(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】手動工作機械のための駆動モータを含むシステム
(51)【国際特許分類】
H02K 1/28 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
H02K1/28 C
(21)【出願番号】P 2021529463
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2020062049
(87)【国際公開番号】W WO2020221866
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】102019111332.6
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518361790
【氏名又は名称】フェスツール ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ビルデ、イェルク
(72)【発明者】
【氏名】スタルク、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シェーン、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン、トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ゴース、フロリアン
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-032405(JP,A)
【文献】実開昭48-106403(JP,U)
【文献】実開昭49-061001(JP,U)
【文献】実開昭53-127104(JP,U)
【文献】特開2002-330565(JP,A)
【文献】特開2015-159647(JP,A)
【文献】特開2018-125976(JP,A)
【文献】特開平11-027987(JP,A)
【文献】特開昭59-226630(JP,A)
【文献】特開2003-324889(JP,A)
【文献】特開昭55-088540(JP,A)
【文献】特開2015-201989(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0026874(US,A1)
【文献】特開2011-176931(JP,A)
【文献】実開平04-072847(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
H02K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の駆動モータ(120)と第2の駆動モータ(20)とを含む、モータモジュールの方式のシステムであって、それぞれの駆動モータ(20,120)は吸引器具(400)のために、または手動工作機械(200,300)もしくは半定置式の工作機械の形態の工作機械のために意図され、または、吸引器具(400)もしくは工作機械の構成要素を形成し、前記駆動モータ(20,120)は、励起コイル構造(86)を有するステータ(80)と、軸受構造(24A)により回転軸(D)を中心として回転可能に前記ステータに、または前記ステータ(80)に関して支承され、それぞれのモータシャフト(30,130)の保持区域(33)に保持された積層薄板(41,141)のシャフト通過開口部(42,142)を貫通するモータシャフト(30,130)を有するロータ(40,140)とをそれぞれ有する、システムにおいて、前記駆動モータ(20,120)の前記モータシャフト(30,130)の前記保持区域(33)が前記積層薄板(41,141)の領域で同一の外側円周形状を有し、前記第1の駆動モータ(120)の前記積層薄板(141)は該積層薄板(141)を担持する前記モータシャフト(30,130)の前記保持区域(33)の外側円周に直接的に支持され、前記第2の駆動モータ(20)の前記積層薄板(41)は電気絶縁性の絶縁体(60A)を介して、該積層薄板(41)を担持する前記モータシャフト(30,130)の前記保持区域(33)に支持されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記第1の駆動モータ(120)は第1の動作電圧(P2)のために、60Vを下回る動作電圧のために構成され、前記第2の駆動モータ(20)は第2の動作電圧(P1)のために、60Vを上回る動作電圧のために構成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の駆動モータ(120)は、蓄電池パックなどの電気的なエネルギー蓄積器を用いた動作のために構成され、前記第2の駆動モータ(20)は、電気的な交流電圧電源を用いた電源動作のために構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の駆動モータ(120)および前記第2の駆動モータ(20)の前記ステータ(80)が、前記ステータ(80)の積層薄板(81)が、同一の外側円周形状を有することを特徴とする、請求項1から3のうちいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の駆動モータ(120)および前記第2の駆動モータ(20)の前記ステータ(80)が、前記ステータ(80)の同一の支持体(90)に配置される同一の積層薄板(81)を有することを特徴とする、請求項1から4のうちいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の駆動モータ(120)と前記第2の駆動モータ(20)は、励起コイル(87,87B)がそれぞれ異なる巻回数および/またはそれぞれ異なる導体断面を有する、それぞれ異なる励起コイル構造(86,86B)を有し、前記第1の駆動モータ(120)は第1の動作電圧で作動可能であり、前記第2の駆動モータ(20)は前記第1の動作電圧とは相違する第2の動作電圧で作動可能であることを特徴とする、請求項1から5のうちいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の駆動モータ(120)および前記第2の駆動モータ(20)の前記ステータ(80)は回転軸(D)に関して互いに反対を向くほうの長手方向端部領域で、それぞれ異なる前記励起コイル構造(86)の励起コイル(87)を収容するための支持突起の同一の配置を有することを特徴とする、請求項1から6のうちいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の駆動モータ(120)および前記第2の駆動モータ(20)の前記ステータ(80)は、接続導線(15)の接続のために意図される接続装置(100)を差し込むための少なくとも1つの差込収容部(96)を有し、前記接続装置は前記差込収容部(96)に収容された状態にあるとき、前記励起コイル構造(86)の励起コイル(87)の少なくとも1つのコイル導体(88)と前記接続導線(15)が電気的に結合されることを特徴とする、請求項1から7のうちいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記駆動モータ(20,120)の前記モータシャフト(30,130)は互いに反対を向いているそれぞれの前記ステータ(80)の長手方向端部領域で前記軸受構造(24A)の第1の軸受(24)および第2の軸受(25)に回転可能に支承され、前記第1の軸受(24)および前記第2の軸受(25)の領域における両方の前記駆動モータ(20,120)の前記ステータ(80)は、および/またはそれぞれの前記ステータ(80)に配置されて前記第1または前記第2の軸受(24,25)を担持する少なくとも1つの軸受カバーは、幾何学的に同一であることを特徴とする、請求項1から8のうちいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記絶縁体(60A)は前記シャフト通過開口部(42,142)の領域で少なくとも2mmの壁厚を有することを特徴とする、請求項1から9のうちいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記絶縁体(60A)は前記積層薄板(41,141)の端面の前に突出する少なくとも1つの絶縁区域(76)を有することを特徴とする、請求項1から10のうちいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記絶縁区域(76)により少なくとも5mmの絶縁距離が前記積層薄板(41,141)と前記モータシャフト(30,130)との間で形成されることを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記絶縁区域(76)は、差込軸に関して前記絶縁区域(76)の隣に配置された、前記積層薄板(41,141)の前記シャフト通過開口部(42,142)に収容されている絶縁スリーブ(60)の区域から、回転軸(D)に関して径方向外側に向かって突出するのではない管状区域(63)を含み、または該管状区域(63)によって構成されることを特徴とする、請求項11または12に記載のシステム。
【請求項14】
前記絶縁区域(76)は、前記積層薄板(41,141)に収容されている前記絶縁体(60A)の管状区域(63)から回転軸(D)に関して径方向外側に向かって突出する、環状のフランジ体(68)を含むことを特徴とする、請求項11から13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記絶縁体(60A)は絶縁スリーブ(60)を有し、該絶縁スリーブは前記シャフト通過開口部(42,142)に差し込まれ、前記モータシャフト(30,130)と前記積層薄板(41,141)との間に配置され、差込開口部(64A)を備えた差込収容部を有し、該差込開口部を通して前記モータシャフト(30,130)が差込軸に沿って前記差込収容部へ差し込まれることを特徴とする、請求項1から14のうちいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記絶縁体(60A)は、差込軸に関して前記積層薄板(41,141)の全面的な長さにわたって延び、および/または前記積層薄板(41,141)は前記絶縁スリーブ(60)のみによって前記モータシャフト(30,130)から電気絶縁されることを特徴とする、請求項1から15のうちいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記モータシャフト(30,130)は、前記絶縁スリーブ(60)の差込開口部(64A)から、および/または前記差込開口部(64A)に対して反対を向くほうの前記絶縁スリーブ(60)の長手方向端部領域に設けられる差込収容部(64)の出口開口部(64B)から、突出することを特徴とする、請求項15または16に記載のシステム。
【請求項18】
前記絶縁スリーブ(60)は差込軸に関して前記積層薄板(41,141)に突き当たるための少なくとも1つの長手方向ストッパを有し、または差込軸に関して前記積層薄板(41,141)に支持されるために前記絶縁スリーブ(60)の管状区域(63)から突出するフランジ体(68)を有することを特徴とする、請求項15から17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記絶縁スリーブ(60)は前記積層薄板(41,141)と前記モータシャフト(30,130)との間で回転軸(D)に対して径方向の力方向に、および/または回転軸(D)に対して平行の力方向に応力をかけられ、および/または前記絶縁スリーブ(60)は前記モータシャフト(30,130)により回転軸(D)に関して径方向外側に向かって前記積層薄板(41,141)とともに応力をかけられることを特徴とする、請求項15から18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記絶縁スリーブ(60)は前記駆動モータの動作温度を下回る状態のときに、および/または40℃を下回る温度のときに、前記シャフト通過開口部(42,142)に差し込まれることを特徴とする、請求項15から19のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記絶縁スリーブ(60)には少なくとも1つの形状接合部分が構成され、該形状接合部分で前記絶縁スリーブ(60)が、差込収容部(64)に差し込まれた前記モータシャフト(30,130)により、回転軸(D)に関して径方向外側に向かって前記積層薄板(41,141)と形状接合式に係合するように押し除けられることを特徴とする、請求項15から20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
少なくとも1つの受け部突起が前記積層薄板(41,141)から前記シャフト通過開口部(42,142)の中に突出し、該受け部突起は前記絶縁体(60A)に食い込み、および/または前記絶縁体(60A)は、プラスチックからなり、および/または前記絶縁スリーブ(60)は少なくとも120°の温度まで固体構造を維持することを特徴とする、請求項1から21のうちいずれか1項に記載のシステム。
【請求項23】
60Vを下回る第1の動作電圧(P2)のために構成された第1の駆動モータ(120)と60Vを上回る第2の動作電圧(P2)のために構成された第2の駆動モータ(20)とを含む、モータモジュールの方式のシステムであって、それぞれの駆動モータ(20,120)は吸引器具(400)のために、または手動工作機械(200,300)もしくは半定置式の工作機械の形態の工作機械のために意図され、または、吸引器具(400)もしくは工作機械の構成要素を形成し、前記駆動モータ(20,120)は、励起コイル構造(86)を有するステータ(80)と、軸受構造(24A)により回転軸(D)を中心として回転可能に前記ステータに、または前記ステータ(80)に関して支承され、それぞれのモータシャフト(30,130)の保持区域(33)に保持された積層薄板(41,141)のシャフト通過開口部(42,142)を貫通するモータシャフト(30,130)を有するロータ(40,140)とをそれぞれ有する、システムにおいて、前記駆動モータ(20,120)の前記モータシャフト(30,130)の前記保持区域(33)が前記積層薄板(41,141)の領域で同一の外側円周形状を有し、前記第1の駆動モータ(120)の前記積層薄板(141)は該積層薄板(141)を担持する前記モータシャフト(30,130)の前記保持区域(33)の外側円周に直接的に支持され、前記第2の駆動モータ(20)の前記積層薄板(41)は電気絶縁性の絶縁体(60A)を介して、該積層薄板(41)を担持する前記モータシャフト(30,130)の前記保持区域(33)に支持されることを特徴とするシステム。
【請求項24】
60Vを下回る第1の動作電圧(P2)のために構成された第1の駆動モータ(120)及び60Vを上回る第2の動作電圧(P2)のために構成された第2の駆動モータ(20)を製造する方法であって、それぞれの駆動モータ(20,120)は吸引器具(400)のために、または手動工作機械(200,300)もしくは半定置式の工作機械の形態の工作機械のために意図され、または、吸引器具(400)もしくは工作機械の構成要素を形成し、前記駆動モータ(20,120)は、励起コイル構造(86)を有するステータ(80)と、軸受構造(24A)により回転軸(D)を中心として回転可能に前記ステータに、または前記ステータ(80)に関して支承され、それぞれのモータシャフト(30,130)の保持区域(33)に保持された積層薄板(41,141)のシャフト通過開口部(42,142)を貫通するモータシャフト(30,130)を有するロータ(40,140)とをそれぞれ有する、方法において、前記保持区域(33)が前記積層薄板(41,141)の領域で同一の外側円周形状を有するモータシャフト(30,130)が使用され、前記第1の駆動モータ(120)の前記積層薄板(141)が第1のモータシャフト(130)に組み付けられ、前記第2の駆動モータ(20)の前記積層薄板(41)が第2のモータシャフト(30)に組み付けられ、それにより前記第1の駆動モータ(120)の前記積層薄板(141)が、該積層薄板(141)を担持する前記モータシャフト(30,130)の前記保持区域(33)の外側円周に直接的支持され、前記第2の駆動モータ(20)の前記積層薄板(41)は電気絶縁性の絶縁体(60A)を介して、該積層薄板(41)を担持する前記モータシャフト(30,130)の前記保持区域(33)に支持されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の駆動モータと第2の駆動モータとを含むシステムに関し、駆動モータは、励起コイル構造を有するステータと、軸受構造により回転軸を中心として回転可能にステータに、またはステータに関して支承され、それぞれのモータシャフトの保持区域に保持された積層薄板のシャフト通過開口部を貫通するモータシャフトを有するロータとをそれぞれ有する。
【背景技術】
【0002】
このシステムは、たとえばモータモジュールの方式で構成される。
【0003】
駆動モータは、たとえば吸引器具のために、または手動工作機械もしくは半定置式の工作機械の形態の工作機械のために意図され、または、吸引器具もしくは工作機械の構成要素を形成する。
【0004】
それぞれの、または各々の駆動モータが、たとえば吸引器具のために、または手動工作機械もしくは半定置式の工作機械の形態の工作機械のために意図され、または、吸引器具もしくは工作機械の、すなわち手動工作機械もしくは半定置式の工作機械の、構成要素を形成する。
【0005】
第1の駆動モータは、たとえば第1の器具に配置され、または第1の器具に配置するために意図され、それに対して第2の駆動モータは第2の器具に配置され、または第2の器具に配置するために意図され、第1および第2の器具は互いに相違する。第1の器具または第2の器具は、たとえば手動工作機械もしくは半定置式の工作機械、または吸引器具である。すなわち、このようにたとえば第1の駆動モータは第1の手動工作機械のために意図され、第2の駆動モータは第2の手動工作機械または吸引器具のために意図される。
【0006】
あるいは原則として、本発明に基づく両方の駆動モータまたは少なくとも2つの駆動モータが、同一の工作機械または同一の吸引器具で利用されることも可能である。
【0007】
特開昭59-22630号公報より、モータシャフトでの絶縁スリーブの利用法が公知である。
【0008】
たとえば穿孔機械、鋸機械などのそれぞれ異なる手動工作機械のために、典型的には、回転数と出力が手動工作機械のそれぞれの機械型式に合わせて適合化された、それぞれ異なる駆動モータが使用される。冒頭に述べた駆動モータは、たとえば電子整流式のモータまたはブラシレスモータである。蓄電池によって作動する手動工作機械と、電源動作式の手動工作機械とについて、それぞれ異なる電圧階級に適した、それぞれ異なる駆動モータが必要である。したがって、実際には多数の駆動モータのバリエーションが必要となり、その製造と在庫保管には高いコストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【0010】
したがって本発明の課題は、少なくとも2つの駆動モータを含む、改良されたシステムを提供することにある。
【0011】
この課題を解決するために、冒頭に述べた種類の駆動モータにおいて、駆動モータのモータシャフトの保持区域が積層薄板の領域で同一の外側円周ジオメトリー(形状)を有し、第1の駆動モータの積層薄板は該積層薄板を担持するモータシャフトの保持区域の外側円周に直接的に支持され、第2の駆動モータの積層薄板は電気絶縁性の絶縁体を介して、該積層薄板を担持するモータシャフトの保持区域に支持されることが意図される。
【0012】
ここでの基本思想は、同じモータシャフトを異なる種類の駆動モータに使用可能であることにある。それぞれ異なる電圧領域に合わせた適合化を提供するために、1つの駆動モータではモータシャフトと積層薄板との間の絶縁が必要ないが、別の駆動モータでは絶縁体を用いて具体化される。このように、たとえば原則として駆動モータのそれぞれのステータで、駆動モータための同じ軸受など、同一の機械的構造が設けられていてもよい。すなわち、このように一種のモジュール原理を具体化することができる。
【0013】
このシステムにおいて、第1の駆動モータは第1の動作電圧のために、特に60Vを下回る動作電圧のために構成され、第2の駆動モータは第2の動作電圧のために、特に60Vを上回る動作電圧のために構成されることが意図されるのが好ましい。特に、第1の駆動モータの動作電圧が直流電圧であると好ましく、励起コイル構造への通電のための電流を提供するために、工作機械または吸引器具の通電装置が、それぞれの駆動モータのために動作電圧または直流電圧を準備することが意図されるのが好ましい。第1の動作電圧は、たとえば、バッテリセルまたは蓄電池パックから提供される典型的な電圧である。第1の動作電圧は、たとえば14Vから36Vの電圧である。第2の駆動モータのための第2の動作電圧は、たとえば交流電圧である。このような交流電圧も、第2の駆動モータの励起コイル構造への通電のための通電装置によって準備されるのが好ましい。第2の動作電圧はたとえば110Vよりも高く、特に220~230Vよりも高い。しかし絶縁体を用いた絶縁により、このような種類の動作電圧のときでも絶縁距離が十分に大きいことが確保される。
【0014】
第1の駆動モータは、特に蓄電池パックなどの電気的なエネルギー蓄積器を用いた動作のために構成され、第2の駆動モータは、電気的な交流電圧電源を用いた電源動作のために構成されることが意図されるのが好ましい。電気的なエネルギー蓄積器はたとえば蓄電池パックであり、あるいは、たとえば燃料電池またはその他の同種のエネルギー蓄積器を含むこともできる。交流電圧電源は、たとえば110Vから230Vの電圧を有する。
【0015】
さらに、第1の駆動モータおよび第2の駆動モータのステータが、特にステータの積層薄板が、外側で幾何学的に同一であり、および/または同一の外側円周ジオメトリーを有すると好ましい。
【0016】
さらに、第1の駆動モータおよび第2の駆動モータのステータが、ステータの同一の支持体に配置される同一の積層薄板を有していると好都合である。すなわち、各ステータの機械的な構造が実質的に同じであり、または同一である。特に、各積層薄板が回転軸に関して径方向外側で、および回転軸に関して径方向内側で、同じジオメトリーを有していると好ましい。支持体は、たとえばそれぞれの積層薄板の押出被覆によって、または積層薄板へのプラスチック構成要素の射出成形によって具体化される。支持体は、たとえば巻線ヘッドまたはその他の同種の保持コンポーネントを励起コイル構造のために提供することができる。さらに支持体は、ステータの積層薄板の電気的な絶縁のために意図されていてよい。たとえば支持体は、積層薄板を端面側で、および/または径方向内側に向かって、駆動モータのロータに対して電気的に絶縁する壁部を含むことができる。
【0017】
ほぼ同一構造のステータの場合でも、すなわち機械的に同じ構成の積層薄板と支持体の場合でも、下記の方策を容易に好ましく具体化可能である。第1の駆動モータと第2の駆動モータは、励起コイルがそれぞれ異なる巻回数および/またはそれぞれ異なる導体断面を有する、それぞれ異なる励起コイル構造を有することが意図されるのが好ましく、それにより、第1の駆動モータは第1の動作電圧で作動可能であり、第2の駆動モータは第1の動作電圧とは相違する第2の動作電圧で作動可能である。第1の動作電圧はたとえば60Vを下回る低電圧であり、特に最大で36Vである。第2の動作電圧は、たとえば少なくとも110Vの電圧である。
【0018】
さらに、第1の駆動モータおよび第2の駆動モータのステータは回転軸に関して互いに反対を向くほうの長手方向端部領域で、それぞれ異なる励起コイル構造の励起コイルを収容するための支持突起の同一の配置を有することが意図されるのが好ましい。支持突起はたとえばいわゆる巻線ヘッドなどを含み、その周りに、励起コイルのコイル導体を巻付け可能である。このとき、一方の駆動モータでは支持突起または巻線ヘッドが使用され、それに対して他方法の駆動モータの励起コイル構造では少なくとも1つの支持突起または巻線ヘッドが使用されず、もしくは励起コイル構造の電気的なコイル導体を支持しないことが可能である。
【0019】
さらに、第1の駆動モータおよび第2の駆動モータのステータが、特にステータの支持体が、接続導線の接続のために意図される接続装置を差し込むための少なくとも1つの差込収容部を有すると好都合であり、差込装置は差込収容部に収容された状態にあるとき、励起コイル構造の励起コイルの少なくとも1つのコイル導体と接続導線によって電気的に結合される。電気的な接続の必要性に応じて、少なくとも1つの差込収容部に接続装置が配置されてよく、または配置されていなくてよい。接続装置は、たとえば差込コンタクト、溶接ラグなどを含む。
【0020】
駆動モータのモータシャフトは、互いに反対を向いているそれぞれのステータの長手方向端部領域で、軸受構造の第1の軸受および第2の軸受に回転可能に支承され、第1の軸受および第2の軸受の領域における両方の駆動モータのステータは、および/またはそれぞれのステータに配置されて第1または第2の軸受を担持する少なくとも1つの軸受カバーは、幾何学的に同一であることが意図されるのが好ましい。たとえば各ステータは、軸受カバーが配置されるべき組付領域で同一に構成されていてよい。軸受カバーのうちの一方が、または両方の軸受カバーが、第1および第2の駆動モータについて同一であることも可能である。
【0021】
特に電源電圧での動作のために好ましい絶縁コンセプトは、絶縁体がシャフト通過開口部の領域で少なくとも2mmの壁厚を有することを意図する。当然ながら、絶縁体の壁厚がこれよりも大きくてもよい。さらに絶縁体が、積層薄板内部で有しているその長さ全体にわたって、同一の壁厚を有していると好ましい。
【0022】
絶縁体は1つの区域をもって積層薄板前に突出し、そこでモータシャフトを外装する。それにより追加の絶縁距離、ないしは電気的なフラッシオーバに対する保護が、一方におけるモータシャフトと他方における積層薄板との間で具体化される。絶縁体が、積層薄板の端面の前に突出する少なくとも1つの絶縁区域を有することが意図されるのが好ましい。
【0023】
絶縁区域によって、少なくとも5mm、好ましく少なくとも7mm、特に少なくとも8mmの絶縁距離が積層薄板とモータシャフトとの間に形成されるという利点がある。このような種類の態様は、特に、60Vを上回る電圧、特に110Vおよびこれよりも高い交流電圧での動作を可能にする。
【0024】
絶縁区域は、さまざまに異なるジオメトリーと形態を有することができる。たとえば絶縁区域は、差込軸に関して絶縁区域の隣に配置された、積層薄板のシャフト通過開口部に収容されている絶縁スリーブの区域の前に、回転軸に関して径方向外側に向かって突出するのではない管状区域を含み、または管状区域によって構成されることが意図されていてよいのが好ましい。たとえば、積層薄板に収容されている絶縁体の区域と、積層薄板の前に突出する区域とが、いずれもそれぞれ管状体として構成される。
【0025】
さらに絶縁区域は、積層薄板に収容されている絶縁体の管状区域の前へ回転軸に関して径方向外側に向かって突出する、特に環状のフランジ体を含むことが可能である。フランジ体が環状ではなく、部分環状であるにすぎないか、または環状セグメントであることも可能である。このケースでは、個々のフランジ区域の間の中間スペースで絶縁措置が講じられていると好ましい。個々のフランジ区域の間の少なくとも1つの中間スペースに、またはすべての中間スペースに、電気絶縁性の注型素材、電気絶縁性の絶縁部材などが配置されるのが好ましい。フランジ体は追加機能を有することができ、すなわち、駆動モータの回転軸に対して平行な力方向をもって絶縁体を積層薄板に支持することができる。
【0026】
原則として、絶縁体が注型法によって製作されることも可能であろう。たとえば、モータシャフトが絶縁体材料で押出被覆され、および/またはモータシャフトがロータ積層薄板のシャフト通過開口部へ差し込まれ、引き続いて積層薄板とモータシャフトとが絶縁体の形成のためにプラスチックまたはその他の同種の絶縁材料で押出被覆されることが可能である。
【0027】
絶縁体が絶縁スリーブによって構成され、または絶縁スリーブを有していると好ましく、該絶縁スリーブはシャフト通過開口部に差し込まれ、モータシャフトと積層薄板との間に配置され、差込開口部を備えた差込収容部を有し、該差込開口部を通してモータシャフトが差込軸に沿って差込収容部へ差し込まれる。
【0028】
差込軸は、駆動モータの回転軸および/またはモータシャフトおよび/または絶縁スリーブの長軸に相当するのが好ましい。モータシャフトが差込収容部へ差し込まれる差込軸は、絶縁スリーブが積層薄板のシャフト通過開口部に差し込まれる差込軸に相当するか、またはこれに対して平行に延びるのが好ましい。
【0029】
ここでの基本思想は、駆動モータの組立または製造が簡易化されるというものである。絶縁スリーブは、積層薄板のシャフト通過開口部に差し込まれ、さらにそれ自体がモータシャフトの差込または挿通のための差込収容部を提供する、簡易な差込体を形成する。まず最初に絶縁スリーブがシャフト通過開口部に差し込まれてから、絶縁スリーブの差込収容部にモータシャフトが差し込まれると好ましい。あるいは原則として、まず最初にモータシャフトが絶縁スリーブの差込収容部に差し込まれ、次いで、モータシャフトに配置されている絶縁スリーブがシャフト通過開口部に差し込まれることも考えられる。
【0030】
絶縁スリーブは、差込軸に関する積層薄板の全面的な長さにわたって延びるのが好ましい。すなわちこのようにして、積層薄板が保持されるモータシャフトの保持区域が、絶縁スリーブを用いて積層薄板から電気的に全面的に絶縁される。
【0031】
積層薄板が絶縁スリーブのみによってモータシャフトから電気絶縁されることも可能である。あるいはさらに別の絶縁措置が講じられることも可能であり、すなわち、たとえばモータシャフトそのものが、駆動モータが組み付けられた状態にあるときに絶縁スリーブとモータシャフトとの間に配置される絶縁層をさらに有することが可能である。さらに、絶縁スリーブが積層薄板のシャフト通過開口部に差し込まれているが、さらに、たとえばプラスチック材料などで注型されることが考えられる。それによって追加の絶縁が提供される。
【0032】
モータシャフトは、絶縁スリーブの差込開口部の前に、および/または差込開口部に対して反対を向くほうの絶縁スリーブの長手方向端部領域に設けられる差込収容部の出口開口部の前に、突出するのが好ましい。すなわち、たとえばモータシャフトは絶縁スリーブの前に両側で突出することができ、そこでたとえば軸受構造によって、特に球軸受、ころ軸受、またはその他の同種の転がり軸受によって、ステータに関して回転可能に支承される。ただしここで付言しておくと、絶縁スリーブがたとえば軸受のうちの1つまで延びることもでき、すなわち、たとえば軸受の軸受収容部とモータシャフトとの間に絶縁スリーブがサンドイッチ状に電気絶縁を提供することができる。
【0033】
絶縁スリーブは、差込軸に関して積層薄板に突き当たるための少なくとも1つの長手方向ストッパを有するのが好都合である。長手方向ストッパは、たとえば回転軸または差込軸に関して径方向で絶縁スリーブの管状区域の前に突出する、径方向の突起を含むことができる。
【0034】
絶縁スリーブは、差込軸に関して積層薄板に支持されるために絶縁スリーブの管状区域の前に突出するフランジ体を有するのが好都合である。管状区域はたとえば全面的に、または実質的に、シャフト通過開口部に収容される。フランジ体は環状フランジ体であってよく、すなわち、回転軸または差込軸を中心として環状に延びる。あるいはフランジ体が部分環状体であり、すなわち全面的に環状ではないことも可能である。
【0035】
絶縁スリーブは、積層薄板とモータシャフトとの間で1つまたは複数の力方向に、たとえば回転軸に対して径方向の力方向に、および/または回転軸に対して平行の力方向に、応力をかけられるのが好都合である。たとえば、絶縁スリーブがモータシャフトによって回転軸に関して径方向外側に向かって積層薄板とともに応力をかけられることが意図される。すなわち差込収容部に差し込まれた、または挿通されたモータシャフトは、モータシャフトとシャフト通過開口部ないし積層薄板との間で絶縁スリーブに応力をかけるために作用する。
【0036】
積層薄板から、絶縁スリーブに食い込む少なくとも1つの受け部突起がシャフト通過開口部に突出するのが好都合である。このとき少なくとも1つの受け部突起は、モータシャフトによってシャフト通過開口部とともに応力をかけられたときに、および/またはモータシャフトによってシャフト通過開口部の中へ押し除けられたときに、絶縁スリーブないしその外壁に食い込むことが可能である。すなわち少なくとも1つの受け部突起は、絶縁スリーブの中にモータシャフトが配置されていないとき、シャフト通過開口部へ絶縁スリーブを差し込むために意図されるシャフト通過開口部の差込断面に突出するのではないことが可能である。しかし絶縁スリーブの差込収容部に差し込まれたモータシャフトは、絶縁スリーブの径方向の外側円周を少なくとも1つの受け部突起の方向で押し除け、それにより、受け部突起が絶縁スリーブと形状接合式に係合し、および/または絶縁スリーブといわば爪固定または応力固定される。特に、絶縁スリーブがシャフト通過開口部に収容されたときに、および/またはモータシャフトによりシャフト通過開口部の方向で押し除けられたときに、少なくとも1つの受け部突起が絶縁スリーブの外側表面を変形させると好ましい。少なくとも1つの受け部突起は、たとえば絶縁スリーブへ爪状に食い込むための保持爪を形成する。
【0037】
差込軸または回転軸に関して角度間隔および/または長手方向間隔を相互に有する複数の受け部突起が設けられていると好ましい。特に、シャフト通過開口部の互いに向かい合う側にそれぞれ少なくとも1つの受け部突起が設けられると好ましい。
【0038】
差込軸または回転軸に関して互いに間隔を置く複数の受け部突起または受け部突起のグループが存在すると好ましく、それにより、これらが差込軸または回転軸に関して長手方向間隔をおきながら絶縁スリーブに食い込むことができる。
【0039】
絶縁スリーブには少なくとも1つの形状接合部分が構成されるのが好ましく、該形状接合部分で絶縁スリーブが、差込収容部に差し込まれたモータシャフトにより、回転軸に関して径方向外側に向かって積層薄板と形状接合式に係合するように押し除けられる。この形状接合部分は、たとえば前述した受け部突起のうちの2つの間に食い込む、またはこれらの間に収容される、および/または積層薄板の形状接合収容部に食い込む、1つまたは複数の部分を含むことができる。絶縁スリーブの少なくとも1つの形状接合部分は、積層薄板の受け部突起形が中に係合する形状接合収容部を含むこともできる。
【0040】
少なくとも1つの形状接合部分は、積層薄板端面が支持される段部を含んでいると好ましい。この段部は環状またはフランジ状であるのが好ましい。差込収容部は、たとえばモータシャフトの差込前の積層薄板のすぐ横に、モータシャフトの差込によって拡大または拡張される内側断面を有し、それにより形状接合部分または段部が形成される。
【0041】
さらに、絶縁スリーブとモータシャフトが形状接合輪郭によって、たとえばモータシャフトもしくは絶縁スリーブの差込軸および/または長軸に関して平行に、および/または回り止めされて、互いに係合すると好ましい。このとき形状接合輪郭は、たとえば刻み目、溝、ハニカム状の構造、またはその他の同種の形状接合輪郭は、たとえば絶縁スリーブの内側円周および/またはモータシャフトの外側円周に設けられていてよく、特に、モータシャフトが組付け状態のときに絶縁スリーブに収容される領域に設けられていてよい。たとえば1つまたは複数の長手方向溝および/または長手方向突起が、モータシャフトの径方向の外側円周に設けられていてよい。
【0042】
絶縁スリーブは、シャフト通過開口部に絶縁スリーブが差し込まれるとき、および/または絶縁スリーブにモータシャフトが差し込まれるとき、差込軸に沿って可塑的に変形して、絶縁スリーブ中のモータシャフトおよび/または積層薄板のシャフト通過開口部の中の絶縁スリーブが、特に差込軸に関して回り止めされて、および/または差込軸に関してスライド不能に、形状接合式に保持されるようになっていることが意図されるのが好ましい。
【0043】
差込収容部は、差込開口部のほうを向いている積層薄板の長手方向端部領域に付属する第1の内側断面を有するのが好都合である。さらに差込収容部は、差込開口部と反対を向くほうの積層薄板の長手方向端部領域に付属する第2の内側断面を有する。すなわち、第1および第2の内側断面を有している絶縁スリーブの区域は、積層薄板に絶縁スリーブが組み付けられた状態のとき、積層薄板のそれぞれの長手方向端部領域に位置する。モータシャフト差込収容部に完全に差し込まれた状態にあるとき、第1の外側断面を有するモータシャフトの区域は第1の内側断面の領域で差込収容部に当接し、第2の外側断面を有するモータシャフトの区域は第2の内側断面の領域で差込収容部に当接する。絶縁スリーブに応力をかけるために、特にシャフト通過開口部に関して径方向の応力を絶縁スリーブにかけるために、下記の両方の方策が単独で、または組み合せで好ましい。差込収容部の第1の内側断面が、第2の内側断面よりも大きいのが好ましい。モータシャフトの第1および第2の外側断面が同一であることが好ましく意図されるとき、または、さらにモータシャフトの第1の外側断面が第2の外側断面よりも大きいが、第1の外側断面と第2の外側断面との間の差異が、差込収容部の第1の内側断面と第2の内側断面との間の差異よりも小さいときも、初期応力を実現することができる。
【0044】
さらに、モータシャフトの第1の外側断面が第2の外側断面よりも小さいと好ましい。このとき、差込収容部が同じ第1および第2の内側断面を有することが可能であり、さらには、第1の内側断面が第2の内側断面よりも小さいことさえ可能であり、それは、これら両方の内側断面の間の差異が、モータシャフトのそれぞれの外側断面の間の差異よりも小さい場合である。
【0045】
すなわち、このように第1の内側断面と第1の外側断面が、およびさらには第2の内側断面と第2の外側断面が、互いに相補的および/または互いに適合的であると好ましい。このとき内側断面と外側断面は丸くなっていてよく、特に円形であってよい。あるいは、差込収容部の互いに適合的または相補的な断面または輪郭が、ないしはモータシャフト外側輪郭が、差込収容部ないし絶縁スリーブとモータシャフトとの間の回り止めを具体化するために、円ではなくたとえば多角形またはその他の同種の輪郭を有することも可能である。
【0046】
さらに、差込収容部の第2の内側断面が、その中に差し込まれるモータシャフトの第2の外側断面によって拡大または拡張されると好ましい。当然ながら第1の内側断面も、モータシャフトの第1の外側断面によって拡大または拡張されていてよい。
【0047】
互いに異なる内側断面または外側断面の間に、1つまたは複数の段部が存在することが可能である。さらに、内側断面ないし外側断面が一種の環状鍔または環状の載置面として構成されることが可能である。しかしながら、差込収容部の内側断面が第1の内側断面から第2の内側断面へと連続的に、特にテーパ状または差込テーパ部のような方式で、連続的に減少していくと好ましい。このような種類の設計形態は、たとえば絶縁スリーブが注型部品として製作されるときに、その簡易な型抜きも可能にする。さらに、モータシャフトの外側断面が第1の外側断面から第2の外側断面へと連続的に増加していくと好ましい。ここでも代替的に、段部またはその他の同種の連続的でない輪郭も可能であろう。
【0048】
シャフト通過開口部はその長さ全体にわたって、ロータの差込軸ないし回転軸に関して同一の内側断面を有していると好ましい。その場合、たとえば同じ薄板または同一の薄板を積層薄板の形成のために使用することができる。ここでも付言しておくと、たとえばすでに述べた受け部突起を提供するために、各薄板が機能的に互いに区別され得る。あるいは、特にシャフト通過開口部への絶縁スリーブの差込を簡易化するための方策が講じられることも可能である。たとえば、積層薄板のシャフト通過開口部が、絶縁スリーブの差込のために意図される長手方向端部領域で、この長手方向端部領域と反対を向く長手方向端部領域よりも大きい内側断面を有していると好ましい。
【0049】
回り止め輪郭が設けられ、これによって絶縁スリーブと積層薄板が回転軸に関して回り止めされて互いに係合すると好ましい。回り止め輪郭は、たとえば互いに相補的な突起と収容部、特に長手方向溝と長手方向突起もしくはリブを含むことができる。たとえば積層薄板に長手方向溝または回り止め収容部が設けられ、それに対して絶縁スリーブには回り止め突起、たとえば長手方向突起または長手方向リブが存在する。回り止め突起は、たとえば差込軸および/または回転軸および/または絶縁スリーブの長軸に関して径方向に、たとえばその円筒形または円形の外側円周の前へと突出する。それに対して回り止め収容部は、たとえばシャフト通過開口部の内側円周の中に入るように径方向に延びる回り止め収容部または凹部として構成される。あるいは、たとえばシャフト通過開口部の内側円周の前に少なくとも1つの回り止め突起が、たとえば長手方向リブまたは長手方向突起が、径方向内側に向かって絶縁スリーブの回り止め収容部または回り止め凹部への、たとえば長手方向溝への、形状接合式の係合のために突出することも容易に可能である。すなわち、このように少なくとも1つの回り止め収容部が積層薄板に設けられるとともに、少なくとも1つの回り止め突起が絶縁スリーブに設けられていてよく、および/またはその逆に少なくとも1つの回り止め突起が積層薄板に設けられるとともに、少なくとも1つの回り止め収容部が絶縁スリーブに設けられていてよい。
【0050】
回り止め突起および/または回り止め収容部は、シャフト収容部の、および/または組付け状態のときにシャフト収容部へ差し込まれる絶縁スリーブの部分の、長さ全体にわたって延びることができる。あるいは、回り止め突起および/または回り止め収容部が、シャフト収容部の、または絶縁スリーブの当該部分の、長さの一部にわたってのみ延びることも可能である。
【0051】
差込軸に関して、角度間隔をおいて複数組の回り止め突起と回り止め収容部が絶縁スリーブおよびシャフト収容部に、たとえば互いに反対を向く側などに設けられていてよい。ただ1組の回り止め突起と回り止め収容部が、絶縁スリーブないしシャフト収容部または積層薄板に設けられていると好ましい。
【0052】
絶縁スリーブは、積層薄板の内部にのみ延びることができる。しかしながら、絶縁スリーブが積層薄板の一方または両方の端面で積層薄板の前に突出して、そこで絶縁区域を有していると好ましい。この絶縁区域は、少なくとも5mm、好ましくは少なくとも7mm、さらには少なくとも8mmの追加の絶縁距離を積層薄板とモータシャフトとの間で提供することができる。絶縁距離は、たとえば一方におけるモータシャフトと他方における積層薄板との間の空間距離に相当する。
【0053】
絶縁区域は管状区域を含むか、または管状区域によって構成されるのが好ましく、該管状区域は回転軸に関して径方向外側に向かって、積層薄板のシャフト通過開口部に収容されている絶縁スリーブの区域の前に、たとえば同じく管状区域の前に突出せず、当該区域は差込軸に関して絶縁区域の横に、特にすぐ横に配置される。すなわち、このように絶縁区域は管状であってよい。このような種類の絶縁区域は、積層薄板のシャフト通過開口部に挿通するのに適している。
【0054】
あるいはさらに絶縁区域が、積層薄板に収容されている絶縁スリーブの管状区域の前に回転軸に関して径方向外側に向かって突出するフランジ体、特に環状または部分環状のフランジ体を含むことも可能である。フランジ体は支持ストッパまたは長手方向ストッパを同時に構成し、絶縁スリーブがこれをもって積層薄板の端面に突き当たる。
【0055】
絶縁スリーブは、駆動モータの動作温度を下回る状態のときにシャフト通過開口部へ差し込まれるのが好都合である。たとえば40℃よりも低い温度が好ましい。駆動モータの動作温度はたとえば90℃から120℃の間であり、特に最高でおよそ100℃である。すなわち、このように絶縁スリーブがいわば冷間状態でシャフト通過開口部に差し込まれる。それにより、駆動モータの作動時に絶縁スリーブがいわばクリープし始めることが防止される。
【0056】
絶縁スリーブはプラスチック、特にグラスファイバ強化プラスチックからなるのが好ましい。プラスチックとしては特にポリアミド適している。PA6およびPA66からなるポリアミドが好ましい。グラスファイバ強化はたとえばポリアミド材料の20%から30%であり、あるいはポリアミド材料の最大50%であってもよい。絶縁スリーブは少なくとも120℃、好ましくは130℃、少なくとも140℃、さらには少なくとも155℃の温度まで固体構造を維持し、すなわちそれ以上の加熱時に初めて柔らかくなるのが好ましい。
【0057】
ロータに配置される磁石構造は、磁石、特に永久磁石を含む。
【0058】
たとえば、磁化された、またはロータの積層薄板で磁化されるのに適した、磁石の磁気体は、アルミニウム-ニッケル-コバルト、ビスマノールすなわちビスマスマンガンと鉄の合金、フェライト、たとえば硬磁性フェライトであってたとえばバリウム、ストロンチウムをベースとするもの、ネオジム-鉄-ホウ素(NdFeB)であって好ましくはジスプロシウムの添加物を含むもの、サマリウム-コバルト(SmCo)であって好ましくは20~25%の鉄成分を含むもの、たとえばSmCos、Srri2Coi7、Sm(Co,Cu,Fe,Zr)Zなどからなる。希土類磁石またはプラスチックマグネットも可能である。さらに、AlNiCo合金、PtCo合金、CuNiFeおよびCuNiCo合金、FeCoCr合金、マルテンサイト鋼、またはMnAlC合金が磁石体に適している。
【0059】
駆動モータは、ブラシレスモータまたは電子整流モータであるのが好ましい。特に、駆動モータのそれぞれのステータが永久磁石を有するか、または永久磁石によって励起されると好ましい。
【0060】
ロータおよび/またはステータの積層薄板は、積層された電気鉄板または変圧器鉄板からなるのが好ましい。
【0061】
駆動モータのステータは、特にポリアミドなどのプラスチックからなる支持体を含むのが好都合である。支持体は、たとえばステータの積層薄板への注型および/または押出被覆によって製作される。支持体が、積層薄板に差し込まれる1つまたは複数の差込体または差込支持体を含むことも可能である。たとえば積層薄板の一方または両方の端面に、このような種類の差込支持体が差し込まれていてよい。支持体は、ロータ収容部領域で、および/または積層薄板の一方または両方の端面の領域で、積層薄板を覆うのが好ましい。支持体には、励起コイル構造のコイル導体を収容するための支持部、支持突起、アングルヘッドなどが設けられるのが好ましい。さらに支持体は、接続導線を接続するための電気的な接続コンタクトまたは接続装置を有するのが好ましく、これによって駆動モータを通電装置と結合可能であり、または結合される。
【0062】
第1および第2の駆動モータは、それぞれ異なる励起コイル構造および/または励起コイル構造の配線を装備していてよい。たとえば1つの駆動モータが三角結線の励起コイル構造を有することができる。あるいは、駆動モータが励起コイル構造を星形結線で有することも容易にできる。さらに三角結線および/または星形結線では、複数の、たとえば2つのストランドまたはコイルが並列および/または直列につながれていてよい。すなわち、第1の駆動モータが励起コイル構造を三角結線で有し、別の、または第2の駆動モータが励起コイル構造を星形結線で有する実施形態も考えられるであろう。あるいは、第1の駆動モータが、コイルまたはストランドが並列または直列につながれた三角結線で励起コイル構造を有し、それに対して他方または第2の駆動モータは、コイルまたはストランドが並列または直列にでなく、つながれた三角結線で励起コイル構造を有することも可能である。
【0063】
次に、図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。図面は次のものを示す:
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】
図1は、2つの電気的な駆動モータと、これらの駆動モータを有する手動工作機械とのシステムを示す斜視外観図である。
【
図2】
図2は、
図1のシステムの駆動モータのうちの一方を示す側面図である。
【
図3】
図3は、
図2の切断線A-Aに沿ったシステムの断面図である。
【
図4】
図4は、
図1のシステムの他方の駆動モータを、
図2に準ずる切断線A-Aにほぼ沿って示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4の駆動モータの絶縁スリーブを示す外観図である。
【
図6】
図6は、
図4の駆動モータのロータを示す外観図である。
【
図7】
図7は、製造時における
図6のロータを、
図6の切断線B-Bにほぼ沿って示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図7にほぼ準ずる図であるが、ここではモータシャフトがロータ積層薄板へ全面的に差し込まれている。
【
図11】
図11は、接続装置を明示するために
図10のステータを切断線C-Cに沿って示す断面図である。
【
図16】
図16は、
図10から14に接続装置の組立と加工を、
図10にほぼ準じて溶接プライヤーとともに斜視外観図で明示するための斜視外観図である。
【
図22】
図22は詳細部分D4であるが、溝蓋がさらにステータ溝の中へ位置調節されている。
【
図23】
図23は、溝蓋の組付けが完了した詳細部分D4である。
【
図24】
図24は、
図19の溝蓋を製作するため、および
図21から23のステータにこれを組み付けるための組立装置を示す模式図である。
【
図25】
図25は、前述のモータのロータの区域を
図6の部分D5にほぼ準じて示す斜視外観図である。
【
図26】
図26は、前図のロータのバランス調整をするためのバランス調整装置を示す模式図である。
【
図27】
図27は、前図のロータを磁化装置とともに示す模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1は、駆動モータ20が作業用工具の工具収容部301をたとえば直接的に、または図面には見えていない伝動装置を介して駆動する手動工作機械300、たとえば鋸機械を含むシステム図を示している。工具収容部301に、たとえば切断工具、鋸工具などの作業用工具302を配置可能であり、または配置されている。駆動モータ20は工作機械300のハウジング303に収容されており、スイッチ304によってオンおよびオフすることができる。スイッチ304により、駆動モータ20の回転数も調整可能であるのが好ましい。
【0066】
手動工作機械300に電気的な電流供給をする役目を果たすのが、エネルギー供給網EVに接続をするための接続ケーブル305である。エネルギー供給網EVは、たとえば110V交流電圧、230V交流電圧などの供給電圧P1を提供する。手動工作機械300は、スイッチ304と駆動モータ20との間に介在する通電装置306を有することができる。
【0067】
駆動モータ20は、吸引器具400を作動させるためにも意図されていてよく、特に、吸引器具400の吸引タービンを駆動するためにも意図されていてよい。吸引器具400は駆動モータ20を有しており、たとえば接続ケーブル405によってエネルギー供給網EVに接続可能である。
【0068】
いずれの場合にも電圧P1は、手動工作機械200のエネルギー蓄積器205を提供する電圧P2よりも明らかに高く、たとえば少なくとも4倍から5倍だけ高い。電圧P2は、たとえば14V、18Vなどの直流電圧である。
【0069】
手動工作機械200は、たとえば電動ドライバー、ドリル機械などである。手動工作機械200のハウジング203には、低いほうの電圧P2に適した駆動モータ120が収容されている。駆動モータ120は、エネルギー蓄積器205によって電気エネルギーの供給を受ける通電装置206から通電を受ける。駆動モータ120は、たとえばドリル工具やドライバー工具などの作業用工具202のための工具収容部201を直接的に、または伝動装置208を介して駆動する。通電装置206は、スイッチ204によってスイッチオン可能、スイッチオフ可能、および/または駆動モータ120の回転数の調整のために構成される。
【0070】
駆動モータ20,120は、部分的に同一または類似のコンポーネントを有する。
【0071】
たとえば駆動モータ20,120では、選択的に使用可能なモータシャフト30および130がそれぞれ軸受区域31,32を有していて、これらの間に保持区域33が設けられる。軸受区域32は、工具収容部201または301を駆動する役目を果たすアウトプット区域34の横にある。アウトプット区域34にはたとえば歯車が配置されていてよく、または配置可能であってよい。別案として、モータシャフト130には図示するように噛合部35が存在する。保持区域33は、平坦な、すなわち形状接合輪郭形成部を有さないそれぞれの区域37の間に延びる形状接合輪郭形成部36を有するのが好ましい。
【0072】
形状接合輪郭形成部36は、たとえばモータシャフト30の長軸Lに対して平行に延びる溝および/または突起36Aを含む。
【0073】
あるいは波形溝、ハニカム状の構造などが形状接合輪郭形成部36として設けられていてもよい。
【0074】
モータシャフト130の形状接合輪郭形成部136は、たとえば長軸Lに対して斜めに傾いた形状接合突起136Aを含む。ただし形状接合突起136Aは、たとえば5度から15度の低い傾斜を有しており、それにより、形状接合突起136Aは長軸Lに対して実質的に平行に延びる。
【0075】
形状接合輪郭形成部36,136は、たとえば形状接合輪郭36B,136Bを構成する。
【0076】
アウトプット区域34は、ファンインペラを駆動するために意図されていてよい。たとえば、たとえば噛合部35と軸受区域32との間に配置されるファンインペラ保持部38がモータシャフト130に設けられる。
【0077】
モータシャフト30または130は、ロータ40,140の積層薄板41または141と回転不能に結合可能である。積層薄板41,141は、長軸Lに対して横向きに並んで配置された薄板43を連続構造で有しており、たとえば、それ自体周知の種類の電気鉄板や変圧器鉄板を有している。
【0078】
積層薄板41,141は、それぞれ異なる直径を有するシャフト通過開口部42,142を有している。シャフト通過開口部42は、シャフト通過開口部142よりも大きい直径を有している。シャフト通過開口部42には、モータシャフト30または130を絶縁スリーブ60を用いて挿入することができ、それに対して、シャフト通過開口部142にはモータシャフト30または130を直接挿入することができ、すなわち、絶縁スリーブやこれに類する他の物体が必要ない。
【0079】
絶縁スリーブ60は絶縁体60Aを構成し、これによって積層薄板41が、それぞれこれを担持するモータシャフト30または130から電気的に絶縁される。
【0080】
積層薄板41および141には磁石構造50が配置されている。積層薄板41または141は、磁石構造50の磁石50のための保持収容部45を有している。たとえば4つの保持収容部45およびこれに付属する磁石51が設けられ、それにより、ロータ40,140は全部で4つの磁極を形成することになる。磁石51は、たとえば永久磁石である。
【0081】
磁石51は、たとえばプレート状の形態を有する。磁石51は、たとえば磁気プレートまたはプレート体56である。保持収容部45はそれに応じてプレート状の、すなわち平坦で長方形の立体的なプレート体または磁気プレートの収容に適しており、相応の内側円周輪郭を有する。
【0082】
保持収容部45と磁石51は、モータシャフト30,130の長軸Lに対して平行に、ないしはモータ20,120の回転軸Dに対して平行に延びている。
【0083】
さらに、特に積層薄板41,141としてのロータ40は、モータシャフト30,130の長軸Lに対して平行に延びてロータ40,140の端面44で開いている空気通路46により貫通されており、それにより、積層薄板41,141を空気により貫流可能である。
【0084】
シャフト通過開口部42,142は、実質的に円形の内側円周輪郭を有しているが、回り止め輪郭47、特に回り止め収容部47Aをさらに追加的に有するのが好ましい。回り止め輪郭47は、たとえば回転軸Dまたは長軸と平行に延びる長手方向溝47Bである。
【0085】
両方のモータシャフト30,130を、それぞれ積層薄板41,141に挿入することができる。
【0086】
シャフト通過開口部142が他方の積層薄板41のシャフト通過開口部42よりも小さい直径を有している積層薄板141では、それぞれのモータシャフト30,130をシャフト通過開口部142へ直接挿入することができ、たとえば押し込むことができる。
【0087】
シャフト通過開口部42の内側円周を区切る、またはその中へ突出する、薄板43の狭小面または端面はモータシャフト30,130と爪固定されるのが好ましく、それにより、モータシャフトが力方向で回転軸Dまたは長軸Lに対して平行に、積層薄板141の中でスライド不能に収容される。積層薄板141および好ましくは金属からなるモータシャフト30,130の導電性は、積層薄板141とモータシャフト30,130との間の直接的なコンタクトにもかかわらず可能であり、それは、ロータ140が駆動モータ120との使用のために、およびそれに伴って低いほうの電圧P2用として意図されるからである。
【0088】
それに対してロータ40では絶縁措置が講じられており、それにより、モータシャフト30,130および付属の積層薄板41の導電性にもかかわらず、電気的な安全性が与えられる。
【0089】
すなわちロータシャフト30,130は、絶縁スリーブ60を用いて積層薄板41に収容される。絶縁スリーブ60は、シャフト通過開口部42の中に収容される区域で、いわばモータシャフト30,130の保護外套または外側の被覆を構成する。
【0090】
絶縁スリーブ60はその長手方向端部61,62の間に、積層薄板41とモータシャフト30,130との間でサンドイッチ状に配置されてこれを積層薄板41に対して電気的に絶縁する管状区域63を有している。
【0091】
管状区域63は、長手方向端部61から長手方向端部62へと延びる、モータシャフト30,130を挿通するための差込収容部64を有している。差込収容部64は、長手方向端部61の領域に差込開口部64Aを有していて、これを通してモータシャフト30を差込収容部64の中へ差込可能である。モータシャフト30は、出口開口部64Bのところで差込収容部64から外に出る。
【0092】
差込収容部64は長手方向端部61の領域に、すなわち長手方向端部領域61Aでは、小さい直径W2およびそれに伴って小さい内側断面WQ2が存在する長手方向端部62の領域よりも、すなわち長手方向端部領域62Aよりも、大きい直径W1およびそれに伴って大きい内側断面WQ1を有している。たとえばモータシャフト30,130の直径は、長手方向端部61,62の領域ではおよそ10mmである。それに対して直径W2は、モータシャフト30,130が差込収容部64へ差し込まれる前には、約0.2mmから0.3mmだけ直径W1よりも小さい。すなわちモータシャフト30,130が、
図7に示すように、長手方向端部61から長手方向端部62へと差込軸Sに沿って絶縁スリーブ60に差し込まれるとき、当初は容易に、もしくは差込軸Sに関して横方向クリアランスをもって、長手方向端部61のところで差込開口部64Aに入り込み、そこに差込収容部64は直径W1を有している。直径W1は、差込収容部64へ差し込むために意図される長手方向の自由端におけるモータシャフト30,130の直径よりも若干大きいのが好ましい。差込開口部64の領域は、モータシャフト30,130が絶縁スリーブ60もしくは回転軸Dに関してセンタリングされるセンタリング区域を構成する。たとえばモータシャフト30は、直径W1の領域と直径W2の領域にいずれも同一の外側断面または外径を有する。
【0093】
その代替または補足として、たとえばモータシャフト30が、差込収容部64の長手方向端部61,62に割り当てられた第1の外側断面AQ1および第2の外側断面AQ2を有することも可能であり、第1の外側断面AQ1は第2の外側断面AQ2よりも小さい。モータシャフト30のこの実施形態では、直径W1およびW2が、およびそれに伴って差込収容部64の内側断面が、長手方向端部61および62の領域で同一であるか、またはほぼ等しいことも可能である。
【0094】
差込収容部64は長手方向端部61,62の間で、直径W1から直径W2へと連続的に狭くなっていくのが好ましい。あるいは、直径W1と直径W2との間に少なくとも1つの段部が存在することも可能であろう。差込収容部64は、長手方向端部61から長手方向端部62へと狭くなっていく差込テーパ部を有するのが好ましい。
【0095】
長手方向端部61には、差込収容部64へのモータシャフト30,130の差込プロセス容易にするために、挿入斜面65、たとえば挿入テーパ部が存在するのが好ましい
モータシャフト30,130が差込軸Sに沿って差込収容部64の中へ差し込まれるとき、モータシャフト長手方向端部62の方向へ次第に進んでいき、長手方向端部62に向かって狭くなっていく管状区域63をいわば広げていく。
【0096】
組立は次のように行われる:
まず、絶縁スリーブ60が積層薄板41シャフト通過開口部42に差し込まれる。
【0097】
シャフト通過開口部42の差込断面または内側断面が、絶縁スリーブ60の差込のために意図される長さ全体にわたって等しいか、またはほぼ等しいことが意図されるのが好ましい。
【0098】
あるいはシャフト通過開口部42が、絶縁スリーブ60の差込のために意図される長手方向端部領域41Aで、この長手方向端部領域と反対側の長手方向端部領域41Bよりも大きい内側断面を有することも可能である。
【0099】
そしてモータシャフト30,130が、差込収容部64に差し込まれる。このようにモータシャフト30,130は、差込軸Sに沿って差込収容部64へ差し込まれるときに、管状区域64の径方向の外側円周を、シャフト通過開口部42の径方向の内側円周の方向に押圧する。薄板43は、シャフト通過開口部42のほうを向く狭小面をもって、円周壁66に歯状に食い込むのが好ましい。
【0100】
差込収容部64は積層薄板41の手前の領域まで狭い直径W2を有しており、それによりモータシャフト30,130は、差込収容部64の当該領域に達したときに、管状区域63の円周壁66を差込軸Sに関して径方向外側に向かって拡張し、そのようにして、管ないし管状区域63をいわば伸長させる。それにより、積層薄板41の端面44に係合ないし後方係合する、段部67を有する形状接合部分75が円周壁63の外側円周に形成される。すなわち段部63は、モータシャフト30,130を差込収容部64へ差込可能である差込方向と逆向きの力方向をもって、絶縁スリーブ60を積層薄板41で保持する。
【0101】
絶縁スリーブ63は、他方の長手方向端部領域すなわち長手方向端部61に、差込軸Sまたは長軸Lに関して径方向外側に向かって管状区域63の前に突出するフランジ体68を有している。
【0102】
フランジ体68は差込軸Sに関して長手方向ストッパ68Aを構成し、たとえば積層薄板41の端面44に長手方向端部61の領域で支持される。フランジ体68は、たとえばその径方向の外側円周から差込収容部の64の方向へと延びる、すなわち径方向内側に差込軸Sへと延びる、補強リブ69を有する。補強リブ69は、たとえば積層薄板41と反対を向くほうのフランジ体68の端面71に配置される。
【0103】
さらに差込開口部64Aには、モータシャフト30,130のための支持ストッパ70が設けられており、モータシャフト30,130の支持ストッパ39が、たとえば段部が、差込軸Sと平行な力方向をもってこれに突き当たることができる。支持ストッパ70は、たとえば絶縁スリーブ60の端面71と差込収容部との間の段部によって構成される。
【0104】
絶縁スリーブ60は長手方向端部62の領域で、または出口開口部64Bで、長手方向端部61の領域よりも小さい外側円周または直径を有するのが好ましい。たとえば長手方向端部62には、積層薄板41シャフトの通過開口部42への絶縁スリーブ60の差込を容易にする挿入斜面72が設けられる。長手方向端部62は、たとえば差込突起として構成される。
【0105】
絶縁スリーブ60は長手方向端部62のところで、絶縁区域76を形成する管状区域73をもって積層薄板41端面44の前に突出するのが好ましく、それにより、そこで一方におけるモータシャフト30,130と他方における薄板43との間で電気絶縁が与えられる。
【0106】
それに対して他方の長手方向端部61では、いわば側方でシャフト通過開口部42の前に突出する、または突き出すフランジ体68が電気的な絶縁のために作用し、同じく絶縁区域76を構成する。このようにフランジ体68の領域でも管状区域73でも、電圧P1に関する電気的絶縁のために好適である、たとえばおよそ8mmから10mmの電気的な絶縁距離、たとえばクリアランス・沿面距離がもたらされる。
【0107】
絶縁スリーブ60の径方向外側円周には、特に管状区域63の長手方向長さ全体にわたって、積層薄板41の回り止め輪郭47に係合するための回り止め輪郭74が配置されるのが好ましい。回り止め輪郭74は、たとえば差込軸Sないし回転軸Dに対して平行に延びる回り止め突起74Aとして、特に長手方向突起または長手方向リブ74Bとして構成される。
【0108】
絶縁スリーブ60は、モータシャフト30,130と積層薄板41との間にクランプ嵌めまたはプレス嵌めで収容される。それによって摩擦接合が具体化される。
【0109】
さらに、回り止め輪郭47,74によって形状接合がさらに存在し、それによって絶縁スリーブ60が回転軸Dに関して、および/またはこれに対して横向きに、積層薄板41に形状接合式に保持される。
【0110】
モータシャフト30,130の形状接合輪郭形成部36,136は管状区域63の内側円周に歯状に係合し、それにより、モータシャフト30,130もその回転軸Dもしくは長軸Lに関して回り止めされて、および/または回転軸Dもしくは長軸Lに関してスライド固定されて、絶縁スリーブ60の中に収容される。形状接合輪郭形成部36,136は、対応形状接合輪郭形成部を管状区域36の内側円周で構成するのが好ましく、すなわち、たとえば管状区域63の内側円周を可塑的に変形させ、それにより、形状接合輪郭形成部36,136がこの対応形状接合輪郭部と形状接合式に係合する。対応形状接合輪郭形成部の可塑的な変形または型押は、たとえば絶縁スリーブ60へモータシャフト30,130が差し込まれるときに生成または形成される。
【0111】
すなわち絶縁スリーブ60は、追加の方策なしに積層薄板141へ直接差し込むことができるモータシャフト30,130を、積層薄板41とともに容易に利用可能にすることも可能にする。さまざまに異なるモータシャフトを設計する必要がない。幾何学的にはモータシャフト30,130は、積層薄板41または141との結合のために意図される保持区域33のところで同一である。たとえば、それぞれの保持区域33の長さと直径は同一である。ただし、積層薄板41または141のそのつど最善の保持のために、それぞれ異なる表面および/または表面輪郭形成部が、モータシャフト30,130の保持区域33の領域に設けられることも可能である。
【0112】
シャフト通過開口部42または142には、突出する受け部突起43Aが絶縁スリーブ60の管状区域63の径方向の外側円周に、またはモータシャフト30,130の保持区域33の径方向の外側円周に、食い込むのが好ましい。絶縁スリーブ60にはたとえば形状接合部分75Aが構成され、すなわち、
図5に模式的に示すようにたとえば形状接合収容部75Bが構成され、これに受け部突起43Aが係合する。管状区域63の径方向の外側円周は、たとえばモータシャフト30により、差込軸Sまたは回転軸Dに関して径方向外側に向かって押し除けられ、その際に受け部突起43Aが管状区域63に食い込んで、これに好ましくは爪固定される。
【0113】
受け部突起43Aは、たとえばシャフト通過開口部42または142のほうを向いている薄板43の端面に設けられる。それぞれの受け部突起43Aの間には、特に受け部突起43Aの各グループの間には、回転軸Dに関して、たとえば角度間隔および/または長手方向間隔などの間隔が存在するのが好ましい。受け部突起43Aは、絶縁スリーブ60をシャフト通過開口部42の中で、またはモータシャフト30,130をシャフト通過開口部142の中で、回転軸Dに対して平行に、および/または回転軸Dに関して円周方向に保持する。回転軸Dを中心とする角度間隔をおきながら、複数の受け部突起43Aが設けられるのが好ましい。絶縁スリーブ60は、その中に差し込まれるモータシャフト30によって径方向外側に向かって押し除けられ、その結果、受け部突起43Aが絶縁スリーブ60の外側円周または外套または円周壁66に食い込み、特に爪状に食い込む。
【0114】
駆動モータ20,120のロータ40,140は、励起コイル構造86を有するステータ80とともに使用することができる。励起コイル構造86は、さまざまに構成される励起コイル87、たとえば多い巻線または少ない巻線を備えた、あるいはさまざまに異なる導体断面等を備えた励起コイル87を有することができ、それは、励起コイル87を通って流れるさまざまに異なる電圧P1およびP2および/または電流の電流強さに対応するためである。
【0115】
ステータ80は、通過開口部として構成された、ロータ40,140のためのロータ収容部82を備える積層薄板81を有している。ロータ収容部82の中にロータ40,140が回転可能に収容され、このとき積層薄板81と積層薄板41,141との間には、それ自体周知の方式で細いエアギャップが存在する。
【0116】
積層薄板81は、プレート平面が駆動モータ20,120の回転軸Dに対して横向きに延びる薄板83、たとえば電気鉄板または変圧器鉄板を有している。それぞれのモータシャフト30,130が積層薄板81の端面84,85の前に突出し、そこで軸受構造24Aの軸受24,25に回転可能に支承される。
【0117】
軸受24,25は、ステータ80を端面側で閉止する軸受カバー21,22により軸受収容部23で保持される。
【0118】
軸受24,25は、軸受カバー21,22の軸受収容部23に挿入されていてよく、特に圧入されていてよい。あるいは、軸受24,25が軸受カバー21,22の材料で押出被覆または注型されることも可能である。
【0119】
たとえば軸受カバー21,22は積層薄板41と、または積層薄板41を担持する支持体90と、固定的に結合され、たとえばねじ止めされ、接着され、または好ましくは溶接される。
【0120】
軸受カバー21,22ならびに支持体90はプラスチックから、特に熱可塑性プラスチックからなるのが好ましい。軸受カバー21,22ならびに支持体90について同一のプラスチック、たとえば同一の熱可塑性プラスチックが使用されるのが好ましい。
【0121】
たとえば支持体90は、積層薄板81が注型される注型法で製作される。
【0122】
支持体90は、軸受カバー21,22のための軸受カバー収容部91を有している。軸受カバー収容部91の中に、たとえば軸受カバー21,22の円周壁26を、たとえばその端面をもって差込可能である。
【0123】
軸受カバー21は、モータシャフト30,130のアウトプット区域34の近いほうに配置されている。軸受カバー22は、これから離れた領域に配置されている。軸受カバー21,22は、互いに反対方向を向く長手方向端部領域で積層薄板81を閉止する。軸受カバー21は積層薄板41,141の端面の前に、軸受カバー22よりも離れていないところで突出する。軸受カバー21は、フランジ体68のための収容スペース21Aを有している。
【0124】
軸受24は軸受25よりも、潜在的に電流を通す積層薄板41、81の近くにある。
【0125】
軸受24と軸受25は、軸受区域31およびそれに伴ってモータシャフト30,130と導電結合されているため、励起コイル構造86からモータシャフト30,130へ電圧がフラッシオーバするという危険がそれ自体としては存する。
【0126】
しかし電気絶縁性のフランジ体68によって十分な電気絶縁距離が与えられるので、そのような危険が存しなくなる。
【0127】
それに対して軸受25は回転軸Dに関して、積層薄板41、81の端面に対してさらに大きい長手方向距離を有しており、その結果、たとえば軸受25の領域での励起コイル構造86からモータシャフト30,130への電気的なフラッシオーバの危険がここでも生じない。さらに、軸受カバー22の方向で積層薄板41の前に突出する、絶縁スリーブ60の電気絶縁性の管状区域73が十分な電気絶縁のために作用する。
【0128】
励起コイル87のコイル導体88は積層薄板81の中で、たとえば回転軸Dに対して平行に配置される、またはこれに対して傾いて配置される、溝89を通過して延びている。溝89は、ロータ収容部82の内側円周82Aに向かって開いた挿入開口部89Dを有している。溝89は、それぞれの端面84,85の間に延びている。挿入開口部89Dを通してコイル導体88を溝89へ挿入し、たとえば積層薄板81のコイルヘッドまたはコイルハンマーの周りに巻き付けることができる。
【0129】
それぞれの溝89の間にある、ステータ80のロータ収容部82のほうを向いている積層薄板81の区域は内張り92で覆われており、たとえばプラスチックで押出被覆されているが、溝89が当初は開いているので、コイル導体88をその中に挿入することができる。
【0130】
励起コイル87はさらにステータ80の端面84のところで、いわばコイルヘッドを構成する支持突起93に巻き付けられている。
【0131】
これと反対側の端面85には支持突起94が設けられており、これも同じく励起コイルのコイル導体を巻き付けるために適しているが、いくつかの実施形態では巻き付けがなされない。
【0132】
端面85は、いわば駆動モータ20,120の接続側となる。そこに接続装置100が設けられていて、たとえば通電装置206,306との電気的な結合のために接続導線15をこれに接続可能であり、または接続される。接続導線15は、通電装置206,306に差し込むためのコネクタを有している。接続装置100をターミナルと呼ぶこともできる。
【0133】
接続導線15は、たとえば接続装置100に差し込まれていてよく、あるいはこれと直接はんだ付けされていてもよい。接続装置100は、たとえば接触突起として構成された接続コンタクト領域101を有していて、接続導線と結合された接続コネクタをこれに差し込むことができる。さらに接続コンタクト領域101には穴102が設けられていて、たとえば接続導線15の接続導体がこれに挿通されて接続装置100とはんだ付けされ、またはその他の方式で電気的に結合されていてよい。たとえば、このような種類の接続導体を接続装置100と溶接することも容易に可能であろう。
【0134】
接続装置100は、差込組立によって支持体90に配置可能である。支持体90は、接続装置100のためのホルダ95を有している。ホルダ95は差込収容部96を含んでいて、これに接続装置を差込可能である。差込収容部96は、支持体90の端面85の前に突出するそれぞれの収容突起97の間に設けられている。たとえば収容突起97は互いに向かい合う溝98を有していて、その中に、接続装置100の前に側方で突き出す差込突起104を、たとえばさねはぎ継ぎのような形式で差込可能である。
【0135】
差込突起104は、それぞれの接続装100の本体103の前に側方で突出する。差込突起103は、接続コンタクト領域101の長手方向に対して横向きに本体103の前へ突出する。差込突起104と接続コンタクト領域101は、全体としてほぼT字型のコンフィグレーションを構成する。たとえば本体104はいわば基体脚部を構成し、ここから差込突起104が側方脚部のような形式で側方に突出する。ただし、差込突起104と本体103の基本平面は相違している。本体103と差込突起104との間に、たとえばS字型の、または互いに反対方向を向く湾曲または底面区域を有する移行区域106が設けられている。すなわち、このように差込突起104は本体103の裏面115の前に突出する。
【0136】
差込突起104は本体103の前に突出する自由端領域に、特に噛合部105A、逆鉤などの形状接合輪郭105を有していて、これによって差込収容部96との形状接合式の保持が可能である。差込突起104は、形状接合輪郭105を用いて、いわば支持体90の差込収容部96に爪固定することができるのが好ましい。特に、あとでまた説明する接続装置100の加熱時における差込収容部96の領域での、特に溝98の領域での支持体90の溶融は、一方における差込突起104と、特にその形状接合輪郭105と、他方における支持体90の材料との間の形状接合式の結合が差込収容部96の領域で、特に溝98の領域で成立することにつながる。
【0137】
噛合部105Aはたとえば交差部を有し、すなわち、たとえば歯105Bが差込突起104の主平面に対して横向きにその前に突出する。
【0138】
接続装置100は、コイル導体88のそれぞれ接続されるべき区域を収容するための導体収容部107を有している。導体収容部107は、一方における本体103の前面114と、他方における、結合区域109によって本体103と結合された、接続装置100の収容アーム108との間に構成されている。特に、本体103、結合区域109、および収容アーム108が一体的であると好ましい。本体103の側方脚部または差込突起104も、これと一体的であるのが好ましい。導体収容部107のほうを向いている結合区域109の内面は、導体収容部107の収容区域または収容窪み116Aを構成する。
【0139】
導体収容部107は、収容窪み116Aの領域に、載置面107Aならびにこれに対して角度をなす狭小面107Bを有している。狭小面107Bと広い載置面107Aとの間に、載置面107Aおよび狭小面107Bに対して斜めに傾いた斜面107Cが、少なくとも1つのコイル導体88を支持するために配置されている。斜面107Cは、たとえば面取部、湾曲面または円弧状の面などであってよい。いずれの場合にも斜面107Cは、コイル導体88が鋭利なエッジの上に載ることを防止する。
【0140】
接続装置100は、まず最初に基本材料から打ち抜かれ、次いで相応の成形によって、上に説明した形態にされる打抜き・曲げ部品として構成されるのが好ましい。
【0141】
導体収容部107へのコイル導体88の組付および/または取付および/または電気コンタクトは、次のように行われる:
当初は導体収容部107が開いており、すなわちそれは、収容アーム108がまだ本体103から大きく屹立していることによる。たとえば
図12および14を参照。このときにコイル導体88が導体収容部107の底面116まで、すなわち結合区域109の内側円周まで、到達することができる。たとえば
図12を参照。ただし、このようなコンフィグレーションはどちらかというと望ましくなく、したがって追加の支持方策によって、たとえば組立装置250の支持部251によって、導体収容部107の底面116から離れた位置でコイル導体88が保持される。
【0142】
しかしながらこのコンフィグレーションは、支持体90が支持輪郭99を有していて、その上でコイル導体88が組付時に、ないしは接続装置100の閉止時に、支持されるように行われるのが好ましい。
図10および11を参照。すなわちコイル導体88が支持輪郭99の上に載置され、それにより底面116と接触しない。支持輪郭99は、たとえば溝98と反対を向くほうの収容突起97の外面に設けられる。たとえば支持輪郭99は、それぞれの収容突起97と、収容突起97が屹立している支持体90の部分との間の段部として構成される。
【0143】
底面116から引き上げられたコイル導体88の位置は、以後の閉止操作と溶接操作にとって好ましい。このような位置が特に好ましいのは、たとえばコイル導体88Bのように(
図11)、断面積の小さいコイル導体が使用される場合である。このようなコイル導体88Bは、収容アーム108が本体103に向かって動かされ、それによりその自由端113をもって本体103の前面114に当接しているときでさえ、あとで説明する溶接プロセスで明らかに加熱される底面116に対して間隔を有することができる。
【0144】
コイル導体88Bは、たとえば励起コイル構造86Bの励起コイル87Bの構成要素をなす。
【0145】
収容アーム108は、結合区域109と反対を向くほうの端部領域に、収容アーム108の中央のアーム区域110から角度をなして屹立する閉止脚部111を有している。たとえば、中央のアーム区域110と閉止脚部111との間に湾曲区域または結合区域112が設けられる。閉止脚部111は、中央のアーム区域110から本体103の前面114の方向へと突出し、それによりその自由端113が、導体収容部107が閉じた状態のときに前面114に接触し、それに対して、中央のアーム区域110と本体103の前面114との間には、導体収容部107を定義する間隔が存在する。
【0146】
接続装置100を閉止して溶接するための役目を果たすのは、組立装置250の溶接プライヤー252である。溶接プライヤー252はプライヤーアーム253,255を有していて、接続装置100とのコンタクトのために意図されるこれらの自由端領域に、支持面254,256が設けられている。接続装置100との係合のために意図されるプライヤーアーム253,255の自由端領域は鋭利に終わっており、すなわち先端部257を形成する。特に、接続装置100の裏面115に支持面254をもって支持されるように作用するプライヤーアーム253では、このような尖った細いプライヤーアーム253の構成が好ましい。
【0147】
プライヤーアーム253,254はV字型に配置されており、それぞれの先端部257が互いに反対の側で接続装置100に作用して(
図16参照)、これを閉止し、引き続いて溶接する。
【0148】
プライヤーアーム253,255の長軸L1,L2は、特に20°から40°の角度Wで延びるのが好ましい。それによって特にプライヤーアーム253の先端部257が、軸受カバー22と接続装置100の裏面115との間の中間スペースに達し、そこで、その支持面254をもって本体103を支持することができる。
【0149】
プライヤーアーム254は、導体収容部107が閉止されるように、収容アーム108に対して作用する。たとえばプライヤーアーム255の支持面256が湾曲区域112に当接する。支持面254が支持面256に向かって動いたとき、支持面254,256が互いに平行に、または実質的に平行に向き、このことは送り運動VSとして図面に示されている。すなわちプライヤーアーム253は定置のままであり、接続装置100に裏面側で支持されるのに対して、プライヤーアーム255は収容部108を本体103の方向へ位置調節する。そして、その閉止脚部111の自由端113が、接続装置100の本体103の前面114とコンタクトする。そして導体収容部107がこのように閉止され、収容アイレット119Aが形成される。
【0150】
溶接プライヤーまたはその他の同種のフライス加工装置が収容アーム108を、閉止脚部111がたとえばまだ形成されていない当初の長尺状の真っすぐな形状から、たとえば模式的に図示しているプライヤーアーム255の変形輪郭259を用いて、閉止脚部111を有する収容アーム108へと成形されることも可能である。
【0151】
その後にプライヤーアーム253,255が通電装置258によって通電され、それは、プライヤーアーム253,255がそれぞれ異なる電位を有し、そのようにして接続装置100を通る電流を生成することによる。
【0152】
溶接電流ISはいわば環状に閉じられた接続装置100を通って流れ、すなわち、導体収容部107を閉止している接続装置100の部分を通って流れ、すなわち、導体収容部107の領域における本体103ならびに収容アーム108を通って流れる。このとき溶接電流ISは結合領域118および119を介して流れ、すなわち、一方では結合区域109を介して流れ、他方では、閉止脚部111の自由端113と本体103の前面114との間のコンタクト領域117を介しても流れる。コンタクト領域117でも底面116の領域でも高い熱が発生するが、それがコイル導体88または88Bを損傷することはない。これらのコイル導体が底面116に対して、あるいはさらに上側のコンタクト領域117に対しても、間隔を有しているからである。それにもかかわらず接続装置100は導体収容部107の領域で、コイル導体88の塗料またはその他の絶縁部が溶融して、コイル導体が接続装置100の表面と電気的にコンタクトする程度にまで高温になる。
【0153】
すなわち、このように接続装置100がいわば機械式に閉止され、引き続いて、導体収容部107に収容されているコイル導体88と溶接される。この組立は、一方ではコイル導体88にとって保全的であり、他方では確実であり、耐久性も恒久的に高くなる。それはすなわち、コイル導体88が前述したプレス工程と溶接工程によって機械的には若干変化し得るものの、たとえば駆動モータ20,120の作動時に破断する程度まで脆弱化されることはなく、もしくは、その断面ジオメトリーに関して改変されないからである。
【0154】
励起コイル87が溝89へ挿入されると、これが溝蓋180によって閉止される。
【0155】
溝蓋180は形材体181を有している。溝蓋180は、プラスチックおよび/または電気絶縁性の材料からなるのが好ましい。形材体181は、たとえばプラスチック部品またはプラスチック壁体として構成される。
【0156】
形材体181は、それぞれの溝89のためのいわば閉止壁をなす壁体182を構成する。
【0157】
溝蓋180または形材体181は長尺形態を有しており、溝蓋180が溝89に組み付けられたときに、溝89の長軸L9と平行に延びる長軸L8に沿って延びる。
【0158】
溝蓋180の長手方向の狭小面すなわち長手方向面195は、長軸L8に沿って延びている。それぞれの長手方向面195は、長軸L8に対して横向きに横方向間隔Qを有している。
【0159】
溝蓋180の長手方向端部領域183は、積層薄板81の前に支持体90まで突出するのが好ましく、それにより、溝89の長さ全体にわたって電気絶縁が与えられる。そこでの一方または両方の軸受カバー21または22へのたとえば接着、溶接、またはその他の同種の取付が好ましい。
【0160】
溝蓋181は、長軸L8に対して横向きに溝88を全面的に覆う壁区域184を有している。壁区域184は横断面で見て、すなわち長軸L8に対して横向きに、ほぼU字型または円弧状であり、その横方向端部領域で、すなわち長軸L8に対して横向きに、溝89の形状接合収容部89Bに係合するために意図される形状接合突起186を構成する。溝蓋180は長軸L8に対して横向きに、長軸L8に対して横向きにもっとも遠くまで突出する溝蓋180の区域を構成する、および/または互いに向かい合う、2つの形状接合収容部186を有している。形状接合突起186と形状接合収容部89Bは、同時に溝89の長軸をなす長軸L8に対して横向きに溝蓋180を溝89の中で保持する形状接合輪郭185,89Aを構成する。
【0161】
壁区域184は、それぞれの形状接合輪郭185の間で水槽状の形態を構成し、すなわち底面187を有している。底面187は、たとえばそれぞれの溝89の中への湾入しており、すなわちその中に入るように延びている。当然ながら、壁区域184が回転軸Dに関して径方向外側に向かって突出するのでなく、径方向内側に向かって突出する逆のコンフィグレーションも可能であろう。ただし、そこでは場合によりロータ40,140が邪魔になることがある。
【0162】
壁区域184から側方脚部188が離れていくように延びている。それぞれの側方脚部188は互いに近づくように傾いており、すなわち、壁区域184から離れているその自由端領域が互いに近づくように傾いている。このように、側方脚部188と壁区域184は側方脚部188への移行領域で、側面図で見てV字型の形状接合輪郭185すなわち形状接合突起186を構成する。
【0163】
溝蓋180の組付けは次のように行われる:
溝蓋180を、たとえば端面84または85のうちの1つからそれぞれの溝89へ、すなわち回転軸Dに対して平行に延びる差込軸に沿って差し込むことも、それ自体としては可能である。しかしながら、形状接合輪郭185が長軸L8に対して横向きに互いに近づくように可動であり、それにより、それぞれの形状接合輪郭185の間の横方向間隔Qを縮小可能であり、それにより、溝蓋180を溝89の側方エッジ89Cのそばを通して溝89の中へスライドさせることができる。これに関して
図21から23を参照。このとき壁区域184はその丸められた外面189をもって、すなわちこの意味で押除け輪郭189Aを構成する底面187と反対を向く側で、側方エッジ89Cのそばを通って摺動し、このとき壁区域184は曲げ柔軟性をもって撓み、すなわちその意味で曲げ柔軟性のある区域194を構成する。その際に、側方脚部188と形状接合輪郭185が横方向間隔Qを狭めるように互いに近づくように動いて、最終的に、このような差込運動SBの最後に溝蓋180を溝89に係止し、すなわち、形状接合輪郭185が形状接合輪郭89Aと係合する。
【0164】
そして溝蓋180が溝89の中で、すなわち長軸L8に対して横向きに互いに直交する2つの方向で、形状接合式に収容される。
【0165】
ロータ収容部82と反対を向くほうの形状接合収容部89Bの面が、後方係合輪郭89Eを構成する。ロータ82のほうを向いている形状接合収容部89Bの面が、支持輪郭89Fを構成する。
【0166】
後方係合輪郭89Eおよび/または支持輪郭89Fは平面状であるのが好ましい。
【0167】
後方係合輪郭89Eおよび/または支持輪郭89Fは、溝蓋180をその長軸L8全体にわたって支持するのが好ましい。
【0168】
側方脚部188は、後方係合輪郭89Eに支持される後方係合面188Aを有している。側方脚部188に隣接している壁区域184の区域は、支持輪郭89Fに支持される支持面188Bを有しており、またはこのような支持面を構成する。このように後方係合輪郭89Aは、ロータ収容部82の内部空間の方向または回転軸Dの方向で溝蓋180を支持するとともに、支持輪郭89Fをこれと反対方向で、すなわち回転軸Dもしくはそれぞれの溝89の底面に関して径方向外側に向かう方向で、支持する。
【0169】
このような設計手法の利点は、たとえば溝蓋180が組み付けられるときに、支持体90が溝89の長手方向端部領域で、径方向内側に向かってロータ収容部82の方向へ若干突出し得ることによってももたらされるすなわちこの場合、その長手方向端部領域183を、支持体90の突出する区域のロータ収容部82の方向で後方係合させることができる。
【0170】
さらに、後方係合面188Aと後方係合輪郭89E、ならびに支持面188Bと支持輪郭89Fが平面状に互いに当接し、それにより、溝89のシールシートまたは蓋が具体化され、および/または溝蓋180が溝89を密接に閉止する。
【0171】
溝蓋180は、溝89を封止するためのシール機能を有するのが好ましいが、励起コイル構造86の励起コイル87のための支持機能は有さない。むしろ後方係合輪郭89Eと後方係合面188Aの傾斜は、溝89から外に出るように溝蓋180が力付勢されたとき、または回転軸Dに関して径方向内側に向かって力付勢されたとき、溝蓋180の変形または狭隘化を惹起し、そのようにして、溝89からの取外しを簡易化または可能にする取外し斜面のようにさえ作用する。
【0172】
模式的にのみ示されている、
図23Bに示す別案の実施例は、たとえば溝89の代替として構成される溝489を意図しており、その中に溝蓋480が挿入される。溝蓋480はその長手方向の狭小面に、溝489の形状接合突起489Bと係合する形状接合収容部486を有している。それぞれの形状接合突起489Bは互いに向かい合う。形状接合収容部486と形状接合突起489Bは互いに相補的であり、たとえばV字型である。
【0173】
ロータ収容部82と反対を向くほうの形状接合突起489Bの面は、後方係合輪郭489Eを構成する。ロータ収容部82のほうを向いている形状接合突起489Bの面は、支持輪郭489Fを構成する。後方係合輪郭489Eおよび/または支持輪郭489Fは平面状であるのが好ましい。後方係合輪郭489Eおよび/または支持輪郭489Fは、溝蓋480をその長軸L8全体にわたって支持するのが好ましい。溝蓋480の長辺または形状接合収容部486は、後方係合輪郭489Eに支持される後方係合面488Aを有している。形状接合収容部486は支持面488Bをさらに有し、または、支持輪郭489Fに支持されるこのような支持面を構成する。
【0174】
ステータ80の機械的な構造は、両方の電圧レベルP1およびP2について好ましくは全面的に、または部分的に同一である。特に、ロータ40,140のためのロータ収容部82は同一であり、すなわち、たとえば等しい直径を有する。溝89の構成も、すなわちたとえばその形状接合輪郭89Aおよび/または幅および/または深さも同一である。励起コイル構造86が電圧P1または電圧P2のいずれについて構成および/または配置されるかに関わりなく、溝蓋180をステータ80で使用可能であり、または使用されるのも好ましい。
【0175】
それにより、大筋での同一部品原理を具体化可能である。
【0176】
溝蓋180を単独の形材部品として提供することが可能であり、すなわち、
図20に示す長尺状の形態をすでに有するとともに溝89の長さに合わせた長さを有することが可能である。
【0177】
しかしながら1つの好ましい実施形態は、溝蓋180がロール材料190から得られることを意図する。ロール材料190は、たとえば巻取材191として準備される。巻取材191はたとえば巻取材支持体273に、特に相応の保持フレームに、回転可能に収納されている。繰出し装置274がロール材料190を巻取材191から繰り出す。
【0178】
巻取材191から繰り出されたロール材料190の区域192が、たとえば1つまたは複数のローラを有するローラ構造275を、特に方向転換ローラまたはガイドローラを通過する。
【0179】
ローラ構造275の下流側に平滑化装置276が設けられており、そこで区域192が平滑化され、それにより、当初は巻取材191で丸くなっていた形態が長く伸びた形態へと移行する。平滑化装置276は、たとえば少なくとも1つのプレス機構277、特に互いに向かい合うプレス機構277、および/または加熱体279を有する加熱装置278を含んでおり、それにより、
図20に示すように、区域192のロール材料190を長く伸びた形態にする。すなわち、このようにロール材料190が平滑化装置276によって直線状に長く引き伸ばされた形状になる。
【0180】
平滑化装置276の後に切断装置280が続いていて、これにより、所望の溝蓋180に相当する長さが、すなわちたとえば積層薄板81または支持体90の長さに相当する長さが、区域192からそれぞれ切断される。切断装置280は、たとえば切断機構281、特にカッター、刃、鋸機構などを有している。
【0181】
ここで付言しておくと、積層薄板181ないしステータ80に代えて別の、すなわちこれよりも短い、または長いステータに、組立装置270を用いて溝蓋を付与することもできる。すなわち必要に応じてそのつど好適な溝蓋180が製造され、その長さは、装備されるべきステータの長さに合わせて適合化される。すなわち切断機構280は、たとえば切断カッターは、区域192からそれぞれ溝蓋180を切断し、次いで、これが保持機構271により把持されて、ステータ80に挿入される。
【0182】
保持機構271は、たとえばグリッパは、保持アーム272を含んでいて、これが形材体181ないし溝蓋180をその長手方向端部領域183で把持して、差込運動SBによって溝89に挿入することができる。保持機構271が吸引装置またはこれと同種の保持部材を有し、これが溝蓋180を底面187の領域で吸着して、差込運動SBを生成する力成分をもって溝89に差し込むことも容易に可能であろう。
【0183】
すなわち差込、接合、プレスなどによってモータ20,120の主要コンポーネントを、すなわちたとえば接続装置100や、溝蓋180を用いた溝89の蓋などを製造できることがわかる。
【0184】
以下に説明する磁石51の磁化も、このような組立コンセプトに準拠する。
【0185】
すなわち磁石51は、ロータ40,140ないし積層薄板41,141への組付けのときに、当初はまだ磁化されていない。つまりそれぞれの磁石体56の磁化可能な材料51Aは、それ自体としてまだ磁性のない磁石体52が保持収容部45のうちの1つへの差込工程またはプレス工程の枠内で差し込まれ、もしくは押し込まれるとき、当初は磁性を有していない。磁化可能な材料51Aは、たとえばネオジム-鉄-ホウ素(NdFeB)であって好ましくはジスプロシウムの添加物を含むもの、またはサマリウム-コバルト(SmCo)である。
【0186】
保持収容部45に、たとえばそれぞれの磁石体52の狭小面54を支持する支持突起48が設けられている。狭小面54は、磁石50がロータ40,140に組み付けられた状態にあるとき、回転軸Dに対して平行に延びる。磁石体52または磁石51が、それぞれの支持突起48の間にクランプされるのが好ましい。
【0187】
それぞれの狭小面54の間に、狭小面54に比べて広い面積の平坦面53が延びている。平坦面53の法線方向は、回転軸Dに対して径方向であるのが好ましい。
【0188】
積層薄板41,141は、磁石体52を保持するための保持突起49を有している。保持突起49はたとえば平坦面53に向かって突出し、その自由端領域をもって平坦面53に当接する。保持突起49が磁石体52といわば爪固定され、および/または受け部突起を形成すると好ましい。
【0189】
積層薄板41,141の薄板43は、回転軸Dに対して事前設定された角度位置に切欠き59Aを有する薄板43を含んでいる。切欠き59Aは、回転軸Dに関して径方向に、それぞれの保持収容部45の平坦面のうちの1つから離れるように、たとえば径方向内側に向かって回転軸Dへと延びるのが好ましい。切欠き59Aが回転軸Dに対して平行に軸線上で前後して配置されていると、すなわち相互に一直線上に並んでいると好ましい。いくつかの薄板43は、切欠きに突入する保持突起59を有している。さらに保持突起59は、それぞれの保持収容部45の差込断面に突入し、それにより、保持収容部45に磁石体52が差し込まれたときに磁石体52と係合し、磁石体52により、磁石体52が保持収容部45へ差し込まれる差込方向SRに屈曲される。その際に保持突起59を、隣接する1つまたは複数の薄板43の切欠き59Aの中へと押し除けることができる。そして、薄板43の狭小面の幅を有しているそれぞれの保持突起59の端面が、斜めに傾いたまま磁石体52の平坦面53に支持されて、保持収容部45から磁石体52が差込方向SRと逆向きに引き出されるのを防止する。
【0190】
磁石体52または磁石51は、保持収容部45の中にクランプ嵌めで収容されるのが好ましい。当然ながら、接着、溶接、またはこれと同種のその他の組付けも十分に可能であろう。すなわち磁化可能な材料51Aがそれぞれの積層薄板41,141に、まだ磁化されていない状態で差し込まれる。
【0191】
次いで、ロータ40,140がバランス調整装置285を用いてバランス調整される。そのときモータシャフト30,130は、および場合により絶縁スリーブ60は、すでに組み付けられている。すなわち、このようにロータ40,140をモータシャフト30,130によりその回転軸Dを中心としてモータ286を用いて回転させることができる。測定装置287が、たとえばロータ40,140のアンバランスを確認する。
【0192】
そして、まだ残っているアンバランスが取り除かれ、それは、たとえば材料削減装置288を用いて、たとえば研削装置、フライス加工装置などを用いて、少なくとも1つのバランス調整部分55が製作されることによる。その際に、たとえばバランス調整が必要な場所で、積層薄板41,141の材料が剥離され、切り屑、金属粉などが発生する。しかしそれは問題ではない。積層薄板41,141材料が加工されるときに、磁石体52がまだ磁化されていないからである。薄板43の剥離によって発生する切り屑、金属粉などが積層薄板41,141へ磁気的に付着することがないので、容易に除去可能である。すなわち駆動モータ20,120のその後の動作のときに、たとえば軸受24または25を損傷させかねない金属屑や粉が存在することがない。
【0193】
積層薄板41,141が回転軸Dに関して径方向で可能な限り大きい材料厚みまたは厚さを有している積層薄板41,141の領域に、すなわち特に磁石51に関して径方向外側に、バランス調整部分55が設けられると好ましい。すなわち、たとえばバランス調整部分の製作に不都合な領域でアンバランスUが生じているときには、アンバランスUが力ベクトルUxおよびUyに分解され、これらに応じて材料削減装置288によってたとえばバランス調整部分55xおよび55yが積層薄板41,141の径方向外側に製作される、ベクトル式のバランス調整が好ましい。バランス調整部分55xおよび55yは、たとえばアンバランスUに対して角度間隔をおいてそのすぐ隣に配置されている保持収容部55の、積層薄板41,141の径方向外側にある。
【0194】
ロータ40,140では、端面44にバランス調整体やバランス調整ウェイトは必要ない。それにより、たとえば空気通路46の流入開口部と流出開口部が、バランス調整ウェイトバランス調整体で塞がれることがない。さらに空気は磁石51の横を通って流れることもでき、すなわち、保持収容部45に設けられる、もしくは保持収容部45により提供される、空気通路46Aを通って流れることができる。空気通路46Aの流入開口部流出開口部も、バランス調整体やバランス調整ウェイトによって塞がれることがない。
【0195】
たとえば吹付け装置、ブラシ装置、および/または吸塵器などの洗浄装置289、が、材料削減装置288による材料剥離のときに発生する金属粒子をロータ40,140から、特にそれぞれの積層薄板41,141から、磁石体52が磁性を有さない限りにおいて容易に除去することができる。たとえば洗浄装置289は、切り屑などをバランス調整部分55の領域から除去するエアジェットLUを生成する。
【0196】
ロータ40,140がバランス調整されると磁化装置290によって磁化され、すなわち、特に磁石体52が磁気的に活性化される。磁化装置290は、たとえば磁化ヘッド291A,291B,291C,291Dを有する。
【0197】
たとえば磁化装置290は、磁石51が磁化ヘッド291に正しい角度で正確に向かい合うようにモータシャフト30,130を位置決めする、特に回転させる、位置決め装置292を含む。
【0198】
ロータ40,140は、それぞれ1つの磁化ヘッド291A,291B,291C,291Dが、それぞれ隣接する磁石51の間に配置されるように、機械的なコーディング57により磁化ヘッド291A,291B,291C,291Dに関して位置決めされるのが好ましい。
【0199】
たとえば回り止め輪郭74がコーディング57としての役目を果たし、これがたとえば磁化装置290のストッパ293に、特に回転ストッパに突き当たり、それによりロータ40,140が磁化ヘッド291に関して正しい回転角で配置される。ストッパ293は、バランス調整装置285との関連で図示している。あるいは、たとえば磁化装置290の対応するストッパが係合することができる、および/または光学式検出可能である空気通路46など、これ以外のロータ40のコンポーネントもコーディング57としての役目を果たすことができる。たとえば磁化装置290のカメラやその他の同種の光学センサによって、ロータ40,140の回転角位置の光学式の検出が可能であるのも好ましい。
【0200】
磁化ヘッド291A,291B,291C,291Dが磁界MFA,MFB,MFC,MFDを生成し、これが回転軸Dに関して角度間隔をおいて並んで配置された磁石体52または磁石51を貫通し、それによってこれが恒久的に磁化されて、N極NおよびS極Sとして図示する磁極を形成する。磁界MFA,MFB,MFC,MFDは、それぞれの磁束方向に応じて、矢印の付いた破線の力線で図面に示されている。
【0201】
ロータ40,140の磁石51が磁化されると、ロータ40,140がステータ80に組み付けられる。
【0202】
たとえば回転軸Dに対して平行に2つまたはそれ以上の磁石体52または磁石51を連続配置するなど、磁石51のための保持収容部45に複数の磁石体52または磁石51を配置可能であることは自明である。そのようなケースでも、それぞれの磁石体52がすでに保持収容部45に収容されていれば、その磁化が容易に可能である。
【0203】
磁化装置290による磁化にあたっては、積層薄板41,141の薄板43が磁気伝導性であるのも好ましく、それにより薄板が、磁化装置290の磁界292を最適に、磁石体52を貫通するように案内することができる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 第1の駆動モータ(120)と第2の駆動モータ(20)とを含む、特にモータモジュールの方式のシステムであって、それぞれの駆動モータ(20,120)は吸引器具(400)のために、または手動工作機械(200,300)もしくは半定置式の工作機械の形態の工作機械のために意図され、または、吸引器具(400)もしくは工作機械の構成要素を形成し、前記駆動モータ(20,120)は、励起コイル構造(86)を有するステータ(80)と、軸受構造(24A)により回転軸(D)を中心として回転可能に前記ステータに、または前記ステータ(80)に関して支承され、それぞれのモータシャフト(30,130)の保持区域(33)に保持された積層薄板(41,141)のシャフト通過開口部(42,142)を貫通するモータシャフト(30,130)を有するロータ(40,140)とをそれぞれ有する、システムにおいて、前記駆動モータ(20,120)の前記モータシャフト(30,130)の前記保持区域(33)が前記積層薄板(41,141)の領域で同一の外側円周ジオメトリーを有し、前記第1の駆動モータ(120)の前記積層薄板(141)は該積層薄板(141)を担持する前記モータシャフト(30,130)の前記保持区域(33)の外側円周に直接的に支持され、前記第2の駆動モータ(20)の前記積層薄板(41)は電気絶縁性の絶縁体(60A)を介して、該積層薄板(41)を担持する前記モータシャフト(30,130)の前記保持区域(33)に支持されることを特徴とするシステム。
[2] 前記第1の駆動モータ(120)は第1の動作電圧(P2)のために、特に60Vを下回る動作電圧のために構成され、前記第2の駆動モータ(20)は第2の動作電圧(P1)のために、特に60Vを上回る動作電圧のために構成されることを特徴とする、[1]に記載のシステム。
[3] 前記第1の駆動モータ(120)は、特に蓄電池パックなどの電気的なエネルギー蓄積器を用いた動作のために構成され、前記第2の駆動モータ(20)は、電気的な交流電圧電源を用いた電源動作のために構成されることを特徴とする、[1]または[2]に記載のシステム。
[4] 前記第1の駆動モータ(120)および前記第2の駆動モータ(20)の前記ステータ(80)が、特に前記ステータ(80)の積層薄板(81)が、外側で幾何学的に同一であり、および/または同一の外側円周ジオメトリーを有することを特徴とする、[1]から[3]のうちいずれか1項に記載のシステム。
[5] 前記第1の駆動モータ(120)および前記第2の駆動モータ(20)の前記ステータ(80)が、前記ステータ(80)の同一の支持体(90)に配置される同一の積層薄板(81)を有することを特徴とする、[1]から[4]のうちいずれか1項に記載のシステム。
[6] 前記第1の駆動モータ(120)と前記第2の駆動モータ(20)は、励起コイル(87,87B)がそれぞれ異なる巻回数および/またはそれぞれ異なる導体断面を有する、それぞれ異なる励起コイル構造(86,86B)を有し、特に、前記第1の駆動モータ(120)は第1の動作電圧で作動可能であり、前記第2の駆動モータ(20)は前記第1の動作電圧とは相違する第2の動作電圧で作動可能であることを特徴とする、[1]から[5]のうちいずれか1項に記載のシステム。
[7] 前記第1の駆動モータ(120)および前記第2の駆動モータ(20)の前記ステータ(80)は回転軸(D)に関して互いに反対を向くほうの長手方向端部領域で、それぞれ異なる前記励起コイル構造(86)の励起コイル(87)を収容するための支持突起の同一の配置を有することを特徴とする、[1]から[6]のうちいずれか1項に記載のシステム。
[8] 前記第1の駆動モータ(120)および前記第2の駆動モータ(20)の前記ステータ(80)は、特に前記ステータ(80)の支持体(90)は、接続導線(15)の接続のために意図される接続装置(100)を差し込むための少なくとも1つの差込収容部(96)を有し、差込装置は前記差込収容部(96)に収容された状態にあるとき、前記励起コイル構造(86)の励起コイル(87)の少なくとも1つのコイル導体(88)と前記接続導線(15)によって電気的に結合されることを特徴とする、[1]から[7]のうちいずれか1項に記載のシステム。
[9] 前記駆動モータ(20,120)の前記モータシャフト(30,130)は互いに反対を向いているそれぞれの前記ステータ(80)の長手方向端部領域で前記軸受構造(24A)の第1の軸受(24)および第2の軸受(25)に回転可能に支承され、前記第1の軸受(24)および前記第2の軸受(25)の領域における両方の前記駆動モータ(20,120)の前記ステータ(80)は、および/またはそれぞれの前記ステータ(80)に配置されて前記第1または前記第2の軸受(24,25)を担持する少なくとも1つの軸受カバーは、幾何学的に同一であることを特徴とする、[1]から[8]のうちいずれか1項に記載のシステム。
[10] 前記絶縁体(60A)は前記シャフト通過開口部(42,142)の領域で少なくとも2mmの壁厚を有することを特徴とする、[1]から[9]のうちいずれか1項に記載のシステム。
[11] 前記絶縁体(60A)は前記積層薄板(41,141)の端面の前に突出する少なくとも1つの絶縁区域(76)を有することを特徴とする、[1]から[10]のうちいずれか1項に記載のシステム。
[12] 前記絶縁区域(76)により少なくとも5mm、好ましくは少なくとも7mm、特に少なくとも8mmの絶縁距離が前記積層薄板(41,141)と前記モータシャフト(30,130)との間で形成されることを特徴とする、[11]に記載のシステム。
[13] 前記絶縁区域(76)は、差込軸に関して前記絶縁区域(76)の隣に配置された、前記積層薄板(41,141)の前記シャフト通過開口部(42,142)に収容されている絶縁スリーブ(60)の区域の前に、回転軸(D)に関して径方向外側に向かって突出するのではない管状区域(63)を含み、または該管状区域(63)によって構成されることを特徴とする、[11]または[12]に記載のシステム。
[14] 前記絶縁区域(76)は、前記積層薄板(41,141)に収容されている前記絶縁体(60A)の管状区域(63)の前へ回転軸(D)に関して径方向外側に向かって突出する、特に環状のフランジ体(68)を含むことを特徴とする、[11]から[13]のいずれか1項に記載のシステム。
[15] 前記絶縁体(60A)は絶縁スリーブ(60)によって構成され、または絶縁スリーブ(60)を有し、該絶縁スリーブは前記シャフト通過開口部(42,142)に差し込まれ、前記モータシャフト(30,130)と前記積層薄板(41,141)との間に配置され、差込開口部(64A)を備えた差込収容部を有し、該差込開口部を通して前記モータシャフト(30,130)が差込軸に沿って前記差込収容部へ差し込まれることを特徴とする、[1]から[14]のうちいずれか1項に記載のシステム。
[16] 前記絶縁体(60A)は、特に絶縁スリーブ60)は、差込軸に関して前記積層薄板(41,141)の全面的な長さにわたって延び、および/または前記積層薄板(41,141)は前記絶縁スリーブ(60)のみによって前記モータシャフト(30,130)から電気絶縁されることを特徴とする、[1]から[15]のうちいずれか1項に記載のシステム。
[17] 前記モータシャフト(30,130)は、前記絶縁スリーブ(60)の差込開口部(64A)の前に、および/または前記差込開口部(64A)に対して反対を向くほうの前記絶縁スリーブ(60)の長手方向端部領域に設けられる差込収容部(64)の出口開口部(64B)の前に、突出することを特徴とする、[15]または[16]に記載のシステム。
[18] 前記絶縁スリーブ(60)は差込軸に関して前記積層薄板(41,141)に突き当たるための少なくとも1つの長手方向ストッパを有し、および/または差込軸に関して前記積層薄板(41,141)に支持されるために前記絶縁スリーブ(60)の管状区域(63)の前へ突出するフランジ体(68)を有することを特徴とする、[15]から[17]のいずれか1項に記載のシステム。
[19] 前記絶縁スリーブ(60)は前記積層薄板(41,141)と前記モータシャフト(30,130)との間で回転軸(D)に対して径方向の力方向に、および/または回転軸(D)に対して平行の力方向に応力をかけられ、および/または前記絶縁スリーブ(60)は前記モータシャフト(30,130)により回転軸(D)に関して径方向外側に向かって前記積層薄板(41,141)とともに応力をかけられることを特徴とする、[15]から[18]のいずれか1項に記載のシステム。
[20] 前記絶縁スリーブ(60)は前記駆動モータの動作温度を下回る状態のときに、および/または40℃を下回る温度のときに、前記シャフト通過開口部(42,142)に差し込まれることを特徴とする、[15]から[19]のいずれか1項に記載のシステム。
[21] 前記絶縁スリーブ(60)には少なくとも1つの形状接合部分が構成され、該形状接合部分で前記絶縁スリーブ(60)が、差込収容部(64)に差し込まれた前記モータシャフト(30,130)により、回転軸(D)に関して径方向外側に向かって前記積層薄板(41,141)と形状接合式に係合するように押し除けられることを特徴とする、[15]から[20]のいずれか1項に記載のシステム。
[22] 少なくとも1つの受け部突起が前記積層薄板(41,141)から前記シャフト通過開口部(42,142)の中に突出し、該受け部突起は前記絶縁体(60A)に、特に絶縁スリーブ(60)に食い込み、および/または前記絶縁体(60A)は、特に前記絶縁スリーブ(60)は、特にプラスチック、特にポリアミド、好ましくはPa6/66 Gf30からなり、および/または前記絶縁スリーブ(60)は少なくとも120°の温度まで固体構造を維持することを特徴とする、[1]から[21]のうちいずれか1項に記載のシステム。
[23] 第1の駆動モータ(120)および第2の駆動モータ(20)を製造する方法であって、それぞれの駆動モータ(20,120)は吸引器具(400)のために、または手動工作機械(200,300)もしくは半定置式の工作機械の形態の工作機械のために意図され、または、吸引器具(400)もしくは工作機械の構成要素を形成し、前記駆動モータ(20,120)は、励起コイル構造(86)を有するステータ(80)と、軸受構造(24A)により回転軸(D)を中心として回転可能に前記ステータに、または前記ステータ(80)に関して支承され、それぞれのモータシャフト(30,130)の保持区域(33)に保持された積層薄板(41,141)のシャフト通過開口部(42,142)を貫通するモータシャフト(30,130)を有するロータ(40,140)とをそれぞれ有する、方法において、前記保持区域(33)が前記積層薄板(41,141)の領域で同一の外側円周ジオメトリーを有するモータシャフト(30,130)が使用され、前記第1の駆動モータ(120)の前記積層薄板(141)が第1のモータシャフト(130)に組み付けられ、前記第2の駆動モータ(20)の前記積層薄板(41)が第2のモータシャフト(30)に組み付けられ、それにより前記第1の駆動モータ(120)の前記積層薄板(141)が、該積層薄板(141)を担持する前記モータシャフト(30,130)の前記保持区域(33)の外側円周に直接的支持され、前記第2の駆動モータ(20)の前記積層薄板(41)は電気絶縁性の絶縁体(60A)を介して、該積層薄板(41)を担持する前記モータシャフト(30,130)の前記保持区域(33)に支持されることを特徴とする方法。