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  • 特許-積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20241015BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241015BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20241015BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
B32B27/30 A
B32B27/18 Z
C08F2/44 A
C08F290/06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021055613
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152737
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】榎 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】伊東 祐一
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第96/041831(WO,A1)
【文献】特開2016-199639(JP,A)
【文献】特開2005-186584(JP,A)
【文献】国際公開第2022/004785(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/066851(WO,A1)
【文献】特開平11-268201(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0002586(US,A1)
【文献】特開2009-001596(JP,A)
【文献】特開平10-060306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一方面に配置される樹脂層とを備え、
前記樹脂層は、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、
前記光硬化性樹脂組成物は、
2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーと、
無機粒子と、
ノニオン性界活性剤と、
ウレタン(メタ)アクリレートと
を含有し、
前記ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとを、ウレタン化反応させて得られる反応生成物であって、前記ポリイソシアネートは、鎖状脂肪族ポリイソシアネートである、積層体。
【請求項2】
前記ノニオン性界面活性剤の分子量が、900以上である、請求項1に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材の表面に、樹脂からなるコート層を積層した積層体が知られている。コート層は、基材に対して所望の物性を付与できる。基材としては、例えば、金属、プラスチックおよびガラスが挙げられる。コート層としては、例えば、ウレタン樹脂層およびアクリル樹脂層が挙げられる。
【0003】
積層体としては、例えば、以下の防曇性積層体が知られている。この防曇性積層体は、基材と、貯蔵層(A)と、緩衝層(B)とを含む。貯蔵層(A)は、多官能モノマー、無機粒子および界面活性剤を含み、防曇性を発揮する。また、界面活性剤として、ポリオキシアルキレン構造を有する界面活性剤が例示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2019/221268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、積層体としては、防曇性に加えて、耐熱性が要求される場合がある。
【0006】
本発明は、防曇性および耐熱性を有する積層体である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、基材と、前記基材の少なくとも一方面に配置される樹脂層とを備え、前記樹脂層は、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、前記光硬化性樹脂組成物は、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーと、無機粒子と、ノニオン性界活性剤と、ウレタン(メタ)アクリレートとを含有する、積層体を、含んでいる。
【0008】
本発明[2]は、前記ノニオン性界面活性剤の分子量が、900以上である、上記[1]に記載の積層体を、含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層体では、光硬化性樹脂組成物が、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーと、無機粒子と、ノニオン性界面活性剤と、ウレタン(メタ)アクリレートとを含有する。
【0010】
そのため、本発明の積層体は、優れた防曇性および耐熱性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の積層体の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1において、積層体1は、基材2と、基材2の少なくとも一方面に配置される樹脂層3とを備える。基材2は、特に制限されない。基材2としては、例えば、有機基材および無機基材が挙げられる。
【0013】
有機基材は、有機材料からなる基材である。有機材料としては、例えば、プラスチック、紙およびパルプが挙げられ、好ましくは、プラスチックが挙げられる。プラスチックとしては、例えば、ポリメチル(メタ)メタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリルカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセチルセルロース、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシ、ポリ(メタ)アクリレート、塩化ビニル、および、シリコーンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0014】
無機基材は、無機材料からなる基材である。無機材料としては、例えば、ガラス、シリカ、金属および金属酸化物が挙げられ、好ましくは、金属および金属酸化物が挙げられる。金属としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、チタン、コバルト、インジウムおよびクロムが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、上記金属の酸化物が挙げられる。金属酸化物として、具体的には、例えば、酸化アルミニウムおよび酸化チタンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0015】
また、基材2としては、有機無機複合基材も挙げられる。有機無機複合基材は、有機材料および無機材料を含む基材である。有機無機複合基材としては、例えば、プラスチックからなる有機基材の表面に金属層が蒸着された基材が挙げられる。また、有機無機複合基材としては、例えば、無機材料からなる充填剤を含有するプラスチックからなる基材が挙げられる。
【0016】
基材2は、単独使用または2種類以上併用できる。基材2として、好ましくは、光透過性を有する基材が挙げられる。そのような基材としては、例えば、プラスチックからなる基材が挙げられる。光透過性を有する基材を使用することにより、基材2の他方側から光硬化性樹脂組成物に対して光を照射できる。
【0017】
基材2の形状は、特に制限されない。基材の形状としては、例えば、板状、フィルム状、シート状、レンズ状、ボトル状およびカップ状が挙げられる。基材の形状として、好ましくは、板状、フィルム状およびシート状が挙げられる。
【0018】
また、基材2は、公知の方法で表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、火炎処理、化学酸化処理、アンカーコート処理およびプライマー処理(下塗り処理)が挙げられる。
【0019】
基材2は、好ましくは、プライマー処理されている。プライマー処理では、公知のプライマー剤が使用される。プライマー剤としては、例えば、ウレタンプライマー、エステルプライマーおよびアクリルプライマーが挙げられ、好ましくは、ウレタンプライマーが挙げられる。なお、基材2がプライマー処理される場合、基材2は、プライマー層(図示せず)を含む。
【0020】
基材2の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上である。また、基材2の厚みは、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0021】
基材2の全光線透過率は、例えば、90%以上、好ましくは、95%以上であり、通常、100%以下である。なお、全光線透過率は、JIS K 7361-1(1997)に準拠して、ヘイズメーターにより測定される。
【0022】
樹脂層3は、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。好ましくは、樹脂層3は、光硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。光硬化性樹脂組成物は、詳しくは後述するように、光の照射により架橋構造を形成し、硬化する樹脂組成物である。
【0023】
光硬化性樹脂組成物は、必須成分として、(A)2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーと、(B)無機粒子と、(C)ノニオン性界面活性剤と、(D)ウレタン(メタ)アクリレートとを含有する。
【0024】
なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を示す。また、(メタ)アクリルは、アクリルおよび/またはメタクリルを示す。また、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを示す。
【0025】
以下、(A)2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーを、多官能(メタ)アクリルモノマーと称する。多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、および、ヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジオールジ(メタ)アクリレート、および、2,2-ビス-[4-((メタ)アクリロキシ-ポリエトキシ)フェニル]-プロパン(エチレンオキサイド付加ビスフェノール)が挙げられる。トリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、および、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。テトラ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。ヘキサ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0026】
多官能(メタ)アクリルモノマーとして、防曇性の観点から、好ましくは、ジ(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートにおいて、オキシエチレン単位(EO単位)の繰り返し数は、防曇性の観点から、例えば、1以上、好ましくは、2以上、より好ましくは、5以上、さらに好ましくは、10以上である。また、オキシエチレン単位の繰り返し数は、防曇性の観点から、例えば、50以下、好ましくは、30以下、より好ましくは、20以下、さらに好ましくは、15以下である。
【0027】
多官能(メタ)アクリルモノマーの含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは、35質量%以上である。また、多官能(メタ)アクリルモノマーの含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、70質量%以下、好ましくは、60質量%以下、より好ましくは、50質量%以下である。
【0028】
なお、固形分総量とは、光硬化性樹脂組成物の乾燥質量であり、後述する溶剤を除く光硬化性樹脂組成物の総量である。より具体的には、固形分総量は、(A)多官能(メタ)アクリルモノマーと、(B)無機粒子と、(C)ノニオン性界面活性剤と、(D)ウレタン(メタ)アクリレートと、さらに、必要により配合される(E)光重合開始剤および(G)その他の成分との総量である。
【0029】
(B)無機粒子としては、例えば、金属酸化物の粒子が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)、酸化スズおよび酸化アンチモンが挙げられる。また、無機粒子としては、ダイヤモンド粒子も挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。樹脂層3における分散性、樹脂層3の硬度、および、樹脂層3の耐候性の観点から、好ましくは、金属酸化物が挙げられ、より好ましくは、酸化ケイ素および酸化ジルコニウムが挙げられる。
【0030】
無機粒子は、必要に応じて、表面修飾されていてもよい。そのような無機粒子としては、例えば、(メタ)アクリロイルを含む官能基により表面修飾された無機粒子が挙げられる。無機粒子を表面修飾する(メタ)アクリロイルを含む官能基は、多官能(メタ)アクリルモノマー中の(メタ)アクリロイル基と反応することにより、樹脂層3の耐擦傷性および防曇性を向上させることができる。
【0031】
(メタ)アクリロイルを含む官能基により表面修飾された無機粒子は、市販品として入手可能である。市販品としては、例えば、PGM-AC-2140Y(オルガノシリカゾル、日産化学工業製)が挙げられる。
【0032】
無機粒子の平均粒子径は、例えば、5nm以上、好ましくは、10nm以上である。また、無機粒子の平均粒子径は、例えば、50nm以下、好ましくは、30nm以下である。無機粒子の平均粒子径が、上記下限を上回っていれば、樹脂層3における分散性、および、樹脂層3の硬度が向上する。また、無機粒子の平均粒子径が、上記上限を下回っていれば、樹脂層3の透明性が向上する。なお、無機粒子の平均粒子径は、レーザー光による動的散乱法によって測定される。
【0033】
無機粒子の含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上である。また、無機粒子の含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、70質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。
【0034】
また、無機粒子の含有割合は、多官能(メタ)アクリルモノマー100質量部に対して、例えば、60質量部以上、好ましくは、80質量部以上、より好ましくは、100質量部以上である。また、無機粒子の含有割合は、多官能(メタ)アクリルモノマー100質量部に対して、例えば、200質量部以下、好ましくは、160質量部以下、より好ましくは、140質量部以下である。
【0035】
(C)ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンを有する化合物が挙げられる。すなわち、ノニオン性界面活性剤は、例えば、分子中に2つ以上のオキシアルキレンを含有する。オキシアルキレンとしては、例えば、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシトリメチレンおよびオキシテトラメチレンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。オキシアルキレンとして、好ましくは、オキシエチレンおよびオキシプロピレンが挙げられる。
【0036】
また、ノニオン性界面活性剤は、防曇性の観点から、好ましくは、ポリ(メタ)アクリルおよびエチレン性不飽和結合を有しない。
【0037】
ノニオン性界面活性剤として、より具体的には、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシアルキレンアルキルエステルが挙げられ、好ましくは、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、および、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0038】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、より具体的には、例えば、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンドデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、および、ポリオキシアルキレンオレイルセチルエーテルが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0039】
ノニオン性界面活性剤において、オキシアルキレン単位の繰り返し数は、特に制限されないが、例えば、1以上、好ましくは、2以上である。また、オキシエチレン単位の繰り返し数は、例えば、30以下、好ましくは、20以下である。
【0040】
ノニオン性界面活性剤の分子量(ポリスチレン換算による重量平均分子量(g/mol))は、例えば、500以上、好ましくは、900以上、より好ましくは、1000以上であり、例えば、3000以下、好ましくは、2000以下、より好ましくは、1500以下である。ノニオン性界面活性剤の分子量が、上記下限を上回っていれば、防曇持続性が向上する。また、ノニオン性界面活性剤の分子量が、上記上限を下回っていれば、防曇特性が向上する。
【0041】
ノニオン性界面活性剤は、必要により、アニオン性親水基を、適宜の割合で含むことができる。アニオン性親水基としては、例えば、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、O-硫酸基(-O-SO-)、N-硫酸基(-NH-SO-)、および、これらの塩が挙げられる。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0042】
アニオン性親水基を有するノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、および、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0043】
ノニオン性界面活性剤の含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、1.0質量%以上、好ましくは、2.0質量%以上、より好ましくは、3.0質量%以上である。また、ノニオン性界面活性剤の含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、10質量%以下、好ましくは、8.0質量%以下、より好ましくは、7.0質量%以下である。
【0044】
また、ノニオン性界面活性剤の含有割合は、多官能(メタ)アクリルモノマー100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、10質量部以上である。また、ノニオン性界面活性剤の含有割合は、多官能(メタ)アクリルモノマー100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、15質量部以下である。
【0045】
(D)ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物である。(D)ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリイソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとを、ウレタン化反応させて得られる反応生成物である。光硬化性樹脂組成物がウレタン(メタ)アクリレートを含有していれば、耐熱性に優れる樹脂層3が得られる。
【0046】
ポリイソシアネートとしては、例えば、工業的に汎用されるポリイソシアネートが挙げられ、好ましくは、ジイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートとして、より具体的には、鎖状脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートおよび芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)、および、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)およびジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。ポリイソシアネートとして、好ましくは、鎖状脂肪族ポリイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。
【0047】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、水酸基含有モノ(メタ)アクリレート、水酸基含有ジ(メタ)アクリレート、および、水酸基含有トリ(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基含有モノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシープロピル(メタ)アクリレート、3-クロロー2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-(6-ヒドロヘキサノイルオキシ)エチルアクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、および、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基含有ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、および、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基含有トリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとして、好ましくは、水酸基含有トリ(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0048】
ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルは、公知の方法で、ウレタン化反応する。これにより、ウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。
ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの配合割合、反応温度および反応時間は、必要に応じて、適宜設定される。また、ウレタン化反応では、必要に応じて、公知のウレタン化触媒および有機溶媒を使用できる。
【0049】
ウレタン(メタ)アクリレートの含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、0質量%以上、好ましくは、5.0質量%以上、より好ましくは、10質量%以上である。また、ウレタン(メタ)アクリレートの含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、15質量%以下である。
【0050】
また、ウレタン(メタ)アクリレートの含有割合は、多官能(メタ)アクリルモノマー100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、10質量部以上である。また、ウレタン(メタ)アクリレートの含有割合は、多官能(メタ)アクリルモノマー100質量部に対して、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下、より好ましくは、30質量部以下である。
【0051】
光硬化性樹脂組成物は、さらに、任意成分として、(E)光重合開始剤を含有できる。光重合開始剤としては、例えば、公知の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0052】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、α-アシロキシムエステル系化合物、フェニルグリオキシレート系化合物、ベンジル系化合物、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、有機色素系化合物、鉄-フタロシアニン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、および、アントラキノン系化合物が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。光ラジカル重合開始剤として、反応性の観点から、好ましくは、アルキルフェノン系化合物およびアシルフォスフィンオキサイド系化合物が挙げられる。
【0053】
なお、光重合開始剤として、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、Omnirad127、Omnirad184、Omnirad1173、Omnirad500、Omnirad819、および、OmniradTPO(以上、IGM resinsB.V.社製)が挙げられる。また、市販品としては、エサキュアONE、エサキュアKIP100F、エサキュアKT37、および、エサキュアKTO46(以上、ランベルティー社製)も挙げられる。
【0054】
光重合開始剤の含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、0.4質量%以上、好ましくは、0.6質量%以上、より好ましくは、1.0質量%以上である。また、光重合開始剤の含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、10質量%以下、好ましくは、6.0質量%以下、より好ましくは、4.0質量%以下である。
【0055】
光硬化性樹脂組成物は、さらに、任意成分として、(F)溶剤を含有できる。溶剤としては、例えば、水および公知の有機溶剤が挙げられる。
【0056】
溶剤の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、光硬化性樹脂組成物が溶剤を含む場合、光硬化性樹脂組成物の固形分濃度は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上である。また、光硬化性樹脂組成物の固形分濃度は、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、65質量%以下である。
【0057】
光硬化性樹脂組成物は、さらに、(G)その他の成分を含有できる。その他の成分とは、上記(A)~(F)を除く成分である。その他の成分としては、例えば、添加剤が挙げられる。添加剤としては、例えば、光重合促進剤、熱重合開始剤、増粘剤、消泡剤、発泡剤、酸化防止剤、耐光安定剤、耐熱安定剤および難燃剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0058】
光硬化性樹脂組成物は、上記の各成分を、公知の方法で混合することによって得られる。このような光硬化性樹脂組成物は、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリルモノマーと、無機粒子と、ノニオン性界面活性剤とを含有する。そのため、光硬化性樹脂組成物の硬化物は、優れた防曇性を有する。また、光硬化性樹脂組成物が、ウレタン(メタ)アクリレートを含有するため、光硬化性樹脂組成物の硬化物は、優れた耐熱性を有する。
【0059】
樹脂層3は、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含んでいる。好ましくは、樹脂層3は、光硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。樹脂層3を形成する方法は、特に制限されず、公知の光硬化法が採用される。
【0060】
より具体的には、積層体1は、例えば、以下の方法で製造される。すなわち、まず、基材2を準備する。次いで、基材2の少なくとも一方面に、光硬化性樹脂組成物を塗布し、必要に応じて、乾燥させる。これにより、光硬化性樹脂組成物を含む塗布層を形成する。
【0061】
塗布方法としては、特に制限されず、公知の方法が挙げられる。塗布方法としては、例えば、バーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、流し塗り法、刷毛塗り法、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、および、キスコート法が挙げられる。
【0062】
乾燥方法としては、特に制限されず、公知の方法が挙げられる。例えば、乾燥温度が、例えば、10℃以上、好ましくは、20℃以上である。また、乾燥温度が、例えば、200℃以下、好ましくは、100℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、30秒以上、好ましくは、1分以上である。また、乾燥時間が、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0063】
塗布層の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上である。また、塗布層の厚みは、例えば、100μm以下、好ましくは、80μm以下である。
【0064】
次いで、この方法では、塗布層に光を照射する。光としては、活性エネルギー線が挙げられ、より具体的には、例えば、α線、β線、γ線、X線、電子線、紫外線および可視光線が挙げられる。光の波長は、特に制限されないが、例えば、0.0001nm~800nmである。光として、好ましくは、紫外線が挙げられる。紫外線のピーク波長は、例えば、200nm以上、好ましくは、230nm以上、より好ましくは、240nm以上、さらに好ましくは、250nm以上である。また、紫外線のピーク波長は、例えば、450nm以下、好ましくは、445nm以下、より好ましくは、430nm以下、さらに好ましくは、400nm以下である。
【0065】
なお、光を照射する時間は、光硬化性樹脂組成物を硬化できる範囲において、適宜設定される。光の照射エネルギーは、例えば、5mJ/cm以上、好ましくは、10mJ/cm以上、より好ましくは、50mJ/cm以上である。また、光の照射エネルギーは、例えば、1000mJ/cm以下、好ましくは、500mJ/cm以下である。
【0066】
これにより、塗布層において、多官能(メタ)アクリルモノマーが架橋構造を形成し、光硬化性樹脂組成物が硬化する。
【0067】
より具体的には、光硬化性樹脂組成物の硬化では、例えば、多官能(メタ)アクリルモノマーが架橋し、ネットワーク構造を形成する。また、そのネットワーク構造中に、無機粒子およびノニオン界面活性剤が分散される。このような光重合性樹脂組成物において、無機粒子が(メタ)アクリロイル基を有する場合、無機粒子がネットワーク構造の形成に寄与する。さらに、ウレタン(メタ)アクリレートがネットワーク構造の形成に寄与する。これにより、光硬化性樹脂組成物の硬化物が得られる。その結果、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層3が得られる。
【0068】
樹脂層3の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上である。また、樹脂層3の厚みは、例えば、100μm以下、好ましくは、80μm以下である。
【0069】
そして、樹脂層3は、基材2の少なくとも一方面において、最外層として配置される。これにより、積層体1は、樹脂層3によって、防曇性および耐熱性を有する。
【0070】
なお、樹脂層3は、基材2の一方面のみに形成および配置されていてもよい。また、樹脂層3は、基材2の一方面および他方面の両面に形成および配置されていてもよい。
【0071】
そして、上記の積層体1では、光硬化性樹脂組成物が、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーと、無機粒子と、ノニオン性界面活性剤と、ウレタン(メタ)アクレートとを含有する。そのため、上記の積層体1は、優れた防曇性および耐熱性を有する。
【0072】
積層体1は、例えば、防曇材料、防汚材料、速乾燥性材料、結露防止材料および帯電防止材料として、好適に使用できる。積層体の用途として、より具体的には、例えば、光学フィルム、光ディスク、光学レンズ、眼鏡レンズ、メガネ、サングラス、ゴーグル、ヘルメットシールド、ヘッドランプ、テールランプ、窓ガラス、光学物品および光学部品の材料が挙げられる。また、積層体1は、例えば、車載カメラによる画像認識システムにおいて、好適に使用される。
【実施例
【0073】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0074】
製造例1~4(光硬化性組成物)
表1に記載の処方で、光硬化性樹脂組成物を調製した。すなわち、まず、常温常圧環境下において、界面活性剤と無機粒子とをガラス製遮光スクリュー管瓶に入れた。次いで、界面活性剤と無機粒子とを、界面活性剤が完全に溶解するまで撹拌した。撹拌後、界面活性剤と無機粒子との混合物に、多官能モノマーおよびウレタン(メタ)アクリレートを添加し、相溶させた。なお、比較例1では、ウレタン(メタ)アクリレートを添加しなかった。その後、これらの混合物に、光重合開始剤を添加し、完全に溶解させた。これにより、液状の光硬化性樹脂組成物を得た。
【0075】
実施例1~2および比較例1~2(積層体)
(1)基材
2mm厚さのガラス板に、粘着層付PETフィルム(ルミラー U483:東レ社製、厚さ100μm)を、粘着層により貼り付けた。これにより、積層基材を得た。
次いで、積層基材のPETフィルム側の表面に、プライマー(タケラック(登録商標) WS-5100)をバーコーター#5によって塗布し、120℃の送風乾燥機で乾燥させた。これにより、基材表面をプライマー処理した。なお、プライマーの乾燥厚みは3~5μmであった。
【0076】
(2)樹脂層
光硬化性樹脂組成物を、基材のプライマー処理面に、バーコーター#16によって塗布し、空気雰囲気下、80℃の送風乾燥機で5分間乾燥させた。これにより、塗布層を得た。その後、基材および塗布層を、窒素置換した容器に入れ、塗布層に紫外線を照射した。紫外線は、紫外線硬化用メタルハライドランプ(UB012-5BM アイグラフィック社製)により照射された。照射光量は、210mJ/cm-2であった。これにより、塗布層を硬化させ、基材におけるプライマー処理面の上に、光硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層を形成した。なお、樹脂層の厚みは12~15μmであった。
【0077】
これにより、基材と樹脂層とを備える積層体(ガラス板/粘着層/PETフィルム/プライマー層/樹脂層)を得た。
【0078】
<評価>
(1)防曇性
ビーカー内に純水を入れ、加温した。純水の温度が50℃に達した後、ビーカー上部に積層体を載せた。なお、樹脂層が水蒸気に接触するように、積層体を配置した。その後、樹脂層の曇りの有無を、目視により観測した。そして、曇りが確認されるまでの時間を測定した。
【0079】
(2)耐熱性
送風乾燥機を80℃に加熱した。送風乾燥機の底面に積層体を敷いた。なお、基板全体が接触するように、積層体を配置した。その後、所定時間毎に、積層体の外観を目視で観測した。そして、積層体の外観に白化やクラックが観測されるまでの時間を測定した。
【0080】
(3)重量平均分子量
ノニオン性界面活性剤の重量平均分子量(標準ポリスチレン換算)を、以下の条件で測定した。
条件
装置; Alliance(WATERS社製)
カラム;Plgel 5μm Mixed-C(測定分子量範囲;100-1000000、Polymerlab社製)
検出器;示差屈折率検出器
遊離液;テトラヒドロフラン
流量;1.0mL/min
カラム温度;40℃
検出器温度;40℃
【0081】
【表1】
【0082】
なお、表中の略語の詳細を下記する。
NKエステルA-600:多官能(メタ)アクリルモノマー、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO単位数14、新中村化学工業製
PGM-AC-2140Y:アクリル基で表面修飾されたナノシリカ、オルガノシリカゾル、分散媒プロピレングリコールモノメチルエーテル、粒子径10~15nm、日産化学製
UA-306H:ウレタンアクリレート、ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとのウレタン化反応生成物、共栄社化学製
LP-100:ノニオン性界面活性剤、重量平均分子量1154(g/mol)、第一工業製薬製
LP-70:ノニオン性界面活性剤、重量平均分子量984(g/mol)、第一工業製薬製
ペレックスOT-P:アニオン性界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、メタノール溶液、花王製
Orminard127:光重合開始剤、IGM resinsB.V.社製
図1