピックアップローラ19を駆動するモータ402のロータの停止位置を検出する動作が、印刷ジョブの開始が指示される前に行われる。その結果、印刷ジョブの開始が指示された後にモータ402のロータの停止位置を検出する動作を開始する場合に比べてFPOTが短縮される。即ち、本実施形態の構成により、FPOTを短縮することができる画像形成装置を提供することができる。
【0130】
なお、本実施形態では、操作部152が操作されたか否かに基づいてモータ402の停止位置の検知の動作を開始したが、この限りではない。例えば、モータ制御装置157は、モータ402の巻線への励磁が行われていない状態において人体検知センサ162が物体としての人を検知すると、モータ402のロータの停止位置を検出する動作を開始してもよい。このように、モータ制御装置157は、印刷ジョブの開始が指示される可能性がある場合に、印刷ジョブの開始が指示される前にモータ402のロータの停止位置を検出する動作を開始する。印刷ジョブにおいて記録媒体を搬送する搬送ローラのうち最も上流側にある搬送ローラであるピックアップローラ19を駆動するモータ402のロータの停止位置を検出する動作が、印刷ジョブの開始が指示される前に行われる。その結果、印刷ジョブの開始が指示された後にモータ402のロータの停止位置を検出する動作を開始する場合に比べてFPOTが短縮される。即ち、本実施形態の構成により、FPOTを短縮することができる画像形成装置を提供することができる。
【0131】
なお、本実施形態では、モータ制御装置157は、モータ402の巻線への励磁が行われていない状態において操作部152が操作されていることが操作部152から通知されると、モータ402のロータの停止位置を検出する動作を開始したが、この限りではない。例えば、モータ制御装置157は、モータ402の巻線への励磁が行われていない状態において、原稿積載部2に原稿が載置されたことが、原稿積載部2に設けられたセンサ(不図示)によって検知されるとモータ402のロータの停止位置を検出する動作を開始してもよい。また、モータ制御装置157は、モータ402の巻線への励磁が行われていない状態において、手差しトレイ44に原稿が載置されたことが、手差しトレイ44に設けられたセンサ(不図示)によって検知されるとモータ402のロータの停止位置を検出する動作を開始してもよい。
【0132】
なお、本実施形態では、モータ402がピックアップローラ19を駆動する場合について説明したが、この限りではない。例えば、ピックアップローラ19以外の搬送ローラを駆動するモータに本実施形態の構成が適用されてもよい。
【0133】
また、本実施形態では、モータ402は、ピックアップローラ19を駆動する構成であったが、例えば、モータ402は、ピックアップローラ19と搬送ローラ39とを駆動する構成でもよい。即ち、モータ402は、ピックアップローラ19を含む複数の搬送ローラを駆動する構成でもよい。
【0134】
また、本実施形態では、モータ402はピックアップローラ19を駆動する構成について説明したが、例えば、モータ402はピックアップローラ43を駆動する構成であってもよい。
【0135】
〔第2実施形態〕
画像形成装置100の構成が第1実施形態と同様である部分については説明を省略する。
【0136】
本実施形態では、排紙ローラ30を駆動するモータ403を制御するモータ制御装置158は、印刷ジョブを開始する指示が操作部152又は外部機器から入力された後に、モータ403のロータの停止位置を検出する動作を開始する。これは、印刷ジョブを開始する指示が入力された後にモータ403のロータの停止位置を検出する動作が開始されても、搬送されてくる記録媒体が排紙ローラ30に到達する前にモータ403を所定の回転速度まで加速させることができるためFPOTの低下に影響しないからである。このような構成により、画像形成装置におけるすべてのモータのロータの停止位置を検出する動作が印刷ジョブの開始が指示される前に行われる場合に比べて、消費電力が小さくなる。なお、本実施形態では、モータ403のロータの停止位置を検出する動作を実行してモータ403を所定の回転速度まで加速させるまでに要する時間は、印刷ジョブが開始されてから記録媒体が排紙ローラ30に到達するまでの時間よりも短い。
【0137】
以上の構成により、画像形成装置における消費電力を抑制しつつ、FPOTを短縮することができる画像形成装置を提供することができる。
【0138】
なお、本実施形態では、モータ402がピックアップローラ19を駆動し、モータ403が排紙ローラ30を駆動する場合について説明したが、本実施形態が適用されるのは、この限りではない。例えば、モータ402は、転写ローラ対28よりも上流の搬送ローラの少なくとも1つを駆動し、モータ403は、転写ローラ対28よりも下流の搬送ローラの少なくとも1つを駆動する構成であればよい。即ち、転写ローラ対28よりも上流の搬送ローラを駆動する複数のモータのうちの少なくとも1つは、印刷ジョブ1が終了してから所定時間Tdが経過するまでの期間、巻線への励磁を維持される構成でもよい。
【0139】
また、本実施形態では、モータ402は、ピックアップローラ19を駆動する構成であったが、例えば、モータ402は、ピックアップローラ19と搬送ローラ39とを駆動する構成でもよい。即ち、モータ402は、ピックアップローラ19を含む複数の搬送ローラを駆動する構成でもよい。
【0140】
また、本実施形態では、モータ402はピックアップローラ19を駆動する構成について説明したが、例えば、モータ402はピックアップローラ43を駆動する構成であってもよい。
【0141】
第1実施形態及び第2実施形態におけるベクトル制御では、速度フィードバック制御を行うことによってモータ402、403を制御しているが、これに限定されるものではない。例えば、モータ402、403の回転子の回転位相θをフィードバックしてモータ402、403を制御する構成であっても良い。
【0142】
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、負荷を駆動するモータとしてブラシレスDCモータが用いられているが、ステッピングモータやDCモータ等の他のモータであっても良い。また、モータが有する巻線の相の数は、3相(U相、V相、W相)に限らず、3相以外の数であってもよい。
【0143】
また、第1実施形態及び第2実施形態において、モータ制御装置157の機能をCPU151aが有していてもよい。
【0144】
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、初期化動作として、モータの停止位置を検出する動作が行われたが、この限りではない。例えば、初期化動作として、モータの所定の相を励磁することによりロータを当該所定の相に引き込む動作が行われてもよい。
感光ドラム、帯電器、現像器、転写ローラ、転写ベルト等は画像形成部に含まれる。
【符号の説明】
【0145】
18 シート収納トレイ
19、43 ピックアップローラ
44 手差しトレイ
151a CPU
157、158 モータ制御装置
301 画像印刷装置
402、403 ブラシレスDCモータ