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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】掘削装置
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/00 20060101AFI20241015BHJP
   E21B 21/00 20060101ALI20241015BHJP
   E21B 10/60 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
E21B7/00 A
E21B21/00 A
E21B10/60
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021166674
(22)【出願日】2021-10-11
(65)【公開番号】P2023057259
(43)【公開日】2023-04-21
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】591063486
【氏名又は名称】一般財団法人先端建設技術センター
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390002233
【氏名又は名称】ケミカルグラウト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】吉川 正
(72)【発明者】
【氏名】橋立 健司
(72)【発明者】
【氏名】神田 政幸
(72)【発明者】
【氏名】佐名川 太亮
(72)【発明者】
【氏名】田島 新一
(72)【発明者】
【氏名】井出 雄介
(72)【発明者】
【氏名】藤本 達貴
(72)【発明者】
【氏名】関谷 淳一
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特許第4205551(JP,B2)
【文献】特開2011-247028(JP,A)
【文献】特開2007-120120(JP,A)
【文献】米国特許第04436167(US,A)
【文献】特開平09-177071(JP,A)
【文献】特開平08-193482(JP,A)
【文献】特開2005-097936(JP,A)
【文献】特開平03-103593(JP,A)
【文献】特開平01-244016(JP,A)
【文献】特開昭50-149101(JP,A)
【文献】実開昭56-033391(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 7/00 - 7/30
E21B 10/00 - 10/66
E21B 21/00 - 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、
前記ロッド管の下部に設けられ、前記ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、
前記掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管と、
前記下部ビットの上方に設けられ、前記下部ビットにより掘削された掘削孔を拡径する拡径ビットと、
下端に泥水を吸引する吸引口を有し、前記吸引口が前記拡径ビットよりも上方に位置する揚泥管と、
を備え、
前記拡径ビットに設けられ、上方に安定液を噴出する拡径ビット安定液供給口をさらに備えた、
掘削装置。
【請求項2】
前記拡径ビットに設けられ、泥水の流向を掘削孔の中心の側に向ける拡径ビット翼をさらに備えた、請求項1に記載の掘削装置。
【請求項3】
回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、
前記ロッド管の下部に設けられ、前記ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、
下端に泥水を吸引する吸引口を有し、前記吸引口が前記下部ビットよりも上方に位置する揚泥管と、
前記掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管と、
前記ロッド管の外側における前記下部ビットと前記揚泥管の前記吸引口との間の高さの位置に設けられ、泥水を上昇させる上昇翼と、
を備え、
前記ロッド管の下端に設けられ、前記掘削孔の孔底に貫入される貫入部と、
前記孔底に貫入された前記貫入部に対して前記ロッド管を回転動可能に連結する軸受部と、
をさらに備え、
前記ロッド管の前記下部安定液供給口は、前記貫入部が貫入された前記孔底よりも上方に位置する、
掘削装置。
【請求項4】
回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、
前記ロッド管の下部に設けられ、前記ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、
下端に泥水を吸引する吸引口を有し、前記吸引口が前記下部ビットよりも上方に位置する揚泥管と、
前記掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管と、
前記ロッド管の外側における前記揚泥管の前記吸引口の高さ以上の位置に設けられ、泥水を下降させる下降翼と、
を備えた掘削装置。
【請求項5】
回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、
前記ロッド管の下部に設けられ、前記ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、
下端に泥水を吸引する吸引口を有し、前記吸引口が前記下部ビットよりも上方に位置する揚泥管と、
前記掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管と、
前記揚泥管の前記吸引口の高さ以上の位置での泥水の流れを抑制する整流板と、
を備えた掘削装置。
【請求項6】
前記整流板は、下方からの泥水の流れにより回転動する整流ファンを有する、請求項5に記載の掘削装置。
【請求項7】
回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、
前記ロッド管の下部に設けられ、前記ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、
下端に泥水を吸引する吸引口を有する揚泥管と、
前記掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管と、
を備え、
前記揚泥管の前記吸引口は、前記掘削孔の孔底であって、前記孔底の中心から離隔した位置に配置され、前記ロッド管の回転動に伴い位置を移動し、
前記ロッド管の下端に設けられ、前記掘削孔の孔底に貫入される貫入部と、
前記孔底に貫入された前記貫入部に対して前記ロッド管を回転動可能に連結する軸受部と、
をさらに備え、
前記ロッド管の前記下部安定液供給口は、前記貫入部が貫入された前記孔底よりも上方に位置する、
掘削装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現場打ち杭(場所打ち杭)を築造する工法として、BCH(Bottom Circulation Hole)工法が提案されている。例えば、特許文献1には、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、ロッド管の下端に設けられ、ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、下端に泥水を吸引する吸引口を有し、吸引口がロッド管の下端よりも上方に位置する揚泥管と、掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管とを備えた掘削装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4205551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような技術では、削孔効率及び削孔速度のさらなる向上が望まれている。
【0005】
そこで本発明は、削孔効率及び削孔速度が向上する掘削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、ロッド管の下部に設けられ、ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管と、下部ビットの上方に設けられ、下部ビットにより掘削された掘削孔を拡径する拡径ビットと、下端に泥水を吸引する吸引口を有し、吸引口が拡径ビットよりも上方に位置する揚泥管とを備え、拡径ビットに設けられ、上方に安定液を噴出する拡径ビット安定液供給口をさらに備えた掘削装置である。
【0007】
この構成によれば、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、ロッド管の下端に設けられ、ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、下端に泥水を吸引する吸引口を有る揚泥管と、掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管とを備えた掘削装置において、下部ビットの上方に設けられ、下部ビットにより掘削された掘削孔を拡径する拡径ビットをさらに備え、揚泥管の吸引口が拡径ビットよりも上方に位置するため、削孔能力が向上し、削孔効率及び削孔速度が向上する。
【0009】
この構成によれば、拡径ビットに設けられ、上方に安定液を噴出する拡径ビット安定液供給口をさらに備えるため、上方に噴出された安定液に伴い、掘削された土砂と安定液とがさらなる攪拌混合によって、比重、粘性等が均質化、最適化することで、流動性が向上して、上昇し易くなり、揚泥管が掘削された土砂を吸引する効率が向上し、削孔効率及び削孔速度が向上する。
【0010】
また、拡径ビットに設けられ、泥水の流向を掘削孔の中心の側に向ける拡径ビット翼をさらに備えることが好適である。
【0011】
この構成によれば、拡径ビットに設けられ、泥水の流向を掘削孔の中心の側に向ける拡径ビット翼をさらに備えるため、掘削された土砂を孔壁方向から揚泥管の吸引口の方向に集中させるとともに、流れを加速させることで、流動性が向上し、揚泥管が掘削された土砂を吸引する効率が向上し、孔壁近くの安定液の品質保持によるマッドケーキの付着を抑制でき、削孔効率、削孔速度及び杭の周面摩擦力が向上する。
【0012】
また、本発明は、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、ロッド管の下部に設けられ、ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、下端に泥水を吸引する吸引口を有し、吸引口が下部ビットよりも上方に位置する揚泥管と、掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管と、ロッド管の外側における下部ビットと揚泥管の吸引口との間の高さの位置に設けられ、泥水を上昇させる上昇翼とを備えロッド管の下端に設けられ、掘削孔の孔底に貫入される貫入部と、孔底に貫入された貫入部に対してロッド管を回転動可能に連結する軸受部と、をさらに備え、ロッド管の下部安定液供給口は、貫入部が貫入された孔底よりも上方に位置する掘削装置である。
【0013】
この構成によれば、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、ロッド管の下部に設けられ、ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、下端に泥水を吸引する吸引口を有し、吸引口が下部ビットよりも上方に位置する揚泥管と、掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管とを備えた掘削装置において、ロッド管の外側における下部ビットと揚泥管の吸引口との間の高さの位置に設けられ、泥水を上昇させる上昇翼をさらに備えるため、下部ビットから揚泥管の吸引口へ掘削された土砂が上昇し易くなり、揚泥管が掘削された土砂を吸引する効率が向上し、削孔効率及び削孔速度が向上する。
【0014】
また、本発明は、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、ロッド管の下部に設けられ、ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、下端に泥水を吸引する吸引口を有し、吸引口が下部ビットよりも上方に位置する揚泥管と、掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管と、ロッド管の外側における揚泥管の吸引口の高さ以上の位置に設けられ、泥水を下降させる下降翼とを備えた掘削装置である。
【0015】
この構成によれば、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、ロッド管の下部に設けられ、ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、下端に泥水を吸引する吸引口を有し、吸引口が下部ビットよりも上方に位置する揚泥管と、掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管とを備えた掘削装置において、ロッド管の外側における揚泥管の吸引口の高さ以上の位置に設けられ、泥水を下降させる下降翼をさらに備えるため、揚泥管の吸引口の高さに掘削された土砂が下降し易くなり、揚泥管が掘削された土砂を吸引する効率が向上し、削孔効率及び削孔速度が向上する。
【0016】
また、本発明は、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、ロッド管の下部に設けられ、ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、下端に泥水を吸引する吸引口を有し、吸引口が下部ビットよりも上方に位置する揚泥管と、掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管と、揚泥管の吸引口の高さ以上の位置での泥水の流れを抑制する整流板とを備えた掘削装置である。
【0017】
この構成によれば、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、ロッド管の下部に設けられ、ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、下端に泥水を吸引する吸引口を有し、吸引口が下部ビットよりも上方に位置する揚泥管と、掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管とを備えた掘削装置において、揚泥管の吸引口の高さ以上の位置での泥水の流れを抑制する整流板をさらに備えるため、揚泥管の吸引口の高さで掘削された土砂の泥水の流れが抑制されるため、揚泥管が掘削された土砂を吸引する効率が向上し、整流板以浅の孔壁の安定液の品質保持によるマッドケーキの付着を抑制でき、削孔効率、削孔速度及び杭の周面摩擦力が向上する。
【0018】
また、整流板は、下方からの泥水の流れにより回転動する整流ファンを有することが好適である。
【0019】
この構成によれば、整流板は、下方からの泥水の流れにより回転動する整流ファンを有するため、揚泥管の吸引口の高さで掘削された土砂の泥水の流れがさらに抑制されるため、揚泥管が掘削された土砂を吸引する効率が向上し、削孔効率及び削孔速度が向上する。
【0020】
また、本発明は、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、ロッド管の下部に設けられ、ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、下端に泥水を吸引する吸引口を有する揚泥管と、掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管とを備え、揚泥管の吸引口は、掘削孔の孔底であって、孔底の中心から離隔した位置に配置され、ロッド管の回転動に伴い位置を移動し、ロッド管の下端に設けられ、掘削孔の孔底に貫入される貫入部と、孔底に貫入された貫入部に対してロッド管を回転動可能に連結する軸受部と、をさらに備え、ロッド管の下部安定液供給口は、貫入部が貫入された孔底よりも上方に位置する掘削装置である。
【0021】
この構成によれば、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、ロッド管の下部に設けられ、ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、下端に泥水を吸引する吸引口を有する揚泥管と、掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管とを備えた掘削装置において、揚泥管の吸引口は、掘削孔の孔底であって、孔底の中心から離隔した位置に配置され、ロッド管の回転動に伴い位置を移動するため、揚泥管が掘削された土砂を吸引する効率が向上し、削孔効率及び削孔速度が向上する。
【0022】
また、本発明は、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液を噴出する下部安定液供給口を有するロッド管と、ロッド管の下部に設けられ、ロッド管の回転動に伴い掘削孔を掘削する下部ビットと、掘削孔の孔口で安定液を供給する上部安定液供給口を有する安定液供給管と、下部ビットの上方に設けられ、下部ビットにより掘削された掘削孔を拡径する拡径ビットと、下端に泥水を吸引する吸引口を有し、吸引口が拡径ビットよりも上方に位置する揚泥管と、を備え、ロッド管の下部安定液供給口から噴出する安定液には、10μm~数十μm以下の径の微細気泡が含まれる掘削装置である
【0023】
この構成によれば、ロッド管の下部安定液供給口から噴出する安定液には、微細気泡が含まれるため、気泡の上昇に伴い掘削された土砂が上昇し易くなり、揚泥管が掘削された土砂を吸引する効率が向上し、削孔効率及び削孔速度が向上する。
【0024】
また、ロッド管の下端に設けられ、掘削孔の孔底に貫入される貫入部と、孔底に貫入された貫入部に対してロッド管を回転動可能に連結する軸受部とをさらに備え、ロッド管の下部安定液供給口は、貫入部が貫入された孔底よりも上方に位置することが好適である。
【0025】
下部ビットが回転しつつ孔底を掘削するときは、下部ビットと孔底との摩擦が無い方が下部ビットは回転し易い。しかし、下部ビットが効率良く掘削するためには一定の押込み力を下部ビットに与えたいが、下部ビットに与える押込み力が強過ぎると下部ビットは回転し難い。一方、この構成によれば、ロッド管の下端に設けられて掘削孔の孔底に貫入される貫入部と、孔底に貫入された貫入部に対して下部ビットが設けられたロッド管を回転動可能に連結する軸受部とをさらに備えるため、下部ビットに一定の押込み力を与えつつ、下部ビットを容易に回転させることができる。また、下部ビット及びロッド管に与える押込み力が強過ぎると、ロッド管の下部安定液供給口からの安定液の噴出量が下がる可能性がある。一方、この構成によれば、ロッド管の下部安定液供給口は、貫入部が貫入された孔底よりも上方に位置するため、下部ビット及びロッド管の孔底への押込み力が強くても、下部安定液供給口は安定して安定液を噴出できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の掘削装置によれば、削孔効率及び削孔速度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係る掘削装置を示す側面図である。
図2図1の掘削装置の拡径ビット安定液供給口を示す図である。
図3図1の掘削装置の下部ビット、拡径ビット及び上昇翼の別態様を示す側面図である。
図4図1の掘削装置の固化材供給管を示す側面図である。
図5図1の掘削装置の凹凸形成手段及び泥除去手段を示す側面図である。
図6】第2実施形態に係る掘削装置を示す側面図である。
図7図6の掘削装置の整流板を示す平面図である。
図8】第3実施形態に係る掘削装置のロッド管及び下部ビットを示す側面図である。
図9】(A)は第4実施形態に係る掘削装置のロッド管、貫入部及び軸受部を示す図であり、(B)は(A)のα線による横断面図であり、(C)は(A)のβ線による横断面図である。
図10】(A)は第5実施形態に係る掘削装置のロッド管、貫入部及び軸受部が分解された状態を示す図であり、(B)は(A)のγ線による横断面図であり、(C)は(A)のδ線による横断面図であり、(D)は(A)のε線による横断面図であり、(E)は(A)のζ線による横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態に係る掘削装置について詳細に説明する。図1に示される本発明の第1実施形態の掘削装置1Aは、ロッド管10、下部ビット20、揚泥管30、安定液供給管40及び拡径ビット50を備える。本発明の第1実施形態に係る掘削装置1Aは、例えば、BCH(Bottom Circulation Hole)工法により、現場打ち杭(場所打ち杭)を築造する際に掘削孔100を掘削するために適用される。ロッド管10は、不図示の電動機等の動力源により、回転動可能及び上下動可能である。ロッド管10は、下部に安定液L1を噴出する下部安定液供給口11を有する。また、後述するように、ロッド管10は、下部安定液供給口11から、固化材L2及び微細気泡Bを噴出する。
【0029】
下部ビット20は、ロッド管10の下部に設けられ、ロッド管10の回転動に伴い掘削孔100を掘削する。揚泥管30は、下端に泥水104を吸引する吸引口31を有し、吸引口31が下部ビット20及び拡径ビット50よりも上方に位置する。本実施形態では、揚泥管30は複数に分岐し、掘削孔100の幅方向に互いに離隔した複数の吸引口31を有する。安定液供給管40は、掘削孔100の孔口101で安定液L1を供給する上部安定液供給口41を有する。安定液L1は、通常、掘削孔100の孔口101の近傍まで満たされる。安定液L1は、孔壁103の安定を保つために、掘削孔100内に注入する液体をいい、地盤の性質等により適当な種類の安定液が選択される。
【0030】
本実施形態の掘削装置1Aは、下部ビット20の上方に設けられ、下部ビット20により掘削された掘削孔100を拡径する拡径ビット50をさらに備える。本実施形態では、3段の拡径ビット50を備える。下部ビット20の上方に設けられた1段目の拡径ビットは、下部ビット20よりも大きな外径を有し、下部ビット20よりも外周側の孔底102及び孔壁103を掘削する。1段目の拡径ビット50の上方に設けられた2段目の拡径ビットは、1段目の拡径ビット50よりも大きな外径を有し、1段目の拡径ビット50よりも外周側の孔底102及び孔壁103を掘削する。2段目の拡径ビット50の上方に設けられた3段目の拡径ビットは、2段目の拡径ビット50よりも大きな外径を有し、2段目の拡径ビット50よりも外周側の孔底102及び孔壁103を掘削する。拡径ビット50の段数は、適宜、変更可能である。
【0031】
図1及び図2に示されるように、掘削装置1Aは、拡径ビット50に設けられ、上方に安定液L1を噴出する拡径ビット安定液供給口51をさらに備える。図2に示されるように、拡径ビット50の近傍において、ロッド管10の内部には、下方導入管52が配置されている。下方導入管52は、下方導入管52の上方から供給された安定液L1の一部を下方導入管52を介して下方導入管52の下方のロッド管10に導入する。
【0032】
拡径ビット50には、一端がロッド管10の内部と連通し、他端が拡径ビット安定液供給口51として開口し、拡径ビット50に沿って拡径ビット50の内側から外側に延在する上方導入管53が配置されている。上方導入管53は、下方導入管52の上方から供給された安定液L1の他部を上方導入管53を介して拡径ビット安定液供給口51から上方に噴出させる。なお、拡径ビット安定液供給口51は、上方且つ掘削孔100の中心の側に、安定液L1を噴出してもよい。これにより、泥水104の流向を掘削孔100の中心の側に向けることができる。
【0033】
図1に示されるように、掘削装置1Aは、拡径ビット50に設けられ、泥水104の流向を掘削孔100の中心の側に向ける拡径ビット翼54をさらに備える。拡径ビット翼54は、例えば、拡径ビット50に孔壁103とは距離を隔てた側面に略垂直に配置され、泥水104の流向を掘削孔100の中心の側に向けるように、土砂の上昇速度を上げるために配向された板状部材である。なお、拡径ビット翼54は、複数段の拡径ビット50のいずれに設けられていてもよい。
【0034】
掘削装置1Aは、ロッド管10の外側における下部ビット20と揚泥管30の吸引口31との間の高さの位置に設けられ、ロッド管10の回転動に伴い、泥水104を上昇させる上昇翼60Aをさらに備える。上昇翼60Aは、例えば、ロッド管10の外周面に連続して設けられたスクリュー(オーガ)である。スクリュー状の上昇翼60Aは、礫等の泥水104の上昇流で揚げ切れないものを機械的に上昇させる効果を有する。また、図3に示されるように、掘削装置1Aは、例えば、ロッド管10の外周面に複数設けられた板状部材である上昇翼60Bを備えていてもよい。板状部材からなる上昇翼60Bは、泥水104を上昇させる効果を有する。なお、図3の例では、ロッド管10の下部安定液供給口11は、ロッド管10の下端に配置されており、孔底102とは接触しないが、下部安定液供給口11をロッド管10の下端から上方に配置してもよい。
【0035】
また、上昇翼60A,60Bは、下部ビット20で掘削した土砂と下部安定液供給口11から供給される安定液L1との相互が分離しないで撹拌混合して、所定の比重(例えば、1.08~1.15)と粘性(例えば、0.001~0.003Pa・s又は0.001~0.005Pa・s)を確保することを可能とし、且つそれらの流れを層流状態とする形状を有していることが好ましい。つまり、上昇翼60A,60Bは、航空機の層流翼等のように渦が生じ難い形状であることが好ましい。また、上昇翼60A,60Bの上下方向のピッチ(間隔)と張り出し長とは、掘削土の粒子の大きさに対応し、下部安定液供給口11から供給される安定液L1の流れと連動して、土砂を上昇させるのに十分な上向きの流れの速さ(例えば、0.2~1.0m/s)となるように設定されることが好ましい。また、ロッド管10及び下部ビット20の回転速度は、粘土及びシルト、砂、礫及び玉石の順に速く設定されることが好ましい。
【0036】
図1に示されるように、掘削装置1Aは、ロッド管10の外側における揚泥管30の吸引口31の高さ以上の位置に設けられ、ロッド管10の回転動に伴い泥水104を下降させる下降翼70をさらに備える。下降翼70は、ロッド管10の外周面に設けられた板状部材である。下降翼70は、ロッド管10の回転動に伴い揚泥管30に接触しないような掘削孔100の径方向の長さを有する。下降翼70は、必要に応じて、ロッド管10の上下方向に複数段をなすように配置される。なお、下降翼70は、泥水104の流向を掘削孔100の中心の側に向ける流れを発生させる補助翼が設けられていることが好ましい。
【0037】
拡径ビット翼54、上昇翼60A,60B及び下降翼70は、揚泥管30の吸引口31に泥水104の流向を向けるように、位置、数量、大きさ及び傾きが適宜調整されつつ配置される。拡径ビット翼54、上昇翼60A,60B及び下降翼70は、着脱自在でもよく、傾きが変更可能でもよい。
【0038】
図1に示されるように、ロッド管10の下部安定液供給口11から噴出する安定液L1には、10μm~数十μm以下の径の微細気泡Bが含まれる。微細気泡Bは、地上設備に悪影響がなく下部ビット20まで微細気泡Bが消散しない場合は地上設備でロッド管10に混入される。もし、上記の地上設備での微細気泡Bのロッド管10への混入が不可能な場合には、ロッド管10の下端又は下部ビット20にスクリューを設けることにより、微細気泡Bを発生させてもよい。微細気泡Bは、例えば、揚泥管30の吸引口31まで上昇し、吸引口31よりも上方では消滅することが理想である。
【0039】
図1及び図4に示されるように、掘削装置1Aは、掘削孔100の孔底に固化材L2を供給する固化材供給口91を有する固化材供給管90をさらに備える。固化材L2は、例えば、孔底102の土砂及び泥を固化させるセメントミルク又はモルタルである。固化材供給管90は、ロッド管10の内部に配置され、固化材供給口91は、ロッド管10の下部安定液供給口11の上方で、掘削孔100の孔底に固化材L2を供給する。なお、固化材供給管90は、揚泥管30の内部に配置されていてもよい。また、可能な場合は、固化材供給管90は、ロッド管10又は揚泥管30を兼ねていてもよい。また、固化材L2の供給は、掘削孔100の掘削が終了した後でもよい。
【0040】
図1及び図5に示されるように、掘削装置1Aは、掘削孔100の孔壁103に凹凸を形成する凹凸形成手段55をさらに備える。図5に示されるように、凹凸形成手段55は、拡径ビット50の孔壁103と対向する側面に配置された爪状のビットである。凹凸形成手段55は、孔壁103の上下方向に対して、例えば、50mm~数百mm間隔で配置され、ロッド管10の回転動に伴い、孔壁103に凹凸を形成する。なお、凹凸形成手段55は、高噴射ノズルにより孔壁103に凹凸を形成してもよい。
【0041】
掘削装置1Aは、掘削孔100の孔壁103から泥を除去する泥除去手段56をさらに備える。泥除去手段56は、拡径ビット50の孔壁103と対向する側面において凹凸形成手段55の上方に配置され、孔壁103と接触するブラシ57である。また、泥除去手段56は、拡径ビット50の孔壁103と対向する側面において凹凸形成手段55の上方に配置され、孔壁103の泥を吸引する吸引ノズル58である。
【0042】
なお、孔壁103に泥が付き難くする薬剤又は材料を吹き付けてもよい。また、孔壁103に地盤と同等以上の強度で孔壁103に付着して固化する薬剤又は材料を吹き付けてもよい。また、孔壁103からの泥の除去時には、孔壁103の防護のために、泥水104の水位を上げて、孔壁103への圧力を増大させてもよい。
【0043】
本実施形態では、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液L1を噴出する下部安定液供給口11を有するロッド管10と、ロッド管10の下部に設けられ、ロッド管10の回転動に伴い掘削孔100を掘削する下部ビット20と、下端に泥水104を吸引する吸引口31を有する揚泥管30と、掘削孔100の孔口101で安定液L1を供給する上部安定液供給口41を有する安定液供給管40とを備えた掘削装置1Aにおいて、下部ビット20の上方に設けられ、下部ビット20により掘削された掘削孔100を拡径する拡径ビット50をさらに備え、揚泥管30の吸引口31が拡径ビット50よりも上方に位置するため、削孔能力が向上し、削孔効率及び削孔速度が向上する。
【0044】
拡径ビット50により、掘削孔100を拡径でき、ロッド管10の周辺のクリアランスを確保できる。また、泥土の流れる空間を確保して、泥土を円滑に流すことができる。つまり、礫及び固結粘土等の掘削片が大きく、掘削片が詰まる事態を抑制及び最小化できる。
【0045】
また、本実施形態によれば、拡径ビット50に設けられ、上方に安定液L1を噴出する拡径ビット安定液供給口51をさらに備えるため、上方に噴出された安定液L1に伴い、掘削された土砂と安定液L1とがさらなる攪拌混合によって、比重、粘性等が均質化、最適化することで、流動性が向上して、上昇し易くなり、揚泥管30が掘削された土砂を吸引する効率が向上し、削孔効率及び削孔速度が向上する。つまり、下部安定液供給口11から供給される安定液L1と掘削土とが撹拌混合されるが、各段の拡径ビット50の掘削土が累積することで、泥土の性状(比重、粘性)が上昇して、泥土の上昇機能の低下が生じる可能性がある。そこで、拡径ビット安定液供給口51により、拡径ビット50の上部又は中間部で新たな安定液L1を供給することにより、泥土の性状の最適化を図ることができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、拡径ビット50に設けられ、泥水104の流向を掘削孔100の中心の側に向ける拡径ビット翼54をさらに備えるため、掘削された土砂を孔壁103方向から揚泥管30の吸引口の方向に集中させるとともに、流れを加速させることで、流動性が向上し、揚泥管30が掘削された土砂を吸引する効率が向上し、孔壁103近くの安定液L1の品質保持によるマッドケーキの付着を抑制でき、削孔効率、削孔速度及び杭の周面摩擦力が向上する。
【0047】
また、本実施形態によれば、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液L1を噴出する下部安定液供給口11を有するロッド管10と、ロッド管10の下部に設けられ、ロッド管10の回転動に伴い掘削孔100を掘削する下部ビット20と、下端に泥水104を吸引する吸引口31を有し、吸引口31が下部ビット20よりも上方に位置する揚泥管30と、掘削孔100の孔口101で安定液L1を供給する上部安定液供給口41を有する安定液供給管40とを備えた掘削装置1Aにおいて、ロッド管10の外側における下部ビット20と揚泥管30の吸引口31との間の高さの位置に設けられ、泥水104を上昇させる上昇翼60A,60Bをさらに備えるため、下部ビット20から揚泥管30の吸引口31へ掘削された土砂が上昇し易くなり、揚泥管30が掘削された土砂を吸引する効率が向上し、削孔効率及び削孔速度が向上する。
【0048】
上昇翼60A,60Bにより、削孔土砂と泥土とを均質に混ぜて流動性の良い泥水104にできる。上昇翼60A,60Bにより、泥水104の流れが加速される。また、上昇翼60A,60Bにより、上昇翼60A,60Bの表面に泥土が乗せられて上方に移動させられる。
【0049】
また、本実施形態によれば、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液L1を噴出する下部安定液供給口11を有するロッド管10と、ロッド管10の下部に設けられ、ロッド管10の回転動に伴い掘削孔100を掘削する下部ビット20と、下端に泥水104を吸引する吸引口31を有し、吸引口31が下部ビット20よりも上方に位置する揚泥管30と、掘削孔100の孔口101で安定液L1を供給する上部安定液供給口41を有する安定液供給管40とを備えた掘削装置1Aにおいて、ロッド管10の外側における揚泥管30の吸引口31の高さ以上の位置に設けられ、泥水104を下降させる下降翼70をさらに備えるため、揚泥管30の吸引口31の高さに掘削された土砂が下降し易くなり、揚泥管30が掘削された土砂を吸引する効率が向上し、削孔効率及び削孔速度が向上する。
【0050】
従来のBCH工法は、ビットを回転動させて掘削を行い、掘削された土砂を送水による上昇流とともに排出しているため、掘削孔の径が大きくなるに伴い、上昇流速が低下して掘削された土砂の排出がスムーズに行われず削孔効率が低下することがあった。特に、比重の大きな礫が有る場合には、礫を上方まで押し上げることができず、孔底に滞留して掘削速度の著しい低下を招いていた。
【0051】
そうした場合に、一般的なBH(Boring Hole)工法では、掘削により生じた泥水の比重を上げることによって礫を浮遊し易くさせて排出を促すことが行われているが、泥水の比重を上げると孔壁にマッドケーキが付着し易いため、本設杭では認められていないのが現状である。
【0052】
そこで、本実施形態では、泥水104の比重を上げることなく、下部ビット20及び揚泥管30の吸引口31の近傍に、掘削孔100内に上昇流を発生させる整流装置である上昇翼60A,60B、拡径ビット安定液供給口51及び拡径ビット翼54を配置することで、沈降し易い土砂を巻き上げて掘削効率を向上させるように改良した。
【0053】
さらに、本実施形態では、揚泥管30の吸引口31の近傍に上昇流を抑制する整流装置である下降翼70を配置することで、すでに掘削が完了した範囲の掘削孔100内の安定液L1を静水状態にして孔壁103の安定を保つ構造とした。
【0054】
このように、本実施形態は、一つの掘削孔100の中の水を、揚泥管30の吸引口31の下方の「掘削水循環領域」と、揚泥管30の吸引口31の上方の「安定液静水領域」との二つに分けることにより、掘削効率と孔壁品質の向上を図るものである。
【0055】
また、本実施形態によれば、揚泥管30は、掘削孔100の幅方向に互いに離隔した複数の吸引口31を有するため、掘削孔100の径が大きくなったとしても、揚泥管30が掘削された土砂を吸引する効率を維持できる。
【0056】
また、本実施形態によれば、ロッド管10の下部安定液供給口11から噴出する安定液L1には、10μm~数十μm以下の径の微細気泡Bが含まれるため、微細気泡Bの上昇に伴い掘削された土砂が上昇し易くなり、揚泥管30が掘削された土砂を吸引する効率が向上し、削孔効率及び削孔速度が向上する。10μm~数十μm以下の小さな径の微細気泡Bであれば、揚泥管30の吸引の動力となるサクションポンプの動作不良を防止できる。また、通常の径の微細気泡では、上方向の狭い範囲にしか土砂を連行させる効力を発揮しないが、10μm~数十μm以下の小さな径の微細気泡Bであれば、広範囲に土砂を連行させる効力を発揮する。また、本実施形態の微細な微細気泡Bは、下部ビット20及び拡径ビット50への土粒子の付着を引き剥がす。また、本実施形態の微細な微細気泡Bは、上昇翼60A,60B及び下降翼70の回転抵抗を低減する。
【0057】
また、本実施形態の微細気泡Bは安定液L1に含まれるコロイド粒子と結合することでコロイド粒子に浮力を付加する。コロイド粒子は安定液L1中に滞留することなく上昇するためマッドケーキの形成の進展防止に寄与する。さらに、本実施形態の微細気泡Bは、既に形成されたマッドケーキを引き剥がしマッドケーキ厚減少に寄与する。また、掘削完了後に鉄筋籠を建て込み安定液L1とコンクリートとを置換する際に、本実施形態の微細気泡Bは鉄筋籠と安定液L1の摩擦を低減させることにより、鉄筋籠に付着したベントナイトを低減させる。また、本実施形態の微細気泡B中に炭酸ガスを注入することにより置換されたコンクリートを緻密化させることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、ロッド管10の下部安定液供給口11は、ロッド管10の下端から上方に離隔した位置に配置されているため、ロッド管10の下端の孔底への押込み力が強くても、下部安定液供給口11は安定して安定液L1を供給できる。
【0059】
また、本実施形態によれば、掘削孔100の孔底102に固化材L2を供給する固化材供給口91を有する固化材供給管90をさらに備えるため、孔底102の土砂及び泥を固化材で固化させることにより、揚泥管30が固化された土砂及び泥を吸引する効率が向上し、削孔効率及び削孔速度が向上する。
【0060】
また、本実施形態によれば、掘削孔100の孔壁103に凹凸を形成する凹凸形成手段55をさらに備えるため、掘削孔100にコンクリートを打設し、現場打ち杭を築造した際に孔壁103の摩擦力を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、掘削孔100の孔壁103から泥を除去する泥除去手段56をさらに備えるため、掘削孔100にコンクリートを打設し、現場打ち杭を築造した際に孔壁103の摩擦力を向上させることができる。
【0062】
なお、以上説明した本実施形態の掘削装置1Aにおいて、拡径ビット50、上昇翼60A,60B及び下降翼70のいずれか1つを備えていればよく、拡径ビット50、上昇翼60A,60B及び下降翼70のいずれかが省略されてもよい。また、本実施形態の掘削装置1Aにおいて、拡径ビット安定液供給口51、拡径ビット翼54、整流ファン82、微細気泡Bの混入、固化材供給管90、凹凸形成手段55及び泥除去手段56のいずれかは省略されてもよい。
【0063】
以下、本発明の第2実施形態の掘削装置について説明する。図6に示される本発明の第2実施形態の掘削装置1Bは、上記第1実施形態の掘削装置1Aの下降翼70に替えて整流板80を備える。図6及び図7に示されるように、整流板80は、揚泥管30の吸引口31の高さ以上の位置での泥水104の流れを抑制する。整流板80は、揚泥管30に接触しないような径を有する円板状部材である。図7に示されるように、整流板80は、ロッド管10が挿通されるロッド管挿通孔部81を有する。ロッド管10の外周面とロッド管挿通孔部81の内周面とは接続されていないため、ロッド管10の回動動に対して、整流板80は回転動しない。
【0064】
整流板80は、下方からの泥水104の流れにより回転動する整流ファン82を有する。図7の例では、整流板80は、平面視で互いに対称な位置に4つの整流ファン82を有する。平面視で互いに対向する4つの整流ファン82は、下方からの泥水104の流れによってロッド管10の回転動と逆方向に回転動する。これにより、下方からの泥水104の流れが消失され、泥水104は静水状態となるため、整流板80の回転動が防止される。なお、整流板80の掘削孔100での深度の維持のために、揚泥管30又は孔口101から整流板80まで延在する不図示の支持部材により整流板80が支持されてもよい。
【0065】
本実施形態によれば、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液L1を噴出する下部安定液供給口11を有するロッド管10と、ロッド管10の下部に設けられ、ロッド管10の回転動に伴い掘削孔100を掘削する下部ビット20と、下端に泥水を吸引する吸引口31を有し、吸引口31が下部ビット20よりも上方に位置する揚泥管30と、掘削孔100の孔口101で安定液L1を供給する上部安定液供給口41を有する安定液供給管40とを備えた掘削装置1Bにおいて、揚泥管30の吸引口31の高さ以上の位置での泥水104の流れを抑制する整流板80をさらに備えるため、揚泥管30の吸引口31の高さで掘削された土砂の泥水104の流れが抑制されるため、揚泥管30が掘削された土砂を吸引する効率が向上し、整流板80以浅の孔壁103の安定液L1の品質保持によるマッドケーキの付着を抑制でき、削孔効率、削孔速度及び杭の周面摩擦力が向上する。
【0066】
また、本実施形態によれば、整流板80は、下方からの泥水104の流れにより回転動する整流ファン82を有するため、揚泥管30の吸引口31の高さで掘削された土砂の泥水104の流れがさらに抑制されるため、揚泥管30が掘削された土砂を吸引する効率が向上し、削孔効率及び削孔速度が向上する。
【0067】
上記第1実施形態の掘削装置1Aと同様に、本実施形態では、揚泥管30の吸引口31の近傍に上昇流を抑制する整流装置である整流板80を配置することで、すでに掘削が完了した範囲の掘削孔100内の安定液L1を静水状態にして孔壁103の安定を保つ構造とした。
【0068】
このように、上記第1実施形態の掘削装置1Aと同様に、本実施形態は、一つの掘削孔100の中の水を、揚泥管30の吸引口31の下方の「掘削水循環領域」と、揚泥管30の吸引口31の上方の「安定液静水領域」との二つに分けることにより、掘削効率と孔壁品質の向上を図るものである。
【0069】
なお、以上説明した本実施形態の掘削装置1Bにおいて、整流板80を備えていればよく、拡径ビット50、及び上昇翼60A,60Bのいずれかが省略されてもよい。また、本実施形態の掘削装置1Bにおいて、拡径ビット安定液供給口51、拡径ビット翼54、整流ファン82、微細気泡Bの混入、固化材供給管90、凹凸形成手段55及び泥除去手段56のいずれかは省略されてもよい。
【0070】
以下、本発明の第3実施形態の掘削装置について説明する。図8に示される本発明の第3実施形態の掘削装置1Cは、上記第1実施形態の掘削装置1Aと同様に、ロッド管10、下部ビット20、揚泥管30、不図示の安定液供給管40、拡径ビット50、固化材供給管90、凹凸形成手段55及び泥除去手段56を備え、ロッド管10の下部安定液供給口11から噴出する安定液L1には、10μm~数十μm以下の径の微細気泡Bが含まれる。なお、本実施形態では、揚泥管30の吸引口31は必ずしも下部ビット20よりも上方に位置する必要はなく、可能であれば、揚泥管30の吸引口31は下部ビット20の下端と同じ高さでもよい。一方、本実施形態の掘削装置1Cは、上記第1実施形態の掘削装置1Aの上昇翼60A,60B、下降翼70、拡径ビット安定液供給口51及び拡径ビット翼54は備えていない。また、本実施形態の掘削装置1Cは、上記第2実施形態の掘削装置1Bの整流板80は備えていない。
【0071】
本実施形態の掘削装置1Cでは、揚泥管30の吸引口31は、掘削孔100の孔底102であって、孔底102の中心から離隔した位置に配置され、ロッド管10の回転動に伴い位置を移動する。揚泥管30は、ロッド管10の周囲を外部の泥水104から封止しつつ囲繞する上部非回転部32と、上部非回転部32の下方でロッド管10の周囲を外部の泥水104から封止しつつ囲繞する下部回転部33とを有する。
【0072】
上部非回転部32は、ベアリング34を介してロッド管10との間を封止されつつ、ロッド管10が回転動可能なようにロッド管10に連結されている。上記の構造により、ロッド管10の回転動に伴い、上部非回転部32は回転動しない。上部非回転部32は、揚泥管30の孔口101側と一体化している。上部非回転部32の内部は、揚泥管30の孔口101側と連通している。
【0073】
下部回転部33は、ロータリージョイント35を介して上部非回転部32との間を封止されつつ、回転動しない上部非回転部32に対して回転動可能なように上部非回転部32と連結されている。下部回転部33の下部は、ロッド管10との間を封止されつつロッド管10と一体化されている。上記の構造により、ロッド管10の回転動に伴い、下部回転部33は回転動する。下部回転部33の内部は、上部非回転部32の内部と連通している。下部回転部33は、揚泥管30の吸引口31の側と一体化している。下部回転部33の内部は、揚泥管30の吸引口31の側と連通している。
【0074】
揚泥管30の吸引口31の側は、孔底102の中心のロッド管10から離隔した位置に配置されている。したがって、ロッド管10の回転動に伴い、ロッド管10と一体化されている下部回転部33は回転動し、下部回転部33と一体化した揚泥管30の吸引口31の側は、孔底102の中心から離隔しつつ平面視でロッド管10を中心とした円を描くように位置を移動する。揚泥管30の吸引口31の側と、揚泥管30の孔口101側とは、上部非回転部32及び下部回転部33を介して互いに連通しているため、吸引口31で吸引された泥水104は孔口101まで揚げられる。
【0075】
本実施形態によれば、回転動可能及び上下動可能であり、下部に安定液L1を噴出する下部安定液供給口11を有するロッド管10と、ロッド管10の下部に設けられ、ロッド管10の回転動に伴い掘削孔100を掘削する下部ビット20と、下端に泥水104を吸引する吸引口31を有する揚泥管30と、掘削孔100の孔口101で安定液L1を供給する上部安定液供給口41を有する安定液供給管40とを備えた掘削装置1Cにおいて、揚泥管30の吸引口31は、掘削孔100の孔底102であって、孔底102の中心から離隔した位置に配置され、ロッド管10の回転動に伴い位置を移動するため、揚泥管30が掘削された土砂を吸引する効率が向上し、削孔効率及び削孔速度が向上する。
【0076】
つまり、BCH工法では、泥水104の比重が小さいため、掘削により生じたスライム105が孔底102に溜まりやすい。特に、ロッド管10の下部安定液供給口11が配置される孔底102の中心から離隔した部位では、安定液L1の流れが遅く、揚泥管30の吸引口31の位置が一定であるため、スライム105が溜まりやすい。一方、本実施形態では、揚泥管30の吸引口31は、掘削孔100の孔底102に配置され、孔底102の中心から離隔しつつ平面視でロッド管10を中心とした円を描くように位置を移動するため、溜まりやすい位置のスライム105を効率良く吸引できる。
【0077】
なお、以上説明した本実施形態の掘削装置1Cにおいて、拡径ビット50、微細気泡Bの混入、固化材供給管90、凹凸形成手段55及び泥除去手段56のいずれかは省略されてもよい。
【0078】
以下、本発明の第4実施形態の掘削装置について説明する。図9(A)、図9(B)及び図9(C)に示されるように、本実施形態の掘削装置1Dは、上記の第1実施形態の掘削装置1A、第2実施形態の掘削装置1B及び第3実施形態の掘削装置1Cのいずれかの構成に加えて、ロッド管10の下端に設けられ、掘削孔100の孔底102に貫入される貫入部12Aと、孔底102に貫入された貫入部12Aに対してロッド管10を回転動可能に連結する軸受部13Aとをさらに備える。また、ロッド管10の下部安定液供給口11は、貫入部12Aが貫入された孔底102よりも上方に位置する。本実施形態では、ロッド管10の下部安定液供給口11は、貫入部12Aが貫入された孔底102よりも上方であって、下部ビット20の下方に位置する。
【0079】
貫入部12Aは、鉛直方向に延在し、側面視で下端が頂角をなす二等辺三角形状の板材から構成されている。側面視で二等辺三角形状の板材の表面及び裏面のそれぞれには、鉛直方向に延在し、側面視で下端が鋭角をなす直角三角形状の板材の直角を挟むいずれかの辺が接合されている。貫入部12Aは、平面視で十字状をなす。軸受部13Aは、軸方向が鉛直方向に延在するボールベアリングである。貫入部12Aの上端は、軸受部13Aの下端に接合されている。軸受部13Aは、孔底102に貫入され、孔底102に固定された貫入部12Aに対して、ロッド管10の外周面を回転動可能に軸支する。ロッド管10の下部安定液供給口11は、平面視で十字状をなす貫入部12Aの板材の間から外部に連通し、安定液L1を噴出する。
【0080】
下部ビット20が回転しつつ孔底102を掘削するときは、下部ビット20と孔底102との摩擦が無い方が下部ビット20は回転し易い。しかし、下部ビット20が効率良く掘削するためには一定の押込み力を下部ビット20に与えたいが、下部ビット20に与える押込み力が強過ぎると下部ビット20は回転し難い。一方、本実施形態では、ロッド管10の下端に設けられて掘削孔100の孔底102に貫入される貫入部12Aと、孔底102に貫入された貫入部12Aに対して下部ビット20が設けられたロッド管10を回転動可能に連結する軸受部13Aとをさらに備えるため、下部ビット20に一定の押込み力を与えつつ、下部ビット20を容易に回転させることができる。
【0081】
また、下部ビット20及びロッド管10に与える押込み力が強過ぎると、ロッド管10の下部安定液供給口11からの安定液L1の噴出量が下がる可能性がある。一方、本実施形態によれば、ロッド管10の下部安定液供給口11は、貫入部12Aが貫入された孔底102よりも上方に位置するため、下部ビット20及びロッド管10の孔底102への押込み力が強くても、下部安定液供給口11は安定して安定液L1を噴出できる。本実施形態では、押込み力を一定に保持可能である。また、下部安定液供給口11から噴出される安定液L1の流れにより、孔底102は掘られる。本実施形態では、押込み力と安定液L1の流れとにより孔底102が掘られ、下部ビット20が下がった分、下部ビット20で掘削がなされる。
【0082】
また、本実施形態では、孔底102に貫入部12Aが貫入され、軸受部13Aにより、孔底102に貫入された貫入部12Aに対してロッド管10が回転動可能に連結されるため、ロッド管10の回転の安定性が向上する。このため、円錐状の孔底102の頂角(ピット角)を緩め、孔底102が緩やかになることで、孔底102にスライムが溜まり難くなる。このため、下部ビット20の高さを縮めることが可能となり、揚泥管30の吸引口31を下部ビット20に近づけることができ、揚泥能力がさらに高まる。
【0083】
以下、本発明の第5実施形態の掘削装置について説明する。図10(A)、図10(B)、図10(C)、図10(D)及び図10(E)に示されるように、本実施形態の掘削装置1Eは、上記の第1実施形態の掘削装置1A、第2実施形態の掘削装置1B及び第3実施形態の掘削装置1Cのいずれかの構成に加えて、ロッド管10の下端に設けられ、掘削孔100の孔底102に貫入される貫入部12Bと、孔底102に貫入された貫入部12Bに対してロッド管10を回転動可能に連結する軸受部13Bとをさらに備える。また、ロッド管10の下部安定液供給口11は、貫入部12Bが貫入された孔底102よりも上方に位置する。本実施形態では、ロッド管10の下部安定液供給口11は、貫入部12Bが貫入された孔底102よりも上方であって、下部ビット20の下方に位置する。
【0084】
貫入部12Bは、環状基部14と板状先端部15とから構成されている。板状先端部15は、上記の第4実施形態の貫入部12Aと同様に、鉛直方向に延在し、側面視で下端が頂角をなす二等辺三角形状の板材から構成されている。側面視で二等辺三角形状の板材の表面及び裏面のそれぞれには、鉛直方向に延在し、側面視で下端が鋭角をなす直角三角形状の板材の直角を挟むいずれかの辺が接合されている。板状先端部15は、平面視で十字状をなす。環状基部14は、平面視で円環状をなす部材である。環状基部14の下端には、板状先端部15の上端が接合されている。
【0085】
軸受部13Bは、軸方向が鉛直方向に延在するスラストベアリングである。軸受部13Bの下端には、貫入部12Bの環状基部14の上端が接合される。軸受部13Bの上端には、ロッド管10の下端が接合される。軸受部13Bは、孔底102に貫入され、孔底102に固定された貫入部12Bに対して、ロッド管10の下端を回転動可能に軸支する。ロッド管10の下部安定液供給口11は、平面視で円環状をなす環状基部14の円環の内側と、平面視で十字状をなす板状先端部15の板材の間とから外部に連通し、安定液L1を噴出する。本実施形態においても、上記第4実施形態と同様の効果を奏する。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、貫入部12A,12B、軸受部13A,13B、拡径ビット50、上昇翼60A,60B、下降翼70、整流板80、拡径ビット安定液供給口51、拡径ビット翼54、整流ファン82、固化材供給管90、凹凸形成手段55及び泥除去手段56の形状、位置及び数量は適宜変更可能である。また、上記の掘削装置1Cにおいて、揚泥管30の吸引口31が、掘削孔100の孔底102であって、孔底102の中心から離隔した位置に配置され、ロッド管10の回転動に伴い位置を移動すれば、その構造は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0087】
1A,1B,1C,1D,1E…掘削装置、10…ロッド管、11…下部安定液供給口、12A,12B…貫入部、13A,13B…軸受部、14…環状基部、15…板状先端部、20…下部ビット、30…揚泥管、31…吸引口、32…上部非回転部、33…下部回転部、34…ベアリング、35…ロータリージョイント、40…安定液供給管、41…上部安定液供給口、50…拡径ビット、51…拡径ビット安定液供給口、52…下方導入管、53…上方導入管、54…拡径ビット翼、55…凹凸形成手段、56…泥除去手段、57…ブラシ、58…吸引ノズル、60A,60B…上昇翼、70…下降翼、80…整流板、81…ロッド管挿通孔部、82…整流ファン、90…固化材供給管、91…固化材供給口、100…掘削孔、101…孔口、102…孔底、103…孔壁、104…泥水、105…スライム、L1…安定液、L2…固化材、B…微細気泡。
図1
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図10