(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】回転電機の永久磁石減磁方法、回転電機の永久磁石減磁システム、及び、ロータの取り出し方法
(51)【国際特許分類】
H02P 25/022 20160101AFI20241015BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20241015BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
H02P25/022
H02K15/02 A
H02K15/02 K
H02K15/03 H
(21)【出願番号】P 2021199402
(22)【出願日】2021-12-08
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 芳永
(72)【発明者】
【氏名】二村 圭哉
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-183127(JP,A)
【文献】特開2014-150638(JP,A)
【文献】特開2004-242398(JP,A)
【文献】特開2011-188637(JP,A)
【文献】特開2015-100229(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0373873(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/022
H02K 15/02
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を有するロータと、電流が通電される巻線と、を備えた回転電機の前記永久磁石を減磁させる、回転電機の永久磁石減磁方法であって、
前記ロータの周方向位置を検出するステップと、
前記永久磁石を加熱するステップと、を含み、
前記永久磁石を加熱するステップの前に、前記ロータの周方向位置を検出するステップで検出した前記ロータの周方向位置に基づいて、前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置であるか否かを判定するステップをさらに含み、
前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置である場合に、前記永久磁石を加熱するステップを行い、
前記永久磁石を加熱するステップにおいて、
前記ロータの周方向位置を検出するステップで検出した前記ロータの周方向位置に基づいて、前記巻線の合成磁界の向きが前記ロータの前記永久磁石のd軸線と一致するような交流電流を前記巻線に通電する、回転電機の永久磁石減磁方法。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機の永久磁石減磁方法であって、
前記永久磁石を加熱するステップの後に、前記巻線に減磁電流を通電して前記永久磁石を減磁するステップをさらに含む、回転電機の永久磁石減磁方法。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の回転電機の永久磁石減磁方法であって、
前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置でない場合に、前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置に前記ロータを回転させるステップをさらに含む、回転電機の永久磁石減磁方法。
【請求項4】
永久磁石を有するロータと、電流が通電される巻線と、を有する回転電機と、
前記巻線に電力を供給する電力供給装置と、
前記電力供給装置を制御する制御装置と、を備え、
前記回転電機の前記永久磁石を減磁させる、回転電機の永久磁石減磁システムであって、
前記制御装置は、
前記ロータの周方向位置を検出し、
検出した前記ロータの周方向位置に基づいて、前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置であるか否かを判定し、
前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置である場合に、前記電力供給装置を制御して、前記巻線の合成磁界の向きが前記ロータの前記永久磁石のd軸線と一致するような交流電流を前記巻線に通電することによって、前記永久磁石を加熱する、回転電機の永久磁石減磁システム。
【請求項5】
請求項
4に記載の回転電機の永久磁石減磁システムであって、
前記制御装置は、
前記永久磁石を加熱した後に、
前記電力供給装置を制御して、前記巻線に減磁電流を通電することによって、前記永久磁石を減磁する、回転電機の永久磁石減磁システム。
【請求項6】
請求項
4又は5に記載の回転電機の永久磁石減磁システムであって、
前記制御装置は、
前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置でない場合に、前記電力供給装置を制御して、前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置に前記ロータを回転させる、回転電機の永久磁石減磁システム。
【請求項7】
請求項
4~6のいずれか一項に記載の回転電機の永久磁石減磁システムであって、
前記永久磁石減磁システムは、車両に搭載されている、回転電機の永久磁石減磁システム。
【請求項8】
永久磁石を有するロータと、電流が通電される巻線と、を有する回転電機と、
前記巻線に電力を供給する電力供給装置と、
前記電力供給装置を制御する制御装置と、を備え、
前記回転電機の前記永久磁石を減磁させる、回転電機の永久磁石減磁システムであって、
前記永久磁石減磁システムは、車両に搭載されており、
前記車両は、パーキングギヤを有するパーキングロック機構を備え、
前記パーキングロック機構は、前記パーキングギヤが回転不能なパーキングロック状態と、前記パーキングギヤが自由に回転可能なアンロック状態と、を遷移可能であり、
前記制御装置は、
前記ロータの周方向位置を検出し、
検出した前記ロータの周方向位置に基づいて、前記巻線の合成磁界の向きが前記ロータの前記永久磁石のd軸線と一致するような交流電流を前記巻線に通電することによって、前記永久磁石を加熱し、
前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置である場合に、前記パーキングロック機構が前記パーキングロック状態となるように前記パーキングロック機構を制御する、回転電機の永久磁石減磁システム。
【請求項9】
永久磁石を有するロータと、電流が通電される巻線と、を有する回転電機と、
前記巻線に電力を供給する電力供給装置と、
前記電力供給装置に接続する電源と、
前記電力供給装置を制御する制御装置と、を備える車両から前記ロータを取り出す、ロータの取り出し方法であって、
前記ロータの取り出し方法は、
前記制御装置において、前記ロータの前記永久磁石を減磁させる永久磁石減磁制御を実行するか否かを判断するステップと、
前記永久磁石減磁制御を実行するステップと、
前記ロータを前記回転電機から取り出すステップと、を含み、
前記永久磁石減磁制御を実行するか否かを判断するステップは、
前記ロータの周方向位置を検出するステップと、
前記永久磁石減磁制御を実行するステップの前に、前記ロータの周方向位置を検出するステップで検出した前記ロータの周方向位置に基づいて、前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置であるか否かを判定するステップと、
前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置である場合に、前記永久磁石減磁制御を実行すると判定するステップと、を含み、
前記永久磁石減磁制御は、前記制御装置が前記電力供給装置を制御して、前記電源から前記電力供給装置を介して前記巻線に交流電流を通電することによって前記永久磁石を加熱するステップを含み、
前記永久磁石減磁制御を実行すると判断した場合に、前記永久磁石減磁制御を実行するステップを行い、
前記永久磁石減磁制御を実行するステップの後に、前記ロータを前記回転電機から取り出すステップを行う、ロータの取り出し方法。
【請求項10】
請求項
9に記載のロータの取り出し方法であって、
前記永久磁石減磁制御は、前記永久磁石を加熱するステップの後に、前記制御装置が前記電力供給装置を制御して、前記電源から前記電力供給装置を介して前記巻線に減磁電流を通電することによって前記永久磁石を減磁するステップをさらに含み、
前記永久磁石減磁制御を実行するステップの後に、前記ロータを前記回転電機から取り出すステップを行う、ロータの取り出し方法。
【請求項11】
請求項
9又は10に記載のロータの取り出し方法であって、
前記ロータの取り出し方法は、前記回転電機を前記車両から取り出すステップをさらに含み、
前記永久磁石減磁制御を実行するステップの後に、前記回転電機を前記車両から取り出すステップを行い、
前記回転電機を前記車両から取り出すステップの後に、前記ロータを前記回転電機から取り出すステップを行う、ロータの取り出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両などに搭載される回転電機の永久磁石減磁方法、回転電機の永久磁石減磁システム、及び、ロータの取り出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、低炭素社会の実現に向けた取り組みとして、駆動源の電動化が急速に進んでいる。例えば、自動車分野においては、バッテリが搭載され、バッテリに蓄電された電力によって駆動する回転電機の回転動力によって走行する電動車両の普及が進んでいる。
【0003】
一方、包摂的で持続可能な産業化を推進するために、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大が求められており、回転電機においても、設計段階において、3R(Reduce Reuse Recycle)への配慮が求められている。
【0004】
一般に、回転電機のロータの永久磁石は、強力な磁力を有する永久磁石であるので、ロータをステータに対して軸方向にスライドさせて回転電機からロータを取り出す際、ロータが径方向にずれてしまうと、永久磁石の磁力によってロータがステータに強力にくっついてしまい、ロータをステータに対して軸方向にスライドさせて回転電機からロータを取り出すことが困難となってしまう。
【0005】
したがって、従来では、回転電機からロータを取り出すためには、ロータに径方向のずれが生じないようにしながら、ロータの永久磁石の強力な磁力に抗して大きな力でロータをステータに対して軸方向にスライドさせる必要があった。そのため、ロータに径方向のずれが生じないようにしながら、ロータの永久磁石の強力な磁力に抗してロータをステータに対して軸方向にスライドさせるための専用工具や専用設備が必要であり、そのような専用工具や専用設備を有する限られた場所でなければ、回転電機からロータを取り出すことができず、回転電機は、解体の利便性が低く、解体コストが高くなっていた。
【0006】
この課題を解決するための技術の1つとして、特許文献1には、回転電機からロータを取り出す際、ステータのコイルに高周波電流を通電(場合により減磁電流も併用して通電)して永久磁石を減磁した後に、回転電機からロータを取り出す方法が記載されている。特許文献1に記載されたロータの取り出し方法では、永久磁石が減磁されて永久磁石の磁力が弱い状態で、回転電機からロータを取り出すので、回転電機からロータを取り出すことが容易となり、解体の利便性が向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたロータの取り出し方法では、永久磁石を減磁する際に、ステータのコイルに永久磁石を加熱するための高周波電流や永久磁石を減磁するための減磁電流を通流すると、ロータに回転トルクが発生する場合がある。永久磁石を加熱又は減磁しているときに、ロータに回転トルクが発生すると、ロータの回転動力が伝達する装置に大きな負荷がかかる虞がある。また、特許文献1に記載されたロータの取り出し方法では、永久磁石を有するロータの近傍に高周波電流を通流可能な誘導加熱装置を配置する必要がある。
【0009】
そのため、特許文献1に記載されたロータの取り出し方法は、回転電機の解体の利便性や回転電機の解体コストに改善の余地があった。
【0010】
本発明は、回転電機の解体の利便性を向上することができる回転電機の永久磁石減磁方法、回転電機の永久磁石減磁システム、及び、ロータの取り出し方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1は、
永久磁石を有するロータと、電流が通電される巻線と、を備えた回転電機の前記永久磁石を減磁させる、回転電機の永久磁石減磁方法であって、
前記ロータの周方向位置を検出するステップと、
前記永久磁石を加熱するステップと、を含み、
前記永久磁石を加熱するステップの前に、前記ロータの周方向位置を検出するステップで検出した前記ロータの周方向位置に基づいて、前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置であるか否かを判定するステップをさらに含み、
前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置である場合に、前記永久磁石を加熱するステップを行い、
前記永久磁石を加熱するステップにおいて、
前記ロータの周方向位置を検出するステップで検出した前記ロータの周方向位置に基づいて、前記巻線の合成磁界の向きが前記ロータの前記永久磁石のd軸線と一致するような交流電流を前記巻線に通電する。
【0012】
本発明の第2は、
永久磁石を有するロータと、電流が通電される巻線と、を有する回転電機と、
前記巻線に電力を供給する電力供給装置と、
前記電力供給装置を制御する制御装置と、を備え、
前記回転電機の前記永久磁石を減磁させる、回転電機の永久磁石減磁システムであって、
前記制御装置は、
前記ロータの周方向位置を検出し、
検出した前記ロータの周方向位置に基づいて、前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置であるか否かを判定し、
前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置である場合に、前記電力供給装置を制御して、前記巻線の合成磁界の向きが前記ロータの前記永久磁石のd軸線と一致するような交流電流を前記巻線に通電することによって、前記永久磁石を加熱する。
また、本発明の第3は、
永久磁石を有するロータと、電流が通電される巻線と、を有する回転電機と、
前記巻線に電力を供給する電力供給装置と、
前記電力供給装置を制御する制御装置と、を備え、
前記回転電機の前記永久磁石を減磁させる、回転電機の永久磁石減磁システムであって、
前記永久磁石減磁システムは、車両に搭載されており、
前記車両は、パーキングギヤを有するパーキングロック機構を備え、
前記パーキングロック機構は、前記パーキングギヤが回転不能なパーキングロック状態と、前記パーキングギヤが自由に回転可能なアンロック状態と、を遷移可能であり、
前記制御装置は、
前記ロータの周方向位置を検出し、
検出した前記ロータの周方向位置に基づいて、前記巻線の合成磁界の向きが前記ロータの前記永久磁石のd軸線と一致するような交流電流を前記巻線に通電することによって、前記永久磁石を加熱し、
前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置である場合に、前記パーキングロック機構が前記パーキングロック状態となるように前記パーキングロック機構を制御する。
【0013】
本発明の第4は、
永久磁石を有するロータと、電流が通電される巻線と、を有する回転電機と、
前記巻線に電力を供給する電力供給装置と、
前記電力供給装置に接続する電源と、
前記電力供給装置を制御する制御装置と、を備える車両から前記ロータを取り出す、ロータの取り出し方法であって、
前記ロータの取り出し方法は、
前記制御装置において、前記ロータの前記永久磁石を減磁させる永久磁石減磁制御を実行するか否かを判断するステップと、
前記永久磁石減磁制御を実行するステップと、
前記ロータを前記回転電機から取り出すステップと、を含み、
前記永久磁石減磁制御を実行するか否かを判断するステップは、
前記ロータの周方向位置を検出するステップと、
前記永久磁石減磁制御を実行するステップの前に、前記ロータの周方向位置を検出するステップで検出した前記ロータの周方向位置に基づいて、前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置であるか否かを判定するステップと、
前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置である場合に、前記永久磁石減磁制御を実行すると判定するステップと、を含み、
前記永久磁石減磁制御は、前記制御装置が前記電力供給装置を制御して、前記電源から前記電力供給装置を介して前記巻線に交流電流を通電することによって前記永久磁石を加熱するステップを含み、
前記永久磁石減磁制御を実行すると判断した場合に、前記永久磁石減磁制御を実行するステップを行い、
前記永久磁石減磁制御を実行するステップの後に、前記ロータを前記回転電機から取り出すステップを行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転電機の解体の利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態における車両に搭載された永久磁石減磁システムを示すブロック図である。
【
図2】
図1の永久磁石減磁システムにおける回転電機の模式図である。
【
図3】
図1の永久磁石減磁システムを用いて、ロータの永久磁石を減磁して、回転電機からロータを取り出す一連のフローを示したフローチャートである。
【
図4】
図2の回転電機の周方向において、ロータの永久磁石d軸線が、巻線に電流を通電した場合のU相巻線の磁気中心線と一致した状態を示した回転電機の模式図である。
【
図5】
図2の回転電機の周方向において、ロータの永久磁石d軸線が、巻線に電流を通電した場合のU相巻線の磁気中心線と一致していない状態を示した回転電機の模式図である。
【
図6】
図2の回転電機において、永久磁石加熱処理を実行している時の回転電機の模式図、並びに、永久磁石加熱処理を実行している時にU相巻線、V相、及び、W相巻線に流れる電流の電流値を示した図である。
【
図7】
図2の回転電機において、永久磁石減磁処理を実行している時の回転電機の模式図である。
【
図8】
図1の車両に搭載されたパーキングロック機構の要部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の回転電機の永久磁石減磁システムの一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。
【0017】
図1に示すように、本実施形態では、回転電機の永久磁石減磁システム1は、車両Vに搭載されている。永久磁石減磁システム1は、回転電機20と電力供給装置30とを有する駆動装置10と、駆動装置10を制御する制御装置40と、を備える。
【0018】
車両Vには、さらに、駆動装置10の電力供給装置30に電力を供給するバッテリ50と、駆動装置10の回転電機20から出力された回転動力を変速する変速機60と、が搭載されている。変速機60は、パーキングロック機構70を有する。
【0019】
そして、車両Vは、バッテリ50に蓄電された電力によって駆動装置10を駆動させ、駆動装置10の回転電機20から出力された回転動力を変速機60で変速して、車軸80から車輪WHに伝達し、車輪WHを駆動する。
【0020】
図8に示すように、パーキングロック機構70は、変速機60の回転軸61と一体に回転するパーキングギヤ71と、パーキングポール72と、を備える。パーキングギヤ71の外周面には、凹部71aと凸部71bとが周方向交互に形成されている。パーキングポール72は、パーキングギヤ71の凹部71aに係合可能な爪部72aを備える。パーキングポール72は、爪部72aがパーキングギヤ71の凹部71aと係合するロック位置と、爪部72aがパーキングギヤ71の凹部71aと係合しないアンロック位置とに移動可能である。パーキングポール72がロック位置にあるとき、パーキングギヤ71の凹部71aと、パーキングポール72の爪部72aとが係合して、パーキングロック機構70は、パーキングギヤ71が回転不能なパーキングロック状態となる。パーキングポール72がアンロック位置にあるとき、パーキングギヤ71の凹部71aと、パーキングポール72の爪部72aとが係合しておらず、パーキングロック機構70は、パーキングギヤ71が自由に回転可能なアンロック状態となる。このようにして、パーキングロック機構70は、パーキングギヤ71が回転不能なパーキングロック状態と、パーキングギヤ71が自由に回転可能なアンロック状態と、を遷移可能になっている。
【0021】
図2に示すように、回転電機20は、永久磁石22を有するロータ21と、電流が通電される巻線24が設けられたステータ23と、を備える。
【0022】
本実施形態では、説明を簡単且つ明確にするために、ロータ21の極数は2であり、ステータ23の巻線24は、U相巻線24U、V相巻線24V、W相巻線24Wをそれぞれ1つ有し、U相巻線24U、V相巻線24V、W相巻線24Wが周方向に等間隔に配置されている、3相2極の回転電機20について説明する。したがって、本実施形態のロータ21は、N極及びS極を備えた1つの永久磁石22を有する。ロータ21の永久磁石22には、強力な磁力を有する永久磁石、例えば、ネオジム磁石が用いられる。
【0023】
図1に戻って、電力供給装置30は、バッテリ50に蓄電された電力を変換して回転電機20の巻線24に供給する装置であり、本実施形態では、例えば、インバータ装置である。電力供給装置30は、さらに、バッテリ50に蓄電された電力を昇降圧可能なコンバータを有していてもよい。
【0024】
制御装置40は、車両Vの統合制御を実行し、駆動装置10及び車両Vの補機等を制御するECU(Electronic Control Unit)である。
【0025】
バッテリ50は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、全固体電池等の二次電池である。
【0026】
続いて、
図3を参照して、ロータ21の永久磁石22を減磁して、回転電機20からロータ21を取り出す一連のフローについて説明する。
【0027】
車両Vの制御装置40は、外部から、永久磁石減磁モードに移行する指令を受け付けると、まず、永久磁石減磁準備制御を実行し、永久磁石減磁準備制御において永久磁石減磁制御を実行すると判断されると、続いて、永久磁石減磁制御を実行する。
【0028】
<永久磁石減磁準備制御>
制御装置40は、永久磁石減磁準備制御において、まず、車両Vの車速がゼロであるか否かを判定する(ステップS110)。車両Vの車速がゼロでない場合は、車両Vの車速がゼロとなるまでそのまま待機する(ステップS110:NOのループ)。
【0029】
制御装置40は、ステップS110において、車両Vの車速がゼロであると判定すると(ステップS110:YES)、ステップS120へと進み、ロータ21の周方向位置(回転位置)を取得する。
【0030】
制御装置40は、続いて、ステップS130へと進み、ステップS120で取得したロータ21の周方向位置(回転位置)に基づいて、ロータ21の周方向位置(回転位置)が、巻線24に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータ21の永久磁石22のd軸線に対して対称となる位置であるか否かを判定する。
【0031】
図4及び
図5に示すように、本実施形態では、ステップS130において、ロータ21の周方向位置(回転位置)が、巻線24に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータ21の永久磁石22のd軸線に対して対称となる位置であるか否かについては、回転電機20の周方向において、ロータ21の永久磁石22のd軸線が、巻線24に電流を通電した場合のU相巻線24Uの磁気中心線LUと一致するか否かによって判定する。具体的には、
図4に示すように、回転電機20の周方向において、ロータ21の永久磁石22のd軸線が、巻線24に電流を通電した場合のU相巻線24Uの磁気中心線LUと一致するとき、ロータ21の周方向位置(回転位置)が、巻線24に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータ21の永久磁石22のd軸線に対して対称となる位置である(ステップS130:YES)と判定し、
図5に示すように、回転電機20の周方向において、ロータ21の永久磁石22のd軸線が、巻線24に電流を通電した場合のU相巻線24Uの磁気中心線LUと一致しないとき、ロータ21の周方向位置(回転位置)が、巻線24に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータ21の永久磁石22のd軸線に対して対称となる位置でない(ステップS130:NO)と判定する。なお、ステップS130において、ロータ21の周方向位置(回転位置)が、巻線24に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータ21の永久磁石22のd軸線に対して対称となる位置であるか否かについては、回転電機20の周方向において、ロータ21の永久磁石22のd軸線が、巻線24に電流を通電した場合のV相巻線24Vの磁気中心線と一致するか否かによって判定してもよいし、回転電機20の周方向において、ロータ21の永久磁石22のd軸線が、巻線24に電流を通電した場合のW相巻線24Wの磁気中心線と一致するか否かによって判定してもよい。
【0032】
図3に戻って、制御装置40は、回転電機20の周方向において、ロータ21の永久磁石22のd軸線が、巻線24に電流を通電した場合のU相巻線24Uの磁気中心線LUと一致していない場合(
図5参照)、ロータ21の周方向位置(回転位置)が、巻線24に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータ21の永久磁石22のd軸線に対して対称となる位置でないと判定し(ステップS130:NO)、ステップS140へと進む。制御装置40は、ステップS140において、電力供給装置30を制御して、バッテリ50から巻線24に所定の電力を供給して、ロータ21の永久磁石22のd軸線が、巻線24に電流を通電した場合のU相巻線24Uの磁気中心線LUと一致するように、ロータ21を回転させる。そして、ステップS130に戻る。
【0033】
制御装置40は、回転電機20の周方向において、ロータ21の永久磁石22のd軸線が、巻線24に電流を通電した場合のU相巻線24Uの磁気中心線LUと一致している場合(
図4参照)、ロータ21の周方向位置(回転位置)が、巻線24に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータ21の永久磁石22のd軸線に対して対称となる位置であると判定し(ステップS130:YES)、ステップS150へと進む。制御装置40は、ステップS150において、パーキングロック機構70のパーキングポール72を、爪部72aがパーキングギヤ71の凹部71aと係合するロック位置に移動させて、パーキングロック機構70をパーキングロック状態に遷移させる。これにより、ロータ21の周方向位置(回転位置)が、巻線24に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータ21の永久磁石22のd軸線に対して対称となる位置で固定される。そして、制御装置40は、ステップS160へと進み、永久磁石減磁制御を実行すると判断する。
【0034】
このように、制御装置40は、ステップS110からステップS150の永久磁石減磁準備制御において、永久磁石減磁制御を行うか否かを判断する。そして、制御装置40は、車両Vの車速がゼロであり、且つ、ロータ21の周方向位置(回転位置)が、巻線24に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータ21の永久磁石22のd軸線に対して対称となる位置である場合に、パーキングロック機構70をパーキングロック状態に遷移させてロータ21の周方向位置(回転位置)を固定し、永久磁石減磁制御を実行すると判断する。
【0035】
そして、制御装置40は、永久磁石減磁準備制御において永久磁石減磁制御を実行すると判断すると、永久磁石減磁準備制御を終了し、永久磁石減磁制御へと進む。永久磁石減磁制御ではロータ21の永久磁石22を減磁する。
【0036】
<永久磁石減磁制御>
制御装置40は、永久磁石減磁制御において、まず、永久磁石加熱処理を実行する。
【0037】
制御装置40は、永久磁石加熱処理において、まず、電力供給装置30を制御して、高調波の交流電流をバッテリ50から巻線24に通電する(ステップS210)。これにより、永久磁石22に渦電流が発生して永久磁石22が昇温する。制御装置40は、ステップS210において、巻線24の合成磁界の向きがロータ21の永久磁石22のd軸線と一致するような高調波の交流電流をバッテリ50から巻線24に通電することによって、永久磁石22を加熱する。例えば、制御装置40は、ステップS210において、電力供給装置30を制御して、1500[Hz]の交流電流をバッテリ50から巻線24に通電する。
【0038】
したがって、制御装置40は、ロータ21の周方向位置が、巻線24に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータ21の永久磁石22のd軸線に対して対称となる位置である場合に、ステップS210を行い、永久磁石22を加熱する。
【0039】
本実施形態では、
図6に示すように、V相巻線24V及びW相巻線24Wを流れる電流が、U相巻線24Uを流れる電流の半分の大きさで、U相巻線24Uを流れる電流と逆向きとなるように、バッテリ50から巻線24に高調波の交流電流を通電する。例えば、制御装置40は、ステップS210において、電力供給装置30を制御して、U相巻線24Uに200[Apeak]の電流を通電し、V相巻線24V及びW相巻線24Wに100[Apeak]の電流を通電する。このような高調波の交流電流を巻線24に通電すると、巻線24の合成磁界の向きは、U相巻線24Uの磁気中心線LUと一致する。そして、回転電機20の周方向において、ロータ21の永久磁石22のd軸線と、U相巻線24Uの磁気中心線LUとは一致しているので、V相巻線24V及びW相巻線24Wを流れる電流が、U相巻線24Uを流れる電流の半分の大きさで、U相巻線24Uを流れる電流と逆向きとなるように、バッテリ50から巻線24に高調波の交流電流を通電した場合の巻線24の合成磁界の向きは、ロータ21の永久磁石22のd軸線と一致する。そのため、V相巻線24V及びW相巻線24Wを流れる電流が、U相巻線24Uを流れる電流の半分の大きさで、U相巻線24Uを流れる電流と逆向きとなるように、バッテリ50から巻線24に高調波の交流電流を通電すると、永久磁石22に渦電流が発生して永久磁石22が昇温する一方、ロータ21には回転トルクがほぼ発生しない。
【0040】
このように、制御装置40は、電力供給装置30を制御して、巻線24の合成磁界の向きがロータ21の永久磁石22のd軸線と一致するような高調波の交流電流をバッテリ50から巻線24に通電することによって、永久磁石22を加熱するので、永久磁石22を減磁する際に、ロータ21に回転トルクが発生することを抑制しつつ、永久磁石22を加熱することができる。これにより、永久磁石22を減磁する際に、ロータ21の回転動力が伝達する装置、例えばパーキングロック機構70に大きな負荷がかかること、及び、車両Vが動き出すことを抑制することができる。したがって、回転電機20の解体の利便性を向上することができる。
【0041】
また、制御装置40は、ロータ21の周方向位置が、巻線24に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータ21の永久磁石22のd軸線に対して対称となる位置である場合に、巻線24の合成磁界の向きがロータ21の永久磁石22のd軸線と一致するような高調波の交流電流をバッテリ50から巻線24に通電して、永久磁石22を加熱するので、制御装置40において、巻線24の合成磁界の向きがロータ21の永久磁石22のd軸線と一致するような高調波の交流電流を通電する制御を容易化できる。
【0042】
さらに、制御装置40は、ロータ21の周方向位置が、巻線24に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータ21の永久磁石22のd軸線に対して対称となる位置でない場合に、電力供給装置30を制御して、バッテリ50から巻線24に所定の電力を供給して、ロータ21の永久磁石22のd軸線が、巻線24に電流を通電した場合のU相巻線24Uの磁気中心線LUと一致するように、ロータ21を回転させる。これにより、ロータ21の周方向位置が、巻線24に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータ21の永久磁石22のd軸線に対して対称となる位置でない場合でも、ロータ21の永久磁石22のd軸線が、巻線24に電流を通電した場合のU相巻線24Uの磁気中心線LUと一致するように、ロータ21を回転させて、ロータ21の周方向位置が、巻線24に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータ21の永久磁石22のd軸線に対して対称となる位置で、巻線24の合成磁界の向きがロータ21の永久磁石22のd軸線と一致するような高調波の交流電流をバッテリ50から巻線24に通電して、永久磁石22を加熱することができる。
【0043】
図3に戻って、制御装置40は、ステップS210を実行すると、ステップS220へと進み、永久磁石22の磁石温度Tmが所定温度Tset以上であるか否かを判定する。所定温度Tsetは、例えば、180[℃]である。永久磁石22の磁石温度Tmが所定温度Tset未満である場合(ステップS220:NO)は、ステップS210を継続して、高調波の交流電流をバッテリ50から巻線24に通電して永久磁石22を昇温させる。
【0044】
制御装置40は、永久磁石22の磁石温度Tmが所定温度Tset以上に到達すると(ステップS220:YES)、バッテリ50から巻線24への高調波の交流電流の通電を終了する(ステップS230)。これにより、永久磁石加熱処理が終了し、制御装置40は、続いて、永久磁石減磁処理を実行する。
【0045】
制御装置40は、永久磁石減磁処理において、電力供給装置30を制御して、巻線24の合成磁界の向きが、ロータ21の永久磁石22のd軸線と一致し、且つ、ロータ21の永久磁石22の磁界の向きと逆向きとなるように、バッテリ50から巻線24に大電流の減磁電流を所定時間通電する(ステップS310)。
【0046】
本実施形態では、制御装置40は、電力供給装置30を制御して、U相巻線24Uには、U相巻線24Uの磁界の向きがロータ21の永久磁石22の磁界の向きと逆向きとなる向きの電流が流れ、V相巻線24V及びW相巻線24Wには、U相巻線24Uを流れる電流の半分の大きさで、U相巻線24Uを流れる電流と逆向きの電流が流れるように、バッテリ50から巻線24に大電流の減磁電流を通電する。減磁電流は、ステップS210において、巻線24に通電する高調波の交流電流よりも大きな電流である。
【0047】
図7に示すように、例えば、ロータ21の永久磁石22のN極がU相巻線24Uと対向し、ロータ21の永久磁石22のd軸線がU相巻線24Uの磁気中心線LUと一致する位置に、ロータ21の周方向位置(回転位置)が位置する場合、制御装置40は、ステップS310において、電力供給装置30を制御して、U相巻線24Uにロータ21の中心から見て反時計回り方向に600[Arms]の電流が流れ、V相巻線24V及びW相巻線24Wにロータ21の中心から見て時計回り方向に300[Arms]の電流が流れるように、バッテリ50から巻線24に減磁電流を通電する。このような大電流を巻線24に通電すると、巻線24の合成磁界の向きは、U相巻線24Uの磁気中心線LUと一致するので、ロータ21には回転トルクがほぼ発生しない。また、このような大電流を巻線24に通電すると、巻線24の合成磁界の向きは、ロータ21の永久磁石22の磁界の向きと逆向きとなるため、ロータ21の永久磁石22は、所定温度Tset以上の温度で、ロータ21の永久磁石22の磁界の向きと逆向きである巻線24の合成磁界を受けることとなり、減磁する。
【0048】
このように、本実施形態では、制御装置40は、ロータ21の永久磁石22を加熱するステップS210の後に、巻線24に減磁電流を通電してロータ21の永久磁石22を減磁するステップS310を実行する。これにより、ロータ21の永久磁石22を加熱するステップS210において、要求される誘起電圧低下率を得られる温度まで永久磁石22を昇温しなくても、ステップS310で永久磁石22を減磁できるので、ロータ21の永久磁石22を加熱するステップS210において、所定温度Tsetを要求される誘起電圧低下率を得られる温度よりも低温に設定することができ、より効率的に永久磁石22を減磁できる。
【0049】
なお、要求される誘起電圧低下率は、回転電機20から容易にロータ21を取り出すことが可能な程度まで永久磁石22の誘起電圧が低下する誘起電圧低下率であればよく、要求される誘起電圧低下率を得られる温度は、永久磁石22のキュリー温度より低温であってもよい。
【0050】
また、制御装置40は、ステップS150において、ロータ21の周方向位置が、巻線24に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータ21の永久磁石22のd軸線に対して対称となる位置である場合に、パーキングロック機構70がパーキングロック状態となるようにパーキングロック機構70を制御するので、ロータ21の周方向位置(回転位置)を、巻線24に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータ21の永久磁石22のd軸線に対して対称となる位置で固定した状態で、巻線24に高調波の交流電流及び減磁電流を通電できる。これにより、巻線24に通電してもロータ21に回転トルクがほぼ発生しない状態でロータ21の周方向位置(回転位置)を固定して、ロータ21の永久磁石22を加熱及び減磁できる。
【0051】
図3に戻って、ステップS210からステップS310で示した永久磁石減磁制御が終了すると、回転電機20を車両Vから取り外して、回転電機20を車両Vの外へ取り出す(ステップS410)。
【0052】
その後、ロータ21をステータ23に対して軸方向にスライドさせて、回転電機20からロータ21を取り出す(ステップS420)。
【0053】
これにより、回転電機20からロータ21が取り出され、一連のフローが終了する。
【0054】
ロータ21の永久磁石22は、ネオジム磁石等、強力な磁力を有する永久磁石であるので、ロータ21の永久磁石22が減磁されていない場合、ロータ21をステータ23に対して軸方向にスライドさせる際にロータ21が径方向にずれてしまうと、永久磁石22の磁力によってロータ21がステータ23に強力にくっついてしまい、ロータ21をステータ23に対して軸方向にスライドさせて、回転電機20からロータ21を取り出すことが困難となってしまう。
【0055】
したがって、従来では、回転電機20からロータ21を取り出すためには、ロータ21に径方向のずれが生じないようにしながら、ロータ21の永久磁石22の強力な磁力に抗して大きな力でロータ21をステータ23に対して軸方向にスライドさせる必要があった。そのため、ロータ21に径方向のずれが生じないようにしながら、ロータ21の永久磁石22の強力な磁力に抗してロータ21をステータ23に対して軸方向にスライドさせるための専用工具や専用設備が必要であり、そのような専用工具や専用設備を有する限られた場所でなければ、回転電機20からロータ21を取り出すことができず、回転電機20は、解体の利便性が低く、解体コストが高くなっていた。
【0056】
一方、本実施形態では、巻線24に高調波の交流電流を通電して永久磁石22を加熱するステップS210、及び、巻線24に減磁電流を通電してロータ21の永久磁石22を減磁するステップS310の後に、回転電機20を車両Vから取り出すステップS410、及び、回転電機20からロータ21を取り出すステップS420を行う。
【0057】
これにより、ロータ21の永久磁石22が減磁された状態で、回転電機20からロータ21を取り出すステップS420を行うので、小さい力でロータ21をステータ23に対して軸方向にスライドさせることができ、小さい力で回転電機20からロータ21を取り出すことができる。したがって、ロータ21に径方向のずれが生じないようにしながら、ロータ21をステータ23に対して軸方向にスライドさせることが容易となるので、回転電機20の解体の利便性が向上し、回転電機20の解体コストを低減できる。
【0058】
また、本実施形態では、ステップS210において、制御装置40が電力供給装置30を制御して、バッテリ50から電力供給装置30を介して巻線24に交流電流を通電することによって永久磁石22を加熱するので、回転電機20が車両Vに搭載された状態で、永久磁石22を加熱することができる。これにより、永久磁石22を加熱するための専用設備を用いることなく、永久磁石22を加熱することができるので、回転電機20の解体の利便性が向上し、回転電機20の解体コストを低減できる。
【0059】
さらに、本実施形態では、ステップS310において、制御装置40が電力供給装置30を制御して、バッテリ50から電力供給装置30を介して巻線24に減磁電流を通電することによって永久磁石22を減磁するので、回転電機20が車両Vに搭載された状態で、永久磁石22を減磁することができる。これにより、永久磁石22を減磁するための専用設備を用いることなく、永久磁石22を減磁することができるので、回転電機20の解体の利便性が向上し、回転電機20の解体コストを低減できる。
【0060】
また、本実施形態では、永久磁石減磁制御を実行した後に、ステップS410において、回転電機20を車両Vから取り出し、ステップS410の後に、ステップS420において、回転電機20からロータ21を取り出す。
【0061】
これにより、永久磁石22を減磁するための専用設備を用いることなく、永久磁石22を減磁することができるのに加えて、回転電機20を車両Vから取り出した後に回転電機20からロータ21を取り出すことによって、回転電機20が車両Vに取り付けられた状態で回転電機20からロータ21を取り出す必要がなく、車両Vの外で回転電機20からロータ21を取り出すことができるので、回転電機20からロータ21を取り出すことが容易となる。
【0062】
このように、永久磁石減磁システム1は、車両Vに搭載されているので、回転電機20が車両Vに搭載された状態で、別途の専用設備を用いることなく、回転電機20のロータ21の永久磁石22を加熱及び減磁できる。これにより、回転電機20の解体の利便性が向上し、回転電機20の解体コストを低減できる。
【0063】
その後、ロータ21から永久磁石22が取り出され、永久磁石22が回収される。
【0064】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0065】
例えば、本実施形態では、ロータ21の極数は2であり、ステータ23の巻線24は、U相巻線24U、V相巻線24V、W相巻線24Wをそれぞれ1つ有し、U相巻線24U、V相巻線24V、W相巻線24Wが周方向に等間隔に配置されている、3相2極の回転電機20について説明したが、ロータ21の極数は、4、6、8、12等、2×n(nは任意の自然数)であってよく、ステータ23の巻線24は、ロータ21の極数に応じて、ロータ21の極数を2×n(nは任意の自然数)としたときに、U相巻線24U、V相巻線24V、W相巻線24Wをそれぞれnつ有していてもよい。
【0066】
また、例えば、本実施形態では、制御装置40は、ステップS210を実行した後、巻線24に減磁電流を通電してロータ21の永久磁石22を減磁するステップS310を実行するものとしたが、ステップS310は省略されてもよい。その場合、制御装置40は、ステップS210において、所定温度Tsetを、要求される誘起電圧低下率を得られる温度以上の温度に設定することが好ましい。このようにすることで、ステップS310を省略しても、ステップS210において、回転電機20から容易にロータ21を取り出すことが可能な程度まで永久磁石22の減磁させることができる。
【0067】
また、例えば、本実施形態では、制御装置40は、車両Vの統合制御を実行するECU(Electronic Control Unit)であるものとしたが、制御装置40は、車両Vの統合制御を実行するECUとは別に設けられていてもよい。
【0068】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0069】
(1) 永久磁石(永久磁石22)を有するロータ(ロータ21)と、電流が通電される巻線(巻線24)と、を備えた回転電機(回転電機20)の前記永久磁石を減磁させる、回転電機の永久磁石減磁方法であって、
前記ロータの周方向位置を検出するステップと、
前記永久磁石を加熱するステップと、を含み、
前記永久磁石を加熱するステップにおいて、
前記ロータの周方向位置を検出するステップで検出した前記ロータの周方向位置に基づいて、前記巻線の合成磁界の向きが前記ロータの前記永久磁石のd軸線と一致するような交流電流を前記巻線に通電する、回転電機の永久磁石減磁方法。
【0070】
(1)によれば、ロータの周方向位置を検出するステップで検出したロータの周方向位置に基づいて、巻線の合成磁界の向きがロータの永久磁石のd軸線と一致するような交流電流を巻線に通電することによって、永久磁石を加熱するので、永久磁石を減磁する際に、ロータに回転トルクが発生することを抑制しつつ、永久磁石を加熱することができ、回転電機の解体の利便性を向上することができる。
【0071】
(2) (1)に記載の回転電機の永久磁石減磁方法であって、
前記永久磁石を加熱するステップの後に、前記巻線に減磁電流を通電して前記永久磁石を減磁するステップをさらに含む、回転電機の永久磁石減磁方法。
【0072】
(2)によれば、永久磁石を加熱するステップの後に、巻線に減磁電流を通電して永久磁石を減磁するステップを行うことによって、永久磁石を加熱するステップにおいて、要求される誘起電圧低下率を得られる温度まで永久磁石を昇温しなくても、巻線に減磁電流を通電して永久磁石を減磁することができる。これにより、ロータの永久磁石を加熱するステップにおいて、要求される誘起電圧低下率を得られる温度よりも低温の温度まで昇温すればよいので、より効率的に永久磁石を減磁できる。
【0073】
(3) (1)又は(2)に記載の回転電機の永久磁石減磁方法であって、
前記永久磁石を加熱するステップの前に、前記ロータの周方向位置を検出するステップで検出した前記ロータの周方向位置に基づいて、前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置であるか否かを判定するステップをさらに含み、
前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置である場合に、前記永久磁石を加熱するステップを行う、回転電機の永久磁石減磁方法。
【0074】
(3)によれば、ロータの周方向位置が、巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータの永久磁石のd軸線に対して対称となる位置である場合に、永久磁石を加熱するステップを行うので、巻線の合成磁界の向きがロータの永久磁石のd軸線と一致するような電流を通電する制御を容易化できる。
【0075】
(4) (3)に記載の回転電機の永久磁石減磁方法であって、
前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置でない場合に、前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置に前記ロータを回転させるステップをさらに含む、回転電機の永久磁石減磁方法。
【0076】
(4)によれば、ロータの周方向位置が、巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータの永久磁石のd軸線に対して対称となる位置でない場合に、ロータの周方向位置が、巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータの永久磁石のd軸線に対して対称となる位置にロータを回転させるステップをさらに含むので、ロータの周方向位置が、巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータの永久磁石のd軸線に対して対称となる位置でない場合でも、ロータを回転させて、ロータの周方向位置が、巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータの永久磁石のd軸線に対して対称となる位置で、巻線の合成磁界の向きがロータの永久磁石のd軸線と一致するような高調波の交流電流を巻線に通電して、永久磁石を加熱することができる。
【0077】
(5) 永久磁石(永久磁石22)を有するロータ(ロータ21)と、電流が通電される巻線(巻線24)と、を有する回転電機(回転電機20)と、
前記巻線に電力を供給する電力供給装置(電力供給装置30)と、
前記電力供給装置を制御する制御装置(制御装置40)と、を備え、
前記回転電機の前記永久磁石を減磁させる、回転電機の永久磁石減磁システム(永久磁石減磁システム1)であって、
前記制御装置は、
前記ロータの周方向位置を検出し、
検出した前記ロータの周方向位置に基づいて、前記巻線の合成磁界の向きが前記ロータの前記永久磁石のd軸線と一致するような交流電流を前記巻線に通電することによって、前記永久磁石を加熱する、回転電機の永久磁石減磁システム。
【0078】
(5)によれば、制御装置は、検出したロータの周方向位置に基づいて、巻線の合成磁界の向きがロータの永久磁石のd軸線と一致するような交流電流を巻線に通電することによって、永久磁石を加熱するので、永久磁石を減磁する際に、ロータに回転トルクが発生することを抑制しつつ、永久磁石を加熱することができ、回転電機の解体の利便性を向上することができる。
【0079】
(6) (5)に記載の回転電機の永久磁石減磁システムであって、
前記制御装置は、
前記永久磁石を加熱した後に、
前記電力供給装置を制御して、前記巻線に減磁電流を通電することによって、前記永久磁石を減磁する、回転電機の永久磁石減磁システム。
【0080】
(6)によれば、制御装置は、永久磁石を加熱した後に、電力供給装置を制御して、巻線に減磁電流を通電することによって、永久磁石を減磁するので、永久磁石を加熱する際に、要求される誘起電圧低下率を得られる温度まで永久磁石を昇温しなくても、巻線に減磁電流を通電して永久磁石を減磁することができる。これにより、ロータの永久磁石を加熱する際に、要求される誘起電圧低下率を得られる温度よりも低温の温度まで昇温すればよいので、より効率的に永久磁石を減磁できる。
【0081】
(7) (5)又は(6)に記載の回転電機の永久磁石減磁システムであって、
前記制御装置は、
検出した前記ロータの周方向位置に基づいて、前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置であるか否かを判定し、
前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置である場合に、前記電力供給装置を制御して、前記巻線の合成磁界の向きが前記ロータの前記永久磁石のd軸線と一致するような交流電流を前記巻線に通電することによって、前記永久磁石を加熱する、回転電機の永久磁石減磁システム。
【0082】
(7)によれば、ロータの周方向位置が、巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータの永久磁石のd軸線に対して対称となる位置である場合に、永久磁石を加熱するので、電力供給装置を制御して、巻線の合成磁界の向きがロータの永久磁石のd軸線と一致するような交流電流を巻線に通電する制御を容易化できる。
【0083】
(8) (7)に記載の回転電機の永久磁石減磁システムであって、
前記制御装置は、
前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置でない場合に、前記電力供給装置を制御して、前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置に前記ロータを回転させる、回転電機の永久磁石減磁システム。
【0084】
(8)によれば、ロータの周方向位置が、巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータの永久磁石のd軸線に対して対称となる位置でない場合に、ロータの周方向位置が、巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータの永久磁石のd軸線に対して対称となる位置にロータを回転させるので、ロータの周方向位置が、巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータの永久磁石のd軸線に対して対称となる位置でない場合でも、ロータを回転させて、ロータの周方向位置が、巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータの永久磁石のd軸線に対して対称となる位置で、巻線の合成磁界の向きがロータの永久磁石のd軸線と一致するような高調波の交流電流を巻線に通電して、永久磁石を加熱することができる。
【0085】
(9) (5)~(8)のいずれかに記載の回転電機の永久磁石減磁システムであって、
前記永久磁石減磁システムは、車両(車両V)に搭載されている、回転電機の永久磁石減磁システム。
【0086】
(9)によれば、永久磁石減磁システムは、車両に搭載されているので、回転電機が車両に搭載された状態で、別途の専用設備を用いることなく、回転電機のロータの永久磁石を加熱及び減磁できる。これにより、回転電機の解体の利便性が向上し、回転電機の解体コストを低減できる。
【0087】
(10) (9)に記載の回転電機の永久磁石減磁システムであって、
前記車両は、パーキングギヤ(パーキングギヤ71)を有するパーキングロック機構(パーキングロック機構70)を備え、
前記パーキングロック機構は、前記パーキングギヤが回転不能なパーキングロック状態と、前記パーキングギヤが自由に回転可能なアンロック状態と、を遷移可能であり、
前記制御装置は、
前記ロータの周方向位置が、前記巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布が前記ロータの前記永久磁石のd軸線に対して対称となる位置である場合に、前記パーキングロック機構が前記パーキングロック状態となるように前記パーキングロック機構を制御する、回転電機の永久磁石減磁システム。
【0088】
(10)によれば、ロータの周方向位置が、巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータの永久磁石のd軸線に対して対称となる位置である場合に、パーキングロック機構がパーキングロック状態となるようにパーキングロック機構を制御するので、ロータの周方向位置を、巻線に電流を通電した場合のパーミアンス分布がロータの永久磁石のd軸線に対して対称となる位置で固定した状態で、巻線に交流電流及び減磁電流を通電できる。これにより、巻線に通電してもロータに回転トルクがほぼ発生しない状態でロータの周方向位置を固定して、ロータの永久磁石を加熱及び減磁できる。
【0089】
(11) 永久磁石(永久磁石22)を有するロータ(ロータ21)と、電流が通電される巻線(巻線24)と、を有する回転電機(回転電機20)と、
前記巻線に電力を供給する電力供給装置(電力供給装置30)と、
前記電力供給装置に接続する電源(バッテリ50)と、
前記電力供給装置を制御する制御装置(制御装置40)と、を備える車両(車両V)から前記ロータを取り出す、ロータの取り出し方法であって、
前記ロータの取り出し方法は、
前記制御装置において、前記ロータの前記永久磁石を減磁させる永久磁石減磁制御を実行するか否かを判断するステップと、
前記永久磁石減磁制御を実行するステップと、
前記ロータを前記回転電機から取り出すステップと、を含み、
前記永久磁石減磁制御は、前記制御装置が前記電力供給装置を制御して、前記電源から前記電力供給装置を介して前記巻線に交流電流を通電することによって前記永久磁石を加熱するステップを含み、
前記永久磁石減磁制御を実行すると判断した場合に、前記永久磁石減磁制御を実行するステップを行い、
前記永久磁石減磁制御を実行するステップの後に、前記ロータを前記回転電機から取り出すステップを行う、ロータの取り出し方法。
【0090】
(11)によれば、車両が備える制御装置が電力供給装置を制御して、バッテリから電力供給装置を介して巻線に交流電流を通電することによって永久磁石を加熱するので、回転電機が車両に搭載された状態で、永久磁石を加熱することができる。これにより、永久磁石を加熱するための専用設備を用いることなく、永久磁石を加熱することができるので、回転電機の解体の利便性が向上し、回転電機の解体コストを低減できる。
【0091】
(12) (11)に記載のロータの取り出し方法であって、
前記永久磁石減磁制御は、前記永久磁石を加熱するステップの後に、前記制御装置が前記電力供給装置を制御して、前記電源から前記電力供給装置を介して前記巻線に減磁電流を通電することによって前記永久磁石を減磁するステップをさらに含み、
前記永久磁石減磁制御を実行するステップの後に、前記ロータを前記回転電機から取り出すステップを行う、ロータの取り出し方法。
【0092】
(12)によれば、永久磁石を加熱するステップ、及び、永久磁石を減磁するステップの後に、ロータを回転電機から取り出すステップを行うので、小さい力で回転電機からロータを取り出すことができる。したがって、ロータに径方向のずれが生じないようにしながら、ロータをステータに対して軸方向にスライドさせることが容易となるので、回転電機の解体の利便性が向上し、回転電機の解体コストを低減できる。
また、車両に備えられた制御装置が電力供給装置を制御して、電源から電力供給装置を介して巻線に減磁電流を通電することによって永久磁石を減磁するので、回転電機が車両に搭載された状態で、永久磁石を減磁することができる。これにより、永久磁石を減磁するための専用設備を用いることなく、永久磁石を減磁することができるので、回転電機の解体の利便性が向上し、回転電機の解体コストを低減できる。
さらに、永久磁石を加熱するステップ、及び、巻線に減磁電流を通電して永久磁石を減磁するステップの後に、ロータを回転電機から取り出すステップを行うので、永久磁石を加熱するステップにおいて、要求される誘起電圧低下率を得られる温度まで永久磁石を昇温しなくても、巻線に減磁電流を通電して永久磁石を減磁することができる。これにより、ロータの永久磁石を加熱するステップにおいて、要求される誘起電圧低下率を得られる温度よりも低温の温度まで昇温すればよいので、より効率的に永久磁石を減磁できる。
【0093】
(13) (11)又は(12)に記載のロータの取り出し方法であって、
前記ロータの取り出し方法は、前記回転電機を前記車両から取り出すステップをさらに含み、
前記永久磁石減磁制御を実行するステップの後に、前記回転電機を前記車両から取り出すステップを行い、
前記回転電機を前記車両から取り出すステップの後に、前記ロータを前記回転電機から取り出すステップを行う、ロータの取り出し方法。
【0094】
(13)によれば、永久磁石を減磁するための専用設備を用いることなく、永久磁石を減磁することができるのに加えて、回転電機を車両から取り出した後に回転電機からロータを取り出すことによって、回転電機が車両に取り付けられた状態で回転電機からロータを取り出す必要がなく、車両の外で回転電機からロータを取り出すことができるので、回転電機からロータを取り出すことが容易となる。
【符号の説明】
【0095】
1 永久磁石減磁システム
20 回転電機
21 ロータ
22 永久磁石
24 巻線
30 電力供給装置
40 制御装置
50 バッテリ(電源)
70 パーキングロック機構
71 パーキングギヤ
V 車両