(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】冷凍庫の空調システム
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20241015BHJP
F25B 47/02 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
F25D11/00 101U
F25B47/02 D
(21)【出願番号】P 2021046035
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592031318
【氏名又は名称】富士古河E&C株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】林 美津雄
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-207090(JP,A)
【文献】特開2020-020488(JP,A)
【文献】特開2017-009248(JP,A)
【文献】特開2020-193746(JP,A)
【文献】特開2018-119730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00-49/04
F25D 1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍庫の空調システムであって、
複数のユニットクーラと、
それぞれの前記ユニットクーラに接続され、冷凍庫外に配置されるコンデンシングユニットと、
前記ユニットクーラからの冷気の温度を調整可能な再熱用ヒータと、
前記ユニットクーラ、前記コンデンシングユニット及び前記再熱用ヒータを制御可能な制御部を具備し、
複数の前記ユニットクーラ及び前記再熱用ヒータが、一括してケーシングに収容され、
それぞれの前記ユニットクーラは、防霜ヒータを有し、
前記制御部は、少なくとも一部の前記ユニットクーラの前記防霜ヒータを稼働する際には、他の少なくとも一部の前記ユニットクーラを稼働させ
、
前記ケーシングには、前記ユニットクーラの送風機とは別に有圧扇が設けられ、前記ユニットクーラからの冷気を、前記ケーシング内から冷凍庫内へ送風可能であることを特徴とする冷凍庫の空調システム。
【請求項2】
冷凍庫の空調システムであって、
複数のユニットクーラと、
それぞれの前記ユニットクーラに接続され、冷凍庫外に配置されるコンデンシングユニットと、
前記ユニットクーラからの冷気の温度を調整可能な再熱用ヒータと、
前記ユニットクーラ、前記コンデンシングユニット及び前記再熱用ヒータを制御可能な制御部を具備し、
複数の前記ユニットクーラ及び前記再熱用ヒータが、一括してケーシングに収容され、
それぞれの前記ユニットクーラは、防霜ヒータを有し、
それぞれの前記ユニットクーラの後方には、開閉可能なダンパが配置され、前記ユニットクーラの前方には、風圧によって開閉可能な風圧シャッタが配置され、前記制御部は、少なくとも一部の前記ユニットクーラの前記防霜ヒータを稼働する際には、
前記防霜ヒータを稼働する前記ユニットクーラの前記ダンパを閉じ、他の少なくとも一部の前記ユニットクーラ
の前記ダンパを開くとともに当該ユニットクーラを稼働させることを特徴とする冷凍庫の空調システム。
【請求項3】
前記制御部
は、前記ユニットクーラ
及び前記コンデンシングユニット
からなる複数の空調系統の内、いずれかの空調系統の故障を検知すると、他の
空調系統を稼働させることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の冷凍庫の空調システム。
【請求項4】
前記制御部は、冷凍庫内の温度情報に基づいて、前記再熱用ヒータの操作量を制御可能であるとともに、前記再熱用ヒータの操作量に基づいて前記コンデンシングユニットの出力を制御することが可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の冷凍庫の空調システム。
【請求項5】
前記コンデンシングユニットは、オイル回収に必要な、機器に固有の固有最低稼働周波数を有し、前記制御部は、前記固有最低稼働周波数よりも稼働周波数の大きな制御最低稼働周波数を設定して、前記コンデンシングユニットが、前記制御最低稼働周波数を下回らないように前記コンデンシングユニットを制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の冷凍庫の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍庫に使用される空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、薬品や食品等を保管するための冷凍庫では、ユニットクーラとコンデンシングユニットとが組み合わせられて用いられる。この際、冷凍庫の大きさにもよるが、複数のコンデンシングユニット及びユニットクーラが設置される場合がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、複数のユニットクーラ及びコンデンシングユニットは個別に制御される。冷凍庫内温度を一定に保つためには、冷凍庫内の温度を測定し、これによってそれぞれのユニットクーラとコンデンシングユニットとを制御することで、冷凍庫内の温度が所定の温度幅に保たれる。
【0005】
しかし、従来の方法では、必ずしも十分な温度制御ができていたとは言えない。例えば、冷凍庫内の温度条件幅が狭く、温度制御がより厳しい条件である場合には、より精度の高い温度制御が必要となる。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、精度よく温度制御が可能な冷凍庫の空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、冷凍庫の空調システムであって、複数のユニットクーラと、それぞれの前記ユニットクーラに接続され、冷凍庫外に配置されるコンデンシングユニットと、前記ユニットクーラからの冷気の温度を調整可能な再熱用ヒータと、前記ユニットクーラ、前記コンデンシングユニット及び前記再熱用ヒータを制御可能な制御部を具備し、複数の前記ユニットクーラ及び前記再熱用ヒータが、一括してケーシングに収容され、それぞれの前記ユニットクーラは、防霜ヒータを有し、前記制御部は、少なくとも一部の前記ユニットクーラの前記防霜ヒータを稼働する際には、他の少なくとも一部の前記ユニットクーラを稼働させ、前記ケーシングには、前記ユニットクーラの送風機とは別に有圧扇が設けられ、前記ユニットクーラからの冷気を、前記ケーシング内から冷凍庫内へ送風可能であることを特徴とする冷凍庫の空調システムである。
また第2の発明は、冷凍庫の空調システムであって、複数のユニットクーラと、それぞれの前記ユニットクーラに接続され、冷凍庫外に配置されるコンデンシングユニットと、前記ユニットクーラからの冷気の温度を調整可能な再熱用ヒータと、前記ユニットクーラ、前記コンデンシングユニット及び前記再熱用ヒータを制御可能な制御部を具備し、複数の前記ユニットクーラ及び前記再熱用ヒータが、一括してケーシングに収容され、それぞれの前記ユニットクーラは、防霜ヒータを有し、それぞれの前記ユニットクーラの後方には、開閉可能なダンパが配置され、前記ユニットクーラの前方には、風圧によって開閉可能な風圧シャッタが配置され、前記制御部は、少なくとも一部の前記ユニットクーラの前記防霜ヒータを稼働する際には、前記防霜ヒータを稼働する前記ユニットクーラの前記ダンパを閉じ、他の少なくとも一部の前記ユニットクーラの前記ダンパを開くとともに当該ユニットクーラを稼働させることを特徴とする冷凍庫の空調システムである。
【0008】
前記制御部は、前記ユニットクーラ及び前記コンデンシングユニットからなる複数の空調系統の内、いずれかの空調系統の故障を検知すると、他の空調系統を稼働させることが望ましい。
【0010】
前記制御部は、冷凍庫内の温度情報に基づいて、前記再熱用ヒータの操作量を制御可能であるとともに、前記再熱用ヒータの操作量に基づいて前記コンデンシングユニットの出力を制御することが可能であることが望ましい。
【0011】
前記コンデンシングユニットは、オイル回収に必要な、機器に固有の固有最低稼働周波数を有し、前記制御部は、前記固有最低稼働周波数よりも稼働周波数の大きな制御最低稼働周波数を設定して、前記コンデンシングユニットが、前記制御最低稼働周波数を下回らないように前記コンデンシングユニットを制御することが望ましい。
【0012】
本発明によれば、複数のユニットクーラ等がケーシングに収容されるため、ユニットクーラが複数配置されても、ケーシング内において冷気の分布や向きが均一化されて、略一定の条件で冷気を冷凍庫内に送気することができる。このため、温度ばらつきが生じにくく、精度のよい温度制御が可能である。
【0013】
特に、ユニットクーラに内蔵される防霜ヒータによって、ユニットクーラへの霜の付着を抑制することができるため、常に一定の条件でユニットクーラを稼働させることができる。また、防霜ヒータ稼働時には、他のユニットクーラを稼働させることで、防霜ヒータの稼働による温度変化の影響を抑制することができる。
【0014】
また、いずれかのユニットクーラ又はコンデンシングユニットの故障を検知すると、当該ユニットクーラ及びコンデンシングユニットの稼働を停止して、他のユニットクーラ及びコンデンシングユニットを稼働させることで、故障時における温度異常等のリスクを低減することができる。
【0015】
また、ユニットクーラの送風機とは別に、ケーシングに有圧扇を設けることで、ケーシング内のいずれのユニットクーラが稼働しても、常に略一定の位置と向きで、冷気をケーシング内から冷凍庫内へ送風可能である。このため、使用するユニットクーラを切り替えても、略一定の条件で冷凍庫内の温度制御が可能であり、精度のより温度制御が可能である。
【0016】
また、冷凍庫内の温度情報に基づいて、再熱用ヒータの操作量を制御することによって、冷凍庫内の温度を制御することができる。この際、コンデンシングユニットの出力(コンデンシングユニット内の圧縮機の出力)の制御を、再熱用ヒータの操作量に基づいて行うことで、より精度の高い制御が可能である。例えば、コンデンシングユニットの出力を、冷凍庫内の温度情報に基づいて制御すると、再熱用ヒータの制御の効果と互いに打ち消しあい、温度のハンチング等の要因となる。これに対し、再熱用ヒータの操作量に基づいてコンデンシングユニットの出力を制御することで、このような温度バラツキを抑制することができる。
【0017】
また、コンデンシングユニットには、オイル回収に必要な機器に固有の固有最低稼働周波数が有する場合がある。このような場合に、温度制御のためにコンデンシングユニットの出力を低下させると、機器の保護機能によって、オイル回収のために出力を一時的に増加させる制御が行われる。冷凍庫内の温度制御の際に、このような機器のオイル回収機能が稼働すると、これによる温度変動の要因となる。このため、温度制御のためのコンデンシングユニットの制御において、固有最低稼働周波数よりも稼働周波数の大きな制御最低稼働周波数を設定して、コンデンシングユニットが、制御最低稼働周波数を下回らないように制御することで、このような温度バラツキを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、精度よく温度制御が可能な冷凍庫の空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】ユニットクーラ等を示す側面図であって、(a)はファン停止時、(b)はファン稼働時における状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、空調システム1について説明する。
図1は、空調システム1を示す構成図である。空調システム1は、冷凍庫3に設置され、主に、複数のユニットクーラ5a、5b、再熱用ヒータ7a、7b、ダンパ9a、9b、コンデンシングユニット11a、11b、制御部13、温度センサ15等からなる。
【0021】
冷凍庫3内には、複数のユニットクーラ5a、5bが配置される。ユニットクーラ5aの前方(冷気吹き出し側)には、再熱用ヒータ7aが配置され、ユニットクーラ5aの後方にはダンパ9aが配置される。また、ユニットクーラ5aには、冷凍庫3外に設置されるコンデンシングユニット11aと接続され、冷媒が流れる配管で接続される。
【0022】
同様に、ユニットクーラ5bの前方(冷気吹き出し側)には、再熱用ヒータ7bが配置され、ユニットクーラ5bの後方にはダンパ9bが配置される。また、ユニットクーラ5bには、冷凍庫3外に設置されるコンデンシングユニット11bと接続され、冷媒が流れる配管で接続される。
【0023】
コンデンシングユニット11a、11bには、圧縮機(凝縮器)が配置され、ユニットクーラ5a、5bには蒸発器が配置される。したがって、コンデンシングユニット11a、11bで凝縮された冷媒を、ユニットクーラ5a、5bに循環させて、ユニットクーラ5a、5bの蒸発器で蒸発させることで、空気が冷やされ、冷凍庫3内に冷気を送ることができる。
【0024】
すなわち、空調システム1は、ユニットクーラ5a等からなる空調系統と、ユニットクーラ5b等からなる空調系統とが並列で設置される。なお、本実施形態では、2系統の空調系統を有する例を示すが、さらにユニットクーラ等を増設して3系統以上としてもよい。
【0025】
再熱用ヒータ7a、7bは、ユニットクーラ5a、5bから送風される冷気の温度を加熱して、冷気の温度の調整を行う部位である。ダンパ9a、9bは開閉可能であり、ダンパ9a、9bを閉じることで、ユニットクーラ5a、5bへの空気の流入(又はユニットクーラ5a、5bからの空気の流出)を防ぐことができる。また、冷凍庫3内には、所定の位置に温度センサ15が設置される。温度センサ15は、冷凍庫3内の温度を計測可能である。
【0026】
ユニットクーラ5a、5b、再熱用ヒータ7a、7b、ダンパ9a、9b、コンデンシングユニット11a、11b、及び温度センサ15は、制御部13に接続される。制御部13は、各部の情報を取得するとともに、動作等を制御可能である。なお、制御部13は、例えばPLCであり、各種の情報や制御内容を記憶可能な記憶部や、各種条件を判断する演算部や、設定された条件に従って各部と制御信号等を受信・発信する通信部等を有する。
【0027】
次に、各部の構造についてより詳細に説明する。
図2は、冷凍庫3内における、ユニットクーラ等を示す平面図、
図3は、ユニットクーラ等を示す側面図(ケーシング19の側面の透視図)であり、
図3(a)は、ユニットクーラ5aのファンが停止した状態を示す図、
図3(b)は、ユニットクーラ5aのファンが稼働した状態を示す図である。なお、
図3(a)、
図3(b)では、ユニットクーラ5aについて示すが、ユニットクーラ5bも同様である。
【0028】
ユニットクーラ5a、5b、再熱用ヒータ7a、7b、ダンパ9a、9bは、一括してケーシング19に収容される。ケーシング19は、一部が冷凍庫3内の空間と連通し、例えば、ユニットクーラ等の側方及び前方を覆うように形成される。
【0029】
ユニットクーラ5a、5bには、防霜ヒータ17a、17bがそれぞれ内蔵される。なお、防霜ヒータ17a、17bは、ユニットクーラ5a、5b内に生じる霜を防ぐ(又は生成された霜を取り除く)ものである。詳細は後述するが、防霜ヒータ17a、17bは、所定の間隔で動作する。
【0030】
ユニットクーラ5a、5bの後方には、それぞれダンパ9a、9bが配置される。ダンパ9aは、例えばモータ式のダンパである。ダンパ9a、9bは開閉可能であり、ダンパ9a、9bを閉じると、ユニットクーラ5a、5b内への空気の流入(又はユニットクーラ5a、5b内からの空気の流出)を遮断することができる。
【0031】
ユニットクーラ5a、5bの前方には、それぞれダクト23が配置され、ダクト23内には風圧シャッタ25が配置される。風圧シャッタ25は、ユニットクーラ5a、5b内のファンが稼働すると、その風圧によって開き、ファンが停止するとユニットクーラ5a、5bの冷気の吹き出し口を塞ぐものである。再熱用ヒータ7a、7bは、ダクト23の前方に配置される。
【0032】
ケーシング19の前面側には孔が形成され、孔には、ユニットクーラ5a、5bの内部の送風機(ファン)とは別に、有圧扇21が設けられる。前述したように、ユニットクーラ5a、5bの前方はケーシング19で覆われる。このため、ユニットクーラ5a、5bから送風された冷気は、ケーシング9に沿って流れ、有圧扇21によってケーシング19内から冷凍庫3内へ送風される。なお、有圧扇21の送風能力は、ユニットクーラ5a、5b内の送風機の送風能力よりも大きい。
【0033】
次に、ユニットクーラ等の動作について説明する。なお、
図3に基づいて、以下、ユニットクーラ5aを用いて説明するが、ユニットクーラ5bも同様である。
図3(a)に示すように、ユニットクーラ5a(送風機)が停止している状態では、ダンパ9aが閉じられる。また、前述したように、ユニットクーラ5aの送風が停止しているため、ユニットクーラ5aの前方の風圧シャッタ25が閉じた状態となる。すなわち、ユニットクーラ5aの後方と前方が閉じられて、ユニットクーラ5aの内部を空気が通過しない。
【0034】
図示したように、ケーシング19の後方は、冷凍庫3内へ開放されている。また、ケーシング19とユニットクーラ5a等との間には隙間が形成される。このため、有圧扇21を動作させると、ケーシング19の後方から内部に空気が流入し、ユニットクーラ5aの外部を通過して、有圧扇21によって冷凍庫3内へ送風される(図中矢印C)。
【0035】
なお、防霜ヒータ17aが稼働する際には、
図3(a)に示すように、ユニットクーラ5a(送風機)の動作が停止し、ダンパ9a及び風圧シャッタ25が閉じられる。このようにすることで、ケーシング19内において、空気はユニットクーラ5aの外部を流れるため、防霜ヒータ17aによって加熱された空気が外部に排出されることがなく、温度バラツキを抑制することができる。
【0036】
図3(b)は、防霜ヒータ17aが停止し、ユニットクーラ5aを稼働させた状態を示す図である。ユニットクーラ5aが稼働する際には、ダンパ9aが開かれる。また、ユニットクーラ5aの送風機を動作させると、前述したように、ユニットクーラ5aの前方の風圧シャッタ25が開く。このため、ユニットクーラ5aの後方から、空気がユニットクーラ5aへ流入し、ユニットクーラ5aの前方に送風される(図中矢印D)。ユニットクーラ5aの内部において、コンデンシングユニット11aから流れる冷媒を蒸発器で蒸発させることで、通過する空気を冷却して前方へ冷気を送風することができる。
【0037】
なお、風圧シャッタ25は、ダクト23の内部に配置される。また、再熱用ヒータ7aは、風圧シャッタ25から所定の距離をあけて配置される。このため、風圧シャッタ25が開いた際に、風圧シャッタ25は再熱用ヒータ7aと干渉しない。また、風圧シャッタ25と再熱用ヒータ7aまでの間には、ダクト23が配置される。このため、風圧シャッタ25を通過した空気を、確実に再熱用ヒータ7aに導入することができる。
【0038】
なお、前述したように、再熱用ヒータ7aを動作させることで、再熱用ヒータ7aを通過する空気を加熱することができる。このため、コンデンシングユニット11aの圧縮機の出力と、再熱用ヒータ7aの出力を調整することで、冷気を任意の温度に調整して、冷凍庫3に送風することができる。
【0039】
次に、空調システム1の制御方法について説明する。
図4は、空調システム1の動作の制御方法を示すフローチャートである。前述したように、本実施形態では、二つの空調系統を有するが、ユニットクーラ5a等からなる系統を系統Aとし、ユニットクーラ5b等からなる系統を系統Bとして説明する。
【0040】
本実施形態では、制御部13が、系統Aと系統Bとを切り替えて稼働させる。なお、図示は省略するが、制御部13は所定のタイミングで(コンデンシングユニット11aとユニットクーラ5aの稼働開始前)、有圧扇21の稼働を開始する。有圧扇21は、系統Aと系統Bとの切り替え時も含めて連続稼働となる。なお、温度調整の制御方法については後述する。
【0041】
前述したように、ユニットクーラ5a等が停止中には、ダンパ9aが閉じている。このため、空調システム1の稼働を開始すると、制御部13は、まず、系統Aのダンパ9aを開く(ステップ101)。次に、制御部13は、コンデンシングユニット11aとユニットクーラ5aを稼働させる。すなわち、ユニットクーラ5aは、内部のファンを稼働して、冷気を冷凍庫3内へ送風する(ステップ102)。
【0042】
制御部13は、設定時間の稼働が終了したかどうかを判断し(ステップ103)、稼働時間を終了すると、ステップ105に進み、系統Aの停止制御を行う。また、系統Aが稼働した状態で、制御部13は、系統Aに故障がないかを検知する(ステップ104)。例えば、コンデンシングユニット11a又はユニットクーラ5aに故障がある場合には、当該機器は異常情報を発信し、制御部13は異常情報を検知すると、ステップ105に進み、系統Aの停止制御を行う。
【0043】
系統Aを停止する際には、制御部13は、まず、コンデンシングユニット11aとユニットクーラ5aの稼働を停止する。この際、ユニットクーラ5aのファンを停止する(ステップ105)。また、制御部13は、ダンパ9aを閉じる(ステップ106)。
【0044】
この状態で、制御部13は、故障時を除き、ユニットクーラ5aの防霜ヒータ17aを稼働する(ステップ107)。前述したように、防霜ヒータ17aの稼働中にはダンパ9aと風圧シャッタ25が閉じているため、防霜ヒータ17aの熱が、ユニットクーラ5aの内部から排出されることがない。なお、防霜ヒータ17aは、所定の時間稼働すると停止する。
【0045】
制御部13は、系統Aを停止すると、次に、系統Bを稼働する。系統Aと同様に、制御部13は、まず、ダンパ9bを開く(ステップ108)。次に、制御部13は、コンデンシングユニット11bとユニットクーラ5bを稼働させる。すなわち、ユニットクーラ5bは、内部のファンを稼働して、冷気を冷凍庫3内へ送風する(ステップ109)。
【0046】
次に、制御部13は、設定時間の稼働が終了したかどうかを判断し(ステップ110)、稼働時間を終了すると、ステップ112に進み、系統Bの停止制御を行う。また、系統Bが稼働した状態で、制御部13は、系統Bに故障がないかを検知する(ステップ111)。例えば、コンデンシングユニット11b又はユニットクーラ5bに故障がある場合には、当該機器は異常情報を発信し、制御部13は異常情報を検知すると、ステップ112に進み、系統Bの停止制御を行う。
【0047】
系統Bを停止する際には、制御部13は、コンデンシングユニット11bとユニットクーラ5bの稼働を停止し、ユニットクーラ5bのファンを停止する(ステップ112)。また、制御部13は、ダンパ9bを閉じる(ステップ113)。
【0048】
この状態で、制御部13は、故障時を除き、ユニットクーラ5bの防霜ヒータ17bを稼働する(ステップ114)。前述したように、防霜ヒータ17bは、所定の時間稼働すると停止する。制御部13は、いずれかの系統が故障状態である場合を除き、以上を繰り返し、系統Aと系統Bとを交互に運転する。
【0049】
ここで、系統Aの運転時と系統Bの運転時では、冷気が送風されるユニットクーラが異なる。このため、同じ出力であっても、機差による冷気の温度や風量が異なり、また、ユニットクーラ5a、5bの設置位置による冷気の吹き出し位置が異なる。
【0050】
一方、本実施形態では、いずれのユニットクーラ5a、5bが動作しても、ケーシング19内において均一化され、冷凍庫3内への冷気の送風が有圧扇21で行われる。このため、系統Aの動作時も系統Bの動作時も、常に一定の位置から、略一定の送風量で冷凍庫3内へ送風を行うことができる。このため、系統の切り替えを行っても、冷凍庫3の温度バラツキを抑制することができる。
【0051】
このように、制御部13は、少なくとも一部のユニットクーラの防霜ヒータを稼働する際には、他の少なくとも一部のユニットクーラを稼働させるため、防霜ヒータが稼働することによる影響を抑制することができる。また、制御部13は、いずれかのユニットクーラ又はコンデンシングユニットの故障を検知すると、他のユニットクーラ又はコンデンシングユニットを稼働させるため、リスクを分散させることができる。
【0052】
次に、空調システム1の温度制御について説明する。
図5、
図6は、温度制御方法を示すフローチャートである。制御部13は、まず温度センサ15から冷凍庫3内の温度情報を取得し(ステップ201)、取得した冷凍庫3内の温度情報と、予め設定された温度とを比較する(ステップ202)。
【0053】
冷凍庫3内の温度が設定された基準温度よりも低い場合には(ステップ203)、制御部13は、稼働中の系統の再熱用ヒータのPID制御を行う(ステップ204)。また、冷凍庫3内の温度が設定された基準温度よりも高くなると、制御部13は、稼働中の系統の再熱用ヒータの出力を低下する(ステップ205)。このように、制御部13は、冷凍庫3内の温度情報に基づいて、再熱用ヒータの操作量を制御可能である。
【0054】
次に、制御部13は、再熱用ヒータの操作量情報(制御状態)を取得する(ステップ207)。制御部13は、再熱用ヒータの操作量(出力)が所定以上の場合、すなわち、再熱用ヒータがPID制御を行っている状態かを判定する(ステップ207)。再熱用ヒータの操作量が所定以上の場合には、制御部13は、コンデンシングユニット(より詳細には、内部の圧縮機インバータであるが、以下、単にコンデンシングユニットとする)の出力と、予め設定された設定値とを比較する(ステップ209)。なお、コンデンシングユニットの出力の設定値については詳細を後述する。
【0055】
コンデンシングユニットの出力が設定値を超えている場合には(ステップ210)、制御部13は、コンデンシングユニットの出力を低下させる(ステップ211)。一方、コンデンシングユニットの出力が設定値以下となる場合には、制御部13は、コンデンシングユニットの出力をそれ以上低下させずに維持させる(ステップ212)。
【0056】
一方、再熱用ヒータの操作量(出力)が所定以上でない場合、すなわち、再熱用ヒータがPID制御を行っていない状態の場合には、制御部13は、コンデンシングユニットの出力を上昇させる(ステップ208)。
【0057】
このように、コンデンシングユニットの出力制御を、直接、冷凍庫3内の温度に基づいて行うのではなく、その時点での再熱用ヒータの操作量に基づいて行うことで、より精度の良い制御が可能である。
【0058】
例えば、冷凍庫3内の温度に基づいて、コンデンシングユニットと再熱用ヒータの両者を同時に制御する場合、それぞれの制御量に対して実際の冷凍庫3内の温度の変化に遅れが生じる。この際、例えば、冷凍庫3内の温度が低下してきた際には、再熱用ヒータはPID制御によって出力を上げ、コンデンシングユニットは出力を徐々に低下するが、再熱用ヒータが出力を上げても、コンデンシングユニットの出力によって、その一部の効果が打ち消され、冷凍庫3内の温度の上昇がさらに遅れる。この結果、再熱用ヒータはさらに出力を上げようとする。
【0059】
一方、冷凍庫3内の温度の低下が止まり、温度が上昇を始める際には、再熱用ヒータは出力を下げ、コンデンシングユニットの出力が上がるが、コンデンシングユニットが出力を上げても、再熱用ヒータの出力によって、その一部の効果が打ち消され、冷凍庫3内の温度の低下がさらに遅れる。このように、同時に冷凍庫3内の温度によって両機器を制御しようとすると、互いの効果が打ち消されあう結果、機器の出力の増加と停止とが繰り返され、冷凍庫3内の温度のハンチングの要因となる。
【0060】
これに対し、本実施形態では、冷凍庫3内の温度に基づいて、再熱用ヒータをPID制御し、この操作量に応じてコンデンシングユニットの出力制御行うため、冷凍庫3の温度変動に基づく直接的な制御は、再熱用ヒータのみである。このため、仮に冷凍庫3内の温度が基準値よりもわずかに高い場合でも、PID制御によって再熱用ヒータの出力が徐々に増加していく際には(例えば、冷凍庫3内の温度が低下中)、コンデンシングユニットの出力は低下して、再熱用ヒータの効果を打ち消さないように制御される。このため、冷凍庫3内の温度をより精度よく行うことができる。
【0061】
以上のように、本実施形態では、再熱用ヒータとコンデンシングユニットの制御を、連続して又は所定の間隔で行うことで、冷凍庫3内の温度を精度よく制御することができる。
【0062】
次に、コンデンシングユニットの出力下限設定値について説明する。通常、コンデンシングユニットからは、冷媒と共に、各機器の潤滑のためのオイルが吐出される。冷媒と共に流れるオイルは、コンデンシングユニットから吐出され、ユニットクーラを流れて再度コンデンシングユニットに戻った際に油分が分離されて回収される。回収されたオイルは、再度冷媒と共に所定量が吐出されて系統を循環する。
【0063】
ここで、コンデンシングユニットの出力に応じて、冷媒の流速が変化する。例えば、前述した温度制御の際に、コンデンシングユニットの出力が低下すると、吐出される冷媒の速度(量)が低下する。一方で、コンデンシングユニットは、オイルを回収するため、最低限必要な稼働条件が存在する。すなわち、コンデンシングユニットには、オイル回収に必要な機器に固有の固有最低稼働周波数を有する。
【0064】
制御部13によるコンデンシングユニットの出力制御によって、コンデンシングユニットが、固有最低稼働周波数を下回る出力となると、保護機能によって、コンデンシングユニットは、所定時間強制的に稼働周波数をあげて出力を増大する。このような制御が働くと、制御部13による温度制御に影響が出る。
【0065】
本実施形態では、予め、固有最低稼働周波数よりも稼働周波数の大きな制御最低稼働周波数を設定しておき、制御部13は、コンデンシングユニットが、制御最低稼働周波数を下回らないようにコンデンシングユニットを制御する(ステップ209~212)。このため、意図しないコンデンシングユニットの出力増大を避けることができる。
【0066】
以上、本実施の形態によれば、複数の空調系統を有するため、例えば一方の系統が故障した場合でも、他方の系統を運転させることで、安定して連続運転が可能である。
【0067】
また、ユニットクーラ5a、5b内部の防霜ヒータ17a、17bを稼働する際には、当該ユニットクーラの運転を停止するため、防霜ヒータ17a、17bの温度による影響を抑制することができる。この際、防霜ヒータ17a、17bの稼働時には、ダンパ9a、9bを閉じ、風圧シャッタ25が閉じるため、ユニットクーラ5a、5b内の熱が外部に流出することを抑制することができる。
【0068】
また、複数のユニットクーラ5a、5b等がケーシング19内に収容されるため、ケーシング19内において、温度をある程度均一化することができる。また、ケーシング19には有圧扇21が配置されるため、ケーシング19からは、常に一定の条件で冷凍庫3へ冷気が送風される。このため、例えばユニットクーラ5a、5bの稼働を切り替えても、冷凍庫3内の温度分布の増大やばらつきを抑制することができる。また、有圧扇21によって、ユニットクーラ5a、5bの内蔵ファンよりも強力に冷凍庫3内の空気を循環させることができるため、温度バラツキを抑制することができる。
【0069】
また、冷凍庫3の温度情報に基づいて再熱用ヒータ7a、7bをPID制御するとともに、コンデンシングユニット11a、11bは、再熱用ヒータ7a、7bの操作量に基づいて制御することで、温度のハンチング等の発生が抑制され、より安定した制御が可能となる。
【0070】
また、コンデンシングユニット11a、11bが、オイル回収のための固有の固有最低稼働周波数を有する場合において、制御部13は、この固有最低稼働周波数よりも稼働周波数の大きな制御最低稼働周波数を設定して、コンデンシングユニット11a、11bが、制御最低稼働周波数を下回らないように制御することで、意図しない稼働制御が行われることを抑制することができる。
【0071】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
1………空調システム
3………冷凍庫
5a、5b………ユニットクーラ
7a、7b………再熱用ヒータ
9a、9b………ダンパ
11a、11b………コンデンシングユニット
13………制御部
15………温度センサ
17a、17………防霜ヒータ
19………ケーシング
21………有圧扇
23………ダクト
25………風圧シャッタ