(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】連続細胞培養の方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/07 20100101AFI20241015BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20241015BHJP
C12N 5/09 20100101ALI20241015BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241015BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20241015BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20241015BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20241015BHJP
C12M 1/02 20060101ALN20241015BHJP
C12M 1/04 20060101ALN20241015BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20241015BHJP
【FI】
C12N5/07
C12N5/071
C12N5/09
C12N5/10 ZNA
C07K16/24
C07K16/46
C12Q1/02
C12M1/02 A
C12M1/04
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2021512697
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 US2019048594
(87)【国際公開番号】W WO2020051042
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-25
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508134441
【氏名又は名称】モメンタ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】イン, ジン
(72)【発明者】
【氏名】ザン, ルー
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-517217(JP,A)
【文献】特表平05-503848(JP,A)
【文献】特表2016-530893(JP,A)
【文献】特表2019-520065(JP,A)
【文献】特表2018-504931(JP,A)
【文献】国際公開第2019/181234(WO,A1)
【文献】天野 研ほか,抗体医薬品の生産性向上を支援する動物細胞培養槽シミュレーション技術,日立評論,2007年,vol. 89, no. 05,pp. 34-37
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大80mmHgであるレベルの溶存二酸化炭素を有する、少なくとも100Lの培養培地及び
7~10m/
sである気体流出速度を有する灌流バイオリアクターシステムにおいて、せん断に敏感な哺乳動物細胞からなる細胞の集団を培養して、20×10
6細胞/mLから15×10
7細胞/mLの範囲内の前記培養培地中の定常状態生細胞濃度を達成することを含む、方法。
【請求項2】
前記気体流出速度は、少なくとも前記バイオリアクターシステムが前記定常状態の条件に達するまで制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記定常状態の条件は、5日間の期間にわたり最大20%変動する生細胞濃度を有することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記気体流出速度は、培養全体をとおして制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記培養することは、過剰な細胞及び/または非生細胞を排出または除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記バイオリアクターシステムは、少なくとも200L、少なくとも250L、少なくとも500L、少なくとも1,000L、または少なくとも2,000Lの培養培地を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記培養することは、30から60日間の期間実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記生細胞濃度を測定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記測定された生細胞濃度は、少なくとも30×10
6細胞/mL、少なくとも40×10
6細胞/mL、または少なくとも50×10
6細胞/mLである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記せん断に敏感な哺乳動物細胞は、ヒト細胞またはネズミ科動物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記せん断に敏感な哺乳動物細胞は、HEK293細胞、線維肉腫HT1080細胞、PER.C6細胞、CAP細胞、HKB-11細胞、HuH-7細胞、NS0細胞またはSP 2/0細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記バイオリアクターシステムは、細胞保持デバイスを含み、前記細胞保持デバイスは、連続式遠心分離機、交互タンジェンシャルフローフィルター(ATF)、タンジェンシャルフローメンブランフィルター(TFF)、動的フィルター、スピンフィルター、超音波及び誘電泳動セパレーター、及び/または重力沈降器であるか、またはそれらを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記バイオリアクターシステムは、撹拌タンク型バイオリアクタータンクを含み、前記バイオリアクタータンクは、少なくとも100L、200L、500L、1,000L、または2,000Lの容量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記バイオリアクターシステムは、スパージャーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記スパージャーは、ドリルホールスパージャーまたはオープンパイプスパージャーである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞の集団を前記培養することは、細胞産物を発現する条件下で実施され、前記細胞産物は、核酸、脂質、ペプチド、及びタンパク質のうちの1種以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞産物は、抗体薬剤である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、前記せん断に敏感な哺乳動物細胞の少なくとも一部から前記細胞産物を単離すること、及び/または前記培養培地の少なくとも一部から前記細胞産物を単離することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
7~10m/s
となるように灌流バイオリアクターシステムの気体流出速度を制御すること、及び溶存二酸化炭素のレベルが最大80mmHgとなるように培養培地の溶存二酸化炭素のレベルを制御することを含む、せん断に敏感な哺乳動物細胞からなる細胞の集団を培養するための連続培養プロセスであって、
前記灌流バイオリアクターシステムは、少なくとも100Lの培養培地を含み、前記細胞の集団は、20×10
6細胞/mLから15×10
7細胞/mLの範囲内の定常状態生細胞濃度を達成する、前記プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月6日に出願された米国仮出願第62/727,976号の利益を主張するものであり、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
連続細胞培養方法及びシステムがバイオマニュファクチャリングにおいて普及してきている。しかしながら、連続細胞培養方法及びシステムは、多くの注意及び厄介な問題と関連づけられる。したがって、連続細胞培養方法及びシステムを改善する必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、特に、細胞産物、例えば、組み換えタンパク質、例えば、糖タンパク質、例えば、抗体薬剤または融合タンパク質を生成する(例えば、製造する)ための連続培養方法を提供する。場合によっては、本明細書における方法は、連続培養方法(例えば、灌流培養方法)を使用した組み換えタンパク質の大規模生成を可能にする。本開示は、特定の細胞の大規模培養(例えば、少なくとも25L、例えば、少なくとも100L)では、不十分な生細胞濃度及び低下した細胞生存率を有する現行の連続細胞培養技術(例えば、灌流細胞培養)の課題を特定し、それに対処する。本開示は、部分的に、せん断に敏感な細胞の大規模(例えば、少なくとも25L、例えば、少なくとも100L)連続培養のための方法及びシステムを提供する。
【0004】
本開示は、せん断に敏感な細胞の大規模培養が、バイオリアクターシステムの気体流出速度を制御することによって達成することができるという見識を提供する。例えば、最大20m/sであるよう、規定された量及び/または範囲内に制御及び/または維持される気体流出速度を有するバイオリアクターシステム(例えば、灌流バイオリアクターシステム)におけるせん断に敏感な細胞の大規模培養は、約20×106細胞/mLから約15×107細胞/mLの範囲内のせん断に敏感な細胞の定常状態生細胞濃度をもたらすことができる。
【0005】
場合によっては、バイオリアクターシステム(例えば、灌流バイオリアクターシステム)においてせん断に敏感な細胞を含むか、またはそれからなる細胞の集団を培養して、定常状態生細胞濃度を達成することを含む、方法であって、定常状態生細胞濃度は、20×106細胞/mLから15×107細胞/mLの範囲内であり、バイオリアクターシステムは、少なくとも25Lの培養培地及び最大20m/sである気体流出速度を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、約15m/s以下、14m/s以下、13m/s以下、12m/s以下、11m/s以下、10m/s以下、9m/s以下、または8m/s以下の率に制御される気体流出速度を有する。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、スパージャーを含む。いくつかの実施形態では、スパージャーは、約15m/s以下、14m/s以下、13m/s以下、12m/s以下、11m/s以下、10m/s以下、9m/s以下、または8m/s以下の率に制御される気体流出速度を有する。
【0006】
場合によっては、少なくとも25Lの培養培地を含むバイオリアクターシステム(例えば、灌流バイオリアクターシステム)においてせん断に敏感な細胞を培養することを含む、方法であって、バイオリアクターシステムは、最大20m/sである気体流出速度を有し、せん断に敏感な細胞は、約20×106細胞/mLから約15×107細胞/mLの範囲内の定常状態生細胞濃度で存在する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステム(例えば、灌流バイオリアクターシステム)は、15m/s以下、14m/s以下、13m/s以下、12m/s以下、11m/s以下、10m/s以下、9m/s以下、または8m/s以下である気体流出速度を有する。いくつかの実施形態では、気体流出速度は、培養工程全体をとおして制御される。いくつかの実施形態では、気体流出速度は、少なくともバイオリアクターシステムが定常状態条件に達するまで制御される。
【0007】
場合によっては、少なくとも25L(例えば、少なくとも200L)の培養培地及び最大20m/s(例えば、最大10m/s)である気体流出速度を有するバイオリアクターシステムにおいてせん断に敏感な細胞からなる細胞の集団を培養して、20×106細胞/mLから15×107細胞/mLの範囲内の培養培地中の定常状態生細胞濃度を達成する方法が提供される。いくつかの実施形態では、定常状態生細胞濃度は、5日間の期間にわたり最大20%変動する生細胞濃度である。
【0008】
場合によっては、20m/sの率を上回らないように、バイオリアクターシステムの気体流出速度を制御することを含む、せん断に敏感な細胞からなる細胞の集団を培養するための連続培養プロセスであって、バイオリアクターシステムは、少なくとも25Lの培養培地を含み、細胞の集団は、20×106細胞/mLから15×107細胞/mLの範囲内の定常状態生細胞濃度を達成する、プロセスが提供される。いくつかの実施形態では、気体流出速度は、約15m/s以下、14m/s以下、13m/s以下、12m/s以下、11m/s以下、10m/s以下、9m/s以下、または8m/s以下の率に制御される。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、スパージャーを含む。いくつかの実施形態では、スパージャー気体流出速度は、約15m/s以下、14m/s以下、13m/s以下、12m/s以下、11m/s以下、10m/s以下、9m/s以下、または8m/s以下の率に制御される。
【0009】
いくつかの実施形態では、気体流出速度は、せん断に敏感な細胞が培養される少なくとも一部の期間制御される。いくつかの実施形態では、気体流出速度の制御は、細胞の集団(例えば、せん断に敏感な細胞の集団、例えば、接種)がバイオリアクターシステムに添加されるとき(例えば、細胞の集団がバイオリアクターシステムの培養培地と混合されるとき)に開始する。いくつかの実施形態では、気体流出速度の制御は、細胞の集団(例えば、せん断に敏感な細胞の集団、例えば、接種)がバイオリアクターシステムに添加された後(例えば、細胞の集団がバイオリアクターシステムの培養培地と混合されるとき)の約2時間、6時間、12時間、24時間、または48時間後に開始する。
【0010】
いくつかの実施形態では、気体流出速度の制御は、培養プロセス中の培養されている細胞が特定の密度に達したときに開始する。いくつかの実施形態では、気体流出速度の制御は、バイオリアクターシステムが、少なくとも1×106細胞/mL、2×106細胞/mL、5×106細胞/mL、または10×106細胞/mLであるせん断に敏感な細胞の濃度を有するときに開始する。I
【0011】
いくつかの実施形態では、気体流出速度は、少なくともバイオリアクターシステムが定常状態条件に達するまで制御される。いくつかの実施形態では、定常状態条件は、5日間の期間にわたり最大20%変動する生細胞濃度を有することを含む。いくつかの実施形態では、気体流出速度は、細胞の集団(例えば、せん断に敏感な細胞の集団、例えば、接種)が、バイオリアクターシステムに添加されるようなとき(例えば、細胞の集団がバイオリアクターシステムの培養培地と混合されるとき)から、培養が(例えば、5日間の期間にわたり最大20%変動する生細胞濃度を有する)定常状態条件に達するまで制御される。いくつかの実施形態では、気体流出速度は、バイオリアクターシステムが少なくとも1×106細胞/mLであるせん断に敏感な細胞の濃度を有するようなときから、培養が(例えば、5日間の期間にわたり最大20%変動する生細胞濃度を有する)定常状態条件に達するまで制御される。
【0012】
いくつかの実施形態では、気体流出速度は、培養工程全体をとおして制御される。いくつかの実施形態では、気体流出速度は、少なくとも約10日間、少なくとも約15日間、少なくとも約20日間、少なくとも約25日間、少なくとも約30日間、少なくとも約40日間、少なくとも約50日間、または少なくとも約60日間の培養の間制御される。いくつかの実施形態では、気体流出速度は、細胞の集団(例えば、せん断に敏感な細胞の集団、例えば、接種)がバイオリアクターシステムに添加されるようなとき(例えば、細胞の集団がバイオリアクターシステムの培養培地と混合されるとき)から制御され、少なくとも約10日間、少なくとも約15日間、少なくとも約20日間、少なくとも約25日間、少なくとも約30日間、少なくとも約40日間、少なくとも約50日間、または少なくとも約60日間の培養の間継続する。いくつかの実施形態では、気体流出速度は、バイオリアクターシステムが少なくとも1×106細胞/mLであるせん断に敏感な細胞の濃度を有するようなときから、培養が(例えば、5日間の期間にわたり最大20%変動する生細胞濃度を有する)定常状態条件に達するまで制御され、少なくとも約10日間、少なくとも約15日間、少なくとも約20日間、少なくとも約25日間、少なくとも約30日間、少なくとも約40日間、少なくとも約50日間、または少なくとも約60日間の培養の間継続する。
【0013】
場合によっては、20m/sの率を上回らないように、灌流バイオリアクターシステムの気体流出速度を制御することを含む、せん断に敏感な細胞を培養するための灌流培養プロセスであって、灌流バイオリアクターシステムは、少なくとも25Lの培養培地を含み、培養培地は、せん断に敏感な細胞を含み、せん断に敏感な細胞は、約20×106細胞/mLから約15×107細胞/mLの範囲内の定常状態生細胞濃度で存在する、プロセスが提供される。いくつかの実施形態では、灌流バイオリアクターシステムの気体流出速度は、10m/sの率を上回らないよう制御される。
【0014】
いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞の定常状態生細胞濃度は、上限が下限よりも大きい、下限及び上限によって制限された範囲内の量である。いくつかの実施形態では、下限は、約20×106細胞/mL、約25×106細胞/mL、約30×106細胞/mL、約35×106細胞/mL、約40×106細胞/mL、約45×106細胞/mL、約50×106細胞/mL、約60×106細胞/mL、約70×106細胞/mL、約80×106細胞/mL、または約90×106細胞/mLであってもよい。いくつかの実施形態では、上限は、約40×106細胞/mL、約45×106細胞/mL、約50×106細胞/mL、約60×106細胞/mL、約70×106細胞/mL、約80×106細胞/mL、約90×106細胞/mL、約10×107細胞/mL、約11×107細胞/mL、約12×107細胞/mL、約13×107細胞/mL、約14×107細胞/mLまたは約15×107細胞/mLであってもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、灌流バイオリアクターシステムは、制御されたレベルの溶存二酸化炭素を有する。いくつかの実施形態では、培養培地は、120mmHg以下、115mmHg以下、110mmHg以下、105mmHg以下、100mmHg以下、95mmHg以下、90mmHg以下、85mmHg以下、または80mmHg以下であるレベルの溶存二酸化炭素を含む。
【0016】
いくつかの特定の実施形態では、灌流バイオリアクターシステムは、10m/s以下である気体流出速度を有し、80mmHg以下であるレベルの溶存二酸化炭素を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、細胞培養システムは、120mmHg以下であるレベルの溶存二酸化炭素を有する。いくつかの実施形態では、連続細胞培養システム(例えば、灌流細胞培養システム)は、約20mmHgから約120mmHgの範囲内のレベルの溶存二酸化炭素を有する。いくつかの実施形態では、溶存二酸化炭素は、上限が下限よりも大きい、下限及び上限によって制限された範囲内の量で連続細胞培養培地中に存在する。いくつかの実施形態では、下限は、約20mmHg、約30mmHg、約40mmHg、約50mmHg、約60mmHg、または約70mmHgであってもよい。いくつかの実施形態では、上限は、約50mmHg、約60mmHg、約70mmHg、約80mmHg、約90mmHg、約100mmHg、約110mmHg、または約120mmHgであってもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、灌流バイオリアクターシステムは、少なくとも50L、少なくとも100L、少なくとも200L、少なくとも500L、少なくとも1,000L、または少なくとも2,000Lの培養培地を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞の連続培養は、少なくとも10日間の期間実施される。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞の連続培養は、約30から約60日間の期間実施される。
【0020】
いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞の連続培養は、10日間から180日間の範囲内の期間実施される。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞の連続培養は、上限が下限よりも大きい、下限及び上限によって制限された範囲内の時間の量の間実施される。いくつかの実施形態では、下限は、約10日間、約15日間、約20日間、約25日間、約30日間、約35日間、約40日間、約50日間、または約60日間であってもよい。いくつかの実施形態では、上限は、約30日間、約35日間、約40日間、約50日間、約60日間、約70日間、約80日間、約90日間、約100日間、約120日間、約140日間、約160日間、または約180日間であってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示の連続培養の方法は、生細胞濃度を測定するステップを含む。いくつかの実施形態では、測定された生細胞濃度は、少なくとも30×106細胞/mL、少なくとも40×106細胞/mL、または少なくとも50×106細胞/mLである。
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示による培養するためのせん断に敏感な細胞は、哺乳動物細胞である。
【0023】
いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞は、ネズミ科動物細胞である。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞は、マウス細胞株由来である。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞株は、マウス骨髄腫細胞株である。いくつかの特定の実施形態では、せん断に敏感な細胞は、NS0細胞及びSP 2/0細胞から選択される。いくつかの特定の実施形態では、本開示による使用するためのせん断に敏感な細胞は、SP 2/0細胞である。
【0024】
いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞は、ヒト細胞である。いくつかの実施形態では、せん断に敏感なヒト細胞株は、HEK293:ヒト胎児由来腎臓293;HT-1080:上皮様表現型を有する線維肉腫由来;PER.C6:アデノウイルスE1遺伝子によるトランスフェクションにより不死化されたヒト胚性網膜細胞由来;CAP:アデノウイルス5型E1遺伝子により不死化されたヒト羊膜細胞由来;HKB-11:HEK293-S及びヒトB細胞株のポリエチレングリコール融合により作製された;ならびにHuH-7:ヒト肝細胞癌由来から選択される。いくつかの特定の実施形態では、せん断に敏感な細胞は、HEK293細胞、線維肉腫HT1080細胞、PER.C6細胞、CAP細胞、HKB-11細胞及びHuH-7細胞から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、本開示による使用するためのせん断に敏感な細胞は、細胞産物を含むか、またはそれを発現するよう操作される。いくつかの実施形態では、培養されたせん断に敏感な細胞は、細胞産物を含むか、またはそれを発現する。いくつかの実施形態では、細胞産物は、核酸、脂質、ペプチド、及び/またはタンパク質であるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、細胞産物は、組み換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、組み換えタンパク質は、糖タンパク質である。いくつかの実施形態では、糖タンパク質は、Fc含有糖タンパク質である。いくつかの実施形態では、糖タンパク質は、抗体薬剤である。いくつかの実施形態では、抗体薬剤は、モノクローナル抗体である。いくつかの特定の実施形態では、モノクローナル抗体は、ウステキヌマブである。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示のせん断に敏感な細胞は、ヒトまたは動物における治療的または診断的使用のための、例えば、二次承認プロセスにおいて認可された抗体薬剤をコードする核酸を含む。いくつかの特定の実施形態では、本開示のせん断に敏感な細胞は、ウステキヌマブをコードする核酸を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示の方法及び/またはプロセスは、細胞の少なくとも一部から細胞産物を単離すること、及び/または培養培地の少なくとも一部から細胞産物を単離することを含む。いくつかの実施形態では、細胞産物は、組み換えタンパク質、例えば、糖タンパク質、例えば、Fc含有糖タンパク質、例えば、抗体薬剤、例えば、モノクローナル抗体である。
【0028】
いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、1ppmから500ppmの範囲内の濃度で消泡剤(例えば、アンチフォームC)も含む。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞は、せん断力保護剤(例えば、Pluronic F-68)を含む細胞培養培地において培養される。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞(例えば、せん断に敏感な細胞の集団)は、1g/Lから15g/Lの範囲内の濃度でPluronic F-68を含む細胞培養培地において培養される。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞の集団は、消泡剤(例えば、アンチフォームC)を1ppmから500ppmの範囲内の濃度で及びせん断力保護剤(例えば、Pluronic F-68)を1g/Lから15g/Lの範囲内の濃度で含む培養培地において培養される。
【0029】
いくつかの実施形態では、灌流バイオリアクターシステムは、バイオリアクタータンクを含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクタータンクは、撹拌型バイオリアクタータンクである。いくつかの実施形態では、バイオリアクタータンクは、少なくとも50L、100L、200L、250L、400L、500L、600L、800L、1,000L、または2,000Lの容量を有する。いくつかの特定の実施形態では、バイオリアクタータンクは、約200L、約250L以上の容量を有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステム(例えば、灌流バイオリアクターシステム)は、細胞保持デバイスを含む。いくつかの実施形態では、細胞保持デバイスは、連続式遠心分離機、交互タンジェンシャルフローフィルター(ATF)、タンジェンシャルフローメンブランフィルター(TFF)、動的フィルター、スピンフィルター、超音波及び誘電泳動セパレーター、もしくは重力沈降器であるか、またはそれらを含む。いくつかの特定の実施形態では、細胞保持デバイスは、ATFであるか、またはそれを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、撹拌タンク型バイオリアクター、細胞保持デバイス、培地供給、及び排出廃棄物回収を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステム(例えば、灌流バイオリアクターシステム)は、スパージャーを含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、ドリルホールスパージャーを含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、オープンパイプスパージャーを含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、焼結スパージャーを含む。
【0033】
場合によっては、せん断に敏感な細胞の大規模(例えば、少なくとも25L、例えば、少なくとも100L)連続培養の方法であって、組み換えタンパク質コード核酸を含むせん断に敏感な細胞を準備するか、または得ることと、制御された気体流出速度を有するバイオリアクターシステムにおいて、組み換えタンパク質の発現に十分な条件下で細胞を培養することとを含む、方法が提供される 。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、システムが定常状態条件に達するまで最大20m/s(例えば、約5m/sから約10m/s)の率に制御される気体流出速度を有する。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、培養の間中、最大20m/s(例えば、約5m/sから約10m/s)の率に制御される気体流出速度を有する。いくつかの実施形態では、定常状態条件における生細胞濃度は、約20×106細胞/mLから約15×107細胞/mLの範囲内である。いくつかの実施形態では、定常状態条件における生細胞濃度は、少なくとも40×106細胞/mLである。
【0034】
場合によっては、せん断に敏感な細胞のタンパク質調製物連続培養を生成する方法であって、制御された気体流出速度を有するバイオリアクターシステムにおいてせん断に敏感な細胞を連続培養することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、少なくとも25L、少なくとも100L、または少なくとも200Lである容量を有するバイオリアクタータンクを含む。いくつかの実施形態では、システムが定常状態条件に達するまで最大20m/s(例えば、約5m/sから約10m/s)の率に制御される気体流出速度。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、培養の間中、最大20m/s(例えば、約5m/sから約10m/s)の率に制御される気体流出速度を有する。いくつかの実施形態では、定常状態条件における生細胞濃度は、約20×106細胞/mLから約15×107細胞/mLの範囲内である。いくつかの実施形態では、定常状態条件における生細胞濃度は、少なくとも40×106細胞/mLである。いくつかの実施形態では、タンパク質調製物を生成する方法は、細胞及び/または細胞培地からタンパク質またはタンパク質の混合物を単離することを含む。
【0035】
本発明のこれら、及びその他の態様が、下記及び特許請求の範囲においてさらに詳細に記載される。
【0036】
以下の図で構成される、本明細書に含まれる図面は、例示目的に過ぎず、限定するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】細胞保持デバイスとして例となる交互タンジェンシャルフローを備えた灌流培養システムの例となる概略図を示す。示されるとおり、例となる灌流培養システムは、生成バイオリアクター(例えば、撹拌型バイオリアクタータンク)、細胞保持デバイス(例えば、交互タンジェンシャルフロー)、供給培地供給、及び排出廃棄物を含んでもよい。
【0038】
【
図2】3Lから100Lの規模で灌流培養によって培養される例となるせん断に敏感な細胞(例えば、SP2/0細胞)の生細胞濃度(10
6細胞/mL単位)を示す。3L(四角)、5L(塗りつぶされた三角)、15L(菱形)及び100L(白抜きの三角)の培養において増殖させられた細胞は、同等の細胞増殖及び定常状態生細胞濃度を示した。
【0039】
【
図3】3Lから200Lの規模で灌流培養によって培養された例となるせん断に敏感な細胞(例えば、SP2/0細胞)の生細胞濃度(10
6細胞/mL単位)(上のパネル)及び生存率パーセント(下のパネル)を示す。塗りつぶされた円は、100Lの培養プロセスを表し、白抜きの四角は、従来の3Lの対照培養データを表し、塗りつぶされた三角及び白抜きの三角は、さらなる3Lの培養プロセスを表し、白抜きの菱形は、200Lの培養プロセスを表す。初期の細胞増殖は、すべてのサンプルで観察されたが、200Lの培養システムは、4日目から始まった低下した細胞増殖及び生細胞濃度の低下の両方を示した。
【0040】
【
図4】異なる規模で、変化する気体流出速度を用いた灌流培養によって培養された例となるせん断に敏感な細胞(例えば、SP2/0細胞)の生細胞濃度(10
6細胞/mL単位)を示す。塗りつぶされた円は、100Lの培養プロセスを表し、白抜きの四角は、3Lの対照培養物を表し、白抜きの菱形は、200Lの培養プロセスを表す。時点(1)で、200Lの培養プロセスの培養培地のうちの2Lが、3Lの培養に移され、この培養条件は、塗りつぶされた三角によって表される。時点(2)で、200Lの培養の制御気体流出速度が10m/s以下に低減される。時点(3)で、200Lの培養の制御気体流出速度は、再び少なくとも20m/sのレベルに増加させられる。
【0041】
【
図5】3Lの灌流バイオリアクターを用いたいくつかの連続細胞培養実行をさまざまな気体流出速度(GEV)で行ったことを示す。上のパネルは、経時的な生細胞濃度(VCC)を示し、下のパネルは、経時的な生存率パーセントを示す。FU27(菱形)は、対照サンプルを表す。FU28(白抜きの四角)は、9日目まで10m/sで、その後、それから16m/sのGEVを表す。FU29(白抜きの三角)は、13m/sのGEVを表し、培養が12日目に急激に低下した。FU30(X’s)は、9日目まで16m/sで、その後、それから10m/sに低下させられたGEVを表す。
【0042】
【
図6】灌流培養システムにおいて異なる溶存CO
2のレベルで培養された例となるせん断に敏感な細胞(例えば、SP2/0細胞)の生細胞濃度(10
6細胞/mL単位)(上のパネル)及び生存率パーセント(下のパネル)を示す。
【0043】
【
図7A】GEV及び溶存CO
2を制御しながらさまざまな規模でのせん断に敏感な細胞の連続培養性能の比較を示す。
図7Aの上のパネルは、経時的な生細胞濃度(VCC)を示し、
図7Aの下のパネルは、経時的な生存率パーセントを示す。
【
図7B】GEV及び溶存CO
2を制御しながらさまざまな規模でのせん断に敏感な細胞の連続培養性能の比較を示す。
図7Bの上のパネルは、経時的な気体流出速度を示し、
図7Bの下のパネルは、経時的な溶存CO
2を示す。
【0044】
【
図8】(例えば、SUB250バイオリアクターシステムを使用した)250Lの培養に対するさまざまなパラメーターについての予測モデルの概要を示す表を示す。
【0045】
【
図9】さまざまな規模でのせん断に敏感な細胞の連続細胞培養に関する合計グリカンレベル(上のパネル)及びシアル酸含有量(下のパネル)を示す。それぞれに関して左端のバーは、3Lの培養プロセスを表し、それぞれに関して中央のバーは、100Lの培養プロセスを表し、右端のバーは、250Lの培養プロセスを表す。
【0046】
【
図10】実証された250Lの(三角によって表される)及び100Lの(円によって表される)培養プロセスと比較した、せん断に敏感な細胞の1000Lの連続培養に対して予測される溶存CO
2(上のパネル)及び気体流出速度(下のパネル)(黒い実線)を示す。
【0047】
【
図11】(例えば、SUB1000バイオリアクターシステムを使用した)1000Lの培養に対するさまざまなパラメーターについての予測モデルの概要を示す表を示す。
【0048】
【
図12】気体流出速度を求めるための例となる方程式を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
特定の定義
一般に、本明細書中で使用される専門用語は、明確に別のことが示されていない限り、当該技術分野において理解される意味と一致する。特定の用語の明確な定義を下に示す。これら及びその他の用語の意味は、特定の場合、本明細書全体をとおして文脈から当業者には明らかであろう。
【0050】
本明細書中で引用される参考文献、またはその関連部分は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0051】
本発明をより容易に理解できるように、特定の用語を、まず下に定義する。以下の用語及びその他の用語に関するさらなる定義は、明細書全体をとおして記載される。
【0052】
本明細書で使用される場合、対象の1つ以上の値に適用される、「約」または「およそ」という用語は、記述される基準値と類似する値を指す。特定の実施形態では、「約」または「およそ」という用語は、記述される基準値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下の範囲内にある値の範囲を指す。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「抗体」という用語は、当該技術分野で理解される意味を有し、特定の抗原と特異的に結合する免疫グロブリン(Ig)を指す。当業者には既知であるとおり、自然界で産生される抗体は、一般に、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖である4つのポリペプチド鎖から構成される。各重鎖及び軽鎖は、可変領域(本明細書中では、それぞれHCVRまたはVH及びLCVRまたはVLと略記される)及び定常領域から構成される。重鎖の定常領域は、CH1、CH2及びCH3ドメイン(ならびに任意に、IgM及びIgEの場合、CH4ドメイン)を含む。軽鎖の定常領域は、1つのドメイン、CLから構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が間に挿入された、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域をさらに含む。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、これらは、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。免疫グロブリン分子は、任意の種類(例えば、IgM、IgD、IgG、IgA及びIgE)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)またはサブクラスであってもよい。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「抗体薬剤」という用語は、特定の抗原と特異的に結合する薬剤を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、特異的結合を付与するのに十分な免疫グロブリン構造的要素を有する任意のポリペプチドを包含する。さまざまな実施形態において、適した抗体薬剤としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、二重特異性または多重特異性抗体、単一ドメイン抗体(例えば、サメ単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはそのフラグメント))、結合抗体(すなわち、その他のタンパク質、放射標識、細胞毒素などと結合または融合した抗体)、Small Modular ImmunoPharmaceuticals(「SMIPs(商標)」)、単鎖抗体、ラクダ科抗体、抗体フラグメントなどを挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、この用語は、ステープルペプチドを指すことがある。いくつかの実施形態では、この用語は、抗体様結合ペプチドミメティクスを指すことがある。いくつかの実施形態では、この用語は、抗体様結合足場タンパク質を指すことがある。いくつかの実施形態では、この用語は、モノボディまたはアドネクチンを指すことがある。多くの実施形態では、抗体薬剤は、アミノ酸配列が、当業者によって相補性決定領域(CDR)と認識される1つ以上の構造的要素を含む、ポリペプチドであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、抗体薬剤は、アミノ酸配列が、参照抗体で見られるものと実質的に同一である少なくとも1つのCDR(例えば、少なくとも1つの重鎖CDR及び/または少なくとも1つの軽鎖CDR)を含む、ポリペプチドであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと実質的に同一であり、この場合、それは、配列が同一であるか、または参照CDRと比較した場合に1から5個の間のアミノ酸置換を含むかのいずれかである。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと実質的に同一であり、この場合、それは、参照CDRと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を示す。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと実質的に同一であり、この場合、それは、参照CDRと少なくとも96%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を示す。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと実質的に同一であり、この場合、含まれるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が、参照CDRと比較した場合に欠失、付加、または置換されているが、含まれるCDRが、その他の点では参照CDRのものと同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと実質的に同一であり、この場合、含まれるCDR内の1から5個のアミノ酸が、参照CDRと比較した場合に欠失、付加、または置換されているが、含まれるCDRが、その他の点では参照CDRと同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと実質的に同一であり、この場合、含まれるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が、参照CDRと比較した場合に置換されているが、含まれるCDRが、その他の点では参照CDRのものと同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、含まれるCDRは、参照CDRと実質的に同一であり、この場合、含まれるCDR内の1から5個のアミノ酸が、参照CDRと比較した場合に欠失、付加、または置換されているが、含まれるCDRが、その他の点では参照CDRと同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、抗体薬剤は、アミノ酸配列が、当業者によって免疫グロブリン可変ドメインと認識される構造的要素を含むポリペプチドであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、抗体薬剤は、免疫グロブリン結合ドメインと一致するか、または大部分が一致する、結合ドメインを有するポリペプチドタンパク質である。いくつかの実施形態では、抗体薬剤は、特定の参照抗体鎖または複数の鎖(例えば、重鎖及び/または軽鎖)に見られるすべてのCDRを含むポリペプチドであるか、またはそれを含む。
【0055】
本明細書中で使用される場合、「生物製剤」、「生物学的治療」及び「生物製剤製品」という用語は同義に使用され、ポリペプチド及びタンパク質製品を指す。例えば、本明細書において生物製剤は、例えば、タンパク質、糖タンパク質、融合タンパク質、増殖因子、ワクチン、血液因子、血栓溶解剤、ホルモン、インターフェロン、インターロイキンベースの製品、抗体薬剤、(例えば、モノクローナル抗体、二重特異性抗体など)、及び治療用酵素などの細胞において発現される天然由来または組み換え生成物を含む。一部の生物製剤は、公衆衛生(PHS)法の第351(a)条のもとで、「生物製剤認可申請」または「BLA」に基づいて認可されるが、参照製品としてBLAを参照するバイオ後続品及び代替可能な生物製剤は、PHS法第351(k)条のもとで認可される。PHS法第351条は、42 U.S.C. 262として成文化されている。他の生物製剤は、Federal Food and Cosmetic Actの第505(b)(1)条のもとで、またはHatch Waxman Actの第505(b)(2)及び505(j)条に基づく簡略申請として認可される場合もあり、第505条は21 U.S.C. 355として成文化されている。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「気体流出速度」は、バイオリアクターシステムの気体供給源、例えば、培養培地に通気する(例えば、空気及び/または酸素を供給する)ための気体供給源からの気体流出の率を指す。いくつかの実施形態では、気体流出速度は、気体が1つ以上の気体供給源開口部(複数可)(例えば、穴)から流出し、培養培地に入る率を指す。いくつかの実施形態では、気体流出速度は、
図12に示される方程式を使用して算出される。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、スパージャーを含み、気体流出速度は、1つ以上のスパージャー開口部(複数可)(例えば、穴)からの気体流出の率を指す。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、スパージャーを含み、気体流出速度は、上記スパージャーの開口部からの気体流出の率の平均を指す。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「糖タンパク質」は、アミノ酸配列に共有結合した1つ以上のオリゴ糖鎖(例えば、グリカン)を含むアミノ酸配列を指す。例となるアミノ酸配列としては、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質が挙げられる。例となる糖タンパク質としては、グリコシル化抗体、抗体薬剤、及び抗体様分子(例えば、Fc融合タンパク質)が挙げられる。例となる抗体としては、モノクローナル抗体及び/またはそのフラグメント、ポリクローナル抗体及び/またはそのフラグメント、ならびにFcドメイン含有融合タンパク質(例えば、IgG1のFc領域、またはそのグリコシル化部分を含む融合タンパク質)が挙げられる。
【0058】
「単離された」という用語は、本明細書中で使用される場合、(1)(自然界において及び/または実験環境においてにかかわらず)最初に生成されたときに関連した成分の少なくとも一部から分離され、及び/または(2)人手によって設計、生成、調製、及び/または製造された物質及び/または要素を指す。単離される物質及び/または要素は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超の最初に関連したその他の成分から分離されてもよい。いくつかの実施形態では、単離された薬剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超純粋である。本明細書中で使用される場合、物質が実質的に他の成分を含まない場合、それは「純粋」である。いくつかの実施形態では、当業者によって理解されるであろうとおり、物質は、例えば、1つ以上の担体または賦形剤(例えば、バッファー、溶媒、水など)などの特定のその他の成分と混合された後でも依然として、「単離された」またはさらには「純粋」とさえ見なされる場合もある。そのような実施形態において、物質の単離パーセントまたは純度は、そのような担体または賦形剤を含まずに算出される。一例に過ぎないが、いくつかの実施形態では、天然に生じるポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの生体高分子は、a)その起源または由来元が自然界における天然の状態においてそれを伴う成分の一部またはすべてと関連しないため;b)それが、自然界でそれを産生する種からの同じ種のその他のポリペプチドまたは核酸を実質的に含まない;c)自然界でそれを産生する種ではない細胞または他の発現系によって発現されるか、または別の方法でそれからの成分と関連する場合に「単離された」と見なされる。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、化学合成されたか、またはそれを自然界で産生するものとは異なる細胞系で合成されたポリペプチドは、「単離された」ポリペプチドであると見なされる。あるいは、またはさらに、いくつかの実施形態では、1つ以上の精製技術に供されたポリペプチドは、a)それが自然界で関連する;及び/またはb)それが最初に生成されたときに関連したその他の成分から分離された程度において「単離された」ポリペプチドであると見なされる場合もある。
【0059】
本明細書中で使用される場合、「回収すること」とは、例えば、当該技術分野において知られている精製技術を使用した、例えば、単離によって薬剤または要素が他の予め関連する成分を実質的に含まない状態にするプロセスを指す。いくつかの実施形態では、薬剤または要素は、天然の供給源及び/または細胞を含む供給源から回収される。
【0060】
一般に、「タンパク質」は、本明細書中で使用される場合、ポリペプチドである(すなわち、ペプチド結合によって互いに連結された少なくとも2つのアミノ酸の鎖)。タンパク質は、アミノ酸以外の部分(例えば、糖タンパク質であってもよい)を含んでもよく、かつ/または別の方法で処理もしくは修飾されてもよい。当業者は、「タンパク質」が、(シグナル配列を有する、または有さない)細胞によって産生される完全なポリペプチド鎖であってもよく、またはその機能タンパク質であってもよいことを理解するであろう。当業者は、タンパク質が、例えば、1つ以上のジスルフィド結合によって連結されるか、または他の手段によって関連づけられる2つ以上のポリペプチド鎖を含み得る場合があることをさらに理解する。
【0061】
「タンパク質調製物」という用語は、本明細書中で使用される場合、特定の生成方法に従って得られたタンパク質の混合物を指す。タンパク質調製物中のタンパク質は、同じであっても、または異なっていてもよく、すなわち、タンパク質調製物は、同じタンパク質の複数のコピー及び/または異なるタンパク質の混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、タンパク質調製物は、糖タンパク質調製物を含む。糖タンパク質調製物は、少なくとも1つの糖タンパク質を含む組成物または混合物である。場合によっては、糖タンパク質調製物は、同じタンパク質(すなわち、同じアミノ酸配列を有する)の複数のコピーを含むが、タンパク質と関連するグリカンの混合物を有する。場合によっては、糖タンパク質調製物は、本明細書において提供される方法及び/またはシステムを使用して調製される。生成方法は、タンパク質調製物中のタンパク質を発現するように(または適切なレベルもしくは適切な条件下でタンパク質を発現するように)操作された培養細胞を使用した組み換え調製工程を含んでもよい。いくつかの実施形態では、生成方法は、タンパク質が、操作された細胞の特定の成分から(例えば、細胞を溶解させ、遠心分離によりタンパク質成分をペレットにすることによって)単離される単離工程を含んでもよい。いくつかの実施形態では、生成方法はまた、タンパク質調製物中のタンパク質が、その他の細胞の成分、例えば、その他のタンパク質または前の工程で使用された有機成分から(例えば、クロマトグラフィーによって)分離される精製工程を含んでもよい。これらの工程は非限定的であり、任意の数の追加の生成工程が含まれてもよいことが理解されるであろう。異なるタンパク質調製物は、同じ生成方法によってであるが、異なる機会(例えば、異なる実行または調製)で調製されてもよい。あるいは、異なるタンパク質調製物は、異なる生成方法によって調製されてもよい。2つの生成方法はどのように異なってもよい(例えば、発現ベクター、操作された細胞タイプ、培養条件、単離手順、精製条件など)。
【0062】
本明細書中で使用される場合、「サンプル(複数可)」は、別個に得られたサンプルを指す。いくつかの実施形態では、分離されたサンプルの評価は、同じ培養実行(例えば、調製中の異なる時点における)から、または異なる培養実行(例えば、培養の異なる循環)からのサンプルの評価を含む。
【0063】
本明細書中で使用される場合、「スパージング」または「気体スパージング」は、細胞培養培地への気体(例えば、空気及び/またはO2)の通気または添加を指す。一般に、気体スパージングとは、気体を直接培養培地に(例えば、スパージャーによって)バブリングするプロセスを指す。いくつかの実施形態では、スパージングは、少なくとも約20%、または約20%から約100%の間の溶存O2濃度を達成するよう使用される。
【0064】
本明細書中で使用される場合、「定常状態」または「定常状態条件」とは、細胞培養システムまたはプロセスに対する言及に使用される場合、細胞培養が、少なくとも5日間(例えば、5日間から約60日間)の期間にわたり最大20%変動する生細胞濃度を有することを意味する。いくつかの実施形態では、細胞培養システムは、5日間の期間にわたり最大20%変動する生細胞濃度を有する。いくつかの実施形態では、細胞培養システムは、少なくとも5日間(例えば、5日間、10日間、15日間、20日間、25日間、30日間、40日間、50日間、60日間)の期間にわたり最大15%、最大10%、または最大5%変動する生細胞濃度を有する。いくつかの実施形態では、細胞培養システムは、5日間の期間にわたり最大15%、最大10%、または最大5%変動する生細胞濃度を有する。いくつかの実施形態では、細胞培養システムは、少なくとも5日間(例えば、5日間、10日間、15日間、20日間、25日間、30日間、40日間、50日間、60日間)の期間にわたり最大10%(すなわち、プラスまたはマイナス10%の範囲内で)変動するせん断に敏感な細胞の生細胞濃度を有する。いくつかの実施形態では、細胞培養システムは、5日間の期間にわたり最大10%(すなわち、プラスまたはマイナス10%の範囲内で)変動するせん断に敏感な細胞の生細胞濃度を有する。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムからの排出(例えば、過剰な細胞の除去)により、定常状態生細胞濃度が達成及び/または維持される。
【0065】
特許、特許出願、論文、書籍、専門書、及びウェブページが含まれるが、それらに限定されない、本出願中で引用されるすべての文献及び類似の資料は、そのような文献及び類似の資料の形式にかかわらず、その全体が明確に参照により組み込まれる。定義された用語、用語の使用法、記載される技術などを含むが、これらに限定されない、組み込まれる文献及び類似の資料の1つ以上が本出願と異なるか、または矛盾する場合、本出願が優先される。本明細書中で使用する節の見出しは編成を目的としたものに過ぎず、記載される主題をいかようにも限定するものとして解釈されるべきではない。
【0066】
本開示は、部分的に、大きな培養体積(例えば、少なくとも100L、例えば、少なくとも200L)では、特定の細胞は、不十分な生細胞濃度及び低下した細胞生存率を有するという現行の連続細胞培養技術(例えば、灌流細胞培養)の課題を特定し、それに対処する。本開示は、高細胞密度連続細胞培養プロセスのスケールアップが、酸素供給及び溶存二酸化炭素(pCO2)除去に対する高い要求のため困難な場合があるという認識を包含する。本開示は、大規模連続細胞培養に関連する多くの異なる可変物を分析した。
【0067】
本開示は、バイオリアクター体積及び細胞濃度に伴い通気の重要性が増すという認識を包含する。特に、本開示は、バイオリアクターシステムの気体流出速度を制御することが、(例えば、せん断に敏感な細胞などの)特定の細胞の大規模連続培養の性能を改善することが可能であるという見識を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態では、本開示は、せん断に敏感な細胞の大規模(例えば、少なくとも100L、例えば、少なくとも200L)連続培養(例えば、灌流培養)のための方法及びプロセスであって、バイオリアクターシステムの気体流出速度は、規定された量及び/または範囲内に制御及び/または維持される、方法及びプロセスを提供する。例えば、最大20m/s(例えば、最大10m/s)である気体流出速度を有するバイオリアクターシステム(例えば、灌流バイオリアクターシステム)におけるせん断に敏感な細胞の大規模培養の方法が提供される。提供される方法は、(例えば、20×106細胞/mLから15×107細胞/mLの範囲内の定常状態生細胞濃度を有する)高密度細胞培養の形成を可能にする。
【0069】
連続培養方法及びプロセス
本開示は、部分的に、せん断に敏感な細胞(例えば、せん断に敏感な細胞を含む細胞の集団、例えば、せん断に敏感な細胞からなる細胞の集団)の大規模(例えば、少なくとも25L、例えば、少なくとも100L、例えば、少なくとも200L)連続培養(例えば、灌流細胞培養)のための方法、プロセス、及び/またはシステムを提供する。いくつかの実施形態では、大規模培養は、25Lから3,000Lである。いくつかの実施形態では、大規模培養は、25L、50L、100L、200L、250L、400L、500L、600L、800L、1000L、1200L、1500L、2000L、3000L以上である。いくつかの実施形態では、大規模培養は、100L以上である。いくつかの特定の実施形態では、大規模培養は、200L以上である。いくつかの特定の実施形態では、大規模培養は、250L以上である。
【0070】
場合によっては、連続細胞培養システム(例えば、灌流細胞培養システム)は、高密度のせん断に敏感な細胞(例えば、少なくとも20×106細胞/mL、例えば、少なくとも30×106細胞/mL、例えば、少なくとも40×106細胞/mLである定常状態生細胞濃度)を生成することができる大規模培養(例えば、200L以上)である。
【0071】
場合によっては、連続細胞培養システムの方法、プロセス及び/またはシステムは、約20×106細胞/mLから約15×107細胞/mLの範囲内であるせん断に敏感な細胞の定常状態生細胞濃度を有する、かつ/または達成する。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞の定常状態生細胞濃度は、上限が下限よりも大きい、下限及び上限によって制限された範囲内の量である。いくつかの実施形態では、下限は、約20×106細胞/mL、約25×106細胞/mL、約30×106細胞/mL、約35×106細胞/mL、約40×106細胞/mL、約45×106細胞/mL、約50×106細胞/mL、約60×106細胞/mL、約70×106細胞/mL、約80×106細胞/mL、または約90×106細胞/mLであってもよい。いくつかの実施形態では、上限は、約40×106細胞/mL、約45×106細胞/mL、約50×106細胞/mL、約60×106細胞/mL、約70×106細胞/mL、約80×106細胞/mL、約90×106細胞/mL、約10×107細胞/mL、約11×107細胞/mL、約12×107細胞/mL、約13×107細胞/mL、約14×107細胞/mLまたは約15×107細胞/mLであってもよい。
【0072】
一般に、本開示の細胞培養方法は、25℃から40℃の範囲内の温度で、それが地球上で遭遇する重力で培養することを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、連続細胞培養システム(例えば、灌流細胞培養システム)は、約1m/sから約20m/sの範囲内である気体流出速度を有する。いくつかの実施形態では、連続細胞培養システム(例えば、灌流細胞培養システム)は、約1m/sから約10m/sの範囲内である気体流出速度を有する。いくつかの実施形態では、連続細胞培養システム(例えば、灌流細胞培養システム)は、20m/sを上回らない気体流出速度を有する。いくつかの実施形態では、連続細胞培養システム(例えば、灌流細胞培養システム)は、10m/sを上回らない気体流出速度を有する。
【0074】
いくつかの実施形態では、連続細胞培養システム(例えば、灌流細胞培養システム)は、上限が下限よりも大きい、下限及び上限によって制限された範囲内の率の気体流出速度を有する。いくつかの実施形態では、下限は、約1m/s、約2m/s、約3m/s、約4m/s、約5m/s、約6m/s、約7m/s、約8m/s、約9m/sまたは約10m/sであってもよい。いくつかの実施形態では、上限は、約5m/s、約6m/s、約7m/s、約8m/s、約9m/s、約10m/s、約11m/s、約12m/s、約13m/s、約14m/s、約15m/s、約16m/s、約18m/s、または約20m/sであってもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、連続細胞培養システム(例えば、灌流細胞培養システム)は、120mmHgを上回らないレベルの溶存二酸化炭素を有する。いくつかの実施形態では、連続細胞培養システム(例えば、灌流細胞培養システム)は、約20mmHgから約120mmHgの範囲内のレベルの溶存二酸化炭素を有する。いくつかの実施形態では、溶存二酸化炭素は、上限が下限よりも大きい、下限及び上限によって制限された範囲内の量で連続細胞培養培地中に存在する。いくつかの実施形態では、下限は、約20mmHg、約30mmHg、約40mmHg、約50mmHg、約60mmHg、または約70mmHgであってもよい。いくつかの実施形態では、上限は、約50mmHg、約60mmHg、約70mmHg、約80mmHg、約90mmHg、約100mmHg、約110mmHg、または約120mmHgであってもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞(例えば、せん断に敏感な細胞を含む細胞の集団、例えば、せん断に敏感な細胞からなる細胞の集団)の連続培養は、約10日間から約180日間の範囲内の期間実施される。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞(例えば、せん断に敏感な細胞を含む細胞の集団、例えば、せん断に敏感な細胞からなる細胞の集団)の連続培養は、上限が下限よりも大きい、下限及び上限によって制限された範囲内の時間の量の間実施される。いくつかの実施形態では、下限は、約10日間、約15日間、約20日間、約25日間、約30日間、約35日間、約40日間、約50日間、または約60日間であってもよい。いくつかの実施形態では、上限は、約30日間、約35日間、約40日間、約50日間、約60日間、約70日間、約80日間、約90日間、約100日間、約120日間、約140日間、約160日間、または約180日間であってもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞(例えば、せん断に敏感な細胞を含む細胞の集団、例えば、せん断に敏感な細胞からなる細胞の集団)の連続培養は、少なくとも10日間の期間実施される。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞(例えば、せん断に敏感な細胞を含む細胞の集団、例えば、せん断に敏感な細胞からなる細胞の集団)の連続培養は、約30日間から約60日間の期間実施される。
【0078】
バイオリアクターシステム
本開示は、大規模連続細胞培養のため、例えば、せん断に敏感な細胞(例えば、せん断に敏感な細胞を含む細胞の集団、例えば、せん断に敏感な細胞からなる細胞の集団)を培養するためのバイオリアクターシステムを提供する。本開示のバイオリアクターシステムは、連続培養方法に適している。いくつかの実施形態では、本開示のバイオリアクターシステムは、灌流培養に適している。本開示の培養方法に適したバイオリアクターシステムの例となる概略図を
図1に示す。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、バイオリアクタータンク及び細胞保持デバイスを含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、バイオリアクタータンク、細胞保持デバイス、培地供給、及び排出廃棄物回収を含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、細胞の集団(例えば、せん断に敏感な細胞からなる細胞の集団、例えば、接種)及び細胞培養培地をさらに含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、撹拌タンク型バイオリアクターを含む。いくつかの実施形態では、(例えば、撹拌タンク型バイオリアクターの)バイオリアクタータンクは、25Lから3,000Lの範囲内の容量を有する。いくつかの実施形態では、(例えば、撹拌タンク型バイオリアクターの)バイオリアクタータンクは、少なくとも25L、50L、100L、200L、250L、300L、400L、500L、600L、800L、1000L、1200L、1400L、1500L、1600L、1800L、2000L、2400L、2500L、2600L、2800L、または3000Lの容量を有する。いくつかの実施形態では、撹拌タンク型バイオリアクターは、少なくとも100Lである容量を有する。いくつかの実施形態では、撹拌タンク型バイオリアクターは、少なくとも200Lである容量を有する。いくつかの実施形態では、撹拌タンク型バイオリアクターは、少なくとも250Lである容量を有する。いくつかの実施形態では、撹拌タンク型バイオリアクターは、少なくとも500Lである容量を有する。いくつかの実施形態では、撹拌タンク型バイオリアクターは、少なくとも1000Lである容量を有する。
【0080】
いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、スパージャーを含む。一般に、スパージャーは、空気及び/または酸素を細胞培養培地に導入するために使用することができる。本開示は、スパージャーの選択が、通気の率及び程度ならびに発泡を最小限にすることにも影響を与える可能性があるという認識を包含する。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、オープンパイプスパージャー及び/またはまたはドリルホールスパージャーを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、ドリルホールスパージャーを含む。いくつかの実施形態では、ドリルホールスパージャーは、0.05mmから5.0mmの範囲内のサイズである穴を有する。いくつかの実施形態では、ドリルホールスパージャーは、0.1mmから1.0mmの穴を有する。いくつかの実施形態では、ドリルホールスパージャーは、上限が下限よりも大きい、下限及び上限によって制限された範囲内のサイズである穴を有する。いくつかの実施形態では、下限は、約0.05mm、約0.06mm、約0.07mm、約0.08mm、約0.09mm、約0.1mm、約0.2mm、約0.3mm、約0.4mm、約0.5mm、約0.6mm、約0.7mm、約0.8mm、約0.9mm、または約1.0mmであってもよい。いくつかの実施形態では、上限は、約0.2mm、約0.3mm、約0.4mm、約0.5mm、約0.6mm、約0.7mm、約0.8mm、約0.9mm、約1.0mm、約1.25mm、約1.5mm、約1.75mm、約2.0mm、約2.25mm、約2.5mm、約2.75mm、約3.0mm、約3.5mm、約4.0mm、約4.5mm、または約5.0mmであってもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、焼結スパージャーを含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、バイオリアクタータンクの底に配置されたスパージャーを含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、バイオリアクタータンク内のほぼ中心に配置されたスパージャーを含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、細胞保持デバイスを含む。本開示のバイオリアクターシステムに使用するのに適した細胞保持デバイスは、連続式遠心分離機、交互タンジェンシャルフローフィルター(ATF)、タンジェンシャルフローメンブランフィルター(TFF)、動的フィルター、スピンフィルター、超音波及び誘電泳動セパレーター、ならびに重力沈降器を含む。いくつかの実施形態では、本開示のバイオリアクターシステムは、細胞交互タンジェンシャルフロー(ATF)デバイスを含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、1つ以上のATFを備えた細胞保持デバイスを含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、2つのATFを備えた細胞保持デバイスを含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、3つ以上のATFを備えた細胞保持デバイスを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、バイオリアクターシステムは、インペラーデバイスを含む。いくつかの実施形態では、インペラーは、バイオリアクタータンク内に取り付けられた底部である。いくつかの実施形態では、インペラーは、バイオリアクタータンク内のほぼ中心に配置される。いくつかの実施形態では、インペラーデバイスは、磁気的に駆動される。バイオリアクターシステムは、約5W/m3から約500W/m3の体積電力入力P/Vを発揮するインペラー撹拌率を有する。
【0085】
せん断に敏感な細胞
場合によっては、本開示の培養の方法、プロセス及びシステムは、せん断に敏感な細胞の連続培養のためのものである。本開示は、細胞壁のない動物細胞が、撹拌タンク型バイオリアクターにおける培養の流体による機械的応力、例えば、細胞に酸素を供給するために撹拌タンク中の培養培地内で生じるインペラーによるならびに気泡の発生及び破裂のよる撹拌などに敏感であるという認識を包含する。過剰な場合、これらの流体による機械的応力は、動物細胞の損傷/死滅をもたらすことがある。さらに、本開示は、特定の動物細胞が他のものよりも機械的応力によるせん断に敏感であるという認識を包含する。例えば、マウス骨髄腫細胞は、特定のCHO細胞株よりもせん断に敏感であることがある。本開示は、せん断に敏感な細胞の大規模高密度培養に適した方法、プロセス及びシステムを提供する。
【0086】
特定の細胞、例えば、動物細胞は、培養中の特定の機械的及び/または通気条件に対して敏感であることが当該技術分野において知られている(例えば、Gooch et al., Curr. Opin. Biotech. 4:193-196 (1993)を参照)。本明細書中で使用される場合、せん断に敏感な細胞は、従来の培養条件(例えば、従来の大規模培養条件)下においてせん断に対するあるレベルの敏感さを示す(例えば、低下した細胞生存率を示す)任意の動物細胞である。本明細書において述べられているとおり、特定の例において、そのようなせん断に敏感な細胞が、本明細書に記載されている条件下において培養される場合、そのような細胞は、増加したレベルの生存率を示す。
【0087】
いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞は、ネズミ科動物細胞である。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞は、マウス細胞株由来である。せん断に敏感なネズミ科動物(例えば、マウス)細胞株としては、例えば、マウス骨髄腫細胞株が挙げられる。いくつかの特定の実施形態では、せん断に敏感な細胞は、NS0細胞及びSP 2/0細胞から選択される。
【0088】
いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞は、ヒト細胞である。せん断に敏感なヒト細胞株としては、例えば、HEK293:ヒト胎児由来腎臓293;HT-1080:上皮様表現型を有する線維肉腫由来;PER.C6:アデノウイルスE1遺伝子によるトランスフェクションにより不死化されたヒト胚性網膜細胞由来;CAP:アデノウイルス5型E1遺伝子により不死化されたヒト羊膜細胞由来;HKB-11:HEK293-S及びヒトB細胞株のポリエチレングリコール融合により作製された;ならびにHuH-7:ヒト肝細胞癌由来が挙げられる。いくつかの特定の実施形態では、せん断に敏感な細胞は、HEK293細胞、線維肉腫HT1080細胞、PER.C6細胞、CAP細胞、HKB-11細胞及びHuH-7細胞から選択される。
【0089】
いくつかの特定の実施形態では、本開示による使用するためのせん断に敏感な細胞は、SP 2/0細胞である。いくつかの実施形態では、本開示による使用するためのせん断に敏感な細胞は、細胞産物を含むか、またはそれを発現するよう操作される。
【0090】
本開示によると、当該技術分野の技術の範囲内の従来の分子生物学、微生物学、及び組み換えDNA技術が利用されてもよい。そのような技術は文献に記載されている(例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II (D. N. Glover ed. 1985);Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed. 1984);Nucleic Acid Hybridization (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. (1985));Transcription And Translation (B. D. Hames & S. J. Higgins, eds. (1984));Animal Cell Culture (R. I. Freshney, ed. (1986));Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, (1986));B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);F. M. Ausubel et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (1994)を参照)。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている細胞産物を発現するせん断に敏感な細胞は、組み換え法を使用して作製される。本明細書に記載されている抗体薬剤などのポリペプチドをコードする遺伝子などの遺伝子の組み換え発現は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築を含んでもよい。ポリヌクレオチドが入手されたら、ポリペプチドの作製のためのベクターは、当該技術分野において知られている技術を使用した組み換えDNA技術によって作製することができる。ポリペプチドコード配列ならびに適切な転写及び翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築するために既知の方法を使用することができる。これらの方法としては、例えば、インビトロ組み換えDNA技術、合成技術、及びインビボ遺伝子組み換えが挙げられる。
【0092】
発現ベクターは、従来の技術によってせん断に敏感な細胞に導入されてもよく、トランスフェクション細胞は、その後、本明細書に記載されている方法によって培養されて、細胞産物(例えば、タンパク質調製物、例えば、組み換えタンパク質、例えば、糖タンパク質、例えば、融合タンパク質、例えば、抗体薬剤)を産生することができる。
【0093】
細胞培養培地
本開示は、細胞産物の発現に十分な培養培地における(例えば、せん断に敏感な細胞、例えば、せん断に敏感な細胞を含む細胞の集団、例えば、せん断に敏感な細胞からなる細胞の集団の)連続細胞培養のための方法、プロセス、及びシステムを提供する。細胞培養培地は、一般に適切なエネルギー源及び細胞周期を調節する化合物を含む。一般に、培養培地は、例えば、当業者に既知のアミノ酸、ビタミン、無機塩、及びグルコースを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、6から8のpHを有する。動物細胞培養用の培地は、当該技術分野において十分に確立されており、特定の目的及び/または細胞種のために当業者によって慣行的に最適化される。
【0094】
いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、1ppmから500ppmの範囲内の消泡剤(例えば、アンチフォームC)も含む。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞は、せん断力保護剤(例えば、Pluronic F-68)を含む細胞培養培地において培養される。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞は、1g/Lから15g/Lの範囲内の濃度でPluronic F-68を含む細胞培養培地において培養される。いくつかの特定の実施形態では、せん断に敏感な細胞の集団は、血清(例えば、ウシ胎仔血清)を含む細胞培養培地において培養されてもよい。
【0095】
細胞産物
場合によっては、せん断に敏感な細胞またはせん断に敏感な細胞からなる細胞の集団は、本開示の方法、プロセス、及び/またはを使用して連続培養され、細胞産物を発現する。いくつかの実施形態では、細胞産物は、核酸、脂質、ペプチド、及び/またはタンパク質であるか、またはそれらを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、細胞産物は、組み換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、本開示のせん断に敏感な細胞は、組み換えタンパク質をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、細胞産物は、糖タンパク質である。いくつかの実施形態では、組み換えタンパク質は、融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、本開示のせん断に敏感な細胞は、融合タンパク質をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、組み換えタンパク質は、Fc融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、本開示のせん断に敏感な細胞は、Fc融合タンパク質をコードする核酸を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、細胞産物は、抗体薬剤である。いくつかの実施形態では、本開示のせん断に敏感な細胞は、抗体薬剤をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、細胞産物は、モノクローナル抗体である。
【0098】
いくつかの実施形態では、本開示のせん断に敏感な細胞は、糖タンパク質複合物(例えば、1つ以上の異種部分と結合または融合したその1つ以上のN-グリコシル化部位を含むFc領域またはFcフラグメント)をコードする核酸を含む。異種部分としては、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、核酸分子、小分子、模倣薬剤、合成薬物、無機分子、及び有機分子が挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、糖タンパク質複合物は、グリコシル化Fc領域などのFc領域と融合したペプチド、ポリペプチド、タンパク質足場、scFv、dsFv、ダイアボディ、Tandab、または抗体模倣物を含む融合タンパク質である。融合タンパク質は、Fc領域を異種部分と連結するリンカー領域を含んでもよい(例えば、Hallewell et al. (1989), J. Biol. Chem. 264, 5260-5268;Alfthan et al. (1995), Protein Eng. 8, 725-731;Robinson & Sauer (1996)を参照)。
【0099】
いくつかの実施形態では、本開示のせん断に敏感な細胞は、ヒトまたは動物における治療的または診断的使用のための、例えば、二次承認プロセスにおいて認可されたタンパク質をコードする核酸を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、本開示のせん断に敏感な細胞は、ヒトまたは動物における治療的または診断的使用のための、例えば、二次承認プロセスにおいて認可されたタンパク質と同じ一次アミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、本開示のせん断に敏感な細胞は、認可された治療用または診断用タンパク質と1、2、3、4、5、10、15、20、25、または30残基を超えない残基だけ異なるタンパク質をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、本開示のせん断に敏感な細胞は、認可された治療用または診断用タンパク質のものと少なくとも90、95、98、99%または100%の配列同一性を有するタンパク質をコードする核酸を含む。「同じ一次アミノ酸配列」、「1、2、3、4、5、10、15、20、25、または30残基を超えない残基だけ異なる一次アミノ酸配列」、「少なくとも98%以上の配列同一性を有する配列」という用語、または類似の用語は、一次アミノ酸配列間の同一性のレベルに関する。いくつかの実施形態では、タンパク質調製物または生成物は、アミノ酸バリアント、例えば、末端残基、例えば、1または2つの末端残基が異なる種を含む。そのような場合のいくつかの実施形態では、比較される配列同一性は、比較される各生成物中の最も豊富な(例えば、最も豊富な活性)種の一次アミノ酸配列間の同一性である。いくつかの実施形態では、配列同一性は、生成物を生成するために使用することができる核酸によってコードされるアミノ酸配列を指す。
【0101】
いくつかの実施形態では、本開示のせん断に敏感な細胞は、ヒトまたは動物における治療的または診断的使用のために認可されていないタンパク質をコードする核酸を含む。
【0102】
非限定例の組み換えタンパク質としては、アバタセプト(Orencia(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)、アブシキシマブ(ReoPro(登録商標)、Roche)、アダリムマブ(Humira(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)、アフリベルセプト(Eylea(登録商標)、Regeneron Pharmaceuticals)、アレファセプト(Amevive(登録商標)、Astellas Pharma)、アレムツズマブ(Campath(登録商標)、Genzyme/Bayer)、バシリキシマブ(Simulect(登録商標)、Novartis)、ベラタセプト(Nulojix(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)、ベリムマブ(Benlysta(登録商標)、GlaxoSmithKline)、ベバシズマブ(Avastin(登録商標)、Roche)、カナキヌマブ(Ilaris(登録商標)、Novartis)、ブレンツキシマブベドチン(Adcetris(登録商標)、Seattle Genetics)、セルトリズマブ(CIMZIA(登録商標)、UCB、Brussels、Belgium)、セツキシマブ(Erbitux(登録商標)、Merck-Serono)、ダクリズマブ(Zenapax(登録商標)、Hoffmann-La Roche)、デニロイキンジフチトクス(Ontak(登録商標)、Eisai)、デノスマブ(Prolia(登録商標)、Amgen;Xgeva(登録商標)、Amgen)、エクリズマブ(Soliris(登録商標)、Alexion Pharmaceuticals)、エファリズマブ(Raptiva(登録商標)、Genentech)、エタネルセプト(Enbrel(登録商標)、Amgen-Pfizer)、ゲムツズマブ(Mylotarg(登録商標)、Pfizer)、ゴリムマブ(Simponi(登録商標)、Janssen)、イブリツモマブ(Zevalin(登録商標)、Spectrum Pharmaceuticals)、インフリキシマブ(Remicade(登録商標)、Centocor)、イピリムマブ(Yervoy(商標)、Bristol-Myers Squibb)、ムロモナブ(Orthoclone OKT3(登録商標)、Janssen-Cilag)、ナタリズマブ(Tysabri(登録商標)、Biogen Idec、Elan)、オファツムマブ(Arzerra(登録商標)、GlaxoSmithKline)、オマリズマブ(Xolair(登録商標)、Novartis)、パリビズマブ(Synagis(登録商標)、MedImmune)、パニツムマブ(Vectibix(登録商標)、Amgen)、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標)、Genentech)、リロナセプト(Arcalyst(登録商標)、Regeneron Pharmaceuticals)、リツキシマブ(MabThera(登録商標)、Roche)、トシリズマブ(Actemra(登録商標)、Genentech;RoActemra、Hoffman-La Roche)トシツモマブ(Bexxar(登録商標)、GlaxoSmithKline)、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標)、Roche)、及びウステキヌマブ(Stelara(登録商標)、Janssen)を挙げることができる。
【0103】
いくつかの特定の実施形態では、細胞産物は、ウステキヌマブである。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞は、ウステキヌマブをコードする核酸を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞は、配列番号1に記載されているとおりの重鎖可変ドメイン及び配列番号2に記載されているとおりの軽鎖可変ドメインを含む抗体薬剤をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞は、配列番号1の配列を含む重鎖及び配列番号2の配列を含む軽鎖を含む抗体薬剤をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、せん断に敏感な細胞は、配列番号1に記載されているとおりのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列ならびに配列番号2に記載されているとおりのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む抗体薬剤をコードする核酸を含む。
【0105】
配列番号1 - ウステキヌマブ重鎖配列(太字は、下線をつけたCDR配列を含む可変ドメイン配列を示す)
【化1】
【0106】
配列番号2 - ウステキヌマブ軽鎖配列(太字は、下線をつけたCDR配列を含む可変ドメイン配列を示す)
【化2】
【0107】
医薬組成物
本明細書に記載されている任意の方法、システム及び/またはプロセスを使用して生成または製造される細胞産物(例えば、組み換えタンパク質、例えば、糖タンパク質、例えば、抗体薬剤)は、医薬組成物に組み込むことができる。そのような医薬組成物は、疾患の予防及び/または処置に有用な場合もある。組み換えタンパク質(例えば、糖タンパク質、例えば、抗体薬剤)を含む医薬組成物は、当業者に既知の方法によって製剤化することができる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th Ed., Lippincott Williams & Wilkins, 2000を参照)。医薬組成物は、水または他の薬学的に許容される液体中の滅菌溶液または懸濁液を含む注射可能な製剤の形態で非経口投与されてもよい。例えば、医薬組成物は、細胞産物(例えば、組み換えタンパク質、例えば、糖タンパク質、例えば、抗体薬剤)を薬学的に許容されるビヒクルまたは媒体、例えば、滅菌水及び生理的食塩水、植物油、乳化剤、懸濁化薬剤、界面活性剤、安定剤、香味賦形剤、希釈剤、ビヒクル、保存料、結合剤と適切に組み合わせ、続いて一般に受け入れられる製薬実務に必要とされる単位剤形に混合することによって製剤化することができる。医薬調製物中に含まれる活性成分の量は、指定された範囲内の適した用量が提供されるような量である。
【0108】
投与経路は、例えば、注射、経鼻投与、経肺投与、または経皮投与によって非経口投与が可能である。投与は、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射による全身または局所であってもよい。
【0109】
投与の適した手段は、患者の年齢及び状態に基づいて選択することができる。細胞産物(例えば、組み換えタンパク質、例えば、糖タンパク質、例えば、抗体薬剤)を含む医薬組成物の単回用量は、0.001mg/体重kgから1000mg/体重kgの範囲から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、用量は、0.001mgから100,000mgの範囲内で選択されてもよいが、本開示は、そのような範囲に限定されない。投与の用量及び方法は、それを必要とする患者の体重、年齢、状態などに応じて変化し、当業者が必要に応じて適切に選択することができる。
【0110】
本開示は以下の実施例によってさらに説明される。実施例は単に例示の目的のために提供される。それらはいかなる方法でも本開示の範囲または内容を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0111】
実施例1: せん断に敏感な細胞の連続培養に対する従来の条件はスケールアップしたプロセスには不適切である
この実施例は、せん断に敏感な細胞の連続培養のスケールアップ課題の特定について述べる。特に、本実施例は、気体流出速度を制御しない、せん断に敏感な細胞の大規模(例えば、200L)灌流培養が、生物学的製造に対して低下した細胞生存率及び不十分な生細胞濃度を有したという発見を示している。具体的には、本実施例は、例となる細胞産物(例えば、抗体薬剤、例えば、モノクローナル抗体)をコードする核酸を含むよう操作された例となるせん断に敏感な細胞株、SP2/0の灌流培養方法のスケールアップを示す。
【0112】
例となる抗体薬剤を発現する例となるせん断に敏感な細胞(例えば、SP2/0)の連続細胞培養(例えば、灌流細胞培養)に対する従来の条件を、小規模連続培養システム(例えば、最大100L)を用いて評価し、結果を
図2に示す。具体的には、3Lのガラスリアクター、5Lのガラスリアクター、15Lのガラスリアクター及び100LのSUB100使い捨てリアクターシステム中で増殖させられたせん断に敏感な細胞は、同等の細胞増殖及び定常状態生細胞濃度を示した。3L、5L、15L及び100Lで培養されたせん断に敏感な細胞はまた、同等の産生性及び生成物品質を有した(データは示していない)。
【0113】
例となるせん断に敏感な細胞、SP2/0の連続細胞培養(例えば、灌流細胞培養)の200Lへのスケールアップを試み、結果を
図3に示す。具体的には、以下の例となる撹拌タンク型バイオリアクターシステムを利用した。
【表1-1】
【表1-2】
【0114】
初期の増殖はすべてのサンプルで観察されたが、
図3に示されるとおり、GE/Xcellerex XDR200使い捨てリアクターシステムを利用した200Lの培養プロセスは、4日目から始まった低下した細胞増殖(せん断に敏感な細胞の生細胞濃度(10
6細胞/mL単位)(上))及び生存率(生存率パーセント(下))の低下の両方を示した。したがって、本実施例は、大規模(例えば、少なくとも200L)でせん断に敏感な細胞を首尾よく連続培養するためには改善された方法が必要とされることを示す。
【0115】
実施例2:せん断に敏感な細胞のスケール変更された連続細胞培養に関する根本原因分析
本実施例は、実施例1に記載されている大規模(例えば、200L以上)におけるせん断に敏感な細胞、SP2/0細胞の低下した細胞増殖及び生存率の原因を特定し、(例えば、少なくとも20×106細胞/mL、例えば、少なくとも30×106細胞/mLなどである、例えば、定常状態生細胞濃度を有する)高密度のせん断に敏感な細胞を生じる大規模連続細胞培養(例えば、灌流細胞培養)の方法を提供する。
【0116】
200Lの連続培養システムでは、なぜせん断に敏感な細胞の細胞増殖及び生存率が低下するのかを理解するために、さまざまなパラメーターを分析した。原料(例えば、培地、培地プレップフィルター、消泡剤、接種材料など)の問題がないことを確実にするためにプロトコル及び条件を見直した。溶存酸素(DO)、pH及び温度などのパラメーターを小規模培養と大規模培養との間で一定にした(データは示していない)。
【0117】
>20m/sの率の気体流出速度(GEV)が、低下した増殖及び生存率の一因である可能性があると特定した。この仮説を評価するために、培養流体の一部(具体的には、2Lの細胞培養液)を、培養の8日後に200Lのバイオリアクター(XDR200バイオリアクター)から3m/sの最大GEVを有する3Lのベンチトップ型バイオリアクターに移した。残りの200Lの培養システム及び3Lのベンチトップ型バイオリアクターの生細胞濃度を監視した。
図4に示されるとおり、3Lのベンチトップ型バイオリアクターの生細胞濃度は、急速に回復した。一方、200Lのバイオリアクター中のスパージャー気体流出速度を、その後、培養9日目から13日目まで10m/s以下である率に制御した(低下させた)。この間、生細胞濃度が回復した。さらに、その後、13日目にGEVを少なくとも20m/sのレベルに増加させた場合、生細胞濃度が急速に低下した。これらの結果は、10m/s以下であるレベルにGEVを制御することが、(例えば、パイロット規模への)上首尾のスケールアップのために細胞生存率を助長することを示唆する。
【0118】
GEV閾値を決定するために、3Lの灌流バイオリアクターを用いた連続細胞培養実行を、さまざまな気体流出速度(GEV)を用いて行い、それを
図5に示す。具体的には、10m/sから16m/sへのGEVの増加は、生細胞濃度の急速な低下をもたらした。同様に、GEVを13m/sで維持しても、培養の12日後に、生細胞濃度が最後に急激に低下した。一方、GEVを16m/sから10m/sに低下させると、生細胞濃度が増加した。
【0119】
したがって、本実施例は、スパージャー気体流出速度を20m/s未満(例えば、10m/s未満)に制御することによって、せん断に敏感な細胞の連続培養を、大規模培養(例えば、200L以上、例えば、250L以上)に首尾よくスケールアップし、高密度のせん断に敏感な細胞を(例えば、少なくとも20×106細胞/mL、例えば、少なくとも30×106細胞/mLである定常状態濃度で)生成することができることを示す。
【0120】
せん断に敏感な細胞の細胞培養生存率に対する溶存CO2の影響も評価し、その結果を
図6に示す。具体的には、例となるせん断に敏感な細胞(SP2/0細胞)は、溶存二酸化炭素(pCO2)に対して敏感であることがわかった。pCO
2が≧90mmHgであるときに細胞培養性能に悪影響があることがわかった。
【0121】
この実施例は、大規模連続培養のせん断に敏感な細胞の細胞増殖及び生存率は、気体流出速度を(例えば、10m/s未満に)制御することによって元に戻すことができることを示す。さらに、この実施例はまた、pCO2レベルを制御することも、せん断に敏感な細胞の高密度での大規模培養に有益であることを示している。
【0122】
実施例3:せん断に敏感な細胞の大規模連続細胞培養
本実施例は、実施例1及び2の理解を適用したせん断に敏感な細胞の上首尾の大規模連続培養を示す。具体的には、連続細胞培養実行、250Lの灌流リアクター(SUB250)を、GEV及びpCO
2の両方を制御して行った。
図7A及び
図7Bは、3L、5L、15L、100L(SUB100)及び250L(SUB250)の間の細胞密度及び細胞生存率の比較を提供する。具体的には、
図7A及び
図7Bは、さまざまな細胞培養規模(例えば、100L、例えば、250L)でさまざまなレベルに制御したGEV及びpCO
2を用いた細胞生存率のさらなる分析を提供する。SUB100、100Lのバイオリアクターは、570×0.18mmの穴を含み、SUB250、250Lのバイオリアクターは、760×0.233mmの穴を含む。
図7Aに示されるとおり、250Lの規模(SUB250)で約7m/sに制御されたGEV及び最大80mmHgの溶存二酸化炭素を用いた連続細胞培養は、小規模の培養と同様の細胞生存率を示した。
図8は、(例えば、SUB250バイオリアクターシステムを使用した)250Lの培養に対するさまざまなパラメーターについての予測モデルの概要を提供する。特に、100L及び250Lにおける溶存CO
2に関するこれらのモデルを使用して予測されたCO
2のレベルは、実際に得られたデータ(示していない)と極めて類似していた。
【0123】
図9は、せん断に敏感な細胞の3L、100L、及び250Lでのこれらの連続培養がすべて、同等の合計グリカンレベル(上のパネル)及び同等のシアル酸含有量(下のパネル)を示すことを示している。したがって、本実施例は、灌流培養プロセスによる高細胞密度せん断に敏感な細胞(SP2/0)の(例えば、Thermo Fisher/HyClone SUB250(250L)撹拌タンク型バイオリアクターを用いた)250Lの規模への上首尾のスケールアップを示す(
図7A、
図7B、及び
図9)。
【0124】
したがって、本実施例はまた、pCO2レベルを制御することも、せん断に敏感な細胞の(例えば、少なくとも20×106細胞/mL、例えば、少なくとも30×106細胞/mLである定常状態濃度を有する)高密度での大規模培養(例えば、少なくとも100L、例えば、250L)に有益であることも示す。本発明者らは、pCO2を80mmHg未満に、さらにスパージャー気体流出速度を10m/s未満に制御することによって、本発明者らのプロセスを3Lから250Lの撹拌タンク型バイオリアクターに首尾よくスケールアップすることができた。
【0125】
したがって、本実施例は、せん断に敏感な細胞の灌流培養の上首尾のスケールアップのために、スパージャーからのGEVを率<10m/sに制御すると同時にpCO2を≦80mmHgに維持することを裏付ける。
【0126】
実施例4:連続細胞培養の生産規模へのスケール変更
この実施例は、生産規模(例えば、1000L以上)でのせん断に敏感な細胞の大規模連続培養についてのさまざまなパラメーターのモデル化を示す。
図10に示されるとおり、せん断に敏感な細胞の1000Lの連続培養に対する溶存CO
2(上のパネル)及び気体流出速度(下のパネル)についての予測パラメーターは、250L及び100Lの培養プロセスで実証されたレベルと同等である。さらに、
図11は、(例えば、SUB1000バイオリアクターシステムを使用した)1000Lの培養に対するさまざまなパラメーターについての予測モデルの概要を示す表を示す。したがって、大規模(例えば、パイロット規模)に対して測定されたパラメーターが、1000Lのバイオリアクターシステムによるものなどのさらに大きな培養でも当てはまることが予想される。
【0127】
均等物
本開示をその詳細な説明と併せて説明してきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を説明するように意図されるのであって、限定するようには意図されないことが理解されるべきである。他の態様、利点、及び改変は、以下の特許請求の範囲内にある。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載の発明を列挙する。
[発明1]
少なくとも25Lの培養培地及び最大20m/sである気体流出速度を有するバイオリアクターシステムにおいて、せん断に敏感な細胞からなる細胞の集団を培養して、20×10
6
細胞/mLから15×10
7
細胞/mLの範囲内の前記培養培地中の定常状態生細胞濃度を達成することを含む、方法。
[発明2]
前記気体流出速度は、15m/s、14m/s、13m/s、12m/s、11m/s、10m/s、9m/s、8m/s以下である、発明1に記載の方法。
[発明3]
前記気体流出速度は、少なくとも前記バイオリアクターシステムが定常状態条件に達するまで制御される、発明1または2に記載の方法。
[発明4]
前記定常状態条件は、5日間の期間にわたり最大20%変動する生細胞濃度を有することを含む、発明3に記載の方法。
[発明5]
前記気体流出速度は、培養工程全体をとおして制御される、発明1~4のいずれか1つに記載の方法。
[発明6]
前記バイオリアクターシステムは、灌流バイオリアクターシステムである、発明1~5のいずれか1つに記載の方法。
[発明7]
前記灌流バイオリアクターシステムにおいて、前記せん断に敏感な細胞からなる細胞の集団を培養して、前記定常状態生細胞濃度を達成することは、過剰な細胞及び/または非生細胞を排出または除去することを含む、発明6に記載の方法。
[発明8]
前記培養培地は、最大120mmHg、最大115mmHg、最大110mmHg、最大105mmHg、最大100mmHg、最大95mmHg、最大90mmHg、最大85mmHg、または最大80mmHgであるレベルの溶存二酸化炭素を有する、発明1~7のいずれか1つに記載の方法。
[発明9]
(i)前記気体流出速度は、10m/s以下であり、
(ii)前記培養培地は、最大80mmHgであるレベルの溶存二酸化炭素を有する、
発明1~8のいずれか1つに記載の方法。
[発明10]
前記バイオリアクターシステムは、少なくとも50L、少なくとも100L、少なくとも200L、少なくとも500L、少なくとも1,000L、または少なくとも2,000Lの培養培地を含む、発明1~9のいずれか1つに記載の方法。
[発明11]
培養することは、少なくとも10日間の期間実施される、発明1~10のいずれか1つに記載の方法。
[発明12]
培養することは、30から60日間の期間実施される、発明1~11のいずれか1つに記載の方法。
[発明13]
前記方法は、前記生細胞濃度を測定することをさらに含む、発明1~12のいずれか1つに記載の方法。
[発明14]
前記測定された生細胞濃度は、少なくとも30×10
6
細胞/mL、少なくとも40×10
6
細胞/mL、または少なくとも50×10
6
細胞/mLである、発明13に記載の方法。
[発明15]
前記せん断に敏感な細胞は、哺乳動物細胞である、発明1~14のいずれか1つに記載の方法。
[発明16]
前記せん断に敏感な細胞は、ヒト細胞である、発明1~15のいずれか1つに記載の方法。
[発明17]
前記せん断に敏感な細胞は、HEK293細胞、線維肉腫HT1080細胞、PER.C6細胞、CAP細胞、HKB-11細胞またはHuH-7細胞である、発明1~16のいずれか1つに記載の方法。
[発明18]
前記せん断に敏感な細胞は、ネズミ科動物細胞である、発明1~17のいずれか1つに記載の方法。
[発明19]
前記せん断に敏感な細胞は、マウス骨髄腫細胞株である、発明1~15及び18のいずれか1つに記載の方法。
[発明20]
前記せん断に敏感な細胞は、NS0細胞またはSP 2/0細胞である、発明1~15、18、及び19のいずれか1つに記載の方法。
[発明21]
前記バイオリアクターシステムは、細胞保持デバイスを含む、発明1~20のいずれか1つに記載の方法。
[発明22]
前記細胞保持デバイスは、連続式遠心分離機、交互タンジェンシャルフローフィルター(ATF)、タンジェンシャルフローメンブランフィルター(TFF)、動的フィルター、スピンフィルター、超音波及び誘電泳動セパレーター、及び/または重力沈降器であるか、またはそれらを含む、発明21に記載の方法。
[発明23]
前記細胞保持デバイスは、1つ以上のATFであるか、またはそれを含む、発明21または22に記載の方法。
[発明24]
前記バイオリアクターシステムは、バイオリアクタータンクを含み、前記バイオリアクタータンクは、少なくとも50L、100L、200L、500L、1,000L、または2,000Lの容量を有する、発明1~23のいずれか1つに記載の方法。
[発明25]
前記バイオリアクタータンクは、撹拌タンク型バイオリアクターである、発明24に記載の方法。
[発明26]
前記バイオリアクターシステムは、スパージャーを含む、発明1~26のいずれか1つに記載の方法。
[発明27]
前記スパージャーは、ドリルホールスパージャーまたはオープンパイプスパージャーである、発明26に記載の方法。
[発明28]
前記細胞の集団を前記培養することは、細胞産物を発現する条件下で実施される、発明1~27のいずれか1つに記載の方法。
[発明29]
前記細胞産物は、核酸、脂質、ペプチド、及び/またはタンパク質であるか、またはそれらを含む、発明28に記載の方法。
[発明30]
前記細胞産物は、組み換えタンパク質である、発明29に記載の方法。
[発明31]
前記組み換えタンパク質は、糖タンパク質である、発明30に記載の方法。
[発明32]
前記糖タンパク質は、Fc含有糖タンパク質である、発明31に記載の方法。
[発明33]
前記糖タンパク質は、抗体薬剤である、発明31または32に記載の方法。
[発明34]
前記抗体薬剤は、モノクローナル抗体である、発明33に記載の方法。
[発明35]
前記モノクローナル抗体は、ウステキヌマブである、発明34に記載の方法。
[発明36]
前記方法は、前記せん断に敏感な細胞の少なくとも一部から前記細胞産物を単離すること、及び/または前記培養培地の少なくとも一部から前記細胞産物を単離することをさらに含む、発明28~35のいずれか1つに記載の方法。
[発明37]
20m/sの率を上回らないようにバイオリアクターシステムの気体流出速度を制御することを含む、せん断に敏感な細胞からなる細胞の集団を培養するための連続培養プロセスであって、
前記バイオリアクターシステムは、少なくとも25Lの培養培地を含み、前記細胞の集団は、20×10
6
細胞/mLから15×10
7
細胞/mLの範囲内の定常状態生細胞濃度を達成する、前記プロセス。
[発明38]
前記バイオリアクターシステムは、15m/s、14m/s、13m/s、12m/s、11m/s、10m/s、9m/s、8m/s以下である気体流出速度を有する、発明37に記載のプロセス。
[発明39]
前記気体流出速度は、少なくとも前記バイオリアクターシステムが定常状態条件に達するまで制御される、発明37または38に記載のプロセス。
[発明40]
前記定常状態条件は、5日間の期間にわたり最大20%変動する生細胞濃度を有することを含む、発明39に記載のプロセス。
[発明41]
前記気体流出速度は、前記培養プロセス全体をとおして制御される、発明37~40のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明42]
前記バイオリアクターシステムは、灌流バイオリアクターシステムである、発明37~41のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明43]
前記灌流バイオリアクターシステムにおいて、前記せん断に敏感な細胞からなる細胞の集団を培養して、前記定常状態生細胞濃度を達成することは、過剰な細胞及び/または非生細胞を排出または除去することを含む、発明42に記載のプロセス。
[発明44]
前記細胞培養培地の溶存二酸化炭素レベルを制御することをさらに含む、発明37~43のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明45]
前記培養培地は、120mmHg、115mmHg、110mmHg、105mmHg、100mmHg、95mmHg、90mmHg、85mmHg、または80mmHg以下であるレベルの溶存二酸化炭素を有する、発明44に記載のプロセス。
[発明46]
(i)前記気体流出速度は、10m/s以下であり、
(ii)前記溶存二酸化炭素レベルは、80mmHg以下である、
発明44または45のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明47]
前記灌流バイオリアクターシステムは、少なくとも50L、少なくとも100L、少なくとも200L、少なくとも500L、少なくとも1,000L、または少なくとも2,000Lの培養培地を含む、発明37~46のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明48]
前記連続培養プロセスは、少なくとも10日間の期間実施される、発明37~47のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明49]
連続培養プロセスは、30から60日間の期間実施される、発明37~48のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明50]
前記プロセスは、前記生細胞濃度を測定することを含む、発明37~49のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明51]
前記測定された生細胞濃度は、少なくとも30×10
6
細胞/mL、少なくとも40×10
6
細胞/mL、または少なくとも50×10
6
細胞/mLである、発明50に記載のプロセス。
[発明52]
前記せん断に敏感な細胞は、哺乳動物細胞である、発明37~51のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明53]
前記せん断に敏感な細胞は、ヒト細胞である、発明37~52のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明54]
前記せん断に敏感な細胞は、HEK293細胞、線維肉腫HT1080細胞、PER.C6細胞、CAP細胞、HKB-11細胞またはHuH-7細胞である、発明37~53のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明55]
前記せん断に敏感な細胞は、ネズミ科動物細胞である、発明37~52のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明56]
前記せん断に敏感な細胞は、マウス骨髄腫細胞株である、発明37~52及び55のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明57]
前記せん断に敏感な細胞は、NS0細胞またはSP 2/0細胞である、発明37~52、52、及び56のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明58]
前記バイオリアクターシステムは、細胞保持デバイスを含む、発明37~57のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明59]
前記細胞保持デバイスは、連続式遠心分離機、交互タンジェンシャルフローフィルター(ATF)、タンジェンシャルフローメンブランフィルター(TFF)、動的フィルター、スピンフィルター、超音波及び誘電泳動セパレーター、または重力沈降器であるか、またはそれらを含む、発明58に記載のプロセス。
[発明60]
前記細胞保持デバイスは、1つ以上のATFであるか、またはそれらを含む、発明58または59に記載のプロセス。
[発明61]
前記バイオリアクターシステムは、バイオリアクタータンクを含み、前記バイオリアクタータンクは、少なくとも50L、100L、200L、500L、1,000L、または2,000Lの容量を有する、発明37~60のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明62]
前記バイオリアクタータンクは、撹拌タンク型バイオリアクターである、発明61に記載のプロセス。
[発明63]
前記バイオリアクターシステムは、スパージャーを含む、発明37~62のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明64]
前記スパージャーは、ドリルホールスパージャーまたはオープンパイプスパージャーである、発明63に記載のプロセス。
[発明65]
前記細胞の集団を培養するための前記連続培養プロセスは、細胞産物を発現する条件下で実施される、発明37~64のいずれか1つに記載のプロセス。
[発明66]
前記細胞産物は、核酸、脂質、ペプチド、及び/またはタンパク質であるか、またはそれらを含む、発明65に記載のプロセス。
[発明67]
前記細胞産物は、組み換えタンパク質である、発明66に記載のプロセス。
[発明68]
前記組み換えタンパク質は、糖タンパク質である、発明67に記載のプロセス。
[発明69]
前記糖タンパク質は、Fc含有糖タンパク質である、発明68に記載のプロセス。
[発明70]
前記糖タンパク質は、抗体薬剤である、発明68または69に記載のプロセス。
[発明71]
前記抗体薬剤は、モノクローナル抗体である、発明70に記載のプロセス。
[発明72]
前記モノクローナル抗体は、ウステキヌマブである、発明71に記載のプロセス。
[発明73]
前記プロセスは、前記せん断に敏感な細胞の少なくとも一部から前記細胞産物を単離すること、及び/または前記培養培地の少なくとも一部から前記細胞産物を単離することをさらに含む、発明65~72のいずれか1つに記載のプロセス。
【配列表】