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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】根管長測定器用の歯内ファイルクリップ
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/42 20170101AFI20241015BHJP
   A61C 19/04 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
A61C5/42
A61C19/04 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021541098
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2020063443
(87)【国際公開番号】W WO2020229591
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】19174433.3
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】プフライデラー、マルティン
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101828976(CN,A)
【文献】特開2012-24480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/42
A61C 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
根管長測定器用の歯内ファイルクリップ(1)であって、
中空の本体(2)と、
前記本体(2)に移動可能に連結された押しボタン(3)と、
前記押しボタン(3)を前記本体(2)から離れるほうに押すばね(4)と、
前記本体(2)内に移動可能に配置され、前記本体(2)の先端(2a)の穴から部分的に突出し、前記押しボタン(3)に固定されて、前記押しボタン(3)が閉位置のほうに解放されると歯内ファイル(6)を前記先端(2a)に確実に取り付け、前記押しボタン(3)が開位置のほうに押圧されると前記歯内ファイル(6)から係脱する導電性のフック(5)と、
を備える歯内ファイルクリップ(1)において、
歯科用洗浄消毒器で洗浄及び消毒するために、前記押しボタン(3)、前記ばね(4)、及び前記フック(5)を前記本体(2)から再取り付け可能に取り外すための取り外し機構(7)を更に備え、前記取り外し機構(7)が、前記本体(2)に、前記先端(2a)まで延在し、前記穴につながる取り外しスロット(2c;2c’)を備え、前記フック(5)を前記穴から前記取り外しスロット(2c、2c’)内に手動で移動させたときに、前記押しボタン(3)、前記ばね(4)、及び前記フック(5)を前記本体(2)から手動で取り外すことを可能にすることを特徴とする、歯内ファイルクリップ(1)。
【請求項2】
安全機構(10、10’)を更に備え、前記押しボタン(3)が2つの押下レベルを有し、前記押しボタン(3)が前記開位置に対応する第1の押下レベルにあるとき、前記歯内ファイル(6)を前記フック(5)から係脱することができ、前記安全機構(10、10’)は、前記取り外し機構(7)をブロックしており、前記押しボタン(3)が前記開位置を越える第2の押下レベルまで更に押圧されたときに、前記安全機構(10、10’)は、前記取り外し機構(7)をブロック解除し、ここにおいて、前記押しボタン(3)が前記第1の押下レベルにあるとき、前記歯内ファイル(6)を前記フック(5)から係脱することができ、前記安全機構(10、10’)は、前記取り外しスロット(2c、2c’)内への前記フック(5)の手動移動をブロックしており、前記押しボタン(3)が前記第2の押下レベルまで更に押圧されたときに、前記安全機構(10、10’)は、前記フック(5)の手動移動をブロック解除し、前記フック(5)を前記取り外しスロット(2c、2c’)内に自由に移動させることができることを特徴とする、請求項1に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
【請求項3】
前記取り外しスロット(2c)が、前記フック(5)のU字形状部分(5a)から逸れた、前記本体(2)の背部(2d)にあり、前記フック(5)が、前記取り外しスロット(2c)との位置合わせのために手動で傾斜可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
【請求項4】
前記取り外しスロット(2c)が、ウィンドウ部分(2g)を備え、前記フック(5)が、前記取り外しスロット(2c)よりも幅が広く、前記ウィンドウ部分(2g)と一致するキー部分(5b)を備え、前記押しボタン(3)が2つの押下レベルを有し、前記押しボタン(3)が前記第1の押下レベルにあるとき、前記歯内ファイル(6)を前記フック(5)から係脱することができ、前記キー部分(5b)は前記先端(2a)において取り外しスロット(2c)からのすき間が足りないままであり、前記押しボタン(3)が前記第2の押下レベルまで更に押圧されたときに、前記フック(5)を、前記取り外しスロット(2c)に自由に傾斜させることができ、前記ウィンドウ部分(2g)及び前記キー部分(5b)が前記安全機構(10)を構成することを特徴とする、請求項2に従属する請求項3に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
【請求項5】
前記中空の本体(2)の内部には、再組み立て中に前記ウィンドウ部分(2g)を通して前記キー部分(5b)をガイドするための傾斜部(2h)が設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
【請求項6】
前記取り外しスロット(2c’)が、前記本体(2)の側方部分(2e)にあり、前記フック(5)が、前記取り外しスロット(2c’)との位置合わせのために手動で回転可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
【請求項7】
前記押しボタン(3)の前面が、取り付け又は取り外し中の前記押しボタン(3)の回転を容易にするためのねじ回し又は突出グリップ用のスロット(3c)を備えることを特徴とする、請求項6に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
【請求項8】
前記押しボタン(3)がカム溝(3a)又はカムピンのいずれかを有し、前記本体(2)は、前記取り外しスロット(2c’)との位置合わせのために、前記押しボタン(3)を押圧し、所定の角度だけ回転させ、解放するとき、それぞれ互いに一致するカムピン(2f)又はカム溝を有することを特徴とする、請求項6又は7に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
【請求項9】
前記押しボタン(3)が2つの押下レベルを有し、前記押しボタン(3)が前記第1の押下レベルにあるとき、前記歯内ファイル(6)を前記フック(5)から係脱することができ、前記カムピン(2f)は前記カム溝(3a)の垂直部分からのすき間が足りないままであり、前記押しボタン(3)が前記第2の押下レベルまで更に押圧されたときに、前記フック(5)を前記カム溝(3a)の水平部分で自由に回転させて前記取り外しスロット(2c’)と位置を合わせることができ、前記カム溝(3a)及び前記カムピン(2f)が、前記安全機構(10’)を構成することを特徴とする、請求項2に従属する請求項8に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
【請求項10】
前記2つの押下レベルを有し、カラー(3b)が設けられていない前記押しボタン(3)によって構成された別の安全機構(11)を更に備え、前記押しボタン(3)が前記第1の押下レベルまで押圧されると、前記本体(2)の下方部分と同一平面となり、前記押しボタン(3)が前記第2の押下レベルまで更に押圧されると、前記押しボタン(3)は前記本体(2)の内部深くに入ることを特徴とする、請求項2に従属する請求項~9のいずれか一項に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯内ファイル(endodontic file)に取り付け、治療する歯根管の長さを決定するために根管長測定器(apex locator)と共に使用する歯内ファイルクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
歯内治療としても知られている根管治療は、感染した歯髄、例えば神経、血管、及び他の細胞組織を歯から除去することを伴う。歯内ファイルは、特に歯の根管から感染した歯髄を除去するために使用される。根管は一般に長さが異なる。したがって、歯根尖に対する歯内ファイルの位置を正確に決定する必要がある。歯は電気インピーダンスを有しており、該インピーダンスは、根管長測定器として一般に知られている電子測定装置で測定することができる。歯内治療中に根管長測定器を使用するには、唇に取り付け可能なリップクリップとして知られる第1の電極と、歯内ファイルに取り付け可能な歯内ファイルクリップとして知られる第2の電極とを含む一対の電極を通して確立することができる閉じた電気回路が必要である。リップクリップと歯内ファイルとの間の電気インピーダンスは、根管入口と根尖狭窄部との間に位置する根管内部での歯内ファイル嵌入の増加に伴って変化する。歯内ファイルクリップは、一般に、ケーブルを介して根管長測定器に接続することができる別個の装置として提供される。
【0003】
JP2012019849A、CN101828976A、及びJP2004000554Aの各々は、管状本体に移動可能に装着され、管状本体を貫通するフック状電極に着脱不能に固定されて歯内ファイルをクランプするばね装填押しボタンを有する歯内ファイルクリップを開示している。
【0004】
歯内ファイルクリップは、患者の治療中に歯髄組織及び唾液で汚染される。衛生的要件を満たすために、歯内ファイルクリップを、再使用の前に消毒する必要がある。しかしながら、先行技術の歯内ファイルクリップは、一般に、密接な界面及び狭い間隙を有するいくつかの構成要素から構成されている。これらにより、時間のかかる手動洗浄が不可避となっている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、先行技術の欠点を克服し、歯内治療で使用し易く、歯科用洗浄消毒器で洗浄及び消毒するために使用後に分解することができ、再使用するために滅菌及び再組み立てすることができる歯内ファイルクリップを提供することである。
【0006】
これらの目的は、請求項1に記載の歯内ファイルクリップにより達成される。従属請求項の主題は、更なる展開形態に関する。
【0007】
本発明の歯内ファイルクリップは、根管長測定器と共に使用するのに好適である。歯内ファイルクリップは、中空本体と、本体に移動可能に連結された押しボタンと、押しボタンを本体から離れるほうに押すばねと、本体内に移動可能に配置され、本体の先端から部分的に突出し、押しボタンに固定されて、押しボタンが閉位置のほうに解放されると歯内ファイルを先端に確実に取り付け、押しボタンが開位置のほうに押圧されると歯内ファイルから係脱する導電性フックとを備える。歯内ファイルクリップは更に、歯科用洗浄消毒器で洗浄及び消毒するために、押しボタン、ばね、及びフックを本体から再取り付け可能に取り外すための取り外し機構を備え、取り外し機構は、本体に、先端まで延在し、該穴につながる取り外しスロットを備え、フックを該穴から取り外しスロット内に手動で移動させたときに、押しボタン、ばね、及びフックを本体から手動で取り外すことを可能にする。
【0008】
本発明の主な有利な効果は、歯内ファイルクリップを洗浄及び消毒のために分解することができるということである。分解すると、構成要素の各々を、容易かつ迅速に洗浄及び消毒することができる。洗浄及び消毒は、手動で又は歯科用洗浄消毒器で自動的に行うことができる。分解した歯内ファイルのすべての表面が完全に見えるので、歯髄組織及び唾液の除去を、洗浄及び消毒が完了した後に目視で確認することができる。
【0009】
本発明によれば、歯内ファイルクリップには、任意選択的に、押しボタンが閉位置にあるときに歯内治療中の構成要素、すなわち押しボタン、ばね、フック、及び本体の意図しない又は偶発的な分解を防止するための少なくとも1つの安全機構(以下、第1の安全機構という)が設けられ得る。第1の安全機構は、押しボタンが閉位置にあるときに取り外し機構をブロックし、押しボタンが開位置にあるときに取り外し機構をブロック解除する。取り外し機構を使用するために、任意選択の第1の安全機構はロック解除される必要がある。第1の安全機構の一実施形態では、フックには、押しボタンを閉位置に移動させたときに先端付近の本体のノッチに取り付けられるU字形状部分が設けられている。閉位置では、歯内ファイルは、フックのU字形状部分によって先端に確実に取り付けられる。押しボタンを開位置に移動させたときに、フックのU字形状部分がノッチから取り外され、すなわち、第1の安全機構がロック解除され、歯内ファイルをフックから自由に取り外すこともでき、所望であれば、次に紹介する、更なる任意選択の安全機構(以下、第2の任意選択の安全機構という)によりブロックされない限り、歯内ファイルクリップを取り外し機構により更に分解することができる。これによって、歯内治療中又はその後の歯内ファイルクリップのより確実な操作を達成することができる。
【0010】
本発明によれば、歯内ファイルクリップには、任意選択的に、押しボタンが歯内ファイルと係合/係脱するために開位置にあるときに歯内治療中の構成要素の意図しない又は偶発的な分解を防止するための更なる安全機構、すなわち、第2の安全機構が設けられ得る。取り外し機構を使用するために、任意選択の第2の安全機構はロック解除される必要がある。第2の安全機構の一実施形態では、押しボタンは2つの押下レベルを有する。押しボタンが開位置に対応する第1の押下レベルにあるとき、歯内ファイルはフックと係合又はフックから係脱することができるが、第2の安全機構は取り外し機構をブロックしており、押しボタンが開位置を越える第2の押下レベルまで更に押圧されたときに、第2の安全機構はロック解除され、第2の安全機構は取り外し機構をブロック解除する。
【0011】
本発明によれば、取り外し機構の一実施形態では、本体には、先端付近に取り外しスロットが設けられており、これは、押しボタン、ばね、及びフックを本体から手動で取り外すこと(以下、取り外し操作という)を可能にする。取り外し操作を開始するために、任意選択の第1の安全機構及び任意選択の第2の安全機構は、各々ロック解除される必要があり、この場合、フックを、取り外しスロット内に手動で移動させる必要がある。その後、押しボタンを、ばね及びばねに固定されたフックと共に本体から相対的にスライドして出すことができる。押しボタンが開位置に対応する第1の押下レベルにあるとき、歯内ファイルをフックから係脱することができるが、任意選択の第2の安全機構は取り外しスロット内へのフックの手動移動をブロックしており、押しボタンが第2の押下レベルまで更に押圧されたときに、第2の安全機構はフックの手動移動をブロック解除し、フックを取り外しスロット内に自由に移動させることができる。取り外しスロットは、本体の様々な部分内に形成され得る。この実施形態のバージョンでは、取り外しスロットは本体の背部にある。そしてフックは、フックを傾斜/屈曲させることによって取り外しスロット内に移動させることができる。この実施形態の代替バージョンでは、取り外しスロットは本体の側方部分にある。そしてフックは、好ましくは90度フックを回転させることによってスロット内に移動させることができる。取り外し操作中のフックの回転を容易にするために、押しボタンの前面には、任意選択的に、ねじ回しスロット又は突出グリップが設けられる。この実施形態の更なるバージョンでは、取り外しスロットには、任意選択的に、ウィンドウ部分が更に設けられ、フックには、取り外しスロットよりも幅が広く、ウィンドウ部分と一致するキー部分が更に設けられる。キー部分は、取り外し操作中にウィンドウ部分を通過することができる。中空本体の内部には、任意選択的に、再組み立て中にウィンドウ部分を通してキー部分をガイドするための傾斜部(ramp)状ガイド部分が設けられる。押しボタンが第1の押下レベルまで押圧されたとき、フックを歯内ファイルから係脱することができるが、キー部分は先端からのすき間が足りないままであり、したがって、押しボタンが第2の押下レベルまで更に押圧されない限り、フックを移動させることができず、すなわち、取り外しスロット内に傾斜させることはできない。押しボタンが第2の押下レベルまで更に押圧されたときに、フックを、取り外しスロットに自由に傾斜させることができ、すなわち、第2の安全機構がロック解除され、したがって、押しボタン、ばね、及びフックを本体から取り外すことができる。これによって、歯内治療中又はその後の歯内ファイルクリップのより確実な操作を達成することができる。この実施形態の更に代替のバージョンでは、押しボタンには更に、任意選択的に、バヨネット型のU字形状カム溝が設けられ、本体には更に、U字形状カム溝に一致するカムピンが設けられる。代替的に、カムピンとカム溝のそれぞれの位置を入れ替えてもよい。カム溝の深さは、単一レベル又は2レベル押下の押しボタンを有するように予め調整され得る。後者の場合、押しボタンが第1の押下レベルまで押圧されたとき、フックを歯内ファイルから係脱することができるが、カムピンはカム溝の垂直部分からのすき間が足りないままであり、したがって、押しボタンが第2の押下レベルまで更に押圧されない限り、フックを移動させることはできず、すなわち、取り外しスロット内に回転させることはできない。押しボタンが第2の押下レベルまで更に押圧されたときに、カムピンはカム溝の水平部分で回転することができ、すなわち、第2の安全機構はロック解除され、フックを自由に回転させて取り外しスロットと位置を合わせることができ、したがって、押しボタン、ばね、及びフックを、本体から、カム溝の開放端のみを通して取り外すことができる。これによって、歯内治療中又はその後の歯内ファイルクリップのより確実な操作を達成することができる。
【0012】
本発明によれば、歯内ファイルクリップには、任意選択的に、押しボタンが開位置にあるときに構成要素の意図しない又は偶発的な分解を防止するための更なる安全機構(以下、第3の安全機構という)が設けられる。したがって、第3の安全機構の一実施形態では、2レベルの押しボタンはカラーを有さず、すなわちカラーが設けられていない。押しボタンが第1の押下レベルまで押圧されると、押しボタンは本体の下方部分と同一平面となる。押しボタンが第2のレベルまで更に押圧されると、押しボタンは本体の内部深くに入る。しかしながら、本体内部の押下領域は指と比較して小さいので、使用者は、好ましくは、第2の押下レベルに達するまで押しボタンを本体の内部深くまで押圧するために、ペーパークリップ、鉛筆などを利用する必要がある。これによって、歯内治療中又はその後の歯内ファイルクリップのより確実な操作を達成することができる。
【0013】
下記の説明において、例示的な実施形態を使用し、以下の図面を参照することによって、本発明についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態による、開位置にある歯内ファイルクリップの概略側面図である。
図2A】閉位置にある図1の歯内ファイルクリップの概略側面図である。
図2B図2Aの歯内ファイルクリップの概略垂直断面図である。
図3図1の歯内ファイルクリップの概略側面図であり、点線はフック及びケーブルを示す。
図4図1の歯内ファイルクリップの概略後側面図であり、取り外しスロットが本体の背部に形成されている。
図5A図1の歯内ファイルクリップの概略側面図であり、押しボタン、フック、ばね、及びケーブルが本体から取り外されている。
図5B図5Aの歯内ファイルクリップの概略断面図である。
図6図1の歯内ファイルクリップの本体の概略側面図である。
図7図1の歯内ファイルクリップの押しボタン、フック、ばね、及びケーブルの概略側面図である。
図8】2レベルの押しボタンを有する本発明の第2の実施形態による歯内ファイルクリップの概略後側面図であり、押しボタンが第1の押下レベルまで押圧されている。
図9図8の歯内ファイルの別の概略後側面図であり、押しボタンが第2の押下レベルまで押圧されている。
図9A】再組み立て中の図9の歯内ファイルの概略的な断面部分側面図である。
図10】本発明の第3の実施形態による、閉位置にある歯内ファイルクリップの概略上面図である。
図11図10の歯内ファイルクリップの概略上面図であり、フックが、取り外しスロットまで約90度反時計回りに回転されている。
図12】フックが取り外しスロットまで完全に90度反時計回りに回転される前の、図10の歯内ファイルクリップの概略側面図である。
図13】第3の実施形態による押しボタン、フック、ばね、及びケーブルの概略部分側面図である。
図14】第3の実施形態による歯内ファイルクリップの本体の別の概略斜視図である。
【0015】
図面に示される参照番号は、以下に列挙する要素を指し、例示的な実施形態の下記の説明において参照される。
1.歯内ファイルクリップ
2.本体
2a.先端
2b.ノッチ
2c.取り外しスロット
2c’.取り外しスロット
2d.背部
2e.側方部分
2f.カムピン
2g.ウィンドウ部分
2h.傾斜部
3.押しボタン
3a.カム溝
3b.カラー
3c.ねじ回しスロット
4.ばね
5.フック
5a.U字形状部分
5b.キー部分
6.歯内ファイル
7.取り外し機構
8.ケーブル
9、10、10’、11.安全機構
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、第1の実施形態による開位置にある歯内ファイルクリップ(1)の概略側面図を示す。歯内ファイルクリップ(1)は、根管長測定器と共に使用するのに好適である。第1の実施形態では、図2Bに詳細に示すように、歯内ファイルクリップ(1)は、中空本体(2)と、本体(2)に移動可能に連結された押しボタン(3)と、押しボタン(3)を本体(2)から離れるほうに押すばね(4)と、本体(2)内に移動可能に配置され、本体(2)の先端(2a)の穴から部分的に突出し、押しボタン(3)に固定されて、押しボタン(3)が閉位置(図2A)のほうに解放されると歯内ファイル(6)を先端(2a)に確実に取り付け、押しボタン(3)が開位置(図1)のほうに押圧されると歯内ファイル(6)から係脱する導電性フック(5)とを備える。図3に示すように、フック(5)はケーブル(8)に接続されている。図5A及び図5Bに示すように、歯内ファイルクリップ(1)は更に、歯科用洗浄消毒器での洗浄及び消毒のために、押しボタン(3)、ばね(4)、及びフック(5)を本体(2)から再取り付け可能に取り外すための取り外し機構(7)を備える。図5Bに示すように、取り外し機構(7)は、本体(2)に、先端(2a)まで延在し、該穴につながる取り外しスロット(2c)を備え、これは、フック(5)を手動で取り外しスロット(2c)内に移動させたときに押しボタン(3)、ばね(4)、及びフック(5)を本体(2)から手動で取り外すことを可能にする。その後、押しボタン(3)を、ばね(4)及びばね(4)に固定されたフック(5)と共に本体(2)からスライドして出すことができる。図4に示すように、取り外しスロット(2c)は、フック(5)のU字形状部分(5a)から逸れた、本体(2)の背部(2d)にある。また、フック(5)は、取り外しスロット(2c)との位置合わせのために傾斜可能である(図5A)。図6は、洗浄及び消毒のために押しボタン(3)、ばね(4)、及びフック(5)から取り外した後の本体(2)を示す。図7は、洗浄及び消毒のために本体(2)から取り外した後の歯内ファイルクリップ(1)のフック(5)、ばね(4)、押しボタン(3)、及びケーブル(8)を示す。図2A及び図5Aに示すように、歯内ファイルクリップ(1)は、押しボタン(3)が閉位置にあるとき(図2A)は取り外し機構(7)をブロックし、押しボタン(3)が開位置にあるとき(図5A)は取り外し機構(7)をブロック解除する安全機構(9)を有する。図2Bにより詳細に示すように、安全機構(9)は、先端(2a)付近の本体(2)内に形成されたノッチ(2b)と、フック(5)の突出端に形成されたU字形状部分(5a)とにより構成されている。U字形状部分(5a)は、押しボタン(3)が閉位置にあるときはノッチ(2b)に取り付けられ、押しボタン(3)が開位置にあるときはノッチ(2b)から取り外されることになる。
【0017】
図8は、第2の実施形態による歯内ファイルクリップの後側面図を示す。第2の実施形態では、歯内ファイルクリップ(1)は、取り外しスロット(2c)内に形成されたウィンドウ部分(2g)と、フック(5)上に形成されたキー部分(5b)とにより構成された安全機構(10)を有する。キー部分(5b)は、取り外しスロット(2c)よりも幅が広く、通過するためにウィンドウ部分(2g)と一致している。第2の実施形態では、押しボタン(3)は2つの押下レベルを有しており、押しボタン(3)が開位置に対応する第1の押下レベルにあるとき(図8)、歯内ファイル(6)をフック(5)から係脱することができるが、キー部分(5b)は先端(2a)において取り外しスロット(2c)からのすき間が足りないままであり、したがって、安全機構(10)は取り外し機構(7)をブロックしており、特に安全機構(10)は、取り外しスロット(2c)内へのフック(5)の手動傾斜移動をブロックしている。図9に示すように、押しボタン(3)が開位置を越える第2の押下レベルまで更に押圧されたときに、安全機構(10)は、取り外し機構(7)をブロック解除し、特に安全機構(10)は、フック(5)の手動傾斜移動をブロック解除し、フック(5)を、取り外しスロット(2c)に自由に傾斜/屈曲させることができる。取り外し操作中、押しボタン(3)を、ばね(4)及びばね(4)に固定されたフック(5)と共に本体(2)からスライドして出すとき、キー部分(5b)をウィンドウ部分(2g)に通す。第2の実施形態では、歯内ファイルクリップ(1)はまた、2つの押下レベルを有するがカラー(3b)を有さない押しボタン(3)によって構成される安全機構(11)を有する。図8に示すように、押しボタン(3)が第1の押下レベルにあるとき、本体(2)の下方部分と同一平面となる。また図9に示すように、使用者は、取り付けクリップ又は鉛筆を使用することによって、カラーのない押しボタン(3)を更に押圧することができる。押しボタン(3)が第2の押下レベルまで更に押圧されると、押しボタン(3)は、本体(2)の内部深くに入り、安全機構(10)はロック解除されて、取り外し機構(7)による手動取り外しが可能になる。図9Aは、中空本体(2)の内部を示す。図9Aに示すように、中空本体(2)には、任意選択的に、再組み立て中にウィンドウ部分(2g)を通してキー部分(5b)をガイドするための傾斜部(2h)が設けられている。
【0018】
図10は、第3の実施形態による閉位置にある歯内ファイルクリップ(1)の概略上面図を示す。第3の実施形態では、図12に示すように、取り外しスロット(2c’)は、本体(2)の側方部分(2e)にある。取り外しスロット(2c’)は、先端(2a)まで延在し、前述した穴につながる。そしてフック(5)は、取り外しスロット(2c’)との位置合わせのために回転可能である。押しボタン(3)の前面は、取り付け又は取り外し中の押しボタン(3)の回転を容易にするためのねじ回し用のスロット(3c)を備える。図13に示すように、押しボタン(3)は、カム溝(3a)を有する。図14に示すように、本体(2)は、カム溝(3a)とそれぞれ係合するためのカムピン(2f)を有する。図12に示すように、取り外しスロット(2c’)との位置合わせのために、押しボタン(3)を押圧し、所定の角度、好ましくは90度回転させ、解放することができる。押しボタン(3)が開位置まで押圧されたとき、歯内ファイル(6)をフック(5)から係脱することができる。第3の実施形態では、歯内ファイルクリップ(1)は、代替の安全機構(10’)を有する。そして、2押下レベルの押しボタン(3)を有するようにカム溝(3a)の深さも増加している。図13及び図14に示すように、代替の安全システム(10’)は、押しボタン(3)に形成されたカム溝(3a)と、本体(2)内に形成されたカムピン(2f)とにより構成されている。押しボタン(3)が第1の押下レベルにあるとき、歯内ファイル(6)をフック(5)から係脱することができるが、カムピン(2f)はカム溝(3a)の垂直部分からのすき間が足りないままであり、第2の押下レベルまで更に押圧されない限り回転されることができない。押しボタン(3)が第2の押下レベルまで更に押圧されたとき、フック(5)を、カム溝(3a)の水平部分に沿って自由に回転させて、図11に示すように取り外しスロット(2c’)と位置を合わせることができる。その後、押しボタン(3)を、ばね(4)及びばね(4)に固定されたフック(5)と共に本体(2)からスライドして出すことができる。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 根管長測定器用の歯内ファイルクリップ(1)であって、
中空の本体(2)と、
前記本体(2)に移動可能に連結された押しボタン(3)と、
前記押しボタン(3)を前記本体(2)から離れるほうに押すばね(4)と、
前記本体(2)内に移動可能に配置され、前記本体(2)の先端(2a)の穴から部分的に突出し、前記押しボタン(3)に固定されて、前記押しボタン(3)が閉位置のほうに解放されると歯内ファイル(6)を前記先端(2a)に確実に取り付け、前記押しボタン(3)が開位置のほうに押圧されると前記歯内ファイル(6)から係脱する導電性のフック(5)と、
を備える歯内ファイルクリップ(1)において、
歯科用洗浄消毒器で洗浄及び消毒するために、前記押しボタン(3)、前記ばね(4)、及び前記フック(5)を前記本体(2)から再取り付け可能に取り外すための取り外し機構(7)を更に備え、前記取り外し機構(7)が、前記本体(2)に、前記先端(2a)まで延在し、前記穴につながる取り外しスロット(2c;2c’)を備え、前記フック(5)を前記穴から前記取り外しスロット(2c、2c’)内に手動で移動させたときに、前記押しボタン(3)、前記ばね(4)、及び前記フック(5)を前記本体(2)から手動で取り外すことを可能にすることを特徴とする、歯内ファイルクリップ(1)。
[2] 安全機構(10、10’)を更に備え、前記押しボタン(3)が2つの押下レベルを有し、前記押しボタン(3)が前記開位置に対応する第1の押下レベルにあるとき、前記歯内ファイル(6)を前記フック(5)から係脱することができ、前記安全機構(10、10’)は、前記取り外し機構(7)をブロックしており、前記押しボタン(3)が前記開位置を越える第2の押下レベルまで更に押圧されたときに、前記安全機構(10、10’)は、前記取り外し機構(7)をブロック解除し、ここにおいて、前記押しボタン(3)が前記第1の押下レベルにあるとき、前記歯内ファイル(6)を前記フック(5)から係脱することができ、前記安全機構(10、10’)は、前記取り外しスロット(2c、2c’)内への前記フック(5)の手動移動をブロックしており、前記押しボタン(3)が前記第2の押下レベルまで更に押圧されたときに、前記安全機構(10、10’)は、前記フック(5)の手動移動をブロック解除し、前記フック(5)を前記取り外しスロット(2c、2c’)内に自由に移動させることができることを特徴とする、[1]に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
[3] 前記取り外しスロット(2c)が、前記フック(5)のU字形状部分(5a)から逸れた、前記本体(2)の背部(2d)にあり、前記フック(5)が、前記取り外しスロット(2c)との位置合わせのために手動で傾斜可能であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
[4] 前記取り外しスロット(2c)が、ウィンドウ部分(2g)を備え、前記フック(5)が、前記取り外しスロット(2c)よりも幅が広く、前記ウィンドウ部分(2g)と一致するキー部分(5b)を備え、前記押しボタン(3)が2つの押下レベルを有し、前記押しボタン(3)が前記第1の押下レベルにあるとき、前記歯内ファイル(6)を前記フック(5)から係脱することができ、前記キー部分(5b)は前記先端(2a)において取り外しスロット(2c)からのすき間が足りないままであり、前記押しボタン(3)が前記第2の押下レベルまで更に押圧されたときに、前記フック(5)を、前記取り外しスロット(2c)に自由に傾斜させることができ、前記ウィンドウ部分(2g)及び前記キー部分(5b)が前記安全機構(10)を構成することを特徴とする、[2]に従属する[3]に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
[5] 前記中空の本体(2)の内部には、再組み立て中に前記ウィンドウ部分(2g)を通して前記キー部分(5b)をガイドするための傾斜部(2h)が設けられていることを特徴とする、[4]に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
[6] 前記取り外しスロット(2c’)が、前記本体(2)の側方部分(2e)にあり、前記フック(5)が、前記取り外しスロット(2c’)との位置合わせのために手動で回転可能であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
[7] 前記押しボタン(3)の前面が、取り付け又は取り外し中の前記押しボタン(3)の回転を容易にするためのねじ回し又は突出グリップ用のスロット(3c)を備えることを特徴とする、[6]に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
[8] 前記押しボタン(3)がカム溝(3a)又はカムピンのいずれかを有し、前記本体(2)は、前記取り外しスロット(2c’)との位置合わせのために、前記押しボタン(3)を押圧し、所定の角度だけ回転させ、解放するとき、それぞれ互いに一致するカムピン(2f)又はカム溝を有することを特徴とする、[6]又は[7]に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
[9] 前記押しボタン(3)が2つの押下レベルを有し、前記押しボタン(3)が前記第1の押下レベルにあるとき、前記歯内ファイル(6)を前記フック(5)から係脱することができ、前記カムピン(2f)は前記カム溝(3a)の垂直部分からのすき間が足りないままであり、前記押しボタン(3)が前記第2の押下レベルまで更に押圧されたときに、前記フック(5)を前記カム溝(3a)の水平部分で自由に回転させて前記取り外しスロット(2c’)と位置を合わせることができ、前記カム溝(3a)及び前記カムピン(2f)が、前記安全機構(10’)を構成することを特徴とする、[2]に従属する[8]に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
[10] 前記2つの押下レベルを有し、カラー(3b)が設けられていない前記押しボタン(3)によって構成された別の安全機構(11)を更に備え、前記押しボタン(3)が前記第1の押下レベルまで押圧されると、前記本体(2)の下方部分と同一平面となり、前記押しボタン(3)が前記第2の押下レベルまで更に押圧されると、前記押しボタン(3)は前記本体(2)の内部深くに入ることを特徴とする、[2]に従属する[1]~[9]のいずれか一項に記載の歯内ファイルクリップ(1)。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図9A
図10
図11
図12
図13
図14