(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】患者の口腔解剖学的特徴を検知する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/51 20240101AFI20241015BHJP
A61C 19/05 20060101ALI20241015BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20241015BHJP
A61C 9/00 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
A61B6/51
A61C19/05
A61C19/04 Z
A61C9/00 Z
(21)【出願番号】P 2021539624
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2020066921
(87)【国際公開番号】W WO2020260122
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-16
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】マウア、スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュルスブッシュ、マルクス
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-510535(JP,A)
【文献】特開2006-320347(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0056582(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0327958(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0305669(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0323891(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0069846(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0033106(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第102507052(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105496430(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102015211166(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 9/00
A61C 19/05
A61C 19/04
A61B 6/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の口腔領域を記録するためのX線記録装置を制御するために、前記患者の口腔解剖学的特徴を検知する方法であって、
口腔内咬合デバイスを提供するステップと、ここで、前記口腔内咬合デバイスは、前記患者の少なくとも1つの口腔領域の画像を記録するための前記X線記録装置と共に使用するのに適していて、前記口腔内咬合デバイスは、前記患者によって咬まれたとき前記患者の少なくとも1つの口腔要素と少なくとも部分的に接触する少なくとも1つの咬合領域と、それにより、少なくとも部分的に、前記患者の口腔解剖学的構造の
幾何学的特徴を前記咬合領域において記録可能な少なくとも1つのセンサデバイスと、
前記センサデバイスと動作可能に接続され、前記咬合領域に配置される1つ又は複数の変形可能な第1の材料と、前記変形可能な第1の材料及び前記センサデバイスを支持するための支持構造と、ここで、前記センサデバイスは、対応する第1の材料と前記支持構造との間に少なくとも部分的に位置決めされるものであり、
を備えており、
少なくとも1つの口腔要素で少なくとも前記咬合領域において前記患者が咬むステップと、
前記患者の少なくとも1つの口腔解剖学的構造
の幾何学的特徴を前記センサデバイスにより検知するステップと、を含む方法において、
X線記録がされている間、前記口腔解剖学的構造の
幾何学的特徴の検知も時々行われ、
前記X線記録装置のX線記録パラメータが、それに伴って前記検知された口腔解剖学的構造
の幾何学的特徴に基づいて変えられ
又は維持され、決定された前記口腔解剖学的
構造の幾何学的特徴が所定の範囲外にあるとき、
前記X線記録が中断されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記検知された口腔解剖学的構造
の幾何学的特徴に基づいて前記
X線記録パラメータを設定することにより前記X線記録装置を制御するステップをさらに含み、前記
X線記録パラメータは、少なくと
も前記X線記録装置の向き、X線放射線源の放射線量、前記X線記録装置の記録領域、前記X線記録装置の照射角、前記X線記録装置の軌跡、前記X線記録装置のアパーチャ位置、及び前記X線記録装置の放射スペクトルを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記X線記録装置が、口腔内装置及び口腔外記録装置、又はDVT記録装置として設計されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の歯領域の画像を記録するためのX線記録装置と共に使用するための咬合デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の口腔/歯領域のX線画像記録をするとき、患者にとってのX線暴露を低減することができるように、記録角度および記録領域を設定しなければならないという基本的な問題が生じる。記録領域は、この目的のために可能な限り小さくなるように選択されるべきである。一方、記録領域は、歯、骨、顎、それぞれの診断に欠かせない対象の軟質部分など、すべての口腔/歯の要素を記録するべきである。さらに、画像記録角度は、望ましくない遮蔽に至る可能性がある異なる要素の重なりを回避しなければならないように選択されなければならないという問題がある。一般に、記録領域の選択は、訓練された人によってなされる。妥当な訓練にもかかわらず、記録領域の不正確な選択が行われることがある。選択される領域は、妥当な解剖学的構造を示すことができ、記録領域を補正するための反復記録を回避することができることを確実にするために、大きすぎることがしばしばである。したがって、記録パラメータの最適な設定は、一般に、訓練された人によっても達成することができない。一般に、記録器具に対する患者の位置決めは、今まで、代替として咬合デバイスなど対応する患者固定具により行われてきた。咬合デバイスを通じて、患者の位置を、X線画像記録器具に対しておおよそ画定することができる。たとえば、従来技術文献EP1560520およびEP1793739を参照されたい。さらに、それぞれが従来技術の咬合デバイスを開示するUS2015/0305669AおよびUS2015/0327958A1を参照されたい。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、患者に対するX線記録装置の可能な最良の位置合わせと記録領域の最適な選択、および記録パラメータの設定を可能にする口腔内咬合デバイスおよび方法を提供することである。
【0004】
これらの目的は、請求項1で規定された方法によって達成された。従属請求項は、さらなる発展形態に関する。
【0005】
本発明の咬合デバイスは、少なくとも1つのセンサデバイスを有し、それにより、少なくとも部分的に、患者の解剖学的構造の少なくとも1つの特徴が咬合デバイスの咬合領域内で、また望むなら咬合領域の外側で記録可能である。ここで、咬合領域は、少なくとも部分的に、センサデバイスと動作可能に接続する少なくとも1つの変形可能な第1の材料を含み、センサデバイスにより、少なくとも部分的に、咬合領域の第1の材料内の歯の要素によって影響を受ける表面が、解剖学的構造を決定するために記録可能である。
【0006】
本発明によれば、第1の材料は、センサデバイスの少なくとも1つの第1のセンサ機構により、患者の解剖学的構造の輪郭および表面が少なくとも部分的な検知、あるいはスキャンにより記録可能であるように、弾性変形可能、あるいは塑性変形可能である。第1の材料は、少なくとも部分的に前記センサデバイス、特に第1のセンサ機構に能動的に接触する。検知は、圧電材料、誘導性材料、容量性材料、抵抗性材料、または感圧材料などを使用することにより行うことができる。患者の解剖学的構造、特に咬合領域の内側および外側のスキャンは、代替として、接触することなく、たとえば光学的、音響的などに行うこともできる。
【0007】
本発明によれば、咬合デバイスは、少なくとも1つの支持構造を有し、第1の材料、およびセンサデバイス、特にその第1のセンサ機構は、支持構造によって支持される。センサデバイス、特に第1のセンサ機構は、少なくとも部分的に第1の材料と支持構造との間に配置される。
【0008】
本発明によれば、咬合デバイスは、咬合デバイス、より具体的には咬合領域、第1の材料、センサデバイス、支持構造を、X線記録装置、特にX線記録装置の支持要素と接続するための少なくとも1つの接続要素を有する。接続要素は、咬合デバイスを記録装置、特に支持要素に対して移動するために、少なくとも1つの継ぎ手、好ましくは少なくとも1つの玉継ぎ手を備える。また、接続要素は、少なくとも1つの第3のセンサ機構と能動的に接続される。第3のセンサ機構により、咬合デバイスと、X線記録装置、特に記録デバイスの放射線源および放射線検出器との間の相対位置を決定することができる。第3のセンサ機構は、少なくとも1つの電気光学的もしくは電磁的追跡モジュールまたは少なくとも1つの慣性モジュールなどを含む。
【0009】
一般に、口腔/歯の要素は、少なくとも1つの口腔、少なくとも1つの歯、少なくとも1つの咬頭側領域、少なくとも1つの頬側領域、少なくとも1つの切歯領域、少なくとも1つの歯根尖、少なくとも1つの歯頸側領域、少なくとも1つの上顎、少なくとも1つの上顎弓、少なくとも1つの下顎、少なくとも1つの下顎弓、または少なくとも1つの歯肉を含み得る。したがって、本発明によれば、第1の材料は、口腔/歯の要素に効果的に接触するために、少なくとも1つのフォーム、少なくとも1つのゲル、少なくとも1つの自硬性材料、少なくとも1つの形状記憶材料、および/または少なくとも1つの歯科用インプレッションコンパウンドを含む。それにより、解剖学的構造の輪郭および表面が、少なくとも唇側方向、舌側方向、口蓋側方向、頬側方向、内側、遠心側方向、咬頭側方向、切歯方向、および/または歯頸側方向における領域において、特に口腔/歯の要素に対して記録可能である。センサデバイス、特に第1のセンサ機構は、少なくとも部分的に唇側方向、舌側方向、口蓋側方向、頬側方向、近心側方向、遠心側方向、咬頭側方向、切歯方向、または歯頸側方向に、特に口腔/歯の要素に対して配置され、第1の材料と動作可能に接続する。
【0010】
本発明によれば、少なくとも2つの変形可能な第1の材料が、それぞれ咬合領域の下側および上側に配置され得、それぞれ患者の上顎および下顎の口腔要素に対して解剖学的構造の特徴の形状および位置を検知することを可能にする。支持構造は、様々な形状を有してよい。好ましくは、支持構造は、変形可能な第1の材料および第1のセンサ機構をそれぞれが収容する弓状の上チャネルおよび下チャネルを有する。
【0011】
本発明によれば、支持構造は、任意選択で、支持構造を形成する少なくとも第2の材料を含み、第2の材料は、弾性変形可能、あるいは塑性変形可能であってよい。第2の材料は、第1の材料より剛性の度合いが低いことが好ましい。センサデバイスは第2のセンサ機構を有し、第2のセンサ機構により、患者が咬んでいる間、支持構造の変形が記録可能である。
【0012】
本発明によれば、第1のセンサ機構および第2のセンサ機構は、直接接触して、または直接接触せずに検知するために、少なくとも1つの圧電材料、誘導性材料、容量性もしくは抵抗性材料、感圧材料、少なくとも1つの電気光学的センサ、電気音響的センサ、超音波センサ、赤外線センサ、またはLED、レーザなどを含む。
【0013】
本発明によれば、X線記録装置は、少なくとも1つのX線源および少なくとも1つのX線検出器を備える。記録装置は、口腔内X線装置、あるいは口腔外X線装置として設計されてよい。記録装置は、X線ボリューム断層撮影(DVT)記録装置として設計されてよい。
【0014】
また、本発明は、少なくとも1つの放射線源および少なくとも1つの放射線検出器と、本発明による少なくとも1つの咬合デバイスとを有するX線記録装置を提供する。咬合デバイスは、放射線源から放射線検出器へのX線ビーム経路内に少なくとも部分的に配置可能である。
【0015】
また、本発明は、患者の口腔領域を記録するためのX線記録装置を制御するために、患者の少なくとも1つの解剖学的特徴を決定および記録するための方法を提供する。この方法は、
本発明による咬合デバイスを提供するステップと、
少なくとも1つの口腔要素で咬合領域において患者が咬むステップと、
センサデバイスにより少なくとも1つの解剖学的構造を記録するステップとを含み、解剖学的特徴は、記録された解剖学的構造に基づいて決定される。
【0016】
本発明によれば、第1の材料が塑性変形可能である場合、解剖学的領域の輪郭および表面構造を、たとえば咬んだ後に患者の口腔から咬合デバイスを取り外した後、すなわち、咬まれたことによって咬合デバイスが塑性変形した後、記録することができる。本発明によれば、第1の材料が弾性変形可能である場合、解剖学的構造の輪郭および表面は、咬んでいる最中、咬合デバイスが弾性変形されるとき記録することができる。
【0017】
本発明によれば、鮮明な層、記録装置、特に放射線源および放射線検出器の少なくとも位置合わせ、放射線源の線量、記録装置の記録領域、記録装置の照射角、記録装置の軌跡、記録装置のアパーチャ位置、または記録装置の放射スペクトルなど少なくとも1つの記録パラメータが、検知された対象の解剖学的特徴に基づいて決定され、記録装置は、記録パラメータに基づいて制御される。
【0018】
本発明によれば、解剖学的構造の輪郭および表面の検知は、X線記録能動的に行われている間、少なくとも時々行われてもよい。また、記録パラメータは、記録が実施されている間、好ましくは連続的に、または離散的な時に再決定され、適応的に変えられてもよい。本発明によれば、記録は、決定された解剖学的特徴、特に解剖学的構造の輪郭および表面が所定の領域外にあるとき中断されてもよい。
【0019】
本発明によれば、X線記録は、特に決定された解剖学的特徴、および決定された解剖学的特徴に関連付けられたボリュームの位置決めおよびサイズを含む決定された記録パラメータ、ならびに記録装置の決定された軌跡に基づくデジタルボリューム断層撮影(DVT)記録であることが好ましい。
【0020】
これにより、詳細な説明、特許請求の範囲、および図面の主題を含む優先権出願の内容全体は、特許協力条約(PCT)の規定に基づいて、参照により本特許出願に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
後続の説明では、本発明のさらなる態様および効果について、例示的な実施形態を使用することによって、また図面を参照して、より詳細に述べる。
【
図1】塑性変形可能な第1の材料を含む、本発明の第1の実施形態による咬合デバイスの上面斜視図。
【
図2a】患者が咬んでいる最中の本発明の第2の実施形態による咬合デバイスの概略的な部分断面図。
【
図2b】
図2aの咬合デバイスのセンサデバイスを介して記録されたデータの概略図。
【
図3】本発明の第3の実施形態による咬合デバイスの斜視図。
【
図4】患者が咬んでいる最中の本発明の第4の実施形態による咬合デバイスの概略的な部分縦断面図。
【
図5a】本発明の第5の実施形態による剛性支持構造を有する咬合デバイスの概略的な部分側面図。
【
図5b】本発明の第6の実施形態による変形可能な支持構造を有する咬合デバイスの概略的な部分側面図。
【
図6】本発明の別の実施形態による咬合デバイスにより出力された測定データに基づく可視化の図。
【
図7】本発明の代替の実施形態による咬合デバイスによって出力された測定データに基づく可視化の図。
【0022】
図面に示されている符号は、下記に列挙されている要素を示し、実施形態の後続の説明において参照される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の第1の実施形態による咬合デバイス1の概略的な斜視図を示す。咬合デバイス1は、塑性変形可能な第1の材料5により確立されている咬合領域3を有する。
図1では、咬合デバイス1は、患者が咬合領域3を咬み終わり、咬合デバイス1が患者の口から取り外された後の状態で示されている。第1の材料5の塑性変形性により、口腔要素の痕跡7a、7b、7c、7dが
図1で明確にわかり、それ自体図示されていない歯の形態を有する。患者が咬んだ時点において、下記でさらに述べるように咬合デバイス1はX線装置に対して空間内の所定の位置に配置されていたということにより、痕跡7aから7dを検知/スキャンすることによって、患者の解剖学的構造、特にX線装置に対する空間内での歯の位置および形状に関して結論を下すことができる。
図1における配置は、上顎のための咬合デバイス1を示すが、下顎についても同じ要素を含むように複写されてもよい。この目的のために、咬合デバイス1は、咬合領域3に影響を及ぼす解剖学的構造を解析、特に検知するセンサデバイス(
図1には図示せず)を必要とする。センサデバイスは、咬合デバイス1と一体化されても、咬合デバイス1から離れていてもよい。次いで、歯の位置および形状が、たとえば咬合デバイス1に残された輪郭から決定される。次いで、このデータに基づいて、患者は、所定の位置に戻され、検知された値に基づいて、記録パラメータがX線記録するために設定される。X線記録パラメータは、必要に応じて患者の口腔領域を見ることができるように、たとえば、放射線量および記録領域を含み得る。
【0024】
図2aは、本発明の第2の実施形態による咬合デバイス101の概略的な部分断面図を示す。咬合デバイス101に割り当てられた符号は、100だけ増加された咬合デバイス1のものに対応する。咬合デバイス1とは対照的に、咬合デバイス101では、使用される第1の材料105は、弾性変形可能である。第1の材料105は、たとえばフォーム材料であってよい。咬合デバイス101は、サンドイッチ型の構造を有する。センサデバイスの第1のセンサ機構109は、第1の材料105の下方に配置される。この第1のセンサ機構109は、支持構造111によって支持される。
図2における配置は、上顎のための咬合デバイス101だけを示すが、下顎についても同じサンドイッチ型の構造を含むように複写されてもよい。
図2aに示されている状態では、患者は、口腔要素が歯113a、113bの形態を有する痕跡を第1の材料105内に残すように咬合デバイス101を咬む。それにより、痕跡107aおよび107bが第1の材料105内に生み出される。第1の材料5と動作可能に接触するセンサ機構109により、第1の材料105の変形を記録することが可能であり、したがって咬合領域103内で影響を受けた輪郭および表面を空間解像式に検知することができる。
図2bは、第1のセンサ機構109によって送出される測定データを一例で概略的に示す。測定データに基づいて、第1の材料105が圧縮されたスケールを見ることができる。
図2bに示されている痕跡107aまたは107b内の暗い領域は、第1の材料105の強い圧縮/変形に対応する。それにより、咀嚼力、および咬んでいる最中の歯113aおよび113bの位置および形状を決定することができる。
【0025】
代替の実施形態(図示せず)では、第1の材料は、完全または部分的に除去されても、少なくとも部分的に透過的に設けられてもよい。また、第1のセンサ機構109により、次いで歯113a、113bなど解剖学的構造を接触することなく、たとえば光学的に検知/記録することができる。したがって、咀嚼表面などの位置および形状を接触することなく、たとえば光学的なスキャンにより決定することができる。
【0026】
図3は、本発明の第3の実施形態による咬合デバイス201の概略的な斜視図を示す。咬合デバイス101のものに対応する咬合デバイス201の要素は、同じ符号を有するが、100だけ増加されている。
図3における配置は、上顎のための咬合デバイス201だけを示すが、下顎についても同じサンドイッチ型の構造を含むように複写されてもよい。咬合デバイス201は、患者が咬んでいるとき、患者の少なくとも上顎の解剖学的特徴の位置および形状を検知、出力、および記録することができるように設計される。この目的のために、咬合デバイス201は、咬合領域203内に第1の材料205を有し、その下方に、第1のセンサ機構209が配置される。センサ機構209および第1の材料205は、支持構造211によって支持される。支持構造211は、玉継ぎ手の形態にある継ぎ手217を含む接続要素215を介して、X線記録装置の支持要素219と接続される。X線記録装置に対して空間内で咬合デバイス201の位置を記録するために、継ぎ手217は、第3のセンサ機構221を有する。センサ機構221により、咬合デバイス201、特に空間内の咬合領域203の位置を決定することができる。したがって、第1のセンサ機構209および第2のセンサ機構221によって提供されるデータにより、患者が咬んでいるとき患者の口腔解剖学的構造の幾何形状をX線装置に対して決定することができる。
【0027】
図4は、本発明の第4の実施形態による咬合デバイス301を示す。咬合デバイス201のものに対応する咬合デバイス301のための要素は、同じ符号を有するが、100だけ増加されている。咬合デバイス301は、患者の下顎および上顎両方の解剖学的特徴の同時記録を可能にする。この目的のために、咬合デバイス301は、咬合領域303の両側に第1の材料305aおよび305bを有する。第1の材料305a、305bは同一であるが、特にそれらの剛性および変形性に関してそれらの特性を異なるものとすることができる。患者が咬合デバイス301を咬んでいるとき、患者の上顎の歯313aによって痕跡307aが材料305a内に作り出され、一方、患者の下顎の歯313bによって痕跡307bが材料305b内に作り出される。歯313aおよび313bの位置および形状を記録するために、第1のセンサ機構309aおよび309bは、咬頭側領域323aおよび323b、舌側領域325aおよび325b、ならびに頬側領域327bおよび327aを記録する。換言すれば、センサ機構309aおよび309bは、歯313aおよび313bの咬頭側領域内、および舌側領域内、および頬側領域内で検知することができる。その結果、歯313aおよび313bの位置および形状の正確な決定が可能になり、その結果、X線記録装置の設定を実施することができる。
【0028】
図5aは、本発明の第5の実施形態による咬合デバイス401の概略的な部分側断面図を示す。咬合デバイス301のものに対応する咬合デバイス401のための要素は、同じ符号を有するが、100だけ増加されている。図面を簡潔にするために、第1のセンサ機構109は、
図5aに示されていない。
図5aからわかるように、支持構造411は、第1の材料405aおよび405bより高い剛性を有し、患者によって咬まれたとき容易に変形しない。
【0029】
図5bは、本発明の第6の実施形態による咬合デバイス501の概略的な部分側断面図を示す。咬合デバイス401のものに対応する咬合デバイス501の要素は、同じ符号を有するが、100だけ増加されている。咬合デバイス501では、支持構造511は、第1の材料505aまたは505bより低い剛性を有する第2の材料から形成され、患者によって咬まれたとき弾性変形可能である。第2のセンサ機構529が支持構造511に一体化されており、それにより、支持構造511の変形を記録することができる。したがって、患者の口腔要素、特に歯513aおよび513bの位置および形状の正確な決定が可能になる。
【0030】
図6は、咬合デバイス1、101、201、301、401、501の出力に基づく患者の咬合片631の表示を示す。本発明の咬合デバイス1、101、201、301、401、501により、患者の歯の解剖学的構造の正確なX線撮像が可能になる。次に使用者は、
図6の咬合片631内の選択領域633を選択することができ、それに応じてX線記録を実施することができる。特にX線記録装置に対する口腔要素635および637の位置、サイズ、および位置合わせに基づいて、口腔要素635、637の可能な最良の記録が達成されるように、放射線量、記録角度などを正確に決定することができる。
【0031】
代替として咬合デバイス1、101、201、301、401、501によって記録および出力されるデータは、
図7に示されているように可視化することもできる。したがって、患者の歯の概略図がパノラマビューと同様に示され、使用者は、たとえば歯735、737を正確なX線撮像のために選択することができる。
図7における可視化の利点は、上顎の口腔要素、たとえば歯739を示すことができ、後続のX線記録のために選択することができることである。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 患者の歯領域の画像を記録するためのX線記録装置と共に使用するのに適した口腔内咬合デバイス(1;101;201;301;401;501)であって、
前記患者によって咬まれたとき前記患者の少なくとも1つの口腔要素(113a、113b;313a、313b;413a、413b;513a、513b)と少なくとも部分的に接触する少なくとも1つの咬合領域(3;103;203;303;403;503)を備える口腔内咬合デバイス(1;101;201;301;401;501)において、
前記X線記録装置に対して、前記咬合領域(3;103;203;303;403;503)において前記患者の前記少なくとも1つの口腔要素(113a、113b;313a、313b;413a、413b;513a、513b)に関する解剖学的構造の少なくとも1つの特徴の形状および位置を検知し、検知された解剖学的構造に従って放射線量および放射領域のうちの少なくとも1つを含むX線記録パラメータを前記X線記録装置が設定することを可能にするために検知結果を前記X線記録装置に出力するように適合された少なくとも第1のセンサ機構(109;209;309a、309b)を有するセンサデバイスと、
前記センサデバイスと動作可能に接続され、前記咬合領域(3;103;203;303;403;503)に配置される1つまたは複数の変形可能な第1の材料(5;105;202;305a、305b;405a、405b;505a、505b)と、
前記変形可能な第1の材料(5;105;202;305a、305b;405a、405b;505a、505b)および前記センサデバイスを支持するための支持構造(111;211;311;411;511)と、ここで、前記第1のセンサ機構(109;209;309a、309b)は、対応する第1の材料(5;105;202;305a、350b;405a、405b;5055a、505b)と前記支持構造(111;211;311;411;511)との間に少なくとも部分的に位置決めされるものであり、
前記支持構造(111;211;311;411;511)を前記X線記録装置の少なくとも1つの支持要素(219)と可動および調整可能に接続するための継ぎ手(217)を有する1つの接続要素(215)と、
前記X線記録装置と使用者によって調整された前記咬合領域との間の相対位置を検知するための別のセンサ機構(221)とをさらに備えることを特徴とする口腔内咬合デバイス(1;101;201;301;401;501)。
[2] 各第1の材料(5;105;202;305a、350b;405a、405b;505a、505b)は、フォーム、ゲル、形状記憶材料、自硬性材料、または歯科用インプレッションコンパウンドのうちの少なくとも1つを含み、前記第1の材料(5;105;202;305a、350b;405a、405b;505a、505b)は、前記口腔要素に対して少なくとも部分的に唇側領域、舌側領域、口蓋側領域、頬側領域、近心側領域、遠心側領域、咬頭側領域、切歯領域、または歯頸側領域(323a、323b;325a、325b;327a、327b;423a、423b;523a、523b)のうちの少なくとも1つにおける位置に変形可能であり、前記解剖学的構造の輪郭および表面構造は、前記口腔要素に対して唇側領域、舌側領域、口蓋側領域、頬側領域、近心側領域、遠心側領域、咬頭側領域、切歯領域、または歯頸側領域において前記第1のセンサ機構(109;209;309a、309b)により検出可能であることを特徴とする、[1]に記載の口腔内咬合デバイス。
[3] 少なくとも2つの変形可能な第1の材料(5;105;205;305a、305b;405a、405b;505a、505b)が、それぞれ前記咬合領域(3;103;203;303;403;503)の下側および上側に配置され、それぞれ前記患者の上顎および下顎の前記口腔要素(113a、113b;313a、313b;413a、413b;513a、513b)に関する前記解剖学的構造の特徴の形状および位置を検知することを可能にすることを特徴とする、[1]または[2]に記載の口腔内咬合デバイス。
[4] 前記支持構造(111;211;311;411;511)は、変形可能な第1の材料(5;105;202;305a、350b;405a、405b;505a、505b)および第1のセンサ機構(109;209;309a、309b)をそれぞれが収容する上チャネルおよび下チャネルを有することを特徴とする、[3]に記載の口腔内咬合デバイス。
[5] 前記患者が咬んでいる間、前記支持構造(111;211;311;411;511)の変形を決定するための少なくとも1つの第2のセンサ機構(529)をさらに備え、
支持構造(111;211;311;411;511)は、前記第1の材料(5;105;202;305a、350b;405a、405b;505a、505b)より剛性の度合いが低い変形可能な第2の材料を含むことを特徴とする、[1]から[4]のいずれか一項に記載の口腔内咬合デバイス。
[6] 前記第2のセンサ機構(529)は、圧電要素、誘導性要素、容量性要素、抵抗性要素、または感圧要素のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、[5]に記載の口腔内咬合デバイス。
[7] 前記第1のセンサ機構(109;209;309a、309b)は、少なくとも1つの圧電要素、誘導性要素、容量性要素、抵抗性要素、または感圧要素を含む、[1]から[6]のいずれか一項に記載の口腔内咬合デバイス。
[8] 少なくとも1つの放射線源および少なくとも1つの放射線検出器と、[1]から[7]のいずれか一項に記載の少なくとも1つの口腔内咬合デバイス(1;101;201;301;401;501)とを備えるX線記録装置であって、前記口腔内咬合デバイスの出力に従って放射線量および放射領域のうちの少なくとも1つを含むX線記録パラメータを設定するように適合されているX線記録装置。
[9] 前記X線記録装置が、口腔内装置および口腔外記録装置、またはDVT記録装置として設計されていることを特徴とする、[8]に記載のX線記録装置。
[10] 患者の口腔領域を記録するためのX線記録装置を制御するために、前記患者の口腔解剖学的特徴を検知する方法であって、
[1]から[7]のいずれか一項に記載の口腔内咬合デバイスを提供するステップと、
少なくとも1つの口腔要素で少なくとも前記咬合領域において前記患者が咬むステップと、
前記患者の少なくとも1つの口腔解剖学的構造の材料および幾何学的特徴のうちの少なくとも1つを検知するステップとを含む方法。
[11] 前記検知された解剖学的特徴に基づいて前記X線記録パラメータを設定することにより前記X線記録装置を制御するステップをさらに含み、前記X線記録パラメータは、少なくとも鮮明な層、前記X線記録装置の向き、X線放射線源の放射線量、前記X線記録装置の記録領域、前記X線記録装置の照射角、前記X線記録装置の軌跡、前記X線記録装置のアパーチャ位置、および前記X線記録装置の放射スペクトルを含むことを特徴とする、[10]に記載の方法。
[12] X線記録がされている間、前記解剖学的構造の検知も時々行われ、前記X線記録パラメータは、それに伴って前記検知された解剖学的構造に基づいて変えられ、または維持され、決定された解剖学的特徴が所定の範囲外にあるときX線記録が中断されることを特徴とする、[10]または[11]に記載の方法。
[13] 検知されつつある、または検知された前記患者の1つまたは複数の口腔解剖学的特徴の表示を提供するステップと、
前記X線記録装置によって記録されることになる前記表示内の1つまたは複数の歯(735、737、739)、または1つまたは複数の歯(635、637)を囲む選択領域(633)を前記使用者が選ぶことを可能にするステップと、
前記使用者の選んだものに従って前記X線記録装置の前記X線記録パラメータを設定し、X線記録を実施するステップと
をさらに含む、[10]から[12]のいずれか一項に記載の方法。
[14] 前記表示は、前記歯(735、737、739)のパノラマビュー、または前記歯(635、637)の歯列弓ビューを含むことを特徴とする、[13]に記載の方法。
【符号の説明】
【0032】
1 咬合デバイス
3 咬合領域
5 材料
7a、7b、7c、7d 痕跡(impression)
101 咬合デバイス
103 咬合領域
105 材料
107a、107b 痕跡
109 センサ機構
111 支持構造
113a、113b 歯
201 咬合デバイス
203 咬合領域
205 材料
209 センサ機構
211 支持構造
215 接続要素
217 継ぎ手
219 支持要素
221 センサ機構
301 咬合デバイス
303 咬合領域
305a、305b 材料
307a、307b 痕跡
309a、309b センサ機構
311 支持構造
313a、313b 歯
323a、323b 咬頭側領域
325a、325b 舌側領域
327a、327b 頬側領域
401 咬合デバイス
403 咬合領域
405a、405b 材料
407a、407b 痕跡
411 支持構造
413a、413b 歯
423a、423b 咬頭側領域
501 咬合デバイス
503 咬合領域
505a、505b 材料
507a、507b 痕跡
511 支持構造
513a、513b 歯
523a、523b 咬頭側領域
529 センサ機構
631 咬合片
633 選択領域
635 歯
637 歯
735 歯
737 歯
739 歯