(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】眼の架橋処置のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 9/01 20060101AFI20241015BHJP
A61F 9/013 20060101ALI20241015BHJP
A61F 9/007 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
A61F9/01
A61F9/013
A61F9/007 180
(21)【出願番号】P 2021549800
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 US2020019857
(87)【国際公開番号】W WO2020176598
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-11-09
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510017365
【氏名又は名称】アヴェドロ・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】AVEDRO,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】スミルノフ,ミハイル
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0310319(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0162630(US,A1)
【文献】特表2014-518643(JP,A)
【文献】特表2007-523674(JP,A)
【文献】特表2014-519866(JP,A)
【文献】特表2017-532180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/01
A61F 9/013
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と光学素子とを含む照明システムであって、架橋剤で処置された角膜の少なくとも1つの選択された領域に、1つ以上の光活性化パラメータに従って該角膜の該少なくとも1つの選択された領域に光活性化光を送達することによって架橋を生成するように構成された、照明システムと、
1つ以上の処置パラメータに関する入力を受け取るように構成されたコントローラであって、該1つ以上の処置パラメータが前記1つ以上の光活性化パラメータを含み、該コントローラが、1つ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納されたプログラム命令を実行して、該1つ以上の処置パラメータを調整するための情報を出力するように構成され、該プログラム命令が、
(A)該1つ以上の処置パラメータに関する該入力から、前記角膜の前記少なくとも1つの選択された領域についての架橋の分布を決定する第1のプログラム命令セットと、
(B)該架橋の分布から、前記角膜の形状変化を決定する第2のプログラム命令セットと、
ここで前記第2のプログラム命令セットが、角膜の弾性及び架橋と関連付けられる硬化をモデル化する生体力学モデルに従って前記角膜の前記形状変化を決定し、
(C)前記角膜の該形状変化から、対象者の視力の変化を決定する第3のプログラム命令セットと、を含むコントローラと、を含み、
該コントローラからの該出力に応答して、前記照明システムが、前記光活性化光を送達するための前記1つ以上の光活性化パラメータのうちの少なくとも1つを調整するように構成され、
前記コントローラが生化学モデル、及び
前記生体力学モデル又は光学モデルのうちの少なくとも1つに従って前記角膜の形状変化を決定
し、
前記コントローラが、測定された基準データに基づいて、前記角膜の弾性及び前記架橋と関連付けられる硬化に関する可変モデルパラメータを較正することによって前記生体力学モデルを較正するようにさらに構成され、
前記可変モデルパラメータが、架橋と関連付けられる硬化係数を含み、前記コントローラが、角膜曲率測定の測定値に従って該硬化係数を較正する、
対象者の角膜処置のためのシステム。
【請求項2】
前記1つ以上の処置パラメータが、前記架橋剤の浸漬時間、前記光活性化光のパルス持続時間、前記光活性化光の放射照度、前記光活性化光の線量、前記光活性化光の照明パターン、又は前記角膜に投与された酸素の濃度の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1のプログラム命令セットが、前記架橋の分布を、(i)少なくとも一重項酸素、過酸化物、スーパーオキシド、及びヒドロキシルラジカルを含む活性酸素種(ROS)が関与する反応、並びに(ii)酸素が関与しない反応から決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2のプログラム命令セットが、(i)前記角膜の処置前の形状及び処置前の眼圧に基づく前記角膜の処置前の状態、並びに(ii)前記角膜の該処置前の状態及び前記架橋の分布に基づく前記角膜の前記形状変化を決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第3のプログラム命令セットが、前記角膜の前記形状変化に応答した網膜上の結像の光線追跡モデルに基づいて前記対象者の前記視力の変化を決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
酸素源、及び該酸素源から前記角膜の前記少なくとも1つの選択された領域に濃縮酸素を提供するように構成された酸素運搬装置をさらに含み、前記1つ以上の処置パラメータが前記酸素の濃度にさらに関する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記可変モデルパラメータが、前記角膜の実質内の等方性物質と関連付けられる弾性パラメータ及び該実質内の異方性物質と関連付けられる剛性パラメータを含み、前記コントローラが、眼圧と関連付けられる頂点上昇の測定値に従って該弾性パラメータ及び該剛性パラメータを較正する、請求項
1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月26日に出願された米国仮特許出願第62/810,509号の優先権及びその利益を主張するものであり、これらの出願の内容は参照により完全に本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、眼の障害を処置するためのシステム及び方法に関し、より詳細には、眼の架橋処置のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
架橋処置は、円錐角膜などの障害を患っている眼を処置するために用いられ得る。特に、円錐角膜は、角膜内の構造変化が角膜を弱め、異常な円錐形状に変化させる眼の変性障害である。架橋処置は、円錐角膜によって弱められた領域を強化及び安定化し、望ましくない形状変化を防ぐことができる。
【0004】
架橋処置はまた、生体内レーザー屈折矯正術(Laser-Assisted in situ Keratomileusis(LASIK))手術などの外科手術後にも用いられ得る。例えば、LASIK手術によって引き起こされる角膜の菲薄化及び脆弱化に起因して、LASIK後拡張症として知られる合併症が起こり得る。LASIK後拡張症では、角膜に進行性の急峻化(膨隆)が起こる。したがって、架橋処置は、LASIK手術後の角膜の構造を強化及び安定化し、LASIK後拡張症を防ぐことができる。
【0005】
架橋処置はまた、角膜の屈折変化を誘導して、近視、遠視、乱視、不正乱視、老眼などといった障害を矯正するためにも用いられ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様によれば、対象者の角膜処置のための例示的なシステムは、光源及び光学素子を含む照明システムを含む。照明システムは、架橋剤で処置された角膜の少なくとも1つの選択された領域に、1つ以上の光活性化パラメータに従って角膜の少なくとも1つの選択された領域に光活性化光を送達することによって架橋を生成するように構成される。システムは、1つ以上の処置パラメータに関する入力を受け取るように構成されたコントローラを含む。1つ以上の処置パラメータは、1つ以上の光活性化パラメータを含む。コントローラは、1つ以上の非一時的コンピュータ可読記憶媒体に格納されたプログラム命令を実行して、1つ以上の処置パラメータを調整するための情報を出力するように構成される。プログラム命令は、
(A)1つ以上の処置パラメータに関する入力から、角膜の少なくとも1つの選択された領域についての架橋の分布を決定する第1のプログラム命令セットと、
(B)架橋の分布から、角膜の形状変化を決定する第2のプログラム命令セットと、
(C)角膜の形状変化から、対象者の視力の変化を決定する第3のプログラム命令セットと
を含む。
コントローラからの出力に応答して、照明システムは、光活性化光を送達するための1つ以上の光活性化パラメータのうちの少なくとも1つを調整するように構成される。
【0007】
上記の例示的なシステムでは、1つ以上の処置パラメータは、架橋剤の浸漬時間、光活性化光のパルス持続時間、光活性化光の放射照度、光活性化光の線量、光活性化光の照明パターン、又は角膜に投与された酸素の濃度の少なくとも1つを含み得る。
【0008】
上記の例示的なシステムでは、第1のプログラム命令セットは、架橋の分布を、(i)少なくとも一重項酸素、過酸化物、スーパーオキシド、及びヒドロキシルラジカルを含む活性酸素種(reactive oxygen species(ROS))が関与する反応、並びに(ii)酸素が関与しない反応から決定し得る。
【0009】
上記の例示的なシステムでは、第2のプログラム命令セットは、(i)角膜の処置前の形状及び処置前の眼圧に基づく角膜の処置前の状態、並びに(ii)角膜の処置前の状態及び架橋の分布に基づく角膜の形状変化を決定し得る。
【0010】
上記の例示的なシステムでは、第3のプログラム命令セットは、角膜の形状変化に応答した網膜上の結像の光線追跡モデルに基づいて対象者の視力の変化を決定し得る。
【0011】
上記の例示的なシステムは、酸素源、及び酸素源から角膜の少なくとも1つの選択された領域に濃縮酸素を提供するように構成された酸素運搬装置をさらに含み得、1つ以上の処置パラメータは酸素の濃度にさらに関する。
【0012】
上記の例示的なシステムでは、第2のプログラム命令セットは、角膜の弾性及び架橋と関連付けられる硬化をモデル化する生体力学モデルに従って角膜の形状変化を決定し得る。コントローラは、測定された基準データに基づいて、角膜の弾性及び架橋と関連付けられる硬化に関する可変モデルパラメータを較正することによって生体力学モデルを較正するようにさらに構成され得る。可変モデルパラメータは、角膜の角膜実質内の等方性物質と関連付けられる弾性パラメータ及び角膜実質内の異方性物質と関連付けられる剛性パラメータを含み得、コントローラは、眼圧と関連付けられる頂点上昇の測定値に従って弾性パラメータ及び剛性パラメータを較正し得る。可変モデルパラメータは、架橋と関連付けられる硬化係数を含み得、コントローラは、角膜曲率測定の測定値に従って硬化係数を較正し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の態様による、角膜コラーゲンの架橋を生成するために眼の角膜に架橋剤及び光活性化光を送達する例示的なシステムを示す図である。
【
図2A】本開示の態様による、角膜架橋処置中に適用されるリボフラビン及び光活性化光(例えば、紫外線A(UV-A)光)が関与する光生化学反応を示す図である。
【
図2B】本開示の態様による、角膜架橋処置中に適用されるリボフラビン及び光活性化光(例えば、紫外線A(UV-A)光)が関与する光生化学反応を示す図である。
【
図3】本開示の態様による、角膜架橋処置からの転帰の患者固有の判定を行うための生化学モデル、生体力学モデル、及び光学モデルの組み合わせを含む例示的なモデル化システムを示す図である。
【
図4A】本開示の態様による、モデル化システムの態様の例示的な較正手順を示す図である。
【
図4B】本開示の態様による、生体力学モデルの2つの段階のうちの第1の段階で適用される
図4Aの例示的な較正手順を示す図である。
【
図4C】本開示の態様による、
図4Bに関連する生体力学モデルの2つの段階のうちの第2の段階で適用される
図4Aの例示的な較正手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、眼1の角膜2においてコラーゲンの架橋を生成するための例示的な処置システム100を示す。処置システム100は、角膜2に架橋剤130を投与するためのアプリケータ132を含む。例示的な実施形態では、アプリケータ132は、光増感剤130を角膜2に液滴として投与する点眼器、シリンジなどであり得る。架橋剤を投与するための例示的なシステム及び方法は、2017年4月13日に出願された「Systems and Methods for Delivering Drugs to an Eye」という名称の米国特許第10,342,697号に記載されており、その内容は、参照により完全に本明細書に組み入れられる。
【0015】
架橋剤130は、架橋剤130が角膜上皮2aを通過して角膜実質2b内の下にある領域に至ることを可能にする製剤で提供され得る。あるいは、角膜上皮2aは、架橋剤130が下にある組織により直接的に投与されることを可能にするために、除去されるか又は他の方法で切開されてもよい。
【0016】
処置システム100は、光源110と、角膜2に光を導くための光学素子112とを有する照明システムを含む。光は、架橋剤130の光活性化を引き起こして、角膜2に架橋活性を生じさせる。例えば、架橋剤はリボフラビンを含み得、光活性化光は紫外線A(UVA)(例えば、約365nm)光を含み得る。あるいは、光活性化光は、可視波長(例えば、約452nm)などの別の波長を含んでいてもよい。以下にさらに説明されるように、角膜架橋は、光化学動態反応のシステムに従って角膜組織内に化学結合を生み出すことによって角膜強度を向上させる。例えば、リボフラビン及び光活性化光は、角膜組織を安定化及び/又は強化して、円錐角膜やLASIK後拡張症などの角膜拡張性障害に対処するために適用され得る。さらに、リボフラビン及び光活性化光の適用は、様々な量の屈折矯正も可能にし得、これには、例えば、近視、遠視、乱視、不正乱視、老眼及び角膜拡張性障害に起因する複雑な角膜屈折面矯正、並びに角膜生体力学的変化/変性の他の状態などの組み合わせが関与し得る。
【0017】
処置システム100は、光源110及び/又は光学素子112を含むシステム100の態様を制御する1つ以上のコントローラ120を含む。一実施態様では、角膜2を架橋剤130で(例えば、点眼器、シリンジなどを用いて)より広範に処置することができ、光源110からの光活性化光を、特定のパターンに従って処置された角膜2の領域に選択的に導くことができる。
【0018】
光学素子112は、光源110によって放射された光活性化光を角膜2上の特定のパターンに導き、集束させるための1つ以上のミラー又はレンズを含み得る。光学素子112は、光源110によって放射された光の波長を部分的に遮断し、架橋剤130を光活性化するために角膜2に導かれるべき光の特定の波長の光を選択するためのフィルタをさらに含み得る。さらに、光学素子112は、光源110によって放射された光線を分割するための1つ以上のビームスプリッタを含み得、光源110によって放射された光を吸収するための1つ以上のヒートシンクを含み得る。光学素子112はまた、例えば、架橋活性が所望される下にある領域2bの特定の深さにおいて、角膜2内の特定の焦点面に光活性化光を正確かつ精密に集束させることもできる。
【0019】
さらに、光活性化光の特定のレジームを、角膜2の選択された領域において所望の程度の架橋を達成するように調節することもできる。1つ以上のコントローラ120は、光源110及び/又は光学素子112の動作を制御して、波長、帯域幅、強度、パワー、位置、透過深さ、及び/又は処置期間(露光サイクルの持続時間、暗サイクルの持続時間、及び露光サイクル対暗サイクルの持続時間の比)の任意の組み合わせに従って光活性化光を精密に送達するために使用され得る。
【0020】
架橋剤130の光活性化のパラメータを、例えば、所望の架橋を達成するのに必要な時間を短縮するように調整することができる。例示的な一実施態様では、時間を数分から数秒に短縮することができる。いくつかの構成は、5mW/cm2の放射照度で光活性化光を照射し得るが、所望の架橋を達成するのに必要な時間を短縮するために、例えば、5mW/cm2の倍数などのより大きい放射照度の光活性化光を照射することができる。角膜2で吸収されるエネルギーの総線量を、角膜上皮2aの領域を通して吸収されるエネルギーの量である実効線量として説明することができる。例えば、角膜表面2Aの領域の実効線量は、例えば、5J/cm2、又は20J/cm2若しくは30J/cm2もの高さであり得る。記載の実効線量を、エネルギーの単回印加から、又はエネルギーの反復印加から送達することができる。
【0021】
処置システム100の光学素子112は、光活性化光の照射を空間的及び時間的に調節するために、微小電気機械システム(microelectromechanical system(MEMS))デバイス、例えばデジタルマイクロミラーデバイス(digital micro-mirror device(DMD))を含み得る。DMD技術を使用して、光源110からの光活性化光は、半導体チップ上に配列として配置された微視的に小さいミラーによって生成される精密な空間パターンで投影される。各ミラーは、投影された光のパターン内の1つ以上の画素を表す。DMDを用いて、トポグラフィーガイド架橋を行うことができる。トポグラフィーに応じたDMDの制御は、いくつかの異なる空間的及び時間的な放射照度及び線量プロファイルを使用し得る。これらの空間的及び時間的な線量プロファイルは、連続波照明を使用して作成され得るが、様々な周波数及びデューティサイクルレジームの下で照明源をパルス化することによってパルス照明を介して調節されてもよい。あるいは、DMDは、画素ごとに異なる周波数及びデューティサイクルを調節して、連続波照明を使用して最終的な柔軟性を与えることもできる。あるいは、パルス照明と調節されたDMD周波数及びデューティサイクルの組み合わせの両方が組み合わされてもよい。これにより、特定の量の空間的に決定された角膜架橋が可能になる。この空間的に決定された架橋は、処置前の計画並びに/又は処置中の角膜架橋のリアルタイムの監視及び調節のために、線量測定、干渉法、光干渉断層法(optical coherence tomography(OCT))、角膜トポグラフィーなどと組み合わされ得る。線量測定システムの態様を、以下でさらに詳細に説明する。さらに、患者固有の処置前計画を作成するために、発症前患者情報が有限要素生体力学コンピュータモデリングと組み合わされ得る。
【0022】
光活性化光の送達の態様を制御するために、実施形態はまた、多光子励起顕微鏡法の態様も用い得る。特に、角膜2に特定の波長の単一光子を送達するのではなく、処置システム100は、結合して架橋を開始するより長い波長、すなわちより低いエネルギーの複数の光子を送達し得る。有利には、より長い波長は、角膜2内で散乱される程度がより短い波長よりも小さく、これにより、より長い波長の光がより短い波長の光よりも効率的に角膜2を透過することが可能になる。角膜内のより深い深さでの入射照射の遮蔽効果もまた、光増感剤による光の吸収がより長い波長でははるかに少ないため、従来の短波長照明に優って低減される。これにより、深さ特異的な架橋に対する制御を強化することが可能になる。例えば、いくつかの実施形態では、2光子が用いられ得、各光子は、架橋剤130中の分子を励起して、以下でさらに説明される光化学動態反応を生じさせるのに必要なエネルギーの約半分を有する。架橋剤分子は、両方の光子を同時に吸収するとき、角膜組織中の反応性ラジカルを放出するのに十分なエネルギーを吸収する。実施形態はまた、架橋剤分子が反応性ラジカルを放出するために例えば、3光子、4光子、又は5光子を同時に吸収しなければならないように、低いエネルギー光子を利用してもよい。複数の光子がほぼ同時に吸収される可能性は低いため、高流束の励起光子が必要とされる場合があり、高流束はフェムト秒レーザーを介して送達され得る。
【0023】
多数の条件及びパラメータが、架橋剤130による角膜コラーゲンの架橋に影響を及ぼす。例えば、光活性化光の放射照度及び線量は、架橋の量及び速度に影響を及ぼす。
【0024】
特に架橋剤130がリボフラビンである場合、UVA光は連続的に(連続波(CW))又はパルス光として供給され得、この選択は架橋の量、速度、及び程度に影響を及ぼす。UVA光がパルス光として照射される場合、露光サイクルの持続時間、暗サイクルの持続時間、及び露光サイクル対暗サイクルの持続時間の比は、結果として生じる角膜硬化に影響を及ぼす。パルス光照明を使用して、同じ量又は同じ線量の送達エネルギーに対して連続波照明で達成され得るよりも多いか又は少ない角膜組織の硬化を生じさせることができる。より最適な化学増幅を達成するために適切な長さ及び周波数の光パルスが使用され得る。パルス光処置では、オン/オフデューティサイクルは、約1000/1~約1/1000であり得、放射照度は、約1mW/cm2~約1000mW/cm2の平均放射照度であり得、パルスレートは、約0.01HZ~約1000Hz又は約1000Hz~約100,000Hzであり得る。
【0025】
処置システム100は、DMDを用いること、光源110を電子的にオン及びオフにすること、並びに/又は機械的若しくは光電子的(例えば、ポッケルスセル)シャッタ若しくは機械的チョッパ若しくは回転開口を使用することによってパルス光を生成し得る。DMDの画素特異的調節能力、並びに調節された周波数、デューティサイクル、角膜に送達される放射照度及び線量に基づく後続の剛性付与のために、生体力学的剛性パターンが角膜に付与される可能性がある。DMDのシステム及び方法の具体的な利点は、それがランダム化された非同期のパルストポグラフィックパターン化を可能にし、2Hz~84Hzのパルス周波数で感光性てんかん発作又はフリッカ性めまいを引き起こす可能性を排除する非周期的な均一に見える照明を作り出すことである。
【0026】
例示的な実施形態は、段階的なオン/オフパルス光機能を用い得るが、角膜に光を照射するための他の関数が同様の効果を達成するために用いられ得ることが理解される。例えば、光は、正弦関数、のこぎり波関数、又は他の複雑な関数若しくは曲線、又は関数若しくは曲線の任意の組み合わせに従って角膜に照射され得る。実際、オン/オフ値の間により緩やかな遷移が存在し得る場合、関数は実質的に段階的であり得ることが理解される。さらに、放射照度は、オフサイクル中に0の値まで減少する必要はなく、オフサイクル中に0を上回ってもよいことも理解される。所望の効果は、2つ以上の値の間で放射照度を変化させる曲線に従って角膜に光を照射することによって達成され得る。
【0027】
光活性化光を送達するためのシステム及び方法の例は、例えば、2011年3月18日に出願された、「Systems and Methods for Applying and Monitoring Eye Therapy」という名称の米国特許出願公開第2011/0237999号、2012年4月3日に出願された、「Systems and Methods for Applyingand Monitoring Eye Therapy」と題する米国特許出願公開第2012/0215155号、及び2013年3月15日に出願され、「Systems and Methods for Corneal Cross-Linking with Pulsed Light」という名称の米国特許出願公開第2013/0245536号に記載されており、これらの出願の内容は、参照により完全に本明細書に組み入れられる。実施形態は、(例えば、上記のDMDを介した)光活性化光の送達によって定義される円形パターン及び/又は環状パターンに従って角膜に架橋活性を生じさせ得る。追加的又は代替的に、実施形態は、(例えば、DMDを介した)光活性化光の送達によって定義される非円形パターン及び/又は非環状パターンに従って角膜に架橋活性を生じさせてもよい。
【0028】
光活性化光のパターンを、異なる線量を逐次的又は連続的に照射して、別々の処置ゾーンで(例えば、DMDを介して)眼に照射することができる。例えば、ある処置ゾーンを「オフにし」(すなわち、対応する光活性化光の送達が停止し)、別の処置ゾーンを「オンのままにする」(すなわち、対応する光活性化光の送達が継続する)ことができる。処置ゾーンは、例えば、眼の中心点の周りに環状に形成することができる。光活性化光が照射されない不連続ゾーン(例えば、光の環状処置ゾーンで囲まれた光のない輪で囲まれた中央処置ゾーンなど)も存在し得る。環状ゾーンの幅は、異なる寸法のものとすることができ、例えば、ある環状ゾーンは1mmの幅を有し、別の環状ゾーンは2mmの幅を有する。中央処置ゾーンのない眼の周辺部の環状処置ゾーンに光活性化光を照射することにより、例えば、周辺部を強化しながら眼の中央領域の曲率を増加させることによって遠視矯正を得ることができる。場合によっては、中央及び周囲の処置ゾーンは、例えば乱視に対処するために、乱視を矯正するために角膜の領域に架橋活性を優先的に生じさせることによって、楕円形状とすることもできる。そのような楕円形状の環状処置ゾーンは、乱視の向きに従って位置合わせされた環状処置ゾーンの軸と優先的に向きを合わせられる。楕円形状の処置ゾーンはまた、不規則に非対称とすることもできる(すなわち、垂直ではなく、別個の中心点(質量中心)で配置することができる長軸及び短軸を有する)。
【0029】
架橋処置を、角膜トポグラフィー(すなわち、形状)、角膜強度(すなわち、剛性)、及び/又は角膜厚などの眼の1つ以上の生体力学的特性に従って調整することができる。角膜の光学的矯正及び/又は強化を、反復ごとに調整可能な特性を有する1回以上の反復で架橋剤及び/又は光活性化光を適用することによって達成することができる。一般に、策定される処置計画は、架橋剤の投与回数、投与ごとの架橋剤の量及び濃度、光活性化光の照射回数、並びに照射ごとの光活性化光のタイミング、持続時間、パワー、エネルギー線量及びパターンを含むことができる。さらに、架橋処置を、処置中又は処置の中断中にリアルタイムで収集された生体力学的特性に関するフィードバック情報に基づいて適応させることができる。
【0030】
酸素の添加もまた、角膜硬化の量にも影響を及ぼす。ヒト組織中では、O
2含有量は大気と比較して非常に低い。しかしながら、角膜における架橋速度は、光活性化光で照射されたときのO
2の濃度に関連する。したがって、所望の量の架橋が達成されるまで架橋速度を制御するために、照射中に積極的にO
2の濃度を増加又は減少させることが有利であり得る。酸素は、架橋処置中にいくつかの異なる方法で投与され得る。1つの手法は、リボフラビンをO
2で過飽和させることが関与する。よって、リボフラビンが眼に投与されると、より高い濃度のO
2がリボフラビンと共に角膜内に直接送達され、リボフラビンが光活性化光に露光されるときにO
2が関与する反応に影響を及ぼす。別の手法によれば、(選択された濃度の)O
2の定常状態が角膜の表面で維持されて、角膜を選択された量のO
2に曝露し、O
2を角膜に浸入させ得る。
図1に示されるように、例えば、処置システム100はまた、酸素源140と、選択された濃度の酸素を角膜2に任意選択的に運搬する酸素運搬装置142とを含む。架橋処置中に酸素を投与するための例示的なシステム及び方法は、例えば、2010年10月21日に出願された、Eye Therapy」という名称の米国特許第8,574,277号、2012年10月31日に出願された、「Systems and Methods for Corneal Cross-Linking with Pulsed Light」という名称の米国特許第9,707,126号に記載されており、これらの出願の内容は、参照により完全に本明細書に組み入れられる。さらに、眼の処置において濃縮酸素並びに光活性化光を送達するための例示的なマスク装置が、2016年12月3日に出願された「Systems and Methods for Treating an Eye with a Mask Device」という名称の米国特許出願公開第2017/0156926号に記載されており、その内容は、参照により完全に本明細書に組み入れられる。例えば、表面上に一貫した公知の酸素濃度を生成するようにマスクが眼(片目又は両目)を覆って配置され得る。
【0031】
角膜架橋処置におけるリボフラビンの光活性化によって誘発される一連の化学反応を記述する生化学モデルを開発しようとする試みがなされてきた。初期モデルの開発は、加速された架橋のプロトコルの導入から生じた。元来、そのようなプロトコルの評価は、ブンセン・ロスコーの法則(Bunsen-Roscoe law(BRL))に基づくものであった。BRLによれば、特定の光生物学的効果は、投与されたレジームに関係なく総エネルギー線量に正比例する。しかしながら、BRLは、加速された架橋の有効性を著しく過大評価し、非線形の架橋理論が必要とされる。
【0032】
架橋の非線形モデルの最初の変形は、重合モデル(polymerization model(PM))に基づくものであった。PMによれば、架橋は、角膜実質内のUV-A光の体積吸収速度に比例する開始速度(モノマーの生成速度)を有する光誘起重合プロセスである。このモデルは、生成速度が放射照度に比例しなければならないBRLとは対照的に、架橋生成速度が放射照度の平方根に比例するという結論を導く。PMは、加速されたプロトコルが、ドレスデンプロトコルと同じ硬化効果を提供するために、より大きな光線量を必要とするという以前の経験的知見を説明する。PMは、リボフラビンの濃度動態に対する光吸収の効果を含むようにさらに開発された。
【0033】
しかしながら、PMの欠点は、架橋速度に対する酸素の重要な影響を無視することである。典型的な条件下(例えば、酸素マスクなし)では、架橋速度は光よりもむしろ酸素によって制限される。酸素の影響は、Kamaev et al.,’’Photochemical Kinetics of Corneal Cross-Linking with Riboflavin,’’ Investigative Ophthalmology&Visual Science,April 2012,vol.51,no.4,pp.2360-2367に記載され、米国特許第9,707,126号に組み込まれた生化学モデルによって最初に考察された。特に、このモデルは、以下の反応を伴うリボフラビン光活性化の2つの光生化学経路、タイプI及びタイプIIを記述した。
【数1】
【0034】
ここで記載される反応において、Rfは、基底状態のリボフラビンを表す。Rf*
1は、励起一重項状態のリボフラビンを表す。Rf*
3は、三重項励起状態のリボフラビンを表す。Rf●-は、リボフラビンの還元ラジカルアニオン型である。RfH●は、リボフラビンのラジカル型である。RfH2は、リボフラビンの還元型である。DHは、基質である。DH●+は、中間体ラジカルカチオンである。D●は、ラジカルである。Doxは、基質の酸化型である。
【0035】
リボフラビンは、反応(r1)~反応(r3)に示されるように、励起されてその三重項励起状態Rf*
3になる。三重項励起状態Rf*
3から、リボフラビンは、一般にタイプI機構又はタイプII機構に従ってさらに反応する。タイプI機構では、基質が励起状態のリボフラビンと反応して、水素原子又は電子移動によって、それぞれ、ラジカル又はラジカルイオンを生成する。タイプII機構では、励起状態のリボフラビンが酸素と反応して一重項酸素分子を形成する。一重項酸素分子は次いで、組織に作用して、さらなる架橋結合を生成する。
【0036】
角膜内の酸素濃度は、UV-A放射照度及び温度によって調節され、UV-A露光の開始時に急速に減少する。特定のデューティサイクル、周波数、及び放射照度のパルス光を利用して、タイプIとタイプIIの両方の光生化学機構からの入力を用いて、より大きな光化学効率を達成することができる。さらに、パルス光を利用することにより、リボフラビンが関与する反応の速度を調節することが可能になる。反応速度は、必要に応じて、放射照度、線量、オン/オフデューティサイクル、リボフラビン濃度、浸漬時間などといったパラメータのうちの1つを調節することによって増加又は減少し得る。さらに、反応及び架橋速度に影響を及ぼす他の物質又は添加剤が角膜に投与されてもよい。
【0037】
酸素枯渇の直後にUV-A放射が停止される場合、酸素濃度が増加し始める(補充)。酸素はラジカル種と相互作用して連鎖停止過酸化物分子を形成することによってフリーラジカル光重合反応を抑制することができるため、過剰な酸素は、角膜架橋プロセスにおいて有害であり得る。パルスレート、放射照度、線量、及び他のパラメータを調整して、より最適な酸素再生速度を達成することができる。酸素再生速度を計算及び調整することが、所望の量の角膜硬化を達成するために反応パラメータを調整する別の例である。
【0038】
酸素含有量は、酸素拡散が反応の動態に追いつくことができる非常に薄い角膜層を除いて、様々な化学反応によって角膜全体で枯渇する可能性がある。この拡散が制御されるゾーンは、酸素を取り込む基質の反応能力が低下するにつれて、徐々に角膜内により深く移動する。
【0039】
リボフラビンは、放射照度が増加するにつれてより多く、可逆的又は不可逆的に還元(不活性化)され、及び/又は光分解される。還元型リボフラビンがタイプI反応において基底状態リボフラビンに戻ることを可能にすることによって光子最適化を達成することができる。タイプI反応における還元型リボフラビンの基底状態への戻りの速度は、いくつかの要因によって決定される。これらの要因には、パルス光処置のオン/オフデューティサイクル、パルスレート周波数、放射照度、及び線量が含まれるが、これらに限定されない。さらに、リボフラビン濃度、浸漬時間、及び酸化剤を含む他の薬剤の添加は、酸素取り込み速度に影響を及ぼす。デューティサイクル、パルスレート周波数、放射照度、及び線量を含むこれら及びその他のパラメータを、より最適な光子効率を達成し、リボフラビン光増感のためのタイプIとタイプII両方の光生化学機構を効率的に利用するように選択することができる。さらに、これらのパラメータを、より最適な化学増幅効果を達成するように選択することができる。
【0040】
上記の反応(r1)~反応(r8)に基づく生化学モデルは、一般に酸素動態に焦点を当てており、架橋濃度の式を含まない。このモデルの簡略化された変形は、架橋を含む試薬の濃度の近似的な解析式を提供する。この簡略化された変形に基づき、一重項酸素による角膜ラジカル(コラーゲンと非コラーゲン性タンパク質の両方)の酸素化によって架橋が得られる。
【0041】
さらなる架橋生成(酸素媒介性と酸素なしの両方)及びリボフラビン凝集プロセスを説明する拡張された反応セットを含む別の生化学モデル(以下、BCMと呼ぶ)がさらに策定されている。よって、化学反応及び凝集の存在下でのリボフラビン拡散のモデルが導入される。上記の反応(r1)~反応(r8)に加えて、BCMは、リボフラビン光活性化中にも起こる以下の反応(r9)~(r26)を含む。
【数2】
【0042】
図2Aに、上記の反応(r1)~反応(r26)で提供される光生化学反応の図を示す。この図は、UV-A光活性化光の下でのリボフラビン(Rf)の光化学的変換、及び電子移動を介した様々なドナー(DH)とのその相互作用を要約している。図示のように、架橋活性は、(A)反応(r6)~反応(r8)における一重項酸素の存在によって(タイプII機構)、(B)反応(r4)及び反応(r17)において酸素を使用せずに(タイプI機構)、(C)反応(r13)~反応(r17)における過酸化物(H
2O
2)、スーパーオキシド(O
2
-)、及びヒドロキシルラジカル(
●OH)の存在によって起こる。
【0043】
図2Aに示されるように、本発明者らはまた、架橋活性は、過酸化物、スーパーオキシド及びヒドロキシルラジカルが関与する反応からより多く生成されると判断した。架橋活性は、一重項酸素が関与する反応及び非酸素反応からはあまり生成されない。実際、一重項酸素が架橋活性の生成において果たす役割が小さい場合、いくつかのモデルは、一重項酸素から生じる架橋活性を定数として扱うことによって簡略化され得る。
【0044】
すべての反応は、反応(r1)~反応(r3)で提供されるようにRf3
*から始まる。Rf3
*のクエンチングは、反応(r10)における基底状態Rfとの化学反応、及び反応(r9)における水との相互作用による非活性化によって起こる。
【0045】
上述のように、過剰な酸素は角膜架橋において有害であり得る。
図2Aに示されるように、系が、光子が制限され、酸素が豊富な状態になると、スーパーオキシド、過酸化物及びヒドロキシルラジカルが関与するさらなる反応から架橋が切断される可能性がある。実際、場合によっては、過剰な酸素は、架橋の生成に対する架橋の正味の破壊をもたらし得る。
【0046】
架橋活性をもたらす一連の生化学反応は、角膜実質の(角膜前面に隣接する)好気性ドメインと嫌気性ドメインとの間の移動ゾーンで起こる。UV-A照射の開始時に、反応ゾーンは前面のすぐ隣に現れ、角膜ラジカルが枯渇する限り後面の方へ移動する。好気性ドメインでは、架橋の形成が完了し、対応する化学反応が停止している。周囲の酸素は、架橋が起こる反応ゾーンの方へ好気性ドメインを通って自由に拡散する。反応部位が組織内により深く移動する間、反応は酸素を消費し、架橋を生成する。嫌気性ドメインは反応部位の隣に位置し、相当のUV-A照明が依然として存在する間、このドメインへの酸素供給は遮断される。架橋の形成は、ここでは嫌気性モードで非常に遅い速度で進行する。BCMによって提供される生化学反応のさらなる態様は、2016年4月27日に出願された、「Systems and Methods for Cross-Linking Treatments of an Eye」という名称の米国特許第10,350,111号に記載されており、その内容は、参照により完全に本明細書に組み入れられる。
【0047】
多種多様な要因が、架橋反応の速度及び架橋により達成される生体力学的剛性の量に影響を及ぼす。これらの要因のいくつかは相互に関連しており、1つの要因を変更すると別の要因に予期しない影響を及ぼす可能性がある。BCMは、上記の光生化学反応(r1)~(r26)に基づく架橋処置のための異なる要因間の関係を理解するためのより包括的なモデルを提供する。したがって、システム及び方法は、酸素動態及び架橋活性の統一的記述を提供するBCMに従って架橋処置のための様々なパラメータを調整することができる。BCMを用いて、処置パラメータの異なる組み合わせに基づいて予想される転帰を評価し、所望の結果を提供する処置パラメータの組み合わせを特定することができる。パラメータには、例えば、投与されたリボフラビンの(1つ以上の)濃度及び/若しくは浸漬時間、光活性化光の(1つ以上の)線量、(1つ以上の)波長、(1つ以上の)放射照度、(1つ以上の)持続時間、及び/若しくはパルスダイナミクス、組織内の酸素化条件、手順の持続時間、空間的形状、並びに/又は追加の薬剤及び溶液の存在が含まれ得るが、これらに限定されない。例えば、BCMは、これらのパラメータを入力として反応物種の濃度の関数として表された化学反応速度と組み合わせて、角膜における三次元架橋濃度プロファイルを推定するために必要な生化学的動態をモデル化することができる。架橋手順の生化学的動態を、有限差分法又は有限要素法のどちらかを使用してモデル化することができる。
【0048】
架橋活性は、角膜内の内部応力と眼の眼圧(IOP)との間のバランスを変えることによって、角膜の生体力学的特性の変化をもたらす。生体力学的特性の変化は、角膜を変形させる。角膜は眼の全屈折力の大部分を占めるので、角膜の変形は患者の視力の変化をもたらす。したがって、角膜架橋処置を用いて、患者の眼の処置前の特性を考慮に入れて、処置パラメータの選択によって視力の変化を付与することができる。
【0049】
処置転帰を最適化するため及び/又は特定の架橋処置の転帰を正確に決定するための処置パラメータの最適な構成を選択するために、プロセスは、(1)架橋反応の光生化学的動態、(2)生体力学的に誘導される角膜リモデリング、及び(3)処置された眼の屈折力の対応する屈折変化、の理解を含む。よって、
図3に示されるように、BCM310を、モデル化システム300において生体力学モデル320及び光学モデル330と組み合わせて、角膜架橋処置からの転帰の患者固有の判定を行うことができる。モデル化システム300は、例えば、(1)角膜内の架橋の分布、(2)誘導された角膜形状変化、及び(3)患者の視力への影響を判定することができる。
【0050】
上述のように、BCM310は架橋処置を、UV-A光によって誘発される角膜実質における一連の化学反応としてモデル化する。対応する生化学的動態を、有限差分法又は有限要素法のどちらかを使用してモデル化することができる。BCM310の入力10aは、架橋剤の浸漬時間、光パルス持続時間、光放射照度、光線量、照明パターン、及び/又はO2濃度などといった、処置プロトコルのパラメータのセットを含む。出力10bは、処置中及び処置後の架橋プロファイルを含むすべての試薬のプロファイルを提供する。
【0051】
一方、生体力学モデル320は、処置部位に形成された新しい架橋と関連付けられる組織硬化によって引き起こされた角膜の構造的リモデリング(すなわち、形状変化)を判定する。生体力学モデル320は、超弾性角膜モデルを用いる。超弾性角膜モデルによれば、ひずみエネルギー密度は、バルク角膜実質組織からの等方性の寄与及びコラーゲン原線維ネットワークからの異方性の寄与を含む。コラーゲン原線維ネットワークは、眼の中央部で直交し、眼の周辺部に沿って延びるにつれて円周方向に向けられる2組の原線維を含む。
【0052】
生体力学モデル320は、眼のトポグラフィーによって得られた患者の処置前の角膜形状を処理することができる。処置前の角膜剛性のパラメータを、例えば、患者の年齢や角膜強度のインビボ測定値に従って調整することができる。眼の処置前の形状は、特定のIOP下で得られる。生体力学モデル320を、角膜実質内の応力プロファイルを計算するためにモデルの構成関係が使用される有限要素法を使用して実施することができる。前面における境界条件は、後面がIOPの圧力下にあるのに対して、前面が自由に動くことができるようなものである。
【0053】
本明細書には特定の超弾性角膜モデルの態様が記載され得るが、他の超弾性モデルが企図され、用いられてもよいことを理解されたい。さらに、角膜組織の構成モデルは、弾性と粘性の両方を含み得る。
【0054】
生体力学モデル320は、プレストレス処理322及び架橋処理324を含む。プレストレス処理322は、角膜の処置前の状態を判定し、そこで角膜後面における眼圧(IOP)が角膜物質フレーム内の応力テンソル場によって均衡される。プレストレス処理322の入力22aは、処置前の角膜形状(例えば、三次元形状)及び架橋処置の前に測定された処置前のIOPを含み、出力22bは角膜の処置前の状態である。
【0055】
プレストレス処理に関する方法は、例えば、J.Bols et al.,’’A computational method to assess the in vivo stresses and unloaded configuration of patient-specific blood vessels,’’ J.Computational and Applied Mathematics,246(2013),10-17、Hannah Weisbecker,et al.,’’A generalized prestressing algorithm for finite element simulations of preloaded geometries with application to the aorta.’’ Int.J.Num.Meth.Biomed.Eng.,2014,30:857-872、及びRafael Grytz et al.,’’A Forward Incremental Prestressing Method with Application to Inverse Parameter Estimations and Eye-Specific Simulations of Posterior Scleral Shells,’’ Comput.Methods Biomech.Biomed.Engin.,July 2013,16(7):768-780に記載されている。例えば、動脈壁用に開発されたプレストレス処理を角膜形状評価に適用することができる。
【0056】
一手法によれば、プレストレス処理は、無負荷及び無ストレス(すなわち、力が加えられておらず、内部応力もない)状態で角膜をモデル化することを含み得、IOPの作用がシミュレートされると角膜はその処置前の形状に変形する。これはしかしながら、モデル形状を変更するために多くの反復を必要とする計算コストが高い手法である。
【0057】
有利には、プレストレス処理322は、より高速で実行することができる、より計算コストの低い手法を用いる。この代替手法によれば、第1の反復において、IOPは測定された処置前のIOPに設定され、角膜物質フレーム内の初期応力テンソルは0に設定される。モデルの適用は、更新された応力テンソル場及び対応する変位場をもたらす。次の反復では、変位場は0に設定されるが、内部応力テンソル場は繰り越される。モデルが再適用され、内部応力テンソル場及び変位場へのさらなる更新をもたらす。ここでもやはり、変位場は0に設定され、新しい更新された応力テンソル場は次の反復に繰り越される。プレストレス処理322は、変位場の二乗平均平方根(RMS)が閾値を下回るまで反復し続ける。変位の閾値は、架橋処置による典型的な変位よりもはるかに低い。例えば、変位の閾値を、数十分の一マイクロメートルに設定することができる。変位場が増加し始める場合、プレストレス処理322は、測定された処置前のIOPよりも小さい初期IOPで再開される(応力テンソル場をゼロに設定する)。次いで、反復ごとに、IOPは、最初に測定された処置前のIOPに達する点まで増加する。反復回数が所定の回数を超える場合、プレストレス処理322は失敗する。この代替手法を使用して、処置前の状態の内部角膜応力を、無負荷及び無ストレスの角膜状態の計算を行う必要なく処置前の角膜形状を使用して決定することができる。
【0058】
プレストレス処理322に続いて、架橋処理324は、架橋処置の適用によって引き起こされる角膜のリモデリング(処置後の角膜形状)を決定する。新しい架橋は角膜剛性を増加させ、内部応力とIOPとの間のバランスを変化させる。角膜実質の弾性パラメータは、架橋濃度の関数として増加する。
図3に示されるように、角膜実質における架橋の三次元分布を、出力10bとしてBCM310から(あるいは、直接測定法(例えば、デンシトメトリー、OCT、蛍光)から)導出することができる。弾性モデルの構成関係は、角膜実質における応力プロファイルの再計算に使用される。更新された応力プロファイルは、後面でIOPを均衡させず、モデルはしたがって、処置後の角膜形状をもたらす。結果として、角膜は、処置前の形状から、内部応力とIOPとの間の新しいバランスが確立される処置後の形状に移行する。架橋モデル324のための入力は、BCM310からの架橋プロファイルと、プレストレス処理322からの角膜の処置前の状態(処置前の角膜形状、角膜の処置前の弾性、処置前の剛性プロファイル、及び処置前のIOP)とを含む。架橋処理324はまた、架橋濃度に対する角膜剛性の依存性を記述するパラメータのセットも用いる。架橋モデル324の出力24bは、処置後の角膜形状を提供する。
【0059】
実施形態は、架橋処置中の眼球運動の影響を説明できることに留意されたい。眼球運動は、架橋処置中の目の形状の変化に影響を及ぼす。眼球運動を考慮に入れることは、例えば、光点が複雑な形状、遠視患者や老眼患者の処置に使用される円環形状をとる場合に、注目に値する。そのような場合の実施形態は、視覚の特定の欠陥を矯正するために照明パターンを最適化することができる。
【0060】
光学モデル330は、網膜上の結像の光線追跡モデルである。処置前の眼及び処置後の眼の両方がモデル化され、患者の屈折の変化並びに矯正及び未矯正の視力を出力30bとして決定することができる。光学モデルは、単一の屈折面(縮小眼)、3つの屈折面(単純化された眼)、又は非球面であり得る4つ以上の面を含み得る。最も進んだモデルは、水晶体の屈折率の空間的変動を可能にする。単純な近軸モデルは、瞳孔サイズが小さく、物体が光軸に近い場合にのみ網膜の画質を決定することができる。瞳孔サイズが大きく、物体が視野の周辺部にある場合、有限光学モデルを用いることができる。後者のタイプのモデルは、連続又は不連続のどちらかであり得る。連続モデルは、光線が規定の順序のみで光学面を通って伝播することを可能にし、迷光解析は不可能である。そのようなモデルは、画質評価や収差解析に有用である。不連続モデルは、光線が任意の順序で表面を通って伝播することを可能にし、照明、迷光、散乱、及び蛍光の解析に使用され得る。関連する説明は、例えば、D.A.Atchinson,’’Optical models of human myopic eyes,’’ Vision Research 46(2006)2236-2250、D.A.Atchinson et al.,’’Optical models of the human eye,’’ Clin Exp Optom 2016,99:99-106、D.A.Atchinson et al.,Optics of the Human Eye,1st Edition,Butterworth-Heinemann 2000、及び2013年12月17日にZemax customer portalで公開された、Rod Watkins,’’Zemax Models of the Human Eye,’’に記載されている。
【0061】
一実施形態によれば、光学モデル330は、(網膜を含む)5つの表面を有する有限光学モデルを用い、これは連続的又は非連続的な実施態様のどちらかにおいて非球面であり得る。光学モデル330を、光線追跡ソフトウェアを用いて開発することができる。光学モデル330を、眼の検査をシミュレートするための光学部品を含むように修正することができ、特に、球体の検査は矯正レンズの存在下でモデル化される。角膜の前面は、拡張多項式の面(楕円体形状プラス二次元多項式として外挿された残差)としてモデル化される。後者の表面のタイプは、眼の弾性モデルと適合する。よって、前角膜表面の患者固有の形状を、入力として生体力学モデル320から、光学的転帰の解析のための光線追跡モデルに移すことができる。光学モデル330の出力30bを、自覚屈折等価球面度数(manifest refraction spherical equivalent(MRSE))及び視力の評価に使用することができる。有利には、光学モデル330は、架橋処置に基づく視力矯正研究への洞察を得ることを可能にする。
【0062】
したがって、3つのモデルを単一のモデル化システム300に統合することができ、それにより、BCM310からの出力は生体力学モデル320によって処理され、生体力学モデルは光学モデル330の入力を提供する。モデル化システム300は、入力及びパラメータのセットが与えられると、角膜曲率測定変化及び視覚機能変化を決定することができる。さらに、モデル化システム300を使用して、所望の臨床結果を達成するために処置パラメータを最適化することができる。有利には、3つのモデル310、320、330の統合により、処置プロトコルに関して形状変化及び光学的転帰の解析をより効率的に行うことが可能になる。特に、生化学モデルを使用すると、生体力学モデルに架橋濃度の推測的プロファイルを使用する必要がなくなる。そのような統合により、較正、解析、及び報告生成のためのプロセスへのオペレータの関与が最小化され、それによってヒューマンエラーの導入が最小化される。時間のかかるタスク(適切な報告の生成を含む大きなデータセットを使用した較正及び解析)を、オペレータによる介入なしに、より少ない処理時間で自動的に行うことができる。いくつかの実施形態では、3つのモデルの態様は並列に動作してもよく、異なるモデルからの出力データは並列処理を受けることができる。この機能は、測定された光学データを用いたモデル較正のような時間のかかるタスクを行うのに有用である。
【0063】
本開示の態様はまた、角膜実質の基質及び繊維の弾性並びに架橋の硬化効果に関連するパラメータが測定データを使用して導出される較正手順を用い得る。
図4Aに、生体力学モデル320の例示的な較正手順400の態様を示す。較正手順400は、測定された基準データ40bを考慮して、非線形の角膜の弾性及び架橋処置中のそれらの変化を記述する可変モデルパラメータ40aを評価及び較正する。一般に、較正手順400は、メリット関数410、最適化プロセス420、及び停止基準430を含む。生体力学モデル320は、入力40cを受け取り、現在のモデルパラメータのセット40aを使用して出力40dを生成する。メリット関数410は、出力40dを測定された基準データ40bと比較する。反復n=0で、可変モデルパラメータ40aはいくつかの初期値に設定される。最適化ステップ420は、後続の反復n=n+1中にモデルパラメータ40aを、停止基準430が満たされる点までメリット関数410が減少するように更新する。反復回数が所定の閾値を超える場合、較正は失敗する。
【0064】
いくつかの実施形態では、生体力学モデル320の較正手順400は、
図4B~
図4Cにそれぞれ示されるように、以下の2つの段階で適用され得る。
・段階1-内部弾性パラメータの較正
図4Bが示しているように、較正手順400は、メリット関数410’、最適化プロセス420’、及び停止基準430’を用いる。上述のように、超弾性モデルは、等方性物質とコラーゲン原線維ネットワークとの混合物として角膜実質をモデル化する。ひずみエネルギーは、両成分の寄与の和である。等方性の寄与は、弾性パラメータC
1及びC
2によって記述される。異方性の寄与は、トラス剛性パラメータK
1及びK
2によって定義される。この段階では、適切な基準データを使用して内部弾性パラメータを決定する。一実施形態では、較正手順は、典型的な眼又は眼のセットの頂部膨張データセットを使用する。可変パラメータのリストは、(C
1、C
2、K
1、K
2)である。生体力学モデル320の入力データは、頂点上昇の測定に使用される眼圧(IOP)のリストである。基準データは、測定された頂点上昇dzr
kを含み、インデックスkは測定の番号である。生体力学モデル320の出力データは、同じIOP値での計算された頂点上昇dzc
kを含む。メリット関数410’は
【数3】
であり、頂点上昇の任意の値dznが正規化に使用される。
実施形態は、較正のために眼の膨張-頂点上昇データを用い得るが、較正のために選択された患者群の弾性特性の決定のために他のデータセットが企図され、用いられてもよい。
別の実施形態では、基準データは、異なる動的力によって乱された角膜強度/剛性及び/又は角膜の変形のエクスビボ又はインビボ測定値を含む。この較正手順の出力は、架橋手順の適用前の角膜の生体力学的特性を特徴付けるモデル剛性パラメータを含む。
・段階2-架橋係数の較正
図4Cが示しているように、較正手順400は、メリット関数410’’、最適化プロセス420’’、及び停止基準430’’を用いる。較正手順の第2段階では、コラーゲンへの架橋の導入と関連付けられる硬化係数を決定する。この段階では、固定モデルパラメータは、上述のBCM310又は直接測定法(例えば、デンシトメトリー、OCT、蛍光)から導出される角膜実質内の架橋の三次元分布を含む。基準データは、処置前及び処置後に測定された角膜トポグラフィーのセットを含む。架橋の生成により、C
1及びC
2が硬化係数だけ増加し(1+f
iso CXL/CXL
max)、K
1が硬化係数だけ増加し(1+f
fib CXL/CXL
max)、式中、CXL及びCXL
maxは、それぞれ、局所架橋濃度及び飽和架橋濃度である。パラメータK
2は変化しないものとする。硬化係数f
iso及びf
fibは、較正手順中に更新される可変モデルパラメータである。メリット関数410’’は、角膜形状のモデル計算を測定された基準データと比較する。一実施形態では、角膜トポグラファーで測定された、処置前のK
1n角膜曲率測定値及び処置後のK
2n角膜曲率測定値の両方が基準データのセットを形成し、nは眼の数である。生体力学モデル320の対応する入力データは、(両方の角膜表面の)処置前の高度マップ及び同じ眼の中心厚の処置前の値のセットである。生体力学モデル320の出力データは、計算された処置後の角膜曲率測定値K
2cnのセットである。メリット関数410’’は
【数4】
であり、dKn
2は任意の正規化角膜曲率測定差である。
【0065】
代替の実施形態では、2つの較正段階を1つに組み合わせてもよく、それによれば、較正の可変パラメータは、C1、C2、K1、K2、fiso、及びffibであり、基準データが、処置された眼の処置前及び処置後のトポグラフィーのセットである。この較正手順は、完全に自動化され、オペレータによる介入なしで進み得る。
【0066】
較正手順は、特定のデータセット(例えば、頂部膨張測定値や臨床試験のデータ)に最良適合を提供するための(例えば、架橋下での組織の弾性と硬化の両方を記述する)モデルパラメータの評価を可能にする。この較正手順は、患者群(例えば、異なる年齢の患者、特定の慢性疾患を有する患者など)により、患者らの眼において示す生化学特性、弾性特性、及び硬化特性が異なるので有利である。そのような差は、異なる患者群を組み合わされた場合に処置結果の大きな変動をもたらす。較正モジュールは、異なる患者データセットについて別々にモデルを較正し、異なる患者群の最良適合モデルパラメータを見つけることを可能にする。さらに、自動較正は、測定及び計算されたデータの主観的比較よりも正確な客観的方法である。
【0067】
上記の実施形態の用途には、以下が含まれ得る。
・臨床データの解析、
・処置結果の予測、
・類似した処置結果を示す患者群の分離、
・架橋プロセスの基本的な機構についてのさらなる洞察を得ること、
・架橋プロセスの入力と転帰との間の相関を特定すること、並びに/又は
・異なる処置タイプ及び患者群に最良の結果を得るための架橋プロトコルの最適化。
【0068】
上述のように、本開示のいくつかの態様によれば、上述及び図示の手順のステップの一部又は全部を、コンピューティングシステム又はコントローラ(例えば、コントローラ120)によって自動化又は誘導することができる。例えば、本明細書に記載されるモデルは、コンピューティングシステムを介して実装及び統合され得る。一般に、コンピューティングシステム/コントローラは、ハードウェア要素とソフトウェア要素との組み合わせとして実装され得る。ハードウェア態様は、マイクロプロセッサ、論理回路、通信/ネットワークポート、デジタルフィルタ、メモリ、又は論理回路を含む動作可能に結合されたハードウェア構成要素の組み合わせを含み得る。コンピューティングシステム/コントローラは、コンピュータ可読媒体に格納され得るコンピュータ実行可能コードによって指定される動作を行うように適合され得る。
【0069】
コンピューティングシステム/コントローラは、ソフトウェア又は格納された命令を実行する、外部の従来のコンピュータやオンボード・フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)やデジタル信号プロセッサ(DSP)などのプログラマブル処理デバイスであり得る。一般に、任意の処理又は評価のために本開示の実施形態によって用いられる物理プロセッサ及び/又は機械には、コンピュータ及びソフトウェア技術の当業者によって理解されるように、本開示の例示的な実施形態の教示に従ってプログラムされた、1つ以上のネットワーク化された又はネットワーク化されていない汎用コンピュータシステム、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マイクロコントローラなどが含まれ得る。物理プロセッサ及び/又は機械は、(1つ以上の)画像取込装置と外部ネットワーク接続されてもよく、又は画像取込装置内に存在するように統合されてもよい。ソフトウェア技術の当業者には理解されるように、通常のプログラマは、例示的な実施形態の教示に基づいて、適切なソフトウェアを容易に作成することができる。さらに、電気技術の当業者には理解されるように、例示的な実施形態のデバイス及びサブシステムを、特定用途向け集積回路の作成によって、又は従来の構成要素回路の適切なネットワークを相互接続することによって実装することができる。よって、例示的な実施形態は、ハードウェア回路及び/又はソフトウェアのいかなる特定の組み合わせにも限定されない。
【0070】
本開示の例示的な実施形態は、任意の1つの非一時的コンピュータ可読媒体又は非一時的コンピュータ可読媒体の組み合わせに格納された、例示的な実施形態のデバイス及びサブシステムを制御するためのソフトウェア、例示的な実施形態のデバイス及びサブシステムを駆動するためのソフトウェア、例示的な実施形態のデバイス及びサブシステムが人間のユーザと対話することを可能にするためのソフトウェアなどを含み得る。そのようなソフトウェアは、デバイスドライバ、ファームウェア、オペレーティングシステム、開発ツール、アプリケーションソフトウェアなどを含むことができるが、これらに限定されない。そのような非一時的コンピュータ可読媒体は、実施態様において行われる処理の全部又は一部(処理が分散される場合)を行うための本開示の一実施形態のコンピュータプログラム製品をさらに含むことができる。本開示の例示的な実施形態のコンピュータコードデバイスは、スクリプト、解釈可能プログラム、ダイナミックリンクライブラリ(DLL)、Javaクラス及びアプレット、完全な実行可能プログラムなどを含むがこれらに限定されない、任意の適切な解釈可能又は実行可能コード機構を含むことができる。例えば、実施形態は、有限要素解析にはComsolソフトウェアを、光線追跡にはZemax Optical Studioを、ユーザインターフェース、前処理、及び後処理にはMatlabソフトウェアを用いることができる。しかしながら、異なるFEM及び光線追跡ソフトウェアパッケージが用いられてもよい。さらに、Matlabプログラミング言語が、異なるプログラミング言語、特にPython又はC++で置き換えられてもよい。さらに、本開示の例示的な実施形態の処理の一部を、より良い性能、信頼性、コストなどのために分散させることができる。
【0071】
非一時的コンピュータ可読媒体の一般的な形態には、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の適切な磁気媒体、CD-ROM、CDRW、DVD、任意の他の適切な光学媒体、パンチカード、紙テープ、光学マークシート、穴のパターン又は他の光学的に認識可能な印を有する任意の他の適切な物理媒体、RAM、PROM、EPROM、FLASH(登録商標)-EPROM、任意の他の適切なメモリチップ又はカートリッジ、又はコンピュータが読み取ることができる任意の他の適切な媒体が含まれ得る。
【0072】
本開示を、1つ以上の特定の実施形態を参照して説明したが、当業者は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明に多くの変更が加えられ得ることを認めるであろう。これらの実施形態及びその自明の変形形態の各々が、本発明の趣旨及び範囲内に入るものとして企図されている。また、本開示の態様によるさらなる実施形態が、本明細書に記載される実施形態のいずれかからの任意の数の特徴を組み合わせ得ることも企図されている。