(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】ダイシング用粘着テープおよび半導体チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241015BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241015BHJP
C09J 183/00 20060101ALI20241015BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20241015BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/38
C09J183/00
C09J183/07
C09J183/05
(21)【出願番号】P 2021565362
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2020041705
(87)【国際公開番号】W WO2021124724
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2019229894
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】増田 晃良
(72)【発明者】
【氏名】下田 敬之
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴広
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/049950(WO,A1)
【文献】特開2007-150065(JP,A)
【文献】特開2016-122812(JP,A)
【文献】国際公開第2018/056298(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/38
C09J 183/00
C09J 183/07
C09J 183/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と当該基材に積層される粘着剤層とを備え、被覆材で被覆された複数の半導体素子を有する半導体材料を、複数の半導体チップに分割する際に使用されるダイシング用粘着テープであって、
前記粘着剤層は、
シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)とが混合されたシリコーン系樹脂、当該シリコーン系樹脂に対する架橋剤として1分子中に少なくとも2個以上のケイ素原子結合水素原子(SiH基)を有するオルガノポリシロキサン、熱重合開始剤として過酸化物、および光感応白金(Pt)触媒を含む粘着剤組成物からなり、
前記シリコーン系樹脂全体におけるシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が、質量比で40.0/60.0~56.0/44.0の範囲であり、
前記シリコーンガム(G)が、ケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(G
alk)を含み、
前記シリコーン系樹脂全体における前記ケイ素原子結合アルケニル基の含有量が、7.0×10
-7mol/g以上5.5×10
-6mol/g以下の範囲であることを特徴とするダイシング用粘着テープ。
【請求項2】
複数の前記半導体素子がシリコーン樹脂からなる前記被覆材により封止された前記半導体材料に対して、当該被覆材側から貼り付けられて使用されることを特徴とする請求項1に記載のダイシング用粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層は、前記粘着剤組成物に含まれる前記シリコーン系樹脂全体における前記ケイ素原子結合アルケニル基の含有量(総量)に対する、当該粘着剤組成物に含まれる前記架橋剤の前記ケイ素原子結合水素原子(SiH基)の含有量(総量)のモル比率(SiH基/ケイ素原子結合アルケニル基)が、2.0以上10.0以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のダイシング用粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層は、前記粘着剤組成物における前記過酸化物の含有量が、前記シリコーン系樹脂全体の固形分100質量部に対し、固形分で0.10質量部以上3.00質量部以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のダイシング用粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層は、前記過酸化物がジアシルパーオキサイド類であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のダイシング用粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層は、前記粘着剤組成物における前記光感応白金(Pt)触媒の含有量が、前記シリコーン系樹脂全体の固形分100質量部に対し、固形分で0.10質量部以上3.00質量部以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のダイシング用粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着剤層は、前記シリコーン系樹脂全体における前記ケイ素原子結合アルケニル基の含有量が、2.9×10
-6mol/g以上4.1×10
-6mol/g以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のダイシング用粘着テープ。
【請求項8】
JIS Z 0237(2009)に準拠した粘着特性において下記条件(a)~(c)の全てを満たすことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のダイシング用粘着テープ。
(a)BA-SUS試験板に対する光照射前の粘着力は、2.8N/10mm以上5.5N/10mm以下の範囲であること。
(b)傾斜式ボールタック試験(傾斜角30°、温度23℃、相対湿度50%RH)におけるボールナンバーの値は、光照射前のボールナンバーの値をBN0、光照射後のボールナンバーの値をBN1とした場合に、BN0>BN1の関係であること。
(c)光照射後の保持力試験(温度40℃、相対湿度33%RH、放置時間2880分)において、落下時の破壊現象は、前記粘着剤層とBA-SUS試験板との界面剥離であること、もしくは、当該保持力試験において落下しないこと。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のダイシング用粘着テープを、シリコーン樹脂からなる封止樹脂で封止された複数の前記半導体素子が基板上に形成された半導体素子基板に対して、当該封止樹脂側から貼り付ける貼付工程と、
前記ダイシング用粘着テープが貼り付けられた前記半導体素子基板を、複数の半導体チップに切断する切断工程と、
前記半導体素子基板の前記ダイシング用粘着テープに光を照射する照射工程と、
前記複数の半導体チップから、前記ダイシング用粘着テープを剥がす剥離工程と
を含む半導体チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの材料となる半導体材料のダイシングに用いられるダイシング用粘着テープ、およびダイシング用粘着テープを使用した半導体チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED(Light Emitting Diode)等を有する半導体チップを作製するために使用されるダイシング用粘着テープとして、アクリル系樹脂からなる接着剤層を有する粘着テープが知られている(特許文献1参照)。
また、LED等を有する半導体チップを作製するために使用されるダイシング用粘着テープとして、シリコーン系樹脂からなる粘着剤層を有する粘着テープが知られている(特許文献2、特許文献3参照)。
さらに、ダイシング用粘着テープを使用して半導体チップを作製する方法としては、基板上に複数の半導体素子が形成された半導体素子基板の基板側に粘着テープを貼り付け、ダイサーにより半導体素子基板を切断する方法が知られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-38408号公報
【文献】特開2015-050216号公報
【文献】特開2016-122812号公報
【文献】特開2005-93503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、ダイシングにより個片化された半導体チップを作製する方法として、複数の半導体素子が封止樹脂や蛍光体等の被覆材に被覆された半導体材料に粘着テープを貼り付けてダイシングを行う技術、所謂、ウエハーレベルCSP(チップ・スケール・パッケージ)プロセスに対応した技術が提案されている。
このように、半導体素子が被覆材に被覆された半導体材料に粘着テープを貼り付ける場合、粘着テープにおける粘着剤層の構成や被覆材の素材等によっては、粘着力が不足して、ダイシングにより個片化された半導体チップが飛散する場合がある。また、半導体チップの飛散を抑制するために粘着剤層のボールタックや粘着力を高く設計すると、得られた半導体チップを粘着テープから剥離した際に、粘着剤が半導体チップに付着したまま残存する所謂糊残りが生じる場合がある。
【0005】
本発明は、被覆材で被覆された複数の半導体素子を有する半導体材料に対して良好な粘着力およびタック力を有するとともに、ダイシングにより個片化された半導体チップを剥離した場合に半導体チップに対する糊残りが抑制されたダイシング用粘着テープ、およびこれを用いた半導体チップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる目的のもと、ダイシング用粘着テープの粘着剤層について鋭意検討した結果、粘着剤層を、少なくとも(1)ケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンから成るシリコーンガムを含むシリコーン系樹脂と、(2)ケイ素原子結合水素原子(SiH基)を有する架橋剤と、(3)過酸化物からなる熱重合開始剤と、を含む特定の樹脂組成物に対して、さらに(4)光感応白金(Pt)触媒を添加した粘着剤組成物から構成し、シリコーン系樹脂におけるシリコーンガムとシリコーンレジンとの混合比率、ならびにシリコーン系樹脂全体におけるケイ素原子結合アルケニル基の含有量を所定の範囲とすれば、被覆材で被覆された複数の半導体素子を有する半導体材料に対して安定且つ良好な粘着力を有するとともに、ダイシングにより個片化された半導体チップを剥離した場合に半導体チップに対する糊残りが抑制されることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、ダイシング用粘着テープの粘着剤層を、シリコーンガムとシリコーンレジンとが所定の比率で混合され、且つ所定量のケイ素原子結合アルケニル基を有するシリコーン系樹脂に対して、架橋剤と熱重合開始剤と光感応白金(Pt)触媒とを添加した粘着組成物から構成することで、以下の効果を奏することを見出した。まず、被覆材で被覆された複数の半導体素子を有する半導体材料を複数の半導体チップに分割する際には、粘着剤層が、該粘着剤層を基材上に形成するための加熱・乾燥工程を経た際に、熱重合開始剤によりシリコーン系樹脂の一部が架橋・硬化(1段階目の架橋反応)された状態になっているため、該粘着剤層の適度な凝集力がもたらす安定且つ良好なタック力および粘着力により、ダイシング時に個片化された半導体チップが飛散することが抑制されることを見出した。またその一方で、ダイシングにより個片化された半導体チップをダイシング用粘着テープから剥離する際には、紫外線等の光を粘着剤層に照射することで、粘着剤組成物中の光感応白金(Pt)触媒が活性化され、シリコーン系樹脂中のシリコーンガムが有するケイ素原子結合アルケニル基と架橋剤が有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)との間で2段階目の架橋反応(付加反応)が促進され、架橋密度がさらに高くなるので、粘着剤組成物の凝集力が光照射前と比較してさらに大きくなる。この結果、粘着剤層のタック力が適切に低下し、さらに保持力試験における破壊モードが「界面剥離」あるいは保持力試験において「落下しない」ものとなる。これにより、半導体チップのダイシング用粘着テープからのピックアップ性が良好となり、また半導体チップに対する糊残りが抑制されることを見出した。
【0007】
本発明のダイシング用粘着テープは、基材と当該基材に積層される粘着剤層とを備え、被覆材で被覆された複数の半導体素子を有する半導体材料を、複数の半導体チップに分割する際に使用されるダイシング用粘着テープであって、前記粘着剤層は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)とが混合されたシリコーン系樹脂、当該シリコーン系樹脂に対する架橋剤として1分子中に少なくとも2個以上のケイ素原子結合水素原子(SiH基)を有するオルガノポリシロキサン、熱重合開始剤として過酸化物、および光感応白金(Pt)触媒を含む粘着剤組成物からなり、前記シリコーン系樹脂全体におけるシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が、質量比で40.0/60.0~56.0/44.0の範囲であり、前記シリコーンガム(G)が、ケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(Galk)を含み、前記シリコーン系樹脂全体における前記ケイ素原子結合アルケニル基の含有量が、7.0×10-7mol/g以上5.5×10-6mol/g以下の範囲であることを特徴とするダイシング用粘着テープである。
ここで、複数の前記半導体素子がシリコーン樹脂からなる前記被覆材により封止された前記半導体材料に対して、当該被覆材側から貼り付けられて使用されることを特徴とすることができる。
また、前記粘着剤層は、前記粘着剤組成物に含まれる前記シリコーン系樹脂全体における前記ケイ素原子結合アルケニル基の含有量(総量)に対する、当該粘着剤組成物に含まれる前記架橋剤の前記ケイ素原子結合水素原子(SiH基)の含有量(総量)のモル比率(SiH基/ケイ素原子結合アルケニル基)が、2.0以上10.0以下の範囲であることを特徴とすることができる。
また、前記粘着剤層は、前記粘着剤組成物における前記過酸化物の含有量が、前記シリコーン系樹脂全体の固形分100質量部に対し、固形分で0.10質量部以上3.00質量部以下の範囲であることを特徴とすることができる。
また、前記粘着剤層は、前記過酸化物がジアシルパーオキサイド類であることを特徴とすることができる。
また、前記粘着剤層は、前記粘着剤組成物における前記光感応白金(Pt)触媒の含有量が、前記シリコーン系樹脂全体の固形分100質量部に対し、固形分で0.10質量部以上3.00質量部以下の範囲であることを特徴とすることができる。
また、前記粘着剤層は、前記シリコーン系樹脂全体における前記ケイ素原子結合アルケニル基の含有量が、2.9×10-6mol/g以上4.1×10-6mol/g以下の範囲であることを特徴とすることができる。
また、JIS Z 0237(2009)に準拠した粘着特性において下記条件(a)~(c)の全てを満たすことを特徴とすることができる。
(a)BA-SUS試験板に対する光照射前の粘着力は、2.8N/10mm以上5.5N/10mm以下の範囲であることである。
(b)傾斜式ボールタック試験(傾斜角30°、温度23℃、相対湿度50%RH)におけるボールナンバーの値は、光照射前のボールナンバーの値をBN0、光照射後のボールナンバーの値をBN1とした場合に、BN0>BN1の関係であることである。
(c)光照射後の保持力試験(温度40℃、相対湿度33%RH、放置時間2880分)において、落下時の破壊現象は、前記粘着剤層とBA-SUS試験板との界面剥離であること、もしくは、当該保持力試験において落下しないことである。
【0008】
また、他の観点から捉えると、本発明が適用される半導体チップの製造方法は、上記のダイシング用粘着テープを、シリコーン樹脂からなる封止樹脂で封止された複数の前記半導体素子が基板上に形成された半導体素子基板に対して、当該封止樹脂側から貼り付ける貼付工程と、前記ダイシング用粘着テープが貼り付けられた前記半導体素子基板を、複数の半導体チップに切断する切断工程と、前記半導体素子基板の前記ダイシング用粘着テープに光を照射する照射工程と、前記複数の半導体チップから、前記ダイシング用粘着テープを剥がす剥離工程とを含む半導体チップの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の半導体素子が被覆材に被覆された半導体材料に対して、光照射前の段階においては、良好な粘着力およびタック力を有するとともに、光照射後にダイシングにより個片化された半導体チップを剥離した場合に、半導体チップの良好なピックアップ性を有するとともに、半導体チップに対する糊残りが抑制されたダイシング用粘着テープ、およびこれを用いた半導体チップの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態が適用されるダイシング用粘着テープの構成の一例を示した図である。
【
図2】(a)~(e)は、本実施の形態の粘着テープを使用した半導体チップの製造方法を示した図である。
【
図3】粘着剤層におけるシリコーン系樹脂の架橋密度と、粘着テープ1の保持力試験の結果(落下時間)との関係を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[粘着テープの構成]
図1は、本実施の形態が適用されるダイシング用粘着テープ1(以下、単に粘着テープ1と称する)の構成の一例を示した図である。本実施の形態の粘着テープ1は、例えば、LED(Light Emitting Diode)やパワー半導体等の半導体素子を有する半導体チップの製造工程において、半導体チップの元となる半導体材料のダイシングに用いられる。
【0012】
図1に示すように、粘着テープ1は、基材2上に、粘着剤層3が積層された構成を有している。
なお、図示は省略するが、粘着テープ1は、基材2と粘着剤層3との間に必要に応じて、基材2と粘着剤層3との密着性を高めるためのアンカーコート層を備えていてもよい。また、基材2の表面(粘着剤層3に対向する面とは反対側の面)に、表面処理が施されていてもよい。さらに、粘着剤層3の表面(基材2に対向する面とは反対側の面)に、剥離ライナーを備えていてもよい。
【0013】
<基材>
本実施の形態の基材2は、紫外線等の光を透過する材料により構成される。基材2の材料としては、紫外線等の光が透過可能であれば特に限定されるものではなく、例えば紫外線等の光が透過可能なプラスチック等を用いることができる。なお、ここで、紫外線等の光が透過可能とは、紫外線等の光の透過率が100%であることを意味するものではなく、少なくとも粘着剤層3に含まれる後述する光感応白金(Pt)触媒によりシリコーン系樹脂と架橋剤との付加反応を促進できる程度の光が透過できればよい。
【0014】
基材2の材料として具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、二軸延伸ポリプロピレン、脂肪族ポリイミド(透明性ポリイミド)、ポリシクロオレフィン、フッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂フィルムを用いることができる。また、用途に応じて基材2には、例えば、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィン樹脂フィルムとをラミネートした複合フィルム、およびこれらの複合フィルムをさらに樹脂フィルムとラミネートした複合フィルム、共押し出しで複層とした樹脂フィルム等を用いてもよい。
この中でも、基材2としては、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする材料を用いることが好ましい。
【0015】
<粘着剤層>
本実施の形態の粘着剤層3は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)とが混合されたシリコーン系樹脂、1分子中に少なくとも2個以上のケイ素原子結合水素原子(SiH基)を有するシリコーン系樹脂に対する架橋剤、熱重合開始剤として過酸化物および、光感応白金(Pt)触媒を含む粘着剤組成物により構成される。
シリコーン系樹脂は、「ケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(Galk)を含むシリコーンガム(G)」と、「オルガノポリシロキサンからなるシリコーンレジン(R)」とが所定の比率で配合された混合樹脂からなる。以下、粘着剤層3を構成する粘着剤組成物に含まれる各成分について順に説明する。
【0016】
(シリコーン系樹脂)
本実施の形態のシリコーン系樹脂は、「ケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(Galk)を含むシリコーンガム(G)」と、「オルガノポリシロキサンからなるシリコーンレジン(R)」とが、40.0/60.0~56.0/44.0の範囲となるように配合された混合樹脂からなる。すなわち、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が、質量比で40.0/60.0~56.0/44.0の範囲となるように配合された混合樹脂からなる。
また、シリコーン系樹脂は、シリコーン系樹脂全体におけるケイ素原子結合アルケニル基の含有量が7.0×10-7mol/g以上5.5×10-6mol/g以下の範囲となるように構成され、より好ましくは、2.9×10-6mol/g以上4.1×10-5mol/g以下の範囲となるように構成される。ここで「mol/g」は、「シリコーン系樹脂全体の固形分1gあたりの物質量」を意味する。
【0017】
シリコーン系樹脂全体におけるケイ素原子結合アルケニル基の含有量が7.0×10-7mol/g未満であると、粘着テープ1に紫外線等の光を照射した際に、シリコーンガムが有するケイ素原子結合アルケニル基と架橋剤が有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)との間の2段階目の架橋反応(付加反応)による架橋密度の向上が不十分となり、粘着剤が硬化し難く、凝集力が向上しにくくなる。この場合、所望のタック力低下や保持力試験における破壊モードが得られず、粘着テープ1を半導体素子基板等のダイシングに使用した後、得られた半導体チップ等を粘着テープ1から剥離する際に、個片化された半導体チップのピックアップ性が悪くなるおそれや、半導体チップ等に糊残りが生じやすくなるおそれがある。
一方、シリコーン系樹脂全体におけるケイ素原子結合アルケニル基の含有量が5.5×10-6mol/gを超えると、粘着剤層3を構成する粘着剤組成物のシリコーン系樹脂においてシリコーンガム(G)の混合比率が高い場合に、熱重合開始剤の種類や含有量によっては、紫外線等の光照射前の段階で、シリコーン系樹脂の硬化(1段階目の架橋反応)が熱重合開始剤により進み過ぎて、粘着剤層3が硬くなり過ぎる場合がある。この場合、粘着テープ1を半導体素子基板等のダイシングに使用すると、半導体素子基板等を切断する際に、切断片である半導体チップ等が粘着テープ1から剥がれて飛散しやすくなるおそれがある。
【0018】
シリコーン系樹脂全体におけるケイ素原子結合アルケニル基の含有量は、シリコーン系樹脂の不揮発成分に対して、1H-NMR(核磁気共鳴)スペクトル測定を行い、アルケニル基の共鳴シグナル面積(積分値)を求めることにより算出することができる。詳細は後述する。
【0019】
なお、本実施の形態のシリコーン系樹脂は、「シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))」および「ケイ素原子結合アルケニル基の含有量」が上記の範囲であれば、ケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサンから成るシリコーンガム(G0)を含んでいてもよい。すなわち、シリコーンガム(G)は、「ケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(Galk)」の単独物あるいはそれらの2種以上の混合物であってもよいし、「ケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(Galk)」と「ケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(G0)」の混合物あるいはそれらの2種以上の混合物であってもよい。
【0020】
以下、シリコーン系樹脂に含まれる、「ケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンから成るシリコーンガム(Galk)」、「ケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサンから成るシリコーンガム(G0)」と、「ケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサンから成るシリコーンレジン(R)」についてさらに詳しく説明する。
なお、以下の説明において、ケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンから成るシリコーンガム(Galk)を、ケイ素原子結合アルケニル基を含有するシリコーンガム(Galk)、または、単にシリコーンガム(Galk)と表記する場合がある。同様に、ケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサンから成るシリコーンガム(G0)を、ケイ素原子結合アルケニル基を含有しないシリコーンガム(G0)、または、単にシリコーンガム(G0)と表記する場合がある。さらに、オルガノポリシロキサンから成るシリコーンレジン(R)を、単にシリコーンレジン(R)と表記する場合がある。
【0021】
(ケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(Galk))
本実施の形態におけるケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(Galk)は、一般的に付加反応型シリコーン系樹脂として使用されるもの、すなわち、平均して1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有するものであればよく、特に限定されるものではない。
具体的には、シリコーンガム(Galk)としては、ケイ素原子結合アルケニル基の含有量が1.0×10-6mol/g以上1.0×10-1mol/g以下の範囲であるものを使用することができる。本実施の形態では、粘着剤層3の粘着特性の制御、あるいは市販品を使用する場合の入手のし易さの観点から、ケイ素原子結合アルケニル基の含有量が1.7×10-6mol/g以上1.0×10-2mol/g以下の範囲であるものを使用することが好ましい。このシリコーンガム(Galk)は、上述したシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)とが混合されたシリコーン系樹脂全体におけるアルケニル基の含有量が7.0×10-7mol/g以上5.5×10-6mol/g以下の範囲となるように、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
シリコーンガム(Galk)を構成するケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンの分子構造としては、例えば、主鎖部分がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状構造、当該分子構造の一部に分枝鎖を含んだ構造、分岐鎖状構造、または環状体構造が挙げられる。中でも、紫外線等の光の照射後の粘着剤の機械的強度および物性等の点から、直鎖状構造のオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0023】
ケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(Galk)は、オイル状又は生ゴム状のいずれであってもよいが、生ゴム状であることが好ましい。オイル状である場合、オルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(Galk)の粘度は、25℃において、1,000mPa・s以上が好ましい。粘度が1,000mPa・s未満では、紫外線等の光照射前後の粘着剤が所望の粘着特性を発現できないおそれや、粘着剤層3と基材2との密着性が劣るおそれがある。生ゴム状である場合、オルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(Galk)を30質量%の濃度となるようにトルエンで溶解した場合の粘度は、25℃において100,000mPa・s以下が好ましい。粘度が100,000mPa・sを超えると、粘着剤組成物を調製する際の撹拌が困難になるおそれがある。なお、オルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(Galk)の粘度はB型回転粘度計(BM形ローター使用、以下同じ)を用いて測定することができる。
【0024】
ケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(Galk)は、例えば、下記一般式(1)または一般式(2)で示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
【0026】
【0027】
ここで、上記一般式(1)、一般式(2)において、R1は、互いに独立に、脂肪族不飽和結合を有さない1価炭化水素基であり、Xはアルケニル基含有有機基である。aは0~3の整数であり、mは0以上の整数であり、nは100以上の整数であり、但しaとmは同時に0にならず、aが0の場合に限り、mは2以上の整数である。m+nは、上記オルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(Galk)の25℃における粘度が1,000mPa・s以上となる値である。
【0028】
R1としては、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~7の、脂肪族不飽和結合を有さない1価炭化水素基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;及びフェニル基、及びトリル基等のアリール基等が挙げられ、特に、メチル基又はフェニル基が好ましい。
【0029】
Xとしては、炭素数2~10のアルケニル基含有有機基が好ましい。例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、アクリロキシプロピル基、アクリロキシメチル基、メタクリロキシプロピル基、メタクリロキシメチル基、シクロヘキセニルエチル基、及びビニルオキシプロピル基等が挙げられる。中でも、ビニル基、アリル基等の低級アルケニル基が好ましく、工業的観点から、特にはビニル基が好ましい。アルケニル基の結合位置は特に限定されず、分子鎖末端、分子鎖側鎖又は分子鎖末端と分子鎖側鎖両方でもよい。
【0030】
アルケニル基の数は、シリコーン系粘着剤に含まれるオルガノポリシロキサンからなるシリコーンレジン(R)の含有量、架橋剤の種類・添加量、他の添加成分との兼ね合い等により適切な範囲が変わるので、一概には言えないが、例えば、オルガノポリシロキサンのオルガノ基100個に対して、通常0.1個以上3.0個以下の範囲であることが好ましい。そして、この比率の範囲で、上述した粘度の範囲となるように分子量を調整して、平均してオルガノポリシロキサン1分子中の上記アルケニル基の数が少なくとも2個となるように調整することが好ましい。アルケニル基の数がオルガノポリシロキサンのオルガノ基100個に対して0.1個未満であると、粘着テープ1に紫外線等の光を照射した際に、シリコーンガム(Galk)が有するケイ素原子結合アルケニル基とシリコーン系樹脂に対する架橋剤が有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)との間の2段階目の架橋反応(付加反応)による架橋密度の向上が不十分となり、粘着剤が硬化し難く、凝集力が向上しにくくなる。この場合、所望のタック力低下や保持力試験における破壊モードが得られず、粘着テープ1を半導体素子基板等のダイシングに使用した後、得られた半導体チップ等を粘着テープ1から剥離する際に、個片化された半導体チップのピックアップ性が悪くなるおそれや、半導体チップ等に糊残りが生じやすくなるおそれがある。一方、アルケニル基の数がオルガノポリシロキサンのオルガノ基100個に対して3.0個を超えると、粘着剤層3を構成する粘着剤組成物のシリコーン系樹脂においてシリコーンガム(G)の混合比率が高い場合に、熱重合開始剤の種類や含有量によっては、紫外線等の光照射前の段階で、シリコーン系樹脂の硬化(1段階目の架橋反応)が熱重合開始剤により進み過ぎて、粘着剤層3が硬くなり過ぎる場合がある。この場合、粘着テープ1を半導体素子基板等のダイシングに使用すると、半導体素子基板等を切断する際に、切断片である半導体チップ等が粘着テープ1から剥がれて飛散しやすくなるおそれがある。
【0031】
このようなケイ素原子結合アルケニル基を含有するシリコーンガム(Galk)の具体例としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0032】
(ケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(G0))
本実施の形態におけるケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(G0)は、一般的に過酸化物硬化型シリコーン系樹脂として使用されるもの、すなわち、ケイ素原子結合アルケニル基を含有していないものであればよく、特に限定されるものではない。
このようなシリコーンガム(G0)を構成するオルガノポリシロキサンの分子構造としては、例えば、主鎖部分がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状構造、該分子構造の一部に分枝鎖を含んだ構造、分岐鎖状構造、または環状体構造が挙げられる。
【0033】
ケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(G0)は、オイル状又は生ゴム状のいずれであってもよいが、生ゴム状であることが好ましい。オイル状である場合、オルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(G0)の粘度は、25℃において、1,000mPa・s以上が好ましい。粘度が1,000mPa・s未満では、紫外線等の光照射前後の粘着剤が所望の粘着特性を発現できないおそれや、粘着剤層3と基材2との密着性が劣るおそれがある。生ゴム状である場合、オルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(G0)を30質量%の濃度となるようにトルエンで溶解した時の粘度は、25℃において100,000mPa・s以下が好ましい。粘度が100,000mPa・sを超えると、粘着剤組成物を調製する際の撹拌が困難になるおそれがある。なお、オルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(G0)の粘度はB型回転粘度計を用いて測定することができる。
【0034】
ケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(G0)は、例えば、下記一般式(3)または一般式(4)で示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
【0036】
【0037】
ここで、上記一般式(3)、一般式(4)において、R4は、互いに独立に、脂肪族不飽和結合を有さない1価炭化水素基であり、tは、100以上の整数で、上記ジオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(G0)の25℃における粘度が1,000mPa・s以上となる値である。
【0038】
R4としては、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~7の、脂肪族不飽和結合を有さない1価炭化水素基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;及びフェニル基、及びトリル基等のアリール基等が挙げられ、特に、メチル基が好ましい。
【0039】
(オルガノポリシロキサンからなるシリコーンレジン(R))
本実施の形態におけるオルガノポリシロキサンからなるシリコーンレジン(R)は、R2
3SiO0.5単位(M単位)およびSiO2単位(Q単位)を有するオルガノポリシロキサンであり、一般的にシリコーン系粘着剤に使用される所謂MQレジンと称されるものである。このオルガノポリシロキサンからなるシリコーンレジン(R)は、基本的には分子内にアルケニル基を有しておらず、従来公知のものを使用することができる。R2は炭素数1~10の1価炭化水素基であり、上述のR1として例示したものが挙げられる。シリコーンレジン(R)を構成するオルガノポリシロキサンは、R2
3SiO0.5単位およびSiO2単位を、R2
3SiO0.5単位/SiO2単位のモル比で0.5以上1.7以下の範囲となるように含有することが好ましい。R2
3SiO0.5単位/SiO2単位のモル比が0.5未満では、得られる粘着剤層3の粘着力やタック力が低下する場合がある。一方、R2
3SiO0.5単位/SiO2単位のモル比が1.7を超えると、得られる粘着剤層3の粘着力や保持力が低下する場合がある。なお、シリコーンレジン(R)を構成するオルガノポリシロキサンはOH基を有していてもよい。その場合、OH基の含有量は、オルガノポリシロキサンの総質量に対して4.0質量%以下であるのが好ましい。OH基の含有量が4.0質量%を超えると、粘着剤の硬化性が低下するおそれがある。
【0040】
上記オルガノポリシロキサンは2種以上を併用してもよい。また、上記オルガノポリシロキサンは、本発明の特性を損なわない範囲で、R2SiO1.5単位(T単位)及び/又はR2
2SiO単位(D単位)を有していてもよい。
【0041】
「ケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(Galk)」と「ケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(G0)」と「オルガノポリシロキサンからなるシリコーンレジン(R)」とは、通常は単純に混合して使用すればよい。また、ケイ素原子結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(Galk)として、上記一般式(2)で示されるオルガノポリシロキサンを含有する場合や、ケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサンからなるシリコーンガム(G0)として、上記一般式(4)で示されるオルガノポリシロキサンを含有する場合には、本発明の特性を損なわない限りにおいては、シリコーンガム(Galk)とシリコーンレジン(R)とを、あるいはシリコーンガム(G0)とシリコーンレジン(R)とを、予め反応させて得られる(部分)縮合反応物として使用してもよい。
【0042】
(シリコーン系樹脂全体におけるシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R)))
本実施形態の粘着剤層3に含まれるシリコーン系樹脂全体において、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))は、質量比で40.0/60.0~56.0/44.0の範囲である。ここで、シリコーンガム(G)を2種以上併用する場合は、それぞれのシリコーンガム(G)の合計量を、シリコーン系樹脂全体におけるシリコーンガム(G)の質量と見做す。例えば、シリコーンガム(G)として、シリコーンガム(Galk)とシリコーンガム(G0)を併用した場合、シリコーン系樹脂全体におけるシリコーンガム(G)の質量は、シリコーンガム(Galk)の質量とシリコーンガム(G0)の質量との合計量である。同様に、シリコーンレジン(R)を2種以上併用する場合も、それぞれのシリコーンレジンの合計量を、シリコーン系樹脂全体におけるシリコーンレジン(R)の質量と見做す。
【0043】
本実施形態の粘着剤層3に含まれるシリコーン系樹脂全体において、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が上記範囲の下限値未満であると、粘着テープ1に紫外線等の光を照射した際に、シリコーンガム(G)が有するケイ素原子結合アルケニル基とシリコーン系樹脂に対する架橋剤が有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)との間の2段階目の架橋反応(付加反応)による架橋密度の向上の寄与が不十分となり、粘着剤が硬化し難く、凝集力が向上しにくくなる。この場合、所望のタック力低下や保持力試験における破壊モードが得られず、粘着テープ1を半導体素子基板等のダイシングに使用した後、得られた半導体チップ等を粘着テープ1から剥離する際に、個片化された半導体チップのピックアップ性が悪くなるおそれや、半導体チップ等に糊残りが生じやすくなるおそれがある。
【0044】
一方、本実施形態の粘着剤層3に含まれるシリコーン系樹脂全体において、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が上記範囲の上限値を超えると、紫外線等の光照射前の段階で、シリコーン系樹脂の硬化(1段階目の架橋反応)が熱重合開始剤により進み過ぎて、粘着剤層3が硬くなり過ぎる場合がある。この場合、粘着テープ1を半導体素子基板等のダイシングに使用すると、半導体素子基板等を切断する際に、切断片である半導体チップ等が粘着テープ1から剥がれて飛散しやすくなるおそれがある。
【0045】
これに対し、本実施形態の粘着剤層3に含まれるシリコーン系樹脂全体において、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))を上述した40.0/60.0~56.0/44.0の範囲とすることにより、以下の効果を実現できる。すなわち、紫外線等の光の照射前の段階においては、粘着剤層3は、熱重合開始剤によりシリコーン系樹脂の一部が架橋・硬化(1段階目の架橋反応)された状態になっているため、粘着剤層3に対して、ダイシングの際に切断片である半導体チップ等の飛散が発生しない適切な粘着力およびタック力を付与させることが可能となる。一方、紫外線等の光の照射後は、粘着剤層3のシリコーン系樹脂は、上述したようにシリコーン系樹脂全体におけるケイ素原子結合アルケニル基の含有量が7.0×10-7mol/g以上5.5×10-6mol/g以下の範囲となるように構成されているので、シリコーンガム(G)が有するケイ素原子結合アルケニル基とシリコーン系樹脂に対する架橋剤が有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)との間で2段階目の架橋反応(付加反応)が十分に進む。これにより、粘着剤層3の硬化がさらに進行することで、架橋密度が高くなり、凝集力がさらに向上するため、所望のタック力の低下や保持力試験における破壊モードが得られるようになる。この結果、粘着テープ1を半導体素子基板等のダイシングに使用した後、得られた半導体チップ等を粘着テープ1から剥離する際の良好なピックアップ性を実現できるとともに、半導体チップ等に対する糊残りを抑制することが可能となる。
【0046】
特に、上記シリコーン系樹脂全体におけるケイ素原子結合アルケニル基の含有量は、2.9×10-6mol/g以上4.1×10-6mol/g以下の範囲とすることが好ましい。この場合、粘着剤層3の凝集力の制御がしやすくなるため、より安定したダイシング特性を有する粘着テープ1を実現することができる。
【0047】
また、本発明のシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)とが混合されたシリコーン系樹脂としては、以下に例示する市販の材料を適宜組み合わせて混合調製したものを使用することもできる。ここで、「適宜組み合わせて混合調製したもの」とは、「粘着剤層3のシリコーン系樹脂全体におけるケイ素原子結合アルケニル基の含有量が7.0×10-7mol/g以上5.5×10-6mol/g以下の範囲、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が40.0/60.0~56.0/44.0の範囲となるように、個々の材料を適宜組み合わせ混合調製したもの」を意味する。適宜組み合わせて混合調製するための個々の市販材料としては、例えば、以下の材料(1)~(4)等が挙げられる。
【0048】
ケイ素原子結合アルケニル基を含有するシリコーン系樹脂としては、(1)シリコーンガム(Galk)とシリコーンレジン(R)が所定の比率で混合された市販の付加反応型シリコーン系粘着剤や、(2)シリコーンガム(Galk)を主成分とする付加反応型シリコーン系離型剤等が挙げられる。また、ケイ素原子結合アルケニル基を含有しないシリコーン系樹脂としては、(3)シリコーンガム(G0)とシリコーンレジン(R)とが所定の比率で混合された市販の過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤や、(4)市販のシリコーンレジン(R)の単独物等が挙げられる。本発明において、これら市販の個々の材料を適宜組み合わせて混合調製する場合、少なくとも(2)の付加反応型シリコーン系離型剤を含むことが好ましく、さらにこれに加えて(1)の付加反応型シリコーン系粘着剤を含むことがより好ましい。
【0049】
上述したように、ケイ素原子結合アルケニル基を含有するシリコーン系樹脂としては、(1)シリコーンガム(Galk)とシリコーンレジン(R)が所定の比率で混合された市販の付加反応型シリコーン系粘着剤や、(2)シリコーンガム(Galk)を主成分とする市販の付加反応型シリコーン系離型剤等を使用することができる。以下、具体的な市販材料について例示する。
【0050】
(1)付加反応型シリコーン系粘着剤
上記市販の付加反応型シリコーン系粘着剤としては、一般的にシリコーン系粘着テープ用のシリコーン系粘着剤として用いられるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、信越化学工業株式会社製のKR-3700、KR-3701、X-40-3237-1、X-40-3240、X-40-3291-1、X-40-3229、X-40-3270、X-40-3306(いずれも商品名)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSR1512、TSR1516、XR37-B9204(いずれも商品名)、ダウ・東レ株式会社製のSD4580、SD4584、SD4585、SD4560、SD4564、SD4565、SD4570、SD4574、SD4575、SD4600PFC、SD4593、DC7651ADHESIVE(いずれも商品名)等の型番において、白金(Pt)系触媒および後述する架橋剤が内添されていないタイプを使用することができる。なお、架橋剤が内添されているタイプを使用することもできるが、内添された架橋剤が有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)の含有量が不明の場合は、該含有量は、後述する1H-NMR(核磁気共鳴)スペクトル測定の分析等により求めることができる。
【0051】
(2)付加反応型シリコーン系離型剤
上記市販の付加反応型シリコーン系離型剤としては、一般的に粘着テープ用のシリコーン系離型フィルムの離型処理剤として用いられるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ダウ・東レ株式会社製のLTC750A、LTC310、LTC300B(いずれも商品名)、信越化学工業株式会社製のKS3600、KS778(いずれも商品名)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTPR6710、TPR6700(いずれも商品名)等を使用することができる。この場合も、架橋剤が内添されていないタイプおよび架橋剤が内添されているタイプのいずれを使用してもよく、内添された架橋剤が有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)の含有量は、1H-NMR(核磁気共鳴)スペクトル測定の分析等により求めることができる。
【0052】
上記市販の付加反応型シリコーン系粘着剤におけるシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率が不明な場合は、該混合比率は、29Si-NMR(核磁気共鳴)スペクトル測定により、D単位とQ単位とのピーク面積比(シリコーンガム:シリコーンレジン=D単位:Q単位)から求めることができる。また、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される、それぞれのピーク面積の比率からも求めることができる。
【0053】
また、ケイ素原子結合アルケニル基を含有しないシリコーン系樹脂としては、シリコーンガム(G0)とシリコーンレジン(R)とが所定の比率で混合された市販の過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤や、市販のシリコーンレジン(R)の単独物等を使用することができる。以下、具体的な市販材料について例示する。
【0054】
(3)過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤
上記市販の過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤としては、一般的にシリコーン系粘着テープ用のシリコーン系粘着剤として用いられるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、信越化学工業株式会社製のKR-100、KR-101-10(いずれも商品名)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のYR3340、YR3286、PSA610-SM、XR37-B6722、YF3897(いずれも商品名)、ダウ・東レ株式会社製のSH4280、SH4282、SE4200、BY24-717、BY24-715、Q2-7735(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0055】
(4)シリコーンレジン
市販のシリコーンレジン(R)の単独物としては、具体的には、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のYF3800、XF3905、YF3057、YF3807、YF3802、YF3897、XC96-723、2D SILANOL FLUID(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0056】
上記市販の過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤におけるシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率が不明な場合は、該混合比率は、上記と同様に、29Si-NMR(核磁気共鳴)スペクトル測定により、D単位とQ単位とのピーク面積比(シリコーンガム:シリコーンレジン=D単位:Q単位)から求めることができる。また、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される、それぞれのピーク面積の比率からも求めることができる。
【0057】
これら市販のシリコーン系樹脂は、上述したように、粘着剤層3のシリコーン系樹脂全体におけるケイ素原子結合アルケニル基の含有量が7.0×10-7mol/g以上5.5×10-6mol/g以下の範囲、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が40.0/60.0~56.0/44.0の範囲となるように適宜組み合わせて混合調製した状態で使用すればよい。これら市販のシリコーン系樹脂を用いる場合の好ましい態様例としては、具体的には、例えば、(a)付加反応型シリコーン系粘着剤に付加反応型シリコーン系離型剤を添加したシリコーン系樹脂や、(b)これらにさらに過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤および/またはシリコーンレジン(R)を添加したシリコーン系樹脂を、粘着剤層3を構成する粘着剤組成物の主成分として用いればよい。
なお、本実施の形態の説明において、「主成分として」とは、粘着剤組成物の固形分を100質量部とした場合に75質量部以上を占めることを意味し、好ましくは、90質量部以上、より好ましくは95質量部以上である。
【0058】
(架橋剤)
本実施の形態における架橋剤は、紫外線等の光が粘着剤層3に照射されることにより、シリコーン系粘着剤に対する架橋剤としての機能を発現する。すなわち、本実施の形態における架橋剤は、紫外線等の光を粘着剤層3に照射することで、シリコーン系粘着剤中の光感応白金(Pt)触媒が活性化された際に、シリコーン系樹脂に含まれるシリコーンガム(Galk)が有するケイ素原子結合アルケニル基に対して付加反応させ、粘着剤層3を架橋させるために用いられる。架橋剤によってシリコーン系樹脂が架橋し粘着剤層3が硬化して、架橋密度が高くなるので、粘着剤層3の凝集力が紫外線等の光を照射する前と比較して増大する。
架橋剤としては、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上のケイ素原子結合水素原子(SiH基)を有するオルガノポリシロキサン(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)が使用される。以下の説明において、ケイ素原子結合水素原子(SiH基)を有するオルガノポリシロキサンを、単にオルガノハイドロジェンポリシロキサンと表記する場合がある。
【0059】
架橋剤として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、網状が例示される。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、25℃における粘度が1mPa・s以上5,000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。なお、上記粘度はB型回転粘度計を用いて測定することができる。
【0060】
架橋剤として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、従来公知のものをいることができる。例えば、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記一般式(5)または一般式(6)で示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
【0062】
【0063】
ここで、一般式(5)、一般式(6)において、R3は、炭素数1~10の1価炭化水素基であり、bは0または1であり、pおよびqは整数であり、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度が1mPa・s以上5,000mPa・s以下となる値である。rは2以上の整数であり、sは0以上の整数であり、且つr+s≧3であり、好ましくは8≧r+s≧3である。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは2種以上の混合物であってもよい。
【0064】
R3は、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~7の1価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;及びフェニル基、及びトリル基等のアリール基、ビニル基及びアリル基等のアルケニル基が挙げられ、特に、メチル基又はフェニル基が好ましい。
【0065】
本実施の形態の粘着剤層3における架橋剤として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、シリコーンガム(Galk)のケイ素原子結合アルケニル基の含有量およびオルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するケイ素原子結合水素原子の含有量との兼ね合いで適切な範囲が変わるので、一概には言えないが、通常は、例えば、粘着剤層3を構成する粘着剤組成物に含まれるシリコーン系樹脂のケイ素原子結合アルケニル基の含有量(総量)に対する、粘着剤組成物に含まれる架橋剤のケイ素原子結合水素原子(SiH基)の含有量(総量)のモル比率が2.0以上10.0以下の範囲となる量が好ましい。
【0066】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量が上記下限値未満である場合、粘着テープ1に紫外線等の光を照射した際に、シリコーンガムが有するケイ素原子結合アルケニル基と架橋剤が有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)との間の2段階目の架橋反応(付加反応)による架橋密度の向上が不十分となり、粘着剤が硬化し難く、凝集力が向上しにくくなる。この場合、所望のタック力低下や保持力試験における破壊モードが得られず、粘着テープ1を半導体素子基板等のダイシングに使用した後、得られた半導体チップ等を粘着テープ1から剥離する際に、個片化された半導体チップのピックアップ性が悪くなるおそれや、半導体チップ等に糊残りが生じやすくなるおそれがある。
【0067】
一方、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量が上記上限値を超える場合、未反応のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが半導体チップを汚染するおそれがある。また、未反応のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)が空気中の酸素や水分と反応してSiOHに変化し、粘着剤層3の被着体に対する粘着力が大きくなって、個片化された半導体チップのピックアップ性が悪くなるおそれがある。
【0068】
本実施の形態の粘着剤層3における架橋剤の含有量は、上述したように、粘着剤層3中のシリコーン系樹脂全体におけるケイ素原子結合アルケニル基の含有量(総量)に対する架橋剤全体のケイ素原子結合水素原子(SiH基)の含有量(総量)のモル比率が上述した範囲内になるように調整すればよい。この範囲を満たす架橋剤の含有量としては、架橋剤が有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)の数によっても異なるが、例えば、粘着剤層3を構成する粘着剤組成物に含まれるシリコーン系樹脂全体の固形分100質量部に対して、架橋剤を固形分で0.20質量部以上20.00質量部以下の範囲となるように添加すればよい。
【0069】
粘着剤層3中のシリコーン系樹脂に対する架橋剤の含有量を上述した範囲とすることで、半導体チップをダイシング用粘着テープから剥離する際に、紫外線等の光を粘着剤層3に照射することで、シリコーン系粘着剤中の光感応白金(Pt)触媒が活性化され、シリコーン系樹脂中のシリコーンガム(Galk)が有するケイ素原子結合アルケニル基と当該シリコーン系樹脂に対する架橋剤が有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)との間の2段階目の架橋反応(付加反応)が促進されて、架橋密度が高くなり、粘着剤の凝集力が紫外線等の光照射前と比較して大きくなる。この結果、粘着剤層3のタック力が適切に低下し、半導体チップ等を粘着テープ1から剥離する際の良好なピックアップ性を実現できるとともに、半導体チップ等に対する糊残りを抑制することが可能となる。
【0070】
架橋剤としては、一般的に付加反応型シリコーン系粘着剤の架橋剤として使用されるもの、すなわち、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子(SiH基)を有するオルガノポリシロキサン(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、信越化学株式会社製のX-92-122(商品名)、ダウ・東レ株式会社製のBY24-741(商品名)等が挙げられる。なお、これら架橋剤が有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)の含有量が不明の場合は、該含有量は、後述する1H-NMR(核磁気共鳴)スペクトル測定の分析等により求めることができる。
【0071】
(光感応白金(Pt)触媒)
光感応白金(Pt)触媒は、紫外線等の光の照射によって、粘着剤層3を構成するシリコーン系樹脂と架橋剤との付加反応(ヒドロシリル化)による硬化を促進させるために用いられる。シリコーン系粘着剤中のシリコーンガム(Galk)が有するケイ素原子結合アルケニル基と架橋剤が有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)との付加反応による硬化を促進させるために使用できる光の波長は、240nm以上400nm以下の範囲であることが好ましい。
光感応白金(Pt)触媒としては、光感応性および反応速度が良好である点から、光活性シクロペンタジエニル白金(IV)化合物を用いることが好ましい。
【0072】
この光活性シクロペンタジエニル白金(IV)化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、(シクロペンタジエニル)ジメチルトリメチルシリルメチル白金、(シクロペンタジエニル)ジエチルトリメチルシリルメチル白金、(シクロペンタジエニル)ジプロピルトリメチルシリルメチル白金、(シクロペンタジエニル)ジイソプロピルトリメチルシリルメチル白金、(シクロペンタジエニル)ジアリルトリメチルシリルメチル白金、(シクロペンタジエニル)ジベンジルトリメチルシリルメチル白金、(シクロペンタジエニル)ジメチルトリエチルシリルメチル白金、(シクロペンタジエニル)ジメチルトリプロピルシリルメチル白金、(シクロペンタジエニル)ジメチルトリイソプロピルシリルメチル白金、(シクロペンタジエニル)ジメチルトリフェニルシリルメチル白金、(シクロペンタジエニル)ジメチルジメチルフェニルシリルメチル白金、(シクロペンタジエニル)ジメチルメチルジフェニルシリルメチル白金、(シクロペンタジエニル)ジメチルジメチル(トリメチルシロキシ)シリルメチル白金、(シクロペンタジエニル)ジメチルジメチル(ジメチルビニルシロキシ)シリルメチル白金、[(1’-ナフチル)シクロペンタジエニル]トリメチルシリルメチル白金、[(2’-ナフチル)シクロペンタジエニル]トリメチルシリルメチル白金、[1-メチル-3-(1’-ナフチル)シクロペンタジエニル]トリメチルシリルメチル白金、[1-メチル-3-(2’-ナフチル)シクロペンタジエニル]トリメチルシリルメチル白金、[(4’-ビフェニル)シクロペンタジエニル]トリメチルシリルメチル白金、[1-(4’-ビフェニル)-3-メチルシクロペンタジエニル]トリメチルシリルメチル白金、[(9’-フェナントリル)シクロペンタジエニル]トリメチルシリルメチル白金、[1-メチル-3-(9’-フェナントリル)シクロペンタジエニル]トリメチルシリルメチル白金、[1-(2’-アントラセニル)-3-メチルシクロペンタジエニル]トリメチルシリルメチル白金、[(2’-アントラセニル)シクロペンタジエニル]トリメチルシリルメチル白金、[(1’-ピレニル)シクロペンタジエニル]トリメチルシリルメチル白金、[1-メチル-3-(1’-ピレニル)シクロペンタジエニル]トリメチルシリルメチル白金等が挙げられる。
【0073】
上述した化合物中のシクロペンタジエニル環は、メチル、クロロ、フルオロ、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリフェニルシリル、フェニル、フルオロフェニル、クロロフェニル、メトキシ、ナフチル、ビフェニル、アントラセニル、ピレニル、2-ベンゾイルナフタレン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、アントラキノン、1-クロロアントラキノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、9,10-ジメチルアントラセン、9,10-ジクロロアントラセンおよびこれらの中から選択される1以上の基で置換されたシクロペンタジエニル環で置換してもよい。
また、上述した化合物において、シクロペンタジエニル環がη5-フルオレニル基に置換されていてもよい。
【0074】
上述した化合物中のシクロペンタジエニル環としては、置換されていないもの、1以上の芳香族有機基で置換されているもの、1以上の脂肪族有機基で置換されているもの、1以上の芳香族有機基と1以上の脂肪族有機基とで置換されているものが好ましい。また、シクロペンタジエニル環に置換される有機基としては、ナフチル、ビフェニル、アントラセニル、フェナントリルおよびピレニルが好ましい。
【0075】
本実施の形態の粘着剤層3における光感応白金(Pt)触媒の含有量は、紫外線等の光の照射により、シリコーン系粘着剤中のシリコーンガム(Galk)が有するケイ素原子結合アルケニル基と架橋剤が有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)との付加反応を促進することができれば、特に限定されるものではない。本実施の形態の粘着剤層3における光感応白金(Pt)触媒の含有量は、例えば、粘着剤層3を構成する粘着剤組成物中のシリコーン系樹脂全体の固形分100質量部に対して、固形分で0.10質量部以上3.00質量部以下の範囲が好ましく、0.20質量部~1.00質量部の範囲がより好ましい。光感応白金(Pt)触媒の含有量が0.10質量部未満である場合、粘着テープ1に紫外線等の光を照射した際に、シリコーンガムが有するケイ素原子結合アルケニル基と架橋剤が有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)との間の架橋反応(付加反応)が十分に進行せず、架橋密度の向上が不十分となり、粘着剤が硬化し難く、凝集力が向上しにくくなる。この場合、所望のタック力低下や保持力試験における破壊モードが得られず、粘着テープ1を半導体素子基板等のダイシングに使用した後、得られた半導体チップ等を粘着テープ1から剥離する際に、個片化された半導体チップのピックアップ性が悪くなるおそれや、半導体チップ等に糊残りが生じやすくなるおそれがある。一方、光感応白金(Pt)触媒の含有量が3.00質量部を超える場合、上記の架橋反応(付加反応)は十分に進行するため、例えば10.0質量部の含有量でも粘着テープ1の特性としては特に問題はないが、経済性の観点からは好ましくない。
【0076】
(熱重合開始剤)
本実施の形態における熱重合開始剤としては、過酸化物、より具体的には有機過酸化物が用いられる。本実施の形態における熱重合開始剤は、紫外線等の光を照射する前の粘着テープ1の粘着剤層3に対して、ダイシングの際に切断片である半導体チップ等の飛散が発生しない適切な粘着力およびタック力を付与させるために用いられる。すなわち、粘着剤層3を形成する際の加熱・乾燥工程で印加される熱により、粘着剤層3中の熱重合開始剤がラジカルを発生する。そして、該ラジカルが、主にシリコーン系樹脂中のシリコーンガム(G)のメチル基やアルケニル基の一部を攻撃しメチレン鎖を形成して、粘着剤層3を適度に架橋、硬化させる。具体的には、最初にメチル基とアルケニル基とが反応して、これと同時に、またはこれに続いて、メチル基同士や、架橋部分とメチル基との間で架橋反応が進行するものと考えられる。これにより、粘着剤層3に適度な凝集力が付与され、その結果、ダイシングの際に切断片である半導体チップ等の飛散が発生しない適切な粘着力およびタック力を安定して実現することができる。
【0077】
熱重合開始剤として用いられる過酸化物としては、分解して遊離酸素ラジカルを発生するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ジベンゾイルパーオキサイド、4,4’-ジメチルジベンゾイルパーオキサイド、3,3’-ジメチルジベンゾイルパーオキサイド、2,2’-ジメチルジベンゾイルパーオキサイド、2,2’,4,4’-テトラクロロジベンゾイルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジイソナノイルパーオキサイド等の1分間半減期温度が85℃以上135℃以下のジアシルパーオキサイド類;ジクミルパーオキサイド、t-ブチル-クミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1´-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチレンシクロヘキサン、1,3-ジ-(t-ブチルパーオキシ)-ジイソプロピルベンゼン等の1分間半減期温度が170℃~200℃のジアルキルパーオキサイド類等が挙げられる。市販品としては、例えば、ジアシルパーオキサイド類として、日油株式会社製のナイパーBMT-K40、ナイパーBW(いずれも商品名)等、ジアルキルパーオキサイド類として、日油株式会社製のパーブチルC、パークミルD、パーブチルP(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0078】
上記の過酸化物は、粘着テープ1の基材2の変形温度(耐熱性)、紫外線等の光照射前の状態におけるシリコーンガム(Galk)のアルケニル基の残存量の確保の観点から、1分間半減期温度が85℃~135℃程度であるジアシルパーオキサイド類を用いることが好ましい。すなわち、過酸化物として、ジアシルパーオキサイド類を用いた場合は、ジアルキルパーオキサイド類(1分間半減期温度が170℃~200℃程度)を用いた場合と比較して、粘着剤層3を形成する際の加熱・乾燥工程において、粘着テープ1の基材2が熱変形しにくい低い加熱温度、短い乾燥時間でも分解が可能である。さらにシリコーンガム(G)のメチル基とアルケニル基との反応よりも、シリコーンガム(G)のメチル基同士の反応の方が優先的に進行しやすく、紫外線等の光照射時に、架橋剤が有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)との付加反応(2段階目の架橋反応)により粘着剤層3の架橋密度をさらに向上させるために必要なシリコーンガム(Galk)のアルケニル基の残存量をより多く確保しておくことができる。
【0079】
粘着剤層3における上記熱重合開始剤の含有量は、加熱温度・時間、使用する有機過酸化物の分解温度(1分間半減期温度)やシリコーンガム(G)の混合比率等で異なるため、一概には言えないが、例えば、粘着剤層3中のシリコーン系樹脂全体の固形分100質量部に対して、固形分で0.10質量部以上3.00質量部以下の範囲であることが好ましく、0.50質量部以上2.00質量部以下の範囲であることがより好ましく、0.70質量部以上1.80質量部以下の範囲であることが特に好ましい。粘着剤層3における熱重合開始剤の含有量が、粘着剤層3中のシリコーン系樹脂全体の固形分100質量部に対して固形分で0.10質量部未満であると、紫外線等の光を照射する前の段階で、粘着剤層3の熱重合開始剤によるシリコーン系樹脂の架橋・硬化(1段階目の架橋反応)が不十分となる。これにより、シリコーン系樹脂全体におけるシリコーンガム(G)の比率が多い場合に、シリコーンガム(G)成分に起因して粘着剤層3が柔らかくなるおそれがある。この場合、半導体素子基板等のダイシング時に、ダイシングの振動が粘着剤層3に伝わりやすくなって振動幅が大きくなり、例えば、半導体素子基板が基準位置からずれるおそれがある。そして、これに伴って、個片化された半導体チップに欠け(チッピング)が生じるおそれや、個々の半導体チップごとに大きさのずれが生じるおそれがある。また、粘着剤層3の粘着力やタック力が低下するおそれもある。この場合、該粘着テープ1を半導体素子基板等のダイシングに使用すると、半導体素子基板等を切断する際に、切断片である半導体チップ等が粘着テープ1から剥がれて飛散しやすくなるおそれがある。
一方、熱重合開始剤の含有量が3.00質量部を超えると、紫外線等の光を照射する前の段階で、熱重合開始剤の種類や加熱温度・時間によっては、シリコーン系樹脂の架橋・硬化(1段階目の架橋反応)が熱重合開始剤により進み過ぎて、粘着剤層3が硬くなり過ぎる場合がある。この場合、粘着テープ1を半導体素子基板等のダイシングに使用すると、半導体素子基板等を切断する際に、切断片である半導体チップ等が粘着テープ1から剥がれて飛散しやすくなるおそれがある。また、熱重合開始剤そのもの、あるいは熱重合開始剤の分解生成物に由来する成分が、被着体に残存して被着体を汚染するおそれがある。
【0080】
本実施の形態のシリコーン系粘着剤層は、主成分としてシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)とが混合されたシリコーン系樹脂、シリコーン系樹脂に対する架橋剤として1分子中に少なくとも2個以上のケイ素原子結合水素原子(SiH基)を有するオルガノポリシロキサン、熱重合開始剤として過酸化物、および、光感応白金(Pt)触媒、を含む粘着剤組成物からなるものであるが、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、凝集力向上剤、補強充填剤、剥離コントロール剤等が挙げられる。
【0081】
(凝集力向上剤)
凝集力向上剤は、粘着剤層3の凝集力を向上させるために、必要に応じて用いられる。凝集力向上剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、多官能チオールが用いられる。多官能チオールからなる凝集力向上剤としては、例えば、昭和電工株式会社製のカレンズ(登録商標)MT-PE1、カレンズMT-NR1等が挙げられる。
【0082】
ただし、粘着剤層3を構成する粘着剤組成物中のシリコーン系樹脂に多官能チオールは相溶しないため、凝集力向上剤として多官能チオールを使用するためには、シリコーン系樹脂と多官能チオールとの相溶化剤を用いる必要がある。相溶化剤としては、特に限定されるものでないが、例えば、メルカプト基を有するシランカップリング剤である信越化学工業株式会社製のKBM-802、KBM-803(いずれも商品名)、ダウ・東レ株式会社製のSH6062(商品名)等が挙げられる。
粘着剤層3に凝集力向上剤を用いる場合、凝集力向上剤の添加量は、シリコーン系樹脂全体の固形分100質量部に対して、固形分で6質量部以下の範囲が好ましい。凝集力向上剤の添加量が、シリコーン系樹脂全体の固形分100質量部に対して固形分で6質量部を超える場合、相溶化剤を添加してもシリコーン系樹脂と凝集力向上剤である多官能チオールとが相分離するおそれがある。
【0083】
(補強充填剤)
補強充填剤は、粘着剤層3の強度を向上させるために、必要に応じて用いられる。補強充填剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、日本アエロジル株式会社製のアエロジル(登録商標)130、アエロジル200、アエロジル300、株式会社トクヤマ製のレオロシール(登録商標)QS-102、レオロシールQS-30、DSL.ジャパン株式会社製のカープレックス(登録商標)80、PPG製のHi-Sil(登録商標)-233-D等が挙げられる。
【0084】
(剥離コントロール剤)
剥離コントロール剤は、紫外線等の光照射後の粘着剤層3の粘着力をより低減させるために、必要に応じて用いられる。剥離コントロール剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリコーンオイル等の軽剥離添加剤が挙げられる。但し、剥離コントロール剤の添加量が多い場合、ブリードアウトにより被着体表面が汚染されるおそれがあるので、被着体表面の汚染レベルが許容できる範囲内で添加するのが好ましい。
【0085】
<粘着剤層の厚さ>
粘着剤層3の厚さは、10μm以上100μm以下の範囲が好ましく、20μm以上40μm以下の範囲がより好ましい。粘着剤層3の厚さが10μm未満の場合には、粘着剤層3に含まれるシリコーン系粘着剤の厚さが薄くなるため、粘着テープ1の粘着力が低下しやすい。一方、粘着剤層3の厚さが100μmよりも厚い場合には、粘着剤層3の凝集破壊が発生しやすくなるおそれがある。そして、粘着テープ1を半導体素子基板等のダイシングに使用した後、得られた半導体チップ等を粘着テープ1から剥離する際に、半導体チップ等に糊残りが生じやすくなるおそれがある。また、半導体素子基板等のダイシング時に、ダイシングの振動が粘着剤層3に伝わりやすくなって振動幅が大きくなり、例えば、半導体素子基板が基準位置からずれるおそれがある。そして、これに伴って、個片化された半導体チップに欠け(チッピング)が生じるおそれや、個々の半導体チップごとに大きさのずれが生じるおそれがある。
【0086】
<アンカーコート層>
上述したように、本実施の形態の粘着テープ1では、粘着テープ1の製造条件や製造後の粘着テープ1の使用条件等に応じて、基材2と粘着剤層3との間に、基材2の種類に合わせたアンカーコート層を設けたり、コロナ処理等の表面処理を施したりしてもよい。これにより、基材2と粘着剤層3との密着力を改善させることが可能になる。
【0087】
<表面処理>
基材2の表面(粘着剤層3に対向する面とは反対側の面)には、剥離性改良処理等の表面処理が施されていてもよい。基材2の表面処理に用いられる処理剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、長鎖アルキルビニルモノマー重合物、フッ化アルキルビニルモノマー重合物、ポリビニルアルコールカルバメート、アミノアルキド系樹脂等の非シリコーン系の剥離処理剤等を用いることができる。このような非シリコーン系の剥離処理剤としては、例えば、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製のピーロイル(登録商標)1050、ピーロイル1200等が挙げられる。
【0088】
<剥離ライナー>
また、粘着剤層3の表面(基材2に対向する面とは反対側の面)には、必要に応じて、剥離ライナーを設けてもよい。剥離ライナーとしては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムに、粘着剤層3に含まれるシリコーン系粘着剤との離型性を高めるための剥離処理を施したものを用いることができる。剥離ライナーの剥離処理に用いる材料としては、特に限定されないが、例えば、フロロアルキル変性シリコーン、長鎖アルキルビニルモノマー重合物、アミノアルキド系樹脂等の材料を用いることができる。
【0089】
<粘着テープの厚さ>
以上説明したような構成を有する粘着テープ1の全体としての厚さは、20μm以上200μm以下の範囲が好ましい。
粘着テープ1の厚さが20μm未満である場合、粘着テープ1を半導体素子基板等のダイシングに用いた場合に、形成された半導体チップ等を粘着テープ1から剥がし取ることが困難になる場合がある。
一方、粘着テープ1の厚さが200μmを超える場合、粘着テープ1を半導体素子基板に貼り付ける際に、粘着テープ1が半導体素子基板の貼り付け面に形成された凹凸に追従しにくくなる。この場合、粘着テープ1と半導体素子基板等との接着面積が小さくなり、ダイシングの際に半導体チップ等が飛散しやすくなるおそれがある。
【0090】
[粘着テープの製造方法]
続いて、本実施の形態の粘着テープ1の製造方法について説明する。なお、以下で説明する粘着テープ1の製造方法は一例であって、粘着テープ1の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0091】
粘着テープ1を製造する際には、まず、トルエンや酢酸エチル等の汎用の有機溶剤に、上述したシリコーン系粘着剤、架橋剤、光感応白金(Pt)触媒等の成分を溶解させ、粘着剤溶液を得る。続いて、この粘着剤溶液を、必要に応じて表面処理やアンカーコート層の形成を行った基材2の表面に、コンマコータ等を用いて予め定めた厚さになるように塗布する。
次いで、粘着剤溶液が塗布された基材2を、乾燥炉で加熱することで、粘着剤溶液を乾燥・硬化させ、粘着剤層3を形成する。加熱・乾燥の条件としては、熱重合開始剤の半減期温度等にもよるので一概にはいえないが、例えば、特開2012-107125等に開示されている条件を参照することができる。具体的には、例えば、基材2に粘着剤層3用の粘着剤溶液を塗布し、乾燥炉の前半ゾーン部において、40~90℃の温度で段階的に温度を上げて初期乾燥した後、乾燥炉の後半ゾーン部において、120~200℃の温度範囲で、1~5分間の加熱乾燥を行い、ロール状の原反として巻き取ればよいが、この限りではない。
以上の工程により、
図1に示したように、基材2の上に粘着剤層3が積層された粘着テープ1が得られる。本実施の形態では、この段階で、粘着剤層3は、熱重合開始剤によりシリコーン系樹脂の一部が架橋・硬化(1段階目の架橋反応)された状態となっている。
【0092】
[粘着テープの使用方法]
本実施の形態の粘着テープ1は、LED(Light Emitting Diode)やパワー半導体等の半導体素子を有する半導体チップの製造工程において、半導体チップの元となる半導体材料のダイシングに用いられる。
【0093】
具体的には、粘着テープ1は、樹脂やセラミック等からなる基板上にLED素子やパワー半導体素子等の半導体素子が複数形成された半導体素子基板をダイシングして、個片化された半導体チップを得るために用いられる。ここで、基板上に複数の半導体素子が形成された半導体素子基板では、通常、半導体素子を温度や湿度等の外部環境から保護するために、半導体素子を覆うように被覆材の一例としての封止樹脂が設けられる場合がある。
本実施の形態の粘着テープ1は、特に封止樹脂が設けられた半導体素子基板のダイシングにより好ましく用いることができる。
【0094】
封止樹脂が設けられた半導体素子基板を切断して複数の半導体チップを得るための方法としては、例えば以下のような方法が従来、知られている。
まず、半導体素子基板の基板側からダイシング用の粘着テープを貼り付けるとともに、ダイサー等により半導体素子基板を半導体素子が形成される側から切断する。そして、切断により形成されたそれぞれの半導体チップを粘着テープから剥がし取ることで、複数の半導体チップを得る。
【0095】
しかし、このように半導体素子基板の基板側からダイシング用の粘着テープを貼り付け半導体素子基板の切断を行った場合、切断面(半導体チップの基板側面)に欠落が生じる所謂ダレが発生したり、切断面が粗くなったりする等の課題がある。
そこで、近年では、このような課題を解決するために、半導体素子基板に対して、基板側だけでなく、半導体素子が形成される側、すなわち半導体素子を封止する封止樹脂側からダイシング用の粘着テープを貼り付けて、半導体素子基板を切断する方法が提案されている。
【0096】
ここで、LEDやパワー半導体等の半導体素子用の封止樹脂としては、従来、電気特性や耐熱性に優れるエポキシ樹脂が利用されているが、エポキシ樹脂は、高出力のLEDやパワー半導体に使用した場合、短波長のLEDに使用した場合、または半導体チップの使用環境等によって、変色しやすいという問題がある。
【0097】
これに対し、エポキシ樹脂と比較して熱や光による変色が起こりにくいという理由で、近年では、LEDやパワー半導体等の半導体素子用の封止樹脂としてシリコーン樹脂が用いられる場合が多い。より具体的には、官能基としてメチル基およびフェニル基の双方または一方を含有するシリコーン樹脂、すなわちメチル基を含有するシリコーン樹脂、フェニル基を含有するシリコーン樹脂、メチル基とフェニル基との双方を含有するシリコーン樹脂が用いられる場合が多い。
【0098】
半導体素子の封止樹脂としてシリコーン樹脂を用いることで、熱や光による封止樹脂の変色を抑制することができる。また、シリコーン樹脂は、光透過率が88%以上(波長400~800nm)と高く、屈折率を1.41以上1.57以下の範囲で調整できる。このため、半導体素子がLEDである場合、封止樹脂として、より屈折率の高いシリコーン樹脂を用いることで、LEDからの放射光を効率的にパッケージの外部に取り出すことができる。上述したシリコーン樹脂の中でも、フェニル基を含有するシリコーン樹脂を用いることで、メチル基を含有するシリコーン樹脂を用いる場合と比べて、封止材の屈折率をより高くすることができるので、更なる放射光の効率化を図ることができる。
【0099】
メチル基を含有するシリコーン樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業株式会社製のKER-2300、KER-2460、KER-2500N、KER-2600、KER-2700、KER-2900、X-32-2528(いずれも商品名)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のIVS4312、IVS4312、XE14-C2042、IVS4542、IVS4546、IVS4622、IVS4632、IVS4742、IVS4752、IVSG3445、IVSG0810、IVSG5778、XE13-C2479、IVSM4500(いずれも商品名)、ダウ・東レ株式会社製のOE-6351、OE-6336、OE-6301(いずれも商品名)等が挙げられる。
メチル基とフェニル基とを含有するシリコーン樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業株式会社製KER-6075、KER-6150、KER-6020(いずれも商品名)等が挙げられる。
フェニル基を含有するシリコーン樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、信越化学工業株式会社製KER-6110、KER-6000、KER-6200、ASP-1111、ASP-1060、ASP-1120、ASP-1050P(いずれも商品名)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のXE14-C2508(商品名)、ダウ・東レ株式会社製のOE-6520、OE-6550、OE-6631、OE-6636、OE-6635、OE-6630(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0100】
ところで、従来、半導体素子を切断するために使用されるダイシング用の粘着テープとしては、例えば粘着剤層がアクリル樹脂系の粘着剤からなる粘着テープが使用されている。
しかし、このような従来の粘着テープを、半導体素子基板の半導体素子が形成される側(封止樹脂側)から貼り付けて半導体素子基板のダイシングを行うと、例えば、封止樹脂と粘着テープとの粘着力が不十分な場合には、ダイシング時に半導体チップが飛散する等の問題が生じるおそれがある。
【0101】
特に、上述したシリコーン樹脂は、例えば封止樹脂として従来用いられるエポキシ樹脂等と比較して離型性が高い性質を有している。したがって、封止樹脂としてシリコーン樹脂を使用した半導体素子基板に対して、例えば粘着剤層がアクリル樹脂系の粘着剤からなる粘着テープを貼り付けた場合には、封止樹脂であるシリコーン樹脂と粘着テープとの接着力が小さくなりやすい。この結果、半導体素子基板のダイシングの際に半導体チップの飛散等の問題がより生じやすくなる。
【0102】
これに対し、本実施の形態の粘着テープ1は、上述したように、粘着剤層3がシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)とが適切な比率で混合され、且つ所定量のケイ素原子結合アルケニル基を有するシリコーン系樹脂と熱重合開始剤とを含む粘着剤組成物により構成されることで、粘着剤層3は、熱重合開始剤によりシリコーン系樹脂の一部が架橋・硬化(1段階目の架橋反応)された状態となっているため、半導体素子基板のダイシングを行う場合に、シリコーン樹脂からなる封止樹脂側から貼り付けて使用した場合であっても、半導体素子基板の封止樹脂に対する粘着力およびタック力を安定且つ良好に保つことができる。そして、従来の粘着テープと比較して、半導体素子基板のダイシングを行う場合に、半導体チップの飛散等の発生を抑制することができる。
一方で、粘着剤層3を構成する粘着剤組成物が上述したシリコーン系樹脂とともに光感応白金(Pt)触媒および架橋剤を含有することで、紫外線等の光を照射することによってシリコーン系樹脂中の光感応白金(Pt)触媒が活性化され、シリコーン系樹脂中のシリコーンガム(Galk)が有するケイ素原子結合アルケニル基と当該シリコーン系樹脂に対する架橋剤が有するケイ素原子結合水素原子(SiH基)との間の2段階目の架橋反応(付加反応)が促進され架橋密度が高くなるので、粘着剤の凝集力が紫外線等の光照射前と比較してさらに大きくなる。この結果、粘着剤層3のタック力が適切に低下し、さらに保持力試験における破壊モードが「界面剥離」あるいは保持力試験において「落下しない」ものとなる。これにより、半導体チップ等を粘着テープ1から剥離する際の良好なピックアップ性を実現できるとともに、半導体チップ等に対する糊残りを抑制することが可能となる。
【0103】
以下、本実施の形態の粘着テープ1の使用方法、および本実施の形態の粘着テープ1を使用した半導体チップの製造方法について、詳細に説明する。
図2(a)~(e)は、本実施の形態の粘着テープ1を使用した半導体チップの製造方法を示した図である。
なお、ここでは、粘着テープ1を用いて、半導体素子としてLED素子を有する半導体チップを製造する場合を例に挙げて説明する。また、以下で説明する方法は、粘着テープ1の使用方法、および粘着テープ1を使用した半導体チップの製造方法の一例であって、以下の方法に限定されるものではない。
【0104】
本実施の形態では、まず、例えば樹脂材料やセラミック等からなる基板101上に、複数の半導体素子102を積載し、半導体素子基板100を作製する。なお、半導体素子102は、例えばLED素子であって、図示は省略するが、例えば通電により発光する発光層等を含む複数の半導体層が積層されて構成され、上部には電極が形成されている。
次に、半導体素子基板100の基板101上に形成された複数の半導体素子を、シリコーン系樹脂からなる封止樹脂103で封止する(封止工程)。なお、この例では、複数の半導体素子102を封止樹脂103によりまとめて封止しているが、個々の半導体素子102を封止樹脂103により個別に封止してもよい。
【0105】
続いて、
図2(a)に示すように、粘着テープ1の粘着剤層3が半導体素子基板100の封止樹脂103と対向するように、粘着テープ1と半導体素子基板100とを貼り合わせる(貼付工程)。
次いで、
図2(b)、(c)に示すように、粘着テープ1と半導体素子基板100とを貼り合わせた状態で、切断予定ラインXに沿って、半導体素子基板100をダイサーなどによって切断する(切断工程)。この例では、粘着テープ1が貼り付けられた半導体素子基板100を、基板101側から切断している。また、
図2(c)に示すように、この例では、半導体素子基板100を厚さ方向に全て切り込む所謂フルカットを行っている。
【0106】
続いて、
図2(d)に示すように、半導体素子基板100に貼り付けられた粘着テープ1に対して、基材2側から紫外線等の光を照射する(照射工程)。上述したように、基材2は、紫外線等の光を透過する材質により構成されている。したがって、粘着テープ1に対して基材2側から紫外線等の光を照射することで、基材2を透過して粘着剤層3に紫外線等の光が照射されることになる。
本実施の形態の粘着テープ1では、粘着剤層3が光感応白金(Pt)触媒を有することから、粘着剤層3に紫外線等の光が照射されることで、光感応白金(Pt)触媒が活性化し、粘着剤層3におけるケイ素原子結合アルケニル基を含有するシリコーン系樹脂と架橋剤との2段階目の架橋反応(付加反応)が促進される。これにより、紫外線等の光を照射する前と比べて粘着剤層3における架橋密度、すなわち凝集力がさらに増大し、粘着剤層3のタック力が低下する。
【0107】
続いて、半導体素子基板100を切断することにより形成された半導体チップ200を、粘着テープ1から剥がし取る(ピックアップする)ことで、
図2(e)に示すように、個片化された半導体チップ200を得ることができる(剥離工程)。
【0108】
上述したように、本実施の形態の粘着テープ1は、粘着剤層3がシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)とが適切な比率で混合され、且つ所定量のケイ素原子結合アルケニル基を有するシリコーン系樹脂と熱重合開始剤とを含む粘着剤組成物により構成される。これにより、粘着テープ1をダイシングに使用する場合に、半導体素子基板100に対する粘着テープ1の粘着力およびタック力を安定且つ良好に保つことができる。
特に、近年では、半導体素子102を封止する封止樹脂103として、離型性の高いシリコーン樹脂を使用することが多い。これに対し、本実施の形態の粘着テープ1は、上述した構成を有することで、シリコーン樹脂からなる封止樹脂103に対しても良好な粘着力およびタック力を有する。
この結果、本実施の形態の粘着テープ1は、半導体素子基板100のダイシングに使用した場合に、半導体チップ200の飛散を抑制することができる。
【0109】
さらに、本実施の形態の粘着テープ1の粘着剤層3を構成するシリコーン系樹脂を含んでなる粘着剤組成物は、上述したように封止樹脂103と良好な粘着力を有する一方で、離型性が高い性質を有している。
すなわち、本実施の形態の粘着テープ1は、例えば紫外線等の光の照射により粘着剤層3中のケイ素原子結合アルケニル基を含有するシリコーン系樹脂と架橋剤との付加反応を促進する光感応白金(Pt)触媒を含んでいる。そして、切断工程の後、剥離工程の前に基材2を介して粘着剤層3に紫外線等の光を照射することで、光感応白金(Pt)触媒が活性化され、粘着剤層3においてケイ素原子結合アルケニル基を含有するシリコーン系樹脂と架橋剤との付加反応を促進させて、紫外線等の光を照射する前と比べて粘着剤層3における架橋密度をさらに高め、すなわち凝集力をさらに増大させ、粘着剤層3のタック力を低下させることができる。これにより、剥離工程において、半導体素子基板100のダイシングにより得られた半導体チップ200を粘着テープ1から剥がし取る(ピックアップする)際に、半導体チップ200に粘着剤が付着する所謂糊残りの発生を抑制することができる。また、半導体チップ200を粘着テープ1から剥離する際の良好なピックアップ性を実現できる。
【0110】
なお、上記では、基板上に複数の半導体素子が形成された半導体素子基板に対して、粘着テープ1を封止樹脂側から貼り付けてダイシングを行い、個片化された半導体チップを得る方法について説明した。しかしながら、本実施の形態の粘着テープ1の用途は、これに限定されるものではない。
本実施の形態の粘着テープ1は、例えばチップスケールパッケージLEDの製造において、複数のLED素子が被覆材の一例としての蛍光体に被覆された半導体材料をダイシングして、個片化されたチップスケールパッケージLEDを得るために用いてもよい。なお、蛍光体とは、樹脂材料やセラミック等に蛍光材料が分散された部材である。
【0111】
近年、チップスケールパッケージLEDの小型化に伴い、ダイシング時に個片化されたチップスケールパッケージLEDが飛散しやすい傾向がある。これに対し、上述した構成を有する本実施の形態の粘着テープ1を用いることで、蛍光体と粘着剤層3との接着力を良好に保つことが可能となり、個片化されたチップスケールパッケージLEDの飛散を抑制することができる。
また、ダイシング後、粘着剤層3に紫外線等の光を照射してタック力を低下させることで、粘着テープ1から個片化されたチップスケールパッケージLEDを剥離しやすくなるとともに、剥離したチップスケールパッケージLEDに対する糊残りの発生を抑制することができる。
【実施例】
【0112】
続いて、実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0113】
実施例および比較例に使用する各種の粘着剤組成物を調整するために、粘着剤組成物の主成分として下記のシリコーン系樹脂(a)~(j)、架橋剤として下記のケイ素原子結合水素原子(SiH)を有するオルガノポリシロキサン(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)(m)および(n)を用いた。
【0114】
シリコーン系樹脂(a)~(d)は、いずれもケイ素原子結合アルケニル基を含有するシリコーンガム(Galk)とシリコーンレジン(R)との混合物であり、その混合比率およびケイ素原子結合アルケニル基含有量が互いに異なる。該シリコーンガム(Galk)には、重量平均分子量(Mw)が約50万の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体を用い、該シリコーンレジン(R)には、重量平均分子量(Mw)が約5,000のR2
3SiO0.5単位(M単位)およびSiO2単位(Q単位)を有するオルガノポリシロキサン(MQレジン)を用いた。
【0115】
また、シリコーン系樹脂(e)および(f)は、ともにケイ素原子結合アルケニル基を含有するシリコーンガム(Galk)の単独物であり、ケイ素原子結合アルケニル基含有量が互いに異なる。シリコーン系樹脂(e)のシリコーンガム(Galk)には、重量平均分子量(Mw)が約30万の分子鎖両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体を用い、シリコーン系樹脂(f)のシリコーンガム(Galk)には、重量平均分子量(Mw)が約20万の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン重合体を用いた。
【0116】
さらに、シリコーン系樹脂(g)~(i)は、いずれもケイ素原子結合アルケニル基を含有しないシリコーンガム(G0)とシリコーンレジン(R)との混合物であり、混合比率が互いに異なる。該シリコーンガム(G0)には、重量平均分子量(Mw)が約50万のジメチルシロキサン重合体を用い、該シリコーンレジン(R)には、重量平均分子量(Mw)が約5,000のR2
3SiO0.5単位(M単位)およびSiO2単位(Q単位)を有するオルガノポリシロキサン(MQレジン)を用いた。
【0117】
さらにまた、シリコーン系樹脂(j)は、シリコーンレジン(R)の単独物であり、該シリコーンレジン(R)には、重量平均分子量(Mw)が約5,000のR2
3SiO0.5単位(M単位)およびSiO2単位(Q単位)を有するオルガノポリシロキサン(MQレジン)を用いた。
【0118】
・シリコーン系樹脂(a)
シリコーンガム(Galk)とシリコーンレジン(R)との混合物
(Galk)/(R)=40.0質量%/60.0質量%
アルケニル基(ビニル基)含有量:2.0×10-6mol/g
【0119】
・シリコーン系樹脂(b)
シリコーンガム(Galk)とシリコーンレジン(R)との混合物
(Galk)/(R)=35.0質量%/65.0質量%
アルケニル基(ビニル基)含有量:1.8×10-6mol/g
【0120】
・シリコーン系樹脂(c)
シリコーンガム(Galk)とシリコーンレジン(R)との混合物
(Galk)/(R)=50.0質量%/50.0質量%
アルケニル基(ビニル基)含有量:2.5×10-6mol/g
【0121】
・シリコーン系樹脂(d)
シリコーンガム(Galk)とシリコーンレジン(R)との混合物
(Galk)/(R)=70.0質量%/30.0質量%
アルケニル基(ビニル基)含有量:3.5×10-6mol/g
【0122】
・シリコーン系樹脂(e)
シリコーンガム(Galk)単体
アルケニル基(ヘキセニル基)含有量:2.0×10-4mol/g
【0123】
・シリコーン系樹脂(f)
シリコーンガム(Galk)単体
アルケニル基(ビニル基)含有量:2.7×10-3mol/g
【0124】
・シリコーン系樹脂(g)
シリコーンガム(G0)とシリコーンレジン(R)との混合物
(G0)/(R)=50.0質量%/50.0質量%
アルケニル基不含有
【0125】
・シリコーン系樹脂(h)
シリコーンガム(G0)とシリコーンレジン(R)との混合物
(G0)/(R)=40.0質量%/60.0質量%
アルケニル基不含有
【0126】
・シリコーン系樹脂(i)
シリコーンガム(G0)とシリコーンレジン(R)との混合物
(G0)/(R)=60.0質量%/40.0質量%
アルケニル基不含有
【0127】
・シリコーン系樹脂(j)
シリコーンレジン(R)単体
アルケニル基不含有
【0128】
・架橋剤(m)
オルガノハイドロジェンポリシロキサン
SiH基含有量:2.0×10-2mol/g
【0129】
・架橋剤(n)
オルガノハイドロジェンポリシロキサン
SiH基含有量:2.4×10-3mol/g
【0130】
なお、上記で用いたシリコーン系樹脂のアルケニル基含有量および架橋剤のSiH基含有量は、500MHzの1H-NMR(核磁気共鳴)スペクトルを測定することにより定量した。具体的には、上記シリコーン系樹脂の不揮発成分を、内部標準試料としてジメチルスルホキシドを含む重クロロホルムに十分に溶解させ、日本電子株式会社製NMR装置“JNM・ECA500”(製品名)を用いて1H-NMR(核磁気共鳴)スペクトルを測定した。次いで、測定スペクトルにおける内部標準試料のジメチルスルホキシドの共鳴シグナル面積(積分値)とアルケニル基の共鳴シグナル面積(積分値)を求め、その比率から、シリコーン系樹脂1g(固形分)当たりのアルケニル基の含有量を算出した。また、架橋剤のSiH基含有量についても、同様にして、1H-NMRスペクトルを測定し、測定スペクトルにおける内部標準試料のジメチルスルホキシドの共鳴シグナル面積(積分値)とSiH基の共鳴シグナル面積(積分値)を求め、その比率から、架橋剤1g(固形分)当たりのSiH基の含有量を算出した。なお、架橋剤がシリコーン系樹脂に最初から内添されている場合は、その1H-NMRスペクトルからアルケニル基とSiH基の含有量を同時に算出すればよい。
【0131】
1.粘着テープの作製
(実施例1)
<シリコーン系樹脂溶液の調製>
シリコーン系樹脂(e)とシリコーン系樹脂(g)とシリコーン系樹脂(j)とを質量比(e)/(g)/(j)が2.72/83.43/13.85となるように混合したシリコーン系樹脂(S1)をトルエンにて希釈・撹拌し、シリコーン樹脂(S1)溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。このシリコーン系樹脂(S1)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が44.4/55.6であり、アルケニル基含有量が5.4×10-6mol/gであった。ここで、シリコーンガム(G)の総質量は、「シリコーン系樹脂(e)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンガム(G0)」との合計量である。また、シリコーンレジン(R)の総質量は、「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(j)のシリコーンレジン(R)」との合計量である。
【0132】
<架橋剤溶液の調製>
続いて、架橋剤(m)と架橋剤(n)とを質量比(m)/(n)が8.82/91.18となるように混合した架橋剤(C1)をトルエンにて希釈・撹拌し、架橋剤(C1)溶液(固形分濃度20質量%)を調製した。この架橋剤(C1)は、SiH基含有量が4.0×10-3mol/gであった。
【0133】
<粘着剤溶液の作製>
続いて、上記シリコーン系樹脂(S1)溶液333.00質量部(固形分換算100質量部)に対して、架橋剤(C1)溶液3.00質量部(固形分換算0.60質量部、SiH基/アルケニル基のモル比=4.4)、日油株式会社製の有機過酸化物[(ジ-(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドの混合物]溶液“ナイパーBMT-40K(商品名、1分間半減期温度:131.1℃)”4.18質量部(固形分換算1.67質量部、固形分濃度40質量%)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合した。次いで、シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製の光感応白金(Pt)触媒“トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)”をトルエンで固形分濃度15質量%に希釈した溶液4.47質量部(固形分換算0.67質量部)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合して塗工用粘着剤溶液を作製した。
【0134】
続いて、この粘着剤溶液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材2上に塗布した。そして、基材2上に塗布した粘着剤溶液を、乾燥炉の前半部において、40~90℃の温度にて段階的に初期乾燥し、さらに、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が160℃となるゾーンで3分間乾燥させて粘着剤層3を加熱・硬化させ、乾燥後の厚さが20μmの粘着剤層3を形成した。次いで、フロロアルキル変性シリコーンで離型処理された剥離ライナーを粘着剤層3に貼合した。これにより、乾燥後の総厚が58μmの粘着テープ1を得た。
【0135】
(実施例2)
<シリコーン系樹脂溶液の調製>
シリコーン系樹脂(e)とシリコーン系樹脂(h)とシリコーン系樹脂(j)とを質量比(e)/(h)/(j)が1.19/96.99/1.82となるように混合したシリコーン系樹脂(S2)をトルエンにて希釈・撹拌し、シリコーン系樹脂(S2)溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。このシリコーン系樹脂(S2)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)の混合比率((G)/(R))が40.0/60.0であり、アルケニル基含有量が2.4×10-6mol/gであった。ここで、シリコーンガム(G)の総質量は、「シリコーン系樹脂(e)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(h)のシリコーンガム(G0)」との合計量である。また、シリコーンレジン(R)の総質量は、「シリコーン系樹脂(h)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(j)のシリコーンレジン(R)」との合計量である。
【0136】
<架橋剤溶液の調製>
続いて、架橋剤(m)と架橋剤(n)とを質量比(m)/(n)が2.83/97.17となるように混合した架橋剤(C2)をトルエンにて希釈・撹拌し、架橋剤(C2)溶液(固形分濃度20質量%)を調製した。この架橋剤(C2)は、SiH基含有量が2.9×10-3mol/gであった。
【0137】
<粘着剤溶液の作製>
続いて、上記シリコーン系樹脂(S2)溶液333.00質量部(固形分換算100質量部)に対して、架橋剤(C2)溶液4.10質量部(固形分換算0.82質量部、SiH基/アルケニル基のモル比=10.0)、日油株式会社製の有機過酸化物[(ジ-(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドの混合物]溶液“ナイパーBMT-40K(商品名、1分間半減期温度:131.1℃)”3.85質量部(固形分換算1.54質量部、固形分濃度40質量%)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合した。次いで、シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製の光感応白金(Pt)触媒“トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)”をトルエンで固形分濃度15質量%に希釈した溶液6.47質量部(固形分換算0.97質量部)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合して塗工用粘着剤溶液を作製した。
【0138】
続いて、この粘着剤溶液を、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材2上に塗布した。そして、基材2上に塗布した粘着剤溶液を、乾燥炉の前半部において、40~90℃の温度にて段階的に初期乾燥し、さらに、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が160℃となるゾーンで3分間乾燥させて粘着剤層3を加熱・硬化させ、乾燥後の厚さが10μmの粘着剤層3を形成した。次いで、フロロアルキル変性シリコーンで離型処理された剥離ライナーを粘着剤層3に貼合した。これにより、乾燥後の総厚が22μmの粘着テープ1を得た。
【0139】
(実施例3)
<シリコーン系樹脂溶液の調製>
シリコーン系樹脂(e)とシリコーン系樹脂(g)とシリコーン系樹脂(j)とを質量比(e)/(g)/(j)が2.09/87.26/10.65となるように混合したシリコーン系樹脂(S3)をトルエンにて希釈・撹拌し、シリコーン系樹脂(S3)溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。このシリコーン系樹脂(S3)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が45.7/54.3であり、アルケニル基含有量が4.2×10-6mol/gであった。ここで、シリコーンガム(G)の総質量は、「シリコーン系樹脂(e)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンガム(G0)」との合計量である。また、シリコーンレジン(R)の総質量は、「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(j)のシリコーンレジン(R)」との合計量である。
【0140】
<架橋剤溶液の調製>
続いて、架橋剤(m)と架橋剤(n)とを質量比(m)/(n)が9.63/90.37となるように混合した架橋剤(C3)をトルエンにて希釈・撹拌し、架橋剤(C3)溶液(固形分濃度20質量%)を調製した。この架橋剤(C3)は、SiH基含有量が4.1×10-3mol/gであった。
【0141】
<粘着剤溶液の作製>
続いて、上記シリコーン系樹脂(S3)溶液333.00質量部(固形分換算100質量部)に対して、架橋剤(C3)溶液2.10質量部(固形分換算0.42質量部、SiH基/アルケニル基のモル比=4.2)、日油株式会社製の有機過酸化物[(ジ-(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドの混合物]溶液“ナイパーBMT-40K(商品名、1分間半減期温度:131.1℃)”4.38質量部(固形分換算1.75質量部、固形分濃度40質量%)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合した。次いで、シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製の光感応白金(Pt)触媒“トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)”をトルエンで固形分濃度15質量%に希釈した溶液3.13質量部(固形分換算0.47質量部)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合して塗工用粘着剤溶液を作製した。
【0142】
続いて、この粘着剤溶液を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材2上に塗布した。そして、基材2上に塗布した粘着剤溶液を、乾燥炉の前半部において、40~90℃の温度にて段階的に初期乾燥し、さらに、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が160℃となるゾーンで3分間乾燥させて粘着剤層3を加熱・硬化させ、乾燥後の厚さが40μmの粘着剤層3を形成した。次いで、フロロアルキル変性シリコーンで離型処理された剥離ライナーを粘着剤層3に貼合した。これにより、乾燥後の総厚が90μmの粘着テープ1を得た。
【0143】
(実施例4)
<シリコーン系樹脂溶液の調製>
シリコーン系樹脂(b)とシリコーン系樹脂(e)とシリコーン系樹脂(g)とを質量比(b)/(e)/(g)が49.51/0.97/49.52となるように混合したシリコーン系樹脂(S4)をトルエンにて希釈・撹拌し、シリコーン系樹脂(S4)溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。このシリコーン系樹脂(S4)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が43.1/56.9であり、アルケニル基含有量が2.8×10-6mol/gであった。ここで、シリコーンガム(G)の総質量は、「シリコーン系樹脂(b)のシリコーンガム(Galk)」とシリコーン系樹脂(e)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンガム(G0)」との合計量である。また、シリコーンレジン(R)の総質量は、「シリコーン系樹脂(b)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンレジン(R)」との合計量である。
【0144】
<架橋剤溶液の調製>
続いて、架橋剤(m)と架橋剤(n)とを質量比(m)/(n)が5.50/94.50となるように混合した架橋剤(C4)をトルエンにて希釈・撹拌し、架橋剤(C4)溶液(固形分濃度20質量%)を調製した。この架橋剤(C4)は、SiH基含有量が3.4×10-3mol/gであった。
【0145】
<粘着剤溶液の作製>
続いて、上記シリコーン系樹脂(S4)溶液333.00質量部(固形分換算100質量部)に対して、架橋剤(C4)溶液1.75質量部(固形分換算0.35質量部、SiH基/アルケニル基のモル比=4.1)、日油株式会社製の有機過酸化物[(ジ-(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドの混合物]溶液“ナイパーBMT-40K(商品名、1分間半減期温度:131.1℃)”2.48質量部(固形分換算0.99質量部、固形分濃度40質量%)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合した。次いで、シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製の光感応白金(Pt)触媒“トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)”をトルエンで固形分濃度15質量%に希釈した溶液2.67質量部(固形分換算0.40質量部)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合して塗工用粘着剤溶液を作製した。
【0146】
続いて、この粘着剤溶液を、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材2上に塗布した。そして、基材2上に塗布した粘着剤溶液を、乾燥炉の前半部において、40~90℃の温度にて段階的に初期乾燥し、さらに、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が160℃となるゾーンで3分間乾燥させて粘着剤層3を加熱・硬化させ、乾燥後の厚さが20μmの粘着剤層3を形成した。次いで、フロロアルキル変性シリコーンで離型処理された剥離ライナーを粘着剤層3に貼合した。これにより、乾燥後の総厚が145μmの粘着テープ1を得た。
【0147】
(実施例5)
シリコーン系樹脂(S5)溶液を下記のように調製し、粘着剤溶液の作製において、シリコーン系樹脂(S4)溶液をシリコーン系樹脂(S5)溶液に変更し、架橋剤(C4)溶液の配合量を2.10質量部(固形分換算0.42質量部、SiH基/アルケニル基のモル比=4.1)、有機過酸化物溶液の配合量を1.93質量部(固形分換算0.77質量部)、光感応白金(Pt)触媒の溶液の配合量を3.20質量部(固形分換算0.48質量部)に変更し、粘着剤層3の乾燥後の厚さを38μmに変更した以外は、実施例4と同様にして乾燥後の総厚が58μmの粘着テープ1を得た。
【0148】
<シリコーン系樹脂溶液の調製>
シリコーン系樹脂(b)とシリコーン系樹脂(e)とシリコーン系樹脂(g)とを質量比(b)/(e)/(g)が60.37/1.18/38.45となるように混合したシリコーン系樹脂(S5)をトルエンにて希釈・撹拌し、シリコーン系樹脂(S5)溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。このシリコーン系樹脂(S5)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が41.5/58.5であり、アルケニル基含有量が3.4×10-6mol/gであった。ここで、シリコーンガム(G)の総質量は、「シリコーン系樹脂(b)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(e)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンガム(G0)」との合計量である。また、シリコーンレジン(R)の総質量は、「シリコーン系樹脂(b)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンレジン(R)」との合計量である。
【0149】
(実施例6)
シリコーン系樹脂(S6)溶液を下記のように調製し、粘着剤溶液の作製において、シリコーン系樹脂(S5)溶液をシリコーン系樹脂(S6)溶液に変更し、架橋剤(C4)溶液の配合量を1.40質量部(固形分換算0.28質量部、SiH基/アルケニル基のモル比=4.1)、有機過酸化物溶液の配合量を2.98質量部(固形分換算1.19質量部)、光感応白金(Pt)触媒の溶液の配合量を2.13質量部(固形分換算0.32質量部)に変更した以外は、実施例5と同様にして乾燥後の総厚が58μmの粘着テープ1を得た。
【0150】
<シリコーン系樹脂溶液の調製>
シリコーン系樹脂(b)とシリコーン系樹脂(e)とシリコーン系樹脂(g)とを質量比(b)/(e)/(g)が39.69/0.78/59.53となるように混合したシリコーン系樹脂(S6)をトルエンにて希釈・撹拌し、シリコーン系樹脂(S6)溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。このシリコーン系樹脂(S6)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が44.4/55.6であり、アルケニル基含有量が2.3×10-6mol/gであった。ここで、シリコーンガム(G)の総質量は、「シリコーン系樹脂(b)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(e)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンガム(G0)」との合計量である。また、シリコーンレジン(R)の総質量は、「シリコーン系樹脂(b)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンレジン(R)」との合計量である。
【0151】
(実施例7)
シリコーン系樹脂(S7)溶液を下記のように調製し、粘着剤溶液の作製において、シリコーン系樹脂(S5)溶液をシリコーン系樹脂(S7)溶液に変更し、架橋剤(C4)溶液の配合量を1.75質量部(固形分換算0.35質量部、SiH基/アルケニル基のモル比=4.0)、有機過酸化物溶液の配合量を2.48質量部(固形分換算0.99質量部)、光感応白金(Pt)触媒の溶液の配合量を2.67質量部(固形分換算0.40質量部)に変更した以外は、実施例5と同様にして乾燥後の総厚が58μmの粘着テープ1を得た。
【0152】
<シリコーン系樹脂溶液の調製>
シリコーン系樹脂(a)とシリコーン系樹脂(e)とシリコーン系樹脂(g)とを質量比(a)/(e)/(g)が49.51/0.98/49.51となるように混合したシリコーン系樹脂(S7)をトルエンにて希釈・撹拌し、シリコーン系樹脂(S7)溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。このシリコーン系樹脂(S7)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が45.5/54.5であり、アルケニル基含有量が2.9×10-6mol/gであった。ここで、シリコーンガム(G)の総質量は、「シリコーン系樹脂(a)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(e)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンガム(G0)」との合計量である。また、シリコーンレジン(R)の総質量は、「シリコーン系樹脂(a)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンレジン(R)」との合計量である。
【0153】
(実施例8)
シリコーン系樹脂(S8)溶液を下記のように調製し、粘着剤溶液の作製において、シリコーン系樹脂(S5)溶液をシリコーン系樹脂(S8)溶液に変更し、架橋剤(C4)溶液の配合量を1.40質量部(固形分換算0.28質量部、SiH基/アルケニル基のモル比=3.7)、有機過酸化物溶液の配合量を2.95質量部(固形分換算1.18質量部)、光感応白金(Pt)触媒の溶液の配合量を2.13質量部(固形分換算0.32質量部)に変更した以外は、実施例5と同様にして乾燥後の総厚が58μmの粘着テープ1を得た。
【0154】
<シリコーン系樹脂溶液の調製>
シリコーン系樹脂(c)とシリコーン系樹脂(e)とシリコーン系樹脂(h)とシリコーン系樹脂(j)とを質量比(c)/(e)/(h)/(j)が39.46/0.77/59.18/0.59となるように混合したシリコーン系樹脂(S8)をトルエンにて希釈・撹拌し、シリコーン系樹脂(S8)溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。このシリコーン系樹脂(S8)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が56.0/44.0であり、アルケニル基含有量が2.5×10-6mol/gであった。ここで、シリコーンガム(G)の総質量は、「シリコーン系樹脂(c)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(e)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(h)のシリコーンガム(G0)」との合計量である。また、シリコーンレジン(R)の総質量は、「シリコーン系樹脂(c)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(h)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(j)のシリコーンレジン(R)」との合計量である。
【0155】
(実施例9)
<シリコーン系樹脂溶液の調製>
シリコーン系樹脂(b)とシリコーン系樹脂(e)とシリコーン系樹脂(g)とシリコーン系樹脂(j)とを質量比(b)/(e)/(g)/(j)が33.14/0.07/66.29/0.50となるように混合したシリコーン系樹脂(S9)をトルエンにて希釈・撹拌し、シリコーン系樹脂(S9)溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。このシリコーン系樹脂(S9)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が44.8/55.2であり、アルケニル基含有量が7.1×10-7mol/gであった。ここで、シリコーンガム(G)の総質量は、「シリコーン系樹脂(b)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(e)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンガム(G0)」との合計量である。また、シリコーンレジン(R)の総質量は、「シリコーン系樹脂(b)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(j)のシリコーンレジン(R)」との合計量である。
【0156】
<架橋剤溶液の調製>
続いて、架橋剤(m)と架橋剤(n)とを質量比(m)/(n)が0.58/99.42となるように混合した架橋剤(C5)をトルエンにて希釈・撹拌し、架橋剤(C5)溶液(固形分濃度20質量%)を調製した。この架橋剤(C5)は、SiH基含有量が2.5×10-3mol/gであった。
【0157】
<粘着剤溶液の作製>
続いて、上記シリコーン系樹脂(S9)溶液333.00質量部(固形分換算100質量部)に対して、架橋剤(C5)溶液1.10質量部(固形分換算0.22質量部、SiH基/アルケニル基のモル比=7.8)、日油株式会社製の有機過酸化物[(ジ-(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドの混合物]溶液“ナイパーBMT-40K(商品名、1分間半減期温度:131.1℃)”2.90質量部(固形分換算1.16質量部、固形分濃度40質量%)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合した。次いで、シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製の光感応白金(Pt)触媒“トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)”をトルエンで固形分濃度15質量%に希釈した溶液1.80質量部(固形分換算0.27質量部)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合して塗工用粘着剤溶液を作製した。
【0158】
続いて、この粘着剤溶液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材2上に塗布した。そして、基材2上に塗布した粘着剤溶液を、乾燥炉の前半部において、40~90℃の温度にて段階的に初期乾燥し、さらに、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が160℃となるゾーンで3分間乾燥させて粘着剤層3を加熱・硬化させ、乾燥後の厚さが25μmの粘着剤層3を形成した。次いで、フロロアルキル変性シリコーンで離型処理された剥離ライナーを粘着剤層3に貼合した。これにより、乾燥後の総厚が63μmの粘着テープ1を得た。
【0159】
(実施例10)
<シリコーン系樹脂溶液の調製>
シリコーン系樹脂(c)とシリコーン系樹脂(e)とシリコーン系樹脂(g)とシリコーン系樹脂(j)とを質量比(c)/(e)/(g)/(j)が48.91/1.45/48.91/0.73となるように混合したシリコーン系樹脂(S10)をトルエンにて希釈・撹拌し、シリコーン系樹脂(S10)溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。このシリコーン系樹脂(S10)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が50.4/49.6であり、アルケニル基含有量が4.1×10-6mol/gであった。ここで、シリコーンガム(G)の総質量は、「シリコーン系樹脂(c)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(e)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンガム(G0)」との合計量である。また、シリコーンレジン(R)の総質量は、「シリコーン系樹脂(c)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(j)のシリコーンレジン(R)」との合計量である。
【0160】
<架橋剤溶液の調製>
続いて、架橋剤(m)と架橋剤(n)とを質量比(m)/(n)が8.04/91.9となるように混合した架橋剤(C6)をトルエンにて希釈・撹拌し、架橋剤(C6)溶液(固形分濃度20質量%)を調製した。この架橋剤(C6)は、SiH基含有量が3.8×10-3mol/gであった。
【0161】
<粘着剤溶液の作製>
続いて、上記シリコーン系樹脂(S10)溶液333.00質量部(固形分換算100質量部)に対して、架橋剤(C6)溶液1.75質量部(固形分換算0.35質量部、SiH基/アルケニル基のモル比=3.3)、日油株式会社製の有機過酸化物[(ジ-(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドの混合物]溶液“ナイパーBMT-40K(商品名、1分間半減期温度:131.1℃)”1.83質量部(固形分換算0.73質量部、固形分濃度40質量%)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合した。次いで、シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製の光感応白金(Pt)触媒“トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)”をトルエンで固形分濃度15質量%に希釈した溶液2.60質量部(固形分換算0.39質量部)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合して塗工用粘着剤溶液を作製した。
【0162】
続いて、この粘着剤溶液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材2上に塗布した。そして、基材2上に塗布した粘着剤溶液を、乾燥炉の前半部において、40~90℃の温度にて段階的に初期乾燥し、さらに、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が160℃となるゾーンで3分間乾燥させて粘着剤層3を加熱・硬化させ、乾燥後の厚さが20μmの粘着剤層3を形成した。次いで、フロロアルキル変性シリコーンで離型処理された剥離ライナーを粘着剤層3に貼合した。これにより、乾燥後の総厚が58μmの粘着テープ1を得た。
【0163】
(比較例1)
シリコーン系樹脂(S11)溶液を下記のように調製し、シリコーン系樹脂(S1)溶液をシリコーン系樹脂(S11)溶液に変更し、粘着剤溶液の作製において、架橋剤および有機過酸化物を配合せずに、光感応白金(Pt)触媒の溶液の配合量を5.33質量部(固形分換算0.80質量部)に変更し、粘着剤層3の乾燥後の厚さを35μmに変更した以外は、実施例1と同様にして乾燥後の総厚が73μmの粘着テープ1を得た。
【0164】
<シリコーン系樹脂溶液の調製>
シリコーン系樹脂(a)とシリコーン系樹脂(f)とを質量比(a)/(f)が99.90/0.10となるように混合したシリコーン系樹脂(S11)をトルエンにて希釈・撹拌し、シリコーン系樹脂(S11)溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。このシリコーン系樹脂(S11)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が40.1/59.9であり、アルケニル基含有量が4.7×10-6mol/gであった。ここで、シリコーンガム(G)の総質量は、「シリコーン系樹脂(a)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(f)のシリコーンガム(Galk)」との合計量である。また、シリコーンレジン(R)の総質量は、シリコーン系樹脂(a)のシリコーンレジン(R)の量である。
【0165】
(比較例2)
<シリコーン系樹脂溶液の調製>
シリコーン系樹脂(b)とシリコーン系樹脂(e)とシリコーン系樹脂(g)とを質量比(b)/(e)/(g)が49.28/1.45/49.28となるように混合したシリコーン系樹脂(S12)をトルエンにて希釈・撹拌し、シリコーン系樹脂(S12)溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。このシリコーン系樹脂(S12)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が43.3/56.7であり、アルケニル基含有量が3.8×10-6mol/gであった。ここで、シリコーンガム(G)の総質量は、「シリコーン系樹脂(b)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(e)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンガム(G0)」との合計量である。また、シリコーンレジン(R)の総質量は、「シリコーン系樹脂(b)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(g)のシリコーンレジン(R)」との合計量である。
【0166】
<架橋剤溶液の調製>
続いて、実施例10と同様にして、架橋剤(C6)溶液(固形分濃度20質量%)を調製した。
【0167】
<粘着剤溶液の作製>
続いて、上記シリコーン系樹脂(S12)溶液333.00質量部(固形分換算100質量部)に対して、架橋剤(C6)溶液1.75質量部(固形分換算0.35質量部、SiH基/アルケニル基のモル比=3.6)、日油株式会社製の有機過酸化物[(ジ-(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドの混合物]溶液“ナイパーBMT-40K(商品名、1分間半減期温度:131.1℃)”2.48質量部(固形分換算0.99質量部、固形分濃度40質量%)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合した。次いで、ダウ・東レ株式会社製白金(Pt)金属系触媒“NC-25”(商品名、固形分濃度25質量%)の溶液2.96質量部(固形分換算0.74質量部)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合して塗工用粘着剤溶液を作製した。
【0168】
続いて、この粘着剤溶液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材2上に塗布した。そして、基材2上に塗布した粘着剤溶液を、乾燥炉の前半部において、40~90℃の温度にて段階的に初期乾燥し、さらに、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が160℃となるゾーンで3分間乾燥させて粘着剤層3を加熱・硬化させ、乾燥後の厚さが20μmの粘着剤層3を形成した。次いで、フロロアルキル変性シリコーンで離型処理された剥離ライナーを粘着剤層3に貼合した。これにより、乾燥後の総厚が58μmの粘着テープ1を得た。
【0169】
(比較例3)
<シリコーン系樹脂溶液の調製>
シリコーン系樹脂(e)とシリコーン系樹脂(h)とを質量比(e)/(h)が0.26/99.74となるように混合したシリコーン系樹脂(S13)をトルエンにて希釈・撹拌し、シリコーン系樹脂(S13)溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。このシリコーン系樹脂(S13)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が40.2/59.8であり、アルケニル基含有量が5.2×10-7mol/gであった。ここで、シリコーンガム(G)の総質量は、「シリコーン系樹脂(e)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(h)のシリコーンガム(G0)」との合計量である。また、シリコーンレジン(R)の総質量は、シリコーン系樹脂(h)のシリコーンレジン(R)の量である。
【0170】
<架橋剤溶液の調製>
続いて、架橋剤(m)と架橋剤(n)とを質量比(m)/(n)が1.15/98.85となるように混合した架橋剤(C7)をトルエンにて希釈・撹拌し、架橋剤(C7)溶液(固形分濃度20質量%)を調製した。この架橋剤(C7)は、SiH基含有量が2.6×10-3mol/gであった。
【0171】
<粘着剤溶液の作製>
続いて、上記シリコーン系樹脂(S13)溶液333.00質量部(固形分換算100質量部)に対して、架橋剤(C7)溶液2.20質量部(固形分換算0.44質量部、SiH基/アルケニル基のモル比=22.2)、日油株式会社製の有機過酸化物[(ジ-(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドの混合物]溶液“ナイパーBMT-40K(商品名、1分間半減期温度:131.1℃)”4.98質量部(固形分換算1.99質量部、固形分濃度40質量%)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合した。次いで、シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製の光感応白金(Pt)触媒“トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)”をトルエンで固形分濃度15質量%に希釈した溶液3.53質量部(固形分換算0.53質量部)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合して塗工用粘着剤溶液を作製した。
【0172】
続いて、この粘着剤溶液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材2上に塗布した。そして、基材2上に塗布した粘着剤溶液を、乾燥炉の前半部において、40~90℃の温度にて段階的に初期乾燥し、さらに、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が160℃となるゾーンで3分間乾燥させて粘着剤層3を加熱・硬化させ、乾燥後の厚さが20μmの粘着剤層3を形成した。次いで、フロロアルキル変性シリコーンで離型処理された剥離ライナーを粘着剤層3に貼合した。これにより、乾燥後の総厚が58μmの粘着テープ1を得た。
【0173】
(比較例4)
<シリコーン系樹脂溶液の調製>
シリコーン系樹脂(e)とシリコーン系樹脂(i)とシリコーン系樹脂(j)とを質量比(e)/(i)/(j)が4.67/79.44/15.89となるように混合したシリコーン系樹脂(S14)をトルエンにて希釈・撹拌し、シリコーン樹脂(S14)溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。このシリコーン系樹脂(S14)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が52.3/47.7であり、アルケニル基含有量が9.4×10-6mol/gであった。ここで、シリコーンガム(G)の総質量は、「シリコーン系樹脂(e)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(i)のシリコーンガム(G0)」との合計量である。また、シリコーンレジン(R)の総質量は、「シリコーン系樹脂(i)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(j)のシリコーンレジン(R)」との合計量である。
【0174】
<架橋剤溶液の調製>
続いて、架橋剤(m)と架橋剤(n)とを質量比(m)/(n)が14.88/85.12となるように混合した架橋剤(C8)をトルエンにて希釈・撹拌し、架橋剤(C8)溶液(固形分濃度20質量%)を調製した。この架橋剤(C8)は、SiH基含有量が5.0×10-3mol/gであった。
【0175】
<粘着剤溶液の作製>
続いて、上記シリコーン系樹脂(S14)溶液333.00質量部(固形分換算100質量部)に対して、架橋剤(C8)溶液3.10質量部(固形分換算0.62質量部、SiH基/アルケニル基のモル比=3.3)、日油株式会社製の有機過酸化物[(ジ-(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドの混合物]溶液“ナイパーBMT-40K(商品名、1分間半減期温度:131.1℃)”1.20質量部(固形分換算0.48質量部、固形分濃度40質量%)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合した。次いで、シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製の光感応白金(Pt)触媒“トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)”をトルエンで固形分濃度15質量%に希釈した溶液4.27質量部(固形分換算0.64質量部)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合して塗工用粘着剤溶液を作製した。
【0176】
続いて、この粘着剤溶液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材2上に塗布した。そして、基材2上に塗布した粘着剤溶液を、乾燥炉の前半部において、40~90℃の温度にて段階的に初期乾燥し、さらに、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が160℃となるゾーンで3分間乾燥させて粘着剤層3を加熱・硬化させ、乾燥後の厚さが20μmの粘着剤層3を形成した。次いで、フロロアルキル変性シリコーンで離型処理された剥離ライナーを粘着剤層3に貼合した。これにより、乾燥後の総厚が58μmの粘着テープ1を得た。
【0177】
(比較例5)
<シリコーン系樹脂溶液の調製>
シリコーン系樹脂(b)とシリコーン系樹脂(e)とシリコーン系樹脂(h)とシリコーン系樹脂(j)とを質量比(b)/(e)/(h)/(j)が47.29/0.69/47.29/4.73となるように混合したシリコーン系樹脂(S15)をトルエンにて希釈・撹拌し、シリコーン系樹脂(S15)溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。このシリコーン系樹脂(S15)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が36.2/63.8であり、アルケニル基含有量が2.3×10-6mol/gであった。ここで、シリコーンガム(G)の総質量は、「シリコーン系樹脂(b)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(e)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(h)のシリコーンガム(G0)」との合計量である。また、シリコーンレジン(R)の総質量は、「シリコーン系樹脂(b)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(h)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(j)のシリコーンレジン(R)」との合計量である。
【0178】
<架橋剤溶液の調製>
続いて、架橋剤(m)と架橋剤(n)とを質量比(m)/(n)が4.19/95.81となるように混合した架橋剤(C9)をトルエンにて希釈・撹拌し、架橋剤(C9)溶液(固形分濃度20質量%)を調製した。この架橋剤(C9)は、SiH基含有量が3.1×10-3mol/gであった。
【0179】
<粘着剤溶液の作製>
続いて、上記シリコーン系樹脂(S15)溶液333.00質量部(固形分換算100質量部)に対して、架橋剤(C9)溶液1.65質量部(固形分換算0.33質量部、SiH基/アルケニル基のモル比=4.4)、日油株式会社製の有機過酸化物[(ジ-(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドの混合物]溶液“ナイパーBMT-40K(商品名、1分間半減期温度:131.1℃)”2.38質量部(固形分換算0.95質量部、固形分濃度40質量%)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合した。次いで、ダウ・東レ株式会社製白金(Pt)金属系触媒“NC-25”(商品名、固形分濃度25質量%)の溶液2.53質量部(固形分換算0.38質量部)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合して塗工用粘着剤溶液を作製した。
【0180】
続いて、この粘着剤溶液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材2上に塗布した。そして、基材2上に塗布した粘着剤溶液を、乾燥炉の前半部において、40~90℃の温度にて段階的に初期乾燥し、さらに、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が160℃となるゾーンで3分間乾燥させて粘着剤層3を加熱・硬化させ、乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層3を形成した。次いで、フロロアルキル変性シリコーンで離型処理された剥離ライナーを粘着剤層3に貼合した。これにより、乾燥後の総厚が68μmの粘着テープ1を得た。
【0181】
(比較例6)
<シリコーン系樹脂溶液の調製>
シリコーン系樹脂(d)とシリコーン系樹脂(e)とシリコーン系樹脂(i)とを質量比(d)/(e)/(i)が49.28/1.45/49.28となるように混合したシリコーン系樹脂(S16)をトルエンにて希釈・撹拌し、シリコーン系樹脂(S16)溶液(固形分濃度30質量%)を調製した。このシリコーン系樹脂(S16)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が65.5/34.5であり、アルケニル基含有量が4.6×10-6mol/gであった。ここで、シリコーンガム(G)の総質量は、「シリコーン系樹脂(d)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(e)のシリコーンガム(Galk)」と「シリコーン系樹脂(i)のシリコーンガム(G0)」との合計量である。また、シリコーンレジン(R)の総質量は、「シリコーン系樹脂(d)のシリコーンレジン(R)」と「シリコーン系樹脂(i)のシリコーンレジン(R)」との合計量である。
【0182】
<架橋剤溶液の調製>
続いて、実施例10と同様にして、架橋剤(C6)溶液(固形分濃度20質量%)を調製した。
【0183】
<粘着剤溶液の作製>
続いて、上記シリコーン系樹脂(S16)溶液333.00質量部(固形分換算100質量部)に対して、架橋剤(C6)溶液1.75質量部(固形分換算0.35質量部、SiH基/アルケニル基のモル比=2.9)、日油株式会社製の有機過酸化物[(ジ-(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドの混合物]溶液“ナイパーBMT-40K(商品名、1分間半減期温度:131.1℃)”2.48質量部(固形分換算0.99質量部、固形分濃度40質量%)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合した。次いで、ダウ・東レ株式会社製白金(Pt)金属系触媒“NC-25”(商品名、固形分濃度25質量%)の溶液2.60質量部(固形分換算0.39質量部)をディスパーにて配合し、均一に撹拌・混合して塗工用粘着剤溶液を作製した。
【0184】
続いて、この粘着剤溶液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材2上に塗布した。そして、基材2上に塗布した粘着剤溶液を、乾燥炉の前半部において、40~90℃の温度にて段階的に初期乾燥し、さらに、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が160℃となるゾーンで3分間乾燥させて粘着剤層3を加熱・硬化させ、乾燥後の厚さが20μmの粘着剤層3を形成した。次いで、フロロアルキル変性シリコーンで離型処理された剥離ライナーを粘着剤層3に貼合した。これにより、乾燥後の総厚が58μmの粘着テープ1を得た。
【0185】
実施例1~10、および比較例1~6で作製した粘着テープ1における層構成および粘着剤層3の組成を、表1~表3に示す。
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
2.評価方法
続いて、粘着テープ1の評価方法について説明する。
(1)粘着力試験(UV照射前)
実施例1~10および比較例1~6で作製した粘着テープ1について、粘着テープ・粘着シート試験方法(JIS Z 0237(2009))に記載された方法に準拠して、対BA-SUS粘着力試験(引き剥がし粘着力試験)を行った。
具体的には、剥離ライナーを剥がした粘着テープ1をブライトアニール(BA)処理した表面粗さ(Ra)が50±25nmのステンレス板(SUS304)に貼り付け、質量2000gのローラを5mm/sの速度で1往復させて、圧着した。続いて、20~40分放置した後、引張試験機を用いて、ステンレス板に対して180°方向へ5mm/sの速度で引き剥がし、研磨SUS板に対する粘着力を測定した。
なお、粘着力試験は、紫外線(UV)を照射する前の粘着テープ1に対して行った。また、粘着力試験の結果としては、粘着テープ1を半導体材料のダイシングに用いる場合の固定力を考慮すると、2.4N/10mm以上であることが好ましく、ダイシングにより個片化された半導体チップ等のピックアップ性の観点から、5.5N/10mm以下であることが好ましい。より好ましくは、2.8N/10mm以上、5.5N/10mm以下である。
【0190】
(2)ボールタック試験
(2-1)初期(UV照射前)ボールタックの測定
実施例1~10および比較例1~6で作製したUVを照射する前の粘着テープ1について、粘着テープ・粘着シート試験方法(JIS Z 0237(2009))に記載された方法に準拠して、ボールタック試験を行った。
【0191】
(2-2)UV照射後ボールタックの測定
実施例1~10および比較例1~6で作製したそれぞれの粘着テープ1の基材側からUVを照射し、温度23℃、湿度50±5%RHの条件下で20~40分放置した後、それぞれの粘着テープ1の剥離ライナーを剥がし、粘着テープ・粘着シート試験方法(JIS Z 0237(2009))に記載された方法に準拠して、初期(UV照射前)ボールタックと同様にして、ボールタック試験を行った。
UVの照射は、高圧水銀ランプを用い、波長365nmのUVが積算光量で1200mJ/cm2になるよう調整し照射した。なお、積算光量を3000mJ/cm2とした場合のボールタックについても同様に測定したが、積算光量を1200mJ/cm2とした場合との差が見られなかったため、ここでは、積算光量を1200mJ/cm2として評価を行った。
【0192】
ボールタック試験の結果としては、ダイシングにより個片化された半導体チップ等のピックアップ性を考慮すると、初期(UV照射前)ボールタック(ボールNo.)と比べてUV照射後ボールタック(ボールNo.)が低いことが好ましい。すなわち、UV照射前のボールナンバーの値をBN0、UV照射後のボールナンバーの値をBN1とした場合に、BN0>BN1の関係であることが好ましい。この関係は、UV照射により粘着剤層3の2段階目の架橋反応が促進され、凝集力がUV照射前よりも増大したことを意味する。
【0193】
(3)保持力試験
(3-1)初期(UV照射前)保持力の測定
実施例1~10および比較例1~6で作製したUVを照射する前の粘着テープ1について、粘着テープ・粘着シート試験方法(JIS Z 0237(2009))に記載された方法に準拠して、保持力試験を行った。
具体的には、それぞれの粘着テープ1の剥離ライナーを剥がし、粘着剤層3を、耐水研磨紙で研磨したステンレス板(SUS304)に貼り付け、所定の重りを取り付けた状態で温度40℃、湿度33%RHの条件下で保持し、粘着テープ1がステンレス板から剥離して落下するまでの経過時間(落下時間(分))を測定した。さらに、粘着テープ1がステンレス板から剥離した際の破壊モード(粘着剤層3とステンレス板との間の破壊モードが界面剥離であるか凝集破壊であるか)を観察した。なお、保持力試験における落下時間の測定は、2880分まで行った。また、後述する表4~表6に示す保持力試験の結果として、落下時間(分)および粘着テープ1の破壊モードを示している。
【0194】
(3-2)UV照射後保持力の測定
上述したUV照射後のボールタックの測定に記載した条件と同様にして、粘着テープ1にUVを照射し、放置した後、初期保持力と同様にして保持力試験を行った。
【0195】
(3-3)保持力と破壊モードとの関係について
ここで、粘着テープ1の保持力と破壊モードとの関係について説明する。
図3は、粘着剤層3におけるシリコーン系樹脂の架橋密度と、粘着テープ1の保持力試験の結果(落下時間)との関係を示した模式図である。
図3に示すように、粘着テープ1では、粘着剤層3におけるシリコーン系樹脂の架橋密度が高くなるに従い、保持力試験による粘着テープ1のステンレス板に対する破壊モードが、[粘着剤層3の凝集破壊(落下)]→[保持(落下しない)]→[粘着剤層3とステンレス板との界面剥離(落下)]へと変化する。
【0196】
また、
図3に示すように、粘着テープ1の破壊モードが凝集破壊である領域では、粘着テープ1の保持力(落下時間)は、粘着剤層3におけるシリコーン系樹脂の架橋密度が高くなるに従い上昇する。
一方、
図3に示すように、粘着テープ1の破壊モードが界面剥離である領域では、粘着テープ1の保持力(落下時間)は、粘着剤層3におけるシリコーン系樹脂の架橋密度が高くなるに従い低下する。これは、シリコーン系樹脂の架橋密度が高くなるに従って粘着剤層3の凝集力が上昇し、粘着テープ1の粘着力が低下して、結果として粘着テープがステンレス板から剥離して落下しやすくなるためであると推測される。
【0197】
保持力試験の結果としては、少なくともUV照射後の破壊モードが保持または界面剥離であることが好ましく、少なくともUV照射後の破壊モードが界面剥離であることがより好ましく、初期(UV照射前)およびUV照射後の破壊モードがともに界面剥離であることがさらに好ましい。また、初期(UV照射前)とUV照射後の破壊モードがともに界面剥離である場合には、落下時間は、初期(UV照射前)においては、粘着テープ1を半導体材料のダイシングに用いる場合の固定力の観点から、できるだけ長い、あるいは落下しないことが好ましく、UV照射後においては、ダイシングにより個片化された半導体チップ等のピックアップ性の観点から、初期(UV照射前)と比べて短いことが好ましい。
この場合、粘着テープ1を半導体素子基板等のダイシングに使用した後、得られた半導体チップ等を粘着テープ1から剥離する際に、粘着テープ1にUV照射することにより半導体チップ等に糊残りが生じにくくなる。
【0198】
(4)対シリコーン樹脂糊残り試験
実施例1~10および比較例1~6で作製した粘着テープ1について、シリコーン樹脂に対する糊残り試験を行った。
まず、LEDデバイス用シリコーン樹脂であるメチル基を含有するシリコーン樹脂(信越化学工業株式会社製KER-2500N(商品名))のA剤とB剤とを混合比1:1で混合して混合液を作製した。この混合液を、ステンレス板に塗布し、100℃×1時間、さらに150℃×2時間の条件で加熱し硬化させて、シリコーン試験片Aを作製した。
同様に、LEDデバイス用シリコーン樹脂であるフェニル基を含有するシリコーン樹脂(信越化学工業株式会社製のKER-6110(商品名))のA剤とB剤とを混合比3:7で混合して混合液を作製した。この混合液を、ステンレス板に塗布し、100℃×2時間、さらに150℃×5時間の条件で加熱し硬化させて、シリコーン試験片Bを作製した。
【0199】
続いて、粘着テープ1の剥離ライナーを剥がし、粘着剤層3を、シリコーン試験片A、Bにそれぞれ貼り付け、質量2000gのローラを5mm/sの速度で1往復させて、圧着した。続いて、UV照射後のボールタックの測定に記載した条件と同様にして、粘着テープ1の基材2側からUVを照射した後、温度40℃、湿度90%RHの環境下に120時間放置した。その後、室温にし、粘着テープ1を、シリコーン試験片A、Bに対して90°方向へ800mm/s~1200mm/sの速度で引き剥がし、シリコーン試験片A、Bに対する糊残りを目視で確認した。
【0200】
(5)対エポキシ樹脂糊残り試験
実施例1~10および比較例1~6で作製した粘着テープ1について、エポキシ樹脂に対する糊残り試験を行った。
ガラスクロス基材にエポキシ樹脂を含侵させたエポキシ樹脂板(日光化成株式会社製NL-EG-23(商品名))からなるエポキシ試験片に対して、剥離ライナーを剥がした粘着テープ1の粘着剤層3を貼り付け、質量2000gのローラを5mm/sの速度で1往復させて、圧着した。続いて、UV照射後のボールタックの測定に記載した条件と同様にして、粘着テープ1の基材2側からUVを照射した後、温度40℃、湿度90%RHの環境下に120時間放置した。その後、室温にし、粘着テープ1を、エポキシ試験片に対して90°方向へ800mm/s~1200mm/sの速度で引き剥がし、エポキシ試験片に対する糊残りを目視で確認した。
【0201】
対シリコーン樹脂糊残り試験、および対エポキシ樹脂糊残り試験は、以下の判断基準で評価を行った。なお、AまたはBの評価を合格とした。
A:試験片の単位面積当たり100%の範囲で糊残りなし
B:試験片の単位面積当たり2%未満の範囲で糊残りが見られる
C:試験片の単位面積当たり2%以上5%未満の範囲で糊残りが見られる
D:試験片の単位面積当たり5%以上の範囲で糊残りが見られる、または、試験片のエッジ部分に糊残りが見られる
【0202】
(6)ダイシング試験
実施例1~10および比較例1~6で作製した粘着テープ1について、ダイシング試験を行った。
具体的には、まず、モールド用エポキシ樹脂(日立化成株式会社製CEL-400ZHF40-W75G(商品名))を金型に入れ、封止圧力50kgf/cm2(491N/cm2)、封止材の厚さ0.3mm、加熱温度150℃×300秒の条件で加熱硬化させ、円板状(直径200mm(8インチ))のダイシング試験片を作製した。
続いて、剥離ライナーを剥がした粘着テープ1の粘着剤層3をダイシング用リングに貼り付け、リングからはみ出した部分を切り取った後、さらにフッ素系剥離フィルム(ニッパ株式会社製SS1A(商品名)、厚さ75μm)に貼り合わせた。続いて、質量2000gのローラを往復させて、粘着テープ1とリング部分とを圧着した。続いて、フッ素系剥離フィルムを剥がし、リング中央部分の粘着剤層3にダイシング試験片を貼り合わせ、圧着した。
【0203】
さらに、東京精密株式会社製ダイシング装置(A-WD-100A(商品名))を用いて、株式会社ディスコ製のダイシングブレードにて、ダイシング試験片を粘着テープ1とともに10mm×10mmのチップに切断した。この際、飛散したチップの個数を計測し、ダイシング試験における固定力の評価を行った。
続いて、10mm×10mmに個片化したチップに貼り付けられた粘着テープ1に対して、UV照射後ボールタックの測定に記載した条件と同様にして、UVを照射した。その後、粘着テープ1から個片化したチップをピックアップし、チップへの糊残りの有無を目視で確認して、ダイシング試験における糊残りの評価を行った。また、チップをピックアップした際に、ピックアップに失敗したチップの個数を計測して、ダイシング試験におけるピックアップ性の評価を行った。
【0204】
ダイシング試験における固定力は、以下の判断基準で評価を行った。なお、AまたはBの評価を合格とした。
A:飛散したチップの数が100個中0個で、チップの欠けが認められない
B:飛散したチップの数が100個中1個で、チップの欠けが認められない
C:飛散したチップの数が100個中2個で、チップの欠けが認められない
D:飛散したチップの数が100個中3個以上、あるいはチップの欠けが認められる
【0205】
ダイシング試験における糊残りは、以下の判断基準で評価を行った。なお、Aの評価を合格とした。
A:チップに糊残りが見られない
D:チップに糊残りが見られる、またはチップの側面に粘着剤の糸曳が見られる
【0206】
ダイシング試験におけるピックアップ性は、以下の判断基準で評価を行った。なお、AまたはBの評価を合格とした。
A:ピックアップに失敗したチップの個数が100個中0個
B:ピックアップに失敗したチップの個数が100個中1個
C:ピックアップに失敗したチップの個数が100個中2個
D:ピックアップに失敗したチップの個数が100個中3個以上
【0207】
3.試験結果
実施例1~10、および比較例1~6の粘着テープ1に対する評価結果について、表4~6に示す。
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
表4、5に示すように、粘着剤層が、本発明の要件を満足する実施例1~10の粘着テープ1では、粘着力試験、ボールタック試験、保持力試験、対シリコーン樹脂糊残り試験、対エポキシ樹脂糊残り試験、およびダイシング試験(固定力、糊残りおよびピックアップ性)のいずれにおいても好ましい結果が得られることが確認された。
【0212】
これにより、実施例1~10の粘着テープ1は、半導体材料のダイシング用粘着テープ、より具体的には、半導体素子基板の封止樹脂側から貼り付けてダイシングに使用するダイシング用粘着テープとして有用であることが確認された。
【0213】
中でも、シリコーン系樹脂全体におけるケイ素原子結合アルケニル基の含有量が、2.9×10-6mol/g以上4.1×10-6mol/g以下の範囲である実施例5、7および10の粘着テープ1は、他の実施例の粘着テープ1と比べて、全ての試験項目において評価結果が良好であった。なお、この実施例5、7および10のシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))は、41.5/58.5~50.4/49.6の範囲であった。
【0214】
これに対し、表6に示すように、粘着剤層3が本発明の要件を満たさない比較例1~6の粘着テープ1は、対シリコーン樹脂糊残り試験、対エポキシ樹脂糊残り試験、およびダイシング試験(固定力、糊残りおよびピックアップ性)において、いずれかの試験結果が実施例1~10より劣る結果であることが確認された。
【0215】
具体的には、粘着剤層3が架橋剤および熱重合開始剤を含まない比較例1の粘着テープ1では、加熱あるいはUV照射を施してもシリコーン系樹脂の架橋反応が起こらないため、UV照射前後で、ボールタック試験および保持力試験の結果には変化は見られず、凝集力が不足していた。そのため、実用性確認のための対シリコーン樹脂糊残り試験および対エポキシ樹脂糊残り試験および対エポキシ樹脂糊残り試験において、糊残りが多く見られた。また、ダイシング試験においては、上述のようにUV照射後の凝集力の増大が認められなかったので、ダイシンング試験片のチップのピックアップ性が劣り、チップに糊残りが見られた。
【0216】
また、粘着剤層3が光感応白金(Pt)触媒を含まず、通常の白金(Pt)触媒を含む比較例2の粘着テープ1では、UV照射前の初期においては、凝集力は増大するが、UV照射を施しても凝集力が増大することはなく、UV照射前後で、ボールタック試験および保持力試験の結果には変化は見られなかった。そのため、対シリコーン樹脂糊残り試験および対エポキシ樹脂糊残り試験において、糊残りが多く見られた。また、ダイシング試験においても、ダイシンング試験片のチップのピックアップ性がやや劣り、チップに糊残りがやや多く見られた。
【0217】
さらに、粘着剤層3中のシリコーン系樹脂におけるケイ素原子結合アルケニル基の含有量が、本発明の要件の下限値未満である比較例3の粘着テープ1では、UV照射前後で、ボールタック試験および保持力試験の結果には変化は見られず、UV照射による粘着剤層3の凝集力の増大効果が不十分であった。そのため、対シリコーン樹脂糊残り試験および対エポキシ樹脂糊残り試験において、糊残りが多く見られた。また、ダイシング試験においても、ダイシンング試験片のチップのピックアップ性が劣り、チップに糊残りが見られた。
【0218】
さらにまた、粘着剤層3中のシリコーン系樹脂におけるケイ素原子結合アルケニル基の含有量が、本発明の要件の上限値を超える比較例4の粘着テープ1では、ダイシング試験において、ダイシング試験片の固定力が低く、ダイシング時にチップの飛散が多く見られた。これは、UV照射前の段階、すなわち、粘着剤層3を基材2上に形成するための加熱・乾燥工程で、既に粘着剤層3中のシリコーン系樹脂のシリコーンガム(G)の架橋反応が熱重合開始剤により進行し、硬化して硬くなり過ぎたためと推測される。なお、対シリコーン樹脂糊残り試験および対エポキシ樹脂糊残り試験において糊残りは見られなかった。また、ダイシング試験においても、飛散しなかったチップについては、糊残りは見られなかった。
【0219】
さらにまた、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が本発明の要件の下限値未満である比較例5の粘着テープ1では、粘着剤層3の架橋にほとんど寄与しないシリコーンレジン(R)が多いので、UV照射による粘着剤層3の凝集力の増大効果が不十分であった。そのため、対シリコーン樹脂糊残り試験および対エポキシ樹脂糊残り試験において、糊残りがやや多く見られた。また、ダイシング試験においても、ダイシンング試験片のチップのピックアップ性がやや劣り、チップに糊残りがやや多く見られた。
【0220】
さらにまた、粘着剤層3中のシリコーン系樹脂におけるシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)との混合比率((G)/(R))が、本発明の要件の上限値を超える比較例6の粘着テープ1では、ダイシング試験において、ダイシング試験片の固定力が低く、ダイシング時にチップの飛散が多く見られた。これは、UV照射前の段階、すなわち、粘着剤層3を基材2上に形成するための加熱・乾燥工程で、既に粘着剤層3中のシリコーン系樹脂のシリコーンガム(G)の架橋反応が熱重合開始剤により進行し、硬化して硬くなり過ぎたためと推測される。なお、対シリコーン樹脂糊残り試験および対エポキシ樹脂糊残り試験において糊残りは見られなかった。また、ダイシング試験においても、飛散しなかったチップについては、糊残りは見られなかった。
【符号の説明】
【0221】
1…粘着テープ、2…基材、3…粘着剤層、100…半導体素子基板、101…基板、102…半導体素子、103…封止樹脂、200…半導体チップ