(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】無線通信の遅延を低減する制御装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 72/0453 20230101AFI20241015BHJP
H04W 8/00 20090101ALI20241015BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20241015BHJP
H04W 72/0446 20230101ALI20241015BHJP
H04W 72/21 20230101ALI20241015BHJP
H04W 72/541 20230101ALI20241015BHJP
【FI】
H04W72/0453
H04W8/00 110
H04W16/28
H04W72/0446
H04W72/21
H04W72/541
(21)【出願番号】P 2021131328
(22)【出願日】2021-08-11
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍司
(72)【発明者】
【氏名】柴山 昌也
(72)【発明者】
【氏名】梅原 雅人
【審査官】松▲崎▼ 祐季
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-062516(JP,A)
【文献】国際公開第2021/052581(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/065893(WO,A1)
【文献】特表2019-528613(JP,A)
【文献】国際公開第2020/236429(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/066622(WO,A1)
【文献】特開2002-077982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0164622(US,A1)
【文献】国際公開第2018/030211(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4、6
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置であって、
事前定義された複数のタイムスロットのうちの一部である第1のタイムスロットが下りリンクの
第1の周波数リソースと上りリンクの
第2の周波数リソース
であって前記第1の周波数リソースと異なる前記第2の周波数リソースとを
共通のタイミングにおいて含むように事前に設定された時分割複信(TDD)を用いて通信を行う基地局装置に複数の端末装置が接続している場合に、当該複数の端末装置のそれぞれと前記基地局装置との間の伝送路の状態に対応する第1の情報と、当該複数の端末装置のそれぞれと当該基地局装置との間の距離に対応する第2の情報との少なくともいずれかに基づいて、前記複数の端末装置の中から、前記第1のタイムスロットにおいて、下りリンクの通信を行う第1の端末装置と、上りリンクの通信を行う第2の端末装置とを特定する特定手段と、
前記第1の端末装置との下りリンクの通信と、前記第2の端末装置との上りリンクの通信とを前記第1のタイムスロットにおいて行うように前記基地局装置を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記第1の情報は、前記複数の端末装置のそれぞれと前記基地局装置との間の伝送路の状態を示す値を含み、
前記特定手段は、前記第1の端末装置に関する伝送路の状態を示す値と前記第2の端末装置に関する伝送路の状態を示す値との相関値が所定値を超えないように前記第1の端末装置および前記第2の端末装置を特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記複数の端末装置のそれぞれから送信され前記基地局装置において受信されたサウンディング参照信号(SRS)に基づいて、前記複数の端末装置のそれぞれと前記基地局装置との間の伝送路の状態を示す値が取得される、ことを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1の情報は、前記複数の端末装置のそれぞれに関するプリコーディング・マトリクス・インジケータ(PMI)を含み、
前記特定手段は、前記第1の端末装置に関するPMIが前記第2の端末装置に関するPMIと異なるように前記第1の端末装置および前記第2の端末装置を特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記特定手段は、さらに、前記第1の端末装置に関するPMIに対応する第1のビームと、前記第2の端末装置に関するPMIに対応する第2のビームとの方向の差が所定のレベルを超えるように前記第1の端末装置および前記第2の端末装置を特定する、ことを特徴とする請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第2の情報は、前記複数の端末装置のそれぞれと前記基地局装置との間の距離を示す値を含み、
前記特定手段は、前記第1の端末装置と前記基地局装置との間の第1の距離を示す値と、前記第2の端末装置と前記基地局装置との間の第2の距離を示す値との差の大きさが所定の閾値以上となるような前記第1の端末装置および前記第2の端末装置を特定する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記第2の情報は、前記複数の端末装置のそれぞれにおける、前記基地局装置から送信された所定の信号の受信電力を示す値を含み、
前記特定手段は、前記第1の端末装置における第1の受信電力と、前記第2の端末装置における第2の受信電力との差の大きさが所定の閾値以上となるような前記第1の端末装置および前記第2の端末装置を特定する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記所定の信号は参照信号であり、前記第2の情報は、参照信号受信電力(RSRP)を含む、ことを特徴とする請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記第2の情報は、タイミングアドバンス(TA)の値を含み、
前記特定手段は、前記第1の端末装置における第1のTAと、前記第2の端末装置における第2のTAとの差の大きさが所定の閾値以上となるような前記第1の端末装置および前記第2の端末装置を特定する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記特定手段は、前記第1の情報と前記第2の情報とのいずれにも基づかずに上りリンクの通信と下りリンクの通信とをそれぞれ実行する2つの通信装置が特定されて通信が行われた際に、当該下りリンクの通信の通信品質が劣化したことに応じて、前記第1の情報と前記第2の情報との少なくともいずれかに基づく前記第1の端末装置と前記第2の端末装置との特定を行う、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記特定手段は、前記第1の端末装置における通信における通信品質が劣化したことに応じて、前記第1の情報と前記第2の情報との少なくともいずれかに基づいて、上りリンクの通信と下りリンクの通信とをそれぞれ実行する2つの通信装置を再度特定する、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記特定手段は、前記基地局装置における下りリンクの通信の成功率に基づいて、前記通信品質が劣化したか否かを判定する、ことを特徴とする請求項10又は11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記特定手段は、前記基地局装置における下りリンクの通信の通信速度の低下があったか否かに基づいて、前記通信品質が劣化したか否かを判定する、ことを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項14】
制御装置によって実行される制御方法であって、
事前定義された複数のタイムスロットのうちの一部である第1のタイムスロットが下りリンクの
第1の周波数リソースと上りリンクの
第2の周波数リソース
であって前記第1の周波数リソースと異なる前記第2の周波数リソースとを
共通のタイミングにおいて含むように事前に設定された時分割複信(TDD)を用いて通信を行う基地局装置に複数の端末装置が接続している場合に、当該複数の端末装置のそれぞれと前記基地局装置との間の伝送路の状態に対応する第1の情報と、当該複数の端末装置のそれぞれと当該基地局装置との間の距離に対応する第2の情報との少なくともいずれかに基づいて、前記複数の端末装置の中から、前記第1のタイムスロットにおいて、下りリンクの通信を行う第1の端末装置と、上りリンクの通信を行う第2の端末装置とを特定することと、
前記第1の端末装置との下りリンクの通信と、前記第2の端末装置との上りリンクの通信とを前記第1のタイムスロットにおいて行うように前記基地局装置を制御することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項15】
制御装置に備えられたコンピュータに、
事前定義された複数のタイムスロットのうちの一部である第1のタイムスロットが下りリンクの
第1の周波数リソースと上りリンクの
第2の周波数リソース
であって前記第1の周波数リソースと異なる前記第2の周波数リソースとを
共通のタイミングにおいて含むように事前に設定された時分割複信(TDD)を用いて通信を行う基地局装置に複数の端末装置が接続している場合に、当該複数の端末装置のそれぞれと前記基地局装置との間の伝送路の状態に対応する第1の情報と、当該複数の端末装置のそれぞれと当該基地局装置との間の距離に対応する第2の情報との少なくともいずれかに基づいて、前記複数の端末装置の中から、前記第1のタイムスロットにおいて、下りリンクの通信を行う第1の端末装置と、上りリンクの通信を行う第2の端末装置とを特定させ、
前記第1の端末装置との下りリンクの通信と、前記第2の端末装置との上りリンクの通信とを前記第1のタイムスロットにおいて行うように前記基地局装置を制御させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルラ通信システムにおける無線通信の遅延低減技術に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ通信システムによる低遅延通信が要求されており、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)では、超高信頼および低遅延通信(Ultra-Reliable and Low Latency Communications、URLLC)を実現するための技術検討が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、セルラ通信システムにおける無線通信の遅延を低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様による制御装置は、事前定義された複数のタイムスロットのうちの一部である第1のタイムスロットが下りリンクの第1の周波数リソースと上りリンクの第2の周波数リソースであって前記第1の周波数リソースと異なる前記第2の周波数リソースとを共通のタイミングにおいて含むように事前に設定された時分割複信(TDD)を用いて通信を行う基地局装置に複数の端末装置が接続している場合に、当該複数の端末装置のそれぞれと前記基地局装置との間の伝送路の状態に対応する第1の情報と、当該複数の端末装置のそれぞれと当該基地局装置との間の距離に対応する第2の情報との少なくともいずれかに基づいて、前記複数の端末装置の中から、前記第1のタイムスロットにおいて、下りリンクの通信を行う第1の端末装置と、上りリンクの通信を行う第2の端末装置とを特定する特定手段と、前記第1の端末装置との下りリンクの通信と、前記第2の端末装置との上りリンクの通信とを前記第1のタイムスロットにおいて行うように前記基地局装置を制御する制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、セルラ通信システムにおける無線通信の遅延を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】リソースの上りリンク/下りリンクの通信への割り当ての例を示す図である。
【
図3】通信を行う端末装置の選択を説明する図である。
【
図4】通信を行う端末装置の選択を説明する図である。
【
図5】基地局装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図7】基地局装置が実行する処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0008】
(通信システムの構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成の一例を示す。無線通信システムは、例えば、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)で規定された第5世代(5G)のセルラ無線通信規格に従う無線通信システムである。なお、これは一例であり、他の無線通信システムが用いられてもよい。無線通信システムは、例えば、基地局装置101と、端末装置102および端末装置103とを含む。基地局装置101と、端末装置102および端末装置103との間の通信は、OFDMA(直交周波数分割多元接続)等の、周波数軸上に送信対象の信号をマッピングしてフーリエ変換を行うことによって時間領域の信号を生成する手法を用いて行われうる。なお、
図1は、説明を簡単にするために少数の基地局装置および端末装置のみを示しているが、当然にこれらより多数の基地局装置および端末装置が存在しうる。
【0009】
本無線通信システムでは、基地局装置と端末装置との間の通信に、時分割複信(TDD)が用いられるものとする。TDDでは、共通の周波数リソースをタイムスロットに分割して、複数のタイムスロットが、それぞれ、上りリンク(端末装置から基地局装置へ向かう方向のリンク)と下りリンク(基地局装置から端末装置へ向かう方向のリンク)とのいずれかに割り当てられる。ここで、端末装置が上りリンクでデータを送信する際には、基地局装置へスケジューリングリクエスト(SR)を送信し、基地局装置がバッファステータスレポート(BSR)を報告させるために端末装置に無線リソースを割り当て、端末装置がBSRをその無線リソースで送信し、基地局装置がそのBSRに基づいてデータ送信用の無線リソースを割り当て、端末装置がその無線リソースでデータを送信する、という手順が発生する。このとき、TDDを用いるシステムでは、上りリンクリソースで基地局装置へSRが送信された後、下りリンクリソースでBSRのための無線リソース割り当てが端末装置へ通知され、その後の上りリンクリソースでBSRが基地局装置へ送信され、その後の下りリンクリソースでデータ送信のための無線リソース割り当てが行われ、その後の上りリンクリソースでデータが送信される。このため、端末装置がSRを送信してからデータが実際に送信されるまでの期間が長期化してしまいうる。
【0010】
このため、本実施形態では、
図2のように、ある周波数リソースにおいて、他の周波数リソースで下りリンク(DL)に割り当てられているタイムスロットを、上りリンク(UL)のために割り当てるようにする。なお、
図2では、コンポーネントキャリア(CC)の周波数範囲の中央に、上りリンクの通信にのみ使用される周波数リソースを設けた例を示している。このように、第1の周波数リソースにおいて下りリンクに割り当てられているタイムスロットを、第2の周波数リソースで上りリンクに割り当てることにより、上述の期間を短縮することができる。なお、
図2のようなタイムスロットの上りリンクの通信および下りリンクの通信への割り当ては一例であり、これ以外のタイムスロットの割り当てが用いられてもよい。例えば、CCの中央以外の部分における第1の周波数リソースにおける下りリンクと上りリンクとの割り当ては、より多くの下りリンク又は上りリンクのタイムスロットが用意されるような割り当てであってもよい。また、CCの中央の部分における第2の周波数リソースでは、下りリンクの通信にタイムスロットが割り当てられていないが、一部のタイムスロットが下りリンクの通信のために割り当てられてもよい。すなわち、CCの内部で、タイムスロットの下りリンク及び上りリンクへの第1の割り当てを用いる第1の周波数リソースと、第2の割り当てを用いる第2の周波数リソースが存在するように構成される範囲で、どのような割り当てが用いられてもよい。なお、上述の説明では、CCの範囲内でタイムスロットの割り当てが異なる周波数リソースが存在すると説明したが、これに限られない。上述のCCは、端末装置において高速フーリエ変換(FFT)を含んだ受信処理が一括して行われる所定の周波数帯域と読み替えられてもよい。
【0011】
すなわち、端末装置は、例えば第1の周波数リソースにおいて下りリンクに割り当てられているタイムスロットにおいて送信すべきデータが発生した場合、その第1の周波数リソースにおいて上りリンクに割り当てられたタイムスロットが到来するのを待つことなく、第2の周波数リソースでSRを送信することができる。また、基地局装置は、第1の周波数リソースにおいて下りリンクに割り当てられている期間中にSRを受信した場合、その期間中にBSRのための無線リソースを割り当てる信号を第1の周波数リソースで送信することができる。ここで、第2の周波数リソースを用いることにより、第1の周波数リソースが下りリンクに割り当てられている期間における無線リソースがBSRのために割り当てられうる。このため、端末装置は、第1の周波数リソースが上りリンクに割り当てられたタイムスロットを待つことなく、第2の周波数リソースでBSRを報告することができる。その後、基地局装置は、第1の周波数リソースにおいて下りリンクに割り当てられている期間中にBSRを受信した場合、その期間中にデータのための無線リソースを割り当てる信号を第1の周波数リソースで送信することができる。端末装置は、第1の周波数リソースが上りリンクに割り当てられたタイムスロットを待つことなく、第2の周波数リソースでデータを送信することができる。
【0012】
このように、本実施形態では、タイムスロットの上りリンクの通信と下りリンクの通信とへの第1の割り当てに従う第1の周波数リソースと、その第1の割り当てと異なる第2の割り当てに従う第2の周波数リソースとを用意する。そして、第1の周波数リソースにおいて下りリンクに割り当てられ、第2の周波数リソースにおいて上りリンクに割り当てられたタイムスロットを用いることを可能とする。これにより、上述のように、例えばSRの送信やBSRの送信を、第1の周波数リソースにおいて上りリンクに割り当てられたタイムスロットを待つことなく、第2の周波数リソースで実行することができるようになり、上りリンクのデータが送信されるまでの期間を短縮することができるようになる。
【0013】
一方で、
図2のような構成を用いる場合、上りリンクの通信と下りリンクの通信とが同じタイムスロットで行われることとなる。例えば、
図1に示すように、基地局装置101から端末装置102へ、第1の周波数リソースで信号が送信される場合に、端末装置103から基地局装置101へ、第2の周波数リソースで信号が送信されうる。この場合、端末装置102は、基地局装置101からの信号と端末装置103からの信号とを並行して受信し、これらの信号に対して一括してフーリエ変換を含んだ受信処理を実行することとなる。このとき、例えば端末装置103が端末装置102の近傍に存在する場合、端末装置103が送信した信号の端末装置102における受信電力が、基地局装置101から送信された信号の端末装置102における受信電力より大幅に大きくなることがありうる。この場合、端末装置103からの信号が受信信号の全体に対して支配的な電力を有することとなりうる。この結果、基地局装置101からの信号がノイズレベルに埋没してしまい、端末装置102において、その信号の受信処理に失敗してしまいうる。また、端末装置103は、基地局装置101において複数の端末装置から受信されるOFDMシンボルのタイミングが略一致するように、送信タイミングを調整するが、その送信タイミングは端末装置102における受信タイミングが考慮されたものではない。このため、端末装置102において基地局装置101から受信された信号に基づくタイミングでフーリエ変換を行うと、端末装置103から受信された信号の直交性が崩れ、基地局装置101からの信号に対して干渉を及ぼしうる。
【0014】
本実施形態では、このような干渉を考慮して、下りリンクの通信を行う第1の端末装置と上りリンクの通信を行う第2の端末装置との組み合わせを決定する。すなわち、第1の端末装置による下りリンクの通信と第2の端末装置による上りリンクの通信とが同じタイムスロットで行われたとしても、これらの信号間の干渉が抑制されるように(少なくとも、第1の端末装置の下りリンクの通信への、第2の端末装置の上りリンクの通信による干渉の影響が十分に抑制されるように)、第1の端末装置と第2の端末装置との組み合わせが選択される。
【0015】
本実施形態では、基地局装置が、基地局装置を中心とした方向と距離との少なくともいずれかが離れている2つの端末装置(端末装置のペア)を特定して、その2つの端末装置の一方を上述の第1の端末装置とし、他方を第2の端末装置とする。例えば、基地局装置は、基地局装置から見た各端末装置の方向として、各端末装置と通信するとした場合のビームの方向を使用することができる。すなわち、基地局装置は、ビームの方向が十分に異なる2つの端末装置を選択して、同じタイムスロットで、その2つの端末装置の一方との間で上りリンクの通信を行い、他方と下りリンクの通信を行うようにする。なお、ビームの方向は、基地局装置と各端末装置との間の伝送路の状態に対応する。このため、基地局装置は、例えば、各端末装置について伝送路の状態を示す値を取得して、その伝送路の状態を示す値の相関値が所定値を超えないような端末装置のペアを特定しうる。すなわち、伝送路の状態を示す値の相関値が高い2つの端末装置に対してはビームの方向の差が小さく、相対的に近い位置に存在することが想定されるため、同じタイムスロットで通信すると、干渉が発生することが想定される。このため、相関値が所定値より低く、対応するビームの方向が十分に異なることが想定される2つの端末装置がペアとして選択される。なお、伝送路の状態を示す値は、例えばチャネル状態情報(CSI)であってもよいし、サウンディング参照信号(SRS)に基づいて基地局装置によって取得される伝送路推定値であってもよい。
【0016】
また、基地局装置は、伝送路の状態を示す値ではなく、プリコーディング・マトリクス・インジケータ(PMI)によって、基地局装置から見た端末装置の方向を特定してもよい。PMIは、端末装置において伝送路の状態に基づいて特定される、基地局装置が使用すべきビームを示す情報である。すなわち、PMIも、基地局装置と端末装置との間の伝送路の状態に対応する情報である。基地局装置は、PMIが異なる2つの端末装置を、同じタイムスロットで通信を行う端末装置のペアとして特定しうる。なお、基地局装置は、第1の端末装置のPMIに対応する第1のビームと、第2の端末装置のPMIに対応する第2のビームとの方向の差が所定のレベルを超えるように、すなわち方向が十分に離れるように、第1の端末装置および第2の端末装置を選択してもよい。例えば、隣接するビームに対応するPMIなど、一定程度近接するビームに対応するPMIを基地局装置へ報告した端末装置がペアとして選択されないようにしうる。
【0017】
以上のように、基地局装置は、複数の端末装置との間の伝送路の状態に対応する第1の情報に基づいて、下りリンクの通信を行う第1の端末装置と上りリンクの通信を行う第2の端末装置とのペアを特定し、その第1の端末装置および第2の端末装置と、同じタイムスロットで通信するようにしうる。なお、第1の端末装置は、下りリンクの通信を行うべき端末装置の中から選択され、第2の端末装置は、上りリンクの通信を行うべき端末装置の中から選択される。このように、基地局装置から見た方向が十分に異なる2つの端末装置を選択することにより、これらの端末装置が同じタイムスロットで通信した場合にその通信によって相互に発生する干渉を十分に抑制することができる。
【0018】
基地局装置は、複数の端末装置のそれぞれとの間の伝送路の状態に対応する第1の情報に代えて又はそれに加えて、複数の端末装置のそれぞれとの間の距離に対応する第2の情報に基づいて、下りリンクの通信を行う第1の端末装置と上りリンクの通信を行う第2の端末装置とのペアを特定してもよい。基地局装置の近傍に存在する端末装置と基地局装置が形成するエリアのエッジなどの遠距離に存在する端末装置とが並行して通信を行っても、その端末装置間での干渉の影響を十分小さく抑制することができるからである。
【0019】
例えば、基地局装置は、複数の端末装置のそれぞれと基地局装置自身との間の距離を示す値を取得し、その値の差の大きさが所定の閾値以上となるような2つの端末装置を、同じタイムスロットで通信する端末装置として選択しうる。なお、端末装置と基地局装置との距離は、一例において、端末装置の位置情報に基づいて特定されうる。また、各端末装置が基地局装置から離れるほど、その端末装置における基地局装置からの信号の受信電力が低下することが想定される。このため、基地局装置は、例えば、複数の端末装置のそれぞれにおける、基地局装置から送信された所定の信号の受信電力の情報を(例えば端末装置からの報告によって)取得して、その受信電力の差の大きさが所定の閾値以上となるような端末装置のペアを、同じタイムスロットで通信する端末装置として特定しうる。なお、所定の信号は、例えば、参照信号であり、参照信号の受信電力の情報は、参照信号受信電力(RSRP)でありうる。また、各端末装置が基地局装置から離れるほど、基地局装置における受信タイミングが同期するようにするために、端末装置が信号を送信するタイミングが早くなる。このため、基地局装置は、このタイミングを示す情報、すなわち、タイミングアドバンス(TA)の値を用いて、TAの値の差の大きさが所定の閾値以上となるような端末装置のペアを、同じタイムスロットで通信する端末装置として特定してもよい。
【0020】
基地局装置が、上述の第1の情報と第2の情報との少なくともいずれかに基づいて、同じタイムスロットで通信する端末装置のペアを特定する処理について、
図3及び
図4を用いて説明する。なお、以下の例では、基地局装置と端末装置との間の伝送路の状態に対応する第1の情報としてPMIが使用され、基地局装置と端末装置との間の距離に対応する第2の情報としてTAが使用されるものとする。
【0021】
図3は、基地局装置301が、複数のビーム311~317を形成して通信を行うシステムの例を示している。この複数のビーム311~317は、それぞれ異なるPMIの値に関連付けられており、基地局装置301は、端末装置における伝送路推定の結果に基づいて決定されてフィードバックされたPMIの値に対応するビームを、その端末装置との通信に使用しうる。例えば、端末装置321は、ビーム311の信号を最も強く受信するため、ビーム311のPMIを基地局装置301にフィードバックする。基地局装置301は、このフィードバックにより、ビーム311の方向に端末装置321が存在すると推定することができる。同様に、基地局装置301は、端末装置322および端末装置323がビーム312の方向に存在し、端末装置324がビーム314の方向に存在し、端末装置325がビーム316の方向に存在し、端末装置326および端末装置327がビーム317の方向に存在すると推定しうる。このため、基地局装置301は、例えば、端末装置322と端末装置323がペアにならないように、また、端末装置326と端末装置327がペアにならないように、上りリンクの通信と下りリンクの通信とを同じタイムスロットで通信する端末装置のペアを特定しうる。また、例えば隣接するビームに対応するPMIをフィードバックしてきた端末装置同士がペアにならないようにしてもよい。例えば、基地局装置301は、端末装置325と、端末装置326又は端末装置327とがペアにならないように、上りリンクの通信と下りリンクの通信とを同じタイムスロットで通信する端末装置のペアを特定しうる。このように、基地局装置301は、端末装置との間の伝送路の状態に対応する情報(例えばPMI)に基づいて、存在する方向が近い端末装置が同じタイムスロットで通信することがないようにすることで、ある端末装置からの上りリンクの信号が、他の端末装置への下りリンクの通信に干渉してしまうことを防ぐことができる。
【0022】
また、基地局装置301は、各端末装置の基地局装置301からの距離を、各端末装置において適用されるべきTAの値に応じて推定することができる。例えば、端末装置321や端末装置327は、基地局装置301の近傍に存在し、伝搬遅延が小さいため、TAとして小さい値が設定される。一方、端末装置322~端末装置324および端末装置326は、基地局装置301から離れた位置に存在し、伝搬遅延が大きいため、TAとして大きい値が設定される。このように、TAの値は、伝搬遅延に応じて決定され、基地局装置301と各端末装置との間の距離に対応する。そして、基地局装置301は、TAの差の大きさが小さい端末装置同士がペアとならないように、上りリンクの通信と下りリンクの通信とを同じタイムスロットで通信する端末装置のペアを特定しうる。例えば、基地局装置301は、端末装置321と端末装置327とがペアとならないようにしうる。端末装置321と端末装置327は、その存在する位置が方向において異なるものの、その存在する位置が近いため、上りリンクの通信と下りリンクの通信とを同じタイムスロットで通信すると干渉が発生しうるからである。また、基地局装置301は、端末装置322と端末装置323とがペアとならないようにしうる。このように、基地局装置301は、各端末装置との間の距離に基づいて、自装置からの距離の差が小さい2つの端末装置が同じタイムスロットで通信することがないようにすることで、ある端末装置からの上りリンクの信号が、他の端末装置への下りリンクの通信に干渉してしまうことを防ぐことができる。
【0023】
また、基地局装置301は、各端末装置との間の伝送路の状態に対応する情報(ここではPMI)と、各端末装置との間の距離に対応する情報(ここではTA)との両方を用いて、上りリンクの通信と下りリンクの通信とを同じタイムスロットで通信する端末装置のペアを特定しうる。例えば、基地局装置301は、PMIとTAの両方が十分に異なるように、2つの端末装置をペアとして選択しうる。基地局装置301は、例えば、
図4のように、TAの値についての、第1の所定値より大きい(TA大)、第1の所定値以下かつ第2の所定値より大きい(TA中)、第2の所定値以下(TA小)の3つのカテゴリと、PMIの値によるカテゴリとによって端末装置を分類し、TAのカテゴリとPMIのカテゴリとが共に異なる2つの端末装置を、端末装置のペアとして選択しうる。これにより、ある端末装置からの上りリンクの信号が、他の端末装置への下りリンクの通信に干渉してしまうことを防ぐことができる。
【0024】
なお、ここでは、同じタイムスロットで通信する2つの端末装置のペアを特定すると説明したが、この2つの端末装置は、例えば隣接する周波数リソースなどにおいて、一方が上りリンクの通信を行い他方が下りリンクの通信を行うことができる端末装置であって、他の周波数リソースにおいては、同じタイムスロットで、この2つの端末装置と異なる端末装置が通信することもできる。例えば、上りリンクで通信する必要がある所定の端末装置が存在する場合に、上述の第1の情報と第2の情報とに基づいて、基地局装置から見た方向がその所定の端末装置と十分に異なるか、基地局装置からの距離がその所定の端末装置と十分に異なるかの少なくともいずれかである他の端末装置が、隣接する周波数リソースで下りリンクの通信を行い、方向や距離が近い他の端末装置については、周波数領域において大きく離れたリソースで下りリンクの通信を行うようにしうる。すなわち、上述の第1の情報と第2の情報との少なくともいずれかに基づいて、周波数リソースの割り当てが決定されてもよい。
【0025】
なお、基地局装置は、初期的には上述のような第1の情報及び第2の情報のいずれにも基づかずに端末装置のペアを特定して通信を行い、その通信において、下りリンクの通信の通信品質が劣化した場合に、第1の情報と第2の情報との少なくともいずれかに基づく端末装置のペアの特定を行ってもよい。すなわち、上りリンクの通信と下りリンクの通信とが混在した結果、上りリンクの信号による下りリンクの信号への干渉が発生したと想定される状態になってから、上述の処理が実行されるようにしてもよい。また、基地局装置は、第1の情報と第2の情報との少なくともいずれかに基づいて端末装置のペアを選択して通信を行っている際に、その通信において下りリンクの通信の通信品質が劣化した場合、端末装置のペアを再度特定してもよい。これによれば、端末装置の移動などによる状況変化に追従して、干渉の発生を抑制することができる。
【0026】
なお、基地局装置は、例えば、下りリンクのユーザデータの送信回数に対する否定応答(NACK)がそのユーザデータの宛先の端末装置から受信された比率等に基づいて下りリンクの通信の成功率を特定し、その成功率が所定値を下回った場合に、下りリンクの通信の通信品質が劣化したと判定しうる。また、基地局装置は、下りリンクの通信の成功率が所定期間にわたって所定値を下回り続けている場合に、下りリンクの通信の通信品質が劣化したと判定してもよい。また、基地局装置は、下りリンクの通信における通信速度の低下があった場合に、下りリンクの通信の通信品質が劣化したと判定してもよい。例えば、基地局装置は、否定応答の受信などに伴って、変調および符号化方式(MCS)を調整するが、その結果、変調方式や符号化方式が誤りにより堅牢な方式に変更され、通信速度が低下する場合がある。すなわち、基地局装置は、より通信速度が遅くなるようにMCSを変化させた場合に、下りリンクの通信の通信品質が劣化したと判定しうる。なお、基地局装置は、所定の通信速度より低い通信速度に対応するMCSが選択された場合や、一定期間にわたって所定の通信速度より低い通信速度に対応するMCSが選択され続けている場合に、下りリンクの通信の通信品質が劣化したと判定しうる。
【0027】
このように、下りリンクの通信における通信品質の劣化に基づいて、上りリンクの通信を行う端末装置と下りリンクの通信を行う端末装置との組み合わせを再度特定することにより、端末装置の移動などによる状況変化に追従して、干渉の発生を抑制することができる。なお、ここでの通信品質の監視対象となる下りリンクの通信は、例えば、上りリンクの通信が行われる所定の周波数リソースから所定の周波数範囲内に存在する別の周波数リソースにおいて実行される下りリンクの通信である。すなわち、上りリンクの通信による影響が十分に軽減される程度に周波数方向において離れた周波数リソースにおける下りリンクの通信については、考慮されなくてもよい。
【0028】
なお、上述の説明では、基地局装置が端末装置のペアを特定して、その端末装置との通信を行うと説明したが、例えば、基地局装置と異なる制御装置が端末装置のペアを特定してもよい。例えば、制御装置は、複数の基地局装置のそれぞれに接続中の複数の端末装置のそれぞれについて、その端末装置が接続中の基地局装置とその端末装置との間の伝送路の状態に対応する第1の情報と、その端末装置が接続中の基地局装置とその端末装置との間の距離に対応する第2の情報とを取得する。そして、制御装置は、第1の情報と第2の情報とに基づいて、端末装置間の距離を大まかに推定し、その距離が十分に大きくなるように端末装置のペアを特定する。そして、制御装置は、同じタイムスロットでその特定した端末装置のペアの一方が上りリンクの通信を実行し、他方が下りリンクの通信を実行するように、それらの端末装置が接続中の基地局装置に指示しうる。このように、制御装置は、例えば隣接する別の基地局装置にそれぞれが接続している複数の端末装置間でも干渉の影響を抑制するように端末装置のペアを選択することができる。なお、制御装置は、基地局装置の内部に含まれてもよいし、基地局装置とは独立して用意されてもよい。このように、上述の「基地局装置」は、例えば1つ以上の基地局装置から収集した情報に基づいて、その1つ以上の基地局装置のそれぞれを制御する「制御装置」と読み替えられてもよい。
【0029】
(装置構成)
図5を用いて、基地局装置のハードウェア構成例について説明する。基地局装置は、一例において、プロセッサ501、ROM502、RAM503、記憶装置504、及び通信回路505を含んで構成される。プロセッサ501は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM502や記憶装置504に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM502は、基地局装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM503は、プロセッサ501がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置504は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路505は、例えば、LTEや5Gの無線通信用の回路によって構成される。なお、
図5では、1つの通信回路505が図示されているが、基地局装置は複数の通信回路を有しうる。例えば、基地局装置は、LTE用および5G用の無線通信回路と共通のアンテナを有しうる。なお、基地局装置は、LTE用のアンテナと5G用のアンテナとを別個に有してもよい。また、基地局装置は、例えば他の基地局装置やネットワークノードとの通信のための有線通信用の通信回路を有してもよい。なお、基地局装置は、使用可能な複数の周波数帯域のそれぞれについて別個の通信回路505を有してもよいし、それらの周波数帯域の少なくとも一部に対して共通の通信回路505を有してもよい。
【0030】
図6は、基地局装置の機能構成例を示す図である。基地局装置は、その機能として、例えば、方向情報取得部601、距離情報取得部602、通信対象端末特定部603、及び通信処理部604を含んで構成される。なお、これらの機能部は、例えば、プロセッサ501が、ROM502や記憶装置504に記憶されたプログラムを実行することによって実現されうる。なお、各機能部によって実行される処理は、それぞれ上述のような変形が可能であるが、ここではその詳細については繰り返さない。
【0031】
方向情報取得部601は、複数の端末装置のそれぞれと基地局装置との間の伝送路の状態に対応する情報などの、基地局装置から見た各端末装置の位置の方向を示す第1の情報を取得する。例えば、方向情報取得部601は、各端末装置のPMIの情報や、各端末装置から送信されたSRSに基づく伝送路推定値などの情報を取得する。なお、方向情報取得部601は、例えば、端末装置の位置情報を取得して、その位置情報に基づいて端末装置が存在する方向を特定してもよい。距離情報取得部602は、複数の端末装置のそれぞれと基地局装置との間の距離に対応する第2の情報を取得する。例えば、距離情報取得部602は、端末装置の位置情報から距離を取得してもよいし、TAや、参照信号等の所定の信号の受信電力などの距離に応じて変動する値を取得してもよい。通信対象端末特定部603は、方向情報取得部601によって取得された情報と、距離情報取得部602によって取得された情報との少なくともいずれかに基づいて、互いの信号による干渉が十分に抑制可能な関係にある下りリンクの通信を行う第1の端末装置と上りリンクの通信を行う第2の端末装置とを特定する。通信処理部604は、同じタイムスロットで、第1の端末装置との間で下りリンクの通信を行うと共に第2の端末装置との間で上りリンクの通信を行う。
【0032】
(処理の流れ)
続いて、基地局装置が実行する処理の流れの例について、
図7を用いて概説する。なお、以下で説明する処理の流れは、一例であり、上述のような変形が当然に可能である。また、以下の処理の各ステップは、相互に入れ替えられてもよいし、その一部の処理は省略されてもよい。
【0033】
本処理では、基地局装置は、まず、接続中の複数の端末装置のそれぞれの位置の基地局装置から見た方向に対応する情報、すなわち、複数の端末装置のそれぞれとの間の伝送路の状態に対応する第1の情報を取得する(S701)。第1の情報は、例えばPMIや端末装置から送信されたSRSに基づく伝送路推定値でありうる。また、基地局装置は、その複数の端末装置との間の距離に対応する第2の情報を取得する(S702)。第2の情報は、例えばTAやRSRPでありうる。基地局装置は、第1の情報もしくは第2の情報に基づいて、又は第1の情報と第2の情報との両方に基づいて、下りリンクの通信を行う第1の端末装置と、上りリンクの通信を行う第2の端末装置とを特定する(S703)。そして、基地局装置は、第1の端末装置との下りリンクの通信と、第2の端末装置との上りリンクの通信とを、同じタイムスロットにおいて実行する(S704)。
【0034】
このようにして、上りリンクの通信と下りリンクの通信とが混在するタイムスロットにおいて、上りリンクの通信が下りリンクの通信に干渉しないように、下りリンクの通信を行う端末装置と上りリンクの通信を行う端末装置とを決定することができる。これにより、タイムスロットの上りリンクの通信および下りリンクの通信への複数の割り当てパターンを混在させて使用することを促進することができ、無線通信に関する遅延を低減することが可能となる。
【0035】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。