(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
F24F 11/38 20180101AFI20241015BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20241015BHJP
【FI】
F24F11/38
F24F11/64
(21)【出願番号】P 2021140086
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西村 隼
(72)【発明者】
【氏名】福光 超
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/037496(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/131336(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/38
F24F 11/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の空調を行う空調装置において、
室内に供給する空気を冷却又は加熱する熱交換器と、
前記熱交換器を通過して室内に供給される気流を発生させる送風機であって、ファン及び当該ファンを回転させる電動モータを有する送風機と、
前記電動モータの回転数を制御する制御部と、
前記電動モータに対する前記制御部の指令回転数と前記送風機の送風量とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記指令回転数と前記送風量との対応関係を利用して基準となるファン特性(以下、基準ファン特性という。)を演算決定する基準特性決定部と、
現時の前記指令回転数及び当該指令回転数時の前記送風量と前記基準ファン特性とを比較する比較機能を実行することにより、前記送風機に異常が発生したか否か判断する異常判断部と
を備える空調装置。
【請求項2】
前記基準特性決定部は、前記記憶部に記憶されている前記対応関係のうち予め決められた過去の期間内の対応関係を利用して前記基準ファン特性を演算決定する請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
複数の前記熱交換器、及び当該熱交換器の同数の前記送風機を備え、
前記異常判断部は、前記記憶部に記憶されている複数の前記送風機についての対応関係を利用して判断する請求項1又は2に記載の空調装置。
【請求項4】
前記基準特性決定部は、複数の前記送風機それぞれについて、前記指令回転数と前記送風量とに基づいて回帰式を算出する機能を有しており、
前記比較機能は、
複数の前記送風機それぞれについて演算された回帰式の切片を母集団とした場合において、判断の対象となる送風機についての切片の標準偏差が予め決められた値以上であるか否かを比較する第1比較機能、及び
複数の前記送風機それぞれについて演算された回帰式の傾きを母集団とした場合において、判断の対象となる送風機についての傾きの標準偏差が予め決められた値以上となるか否かを比較する第2比較機能により構成されており、
前記異常判断部は、判断の対象となる送風機についての切片の標準偏差が予め決められた値以上である場合、又は判断の対象となる送風機についての傾きの標準偏差が予め決められた値以上である場合に、判断の対象となる送風機に異常が発生したとみなす請求項3に記載の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の発明では、評価時点における送風量と設計風量との比に基づいて送風機の劣化を診断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同一の送風機であっても、送風機が設置される環境が異なると、現実の送風特性も異なる。なお、送風特性とは、ファンを回転させる際の指令回転数と現実の送風量との関係をいう。このため、特許文献1に記載のごとく、評価時点における送風量と設計風量とを比較する手法では、送風機の劣化又は異常(以下、送風機の異常という。)を適切に判断することが難しい。
【0005】
本開示は、上記点を考慮して送風機に異常が発生したか否かを適切に判断することが可能な空調装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
室内の空調を行う空調装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。すなわち、当該構成要件は、室内に供給する空気を冷却又は加熱する熱交換器(5)と、熱交換器(5)を通過して室内に供給される気流を発生させる送風機(5A)であって、ファン(5B)及び当該ファン(5B)を回転させる電動モータ(5C)を有する送風機(5A)と、電動モータ(5C)の回転数を制御する制御部(6)と、電動モータ(5C)に対する制御部(6)の指令回転数(Cr)と送風機(5A)の送風量とを対応付けて記憶する記憶部(6A)と、記憶部(6A)に記憶されている指令回転数(Cr)と送風量との対応関係を利用して基準となるファン特性(以下、基準ファン特性という。)を演算決定する基準特性決定部(6B)と、現時の指令回転数(Cr)及び当該指令回転数時の送風量と基準ファン特性とを比較する比較機能を実行することにより、送風機(5A)に異常が発生したか否か判断する異常判断部(6C)とを備えることである。
【0007】
これにより、本実施形態では、現実の風量特性に基づいて送風機(5A)に異常が発生したか否か判断するので、送風機(5A)に異常が発生したか否かを適切に判断することが可能となり得る。
【0008】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る空調装置を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る空調装置の制御の一例を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態に係る空調装置の制御の一例を示すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態に係る空調装置の制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0011】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された空調装置は、少なくとも符号が付されて説明された構成要素、並びに図示された構造要素を備える。
【0012】
(第1実施形態)
<1.空調装置の概要>
本実施形態は、データセンターや通信機械室等のサーバ室の空調を行う空調装置に本開示に係る空調装置の一例が適用されたものである。なお、当該空調装置は、蒸気圧縮式冷凍機にて構成された、いわゆる「パッケージエアコン」である。
【0013】
図1に示される空調装置1は、サーバ室内の空調を行うための冷熱又は温熱(本実施形態では、冷熱)を生成する。当該空調装置1は、圧縮機2、凝縮器3、膨張弁4及び蒸発器5、並びに制御部6、第1温度センサ7A~第4温度センサ7D及び第1圧力センサ7E、7F等を有して構成されている。
【0014】
圧縮機2は、低圧の気相冷媒を圧縮して凝縮器3に供給する。当該圧縮機2は、電動モータ(図示せず。)により駆動される。電動モータは、インバータ方式の駆動回路(図示せず。)に駆動される。駆動回路の作動は、制御部6により制御される。
【0015】
すなわち、駆動回路は、電動モータに駆動電流を供給するとともに、駆動電流の周波数(以下、駆動周波数という。)を変更可能である、当該駆動回路は、制御部6から指令周波数に応じた駆動周波数の駆動電流を電動モータに供給する。つまり、圧縮機2の作動は、駆動回路を介して制御部6により制御される。
【0016】
凝縮器3は、圧縮機2にて圧縮された高圧冷媒を冷却する高圧側熱交換器である。当該凝縮器3では、気相冷媒が冷却されて液化(凝縮)する。膨張弁4は、凝縮器3から流出した高圧冷媒を減圧・膨張させて蒸発器5に供給する。
【0017】
蒸発器5は、液相の低圧冷媒を蒸発させて冷熱を発生する。第1送風機3Aは、凝縮器3に冷却用の空気を送風する。第2送風機5Aは、蒸発器5を通過してサーバ室内に供給される気流を発生させる。
【0018】
具体的には、第2送風機5Aは、サーバ室内の空気を吸い込んで蒸発器5に供給するとともに、蒸発器5で冷却された空気をサーバ室に供給する。なお、第2送風機5Aは、ファン5B及び当該ファン5Bを回転させる電動モータ5Cを有して構成されている。
【0019】
制御部6は、圧縮機2、第2送風機5A及び膨張弁4の開度等を少なくとも制御する。当該制御部6には、第1温度センサ7A~第4温度センサ7D、及び第1圧力センサ7E、7Fの検出信号が入力されている。
【0020】
なお、制御部6は、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータにて構成されている。そして、ROM等の不揮発性記憶部に記憶されたソフトウェアがCPUにて実行されることにより、上記制御等が実行される。
【0021】
第1温度センサ7Aは、蒸発器5にて冷却される前の空気の温度を検出する。第2温度センサ7Bは、当該蒸発器5にて冷却された後の空気の温度を検出する。第3温度センサ7Cは、蒸発器5の冷媒出口での冷媒温度を検出する。
【0022】
第4温度センサ7Dは、蒸発器5の冷媒入口での冷媒温度を検出する。第1圧力センサ7Eは、蒸発器5内の冷媒圧力を検出する。第2圧力センサ7Fは、圧縮機2の吐出圧力、つまり高圧冷媒の圧力を検出する。
【0023】
<圧縮機の制御>
制御部6は、第1温度センサ7Aにより検出された温度(以下、吸込温度という。)が予め設定された温度(以下、吸込設定温度という。)となるように圧縮機2の回転数を制御する。つまり、制御部6は、吸込温度が吸込設定温度より高い場合には圧縮機2の回転数を増大させ、吸込温度が吸込設定温度より低い場合には圧縮機2の回転数を減少させる。
【0024】
<膨張弁の制御>
制御部6は、蒸発器5の冷媒出口における冷媒の過熱度が予め決められた過熱度となるよう膨張弁4の開度を制御する。なお、制御部6は、第3温度センサ7Cの検出温度と第1圧力センサ7Eの検出圧力から演算した蒸発温度との温度差を過熱度として把握する。
【0025】
<第2送風機の制御>
制御部6は、第2温度センサ7Bにより検出された温度(以下、吹出温度という。)が予め設定された温度(以下、吹出吸込設定温度という。)となるように第2送風機5Aの風量を制御する。
【0026】
すなわち、電動モータ5Cは、圧縮機2と同様に、インバータ方式の駆動回路(図示せず。)により駆動される。当該駆動回路の作動は、制御部6により制御される。駆動回路は、制御部6から指令周波数(以下、指令回転数Crともいう。)に応じた駆動周波数の駆動電流を電動モータ5Cに供給する。
【0027】
そして、制御部6は、吹出温度が吹出吸込設定温度より高い場合には、指令回転数を小さくし、吹出温度が吹出吸込設定温度より低い場合には、指令回転数を大きくする。なお、吹出吸込設定温度は、吸込設定温度に予め決められた温度差を加算した温度である。
【0028】
<2.第2送風機の劣化又は異常の判断機能>
本実施形態に係る制御部6は、第2送風機5Aの劣化又は異常(以下、単に「異常」という。)が発生したか否か判断する機能が実行可能である。そして、制御部6は、第2送風機5Aに異常が発生したと判断した場合には、その旨を空調装置の管理者に通知する。
【0029】
<2.1 異常判断機能の概要>
異常判断機能を実現すため構成として、制御部6には、記憶部6A、基準特性決定部6B及び異常判断部6C等が設けられている。
【0030】
<記憶部>
記憶部6Aは、指令回転数Crと第2送風機5Aの送風量とを対応付けて記憶する。当該記憶部6Aは、書換可能な不揮発性記憶部(図示せず。)及び風量を演算する風量演算部等を有して構成されている。
【0031】
風量演算部は、以下の風量演算を実行するためのソフトウェアがCPUにて実行されることにより実現される。なお、当該ソフトウェア及び演算に必要な定数や圧縮機2の特性等は、ROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されている。
【0032】
すなわち、風量演算部は、第3温度センサ7Cの検出温度と第4温度センサ7Dの検出温度と温度差、及び第1圧力センサ7Eの検出圧力を利用して蒸発器5の冷媒入口と冷媒出口との比エンタルピ差を演算する。
【0033】
風量演算部は、圧縮機2の駆動周波数、第1圧力センサ7Eの検出圧力、第2圧力センサ7Fの検出圧力、及び当該圧縮機2の特性を利用して質量流量を演算する。次に、風量演算部は、比エンタルピ差と質量流量とを乗算することにより蒸発器5で発生した冷凍能力を演算する。
【0034】
そして、風量演算部は、上記の冷凍能力を空気の比熱、密度、及び蒸発器5を通過した空気の温度変化ΔT、つまり第1温度センサ7Aの検出温度と第2温度センサ7Bの検出温度と温度差で除算することにより風量Afを演算する。
【0035】
記憶部は、所定時間(例えば、60分)毎に、演算された風量Afと指令回転数Crとを対応付けて不揮発性記憶部に記憶する。以下、演算された風量Afと指令回転数Crとを「対応関係」という。なお、当該対応関係は、例えば、
図2のグラフにおいて「○」で示される。
【0036】
<基準特性決定部>
基準特性決定部6Bは、記憶部6Aに記憶されている指令回転数Crと送風量Afとの対応関係を利用して基準となるファン特性(以下、基準ファン特性という。)を演算決定する。
【0037】
具体的には、基準特性決定部6Bは、記憶部6Aに記憶されている複数の対応関係のうち予め決められた過去の期間(例えば、1年)内の対応関係を利用して基準ファン特性を演算決定する。
【0038】
本実施形態では、複数の対応関係に基づいて演算された回帰式(
図2の直線のグラフ)を基準ファン特性としている。具体的には、基準特性決定部は、対応関係の記憶が開始された後、上記の期間(例えば、1年)経過したときに初めて基準ファン特性、つまり回帰式を演算決定する。
【0039】
そして、基準ファン特性が演算された後は、毎日(例えば、午前0時に)、過去1年分の対応関係を利用して基準ファン特性、つまり回帰式を更新する。なお、本実施形態に係る基準特性決定部6Bは、ソフトウェアがCPUにて実行されることにより実現される。
【0040】
<異常判断部>
異常判断部6Cは、現時の指令回転数Cr及び当該指令回転数時の送風量Afと現時の基準ファン特性とを比較する比較機能を実行することにより、第2送風機5Aに異常が発生したか否か判断する。
【0041】
具体的には、異常判断部6Cは、現時の回帰式に現時の指令回転数Crを代入して得られる風量Afと当該指令回転数時の送風量Afとの差が予め決められた閾値より大きい場合には、第2送風機5Aに異常が発生したと判断する。
【0042】
また、異常判断部6Cは、当該差が予め決められた値以下の場合には、異常が発生していないと判断する。なお、本実施形態に係る異常判断部6Cは、ソフトウェアがCPUにて実行されることにより実現される。
【0043】
<2.1 異常判断機能の詳細>
図3は、記憶部6A及び基準特性決定部6Bの作動を示すフローチャートの一例である。
図4は、異常判断部6Cの作動を示すフローチャートの一例である。2つの制御フローは、互いに独立して並列的に作動可能である。
【0044】
なお、本実施形態では、記憶部6A、基準特性決定部6B及び異常判断部6Cの作動は、ソフトウェアがCPUにて実行されることにより実現される。このため、以下の説明では、制御部6にて各作動が実行されるものとして説明する。
【0045】
<記憶部及び基準特性決定部の作動(
図3参照)>
図3に示される制御は、空調装置1の起動と共に起動し、空調装置1の停止と共に停止する。当該制御が起動されると、制御部6は、先ず、圧縮機2の駆動周波数、高圧圧力(第2圧力センサ7Fの検出圧力)、低圧圧力(第1圧力センサ7Eの検出圧力)、蒸発器出口の冷媒温度(第3温度センサ7Cの検出温度)、及び蒸発器入口の冷媒温度(第3温度センサ7Cの検出温度)を読み込む(S1)。
【0046】
次に、制御部6は、圧縮機2が稼働中であるか否かを判断し(S2)、圧縮機2が稼働中である場合には(S2:YES)、蒸発器出入口の比エンタルピ差及び冷媒の質量流量を用いて冷凍能力を演算する(S3)。
【0047】
次に、制御部6は、蒸発器吸込み空気温度(第1温度センサ7Aの検出温度)、蒸発器吹出し空気温度(第2温度センサ7Bの検出温度)、及び指令回転数Crを読み込んだ後(S4)、指令回転数Crが0より大きいか否か、つまり第2送風機5Aが稼働中であるか否かを判断する(S5)。
【0048】
第2送風機5Aが稼働中である場合には(S5:YES)、制御部6は、ΔT及び冷凍能力等を利用して風量Afを演算するとともに、風量Afの演算に用いた指令回転数Crと当該風量Afとを対応付けて記憶部6Aに記憶する(S6)。
【0049】
そして、制御部6は、記憶部6Aに記憶されている対応関係の個数が、予め決められた期間(例えば、1年)分を越えたときに(S7:YES)、毎日(例えば、午前0時に)、過去1年分の対応関係を利用して基準ファン特性、つまり回帰式を更新する(S8)。
【0050】
<異常判断部の作動(
図4参照)>
図4に示される制御は、空調装置1の起動と共に起動し、空調装置1の停止と共に停止する。当該制御が起動されると、制御部6は、先ず、圧縮機2の駆動周波数、高圧圧力(第2圧力センサ7Fの検出圧力)、低圧圧力(第1圧力センサ7Eの検出圧力)、蒸発器出口の冷媒温度(第3温度センサ7Cの検出温度)、及び蒸発器入口の冷媒温度(第3温度センサ7Cの検出温度)を読み込む(S11)。
【0051】
次に、制御部6は、圧縮機2が稼働中であるか否かを判断し(S12)、圧縮機2が稼働中である場合には(S12:YES)、蒸発器出入口の比エンタルピ差及び冷媒の質量流量を用いて冷凍能力を演算する(S13)。
【0052】
次に、制御部6は、蒸発器吸込み空気温度(第1温度センサ7Aの検出温度)、蒸発器吹出し空気温度(第2温度センサ7Bの検出温度)、及び指令回転数Crを読み込んだ後(S14)、第2送風機5Aが稼働中であるか否かを判断する(S15)。
【0053】
第2送風機5Aが稼働中である場合には(S15:YES)、制御部6は、基準ファン特性、つまり回帰式が作成済みであるか否かを判断する(S16)。回帰式が作成済みでない場合には(S16:NO)、制御部6は、S11を再び実行する。
【0054】
回帰式が作成済みである場合には(S16:YES)、現時の回帰式に現時の指令回転数Crを代入して得られる風量Afと当該指令回転数時の送風量Afとの差が予め決められた閾値より大きいか否かを判断する(S17)。
【0055】
そして、当該差が閾値より大きい場合には(S17:YES)、制御部6は、第2送風機5Aに異常が発生したとみなして、空調装置41を停止させるとともに(S18)、「第2送風機5Aに異常が発生した」旨を報知する(S19)。
【0056】
<3.本実施形態に係る空調装置の特徴>
本実施形態に係る異常判断機能は、現時の指令回転数Cr及び当該指令回転数Cr時の送風量Afと基準ファン特性とを比較する比較機能を実行することにより、第2送風機5Aに異常が発生したか否か判断する。
【0057】
基準ファン特性は、記憶部6Aに記憶されている指令回転数Crと送風量Afとの対応関係、つまり過去の実績を利用して、制御部6が自ら作成した風量特性である。したがって、当該異常判断機能では、現実の風量特性に基づいて第2送風機5Aに異常が発生したか否か判断するので、第2送風機5Aに異常が発生したか否かを適切に判断することが可能となり得る。
【0058】
(第2実施形態)
上述の実施形態に係る空調装置1は、1つの蒸気圧縮式冷凍機にて構成されていた。これに対して、本実施形態に係る空調装置は、同一構成、つまり同一仕様の複数の蒸気圧縮式冷凍機にて構成されている。つまり、本実施形態に係る空調装置1は、複数の蒸発器5にて1つのサーバ室の空調を行う。
【0059】
このため、第1温度センサ7A~第4温度センサ7D及び第1圧力センサ7E、7Fも各蒸気圧縮式冷凍機に設けられている。複数の第2送風機5Aそれぞれは、対応する蒸発器5に送風する。制御部6は、上記センサの検出信号を利用して、複数の圧縮機2及び第2送風機5A等を制御する。
【0060】
なお、以下の説明は、上述の実施形態に係る空調装置1との相違点に関する説明である。上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0061】
本実施形態では、複数の第2送風機5Aそれぞれについて、
図3に示される制御が実行される。このため、複数の第2送風機5Aそれぞれについて、過去の実績に基づく基準ファン特性、つまり回帰式が演算決定される(
図5参照)。
【0062】
そして、本実施形態に係る異常判断部6Cにおける比較機能は、以下の第1比較機能及び第2比較機能によって構成されている。
【0063】
<第1比較機能>
第1比較機能では、複数の第2送風機5Aそれぞれについて演算された回帰式の切片を母集団とした場合において、判断の対象となる第2送風機についての切片の標準偏差が予め決められた値以上であるか否かを比較する。
【0064】
<第2比較機能>
第2比較機能では、複数の第2送風機5Aそれぞれについて演算された回帰式の傾きを母集団とした場合において、判断の対象となる第2送風機についての傾きの標準偏差が予め決められた値以上となるか否かを比較する。
【0065】
そして、異常判断部6Cは、判断の対象となる第2送風機についての切片の標準偏差が予め決められた値以上である場合、又は判断の対象となる第2送風機についての傾きの標準偏差が予め決められた値以上である場合に、判断の対象となる第2送風機に異常が発生したとみなす。
【0066】
<異常判断部の作動(
図6参照)>
図6に示される制御は、空調装置1の起動と共に起動し、空調装置1の停止と共に停止する。当該制御が起動されると、制御部6は、先ず、判断の対象となる第2送風機の回帰式が作成済みであるか否かを判断する(S21)。
【0067】
判断の対象となる第2送風機の回帰式が作成済みでないと判断された場合には(S21:NO)、制御部6は、他の第2送風機を判断の対象とし、当該第2送風機の回帰式が作成済みであるか否かを判断する(S21)。
【0068】
判断の対象となる第2送風機の回帰式が作成済みであると判断された場合には(S21:YES)、制御部6は、判断の対象となる第2送風機以外の他の第2送風機の回帰式が作成済みであるか否かを判断する(S22)。
【0069】
他の第2送風機の回帰式が作成済みである場合には(S22:YES)、制御部6は、判断の対象となる第2送風機についての切片及び傾きの標準偏差を演算するとともに、第1比較機能及び第2比較機能を実行する(S23、S24)。
【0070】
そして、判断の対象となる第2送風機についての切片の標準偏差が閾値以上である場合、又は判断の対象となる第2送風機についての傾きの標準偏差が閾値以上である場合には(S24:YES)、制御部6は、対応する蒸気圧縮式冷凍機、つまり空調機を停止させるとともに(S25)、「第2送風機5Aに異常が発生した」旨を報知する(S26)。
【0071】
<本実施形態に係る空調装置の特徴>
第1実施形態では、判断の対象となる第2送風機の過去の実績と判断の対象となる第2送風機の現時の実績とを比較した。
【0072】
これに対して、本実施形態では、同一のサーバ室の空調を行う同一仕様の複数の第2送風機それぞれの基準ファン特性、つまり複数の基準ファン特性を利用して「第2送風機に異常が発生したか否か」を判断する。これにより、第2送風機に異常が発生したか否かを適切に判断することが可能となり得る。
【0073】
(その他の実施形態)
第2実施形態は、標準偏差を利用して比較する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、複数の切片又は傾きの中央値や平均値等と比較する構成であってもよい。
【0074】
上述の実施形態では、吸込温度が予め設定された温度になるように圧縮機2が制御され、かつ、吹出温度が吹出吸込設定温度、つまり吸込設定温度に予め決められた温度差を加算した温度となるように第2送風機5Aが制御される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0075】
すなわち、当該開示は、例えば、吹出温度が予め設定された温度になるように圧縮機2が制御され、かつ、第2送風機の送風量、つまり指令回転数Crが圧縮機2の回転数に基づいて決定される構成であってもよい。
【0076】
上述の実施形態では、室内熱交換器、つまり室内を冷却又は加熱する熱交換器が蒸発器にて構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、冷水又は温水が循環される熱交換器にて室内熱交換器が構成されていてもよい。
【0077】
上述の実施形態に係る空調装置は、室内の冷房を行う空調装置であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、室内の暖房を行う空調装置にも適用可能である。
【0078】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1… 空調装置 2…圧縮機 3… 凝縮器 3A… 第1送風機
4… 膨張弁 5…蒸発器 5A… 第2送風機
6… 制御部 6A…記憶部 6B… 基準特性決定部
6C… 異常判断部