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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】電動車両用バッテリーケース
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20241015BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20241015BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20241015BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241015BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241015BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20241015BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20241015BHJP
   B60L 50/64 20190101ALI20241015BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20241015BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60K11/04 G
B62D25/20 G
B62D25/20 N
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6568
H01M10/6556
B60L50/64
B60L58/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021201536
(22)【出願日】2021-12-13
(65)【公開番号】P2023087250
(43)【公開日】2023-06-23
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/070530(WO,A1)
【文献】特表2020-528377(JP,A)
【文献】特表2015-505142(JP,A)
【文献】特開2017-027938(JP,A)
【文献】特開2021-130416(JP,A)
【文献】特開2009-262854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0350522(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B60K 11/04
B62D 25/20
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6568
H01M 10/6556
B60L 50/64
B60L 58/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室床下において、車両幅方向に延び、車両前後方向に間隔を空けて配置された複数のクロスメンバーと、
車両前後方向において前記複数のクロスメンバーの間に配置され、バッテリーを載置する複数の冷却プレートと、
前記複数の冷却プレートから下方へ隙間を空けて配置されたアンダーカバーと
を備え、
前記複数の冷却プレートのそれぞれは、内部に冷媒が流れる冷却流路を形成するようにアルミニウム合金製の少なくとも2枚の板材を接合して構成されている、電動車両用バッテリーケース。
【請求項2】
前記複数の冷却プレートのそれぞれは、
車両幅方向の一端部の下面において前記冷却流路に冷媒を導入する導入口と、
車両幅方向の他端部の下面において前記冷却流路から冷媒を導出する導出口と
を有する、請求項1に記載の電動車両用バッテリーケース。
【請求項3】
前記複数の冷却プレートの車両幅方向の外側において車両前後方向に延び、押出材からなり、前記導入口および前記導出口と連通して冷媒を流す輸送流路を内部に形成された一対のサイドフレームをさらに備える、請求項2に記載の電動車両用バッテリーケース。
【請求項4】
前記一対のサイドフレームは、前記複数の冷却プレートの車両幅方向の端部を下方から支持する支持部を有し、
前記複数の冷却プレートのそれぞれは、前記支持部に接合されている、請求項3に記載の電動車両用バッテリーケース。
【請求項5】
前記一対のサイドフレームのそれぞれは、
前記輸送流路を内部に有する内側部材と、
前記内側部材とは別体であり、前記内側部材に隣接して前記内側部材の車両幅方向の外側に配置された外側部材と
を有する、請求項3または請求項4に記載の電動車両用バッテリーケース。
【請求項6】
前記冷却流路は、車両幅方向において前記導入口から前記導出口に向かって間隔が徐々に狭くなる蛇腹状に構成されている、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の電動車両用バッテリーケース。
【請求項7】
車両上下方向において前記アンダーカバーと前記複数の冷却プレートとの間に配置されて前記アンダーカバーと前記複数の冷却プレートとの隙間を保持するとともに、前記アンダーカバーと前記複数のクロスメンバーとを接合する複数のアンダーフレームをさらに備える、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電動車両用バッテリーケース。
【請求項8】
前記アンダーカバーの車両幅方向中央の下面に接合され、前記車両前後方向に延びる補強部材をさらに備える、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電動車両用バッテリーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両用バッテリーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車などの電動車両は、十分な航続距離を確保するために大容量のバッテリーを搭載する必要がある一方で広い車室が求められている。これらの要求を両立するため、多くの電気自動車では大容量のバッテリーをバッテリーケースに格納して車両の床下全面に搭載している。従って、電動車両用バッテリーケースには、路面からの衝撃に対する保護性能が求められるとともに、大容量のバッテリーを効率的に冷却できる冷却性能が求められる。
【0003】
特許文献1には、バッテリーケースの筺体の底板を、車両上下に平行な板材と、これをつなぐ複数の中リブで構成されたダブルスキン構造で構成し、この中空部も複数の冷却導管を配置して、底板の上側に配置されたバッテリーモジュールを冷却する電動車両用バッテリーケースが開示されている。この電動車両用バッテリーケースでは、車両下側から物体が底板に衝突した際に、即ち路面から衝撃を受けた際に、冷却導管が変形して衝突エネルギーを吸収することが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-119626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電動車両用バッテリーケースでは、冷却導管によってバッテリーを冷却できるために高い冷却性能を発揮できるが、冷却導管が変形して破損すると、当該冷却性能を発揮できなくなるおそれがある。従って、路面からの衝撃に対する保護性能に改善の余地がある。
【0006】
本発明は、電動車両用バッテリーケースにおいて、高い冷却性能と路面からの衝撃に対する高い保護性能とを両立することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
車室床下において、車両幅方向に延び、車両前後方向に間隔を空けて配置された複数のクロスメンバーと、
車両前後方向において前記複数のクロスメンバーの間に配置され、バッテリーを載置する複数の冷却プレートと、
前記複数の冷却プレートから下方へ隙間を空けて配置されたアンダーカバーと
を備え、
前記複数の冷却プレートのそれぞれは、内部に冷媒が流れる冷却流路を形成するようにアルミニウム合金製の少なくとも2枚の板材を接合して構成されている、電動車両用バッテリーケースを提供する。
【0008】
この構成によれば、複数の冷却プレートによってバッテリーを冷却できるため、高い冷却性能を確保できる。特に、複数の冷却プレートは、熱伝導率が高いアルミニウム合金製であり、アンダーカバーとの間に隙間(空気層)を設けているため、断熱された冷却流路を流れる冷媒によってバッテリーを効率的に冷却できる。また、複数の冷却プレートがアンダーカバーから車両上下方向に離間して配置されているため、路面からの衝撃が複数の冷却プレートに伝わることを抑制できる。従って、アンダーカバーが路面からの衝撃を受けた場合でも、複数の冷却プレートは、破損し難く、高い冷却性能を維持できる。よって、電動車両用バッテリーケースにおいて、高い冷却性能と路面からの衝撃に対する高い保護性能とを両立できる。
【0009】
前記複数の冷却プレートのそれぞれは、
車両幅方向の一端部の下面において前記冷却流路に冷媒を導入する導入口と、
車両幅方向の他端部の下面において前記冷却流路から冷媒を導出する導出口と
を有してもよい。
【0010】
この構成によれば、導入口および導出口は、車両幅方向の端部に設けられているおり、外周のサイドフレームによる拘束が強いため、路面からの衝撃を受けた場合でも破損し難くなっている。また、導入口および導出口は、複数の冷却プレートの下面に設けられており、冷却プレートはバッテリーが搭載される上面側をフラットにし、下側に冷媒通路を構成する凸部が設けられていることで、上面にバッテリーを載置するのに邪魔にならず、効率的なレイアウトを実現できる。
【0011】
前記電動車両用バッテリーケースは、前記複数の冷却プレートの車両幅方向の外側において車両前後方向に延び、押出材からなり、前記導入口および前記導出口と連通して冷媒を流す輸送流路を内部に形成された一対のサイドフレームをさらに備えてもよい。
【0012】
この構成によれば、輸送流路を電動車両用バッテリーケースの長手方向(車両前後方向)に配置できるため、効率的に冷媒を輸送できる。また、一対のサイドフレームによって車両側面衝突の際の保護性能を向上できる。
【0013】
前記一対のサイドフレームは、前記複数の冷却プレートの車両幅方向の端部を下方から支持する支持部を有してもよく、
前記複数の冷却プレートのそれぞれは、前記支持部に接合されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、支持部は下方から複数の冷却プレートを支持するため、複数の冷却プレート上に載置されるバッテリーと干渉せず、効率的なレイアウトを実現できる。
【0015】
前記一対のサイドフレームのそれぞれは、
前記輸送流路を内部に有する内側部材と、
前記内側部材とは別体であり、前記内側部材に隣接して前記内側部材の車両幅方向の外側に配置された外側部材と
を有してもよい。
【0016】
この構成によれば、車両側面衝突の際に外側部材によって内側部材を保護できる。従って、輸送流路が破損することを抑制できる。また、内側部材は輸送流路を構成するため、流体的な設計を要するが、内側部材と外側部材を別体とすることで、外側部材の設計制約を受けることなく、内側部材を自由に設計できる。
【0017】
前記冷却流路は、車両幅方向において前記導入口から前記導出口に向かって間隔が徐々に狭くなる蛇腹状に構成されてもよい。
【0018】
この構成によれば、バッテリーを均等に冷却できる。冷却流路では、上流側(導入口付近)の冷媒が最も低温で冷却性能が高く、下流側(導出口付近)の冷媒が最も高温で冷却性能が低い。従って、導入口から導出口に向かって蛇腹の間隔を徐々に狭めることで、冷却流路の冷却性能を上流から下流まで均等化できる。
【0019】
前記電動車両用バッテリーケースは、車両上下方向において前記アンダーカバーと前記複数の冷却プレートとの間に配置されて前記アンダーカバーと前記複数の冷却プレートとの隙間を保持するとともに、前記アンダーカバーと前記複数のクロスメンバーとを接合する複数のアンダーフレームをさらに備えてもよい。
【0020】
この構成によれば、複数のアンダーフレームによって、アンダーカバーと複数の冷却プレートとの隙間が保持されるため、路面からの衝撃が複数の冷却プレートに伝わることを抑制できる。また、路面からの衝撃がアンダーカバーに対して加えられても、当該衝撃を複数のアンダーフレームを介して複数のクロスメンバーに逃がすこともできる。よって、当該衝撃が複数の冷却プレートに伝わることを抑制でき、複数の冷却プレートの破損を抑制できる。なお、複数のアンダーフレームのそれぞれと、複数のクロスメンバーのそれぞれとは、一体的に構成されてもよい。
【0021】
前記電動車両用バッテリーケースは、前記アンダーカバーの車両幅方向中央の下面に接合され、前記車両前後方向に延びる補強部材をさらに備えてもよい。
【0022】
この構成によれば、補強部材によって、アンダーカバーのうち比較的変形しやすい部分である車両幅方向の中央部を保護できるため、路面からの衝撃に対する高い保護性能を確保できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電動車両用バッテリーケースにおいて、高い冷却性能と路面からの衝撃に対する高い保護性能とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る電動車両用バッテリーケースを搭載した電気自動車の側面図。
図2】第1実施形態に係る電動車両用バッテリーケースの平面図。
図3図2のIII-III線に沿った断面図。
図4図2のIV-IV線に沿った断面図。
図5図2の冷却流路の変形例を示す電動車両用バッテリーケースの平面図。
図6】第2実施形態に係る電動車両用バッテリーケースの断面図。
図7】第3実施形態に係る電動車両用バッテリーケースの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1を参照して、電動車両1は、バッテリー10から供給される電力によって不図示のモータを駆動させて走行する車両である。例えば、電動車両1は、電気自動車またはプラグインハイブリッド車等であり得る。車両の種類については、特に限定されず、乗用車、トラック、作業車、またはその他のモビリティ等であり得る。以下では、電動車両1として乗用車タイプの電気自動車の場合を例に挙げて説明する。
【0027】
電動車両1は、車体前部20に不図示のモータや高電圧機器等を搭載している。また、電動車両1は、車体中央部30の車室Rの床下の概ね全面にバッテリー10を格納した電動車両用バッテリーケース100(以下、単にバッテリーケース100ともいう。)を搭載している。なお、図1中、電動車両1の前後方向をX方向で示し、上下方向(高さ方向)をZ方向で示している。以降の図でも同表記とし、図2以降で電動車両1の幅方向をY方向で示す。
【0028】
図2を参照して、バッテリーケース100は、骨格を構成する部材であり、内部に配置されるバッテリー10を保護するフレーム体101を有している。フレーム体101は、一対のサイドフレーム110と、一対のサイドフレーム110を繋ぐフロントフレーム120、リアフレーム130、および複数のクロスメンバー140とによって構成されている。なお、図2では、後述するトップカバー150を外した状態のバッテリーケース100が示されている。
【0029】
図3を参照して、一対のサイドフレーム110は、車両幅方向に離間して配置され、車両前後方向に延び、フレーム体101の両側部を構成している。一対のサイドフレーム110は、車両前後方向に垂直な断面において複数の部屋r1~r6を有する概略T字型の閉断面形状を有している。図示の断面では、複数の部屋r1~r6のそれぞれは、例えば矩形である。複数の部屋r1~r4は車両幅方向に並べて配置され、複数の部屋r2,r5,r6は車両上下方向に並べて配置されている。特に、部屋r1は、車両幅方向において最も内側に配置され、複数の部屋r2,r5,r6よりも車両幅方向の内側に位置している。部屋r1は、後述する複数の冷却プレート170を下方から支持する支持部111を構成している。また、部屋r1には、後述する冷媒を輸送するための輸送流路C2,C3を画定する管状の配管部112が構成されている。本実施形態では、配管部112は、一対のサイドフレーム110とは別体でなく、一対のサイドフレーム110の一部であって一体的に構成されている。代替的には、配管部112は、配管部材として一対のサイドフレーム110とは別体で構成されてもよい。
【0030】
図4を参照して、フロントフレーム120は、車両幅方向に延び、フレーム体101の前部を構成している。フロントフレーム120は、車両幅方向に垂直な断面において複数の部屋r7~r10を有する概略L字型の閉断面形状を有している。図示の断面では、複数の部屋r7~r10のそれぞれは、例えば矩形である。複数の部屋r7,r8は車両前後方向に並べて配置され、複数の部屋r8~r10は車両上下方向に並べて配置されている。特に、部屋r7は、車両幅方向において最も内側に配置され、複数の部屋r8~r10よりも車両前後方向の内側に位置している。部屋r7は、後述する複数の冷却プレート170を下方から支持する支持部121を構成している。なお、図4では、バッテリー10(図2,3参照)の図示を省略している。
【0031】
図4を参照して、リアフレーム130は、車両幅方向に延び、フレーム体101の後部を構成している。リアフレーム130は、フロントフレーム120と概略同形状であり、車両幅方向に垂直な断面において複数の部屋r11~r14を有する概略L字型の閉断面形状を有している。図示の断面では、複数の部屋r11~r14のそれぞれは、例えば矩形である。複数の部屋r11,r12は車両前後方向に並べて配置され、複数の部屋r12~r14は車両上下方向に並べて配置されている。特に、部屋r11は、車両幅方向において最も内側に配置され、複数の部屋r12~r14よりも車両前後方向の内側に位置している。部屋r11は、後述する複数の冷却プレート170を下方から支持する支持部131を構成している。
【0032】
図4を参照して、複数のクロスメンバー140は、車両前後方向においてフロントフレーム120とリアフレーム130との間で、これらと平行に車両前後方向に概ね等間隔で配置されている。複数のクロスメンバー140は、車両幅方向に垂直な断面において複数の部屋r15~r16を有する概略I字型の閉断面形状を有している。複数の部屋r15~r16は、車両上下方向に並べて配置されている。図示の断面では、複数の部屋r15~r16のそれぞれは、例えば矩形である。
【0033】
本実施形態では、フロントフレーム120、リアフレーム130、一対のサイドフレーム110、および複数のクロスメンバー140のいずれも、アルミニウム合金製の押出材からなる。
【0034】
図3を参照して、バッテリーケース100は、フレーム体101を上方から閉じるトップカバー150と、フレーム体101を下方から閉じるアンダーカバー160と、車両上下方向においてトップカバー150とアンダーカバー160との間に配置された複数の冷却プレート170とを有している。トップカバー150はバッテリーケース100の上面を構成し、アンダーカバー160はバッテリーケース100の下面および電動車両1の底面を構成する。バッテリー10は、複数のクロスメンバー140の間であって、複数の冷却プレート170上に載置される。そして、トップカバー150およびアンダーカバー160によって封止されることで、バッテリーケース100の水密性が確保されている。
【0035】
トップカバー150は、平面視(車両上下方向視)においてフレーム体101の概ね全体を覆うように配置されたアルミ板材である。アンダーカバー160は、平面視(車両上下方向視)においてフレーム体101の概ね全体を覆うように配置されたアルミ板材である。アンダーカバー160は、複数の冷却プレート170から下方へ隙間Dを空けて配置されている。トップカバー150およびアンダーカバー160はともに、フロントフレーム120と、リアフレーム130と、一対のサイドフレーム110とに対して接合(例えばボルト締結)されている。なお、本事例では、トップカバー150、アンダーカバー160をアルミ板材とする事例を示しているが、トップカバー150については高い電磁波シールド性を有する鋼板、アンダーカバー160は路面干渉に対する強度確保を目的に高強度鋼板で構成しても良い。
【0036】
複数の冷却プレート170は、載置されたバッテリー10を冷却する機能を有している。複数の冷却プレート170のそれぞれは、内部に冷媒が流れる冷却流路C1(図2において破線で模式的に示す。)を形成するようにアルミニウム合金製の少なくとも2枚の板材を接合して構成されている。当該接合は、例えばろう付けによってなされるが、他の任意の接合手段によってなされてもよい。本実施形態では、冷却流路C1は、車両前後方向に折り返して流れる蛇腹状の流路として構成され、蛇腹状の間隔は等間隔である。このような冷却流路C1を流れる低温の冷媒によって、複数の冷却プレート170の上に載置されたバッテリー10が冷却される。
【0037】
本実施形態では、バッテリーケース100は、車両上下方向においてアンダーカバー160と複数の冷却プレート170との間に配置されてアンダーカバー160と複数の冷却プレート170との隙間Dを保持するとともに、アンダーカバー160と複数のクロスメンバー140とを接合する複数のアンダーフレーム180を有している。複数の冷却プレート170は、複数のアンダーフレーム180に支持および接合され、アンダーカバー160から隙間Dだけ離間して保持されている。複数のアンダーフレーム180は、例えばハット形に折り曲げられたアルミ板である。複数のアンダーフレーム180は、アンダーカバー160と複数のクロスメンバー140との間に配置され、これらと接合されている。なお、アンダーフレーム180は、クロスメンバー140と一体的に設けてもよく、この場合、アルミ押出形材で構成することが望ましい。また、アンダーカバー160を鋼板で構成した場合は、接合時の気密性確保を考慮し、これに接合されるアンダーフレーム180も鋼板製とすることが望ましい。
【0038】
複数の冷却プレート170のそれぞれは、車両幅方向の一端部の下面において冷却流路C1に冷媒を導入する導入口171と、車両幅方向の他端部の下面において冷却流路C1から冷媒を導出する導出口172とを有している。
【0039】
本実施形態では、一対のサイドフレーム110の一方に、導入口171と連通し、冷却流路C1に供給するための冷媒を輸送する輸送流路C2が構成されている。輸送流路C2は、前述の配管部112によって構成されている。また、一対のサイドフレーム110の他方に、導出口172と連通し、冷却流路C1から排出された冷媒を輸送する輸送流路C3が構成されている。輸送流路C3は、前述の配管部112によって構成されている。輸送流路C3を流れる冷媒は図示しない冷却装置によって冷却され、冷却された冷媒は輸送流路C2に供給される。即ち、輸送流路C2、冷却流路C1、および輸送流路C3は、この順に冷媒が循環する循環流路として構成されている。
【0040】
本実施形態のバッテリーケース100によれば、以下の作用効果を奏する。
【0041】
複数の冷却プレート170によってバッテリー10を冷却できるため、高い冷却性能を確保できる。特に、複数の冷却プレート170は、熱伝導率が高いアルミニウム合金製であり、アンダーカバー160との間に隙間D(空気層)を設けているため、断熱された冷却流路C1を流れる冷媒によってバッテリー10を効率的に冷却できる。また、複数の冷却プレート170がアンダーカバーから車両上下方向に離間して配置されているため、路面からの衝撃が複数の冷却プレート170に伝わることを抑制できる。従って、アンダーカバー160が路面からの衝撃を受けた場合でも、複数の冷却プレート170は、破損し難く、高い冷却性能を維持できる。よって、バッテリーケース100において、高い冷却性能と路面からの衝撃に対する高い保護性能とを両立できる。
【0042】
また、複数のアンダーフレーム180によって、アンダーカバー160と複数の冷却プレート170との隙間Dが保持されるため、路面からの衝撃が複数の冷却プレート170に伝わることを抑制できる。また、路面からの衝撃がアンダーカバー160に対して加えられても、当該衝撃を複数のアンダーフレーム180を介して複数のクロスメンバー140に逃がすこともできる。よって、当該衝撃が複数の冷却プレート170に伝わることを抑制でき、複数の冷却プレート170の破損を抑制できる。
【0043】
また、導入口171および導出口172は、車両幅方向の端部に設けられており、一対のサイドフレーム110による拘束が強いため、路面からの衝撃を受けた場合でも、破損しにくくなっている。また、導入口171および導出口172は、複数の冷却プレート170の下面に設けられているため、上面にバッテリー10を載置するのに邪魔にならず、効率的なレイアウトを実現できる。
【0044】
また、輸送流路C2,C3をバッテリーケース100の長手方向(車両前後方向)に配置できるため、効率的に冷媒を輸送できる。また、一対のサイドフレーム110によって車両側面衝突の際の保護性能を向上できる。
【0045】
また、支持部111は下方から複数の冷却プレート170を支持するため、複数の冷却プレート170上に載置されるバッテリー10と干渉せず、効率的なレイアウトを実現できる。
【0046】
図5を参照して、本実施形態のバッテリーケース100の変形例について説明する。
【0047】
変形例では、冷却流路C1の形状のみ上記実施形態と異なる。
【0048】
変形例における冷却流路C1は、車両幅方向において導入口171から導出口172に向かって間隔が徐々に狭くなる蛇腹状に構成されている(d1>d2>d3>・・・>dn)。
【0049】
変形例によれば、バッテリー10を均等に冷却できる。冷却流路C1では、上流側(導入口171付近)の冷媒が最も低温で冷却性能が高く、下流側(導出口172付近)の冷媒が最も高温で冷却性能が低い。従って、導入口171から導出口172に向かって蛇腹の間隔を徐々に狭める(d1>d2>d3>・・・>dn)ことで、冷却流路C1の冷却性能を上流から下流まで均等化できる。
【0050】
(第2実施形態)
図6に示す第2実施形態のバッテリーケース100は、一対のサイドフレーム110の構成が第1実施形態と異なる。これに関する構成以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。なお、図6は、第1実施形態の図2に対応している。
【0051】
本実施形態では、一対のサイドフレーム110のそれぞれは、輸送流路C2,C3を内部に有する内側部材113と、相対的に車両幅方向の外側に配置され、内側部材113とは別体であり、内側部材113に隣接して内側部材113の車両幅方向の外側に配置された外側部材114とを有している。内側部材113および外側部材114は、ともにアルミニウム合金製の押出材からなり、互いに接合(例えば溶接)されている。なお、本実施形態では、アンダーカバー160は、外側部材114に接合されている。
【0052】
本実施形態のバッテリーケース100によれば、電動車両1の側面衝突の際に外側部材114によって内側部材113を保護できる。従って、輸送流路C2,C3が破損することを抑制できる。また、内側部材113は輸送流路C2,C3を構成するため、流体的な設計を要するが、内側部材113と外側部材114を別体とすることで、外側部材114の設計制約を受けることなく、内側部材113を自由に設計できる。
【0053】
(第3実施形態)
図7に示す第3実施形態の電動車両用バッテリーケース100は、補強部材161を有している。これに関する構成以外は、第2実施形態と実質的に同じである。従って、第1,第2実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。なお、図7は、第1実施形態の図2に対応している。
【0054】
本実施形態では、バッテリーケース100は、アンダーカバー160の車両幅方向中央の下面に接合され、車両前後方向に延びる補強部材161を有している。
【0055】
補強部材161は、下方へ凸形状を有するハット形に折り曲げられたアルミ板製である。補強部材161は、アンダーカバー160に対して溶接されている。また、アンダーカバー160を鋼板で構成した場合は、接合を考慮し、これに接合される補強部材161も鋼板製とすることが望ましい。
【0056】
本実施形態のバッテリーケース100によれば、補強部材161によって、アンダーカバー160のうち比較的変形しやすい部分である車両幅方向の中央部を保護できるため、路面からの衝撃に対する高い保護性能を確保できる。
【0057】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 電動車両
10 バッテリー
20 車体前部
30 車体中央部
100 バッテリーケース
101 フレーム体
110 サイドフレーム
111 支持部
112 配管部
113 内側部材
114 外側部材
120 フロントフレーム
121 支持部
130 リアフレーム
131 支持部
140 クロスメンバー
150 トップカバー
160 アンダーカバー
161 補強部材
170 冷却プレート
171 導入口
172 導出口
180 アンダーフレーム
R 車室
r1~r16 部屋
C1 冷却流路
C2,C3 輸送流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7