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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】制御装置、及び移動体
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/023 20060101AFI20241015BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241015BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
B60R16/023 P
G08G1/16 A
G01M17/007 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021208980
(22)【出願日】2021-12-23
(65)【公開番号】P2023093864
(43)【公開日】2023-07-05
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】関野 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】中塚 睦
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-022787(JP,A)
【文献】特開2020-127164(JP,A)
【文献】特開2008-279947(JP,A)
【文献】特開2019-164698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/023
G08G 1/16
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されるとともに、前記移動体に搭載された他機器と通信可能に接続された制御装置であって、
前記制御装置は、
前記移動体に関する情報を取得する取得部と、
前記移動体に関する制御を行う制御部と、
を備え、
前記移動体に関する情報は、前記移動体の移動に伴い生じる慣性に相関のある慣性パラメータをあらわす情報を含み、
前記制御部は、
前記制御装置と前記他機器との通信異常が発生した場合に、当該通信異常が発生した際の前記慣性パラメータに基づき、当該通信異常が一時的通信異常であるか非一時的通信異常であるかを判断する異常種別判断部を備え、
前記異常種別判断部が前記一時的通信異常と判断した場合には、前記移動体の動作モードを予備動作モードとし、
前記異常種別判断部が前記非一時的通信異常と判断した場合には、前記移動体の動作モードをフェイルセーフ動作モードとし、
前記予備動作モードは、前記通信異常が発生する前の前記移動体の機能を維持する動作モードであり、
前記フェイルセーフ動作モードは、前記機能を維持しない動作モードである
制御装置。
【請求項2】
請求項に記載の制御装置であって、
前記移動体は、自律移動が可能な移動体であり、
前記予備動作モードは、前記通信異常が発生する前の前記移動体の自律移動レベルを維持する動作モードであり、
前記フェイルセーフ動作モードは、前記通信異常が発生する前よりも前記移動体の自律移動レベルを低くする動作モードである、
制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制御装置であって、
前記異常種別判断部は、前記一時的通信異常と判断した前記通信異常の発生回数又は発生頻度が所定値を上回った場合に、前記通信異常を前記非一時的通信異常として判断する、
制御装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記制御部は、前記一時的通信異常と判断した前記通信異常の発生回数又は発生頻度が所定値を上回った場合に、前記移動体が備える報知部に所定の警告情報を報知させる、
制御装置。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記慣性パラメータは、前記移動体に生じた加速度又は角速度である、
制御装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記制御装置は、さらに、前記移動体の外部に設けられたサーバ装置と通信可能に構成され、
前記サーバ装置は、少なくとも前記移動体において前記一時的通信異常と判断された通信異常が発生した地点を示す情報を含む通信異常発生地点情報を、前記移動体に対して配信可能に構成され、
前記移動体に関する情報は、前記移動体の現在位置を示す位置情報をさらに含み、
前記制御部は、前記サーバ装置から取得した通信異常発生地点情報と、前記移動体の現在位置を示す位置情報とに基づき、前記通信異常発生地点情報が示す地点に前記移動体が接近した場合に、前記移動体の動作モードを前記予備動作モードとする、
制御装置。
【請求項7】
請求項に記載の制御装置であって、
前記サーバ装置が配信する通信異常発生地点情報は、前記移動体とは異なる他の移動体において前記一時的通信異常と判断された通信異常が発生した地点を示す情報も含む、
制御装置。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載の制御装置と、
前記他機器と、を備える移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、及び当該制御装置を備える移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭且つ持続可能にするため、交通の安全性改善が求められている。交通の安全性改善の観点から、例えば、ECU(Electronic Control Unit)と称される制御装置が各種車載機器(例えばセンサ)と通信しながら車両の動作を制御することで、運転者による車両の運転を支援する運転支援システムが開発されている。
【0003】
特許文献1には、CPUに異常が発生していると判定したことに応じてリセット信号をCPUへ出力するウォッチドック監視回路から出力されたリセット信号のカウンタ値に基づいて、CPUにリセットが発生した原因がCPUに異常が発生したものであるかを判定するようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-362059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、移動体に搭載された制御装置と他機器との通信異常が発生した場合に、当該通信異常が、作業を特に必要とせずに時間の経過に伴い自然復旧する通信異常(以下「一時的通信異常」とも称する)であるのか、それとも時間が経過しても自然復旧しない通信異常(以下「非一時的通信異常」とも称する)であるのかを判別することができず、発生した通信異常の種別に応じた適切な制御を行うことができなかった。
【0006】
本発明は、移動体に搭載された制御装置と他機器との通信異常が発生した場合に、当該通信異常の種別に応じた適切な制御を行うことを可能とする制御装置、及び当該制御装置を備える移動体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明は、
移動体に搭載されるとともに、前記移動体に搭載された他機器と通信可能に接続された制御装置であって、
前記制御装置は、
前記移動体に関する情報を取得する取得部と、
前記移動体に関する制御を行う制御部と、
を備え、
前記移動体に関する情報は、前記移動体の移動に伴い生じる慣性に相関のある慣性パラメータをあらわす情報を含み、
前記制御部は、
前記制御装置と前記他機器との通信異常が発生した場合に、当該通信異常が発生した際の前記慣性パラメータに基づき、当該通信異常が一時的通信異常であるか非一時的通信異常であるかを判断する異常種別判断部を備え、
前記異常種別判断部が前記一時的通信異常と判断した場合には、前記移動体の動作モードを予備動作モードとし、
前記異常種別判断部が前記非一時的通信異常と判断した場合には、前記移動体の動作モードをフェイルセーフ動作モードとし、
前記予備動作モードは、前記通信異常が発生する前の前記移動体の機能を維持する動作モードであり、
前記フェイルセーフ動作モードは、前記機能を維持しない動作モードである
制御装置である。
【0008】
第2発明は、
第1発明の制御装置と、
前記他機器と、
を備える移動体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、移動体に搭載された制御装置と他機器との通信異常が発生した場合に、当該通信異常の種別に応じた適切な制御を行うことを可能とする制御装置、及び当該制御装置を備える移動体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態の車両の概略構成を示すブロック図である。
図2】一実施形態の車両の制御装置と通信可能なサーバ装置が記憶する通信異常発生地点テーブルの一例を示す図である。
図3】一実施形態の制御装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図4】一実施形態の制御装置が実行する予測処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の制御装置、及び当該制御装置を備える移動体の一実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、本発明における移動体を車両とした場合の例について説明する。なお、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下等の各方向は、車両の運転者から見た方向に従って記載する。また、以下では、同一又は類似の要素には同一又は類似の符号を付し、その説明を適宜省略又は簡略化することがある。
【0012】
[車両]
図1に示す本実施形態の車両1は、駆動源と、駆動源の動力によって駆動される駆動輪及び転舵可能な転舵輪を含む車輪と、を有する自動車である(いずれも不図示)。例えば、車両1は、左右一対の前輪及び後輪を有する四輪の自動車である。車両1の駆動源は、電動機であってもよいし、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であってもよいし、電動機と内燃機関との組み合わせであってもよい。また、車両1の駆動源は、左右一対の前輪を駆動してもよいし、左右一対の後輪を駆動してもよいし、左右一対の前輪及び後輪の四輪を駆動してもよい。前輪及び後輪は、いずれか一方が転舵可能な転舵輪であってもよいし、双方が転舵可能な転舵輪であってもよい。
【0013】
図1に示すように、車両1は、センサ群10と、ナビゲーション装置20と、本発明の制御装置の一例である制御装置30と、EPSシステム(電動パワーステアリングシステム)40と、通信部50と、駆動力制御システム60と、制動力制御システム70と、を備える。
【0014】
センサ群10は、車両1又は車両1の周辺に関する各種の検出値を取得する。センサ群10によって取得された検出値は、制御装置30による車両1の制御に供される。センサ群10には、前方カメラ11aと、後方カメラ11bと、左側方カメラ11cと、右側方カメラ11dと、前方ソナー群12aと、後方ソナー群12bと、左側方ソナー群12cと、右側方ソナー群12dとが含まれる。これらのカメラ及びソナー群は、車両1の周辺情報を取得する外界センサとして機能し得る。
【0015】
前方カメラ11a、後方カメラ11b、左側方カメラ11c、及び右側方カメラ11dは、車両1の周辺を撮像することにより得られた周辺画像の画像データを制御装置30へ出力する。前方カメラ11a、後方カメラ11b、左側方カメラ11c、及び右側方カメラ11dによって撮像される周辺画像は、それぞれ前方画像、後方画像、左側方画像、右側方画像とも称される。左側方画像と右側方画像とによって構成される画像は側方画像とも称される。
【0016】
前方ソナー群12a、後方ソナー群12b、左側方ソナー群12c、及び右側方ソナー群12dは、車両1の周辺に音波を発射するとともに、他物体からの反射音を受信する。前方ソナー群12aは、例えば4つのソナーを含む。前方ソナー群12aを構成するソナーは、車両1の左斜め前方、前方左側、前方右側、及び右斜め前方にそれぞれ備えられている。後方ソナー群12bは、例えば4つのソナーを含む。後方ソナー群12bを構成するソナーは、車両1の左斜め後方、後方左側、後方右側、及び右斜め後方にそれぞれ備えられている。左側方ソナー群12cは、例えば2つのソナーを含む。左側方ソナー群12cを構成するソナーは、車両1の左側部前方、及び左側部後方にそれぞれ備えられている。右側方ソナー群12dは、例えば2つのソナーを含む。右側方ソナー群12dを構成するソナーは、車両1の右側部前方、及び右側部後方にそれぞれ備えられている。
【0017】
さらに、センサ群10には、車輪センサ13a、13bと、車速センサ14と、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)15と、操作検出部16とが含まれる。車輪センサ13a、13bは、それぞれ車輪(不図示)の回転角度を検出する。車輪センサ13a、13bは、角度センサによって構成されていてもよいし、変位センサによって構成されていてもよい。車輪センサ13a、13bは、車輪が所定角度回転する毎に検出パルスを制御装置30へ出力する。車輪センサ13a、13bから出力される検出パルスは、車輪の回転角度及び車輪の回転速度の算出に用いられ得る。車輪の回転角度に基づいて、車両1の移動距離が算出され得る。車輪センサ13aは、例えば、左後輪の回転角度θaを検出する。車輪センサ13bは、例えば、右後輪の回転角度θbを検出する。
【0018】
車速センサ14は、車両1(車体)の走行速度、すなわち車速Vを検出し、検出した車速Vを制御装置30へ出力する。車速センサ14は、例えば、トランスミッションのカウンタシャフトの回転に基づいて車速Vを検出する。
【0019】
慣性計測装置15は、車両1におけるピッチ方向、ロール方向及びヨー方向の各角速度と、車両1における前後方向、左右方向及び上下方向の各加速度とを検出し、これらの検出結果を制御装置30へ出力する。なお、本実施形態では、慣性計測装置15を設けた例を説明するが、これに限られない。例えば、慣性計測装置15に代えて、単に、車両1における所定方向の加速度を検出する加速度センサ、あるいは車両1における所定方向の角速度を検出するジャイロセンサを設けるようにしてもよい。
【0020】
操作検出部16は、操作入力部80を用いて行われるユーザによる操作内容を検出し、検出した操作内容を制御装置30へ出力する。操作入力部80には、例えば、後述の車線維持支援制御あるいは自律移動制御を実行する旨の操作を受け付ける操作ボタン等が含まれ得る。なお、操作入力部80は、後述するタッチパネル21と共通化されてもよい。
【0021】
ナビゲーション装置20は、例えばGPS(Global Positioning System)を用いて車両1の現在位置を検出するとともに、目的地までの経路を車両1のユーザ(以下、単に「ユーザ」ともいう)に案内する。ナビゲーション装置20は、地図情報データベースが備えられた不図示の記憶装置を有する。
【0022】
ナビゲーション装置20には、タッチパネル21と、スピーカ22とが備えられている。タッチパネル21は、制御装置30に対する各種情報の入力を受け付ける入力装置、及び制御装置30によって制御される表示装置として機能し得る。すなわち、ユーザは、タッチパネル21を介して、各種の指令を制御装置30に入力することができる。また、タッチパネル21には、各種情報をユーザに対して案内・報知するための画面が表示され得る。また、スピーカ22は、ユーザに対して各種情報を音声により出力する。
【0023】
制御装置30は、車両1に搭載されるとともに、車両1に搭載された他機器と通信可能に接続され、当該他機器と通信することで車両1全体を統括制御する。制御装置30は、例えば、各種演算を行うプロセッサ、各種情報を記憶する記憶装置(記憶媒体)、制御装置30の内部と外部とのデータの入出力を制御する入出力装置等を備えるECUによって実現される。なお、制御装置30は、1つのECUによって実現されてもよいし、複数のECUによって実現されてもよい。
【0024】
制御装置30と接続される他機器(以下、単に「他機器」とも称する)としては、センサ群10に含まれる各カメラ・ソナー群・センサ、EPSシステム40のEPS ECU45、駆動力制御システム60の駆動ECU61、制動力制御システム70の制動ECU71等を挙げることができる。なお、EPS ECU45、駆動ECU61、及び制動ECU71については後述する。
【0025】
制御装置30と他機器とは、例えば、車両1内に配索された各種ワイヤーハーネスやケーブル、コネクタ等により構成される有線の通信網を介して接続される。また、制御装置30と他機器との通信には、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、FlexRay、CAN FD(CAN with Flexible Data Rate)等を採用することができる。
【0026】
制御装置30は、車両1に関する制御として、例えば、いわゆる「レーンキープアシスト」と称される車線維持支援制御を実行可能に構成される。この車線維持支援制御には、車両1の走行中に車線を検知し、車両1が車線の中央付近を維持して走行するように後述のEPSシステム40を介してステアリング操作を支援する制御、及び、車両1が車線をはみ出しそうになると、ステアリング振動の警告で注意を促すとともに、車線中央付近へ戻すようにステアリング操作を支援する制御等が含まれる。また、上記の車線維持支援制御に限られず、例えば、制御装置30は、車両1を自律移動させる(いわゆる「自動運転」する)自律移動制御を実行可能に構成されてもよい。なお、制御装置30については再度後述する。
【0027】
EPSシステム40は、舵角センサ41と、トルクセンサ42と、EPSモータ43と、レゾルバ44と、EPS ECU(EPS電子制御装置)45と、を有する。舵角センサ41は、ステアリング46の舵角θstを検出する。トルクセンサ42は、ステアリング46に加わるトルクTQを検出する。
【0028】
EPSモータ43は、例えば、前述した車線維持支援制御の際に、ステアリング46に連結されたステアリングコラム47に対して駆動力又は反力を付与することにより、ユーザ(例えば車両1の運転者)のステアリング操作を支援することを可能とする。レゾルバ44は、EPSモータ43の回転角度θmを検出する。EPS ECU45は、EPSシステム40の全体の制御を司る。
【0029】
駆動力制御システム60は、駆動ECU61を備えている。駆動力制御システム60は、車両1の駆動力制御を実行する。駆動ECU61は、例えば、アクセルペダル(不図示)に対するユーザの操作に応じてエンジン(不図示)等を制御することによって、車両1の駆動力を制御する。また、駆動ECU61は、前述した自律移動制御の際には、車両1が所定の速度で走行するように車両1の駆動力を制御してもよい。
【0030】
制動力制御システム70には、制動ECU71が備えられている。制動力制御システム70は、車両1の制動力制御を実行する。制動ECU71は、ブレーキペダル(不図示)に対するユーザの操作に応じてブレーキ機構(不図示)等を制御することによって、車両1の制動力を制御する。また、制動ECU71は、前述した自律移動制御の際には、ブレーキ機構を適宜制御して、車両1を減速させたり停止させたりするようにしてもよい。
【0031】
通信部50は、制御装置30の制御に従って、車両1の外部のサーバ装置2との間で通信を行う通信インターフェイスである。すなわち、制御装置30は、通信部50を介してサーバ装置2との間で通信を行い得る。車両1とサーバ装置2との通信には、例えば、セルラー回線等の移動体通信網、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等を採用することができる。
【0032】
ここで、サーバ装置2は、車両1を含む任意の車両において一時的通信異常と判断された通信異常(後述)が発生した地点(以下「通信異常発生地点」とも称する)を示す情報を含む通信異常発生地点情報を、車両1を含むサーバ装置2と通信可能な車両に対して配信可能に構成されたサーバ(コンピュータ)である。例えば、サーバ装置2は、車両1の製造業者によって管理される。また、サーバ装置2は、クラウドコンピューティングサービスにおいて実現される仮想的なサーバ(クラウドサーバ)であってもよいし、1個の装置として実現された物理的なサーバであってもよい。
【0033】
サーバ装置2は、通信異常発生地点テーブルTを有する。図2に示すように、通信異常発生地点テーブルTは、例えば、車両1を含む任意の車両において一時的通信異常と判断された通信異常が発生した地点(図2中のP1、P2、・・・)を示す情報と、当該通信異常が発生した車両の識別情報(例えば図2中のM1、M2、・・・)と、当該通信異常により通信不通となった機器(例えば図2中のセンサ#1、センサ#2、・・・)を示す情報とを対応付けて記憶する。
【0034】
例えば、車両1を含むサーバ装置2と通信可能な各車両は、一時的通信異常と判断された通信異常が発生すると、その際の自車両の現在位置を示す位置情報(すなわち当該通信異常が発生した地点を示す情報)と、自車両の識別情報と、当該通信異常により通信不通となった機器を示す情報とを対応付けてサーバ装置2へ送信する。サーバ装置2は、このようにして各車両から受信した情報を通信異常発生地点テーブルTに記憶する。そして、サーバ装置2は、通信異常発生地点テーブルTを参照して、車両1を含むサーバ装置2と通信可能な各車両に対して、通信異常発生地点情報の配信を行う(後述)。
【0035】
[制御装置]
つぎに、制御装置30の一例について詳細に説明する。
【0036】
車両1が走行することに伴って、車両1には、路面の段差等に起因した振動が発生し得る。そして、このような振動に起因して、制御装置30と他機器とを接続する通信網のコネクタ等が一時的に接触不良となり、制御装置30と他機器とが一時的に通信不通となることがある。このような通信異常は、時間の経過(具体的には振動の収束)に伴って自然復旧する一時的通信異常となる。
【0037】
一方、車両1では、制御装置30と他機器とを接続する通信網のワイヤーハーネスやケーブルが断線したりコネクタが脱落したりすることにより、制御装置30と他機器とが通信不通となることもある。このような通信異常は、上記の一時的通信異常とは異なり、時間が経過しても自然復旧しない非一時的通信異常である。すなわち、非一時的通信異常からの復旧には、断線したワイヤーハーネスやケーブルを交換したり、脱落したコネクタを接続し直すといった作業が必要となる。
【0038】
ところで、一般的に、車両では、制御装置と、各種センサやカメラ等の他機器との通信異常が発生した場合、故障検知機能が作動し、当該他機器を使用した機能が停止される。したがって、例えば、前述した車線維持支援制御のような運転支援機能が作動している際に、当該運転支援機能にて使用される機器との通信異常が発生すると、当該運転支援機能は停止されることになる。
【0039】
しかしながら、通信異常が一時的通信異常である場合には、作業を特に必要とせずに、短期間のうちに復旧することが想定される。したがって、ユーザビリティの観点からは、通信異常が発生しても、当該通信異常が一時的通信異常であるならば、できるだけ当該通信異常が発生する前の機能を維持することが望まれる。
【0040】
そこで、制御装置30は、他機器との通信異常が発生した場合に、当該通信異常が一時的通信異常であるのか非一時的通信異常であるのかを切り分けることで、通信異常の種別に応じた適切な制御を行うことを可能とする。具体的に、制御装置30は、例えば、制御装置30の記憶装置に記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される機能部、又は制御装置30の入出力装置により実現される機能部として、入出力部31と、制御部32とを備える。
【0041】
入出力部31は、制御部32の制御に従って、制御装置30の内部と外部との間でデータの入出力を行うインターフェイスである。入出力部31は、車両1に関する情報を取得する取得部として機能する。ここで、車両1に関する情報は、車両1の移動に伴い生じる慣性に相関のある慣性パラメータをあらわす情報を含む。ここで、慣性パラメータは、例えば、車両1に生じた加速度又は角速度である。このような慣性パラメータをあらわす情報は、例えば、慣性計測装置15の検出結果から取得することができる。
【0042】
また、車両1に関する情報は、例えば、車両1の位置情報をさらに含む。ここで、車両1の位置情報は、車両1の現在位置を示す情報である。このような車両1の位置情報は、例えば、GPSを用いて車両1の現在位置を検出可能なナビゲーション装置20から取得することができる。さらに、入出力部31は、通信部50を介した制御装置30とサーバ装置2との通信により、サーバ装置2から前述した通信異常発生地点情報を取得してもよい。
【0043】
制御部32は、車両1に関する制御を行う。具体的に、制御部32は、異常種別判断部32aを備える。ここで、異常種別判断部32aは、制御装置30と、車両1に搭載された他機器との通信異常が発生した場合に、当該通信異常が発生した際の慣性パラメータに基づき、当該通信異常が一時的通信異常であるか非一時的通信異常であるかを判断する。例えば、異常種別判断部32aは、通信異常が発生した際の、車両1に生じた加速度及び角速度の少なくとも一方が閾値以上であれば、一時的通信異常と判断する。なお、閾値は、例えば、制御装置30にあらかじめ設定される。
【0044】
このように、制御装置30は、通信異常が発生した際の、車両1に生じた加速度及び角速度の少なくとも一方に基づき、当該通信異常が一時的通信異常であるか非一時的通信異常であるかを判断することにより、車両1に生じた振動を考慮して、当該通信異常が一時的通信異常であるか非一時的通信異常であるかを判断することができる。したがって、発生した通信異常が一時的通信異常であるか非一時的通信異常であるかを精度よく判別する(すなわち切り分ける)ことが可能となる。
【0045】
そして、制御部32は、異常種別判断部32aの判断結果に応じた制御を行う。例えば、制御部32は、異常種別判断部32aによって一時的通信異常と判断した場合には、車両1の動作モードを予備動作モードとする。一方、制御部32は、異常種別判断部32aによって非一時的通信異常と判断した場合には、車両1の動作モードをフェイルセーフ動作モードとする。
【0046】
ここで、予備動作モードは、通信異常が発生する前の車両1の機能を維持する動作モードである。一方、フェイルセーフ動作モードは、通信異常が発生する前の車両1の機能を維持しない動作モードである。
【0047】
例えば、通信異常が発生する前に、制御装置30が前述した車線維持支援制御を実行していたとする。この場合、制御部32は、通信異常の発生に伴って予備動作モードとすると、当該通信異常の発生後も車線維持支援制御を継続させる。このとき、制御部32は、通信不通となった機器の代わりとなる代替機器を使用して車線維持支援制御を継続させる。例えば、通信不通となった機器が左側方カメラ11cであれば、制御部32は、前方カメラ11aや左側方ソナー群12cを、左側方カメラ11cの代替機器として使用して車線維持支援制御を継続させる。また、制御部32は、制御装置30が車線維持支援制御を実行している場合に、通信異常の発生に伴ってフェイルセーフ動作モードとすると、当該通信異常の発生後は車線維持支援制御を継続せずに終了させる。
【0048】
また、予備動作モードを、通信異常が発生する前の車両1の自律移動レベル(例えばいわゆる「自動運転レベル」)を維持する動作モードとし、フェイルセーフ動作モードを、通信異常が発生する前よりも車両1の自律移動レベルを低くする動作モードとしてもよい。
【0049】
例えば、通信異常が発生する前に、前述した自律移動制御により、制御装置30が自動運転レベル「3」以上で車両1の自動運転を行っていたとする。この場合、制御部32は、通信異常の発生に伴って予備動作モードとすると、当該通信異常の発生後も車両1の自動運転を継続させる。このときにも、制御部32は、通信不通となった機器の代わりとなる代替機器を使用することで、自動運転を継続することを可能にする。一方、制御部32は、制御装置30が車両1の自動運転を行っている場合に、通信異常の発生に伴ってフェイルセーフ動作モードとすると、当該通信異常の発生後は自動運転レベルを「0(すなわち完全手動運転)」とすることで、車両1の自動運転を終了させる。
【0050】
また、制御装置30と或る他機器との間で、一時的通信異常が繰り返し発生するような場合には、その後、当該一時的通信異常が非一時的通信異常に変化する可能性が高い。例えば、ハーフロック状態のコネクタを介して制御装置30と接続されている他機器は、その後に当該コネクタが脱落して、制御装置30と通信不通になることが想定される。
【0051】
そこで、制御装置30は、制御装置30とそれぞれの他機器との間において、一時的通信異常と判断した通信異常の発生回数又は発生頻度を計測するようにしてもよい。そして、異常種別判断部32aは、制御装置30と或る他機器との間において、一時的通信異常と判断した通信異常の発生回数又は発生頻度が所定値を上回った場合に、当該他機器との通信異常を非一時的通信異常として判断するようにしてもよい。これにより、一時的通信異常が非一時的通信異常に変化する可能性を考慮した適切な制御を行うことが可能となる。なお、所定値は、例えば、制御装置30にあらかじめ設定される。
【0052】
また、制御部32は、一時的通信異常と判断した通信異常の発生回数又は発生頻度が所定値を上回った場合に、例えばタッチパネル21やスピーカ22といった車両1が備える報知部に、所定の警告情報を報知させるようにしてもよい。これにより、非一時的通信異常に変化する可能性が高いことをユーザに知らせることができる。したがって、一時的通信異常が非一時的通信異常に変化する前に、車両1の点検を受けるようにユーザを促すことが可能となる。なお、報知部は、上記の例に限られない。例えば、報知部は、メーターパネルに設けられたメーターディスプレイ等であってもよい。また、報知部による警告情報の報知は、ステアリング46等に配設された所定の操作ボタンを用いた操作により、オンとしたりオフとしたりできるようにしてもよい。さらに、報知部が警告情報以外の情報も含む各種情報を表示可能とし、ステアリング46等に配設された所定の操作ボタンを用いた操作により、報知部が表示する情報(すなわち報知内容)が切り替わるようにしてもよい。
【0053】
また、一時的通信異常の要因となり得る振動が、路面の段差や未舗装路等の路面状態が悪いこと起因したものであることを考慮すると、車両1を含む任意の車両において過去に一時的通信異常が発生した地点(すなわち通信異常発生地点)を車両1が通過する場合には、車両1においても一時的通信異常が発生する可能性が高い。これは、路面状態が即時に改善される可能性は低いためである。
【0054】
そこで、制御部32は、サーバ装置2から取得した通信異常発生地点情報と、車両1の位置情報とに基づき、通信異常発生地点に車両1が接近した場合に、車両1の動作モードを予備動作モードとするようにしてもよい。これにより、車両1において一時的通信異常が発生する可能性が高いと想定される場合には、一時的通信異常の発生に備えて、車両1の動作モードをあらかじめ予備動作モードとしておくことが可能となる。したがって、車両1の挙動の安定化を図れる。また、これにより、路面状態の悪い地点を再度通過する状況になった場合には車両1を含む任意の車両における過去の履歴を用いて予備動作モードとすることができるほか、例えば、ナビゲーション装置20によってこのような路面状態が悪いエリアを避けた経路を探索・誘導させることも可能となる。
【0055】
[制御装置における処理]
つぎに、図3及び図4を参照して、制御装置30が実行する処理の一例について説明する。例えば、制御装置30は、車両1が起動しているとき(例えば車両1のイグニッション電源がオンであるとき)に、図3に示す処理を所定の周期で実行する。
【0056】
図3に示すように、制御装置30は、各他機器から情報を取得する(ステップS1)。ステップS1において、制御装置30は、例えば、センサ群10に含まれる各カメラ・ソナー群・センサから、その検出値等を示す情報を取得する。また、ステップS1において、制御装置30は、ナビゲーション装置20から車両1の位置情報を取得したり、車両1に搭載された制御装置30以外の各ECUから所定の情報を取得したりもする。
【0057】
つぎに、制御装置30は、いずれかの他機器との通信異常が発生したか否かを判断する(ステップS2)。より詳細には、ステップS1の処理によって情報を取得できなかった他機器があった場合、制御装置30は、ステップS2において、当該他機器との通信異常が発生したと判断する。一方、ステップS1の処理によって情報を取得できなかった他機器がなかった場合、すなわち、すべての他機器から情報を取得できた場合、制御装置30は、ステップS2において、通信異常が発生していないと判断する。
【0058】
そして、通信異常が発生したと判断すると(ステップS2:Yes)、制御装置30は、車両1に振動があったか否かを判断する(ステップS3)。より詳細には、制御装置30は、慣性計測装置15より検出された慣性パラメータ(加速度及び角速度の少なくとも一方)が閾値以上であれば振動があったと判断し、そうでなければ振動がなかったと判断する。
【0059】
そして、振動がなかったと判断すると(ステップS3:No)、制御装置30は、発生した通信異常を非一時的通信異常と判断し(ステップS4)、車両1の動作モードをフェイルセーフ動作モードにして(ステップS5)、図3に示す一連の処理を終了する。
【0060】
一方、振動があったと判断すると(ステップS3:Yes)、制御装置30は、発生した通信異常を一時的通信異常と判断する(ステップS6)。そして、制御装置30は、そのときの車両1の位置情報と、車両1の識別情報と、当該通信異常により通信不通となった機器を示す情報とを対応付けてサーバ装置2へ送信する(ステップS7)。
【0061】
つぎに、制御装置30は、一時的通信異常と判断した通信異常が発生した他機器に対応する、一時的通信異常の発生回数の値に「1」を加算する(ステップS8)。そして、制御装置30は、加算後の発生回数が所定値を上回ったか否かを判断する(ステップS9)。加算後の発生回数が所定値を上回っていなければ(ステップS9:No)、制御装置30は、そのままステップS11の処理へ進む。
【0062】
一方、加算後の発生回数が所定値を上回ると(ステップS9:Yes)、制御装置30は、例えばタッチパネル21やスピーカ22といった車両1が備える報知部により、ユーザに対して警告情報を報知する(ステップS10)。警告情報の報知は、例えば、車両1を整備工場(例えばいわゆる「ディーラ」)で点検するように促したり、一時的通信異常の発生回数が所定値を上回った他機器を知らせたりするメッセージを、タッチパネル21に表示したりスピーカ22から出力したりすることにより行われる。
【0063】
そして、制御装置30は、車両1の動作モードを予備動作モードにして(ステップS11)、図3に示す一連の処理を終了する。このように、発生した通信異常が一時的通信異常である場合には、車両1の動作モードをフェイルセーフ動作モードとせずに予備動作モードとすることで、車両1の機能が失陥したり自動運転レベルが低下したりする機会を減らすことができ、ユーザビリティの向上を図れる。
【0064】
また、制御装置30は、ステップS2において、通信異常が発生していないと判断すると(ステップS2:No)、図4に示す予測処理を実行する(ステップS20)。
【0065】
図4に示すように、予測処理において、制御装置30は、通信異常発生地点情報をサーバ装置2から取得する(ステップS21)。このとき、制御装置30は、サーバ装置2との通信量を削減するために、例えば、車両1の位置情報を含む配信要求をサーバ装置2へ送信することで、車両1の現在位置周辺の地点に関する通信異常発生地点情報のみをサーバ装置2から取得するようにしてもよい。
【0066】
つぎに、制御装置30は、車両1の位置情報と、サーバ装置2から取得した通信異常発生地点情報とに基づき、車両1の現在位置周辺に通信異常発生地点があるか否か、すなわち車両1が通信異常発生地点に接近したか否かを判断する(ステップS22)。ステップS22において、制御装置30は、例えば、車両1の現在位置を中心とした所定範囲内に通信異常発生地点があれば車両1の現在位置周辺に通信異常発生地点があると判断し、そうでなければ車両1の現在位置周辺に通信異常発生地点がないと判断する。また、制御装置30は、車両1の走行予定経路上、且つ車両1の現在位置から所定距離内に通信異常発生地点があれば車両1の現在位置周辺に通信異常発生地点があると判断し、そうでなければ車両1の現在位置周辺に通信異常発生地点がないと判断してもよい。
【0067】
そして、現在位置周辺に通信異常発生地点がある、すなわち車両1が通信異常発生地点に接近したと判断すると(ステップS22:Yes)、制御装置30は、車両1の動作モードを予備動作モードにして(ステップS23)、図4に示す一連の処理を終了する。
【0068】
一方、現在位置周辺に通信異常発生地点がない、すなわち車両1が通信異常発生地点から離れていると判断すると(ステップS22:No)、制御装置30は、車両1の動作モードを通常の動作モードである通常動作モードにして(ステップS24)、図4に示す一連の処理を終了する。
【0069】
以上に説明したように、本実施形態の制御装置30によれば、車両1に搭載された他機器との通信異常が発生した場合に、当該通信異常が発生した際の慣性パラメータに基づき、当該通信異常が一時的通信異常であるか非一時的通信異常であるかを判断し、当該判断結果に応じた制御を行うことができる。これにより、発生した通信異常の種別に応じた適切な制御を行うことが可能となる。
【0070】
また、制御装置30によれば、発生した通信異常が一時的通信異常と判断した場合には、車両1の動作モードを、当該通信異常が発生する前の車両1の機能を維持する予備動作モードとすることができる。これにより、一時的通信異常が発生した場合にもフェイルセーフ動作モードとするようにした場合に比べて、車両1の機能が失陥する回数を低減でき、ユーザビリティの向上を図れる。
【0071】
また、制御装置30によれば、発生した通信異常が一時的通信異常と判断した場合には、車両1の動作モードを、当該通信異常が発生する前の車両1の自律移動レベル(例えばいわゆる「自動運転レベル」)を維持する予備動作モードとすることができる。これにより、一時的通信異常が発生した場合にもフェイルセーフ動作モードとするようにした場合に比べて、車両1の自律移動レベルが低下する回数を低減でき、ユーザビリティの向上を図れる。
【0072】
また、制御装置30によれば、制御装置30と或る他機器との間において、一時的通信異常と判断した通信異常の発生回数又は発生頻度が所定値を上回った場合には、当該他機器との通信異常を非一時的通信異常として判断するようにしてもよい。これにより、一時的通信異常が非一時的通信異常に変化する可能性を考慮した適切な制御を行うことが可能となる。
【0073】
また、制御装置30によれば、制御装置30と或る他機器との間において、一時的通信異常と判断した通信異常の発生回数又は発生頻度が所定値を上回った場合には、車両1が備える報知部(例えばタッチパネル21やスピーカ22)により、所定の警告情報を報知させるができる。これにより、非一時的通信異常に変化する可能性が高いことをユーザに知らせることができる。したがって、一時的通信異常が非一時的通信異常に変化する前に、車両1の点検を受けるようにユーザを促すことが可能となる。
【0074】
また、制御装置30によれば、車両1に生じた加速度又は角速度である慣性パラメータに基づき、発生した通信異常が一時的通信異常であるか非一時的通信異常であるかを判断することができる。これにより、車両1に生じた振動を考慮して、発生した通信異常が一時的通信異常であるか非一時的通信異常であるかを判断することができる。したがって、発生した通信異常が一時的通信異常であるか非一時的通信異常であるかを精度よく判別する(切り分ける)ことが可能となる。
【0075】
また、制御装置30によれば、車両1の外部のサーバ装置2から取得した異常発生情報と、車両1の位置情報とに基づき、車両1を含む任意の車両(すなわち車両1とは異なる他車両も含む)において過去に一時的通信異常が発生した地点(通信異常発生地点)に車両1が接近した場合に、車両1の動作モードを予備動作モードとすることができる。これにより、車両1において一時的通信異常が発生する可能性が高いと想定される場合には、一時的通信異常の発生に備えて、車両1の動作モードをあらかじめ予備動作モードとしておくことが可能となる。したがって、車両1の挙動の安定化を図れる。
【0076】
また、制御装置30は、一時的通信異常と判断した通信異常が発生すると、そのときの車両1の位置情報を含む情報をサーバ装置2へ送信することで、通信異常発生地点をサーバ装置2に記憶させることができる。そして、制御装置30は、その後、必要に応じて、そのときの車両1の現在位置周辺の地点に関する通信異常発生地点情報のみをサーバ装置2から取得することができる。これにより、すべての通信異常発生地点を制御装置30が記憶するようにした場合に比べて、必要となる制御装置30の記憶領域を削減することが可能となる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前述した実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0078】
また、前述した実施形態では、図3に示したステップS9の処理において、一時的通信異常の発生回数が所定値を上回ったか否かを判断しているが、発生回数の代わりに発生頻度(すなわち単位時間あたりの発生回数)が所定値を上回ったか否かを判断するようにしてもよい。そして、制御装置30は、一時的通信異常の発生頻度が所定値を上回ったと判断したならば、警告情報を報知するようにしてもよい。
【0079】
また、前述した実施形態では、制御装置30は、一時的通信異常の発生回数が所定値を上回ったと判断すると、警告情報を報知するとともに(ステップS10)、車両1の動作モードを予備動作モードとする(ステップS11)ようにしたが、これに限られない。例えば、制御装置30は、一時的通信異常の発生回数又は発生頻度が所定値を上回ったと判断すると、警告情報を報知するとともに、車両1の動作モードをフェイルセーフ動作モードとするようにしてもよい。前述したように、一時的通信異常が繰り返し発生するような場合には、その後、当該一時的通信異常が非一時的通信異常に変化する可能性が高いからである。このようにすれば、非一時的通信異常に変化する可能性を考慮した適切な制御を行うことが可能となる。
【0080】
また、前述した実施形態では、図4に示したステップS21の処理において、制御装置30は、車両1の現在位置周辺の地点に関する異常発生情報をサーバ装置2から取得しているが、これに限られない。例えば、制御装置30は、車両1の位置情報に加えて、車両1の識別情報を含む配信要求をサーバ装置2へ送信することで、車両1の現在位置周辺の地点に関する通信異常発生地点情報であって、且つ車両1に関する通信異常発生地点情報のみをサーバ装置2から取得するようにしてもよい。このようにすれば、サーバ装置2との通信量をさらに削減できるとともに、通信異常発生地点情報を記憶するために必要となる制御装置30の記憶領域もさらに削減することが可能となる。また、制御装置30は、車両1の現在位置周辺の地点に関する通信異常発生地点情報であって、且つ車両1と同一車種に関する通信異常発生地点情報のみをサーバ装置2から取得するようにしてもよい。このようにしても、サーバ装置2との通信量をさらに削減できるとともに、通信異常発生地点情報を記憶するために必要となる制御装置30の記憶領域もさらに削減することが可能となる。
【0081】
また、前述した実施形態におけるフェイルセーフ動作モードは、車両1の機能を停止させるもの又は自律走行レベルを低くするものとして説明したが、これに限られない。例えば、フェイルセーフ動作モードは、ミニマム・リスク・マヌーバ(MRM)により車両1を安全に停止させる動作モードとしてもよい。
【0082】
また、前述した実施形態では、本発明における移動体を、四輪の自動車である車両1とした例を説明したが、これに限られない。本発明における移動体は、二輪の自動車(いわゆる自動二輪車)であってもよいし、セグウェイ(登録商標)、船舶、又は航空機等であってもよい。
【0083】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、前述した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0084】
(1) 移動体(車両1)に搭載されるとともに、前記移動体に搭載された他機器(センサ群10)と通信可能に接続された制御装置(制御装置30)であって、
前記制御装置は、
前記移動体に関する情報を取得する取得部(入出力部31)と、
前記移動体に関する制御を行う制御部(制御部32)と、
を備え、
前記移動体に関する情報は、前記移動体の移動に伴い生じる慣性に相関のある慣性パラメータをあらわす情報を含み、
前記制御部は、
前記制御装置と前記他機器との通信異常が発生した場合に、当該通信異常が発生した際の前記慣性パラメータに基づき、当該通信異常が一時的通信異常であるか非一時的通信異常であるかを判断する異常種別判断部(異常種別判断部32a)を備え、
前記異常種別判断部の判断結果に応じた制御を行う、
制御装置。
【0085】
(1)によれば、移動体に搭載された制御装置と他機器との通信異常が発生した場合に、当該通信異常が発生した際の慣性パラメータに基づき、当該通信異常が一時的通信異常であるか非一時的通信異常であるかを判断し、当該判断結果に応じた制御を行うことができる。これにより、発生した通信異常の種別に応じた適切な制御を制御装置が行うことが可能となる。
【0086】
(2) (1)に記載の制御装置であって、
前記制御部は、
前記一時的通信異常と判断した場合には、前記移動体の動作モードを予備動作モードとし、
前記非一時的通信異常と判断した場合には、前記移動体の動作モードをフェイルセーフ動作モードとし、
前記予備動作モードは、前記通信異常が発生する前の前記移動体の機能を維持する動作モードであり、
前記フェイルセーフ動作モードは、前記機能を維持しない動作モードである、
制御装置。
【0087】
(2)によれば、発生した通信異常が一時的通信異常と判断した場合には、移動体の動作モードを、当該通信異常が発生する前の移動体の機能を維持する予備動作モードとすることができる。これにより、一時的通信異常が発生した場合にもフェイルセーフ動作モードとするようにした場合に比べて、移動体の機能が失陥する回数を低減でき、ユーザビリティの向上を図れる。
【0088】
(3) (2)に記載の制御装置であって、
前記移動体は、自律移動が可能な移動体であり、
前記予備動作モードは、前記通信異常が発生する前の前記移動体の自律移動レベルを維持する動作モードであり、
前記フェイルセーフ動作モードは、前記通信異常が発生する前よりも前記移動体の自律移動レベルを低くする動作モードである、
制御装置。
【0089】
(3)によれば、発生した通信異常が一時的通信異常と判断した場合には、移動体の動作モードを、当該通信異常が発生する前の移動体の自律移動レベルを維持する予備動作モードとすることができる。これにより、一時的通信異常が発生した場合にもフェイルセーフ動作モードとするようにした場合に比べて、移動体の自律移動レベルが低下する回数を低減でき、ユーザビリティの向上を図れる。
【0090】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の制御装置であって、
前記異常種別判断部は、前記一時的通信異常と判断した前記通信異常の発生回数又は発生頻度が所定値を上回った場合に、前記通信異常を前記非一時的通信異常として判断する、
制御装置。
【0091】
(4)によれば、一時的通信異常と判断した通信異常の発生回数又は発生頻度が所定値を上回った場合には、他機器との通信異常を非一時的通信異常として判断することができる。これにより、一時的通信異常が非一時的通信異常に変化する可能性を考慮した適切な制御を行うことが可能となる。
【0092】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の制御装置であって、
前記制御部は、前記一時的通信異常と判断した前記通信異常の発生回数又は発生頻度が所定値を上回った場合に、前記移動体が備える報知部に所定の警告情報を報知させる、
制御装置。
【0093】
(5)によれば、一時的通信異常と判断した通信異常の発生回数又は発生頻度が所定値を上回った場合には、移動体が備える報知部により、所定の警告情報を報知させるができる。これにより、非一時的通信異常に変化する可能性が高いことをユーザに知らせることができる。したがって、一時的通信異常が非一時的通信異常に変化する前に、移動体の点検を受けるようにユーザを促すことが可能となる。
【0094】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の制御装置であって、
前記慣性パラメータは、前記移動体に生じた加速度又は角速度である、
制御装置。
【0095】
(6)によれば、移動体に生じた加速度又は角速度である慣性パラメータに基づき、発生した通信異常が一時的通信異常であるか非一時的通信異常であるかを判断することができる。これにより、移動体に生じた振動を考慮して、発生した通信異常が一時的通信異常であるか非一時的通信異常であるかを判断することができる。したがって、発生した通信異常が一時的通信異常であるか非一時的通信異常であるかを精度よく判別する(切り分ける)ことが可能となる。
【0096】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の制御装置であって、
前記制御装置は、さらに、前記移動体の外部に設けられたサーバ装置(サーバ装置2)と通信可能に構成され、
前記サーバ装置は、少なくとも前記移動体において前記一時的通信異常と判断された通信異常が発生した地点を示す情報を含む通信異常発生地点情報を、前記移動体に対して配信可能に構成され、
前記移動体に関する情報は、前記移動体の現在位置を示す位置情報をさらに含み、
前記制御部は、前記サーバ装置から取得した通信異常発生地点情報と、前記移動体の現在位置を示す位置情報とに基づき、前記通信異常発生地点情報が示す地点に前記移動体が接近した場合に、前記移動体の動作モードを予備動作モードとする、
制御装置。
【0097】
過去に一時的通信異常が発生した地点を移動体が再度通過する場合には、一時的通信異常が再度発生する可能性が高い。(7)によれば、少なくとも移動体において過去に一時的通信異常が発生した地点(通信異常発生地点)に移動体が接近した場合に、移動体の動作モードを予備動作モードとすることができる。これにより、移動体において一時的通信異常が発生する可能性が高いと想定される場合には、一時的通信異常の発生に備えて、移動体の動作モードをあらかじめ予備動作モードとしておくことが可能となる。したがって、移動体の挙動の安定化を図れる。
【0098】
(8) (7)に記載の制御装置であって、
前記サーバ装置が配信する通信異常発生地点情報は、前記移動体とは異なる他の移動体において前記一時的通信異常と判断された通信異常が発生した地点を示す情報も含む、
制御装置。
【0099】
他の移動体において一時的通信異常が発生した地点を移動体が通過する場合には、移動体においても一時的通信異常が発生する可能性が高い。(8)によれば、他の移動体において過去に一時的通信異常が発生した地点(通信異常発生地点)に移動体が接近した場合に、移動体の動作モードを予備動作モードとすることができる。これにより、移動体において一時的通信異常が発生する可能性が高いと想定される場合には、一時的通信異常の発生に備えて、移動体の動作モードをあらかじめ予備動作モードとしておくことが可能となる。したがって、移動体の挙動の安定化を図れる。
【0100】
(9) (1)から(8)のいずれかに記載の制御装置(制御装置30)と、
前記他機器(センサ群10)と、を備える移動体(車両1)。
【0101】
(9)によれば、移動体に搭載された制御装置と他機器との通信異常が発生した場合に、当該通信異常が発生した際の慣性パラメータに基づき、当該通信異常が一時的通信異常であるか非一時的通信異常であるかを判断し、当該判断結果に応じた制御を行うことができる。これにより、発生した通信異常の種別に応じた適切な制御を制御装置が行って、移動体を適切に動作させることが可能となる。
【符号の説明】
【0102】
1 車両(移動体)
2 サーバ装置
10 センサ群(他機器)
30 制御装置
31 入出力部(取得部)
32 制御部
32a 異常種別判断部
図1
図2
図3
図4