(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】短期半球脳監視のための帽状腱膜下電極アレイのベッドサイド挿入および記録機能を最適化するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/293 20210101AFI20241015BHJP
【FI】
A61B5/293
(21)【出願番号】P 2021547048
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 US2019057247
(87)【国際公開番号】W WO2020086473
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-19
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520016376
【氏名又は名称】アイシーイー ニューロシステムズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ワジリ, アレン
(72)【発明者】
【氏名】エマーソン, ロナルド
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-014183(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0035316(US,A1)
【文献】特開2014-036862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0380009(US,A1)
【文献】特表2014-526367(JP,A)
【文献】特開2004-267657(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0183097(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0287879(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳の活動を測定するためのシステムであって、前記システムは、
プロセッサと、
第1の支持構造上に配置された第1のセットの電極の第1のアレイであって、前記第1のアレイは、患者の中および第1の脳半球にわたる設置のために構成されており、前記第1のセットの電極は、前記第1の支持構造に沿って円周方向に配置されている第1の複数の記録電極
と、参照電極と、接地電極とを含む、第1のアレイと、
第2の支持構造上に配置された第2のセットの電極の第2のアレイであって、前記第2のアレイは、前記患者の中および第2の脳半球にわたる設置のために構成されており、前記第2のセットの電極は、前記第2の支持構造に沿って円周方向に配置されている第2の複数の記録電極
と、参照電極と、接地電極とを含む、第2のアレイと、
前記第1のアレイおよび前記第2のアレイを前記プロセッサに接続するインターフェースと
を備え、
前記プロセッサは、以下のステップ:
所定のテンプレートのユーザ選択に基づいて、前記第1のセットの電極から前記第1の複数の記録電極、前記参照電極、および前記接地電極を、前記第2のセットの電極から前記第2の複数の記録電極、前記参照電極、および前記接地電極を識別することと、
前記第1のセットの電極
のうちの前記識別された第1の複数の記録電極、前記識別された参照電極、および前記識別された接地電極からの信号に基づいて、好ましくない信号品質を伴う、前記第1のセットの電極のうちの電極を識別することと、
前記識別することに応答して、前記好ましくない信号品質を伴う前記電極に対応する第1のチャネルを除外することと、
前記好ましくない信号品質を伴う前記電極に対して対称的に設置されている、前記第2のアレイのうちの電極に対応する第2のチャネルを除外することと
を実施するように構成されている、システム。
【請求項2】
前記第1の支持構造は、帽状腱膜下腔内に埋め込まれることが可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1のセットの電極は、前記第1の支持構造上に線形に配置されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の支持構造の第1の部分は、前記第1の複数の記録電極を含み、前記第1の支持構造の第2の部分は、前記第1のセットの電極の
前記参照電極および
前記接地電極を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2の部分と前記第1の支持構造の第1の端部との間に位置している記録電極がない、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のセットの電極は、複数の記録電極、少なくとも1つの参照電極、および少なくとも1つの接地電極を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のアレイは、前記患者の帽状腱膜下腔内の設置のために構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1のアレイは、前記第1の脳半球に重なる第1の傍矢状線に沿った設置のために構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記ステップは、表示モンタージュから、前記第1のセットの電極のうちの電極の少なくとも1つの組み合わせを選択することをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記ステップは、前記表示モンタージュによって、前記電極の少なくとも1つの組み合わせに対応する1つ以上の信号を表示することをさらに含み、前記表示することは、前記電極の少なくとも1つの組み合わせの1つ以上の電極の場所に基づく、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1のチャネルは、前記第1の複数の記録電極のうちの少なくとも2つの記録電極の両極比較から導出される合成チャネルであり、前記第2のチャネルは、前記第2の複数の記録電極のうちの少なくとも2つの記録電極の両極比較から導出される合成チャネルである、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記患者の中への前記第1のアレイの進入のための解剖学的に適切なエリアを識別するための挿入ガイドをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
皮膚進入部位における前記第1の支持構造を保持するように構成された第1の保持要素をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
皮膚退出部位における前記第1の支持構造を保持するように構成された第2の保持部をさらに備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1のアレイに取り付けられるように構成された湾曲状の針をさらに備え、前記湾曲状の針は、点までテーパ状である先端を含み、前記湾曲状の針は、前記湾曲状の針の前端部における前孔と、前記湾曲状の針の後端部における後孔とを含む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳の電気活動を記録するために帽状腱膜下腔内での一時的設置のために設計された電極アレイの低侵襲性挿入および機能最適化を可能にするシステムおよび方法を包含する。説明されるシステムおよび方法は、医療提供者が、特殊なEEGまたは外科的訓練なしに、緊急設定において、頭皮電極の適用および正式な外科的設定における記録電極の埋め込みを必要とすることなく臨床的に関連性がある両半球の高忠実度EEG信号を記録および比較することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
以下の議論において、ある論説および方法が、背景および導入目的のために説明されるであろう。本明細書に含まれるものはいずれも、従来技術の「承認」として解釈されるべきではない。出願者は、適切である場合、本明細書で参照される論説および方法が、適用可能な法規条項下で従来技術を構成しないことを実証する権利を明白に留保する。
【0003】
脳傷害の多くの場合、脳の健康の有害な変化の適時な検出が、一次傷害を効果的に治療するために、または二次傷害を予防するために重要であり得る。一連の神経監視デバイスが、これらの目的のために開発されてきたが、ニューロンの健康を迅速に直接評価する最も効果的な手段は、脳波記録(EEG)である。
【0004】
従来的EEGは、患者の頭皮に取り付けられる一連の金属電極を利用し、脳内の特定の細胞によって自然発生させられる振動電位を記録する。EEGが、発作をもたらすニューロンの異常発火を検出する目的のために過去に主に使用されてきたが、データは、正常および病的状態における脳の健康のリアルタイム監視のためのEEGの使用も支持している。
【0005】
例えば、EEG変化は、脳の血流が臨界レベルを下回る(脳虚血)とき、急に観察される。多くの場合、これらの変化は、不可逆的脳損傷(脳梗塞)の発現に先立って見られ得、それは、医療提供者が、脳の血流を改良し、恒久的損傷を予防するために臨床介入を実施することを可能にする。これらの考え方に沿って、EEGは、外傷性脳傷害、心停止、脳卒中、および脳の健康において遅れた可逆的変化が生じ得る他の急性神経学的障害に罹患している患者のために極めて有益であり得、脳の健康の効果的なリアルタイム監視が、より効果的かつ適切な臨床介入のための機会を提供するであろう。
【0006】
急性脳傷害がある患者におけるEEGの使用に起因し得る主要な利益にもかかわらず、実用的要因が、臨床設定における急性脳傷害のためのこの技法の採用の普及および有用性を大きく限定している。そのような要因は、現代では持続臨床使用のために不可欠である自動EEGデータ分析のためのアプローチの開発を同時に限定している。
【0007】
従来的EEGは、極めて技術的に煩雑である。EEGデータの記録を開始するために、第1のステップは、訓練を受けた技術者による患者の頭皮への金属ベースの電極の適用を要求する。このプロセスは、時間がかかり、冗漫であり、多くの場合、(電極が電極と皮膚との間の恒久固定剤がないことに起因して容易に外される傾向があるので)長期監視を要求し、種々の臨床介入を受ける患者のために繰り返される必要がある。電極を記録ハードウェアに効果的に取り付けることは、信号増幅器上の特定の点に差し込まれる多数の個々のワイヤを要求する(特殊な知識および経験を要求する)。多数の個々に取り付けられたワイヤに関するこの要件は、合理化された配慮に関する課題をもたらし、頻繁な接続解除および介護者の不満につながる。
【0008】
標準的な頭皮電極ベースのEEGに関する追加の技術的要件は、個別的な「参照」電極が、ベースライン電気信号を記録するために使用され、全ての他の記録チャネルがベースライン電気信号に対して測定されることである。この参照電極は、局所環境内のハードウェアまたは電気機器によって発生させられる電気アーチファクトのコモンモード阻止を提供する役割を果たす必要な第2の「接地」電極を伴う。参照電極、接地電極、または両方が、不良に位置付けられた場合、またはある様式で接続解除された場合、EEG記録の全体が、破損し、使用不可能になる。したがって、訓練を受けた技術者が、EEG記録の忠実性を常に監視し、一般的な参照または接地電極に技術的問題が存在した場合、「トラブルシューティング」サポートを提供するために対応可能でなければならない。
【0009】
これらの理由により、高度な訓練を受けた技術者の24時間対応可能性が、脳傷害患者のための頭皮ベースの持続EEG記録を効果的に利用するために要求される。残念ながら、臨床センターのかなりの大部分は、このプロセスをサポートするための財源および訓練を受けた人員へのアクセスを有しておらず、したがって、脳傷害患者のための持続24時間EEG記録を効果的に提供することができない。
【0010】
長期的な頭皮電極ベースの記録に関連付けられた複雑な技術的要件以外に、EEGの現在の臨床使用は、主に、生の電気波形分析に依存している。このプロセスは、EEG解釈の技術分野で訓練を受けた専門家の対応可能性を要求する。そのような訓練を受けた専門家の必要性に関連付けられたいくつかの主要な限界が存在する。第1に、これらの個人は、概して、持続基準でEEGを精査せず、むしろ、記録は、24時間に1回と同程度に低頻度であり得る一時的基準で精査される。そのような低頻度のEEG精査は、関連性がある生理学的変化が、概して、一時的であるよりも持続的であるので、神経傷害がある患者において脳の健康を監視するための有用性を殆ど提供しない。第2に、EEGに関して、遅延した様式で識別される変化が、多くの場合、潜在的に可逆的な二次脳傷害が不可逆的になった後に十分に気づかれ、したがって、EEG異常の遅延した識別を臨床的に無意味する。第3に、EEG解釈の技術分野で訓練を受けた専門家は、数が比較的に少なく、脳傷害患者のためのEEG監視が極めて重要である多くの設定において対応不可能である。最後に、脳傷害がある患者を監視するために最も有用である大量の情報が、生の波形データで見られることができず、懸念の変化を効果的に識別するために、特定の周波数帯域におけるEEG「電力」の定量的分析を要求する。
【0011】
この目標を達成するために、生理学的に有用な情報が、容易に解釈される視覚カラー表示(個別的な周波数帯域内のEEG電力を表示する「圧縮スペクトルアレイ」)への生のEEG信号の数学的処理の使用を通して、容易に獲得され得ることが、可能である。しかしながら、そのような分析における「クリーンな」EEG信号(高い信号対雑音比から利益を得る)に関する要件は、頭皮ベースの電極を使用する定量的EEG方法の臨床的採用を最終的に減じている。現在の方法は、処理された信号の妥当性を確認し、アーチファクト、雑音、または電極接触の損失からの汚染の期間が、(前述で記述されたように、頭皮EEGで一般的である)有効EEGとして解釈されないことを確実にするために、人間の監督を要求する。
【0012】
さらに、汚染されたEEG記録は、いくつかの独立した源から生じ得る。式の「信号」側において、EEG信号の「発生器」(すなわち、ニューロン)からの距離および信号を減衰させる介在組織(例えば、頭皮の組織)の存在が、電気信号振幅を減少させ、EEG波形の全体的振幅を最小化する傾向がある「平均化」効果を増加させる役割を果たす。式の「雑音」側において、頭皮電極を用いた記録に固有の電気機械的要因が、かなりのEEGアーチファクト源である。前述で述べられたように、金属と皮膚との間の細い接続が、かなりの電気雑音の導入および信号の不一致をもたらす。外部電気雑音源は、脳傷害患者の処置が典型的に生じる臨床設定(例えば、集中治療室)において広く分布し、多種多様な環境ベースの電気的アーチファクト(他の機器からの汚染電気信号、臨床処置活動中の電極または接続ワイヤの移動等)および患者ベースのアーチファクト(震え、皮膚の異常等に関連付けられた筋肉活動によって発生させられる電気信号)を含み得る。重要なこととして、一般的な参照電極の過剰な雑音、故障、または損失は、頭蓋にわたって分散させられた任意の追加の電極からのいずれの有用な記録も妨げるであろう。
【0013】
総合すると、頭皮ベースのEEGシステムの不良な信号対雑音比および不良な長期忠実性が、効果的、自動、持続的、確実な定量的分析の開発を妨げており、そのような定量的分析は、脳傷害患者におけるEEGベースの神経監視ツールのために不可欠である。したがって、非熟練臨床人員が持続的な高忠実度EEG記録を提供する電極アレイを展開することを可能にするシステムが必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本概要は、発明を実施するための形態において下でさらに説明される簡略化された形態の一連の概念を導入するために提供される。この概要は、請求される主題の主要または不可欠な特徴を識別することを意図しておらず、請求される主題の範囲を限定するために使用されることも意図していない。請求される主題の他の特徴、詳細、有用性、および利点が、付随する図面に図示され、添付の請求項に定義される、それらの側面を含む以下に書かれる発明を実施するための形態から明白であろう。
【0015】
本明細書に説明されるように、本発明の一側面は、皮膚を通過させられ、帽状腱膜下腔に埋め込まれることが可能な支持構造を備えている埋め込み型帽状腱膜下電極アレイである。埋め込み型デバイスの支持構造は、少なくとも1つの参照要素と、少なくとも1つの接地要素と、1つ以上の記録要素とを備えている。このアレイは、帽状腱膜下電気信号を検出することおよび/または伝送することが可能である。
【0016】
好ましい実施形態において、複数の記録要素が、アレイに含まれる。これらの複数の記録要素は、記録要素のうちの1つが非アクティブになる場合、および/または正確なEEG信号を伝送することができない場合、「バックアップ」として使用されることができる。さらに、支持構造に沿った記録要素の位置が、変動し得る。例えば、記録要素は、支持構造に沿って線形に、および/または円周方向に配置されることができる。他の好ましい実施形態において、参照および接地要素は、アレイ退出点から最遠位接点に位置することができる。
【0017】
さらなる好ましい実施形態において、参照および/または接地要素は、アレイ退出点の直近位に(例えば、皮膚の直下に)位置する。さらなる好ましい実施形態において、参照および接地要素は、アレイの進入または退出点からのある距離においてアレイに沿って分配される。加えて、参照および/または接地要素は、対側アレイ上に位置すること、または同じアレイ上に配置されことができる。さらなる好ましい実施形態において、参照および接地要素は、記録要素を包含するアレイと異なる他の構成で存在し得る。例えば、参照要素、接地要素、または両方は、患者の中または上の埋め込みのために設計される別のデバイス上に位置し得る。記録要素は、アレイに沿って分配されることができ、参照要素、接地要素、または両方の近位に、遠位に、またはそれと交じり合って位置付けられ得る。さらなる好ましい実施形態において、並列参照および接地電極が、外部ハードウェアの高さにおいて各側面から一緒に電気的に結び付けられ、対称の後続の分析のための「平均」接地信号および参照信号をもたらす。上記の組み合わせのうちのいずれかも、想定される。
【0018】
埋め込み型アレイの支持構造は、参照、接地、および記録要素を収納することが可能な材料から作製されなければならない。より重要なこととして、支持構造は、帽状腱膜下腔の中への挿入が可能であり、長期間(数分から数週間までに及ぶ)わたって維持されなければならない。好ましい支持構造の例は、限定ではないが、形状が円筒形であること、可撓性の生体適合性材料(例えば、シラスティックまたはポリウレタン等)から作製されること、および/または尖端を伴って形状が湾曲していることを含む。アレイの直径は、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、または1.0mmと同程度に小さく、1cm、2cm、または3cmと同程度に大きくあり得るが、より小型またはより大型のアレイも、可能である。アレイが湾曲し得る場合において、それは、概して、ヒトの頭蓋骨の自然湾曲を辿ることを意図し、したがって、ある場合には可撓性であろう。支持構造のこれらの構造特性は、皮膚を通した帽状腱膜下腔の中へのアレイの非外傷性通過を促進する。
【0019】
本明細書に説明されるように、埋め込み型電極アレイは、帽状腱膜下腔内のアレイの挿入、位置付け、および/または維持を補助するためのさらなる要素を備えていることができる。例えば、埋め込み型電極アレイに関連付けられた機器は、シース、針および通過補助アタッチメントであって、該取り付け手段は、帽状腱膜下腔を通して針を押すことおよび/または引くことが可能である、針および通過補助アタッチメント、電極進入のための解剖学的に適切なエリアを識別するための挿入ガイド、皮膚進入部位における電極の保持手段、皮膚退出部位における電極の保持手段、退出点における皮膚を通した針の通過を促進するための退出ガイド、電極アレイに物理的に関連付けられているか、それに接続されるか、または、そうでなければその一部である針、および/または上記の任意の組み合わせをさらに備え得る。
【0020】
好ましい実施形態において、電極アレイは、脳の一方または両方の半球に重なる傍矢状前後線において帽状腱膜下腔内で一方向にトンネリングされることが可能である。
【0021】
他の実施形態において、埋め込み型アレイは、帽状腱膜下活動を測定するために使用されるシステムの一部である。例えば、帽状腱膜下活動を測定するためのシステムは、該埋め込み型帽状腱膜下電極アレイをプロセッサに接続するインターフェースとともに、本明細書に説明されるような埋め込み型帽状腱膜下電極アレイを両方とも備えていることができる。プロセッサは、限定ではないが、
a)リアルタイムで脳由来電気信号を検出、フィルタ処理、処理、表示、記憶、および/または伝送すること、
b)参照要素および/または接地要素の選択を自動化すること、
c)参照要素、接地要素、および記録要素の記録機能を調べること、
d)検出された電気信号をフィルタ処理および/または処理し、ユニまたはマルチチャネル脳波(EEG)データを発生させることであって、EEGデータは、
(i)生のEEGデータ、または
(ii)定量的EEGデータ
を優先的に含む、こと、
e)参照モンタージュと電極対から導出されるモンタージュとを含むある範囲の表示および記録モンタージュを利用すること、
f)記録モンタージュを1つ以上の記録要素に事前に割り当てること、
g)
(i)絶対電圧の評価、
(ii)他の個々または集約記録要素に対する電圧の評価、
(iii)絶対EEG電力の評価、
(iv)他の個々または集約記録要素に対するEEG電力の評価、
(v)記録要素のインピーダンス測定
等の技法を優先的に使用して、不良な信号品質を実証する参照要素、接地要素、および/または記録要素を持続的に監視、識別、および除外すること、
h)複数の埋め込まれた電極アレイ間の信号を分析および解釈すること、
i)特定の記録要素からのデータの選択を通して、優先的にモンタージュの平衡を保ち、アレイの間の対称性を提供すること、
j)複数のアレイ上の記録要素の特定の組み合わせの可変または動的選択を可能にし、記録または表示モンタージュを構成すること、
k)アレイ上の記録要素間で両極数学的参照を実施すること、
l)脳の2つの半球の間の対称、非対称、または差異分析を測定、分析、および報告すること、
m)(a)-(l)の任意の組み合わせ
を含むいくつかのタスクおよび計算を実施するように構成されることができる。
【0022】
記録モンタージュを1つ以上の記録要素に事前に割り当てることは、埋め込まれたアレイのユーザが選択した組み合わせによって、または受信される電気信号/データの直接照会によってのいずれかで生じ得る。さらに、機能していない参照、接地、および/または記録要素を持続的に監視、識別、および排除することによって、個々の記録要素毎に信号特性を評価し、機能していない、またはアーチファクトであると見なされた場合、特定の記録要素からデータを破棄することを可能にする。
【0023】
同様に、(例えば)両側に位置付けられる複数の埋め込まれた電極アレイを使用することによって、脳の2つの半球の間の対称または差異分析が発生および評価され得るように、半球記録の対称分析を受信することができる。さらに、複数のアレイ上の記録要素の特定の組み合わせの可変または動的選択を可能にし、記録またはディスプレイモンタージュを構成することによって、より多種多様な記録された相互接触電気信号を提供する。
【0024】
好ましい実施形態において、電極アレイは、脳の一方または両方の半球に重なる傍矢状前後線において帽状腱膜下腔内で一方向にトンネリングされることが可能である。
【0025】
他の実施形態において、インターフェースおよびプロセッサは、互いに、またはアレイに統合され、および/またはポータブルである。加えて、保持要素および/またはストッパが、インターフェースおよび/またはプロセッサと統合される。
【0026】
さらなる好ましい実施形態において、埋め込み型電極アレイおよび/または本明細書に説明されるようなシステムは、脳の活動を測定するために使用される。脳の活動は、限定ではないが、脳傷害、脳卒中、脳出血、頭蓋内出血、例えば、心停止で見られ得るような低酸素性/無酸素性脳傷害、発作、致命的神経傷害、および/または脳の監視を要求する任意の病状を含む、いくつかの症状において測定されることができる。
【0027】
さらなる好ましい実施形態において、本明細書に説明されるシステムは、大脳皮質の拡延性抑圧を検出するために使用されることができる。
【0028】
さらに、さらなる好ましい実施形態において、埋め込み型電極アレイおよび/または本明細書に説明されるようなシステムは、
a.血管内手技中に脳の活動を測定すること、
b.脳神経外科または血管外科的手技中に脳の活動を測定すること、
c.心臓または他の外科的手技中に脳の活動を測定すること、
d.例えば、救急車または戦場内等の緊急設定において脳傷害を査定すること、
e.脳傷害または異常の側性を識別すること、
f.脳の健康についての診断情報を提供すること、または
g.(a)-(f)の任意の組み合わせ
を行うために使用されることができる。
本発明はさらに、例えば、以下を提供する。
(項目1)
埋め込み型帽状腱膜下電極アレイであって、前記電極アレイは、帽状腱膜下腔に埋め込まれることが可能である支持構造を備え、前記支持構造は、少なくとも2つの要素を備え、それらのうちの少なくとも1つは、記録要素であり、前記記録要素は、少なくとも1つの参照要素および少なくとも1つの接地要素と組み合わせて、帽状腱膜下電気信号を検出することおよび/または伝送することが可能である、電極アレイ。
(項目2)
前記アレイの少なくとも2つの要素は、接地要素を含む、項目1に記載の電極アレイ。
(項目3)
前記少なくとも2つの要素または前記アレイは、参照要素を含む、項目2に記載の電極アレイ。
(項目4)
埋め込み型帽状腱膜下電極アレイであって、前記電極アレイは、帽状腱膜下腔に埋め込まれることが可能である支持構造を備え、前記支持構造は、
(a)少なくとも1つの参照要素と、
(b)少なくとも1つの接地要素と、
(c)1つ以上の記録要素と
を備え、
前記アレイは、帽状腱膜下電気信号を検出することおよび/または伝送することが可能である、電極アレイ。
(項目5)
(a)前記記録要素は、前記支持構造に沿って線形に配置されている;
(b)前記記録要素は、前記支持構造に円周方向に配置されている;
(c)前記参照および前記接地要素は、アレイ退出点から最遠位接点に位置している;
(d)前記参照および/または前記接地要素は、アレイ退出点の近位に位置している;
(e)前記参照および/または前記接地要素は、前記アレイに沿って分配されている;
(f)前記参照要素と前記接地要素とは、対側アレイ上に位置しているか、または、同じアレイ上に配置されている;
(g)前記参照要素は、前記接地要素を備えている;
または、
(h)(a)-(g)の任意の組み合わせである、
項目3または4に記載の電極アレイ。
(項目6)
前記支持構造は、
(a)形状が円筒形であり、
(b)可撓性材料から作製され、および/または、
(c)尖端を伴って形状が湾曲し、
(d)(a)-(c)の任意の組み合わせである、
項目4または6のいずれかに記載の電極アレイ。
(項目7)
前記電極アレイは、
(a)シース、
(b)針および取り付け手段であって、前記取り付け手段は、前記帽状腱膜下腔を通して前記針を押すことおよび/または引くことが可能である、針および取り付け手段、
(d)電極進入のための解剖学的に適切なエリアを識別するための挿入ガイド、
(e)皮膚進入部位における前記電極の保持手段、
(f)皮膚退出部位における前記電極の保持手段、
(g)トンネリングデバイス、
(h)退出点における皮膚を通した針の通過を促進するための退出ガイド、
(i)針であって、前記針は、前記電極アレイに物理的に関連付けられているか、前記電極アレイに接続されているか、または、そうでなければ前記電極アレイの一部である、針、または、
(j)(a)-(i)の任意の組み合わせ
をさらに備えている、項目4-6のいずれか1項に記載の電極アレイ。
(項目8)
帽状腱膜下活動を測定するためのシステムであって、前記システムは、
(a)項目1-4のいずれか1項に記載の埋め込み型帽状腱膜下電極アレイと、
(b)前記埋め込み型帽状腱膜下電極アレイをプロセッサに接続するインターフェースと
を備えている、システム。
(項目9)
前記プロセッサは、
(a)リアルタイムで帽状腱膜下電気信号を検出すること、フィルタ処理すること、処理すること、表示すること、記憶すること、および/または伝送することを行うように構成され、
(b)前記参照要素および/または前記接地要素の選択を自動化することを行うように構成され、
(c)前記参照要素、前記接地要素、および前記記録要素の記録を調べることを行うように構成され、
(d)検出された電気信号をフィルタ処理および/または処理し、ユニまたはマルチチャネル脳波(EEG)データを発生させることであって、前記EEGは、
1.生のEEGデータ、または
2.定量的EEGデータ
を優先的に含む、ことを行うように構成され、
(e)参照モンタージュおよび電極対から導出されるモンタージュを含むある範囲の表示および記録モンタージュを利用することを行うように構成され、
(f)記録モンタージュを1つ以上の記録要素に事前に割り当てることを行うように構成され、
(g)
1.絶対電圧の評価、
2.他の個々または集約記録要素に対する電圧の評価、
3.絶対EEG電力の評価、
4.他の個々または集約記録要素に対するEEG電力の評価、
5.記録要素のインピーダンス測定
等の技法を優先的に使用して、不良な信号品質を実証する参照要素、接地要素、および/または記録要素を持続的に監視し、識別し、それらを除外することを行うように構成され、
(h)複数の埋め込まれた電極アレイ間の信号を分析し、解釈することを行うように構成され、
(i)特定の記録要素からのデータの選択を通して、優先的にモンタージュの平衡を保ち、アレイの間の対称性を提供することを行うように構成され、
(j)複数のアレイ上の記録要素の特定の組み合わせの可変または動的選択を可能にし、記録または表示モンタージュを形成することを行うように構成され、
(k)アレイ上の前記記録要素間で両極数学的参照を実施することを行うように構成され、
(l)脳の2つの半球の間の対称、非対称、または差異分析を測定し、分析し、報告することが可能であるように構成され、
および/または、
(m)(a)-(l)の任意の組み合わせを行うように構成されている、項目8に記載のシステム。
(項目10)
前記インターフェースと前記プロセッサとは、統合されている、項目9または9のいずれかに記載のシステム。
(項目11)
前記インターフェースおよび前記プロセッサは、ポータブルである、項目8-10のいずれか1項に記載のシステム。
(項目12)
項目1-7のいずれか1項に記載の電極アレイまたは項目9-11のいずれか1項に記載のシステムの使用であって、前記アレイまたはシステムは、
a.脳傷害、
b.脳卒中、
c.脳出血、
d.頭蓋内出血、
e.低酸素性/無酸素性脳傷害、
f.発作、
g.致命的神経傷害、および/または
h.脳の監視を要求する病状
から選択される症状を測定するために使用される、使用。
(項目13)
項目1-7のいずれか1項に記載の電極アレイまたは項目9-11のいずれか1項に記載のシステムの使用であって、前記アレイまたはシステムは、
a.血管内手技中に脳の活動を測定すること、
b.脳神経外科または血管手技中に脳の活動を測定すること、
c.心臓または他の外科的手技中に脳の活動を測定すること、
d.緊急設定において脳傷害を査定すること、
e.脳傷害または異常の側性を識別すること、
f.脳の健康についての診断情報を提供すること、または、
g.(a)-(f)の任意の組み合わせ
を行うために使用される、使用。
(項目14)
帽状腱膜下電気信号を検出および/または伝送する方法であって、前記方法は、
(a)支持構造内に埋め込み型電極アレイを提供するステップと、
(b)患者の皮膚/表皮上および患者の帽状腱膜下腔の中への前記支持構造のための解剖学的に適切な進入点を選択するステップと、
(c)前記選択された進入点を通して前記帽状腱膜下腔の中に、前記患者の脳の1つの半球に重なる傍矢状前後線に実質的に沿って、前記支持構造を挿入するステップと、
(d)プロセッサを前記電極アレイにインターフェース接続し、前記帽状腱膜下電気信号を受信するステップと
を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の目的および特徴は、以下の詳細な説明および付随する図面を参照して、より理解されることができる。
【0030】
【
図1】
図1Aおよび1Bは、帽状腱膜下電極アレイの解剖学的位置を描写し、アレイは、右側(100)の瞳孔中心線において傍矢状面内に設置され、後/頭頂挿入点(110)から前/前頭退出点(120)まで延び、頭蓋外延長部は、インターフェース/プロセッサ(130)に接続する接続ケーブルへの一体化挿入のために設計されている。アレイの灰色部分は、帽状腱膜下腔内に位置するそれである。
【0031】
【
図2】
図2は、表皮(200)、皮下組織(210)、帽状腱膜(220)、帽状腱膜下腔(230)、および頭蓋骨(240)を含む頭皮の層の図式的「切断」表現であり、皮膚および皮下組織(200、210、220)を通して設置された後の帽状腱膜と頭蓋骨との間の帽状腱膜下腔内の電極アレイ(250)を明示する。
【0032】
【
図3】
図3A、3B、および3Cは、針デバイスを描写し、各々は、取り付けられたシース(310)を有し、針デバイスは、帽状腱膜下腔の中への電極アレイの非外傷性通過のために設計されている。3つの異なる針例が、それぞれ、
図3A、3B、および3C、300、320、および330に示される。針先端は、
図3Bおよび3Cに図示されるように、帽状腱膜下腔を通した通過を促進するように、直線状(320)または角度付き(330)であり得る。針自体は、
図3Cに示される針部分(340)によって示されるように、頭蓋骨の自然湾曲に形状適合するように湾曲し得る。
【0033】
【
図4】
図4A、4B、および4Cは、帽状腱膜下アレイの位置付けのための取り付け点と、針およびシース装置に関する針通過補助のための使用の手段とを図示する:孔が、針の前部(400)および後部(410)に存在し、それらを通して、通過補助が、「押し」(420)および「引き」(430)補助のために設置されることができる。
【0034】
【
図5】
図5は、頭部の見下げ図を提供し、対称な両側電極アレイが、頭頂(510)および前頭(520)領域に重なる傍矢状瞳孔中心線(500)において帽状腱膜下腔内に設置されている。
【0035】
図6A、6B、および6Cは、針退出ガイド(600)のための特性および使用の手段を実証し、針退出ガイドは、帽状腱膜下腔からの提案される出口点を通した針通過を補助するように設計される。
【0036】
【
図6A】
図6Aは、針の通過のための中心開口部(610)を伴う固体リングを有する退出ガイド(600)の正面図である。
【0037】
【
図6B】
図6Bは、外縁(630)から中心孔(640)の周縁までの厚さにおいてテーパを有する退出ガイド(600)の側面切断図である。
【0038】
【
図6C】
図6Cは、頭部(650)の見下げ図であり、帽状腱膜下腔を通して設置されている針/シース装置を実証し、退出ガイド(600)は、帽状腱膜下腔からの針の退出を方向付け、補助するように提案される退出点に位置付けられている。
【0039】
【
図7】
図7Aおよび7Bは、それぞれ、針挿入ガイド(700)の側面図および見下げ図を提供し、針挿入ガイドは、瞳孔中心線(710)内の適切な軌道、および頭蓋骨(720)の頭頂湾曲における進入点を識別するように設計される。
【0040】
図8A-8Gは、帽状腱膜下腔の中に設置されたアレイを固定することを補助するためのアレイ保持デバイスを描写する。
【0041】
【
図8-1】
図8Aおよび8Bは、それぞれ、例示的な後「ストッパ」805の正面および側面図であり、後ストッパは、アレイの端部に取り付くであろうより大型の円盤に取り付けられ、前退出点からのアレイの引き抜きを防止するように設計される小型中空円筒中心要素から成り、後ストッパは、挿入(820)に先立ってアレイの後端上に設置され、アレイ上の最終記録要素が帽状腱膜下腔(830)の中に通過した後、皮膚に固定され得る。
【0042】
【
図8-2】
図8Cおよび8Dは、それぞれ、例示的な前「ストッパ」の正面(840)および側面(850)図であり、前ストッパは、孔を通したアレイの通過に適応するためにちょうど十分に大きく、帽状腱膜下腔の中に戻る埋め込まれたアレイの後方移動を防止するように設計される中心孔を伴う円盤から成り、前ストッパは、前退出点(870)を通したアレイの通過に続いて、アレイ(860)の前側面の上に設置され得る。保持デバイスは、それらを皮膚に固定するためのステープル、縫合糸、または代替の医学的に適切な手段を使用して、固定されることができ、定位置で固定されると、保持デバイスは、帽状腱膜下腔内でアレイを安定させるとともに、無菌状態を維持し、皮膚の中への進入および退出点のための被覆を提供する役割を果たすであろう。
【0043】
【
図8-3】
図8Fおよび8Gは、帽状腱膜下腔内に設置された電極アレイを伴う頭部の連続的な見下げ図であり、アレイ挿入後の後ストッパ(830)、続いて、前ストッパ(870)の位置付けを示す。
【0044】
【
図9】
図9は、挿入針が電極アレイ(900)の一部であり、頭皮(910)の中への進入点においてアレイを固定するように設計される最後の記録要素の遠位に保持要素を含む一体化アセンブリを描写する。
【0045】
【
図10】
図10Aおよび10Bは、接地(番号10および20)、参照(番号9および19)、および個々の記録要素(残りの接点)を含む両側帽状腱膜下電極アレイのための数値チャネル割り当ての代表的例を提供する。
【0046】
【
図11】
図11Aおよび11Bは、接地、参照、および個々の記録要素を含む片側帽状腱膜下電極アレイのためのチャネル割り当ての代表的例を提供し、この場合、アレイ上の残りの記録要素と関係して参照(番号5)および接地(番号10)位置付けの代替配置を使用する。
【0047】
【
図12】
図12A、12B、および12Cは、記録チャネル対を選択し、両極記録モンタージュにおいて合成チャネルを発生させるための方略を描写する。
図12Aにおいて、合成チャネルが、隣接するチャネルからの記録の両極比較から発生させられ、合計7つの合成チャネルをもたらす。
図12Bは、「1つをスキップする」アプローチを表し、それによって、合成チャネルが、アレイに沿った1つおきの他の記録要素の両極比較から発生させられる。同様に、
図12Cは、「2つをスキップする」アプローチを示し、それによって、合成チャネルが、アレイに沿った2つおきの他の記録要素の両極比較から発生させられる。「スキップ」合成チャネルは、したがって、より広い記録場の電気記録サンプリングを提供するために使用されることができる。
【0048】
【
図13】
図13は、二次退出点を必要とすることなく、前頭領域内の単一の進入点(1310)において挿入および固定される統合型針およびストッパデバイス(1300)を伴う帽状腱膜下アレイの側面図を提供する。アレイの灰色部分は、帽状腱膜下腔内に位置するそれを示す。
【0049】
【
図14】
図14は、単一のアレイに沿った具体的な点における個々の記録要素が「不良」として識別される場合において、2つの大脳半球間のデータ対称性の維持を可能にするプロセッサの平衡機能の例を描写する。この代表的例において、各々が4つの記録要素を含む両側アレイからのデータが、利用される。特定のデータチャネルが、1つのアレイ上で「不良」(この場合、右側で一連の「不良」チャネル)として識別されるとき、プロセッサは、1)罹患(同側/右)側のモンタージュからの「不良」記録要素を含む導出合成両極記録チャネル、および、2)非罹患(対側/左)側からの合致した導出合成両極チャネルの並行除外を提供し、したがって、2つの半球の間で分析およびデータ表示の対称性を維持する。
【0050】
【
図15】
図15は、システムに関連付けられた信号処理および表示の基本的概観を提供する。生の電気信号が、接続ケーブル(1500)を通して、信号増幅器、基本的フィルタ、およびアナログ/デジタル処理機能を含むインターフェース要素(1510)に伝送される。デジタル化された信号が、次いで、個々の患者に関して臨床医ユーザによって識別されるような特定のアレイ構成のために事前決定される特定のモンタージュ(1530)を通して、信号データを編成および解釈するための初期機能を実施するプロセッサ要素(1520)に伝送される。このようにして識別されるデータチャネルは、一連の品質制御測定値を利用し、(該当する場合)「良好」および「不良」記録要素を識別する信号分析機能(1540)によって持続的に調べられる。不良記録要素が識別されない場合において、プロセッサは、「真」の参照EEG信号の表示を伴う精査および定量的分析のための「真」のデータ(1550)、および入力チャネルから導出される「真」の合成両極チャネル(1560)を提供する。品質制御要素(1540)が、「不良」接点(1560)を識別する場合において、関連付けられる参照EEG信号および関連付けられる合成チャネルは、対側アレイ上の合致したチャネル(1570)とともに、「不良」接点から導出されるデータを除外し、「修正された」参照EEGデータおよび「修正された」合成両極チャネル(1580)を提供するように、プロセッサによって修正される。「真」の分析または「修正された」分析のいずれかからのデータが、したがって、2つの半球の間の後続の有効対称分析(1590)のために利用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下の定義が、以下に書かれる説明で使用される具体的用語のために提供される。
(定義)
【0052】
本明細書および請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に別様に決定付けない限り、複数の参照を含む。
【0053】
本発明は、本発明の構成要素「を備えている」(非制約的)、または「本質的にそれから成る」ことができる。本明細書で使用されるように、「~を備えている」は、列挙される要素、または列挙されていない任意の他の要素または複数の要素を加えた、構造または機能におけるそれらの均等物を意味する。用語「~を有する」および「~を含む」も、文脈が別様に示唆しない限り、非制約的として解釈されることになる。
【0054】
用語「約」または「ほぼ」は、部分的に、値が測定または決定される方法に依存するであろう、当業者によって決定されるような特定の値の許容範囲内、例えば、測定システムの限界を意味する。例えば、「約」は、所与の値の最大20%、好ましくは、最大10%、より好ましくは、最大5%、より好ましくは、さらに最大1%の範囲を意味することができる。代替として、特に、生物学的システムまたはプロセスに関して、本用語は、値の1桁以内、好ましくは、5倍以内、より好ましくは、2倍以内を意味することができる。別様に記述されない限り、用語「約」は、±1~20%、好ましくは、±1~10%、より好ましくは、±1~5%等の特定の値の許容誤差範囲以内を意味する。さらに広い実施形態において、「約」は、+/-5%を意味すると理解されるべきである。
【0055】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限および下限と、その規定範囲内の任意の他の規定または介在値との間の各介在値が、本発明内に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限および下限は、より小さい範囲に独立して含まれ得、また、規定範囲内の任意の具体的には除外された限界を受けて、本発明内に包含される。規定範囲が、限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか両方を除外する範囲も、本発明に含まれる。
【0056】
本明細書に列挙される全ての範囲は、2つの値の「間の」範囲を列挙するものを含む、終点を含む。「約」、「概して」、「実質的に」、「ほぼ」等等の用語は、それが絶対ではないが、従来技術の構成要件を充足しないように、用語または値を修飾するものとして解釈されることになる。そのような用語は、それらの用語が当業者によって理解される際に、状況およびそれらが修飾する用語によって、定義されるであろう。これは、少なくとも、値を測定するために使用される所与の技法に関して、予期される実験誤差、技法誤差、および計器誤差の程度を含む。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「および/または」は、2つ以上の項目のリストで使用されるとき、列挙される特性のうちのいずれか1つが存在し得る、または列挙される特性のうちの2つ以上のものの任意の組み合わせが存在し得ることを意味する。例えば、組成物が、特性A、B、および/またはCを含むものとして説明される場合、組成物は、A特徴のみ、Bのみ、Cのみ、組み合わせでAおよびB、組み合わせでAおよびC、組み合わせでBおよびC、または組み合わせでA、B、およびCを含むことができる。
【0058】
本明細書で使用されるように、用語「決定すること」は、多種多様な作用を包含する。例えば、「決定すること」は、計算すること、算出すること、処理すること、導出すること、調査すること、調べること(例えば、テーブル、データベース、または別のデータ構造を調べること)、解明すること等を含み得る。また「決定すること」は、受信すること(例えば、情報を受信すること)、アクセスすること(例えば、メモリ内のデータにアクセスすること)等を含み得る。「決定すること」は、解決すること、選択すること、選定すること、確立すること等を含み得る。
【0059】
本明細書で使用されるように、「埋め込み型帽状腱膜下電極アレイ」、「埋め込み型電極アレイ」、および「埋め込み型アレイ」は、同義的に使用される。埋め込み型電極アレイは、皮膚を通過し、帽状腱膜下腔の中に埋め込まれるように設計される。埋め込み型電極アレイは、1つ以上の記録要素と、参照要素と、接地要素とを備えている。これらの要素は、金属、プラスチック、または他の化合物から構築され得る。
【0060】
本明細書で使用されるように、「参照要素」は、埋め込み型アレイ上の1つ以上の記録要素によって検出される帽状腱膜下の脳の活動の比較を可能にする対照として、可変電極対の一般的部材としての機能を果たすように設計された接点(好ましくは、金属からも作製される)を指す。例えば、参照センサは、複数の記録要素によって検出される帽状腱膜下の脳の活動の比較を可能にすることができる。
【0061】
本明細書で使用されるように、「接地要素」は、非生理学的源(ローカル電気機器等)から導出され、したがって、そのような非生理学的信号のコモンモード阻止を可能にする大域的に記録された電気信号についての情報を提供する役割を果たす記録要素を指す。
【0062】
本明細書で使用されるように、「記録要素」は、帽状腱膜下の脳の電気活動を検出することが可能である、接点である。好ましくは、記録要素は、金属である。
【0063】
本明細書で使用されるように、「帽状腱膜下腔」は、表皮および帽状腱膜(頭皮の筋膜層)および骨膜および頭蓋骨の下方に位置する頭皮の解剖学的区画を指す。帽状腱膜下腔は、大きな傷害の危険性、出血、頭蓋内感染症の危険性、または他の重大な内科的合併症を伴わずに、特殊なツールを使用して容易にアクセスおよび横断され得る自然発生の血管領域である。
【0064】
本明細書で使用されるように、「支持構造」は、(a)参照、接地、および記録要素を収納することが可能であり、(b)脳によって発生させられる電気信号を関連付けられるプロセッサに伝送することが可能であり、(c)皮膚を通して挿入され、帽状腱膜下腔内で維持されることが可能である構造を指す。支持構造は、帽状腱膜下腔を通してトンネリングされる別個の機器を通した通行のために設計され得るか、または、支持構造自体が、独立した通過を可能にするための必要な要素を含み得る。
【0065】
本明細書で使用されるように、「円周方向配置」は、電気信号に関するアレイの回転位置にかかわらず、地理的に特定の電気信号(例えば、アレイの片側のみで生じるそれら)が記録され得るように、支持構造を完全に巻くこととして定義される。これは、したがって、最適な組織接触を伴って汎方向記録を可能にし、および/または、帽状腱膜下腔内のデバイスの特定の向きの必要性を排除する。
【0066】
本明細書で使用されるように、「方向性トンネリング」は、着目脳信号の記録を可能にするための解剖学的に関連性がある様式における特定の進入点からのアレイの通過を指す。例えば、頭部の後部から頭部の前部(すなわち、傍矢状面)に一方向にトンネリングされるアレイが、前頭および頭頂葉の記録を可能にするであろう一方、頭部の内側面から頭部の外側面(すなわち、冠状面)に一方向にトンネリングされるアレイは、軌道の前/後位置に応じて、単独で単一葉(例えば、前頭葉、頭頂葉)からの記録を可能にするであろう。
【0067】
本明細書で使用されるように、「アレイ退出点」は、電極アレイが、帽状腱膜下腔から出て、上を覆う組織を横断し、外側環境へと頭皮から退出する頭皮上の点を指す。
【0068】
本明細書で使用されるように、「対側アレイ」は、着目アレイ(慣例により、同側アレイと称される)から頭部の反対側に埋め込まれるアレイを指す。
【0069】
本明細書で使用されるように、「シース」は、周辺組織およびアレイ自体に対して最小化非外傷性である様式で、帽状腱膜下腔を通したアレイの通過を可能にする電極アレイに適応するように設計される直径の中空構造を指す。シースは、可撓性プラスチック(例えば、シラスティックまたはポリウレタン)、金属、または別の材料から作製されてもよく、使い捨てまたは再利用可能のいずれかであり得る。シースは、頭皮の組織を通した非外傷性通過を可能にするように円筒形であり得るが、他の立体構造を採用し、代替アレイ設計に適応し得る。
【0070】
本明細書で使用されるように、「針」は、最小化非外傷性の様式で頭皮を貫通するように設計される鋭い側面を伴うハードウェアを指す。先端は、頭皮の「切断」または裂傷を最小化し、頭皮からの進入または退出点の結果として生じるサイズを最小化する点まで、テーパ状であり得る。針は、頭皮の組織への傷害を最小化するように円筒形であり得るが、特定のアレイまたは関連付けられるシースの設計に関連する他の特定の立体構造も採用し得る。直径は、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、または1.0ミリメートルと同程度の小ささから、最大1cm、2cm、または3センチメートルにまで及び得る。針は、元来は金属またはプラスチックであり得、方向性トンネリングを可能にするために十分に剛であるが、挿入に先立った、またはその間の針の成形が、個々の頭蓋骨の自然湾曲を伴う最適な通過を可能にするように、十分に可撓性であり得る材料特性を有する。針は、頭皮の組織を通した通過を補助する修正、例えば、頭皮の組織を通して針を「押す」または「引く」臨床医の能力を増強し得る除去可能なアタッチメントを含み得る。
【0071】
本明細書で使用されるように、「挿入ガイド」は、電極進入のための解剖学的に適切なエリアを識別することが可能な構造を指す。例えば、前頭および頭頂葉の主要血管領域の間の流域ゾーンに重なる傍矢状面内に挿入されることを意図しているアレイが、眼の瞳孔または外眼角と外面的に持続的である線に最良に設置されるであろう。挿入ガイドは、この場合、ユーザが、頭皮上のこの線に沿って進入および退出点の提案される線形位置を識別することを可能にするであろう。加えて、挿入ガイドは、注目すべきこととして、中央頭頂および中央前頭領域において、ヒト頭蓋骨の自然湾曲点に基づいて、アレイのための最適な挿入および電極点に関して、参照点を臨床医に提供し得る。
【0072】
本明細書で使用されるように、「保持手段」、「保持デバイス」、または「保持要素」は、恒久的または一時的に埋め込み型電極アレイに取り付けられる構造を指し、「保持手段」は、アレイが退出部位において皮膚から外されること、または引き抜かれることを防止するために、皮膚に固定され、または位置付けられ得る。本発明のいくつかの実施形態を用いると、保持手段は、アレイのベッドサイド除去を促進するように、容易に除去され得る。そのような保持手段は、皮膚進入部位または退出部位のいずれか(または両方)に位置付けられることができ、埋め込み型デバイスの適切な設置および位置付けを確実にする。そのような保持手段の例は、限定ではないが、1)進入部位を覆うアレイの端部に取り付く、皮膚に取り付けき、さらなる前方移動からアレイをしっかりと固定し得るプラスチック「ストッパ」、または、2)摩擦によってアレイ移動を限定し、帽状腱膜下腔の中へのアレイの後方移動を防止するように頭皮に固定され得るアレイの上に設置され得るプラスチック円盤を含む。加えて、保持手段は、挿入および退出点を覆い、皮下組織内でアレイのさらなる無菌状態を提供する役割を果たすことができる。保持手段は、アレイに(例えば、物理的に支持構造の一部に)恒久的に取り付けられるか、または挿入手技中または後にアレイに別個に適用されるかのいずれかであり得る。保持手段は、インターフェースおよび/またはプロセッサが保持手段の一部として含まれるように、インターフェースおよび/またはプロセッサとも統合され得る。
【0073】
本明細書で使用されるように、「退出ガイド」は、針および/またはシースを「捕捉」し、帽状腱膜下腔から外部環境への好ましい退出点からのアレイの退出を最適化する役割を果たす構造を指す。退出ガイドは、臨床医が頭皮上の特定の退出点を標的化することを可能にし、針および/またはシースが意図された退出点に物理的に標的化される物理的手段を提供することができる。これは、提案される退出点を包囲する頭皮上の退出ガイドからの圧力と、下層頭皮への圧力が存在しない提案される退出点を包含する退出ガイド内の中心エリアとの組み合わせを通して、遂行されることができる。退出ガイドは、針、シース、および/またはアレイの通過が生じる中心中空領域を伴って、形状が円形であり得る。退出ガイドは、皮膚を通した針の通過を補助するように、中心中空領域に向かって円周方向にテーパ状であり得る。
【0074】
本明細書で使用されるように、「モンタージュ」は、記録された電気信号が表示される特定の様式を指す。モンタージュは、プロセッサによって事前決定され得、またはユーザ定義され得る。モンタージュは、特定の着目電極対からの記録を含むように改変されることができ、最初に記録されるような電気信号(「参照チャネル」)または参照記録の二次数学的組み合わせを通して発生させられる信号(「合成チャネル」)を表示し得る。このように、「記録モンタージュ」または「参照モンタージュ」が、参照電極に対する記録要素の特定の相対場所およびアレイに沿った個々の記録要素の相対位置に基づいて、一次様式で導出される信号を指す一方、「両極モンタージュ」は、1つ以上のアレイに沿った別個の着目記録要素からの参照記録の数学的比較を利用する表示である。
【0075】
本明細書で使用されるように、「プロセッサ」は、記録された帽状腱膜下の脳の電気活動を修正、分析、相関、記憶、および表示することが可能である。プロセッサは、ハードウェアおよび/またはソフトウェア要素を備え得る。
【0076】
本明細書で使用されるように、「帽状腱膜下の脳の活動」は、脳の帽状腱膜下区画内から記録される、脳によって発生させられる電気信号として定義される。本明細書に説明されるように、「帽状腱膜下の脳の活動」または「帽状腱膜下の脳の電気活動」は、限定ではないが、(a)平均電圧レベル、(b)二乗平均平方根(rms)電圧レベルおよび/またはピーク電圧レベル、(c)可能性として、スペクトログラム、スペクトルエッジ、ピーク値、位相スペクトログラム、電力、および電力比を含み、平均電力レベル、rms電力レベル、および/またはピーク電力レベル等の計算された電力の変形例も含む記録された脳の活動の高速フーリエ変換(FFT)を伴う導関数、(d)電力スペクトル分析、バイスペクトル分析、密度、コヒーレンス、信号相関および畳み込み等のスペクトル分析から導出される測定値、(e)線形予測モデル化または自己回帰モデル化等の信号モデル化からから導出される測定値、(f)積分振幅、(g)ピークエンベロープまたは振幅ピークエンベロープ、(h)周期的進化、(i)圧縮比、(j)スペクトログラム、スペクトルエッジ、ピーク値、位相スペクトログラム、電力、および/または電力比等の計算された値のコヒーレンス、(k)測定された脳の活動のスペクトログラム、スペクトルエッジ、ピーク値、位相スペクトログラム、電力、および/または電力比を含む記録された電気信号のウェーブレット変換、(l)ウェーブレット原子、(m)バイスペクトル、自己相関、相互バイスペクトルまたは相互相関分析、または、(n)波形位相反転、または特定の瞬間において記録要素と参照センサとの間で可変の正または負の値をもたらす双極子に関連する波形特性の他の改変を含む電気活動を検出および/または測定することが可能な種々の異なるパラメータによって、測定されることができる。好ましい実施形態において、帽状腱膜下の脳の活動は、例えば、ボルト(V)、ヘルツ(Hz)、および/またはその導関数および/または比等のカテゴリ測定値によって測定される。
【0077】
本明細書で使用されるように、システムは、「持続」および/または「リアルタイム」様式で帽状腱膜下の脳の活動に関する情報を提供し、脳の活動の最適化された検出を可能にすることができる。
【0078】
本明細書で使用されるように、埋め込み型帽状腱膜下アレイは、患者内の一時的(すなわち、数分から数時間)、急性(すなわち、数時間から数日)、または半慢性(すなわち、数日から数週間)埋め込みのために設計される。
【0079】
本明細書で使用されるように、記録要素は、埋め込み型アレイ上の他の要素「と近接して」位置付けられ得る。「~と近接して」は、規定要素「にある、その内側にある、またはそれに関連付けられる」として定義される。
【0080】
要素が、別の要素の「上にある」、それに「取り付けられる」、「接続される」、または「結合される」と称されるとき、それは、他の要素の直接上または上方にある、またはそれに接続または結合され得る、または介在要素が存在し得ることをさらに理解されたい。対照的に、要素が、別要素の「直接上にある」、それに「直接取り付けられる」、「直接接続される」、または「直接結合される」と称されるとき、介在要素が存在していない。要素の間の関係を説明するために使用される他の言葉も、同様の様式で解釈されるべきである(例えば、「間」対「直接間」、「隣接する」対「直接隣接する」等)。
【0081】
「下」、「下方」、「下側」、「上方」、「上側」等の空間的相対用語が、例えば、図に図示されるように、要素および/または特徴の別の要素および/または特徴との関係を説明するために使用され得る。空間的相対用語は、図に描写される向きに加えて、使用および/または動作時のシステムの異なる向きを包含することを意図していることを理解されたい。例えば、図内のシステムが、反転される場合、他の要素または特徴の「下方」および/または「下」として説明される要素は、次いで、他の要素または特徴の「上方」に向けられるであろう。システムは、別様に向けられる(例えば、90度回転される、または他の配向にある)ことができ、使用される空間的に相対的な記述内容は、それに応じて解釈されることができる。
(埋め込み型帽状腱膜下電極アレイ)
【0082】
我々は、埋め込み型帽状腱膜下電極アレイが、持続的な高忠実度EEG記録を提供するように臨床人員によって患者の帽状腱膜下腔の中にベッドサイドにおいて挿入され得るシステムおよび方法を開発した。例が、上記に説明されるような図で提供されている。
【0083】
さらなる例(図示せず)において、参照要素および/または接地要素は、アレイに沿って縦方向に延びているワイヤの形態であり得る。
【0084】
図2に示されるアレイ(250)等のアレイは、脳傷害がある患者にとって関連性がある能力である半球EEGデータを収集するように特に構成され、位置付けられる。
図15に示されるプロセッサ要素(1520)等の関連付けられる外部プロセッサ要素が、接地および参照電極の事前割り当てを含むアレイの側面を記録するように構成されることができる。そのような構成は、アレイから導出される記録を開始および維持することにおいて技術的専門知識の必要性を最小化することができ、いくつかの状況において、患者に関連付けられたワイヤの数を限定することができる。好ましい実施形態において、システムは、個々の記録要素からの信号の忠実性を自動的に監視し、記録された電気活動が有効であることを確実にする。両側アレイが展開される場合において、システムは、2つの大脳半球間のEEG対称性の評価に影響を及ぼし得る特定の機能していない記録要素が片側または他の側に存在した場合、記録モンタージュの「平衡を保つ」であろう。
【0085】
帽状腱膜下腔内にアレイを設置するアプローチは、電極埋め込みの特殊な外科的訓練または以前の経験がない人員による、臨床設定におけるデバイスの一時的標的化のために、この解剖学的場所の特定の特性を利用する。この領域に、負傷し、臨床的合併症をもたらし得る主要血管または他の敏感な組織が存在しない。好ましい実施形態において、方法は、アレイが針を使用して帽状腱膜下腔の中に埋め込まれることができるとき、切開を要求せず、したがって、デバイス設置に関連付けられた感染症の危険性を限定する。本実施形態において、挿入技法が、アレイを設置するための針のみを要求するので、患者がデバイス挿入のために手術室に運ばれる必要性がなく、手技が集中治療室内、救急処置室内、病院に向かう途中の救急車内、または患者の自宅内等のベッドサイドで実施されることを可能にする。他の好ましい実施形態において、皮膚に電極を通すための関連付けられるシースとともに、針の使用は、横断される組織への外傷を最小化し、より大型のトロカールの使用により生じ得る(それによって、周辺組織との電極アレイの潜在的な不良な接触につながる)ような帽状腱膜下「ポケット」形成の可能性を最小化する。
【0086】
本明細書に説明されるような埋め込み型帽状腱膜下電極アレイの使用の他の利益は、主要な流体区画(脳脊髄液)または血管内空間の関与がないので、埋め込まれたアレイによる局所感染症が存在した場合、全身性感染症を発症する低い危険性を含む。局所感染症が疑われる場合において、挿入および安定化の方法は、正式な外科的手技を必要とすることなく、デバイスの容易なベッドサイド除去を可能にする。下層の頭蓋骨の存在は、挿入の間の脳傷害のいかなる可能性も防止する。帽状腱膜と下層の頭蓋骨との間の自然な分離面は、この面内でデバイスの通過を非常に容易にし、したがって、特殊な解剖学的知識または外科的訓練を要求しない。
【0087】
さらに、帽状腱膜下腔の中への埋め込み型電極アレイの挿入は、ヒトの頭蓋および脳生体構造における保存類似性、注目すべきこととして、脳の最大葉(前頭および頭頂)の位置、頭蓋割合の詳細、および血液供給の主要領域の共通点を利用する。本明細書に説明されるような埋め込み型アレイを位置付けることは、典型的に、脳の大部分(前大脳動脈および中大脳動脈)に供給する主要血管間の「流域」ゾーンである前頭および頭頂葉の側方の大半を覆う保護を提供する。これは、流動の本質的な限界に起因する血流の減少の場合に最大の代謝危険性があり、したがって、EEG監視のために最も着目される領域である。
(埋め込み型アレイの埋め込みおよび維持のための手段
【0088】
本明細書に説明されるように、埋め込み型電極アレイは、特殊な外科的専門知識がない臨床人員によるベッドサイドにおける挿入のために設計される。さらに、好ましい実施形態において、説明されるアレイは、一時的使用(例えば、数分から数週間)のために設計され、(例えば、帽状腱膜下EEG記録がもはや臨床的に適応されない場合において)ベッドサイドにおいて容易に除去されることができ、患者に最小限の危険性を伴って局所麻酔のみを使用して挿入されることができ、設置が頭蓋骨の外側であるので、主要な解剖学的構造が脅かされず、アレイは、身体または脳への生理学的延在を伴う血流または他の流体区画へのアクセス内に設置されない。
【0089】
好ましい実施形態において、埋め込み型アレイは、同側瞳孔線内で前後向きにおいて線形傍矢状内を通され、解剖学的に関連性がある半球監視を可能にするように設計される。そのような場合において、「挿入」ガイドは、帽状腱膜下腔を通したアレイの通過に先立って、アレイのための適切な進入および退出点を識別することにおいて臨床医を補助し、着目傍矢状線内の後続の電極位置付けを最適化するであろう。ある場合、挿入ガイドは、瞳孔線と一致して頭蓋骨上に物理的に設置されるように設計される90度屈曲部を伴うL字型ツールであり得、それは、臨床医が、1)埋め込まれたアレイの計画された軌道を確認し、2)頭蓋骨の頭頂または前頭湾曲における進入点(挿入ガイドの屈曲部から45度の角度を表す点として頭皮上で識別されるであろう)をマークし、3)(アレイ自体の既知の長さに基づいて)埋め込まれたアレイの長さの全体が帽状腱膜下腔内に常駐することを可能にするであろう頭皮の前頭側面における提案される退出点をマークすることを可能にするであろう。針挿入ガイド(750)の形態のそのようなツールの例が、
図7Aおよび7Bに示されるであろう。
【0090】
他の好ましい実施形態において、システムは、挿入技法を合理化および単純化するために使用される追加のハードウェアを含む。例えば、システムは、埋め込み型アレイを帽状腱膜下腔の中に通すための
図3A、3B、および3Cに示される針300、320、および330等の針を備え得る。そのような実施形態において、針は、皮膚および皮下組織への傷害を最小化するためのテーパ状先端を有し得る。針は、帽状腱膜下腔の中および外への通過を促進するための端部における曲線も有し得、針に取り付けられた中空シースがあり、アレイは、それを通され、帽状腱膜下腔内に展開され得る。いくつかの実施形態において、針は、1つの点において挿入され、第2の点において退出し得るか、または、針は、中空であり、帽状腱膜下腔内のアレイの堆積のためのみに進入し得る。加えて、アレイは、進入および/または退出点において設置され、埋め込み型アレイを皮膚に固定するための一時的プラスチック「ストッパ」を含み得る。そのようなストッパは、インターフェースおよび/またはプロセッサも含み得る。いくつかの実施形態において、針は、挿入手技の押し引き側面を補助する除去可能な横材を有し得る。
【0091】
より短いアレイが潜在的に有用である場合等のある場合、それは、皮膚を通した二次出口を伴わずに、単一の挿入点が存在する中空針を使用して展開され得る。この場合、針は、帽状腱膜下腔の中に通され、埋め込み型電極アレイは、針を通して挿入され、針は、続いて、電極アレイの上を引き抜かれ、ストッパが、次いで、定位置で電極を固定するように適用される。
【0092】
他の好ましい実施形態は、頭皮を通した所望の退出点からの針、シース、および/またはアレイの通過を制限するおよび最適化することに臨床医を補助する「退出ガイド」を含む。そのような退出ガイド600の例が、
図6Aに提供される。
(関連付けられるハードウェア)
【0093】
好ましい実施形態において、各埋め込み型電極アレイからの単一の導線が接続され得る外部ハードウェアが、記録されたEEG信号を増幅/デジタル化/フィルタ処理する。
【0094】
本明細書に説明されるように、接続されたプロセッサは、アレイからの生のEEG信号を記録、分析、および表示することが可能である。
【0095】
好ましい実施形態において、プロセッサは、特定の患者に埋め込まれるアレイの特定の性質(片側、両側等)に応じてユーザが選択し得、適切な参照、接地、および記録要素を識別するために重要である所定の「テンプレート」を含む。例えば、両側帽状腱膜下アレイが展開され、適切なテンプレートがユーザによって選択される場合、接地要素が、一方のアレイ上のアレイ退出点からの最遠位接点としてプロセッサによって識別され得る一方、参照要素は、他方のアレイ上の最遠位接点である。片側帽状腱膜下アレイが展開され得る別の代表的例において、テンプレートは、接地要素をアレイ退出点からの最遠位接点として、参照要素をアレイ退出点からの最近位接点として識別し得る。他の実施形態において、記録要素間に分岐間隔を伴って異なる数の記録要素を包含するアレイに特有であるテンプレートが、利用可能であり得る。これらのテンプレートの存在は、したがって、ユーザが、接地要素、参照要素、または記録要素の詳細を患者毎またはアレイ毎に入力する必要性を回避することを可能にする。より具体的に、それは、ユーザが、EEGの技術分野に関する特殊な知識または技術的技能を有することなく、帽状腱膜下アレイからの永続的かつ有効な機能的EEG記録を提供することを可能にする。
【0096】
さらなる好ましい実施形態において、プロセッサは、アレイ上の個々の記録要素からの電気信号の品質を調べ、記録の真実性を確認するリアルタイム分析機能を含み、不良な信号が記録される場合(すなわち、組織との接触のないことまたは誤って接続されたアレイを示す極めて低い振幅、または、非生理学的源によって発生させられる電気的アーチファクトを示す極めて高い振幅)、プロセッサは、その接点を「不良チャネル」として識別する。ユーザは、したがって、単純な介入を追求し、着目アレイが適切に接続されていることを確実にするように、警告されることができる。他の場合において、プロセッサは、記録要素の使用を電気生理学的に適切な信号を提供するものに自動的に切り替えるであろう。この持続監視および潜在性切り替え活動を通して、プロセッサは、それによって、1)有効EEG記録のために不可欠である高忠実度参照および接地チャネルを確認するための即時かつ自動方法を提供し、2)ユーザが、EEG記録の技術的側面に関する特殊な知識または経験を有していないことを可能にし、3)アレイに沿った参照または接地導線または特定の記録要素の忠実性を置換または監視する必要なく、記録期間の全体を通してEEG記録の最大忠実性を自動的に維持する。
【0097】
ある場合、プロセッサは、両極参照モンタージュ内にEEGデータを表示および記録し得、それによって、隣接する接点が、分析のための両極参照を提供するように数学的に比較される。ある場合、両極参照比較は、「1つをスキップする」、「2つをスキップする」、または「さらにスキップする」アプローチを使用し、下層の脳のさらなる地理的保護を提供し得る。そのような両極比較は、両極比較に含まれる2つの記録要素によって包まれる脳の地理的領域内の電気活動の差異を表す合成電気信号を導出するように、特定の記録要素からの参照記録(すなわち、共通参照記録)の数学的組み合わせを通して発生させられる。
【0098】
追加の実施形態において、プロセッサは、記録されたEEG信号に自動定量的分析を実施する、分析機能を含むであろう。そのような分析は、可能性として、スペクトログラム、スペクトルエッジ、ピーク値、位相スペクトログラム、電力、および電力比を含み、また、平均電力レベル、rms電力レベル、および/またはピーク電力レベル等の計算された電力の変形例も含む、記録された脳の活動の高速フーリエ変換(FFT)を伴う導関数、電力スペクトル分析、バイスペクトル分析、密度、コヒーレンス、信号相関および畳み込み等のスペクトル分析から導出される測定値、線形予測モデル化または自己回帰モデル化等の信号モデル化から導出される測定値、積分振幅、ピークエンベロープまたは振幅ピークエンベロープ、周期的進化、圧縮比、コヒーレンスおよび位相遅延、測定された脳の活動のスペクトログラム、スペクトルエッジ、ピーク値、位相スペクトログラム、電力、および/または電力比を含む、記録された電気信号のウェーブレット変換、ウェーブレット原子、バイスペクトル、自己相関、相互バイスペクトルまたは相互相関分析、ニューラルネットワーク、再帰ニューラルネットワーク、または深層学習技法から導出されるデータ、または上記のうちのいずれかから導出されるパラメータの極小または極大値を検出するアレイの領域の識別を含み得る。
【0099】
両側監視の場合、プロセッサは、脳の各半球に関して対称データを提供するために各アレイからの同等のチャネルを含み、表示する「平衡を保つ」機能も含むであろう。データ入手および表示の対称性を維持することは、臨床医が、電気活動の可能な非対称性を識別するために脳の両側の総電気活動を比較することを所望するとき、重要であり得る。例えば、傷害または神経生理学的異常が脳の片側に影響を及ぼし得る場合(「片側異常」)において、対側(「非罹患」)半球と比較して、罹患した半球に減退または別様に改変した脳の電気活動が存在し得る。対照的に、両方の半球が傷害または生理学的異常によって同等の様式で影響を受ける場合(「両側異常」)において、両方の半球からの信号が対称的に減少させられるであろうことが予期されるであろう。しかしながら、そのような分析は、ソースデータの性質が2つの半球間で同等である(例えば、同一の解剖学的場所および電気記録「場」から記録されるデータである)ことを要求する。電極場所または距離の任意の非対称性が、誤った比較につながり得る。1つのアレイ上の特定の記録要素がプロセッサによって除外され得る場合において、プロセッサの「平衡を保つ」機能は、同様に、対側アレイ上の合致した記録要素からのデータを除外し、後続の分析のためのデータ入力の対称性を確実にするであろう。
【0100】
本発明は、本発明の精神から逸脱することなく、構造および詳細が変動させられ得る以前に本明細書に説明された実施形態に限定されない。本明細書で参照される任意の特許、特許出願、または他の出版物の教示全体が、本明細書に完全に記載された場合のように、参照することによって本明細書に組み込まれる。