(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】情報処理方法及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241015BHJP
G08G 1/123 20060101ALI20241015BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20241015BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20241015BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20241015BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/123
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/20
(21)【出願番号】P 2021509119
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2020011666
(87)【国際公開番号】W WO2020196086
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-12-27
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】P 2019215367
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】大西 遼太
(72)【発明者】
【氏名】浦部 弘章
(72)【発明者】
【氏名】本田 義雅
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0356751(US,A1)
【文献】特開2019-032664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G16Y 10/40
G16Y 20/20
G16Y 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにより実行される情報処理方法であって、
自動運転車の自動運転に関する仕様を取得し、
人を配送するためのルートを取得し、
前記仕様及び前記ルートに基づいて、前記自動運転車の運行設計領域を決定し、
決定した前記運行設計領域を出力し、
前記仕様とは、センシング能力及び処理能力の少なくとも1つを含
み、
前記運行設計領域の決定では、
前記自動運転車の走行の制御結果を示す走行制御履歴を含む走行履歴を取得し、
前記走行履歴に基づいて、前記自動運転車の走行リスクがマッピングされた地図であるリスク地図情報を生成し、
前記仕様に基づいて、前記自動運転車が前記リスク地図情報にマッピングされている前記走行リスクを回避する難易度を算出することで、前記走行リスクのスコアを算出し、
前記スコアにしたがって、前記自動運転車の前記運行設計領域を決定する
情報処理方法。
【請求項2】
前記センシング能力は、センシング距離、センシング角度、解像度及びセンシング対象の少なくとも1つを含む
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記処理能力は、処理速度、同時処理タスク数及び記憶容量の少なくとも1つを含む
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記走行履歴に基づいて前記スコアを更新する
請求項
1~3のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記スコアの更新では、
前記走行履歴に基づいて、前記自動運転車の走行中におけるイベントを抽出し、
抽出したイベントにしたがって、前記スコアを更新する
請求項
4に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記走行履歴は、前記自動運転車が走行した前記ルート、又は、当該ルートに類似する類似ルートにおける前記自動運転車の走行履歴である
請求項
4又は5に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記走行履歴は、前記自動運転車の走行の制御結果である走行制御履歴、又は、前記自動運転車の走行時における前記自動運転車の外部環境である走行環境履歴を含む
請求項
4~6のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記運行設計領域の決定では、前記スコアの更新状況にしたがって、以前の前記運行設計領域を更新する
請求項
1~7のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記運行設計領域の決定では、
更新前のスコアよりも更新後のスコアが低くなる場合、前記運行設計領域の制約を弱める提案を通知し、
提案に対する応答にしたがって、以前の前記運行設計領域よりも制約を弱めた前記運行設計領域に決定する
請求項
8に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記運行設計領域の決定では、更新前のスコアよりも更新後のスコアが高くなる場合、前記運行設計領域の制約を強める提案をする、又は以前の前記運行設計領域よりも制約を強める前記運行設計領域に決定する
請求項
8又は9に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記スコアの更新状況にしたがって、前記ルート上のインフラストラクチャの更新の提案を通知する
請求項
4~10のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項12】
自動運転車の自動運転に関する仕様を管理する仕様管理部と、
人を配送するためのルートを計算するルート計算部と、
前記仕様管理部から取得する前記仕様及び前記ルート計算部から取得する前記ルートに基づいて、前記自動運転車の運行設計領域を決定する運行設計領域決定部と、
決定した前記運行設計領域を出力する出力部と、を備え、
前記仕様とは、センシング能力及び処理能力の少なくとも1つを含
み、
前記運行設計領域の決定では、
前記自動運転車の走行の制御結果を示す走行制御履歴を含む走行履歴を取得し、
前記走行履歴に基づいて、前記自動運転車の走行リスクがマッピングされた地図であるリスク地図情報を生成し、
前記仕様に基づいて、前記自動運転車が前記リスク地図情報にマッピングされている前記走行リスクを回避する難易度を算出することで、前記走行リスクのスコアを算出し、
前記スコアにしたがって、前記自動運転車の前記運行設計領域を決定する
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理方法及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、移動体の事故リスクの要因を示す警告履歴情報があると判定した場合、当該警告履歴情報に含まれる地図情報で示される位置に表示される警告シンボルを含む画面データを生成する事故リスク可視化処理部と、事故リスク可視化処理部から受領する画面データに基づいて画面表示を行う事故リスク表示部とを備える事故リスク可視化システムが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、第1の車両群について収集した走行速度のデータの集計値と、第2の車両群について収集した走行速度のデータの集計値との比較結果に基づいて、特定のエリアの危険度に関する評価を行う評価部を備える情報処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-032343号公報
【文献】特許第6501258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、走行に関する仕様の異なる様々な自動運転車のうちの一部の車両にとっては運行効率が低下するおそれがあった。例えば、特許文献1及び2に開示される技術では、複数の車両から取得されるデータが一律に扱われてリスクが計算される。そのため、車両全体としての安全性は向上するが、高性能な車両にとっては過剰に走行が制限されるおそれがある。言い換えると、車両の運行効率が低下するおそれがあるという課題がある。
【0006】
そこで、本開示は、自動運転車による走行の安全性を確保しつつ、運行効率の低下を抑制することができる情報処理方法及び情報処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータにより実行される情報処理方法であって、自動運転車の自動運転に関する仕様を取得し、人を配送するためのルートを取得し、前記仕様及び前記ルートに基づいて、前記自動運転車の運行設計領域を決定し、決定した前記運行設計領域を出力し、前記仕様とは、センシング能力及び処理能力の少なくとも1つを含み、前記運行設計領域の決定では、前記自動運転車の走行の制御結果を示す走行制御履歴を含む走行履歴を取得し、前記走行履歴に基づいて、前記自動運転車の走行リスクがマッピングされた地図であるリスク地図情報を生成し、前記仕様に基づいて、前記自動運転車が前記リスク地図情報にマッピングされている前記走行リスクを回避する難易度を算出することで、前記走行リスクのスコアを算出し、前記スコアにしたがって、前記自動運転車の前記運行設計領域を決定する。
【0008】
なお、これらのうちの一部の具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータで読み取り可能なCD-ROM等の記録媒体を用いて実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせを用いて実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の情報処理方法等によれば、自動運転車による走行の安全性を確保しつつ、運行効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態における情報処理システムを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態における情報処理システムの動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、運行設計領域を決定する処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、走行リスクのスコア及びODDを更新する処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、走行リスクのスコア及びODDを更新する処理ついての別の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、コンピュータにより実行される情報処理方法であって、自動運転車の自動運転に関する仕様を取得し、人を配送するためのルートを取得し、前記仕様及び前記ルートに基づいて、前記自動運転車の運行設計領域を決定し、決定した前記運行設計領域を出力する。
【0012】
これによれば、ルートだけでなく自動運転車の仕様に応じた運行設計領域を決定することができる。その結果、例えば、同一ルートであっても、仕様によって決まる性能の高い自動運転車と、性能の低い自動運転車とで、異なる運行設計領域を設定することができる。
【0013】
したがって、この情報処理方法では、自動運転車による走行の安全性を確保しつつ、運行効率の低下を抑制することができる。
【0014】
本開示の他の態様に係る情報処理システムは、自動運転車の自動運転に関する仕様を管理する仕様管理部と、人を配送するためのルートを計算するルート計算部と、前記仕様管理部から取得する前記仕様及び前記ルート計算部から取得する前記ルートに基づいて、前記自動運転車の運行設計領域を決定する運行設計領域決定部と、決定した前記運行設計領域を出力する出力部と、を備える。
【0015】
この情報処理システムにおいても上述と同様の作用効果を奏する。
【0016】
本開示の他の態様に係る情報処理方法は、前記ルートにおける前記自動運転車の走行を妨げる可能性を示す走行リスクを取得し、前記運行設計領域の決定では、前記仕様、及び、前記ルートの前記走行リスクに基づいて、前記自動運転車の前記運行設計領域を決定する。
【0017】
これによれば、例えば、自動運転車の性能が高ければ走行リスクの影響を受け難いため、この自動運転車に対しては、比較的緩和された運行設計領域が決定される。また、自動運転車の性能が低ければ走行リスクの影響を受け易いため、比較的制限された運行設計領域が決定される。このように、走行リスクによるそれぞれの自動運転車が受ける影響が異なるため、自動運転車それぞれにとって走行リスクが抑制される運行設計領域が決定される。このため、自動運転車による走行の安全性を確保しながら運行効率の低下を抑制することができる。
【0018】
本開示の他の態様に係る情報処理方法は、前記運行設計領域の決定では、前記仕様に対応する前記走行リスクのスコアを取得し、前記スコアにしたがって、前記自動運転車の前記運行設計領域を決定する。
【0019】
これによれば、自動運転の仕様に対する走行リスクの程度に応じて運行設計領域を設定することができる。
【0020】
本開示の他の態様に係る情報処理方法は、前記自動運転車の走行履歴を取得し、前記走行履歴に基づいて前記スコアを更新する。
【0021】
これによれば、自動運転車が走行すればするほど走行リスクのスコアの精度及び正確性が向上する。その結果、当該スコアにしたがって決定される運行設計領域を適正化することができる。
【0022】
本開示の他の態様に係る情報処理方法において、前記スコアの更新では、前記走行履歴に基づいて、前記自動運転車の走行中におけるイベントを抽出し、抽出したイベントにしたがって、前記スコアを更新する。
【0023】
これによれば、走行リスクのスコアが自動運転車の走行履歴に基づいて更新されることにより、運行設計領域が自動運転車に適するように更新される。したがって、走行実績に基づいて、複数の自動運転車それぞれにとって安全性と効率性を適正化することができる。
【0024】
本開示の他の態様に係る情報処理方法において、前記走行履歴は、前記自動運転車が走行した前記ルート、又は、当該ルートに類似する類似ルートにおける前記自動運転車の走行履歴である。
【0025】
これによれば、自動運転車自身の走行履歴に基づいて走行リスクのスコアが更新されることにより、当該自動運転車にとって適正な運行設計領域を決定することができる。また、類似ルートの走行履歴に基づいてスコアが更新されることにより、当該自動運転車が未だ走行したことがないルートについても、ある程度適正な運行設計領域を決定することができる。
【0026】
本開示の他の態様に係る情報処理方法において、前記走行履歴は、前記自動運転車の走行の制御結果である走行制御履歴、又は、前記自動運転車の走行時における前記自動運転車の外部環境である走行環境履歴を含む。
【0027】
これによれば、走行制御履歴又は走行環境履歴に基づいて、走行リスクのスコアの精度及び正確性をより向上させることができる。
【0028】
本開示の他の態様に係る情報処理方法において、前記運行設計領域の決定では、前記スコアの更新状況にしたがって、以前の前記運行設計領域を更新する。
【0029】
これによれば、スコアの更新にしたがって運行設計領域を更新することができる。このため、更新有無又は更新内容にしたがって、運行設計領域を更新することができる。
【0030】
本開示の他の態様に係る情報処理方法において、前記運行設計領域の決定では、更新前のスコアよりも更新後のスコアが低くなる場合、前記運行設計領域の制約を弱める提案を通知し、提案に対する応答にしたがって、以前の前記運行設計領域よりも制約を弱めた前記運行設計領域に決定する。
【0031】
これによれば、走行リスクのスコアが低くなる場合に、運行設計領域の制約を弱めることを自動運転車(又は自動運転システム)の管理者に通知することができる。運行設計領域の制約を弱めることは安全性が下がる可能性があるため管理者に判断してもらうことが考えられる。そこで、本構成では、管理者からの応答にしたがって運行設計領域の制約を弱める。このため、自動運転車の安全性を確保しつつ運行効率の低下を抑制することができる。
【0032】
本開示の他の態様に係る情報処理方法において、前記運行設計領域の決定では、更新前のスコアよりも更新後のスコアが高くなる場合、前記運行設計領域の制約を強める提案をする、又は以前の前記運行設計領域よりも制約を強める前記運行設計領域に決定する。
【0033】
これによれば、走行リスクのスコアが高くなる場合に、運行設計領域の制約を強めることができる。このため、自動運転車による走行の安全性をより確保することができる。
【0034】
本開示の他の態様に係る情報処理方法は、前記スコアの更新状況にしたがって、前記ルート上のインフラストラクチャの更新の提案を通知する。
【0035】
これによれば、インフラストラクチャ側を更新することにより運行設計領域の制約が弱められることを自動運転車の管理者に示唆することができる。
【0036】
以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また全ての実施の形態において、各々の内容を組み合わせることもできる。
【0037】
以下、本開示の一態様に係る情報処理方法及び情報処理システムについて、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0038】
(実施の形態)
<構成:情報処理システム1>
図1は、実施の形態における情報処理システム1を示すブロック図である。
【0039】
図1に示すように、情報処理システム1は、ユーザの求めに応じて、自動運転機能及び手動運転機能を有する車両である自動運転車5をユーザに配車することができるシステムである。情報処理システム1は、端末装置3等を使用するユーザから、出発日時、出発地及び目的地等を示す情報を取得することで、取得した情報に基づき、ユーザに応じた自動運転車5を配車することができる。自動運転車5は、自動運転状態から手動運転状態に遷移したり、手動運転状態から自動運転状態に遷移したりする。情報処理システム1、端末装置3、1以上の自動運転車5及び管理者端末7は、自動運転システムを構成している。ユーザは、情報処理システム1を利用する人の一例である。
【0040】
情報処理システム1は、例えばライドシェアリングサービス(Ride-sharing Service)、ライドヘイリングサービス(Ride-hailing Service)等のために自動運転車5が提供される共用型利用形態に適用される。
【0041】
ライドシェアリングサービスは、車両を移動手段として、この車両に乗りたいユーザを結びつけるサービスの総称である。つまり、ライドシェアリングは、目的地へ移動を希望するユーザが、他のユーザが乗車している車両に乗合うことで、出発地から目的地又は目的地に近づく位置まで配送する車両の相乗りである。
【0042】
また、ライドヘイリングサービスは、目的地へ移動を希望するユーザが、車両を移動手段として、希望地へ配車を要求することで、希望地から目的地まで配送することができるサービスである。なお、ライドヘイリングサービスにおいても、希望地から目的地まで配送する際に、他のユーザをさらに乗車させてライドシェアリングサービスとすることは可能である。
【0043】
情報処理システム1の構成について、具体的に説明する。
【0044】
情報処理システム1は、処理制御部21と、走行データ管理部22と、リスク推定部23と、ルート計算部24と、ODD(Operational Design Domain)決定部25と、運行計画部26と、車両管理部27と、配車制御部28と、通信部29とを備える。
【0045】
[処理制御部21]
処理制御部21は、通信部29を介して自動運転車5から走行履歴、イベント情報及び車両IDを取得することにより、自動運転車5の運行設計領域(以下、ODDということがある)を設定するために、走行データ管理部22、リスク推定部23、ルート計算部24、運行計画部26等を制御する処理部である。処理制御部21は、ルートを走行している自動運転車5からこれらの情報を、所定期間間隔で取得する。処理制御部21は、走行履歴及び車両IDを走行データ管理部22に出力し、イベント情報をリスク推定部23に出力する。
【0046】
ここで、走行履歴は、自動運転車5が走行したルートにおける自動運転車5の走行履歴である。走行履歴は、走行制御履歴及び走行環境履歴等を含む。走行制御履歴は、速度、加速度、減速度、消費電力、操舵角、急ブレーキの回数、走行時間等の自動運転車5の走行の制御結果を示す情報である。走行環境履歴は、天候、道路工事の有無、道路の混雑状況、道路の道幅、道路を歩行する人の多寡、事故の有無、道路の明るさ、ヒヤリハットの回数等の自動運転車5が走行する道路環境、言い変えると外部環境に関する情報である。走行制御に関する情報、及び、道路環境に関する情報には、情報に対応する地点及び時刻等を含む。また、車両IDは、自動運転車5を識別する識別子である。車両IDは、走行履歴及びイベント情報に紐付けられる。また、イベントは、事故等の重大事件につながるおそれがあるインシデント、又は事故等のアクシデントを含む。イベント情報は、当該イベントが発生した地点及び時刻を含む。なお、走行履歴は、自動運転車5が走行したルートに類似する類似ルートにおける自動運転車5の走行履歴であってもよい。類似ルートとは、ルートの形状、ルートの長さ、ルートの走行環境(明るさ、混雑度等)が類似しているルートを意味する。
【0047】
また、処理制御部21は、通信部29を介して端末装置3から、ユーザの予約情報を取得すると、予約情報に含まれる、ユーザの出発地を示す出発地情報、及び、ユーザの目的地を示す目的地情報をルート計算部24に送信する。また、処理制御部21は、予約情報に含まれる、出発地情報、目的地情報、出発地を出発する時刻を示す出発時刻情報、目的地に到着する到着時刻を示す到着時刻情報を運行計画部26に出力する。なお、出発時刻及び到着時刻の出力は、任意である。
【0048】
ここで、予約情報は、自動運転車5に乗る予定のユーザにおいて、出発地情報、目的地情報、出発時刻情報、到着時刻情報、ユーザの要望情報、運転スキルを示すスキル情報等を含む。要望情報は、例えば、自動運転車5の車種、最大乗車人数、ボディサイズ等、禁煙車両の有無等を示す情報である。スキル情報は、自動運転車5が手動運転状態に移行時に、自動運転車5を運転することができるかどうか(例えば運転免許を有しているかどうか)を示す情報、総運転時間等の情報である。
【0049】
また、処理制御部21は、ユーザの予約に際して1以上の自動運転車5の候補が選択されれば、ユーザの予約情報に応じた自動運転車5の候補を示す候補情報を、通信部29を介して端末装置3に出力する。
【0050】
[走行データ管理部22]
走行データ管理部22は、処理制御部21から走行履歴及び車両IDを取得することにより、複数の自動運転車5の走行履歴を管理する。走行データ管理部22は、ODD決定部25の要求に応じて、該当する自動運転車5の走行履歴を出力する。
【0051】
[リスク推定部23]
リスク推定部23は、走行データ管理部22で管理される自動運転車5の走行履歴に基づいて、ルート上の走行リスクを推定する。具体的には、リスク推定部23は、走行履歴からイベント情報を生成する。リスク推定部23は、生成したイベント情報に基づいて、ルート情報が示すルートについて、自動運転車5の走行リスクを推定する。走行リスクは、リスクの有無又はリスクの程度を示すスコアとして示される。ここで走行リスクは、自動運転車5がルートを走行した場合に、自動運転車5の走行を妨げる可能性である。走行リスクの高さは、スコアとして表現される。スコアは、走行リスクの高さを示す指標であり、自動運転車5の仕様ごとに算出される。なお、走行リスクが高ければ、手動運転状態への切換、走行停止又は運行中止等の可能性が高くなる。リスク推定部23は、取得した走行履歴に基づいて、車両スペックに応じた走行リスクのスコアを算出する。具体的には、リスク推定部23は、走行履歴に基づいてイベント情報を生成し、生成したイベント情報にしたがって、車両スペックごとに走行リスクのスコアを算出する。例えば、車両スペックごとに、インシデントの発生回数に応じたスコアが算出される。
【0052】
リスク推定部23は、走行リスクを推定すると、走行リスクを地図情報に示される地図に、マッピングする。リスク推定部23は、走行リスクがマッピングされた地図であるリスク地図情報を生成し、生成したリスク地図情報をODD決定部25に出力する。地図情報は、情報処理システム1に予め格納されている情報である。
【0053】
なお、リスク推定部23は、予め設定されているリスク地図情報を用いてもよい。
【0054】
また、リスク推定部23は、リスク地図情報を更新してもよい。具体的には、リスク推定部23は、ODD決定部25が取得した走行履歴をODD決定部25から取得し、生成済みのリスク地図情報に示される走行リスクと走行履歴から推定される走行リスクとを比較する。リスク推定部23は、リスク地図情報に示される走行リスクが走行履歴から推定される走行リスクと異なる場合、リスク地図情報に示される走行リスクを更新する。
【0055】
また、リスク推定部23は、走行履歴を取得し、取得した走行履歴に基づいて、車両スペックに応じた走行リスクのスコアを更新する。具体的には、リスク推定部23は、走行履歴に基づいてイベント情報を生成し、生成したイベント情報にしたがって、走行リスクのスコアを更新する。例えば、リスク推定部23は、インシデントが所定期間に所定回数以上発生した場合はスコアを加算し、インシデントが所定期間継続して発生していない場合はスコアを減算する。外部環境の変化等により同じ時間、同じ場所でも走行リスクが変化する可能性があるため、リスク推定部23は、リスク地図情報に示される走行リスクのスコアを更新することで、リスク地図情報を更新する。リスク推定部23は、更新したリスク地図情報をODD決定部25に出力する。
【0056】
[ルート計算部24]
ルート計算部24は、処理制御部21から出発地情報、及び、目的地情報を取得すると、ユーザを配送するためのルートの候補を算出する。ルート計算部24は、例えば図示しない記憶装置等に格納される地図情報に基づいて、ユーザの出発地から目的地までの1以上のルートを算出する。例えば、ルート計算部24は、ユーザの出発地から目的地までの最短距離となるルート、道路の状況に応じて算出した迂回ルート等の、複数のルートの候補を算出する。ルート計算部24は、算出したルートの候補であるルート情報を、運行計画部26を介してODD決定部25に出力する。
【0057】
[ODD決定部25]
ODD決定部25は、自動運転車5のODDを、運行設計領域決定部として決定する。ここで、ODDは、自動運転システムが機能すべく設計されている条件である。条件としては、地理、道路、環境、交通状況、速度、一時的な限界、及び運転モードに関する条件がある。ODDは、全ての条件を満たす場合に自動運転システムが正常に作動するように設定される。言い換えると、自動運転システムは、ODDを逸脱しないように設計されるともいえる。なお、いずれかの条件が満たされない場合、自動運転に支障をきたす恐れがあるため、手動運転状態への切換え又は走行停止等が求められる。
【0058】
ODD決定部25は、車両スペック情報及びルート情報に基づいて、ルートごとに応じた、自動運転車5のODDを決定する。具体的には、ODD決定部25は、車両スペックと、ルートの走行リスクとに基づいてODDを決定する。より具体的には、ODD決定部25は、車両スペックに対応する走行リスクのスコアを取得し、スコアにしたがってODDを決定する。例えば、ODD決定部25は、ルート情報が示すルートについてのリスク推定部23により算出された走行リスクのスコアであって車両スペックに対応するスコアを取得し、スコアに応じてODDを決定する。ルートの区間ごとにスコアが算出され、当該スコアに応じて区間ごとにODDが決定されてよい。ODD決定部25は、ルート及び自動運転車5ごとに決定されたODDを運行計画部26に出力する。
【0059】
さらに、ODD決定部25は、ODDの決定において、走行リスクのスコアの更新状況にしたがって、以前のODDを更新する。ODD決定部25は、ODDの決定において、更新前のスコアよりも更新後のスコアが低くなる場合、ODDの制約を弱める提案を管理者端末7に送信(通知)する。ODD決定部25は、管理者端末7から当該提案に対する許可応答を受信した場合、提案に対する許可応答にしたがって、以前のODDよりも制約を弱めたODDに決定する。また、ODD決定部25は、ODDの決定において、更新前のスコアよりも更新後のスコアが高くなる場合、ODDの制約を強める提案をする、又は以前のODDよりも制約を強めるODDに決定する。
【0060】
例えば、時速25kmというODDが元々設定されていても、ODD決定部25は、スコアが悪化すればODDを時速20kmに更新し、スコアが改善すればODDを時速30kmに更新する。
【0061】
[運行計画部26]
運行計画部26は、複数の自動運転車5の運行を管理する。
【0062】
運行計画部26は、ODD決定部25からODDを取得すると、決定されたODDに基づき自動運転車5がルートを走行する場合の仮の運行計画情報を生成する。運行計画部26は、候補となる自動運転車5及びルートと、それらの仮の運行計画情報とを含む候補情報を生成する。運行計画部26は、処理制御部21及び通信部29を介して、候補情報を端末装置3に送信(通知)する。ここで、運行計画情報は、出発地、目的地、出発時刻、目的時刻、走行時間、乗車料金等である。なお、候補情報にメリット又はデメリットの情報が含まれてもよい。例えば、乗車時間、要望時間帯に対する適応度、静粛性、座席の品質、利用料金等がある。なお、メリットの代わりに又はそれと共にデメリットが候補情報に含まれてもよい。
【0063】
また、運行計画部26は、通信部29及び処理制御部21を介して端末装置3から、候補情報に対する応答として、ユーザが希望する自動運転車5及びルートを示す決定情報を取得する。運行計画部26は、決定情報に示される自動運転車5及びルートに基づいて運行計画情報を確定させる。
【0064】
また、運行計画部26は、スコアの更新状況にしたがってインフラストラクチャの更新の提案を出力する。具体的には、リスク地図情報に示される地図上の所定地点において、更新する度にスコアが増加する又はスコアが閾値よりも高くなった場合、所定地点に何らかの問題がある可能性があるため、運行計画部26は、当該所定地点のインフラストラクチャの更新を提案する提案情報を生成する。提案情報は、当該所定地点、スコアの更新状況、インフラストラクチャの補修、拡張、新規設置等である。インフラストラクチャとしては、道路、白線、ガードレール、標識、信号、歩道、踏切、カーブミラー等がある。運行計画部26は、生成した提案情報を管理者端末7に通信部29等を介して送信する。
【0065】
[車両管理部27]
車両管理部27は、複数の自動運転車5の自動運転に関する仕様を、仕様管理部としてそれぞれ管理する。ここで、自動運転に関する仕様とは、自動運転車5の車両タイプ、走行能力、センシング能力、処理能力である。車両タイプとしては、セダン、ワゴン等の車両カテゴリ、大きさ、形状等がある。走行能力としては、加速力、最高速度、制動力、最小回転半径等の旋回能力等がある。センシング能力としては、センシング距離、センシング角度、解像度、センシング対象等がある。なお、センシングは、物体又はシーン等の検出を含んでもよい。処理能力としては、処理速度、同時処理タスク数、記憶容量等がある。なお、その他の仕様としては、自動運転車5の、制動距離等の走行能力、検知可能な物体、自動運転車5からの距離、自動運転車5からの範囲等の検知能力、車種、最大乗車人数、搭載されているセンサの種類、座席シートの種類、所有者、排気量、禁煙の有無、燃費、燃料タンク容量、バッテリ容量等がある。車両管理部27は、ODD決定部25の要求に応じて、自動運転車5の仕様を示す車両スペック情報を出力する。
【0066】
[配車制御部28]
配車制御部28は、運行計画部26により運行計画情報が確定されると、当該運行計画情報が示す自動運転車5を配車するために、通信部29を介して、自動運転車5に配車指示コマンドを送信する。つまり、配車制御部28は、出発時刻情報に示される時刻及び出発地情報に示される出発地に、車両情報に示される自動運転車5を配車する。ここで配車指示コマンドは、車両情報、自動運転車5が走行する予定のルート情報、出発地情報、目的地情報、出発時刻情報及び到着時刻情報等を含む。
【0067】
また、配車制御部28は、自動運転車5に配車指示コマンドを送信するとともに、予約結果情報を、通信部29を介して端末装置3に送信する。予約結果情報は、ユーザが希望した、所望の自動運転車5、ルート情報、出発地情報、目的地情報、出発時刻情報及び到着時刻情報等の条件を満たす配車の予約が決定された結果を示す情報である。
【0068】
[通信部29]
通信部29は、図示しないネットワークを介して、端末装置3及び自動運転車5と、無線又は有線通信する。通信部29は、出力部として端末装置3に候補情報を送信(出力)する。また、通信部29は、端末装置3から予約情報を受信したり、決定情報を端末装置3から受信したりする。また、通信部29は、配車制御部28が配車する自動運転車5を決定すれば、配車指示コマンドを当該自動運転車5に送信したり、予約結果情報を端末装置3に送信したり、提案情報を管理者端末7に送信したりする。また、通信部29は、予約結果情報を管理者端末7に送信してもよい。通信部29は、通知部の一例である。
【0069】
[端末装置3]
端末装置3は、ネットワーク等を介して、情報処理システム1と通信可能に接続されるパーソナルコンピュータ、スマートフォン又はタブレット端末等である。端末装置3は、ユーザからの自動運転車5の配車の予約入力を受付けることで、予約情報を情報処理システム1に送信したり、運行計画部26が生成した候補情報を受信したりする。また、端末装置3は、受信した候補情報に示される自動運転車5及びルートの候補を表示する。端末装置3は、ユーザが操作部を介して決定した自動運転車5及びルートを示す決定情報を生成し、生成された決定情報を情報処理システム1に送信する。
【0070】
また、端末装置3は、予約結果情報を取得すると、ユーザが希望する、所望の自動運転車5、ルート情報、出発地情報、目的地情報、出発時刻情報及び到着時刻情報等の条件を受信して出力する。出力は、表示、音声出力等を用いた通知であってもよい。
【0071】
[自動運転車5]
自動運転車5は、ネットワーク等を介して、情報処理システム1と通信可能に接続される車両である。自動運転車5は、走行する環境に応じて、自動運転状態から手動運転状態に遷移したり、手動運転状態から自動運転状態に遷移したりする。例えば、自動運転車5は、自動運転が困難な環境では、手動運転に切換えるために、ユーザに対して手動運転をするように促したりする。
【0072】
[管理者端末7]
管理者端末7は、ネットワーク等を介して、情報処理システム1と通信可能に接続されるパーソナルコンピュータ、スマートフォン又はタブレット端末等である。管理者端末7は、ODD決定部25から提案情報を取得すると、取得した提案情報を管理者に提示する。例えば、提案情報は、上述したようなインフラストラクチャの更新の提案のほか、後述するODDの変更の提案を含む。管理者端末7が提案情報を提示することで、自動運転車5の運行効率が改善される可能性を高めることができる。
【0073】
また、管理者端末7は、上述したように、情報処理システム1から取得されるODDの変更の提案を提示する。例えば、管理者端末7は、ODDの制約を弱める提案を情報処理システム1から取得すると、当該提案を提示し、ODDの変更を許可するか否かの判断を管理者に要求する。管理者が当該変更を許可すれば、管理者端末7は、当該提案に対する許可応答を情報処理システム1に送信する。また、管理者が当該変更を拒否すれば、管理者端末7は、当該提案に対する拒否応答を情報処理システム1に送信する。
【0074】
<動作>
以上のように構成される情報処理システム1が行う動作について、
図2を用いて説明する。
【0075】
図2は、実施の形態における情報処理システム1の動作を示すフローチャートである。
【0076】
図2に示すように、ユーザが端末装置3を操作することで、ユーザの出発地、ユーザの目的地等の予約情報を入力する。端末装置3は、情報処理システム1に予約情報を送信する。なお、任意で、出発地での出発時刻、及び、目的地に到着する到着時刻の少なくとも一方が入力される。
【0077】
まず、情報処理システム1の処理制御部21は、予約情報を取得したかどうかを判定する(S11)。処理制御部21がユーザの予約情報を取得しない場合(S11でNO)、情報処理システム1は処理を終了する。
【0078】
処理制御部21がユーザの予約情報を取得すると(S11でYES)、ルート計算部24は、処理制御部21から出発地情報、及び、目的地情報を取得する。ルート計算部24は、記憶装置等に格納される地図情報、出発地情報、及び、目的地情報に基づいて、ユーザの出発地から目的地までの1以上のルートを算出する。つまり、ルート計算部24は、ユーザを配送するためのルートの候補を算出する(S12)。ルート計算部24は、算出したルートの候補であるルート情報を、運行計画部26を介してODD決定部25に出力する。
【0079】
ODD決定部25は、複数の自動運転車5からユーザの配送に割り当てるための1以上の自動運転車5の車両IDに応じた車両スペック情報を車両管理部27から取得する(S13)。
【0080】
また、ODD決定部25は、自動運転車5の走行履歴を、走行データ管理部22から取得する(S14)。
【0081】
リスク推定部23は、走行データ管理部22で管理される自動運転車5の走行履歴からイベント情報を生成し、生成したイベント情報に基づいて、ルート情報が示すルートについての自動運転車5の走行リスクを推定する。リスク推定部23は、推定した自動運転車5の走行リスクを地図情報に示される地図にマッピングする。リスク推定部23は、走行リスクがマッピングされた地図であるリスク地図情報を生成し、生成したリスク地図情報をODD決定部25に出力する。これにより、ODD決定部25は、自動運転車5のリスク地図情報を取得する(S15)。
【0082】
なお、ステップS12及びS13の処理については、並列して行ってもよい。
【0083】
ODD決定部25は、リスク地図情報に示される走行リスクのスコアに基づいて、1以上の自動運転車5のそれぞれのODDを決定する(S16)。ODD決定部25は、決定したODDを運行計画部26に出力する。運行計画部26は、ODD決定部25が決定したODDを取得すると、ODDに応じた運行計画情報を生成する。運行計画部26は、候補となる自動運転車5及びルートと、それらの仮の運行計画情報とを含む候補情報を生成する。運行計画部26は、処理制御部21及び通信部29を介して、候補情報を端末装置3に送信する。
【0084】
端末装置3は、候補情報を取得すると、取得した候補情報を表示する。これにより、ユーザは、通知された候補情報から、所望の自動運転車5、ルート等を選択する。端末装置3は、自動運転車5及びルートの候補等が決定された決定情報を情報処理システム1に送信する。なお、端末装置3は、決定情報を管理者端末7に送信してもよい。
【0085】
情報処理システム1は、決定情報を取得したかどうかを判定する(S17)。
【0086】
情報処理システム1が決定情報を取得しない場合(S17でNO)、情報処理システム1は、処理をステップS17に戻す。なお、情報処理システム1は、規定期間が経過しても決定情報を取得しない場合、処理を終了してもよい。
【0087】
また、情報処理システム1が決定情報を取得した場合(S17でYES)、情報処理システム1の運行計画部26は、配車制御部28に決定情報を出力する。配車制御部28は、運行計画部26から決定情報を取得すると、取得した決定情報に示される自動運転車5を配車するために、通信部29を介して、自動運転車5に配車指示コマンドを送信する。つまり、配車制御部28は、決定情報の車両情報に示される自動運転車5を、出発地に配車するように制御する(S18)。これにより、配車指示コマンドを受信した自動運転車5は、出発時刻に出発地に到着するように、移動する。
【0088】
また、運行計画部26は、リスク地図情報に示される走行リスクのスコアの更新状況にしたがってインフラストラクチャの更新を提案するか否かを判定する(S19)。例えば、リスク地図情報において、スコアが極端に高い地点、更新する度にスコアが増加する地点等は、何らかの問題がある地点であると考えられる。言い換えると、リスク地図情報に示される走行リスクのスコアが規定値以上、規定値以上のスコアが所定期間連続している、又は、スコアが規定値以上を超えた回数が規定回数以上である地点は、何らかの問題がある地点である。リスク地図情報においてこのようなスコアの地点が存在する場合、運行計画部26は、更新を提案すると判定し(S19でYES)、スコアの更新状況にしたがってインフラストラクチャの更新の提案を出力する。つまり、運行計画部26は、該当する地点の更新を提案する提案情報を生成する。また、更新を提案しないと判定された場合(S19でNO)、情報処理システム1は、処理を終了する。
【0089】
運行計画部26は、生成した提案情報を管理者端末7に送信する(S20)。そして、情報処理システム1は、処理を終了する。
【0090】
次に、
図2のステップS16のODDを決定する処理について、
図3を用いて具体的に説明する。
【0091】
図3は、ODDを決定する処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【0092】
図3に示すように、リスク推定部23は、リスク地図情報及び車両スペック情報に基づいて、走行リスクのスコアを算出する(S31)。具体的には、リスク推定部23は、リスク地図情報にマッピングされている走行リスク及び車両スペックにしたがって、自動運転車5の車両スペックに応じた走行リスクのスコアを算出する。
【0093】
例えば、性能の高い自動運転車5は、走行リスクを回避し易いため、リスク推定部23は、自動運転車5の車両スペックに対して、走行リスクのスコアを低く算出する。
【0094】
また、性能の低い自動運転車5は、走行リスクを回避し難いため、リスク推定部23は、自動運転車5の車両スペックに対して、走行リスクのスコアを高く算出する。
【0095】
なお、スコアが算出された車両スペックについては、スコア算出処理が省略される。
【0096】
リスク推定部23は、走行データ管理部22から自動運転車5の走行履歴を取得し、取得した走行履歴に基づいて、走行リスクのスコアを更新する(S32)。
【0097】
ODD決定部25は、自動運転車5の車両スペックに応じたスコアにしたがって、自動運転車5のODDを決定する(S33)。
【0098】
走行リスクのスコア及びODDの更新について、
図4を用いて説明する。
【0099】
図4は、走行リスクのスコア及びODDを更新する処理の動作の一例を示すフローチャートである。
【0100】
図4に示すように、リスク推定部23は、自動運転車5の走行履歴に基づいて、イベントが発生(存在)したかどうかを判定する(S41)。例えば、リスク推定部23は、急ブレーキ、ヒヤリハット等のインシデント又は事故等のアクシデントが発生したかどうかを判定する。
【0101】
イベントが発生したと判定した場合(S41でYES)、リスク推定部23は、イベントが発生した地点の走行リスクのスコアに所定値を加算する(S42)。
【0102】
ODD決定部25は、更新されたリスク地図情報に示されるスコアに基づいて、ODDの制約を強める提案を管理者端末7に通信部29を介して送信する(S43)。
【0103】
ODD決定部25は、送信された提案に対する許可応答が受信されたか否かを判定する(S44)。
【0104】
ODD決定部25は、管理者端末7から当該提案に対する許可応答が受信された場合(S44でYES)、リスク推定部23によって加算された走行リスクのスコアに応じて、当該イベント発生地点のODDを更新する。具体的には、ODD決定部25は、更新前のスコアよりも更新後のスコアが高くなるため、以前のODDよりも制約を強めたODDに決定する(S45)。
【0105】
管理者端末7から当該提案に対する許可応答が受信されない場合(S44でNO)、及びイベントが発生していないと判定された場合(S41でNO)、情報処理システム1は、処理を当該フローチャートの次の処理に進める。
【0106】
次に、走行リスクのスコア及びODDの更新の別の例について、
図5を用いて説明する。
【0107】
図5は、走行リスクのスコア及びODDを更新する処理ついての別の動作の一例を示すフローチャートである。
【0108】
図5に示すように、リスク推定部23は、走行履歴に基づいて、規定期間内にイベントが発生したか否かを判定する(S51)。
【0109】
規定期間内にイベントが発生したと判定しなかった場合(S51でNO)、リスク推定部23は、イベントが発生した地点の走行リスクのスコアを所定値だけ減算する(S52)。初期設定されたスコアよりも実際のスコアが低い場合に、スコアを実際の値に近づけることができる。
【0110】
ODD決定部25は、更新されたリスク地図情報に示されるスコアに基づいて、ODDの制約を弱める提案を管理者端末7に通信部29を介して送信する(S53)。
【0111】
ODD決定部25は、送信された提案に対する許可応答が受信されたか否かを判定する(S54)。
【0112】
ODD決定部25は、管理者端末7から当該提案に対する許可応答が受信された場合(S54でYES)、リスク推定部23によって減算された走行リスクのスコアに応じて、当該イベント発生地点のODDを更新する。具体的には、ODD決定部25は、更新前のスコアよりも更新後のスコアが低くなるため、以前のODDよりも制約を弱めたODDに決定する(S55)。
【0113】
管理者端末7から当該提案に対する許可応答が受信されない場合(S54でNO)、及び規定期間内にイベントが発生したと判定された場合(S51でYES)、情報処理システム1は、処理を当該フローチャートの次の処理に進める。
【0114】
<作用効果>
次に、本実施の形態における情報処理方法及び情報処理システム1の作用効果について説明する。
【0115】
以上のように、本実施の形態における情報処理方法及び情報処理システム1では、自動運転車5の仕様及びルートに応じたODDを決定することができる。これによれば、ルートだけでなく自動運転車の仕様に応じた運行設計領域を決定することができる。その結果、例えば、同一ルートであっても、仕様によって決まる性能の高い自動運転車5と、性能の低い自動運転車5とで、異なるODD設定することができる。具体的には、自動運転車5の性能が高ければ走行リスクの影響を受け難いため、この自動運転車5に対しては、比較的緩和されたODDが決定される。また、自動運転車5の性能が低ければ走行リスクの影響を受け易いため、比較的制限されたODDが決定される。このように、同じ走行リスクに対して、車両スペックごとに異なるODDを決定することができる。このため、自動運転車5による走行の安全性を確保しながら運行効率の低下を抑制することができる。
【0116】
(その他変形例等)
以上、本開示について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これら実施の形態等に限定されるものではない。
【0117】
例えば、上記各実施の形態に係る情報処理方法及び情報処理システムは、コンピュータを用いたプログラムによって実現され、このようなプログラムは、記憶装置に記憶されてもよい。
【0118】
また、上記各実施の形態に係る情報処理方法及び情報処理システムに含まれる各処理部は、典型的に集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0119】
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0120】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0121】
また、上記で用いた数字は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の実施の形態は例示された数字に制限されない。
【0122】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0123】
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0124】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本開示は、自動運転車、自動運転車を遠隔操作する装置、自動運転車両の状態を提示する端末装置、或いはこれらを含むシステムに適用できる。
【符号の説明】
【0126】
1 情報処理システム
5 自動運転車
24 ルート計算部
25 ODD決定部
27 車両管理部(仕様管理部)
29 通信部(出力部)