(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】ブロー成形装置およびブロー成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/64 20060101AFI20241015BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
B29C49/64
B29C49/06
(21)【出願番号】P 2021062629
(22)【出願日】2021-04-01
(62)【分割の表示】P 2021505438の分割
【原出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2019173693
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】堀篭 浩
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 将也
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-087651(JP,A)
【文献】特表2017-524572(JP,A)
【文献】特開平3-234520(JP,A)
【文献】米国特許第6332770(US,B1)
【文献】米国特許第7216581(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記射出成形部から離形された前記プリフォームに冷却用エアを供給して前記プリフォームを温度調整する温度調整部と、
温度調整後の前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備え、
前記温度調整部は、
前記冷却用エアを供給するコア型を第1の方向に駆動させて、前記プリフォームに前記コア型を当接させる第1の駆動部と、
前記プリフォームを収容するキャビティ型を前記第1の方向と対向する第2の方向に駆動させて、前記プリフォームを前記キャビティ型に収容する第2の駆動部と、を有し、
前記プリフォームに前記コア型が当接し、前記プリフォームが前記キャビティ型に収容される位置に対し、前記コア型の前記第2の方向への動きまたは前記キャビティ型の前記第1の方向への動きの少なくとも一方を規制するロック部が、前記第1の駆動部または前記第2の駆動部の少なくとも一方に設けられている、
ブロー成形装置。
【請求項2】
前記ロック部は前記第1の駆動部に設けられている、
請求項1に記載のブロー成形装置。
【請求項3】
前記ロック部は前記第2の駆動部に設けられている、
請求項1に記載のブロー成形装置。
【請求項4】
前記第1の駆動部は、
前記コア型を支持する第1の可動板と、
前記第1の可動板から前記第2の方向に延び、前記第1の可動板とともに移動する第1のロッドと、を有し、
前記ロック部は、前記第2の方向と交差する方向に進退するロック片を有し、
前記ロック片は、前記第1の方向に移動した前記第1のロッドと伸長時に干渉して前記第1の可動板の前記第2の方向への動きを規制する
請求項2に記載のブロー成形装置。
【請求項5】
前記第2の駆動部は、
前記キャビティ型を支持する第2の可動板と、
前記第2の可動板から前記第1の方向に延び、前記第2の可動板とともに移動する第2のロッドと、を有し、
前記ロック部は、前記第1の方向と交差する方向に進退するロック片を有し、
前記ロック片は、前記第2の方向に移動した前記第2のロッドと伸長時に干渉して前記第2の可動板の前記第1の方向への動きを規制する
請求項3に記載のブロー成形装置。
【請求項6】
有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記射出成形部から離形された前記プリフォームに冷却用エアを供給して前記プリフォームを温度調整する温度調整部と、
温度調整後の前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備え、
前記温度調整部は、
前記冷却用エアを供給するコア型を第1の方向に駆動させて、前記プリフォームに前記コア型を当接させる第1の駆動部と、
前記プリフォームを収容するキャビティ型を前記第1の方向と対向する第2の方向に駆動させて、前記プリフォームを前記キャビティ型に収容する第2の駆動部と、を有し、
前記コア型の前記第1の方向への移動範囲または前記キャビティ型の前記第2の方向への移動範囲を変更するストローク変更部が、前記第1の駆動部または前記第2の駆動部の少なくとも一方に設けられている、
ブロー成形装置。
【請求項7】
前記ストローク変更部は前記第1の駆動部に設けられている、
請求項6に記載のブロー成形装置。
【請求項8】
前記ストローク変更部は前記第2の駆動部に設けられている、
請求項6に記載のブロー成形装置。
【請求項9】
前記ストローク変更部には、前記コア型を退避させたときの前記第1の駆動部の停止位置を規定する第1のスペーサー部材が交換可能に取り付けられる、
請求項7に記載のブロー成形装置。
【請求項10】
前
記ストローク変更部には、前記キャビティ型を退避させたときの前記第2の駆動部の停止位置を規定する第2のスペーサー部材が交換可能に取り付けられる、
請求項8に記載のブロー成形装置。
【請求項11】
有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
射出成形後に離形された前記プリフォームに冷却用エアを供給して前記プリフォームを温度調整する温度調整工程と、
温度調整後の前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程部と、を有し、
前記温度調整工程では、
前記冷却用エアを供給するコア型を第1の駆動部により第1の方向に駆動させて、前記プリフォームに前記コア型を当接し、
前記プリフォームを収容するキャビティ型を第2の駆動部により前記第1の方向と対向する第2の方向に駆動させて、前記プリフォームを前記キャビティ型に収容し、
前記プリフォームに前記コア型が当接し、前記プリフォームが前記キャビティ型に収容される位置に対し、前記第1の駆動部または前記第2の駆動部の少なくとも一方に設けられたロック部が、前記コア型の前記第2の方向への動きまたは前記キャビティ型の前記第1の方向への動きの少なくとも一方を規制する、
ブロー成形方法。
【請求項12】
請求項6に記載のブロー成形装置を用いたブロー成形方法であって、
前記ストローク変更部により前記第1の駆動部の前記第1の方向への移動範囲または前記第2の駆動部の前記第2の方向への移動範囲の少なくとも一方を変更するストローク変更工程を行い、
前記ストローク変更工程の後に、
有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
射出成形後に離形された前記プリフォームに冷却用エアを供給して前記プリフォームを温度調整する温度調整工程と、
温度調整後の前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を行うブロー成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形装置およびブロー成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から樹脂製容器の製造装置の一つとして、ホットパリソン式のブロー成形装置が知られている。ホットパリソン式のブロー成形装置は、プリフォームの射出成形時の保有熱を利用して樹脂製容器をブロー成形する構成であり、コールドパリソン式と比較して多様かつ美的外観に優れた樹脂製容器を製造できる点で有利である。
【0003】
例えば、ホットパリソン式のブロー成形サイクルに関しては、成形サイクルの短縮を目的として種々の提案がなされている。これらの成形サイクルの短縮化のために、律速段階であるプリフォームの射出成形時間(射出金型でのプリフォームの冷却時間)を短縮し、射出成形後の下流工程(温度調整工程)で高熱のプリフォームの追加冷却を行うことが提案されている(例えば特許文献1参照)。射出成形後の温度調整工程で高熱のプリフォームの追加冷却を行うときには、プリフォームの外周面を冷却金型と接触させて熱交換を行うとともに、プリフォーム内には圧縮空気を流し当てて冷却する方式も知られている。
【0004】
また、この種のブロー成形装置においては、例えば、容器を賦形するブローエアによる型開きや搬送板(回転板とも称する)の浮き上がりを防止するために、ブロー成形金型の駆動装置にロック機構を設けることも提案されている(例えば特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6505344号公報
【文献】特許第3370124号公報
【文献】特許第3467341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
射出金型でのプリフォームの冷却時間を短縮して容器の成形サイクルを短縮する場合には、プリフォームの冷却前後での機械(特に温度調整装置に関連する機械)の動作時間(ドライサイクル)をできるだけ短くし、温度調整装置でプリフォームを冷却する時間を十分確保することが重要になる。
【0007】
また、射出成形後の温度調整工程でプリフォーム内に圧縮空気を流し当てて冷却をする場合、プリフォーム内に導入される圧縮空気で温度調整金型が上下に型開きする可能性がある。このような型開きを抑制するために温度調整装置のアクチュエータを大型化すると、温度調整装置の駆動速度が低下して装置の動作時間が長くなり、温度調整装置でプリフォームを冷却できる時間はその分短くなってしまう。
【0008】
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、プリフォームの冷却前後での機械の動作時間を短縮しうるブロー成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るブロー成形装置は、有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形部と、射出成形部から離形されたプリフォームに冷却用エアを供給してプリフォームを温度調整する温度調整部と、温度調整後のプリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備える。温度調整部は、冷却用エアを供給するコア型を第1の方向に駆動させて、プリフォームにコア型を挿入する第1の駆動部と、プリフォームを収容するキャビティ型を第1の方向と対向する第2の方向に駆動させて、プリフォームをキャビティ型に収容する第2の駆動部と、を有する。プリフォームにコア型が当接し、プリフォームがキャビティ型に収容される位置に対し、コア型の第2の方向への動きまたはキャビティ型の第1の方向への動きの少なくとも一方を規制するロック部が、第1の駆動部または第2の駆動部の少なくとも一方に設けられている。
【0010】
本発明の他の態様に係るブロー成形装置は、有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形部と、射出成形部から離形されたプリフォームに冷却用エアを供給してプリフォームを温度調整する温度調整部と、温度調整後のプリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備える。温度調整部は、冷却用エアを供給するコア型を第1の方向に駆動させて、プリフォームにコア型を挿入する第1の駆動部と、プリフォームを収容するキャビティ型を第1の方向と対向する第2の方向に駆動させて、プリフォームをキャビティ型に収容する第2の駆動部と、を有する。コア型の第1の方向への移動範囲またはキャビティ型の第2の方向への移動範囲を変更するストローク変更部が、第1の駆動部または第2の駆動部の少なくとも一方に設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プリフォームの冷却前後での機械の動作時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態のブロー成形装置の構成を模式的に示す図である。
【
図3】温度調整部の第1の駆動部の構成を示す図である。
【
図4】第1の駆動部の第1のロック部を示す図である。
【
図5】温度調整部の第2の駆動部の構成を示す図である。
【
図6】第2の駆動部の第2のロック部を示す図である。
【
図7】ブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態および比較例のブロー成形方法におけるプリフォームの温度変化例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0014】
図1は、本実施形態のブロー成形装置20の構成を模式的に示す図である。本実施形態のブロー成形装置20は、プリフォーム11(
図1では不図示)を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用して容器をブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式とも称する)の装置である。
【0015】
ブロー成形装置20は、射出成形部21と、温度調整部22と、ブロー成形部23と、取り出し部24と、搬送機構26とを備える。射出成形部21、温度調整部22、ブロー成形部23および取り出し部24は、搬送機構26を中心として所定角度(例えば90度)ずつ回転した位置に配置されている。
【0016】
(搬送機構26)
搬送機構26は、
図1の紙面垂直方向(Z方向)の軸を中心に回転する回転板26a(
図1では不図示)を備える。回転板は、単一の円盤状の平板部材または成形ステーション毎に分割された複数の略扇状の平板部材から構成される。回転板26aには、プリフォーム11または樹脂製容器(以下、単に容器と称する)の首部を保持するネック型27(
図1では不図示)が、所定角度ごとにそれぞれ1以上配置されている。搬送機構26は不図示の回転機構を備え、回転板26aを回転させることで、ネック型27で首部が保持されたプリフォーム11(または容器)を、射出成形部21、温度調整部22、ブロー成形部23、取り出し部24の順に搬送する。なお、搬送機構26は昇降機構(縦方向の型開閉機構)やネック型開き機構をさらに備え、回転板26aを昇降させる動作や、射出成形部21におけるプリフォーム11の型閉じや型開き(離型)に係る動作も行う。
【0017】
(射出成形部21)
射出成形部21は、それぞれ図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型を備え、プリフォーム11を製造する。射出成形部21には、プリフォーム11の原材料である樹脂材料を供給する射出装置25が接続されている。
【0018】
射出成形部21においては、上記の射出キャビティ型、射出コア型と、搬送機構26のネック型27とを型閉じしてプリフォーム形状の型空間を形成する。そして、このようなプリフォーム形状の型空間内に射出装置25から樹脂材料を流し込むことで、射出成形部21でプリフォーム11が製造される。
ここで、プリフォーム11の全体形状は、一端側が開口され、他端側が閉塞された有底円筒形状である。プリフォーム11の開口側の端部には、首部が形成されている。
【0019】
また、容器およびプリフォーム11の材料は、熱可塑性の合成樹脂であり、容器の用途に応じて適宜選択できる。具体的な材料の種類としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン:コポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPUS(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。
【0020】
なお、射出成形部21の型開きをしたときにも、搬送機構26のネック型27は開放されずにそのままプリフォーム11を保持して搬送する。射出成形部21で同時に成形されるプリフォーム11の数(すなわち、ブロー成形装置20で同時に成形できる容器の数)は、適宜設定できる。一例として、本実施形態では、1つの成形サイクルで4つのプリフォーム11を搬送するものとする。
【0021】
(温度調整部22)
温度調整部22は、射出成形部21で製造されたプリフォーム11の均温化や偏温除去、温度分布の調整を行い、プリフォーム11の温度を最終ブローに適した温度(例えば約90℃~105℃)に調整する。また、温度調整部22は、射出成形後の高温状態のプリフォーム11を冷却する機能も担う。
【0022】
図2は、温度調整部22の構成例を示す図である。
温度調整部22は、プリフォーム11に挿入(または当接)されるコア型31(エア導入出用コアまたは温調コア)と、プリフォーム11を収容可能な温度調整空間33を有するキャビティ型32(温調ポット)とを備える。また、温度調整部22は、コア型31を
図2の上下方向(Z方向)に駆動させる第1の駆動部34と、キャビティ型32を
図2の上下方向(Z方向)に駆動させる第2の駆動部35とを備える。
【0023】
図2の例では、回転板26aの下面に取り付けられているネック型固定板27aに設けられた4つのネック型27により、回転板26aには4つのプリフォーム11が保持される。温度調整部22には、コア型31と、キャビティ型32の温度調整空間33がそれぞれ4つずつ設けられ、コア型31および温度調整空間33の位置は、XY平面上でそれぞれプリフォーム11の位置と相対(対応)する。
また、コア型31および第1の駆動部34は、回転板26aの上側(例えば上部基盤)に配置され、キャビティ型32および第2の駆動部35は、回転板26aの下側(例えば機台(下部基盤))に配置されている。
【0024】
コア型31は、
図2の上下方向(Z方向)に延びる筒状の金型部材であって、プリフォーム11内に冷却ブロー用の圧縮空気(冷却用エア)を導入する給気路(不図示)と、プリフォーム11から冷却用エアを排気する排気路(不図示)とを有している。なお、冷却ブローとは、プリフォーム11の内部(中空状の胴部)に常温(20℃)以下の圧縮空気を連続的に流し、圧縮空気の対流によりプリフォーム11を内部(内面)側から冷却させるプロセスである。
【0025】
各々のコア型31は、第1の駆動部34(具体的には後述の第1の可動板41)の下面に取り付けられ、第1の駆動部34の動作によって
図2の上下方向(Z方向)に移動可能である。また、コア型31は、プリフォーム11に挿入されたときに首部の内周と密着し、プリフォーム11との間で気密を保つように構成されている。
【0026】
キャビティ型32は、第2の駆動部35の上面側に取り付けられ、第2の駆動部35の動作によって
図2の上下方向(Z方向)に移動可能である。また、キャビティ型32の上面には、温度調整空間33の開口が臨んでいる。
【0027】
キャビティ型32の温度調整空間33は、射出成形部21で製造されたプリフォーム11の外形と略同じ形状を有している。キャビティ型32の内部には、温度調整媒体の流れる流路(不図示)が形成されている。そのため、キャビティ型32の温度は、温度調整媒体により所定の温度に保たれる。
なお、キャビティ型32は、例えば、プリフォームの長手方向に沿って分割され図中Y方向に開閉する一対の割型で構成されていてもよい。
【0028】
次に、温度調整部22の第1の駆動部34の構成を説明する。
図3は、第1の駆動部34を示す図である。
図3においては、簡単のためコア型31の図示は省略している。
第1の駆動部34は、第1の可動板41と、第1の固定板42と、シャフト43と、第1のロッド44と、第1の駆動シリンダ45と、第1のロック部46と、第1のストローク変更部47とを備える。
【0029】
第1の駆動部34における第1の固定板42の下側には、少なくとも2本(好ましくは4本)のシャフト43が取り付けられている。
図3では左右一対分のシャフト43のみを示す。シャフト43は、機台28に対して所定の高さに固定された上部基盤29から上下方向に延び、第1の固定板42はシャフト43によって上部基盤29から所定の高さに固定された状態で支持される。また、第1の固定板42には、第1の駆動シリンダ45が下向きに取り付けられるともに、上下方向に延びる一対の第1のロッド44が挿通される。
【0030】
第1の固定板42の下側には、第1の可動板41が配置される。第1の可動板41には、各シャフト43が挿通されており、第1の可動板41は、シャフト43に沿って上下方向に移動可能である。また、第1の可動板41の下面には、
図2に示すようにコア型31が取り付けられる。
【0031】
第1の可動板41の上面には、第1の駆動シリンダ45によって伸長駆動するピストンロッド45a、第1のロッド44がそれぞれ固定されている。第1の駆動シリンダ45に対してピストンロッド45aが伸長すると第1の可動板41は第1のロッド44とともに下側に移動し、第1の駆動シリンダ45に対してピストンロッド45aが収縮すると第1の可動板41は第1のロッド44とともに上側に移動する。
【0032】
第1のロック部46は、第1の固定板42の上面側に2つ取り付けられている。各々の第1のロック部46は、第1のロッド44に対応する位置に設けられ、図中左右方向(X方向)に進退するロック片46aと、ロック片46aを駆動させる駆動機構46bとを有する。なお、2つの第1のロック部46の構成はいずれも同様であるため、以下の説明では一方の構成を説明し、他方の重複説明は省略する。
【0033】
図4(A)は、非ロック状態の第1のロック部46を示す図であり、
図4(B)は、ロック状態の第1のロック部46を示す図である。
図4(A)に示す非ロック状態において、第1のロック部46のロック片46aは第1のロッド44の位置から退避した位置にある。この非ロック状態では第1のロッド44はロック片46aと干渉せず、第1の可動板41は上下方向に移動可能である。
【0034】
一方、
図3(B)に示すように第1の可動板41が下方向(第1の方向)に移動してストロークの下端側に至ると、第1のロッド44の上端はロック片46aの位置よりも下側に位置する。図示を省略しているが、この状態ではコア型31がプリフォーム11に挿入され、コア型31がプリフォーム11のネック部に当接して静止する位置にある。
このとき、第1のロック部46のロック片46aを第1のロッド44の位置まで移動させて、
図4(B)に示すロック状態にすることができる。このロック状態では、第1の可動板41を上方向(第2の方向)に移動させようとすると、第1のロッド44の上端がロック片46aに突き当たって干渉する。そのため、第1のロック部46のロック状態においては、ストロークの下端側に位置している第1の可動板41の上方向への移動がロック片46aにより規制される。
【0035】
上記のように、ロック状態のときに第1のロッド44の上端がロック片46aに当接し、第1の可動板41に支持されたコア型31が移動できない状態となる。これにより、コア型31がネック型27に支持されたプリフォーム11と確実に当接(密着)した状態が形成されて気密性が向上する。この状態で、コア型31からプリフォーム11内に冷却用エアを導入することで、冷却ブローが行われる。冷却ブローを行うとコア型31に上向きの力が発生しコア型31が成形位置から上がり易いが、第1のロッド44の上端がロック片46aで強固に支持されているため、コア型31の上方向への動きが抑止される。よって、プリフォーム11とコア型31の分離が生じにくくなり、冷却用エアの漏れが生じる可能性が大幅に低減する。
【0036】
図3に戻って、第1のストローク変更部47は、第1の固定板42と第1の可動板41の間に設けられる。第1のストローク変更部47は、第1の固定板42の下面に取り付けられるストッパー48と、第1の可動板41の上面に取り付けられるスペーサー部材49とを有する。ストッパー48とスペーサー部材49は、XY平面上で相対(対応)する位置に配置され、第1の固定板42に第1の可動板41を近づけていくとストッパー48とスペーサー部材49が接触するように構成されている。
図2、
図3の例では、第1の固定板42と第1の可動板41の間に2つの第1のストローク変更部47が設けられている。
【0037】
ストッパー48は、例えばショックアブソーバで構成される。ストッパー48は、上面側が第1の固定板42に固定され、底面側でスペーサー部材49の上面を受ける。
【0038】
スペーサー部材49は、第1の可動板41の移動範囲において上限の位置(コア型31を退避させるときの停止位置)を規定するために交換可能に取り付けられる。スペーサー部材49は、例えば、全体形状が矩形状のブロックであって、第1の可動板41にボルト等で固定される。
【0039】
スペーサー部材49は、第1の可動板41の移動範囲がコア型31を進退させるのに適切な寸法となるように、上下方向の高さが異なる複数種類のうちから任意の高さの部材を選択可能である。例えば、後退時にコア型31がプリフォーム11から完全に抜けて回転板26aとの干渉が生じず、コア型31の移動量が最小となるように、スペーサー部材49の寸法が選択される。
一例として、
図3(C)は、
図3(A)と異なる高さのスペーサー部材49aを取り付けた状態を示している。
図3(C)のスペーサー部材49aの高さha2は、
図3(A)のスペーサー部材49の高さha1よりも大きい(ha2>ha1)。そのため、
図3(C)の場合には、
図3(A)と比べると第1の可動板41がより下側の位置にあるときにストッパー48とスペーサー部材49aが接触するので、第1の可動板41の移動範囲が小さくなる。つまり、プリフォーム11が短い場合は長いスペーサー部材49aを用いてコア型31の移動量を小さくし、プリフォーム11が長い場合には短いスペーサー部材49を用いてコア型31の移動量を大きくする。この構成により、プリフォーム11の長さに応じて、コア型31の移動量(ストローク量)を最適に調整することができる。
【0040】
続いて、温度調整部22の第2の駆動部35の構成を説明する。
図5は、第2の駆動部35を示す図である。
図5においては、簡単のためキャビティ型32の図示は省略している。
第2の駆動部35は、第2の可動板51と、第2の固定板52と、第2のロッド54と、第2の駆動シリンダ55と、第2のロック部56と、第2のストローク変更部57とを備える。
【0041】
第2の駆動部35における第2の固定板52は、機台(下部基盤)28の上に固定される。第2の固定板52には第2の駆動シリンダ55が上向きに取り付けられるともに、上下方向に延びる少なくとも2本(好ましくは二対(4本))の第2のロッド54が挿通される。
図5では、第2のロッド54が二対(4本)設けられた第2の駆動部35を示す。
図5では、第2の駆動部35において図中奥行方向(Y方向)に並列に配置された二対の第2のロッド54のうち手前側の一対分のみを示す。
【0042】
第2の固定板52の上側には、第2の可動板51が配置される。第2の可動板51は、上下方向に延びる2本以上(例えば4本)のシャフト(不図示)で下側から支持され、シャフトに沿って上下方向に移動可能である。また、第2の可動板51の上面には、
図2に示すようにキャビティ型32が取り付けられる。
【0043】
第2の可動板51の下面には、第2の駆動シリンダ55によって伸長駆動するピストンロッド55aと、第2のロッド54がそれぞれ固定されている。第2の駆動シリンダ55に対してピストンロッド55aが伸長すると第2の可動板51は第2のロッド54とともに上側に移動し、第2の駆動シリンダ55に対してピストンロッド55aが収縮すると第2の可動板51は第2のロッド54とともに下側に移動する。
【0044】
第2のロック部56は、第2の固定板52の上面側に2つ取り付けられている。各々の第2のロック部56は、図中左右方向(X方向)において第2のロッド54が配置される位置に設けられ、X方向に進退するロック片56aと、ロック片56aを駆動させる駆動機構56bとを有する。駆動機構56bは駆動ロッド56eを有し、駆動ロッド56eとそのロック片56aとはフリージョイント56dを介して連結される。なお、2つの第2のロック部56の構成はいずれも同様であるため、以下の説明では一方の構成を説明し、他方の重複説明は省略する。
【0045】
図6(A)は、非ロック状態の第2のロック部56を示す図であり、
図6(B)は、ロック状態の第2のロック部56を示す図である。
図6(A)に示す非ロック状態において、第2のロック部56のロック片56aは第2のロッド54の位置から退避した位置にある。この非ロック状態では第2のロッド54はロック片56aと干渉せず、第2の可動板51は上下方向に移動可能である。
【0046】
一方、
図5(B)に示すように第2の可動板51が上方向(第2の方向)に移動してストロークの上端側に至ると、第2のロッド54の下端はロック片56aの位置よりも上側に位置する。図示を省略しているが、この状態ではプリフォーム11がキャビティ型32に収容され、キャビティ型32がネック型27に当接して静止する位置にある。
このとき、第2のロック部56のロック片56aを第2のロッド54の位置まで移動させて、
図6(B)に示すロック状態にすることができる。このロック状態では、第2の可動板51を下方向(第1の方向)に移動させようとすると、第2のロッド54の下端がロック片56aに突き当たって干渉する。そのため、第2のロック部56のロック状態においては、ストロークの上端側に位置している第2の可動板51の下方向への移動がロック片56aにより規制される。
【0047】
ここで、第2のロック部56の基本構成は、第1のロック部46と同様であるが、ロック片56aを受ける受け部56cの上面側とロック片56aの下面側にそれぞれ傾斜面が形成されている点で相違がある。
【0048】
具体的には、ロック片56aを受ける受け部56cの表面56c1およびロック片56aの下側面56a1は、それぞれロック片56aの伸長する方向に向けて上側に傾いたくさび状の傾斜面をなしている。そのため、
図6(B)に示すように、第2のロック部56のロック片56aを伸長させると、受け部56cの表面56c1がロック片56aの下側面56a1に押圧されることで上側への反力が生じ、ロック片56aの伸長方向への動きが上方向への力に変換される。また、ロック片56aと駆動機構56b(駆動ロッド56e)との間には、フリージョイント56dが設けられている。そのため、X方向に進退する駆動機構56b(駆動ロッド56e)がZ方向に偏芯したり傾いたりする挙動を抑止でき、駆動機構56bの破損を抑止しつつ、ロック片56aのみを上方向に所定量、スムーズに移動させることができる。
【0049】
上記のように、ロック状態のときに第2のロッド54の下端がロック片56aに押し上げられることで、第2の可動板51に支持されたキャビティ型32も押し上げられる。これにより、キャビティ型32が回転板26aのネック型27にしっかりと当接(密着)した状態が形成される。この状態で、ネック型27に保持されたプリフォーム11がキャビティ型32に収容される。次いで、温度調整部22でプリフォーム11内に冷却用エアを導入する(冷却ブローを行う)。冷却ブローを行うとキャビティ型32に下向きの力が発生しキャビティ型32が成形位置から下がり易いが、第2のロッド54の下端がロック片56aで強固に支持されているため、キャビティ型32の下方向への動き(型開き)が抑止される。よって、プリフォーム11とキャビティ型32の間で位置ずれ(芯ずれ等)が生じにくくなり、冷却ブロー時にプリフォーム11がキャビティ型32に対して位置ずれ状態で接触して適切な温度調整が実施できなくなる可能性が大幅に低減する。なお、キャビティ型32が受ける冷却用エアによる下向きの力は、第2のロッド54の下端からロック片56aに伝達され、ロック片56aを受け部56cの表面56c1に沿って押し戻そうとする水平方向の力となる。よって、駆動機構56bの水平方向の力は、冷却用エアによる受け部56cに発生する水平方向の力より大きく設定する必要がある。
【0050】
図5に戻って、第2のストローク変更部57は、機台28と第2の可動板51の間に設けられる。第2のストローク変更部57は、機台28に取り付けられるストッパー58と、第2の可動板51の下面に取り付けられるスペーサー部材59とを有する。ストッパー58とスペーサー部材59は、XY平面上で相対(対応)する位置に配置され、機台28に第2の可動板51を近づけていくとストッパー58とスペーサー部材59が接触するように構成されている。
図2、
図5の例では、機台28と第2の可動板51の間に2つのストローク変更部57が設けられている。なお、ストッパー58は、機台28に連接して第2の可動板51を移動可能に支持する第2の固定板52に設けられても良い。
【0051】
ストッパー58は、例えばショックアブソーバで構成される。ストッパー58は、下面側が機台28に固定され、上面側でスペーサー部材59の底面を受ける。
【0052】
スペーサー部材59は、第2の可動板51の移動範囲において下限の位置(キャビティ型32を退避させるときの停止位置)を規定するために交換可能に取り付けられる。スペーサー部材59は、例えば、全体形状が矩形状のブロックであって、第2の可動板51にボルト等で固定される。
【0053】
スペーサー部材59は、第2の可動板51の移動範囲がキャビティ型32を進退させるのに適切な寸法となるように、上下方向の高さが異なる複数種類のうちから任意の高さの部材を選択可能である。例えば、後退時にプリフォーム11がキャビティ型32から完全に抜けて干渉せずに、キャビティ型32の移動量が最小となるように、スペーサー部材59の寸法が選択される。
一例として、
図5(C)は、
図5(A)と異なる高さのスペーサー部材59aを取り付けた状態を示している。
図5(C)のスペーサー部材59aの高さhb2は、
図5(A)のスペーサー部材59の高さhb1よりも大きい(hb2>hb1)。そのため、
図5(C)の場合には、
図5(A)と比べると第2の可動板51がより上側の位置にあるときにストッパー58とスペーサー部材59aが接触するので、第2の可動板51の移動範囲が小さくなる。つまり、プリフォーム11が短い場合は長いスペーサー部材59aを用いてキャビティ型32の移動量を小さくし、プリフォーム11が長い場合には短いスペーサー部材59を用いてキャビティ型32の移動量を大きくする。この構成により、プリフォーム11の長さに応じて、キャビティ型32の移動量(ストローク量)を最適に調整することができる。
【0054】
(ブロー成形部23)
図1に戻って、ブロー成形部23は、温度調整部22で温度調整されたプリフォーム11に対してブロー成形を行い、容器を製造する。
ブロー成形部23は、容器の形状に対応した一対の割型であるブローキャビティ型と、延伸ロッドを兼ねるエア導入部材(いずれも不図示)と、容器内からブローエアを排気するための排気路(
図1では不図示)を備える。ブロー成形部23は、プリフォーム11を延伸しながらブロー成形する。これにより、プリフォーム11がブローキャビティ型の形状に賦形されて容器を製造することができる。
【0055】
(取り出し部24)
取り出し部24は、ブロー成形部23で製造された容器の首部をネック型から開放し、容器をブロー成形装置20の外部へ取り出すように構成されている。
【0056】
(ブロー成形方法の説明)
図7は、本実施形態のブロー成形装置20によるブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。本実施形態では、ブロー成形方法の後述の各工程(S101~S104)が実施される前に、温度調整部における第1の駆動部34および第2の駆動部35の移動範囲を変更するストローク変更工程(S1~S2)が行われる。
【0057】
(ステップS1~S2:ストローク変更工程)
ストローク変更工程において、第1の駆動部34の移動範囲を変更するときに、以下の作業が行われる。
まず、第1の駆動部34の最大移動範囲の値から、コア型31を挿抜するのに必要なストロークを減じた値を求める。そして、第1の駆動部34で使用するスペーサー部材49として上記の求めた値に相当する高さの部材を準備する(S1:スペーサー部材の準備工程)。そして、準備したスペーサー部材49を第1の可動板41の上面に取り付ける(S2:スペーサー部材の取付工程)。これにより、第1の駆動部34の移動範囲がコア型31を挿抜するのに必要なストロークと一致するようになる。
【0058】
同様に、ストローク変更工程において、第2の駆動部35の移動範囲を変更するときに、以下の作業が行われる。
まず、第2の駆動部35の最大移動範囲の値から、キャビティ型32からプリフォーム11を挿抜するのに必要なストロークを減じた値を求める。そして、第2の駆動部35で使用するスペーサー部材59として上記の求めた値に相当する高さの部材を準備する(S1:スペーサー部材の準備工程)。そして、準備したスペーサー部材59を第2の可動板51の下面に取り付ける(S2:スペーサー部材の取付工程)。これにより、第2の駆動部35の移動範囲がキャビティ型32からプリフォーム11を挿抜するのに必要なストロークと一致するようになる。
上記のストローク変更工程が完了すると、以下に示すブロー成形方法の各工程(ブロー成形サイクル)が実行される。なお、ストローク変更工程は、ブロー成形装置20に射出成形部用金型、温度調整部用金型、ブロー成形部用金型および取り出し部用金型を取り付ける金型の取付工程時に、同時に実施されることが望ましい。
【0059】
(ステップS101:射出成形工程)
まず、射出成形部21において、射出キャビティ型、射出コア型および搬送機構26のネック型27で形成されたプリフォーム形状の型空間に射出装置25から樹脂を射出し、プリフォーム11が製造される。
【0060】
ステップS101において、樹脂充填の終了直後または樹脂充填後に設けられた最小限の冷却時間後に射出成形部21が型開きされる。つまり、プリフォーム11の外形が維持できる程度の高温状態でプリフォーム11が射出キャビティ型、射出コア型から離型される。その後、搬送機構26の回転板26aが所定角度回転し、ネック型27に保持されたプリフォーム11が温度調整部22に搬送される。
【0061】
ここで、
図8を参照して、本実施形態のブロー成形方法におけるプリフォーム11の温度変化を説明する。
図8の縦軸はプリフォームの温度を示し、
図8の横軸は時間を示す。
図8において、本実施形態のプリフォームの温度変化例は
図8中(A)で示す。また、後述する比較例(従来方法)のプリフォームの温度変化例は
図8中(B)で示す。なお、各工程間の空白は、プリフォームまたは容器の移送に要する時間であり、同一である。
【0062】
本実施形態においては、樹脂材料の融点以上の温度で樹脂材料が射出成形されると、射出成形部21では射出成形後のプリフォーム11の最小限の冷却のみを行い、温度調整部22でプリフォーム11の冷却および温度調整を行う。本実施形態において、射出成形部21で樹脂材料の射出が完了してから樹脂材料を冷却する時間(冷却時間)は、樹脂材料を射出する時間(射出時間)に対して1/2以下であることが好ましい。また、上記の樹脂材料を冷却する時間は、樹脂材料の重量に応じて、樹脂材料を射出する時間に対してより短くすることができる。樹脂材料を冷却する時間は、樹脂材料を射出する時間に対して2/5以下であるとより好ましく、1/4以下であるとさらに好ましく、1/5以下であると特に好ましい。比較例よりも冷却時間を著しく短縮させているため、プリフォームのスキン層(固化状態にある表面層)は従来よりも薄く、コア層(軟化状態または溶融状態にある内層)は従来よりも厚く形成される。つまり、比較例と比べて、スキン層とコア層との間の熱勾配が大きく、高温で保有熱が高いプリフォームが成形される。
【0063】
本実施形態では、射出成形されたプリフォームは、比較例の場合よりも高い離型温度で射出成形部21から離型され、温度調整部22へと搬送される。温度調整部22への移動に伴って、プリフォームはスキン層とコア層間の熱交換(熱伝導)による均温化が進む。また、外気との接触により、プリフォームは外表面から若干冷却される。しかし、温度調整部22への搬入時までプリフォームの温度はほぼ高温の離型温度の状態で維持される。温度調整部22では、高温の離型温度からブロー温度までプリフォームの温度が低下され、その後、ブロー成形が行われるまでプリフォームの温度はブロー温度に維持される。
なお、ブロー温度は、ブロー成形に適した温度であり、例えばPET樹脂では90℃~105℃に設定される。ただし、ブロー温度は低温の方がプリフォームの延伸配向性が良好になり容器の強度(物性)を高めることができる。そのため、ブロー温度は、例えばPET樹脂では90℃~95℃に設定することが好ましい。
【0064】
ここで、ブロー成形装置20の構造上、射出成形工程、温度調整工程、ブロー成形工程および容器取り出し工程の各時間はそれぞれ同じ長さになる。同様に、各工程間の搬送時間もそれぞれ同じ長さになる。
【0065】
一方、比較例として、射出成形工程でプリフォームの冷却を行う場合のプリフォームの温度変化例(
図8の(B))を説明する。
比較例では、射出成形部21の金型内でプリフォームをブロー温度よりも低いか略同程度の温度まで冷却する。その結果として、比較例では射出成形工程の時間が本実施形態よりも長くなる。そうすると、各工程の時間は最も長い射出成形工程の時間に合わせて設定されることから、結果的に容器の成形サイクルの時間も長くなってしまう。
【0066】
(ステップS102:温度調整工程)
続いて、温度調整部22において、プリフォーム11の温度を最終ブローに適した温度に近づけるための温度調整が行われる。
【0067】
温度調整工程においては、まず、第2の駆動部35の駆動によって、プリフォーム11がキャビティ型32の温度調整空間33内に収容される。このとき、第2のロック部56がロック状態となり、第2の可動板51に支持されているキャビティ型32は、下側への移動が規制される。
続いて、第1の駆動部34の駆動によって、プリフォーム11にコア型31が挿入される。このとき、第1のロック部46がロック状態となり、第1の可動板41に支持されたコア型31は、上側への移動が規制される。
【0068】
その後、コア型31の給気路からプリフォーム11内に冷却用エアが導入され、コア型31の排気路から冷却用エアが排気される(冷却ブローが行われる)。このような冷却用エアの対流によりプリフォーム11は内側から冷却される。このとき、プリフォーム11はキャビティ型32と接触し続けるため、外側からブロー成形に適した温度以下にならないようにプリフォーム11が温度調整かつ冷却され、さらに射出成形時に生じた偏温も低減される。なお、キャビティ型32の温度調整空間33はプリフォーム11と略同じ形状であるため、温度調整部22でプリフォーム11の形状は大きく変化しない。なお、キャビティ型32を一対の割型で構成し、冷却ブローの前に予備ブロー(最終ブロー前に、プリフォームを容器より小さいサイズに圧縮空気で一時的に膨らませるプロセス)を実施しても構わない。
【0069】
プリフォーム11の冷却および温度調整が終了すると、第1のロック部46および第2のロック部56のロック状態がいずれも解除され、キャビティ型32およびコア型31がそれぞれ退避する。そして、搬送機構26の回転板26aが所定角度回転し、ネック型27に保持された温度調整後のプリフォーム11がブロー成形部23に搬送される。
【0070】
(ステップS103:ブロー成形工程)
続いて、ブロー成形部23において、容器のブロー成形(最終ブロー)が行われる。
まず、ブロー成形金型を型閉じしてプリフォーム11を型空間に収容し、プリフォーム11の首部にブローコア型および延伸ロッドが挿入される。そして、延伸ロッドを降下させつつ、ブローコア型からプリフォーム11内にブローエアを導入する。これにより、プリフォーム11は、ブロー成形金型の型空間に密着するように膨出して賦形され、容器にブロー成形される。
【0071】
(ステップS104:容器取り出し工程)
ブロー成形が終了すると、ブロー成形金型が型開きされる。これにより、ブロー成形部23から容器が移動可能となる。
続いて、搬送機構26の回転板26aが所定角度回転し、容器が取り出し部24に搬送される。取り出し部24において、容器の首部がネック型27から開放され、容器がブロー成形装置20の外部へ取り出される。
【0072】
以上で、ブロー成形方法の一連の工程が終了する。その後、搬送機構26の回転板26aを所定角度回転させることで、上記のS101からS104の各工程が繰り返される。
【0073】
以下、本実施形態のブロー成形装置およびブロー成形方法の効果を説明する。
ホットパリソン式のプリフォームを結晶性の熱可塑性樹脂(透明の非晶質状態と白濁した結晶質状態とになりうる樹脂)を材料として成形すると、材料によっては冷却不足により白化(白濁)してしまう場合がある。例えば、PET樹脂を材料とした場合、結晶化が促進される温度帯(120℃~200℃)でプリフォームを徐冷(例えば室温で数十秒冷却)すると、球晶生成による結晶化が生じ、白化する傾向を示す。
そのため、従来は、プリフォームの射出成形型を急冷(例えば10℃で5秒)することで上記の結晶化温度帯の通過時間を短くし、射出成形工程で十分に冷却させてプリフォームの白化を抑制していた。
【0074】
これに対し、本実施形態のブロー成形方法によれば、射出成形工程(S101)でプリフォーム11の冷却工程をほとんどなくし、温度調整工程(S102)でプリフォームの冷却を行っている。温度調整工程(S102)では、プリフォーム11に冷却用エアを導入するとともにプリフォーム11をキャビティ型32に密着させて、プリフォーム11の温度調整と冷却を行う。本実施形態では、温度調整工程(S102)でプリフォーム11の温度調整と冷却を行えるため、射出成形工程(S101)においてプリフォーム11を高温の状態でも離形することができ、次のプリフォーム11の成形を早く開始することができる。すなわち、本実施形態によると、成形サイクル時間を、比較例の成形サイクル時間よりも短縮しつつ、容器を良好に成形できる。
【0075】
また、本実施形態のブロー成形方法によれば、ストローク変更工程(S1~S2)で第1の駆動部34の移動範囲がコア型31を挿抜するのに必要なストロークに調整され、第2の駆動部35の移動範囲がキャビティ型32からプリフォーム11を挿抜するのに必要なストロークに調整される。
これにより、温度調整部22の第1の駆動部34や第2の駆動部35のストロークをプリフォームの寸法に合わせて最適化でき、このような調整を行わない場合と比べて温度調整工程(S102)で第1の駆動部34や第2の駆動部35を余分に移動させずにすむ。そのため、本実施形態では、プリフォーム11の温度調整および冷却の前後で機械の動作時間が短縮される。
【0076】
換言すれば、温度調整工程での機械の動作時間を短縮することで、一定の成形サイクル時間内においてプリフォーム11の温度調整および冷却の時間をその分伸ばすことができる。そのため、本実施形態によれば、温度調整工程でのプリフォーム11の冷却効果が高まるので、成形サイクル時間の短縮も容易となる。
【0077】
また、本実施形態によれば、温度調整工程でプリフォーム11内に冷却用エアを導入して冷却する際、第1のロック部46の動作によってコア型31および第1の可動板41の上方向への移動が規制され、第2のロック部56の動作によってキャビティ型32および第2の可動板51の下方向への移動が規制される。
これにより、温度調整工程においてプリフォーム11内に冷却用エアを導入するときにコア型31やキャビティ型32の型開きを抑制できる。また、上記の型開きの対策としてアクチュエータの大型化を図る必要がない。第1のロック部46および第2のロック部56により、これらの構成を有しない標準の場合と比べて温度調整部22の金型保持力を高めることができる。
つまり、本実施形態によれば、アクチュエータの大型化に伴う装置の動作速度の低下を避けつつ、コア型31やキャビティ型32の型開きを抑制できる。しかも、本実施形態によれば、アクチュエータの大型化に伴う動作速度の低下や占有スペースの大型化なども回避できる。
【0078】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0079】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
11…プリフォーム、20…ブロー成形装置、21…射出成形部、22…温度調整部、23…ブロー成形部、31…コア型、32…キャビティ型、34…第1の駆動部、35…第2の駆動部、41…第1の可動板、44…第1のロッド、46…第1のロック部、47…第1のストローク変更部、49…スペーサー部材、51…第2の可動板、54…第2のロッド、56…第2のロック部、57…第2のストローク変更部