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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】吸着材の合成
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/14 20060101AFI20241015BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20241015BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
C01B39/14
B01J20/18 A
B01J20/30
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021571791
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 AU2020050457
(87)【国際公開番号】W WO2020243770
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】2019901952
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521526225
【氏名又は名称】ゼオテック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ZEOTECH LIMITED
【住所又は居所原語表記】Level 4, 216 St Georges Terrace, Perth, Western Australia, Australia
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーン ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ペン ホン
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101618880(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108483460(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1124716(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109279633(CN,A)
【文献】特開2009-227484(JP,A)
【文献】特開昭61-222919(JP,A)
【文献】特開昭53-043098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/14
B01J 20/18
B01J 20/30
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライトLTAを生成するためのプロセスであって、
a)粘土材料を焼成して、前記粘土材料中の粘土成分からアモルファス材料を形成することと、
b)70℃以下の浸出溶液中でステップ(a)からの前記アモルファス材料を浸出させて、溶解したアルミニウムおよび溶解したシリカならびに固体残留物を含有する溶液を生成することと、
c)前記溶液から前記固体残留物を分離することと、
d)ステップ(c)からの前記溶液からゼオライトLTAを結晶化させることと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記粘土材料が、カオリン粘土、カオリナイト(AlSi10(OH))、ハロイサイト(AlSi(OH))およびモンモリロナイト(Al(Si10(OH)*xHO))、採掘尾鉱、カオリン採掘からの採掘尾鉱、石炭脈石カオリン、ベントナイト粘土およびボーキサイト鉱山または浮選尾鉱、石炭浮選尾鉱およびボーキサイトを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ステップ(a)が、粘土材料の1つ以上のサンプルをプログラムされた加熱速度および時間に供することにより、その場高温XRD(X線回折)を使用して前記粘土材料の相変態を特徴づけることと、その場XRDを使用して、前記粘土材料のXRD相変態パターンを得ることと、最適な焼成温度および焼成時間を決定することと、を含む、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ステップ(a)が、所定の期間、所定の温度まで前記粘土材料を焼成することを伴う、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ステップ(a)で使用される温度が、600℃~900℃、または625℃~800℃、または650℃~750℃である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記粘土材料が、前記ステップ(a)において1分~2時間、または5分~1.5時間、または8分~1.5時間の期間、加熱に供される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
カオリン粘土材料が、前記ステップ(a)において使用され、前記カオリン粘土材料中のカオリナイトが、前記ステップ(a)においてメタカオリンに変換される、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
不純物の石英、白雲母、および長石が、前記ステップ(a)において変化しないままである、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ステップ(b)において、前記ステップ(a)から回収された前記アモルファス材料を浸出溶液中で浸出させて、前記アモルファス材料から前記アルミニウム成分およびケイ酸塩成分を溶解し、それにより、ステップ(a)からの前記材料中に存在した不純物成分が、溶解せず、固体残留物として残る、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記浸出溶液が、アルカリ性溶液を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記アルカリ性溶液が、水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記アルカリ性溶液が、少なくとも1M、または1M~6M、または1M~5M、または1M~4M、または2M~6Mの水酸化物イオンのモル含有量を有する水酸化物溶液を含む、請求項10または11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ステップ(b)が、ゼオライトまたは他の脱ケイ生成物(DSP)の結晶化の沈殿が抑制または最小化される温度で実施される、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ステップ(b)で使用される温度が、50℃~70℃である、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
石英、白雲母、および長石を含む不純物が、前記ステップ(b)で溶解せず、前記浸出溶液と混合された固体粒子として残り、浸出貴液と固体残留物との混合物が、固液分離ステップに供され、前記浸出貴液から未溶解の固体残留物を分離する、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記ステップ(c)により、精製された浸出貴液が得られ、前記浸出貴液から分離された前記固体残留物が、廃棄されるか、またはそこからさらにアルミニウムおよびケイ酸塩成分を抽出するために第2の浸出ステップに供されるか、またはさらなる処理に供される、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
ステップ(c)からの前記溶液が、溶解したアルミニウムおよび溶解したケイ酸塩を含有する精製された浸出貴液を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
追加の材料を前記浸出貴液に添加して、前記浸出貴液中のAl対Siの比を変化させる、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
シリカゲルを添加して、前記浸出貴液中のSiの量を増加させる、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記浸出貴液を80℃~100℃、または90℃~100℃の温度に加熱し、ゼオライトLTAの沈殿を引き起こすために撹拌する、請求項17~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
撹拌を使用して、前記ゼオライトLTAの粒子を前記溶液中に懸濁状態に保ち、かつ前記粒子が過度に大きな粒子に凝集するのを防止する、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
30分~10時間、または1時間~5時間、または1時間~4時間の滞留時間が、ステップ(d)で使用される、請求項1~21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
ステップ(d)で形成されたゼオライトLTAの粒子が、前記溶液から分離され、洗浄され、かつ乾燥される、請求項1~22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記ゼオライトLTAから分離された前記溶液が、前記ステップ(b)に戻される、もしくはリサイクルされるか、またはそれを使用してステップ(c)で得られた前記固体残留物に対して第2の浸出ステップを実施する、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
補給浸出液が、前記ステップ(d)から回収された前記溶液に添加される、および/または前記浸出液の一部が、ブリードオフされ、リサイクルされた溶液中に不純物が蓄積するのを防止する、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記ステップ(b)が、1時間未満の滞留時間を有する、請求項1~25のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収剤を生成するための方法に関する。より詳細には、本発明は、ゼオライトを生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、ミクロポーラスアルミノケイ酸塩材料である。ゼオライトは、吸着剤および触媒として広く商業的に使用されている。商業規模で使用されるゼオライトは、商業プロセスで使用するためのゼオライトの所望の純度が達成されることを確実にするために、工業プロセスで合成される。なお、ゼオライトは、自然界でも生じるが、天然ゼオライトは、通常、不純物元素および鉱物を伴って見つけられるため、商業的な使用にはあまり有用ではない。
【0003】
現在、ゼオライトの工業的製造は、アルミニウムおよびケイ酸塩の溶液を形成し、ゼオライトの沈殿をもたらす条件下でそれらの溶液を一緒に混合することを伴う。一例を挙げると、アルミン酸ナトリウム溶液を、シード粒子および/またはテンプレート剤の存在下で、アルカリ性pH(溶液中のアルミン酸から生じる)のケイ酸ナトリウム溶液と、撹拌しながら約90℃の温度で混合する。これにより、ゼオライトが沈殿する。
【0004】
ゼオライトは、SiOおよびAlOで作製された三次元フレームワークを有する結晶性ミクロポーラスアルミノケイ酸塩である。ゼオライトは、異なる直径のリングによって形成された大きな中央の細孔を有することができる、分子サイズのケージを含有する。ゼオライトは、そのミクロポーラス特性により、洗濯洗剤、イオン交換、水処理などの様々な分野で多くの用途を有する。自然に存在するものや合成することができるものなどの多くの異なるゼオライトがあり、これらのうち合成ゼオライトは、より高価であるが、天然ゼオライトよりもはるかに幅広い用途を有する。主な研究トピックのうちの1つは、正味の負電荷、高い多孔性、および潜在的な低コストにより、ゼオライトが金属カチオンを吸着して廃水流から金属カチオンを除去する能力である。この問題に関連するほとんどのレポートは、ゼオライトLTAに焦点を当てている(細孔サイズが4Åであるため、ゼオライト4Aとも呼ばれる。この明細書では、2つの用語は同じ意味で使用される)。ゼオライト4Aは、石炭フライアッシュ(CFA)から合成されており、Cu2+に関して3mg/gの差(CFAおよび商用でそれぞれ50.45および53.45mg/g)という非常に類似した最大吸着容量を示した。石炭フライアッシュ合成ゼオライトA(LTA)は、石炭フライアッシュから合成されたゼオライトX(Cu2+およびZn2+に対して47および83mg/gの吸着容量を達成した)と比較して、より高い除去効率を示した。達成された最高の吸着容量は、他の合成ゼオライトの容量と比較した場合、またはいくつかの天然ゼオライト材料に対してさえも非常に少量である0.5gのLTAを使用したときに得られた。
【0005】
一般に、図1に示すように、カオリナイト含有鉱物からのゼオライトの合成は、2つの主要なステップが必要である:(i)アモルファス化-熱活性化(>500℃)によってカオリナイトをアモルファス固体(メタカオリン)に変換することを意味する、および(ii)ゼオライト化-アモルファス固体を苛性溶液で溶解してゼオライトを合成する。アモルファス転移ステップでは、熱活性化プロセスにおける温度および時間が重要なプロセスパラメータである。カオリナイトのアモルファス転移に関する研究が異なるグループによって行われ、様々な見解が得られている。Chandrasekharは、カオリナイトからのゼオライト4Aの形成に対するメタカオリン化温度の影響を調査した。その結果、この粘土が反応性メタカオリンに変化するためには、1時間の加熱時間で900℃の焼成温度が最適であることが示された。その後、調査により、600~700℃の温度が最適な範囲であることが報告された。ゼオライト化ステップについては、スラリーゲルの形成、スラリーゲルの加熱によるゼオライト結晶の形成、ならびに有機テンプレートが相および形態制御のために溶液に添加されたときには、有機テンプレートを除去するための結晶ゼオライトの焼成などの、この水熱合成を達成するためのいくつかのサブステップがある。式1および2に示すように、ゼオライト化のプロセスは、複雑で、ケイ酸塩対アルミン酸塩比、出発物質、有機テンプレート、老化(エージング)条件、結晶化時間および温度、ならびにアルカリ度などの多くの要因の影響を受ける。
【0006】
ほとんどのカオリン鉱石は、かなりの量の他の鉱物不純物、特に石英、長石、および白雲母を含有する。これらの不純物はしばしば、粘土の品質および吸着用ゼオライトの最終的な特性に影響を与える。不純物を最小化するために、ゼオライトの合成のためにカオリンを精製する必要がある。既知のプロセスにおける精製ステップでは、粗い画分を分離するための機械的分離によって不純物の一部を除去することがある。しかし、これはプロセスの技術的な複雑さを増大させ、一方で、残りの不純物が依然として粘土に残る。不純物の除去を検討した研究は、ごくわずかしかないが、一般に、不純物は、最終的なゼオライト製品に入ってしまう。
【化1】
【化2】
【0007】
20世紀以来の産業の発展に関連した進歩に伴い、主要金属および石炭の消費量は、大幅に過去100年間で増加している。採掘尾鉱の蓄積は、土地の占有に加えて土壌および水質の汚染により、産業界および政府に深刻な環境的および財政的負担を引き起こしている。これらの採掘尾鉱の処分または利用または再生は、緊急の問題になっている。最近、貴重な成分を回収するための潜在的な材料または供給物としてこれらの採掘尾鉱を利用するための多くの調査研究が実施されている。ほとんどの採掘尾鉱は、かなりの量の粘土材料、例えば、カオリン鉱物を含有する。そして、カオリン鉱物は、SiおよびAlの豊富な供給源である。カオリナイト(Al[Si](OH))は、粘土鉱物のカオリングループの主相である。それは、長石に富む岩石に見られる無水アルミノケイ酸塩が、風化または熱水プロセスによって変質したときに形成される。カオリナイトの結晶構造は、AlO(OH)八面体の平面(層)に平行な、酸素原子によって結合されたSiO四面体の平面(層)で構成されている。
【0008】
先行技術の公開物が本明細書で参照される場合、この参照は、その公開物がオーストラリアまたは任意の他の国の技術における一般的な知識の一部を形成することを認めるものではないことが明確に理解されよう。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、ゼオライトを生成するためのプロセスを対象とするものであり、これは、上記の不利な点のうちの少なくとも1つを少なくとも部分的に克服するか、または消費者に有用なもしくは商業的な選択を提供し得る。
【0010】
前述のことを考慮して、1つの形態における本発明は、以下を含むゼオライトを生成するためのプロセスに広く存在する:
a)粘土含有材料を焼成して、粘土材料中の粘土成分からアモルファス材料を形成すること、
b)70℃以下の浸出溶液中でステップ(a)からの材料を浸出させて、溶解したアルミニウムおよび溶解したシリカならびに固体残留物を含有する溶液を生成すること、
c)溶液から固体残留物を分離すること、ならびに
d)ステップ(c)からの溶液からゼオライトを結晶化させること。
【0011】
本発明のプロセスは、ゼオライトの生成に使用するための供給物として粘土含有材料を利用する。粘土材料は、広く普及しており、容易に入手でき、かつ安価である。粘土材料は、採掘尾鉱および採掘作業から除去された表土にも広く見られる。これらの供給源は、現在のプロセスに大量の安価な供給材料を提供すると同時に、そうでなければ問題となる廃棄物に付加価値を提供することを約束する。
【0012】
ほとんどの粘土材料は、典型的には、珪岩、長石、白雲母、金属酸化物、および有機物を含み得る不純物を有するアルミニウムの水和ケイ酸塩を含む。本発明では、多種多様な粘土材料を使用することができる。カオリン粘土が特に好適である。本発明で使用することができる粘土の種類には、カオリナイト(ASi10(OH))、ハロイサイト(AlSi(OH))、およびモンモリロナイト(Al(Si10(OH)*xHO))が含まれる。カオリナイト、ハロイサイト、またはモンモリロナイト相を含み、かつ本発明で使用することができる他の材料には、カオリン採掘からの採掘尾鉱、石炭ガングカオリン、ベントナイト粘土およびボーサイト鉱山または浮選尾鉱、石炭浮選尾鉱およびボーサイトなどの採掘尾鉱が含まれる。
【0013】
焼成ステップは、粘土材料の粘土成分をアモルファス材料に変換するために使用される。一実施形態では、焼成ステップは、その場(in situ)高温XRD(X線回折)を使用して粘土材料の相変態を特徴づけることを含む。一実施形態では、粘土材料の1つ以上のサンプルをプログラムされた加熱速度および時間に供し、その場XRDを使用して、粘土材料のXRD相変態パターンを得た。完全なXRD相変態パターンを得た後、最適な焼成温度および焼成時間を決定し、従来の焼成装置(炉など)を使用して粘土材料の大規模な焼成を指示した。これは、焼成ステップでの粘土材料の過熱を回避することができ、焼成ステップで必要とされるエネルギーコストを有利に最小化することができる。
【0014】
別の実施形態では、焼成ステップは、粘土材料を所定の温度に所定の期間加熱することを伴う。いくつかの実施形態では、本発明は、任意の焼成ステップ、好適には、粘土材料のほとんどまたはすべてをアモルファス材料に変換する任意の焼成ステップを包含する。
【0015】
焼成ステップで使用される温度は、600℃~900℃で変動する場合がある。焼成ステップで粘土材料が加熱される時間は、温度に応じて変動する可能性があり、温度が高いほど、焼成に必要な時間は短くなる。温度および時間の両方が、異なる鉱物の鉱物学的特徴および焼成装置の効率によって変化する場合があることに言及する必要がある。
【0016】
一実施形態では、粘土材料は、焼成ステップにおいて炉に入れられ、炉は、600℃~900℃、または625℃~800℃、または650℃~750℃の温度に加熱される。
【0017】
いくつかの実施形態では、粘土材料は、焼成ステップにおいて1分~2時間の期間加熱される。上記のように、焼成ステップで使用される温度が高いほど、粘土材料のアモルファス相への変換を達成するために必要な時間が短くなる。一実施形態では、焼成ステップで使用される加熱時間は、5分~1.5時間、または8分~1.5時間である。カオリン材料の焼成に好適であり得るいくつかの時間および温度には、以下が含まれる:
650℃で1.5時間
700℃で0.5時間
750℃で8分間。
【0018】
焼成ステップでは、粘土材料は、脱ヒドロキシル化プロセスを経て、アモルファス材料に変換される。カオリン粘土材料が、焼成ステップで使用される場合、カオリナイトは、焼成ステップでメタカオリンに変換される。
【0019】
焼成ステップに供給される粘土材料中の不純物材料は、典型的には、焼成ステップの影響を受けないことが見出された。例えば、不純物の石英、白雲母、および長石は、焼成ステップで本質的に変化しないままである。いくつかの実施形態では、焼成ステップは、石英、長石、または白雲母が相変態を経る温度よりも低い温度で実施される。
【0020】
焼成ステップに続いて、アモルファス材料が炉から取り出される。いくつかの実施形態では、アモルファス材料は、浸出ステップが実行される温度と同等の温度まで少なくとも冷却可能である。他の実施形態では、アモルファス材料は、炉から取り出され、異なる場所で、または後の段階で浸出に供することができるように、輸送および/または保管場所に置かれる。
【0021】
浸出ステップでは、焼成ステップから回収されたアモルファス材料は、浸出溶液中で浸出される。これにより、アモルファス材料からアルミニウム成分およびケイ酸塩成分が溶解する。しかしながら、アモルファス材料中に存在した不純物成分は、溶解せず、固体残留物として残る。浸出ステップにおける未溶解の固体残留物は、粒子状物質の形態であることが理解されよう。浸出ステップは、一般に、固体材料と浸出溶液との間の適切な混合を確実にするために撹拌しながら実施され、これにより浸出速度が改善される。
【0022】
一実施形態では、浸出溶液は、アルカリ性溶液を含む。アルカリ性溶液は、水酸化ナトリウム溶液を好適に含むが、KOHなどの他の水酸化物溶液も使用され得る。水酸化ナトリウムは、広く入手可能であり、比較的安価であるため、浸出ステップでの使用が好ましい。
【0023】
一実施形態では、アルカリ性溶液は、少なくとも1M、または1M~6M、または1M~5M、または1M~4M、または2M~6Mの水酸化物イオンのモル含有量を有する水酸化物溶液を含む。本発明者らが実施した実験作業では、浸出液として濃度4Mの水酸化ナトリウム溶液を使用した。
【0024】
浸出ステップは、ゼオライトまたは他の脱ケイ生成物(DSP)の結晶化の沈殿が抑制または最小化される温度で実施され得る。この点で、溶解したアルミニウムおよび溶解したシリカまたは溶解したケイ酸塩を含有する溶液は、準安定であり、そこから固体が沈殿する傾向がある。そのような溶液は、高温になると安定性が低下する傾向がある。浸出ステップにおいて、未溶解の不純物粒子を含む未溶解の固体残留物が浸出溶液と混合される。したがって、浸出ステップでゼオライトまたはDSPの任意の沈殿がある場合、それは、未溶解の不純物粒子上で生じる傾向がある。この材料は、溶液から分離する必要があり、廃棄され得る。したがって、浸出ステップでのゼオライトまたはDSPの沈殿は、収率の損失を表し、回避する必要がある。そうでなければ沈殿し得るDSPには、アモルファスゼオライト、ソーダライト、ゼオライトLTN、またはカンクリナイトなどの他のゼオライト相が含まれ得る。
【0025】
一実施形態では、浸出ステップで使用される温度は、70℃以下、または50℃~70℃である。50℃~70℃の温度では、有用であるのに十分に高い速度で浸出が生じ、浸出が実施される時間を制御することによってゼオライトまたはDSPの沈殿を回避できることが見出された。例えば、浸出が5分~1時間、または10分~30分、または15分~30分などの1時間未満で実施される場合、アモルファス材料中のアルミニウムおよびシリカの大部分は、溶解するが、ゼオライトまたはDSPの沈殿は、生じそうにない。これに関して、本発明者らは、50℃~70℃の浸出温度で、および10分~30分の時間で、アルミニウムおよびシリカ成分の良好な溶解をもたらし、沈殿したゼオライトまたはDSPの形成をほとんどまたは全くもたらさないことを見出した。一般論として、範囲のより低い部分で浸出温度を使用すると、より長い浸出時間が使用可能であるが、範囲のより高い部分で浸出温度を使用すると、より短い浸出時間を使用する必要がある。
【0026】
本発明者らはまた、石英、白雲母、および長石などの不純物が浸出ステップで溶解せず、むしろ浸出溶液と混合された固体粒子として残ることを見出した。これらの材料は、ゼオライト製品に組み込まれると不純物となるため、浸出貴液(pregnant leaching solution)と固体残留物との混合物を固液分離ステップに供して、未溶解の固体残留物を浸出貴液から分離する。任意の好適な固液分離技術が使用され得る。濾過は、ほんの一例である。使用され得る他の可能な固液分離ステップには、沈降、デカンテーション、遠心分離、サイクロン分離、液体サイクロン分離などが含まれる。当業者は、このステップで使用することができる多くの異なる固液分離プロセスまたは技術があることを理解するであろう。
【0027】
固液分離ステップにより、精製された浸出貴液(pregnant leach solution)が得られる。浸出貴液から分離された固体残留物は、廃棄してもよく、またはそれからさらにアルミニウムおよびケイ酸塩成分を抽出するために第2の浸出ステップに供してもよく、またはさらなる処理に供される。例えば、粘土材料がボーキサイトを含む場合、浸出ステップからの固体残留物は、より低いシリカ含有量を有するボーキサイトを含み、それは、そこからアルミナを回収するためにバイヤープロセスプラント/アルミナ精製所に送られ得る。他の実施形態では、固体残留物は、建築製品、道路基盤として、または肥料プラントへの供給物として使用され得る。
【0028】
次いで、精製された浸出貴液を使用してゼオライトを形成する。精製された浸出貴液は、溶解したアルミニウムおよび溶解したケイ酸塩を含有する。浸出貴液のpHは、アルカリ性であるため、溶解したアルミニウムは、アルミン酸塩として存在する可能性が高く、溶解したシリカ種は、ケイ酸塩として存在する可能性が高い。この溶液は、ゼオライトを形成するために従来の技術を使用して処理され得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、追加の材料を浸出貴液に添加して、浸出貴液中のAl対Siの比を変化させることができる。例えば、シリカゲルを添加して、溶液中のSiの量を増加することができる。浸出貴液中のAl対Siの比を調整することで、形成されるゼオライト製品、例えばゼオライトX、A、ソーダライトなどに対するある程度の制御を提供することができる。結晶化段階で処理条件を変化させると、作製される生成物に対するある程度の制御も提供することができる。本明細書に記載された従来技術の方法では、シリカゲルを分散させることが困難または不可能であったため、シリカゲルを添加することができなかったことに留意されたい(NaOHが添加された場合を除く)。
【0030】
一実施形態では、浸出貴液は、ゼオライトの沈殿を引き起こすために、80℃~100℃の温度に加熱され、撹拌される。一実施形態では、ゼオライトの沈殿を引き起こすために、浸出貴液は、約90℃の温度に加熱され、撹拌される。撹拌は、ゼオライト粒子を溶液中に懸濁させたままにし、かつ粒子が過度に大きな粒子に凝集するのを防止するために使用される。
【0031】
結晶化ステップでは、30分~10時間、または1時間~5時間、または1時間~4時間の滞留時間が使用され得る。
【0032】
有機テンプレート剤などのテンプレート剤、シード粒子、および/または従来のゼオライト生成で一般的に使用されるような他の添加剤を、本発明のゼオライト結晶化ステップにおいて添加することも可能であり得る。
【0033】
ゼオライト粒子が形成されると、それらは、通常、溶液から分離され、洗浄され、かつ乾燥される。ゼオライトはまた、例えば、任意の有機テンプレート剤を除去するために焼成され得る。
【0034】
ゼオライトから分離された溶液は、浸出ステップに戻される、もしくはリサイクルされ得るか、またはそれを使用して、最初の浸出ステップから除去された固体残留物に対して第2の浸出ステップを実施し得る。いくつかの実施形態では、補給浸出溶液が、結晶化ステップから回収された溶液に添加される。また、リサイクル溶液に不純物が蓄積するのを防止するために、浸出溶液の一部をブリードオフする(除去する)必要がある場合もある。
【0035】
本発明の第1の態様の方法の実施形態は、ゼオライトが安価な出発物質および不純な出発物質から形成されることを可能にする。ゼオライトは、浸出ステップの後、ゼオライト結晶化ステップの前に不純物成分が除去されるため、高純度を有することができる。浸出ステップ中のゼオライトまたはDSPの沈殿を回避することにより、収率の損失が最小化される。ゼオライト結晶化ステップから回収された溶液は、浸出ステップまたは第2の浸出ステップにリサイクルされ得、それにより、プロセスの経済性をさらに改善する。
【0036】
第2の態様では、本発明は、高温で材料を焼成するステップと、その場高温XRDを使用して焼成中に焼成される材料の1つまたは複数の相を監視するステップと、材料中の所望の相変態がいつ完了したかを決定するステップと、材料中の所望の相変態が完了したら炉中の加熱を低減するかまたは炉から材料を取り出すステップと、を含む、焼成ステップを制御するための方法を提供する。
【0037】
本発明の第2の態様の一実施形態では、この方法は、材料中の相変態が生じないか、または遅すぎると決定された速度で生じている場合に、炉の温度を制御して炉の温度を上げることをさらに含む。
【0038】
本発明の第2の態様の方法は、本発明の第1の態様によるゼオライトを生成するための方法の一部として、粘土材料の焼成を制御するために使用され得る。本発明の第2の態様の方法はまた、他の材料の焼成を制御するために使用され得、焼成が材料中の相変態をもたらすために使用される。
【0039】
その場高温XRDを使用すると、焼成ステップ中に存在する材料の1つまたは複数の相を綿密に監視することが可能である。その場高温XRDが、所望の相変態が完全に生じたことを示す場合、材料を炉から取り出してもよく、または焼成ステップ中の加熱コストを最小化するために、炉中の加熱を下げてもよい。
【0040】
本発明の第2の態様の方法は、焼成中に所望の相変態に影響を与えるのに必要な時間および温度の両方の著しくより正確な決定を提供する。したがって、焼成ステップのはるかにより効果的な制御を達成することができ、それは焼成プロセスの経済性を高めることができる。
【0041】
本明細書に記載されている特徴のいずれも、本発明の範囲内で本明細書に記載された他の特徴のうちのいずれか1つ以上と任意の組み合わせで組み合わせることができる。
【0042】
本明細書における任意の先行技術への言及は、先行技術が一般的な一般知識の一部を形成することの承認またはいかなる形式の示唆としても解釈されず、また解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明の様々な実施形態は、以下の図面を参照して説明される:
図1】カオリン鉱物からゼオライトを合成するための従来技術のプロセスのフローシートである。
図2】本発明の実施形態によるカオリン鉱物からゼオライトを合成するためのプロセスのフローシートである。
図3】550℃~675℃の熱処理されたカオリナイトのその場XRDパターンを示す図である。
図4】(a)カオリンサンプルおよび(b)650℃での熱処理後のメタカオリンのSEM画像を示す図である。
図5】カオリン浸出(図5a)およびメタカオリン浸出(図5b)中の時間に対する水性ケイ酸塩濃度のグラフである。
図6】650℃で加熱したカオリンサンプルを使用するアモルファス相およびゼオライトLTAについてのXRDパターンを示す図である。
図7】(a)アモルファスゼオライト、(b)ゼオライトLTA、立方晶、Pm3m、および(c)ソーダライト、羊毛球形粒子、P43nのSEM画像を示す図である。
図8】実施例2において熱処理された供給材料のその場XRDパターンを示す図である。
図9】実施例2で形成されたゼオライト含有生成物についてのXRDパターンを示す図である。図9はまた、本明細書に記載されているように、従来技術の方法に従って形成されたゼオライト含有生成物についてのXRDパターンを示している。
図10】実施例2で形成されたゼオライトLTAについてのXRDパターンを示す図である。
図11】実施例3においてカオリナイト供給および焼成供給材料についてのXRDパターンを示す図である。
図12】実施例3で形成されたゼオライト含有生成物についてのXRDパターンを示す図である。
図13】実施例4においてボーキサイト供給および焼成供給材料についてのXRDパターンを示す図である。
図14】実施例4で形成されたゼオライト含有生成物についてのXRDパターンを示す図である。
図15】実施例5において石炭浮選尾鉱供給および焼成供給材料についてのXRDパターンを示す図である。
図16】実施例5で形成されたゼオライト含有生成物についてのXRDパターンを示す図である。
図17】実施例2で得られたゼオライト製品のSEM顕微鏡写真を示す図である。
図18】実施例3で得られたゼオライト製品のSEM顕微鏡写真を示す図である。
図19】実施例4で得られたゼオライト製品のSEM顕微鏡写真を示す図である。
図20】実施例5で得られたゼオライト製品のSEM顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を説明する目的で提供されていることが理解されよう。したがって、当業者は、本発明が、実施例に記載されているような特徴のみに限定されると見なされるべきではないことを理解するであろう。
【0045】
図2は、本発明の一実施形態による粘土鉱物からゼオライトを合成するためのプロセスのフローシートを示している。図2のフローシートでは、カオリン鉱物10は、炉中で実施される焼成ステップ12に供給される。炉は、600℃~750℃の温度で運転され、カオリン鉱物は、30分~1時間の期間炉中に保持される。これにより、カオリナイトがメタカオリンに変換される。メタカオリンは、浸出ステップ14に供給され、そこで4M水酸化ナトリウム溶液16と混合される。浸出ステップ14では、メタカオリン中のアルミニウムおよびシリコン成分が溶液に溶解されて、アルミノケイ酸塩溶液(溶液中のアルミン酸塩およびケイ酸塩からなる可能性が高い)を形成する。石英、白雲母、長石などの不純物は、浸出ステップ14では溶解しない。濾過などの固液分離ステップ15を使用して、固体不純物20から浸出貴液(pregnant leach liquor)18を分離する。
【0046】
次いで、浸出貴液20は、結晶化ステップ22で処理されて、ゼオライトを形成する。結晶化ステップ22は、80~100℃の温度で、1~4時間、撹拌しながら実施され、ゼオライトの沈殿を引き起こす。テンプレート剤、シード粒子などのようなゼオライト結晶化に使用され得る他の成分もまた、結晶化ステップ22に添加され得る。Al対Siの比を変化させるために、追加の材料23が添加され得る。例えば、シリカゲルが添加され得る。次いで、ゼオライト粒子は、液相から分離され、ゼオライト粒子は、24で回収される。ゼオライト粒子は、必要に応じて洗浄および乾燥し、要求に応じて有機テンプレート剤を除去するために焼成され得る。脱ケイ酸塩溶液26は、浸出ステップ14にリサイクルされる。別の実施形態では、固体不純物20を脱ケイ酸塩溶液26と混合して、固体不純物からさらにアルミニウムおよびシリコン成分を浸出させ得る。浸出液のリサイクルが行われる場合、不要な不純物の蓄積を防止するために、補給浸出液を添加し、リサイクル浸出液からブリードストリーム(除去流れ)を得る必要がある場合がある。
【0047】
実施例1
この実施例では、ゼオライトは、本発明の一実施形態に従って合成した。カオリナイト(表1に示す組成)、水酸化ナトリウム(2.2重量%のNaCO)、および水酸化アルミニウム(99.4%)は、Sigma-Aldrichから供給された。硝酸鉛(99%)および硝酸銅(II)(98%)はThermoFisher Scientificから、塩化コバルト(II)六水和物(98%)はSigma-Aldrichから供給された。
【表1】
【0048】
ゼオライト合成
カオリン(約20グラム)を目標温度(650℃)に予熱したマッフル炉に0.5時間入れて、焼成生成物(アモルファスメタカオリン)を得た。次いで、2.5gの焼成生成物を、60℃に予熱した200mlの4M NaOH溶液を含む250mlのガラスビーカー(マグネチックスターラー付き)に添加した。スラリーを15分または30分間浸出させ、次いで、同じ温度で濾過した。0.2mlの濾過した液体溶液をサンプリングして、10倍希釈してICP分析に用いた。濾過した液体溶液を、混合用の2つの鋼球を有するプラスチックボトル(250ml)に移した。次いで、容器を、目標温度(90℃)に予熱された水浴に入れたが、撹拌速度は500rpmで4時間であり、これは、ゼオライトLTAの完全な結晶化および形成に十分な時間である。液体溶液の化学組成に基づいて、Al/Siのモル比を最大1にするために、追加のギブサイト(Al(OH))を使用する必要がある場合がある。結晶化後、スラリーを濾過した。固体サンプルを洗浄し、将来の吸着試験のためにオーブンで一晩乾燥させた。濾液の液体溶液は、カオリン浸出の次のラウンドを使用するためにリサイクルした。0.2mlの濾液をサンプリングして、10倍希釈してICP分析に用いた。液体溶液の化学組成に基づいて、最大4Mの苛性溶液を構成するために追加量のNaOHを使用する必要がある場合がある。比較のために、本発明者らは、カオリンまたはメタカオリン供給サンプルを使用して、ソーダライト(SOD)サンプルおよびアモルファスゼオライトサンプルを合成する。
【0049】
サンプルの特性評価
Rigaku Smartlabを使用して、その場高温XRD分析を実行し、カオリンの相転移を決定した。コランダムで作製された小さな容器に、粉砕した固体の粉を添加した。装填された容器は、サンプラーホルダーの上に置き、ドームによって密封した。加熱速度は、50℃/分に設定した。各温度でのスキャンごとの保持時間は、X線スキャン時間の10分前であり、毎秒0.05°のスキャン速度を用いて40kVでCu Kα照射(λ=1.5406A)を使用して5~40°の2θ角度範囲を網羅するために約15分であった。
【0050】
他の結晶固相は、LynxEye検出器を備えたBruker D8 Advance XRDを用いたX線回折(XRD)、および5~40°の2θ角度範囲にわたって、毎秒0.05°のスキャン速度を用いて40kVでCu Kα照射(λ=1.5406A)によって識別した。BRUKERからの2014PDFデータベースを、反射の識別に使用した。固体粒子の形態は、5kVの加速電圧および30のスポットサイズを用いて走査型電子顕微鏡(SEM、HITACHI SU3500)によって観察した。
【0051】
溶液サンプルの特性評価は、誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP-AES)を使用して実行した。
【0052】
結果
カオリンの熱活性化
カオリンからアモルファスへの転移温度を正確に決定することは、エネルギーコストに関連する合成プロセスで特に有用である。以前のほとんどの研究者は、熱重量分析(TGA)を利用して相転移の温度および時間を決定する。以前は、ほとんどの調査で、カオリンサンプルの重量損失を推定するための熱重量(TG)法が実装された。式3に示す化学式に基づくと、純粋なカオリンが完全に脱ヒドロキシル化されている場合、重量損失は、約14%である。しかしながら、ほとんどのカオリンサンプルは、不純物を含有し、減量の技法は、あまり正確ではない。これにより、通常、550~1000℃の広い温度範囲で熱活性化が報告され、典型的には、1~12時間の焼成時間を過大評価する。ここでは、本発明者らは、プログラムされた加熱速度(5~200℃/分)および短いスキャン時間(5~16分)でカオリンの相転移を監視するために、その場高温XRDの方法論を実装した。重量損失を測定する代わりに、カオリンの(001)面および(002)面での主要な位相ピークの強度変化を、異なる温度および加熱時間で記録した。カオリンサンプルは、500℃以下で大きな変化はない。図3に示すように、550℃のサンプルは、依然として、カオリナイトおよび不純物アナターゼの特徴的なピークを有する(2θ=25.33°)。カオリナイト結晶面のピークの強度は、温度の上昇とともに減少する。625℃では、カオリン相についての20~22°および35~40°の範囲のピークは、検出できなかったが、(001)および(002)の結晶面のピークは、依然として検出可能である。650℃では、XRDパターンは、アナターゼピークのみを示す。これは、カオリナイトが完全に脱ヒドロキシル化されてX線アモルファス相になったことを示している。600~675℃の温度範囲で生じるアモルファス相への脱ヒドロキシル化を式3に示す。
Al[Si](OH)→Al・2SiO+2HO………………………(3)
【0053】
SEM画像は、メタカオリンが図4に示すようにカオリンのエッジシート構造を損失し始めたが、依然として長距離結晶構造の欠如を示す結晶の層構造を有することを示している。
【0054】
ゼオライトの水熱合成
この実施例で使用される合成プロセスでは、カオリナイトまたはメタカオリンが高アルカリ性溶液に溶解し、次いで、式1および2に基づいてゼオライトとして知られる不溶性アルミン酸ナトリウムケイ酸塩として再沈殿する。
【0055】
図5aは、4M NaOH溶液によるカオリン供給材料の浸出/溶解を示している。図5から分かるように、カオリンは、浸出液に非常にゆっくりと溶解する。カオリンが溶解すると、溶液中のケイ酸塩濃度が増加する。しかしながら、脱ケイ酸塩生成物(DSP)は、約50分後に沈殿し始め、これにより、DSPの沈殿により、溶液中のケイ酸塩濃度が低下する。対照的に、メタカオリンが浸出試験に送られると、メタカオリンは、非常に迅速に溶解し、10~15分後にほぼ完全な溶解が得られる。DSPは、約25~30分後に沈殿し始め、溶液中のシリカの最大濃度は、10分~30分で得られる。したがって、メタカオリンを70℃で10分~30分間浸出させることにより、浸出ステップでのケイ酸塩のDSPへの損失を回避することができる。浸出ステップで沈殿するすべてのDSPは、浸出溶液に溶解しない固体不純物上に沈殿することが理解されよう。純粋なゼオライトを得るためには、ゼオライトの結晶化の前に、溶解していない固体不純物を浸出溶液から分離する必要があるため、浸出ステップで沈殿するDSPは、固体不純物粒子上に沈殿し、これは、収率の損失を表す。図5では、溶液中のケイ酸塩濃度(g/L SiOとして表される)が監視され、カオリンおよびDSPが物質収支から計算される。
【0056】
図6に示すように、固体サンプルを650℃で加熱した供給材料から作製されたゼオライトの場合、ゼオライトLTAが唯一の相である。SEM画像は、図7に、ゼオライトLTA形状の立方構造を示している。
【0057】
実施例2
この実施例では、表2に記述するような組成を有する材料を供給材料として使用した。
【表2】
【0058】
供給材料は、以下の処理に供した:
熱活性化段階:
25グラムのサンプルをセラミック容器に入れ、マッフル炉に移し、続いて目標温度である750℃に1.5時間予熱した。図8は、供給材料および焼成供給材料についてのXRDパターンを示している。
【0059】
浸出および老化段階:
苛性濃度4Mの合成苛性液(50mL)を150mLの三角フラスコ中で300~500rpmで磁気撹拌し、蒸発による過度の液体損失を防止するためにパラフィルムで密封した。フィードバックコントローラを備えたホットプレートによって溶液を加熱した。60℃の設定温度に達した場合、活性化した固体サンプル(1.5g)を加熱した溶液に添加した。浸出反応が1時間で完了すると、固体および液体を真空濾過により分離した。濾液溶液は、ゼオライト4A生成物の沈殿に使用される。
【0060】
結晶化段階:
浸出試験から得られた溶液を100または200mlのテフロンボトルまたはスチール容器に移した。異なるタイプのゼオライトを合成するために、追加のシリカまたはアルミニウム源が、SiO/Alのモル比のバランスをとるために溶液に添加される。次いで、ボトルを90℃の温度のウォーターバスに2~4時間入れた。固体を濾過し、pH値が9未満になるまで脱イオン水で洗浄した。固体生成物を105℃のオーブンで2~4時間乾燥させた。
【0061】
図9は、実施例2で形成されたゼオライト含有生成物についてのXRDパターンを示している。図9はまた、本明細書に記載されているように、従来技術の方法に従って形成されたゼオライト含有生成物についてのXRDパターンを示している。図9から分かるように、本発明の実施形態に従って形成されたゼオライト含有生成物は、従来技術の方法に従って形成されたゼオライト含有生成物よりもはるかに低いレベルの他の成分を有する。図10は、実施例2で形成されたゼオライトLTAについてのXRDパターンを示している。
【0062】
実施例3
この実施例では、表に記述するような組成を有する材料を供給材料として使用した。
【表3】
【0063】
供給材料は、以下の処理に供した:
熱活性化段階:
5グラムのサンプルをセラミック容器に入れ、マッフル炉に移し、続いて目標温度である650℃に1時間予熱した。
【0064】
浸出および老化段階:
苛性濃度4Mの合成苛性液(50mL)を150mLの三角フラスコ中で300~500rpmで磁気撹拌し、蒸発による過度の液体損失を防止するためにパラフィルムで密封した。フィードバックコントローラを備えたホットプレートによって溶液を加熱した。70℃の設定温度に達したら、活性化した固体サンプル(1g)を加熱した溶液に添加した。浸出反応が0.5時間で完了すると、固体および液体を真空濾過により分離した。濾液溶液は、ゼオライト4A生成物の沈殿に使用される。
【0065】
結晶化段階:
浸出試験から得られた溶液を100または200mlのテフロンボトルまたはスチール容器に移した。異なるタイプのゼオライトを合成するために、追加のシリカまたはアルミニウム源が、SiO/Alのモル比のバランスをとるために溶液に添加される。次いで、ボトルを90℃の温度のウォーターバスに2時間入れた。固体を濾過し、pH値が9未満になるまで脱イオン水で洗浄した。固体生成物を105℃のオーブンで2~4時間乾燥させた。
【0066】
図11は、カオリナイト供給材料および焼成カオリナイトについてのXRDパターンを示している。図12は、この実施例で形成されたゼオライトのXRDパターンを示している。ゼオライトは、主にゼオライトLTAである。
【0067】
実施例4:
この実施例は、供給材料として高シリカボーキサイトを使用する。高シリカボーキサイトは、表4に示すような組成を有した。
【表4】
【0068】
高シリカボーキサイト供給物は、ギブサイト、ベーマイト、ヘマタイト、カオリナイト、石英、アナターゼ、および有機物で構成されていた。供給材料は、以下の処理に供した:
【0069】
熱活性化段階:
10グラムのサンプルをセラミック容器に入れ、マッフル炉に移し、続いて目標温度である650℃に1時間予熱した。図13は、ボーキサイト供給材料および焼成ボーキサイト供給材料についてのXRDパターンを示している。
【0070】
浸出および老化段階:
苛性濃度4Mの合成苛性液(50mL)を150mLの三角フラスコ中で300~500rpmで磁気撹拌し、蒸発による過度の液体損失を防止するためにパラフィルムで密封した。フィードバックコントローラを備えたホットプレートによって溶液を加熱した。60℃の設定温度に達した場合、活性化した固体サンプル(2.5g)を加熱した溶液に添加した。浸出反応が0.5時間で完了すると、固体および液体を真空濾過により分離した。濾液溶液は、4A生成物の沈殿に使用される。
【0071】
この供給材料を用いると、図2に示される浸出ステップ14から生じる固体不純物20は、バイヤープロセスプラント/アルミナ精製所に供給することができる脱ケイ酸ボーキサイトを含む。ボーキサイトからシリカが除去されているため、過剰な水酸化ナトリウムの消費およびファウリングの原因となる熱交換面での脱ケイ生成物の沈殿などの、ボーキサイト供給物に過剰なシリカを有するためにバイヤープロセスプラント/アルミナ精製所で発生するいくつかの処理の困難を軽減することができる。
【0072】
結晶化段階:
浸出試験から得られた溶液は、100または200mlのテフロンボトルまたはスチール容器に移される。異なるタイプのゼオライトを合成するために、追加のシリカまたはアルミニウム源が、SiO/Alのモル比のバランスをとるために溶液に添加される。次いで、ボトルを90℃の温度のウォーターバスに2時間入れた。固体を濾過し、pH値が9未満になるまで脱イオン水で洗浄した。固体生成物を105℃のオーブンで2~4時間乾燥させた。
【0073】
図14は、この実施例で形成されたゼオライトのXRDパターンを示している。ゼオライトは、主にゼオライトLTAである。
【0074】
実施例5
この実施例では、石炭浮選尾鉱を供給材料として使用した。この供給材料の完全な分析が完了していないが、約20%のAlを含有することが期待される。石炭浮選尾鉱は、以下のステップで処理した:
熱活性化段階:
15グラムのサンプルをセラミック容器に入れ、マッフル炉に移し、続いて目標温度である650℃に1時間予熱した。図15は、石炭尾鉱供給製品および焼成後の石炭尾鉱についてのXRDパターンを示している。
【0075】
浸出および老化段階:
苛性濃度4Mの合成苛性液(50mL)を150mLの三角フラスコ中で300~500rpmで磁気撹拌し、蒸発による過度の液体損失を防止するためにパラフィルムで密封した。フィードバックコントローラを備えたホットプレートによって溶液を加熱した。70℃の設定温度に達した場合、活性化した固体サンプル(1.5g)を加熱した溶液に添加した。浸出反応が0.5時間で完了すると、固体および液体を真空濾過により分離した。濾液溶液は、生成物の沈殿に使用される。
【0076】
結晶化段階:
浸出試験から得られた溶液は、100または200mlのテフロンボトルまたはスチール容器に移される。異なるタイプのゼオライトを合成するために、追加のシリカまたはアルミニウム源が、SiO/Alのモル比のバランスをとるために溶液に添加される。次いで、ボトルを90℃の温度のウォーターバスに2時間入れた。固体を濾過し、pH値が9未満になるまで脱イオン水で洗浄した。固体生成物を105℃のオーブンで2~4時間乾燥させた。図16は、この実施例で形成されたゼオライトのXRDパターンを示している。ゼオライトは、主にゼオライトLTAである。
【0077】
図17~20は、それぞれ実施例2、3、4、および5で得られたゼオライト製品のSEM顕微鏡写真を示している。
【0078】
本発明に従って生成されたゼオライトは、溶液から重金属を除去するために使用することができる。実際、本発明者らは、本発明に従って生成されたゼオライトを使用して、Cu、Pb、およびCoなどの重金属イオンを溶液から除去できることを示す実験試験を実施した。
【0079】
本発明に従って生成されたゼオライトは、ゼオライトが有用であることが知られている他の任意の用途にも使用することができる。例には、ガス分離、洗剤、エタノール乾燥、吸水および重金属吸収、ならびに触媒作用が含まれる。当業者は、本発明に従って生成されたゼオライトの最終用途は、上記の用途のいずれかに限定されず、ゼオライトの任意の可能な用途に拡張できることを理解するであろう。
【0080】
本明細書および特許請求の範囲(もしあれば)において、「含む(comprising)」という単語ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprise)」を含むその派生語は、記載された整数のそれぞれを含むが、1つ以上のさらなる整数を含むことを除外しない。
【0081】
本明細書全体を通して「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所での「一実施形態において」または「実施形態において」という句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の組み合わせで任意の好適な方法で組み合わせてもよい。
【0082】
法令に準拠して、本発明は、構造的または系統的特徴に多かれ少なかれ固有の言語で記述されてきた。本明細書に記載の手段は、本発明を実施する好ましい形態を含むので、本発明は、示されるまたは記載される特定の特徴に限定されないことが理解されるべきである。したがって、本発明は、当業者によって適切に解釈される添付の特許請求の範囲(もしあれば)の適正な範囲内のその形式または修正のいずれかで請求される。
図1
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