(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】断熱扉および貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/02 20060101AFI20241015BHJP
F25D 23/08 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
F25D23/02 304A
F25D23/08 C
(21)【出願番号】P 2022019163
(22)【出願日】2022-02-10
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】板倉 大
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-128836(JP,A)
【文献】実開昭60-063771(JP,U)
【文献】特開2021-038921(JP,A)
【文献】特開2011-102679(JP,A)
【文献】特開2021-119325(JP,A)
【文献】特開昭62-284176(JP,A)
【文献】特開2021-179282(JP,A)
【文献】特開2013-204900(JP,A)
【文献】実開昭54-074366(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02
F25D 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前板、後板、及びこれらの間に配されたフレームと、
前記前板、前記後板、及び前記フレームによって囲まれた空間に配された成形断熱材と、を備え、
前記成形断熱材として、前記前板側に配された第1の成形断熱材と、前記後板側に配されて前記第1の成形断熱材よりも低熱伝導率の第2の成形断熱材と、を備え、
前記第2の成形断熱材は、真空断熱材以外の断熱材であ
り、
前記後板には、扉外部と連通する通気孔が形成され、
前記後板は、四角枠状に形成された土手と、該土手に囲まれた領域に配された格子状の凹凸部を備え、
前記通気孔は、前記土手の近傍に形成されている断熱扉。
【請求項2】
前板、後板、及びこれらの間に配されたフレームと、
前記前板、前記後板、及び前記フレームによって囲まれた空間に配された成形断熱材と、を備え、
前記成形断熱材として、前記前板側に配された第1の成形断熱材と、前記後板側に配されて前記第1の成形断熱材よりも低熱伝導率の第2の成形断熱材と、を備え、
前記第2の成形断熱材は、真空断熱材以外の断熱材であ
り、
前記後板には、扉外部と連通する通気孔が形成され、
前記後板は、格子状の凹凸部を備え、
前記通気孔は、前記凹凸部のそれぞれの凸面部の下端に形成されている断熱扉。
【請求項3】
前板、後板、及びこれらの間に配されたフレームと、
前記前板、前記後板、及び前記フレームによって囲まれた空間に配された成形断熱材と、を備え、
前記成形断熱材として、前記前板側に配された第1の成形断熱材と、前記後板側に配されて前記第1の成形断熱材よりも低熱伝導率の第2の成形断熱材と、を備え、
前記第2の成形断熱材は、真空断熱材以外の断熱材であ
り、
前記第2の成形断熱材は、前記前板側の面と前記後板側の面に防水シートが積層されている断熱扉。
【請求項4】
前板、後板、及びこれらの間に配されたフレームと、
前記前板、前記後板、及び前記フレームによって囲まれた空間に配された成形断熱材と、を備え、
前記成形断熱材として、前記前板側に配された第1の成形断熱材と、前記後板側に配されて前記第1の成形断熱材よりも低熱伝導率の第2の成形断熱材と、を備え、
前記第2の成形断熱材は、真空断熱材以外の断熱材であ
り、
前記後板には、断熱箱体との隙間を密閉するドアパッキンが取り付けられる溝が形成され、
前記第1の成形断熱材には、前記溝が挿入される挿入凹部が形成され、
前記挿入凹部と前記溝との間にはシール材が設けられている断熱扉。
【請求項5】
前記第1の成形断熱材は、前記後板側に向けて開口する凹部を備え、
前記第2の成形断熱材は、前記凹部に収容されている請求項1
から請求項4のいずれか1項に記載の断熱扉。
【請求項6】
前記凹部の側壁は、前記フレーム側に向けて拡大するように傾斜するテーパ面が形成されている
請求項5に記載の断熱扉。
【請求項7】
請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載の断熱扉と、
前記断熱扉によって閉塞する断熱箱体と、を備え、
前記断熱箱体は、冷蔵温度帯の貯蔵室である貯蔵庫。
【請求項8】
請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載の断熱扉と、
前記断熱扉によって閉塞する断熱箱体と、を備え、
前記断熱箱体は、内箱、外箱、これらの間に配された断熱材、及び前記内箱と前記断熱材との間に形成された隙間を備え、
前記内箱は、通気孔を有する貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱扉および貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、成形断熱材に形成された凹部に真空断熱材を嵌め入れた冷蔵庫扉が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の冷蔵庫扉では、真空断熱材が水分にさらされた場合、真空断熱材が劣化するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前板、後板、及びこれらの間に配されたフレームと、前記前板、前記後板、及び前記フレームによって囲まれた空間に配された成形断熱材と、を備え、前記成形断熱材として、前記前板側に配された第1の成形断熱材と、前記後板側に配されて前記第1の成形断熱材よりも低熱伝導率の第2の成形断熱材と、を備え、前記第2の成形断熱材は、真空断熱材以外の断熱材であり、前記後板には、扉外部と連通する通気孔が形成され、前記後板は、四角枠状に形成された土手と、該土手に囲まれた領域に配された格子状の凹凸部を備え、前記通気孔は、前記土手の近傍に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施形態の貯蔵庫を示す外観斜視図である。
【
図2】本実施形態の断熱扉を表側から見たときの分解斜視図である。
【
図3】本実施形態の断熱扉を裏側から見たときの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の貯蔵庫の外観斜視図である。貯蔵庫1は、断熱箱体2と、扉3(断熱扉)と、を備える。断熱箱体2は、左右の側面パネル4,4と、背面パネル5と、天面パネル6と、底面パネル7とを含み、内部に貯蔵室10を有する。なお、貯蔵庫1は、例えば、冷蔵温度帯(例えば、1℃~6℃)を有する冷蔵庫である。なお、貯蔵庫は、冷凍温度帯(例えば、約-20℃~-18℃)を有する冷凍庫、冷蔵及び冷凍機能を有しない貯蔵庫等でもよい。また、図示していないが、貯蔵庫1の底部側には、貯蔵室10を冷却するための冷凍サイクルが、図示しない、コンデンサ、圧縮機、減圧器(キャピラリチューブ)、冷却器などによって構成されている。
【0008】
扉3は、貯蔵室10の前面に形成された開口(不図示)を閉塞するものである。扉3は、断熱箱体2の上部に対して上ヒンジ(不図示)、下部に対して下ヒンジ(不図示)を介して回動可能に固定されている。なお、
図1に示す貯蔵庫1は、右側にヒンジが設けられた右開きの扉3を示して説明しているが、左側にヒンジ(上ヒンジおよび下ヒンジ)が設けられた左開きの扉であってもよい。
【0009】
左右の側面パネル4、背面パネル5、天面パネル6および底面パネル7には、成形断熱材又は真空断熱材の内の少なくとも一方である断熱材(不図示)が配置される。ここで、成形断熱材とは、発泡断熱材の原液を注入して、これを現場発泡させて製造する断熱材を指すものではなく、別の場所で所定の形状に成形された断熱材を指すと解することができる。
【0010】
扉3の上端面には、扉3の延在方向である左右方向に溝3aが形成される。溝3aに使用者の指を引っ掛け、手前側に引っ張ることで、扉3を開けることができる。貯蔵庫1の高さは、例えば150cm以下、好ましくは100cm以下、より好ましくは75cm以下である。
【0011】
図2は、本実施形態の断熱扉を表側から見たときの分解斜視図である。
図3は、本実施形態の断熱扉を裏側から見たときの分解斜視図である。
図2および
図3に示すように、扉3は、ドアパネル31(前板)、ドアライナ32(後板)、ドアフレーム33(フレーム)、成形断熱材34、ドアパッキン35を備えて構成されている。
【0012】
ドアパネル31は、例えば、射出成型されたABS樹脂(acrylonitrile butadiene styrene copolymer)製であり、四角板状に形成されている。また、ドアパネル31の正面は、平坦な面になるように形成されている(
図2参照)。ドアパネル31の裏面には、ドアフレーム33と嵌合する複数の爪31aと、ドアフレーム33とねじ固定するための複数のボス31bとが形成されている(
図3参照)。爪31aは、ドアパネル31の外周縁部に周方向に間隔を空けて形成されている。ボス31bは、例えばドアパネル31の四隅などに形成されている。
【0013】
ドアライナ32は、例えば、射出成型されたPP(polypropylene)樹脂製であり、四角板状に形成されている。また、ドアライナ32の裏面には、ドアフレーム33と嵌合する複数の爪32aが形成されている。爪32aは、ドアライナ32の外周縁部に周方向に間隔を空けて形成されている。また、ドアライナ32には、格子状に形成された凹凸部32bが形成されている。この凹凸部32bは、外周縁部を除くほぼ全面に形成されている。このように凹凸部32bを形成することで、ドアライナ32を一枚の板で製造したときに補強することができ、板の反りを抑えることができる。
【0014】
ドアフレーム33は、例えば、射出成型されたABS樹脂製であり、ドアパネル31とドアライナ32との間に配置される。また、ドアフレーム33は、ドアパネル31とドアライナ32の4辺(上下左右)の外周縁部に沿って配置される四角枠状の部材である。
【0015】
ところで、ウレタン充填・発泡させた断熱材ではなく、予め成形されたウレタン(成形断熱材34)と扉の構成部材(ドアパネル31、ドアライナ32、ドアフレーム33)との間には隙間が生じるため、成形断熱材34は空気に触れることになり、隙間を介して結露も発生する。このため、断熱材として真空断熱材を用いると、真空断熱材に水などが触れた場合、真空断熱材が劣化するおそれがある。また、減圧系の真空断熱材の場合、劣化して空気がリークすると、断熱性能の低下が激しくなる。そこで、扉3に収容する断熱材として、真空断熱ではなく、成形断熱材34とした。
【0016】
成形断熱材34は、ドアパネル31、ドアライナ32およびドアフレーム33によって囲まれる空間S(
図5参照)に配置され、第1の成形断熱材34Aと、第2の成形断熱材34Bとによって構成されている。なお、第1の成形断熱材34Aと第2の成形断熱材34Bは、いずれも空間Sに発泡断熱材の原液を注入して、これを発泡させて製造する断熱材を指すものではなく、所定の形状に成形された断熱材を指している。また、第1の成形断熱材34Aと第2の成形断熱材34Bは、真空断熱材以外の断熱材である。なお、真空断熱材とは、例えば、グラスウールやウレタン等の芯材を、ガスバリア性を有する外包材で包んで減圧して構成されるものである。
【0017】
また、第2の成形断熱材34Bは、第1の成形断熱材34Aよりも低熱伝導率のものである。換言すると、第2の成形断熱材34Bは、第1の成形断熱材34Aよりも断熱性が高いものである。なお、真空断熱材以外の断熱材としての第1の成形断熱材34Aは、例えばスチレン系樹脂発泡体、硬質ポリエチレン樹脂発泡体などによって構成されている。また、第1の成形断熱材34Aは、ドアフレーム33に形成された突起物などの形状を逃げるように切り欠いて形成されている。また、真空断熱材以外の断熱材としての第2の成形断熱材34Bは、例えば硬質ウレタン系樹脂発泡体などによって構成されている。また、第1の成形断熱材34Aとしてのスチレン系樹脂発泡体は、第2の成形断熱材34Bとして適用されるウレタン系の断熱材よりも成形性に優れ、ドアフレーム33などの形状に沿って製造することが容易である。
【0018】
ドアパッキン35は、扉3を閉じたときに断熱箱体2(
図1参照)と扉3との隙間を密閉するものであり、四角枠状に形成されている。また、ドアパッキン35は、ドアライナ32に四角枠状に形成された溝32c(
図5参照)に取り付けられる。
【0019】
図4は、本実施形態の断熱扉の背面図である。なお、
図4は、
図2および
図3に示す各部材を組み立てた後の扉3を示している。
図4に示すように、ドアライナ32の外周には、四角枠状に形成されたドアパッキン35が取り付けられる。また、ドアライナ32には、ドアパッキン35の内周側に、格子状に形成された凹凸部32bが、ドアパッキン35の内周側のほぼ全面に形成されている。
【0020】
凹凸部32bは、横方向(水平方向、左右方向)に直線状に延びる凹条部(溝)32b1が形成されている。この凹条部32b1は、上下方向に間隔を置いて複数(本実施形態では5本)形成されている。また、凹凸部32bは、縦方向(上下方向)に直線状に延びる凹条部(溝)32b2が形成されている。この凹条部32b2は、左右方向に間隔を置いて複数(本実施形態では20本)形成されている。すなわち、凹条部32b1,32b2によって区画された四角形状の凸面部32b3が
図4の紙面に対して垂直方向手前側に突出するように形成されている。
【0021】
図5は、
図4のV-V線断面図、
図6は、
図4のVI-VI線断面図である。
図5および
図6に示すように、第1の成形断熱材34Aには、扉3を閉じたときの庫内側に対向する側に凹面が向くように凹部40が形成されている。この凹部40は、ドアパネル31と平行な底壁40aと、この底壁40aの外周縁部からドアライナ32側に向けて起立する側壁40bと、を有している。側壁40bは、底壁40aから開口側(ドアライナ32側)に向けて拡大するように傾斜するテーパ面40b1が形成されている。このように側壁40bにテーパ面40b1が形成されていることで、第2の成形断熱材34Bを第1の成形断熱材34Aの凹部40に挿入し易くなる。なお、本実施例では凹部40と第2の成形断熱材34Bとの隙間にシール材を設けていないが隙間にシール材を設けて成形断熱材34を構成してもよい。
【0022】
第2の成形断熱材34Bは、四角板状に形成され、第1の成形断熱材34Aの凹部40に嵌め込まれている。このように、第1の成形断熱材34Aよりも断熱性能の高い第2の成形断熱材34Bを、第1の成形断熱材34Aよりも内側(断熱箱体2に近い側)に配置している。これにより、扉3の端から逃げる熱を少なくすることができ、扉3の断熱性能を高くできる。
【0023】
また、第2の成形断熱材34Bの厚みは、凹部40の深さとほぼ同じになるように形成されている。このとき、第2の成形断熱材34Bを凹部40に収容したときに、第2の成形断熱材34Bのドアライナ32側の面と、第1の成形断熱材34Aのドアライナ32側の面とが、ほぼ面一になっている。
【0024】
また、ドアライナ32の外周縁部には、ドアパッキン35が取り付けられる溝32cが形成されている。この溝32cは、ドアライナ32の凹凸部32bの面よりも前後方向のドアパネル31側に位置している。
【0025】
また、ドアライナ32には、凹凸部32bと溝32cとの間には、断熱箱体2(
図1参照)に向けて突出する土手部32dが形成されている。この土手部32dは、凹凸部32bの周囲を取り囲むように四角枠状に形成されている。また、第2の成形断熱材34Bは、土手部32dよりも内側(内周側)に位置している。つまり、土手部32dから外側においては、第1の成形断熱材34Aのみが収容されている。
【0026】
また、第2の成形断熱材34Bの厚み寸法T1は、第1の成形断熱材34Aの凹部40とドアパネル31との間の厚み寸法T2よりも厚く形成されている。このように厚み寸法T1を厚み寸法T2よりも厚く形成することで、扉3全体の厚さを抑えつつドアパネル31の正面から逃げる熱を抑えることができ、扉3の断熱性能を高くできる。
【0027】
図7は、
図5のA部拡大図である。
図7に示すように、ドアライナ32には、ドアパッキン35(
図4参照)が取り付けられるドアパッキン溝(取付溝)としての溝32cが形成されている。溝32cは、凹面が後方(断熱箱体2側)を向くように凹状に形成されている。
【0028】
また、ドアライナ32は、溝32cよりも外側の板厚の厚み寸法をT10、溝32cよりも内側(凹凸部32b側)の板厚の厚み寸法をT20、溝32cの板厚の厚み寸法をT30とする。この場合、ドアライナ32は、板厚が一様ではなく、T10>T20>T30となるように構成されている。例えば、T10は2mm、T20は1.5mm、T30は1mmとすることができる。
【0029】
このように、ドアライナ32の溝32cよりも外周の板厚を厚くT30にすることで、ドアライナ32を金型によって製造する際の強度を確保することができる。また、庫内と対向する面(中央側)のドアライナ32の板厚をT20にすることで内容積を確保することができ、成形性が損なわれるのを防止できる。また、溝32cをT30にする(薄く形成する)ことで、型抜きをし易くできる。
【0030】
図8は、
図6のB部拡大図である。
図8に示すように、第2の成形断熱材34Bの前後の面には、アルミニウム製のシート51,52(防水シート)が設けられている。シート51は、凹部40の底壁40aに対向する面に積層されている。シート52は、ドアライナ32に対向する面に積層されている。このように防水性のあるシート51,52を第2の成形断熱材34Bに設けることで、仮に結露が発生したとしても、硬質ウレタン系発泡体などからなる第2の成形断熱材34Bの側に結露水が浸み込むのが抑えられ、第2の成形断熱材34Bが劣化するのを抑えることができる。
【0031】
なお、第2の成形断熱材34Bの凹部40の側壁40bに対向する面には、防水シートが設けられておらず、第2の成形断熱材34Bの硬質ウレタン系発泡体が露出している。しかし、この面は、庫内の低温空気による影響が達しにくく、結露が発生しにくいところなので、防水シートの必要性が低い。また、本実施形態では、防水性のシート51,52を設けた場合を例に挙げて説明したが、シート51,52を設けずに、硬質ウレタン系の発泡体のみからなるものであってもよい。また、金属製のシート51,52に替えて、樹脂製のシートであってもよい。
【0032】
また、第1の成形断熱材34Aには、ドアパッキン35が挿入される溝32c(凸形状部)が挿入されるように切り欠かれた挿入凹部34sが形成されている。この挿入凹部34sには(溝32cの第1の成形断熱材34A側)、シール材36が設けられ、シール材36が挿入された後にドアライナ32の溝32cが挿入される。このシール材36は、例えば軟質ウレタン系樹脂であり、溝32cを挿入凹部34sに挿入することでシール材36が潰され、ドアパッキン35の位置において溝32cと挿入凹部34sとの間におけるシール性が確保される。これにより、ドアパッキン35が取り付けられる溝32cよりも外側に形成された隙間から湿度の高い空気が侵入したとしても、溝32cの位置で多湿の空気が中央側(第2の成形断熱材34B側)に流れ込むのを抑制でき、第2の成形断熱材34Bにおいて結露が発生するのを抑えることができる。
【0033】
図9は、
図8のC部拡大図である。
図9に示すように、ドアライナ32には、凹凸部32bが形成されているため、凸面部32b3と第2の成形断熱材34Bとの間には、隙間S1が形成される。凹凸部32bの凹条部32b1には、隙間S1と扉3の外部(扉外部)とを連通する通気孔32sが形成されている。この通気孔32sは、凸面部32b3の下端部に位置して、上下方向(鉛直方向)下方に向けて開口している。また、通気孔32sは、すべての凸面部32b3の下端部に形成されている。このように、通気孔32sを形成することで、隙間S1に結露水Wが発生したとしても結露水Wを通気孔32sから扉外部に排出することができる。また、通気孔32sを下端部において下向きに形成することで、ユーザから通気孔32sを目立たなくすることができる。なお、図示していないが、凸面部32b3の上端部に通気孔を形成してもよい。
【0034】
図10は、
図4のD部拡大斜視図である。
図10に示すように、凹条部32b2の延在方向端部に通気孔32tが形成されている。なお、
図10では、凹状部32b2の上端に形成されている例を示したが、凹状部32b2の延在方向の下端部に通気孔を形成してもよく、また、凹状部32b1の延在方向端部(左端部、右端部)に通気孔を形成してもよい。この場合、凹条部32b1,32b2の近傍には土手32dが位置することとなるため、通気孔32tを目立ちにくくすることができる。
【0035】
なお、扉3と同様、断熱箱体2に通気孔を設けてもよい。具体的には、断熱箱体2として、庫内側の壁面を形成する内箱と庫外側の壁面を形成する外箱を使用する。これらの内部に設ける断熱材として、成形断熱材を使用する。内箱に対向する真空断熱材や成形断熱材は、内箱との間に隙間を形成するため、結露対策の観点から、内箱に通気孔を設けることができる。また、扉3についても断熱箱体2についても、真空断熱材に何らかの手当てを施して結露による劣化を抑制する目途が立てば、真空断熱材を使用してもよい。
【0036】
図11は、
図4のXI-XI線断面図である。
図11に示すように、ドアライナ32の外周に形成された爪32aは、ドアフレーム33と嵌合している。この爪32aの嵌合状態を(係合状態)解除するためには工具(不図示)が必要であるため、工具を挿入して嵌合状態を解除するための隙間S10が形成されている。この隙間S10を水抜き孔として機能させて、結露水を排出することが可能になる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の扉3は、ドアパネル31、ドアライナ32、及びこれらの間に配されたドアフレーム33と、ドアパネル31、ドアライナ32、及びドアフレーム33によって囲まれた空間Sに配された成形断熱材34と、を備える。成形断熱材34として、ドアパネル31側に配された第1の成形断熱材34Aと、ドアライナ32側に配されて第1の成形断熱材34Aよりも低熱伝導率の第2の成形断熱材34Bと、を備え、第2の成形断熱材34Bは、真空断熱材以外の断熱材である。これにより、真空断熱材を配置しないことで、仮に扉3内において結露が発生したとしても、成形断熱材(第1の成形断熱材34Aおよび第2の成形断熱材34B)が劣化するのを防止できる。
【0038】
また、本実施形態において、第1の成形断熱材34Aは、ドアライナ32側に向けて開口する凹部40を備え、第2の成形断熱材34Bは、凹部40に収容されている。これによれば、内側(ドアライナ32側)に第2の成形断熱材34Bを配置することで断熱性能を高めることができる。
【0039】
また、本実施形態において、ドアライナ32は、格子状の凹凸部32bを備えている。これによれば、ドアライナ32を補強することができ、ドアライナ32の反りを抑えることができる。
【0040】
また、本実施形態において、ドアライナ32には、扉外部と連通する通気孔32sが形成されている。これによれば、ドアライナ32の表面の結露を防止することができる。
【0041】
また、本実施形態において、ドアライナ32は、四角枠状に形成された土手32dと、該土手32dに囲まれた領域に配された格子状の凹凸部32bを備え、通気孔32tは、土手32dの近傍に形成されている。これによれば、通気孔32tを目立ちにくくすることができる。
【0042】
また、本実施形態において、ドアライナ32は、格子状の凹凸部32bを備える。通気孔32sは、凹凸部32bのそれぞれの凸面部32b3の下端に形成されている。これによれば、ユーザに通気孔32sを目立たなくさせることができる。
【0043】
また、本実施形態において、第2の成形断熱材34Bは、ドアパネル31側の面とドアライナ32側の面に防水性のシート51,52が積層されている。これによれば、第2の成形断熱材34Bに対して結露水が浸み込むことを防止できる。
【0044】
また、本実施形態において、凹部40の側壁40bは、ドアフレーム33側に向けて拡大するように傾斜するテーパ面40b1が形成されている。これによれば、第2の成形断熱材34Bを第1の成形断熱材34Aの凹部40に挿入し易くなり、製造し易くなる。
【0045】
また、本実施形態において、ドアライナ32には、断熱箱体2との隙間を密閉するドアパッキン35が取り付けられる溝32cが形成されている。第1の成形断熱材34Aには、溝32cが挿入される挿入凹部34sが形成される。挿入凹部34sと溝32cとの間にはシール材36が設けられている。これによれば、外部から扉3内のドアライナ32と第1の成形断熱材34Aとの隙間に入る多湿の空気が溝32cの位置で遮断される。その結果として、第2の成形断熱材34B側に多湿の空気が流れ込むのを抑制することができ、第2の成形断熱材34Bの劣化を抑えることが可能になる。
【0046】
また、本実施形態の貯蔵庫1は、扉3と、扉3によって閉塞する断熱箱体2と、を備え、断熱箱体2は、冷蔵温度帯の貯蔵室である。これによれば、結露水が凍ることがなくなり、結露水の水と氷の繰り返しによる劣化の影響を抑えることができる。
【0047】
また、本実施形態の貯蔵庫1は、扉3と、扉3によって閉塞する断熱箱体2と、を備え、断熱箱体2は、内箱、外箱、これらの間に配された断熱材、及び内箱と断熱材との間に形成された隙間を備え、内箱は、通気孔を有する。
【0048】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例を含むことができる。例えば、ドアパネル31とドアフレーム33とが樹脂成形によって一体に形成されたものであってもよく、またドアライナ32とドアフレーム33とが樹脂成形によって一体に形成されたものであってもよい。これにより、扉3の組み立てを簡略化できる。
【符号の説明】
【0049】
1 貯蔵庫
2 断熱箱体
3 扉(断熱扉)
10 貯蔵室
31 ドアパネル(前板)
32 ドアライナ(後板)
32b 凹凸部
32b1,32b2 凹条部
32b3 凸面部
32c 溝
32d 土手
32s,32t 通気孔
33 ドアフレーム(フレーム)
34 成形断熱材
34A 第1の成形断熱材
34B 第2の成形断熱材
34s 挿入凹部
35 ドアパッキン
36 シール材
40 凹部
40a 底壁
40b 側壁
40b1 テーパ面
51,52シート(防水シート)
S 空間