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特許7570985電動車両用フレーム、電動車両用バッテリーケースフレーム、および電動車両用フレームの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】電動車両用フレーム、電動車両用バッテリーケースフレーム、および電動車両用フレームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20241015BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021120875
(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公開番号】P2023016511
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 貞雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 憲一
(72)【発明者】
【氏名】橋村 徹
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-43707(JP,A)
【文献】再公表特許第2019/198673(JP,A1)
【文献】特開2021-62710(JP,A)
【文献】特開2020-196434(JP,A)
【文献】特開2015-150927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04,
B62D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車長方向に延びる一対の縦骨と、
前記一対の縦骨に支持されて車幅方向に延びるクロスメンバと
を備え、
前記クロスメンバは、互いに接合された板状の第1板部材および第2板部材を含み、
前記第1板部材は、前記一対の縦骨の一方のみに支持され、
前記第2板部材は、前記一対の縦骨の他方のみに支持され
前記第1板部材及び前記第2板部材の各々は、車長方向において互いに対向する側壁と、前記側壁の上端から車長方向に沿って延出する上壁と、前記側壁の下端から前記上端とは反対方向に延出する下壁とを有する、電動車両用フレーム。
【請求項2】
前記クロスメンバは、車幅方向の少なくとも両端部において補強部材を有している、請求項1に記載の電動車両用フレーム。
【請求項3】
前記クロスメンバは、車幅方向の少なくとも中央部において補強部材を有している、請求項1または請求項2に記載の電動車両用フレーム。
【請求項4】
車長方向に延びる一対の縦骨と、
前記一対の縦骨に支持されて車幅方向に延びるクロスメンバと
を備え、
前記クロスメンバは、互いに接合された板状の第1板部材および第2板部材を含み、
前記第1板部材は、前記一対の縦骨の一方のみに支持され、
前記第2板部材は、前記一対の縦骨の他方のみに支持され、
前記クロスメンバは、車幅方向の少なくとも両端部において補強部材を有し、
前記補強部材は、前記第1板部材および前記第2板部材の少なくとも一方に溶接されており、
前記第1板部材および前記第2板部材の少なくとも他方には、前記補強部材の溶接個所に対応して孔部が設けられている、電動車両用フレーム。
【請求項5】
車長方向に延びる一対の縦骨と、
前記一対の縦骨に支持されて車幅方向に延びるクロスメンバと
を備え、
前記クロスメンバは、互いに接合された板状の第1板部材および第2板部材を含み、
前記第1板部材は、前記一対の縦骨の一方のみに支持され、
前記第2板部材は、前記一対の縦骨の他方のみに支持され、
前記クロスメンバは、車幅方向の少なくとも中央部において補強部材を有し、
前記補強部材は、前記第1板部材および前記第2板部材の少なくとも一方に溶接されており、
前記第1板部材および前記第2板部材の少なくとも他方には、前記補強部材の溶接個所に対応して孔部が設けられている、電動車両用フレーム。
【請求項6】
車長方向に延びる一対の縦骨と、
前記一対の縦骨に支持されて車幅方向に延びるクロスメンバと
を備え、
前記クロスメンバは、互いに接合された板状の第1板部材および第2板部材を含み、
前記第1板部材は、前記一対の縦骨の一方のみに支持され、
前記第2板部材は、前記一対の縦骨の他方のみに支持され、
前記第1板部材は、前記第2板部材に向かって凹んだ形状の第1凹部を有し、
前記第2板部材は、前記第1板部材に向かって凹んだ形状の第2凹部を有し、
前記第1凹部および前記第2凹部は、互いに当接している、電動車両用フレーム。
【請求項7】
前記第1板部材および前記第2板部材は、鋼製である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電動車両用フレーム。
【請求項8】
車長方向に延びる一対の縦骨と、
前記一対の縦骨に支持されて車幅方向に延びるクロスメンバと
を備え、
前記クロスメンバは、互いに接合された板状の第1板部材および第2板部材を含み、
前記第1板部材は、前記一対の縦骨の一方のみに支持され、
前記第2板部材は、前記一対の縦骨の他方のみに支持され、
さらにトレイを有し、
前記クロスメンバは、前記トレイを介して前記一対の縦骨に支持されている、電動車両用フレーム。
【請求項9】
車長方向に延びる一対の縦骨と、
前記一対の縦骨に支持されて車幅方向に延びるクロスメンバと
を備え、
前記クロスメンバは、互いに接合された板状の第1板部材および第2板部材を含み、
前記第1板部材は、前記一対の縦骨の一方のみに支持され、
前記第2板部材は、前記一対の縦骨の他方のみに支持されている、電動車両用フレームに、バッテリーを格納した電動車両用バッテリーケースフレーム。
【請求項10】
車長方向に延びる一対の縦骨と、前記一対の縦骨に支持されて車幅方向に延びるクロスメンバを構成する板状の第1板部材および第2板部材とを準備し、
前記第1板部材を前記一対の縦骨の一方のみに支持されるように配置し、
前記第2板部材を前記一対の縦骨の他方のみに支持されるように配置し、
前記第1板部材及び前記第2板部材の各々は、車長方向において互いに対向する側壁と、前記側壁の上端から車長方向に沿って延出する上壁と、前記側壁の下端から前記上端とは反対方向に延出する下壁とを有し、
前記第1板部材と前記第2板部材の車幅方向における重複量を調整して前記クロスメンバの車幅方向の長さを前記一対の縦骨間の寸法に合わせて前記第1板部材と前記第2板部材とを接合する
ことを含む、電動車両用フレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両用フレーム、電動車両用バッテリーケースフレーム、および電動車両用フレームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車、またはその他のハイブリッド車などの電動車両は、十分な航続距離を確保するために大容量のバッテリーを搭載する必要がある一方で広い車室が求められている。これらの要求を両立するため、多くの電動車両では大容量のバッテリーをバッテリーケースに格納して車両の床下全面に搭載している。従って、路面などからの水の浸入を防止して電子部品の不具合を防止するための高いシール性が求められるとともに、内部のバッテリーを保護するために高い衝突強度が求められる。
【0003】
電動車両用バッテリーケースは、シール性を高くしてバッテリーを収容するためのトレイと、高い衝突強度を確保してトレイを保護するためのフレームとを有している。フレームは、平面視においてトレイを囲んで配置される外枠体と、外枠体を補強するためのクロスメンバとを有している。外枠体は一対の縦骨を有し、クロスメンバは一対の縦骨を接続するように配置される。このため、一対の縦骨間の寸法に合わせてクロスメンバの寸法を規定する必要がある。しかし、外枠体の製造には、溶接工程が含まれることが一般的である。溶接工程では、熱ひずみによる変形が生じ、寸法がばらつくことがある。そのため、一対の縦骨間の寸法に合わせてクロスメンバの寸法を正確に規定することは困難である。
【0004】
特許文献1には、ブラケットなどの締結部材を介して一対の縦骨とクロスメンバとを締結したフレーム部材が開示されている。締結部材を介することにより、一対の縦骨間の寸法に合わせてクロスメンバの寸法を正確に規定する必要がなく、即ちクロスメンバの寸法を一対の縦骨間の寸法に対して余裕度をもって短く設計できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-269123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のフレーム部材では、ブラケットなどの締結部材(追加部品)を必要とするため、部品点数が増加する。結果として、製造工程数の増加およびコストの増加につながる。
【0007】
本発明は、電動車両用フレーム、電動車両用バッテリーケースフレーム、および電動車両用フレームの製造方法において、一対の縦骨によってクロスメンバを支持する際にブラケットなどの追加部品を不要にするともに高精度の組み立てを実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、
車長方向に延びる一対の縦骨と、
前記一対の縦骨に支持されて車幅方向に延びるクロスメンバと
を備え、
前記クロスメンバは、互いに接合された板状の第1板部材および第2板部材を含み、
前記第1板部材は、前記一対の縦骨の一方のみに支持され、
前記第2板部材は、前記一対の縦骨の他方のみに支持され
前記第1板部材及び前記第2板部材の各々は、車長方向において互いに対向する側壁と、前記側壁の上端から車長方向に沿って延出する上壁と、前記側壁の下端から前記上端とは反対方向に延出する下壁とを有する、電動車両用フレームを提供する。
【0009】
この構成によれば、クロスメンバが単独部品ではなく第1板部材と第2板部材を含むため、第1板部材と第2板部材の車幅方向における重複量を調整して接合することにより、クロスメンバの車幅方向の長さを調整できる。従って、一対の縦骨間の寸法に合わせて第1板部材および第2板部材(即ちクロスメンバ)の寸法を事前に正確に規定する必要がなくなる。よって、一対の縦骨によってクロスメンバを支持する際に長さ調整用のブラケットなどの追加部品を不要にできるともに高精度の組み立てを実現できる。
【0010】
前記クロスメンバは、車幅方向の少なくとも両端部において補強部材を有してもよい。
【0011】
この構成によれば、クロスメンバの両端部の強度を向上できる。前述のように第1板部材と第2板部材の車幅方向における重複量を調整すると、第1板部材と第2板部材が重複して配置されない非重複領域が生じる。即ち、クロスメンバの一端の非重複領域では第1板部材のみが配置され、他端の非重複領域では第2板部材のみが配置されることとなる。非重複領域は、第1板部材および第2板部材が車幅方向において重複して配置された重複領域に比べて剛性が低下する。そのため、クロスメンバの両端部の特に非重複領域において、補強部材が配置されることで効果的な補強を実現できる。
【0012】
前記クロスメンバは、車幅方向の少なくとも中央部において補強部材を有してもよい。
【0013】
この構成によれば、外力を受けた際に変形しやすいクロスメンバの中央部を効果的に補強できる。
【0014】
車長方向に延びる一対の縦骨と、
前記一対の縦骨に支持されて車幅方向に延びるクロスメンバと
を備え、
前記クロスメンバは、互いに接合された板状の第1板部材および第2板部材を含み、
前記第1板部材は、前記一対の縦骨の一方のみに支持され、
前記第2板部材は、前記一対の縦骨の他方のみに支持され、
前記クロスメンバは、車幅方向の少なくとも両端部において補強部材を有し、
前記補強部材は、前記第1板部材および前記第2板部材の少なくとも一方に溶接されてもよく、
前記第1板部材および前記第2板部材の少なくとも他方には、前記補強部材の溶接個所に対応して孔部が設けられてもよい。
また、
車長方向に延びる一対の縦骨と、
前記一対の縦骨に支持されて車幅方向に延びるクロスメンバと
を備え、
前記クロスメンバは、互いに接合された板状の第1板部材および第2板部材を含み、
前記第1板部材は、前記一対の縦骨の一方のみに支持され、
前記第2板部材は、前記一対の縦骨の他方のみに支持され、
前記クロスメンバは、車幅方向の少なくとも中央部において補強部材を有し、
前記補強部材は、前記第1板部材および前記第2板部材の少なくとも一方に溶接されており、
前記第1板部材および前記第2板部材の少なくとも他方には、前記補強部材の溶接個所に対応して孔部が設けられてもよい。
【0015】
この構成によれば、孔部を通じて溶接工具を出し入れできるため、第1板部材または第2板部材に対して補強部材を容易に溶接できる。前述のように、第1板部材および第2板部材の車幅方向における重複量は一定でなく調整され得るため、非重複領域の大きさも変わり、補強部材の好適な配置も変更され得る。従って、第1板部材または第2板部材に対して補強部材を予め溶接しておくことが難しい場合もあることから、上記構成のように孔部を設け、溶接の自由度を高めることは有効である。ここで、上記の「補強部材の溶接個所に対応して孔部が設けられている」とは、溶接工具を出し入れして溶接可能な位置に孔部が設けられていることをいう。例えば、孔部および溶接個所が、車幅方向または車高方向において位置合わせされてもよい。
【0016】
車長方向に延びる一対の縦骨と、
前記一対の縦骨に支持されて車幅方向に延びるクロスメンバと
を備え、
前記クロスメンバは、互いに接合された板状の第1板部材および第2板部材を含み、
前記第1板部材は、前記一対の縦骨の一方のみに支持され、
前記第2板部材は、前記一対の縦骨の他方のみに支持され、
前記第1板部材は、前記第2板部材に向かって凹んだ形状の第1凹部を有してもよく、
前記第2板部材は、前記第1板部材に向かって凹んだ形状の第2凹部を有してもよく、
前記第1凹部および前記第2凹部は、互いに当接していてもよい。
【0017】
この構成によれば、第1凹部および第2凹部において、第1板部材および第2板部材が互いに支持し合う構成となっているため、クロスメンバの強度を向上できる。
【0018】
前記第1板部材および前記第2板部材は、鋼製であってもよい。
【0019】
この構成によれば、高強度かつ低コストのクロスメンバを実現できる。
【0020】
車長方向に延びる一対の縦骨と、
前記一対の縦骨に支持されて車幅方向に延びるクロスメンバと
を備え、
前記クロスメンバは、互いに接合された板状の第1板部材および第2板部材を含み、
前記第1板部材は、前記一対の縦骨の一方のみに支持され、
前記第2板部材は、前記一対の縦骨の他方のみに支持され、
前記電動車両用フレームは、さらにトレイを有してもよく、
前記クロスメンバは、前記トレイを介して前記一対の縦骨に支持されていてもよい。
【0021】
この構成によれば、トレイを使用することにより路面などからの水の浸入を防止して電子部品の不具合を防止するための高いシール性を確保できるとともに、クロスメンバによってトレイを補強できる。
【0022】
本発明の第2の態様は、
車長方向に延びる一対の縦骨と、
前記一対の縦骨に支持されて車幅方向に延びるクロスメンバと
を備え、
前記クロスメンバは、互いに接合された板状の第1板部材および第2板部材を含み、
前記第1板部材は、前記一対の縦骨の一方のみに支持され、
前記第2板部材は、前記一対の縦骨の他方のみに支持されている、電動車両用フレームに、バッテリーを格納した電動車両用バッテリーケースフレームを提供する。
【0023】
この構成によれば、前述のように電動車両用バッテリーケースフレームにおいて、一対の縦骨によってクロスメンバを支持する際に長さ調整用のブラケットなどの追加部品を不要にできるともに高精度の組み立てを実現できる。
【0024】
本発明の第3の態様は、
車体の車幅方向両外側に配置されて車長方向に延びる一対の縦骨と、前記一対の縦骨に支持されて車幅方向に延びるクロスメンバを構成する板状の第1板部材および第2板部材とを準備し、
前記第1板部材を前記一対の縦骨の一方のみに支持されるように配置し、
前記第2板部材を前記一対の縦骨の他方のみに支持されるように配置し、
前記第1板部材及び前記第2板部材の各々は、車長方向において互いに対向する側壁と、前記側壁の上端から車長方向に沿って延出する上壁と、前記側壁の下端から前記上端とは反対方向に延出する下壁とを有し、
前記第1板部材と前記第2板部材の車幅方向における重複量を調整して前記クロスメンバの車幅方向の長さを前記一対の縦骨間の寸法に合わせて前記第1板部材と前記第2板部材とを接合する
ことを含む、電動車両用フレームの製造方法を提供する。
【0025】
この方法によれば、上記のように第1板部材と前記第2板部材の車幅方向における重複量を調整することで、一対の縦骨間の寸法に合わせて第1板部材および第2板部材(クロスメンバ)の寸法を事前に正確に規定する必要がなくなる。従って、一対の縦骨によってクロスメンバを支持する際に長さ調整用のブラケットなどの追加部品を不要にできるともに高精度の組み立てを実現できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電動車両用フレーム、電動車両用バッテリーケースフレーム、および電動車両用フレームの製造方法において、一対の縦骨によってクロスメンバを支持する際にブラケットなどの追加部品を不要にできるともに高精度の組み立てを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係る電動車両用バッテリーケースフレームを搭載した電気自動車の側面図。
図2】電動車両用バッテリーケースの部分的な概略断面図。
図3】フレームの斜視図。
図4】クロスメンバの斜視図。
図5】クロスメンバの正面図。
図6】外枠体の斜視図。
図7】変形例におけるトレイと外枠体を示す斜視図。
図8図7に示すトレイと外枠体にクロスメンバを組み合わせた状態を示す斜視図。
図9】第2実施形態におけるクロスメンバを示す正面図。
図10】第2実施形態におけるクロスメンバを示す斜視図。
図11】第3実施形態におけるクロスメンバを示す斜視図。
図12図11のA-A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1を参照して、電動車両1は、バッテリー30から供給される電力によってモータを駆動させて走行する車両である。電動車両1は、電力で走行する車両であり、例えば、電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車、またはその他のハイブリッド車等であり得る。車両の種類については、特に限定されず、乗用車、トラック、作業車、またはその他のモビリティ等であり得る。以下では、電動車両1として乗用車タイプの電気自動車の場合を例に挙げて説明する。
【0030】
電動車両1は、車体前部10に不図示のモータおよび高電圧機器等を搭載している。また、電動車両1は、車体中央部20の車室Rの床下の概ね全面にバッテリー30を格納した電動車両用バッテリーケース100(以下、単にバッテリーケース100ともいう。)を搭載している。なお、図1中、電動車両1の前後方向(車長方向)をX方向で示し、上下方向(車高方向)をZ方向で示している。以降の図でも同表記とし、図2以降で左右方向(車幅方向)をY方向で示す。
【0031】
図2を参照して、バッテリーケース100は、車幅方向においてロッカー部材200の内側に配置され、ロッカー部材200に支持されている。ロッカー部材200は、電動車両1(図1参照)の車幅方向の両端下部において車長方向に延びる骨格部材である。ロッカー部材200は、複数枚の金属板が張り合わされて形成されており、電動車両1の側方からの衝撃に対して車室Rおよびバッテリーケース100を保護する機能を有する。
【0032】
図3を併せて参照して、バッテリーケース100は、電動車両用バッテリーケースフレーム110(以降、単にフレーム110ともいう。)と、フレーム110を上下から挟み込むように配置されるトップカバー130およびアンダーカバー140とを備える。
【0033】
フレーム110は、バッテリーケース100の骨格をなす枠状の部材である。フレーム110は、例えば、鋼板部品、アルミ合金押出品、アルミ合金鋳造品、マグネシウム合金押出品、マグネシウム合金鋳造品、またはそれらの組み合わせからなる。フレーム110は、平面視において矩形の外枠体111と、外枠体111内で車幅方向に延びるクロスメンバ112とを備える。
【0034】
外枠体111は、一対の横骨111a,111bと、一対の縦骨111c,111dとを有している。一対の横骨111a,111bは、バッテリー30(図2参照)の車長方向両外側に配置されて車幅方向に延びている。一対の縦骨111c,111dは、バッテリー30(図2参照)の車幅方向両外側に配置されて車長方向に延びている。一対の横骨111a,111bは、一対の縦骨111c,111dの間に配置され、一対の縦骨111c,111dによって支持されている。一対の縦骨111c,111dは、車長方向に垂直な断面において概略L字形をしている。一対の縦骨111c,111dの内部は、中空状となっており、複数の部屋に仕切られている。詳細を図示しないが、一対の横骨111a,111bの内部もまた同様に、中空状となっており、複数の部屋に仕切られている。
【0035】
本実施形態では、クロスメンバ112は、一対の横骨111a,111bと平行に車幅方向に延びており、等間隔で3本設けられている。クロスメンバ112は、一対の縦骨111c,111dによって支持されている。クロスメンバ112は、バッテリーケース100の強度を向上させる機能を有する。特に、クロスメンバ112によって、電動車両1(図1参照)の側方からの衝突に対する強度が向上し得る。なお、クロスメンバ112の配置および本数等は任意に設定され得る。
【0036】
図4,5を併せて参照して、クロスメンバ112の構造を詳細に説明する。
【0037】
クロスメンバ112は、互いに接合された板状の第1板部材113および第2板部材114を含んでいる。
【0038】
第1板部材113は、一対の縦骨111c,111d(図3参照)の一方111cのみによって支持されている。本実施形態では、第1板部材113は、一対の縦骨111c,111dの他方111dには接合されずに一方111cに接合されている。
【0039】
第2板部材114は、一対の縦骨111c,111d(図3参照)の他方111dのみによって支持されている。本実施形態では、第2板部材114は、一対の縦骨111c,111dの一方111cには接合されずに他方111dに接合されている。
【0040】
本実施形態では、第1板部材113および第2板部材114は、例えば鋼製である。これにより、高強度かつ低コストのクロスメンバ112を実現できる。
【0041】
第1板部材113は、車幅方向から見て概略S字形をしている。第1板部材113は、上面を構成する上壁113aと、下面を構成する下壁113bと、上壁113aおよび下壁113bを接続する側壁113cとを有している。また、下壁113bおよび側壁113cの一端からは、一対の縦骨111c,111dの一方111cへの接続のための延出部113d,113eがそれぞれ延出している。なお、下壁113bおよび側壁113cの他端からは延出部は延出していない。
【0042】
第2板部材114は、車幅方向から見て概略Z字形をしている。第2板部材114は、上面を構成する上壁114aと、下面を構成する下壁114bと、上壁114aおよび下壁114bを接続する側壁114cとを有している。また、下壁114bおよび側壁114cの一端からは、一対の縦骨111c,111dの他方111dへの接続のための延出部114d,114eがそれぞれ延出している。なお、下壁114bおよび側壁114cの他端からは延出部は延出していない。
【0043】
本実施形態では、上壁113aおよび上壁114aが複数点でスポット溶接されることにより、第1板部材113および第2板部材114が接合されている。
【0044】
図2を再び参照して、フレーム110の内部にはバッテリー30が配置される。バッテリー30は、アンダーカバー140に載置されるとともに、フレーム110の上方からトップカバー130によって閉じられることで格納される。図示の例では、トップカバー130は、フレーム110に対してねじで固定されている。トップカバー130の上方には、車室Rの床面を構成するフロアパネル300と、車室Rにおいて車幅方向に延びるフロアクロスメンバ400とが配置されている。アンダーカバー140は、フレーム110にねじ止めされ、バッテリー30を下方から支持する。
【0045】
上記の構成を有するフレーム110の製造方法を説明する。
【0046】
図6を参照して、一対の横骨111a,111bと、一対の縦骨111c,111dとを溶接して外枠体111を形成する。このとき、クロスメンバ112(図4参照)は、未だ接合されていない。
【0047】
図3を参照して、上記外枠体111に対し、延出部113d,113eにおいて、第1板部材113を一対の縦骨111c,111dの一方111cのみに支持されるように一方111cのみに直接的に接合する。また、延出部114d,114e(図4参照)において、第2板部材114を一対の縦骨111c,111dの他方111dのみに支持されるように他方111dのみに直接的に接合する。これらの接合は、任意の接合手段によって達成され得る。接合手段は、例えば溶接またはボルト締結であってもよい。このとき、第1板部材113および第2板部材114は、未だ接合されていない。
【0048】
図4,5を参照して、第1板部材113の上壁113aと、第2板部材114の上壁114aとを溶接する。このとき、第1板部材113と第2板部材114の車幅方向における重複量を調整してクロスメンバ112の車幅方向の長さを一対の縦骨111c,111d間の寸法に合わせて第1板部材113と第2板部材114とを接合する。具体的には、第1板部材113と第2板部材114を車幅方向にずらして配置することで、第1板部材113および第2板部材114が重複して配置される重複領域D1が車幅方向の中央部に設けられる。これに伴い、第1板部材113のみが配置される非重複領域D2が車幅方向の一端に設けられ、第2板部材114のみが配置される非重複領域D3が車幅方向の他端に設けられる。重複領域D1を小さくするとともに非重複領域D2,D3を大きくすることで、クロスメンバ112の長さを長くできる。反対に、重複領域D1を大きくするとともに非重複領域D2,D3を小さくすることで、クロスメンバ112の長さを短くできる。このようにして、長さを調整されたクロスメンバ112が外枠体111(詳細には一対の縦骨111c,111d)に接合され、フレーム110が製造される。
【0049】
次いで、上記の構成を有するバッテリーケース100の製造方法を説明する。
【0050】
図2を参照して、前述のようにして製造されたフレーム110に対して、アンダーカバー140を下方からねじ止めによって固定する。固定されたアンダーカバー140に対してバッテリー30を載置し、上方からトップカバー130をフレーム110に対してねじ止めによって固定する。このようにしてバッテリーケース100が製造される。
【0051】
本実施形態によれば、クロスメンバ112が単独部品ではなく第1板部材113と第2板部材114を含む。第1板部材113と第2板部材114の車幅方向における重複量を調整して接合することにより、クロスメンバ112の車幅方向の長さを調整できる。従って、一対の縦骨111c,111d間の寸法に合わせて第1板部材113および第2板部材114(即ちクロスメンバ112)の寸法を事前に正確に規定する必要がなくなる。よって、一対の縦骨111c,111dによってクロスメンバ112を支持する際に長さ調整用のブラケットなどの追加部品を不要にできるともに高精度の組み立てを実現できる。
【0052】
(変形例)
図7,8を参照して、上記実施形態の変形例として、フレーム110は、トレイ120を有してもよい。図7はクロスメンバ112を接合する前の状態を示し、図8はクロスメンバ112を接合した後の状態を示している。
【0053】
図7を参照して、トレイ120は、バッテリー30を収容するバスタブ状の部材であり、例えば、アルミニウム合金製、鋼板製またはマグネシウム合金製である。トレイ120は、外縁部において水平方向(X,Y方向)へ延びるフランジ部121と、フランジ部121と連続して凹形状を有する収容部122とを備える。収容部122は、バッテリー30を収容する部分である。
【0054】
組み立ての際には、まず図7に示すようにトレイ120を外枠体111に嵌めて接合する。接合手段は、例えば溶接またはボルト締結であってもよい。トレイ120と外枠体111が組み合わされた状態では、トレイ120のフランジ部121が外枠体111の上面に載置されるとともに、トレイ120の収容部122が外枠体111内に配置される。
【0055】
次いで、図8に示すようにクロスメンバ112を接合する。クロスメンバ112は、トレイ120を介して一対の縦骨111c,111dに支持されるように配置される。即ち、第1板部材113は、トレイ120を介して、一対の縦骨111c,111dの一方111cのみに支持されるように配置される。また、第2板部材114は、トレイ120を介して、一対の縦骨111c,111dの他方111dのみに支持されるように配置される。この場合、クロスメンバ112は、一対の縦骨111c,111dに直接接合されず、トレイ120に接合されるため、一対の縦骨111c,111dに間接的に支持されることとなる。
【0056】
本変形によれば、トレイ120を使用することにより路面などからの水の浸入を防止して電子部品の不具合を防止するための高いシール性を確保できるとともに、クロスメンバ112によってトレイ120を補強できる。
【0057】
(第2実施形態)
図9,10を参照して、第2実施形態では、クロスメンバ112が補強部材115を有している。補強部材115に関連する構成以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態と実質的に同じ部分については説明を省略する場合がある。
【0058】
本実施形態では、車長方向において、第1板部材113と第2板部材114との間に補強部材115が配置されている。
【0059】
本実施形態では、補強部材115は、車幅方向から見てハット形に形成されている。補強部材115は、例えば鋼板製である。補強部材115は、第1板部材113および第2板部材114の両方に当接している。従って、補強部材115は、第1板部材113および第2板部材114の両方を補強している。
【0060】
好ましくは、クロスメンバ112は、車幅方向の少なくとも両端部S1,S2において補強部材115を有している。また好ましくは、クロスメンバ112は、車幅方向の少なくとも中央部S3において補強部材115を有している。図示の例では、クロスメンバ112が車幅方向に均等に5つの領域に分割されており、両端部S1,S2が両端の領域として示され、中央部S3が中央の領域として示されている。
【0061】
本実施形態では、補強部材115は、車幅方向においてクロスメンバ112の全体にわたって配置されている。代替的には、補強部材115は、両端部S1,S2のみに配置されてもよいし、中央部S3のみに配置されてもよい。また、補強部材115は、両端部S1,S2および中央部S3のみに配置されてもよい。
【0062】
本実施形態では、補強部材115は、第2板部材114に対して複数点でスポット溶接されている。第1板部材113には、補強部材115の溶接個所W1~W6に対応して孔部113f~113kが設けられている。具体的には、溶接工具(図示せず)を挿入して溶接個所W1~W6を溶接可能な位置に孔部113f~113kが設けられている。図示の例では、孔部113f~113kと溶接個所W1~W6とが、車幅方向および車高方向においてそれぞれ位置合わせされている。
【0063】
本実施形態によれば、クロスメンバ112の両端部S1,S2に補強部材115を配置し、両端部S1,S2の強度を向上できる。第1板部材113と第2板部材114の車幅方向における重複量を調整すると、第1板部材113と第2板部材114が重複して配置されない非重複領域D2,D3(図4参照)が生じる。非重複領域D2,D3は、重複領域D1に比べて剛性が低下する。そのため、クロスメンバ112の両端部S1,S2の特に非重複領域D2,D3において、補強部材115が配置されることで効果的な補強を実現できる。
【0064】
また、クロスメンバ112の中央部S3に補強部材115を配置し、外力を受けた際に変形しやすいクロスメンバ112の中央部S3を効果的に補強できる。
【0065】
また、孔部113f~113kを通じて溶接工具を出し入れできるため、第2板部材114に対して補強部材115を容易に溶接できる。前述のように、第1板部材113および第2板部材114の車幅方向における重複量は一定でなく調整され得るため、非重複領域D2,D3(図4参照)の大きさも変わり、補強部材115の好適な配置も変更され得る。従って、第2板部材114に対して補強部材115を予め溶接しておくことが難しい場合もあることから、本実施形態のように孔部113f~113kを設け、溶接の自由度を高めることは有効である。また、第1板部材113に補強部材115を溶接する場合、第2板部材114に孔部を設けてもよい。また、第1板部材113と第2板部材114の両方に補強部材115を溶接する場合、第1板部材113と第2板部材114の両方に孔部を設けてもよい。
【0066】
(第3実施形態)
図11,12を参照して、第3実施形態では、クロスメンバ112が車幅方向の中央部において部分的に窄められている。これに関する構成以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態と実質的に同じ部分については説明を省略する場合がある。
【0067】
本実施形態では、第1板部材113は、車幅方向の中央部において車長方向に凹んだ形状の第1凹部113lを有している。第2板部材114は、車幅方向の中央部において車長方向に凹んだ形状の第2凹部114fを有している。第1凹部113lおよび第2凹部114fは、互いに当接している。これにより、上壁113a,114aに加えて第1凹部113lおよび第2凹部114fにおいても第1板部材113および第2板部材114が互いに支持し合う構成になっている。
【0068】
本実施形態によれば、第1凹部113lおよび第2凹部114fにおいて、第1板部材113および第2板部材114が互いに支持し合う構成となっているため、クロスメンバ112の車幅方向の中央部の強度を向上できる。
【0069】
本実施形態では、第1凹部113lおよび第2凹部114fがクロスメンバ112の車幅方向の中央部に形成されている例を示しているが、第1凹部113lおよび第2凹部114fの位置は特に限定されず、任意の位置に形成され得る。
【0070】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態および変形例の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。また、電動車両用バッテリーケースフレームを例に実施形態を説明したが、その他の電動車両用フレーム、例えば車両構造などに使用することも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 電動車両
10 車体前部
20 車体中央部
30 バッテリー
100 バッテリーケース(電動車両用バッテリーケース)
110 フレーム(電動車両用バッテリーケースフレーム、電動車両用フレーム)
111 外枠体
111a,111b 横骨
111c,111d 縦骨
112 クロスメンバ
113 第1板部材
113a 上壁
113b 下壁
113c 側壁
113d,113e 延出部
113f~113k 孔部
113l 第1凹部
114 第2板部材
114a 上壁
114b 下壁
114c 側壁
114d,114e 延出部
114f 第2凹部
115 補強部材
120 トレイ
121 フランジ部
122 収容部
130 トップカバー
140 アンダーカバー
200 ロッカー部材
300 フロアパネル
400 フロアクロスメンバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12