(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】プラズモン共鳴(PR)システムおよび機器、デジタルマイクロ流体(DMF)カートリッジ、ならびに検体の分析のために局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を使用する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20241015BHJP
G01N 21/41 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
G01N33/543 595
G01N21/41 102
(21)【出願番号】P 2021513264
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 IB2019057540
(87)【国際公開番号】W WO2020049524
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-09-05
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521093303
【氏名又は名称】ニコヤ ライフサイエンシーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NICOYA LIFESCIENCES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】ライアン デノーム
(72)【発明者】
【氏名】アルジュン スダルサン
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0045995(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0097032(US,A1)
【文献】特表2009-534653(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0271366(US,A1)
【文献】特表2017-538917(JP,A)
【文献】特表2009-520188(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192937(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
G01N 21/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の測定を実行するための機器とともに使用するためのカートリッジであって、
デジタルマイクロ流体(DMF)部分であって、前記DMF部分中の流体液滴に対して液滴操作を実行するように動作する複数の液滴アクチュエータを備える
DMF部分と、
前記複数の液滴アクチュエータに関連して配置されたセンサー媒体を備える反応部分と、を備え、
前記センサー媒体は、少なくとも1つの光ファイバーを備える光学部材の末端部分に隣接して配置されており、前記複数の液滴アクチュエータは、前記センサー媒体と
の接触
を維持している間、前記センサー媒体に対する
前記流体液滴の動きを誘発するように
構成されている、
カートリッジ。
【請求項2】
前記複数の液滴アクチュエータは、複数の反応電極を備え、前記複数の反応電極は、エレクトロウェッティングによって液滴操作を実行する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記センサー媒体は、表面プラズモン共鳴(SPR)センサー媒体を備え、前記SPRセンサー媒体は、検体流体の標的分子が結合して前記SPRセンサー媒体の光信号を変化させる捕捉分子で機能化されている、請求項2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記捕捉分子は、前記検体流体の標的分子との結合に対して感度が高く、前記SPRセンサー媒体の光学特性を変化させて前記SPRセンサー媒体の前記光信号の変化をもたらす、SPRセンサー媒体上に固定化されたリガンドを備える、請求項3に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記光学特性の変化は、前記SPRセンサー媒体と相互作用する光から生じる光信号の変化を含む、請求項4に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記反応部分に複数の反応電極に関連して配置されたSPRセンサー表面を備え、前記SPRセンサー媒体は、前記SPRセンサー表面上に配置され、前記液滴は、前記複数の反応電極の操作によって前記SPRセンサー表面と接触して係合可能である、請求項5に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記SPRセンサー媒体は、前記センサー表面上に分布したナノサイズの構造の1つ、またはナノサイズの特徴を備える連続フィルム、を備える、請求項6に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記反応部分は、離間して配置された第1の基板と第2の基板とを備え、それらの間に反応チャンバーを画定する、請求項7に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記SPRセンサー表面は、前記第1の基板に配置され、前記複数の反応電極は、前記第1の基板の反対側の前記第2の基板に配置される、請求項8に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記SPRセンサー表面は、前記第1の基板に配置され、前記複数の反応電極は、前記第1の基板に配置される、請求項8に記載のカートリッジ。
【請求項11】
前記光学部材は、前記第1の基板または前記第2の基板の1つから離れて延在し、前記反応チャンバー内に前記SPRセンサー表面を配置する、請求項8に記載のカートリッジ。
【請求項12】
前記光学部材は、前記光信号が前記SPRセンサー表面から送信される第1の光ファイバーを備え、任意に、前記光学部材は、照明源からの光が前記SPRセンサー表面に提供される第2の光ファイバーを備える、請求項11に記載のカートリッジ。
【請求項13】
前記光学部材は、前記第1の基板に対して移動可能であり、前記SPRセンサー表面が前記反応チャンバー内に配置される伸長位置と前記SPRセンサー表面が反応チャンバー内に配置されていない格納位置との間に前記SPRセンサー表面を配置する、請求項11に記載のカートリッジ。
【請求項14】
前記反応チャンバーは、充填媒体を含有し、前記光学部材は、前記SPRセンサー表面と前記充填媒体との間の接触を低減するために格納可能である、請求項11に記載のカートリッジ。
【請求項15】
前記SPRセンサー表面は、第1の反応電極と第2の反応電極との間に配置される、請求項7に記載のカートリッジ。
【請求項16】
前記第1の反応電極および前記第2の反応電極が交互に活性化され、前記第1の反応電極と前記第2の反応電極との間の液滴の振動を誘発し、前記SPRセンサー表面に対する流体液滴の動きを誘発し、任意に、前記第1の反応電極と前記第2の反応電極との間の前記液滴の振動は線形である、請求項15に記載のカートリッジ。
【請求項17】
前記SPRセンサー表面は3つ以上の反応電極間に配置され、前記3つ以上の反応電極は交互に活性化されて前記3つ以上の反応電極間で前記液滴の振動を誘発し、前記SPRセンサー表面に対する前記流体液滴の動きを誘発し、任意に、前記3つ以上の反応電極間の液滴の振動は円形である、請求項7に記載のカートリッジ。
【請求項18】
前記センサー媒体は、前記反応部分に配置されたセンサー液滴に懸濁された複数のセンサーナノ粒子を備える、請求項5に記載のカートリッジ。
【請求項19】
前記流体液滴は、センサー液滴に同化し、反応液滴中の前記SPRセンサー媒体の前記光信号を測定するための反応液滴を形成する、請求項18に記載のカートリッジ。
【請求項20】
前記複数の液滴アクチュエータによって誘発される動きは、前記反応液滴を混合するように動作する、請求項19に記載のカートリッジ。
【請求項21】
前記複数のセンサーナノ粒子のそれぞれは、磁気応答性である、請求項20に記載のカートリッジ。
【請求項22】
前記複数のセンサーナノ粒子のそれぞれは、前記センサーナノ粒子につながれた磁気応答素子を備え、任意に、前記磁気応答素子は、前記センサーナノ粒子に物理的または化学的に結合されている、請求項21に記載のカートリッジ。
【請求項23】
前記磁気応答性センサーナノ粒子に作用して前記センサーナノ粒子を前記反応部分に固定化して前記複数のナノ粒子を磁石に対する抑制位置に配置するように選択的に動作可能な磁石を備え、任意に、前記複数の液滴アクチュエータは、前記磁気応答性センサーナノ粒子が前記抑制位置で前記磁石によって固定化されるときに前記センサーナノ粒子から流体を遠ざけるように動作し、前記磁気応答性センサーナノ粒子が前記抑制位置にある前記磁石によって固定化されるときに前記センサーナノ粒子と接触するように流体を移動させるように動作する、請求項21に記載のカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願の主題は、2018年9月6日に出願された“PLASMON RESONANCE (PR) SYSTEM AND INSTRUMENT, DIGITAL MICROFLUIDIC (DMF) CARTRIDGE, AND METHODS OF USING LOCALIZED SURFACE PLASMON RESONANCE (LSPR) FOR ANALYSIS OF ANALYTES”と題する米国仮特許出願第62/727,934号と、2019年5月29日に出願された“PLASMON RESONANCE (PR) SYSTEM AND INSTRUMENT, DIGITAL MICROFLUIDIC (DMF) CARTRIDGE, AND METHODS OF USING LOCALIZED SURFACE PLASMON RESONANCE (LSPR) FOR ANALYSIS OF ANALYTES”と題する米国仮特許出願第62/854,103号と、関連しており、それらに基づく優先権を主張し、それらの全体は参照により本明細書に援用される。
(技術分野)
【0002】
現在開示されている主題は、一般に、DNA、タンパク質、薬剤などの分子の検出に関連し、より具体的には、プラズモン共鳴(PR)システムおよび機器、デジタルマイクロ流体(DMF)カートリッジ、ならびに検体の分析のための局在表面プラズモン共鳴(LSPR)および液滴操作を使用する方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
従来のアッセイでは、タンパク質またはDNAアレイに標識された標的生体分子を含有する溶液を注入し、一晩インキュベートし、すすぎ、次に蛍光検出法を使用して「読み出し」する。これは時間がかかるだけでなく、高いサンプル濃度を必要とする。表面プラズモン共鳴(SPR)など、標識のない直接的な検出技術が存在する。しかしながら、これらの手法は感度とスループットが低いため、非常に低濃度の対象検体の検出には適していない。具体的には、SPR技術にはいくつかの欠点がある。たとえば、SPRテクノロジーを使用した免疫測定は、費用がかかり、複雑なマイクロ流体システムと高精度の光学系とが必要になり得、複雑なアッセイが必要となり得る、専門家がほとんどいないニッチな技術である。
【0004】
SPR技術は、例えば、DMFカートリッジに組み込まれ得る。DMFでは、DMFカートリッジ内の液滴操作は、嵩高剤流体(たとえば、シリコーンオイルやヘキサデカン充填流体などの低粘度オイル)で発生し得る。別の例では、DMFカートリッジ内の液滴操作は空気中で起こり得、液滴はその上に薄いオイルコーティング(またはオイルシェル)を有し得る。この技術のさらなる実施形態は、オイルシェルのない空気中での液滴操作を用い得る。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様は、流体の測定を実行するために機器と共に使用するためのカートリッジを含む。カートリッジは、DMF部分中の流体液滴に対して液滴操作を実行するように動作する複数の液滴アクチュエータを備えるデジタルマイクロ流体(DMF)部分と、複数の液滴アクチュエータに関連して配置されるセンサー媒体を備える反応部分とを含み、複数の液滴アクチュエータは、センサー媒体と接触している間、センサー媒体に対する流体液滴の動きを誘発するように動作する。
【0006】
多くの機能の改良と追加機能を第1の態様に適用可能である。これらの機能の改良と追加機能は、個別に、または任意の組み合わせで使用され得る。説明する以下の機能のそれぞれは、第1の態様の他の機能または機能の組み合わせとともに使用され得るが、必須ではない。
【0007】
例えば、一例では、複数の液滴アクチュエータは、反応電極を備え得る。複数の反応電極は、エレクトロウェッティングによって液滴操作を実行し得る。
【0008】
一例では、カートリッジのセンサー媒体は、表面プラズモン共鳴(SPR)センサー媒体を備え得る。SPRセンサー媒体は、検体流体の標的分子が結合してSPRセンサー媒体の光信号を変化させる捕捉分子で機能化され得る。捕捉分子は、検体流体の標的分子との結合に対して感度が高く、SPRセンサー媒体の光学特性を変化させてSPRセンサー媒体の光信号を変化させる、SPRセンサー媒体に固定化されたリガンドを含み得る。光学特性の変化は、SPRセンサー媒体と相互作用する光に起因する光信号の変化であり得る。
【0009】
一例では、カートリッジは、反応部分に配置され、複数の反応電極に関連してSPRセンサー表面を含み得る。SPRセンサー媒体は、SPRセンサー表面上に配置され得、液滴は、複数の反応電極の動作によって、SPRセンサー表面と接触して係合可能であり得る。SPRセンサー媒体は、センサー表面に分布するナノサイズの構造の1つ、またはナノサイズの特徴を備える連続フィルムを含み得る。反応部分は、離間して配置された第1の基板と第2の基板とを含み得、それらの間に反応チャンバーを画定する。SPRセンサー表面は、第1の基板に配置され得、複数の反応電極は、第1の基板の反対側の第2の基板に配置され得る。あるいは、SPRセンサー表面は第1の基板に配置され得、複数の反応電極は第1の基板に配置され得る。
【0010】
一例では、SPRセンサー表面は、少なくとも1つの光ファイバーを備える光学部材の末端部分に隣接して配置され得る。光学部材は、第1または第2の基板の1つから離れて延在し、反応チャンバー内にSPRセンサー表面を配置し得る。この例では、光学部材は、光信号がSPRセンサー表面から送信される第1の光ファイバーを含み得る。光学部材は、照明源からの光がSPRセンサー表面に提供される第2の光ファイバーを含み得る。光学部材は、SPRセンサー表面が反応チャンバー内に配置される伸長位置とSPRセンサー表面が反応チャンバー内に配置されない格納位置との間にSPRセンサー表面を配置するために、第1の基板に対して移動可能であり得る。一例では、反応チャンバーは充填媒体を含有する。光学部材は、SPRセンサー表面と充填媒体との間の接触を減らすために格納可能であり得る。
【0011】
一例では、SPRセンサー表面は、第1の反応電極と第2の反応電極との間に配置され得る。第1の反応電極および第2の反応電極は、交互に活性化されて、第1の反応電極と第2の反応電極との間の液滴の振動を誘発し、SPRセンサー表面に対する流体液滴の動きを誘発し得る。第1の反応電極と第2の反応電極との間の液滴の振動は線形であり得る。あるいは、SPRセンサー表面は、3つ以上の反応電極の間に配置され得る。3つ以上の反応電極を交互に活性化して、3つ以上の反応電極間で液滴の振動を誘発し、SPRセンサー表面に対する流体液滴の動きを誘発し得る。次に、第1の反応電極と第2の反応電極との間の液滴の振動は、円形であり得る。
【0012】
一例では、センサー媒体は、反応部分に配置されたセンサー液滴に懸濁された複数のセンサーナノ粒子を含み得る。流体液滴は、センサー液滴と同化して、反応液滴中のSPRセンサー媒体の光信号を測定するための反応液滴を形成し得る。複数の液滴アクチュエータによって誘発される動きは、反応液滴を混合するように動作し得る。
【0013】
一例では、複数のセンサーナノ粒子のそれぞれが磁気応答性である。例えば、複数のセンサーナノ粒子のそれぞれは、磁気応答性コアを含み得る。あるいは、複数のセンサーナノ粒子のそれぞれは、センサーナノ粒子につながれた磁気応答素子を含み得る。磁気応答素子は、センサーナノ粒子に物理的または化学的に結合し得る。
【0014】
次に、カートリッジはまた、磁気応答性センサーナノ粒子に作用して、センサーナノ粒子を反応部分に固定化して、磁石に対する抑制位置に複数のナノ粒子を配置するように選択的に動作可能な磁石をも含み得る。複数の液滴アクチュエータは、磁気応答性センサーナノ粒子が磁石によって抑制位置に固定化されるときに流体をセンサーナノ粒子から遠ざけるように移動し、磁気応答性センサーナノ粒子が磁石によって抑制位置に固定化されるときに流体をセンサーナノ粒子と接触させるように移動するように動作し得る。
【0015】
一例では、流体液滴の動きは、センサー媒体の光信号を測定する光学システムのサンプリングレートよりも速い速度である。
【0016】
一例では、カートリッジは、複数の液滴アクチュエータに流体を供給するように動作するDMF部分中に複数の液滴操作電極を含み得る。カートリッジは、DMF部分中の流体を受け入れて維持するために、DMF部分中にリザーバ電極を含み得る。液滴操作は、液滴の同化、液滴の分割、液滴の分配、または液滴の希釈のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0017】
一例では、流体液滴は、検体流体液滴を含み得、センサー媒体と接触している間のセンサー媒体に対する検体流体液滴の動きは、センサー媒体に対する検体流体液滴の有効拡散速度であり得る。検体の流体液滴の有効拡散速度は、SPRセンサーに対する検体の結合速度よりも速くなり得る。
【0018】
一例では、カートリッジは、複数の液滴アクチュエータと電気的に通信する電気接点を含む。電気接点は、複数の液滴アクチュエータを制御するためのコントローラとのインターフェースを構成し得る。カートリッジは、電気接点を備えるカートリッジのプラガブルインターフェースを含み得る。プラガブルインターフェースは、機器のコントローラと少なくとも1つの電極との間の電気通信を確立するために、機器と物理的および電気的に係合可能であり得る。
【0019】
一例では、反応部分は、反射モードにおけるセンサー媒体のリアルタイム光学測定を容易にするために、反応部分の少なくとも片側の反応部分に入射する照明源に対して実質的に透明であり得る。あるいは、反応部分は、伝送モードでのセンサー媒体のリアルタイムの光学的測定を容易にするために、反応部分の反対側の反応部分に入射する照明源に対して実質的に透明であり得る。
【0020】
一例では、流体液滴は検体流体液滴であり得、SPRセンサー媒体は、センサー媒体に対する検体流体液滴の移動中に検体流体液滴の検体親和性を検出するように動作可能であり得、検体親和性は検体親和性値(KD)によって特徴付けられ得る。KDは、SPRセンサーでの検体流体の結合段階中に測定されたオンレート(KON)およびSPRセンサーでの検体流体の解離段階中に測定されたオフレート(KOFF)に基づいて決定され得る。
【0021】
本開示の別の態様は、プラズモン共鳴(PR)システムを含む。PRシステムは、第1の態様に関連して論じられた前述の例のいずれかを含む、第1の態様によるカートリッジを含む。このシステムは、カートリッジが係合可能であるPR機器をも含む。PR機器は、複数の液滴アクチュエータを制御するための電気接点と動作可能に通信するコントローラと、センサー媒体の光信号を測定するように動作する光学検出システムとを含む。
【0022】
いくつかの機能の改良と追加機能が第2の態様に適用可能である。これらの機能の改良と追加機能は、個別に、または任意の組み合わせで使用され得る。したがって、説明する以下の機能のそれぞれは、第2の態様の他の機能または機能の組み合わせとともに使用され得るが、必須ではない。
【0023】
一例では、光学検出システムは、センサー媒体に入射する光を向けるように動作する照明源と、センサー媒体の光信号を測定する光学測定デバイスとをさらに備える。
【0024】
第2の態様のPRシステムでは、流体液滴は検体流体液滴であり得、コントローラは、センサー媒体に対して動いている間の検体流体液滴の存在下でのセンサー媒体の光信号に基づいて、検体流体液滴中の標的分子を検出するように動作する。コントローラは、検体流体液滴がセンサー媒体に対して動いている間、センサー媒体の光信号に基づいて、検体流体液滴中の標的分子の結合事象をリアルタイムで測定するように動作し得る。
【0025】
したがって、コントローラは、検体親和性値(KD)を備える検体親和性の定量的測定を決定するように動作し得る。KDは、センサー媒体の会合段階中に測定されたオンレート(KON)およびセンサー媒体の解離段階中に測定されたオフレート(KOFF)に基づいて決定され得る。反応部分の流体液滴は、会合段階中の検体流体液滴であり得、反応部分の流体は、解離段階中の緩衝液流体(例えば、緩衝液流体液滴)であり得る。
【0026】
第3の態様は、検体流体を測定するためのカートリッジの操作方法を含む。この方法は、カートリッジの反応部分中のセンサー媒体を検体の流体液滴と接触させることを含む。この方法はまた、検体の流体液滴をセンサー媒体と接触させたまま、センサー媒体に対する検体の流体液滴の動きを誘発することを含む。誘発は、センサー媒体に対して配置された複数の液滴アクチュエータの動作を含む。この方法はまた、センサー媒体に対する検体の流体液滴の移動中にセンサー媒体で第1の光信号を生成することを含む。
【0027】
いくつかの機能の改良および追加機能が第3の態様に適用可能である。これらの機能の改良および追加機能は、個別に、または任意の組み合わせで使用され得る。したがって、説明する以下の機能のそれぞれは、第3の態様の他の機能または機能の組み合わせとともに使用することができるが、必須ではない。
【0028】
例えば、一例では、第1の光信号は、検体の流体液滴の存在下でのセンサー媒体の会合段階に対応する会合信号であり得る。この方法はまた、会合信号に基づいて検体の流体液滴のオンレート(KON)を決定することを含み得る。KONの決定は、会合曲線を会合信号に適合させることを含み得る。
【0029】
一例では、この方法はまた、検体流体液滴がもはやセンサー媒体と接触して係合しないように、検体流体液滴を反応部分から移動させることをも含む。次に、この方法は、緩衝液流体液滴を反応部分に導入することを含み得る。緩衝液は、センサー媒体と接触して係合し得る。この方法はまた、緩衝流体液滴をセンサー媒体と接触させたままにしながら、センサー媒体に対する緩衝流体液滴の動きを誘発することを含み得る。誘発は、センサー媒体に対して配置された複数の液滴アクチュエータの動作を含み得る。この方法はまた、センサー媒体に対する緩衝流体液滴の移動中にセンサー媒体で第2の光信号を生成することを含み得る。第2の光信号は、緩衝流体液滴の存在下でのセンサー媒体の解離段階に対応する解離信号であり得る。次に、この方法は、解離信号に基づいて検体流体のオフレート(KOFF)を決定することを含み得る。KOFFの決定には、解離曲線を解離信号に適合させることが含まれ得る。一例では、第3の態様の方法は、KONおよびKOFFに基づいて検体親和性値(KD)を計算することを含み得る。
KDはKONとKOFFとの商であり得る。
【0030】
別の例では、センサー媒体は、反応部分に配置された複数のセンサーナノ粒子であり得る。複数のセンサーナノ粒子をセンサー液滴に配置し得る。これに関して、この方法はまた、検体の流体液滴とセンサーとを合流させて、反応液滴中のセンサー媒体の光信号を測定するための反応液滴を形成することをも含み得る。
【0031】
一例では、複数のセンサーナノ粒子のそれぞれが磁気応答性であり得る。次に、この方法は、磁石を活性化して、ナノ粒子を磁石に対する抑制位置に配置して、センサーナノ粒子を反応部分に固定化することを含み得る。ナノ粒子は、反応部分に対して液滴が移動する間、磁石に対する抑制位置に維持され得る。
【0032】
一例では、センサー媒体は、可動部材の末端部分に隣接して配置され得る。この方法は、伸長位置と格納位置との間で反応部分に画定された反応チャンバーに対して可動部材を移動させることを含み得る。センサー媒体は、伸長位置で反応チャンバー内に配置され得、後退位置で反応チャンバーから除去され得る。反応チャンバーは、充填媒体を含み得る。次に、この方法は、可動部材を格納位置に格納すること、格納後に反応部分に流体液滴を導入して複数の液滴アクチュエータに隣接する領域から充填媒体を転置すること、および伸長位置に導入した後に可動部材を前進させてセンサー媒体を流体液滴内に配置することと、を含み得る。
【0033】
一例では、この方法は、カートリッジを機器と係合させることを含む。この方法はまた、流体液滴がセンサー媒体と接触していることを維持しながら、流体液滴がセンサー媒体に対して移動している間にセンサー媒体からの信号を測定することを含み得る。センサー媒体は、SPRセンサー媒体であり得、そして信号は、SPRセンサー媒体の光信号であり得る。次に、この方法は、SPRセンサー媒体に入射する機器の光源からの光を提供することを含み得る。測定は、機器の光学測定デバイスでSPRセンサー媒体の光信号を測定することを含み得る。
【0034】
一例では、この方法はまた、機器のコントローラとDMF部分の複数の液滴アクチュエータとの間の電気通信を確立し、DMF部分の複数の液滴アクチュエータを制御することを含み得る。流体の誘発運動は、DMF部分の複数の液滴アクチュエータの制御に応答し得る。一例では、第1の期間において、流体は緩衝流体液滴であり得、測定は、センサー媒体との接触を維持しながら緩衝流体がセンサー媒体に対して移動するときのベースライン光信号を記録することを含む。この方法はまた、第2の期間に検体の流体液滴を反応部分に導入することを含み得る。測定は、第2の期間における検体流体液滴の会合段階に対応する会合信号を捕捉することを含み得る。センサー媒体に対する検体流体液滴の有効拡散速度は、センサー媒体に対する検体流体液滴の結合速度よりも高くなり得る。この方法は、会合信号に基づいて検体の流体液滴のオンレート(KON)を決定することを含み得る。KONの決定は、会合曲線を会合信号に適合させることを含み得る。
【0035】
さらなる例では、この方法は、検体の流体液滴をセンサー媒体から遠ざけ、第3の期間において緩衝流体液滴を反応部分に導入することを含み得、ここで測定は、第3の期間において検体の解離段階に対応する解離信号を捕捉することを含む。この方法は、解離信号に基づいて検体流体のオフレート(KOFF)を決定することをさらに含み得る。KOFFの決定には、解離曲線を解離信号に適合させることが含まれ得る。この方法は、KONおよびKOFFに基づいて検体親和性値(KD)を計算することを含み得る。KDはKONとKOFFとの商であり得る。
【0036】
この方法はまた、第4の期間において、再生緩衝液流体液滴を反応部分に供給し、再生緩衝液流体液滴をセンサー媒体と接触させてセンサー媒体を再生することを含み得る。この方法は、リガンドを備える機能化流体液滴への接触によってセンサー媒体を機能化し、リガンドをセンサー媒体に結合させることを含み得る。この方法はまた、センサー媒体の機能化の前に、活性化流体液滴をセンサー媒体と接触させることによってセンサー媒体を活性化することを含み得る。
【0037】
この要約は、以下の詳細な説明でさらに説明される簡略化された形式で構想の選択を紹介するために提供されている。この要約は、主張された主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図しておらず、主張された主題の範囲を制限するために使用されることも意図されていない。
【0038】
他の実装態様もまた、本明細書で説明および列挙されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
こうして現在開示されている主題を一般的な用語で説明したため、次に、必ずしも原寸に比例して描かれているわけではない、添付の図面を参照されたい。
【
図1】検体の分析のためのLSPRセンシング機構を含むDMFカートリッジを含む、現在開示されているPRシステムの実施形態のブロック図を示す。
【
図2】
図1に示すPRシステムのDMFカートリッジの一例の斜視図を示す。
【
図3】検体の分析のための現在開示されているDMFカートリッジのLSPRセンサーの実施形態の概略図を示す。
【
図4】検体の分析のための現在開示されているDMFカートリッジのLSPRセンサーの実施形態の概略図を示す。
【
図5A】
図2に示されるDMFカートリッジの実施形態の一部の断面図および液滴操作電極に関連するLSPRセンサーの異なる構成の例を示す。
【
図5B】
図2に示されるDMFカートリッジの実施形態の一部の断面図および液滴操作電極に関連するLSPRセンサーの異なる構成の例を示す。
【
図5C】
図2に示されるDMFカートリッジの実施形態の一部の断面図および液滴操作電極に関連するLSPRセンサーの異なる構成の例を示す。
【
図6】複数の液滴操作電極に関連する単一のLSPRセンサーの例の平面図を示す。これは、現在開示されているPRシステムおよびDMFカートリッジの固定LSPRセンシングの実施形態の一例である。
【
図7】複数の液滴操作電極に関連する単一のLSPRセンサーの例の平面図を示す。これは、現在開示されているPRシステムおよびDMFカートリッジの固定LSPRセンシングの実施形態の一例である。
【
図8】複数の液滴操作電極に関連する複数のLSPRセンサーの実施形態の平面図を示す。これは、現在開示されているPRシステムおよびDMFカートリッジの固定LSPRセンシングの別の例である。
【
図9】複数の液滴操作電極に関連する複数のLSPRセンサーの実施形態の平面図を示す。これは、現在開示されているPRシステムおよびDMFカートリッジの固定LSPRセンシングの別の例である。
【
図10】
図10A~
図10Bは、DMFカートリッジ内の固定LSPRセンシングのために光ファイバープローブおよびLSPRセンサーを使用する実施形態の側面図を示す。
【
図11】
図11A~
図11Bは、DMFカートリッジ内の固定LSPRセンシングのために光ファイバープローブおよびLSPRセンサーを使用する別の実施形態の側面図を示す。
【
図12】
図12A~
図12Bは、DMFカートリッジ内の固定LSPRセンシングのために光ファイバープローブおよびLSPRセンサーを使用するさらに別の実施形態の側面図を示す。
【
図13】
図13Aは、DMFカートリッジの下部基板を通して提供される光ファイバープローブおよびLSPRセンサーの例の側面図を示す。
図13Bは、DMFカートリッジの側面を通しておよび下部基板と上部基板との間に提供される光ファイバープローブおよびLSPRセンサーの例の側面図を示す。
図13Cは、ロボティクスを使用して光ファイバープローブとLSPRセンサーとをDMFカートリッジに出し入れする例の側面図を示す。
図13Dは、ロボティクスを使用して光ファイバープローブとLSPRセンサーとをDMFカートリッジに出し入れする例の側面図を示す。
【
図14A】複数の液滴を処理するための複数のLSPRセンサーのさまざまな配置の例を示す。
【
図14B】複数の液滴を処理するための複数のLSPRセンサーのさまざまな配置の例を示す。
【
図14C】複数の液滴を処理するための複数のLSPRセンサーのさまざまな配置の例を示す。
【
図15】複数の液滴を処理するための複数のLSPRセンサーのさまざまな配置の例を示す。
【
図16】複数の液滴を処理するための複数のLSPRセンサーのさまざまな配置の例を示す。
【
図17】検体の分析のためにDMFカートリッジ、固定LSPRセンシングプロセス、および液滴操作を使用する方法の例のフロー図を示す。
【
図18】検体の分析のためのDMFカートリッジおよびLSPRセンシング機構を含む、現在開示されているPRシステムの光学システムの例のブロック図を示す。
【
図19】DMFカートリッジの一部の側面図および溶液中のLSPRセンシングのプロセスの実施形態を示す。
【
図20】DMFカートリッジの一部の側面図および溶液中のLSPRセンシングのプロセスの実施形態を示す。
【
図21】
図21Aは、現在開示されているPRシステムおよびDMFカートリッジの溶液中LSPRセンシングで使用され得る磁気応答性ナノ粒子の実施形態の側面図を示す。
図21Bは。現在開示されているPRシステムおよびDMFカートリッジの溶液中LSPRセンシングで使用され得る磁気応答性ナノ粒子の実施形態の側面図を示す。
【
図22】液滴操作を使用して磁気応答性ナノ粒子を機能化する溶液中プロセスの実施形態のフロー図を示す。
【
図24】
図24A~
図24Dは、液滴操作が空気中で起こる、DMFカートリッジ内の溶液中LSPRセンシングプロセスの実施形態を示す。
【
図25】
図25A~
図25Dは、油で覆われた液滴を伴う空気中で液滴操作が行われる、DMFカートリッジ内の溶液中LSPRセンシングプロセスの別の実施形態を示す。
【
図26】
図26A~
図26Dは、液滴操作が油(または充填流体)中で起こる、DMFカートリッジにおける溶液中LSPRセンシングプロセスのさらに別の実施形態を示す。
【
図27】検体の分析のためのDMFカートリッジ、溶液中のLSPRセンシングプロセス、および液滴操作を使用する方法の実施形態のフロー図を示す。
【
図28】DMFカートリッジ内の固定LSPRセンシングに関連して伝送モードで動作する光学検出システムの実施形態の側面図を示す。
【
図29】DMFカートリッジ内の固定LSPRセンシングに関連して反射モードで動作する光学検出システムの実施形態の側面図を示す。
【
図30】DMFカートリッジ内の溶液内LSPRセンシングに関連して伝送モードで動作する光学検出システムの実施形態の側面図を示す。
【
図31】DMFカートリッジ内の溶液内LSPRセンシングに関連して反射モードで動作する光学検出システムの実施形態の側面図を示す。
【
図32】光学検出システムと共に使用するための光学的開口部を含むDMFカートリッジの実施形態の側面図を示す。
【
図33】最初にDI水中に1%グリセロールを滴下し、次にDI水中に2%グリセロールを滴下した場合の、SPR応答と時間との関係のプロットの例を示す。
【
図34】カルボキシルゴールド光ファイバーの活性化、プロテインAの結合、エタノールアミンによるブロッキング、およびIgGの結合のピーク位置のプロットの例を示す。
【
図35】DMF機器とOpenSPRとの両方からのプロテインA/IgG実験データのプロットの例であり、感度の向上と分散の減少を示す。
【
図36】結合速度論のDMFプロテインAデータへのフィッティングを示しているプロットの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本開示の主題は、添付の図面を参照して以下でより完全に説明され、本開示の主題のすべてではないがいくつかの実施形態が示されている。同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。現在開示されている主題は、多くの異なる形態で具体化され得、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。代わりに、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。実際、本明細書に記載の現在開示されている主題の多くの修正および他の実施形態は、前述の説明および関連する図面に提示された教示の利益を有する、現在開示されている主題に関係する当業者にとって思い浮かぶものであろう。したがって、現在開示されている主題は、開示されている特定の実施形態に限定されるものではなく、修正および他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。
【0041】
いくつかの実施形態では、本開示の主題は、プラズモン共鳴(PR)システムおよび機器、デジタルマイクロ流体(DMF)カートリッジ、ならびに検体の分析のための局在表面プラズモン共鳴(LSPR)および液滴操作を使用する方法を提供し得る。
【0042】
一実施形態では、PRシステムは、LSPRシステムであり得る。ここで、LSPRシステムは、検体の分析のためのLSPRセンシング機能をさらに含むDMFカートリッジを含む。DMFカートリッジは、一般に、同化、分割、分注、希釈、輸送、およびその他のタイプの液滴操作のためのDMF機能を容易にするために使用され得る。これらのDMF機能の1つの用途は、サンプルの調製であり得る。さらに、DMFカートリッジは、(1)例えば、サンプル中の特定の分子(例えば、標的検体)および/または化学物質の検出、および(2)オンレート情報、オフレート情報、親和性情報、アビディティ、凝集、特異性情報、構造変化、熱力学的パラメータ、および/または調査中の分子に関連する他のデータ/情報を抽出する結合事象のリアルタイム測定などの、検体の分析のためのLSPRセンシング手段を含み得る。この実施形態の別の用途は、薬物と生体分子との間の相互作用を調査すること、またはポリマーの化学的性質を研究することであり得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、DMFカートリッジのLSPRセンシング能力は、液滴操作を使用して実行され得る固定LSPRセンシング操作を含み得る。他の実施形態では、DMFカートリッジのLSPRセンシング能力は、溶液中のLSPRセンシングを含み得、これは、液滴自体において、および液滴操作を使用して起こり得るLSPRセンシングプロセスである。いくつかの実施形態では、DMFカートリッジのLSPRセンシング能力は、複数の液滴を処理するための複数のLSPRセンサーの様々な配置を含み得る。
【0044】
現在開示されているPRシステム、PR機器、DMFカートリッジ、および方法のいくつかの実施形態では、LSPRセンサーでの流体の拡散または流量は、結合速度よりも速くあり得、それにより、LSPRセンシングが結合速度を測定し遅い拡散または流速によって制限されない可能性を高める。DMFカートリッジでは、液滴操作を使用して、例えば、液滴を前後にまたは円運動で振動させて、固定LSPRセンシングプロセスで流を生成し、および/または溶液中のLSPRセンシングプロセスで混合を生成し、それによってLSPRセンサーの表面への分子の流束を増加させる。他の実施形態では、LSPRセンシングプロセスは、例えば、流を生成するため、および/または混合を生成するために、液滴に関してLSPRセンサー自体を振動させることを含み得る。したがって、現在開示されているPRシステム、PR機器、DMFカートリッジ、および方法では、LSPRセンサーでのサンプルの連続的な一方向の流は必要でない場合がある。代わりに、サンプルまたは検体の液滴は、液滴操作を使用してLSPRセンシング素子で迅速に操作され、再循環流を生成し得る。
【0045】
PRシステムのPR機器は、DMFカートリッジ、光学検出システム、およびコントローラを含み得る。光学検出システムは、例えば、LSPRセンシング素子に関連する照明源および光学測定デバイスを含み得る。いくつかの実施形態では、光学検出システムは、伝送モードで動作し得、他の実施形態では、光学検出システムは、反射モードで動作し得る。コントローラは、DMFカートリッジ内の電極を活性化/不活性化することによって液滴操作を制御するために提供され得る。コントローラはまた、PRシステムの全体的な動作を管理し得る。さらに、DMFカートリッジ内の液滴操作を使用して、固定LSPRセンシング操作および/または溶液中LSPRセンシング操作を実行する方法が提供され得る。
【0046】
現在開示されているPRシステム、PR機器、DMFカートリッジ、および方法のいくつかの実施形態では、嵩高剤流体(例えば、シリコーンオイルまたはヘキサデカン充填流体などの油)が存在する場合、および/または油で覆われた液滴が存在する場合、固定LSPRセンシングおよび/または溶液中LSPRセンシングは、LSPRセンシング素子での油汚染を最小限に抑えるように設計され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、現在開示されているPRシステム、PR機器、DMFカートリッジ、および方法は、固定化リガンドを有する検体サンプルのKD値、KON値、および/またはKOFF値を決定するために使用され得、KD値は検体とリガンドとの間の親和性の定量的測定値であり、KON値は結合の動的オンレートを示し、KOFF値は結合の動的オフレートを示す。
【0048】
いくつかの実施形態では、固定LSPRセンサーは、その上に固定化されたナノ構造を有する表面を含み得、ここで、ナノ構造は、リガンドなどの捕捉分子で機能化され得る。次に、標的検体がその中に懸濁されているサンプル液滴は、固定LSPRセンサーと接触し得、標的検体は、固定LSPRセンサーの捕捉分子との結合パートナーであり得る。次に、光学検出システムを使用して、結合プロセスのリアルタイムの速度論的測定値(例えば、会合段階(すなわち、KON値)、解離段階(すなわち、KOFF値)、および検体親和性(すなわち、KD値)を取得し得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、溶液中のLSPRセンシングプロセスは、(1)ナノ構造がその中に懸濁されており、ここでナノ構造はリガンドなどの捕捉分子で機能化されている、LSPR液滴と、(2)標的検体がその中に懸濁されており、ここで標的検体はLSPR液滴中の捕捉分子との結合パートナーであり得るサンプル液滴と、(3)捕捉分子(リガンドなど)と同化した液滴内のターゲット検体との間で結合が発生し得るように、液滴操作を使用して、LSPR液滴をサンプル液滴と同化(および/または混合)させるプロセスと、(4)光学的検出システムを使用して、結合プロセスのリアルタイムの速度論的測定値(例えば、会合段階(すなわち、KON値)、解離段階(すなわち、KOFF値)、および検体親和性(すなわち、KD値)を取得するプロセスと、を含み得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、溶液中のLSPRセンシングプロセスのLSPR液滴に懸濁されたナノ構造は、磁気応答性ナノ構造であり得る。
【0051】
図1は、検体の分析のためのLSPRセンシング機構を含み得るDMFカートリッジを含む、現在開示されているPRシステム100の実施形態のブロック図を示す。したがって、PRシステム100は、LSPRシステムであり得る。ここで、PRシステム100は、検体の分析のためのLSPRセンシング能力をさらに含むDMFカートリッジ110を含む。検体の分析のためのPRシステム100において、分析は、例えば、検体の検出、識別、定量化、または測定、および/または結合速度論などの他の物質との検体の相互作用を意味し得る。例示的な検体には、小分子、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸、原子、イオン、ポリマーなどが含まれ得るが、これらに限定されない。例えば、PRシステム100を使用して、受容体などの高分子へのリガンドの結合動態を測定し得る。
【0052】
DMFカートリッジ110は、一般に、液滴の同化、分割、分注、希釈などを含む流体作動のためのDMF機能を容易にし得る。これらのDMF機能の1つの用途は、サンプルの調製である。ただし、DMF機能は、廃棄物の除去などの他のプロセスに使用され得る。PRシステム100のDMFカートリッジ110は、例えば、使い捨ておよび/または再利用可能なカートリッジとして提供され得る。DMFカートリッジ110の例の詳細は、
図2を参照して以下に示され、説明される。
【0053】
さらに、DMFカートリッジ110は、LSPRセンシング112を含み得る。LSPRセンシング112は、(1)例えば、サンプル中の特定の分子(例えば、標的検体)および/または化学物質を検出するため、および/または(2)オンレート情報、オフレート情報、および/または親和性情報を抽出するリアルタイム結合事象を測定するため、などの検体の分析のために使用され得る。LSPRセンシング112は、例えば、固定LSPRセンシングおよび/または任意の溶液中LSPRセンシングプロセスであり得る。加えて、固定LSPRセンシングおよび溶液中LSPRセンシングは、LSPRセンシング素子での油汚染を最小限に抑えるように設計され得る。固定LSPRセンシングの詳細は、
図5Aから
図18までを参照して以下に示され、説明される。溶液中のLSPRセンシングの詳細は、
図19から
図27までを参照して以下に示され、説明される。
【0054】
本明細書に提示される議論は、SPRセンサー(例えば、特定の実施形態におけるLSPRセンサー)の使用を含み得るが、SPRまたはLSPRセンサーの代わりに、またはそれに加えて、他のセンサーも使用できることが企図される。そのような代替または追加のセンサーオプションには、電子センサー、電気化学センサー、機械的センサー、または他の適切なセンサータイプが含まれ得る。例えば、生体層干渉測定または圧電センサーなどのセンサーを使用し得る。これに関して、サンプル/センサー相互作用について本明細書に記載のDMF性能を使用する検体とセンサーとの間の相互作用は、一般に、任意の適切なセンサーを使用する検体の分析に適用可能であり得る。
【0055】
PRシステム100は、コントローラ150、DMFインターフェース152、照明源154、光学測定デバイス156、および熱制御機構158をさらに含み得る。コントローラ150は、DMFカートリッジ110、照明源154、および光学測定デバイス156などの、PRシステム100の様々なハードウェア構成要素に電気的に結合され得る。特に、コントローラ150は、DMFインターフェース152を介してDMFカートリッジ110に電気的に結合され得、DMFインターフェース152は、例えば、DMFカートリッジ110に機械的および電気的に接続するためのプラガブルインターフェースであり得る。共に、DMFカートリッジ110、コントローラ150、DMFインターフェース152、照明源154、および光学測定デバイス156は、PR機器105を備え得る。
【0056】
コントローラ150は、例えば、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、パーソナルコンピュータ、マイクロプロセッサ、または他のプログラム可能なデータ処理装置であり得る。コントローラ150は、ソフトウェア命令を格納、解釈、および/または実行する、ならびにPRシステム100の全体的な動作を制御するなどの処理機能を提供し得る。ソフトウェア命令は、命令の実行のためにコントローラ150によってアクセス可能である非一時的メモリに格納された機械可読コードを備え得る。コントローラ150は、これらのデバイスのデータおよび/または電力の態様を制御するように構成およびプログラムされ得る。例えば、DMFカートリッジ110に関して、コントローラ150は、電極を活性化/不活性化することによって液滴操作を制御し得る。一般に、コントローラ150は、PRシステム100の任意の機能に使用され得る。例えば、コントローラ150は、プリンタ製造業者がブランドのインクカートリッジをチェックする方法と同様の方法でDMFカートリッジ110を認証するために使用され得、コントローラ150は、DMFカートリッジ110が期限切れになっていないことを確認するために使用され得、コントローラ150は、その目的のために特定のプロトコルを実行することにより、DMFカートリッジ110の清浄度を確認することなどに使用され得る。
【0057】
さらに、いくつかの実施形態では、DMFカートリッジ110は、容量フィードバックセンシングを含み得る。例えば、信号は、液滴の位置、速度、およびサイズを検出し得る静電容量センサーによって生成または検出され得る。さらに、他の実施形態では、静電容量フィードバックセンシングの代わりに、DMFカートリッジ110は、液滴の位置、速度、およびサイズの光学的測定を提供するためのカメラまたは他の光学デバイスを含み得、これは、コントローラ150をトリガーして、適切な位置に液滴を再ルーティングし得る。フィードバックは、液滴の作動速度を最適化し、液滴の操作が正常に完了したことを確認するためのクローズドループ制御システムを作成するために使用され得る。
【0058】
必要に応じて、PR機器105をネットワークに接続し得る。例えば、コントローラ150は、ネットワーク162を介してネットワークコンピュータ160と通信し得る。ネットワークコンピュータ160は、例えば、任意の集中型サーバーまたはクラウドサーバーであり得る。ネットワーク162は、例えば、インターネットに接続するためのローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)であり得る。
【0059】
PRシステム100では、照明源154および光学測定デバイス156は、DMFカートリッジ110のLSPRセンシング112(例えば、固定LSPRセンシングおよび/または溶液中LSPRセンシング)に関して配置され得る。照明源154は、例えば、白色発光ダイオード(LED)、ハロゲン電球、アークランプ、白熱電球、レーザーなどであるがこれらに限定されない、可視範囲(400~800nm)の光源であり得る。照明源154は、白色光源に限定されない。照明源154は、PRシステム100で有用な任意の色光であり得る。光学測定デバイス156を使用して、LSPR光強度の読み取り値を取得し得る。光学測定デバイス156は、例えば、電荷結合デバイス、光検出器、分光計、フォトダイオードアレイ、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。さらに、PRシステム100は、1つの照明源154および1つの光学測定デバイス156のみに限定されない。PRシステム100は、複数のLSPRセンシング素子をサポートするために、複数の照明源154および/または複数の光学測定デバイス156を含み得る。熱制御機構158は、DMFカートリッジ110の動作温度を制御するための任意の機構であり得る。熱制御機構158の例は、ペルチェ素子および抵抗性ヒーターを含み得る。
【0060】
図2は、
図1に示されるPRシステム100のDMFカートリッジ110の一例の斜視図を示す。DMFカートリッジ110は、下部基板116および上部基板118を含み得る。一例では、下部基板116は、ガラス、プラスチック、または熱可塑性エラストマー(TPE)として知られるポリマーのクラスなど、白色光に対して実質的に透明である材料であり得る。別の例では、下部基板116は、実質的に透明であるかまたは光透過を可能にする穴または開口部を含むものであるプリント回路基板(PCB)であり得る。さらに、一組の電気接点138が、下部基板116の一端または両端に提供され得る。電気接点138は、例えば、DMFインターフェース152に、次にコントローラ150に接続するために、使用され得る。下部基板116と同様に、上部基板118は、ガラス、プラスチック、またはTPEなどの白色光に対して実質的に透明な材料で形成され得る。さらに、上部基板118の内面は、酸化インジウムスズ(ITO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、または他の同様の透明導電性コーティングなどの透明導電層でコーティングされ得る。他の実施形態では、DMFカートリッジ110のすべての領域は、実質的に透明な基板および/またはコーティングまたは層を含む必要はない。例えば、基板および/またはコーティングまたは層は、検出領域を除いて、透明、半透明、および/または不透明でなくてもよい。
【0061】
「上部(top)」、「下部(bottom)」、「上方(over)」、「下方(under)」、「中(in)」、および「上(on)」という用語は、DMFカートリッジの上部および下部基板上部の相対位置など、DMFカートリッジの構成要素の相対位置を参照して説明全体で使用される。DMFカートリッジは、空間内でのその向きに関係なく機能することを理解されたい。
【0062】
DMFカートリッジ110において、下部基板116と上部基板118との間のギャップは、反応(またはアッセイ)チャンバー122を画定し得る。例えば、反応(またはアッセイ)チャンバー122は、液滴操作を介して目的の液体、すなわち液体試薬、緩衝液、サンプル液滴などであるがこれらに限定されない液体を処理するために、下部基板116と上部基板118との間に空間を備え得る。したがって、電極構成124は、反応(またはアッセイ)チャンバー122内の下部基板116の上に提供され得る。電極構成124は、例えば、液滴操作電極126(例えば、エレクトロウェッティング電極)およびリザーバ電極128の任意の配置を含み得る。例えば、電極構成124は、任意の数のリザーバ電極128に関連して、液滴操作電極126の任意の線または経路を含み得る。
【0063】
電極構成124は、エレクトロウェッティングを介して液滴操作を実行するために使用され得る。「液滴操作」とは、DMFデバイスまたはカートリッジ上の液滴の操作を意味する。液滴操作は、例えば、DMFデバイスへ液滴を搭載すること;液滴源から1つ以上の液滴を分注すること;液滴を2つ以上の液滴に分滴、分離、または分割すること;液滴をある場所から別の場所に任意の方向に輸送すること;2つ以上の液滴を1つの液滴に同化させまたは組み合わせること;液滴を希釈すること;液滴を混合すること;液滴をかき混ぜること; 液滴を変形させること;液滴を所定の位置に保持すること;液滴をインキュベートすること; 液滴を加熱すること;液滴を気化させること;液滴を冷却すること;液滴を配置すること; 液滴アクチュエータから液滴を輸送すること;本明細書に記載されている他の液滴操作;および/または前述の任意の組み合わせを含み得る。さらに、反応(またはアッセイ)チャンバー122内で発生するプロセスの温度を制御するために、ペルチェヒートポンプなどの温度制御要素(図示せず)を、DMFカートリッジ110と組み合わせて使用することができる。
【0064】
さらに、
図2は、エレクトロウェッティング法を介して(例えば、液滴操作電極126を使用して)液滴を操作するものとしてDMFカートリッジ110を説明しており、これは単なる例示である。他の実施形態では、液滴は、光学的方法、磁気的方法、熱キャピラリー法、表面弾性波法など、およびそれらの任意の組み合わせなどであるがこれらに限定されない他の方法を介して、DMFカートリッジ110内で操作され得る。
【0065】
例として、LSPRセンシング112の例は、液滴操作電極126の線または経路に関して示されている。一例では、
図2の詳細Aを参照すると、LSPRセンシング112は、DMFカートリッジ110の液滴操作ギャップ内またはその近くに、液滴操作電極126に関連して統合されたLSPRセンサー136を含み得る。LSPRセンサー136は、(1)例えば、サンプル中の特定の分子(例えば、標的検体)および/または化学物質を検出するため、および/または(2)オンレート情報、オフレート情報、および/または親和性情報を抽出する結合事象をリアルタイムで測定するためなどの検体の分析のために使用することができる。
【0066】
本明細書に記載されるように、「局在表面プラズモン共鳴(LSPR)」は、ナノ粒子ベースまたはナノ構造ベースのトランスデューサーを使用して、追加標識なくリアルタイムで結合事象を観測することを意味する。例えば、ナノ粒子ベースのトランスデューサーは、様々な寸法で約1nm~約1000nmの金属ナノ粒子を含み得る。例えば、ナノ構造ベースのトランスデューサーは、ナノサイズの特徴(例えば、ナノサイズの出っ張り、柱、穴、隆起、線など)を含む金膜を含み得る。一部のナノ粒子ベースまたはナノ構造ベースの診断アッセイは「標識なし」である。
【0067】
LSPRは、貴金属ナノ粒子に関連する現象であり、鋭いスペクトル吸光度と散乱ピークとを生成し、強力な電磁近接場増強を生成する。これらのスペクトルピークは、吸光度分光法を使用して観測可能である。スペクトルピークは、ナノ粒子表面のすぐ近くでの屈折率の変化に伴って変化する。化学ターゲットが金属ナノ粒子の表面近くに結合すると、局所的な屈折率の変化によりスペクトルピークのシフトが発生する。これは、複雑な培地中の特定のターゲットの濃度を決定するために使用され得る。あるいは、スペクトルのピークシフトは、所与の波長での吸収の変化を通じて検出され得る。
【0068】
LSPRセンサーは、金属ナノ粒子を、たとえば平坦な表面または微細構造の表面を含み得る固体支持体に固定化することによって動作する。ナノ粒子は、抗体であり得る特定の捕捉分子で機能化され得る。対象のサンプルを金属ナノ粒子の上部にわたって流し、対象の標的化学物質をそれぞれの捕捉分子に結合させ、センサーの全体的なスペクトルピークを捕捉分子上の化学標的の濃度に応じてシフトさせる。平面上にナノ粒子を備えたLSPRセンサーは、サンプルを表面上方で縦方向に流すことによって動作する。このシフトを測定するために、反射率または透過吸光度分光法を使用し得る。さらに、「強度または比色法」による分析は、LSPRセンサーを使用して実行され得る。LSPRセンサーの例のより詳細は、
図3および
図4を参照して以下に示され、説明される。
【0069】
図3および
図4は、検体の分析のために現在開示されているDMFカートリッジ110のLSPRセンサー136の実施形態の概略図を示す。一般に、LSPRは、リアルタイムでの標識なしの相互作用分析である。ただし、LSPRを標識とともに使用して、信号を強化することもできる。アッセイの基本構造は、表面に分布する個別のナノ構造の集合など、LSPRを生成する表面を有するガラスまたはプラスチック基板を備え得るセンサーチップ(例えば、LSPRセンサー136)、またはナノサイズの特徴が形成されている。次に、2つの結合パートナーのうちの1つをセンサーの表面に固定化し得る。LSPRにおいて、「リガンド」は、センサーの表面に固定化され得る結合パートナーを指し得る。「検体」は、センサーの表面上のリガンド上方を溶液中で流れるものを指し得る。検体がリガンドに結合すると、センサーの表面の光学特性が変化する。これはリアルタイムで測定可能である。
【0070】
この例では、LSPRセンサー136は、ガラス、プラスチック、またはTPE基板などの実質的に透明または不透明な基板210を含み得る。すなわち、基板210は、伝送モード構成で使用される場合、実質的に透明であり得る。対照的に、基板210は、反射モード構成で使用される場合、不透明であり得る。LSPRセンサー層212は、基板210の上に提供され得る。LSPRセンサー層212は、例えば、LSPR効果を生み出す特定のナノ構造を含有する金膜であり得る。LSPRセンサー層212は、1つ以上の捕捉分子214で機能化し得る。一例では、捕捉分子214は、LSPRセンサー層212の表面に固定化されたリガンドを備え得る。この例では、リガンドは2つの結合パートナーのうちの1つを備え得、他の結合パートナーは標的検体216であり得、ここで、標的検体216は、
図3に示されるように、捕捉分子214上の溶液中において流れる。対照的に、
図4は、捕捉分子214に結合する標的検体216を示している。この結合は、結合事象と呼ばれ得る。
【0071】
ここで再び
図3を参照すると、結合事象が発生する前のLSPRセンサー層212の吸光度ピークを示すプロット218が提供されている。例えば、プロット218は、標的検体216がLSPRセンサー136内の捕捉分子210に結合する前のピーク位置または強度を示している。ここで
図4に示されるように、標的検体216の捕捉分子214への結合によって誘発されるピーク位置または強度の変化は、リアルタイムで観測され得る。例えば、結合前のピーク位置(すなわち、プロット218)を結合後のピーク位置(すなわち、プロット220)と比較することによってである。一般に、LSPRセンサー136において、検体が表面に結合すると、光の共鳴ピークは、リアルタイムで測定可能な、より高い波長にシフトする。
【0072】
ここで再び
図1から
図4を参照すると、現在開示されているPRシステム100、PR機器105、およびDMFカートリッジ110において、LSPRセンシング112(例えば、固定LSPRセンサー136および/または溶液中LSPRセンシング)に関する流体の拡散または流量は、結合速度よりも速い可能性があり、それにより、LSPRセンシング112が結合速度を測定し、遅い拡散または流速によって制限されないことを確実にし得る。DMFカートリッジ110では、液滴操作を使用して、例えば、液滴を前後にまたは円運動で振動させて、LSPRセンサーで流れを生成し、および/または溶液中のLSPRセンシングプロセスで混合を生成し、それによってLSPRセンサーの表面への分子の流束を確保し得る。したがって、現在開示されているPRシステム100、PR機器105、およびDMFカートリッジ110では、LSPRセンサーでのサンプルの連続的な流れは必要でない場合がある。代わりに、サンプル液滴は、液滴操作を使用してLSPRセンサーで迅速に操作され得る。
【0073】
本開示のPRシステム100、PR機器105、およびDMFカートリッジ110において、液滴操作を使用して、液滴をDMF表面上で直線または円形の方法で前後に迅速に移動させることによって、流れを人工的に作り出すことができる。液滴が光学サンプリングレートよりも速く移動する場合、この移動によるアーティファクトは光学測定にほとんどまたはまったく影響を与えないであろう。別の例では、液滴が複数の電極に広がる場合、液滴をセンサー位置から移動させずに運動量を変更して、移動アーティファクトを回避し得る。以下の
図5Aから
図26Dは、LSPRセンサースポットでのサンプルの連続的な流れを使用するのではなく、流れを作り出すために液滴操作を利用し得る、現在開示されているPRシステム100、PR機器105、およびDMFカートリッジ110の固定LSPRセンシングおよび溶液中LSPRセンシングの両方の例を示し、説明する。
【0074】
(DMFでの固定LSPRセンシング)
図5A、
図5B、および
図5Cは、
図2に示されるDMFカートリッジ110の実施形態の一部の断面図を示し、液滴操作電極126に関連するLSPRセンサー136の異なる構成の例を示す。ここで参照する
図5Aは、DMFカートリッジ110の上部基板118におけるLPSR検出スポットの例である。例えば、LSPRセンサー136は、DMFカートリッジ110の上部基板118内におよび液滴操作電極126の任意の配置の反対側に設置され得る。サンプル(または検体)液滴140は、下部基板116上の液滴操作電極126と上部基板118との間のギャップに配置され得、サンプル液滴140は、液滴操作を介して液滴操作電極126に沿って輸送され得る。サンプル液滴140は、任意の標的検体216を含み得る。サンプル液滴140がLSPRセンサー136と接触させられると、PRシステム100の照明源154および光学測定デバイス156は、LSPRセンサー136の捕捉分子214(例えば、リガンド)に対するサンプル液滴140中の標的検体216のリアルタイム動的測定(例えば、会合段階(すなわち、K
ON値)、解離段階(すなわち、K
OFF値)、および検体親和性(すなわち、K
D値))を取得するために使用され得る。
【0075】
ここで参照する
図5Bは、DMFカートリッジ110の下部基板116にあるが、液滴操作電極126とは異なる層または平面にあるLPSR検出スポットの例である。例えば、LSPRセンサー136は、下部基板116内に、および特定の液滴操作電極126の上に設置され得る。
【0076】
ここで参照する
図5Cは、DMFカートリッジ110の下部基板116内であるが、液滴操作電極126と同じ層または平面内にあるLPSR検出スポットの例である。例えば、LSPRセンサー136は、2つの液滴操作電極126の間でおよびそれらを有する線に沿って設置され得る。
【0077】
図5A、
図5B、
図5Cに示される例では、DMFカートリッジ110の下部基板116および/または上部基板118内および/またはその近くに設置された任意のLSPRセンサー136は、LSPRセンシング112の例であり得る。特に、下部基板116および/または上部基板118内および/またはその近くに設置された任意のLSPRセンサー136は、DMFカートリッジ110内の固定LSPRセンシング112の例であり得る。さらに、固定LSPRセンサー136が結合速度を測定し、遅い拡散または流速によって制限されない可能性を高めるのを助けるために、LSPRセンサー136は、例えば、LSPRセンサー136にあるときサンプル液滴140の急速な動きと組み合わせて使用され得、およびこの急速な動きは、液滴操作を介して達成される。
【0078】
図5A、
図5B、
図5Cに示される例では、LSPRセンサー136の位置は、2つの液滴操作電極126間のほぼ境界にあり得る。次に、2つの液滴操作電極126および液滴操作を使用して、サンプル液滴140は、2つの液滴操作電極126間で急速に前後に移動され得、したがって、LSPRセンサー136の表面を横切って急速に前後に移動され得る。さらに、サンプル液滴140は、例えば、光学測定システムのサンプリングレートよりも速い速度で急速に前後に移動され得る。これにより、取得した信号における光学的アーティファクトを減らし得る。一例では、光学サンプリングレートが約4Hz(約250msごと)である場合、サンプル液滴140は、約4Hzよりも速い速度で(液滴操作を介して)2つの液滴操作電極126間を前後に移動し得る。
【0079】
さらに、サンプル液滴140を移動させることは、(1)LSPRセンサー136の表面への分子の流束を増加させるのに役立ち、(2)拡散または流量の制限なしに結合速度がLSPRセンサー136で測定される可能性を改善するのに役立つ。DMFカートリッジでは、液滴操作を使用して、例えば、液滴を前後にまたは円運動で振動させて、LSPRセンサーで流れを生成しおよび/または溶液中のLSPRセンシングプロセスで混合を生成し、それによってLSPRセンサーの表面への分子の流束の増加を助け得る。別の実施形態では、サンプル液滴140は、2つ以上の液滴操作電極126に広がり得る。次に、液滴操作電極126は、バルク液滴がセンサー位置から移動し得るよりも速い速度で作動され得、液体を攪拌し、同様に分子の流束を促進し得る。固定LSPRセンシング112および液滴操作を使用してサンプル液滴のリアルタイムの動的測定値を捕捉するより詳細な例は、
図5Aから
図17を参照して以下に示され、説明される。
【0080】
図6および
図7は、複数の液滴操作電極126に関連する単一のLSPRセンサー136の実施形態の平面図を示し、これは、現在開示されているPRシステム100およびDMFカートリッジ110の固定LSPRセンシング112の一例である。ここで
図6を参照すると、単一のLSPRセンサー136は、2×2構成、例えば、液滴操作電極126A、126B、126C、126Dに配置された4つの液滴操作電極126に関連して設置され得る。例えば、LSPRセンサー136は、液滴操作電極126の2×2構成のほぼ中心に配置され得る。さらに、LSPRセンサー136の面積は、液滴の動きの妨害を最小限にするために、液滴操作電極126のそれぞれの面積と比較して比較的小さい場合があり得る。
【0081】
操作中において、
図7を参照すると、液滴操作電極126のそれぞれは、1つずつ活性化され得る。例えば、液滴操作電極126Aが活性化され、次に液滴操作電極126B、次に液滴操作電極126C、そして次に液滴操作電極126Dが活性化され得る。したがって、標的検体216をその中に含むサンプル液滴140は、(液滴操作を使用して)液滴操作電極126の2×2構成の周りを円形に移動し得る。そうすることで、サンプル液滴140は、(液滴操作を使用して)LSPRセンサー136の表面の周りを円形に移動し得る。この例では、サンプル液滴140の底面積は、液滴操作電極126のそれぞれの底面積(すなわち、面積)とほぼ等しいか、またはそれより大きくてもよい。このようにして、サンプル液滴140は、それがどの液滴操作電極126に配置されているかに関係なく、LSPRセンサー136と接触し得る。この場合も、例えば、光学測定システムのサンプリングレートよりも速い速度でサンプル液滴140を急速に前後に動かすと、(1)LSPRセンサー136の表面への分子の流束が増加し得、(2)遅い拡散または流速の制限なしに、結合速度がLSPRセンサー136で測定されている可能性が増加し得る。電極の動きに関しては、例えば、液滴が単位電極の約2倍の底面積である場合、両方の対角電極を同時に作動させることにより、上下および/または左右の動きが可能である。
【0082】
図8および
図9は、複数の液滴操作電極に関連する複数のLSPRセンサー136の実施形態の平面図を示し、これは、現在開示されているPRシステム100およびDMFカートリッジ110の固定LSPRセンシング112の別の例である。複数の固定LSPRセンサー136のこの構成は、サンプル液滴140の多重測定を可能にし得る。ここで
図8を参照すると、液滴操作電極126の2×2構成、例えば、液滴操作電極126A、126B、126C、126Dが提供され得る。さらに、液滴操作電極126A、126B、126C、126Dのそれぞれは、対応するLSPRセンサー136A、136B、136C、136Dを有し得る。例えば、LSPRセンサー136は、各液滴操作電極126のほぼ中心に配置され得る。この場合も、各LSPRセンサー136の面積は、液滴の動きの妨害を最小限にするために、対応する液滴操作電極126の面積と比較して比較的小さくてもよい。
【0083】
操作中において、ここで
図9を参照すると、液滴操作電極126のそれぞれは、一度に1つずつ活性化され得る。例えば、液滴操作電極126Aが活性化され、次に液滴操作電極126B、次に液滴操作電極126C、そして次に液滴操作電極126Dが活性化され得る。したがって、標的検体216をその中に含むサンプル液滴140は、(液滴操作を使用して)液滴操作電極126の2×2構成の周りを円形に移動し得る。そうすることで、サンプル液滴140は、(液滴操作を使用して)1つのLSPRセンサー136から次のものへ、例えば、LSPRセンサー136A、次にLSPRセンサー136B、次にLSPRセンサー136C、そして次にLSPRセンサー136Dへと、円形に移動し得る。この場合も、例えば、光学測定システムのサンプリングレートよりも速い速度でサンプル液滴140を急速に前後に動かすと、(1)LSPRセンサー136の表面への分子の流束が増加し得、(2)遅い拡散または流速の制限なしに、結合速度がLSPRセンサー136で測定されている可能性が増加し得る。
【0084】
図6から
図9に関して上記で説明した液滴パターンに関して、液滴運動パターンは、円運動パターンのみに限定されない。他の運動パターンも可能である。たとえば、液滴の運動パターンは、X字型またはランダムであり得る。別の例では、液滴をその上に有する特定の液滴操作電極126は、単にパルスオンおよびオフであり得、特定のLSPRセンサー136で液滴を攪拌し得る。
【0085】
図10Aおよび
図10Bは、DMFカートリッジ110内の固定LSPRセンシング112のためにLSPRセンサー136と組み合わせて光ファイバープローブを使用する実施形態の側面図を示す。この例では、LSPRセンサー136は、光ファイバープローブ170の先端に機械的および光学的に結合され得る。光ファイバープローブ170は、LSPRセンサー136が液滴操作電極126(下部基板116上)と上部基板118との間のギャップ内に延在するように、上部基板118を介して設置され得る。一例では、光学測定システムが伝送モードで動作しているとき、光ファイバープローブ170を光学測定デバイス156に結合し得、照明源154は、LSPRセンサー136の反対側に配置され得る。別の例では、光学測定システムが反射モードで動作している場合、光ファイバープローブ170は、実際には少なくとも2つの光ファイバーを含有し得、少なくとも第1のファイバーは照明源154に結合し、少なくとも別のファイバーは光学測定デバイス156に結合する。あるいは、1本のファイバーを照明と読み出しとの両方に使用し得る。他の実施形態では、LSPRセンサー136は、このファイバー(またはファイバー束)上に構築され得る。
【0086】
図10Aおよび
図10Bは、光ファイバープローブ170およびLSPRセンサー136がサンプル液滴140内に突出させ得るように、光ファイバープローブ170にサンプル液滴140を輸送するプロセスの実施形態を示す。この場合も、サンプル液滴140は、液滴操作を介して迅速に移動して、LSPRセンサー136の表面への分子の流束を増加させ得る。例えば、光ファイバープローブ170およびLSPRセンサー136は、
図6、
図7、
図8、
図9に示される固定LSPRセンシング112を参照して、上記で説明された構成で実装され得る。
【0087】
図10Aおよび
図10Bに示されるプロセスにおいて、液滴操作は空気中で起こり得る。例えば、下部基板116と上部基板118との間のギャップは、空気で満たされ得る。しかしながら、他の実施形態では、DMFカートリッジ110内の液滴操作は、空気中で起こり得、液滴は、その上に薄いオイルコーティング(またはオイルシェル)を有し得る。さらに他の実施形態では、DMFカートリッジ110内の液滴操作は、嵩高剤流体(例えば、シリコーンオイルまたはヘキサデカン充填流体などの低粘度油)において起こり得る。例えば、下部基板116と上部基板118との間のギャップは、充填流体で満たされ得る。DMFカートリッジ内に油が存在することの欠点は、LSPRセンシング素子において油汚染のリスクがあり得ることである。しかしながら、PRシステム100では、光ファイバープローブ170およびLSPRセンサー136は、LSPRセンシング素子での油汚染を最小化または完全に排除する機構を提供し得る。
【0088】
例えば、ここで
図11Aおよび
図11Bを参照すると、サンプル液滴140は、その上にオイルシェル(またはコーティング)145を有し得る。サンプル液滴140が光ファイバープローブ170に輸送されるとき、光ファイバープローブ170およびLSPRセンサー136は、オイルシェル145を短時間通過し、次いで、サンプル液滴140の水性部分に突出し得る。LSPRセンサー136の表面は一般に親水性であるため、LSPRセンサー136の表面上に水層が存在する傾向があり、これは油汚染に抵抗し、信頼できる読み取りを促進するのに役立ち得る。さらに、この構成を使用して、LSPRセンサー136が油相にさらされる時間を最小限に抑え得る。
【0089】
さらなる実施形態として、ここで
図12Aおよび
図12Bを参照すると、下部基板116と上部基板118との間のギャップは、充填流体146で満たされ得る。充填流体146は、例えば、シリコーンオイルまたはヘキサデカン充填流体などの低粘度油であり得る。したがって、DMFカートリッジ110内の液滴操作は、油中で起こり得る。この例では、サンプル液滴140が光ファイバープローブ170に輸送されると、光ファイバープローブ170およびLSPRセンサー136は、DMFカートリッジ110の完全な油性環境からサンプル液滴140の完全な水性環境に移行する。この場合も、LSPRセンサー136の表面は一般に親水性であるため、LSPRセンサー136の表面上に水層が存在する傾向があり、これは油汚染に抵抗し、信頼できる読み取りを促進するのに役立つ。
【0090】
別の実施形態では、光ファイバープローブ170およびDMFカートリッジ110は、それらの間の相対的な動きのために配置され得る。例えば、光ファイバープローブ170は、DMFカートリッジ110から選択的に転置されて、光ファイバープローブ170を下部基板116と上部基板118との間から除去し得る(
図13Cおよび
図13Dを参照のこと)。これに関して、下側基板116と上部基板118との間のDMFカートリッジ110内に油環境が存在する間、光ファイバープローブ170をDMFカートリッジ110から取り外し得る。しかしながら、液滴が所定の位置にあり、下部基板116と上部基板118との間に水性環境が存在すると、光ファイバープローブ170は、LSPRセンサー136が液滴によって確立された水性環境に配置され得るような位置に移動され得る。これに関して、LSPRセンサー136の油汚染は、液滴操作中に光ファイバープローブ170を位置から移動させることによって最小限に抑えることができ、その場合、DMFカートリッジ110に対する挿入位置にあるときに光ファイバープローブ170が占める領域に油が存在し得る。しかしながら、液滴が所定の位置にあり、DMFカートリッジ110に対して挿入位置にあるときに光ファイバープローブ170が占める領域が水性環境を含むと、LSPRセンサー136が油接触のほとんどないか全くない状態を経験するように光ファイバープローブ170を挿入し得る。さらに、複数の光ファイバープローブ170のうちの異なるものをこの方法で選択的に導入して、新しいプローブおよび/または異なる種類のセンサーを備えるプローブの使用を可能にし得る。
【0091】
ここで再び
図10Aから
図12Bを参照すると、光ファイバープローブ170およびLSPRセンサー136は交換可能であり得る。例えば、アッセイが完了すると、光ファイバープローブ170およびLSPRセンサー136を取り外し、新しい光ファイバープローブ170およびLSPRセンサー136を、DMFカートリッジ110の上部基板118を通して再挿入し得る。
【0092】
図5Aから
図12Bに示される固定LSPRセンシングプロセスにおいて、サンプル液滴140の検体溶液は、サンプル液滴140における検体の蓄積を回避するために、必要に応じて(液滴操作を介して)緩衝液で置き換え得る。
【0093】
DMFカートリッジ110に関する光ファイバープローブ(例えば、光ファイバープローブ170)の構成は、例えば、
図10Aから
図12Bに示されるものに限定されない。例えば、
図13Aから
図13Dは、DMFカートリッジ110内の固定LSPRセンシングのための光ファイバープローブおよびLSPRセンサーのさらに他の構成の側面図を示す。一例では、
図13Aは、上部基板118を通るかわりに、DMFカートリッジ110の下部基板116を通して挿入された光ファイバープローブ170を示している。別の例では、
図13Bは、LSPRセンサー136を有する光ファイバープローブ170が、DMFカートリッジ110の側面から、上部基板118と下部基板116との間のギャップに挿入されることを示している。この例では、
図10Aから
図12Bに示されるように、光ファイバープローブ170は、上部基板118の平面に垂直ではなく、上部基板118の平面に平行に配向される。光ファイバープローブ170のこの構成の利点は、それがデバイスの流体機能に最小限の外乱のみを提供し得ることである。
【0094】
さらに別の例では、
図13Cおよび
図13Dは、ロボティクス174を使用して、DMFカートリッジ110の下部基板116と上部基板118との間のギャップ内またはギャップから光ファイバープローブ170を移動または後退させることを示している。このようにして、光ファイバープローブ170は移動可能である。移動する光ファイバープローブ170の別の例では、振動作用を光ファイバープローブ170に適用して、混合を助けることができる。
【0095】
さらに別の例では、ロボット工学システム(図示せず)を使用して、LSPRセンサー136を備えた光ファイバープローブ170を、DMFカートリッジ110内の特定の液滴位置に移動させ得る。例えば、ロボット工学システムを使用して、LSPRセンサー136を備えた光ファイバープローブ170を、DMFカートリッジ110の下部基板116および/または上部基板118を通して、および/またはDMFカートリッジ110の側面から、下部基板116と上部基板118との間のギャップに移動させることができる。一般に、光ファイバープローブ170は、例えば、DMFカートリッジ110内で、機械的、電気的および/または磁気的に、異なるサンプルレーンおよび/または場所に移動し得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、DMFカートリッジ110のLSPRセンシング能力は、複数の液滴を処理するための複数のLSPRセンサー136の様々な配置を含み得、その例は
図14A、
図14B、
図14C、
図15、および
図16に示されている。例えば、ここで
図14Aを参照すると、例えば、複数の光ファイバープローブ170およびLSPRセンサー136の配置を含むセンサー構成240が提供され、ここで、異なるLSPRセンサー136の特性(例えば、固定化化学)は、サンプル液滴140が実質的に同じである一方で変化し得る。別の例では、ここで
図14Bを参照すると、例えば、複数の光ファイバープローブ170およびLSPRセンサー136の配置を含むセンサー構成242が提供され、異なるLSPRセンサー136の特性は実質的に同じであるが、サンプル液滴140は異なる。さらに別の例では、
図14Cを参照すると、例えば、複数の光ファイバープローブ170およびLSPRセンサー136の配置を含むセンサー構成244が提供され、異なるLSPRセンサー136の特性は、LSPRセンサー136すべてにまたがる単一のサンプル液滴140を処理するために変化し得る。
【0097】
さらに別の例では、ここで
図15を参照すると、センサー構成246が提供される。センサー構成246は、例えば、DMFカートリッジ110にわたって配置され得る単一の光ファイバー176を含み、光ファイバー176は、複数の検出スポット(例えば、複数のLSPRセンサ136)を含む。一例では、検出スポットは、スペクトル的に分解されるように、各スポットに異なるナノ構造を有することによって分解され得る。別の例では、複数の検出スポット(例えば、複数のLSPRセンサ136)を備えた光ファイバー176は、カメラで上方から画像化され得、次いで、画像処理を使用して空間的に分解され得る。一例では、各検出スポット(例えば、各LSPRセンサ136)は、個別にアドレス指定可能であるように、液滴操作電極126の列に対して整列し得る。さらに、各検出スポット(例えば、各LSPRセンサ136)は、個々の機能化/センシングのために別個の電極トラック上にあり得る。この方法は、多数のLSPRセンサー136を多重化する方法の一例である。この方法はまた、光ファイバーをDMFカートリッジ110と統合するために利用可能な物理的空間によって課せられる特定の制限を克服する。
【0098】
さらに別の例では、ここで
図16を参照すると、センサー構成248が提供される。センサー構成248は、光ファイバー176のU字部分に配置された検出スポット(例えば、LSPRセンサ136)を有するU字型曲げ光ファイバー176を含む。センサー構成248では、反射モード測定を行う代わりに、U字型曲げ光ファイバー176によって伝送モード測定が可能になる。曲げにより、いくつかの有用な光学的効果が可能になり得る。
【0099】
図17は、検体の分析のためにDMFカートリッジ110、固定LSPRセンシングプロセス、および液滴操作を使用する方法300の実施形態のフロー図を示している。例として、方法300は、カルボキシル基(COOH)ベースのDMFカートリッジ110のプロセスを説明している。しかしながら、反応性表面基は、例えば、COOH、ストレプトアビジン、チオール、プロテインA、ニトリロ三酢酸(NTA)などを含み得る。方法300は、以下のステップを含み得るが、これらに限定されない。
【0100】
ステップ310において、DMFカートリッジ110を含むPRシステム100が提供され得、ここで、固定LSPRセンシングプロセス(例えば、固定LSPRセンサー136)は、検体の分析のために使用され得る。
【0101】
ステップ315で、固定LSPRセンサー136は、液滴操作を使用して活性化され得る。例えば、「活性化」は、LSPRセンサー136上のCOOH機能性表面コーティングが活性エステルに変換されるアミンカップリングステップを含み得る。例えば、その中にEDC/NHSを有する活性化緩衝液滴は、液滴操作を使用して、特定の固定LSPRセンサー136に輸送され得る。EDCは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドである。NHSはN-ヒドロキシスクシンイミドである。EDC/NHSをその中に有する活性化緩衝液滴は、一定期間、固定LSPRセンサー136に存在し得る。EDC/NHS溶液は、固定LSPRセンサー136上のCOOH部位と反応し、それらをリガンド上の任意のアミン基に共有結合し得る活性機能基に変える。そうすることで、固定LSPRセンサー136を作動させ得る。
【0102】
ステップ320において、固定LSPRセンサー136は、液滴操作を使用して機能化され得る。例えば、その中にリガンドを有する緩衝液滴は、液滴操作を使用して、特定の固定LSPRセンサー136に輸送され得る。リガンドを有する緩衝液滴は、固定されたLSPRセンサー136に一定期間存在し得る。そうすることで、固定LSPRセンサー136が機能化され得る。
【0103】
ステップ325で、固定LSPRセンサー136は、液滴操作を使用して不活性化され得る。不活性化は、LSPRセンサー136上の残りの任意の活性結合部位を不活性部位に変換するために実行され得る。例えば、エタノールアミンなどの「ブロッキング」溶液を使用して、残っている任意のCOOH部位と反応し、それらを不活性化し得る。例えば、エタノールアミンの液滴は、液滴操作を使用して、特定の固定LSPRセンサー136に輸送され得る。エタノールアミン液滴は、固定されたLSPRセンサー136に一定期間存在し得る。そうすることで、固定LSPRセンサー136は不活性化され得る。
【0104】
ステップ330において、アッセイプロトコルは、DMFカートリッジ110内の液滴操作を使用して、および固定LSPRセンシングプロセスを使用して実行され得る。さらに、センサーの読み取り値はリアルタイムで取得され得る。例えば、照明源154および光学測定デバイス156を使用して、特定の固定LSPRセンサー136からのLSPR信号は、アッセイプロトコルを実行している間にリアルタイムで捕捉され得る。例えば、サンプル液滴(例えば、サンプル液滴140)が液滴操作を使用して特定の固定LSPRセンサー136に輸送され、会合段階の読み取り値が記録され得るアッセイプロトコルが実行され得る。次に、緩衝液滴は、液滴操作を使用して固定LSPRセンサー136に輸送され得、そして解離段階の読み取り値が記録され得る。次に、異なる濃度の検体(通常は前のものの3倍)を、液滴操作を使用して輸送し得、固定LSPRセンサー136および上記を繰り返し得る。これは通常、少なくとも3つの検体濃度に対して実行され、速度論的分析の実行を容易にし得る。一般に、このステップのDMF操作は、分析に必要な希釈を自律的に実行する。
【0105】
ステップ335で、固定LSPRセンサー136からのセンサーデータを処理し得、対象検体のKON値、KOFF値、およびKD値を決定し得る。例えば、PRシステム100のコントローラ150を使用し、固定LSPRセンサー136からのセンサーデータは、結合モデルをデータに適合させ、回帰を使用して、実験データを最もよく表す対象の検体のKON値、KOFF値、およびKD値を見つけることによって処理され得る。これは、例えば、ステップ330で説明された少なくとも3つの検体濃度を含むデータセットを使用して達成し得る。
【0106】
ここで、DMFカートリッジ110における固定LSPRセンシングプロセスを説明する
図5Aから
図17を再び参照すると、固定LSPRセンサー136での液滴の急速な運動は存在しない可能性がある。このケースでは、会合段階データ(つまり、K
ON値)と解離段階データ(つまり、K
OFF値)を取得し得るが、このケースは、検体の親和性データ(つまり、K
D値)を取得するのに役立ち得る。
【0107】
図18は、現在開示されているPRシステム100の光学システム400の例のブロック図を示している。反射モード構成の別の例では、現在開示されているPRシステム100の光学システム400は、照明源および反射光が単一の光ファイバーを共有することを可能にするyカプラーを含有する。例えば、光学システム400は、LED光源410、分光計412、およびYカプラー414を含む。光学システム400はまた、SMAコネクタ418と光ファイバー422を介して光学的に結合された金ナノ粒子(AuNP)チップ420とをさらに含むファイバセンサ416を含む。ファイバセンサ416のAuNPチップ420は、DMFカートリッジ110などのDMFデバイスに関連して提供される。例えば、ファイバセンサ416は、AuNPチップ420を介してDMFカートリッジ110に光学的に結合されている。さらに、ファイバセンサ416は、SMAコネクタ418を介してYカプラー414に光学的に結合されている。
【0108】
光学システム400において、Yカプラー414は、LED光源410(照明源)およびAuNPチップ420からの反射光が単一の光ファイバー422を共有することを可能にする。この例の利点は、照明源(例えば、LED光源410)およびセンサー(例えば、分光計412)が、活性化されたファイバーチップ(例えば、AuNPチップ420)に本質的に位置合わせされることである。例えば、90:10分割を有するYカプラー414は、10%側がLED光源410に接続され、90%側が分光計412に接続された状態で使用することができる。次に、LED光源410は、Yカプラー414を通過して、DMFデバイス内の金ナノ粒子(例えば、AuNPチップ420)を備えたファイバセンサ416に至る。この光はナノ粒子の層で反射し、特定の波長はSPR信号に従って吸収される。次に、反射光は、分析のためにYカプラー414を通過して分光計412に至る。
【0109】
(DMFでの溶液中LSPRセンシング)
「溶液中のLSPRセンシング」は、液滴自体で発生する任意のLSPRセンシングプロセスなど、溶液中で発生する任意のLSPRセンシングプロセスを指し得る。以下、
図19および
図20は、一般的な溶液中のLSPRセンシングプロセスの実施形態を示し、
図21Aから
図27は、溶液中のLSPRセンシングプロセスの特定の実施形態を示している。
【0110】
図19および
図20は、DMFカートリッジ110の実施形態の一部の側面図、および溶液中のLSPRセンシング112の例である一般的な溶液中のLSPRセンシングプロセスの実施形態を示す。この例では、LSPR液滴142は、DMFカートリッジ110に提供され得る。LSPR液滴142は、その中に懸濁された複数のナノ粒子232を含有する水性液滴を備え得る。ナノ粒子232は、
図3および
図4を参照して上記で説明したように、金および/または銀ナノ粒子などの金属ナノ粒子であり得る。ナノ粒子232のそれぞれは、LSPR効果を作り出すために、捕捉分子214(例えば、リガンド)で機能化され得る。LSPRセンサー136において、ナノ粒子232を表面に固定化し得る。しかしながら、ここでは、ナノ粒子232は表面に固定化されていない可能性があり、むしろナノ粒子232は、LSPR液滴142に懸濁するなど、溶液中に懸濁されている可能性がある。
【0111】
図19は、別個のサンプル液滴140と共にLSPR液滴142を示している。この場合も、サンプル液滴140は、その中に懸濁された複数の標的検体216を含有する水性液滴(例えば、検体溶液の液滴)であり得る。この例では、サンプル液滴140内の標的検体216は、LSPR液滴142内のナノ粒子232上の分子214(例えば、リガンド)を捕捉するための結合パートナーを備え得る。ここで
図20を参照すると、この一般的な溶液中LSPRセンシングプロセスにおいて、LSPR液滴142およびサンプル液滴140は、液滴操作を使用して同化および/または混合され得、それによって反応LSPR液滴143を形成する。そうすることで、標的検体216は、ナノ粒子232のLSPR効果のために、ナノ粒子232上の捕捉分子214(図示せず)に結合することができる。
【0112】
一般に、このプロセスでは、ナノ粒子232の表面への分子の流束は、液滴操作を使用して液滴を迅速に混合することによって作成することができる。例えば、液滴操作を使用して、液滴操作電極126の上の急速な円運動(
図7および
図9に示されるような)および/または急速な前後の振動運動(
図5に示されるような)に影響を与えることができる。そうすることで、結合事象は、反応LSPR液滴143において促進され得る。反応LSPR液滴143における検体の結合は、LSPR波長のシフトを引き起こす。したがって、PRシステム100の光学測定システムを使用して、ナノ粒子232上の捕捉分子214(図示せず)に対する標的検体216のリアルタイムの動的測定(例えば、会合段階(すなわち、K
ON値)、解離段階(すなわち、K
OFF値)、および検体親和性(すなわち、K
D値))を取得し得る。
【0113】
図21Aおよび
図21Bは、現在開示されているPRシステム100およびDMFカートリッジ110の溶液中LSPRセンシングプロセスで使用することができる磁気応答性ナノ粒子250の実施形態の側面図を示す。「磁気応答性」とは、磁場に応答することを意味する。「磁気応答性ナノ粒子」は、磁気応答性材料を含むか、または備え得る。磁気応答性材料の例には、例えば、常磁性材料、強磁性材料、フェリ磁性材料、およびメタ磁性材料が含まれる。適切な常磁性材料の例には、鉄、ニッケル、コバルト、ならびにFe
3O
4、BaFe
12O
19、CoO、NiO、Mn
2O
3、Cr
2O
3、およびCoMnPなどの金属酸化物が含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
一例では、ここで
図21Aを参照すると、磁気応答性ナノ粒子250は、磁気応答性コア素子252が埋め込まれたナノ粒子232によって形成され得る。磁気応答性コア素子252は、例えば、磁気応答性粒子であり得る。さらに、磁気応答性ナノ粒子250において、ナノ粒子232は、2つ以上の磁気応答性コア素子252を含み得る。
【0115】
別の例では、ここで
図21Bを参照すると、別個の磁気応答性素子254は、ナノ粒子232につながれて、磁気応答性ナノ粒子250を形成し得る。例えば、磁気応答素子254は、物理的または化学的結合を使用してナノ粒子232に連結される磁気応答性粒子であり得る。一例では、磁気応答素子254は、リンカーを使用してナノ粒子232に結合され得る。さらに、2つ以上の磁気応答素子254をナノ粒子232に結合し得、または2つ以上のナノ粒子232を1つの磁気応答素子に結合し得る。溶液中のLSPRセンシングのために磁気応答性ナノ粒子250を使用する例は、
図19から
図27を参照して以下に示され、説明される。
【0116】
図22は、液滴操作を使用して磁気応答性ナノ粒子250を機能化する溶液中プロセス500の実施形態のフロー図を示す。例として、溶液中プロセス500は、COOHベースのDMFカートリッジ110のプロセスを説明する。しかしながら、反応性表面基は、例えば、COOH、ストレプトアビジン、およびNTAを含み得る。さらに、
図23Aから
図23Fは、溶液中プロセス500の実施形態の特定のステップを図式的に示しており、したがって、
図23Aから
図23Fは、溶液中のプロセス500の特定のステップで参照され得る。溶液中プロセス500は、以下のステップを含み得るが、これらに限定されない。
【0117】
ステップ510において、検体の分析のために液滴操作を使用する溶液中のLSPRセンシングプロセスをサポートするDMFカートリッジ110を含むPRシステム100が提供され得る。
【0118】
ステップ515で、溶液中のプロセスおよび液滴操作を使用して、磁気応答性ナノ粒子250を活性化し得る。例えば、「活性化」は、磁気応答性ナノ粒子250上のCOOH機能性表面コーティングが活性エステルに変換されるアミンカップリングステップを備え得る。例えば、ここで
図23Aを参照すると、ナノ粒子液滴180は、DMFカートリッジ110中に提供され得る。ナノ粒子液滴180は、その上にCOOHコーティングを有する磁気応答性ナノ粒子250含有溶液であり得る。次に、ここで
図23Aを参照すると、活性化緩衝液滴182は、DMFカートリッジ110に提供され得る。活性化緩衝液滴182は、EDC/NHSを含む。次に、ここで
図23Bを参照すると、ナノ粒子液滴180および活性化緩衝液滴182は、液滴操作を使用して組み合わせ得るか、または同化され得る。そうすることで、ナノ粒子液滴180を活性化し得る。例えば、ナノ粒子液滴180と活性化緩衝液滴182とを一定期間同化することにより、ナノ粒子液滴180中の磁気応答性ナノ粒子250を活性化し得る。ナノ粒子液滴180中の磁気応答性ナノ粒子250は、リガンド機能化のために準備された。
【0119】
ステップ520で、溶液中のプロセスおよび液滴操作を使用して、磁気応答性ナノ粒子250を洗浄し得る。例えば、ここで
図23Cを参照すると、磁石(例えば、永久磁石または電磁石である磁石172)を使用して、磁気応答性ナノ粒子250を、特定の液滴操作電極126上のナノ粒子液滴180に固定化し得る。次に、ナノ粒子液滴180は、液滴操作を使用して移送され、磁気応答性ナノ粒子250を液滴操作電極126の頂上に固定化されたままにされ得る。磁気応答性ナノ粒子に関して「固定化」することは、ナノ粒子がDMFカートリッジ内の液滴操作電極の上の位置に実質的に拘束されることを意味し得、その結果、ナノ粒子に対する流体の流れから生じるナノ粒子に作用する力が抑制位置からナノ粒子を取り除くのに不十分である。次に、ここで
図23Cおよび
図23Dを参照すると、緩衝液滴144は、液滴操作を使用して、固定化された磁気応答性ナノ粒子250の部位に輸送され得る。緩衝液滴140は、構造を洗浄するために必要に応じて、固定化された磁気応答性ナノ粒子250上を複数回通過させることができる。
【0120】
ステップ525において、溶液中のプロセスおよび液滴操作は、磁気応答性ナノ粒子250を機能化するために使用され得る。次に、ここで
図23Eを参照すると、磁気応答性ナノ粒子250は、緩衝液滴144に放出され得る。次に、緩衝液滴144は、例えば、リガンド液滴182と組み合わせまたは同化することができ、ここで、リガンド液滴182は、捕捉分子またはリガンド214を備える。そうすることで、LSPR液滴142が形成され得、その中の磁気応答性ナノ粒子250が機能化される。例えば、緩衝液滴144(その中に磁気応答性ナノ粒子250を有する)とリガンド液滴182を一定期間同化することにより、リガンド214は磁気応答性ナノ粒子250に付着し、LSPR液滴142を形成し得る。次に、複数の緩衝液滴を交換することにより、特定の洗浄操作が発生し得る。
【0121】
ステップ530において、溶液中のプロセスおよび液滴操作は、磁気応答性ナノ粒子250を不活性化するために使用され得る。不活性化は、LSPR液滴142内の磁気応答性ナノ粒子250上の残りの活性結合部位を不活性部位に変換するために実行され得る。たとえば、エタノールアミンなどの「ブロッキング」溶液を使用して、残りのCOOH部位と反応し、それらを不活性化し得る。例えば、エタノールアミンの液滴は、LSPR液滴142と組み合わせ得るか、または同化され得る。例えば、LSPR液滴142(その中に磁気応答性ナノ粒子250を有する)とエタノールアミン液滴とを一定期間同化することにより、LSPR液滴142を不活性化し得る。次に、複数の緩衝液滴を交換することにより、特定の洗浄操作が発生し得る。
【0122】
【0123】
ここで
図24Aを参照すると、LSPR液滴142は、DMFカートリッジ110に提供され得る。LSPR液滴142は、例えば、
図22に示される溶液中プロセス500に従って調製され得る。さらに、その中に標的検体216を有するサンプル液滴140を提供し得る。ここで
図24Bを参照すると、LSPR液滴142およびサンプル液滴140は、液滴操作を使用して組み合わせまたは同化され、迅速に混合され得る。例えば、液滴は、液滴操作を使用して急速に混合され、液滴操作電極上での急速な円運動(
図7および
図9に示されるような)および/または急速な前後の振動運動(
図5に示されるような)に影響を与える。そうすることで、結合事象は、LSPR液滴142内の磁気応答性ナノ粒子250で発生し得、これは現在、反応LSPR液滴143と呼ばれる。
【0124】
このプロセスでは、データの枯渇効果(すなわち、表面に結合しているためにバルク相中の検体の濃度が低下する)を回避するために、サンプル液滴140を新しいサンプル液滴140と定期的に交換する必要があり得る。あるいは、交換手順は、液滴またはその内容物のいくつかの測定可能な特性のリアルタイム観測を通じて誘発され得る。例えば、ここで
図24Cを参照すると、これは、磁石を使用して迅速に行うことができ、磁気応答性ナノ粒子250を固定化し、新しい検体液滴(例えば、サンプル液滴140)をもたらす。例えば、磁石172を使用して、磁気応答性ナノ粒子250を、特定の液滴操作電極126上の反応LSPR液滴143に固定化し得る。次に、反応LSPR液滴143は、液滴操作を使用して輸送され得、磁気応答性ナノ粒子250を液滴操作電極126の上に固定化されたままにし得る。ここで、
図24Cおよび
図24Dの両方の図を参照すると、サンプル液滴140は、液滴操作を使用して、固定化された磁気応答性ナノ粒子250の部位に輸送され得る。次に、磁気応答性ナノ粒子250を放出して懸濁液に戻し得る。このプロセス中に、光学測定をリアルタイムで実行して、親和性データと会合段階データとを取得し得る。
【0125】
ここで再び
図24Cおよび
図24Dの両方を参照すると、設定された時間が経過すると、サンプル液滴140が緩衝液滴144と交換され得、光学測定をリアルタイムで行われ、解離段階データが取得され得る。例えば、再び、磁石172を使用して、磁気応答性ナノ粒子250を、特定の液滴操作電極126の上の反応LSPR液滴143に固定化し得る。次に、反応LSPR液滴143は、液滴操作を使用して輸送され得、磁気応答性ナノ粒子250を液滴操作電極126の頂上に固定化されたままにし得る。次に、緩衝液滴144は、液滴操作を使用して、固定化された磁気応答性ナノ粒子250の部位に輸送され得る。次に、磁気応答性ナノ粒子250が放出されて懸濁液に戻され、解離段階が測定され得る。検体が蓄積しないように、複数の緩衝液滴を交換し得る。
【0126】
図25A、
図25B、
図25C、および
図25Dに示されるプロセスは、液滴が油で覆われた液滴(例えば、オイルシェル145を有する液滴)であることを除いて、
図24A、
図24B、
図24C、および
図24Dを参照して上記で説明したプロセスと実質的に同じであり得る。この例では、磁気応答性ナノ粒子250が固定化されると、それらはオイルシェル145を短時間通過し、次に液滴の水性部分に再懸濁される。磁気応答性ナノ粒子250の表面は一般に親水性であるため、磁気応答性ナノ粒子250の表面上に水層が存在する傾向があり、これは油汚染に抵抗し、信頼できる読み取りを促進するのに役立ち得る。さらに、この構成を使用して、磁気応答性ナノ粒子250が油相に曝露される時間を最小限に抑えることができる。
【0127】
さらに、
図26A、
図26B、
図26C、および
図26Dに示されるプロセスは、液滴操作が油(例えば、充填流体146)中で起こり得ることを除いて、
図24A、
図24B、
図24C、および
図24Dを参照して上記で説明したプロセスと実質的に同じであり得る。この例では、磁気応答性ナノ粒子250が固定化されると、それらは、DMFカートリッジ110の完全な油環境から液滴の完全な水性環境に移行する。この場合も、磁気応答性ナノ粒子250の表面は一般に親水性であるため、磁気応答性ナノ粒子250の表面上に水層が存在する傾向があり、これは油汚染に抵抗し、信頼できる読み取りを促進するのに役立つ。
【0128】
さらに、
図23から
図26Dに示されるプロセスにおいて、磁石172(例えば、永久磁石または電磁石)の位置は、下部基板116の近くのみに限定されない。磁石172は、上部基板118の近く、またはDMFカートリッジ110の側面または縁など、他の場所に配置され得る。
【0129】
図27は、DMFカートリッジ110、溶液中LSPRセンシングプロセス、および検体の分析のための液滴操作を使用する方法600の実施形態のフロー図を示す。例として、方法600は、COOHベースのDMFカートリッジ110のためのプロセスを含み得る。しかしながら、反応性表面基は、例えば、COOH、ストレプトアビジン、およびNTAを含み得る。方法600は、
図24A、
図24B、
図24C、および
図24D;
図25A、
図25B、
図25Cおよび
図25D;および
図26A、
図26B、
図26C、および
図26Dに示されるプロセスのそれぞれを反映する。方法600は、以下のステップを含み得るが、これらに限定されない。
【0130】
ステップ610において、検体の分析のために液滴操作を使用する溶液中のLSPRセンシングプロセスをサポートするDMFカートリッジ110を含むPRシステム100が提供され得る。
【0131】
ステップ615で、液滴操作は、溶液中のLSPRセンシングを使用して検体の分析のためにLSPR液滴を準備するために、DMFカートリッジ110において使用され得る。例えば、LSPR液滴142は、
図22を参照して示され、説明される溶液中プロセス500に従って機能化され得る。
【0132】
ステップ620で、方法600は、機能化されたLSPR液滴およびサンプル液滴をDMFカートリッジに提供することによってアッセイプロトコルを開始し、次いで液滴操作を使用してLSPR液滴およびサンプル液滴を組み合わせまたは同化することを含み得る。例えば、ここで
図24Aを参照すると、LSPR液滴142は、DMFカートリッジ110に提供され得る。さらに、その中に標的検体216を有するサンプル液滴140を提供し得る。ここで
図24Bを参照すると、LSPR液滴142およびサンプル液滴140は、液滴操作を使用して組み合わせまたは同化され、迅速に混合され得る。例えば、液滴は、液滴操作を使用して急速に混合され、液滴操作電極上での急速な円運動および/または急速な前後の振動運動に影響を及ぼし得る。そうすることで、結合事象は、LSPR液滴142内の磁気応答性ナノ粒子250で発生し、これは現在、反応LSPR液滴143と呼ばれている。
【0133】
ステップ625において、方法600は、枯渇効果を回避し、親和性データおよび会合段階データを取得するために、サンプル液滴を新しいサンプル液滴と定期的に交換することによってアッセイプロトコルを継続することを含み得る。例えば、ここで
図24Cを参照すると、定期的に(例えば、数秒ごとに)、データの枯渇効果を低減するために、サンプル液滴140を新しいサンプル液滴140と交換する必要があり得る。例えば、磁石172を使用して、磁気応答性ナノ粒子250を、特定の液滴操作電極126上の反応LSPR液滴143に固定化し得る。次に、反応LSPR液滴143は、液滴操作を使用して輸送され、磁気応答性ナノ粒子250を液滴操作電極126の上に固定化されたままにし得る。ここで、
図24Cおよび
図24Dの両方の図を参照すると、サンプル液滴140は、液滴操作を使用して、固定化された磁気応答性ナノ粒子250の部位に輸送され得る。次に、磁気応答性ナノ粒子250を放出して懸濁液に戻し得る。このプロセス中に、光学測定をリアルタイムで実行して、親和性データおよび会合段階データを取得し得る。
【0134】
ステップ630において、方法600は、サンプル液滴を緩衝液滴と定期的に交換することによってアッセイプロトコルを継続し、解離段階データを捕捉し得る。例えば、ここで
図24Cおよび
図24Dを参照すると、所与の時間が経過するかまたは信号を観測して液体を交換する時期を決定すると、サンプル液滴140を緩衝液滴144と交換し得、光学的測定をリアルタイムで行って解離段階データを取得し得る。例えば、再び、磁石172を使用して、磁気応答性ナノ粒子250を、特定の液滴操作電極126の上の反応LSPR液滴143に固定化し得る。次に、反応LSPR液滴143は、液滴操作を使用して移送され、磁気応答性ナノ粒子250を液滴操作電極126の上に固定化されたままにし得る。次に、緩衝液滴144は、液滴操作を使用して、固定化された磁気応答性ナノ粒子250の部位に輸送され得る。次に、磁気応答性ナノ粒子250を放出して懸濁液に戻し得る。この場合も、緩衝液滴140は、構造を洗浄するために必要に応じて、固定化された磁気応答性ナノ粒子250上を複数回通過させることができる。
【0135】
ステップ635において、方法600は、サンプル液滴140において異なる濃度の検体(通常、以前のものの3倍)を使用して、ステップ620、625、および630を繰り返すことによって、アッセイプロトコルを継続し得る。これは通常、速度論的分析を実行するために使用し得る少なくとも3つの検体濃度に対して行われる。
【0136】
ステップ640において、溶液中のLSPRセンシングプロセスのLSPR液滴142からのセンサーデータが処理され得、そしてKON値、KOFF値、KD値、および/または対象の検体の親和性が決定される。例えば、PRシステム100のコントローラ150を使用して、LSPR液滴142からのセンサーデータは、結合モデルをデータに適合させ、回帰を使用して、実験データを最もよく表す対象検体の分析のKON値、KOFF値、KD値、および/または親和性を見つけることによって処理され得る。これは、例えば、ステップ635に記載された少なくとも3つの検体濃度を含むデータセットを使用して達成することができる。
【0137】
検体の分析のために溶液中のLSPRセンシングプロセスおよび液滴操作を使用する方法600の特徴は、PRシステム100およびDMFカートリッジ110を使用して多数(例えば、数百)の液滴を同時に処理できるという事実を含み得る。加えて、DMFカートリッジ110内の溶液中LSPRセンシングプロセスは、複数の検体および/または濃度に対して高い一貫性で容易に試験することを可能にし得る。
図22の溶液中プロセス500に従って機能化されたLSPR液滴142は複数の液滴に分割され得、別々に処理することができるためである。
【0138】
さらに、
図22の溶液中プロセス500の別の特徴および
図27の方法600は、液滴の化学的調製が
図22の溶液中プロセス500を使用して行われ得、次に
図27の方法600を使用して磁気応答性ナノ粒子250が固定化されている間に動的測定が実行され得るものであり得る。
【0139】
さらに、
図22の溶液中プロセス500の別の特徴および
図27の方法600は、さまざまな分析において、検体/活性化の変更のみでまったく同じデバイスを使用し得るものであり得る。
【0140】
さらに、
図22の溶液中プロセス500の別の特徴および
図27の方法600は、この設計により、特定の検体の固定化化学の自律的な最適化が容易になり得る。
【0141】
さらに、
図22の溶液中プロセス500の別の特徴および
図27の方法600は、液滴中のナノ粒子250を容易に洗浄できることであり得る。これは、DMFカートリッジ110内のナノ構造上で直接行われるべき表面化学およびリガンドの固定化を容易にし得る。この特徴により、血液などの複雑なサンプルを処理し得る。
【0142】
ここで再びDMFカートリッジ110における溶液中のLSPRセンシングプロセスを説明する
図19から
図27を参照すると、液滴の急速な運動が存在しない可能性がある。このケースでは、会合段階データ(つまり、K
ON値)と解離段階データ(つまり、K
OFF値)を取得しなくともよいが、このケースは、検体の親和性データ(つまり、K
D値)を取得するのに役立ち得る。加えて、K
ONとK
OFFとは、拡散をモデル化する追加の方程式を介して推測され得る。
【0143】
再び
図1から
図27を参照すると、PRシステム100の光学測定システムの様々な構成を使用し得る。例えば、
図28から
図32は、光学測定システムの異なる構成の例を示している。例えば、
図28は、DMFカートリッジ110内の固定LSPRセンサー136に関連して伝送モードで動作するように構成された照明源154および光学測定デバイス156を示す。この例では、下部基板116、上部基板118、および液滴操作電極126は、実質的に光学的に透明であるか、またはセンシング領域内に光学的に透明なウィンドウを含有し得る。
【0144】
図29は、DMFカートリッジ110内の固定LSPRセンサー136に関して反射モードで動作するように構成された照明源154および光学測定デバイス156を示す。反射モードで動作するとき、DMFカートリッジ110は、DMFカートリッジ110の所与の側からの光学的観察を可能にするように構成され得る。これに関して、光学測定システムが配置されているDMFカートリッジ110の側面に応じて、上部基板118または下部基板116のいずれかが、光学的に透明であるか、または光学的に透明なウィンドウを含有し得る。具体的には、光学測定システムに隣接する基板の部分は、光学的に透明であり得る、そして反対側は、反射モードで操作されるとき、光学的に透明でなくともよい。したがって、
図29に示される実施形態では、上部基板118は、実質的に光学的に透明であり得るが、下部基板116(図示せず)および液滴操作電極126は、実質的に光学的に透明ではなくともよい。
【0145】
図30は、DMFカートリッジ110内の溶液内LSPRセンシングプロセスに関連して伝送モードで動作するように構成された照明源154および光学測定デバイス156を示す。この例では、下部基板116、上部基板118、および液滴操作電極126は、実質的に光学的に透明である。
【0146】
図31は、DMFカートリッジ110内の溶液内LSPRセンシングプロセスに関連して反射モードで動作するように構成された照明源154および光学測定デバイス156を示す。上記のように、反射モードで動作するとき、光学測定デバイス156に隣接する基板は、光学的に透明であり得るが、光学測定デバイス156の反対側は、光学的に透明ではなくてもよい。
図31に示す実施形態では、上部基板118は、実質的に光学的に透明であり得るが、下部基板116(図示せず)および液滴操作電極126は、実質的に光学的に透明であり得る。
【0147】
図32は、照明源154および/または光学測定デバイス156に関連して光学開口部148を含み得るDMFカートリッジ110の例を示す。この例では、光学開口部148は、液滴操作電極126の1つにあり得、液滴操作電極126は、実質的に光学的に透明ではなくてもよい。
【実施例】
【0148】
図33は、最初にDI水中の1%グリセロールの液滴についての、続いてDI水中の2%グリセロールの液滴についてのSPR応答対時間のプロット700の例を示す。例えば、プロット700は、SPR応答曲線710を示している。プロット700においては、COOH機能基を有するファイバーチップ上のLSPRセンサーが、最初に脱イオン水(0-33s)、脱イオン水中の1%グリセロール(33s-66s)、脱イオン水(66s-103s)、2%グリセロール(103s-140s)そして最後に再び脱イオン水にさらされた。実験は油環境で実施した。
【0149】
この実験は以下の2つの点を証明する。(1)光ファイバーの先端にLSPR活性金ナノ粒子があることである。センサーは、水から1%および2%の両方のグリセロールへの屈折率シフトを検出し得る。さらに、1%と2%との間の信号の差は、予想どおり線形である。(2)油環境(2%グリセロールの30倍超の屈折率シフト)が測定に干渉しないことである。
【0150】
以前は、一般的に親水性のLSPRセンサーが、油環境からセンサーを保護する水層を保持していることが指摘されていた。各溶液交換の間に油性媒体に2秒間曝露したにもかかわらず、この曝露の影響はデータに記載されていない。これは、保持された水層内にあるLSPRセンサーの相互作用距離が短いためである。
【0151】
リガンドによるLSPR光ファイバーの活性化のための構想実証実験が行われた。この原理実証実験では、ファイバー上のCOOH表面LSPRセンサーがDMFデバイスに埋め込まれ、リガンド固定化手順が実行された。以下に説明するこのプロセスは、EDC+NHSを有するCOOH表面の活性化、このセンサー表面へのプロテインAの付着、未反応の表面部位を不動態化するためのエタノールアミンの導入、最後にプロテインAに結合して検証するヒトIgGを導入してリガンドを固定化することで構成された。
【0152】
この実験では、先端にCOOH表面のLSPRセンサーを備えた光ファイバーを側面からDMFデバイスに挿入した。次に、DMFデバイスはコマンドを実行して、ファイバーチップを次のサンプルにさらした。各ステップは、特に明記されていない限り、議題となっている化学物質600nLを分注し、その量をファイバーチップに移動することで構成された。曝露時間中、デバイスは4Hzの速度で液体を振動させた。次の手順を実行した。
(1)10分間のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)でセンサー表面を調整する、
(2)2分間の10mM塩酸(HCl)でセンサー表面を洗浄する、
(3)5分間のPBS、
(4)DMFデバイスで300nLのEDCと300nLのNHSとを分注し、成果物を混合し、センサーを混合物に5分間さらす、
(5)3.5分間のPBS、
(6)5分間の20μg/mLプロテインA、
(7)2分間のPBSで過剰なプロテインAを洗い流す、
(8)5分間のエタノールアミンで未反応の結合部位をブロックする、
(9)6分間のPBS、
(10)プロテインA結合を検証するための100nMヒトIgGへの5分間の曝露、
(11)8分間のPBS。
【0153】
この実験の結果を
図34に示す。カルボキシル-ゴールド光ファイバーの活性化、プロテインAの結合、エタノールアミンによるブロッキング、およびIgGの結合のピーク位置のプロット800である。プロット800は、各液滴交換が従来の結合曲線を示す結合ステップ(タンパク質A、エタノールアミン、IgG)で予想通りに動作する曲線810を示している。これにより、SPRサンプルの混合と分析とを自動化する方法としてプラットフォームが検証される。
【0154】
LSPR光ファイバーをリガンドで活性化するための別の構想実証実験を実施した。この原理実証実験では、プロテインAで活性化されたLSPRセンサーがDMFデバイスに挿入され、再生ステップを間に挟んで一連の濃度の検体に導入された。これにより、検体の結合速度を決定可能である。
【0155】
この実験では、プロテインAで活性化されたLSPRセンサーを先端に備えた光ファイバーを側面からDMFデバイスに挿入した。次に、DMFデバイスはコマンドを実行して、ファイバーチップを次のサンプルにさらした。この実験では、各ステップは10Hzで振動した600nLのサンプルで構成された。次の手順を実行した。
(1)10分間のPBSでセンサー表面を調整する、
(2)2.5分間の11nMヒトIgG検体、
(3)12.5分間のPBSで放出動態を測定する、
(4)2.5分間のpH2.0グリシン/HClで表面を再生する、
(5)2.5分間の33nMIgGヒトIgG検体、
(6)12.5分間のPBSで放出動態を測定する、
(7)2.5分間のpH2.0グリシン/HClで表面を再生する、
(8)2.5分間の100nM IgGヒトIgG検体、
(9)12.5分間のPBSで放出動態を測定する。
【0156】
この実験の結果を
図35および
図36に示す。ここで
図35を参照すると、DMF機器およびOpenSPRの両方からのプロテインA/IgG実験データのプロット900が示されており、感度の改善および分散の減少を示している。この試験の結果は、速度論的分析のために、標準的な分析ソフトウェアであるTracedrawerにインポートされた(
図35のプロット900を参照)。これは優れた適合パラメータを示し、1.36x10
5M
-1s
-1の測定された会合定数(K
ON)、1.17x10
-4s
-1の測定された解離定数(K
OFF)および従来の装置で実行された同じアッセイに基づいて予想される0.86nMの測定された検体親和性(K
D)をもたらした。
【0157】
ここで
図36を参照すると、DMFプロテインAデータへの結合速度論のフィッティングを示すプロット1000である。
図36のプロット1000は、DMFベースのテストの結果を、より従来型のフローセル流体システムを使用するOpenSPR分析デバイスと比較している。比較すると、DMFデバイスは、より高い感度と大幅に低減された分散を示す。分散とは、従来のフローセルベースのSPR分析中に、緩衝液とサンプルとの界面全体に信号が分散することを指す。サンプルがセンサー表面との間を行き来するとき、サンプルは通常、サンプルが拡散する界面である緩衝液に隣接する。これにより、サンプルの前縁と後縁とに、信号において明らかな傾斜した濃度勾配が生じる。DMFデバイスでは、サンプル量が少なく、緩衝液前面に曝露されることなくサンプル液滴を交換できるため、分散は測定されない。この分散の欠如により、非結合参照シグナルの変化がないため、より高速な結合化学のより正確な分析と改善された動的フィッティング精度が可能になる。
【0158】
長年の特許法条約に従い、「a」、「an」、および「the」という用語は、特許請求の範囲を含め、本出願で使用される場合、「1つまたは複数」を指す。したがって、例えば、「主題」への言及は、文脈が明らかに反対でない限り(例えば、複数の主題)、複数の主題を含む。
【0159】
本明細書および特許請求の範囲を通じて、「備える(comprise)」、「備える(comprises)」、および「備える(comprising)」という用語は、文脈上別段の必要がある場合を除き、非排他的な意味で使用される。同様に、「含む(include)」という用語およびその文法上の変形は、リスト内のアイテムの列挙が、リストされたアイテムに置換または追加できる他の同様のアイテムを除外しないように、非限定的であることを意図している。
【0160】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的のために、特に明記しない限り、明細書および特許請求の範囲で使用される、量、サイズ、寸法、比率、形状、配合、パラメータ、パーセンテージ、数量、特性、および他の数値を表すすべての数値は、「約(about)」という用語が値、量、または範囲で明示的に表示されない場合でも、「約(about)」という用語によってすべての場合に変更されると理解される。したがって、反対に示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、正確でなく、正確である必要はないが、公差、換算係数、四捨五入、測定誤差など、本開示の主題によって得られることが求められる所望の特性に応じて当業者に知られている他の要因を反映して、必要に応じておおよその値および/または大きくまたは小さくてもよい。例えば、値を指すときの「約」という用語は、いくつかの実施形態では特定の量から±100%、いくつかの実施形態では±50%、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、およびいくつかの実施形態では±0.1%の変動を包含することを意味し得、そのような変形は、開示された方法を実行するため、または開示された組成物を使用するために適切である。
【0161】
さらに、「約」という用語は、1つ以上の数値または数値範囲に関連して使用される場合、範囲内のすべての数値を含むそのようなすべての数値を指し、記載されている数値の上下の境界を拡張することによってその範囲を変更することを理解すべきである。終端による数値範囲の列挙には、その範囲内に含まれるすべての数値、たとえば、その小数を含む整数が含まれ(たとえば、1~5の列挙には、1、2、3、4、5、およびその小数、例えば、1.5、2.25、3.75、4.1など)、およびその範囲内の任意の範囲が含まれる。
【0162】
前述の主題は、理解を明確にするために図示および例としていくらか詳細に説明されてきたが、特定の変更および修正は、添付の特許請求の範囲内で実施できることが当業者には理解されたい。