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特許7571068タンパーエビデントバンド付き螺子キャップ
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  • 特許-タンパーエビデントバンド付き螺子キャップ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】タンパーエビデントバンド付き螺子キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/34 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
B65D41/34 114
B65D41/34 ZAB
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022015656
(22)【出願日】2022-02-03
(65)【公開番号】P2023072626
(43)【公開日】2023-05-24
【審査請求日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2021184919
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】門脇 菜穂
(72)【発明者】
【氏名】中川 征
(72)【発明者】
【氏名】冨高 祐司
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-197087(JP,A)
【文献】特開2012-092255(JP,A)
【文献】登録実用新案第3150064(JP,U)
【文献】特開2021-160727(JP,A)
【文献】特表2019-530763(JP,A)
【文献】特開2022-053915(JP,A)
【文献】特許第5735744(JP,B2)
【文献】世界初!飲料用ペットボトルに植物由来原料を100%使用したキャップ(※1)を導入,[online],日本,サントリー食品インターナショナル株式会社,2019年02月27日,[令和6年2月26日検索]インターネット,<URL:https://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/article/SBF074.html><URL:https://www.suntory.co.jp/news/article/mt_items/l_sbf0774-1.jpg>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素成分の植物由来度(ASTM D6866-11)が50質量%以上94質量%未満であり、重量平均分子量が200,000以上及び分子量分布が12以上のポリエチレンにより成形され
前記ポリエチレンが、バイオポリエチレンを含むタンパーエビデントバンド付き螺子キャップ。
【請求項2】
前記ポリエチレンが、石油由来ポリエチレンおよびバイオポリエチレンからなる請求項1に記載のタンパーエビデントバンド付き螺子キャップ。
【請求項3】
前記ポリエチレンは、1g/10min以上20g/10min未満のメルトフローレート(MFR:190℃)を有している請求項1又は2に記載のタンパーエビデントバンド付き螺子キャップ。
【請求項4】
前記ポリエチレンは、密度が930kg/m以上である請求項1~3の何れかに記載のタンパーエビデントバンド付き螺子キャップ。
【請求項5】
前記タンパーエビデントバンドが、係止手段としてフラップ片を備える請求項1~の何れかに記載のタンパーエビデントバンド付き螺子キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開封履歴明示バンド(TEバンド)を備えた螺子キャップに関するものであり、より詳細には、キャップの開封に際して、TEバンドがキャップから離脱するタイプの螺子キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
容器内容物の品質保証やいたずら防止などのために、開封履歴を明示するTEバンドを備えた螺子キャップが広く使用されている。即ち、この種のキャップでは、キャップを旋回して開栓したときには、キャップ本体とTEバンドを連結しているブリッジが破断し、TEバンドがキャップ本体から離脱し、これにより、キャップが開封された事実を明示するようになっている。また、TEバンドが離脱しているキャップは、再び容器口部に装着してリシールに使用される。
【0003】
このようなTEバンドを備えた螺子キャップにおいては、一般にオレフィン系樹脂を用いての圧縮成形、射出成形等により成形される。オレフィン系樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンが一般的であり、特にポリエチレンテレフタレート(PET)製の容器に対しては、ポリエチレン製のキャップが使用される場合が多い。ポリエチレンは、ポリプロピレンに比して、若干柔軟性が高く、PET製の容器口部に対して高い密着性を確保することができるからである。
【0004】
ところで、近年では炭酸ガスの排出が大きな環境問題となっており、オレフィン系樹脂でも、植物由来のもの(例えば、バイオポリエチレンやバイオポリプロピレンと呼ばれる)を使用することが望まれている。植物由来のオレフィン系樹脂は、原料であるエチレンやプロピレンが大気中のCOを吸収して生育する植物から得られるため、カーボンニュートラルを実現でき、化石由来のものに比して地球温暖化の緩和に大きく貢献するからである。
【0005】
例えば、キャップの分野でも、特許文献1には、植物由来のオレフィン系樹脂を用いて成形されたヒンジキャップ(トグル構造キャップ)が提案されている。また、特許文献2には、キャップの頂板部内面に、植物由来のパッキンが設けられている2ピースタイプの螺子キャップが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-184727号公報
【文献】特開2020-142835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、植物由来のオレフィン系樹脂では、モノマーであるエチレンやプロピレンが、植物から得られるエタノールやプロパノールを原料としているため、比較的高分子量のものが製造され、これに化石燃料由来のオレフィン系樹脂を混合して物性調整されたものが販売されている。即ち、一般に販売されているものは、植物由来度の小さいものから高いものまで、種々のグレードのものが販売されているわけである。
【0008】
従って、種々の用途でも、植物由来度の高いものの使用が望まれるわけであるが、本発明者等の研究によると、ポリエチレンにより成形されたTEバンド付き螺子キャップでは、植物度が高くなるにつれて、TEバンドとキャップ本体とを繋いでいるブリッジが速やかには切れ難くなり、例えば、植物由来度が50質量%以上になると、ブリッジが延びてしまうため、所謂ブリッジのブレーク角度が大きくなり、キャップを容器口部から外し難くなったり、或いはブリッジの一部が破断されず、TEバンドがつながっているまま、キャップが容器口部から開封されてしまうというトラブルが頻繁に生じることが判った。TEバンドがつながっているまま容器口部から取り外されたキャップでは、開封履歴の明示機能が損なわれているので、従来キャップとは異なるブリッジ形状を新たに設計する必要性が生じる虞がある。
【0009】
従って、本発明の目的は、植物由来度が高いポリエチレンから成形されているにもかかわらず、ブリッジ切れの問題が有効に解決されたTEバンド付き螺子キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、炭素成分の植物由来度(ASTM D6866-11)が50質量%以上94質量%未満であり、重量平均分子量が200,000以上及び分子量分布が12以上のポリエチレンにより成形されたTEバンド付き螺子キャップが提供される。
【0011】
本発明の螺子キャップにおいては、
(1)前記ポリエチレンは、1g/10min以上20g/10min未満のメルトフローレート(MFR:190℃)を有していること、
(2)前記ポリエチレンは、密度が930kg/m以上であること、
(3)前記TEバンドが、係止手段としてフラップ片を備えること、
が好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の螺子キャップに設けられているTEバンドは、植物由来度が50~90質量%と極めて高く、植物由来のポリエチレンを多量に含んでいるにも関わらず、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)が一定の範囲に調整されているため、TEバンドとキャップ本体とを繋いでいるブリッジが破断し難いという問題が有効に解決されている。
【0013】
例えば、後述する実施例に示されているように、Mw及びMw/Mnが本発明で規定している範囲外にある比較例のキャップは、植物由来度が0質量%(比較例1)、31質量%(比較例2)及び50質量%(比較例3)の範囲にあり、植物由来度の増大にしたがって、ブリッジのブレーク角度が大きくなっており、植物由来度が50質量%のキャップでは、ブレーク角度が299度である(即ち、容器口部を閉じているキャップを開栓するためには、約300度回転させないとブリッジが破断しない)。一方、本発明に従って、Mw及びMw/Mnが本発明で規定している範囲内にある実施例のキャップでのブリッジのブレーク角は、植物由来度が51質量%であるにも関わらず、288度と、比較例3に比して、ブレーク角が約10度も低くなっており、速やかにブリッジ切れが生じていることが判る。従って、本発明のTEバンド付き螺子キャップは、植物由来度の高いポリエチレンを使用しているにもかかわらず、開栓をスムーズに行うことができ、TEバンドの品質保証機能を有効に発揮させ、さらにはリシールにも好適に使用することができ、カーボンニュートラルに有効に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の螺子キャップの一部断面側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<キャップの基本構造>
図1を参照して、本発明のTEバンド付き螺子キャップは、全体として50で示されており、キャップ本体1と、TEバンド3(タンパーエビデントバンド)とから成っている。
【0016】
キャップ本体1は、頂板部5と、頂板部5の周縁部から垂下しているスカート(筒状側壁)7とから形成されている。
【0017】
頂板部5の内面には、スカート7とは間隔を置いて下方に延びており且つ若干外側に膨らんだ形状のインナーリング9が形成されており、インナーリング9とスカート7との間に、短いアウターリング11が形成されており、さらに、インナーリング9とアウターリング11との間に小突起13が周状に設けられている。
【0018】
一方、スカート7の内面には、雌螺条17が形成されている。この雌螺条17は、容器口部(図示せず)に設けられている雄螺条と螺子係合するものであるが、この雌螺条17には、通常、高さ方向に通路17aが形成されるように一部切り欠かれている。キャップ内を洗浄した時、洗浄液が滞留しないように、通路17aから流れ落ちるようにするためである。
【0019】
また、スカート7の外面には、このキャップ50(キャップ本体1)を旋回し易いように、滑り止めとなるローレット19が形成されている。このローレット19には、上端部分に切り欠き19aが一つ設けられている。切り欠き19aは、このキャップ50を容器口部に螺子固定したとき、巻締度合いを一定に設定するための目印となるものである。即ち、前述した雌螺条17による螺子係合を利用して、キャップ50を容器口部に装着した時、この切り欠き19aの位置によって、巻締が十分に行われたか、或いは巻締が不十分であるかを確認することができるわけである。
【0020】
なお、容器口部への巻締が十分に行われて容器口部(図示せず)にしっかりとキャップ50(キャップ本体1)が固定されたとき、容器口部の上端の内側部分は、インナーリング9の外面側に密着すると同時に、その上端の外側コーナー部分がアウターリング11に当接し、これにより、ガタツクことなくキャップ50が容器口部にしっかりと固定され、また容器口部が密封されることとなる。さらに、容器口部の上端面が小突起13に当接することにより、密封性が補強される。
【0021】
上述した形態のキャップ本体1に対して、TEバンド3は、それ自体公知の形態を有するものであり、キャップ本体1のスカート7の下端に破断可能なブリッジ21により繋がっており、このTEバンド3の内面には、係止部材として機能する上向きのフラップ片23が、周方向に間隔をおいて、複数設けられている。
【0022】
即ち、このキャップ50を雌螺条17による螺子係合を利用して、容器口部に螺子固定するとき、TEバンド3の内面から開いた状態にあるフラップ片23は、TEバンド3の内面に面するように閉じた状態となり、これにより容器口部に形成されている顎部を乗り越え、顎部を乗り越えた段階で、その弾性により、フラップ片23は再び開いた状態となる。これが、キャップ50が容器口部に装着された状態である。
【0023】
上記の状態でキャップ50(キャップ本体1)を開栓方向に旋回し、雌螺条17による螺子係合を解除していくと、キャップ本体1は、螺子係合の解除と共に容器口部に沿って上昇するが、TEバンド3は、フラップ片23の先端部が容器の顎部の下面に当接し、係止状態となるため、その上昇が制限される。従って、キャップ本体1の開栓方向への旋回を続けていくと、ブリッジ21に応力が集中し、この結果、ブリッジ21が破断する。このとき、キャップ本体1の開栓方向への旋回を開始した時点から、ブリッジ21が破断するまでの角度がブリッジ21のブレーク角度である。
【0024】
上記の説明から理解されるように、キャップ50を開栓方向に旋回し、キャップ本体1が容器口部から取り外された状態では、ブリッジ21が破断しているため、TEバンド3は、キャップ本体1から切り離されており、容器口部側に残っている。従って、キャップ本体1からTEバンド3が切り離されている事実から、一般の消費者は、このキャップ50(キャップ本体1)は、一度開封されたことがあるという開封履歴を認識することができるわけである。これが、本発明のTEバンド付き螺子キャップ50の機能である。
【0025】
尚、上記の態様では、TEバンド3の内面には、容器顎部への係止手段としてフラップ片23が設けられているが、このような係止手段としては、アンダーカットのようなフック型の突起を用いることも可能である。但し、植物由来度の増大によるブリッジ切れの問題は、フラップ片23を用いたTEバンド3のほうがより顕著となる傾向にあるため、本発明の利点を最大限に活かすためには、フラップ片23を係止手段として用いることが最適である。
【0026】
<キャップ成形材料>
上述した構造の螺子キャップは、ポリエチレンを用いての圧縮成形、射出成形等の成形手段により成形される。
ここで、ポリエチレンとしては、エチレンのホモポリマーのみならず、若干量のα-オレフィン(例えば炭素数が3~7程度のαオレフィン)が共重合されたものであってもよい。
【0027】
本発明において、上記のポリエチレンとしては、バイオポリエチレンと呼ばれるものを含んでいるものが使用される。バイオポリエチレンは、炭酸ガスを吸収して生育する植物から得られるものであり、例えば、サトウキビの搾り汁を取り出した後の残液を発酵させて得られるエタノール(バイオエタノールと呼ばれる)を原料とし、このバイオエタノールを脱水して得られるエチレンを重合して得られる。通常の化石燃料由来のポリエチレン(以下、石油系ポリエチレンと呼ぶ)に比して炭酸ガス排出量がトータルでゼロになるため、バイオポリエチレンの使用は、カーボンニュートラルに大きく寄与する。即ち、このバイオエチレンを多く含むポリエチレンを使用するほど、温室効果ガス(炭酸ガス)を低減することができるわけである。
【0028】
ところで、バイオポリエチレンは、石油系ポリエチレンには含まれていない放射性炭素14Cを含んでいる。従って、この14Cの濃度を測定することにより、市販されているポリエチレン中に含まれるバイオポリエチレンの濃度(即ち、植物由来度)を把握することができる。このような植物由来度の測定方法は、後述する実施例にも示されている様に、ASTM D6866-11に規定されている。
【0029】
本発明では、カーボンニュートラルの見地から、キャップの成形に用いるポリエチレンは、用いる炭素成分の植物由来度が多いほど良く、50質量%以上が好ましい。この植物由来度が50質量%未満のポリエチレンでは、カーボンニュートラルに大きく寄与することができないからである。また、植物由来度が過度に大きいものは、仮に製造できたとしてもコスト的に不満足となってしまう。(バイオポリエチレンは、コスト高のため、通常、石油系ポリエチレンをブレンドして市販されている。)
【0030】
しかし、従来上記のように50質量%以上の量でバイオポリエチレンを含んで前述した形態の螺子キャップ50を成形すると、ブリッジ切れの問題を生じてしまう。即ち、容器口部に装着されたキャップ50を旋回して開封しようとすると、ブリッジ21が延びてしまい、なかなか破断せず、ブリッジ21のブレーク角度が必要以上に大きくなってしまうのである。この傾向は、バイオポリエチレンの含量が多くなるほど(植物由来度が高くなるほど)、顕著となり、ブリッジ21の一部が破断されず、一部のブリッジ21とTEバンド3が繋がったまま、キャップ本体1が容器口部から開栓されてしまうことも生じる。
【0031】
本発明では、上記のようなブリッジ切れの問題を解決するために、200,000以上、特に250,000以上、さらには、分子量分布Mw/Mnが12以上、特に14以上の範囲に調整することが必要である。
即ち、ポリエチレンの植物由来度が高くなるほどブリッジ切れの問題を生じることの理由は解明されていないが、製造されているバイオポリエチレンは、比較的高分子量であるか、或いは分子量分布が狭いグレードのものであり、この結果、植物由来度が高くなると物性のバランスが崩れ、上述したブリッジ切れの問題を生じ易くなっているのではないかと考えられる。しかるに、本発明は、市販の石油由来ポリエチレンを用いて、植物由来度を例えば50質量%以上とすると同時に、重量平均分子量Mwや分子量分布Mw/Mnを上記範囲に調整することにより、植物由来度の高いポリエチレンを使用しながら、ブリッジ切れの問題が解決されたTEバンド3を備えた螺子キャップ50を得ることが可能となる。
【0032】
尚、上記の物性調整は、物性を調整すべき成形用ポリエチレンが有するバイオポリエチレン含有量(植物由来度)やそのMw,Mw/Mnなどに応じて、植物由来度を50質量%未満に低下させずに、Mw或いはMw/Mnが所定の範囲となるように、石油系ポリエチレン(或いはバイオポリエチレン含有のポリエチレン)をブレンドすればよい。
【0033】
また、上記の物性調整にあたっては、例えばメルトフローレート(MFR:190℃)が、1g/10min以上、20g/10min未満の範囲となるようにすることが、圧縮成形や射出成形によりキャップ50を成形する上で好ましい。また、930kg/m以上、より好ましくは940kg/mの密度を確保することが、キャップ50に好適な開栓トルクを持たせる上で好適である。
【0034】
本発明の優れた効果を、次の実施例で説明する。
【実施例
【0035】
<キャップの成形>
圧縮成形によりキャップを作成した。材料は、ドライブレンド法により原料となる複数種の樹脂ペレットをブレンダーにより攪拌し、押出機に供給した。成形温度170℃、成形速度およそ800個/分にて成形した。
【0036】
<評価用サンプルの作製>
呼び径28mmの口頸部を有するポリエチレンテレフタレート製容器に、500mLの水を充填し、口頸部に容器蓋を180N・cmのトルクを加えて装着後、75℃で30秒、30℃で30秒の殺菌処理を行った。
【0037】
<キャップの開栓トルク評価>
作製した評価用サンプル容器を開方向に回転させ、容器の口頸部から離脱した。この際の初期トルク(即ち容器蓋の回転を開始するために必要であった最大トルク)を5個の評価用サンプルで測定し、平均値を開栓トルクの値とした。開栓トルクの値が100N・cm~150N・cmの範囲であれば「○」、それ以外の範囲であれば、「×」とした。
【0038】
<キャップのブリッジ破壊角度の評価>
作製した評価用サンプル容器を開方向に回転させ、容器の口頸部から離脱した。回転開始点からブリッジの破壊が開始するまでの容器蓋の回転角度を5個の評価用サンプルで測定し、平均値をブリッジの破壊角度とした。ブリッジの破壊角度が290°未満であれば「○」、290°以上であれば、TEバンド部が正しく離れない可能性があり、「×」とした。
【0039】
<分子量評価>
キャップをはさみで細かく切断し、o-ジクロロベンゼンに溶解させた。孔径0.5μmのフィルターを用い熱時ろ過し、測定サンプルとした。
装置はアジレント・テクノロジー株式会社製 PL-GPC220を用いた。カラムにはAgilent PLgel Olexisを2本用い、ガードカラムを別途設定した。溶離液はo-ジクロロベンゼン145℃、濃度は0.1wt/vol%、流束1.0mL/分で分析した。検出器は示差屈折計(RI)であった。
得られた分子量分布から、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散度(Mw/Mn)を評価した。
【0040】
<メルトフローレイト(MFR)評価>
装置は東洋精機製melt indexer F-F01を用いた。原料ははさみで細かく切断したキャップを用いた。5分間の試験で得られた質量Mを2倍することで、MFRの値とした。
MFR(g/min)=M×2
【0041】
<バイオマス度の評価>
ASTM D6866-21に従い、B法で炭素同位体である14Cの測定を行う事で、バイオマス度の評価を行った。14Cは大気中では常に生成されるため一定の割合が保たれているが、石油や植物として組織化すると時間とともに減少する。14Cの半減期は5730年であるので、百万年以上地中で貯蔵されている石油では14Cは含まれない。
測定で得られた標準現代炭素に対する試料炭素の14C濃度の割合pMc(percent Modern Carbon、δ13Cによって補正された値)を、キャップのバイオマス度(%)とした。原料のバイオマスは2015年に生産されたとした。
キャップをはさみで細かく切断し、燃焼させて二酸化炭素に変換した。真空ラインで二酸化炭素を精製したのち、鉄触媒下の水素で還元してグラファイトに変換し、測定サンプルとした。測定では、米国国立標準局(NIST)から提供されたシュウ酸を標準試料とした。
装置はNEC社製の14C-AMS専用装置を用いた。
【0042】
<密度の測定>
装置は島津製作所製 乾式密度計Accyupicを使用した。測定セルは10ccで、測定温度は23℃、10回の測定結果の平均値を採用した。キャップをはさみで細かく切断し、セルに入れて測定した。
【0043】
<実施例1>
市販されている石油由来および植物由来のHDPE樹脂を組み合わせて、キャップを作成した。表1の通りの植物由来度、分子量、分子量分布、物性を示す組成が得られた。
【0044】
<比較例1>
市販されている石油由来のHDPE樹脂1種で、キャップを作成した。植物由来度、分子量、分子量分布、物性は表1の通りであった。
【0045】
<比較例2>
実施例1とは異なる、市販されている石油由来および植物由来のHDPE樹脂を組み合わせて、キャップを作成した。植物由来度、分子量、分子量分布、物性は表1の通りであった。
【0046】
<比較例3>
実施例1とは異なる、市販されている石油由来および植物由来のHDPE樹脂を、比較例2とは別の組み合わせにして、キャップを作成した。植物由来度、分子量、分子量分布、物性は表1の通りであった。
【0047】
<比較例4>
市販されている植物由来のHDPE樹脂で、キャップを作成した。植物由来度、分子量、分子量分布、物性は表1の通りであった。
【0048】
【表1】
【符号の説明】
【0049】
1:キャップ本体
3:TEバンド
5:頂板部
7:スカート
9:インナーリング
11:アウターリング
13:小突起
17:雌螺条
19:ローレット
21:ブリッジ
23:フラップ片
図1