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特許7571020クロマトグラフィカラムおよびそれを組み立てる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】クロマトグラフィカラムおよびそれを組み立てる方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/60 20060101AFI20241015BHJP
   G01N 30/56 20060101ALI20241015BHJP
   B01D 15/22 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
G01N30/60 A
G01N30/56 E
G01N30/56 A
G01N30/60 E
B01D15/22
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021531791
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2019083735
(87)【国際公開番号】W WO2020115165
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】1819984.4
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・サロモンソン
(72)【発明者】
【氏名】マッツ・ルンドクヴィスト
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00213901(EP,A2)
【文献】国際公開第2012/074452(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02239029(EP,A1)
【文献】登録実用新案第3187642(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0193052(US,A1)
【文献】国際公開第2018/087339(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
B01D 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィ分離カラムアセンブリ(100)であって、カラム容積(50)を部分的に画成する内壁面(124)を含むシリンダ壁(126)を有するカラムシリンダ(120)と、シリンダ(120)に挿入可能な第1および第2のカラムコンポーネント(110,130)とを具備し、前記第1のカラムコンポーネント(110)は、アダプタプレート(110)を備え、かつ前記第2のカラムコンポーネント(130)は、基部(130)を備え、前記第1および第2のカラムコンポーネントの少なくとも1つのエッジ領域(113,133)は、使用時に前記内壁面(124)の一部に接触すること、または隣接することが意図されており、前記エッジ領域(113,133)および前記内壁面(124)の前記接触するか、または隣接する部分は各々、1つまたは複数の相溶性のある熱可溶性材料から形成され、前記内壁面(124)の前記接触するか、または隣接する部分の領域内の少なくとも前記シリンダ壁(126)は、前記アダプタプレート(110)および前記基部(130)の前記エッジ領域と前記内壁面(124)との融合を引き起こすために必要な光エネルギーの透過を許容する材料から形成され、前記アダプタプレート(110)は、周りに配設される摺動シール(115)をさらに備える、クロマトグラフィ分離カラムアセンブリ(100)。
【請求項2】
前記光エネルギーは、前記熱融合を引き起こすのに十分な出力を有するレーザーによって供給される、請求項1に記載のカラムアセンブリ。
【請求項3】
前記シリンダ壁(126)は、少なくとも前記内壁面(124)の前記接触するか、または隣接する部分の前記領域において、アモルファスまたは他の一般的に光透過性を有する熱可塑性材料、たとえばセミアモルファスから形成されており、これは、光(本請求項が請求項2に従属する場合にはレーザー光)エネルギーの少なくとも一部が壁を通して伝播し前記熱融合を引き起こすことを可能にする、請求項1または2に記載のカラムアセンブリ。
【請求項4】
さらなるコンポーネントは、少なくとも前記エッジ領域において、前記シリンダ壁を通して伝達される任意の(レーザー)光エネルギーの少なくともかなりの割合の吸収を可能にする特性を有する結晶性の、半結晶性の、着色された、充填された、またはコーティングされた熱可塑性プラスチックから形成される、請求項1、2、または3に記載のカラムアセンブリ。
【請求項5】
前記カラムシリンダのアモルファスまたは他の一般的に光透過性を有する熱可塑性材料は、PMMAである、請求項3または4に記載のカラムアセンブリ。
【請求項6】
前記カラムシリンダは、前記エッジ領域に類似する材料、たとえばPPから任意選択で形成された、内側シリンダライナーをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のカラムアセンブリ。
【請求項7】
クロマトグラフィカラムの内側の請求項1から6のいずれか一項に記載のクロマトグラフィカラムアセンブリのコンポーネントを融合するための方法であって、
a)内面(124)を含む壁(126)を有するクロマトグラフィカラムシリンダ(120)を提供するステップであって、前記壁(126)は、カラム容積(50)を部分的に画成する、ステップと、
b)前記カラムシリンダ(120)の内側の第1および第2のカラムコンポーネント(110,130)を提供するステップと、
c)光エネルギーが前記壁の光エネルギー透過性材料を通って前記第1および第2のカラムコンポーネントそれぞれの方へ伝播することを引き起こすステップであって、前記光エネルギーは、光の伝播経路が前記第1および第2のカラムコンポーネントそれぞれのエッジ領域(113,133)と交わる溶融領域(125,135)において、前記コンポーネントそれぞれの熱可溶性材料を前記壁の熱可溶性材料に熱融合するのに十分な大きさである、ステップと、
d)前記壁および前記それぞれのコンポーネントに関して相対的に前記伝播経路を移動させるステップと、
e)ステップd)から結果として生じる前記移動の間に、ステップc)を継続するか、または前記溶融領域のさらなる位置においてステップc)を繰り返すステップと
を含む、方法。
【請求項8】
ステップe)は、前記カラムシリンダの周りに熱融合材料の連続する継ぎ目をもたらすように継続されるか、または間欠的に融合された材料をもたらすように繰り返される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記光エネルギーは、連続的に、またはパルス、たとえば、繰り返しパルスとして供給されるレーザー光エネルギーである、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記カラム容積をクロマトグラフィ媒体で少なくとも部分的に充填し、媒体を前記コンポーネントで圧縮し、前記圧縮が少なくとも部分的に維持されている間に、ステップc)、ステップd)、およびステップe)を実行するステップをさらに含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記圧縮は、融合ステップが完了した後、解放される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか一項に記載のカラムアセンブリ(110)を含む、プリパックされた使い捨て型クロマトグラフィカラムアセンブリ。
【請求項13】
請求項1から6のいずれか一項に記載のクロマトグラフィ分離カラムアセンブリ(110)を製造するためのクロマトグラフィカラムコンポーネント融合装置であって、クロマトグラフィカラムシリンダ(120)支持テーブル(216)を含むフレーム(210)と、シリンダ(120)内に挿入可能なクロマトグラフィカラムのコンポーネント(110,130)に対する支持体(216,224)とを備えるクロマトグラフィカラムコンポーネント融合装置であって、装置は、前記コンポーネントのエッジ領域(113、133)の方へ前記シリンダの壁(126)を通して伝播するように向き付け可能であり、前記エッジ領域(113,133)に接触しているか、または隣接している前記シリンダの内壁面の領域(125,135)との前記エッジ領域(113,133)の熱融合を引き起こすのに十分な大きさを有する光エネルギーを提供するためのレーザー光生成器(220)をさらに含む、クロマトグラフィカラムコンポーネント融合装置。
【請求項14】
前記アダプタプレートを操作してシリンダ内に入れ、前記シリンダの容積内に配設されているクロマトグラフィ媒体を圧縮するためのアクチュエータ(224)をさらに含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記支持体は、ターンテーブル(216)を含み、前記ターンテーブル(216)、前記アクチュエータ(224)、およびレーザー光源(220)は、コントローラ(230)によって制御されて、前記ターンテーブルの回転軸(A)の周りで前記シリンダの内面への前記アダプタプレートの連続的または間欠的な融合をもたらす、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィ分離に使用されるクロマトグラフィカラムの製作およびそのコンポーネント、ならびにそのようなカラムおよびコンポーネントを製作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィに使用されるクロマトグラフィカラムアセンブリは、懸濁液中の検体混合物の構成要素、たとえば、化合物、タンパク質、または液体懸濁液中の他の物質を分離する機能を有する。知られているカラムは、使用中の液体を封入するための分離容積を備えている。使用時に、容積は、典型的には、修飾アガロースからなる樹脂などの多孔質分離媒体(固定相と呼ばれることが多い)と混合された担体液(移動相と呼ばれることが多い)を含む。容積の一端に加えられた混合物中の構成要素の実質的な分離は、検体混合物が担体液によって担持された多孔質媒体を通って流れ、容積の対向端に到達するときに行われる。
【0003】
分離プロセスの前に、ベッドは、カラムアセンブリ容積内に導入されていなければならない分離媒体の懸濁液から始めて準備されなければならない。ベッド形成のプロセスは、「充填手順」と呼ばれ、特に充填ベッドでは重要である。充填ベッドは、典型的には、媒体粒子の懸濁液の圧密によって形成される。たとえば、ベッドは、アダプタプレートとして知られているピストン構成を使用して圧縮され、これにより過剰な担体液が除去される。この手順の目標は、理想的な均質性を有するベッドを提供することである。大規模カラムは、好ましくは、アダプタプレート内の中央スラリーノズルを通して媒体粒子のスラリーを注入することによって調製される。この手順における過剰な液体は、カラム出口のところで除去されるが、粒子は、フィルター材、すなわち、いわゆる「ベッドサポート」を用いて保持される。プロセスは、充填されたベッドがクロマトグラフィカラム内の所望の容積を均一に満たした時点で完了する。充填プロセスは、充填されたベッドの均質性および安定性によりベッドの上の一貫した滞留時間分布に関して定量化される良好で堅牢なクロマトグラフィ性能が得られ、カラムアセンブリの出口のところで検体の狭いバンドを提供する場合に成功していると考えられる。
【0004】
従来、アダプタプレートは、容積を調整するためにカラム壁に関して相対的に移動可能であり、使用後に分解および洗浄のためにカラム壁から分離可能である。このような構成において、分解および洗浄が可能なように機械的締めが使用される。次いで、顧客が次の手順のためにカラムを再充填することが可能である。しかし、バイオバーデンの低い、たとえば実質的に無菌の状態でプリパックされて供給され、すぐに使用できるシングルユースカラムを求める声が高まっている。この場合、充填手順は、依然として、アダプタプレートを必要とするが、充填は、供給者の施設で、管理された無菌状態下で行うことができ、汚れていないカラムは、追跡可能な品質保証を付けて顧客に出荷され得る。本発明者らは、代替として、たとえば、普通でないサイズまたはカスタマイズされた分離媒体が採用される場合に、顧客がシングルユースのために独自の充填カラムを生産し得ることもさらに予想している。いかなる場合においても、充填後にプレートを適所に保持し、分離手順において流体圧力に抵抗するように、たとえば、カラム壁とアダプタプレートとの間に機械的締め具を用いて、アダプタプレートを適所に保持することが依然として必要である。当業者であれば、接着剤などを用いてアダプタプレートを適所に保持することを思いつき得るが、カラムの内壁は多くの場合に湿っており、プレートは押し下げられすでに湿っていた内壁が分離媒体を圧縮するので、接着剤を塗布することは望ましくないと考えられる。それに加えて、プラスチックがシングルユースカラムに使用されることがより一般的であり、強い溶剤を使用しないか、または他の何らかの形で検体に影響を与えないプラスチックに接着するための好適な無毒であるかもしくは低毒性の接着剤を見つけることもまた問題になる。さらに、特に小さいカラムに対しては、カラムシリンダ壁の内側での作業はしにくいか、または不可能であり、アダプタプレートを押すための手段は、多くの場合に、カラムの頂部口部の内側へのアクセスを妨げる。機械的な固定手段は、従来、タイバーを含み、これはバーの張力により対向するカラムアセンブリのエンドプレートを適所に保持する。次いで、その張力に対して、カラムシリンダ内の圧縮が反応するが、これは作動流体圧力だけに耐えるのではなく、タイバーまたは同様のものによって印加される圧縮力にも耐えるように十分に強くされなければならないことを意味する。したがって、アダプタプレートを低コストで迅速にシングルユースカラムのカラムシリンダ壁の内側の適所に固定することは問題となる。
【0005】
分離された検体混合物構成要素のバンドの歪みを避けるために、知られているカラムは均一な断面積を有し、それにより、カラムシリンダ構造は、通常、入口と出口を組み込んだ平坦な端部を有する直円柱を含む。平坦な端部は、上述のアダプタプレートに加えてもよい。そのようにして、構成要素は、断面積の変化を受けることなく、ベッドの端から端まで均一に進行する。カラムアセンブリをステンレス鋼などの金属から完全に形成することが可能であるとしても、カラムアセンブリの端部のところでいくつかの金属コンポーネントを使用するが、カラムシリンダには、透明材料、すなわち、小さな容積分離(<1リットルのカラム容積)に対してはガラス、または中から大の容積分離(>1リットル)に対してはアクリルプラスチック(ポリメチルメタクリレートPMMA)を使用することが好ましい。透明材料は、手作業を行うときには重要であり、手順が自動化されたときには、これにより進行状況を視覚的に確認できる。熱可塑性PMMAは、機械的強度に優れ、透明にすることができるため、PMMAは、カラムシリンダに広く使用されている。複合プラスチックカラムシリンダは、同時係属特許出願WO2018087399において説明されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれている。熱可塑性プラスチック製作物は、シングルユースカラムアセンブリに適しているが、カラムが充填された後にアダプタプレートを適所に保持することは依然として問題であり、従来は、たとえばWO2018087399に示されているように、上述のタイプの機械的固定具を使用して対処している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2018087399
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上述の問題に対処する実施形態をここに提示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様により、カラム容積を部分的に画成する内壁面を含むシリンダ壁を有するカラムシリンダと、シリンダ内に挿入可能なカラムコンポーネントとを備えるクロマトグラフィ分離カラムアセンブリが提供され、カラムコンポーネントの少なくとも1つのエッジ領域は、使用時に内壁面の一部に接触すること、または隣接することが意図されており、エッジ領域および内壁面の接触するか、または隣接する部分は各々、1つまたは複数の相溶性のある熱可溶性材料から形成され、内壁の接触するか、または隣接する部分の領域内の少なくともシリンダ壁は、アダプタプレートのエッジ領域と内壁面との前記融合を引き起こすために必要な光エネルギーの透過を許容する材料から形成される。
【0009】
これにより、カラムコンポーネントがアダプタプレート、またはシリンダに嵌め込まれ、プラスチックなどの熱可溶性材料から形成されたエンドプレートである場合、熱融合は、たとえば、レーザー溶接を用いて、レーザーからのエネルギーがカラム壁を通って内壁面に伝播するときに行われるものとしてよく、このエネルギーは、光エネルギーの吸収によって熱に変わり、これはコンポーネントのエッジ領域と内壁面の一部を一緒に溶かすのに十分な熱である。さらなる位置における壁とコンポーネントとのさらなる融合により、コンポーネントとシリンダとが一緒にしっかりと固定される。
【0010】
一実施形態において、カラム壁は、少なくとも関連する光透過性位置において、アモルファスまたは他の一般的に光透過性を有する熱可塑性プラスチック、たとえば、セミアモルファスから形成され、これは、レーザー光エネルギーの少なくとも一部が壁を通って伝播し前記熱融合を引き起こすことを可能にする。
【0011】
一実施形態において、さらなるコンポーネントは、少なくともエッジ領域において、壁を通して伝達される任意のレーザー光エネルギーの少なくともかなりの割合の吸収を可能にする特性を有する結晶性の、半結晶性の、着色された、充填された、またはコーティングされた熱可塑性プラスチックから形成される。
【0012】
本発明のさらに別の態様により、クロマトグラフィカラムの内側でクロマトグラフィカラムアセンブリのコンポーネントを融合するための方法が提供され、この方法は、
a)内面を含む壁を有するクロマトグラフィカラムシリンダを提供するステップであって、壁は、少なくとも部分的に光エネルギー透過性および熱融合性を有する熱可塑性材料から少なくとも部分的に形成される、ステップと、
b)内面の一部と接触するか、または隣接するように適合されているエッジ領域を有するカラムの内側のコンポーネントを提供するステップであって、エッジ領域は、少なくとも壁の熱可溶性の熱可塑性材料と相溶性のある熱可溶性の熱可塑性材料から形成される、ステップと、
c)光エネルギーが壁の光エネルギー透過性材料を通ってコンポーネントの方へ伝播することを引き起こすステップであって、光エネルギーは、光の伝播経路がエッジ領域と交わる溶融領域においてコンポーネントの熱可溶性材料を壁の熱可溶性材料に熱融合するのに十分な大きさである、ステップと、
d)壁およびコンポーネントに関して相対的に伝播経路を移動させるステップと、
e)ステップd)から結果として生じる前記移動の間に、ステップc)を継続するか、または溶融領域のさらなる位置においてステップc)を繰り返すステップと
を含む。
【0013】
実施形態において、ステップe)では、熱融合材料の連続する継ぎ目、または「縫われた」融合領域に類似する、間欠的に融合された材料を提供し得る。コンポーネントは、摺動するシールを含み得るので、連続する融合された継ぎ目を設ける必要はなく、その代わりに、融合材料は流体シールを設けることなくコンポーネントを適所に固定するだけでよい。光エネルギーは、連続的に供給されるか、またはパルスとして、たとえば、繰り返しパルスとして供給されるかのいずれかであるレーザー光であってよい。ここで、「光」は、限定はしないが可視光の波長を含む、可視光スペクトルまたはその付近の電磁エネルギーを意味する。
【0014】
本方法は、コンポーネントがカラムの容積内のクロマトグラフィ媒体を強制的に圧縮し、融合ステップが完了した後、圧縮力が解放される間に、実行されてもよい。
【0015】
本発明は、上述の方法、または類似の方法を実施するための装置にも及ぶ。
【0016】
本発明のさらに多くの利点および利益は、以下の詳細な説明に照らせば、当業者にとって容易に明らかなものとなる。
【0017】
次に、本発明は、添付図面を参照しつつ、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によるクロマトグラフィカラムアセンブリの分解図である。
図2】アセンブリ装置内に装着された、図1のカラムアセンブリを示す図である。
図3】アセンブリ装置内に装着された、図1のカラムアセンブリを示す図である。
図4】アセンブリ装置内に装着された、図1のカラムアセンブリを示す図である。
図5a図1に示されているカラムシリンダの代替であるカラムシリンダを示す図である。
図5b図1に示されているカラムシリンダの代替であるカラムシリンダを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、未充填のクロマトグラフィカラム100アセンブリの分解図であり、これは中空熱可塑性円筒形カラム120、熱可塑性基部130、および熱可塑性アダプタプレート110を備え、各々クロマトグラフィカラムアセンブリ100を提供するために以下で説明されている方式で接続可能である。
【0020】
アセンブリは、各々簡略化して図示されている頂部ポート112および下側ポート132を備える。実際には、これらのポートは、内壁124とアダプタプレート110および基部130の内壁面114および134との間にそれぞれ画成されている、ここでは約10~50リットルの容量のクロマトグラフィカラム容積50を出入りする流路を開閉するための複数の入口、出口、および弁を収容することができる。以下で説明されるように、摺動するシール115がアダプタプレートの周りに配設される。アダプタプレート110および基部130のエッジ領域113および133はそれぞれ、以下で説明されているような熱融合によってカラムシリンダ壁126の内面124に組み付けられる。
【0021】
図2は、アセンブリ装置200内の、部分的に組み立てられたクロマトグラフィカラム100を示している。アセンブリ装置200は、架空支持アーム212を含む支持フレーム210と、シリンダ120およびベース130の中心軸Artsを中心に回転可能なターンテーブル216を備える基部214とを具備する。また、基部214上に、ターンテーブル216を制御可能に回転し、フレーム210上で摺動可能にレーザー220を上下移動するための駆動手段218が配置されている。図2において、アダプタプレート110は、ヨーク222によって支持されている。ヨークは、アクチュエータ、この場合には電気制御リニアアクチュエータ224を用いて軸A上で上下移動可能である。駆動手段218、アクチュエータ224、およびレーザー220は、コントローラ230を用いて一括して制御可能である。使用時に、例示されている構成において、レーザー220は、その出力光Lが軸Aに関して基部130の半径方向外向きになるような高さに、駆動手段218によって位置決めされる。レーザー220は、カラムシリンダ120の壁126を通過して容易に伝播し、基部130のエッジ領域のところで吸収されるレーザー光Lを生成するように制御され、これにより基部エッジは溶融し、熱融合の連続リング135においてカラム120の内面124と融合する。その熱融合リング135は、カラム120と基部130との間にシールを設ける。以下で説明されているその融合およびカラム充填ステップはすべて、無菌室250内などの無菌環境内で行われる。
【0022】
図3において、カラムアセンブリ100が図示されており、アセンブリ装置200は、より明確にするためにその特徴の一部を省略して図示されている。この図では、ヨーク222は、アクチュエータ224によって矢印Dの方向に下がっており、これにより、アダプタプレート110はカラムシリンダ120の内側にあり、クロマトグラフィ媒体Mが上側ポート112を介して容積50内に導入されている。十分な媒体Mが導入されると、カラムアセンブリ100の下側ポート132が閉じられる。
【0023】
図4は、カラムアセンブリ100およびアセンブリ装置のさらなる図を示している。この図では、ヨーク222は矢印Dの方向にさらに下がり、アダプタプレート110は容積50内に押し込まれてメディアの圧縮ベッドを提供する。アダプタプレートシール115は、カラム120の内壁面とアダプタプレート110のエッジ113との間から媒体が漏れるのを防ぐ働きをする。この位置で、レーザー220は、その出力がアダプタプレート110のエッジと同じ高さになるように駆動装置218によって持ち上げられる。レーザー220は、レーザー光Lを生成するように制御され、このレーザー光Lは、再び、カラム壁126を通って伝播し、アダプタプレート110のエッジ113によって吸収され、それによってシール115より上の、アダプタプレートのエッジを、領域125において、カラム120の内面124に熱融合する。この場合、熱融合領域125は、シール115が液体封止を行うので間欠的であり得、熱融合領域125は、流体作動圧力によってアダプタプレートがカラムシリンダから押し出されるのを防ぐのに十分な接着強度を備えるだけでよい。次いで、上側ポート112を閉じると、完全封止されたクロマトグラフィカラムがもたらされ、これは、上側および下側ポート112/132の上を覆う輸送シールを取り除き、好適な導管を接続し、閉鎖システム(図示せず)内でポートを開くことによって単純に使用することができ、現在プリパックされているカラムアセンブリ100の使用前にカラム充填作業を実行する必要はない。
【0024】
代替カラム120’が図5aに示されている。カラムシリンダ120’は、ポリプロピレン(PP)のチューブから形成された内側層123と、内部チューブ123にメチルメタクリレート液状樹脂を重ね合わせ、それを、有機過酸化物、たとえばフタル酸ジメチル、過酸化シクロヘキサン、またはフタル酸ジアリル中に溶解された過酸化メチルエチルケトン(MEKP)などの触媒を使用して重合することによって、内部PPチューブ123上に直接形成されたPMMAポリマーから形成された外側層127とを含む。これによって、層と層との間に隙間または空隙がない単一成分2層構造が形成される。重合するときのPMMAのわずかな収縮が、内側層123と外側層127との間の機械的接着を高める。この複合構造は、たとえば、図1に示されているように、クロマトグラフィカラムアセンブリ100において使用される。
【0025】
図5bは、カラムアセンブリ100の熱融合材料125/135の一部の拡大部分断面図を示す。この場合、アダプタプレート110または基部130は、たとえば、図4に示されているように、カラムシリンダ壁126の内側に嵌め込まれている。レーザー光Lは、カラムの外側PMMA層127を通して伝播し、内側PP層123の部分的透過特性の結果、外側層127を超えて数ミリメートルほど、アダプタプレート113または基部133のエッジに伝播している。レーザー光Lは、エッジ領域113/133と内面124との間の境界と一致する領域125/135において局部加熱を引き起こすのに十分なエネルギーを有するレーザー光である。この構成では、内部チューブ123、さらにはエッジ領域113/133をも溶融することが可能である。連続的または間欠的な相対的回転Rをレーザー220の制御と併せることで、所望の熱融合の大きさが得られ、連続(例示されているような)または不連続な溶接された継ぎ目が形成され得る。
【0026】
したがって、上記は、シリンダの内部容積50にアクセスしなくても、基部130、アダプタプレート110、またはカラムシリンダ内の任意の他のコンポーネントと、そのシリンダの内面との間の効果的な機械的固定をもたらすことがわかる。
【0027】
ここで、熱可塑性物質は、特に温度が上昇したときに可塑性を示し、その温度がさらに上昇したときに流動し始めるポリマー材料を包含するものと考えられる。したがって、隣接する熱可塑性材料を熱融合を用いて共に溶接することが可能である。典型的には、そのような熱融合は、約120~350℃の範囲内で生じる。
【0028】
熱可塑性プラスチックは、アモルファス(クリア/ガラス状)または半結晶(乳白色に見える)としてさらに特徴付けられ得る。半結晶性プラスチックは、アモルファス材料に囲まれている小さな結晶を有する。結晶は、光を拡散し、その結果、乳白色に見える。この性質は、レーザー放射の損失のない透過を制限する。レーザー光の高い吸収が望ましい場合、カーボンブラックなどのフィラーがプラスチックに添加され得る。ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン(PA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)HDPE、PA、PTFE、PET、PEEKなどのプラスチックは、一般的に半結晶性プラスチックとして形成されるが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、およびポリスチレン(PS)は、アモルファスプラスチックとして容易に形成され得る。そのようなプラスチックは、上記の実施形態において述べたプラスチックの代用として使用できる。
【0029】
上述のレーザー溶接は、正しい波長のレーザー光がアモルファスプラスチックを通してほとんどまたは全く損失なく伝播するが、レーザー光は半結晶性プラスチック中に急速に吸収され、半結晶性プラスチックの表面またはその近くで、十分なレーザー光エネルギーが吸収されて局部的溶融を引き起こし、その結果、その局部的プラスチックの熱融合が生じるという原理に依存する。レーザー光の浸透深さは、レーザー光の波長に非常に大きく依存する。したがって、上で例示され、説明されている実施形態において、カラムシリンダ120は、上で説明されているPMMAなどのアモルファス熱可塑性プラスチックから完全にまたは部分的に製造されることが好ましい。代替的に、好ましくは、上述したカラム120’は、強度を高めるためのアモルファス熱可塑性プラスチック127と、耐薬品性を高めるための上述のPPなどの半結晶性熱可塑性プラスチックの内部チューブ123との複合体として形成される。本発明では、採用されるレーザー溶接技術は、透過レーザー溶接であり、ビームLは、カラム120/120’の外壁126/127を通して送達され、エネルギーをほとんど失うことなく内面124に伝播し、そこで加熱および溶融が行われる。加熱は、溶接されるべきエッジ領域113、133のレーザー吸収特性、および/またはエッジ領域における添加剤および/またはコーティングによって部分的に決定される。
【0030】
750~1500nmの範囲内の波長のレーザーは良い結果をもたらし、これはダイオード、ファイバ、ネオジム添加イットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)レーザーによってもたらされ得る。必要なレーザー出力は、毎分数メートルの十分に速い溶接速度に対して1000W未満、典型的には約200Wである。波長は長いほど高いエネルギー吸収率をもたらし、10μm程度の波長まで、アモルファスプラスチックを含む任意のプラスチックにエネルギーの大半が吸収される。したがって、このプロセスに対しては、10μm未満の波長が必要である。この範囲内のエネルギー吸収の程度は、プラスチック中の添加剤の有無、およびプラスチックが半結晶であるかアモルファスであるかにも依存する。熱可塑性プラスチック、たとえばPPライナー123中にフィラーまたは顔料が存在していない場合、750~1500nmの波長のレーザー光は、半結晶性プラスチック中を数ミリメートル貫通し、アモルファスプラスチックカラム層127ではほとんど全く減衰しない。たとえば、エッジ領域113/133内で顔料またはフィラー、特にカーボンブラック顔料などの添加剤を用いて、エッジ領域113/133のところで吸収が最大化されるように工夫することができる。
【0031】
本発明は、上で説明されている実施形態によって制限されているものとみなされるべきでないが、当業者には容易に明らかであるように付属の請求項の範囲内で変更され得る。たとえば、説明されている熱可塑性材料は、実用性を維持しながら変更されることもあり得る。熱可塑性材料は、関連する領域でのみ使用される必要があり、異なる材料、たとえば、金属、ファイバ充填プラスチック、熱硬化性プラスチックなどは、熱融合が必要でない領域で使用されることも可能であることは明らかであろう。別個の基部プレート130が省かれることも可能であり、その場合、カップ形状のカラムシリンダ120が使用され、基部をカラムシリンダに溶接するステップは、省かれ得る。上述したように、任意のカラムアセンブリコンポーネントは、上で説明されている方式で透過溶接されることも可能であり、そのようなコンポーネントは、限定はしないが、エンドプレート、エンドプレートに取り付けられた内部もしくは外部ウェブもしくはバットレス、流体分配プレート、媒体保持フリットもしくは多孔質層、カラムシリンダ材料内に直接形成される側部もしくは端部ポート、および/またはカラムシリンダもしくはエンドプレートに取り付けられている機械的支持体を含む。円形カラムシリンダが例示され、好ましいものであるが、目的結果を出せるように三角形、四角形、または六角形のセクションなどの、他の形状も使用され得る。レーザー220の位置の調整は、非円形シリンダに対応できるように行うことも可能である。これらの実施形態は、レーザー220が固定され、カラムアセンブリ100が回転可能であることを示しているが、他の構成も可能であり、たとえば、レーザーは固定または回転可能なカラムアセンブリの周りを動くことが可能である。代替的に、光学系が採用されることも可能であり、その場合、レーザーおよびカラムの両方が静止しているが、レーザービームLが軸Aに関して半径方向内向きに向けられた可動ビームで伝播することを光学系が引き起こす。
【0032】
他の追加形態、省略形態、または変更形態は、当業者には明らかであろう。添付従属請求項は、法的な簡潔さのために複数の特徴を単一の請求項に包含するように起草されており、そのような特徴は、一般化なしで、他の請求項と組み合わされるか、削除されるか、または追加され得ることが企図されている。
【符号の説明】
【0033】
50 容積
100 クロマトグラフィカラム、カラムアセンブリ、クロマトグラフィカラムアセンブリ
110 熱可塑性アダプタプレート
112 頂部ポート、上側ポート
113 エッジ領域、エッジ、アダプタプレート
114 内壁面
115 アダプタプレートシール、摺動するシール
120 中空熱可塑性円筒形カラム、シリンダ
120’ 代替カラム、カラムシリンダ
123 内側層、内部チューブ、内部PPチューブ、内側PP層
124 内面、内壁面
125 熱融合領域、熱融合材料
126 カラムシリンダ壁、カラム壁、外壁
127 外側PMMA層、外側層、アモルファス熱可塑性プラスチック、外壁
130 熱可塑性基部、ベース
132 下側ポート
133 エッジ領域、基部
134 内壁面
135 熱融合リング、熱融合材料、領域
200 アセンブリ装置
210 支持フレーム
212 架空支持アーム
214 基部
216 ターンテーブル
218 駆動手段
220 レーザー
222 ヨーク
224 アクチュエータ
230 コントローラ
250 無菌室
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b