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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】原子力発電所の防災用扉構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20241015BHJP
   E06B 7/23 20060101ALI20241015BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/23 Z
E04H9/14 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022051577
(22)【出願日】2022-03-28
(65)【公開番号】P2023144545
(43)【公開日】2023-10-11
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉晃
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-129720(JP,A)
【文献】実開昭59-102784(JP,U)
【文献】特開2015-004366(JP,A)
【文献】国際公開第99/011537(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/043740(WO,A1)
【文献】特開2011-257277(JP,A)
【文献】特開2016-156220(JP,A)
【文献】特開2022-181442(JP,A)
【文献】特開2023-006442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00-5/00
E06B 7/00-7/36
E04H 9/00-9/16
E05G 1/00
G21F 3/00
G21C 13/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に比べて端部が薄くなるように段差状に形成された扉と、
コンクリート躯体の開口部に固定される扉枠と、
前記扉の裏面において前記端部の外周に沿って設けられた耐火パッキンと、
前記扉の裏面において前記中央部の外周に沿って設けられた水密パッキンと、を有し、
前記耐火パッキンと前記水密パッキンとが前記扉の段差方向にずれて設置されている、
ことを特徴とする原子力発電所の防災用扉構造。
【請求項2】
中央部に比べて端部が薄くなるように段差状に形成された扉と、
コンクリート躯体の開口部に固定される扉枠と、
前記扉の裏面において前記端部の外周に沿って設けられた水密パッキンと、
前記扉の裏面において前記中央部の外周に沿って設けられた耐火パッキンと、を有し、
前記水密パッキンと前記耐火パッキンとが前記扉の段差方向にずれて設置されている、
ことを特徴とする原子力発電所の防災用扉構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の原子力発電所の防災用扉構造であって、
前記扉の内部に耐火性能を有する断熱材が設置されている、
ことを特徴とする原子力発電所の防災用扉構造。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の原子力発電所の防災用扉構造であって、
前記扉の内部に放射線遮蔽性能を有する遮蔽材が設置されている、
ことを特徴とする原子力発電所の防災用扉構造。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の原子力発電所の防災用扉構造であって、
前記扉は、閉鎖時に、表面側の幅広部が前記コンクリート躯体の開口部の内部に入り込むように構成されており、
前記扉の閉鎖時に、前記耐火パッキンと前記水密パッキンとが前記コンクリート躯体の開口部の内部で前記扉枠に当接する、
ことを特徴とする原子力発電所の防災用扉構造。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の原子力発電所の防災用扉構造であって、
前記扉は、閉鎖時に、表面側の幅広部が前記コンクリート躯体の開口部の外部に配置されるように構成されており、
前記扉の閉鎖時に、前記扉の幅広部に設けられたパッキンが前記コンクリート躯体の表面で前記扉枠に当接するとともに、前記扉の幅広部以外の部位に設けられたパッキンが前記コンクリート躯体の開口部の内部で前記扉枠に当接する、
ことを特徴とする原子力発電所の防災用扉構造。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の原子力発電所の防災用扉構造であって、
前記扉は、表面側の幅広部と、裏面側の幅狭部と、を有する2段構造になっている、
ことを特徴とする原子力発電所の防災用扉構造。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の原子力発電所の防災用扉構造であって、
前記扉は、表面側の幅広部と、裏面側の幅狭部と、幅広部と幅狭部との間の中間部と、を有する3段構造になっている、
ことを特徴とする原子力発電所の防災用扉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所の防災用扉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所について、日本では、自然災害やシビアアクシデント対策等を取り入れた新しい規制基準が策定されている。新しい規制基準では、従来から原子力発電所の設計に取り込まれていた火災に対する考慮や、耐津波性能に対する要件(内部ハザードへの要件)が強化されている。内部ハザードへの対応として火災区画及び水密区画の見直しと、区画設定に合わせた耐火扉、水密扉の追設が行われている。
火災区画と水密区画とが重複する箇所には、耐火扉と水密扉の2つを別々に取り付ける必要があり、建屋の設計及びコストが大きくなっている。
【0003】
特許文献1では、津波、津波火災、及び土石流災害に対して耐水性能、耐火性能、耐土圧性能を確保した、操作が簡単な防災用扉構造及び耐火シェルターが開示されている。具体的には、2重構造扉となっている外扉と内扉が、扉枠に回動可能に固定され、外扉、及び内扉の裏面の外周部に沿って耐火パッキンが環状に設けられており、その内側に耐水パッキンが並設されている。水密パッキンの内部領域全面に断熱材が張り付けられている。水密パッキン、及び耐火パッキンは保持部材に収容される構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/043740号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原子力発電所の内部ハザードに対する区分分離を合理的に達成するために、水密性能、耐火性能をすべてを備えることが、防災用扉構造に求められている。
【0006】
本発明の課題は、津波等による外部溢水、配管破断等による内部溢水及び火災の影響拡大を防止するため、耐水性能、耐火性能を確保した防災用扉構造を提供することである。
【0007】
特許文献1に開示された従来技術は、耐火パッキンと水密パッキンとが並設されているため、火災に起因する火炎熱からの水密パッキンの保護が困難な場合がある。また、原子炉建屋内のような厚いコンクリート壁に適用可能な構造か開示されていない。
【0008】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、扉に伝わる熱の影響から水密パッキンを保護する原子力発電所の防災用扉構造を提供することを主な目的とする。その他の課題解決の目的は、発明を実施するための形態において適宜説明する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、原子力発電所の防災用扉構造であって、中央部に比べて端部が薄くなるように段差状に形成された扉と、コンクリート躯体の開口部に固定される扉枠と、前記扉の裏面において前記端部の外周に沿って設けられた耐火パッキンと、前記扉の裏面において前記中央部の外周に沿って設けられた水密パッキンと、を有し、前記耐火パッキンと前記水密パッキンとが前記扉の段差方向にずれて設置されている、構成とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、扉に伝わる熱の影響から水密パッキンを保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る原子力発電所の防災用扉構造の模式図である。
図2】第1変形例の原子力発電所の防災用扉構造の模式図である。
図3】第2変形例の原子力発電所の防災用扉構造の模式図である。
図4】第3変形例の原子力発電所の防災用扉構造の模式図である。
図5】第4変形例の原子力発電所の防災用扉構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0013】
<原子力発電所の防災用扉構造>
以下、図1を参照して、本実施形態に係る原子力発電所の防災用扉構造10について説明する。図1は、原子力発電所の防災用扉構造10の模式図である。ここでは、扉11が開く側の面を「表面」とし、扉11が閉まる側の面を「裏面」として説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る原子力発電所の防災用扉構造10は、中央部11aに比べて端部11bが薄くなるように段差状に形成された扉11と、コンクリート躯体12の開口部12aに固定される扉枠15と、扉11の裏面において端部11bの外周に沿って設けられた耐火パッキン13と、扉11の裏面において中央部11aの外周に沿って設けられた水密パッキン14と、扉11と扉枠15とを接続して扉11を開閉自由に支持するヒンジ16と、を有する。以下、「端部11bの外周」を「端部外周」又は「外周端部」と称する場合がある。また、「中央部11aの外周」を「中央部外周」又は「外周中央部」と称する場合がある。
【0015】
扉11は、表面側の幅が広い部分(幅広部)と、裏面側の幅が狭部分(幅狭部)と、を有する。耐火パッキン13は扉11の幅広部の裏面に設けられ、水密パッキン14は扉11の幅狭部の裏面に設けられる。したがって、耐火パッキン13と水密パッキン14とは、扉11の段差方向にずれて設置されている。
【0016】
本実施形態に係る防災用扉構造10は、コンクリート躯体12に形成された段差状の開口部12aを閉止するために原子力発電所に設けられる。本実施形態では、防災用扉構造10は、扉11が表面側の幅広部と裏面側の幅狭部とを有する2段構造になっているとともに、開口部12aが2つの段差を有している。そして、防災用扉構造10は、扉11の全部が開口部12aの2つの段差の内部に収納される構造(つまり、扉11の全部がコンクリート躯体12に埋め込まれる構造)になっている。したがって、防災用扉構造10は、扉11の閉鎖時に、扉11の幅広部がコンクリート躯体12の開口部12aの内部に入り込むように構成されている。
【0017】
扉11が閉状態である場合に、コンクリート躯体12の開口部12aの内部で、耐火パッキン13と扉枠15が密着する。また、コンクリート躯体12の開口部12aの内部で、水密パッキン14と扉枠15が密着し、扉11と扉枠15との間の隙間が封止された状態となる。そのため、建屋内に浸水したとしても、防災用扉構造10はその水圧に耐えることができる。
【0018】
扉11が閉状態である場合に、火炎熱により扉11に熱が伝わり、耐火パッキン13の温度が上昇すると、防災用扉構造10は、耐火パッキン13が膨張することで扉11と扉枠15との間の隙間を封止し、室内への火炎の侵入を防ぐことができる。また、耐火パッキン13の内側にある水密パッキン14の温度上昇を抑えて水密性能の劣化から保護することができ、火災後の浸水が考慮される場合であっても水密性能を維持することができる。
【0019】
防災用扉構造10は、扉11の内部に断熱材17を設けることができる。これにより防災用扉構造10は耐火性能を向上することができる。
【0020】
また、防災用扉構造10は、扉11の内部に遮蔽材18を設けることもできる。これにより防災用扉構造10は放射線の遮蔽機能を有することもできる。
【0021】
図1に示す例では、断熱材17と遮蔽材18は、扉11の幅広部の内部に設けられている。断熱材17は、扉11の幅広部の遮蔽材18よりも表面に近い側の部分(表面部)に配置されている。一方、遮蔽材18は、扉11の幅広部の断熱材17よりも裏面に近い側の部分(裏面部)でかつ耐火パッキン13の内側の部分に配置されている。
【0022】
扉体は、一例としてスチール材(ステンレススチール材でも可能)で構成することができる。
耐火パッキン13は、一例として耐熱性の発泡スチロールで構成することができる。
水密パッキン14は、一例としてシリコーンで構成することができる。
断熱材17は、一例としてウレタンで構成することができる。
遮蔽材18は、一例として鉄板で構成することができる。
【0023】
扉11(扉体)は、複数のパーツで構成されている。
幅広部は、表面部と中部(断熱材17)と裏面部とを有する。裏面部は、一例として鉄板で構成することができる。中部は、断熱材17で構成することができる。裏面部は、一例として鉄骨と鉄板で構成することができる。本実施形態では、裏面部には、遮蔽材18が埋め込まれている。ただし、遮蔽材18は、幅狭部に埋め込むようにしたり、幅広部の裏面部と幅狭部の双方に埋め込むようにしたりすることができる。つまり、遮蔽材18は、幅広部と幅狭部のいずれか一方又は双方に配置することができる。
幅狭部は、一例として鉄骨と鉄板で構成することができる。
【0024】
このような防災用扉構造10は、火災炎並びに扉11に伝わる熱の影響から水密パッキン14を保護することができ、火災の発生後であっても水密性能を保持することができる。したがって、本発明によれば、水密性能と耐火性能の双方を有する原子力発電所の防災用扉構造10を提供できる。
【0025】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、実施形態の構成に他の構成を加えることも可能である。さらに、各構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換が可能である。
【0026】
[第1変形例]
例えば、原子力発電所の防災用扉は、場所によっては、扉11の裏面側から火災熱が伝わり、幅広部よりも幅狭部の方の耐火性能を向上させることが要望される可能性がある。そこで、原子力発電所の防災用扉は、前記した防災用扉構造10と図2に示す第1変形例の防災用扉構造10Aとが混在する構成にしてもよい。図2は、第1変形例の原子力発電所の防災用扉構造10Aの模式図である。
【0027】
図2に示すように、第1変形例の原子力発電所の防災用扉構造10Aは、前記した実施形態に係る原子力発電所の防災用扉構造10(図1参照)と比較すると、水密パッキン14が扉11の幅広部の裏面に設けられ、耐火パッキン13が扉11の幅狭部の裏面に設けられる点で相違する。
【0028】
第1変形例の原子力発電所の防災用扉構造10Aは、原子力発電所の内の、扉11の裏面側から火災熱が伝わり易い場所に設けることで、水密パッキン14の温度上昇を抑えて水密性能の劣化から保護することができ、火災後の浸水が考慮される場合であっても水密性能を維持することができる。
【0029】
[第2変形例]
また、例えば、前記した実施形態の原子力発電所の防災用扉構造10は、図3に示す第2変形例の原子力発電所の防災用扉構造10Bのように変形することができる。
【0030】
図3に示すように、第2変形例の原子力発電所の防災用扉構造10Bは、前記した実施形態の原子力発電所の防災用扉構造10(図1参照)と比較すると、以下の点で相違する。
(1)コンクリート躯体B12の開口部12aが1つの段差を有しており、扉B11の幅狭部が開口部12aの1つの段差の内部に収納される構造(つまり、扉B11の幅広部がコンクリート躯体B12に埋め込まない構造)になっている点。
(2)遮蔽材18が、扉B11の幅広部ではなく、扉B11の幅狭部に配置されている点。
なお、遮蔽材18は、扉B11の幅狭部において、水密パッキン14よりも表面に近い側の部分に配置されている。
【0031】
扉B11は、閉鎖時に、幅広部がコンクリート躯体B12の開口部12aの外部に配置されるように構成されている。第2変形例の原子力発電所の防災用扉構造10Bは、扉B11の閉鎖時に、扉B11の幅広部に設けられたパッキンがコンクリート躯体B12の表面で扉枠15に当接するとともに、扉B11の幅広部以外の部位(ここでは、幅狭部)に設けられたパッキンがコンクリート躯体B12の開口部12aの内部で扉枠15に当接する構造になっている。
【0032】
第2変形例の原子力発電所の防災用扉構造10Bは、扉B11の端部外周をコンクリート躯体B12に埋め込まない設置構造になっている。第2変形例の原子力発電所の防災用扉構造10Bは、コンクリート壁が比較的薄い場合や、開口部12aを2段構造にできない場合、既設の扉を改造して設置する場合に適用可能である。
【0033】
[第3変形例]
また、例えば、前記した第2変形例の原子力発電所の防災用扉構造10B(図3参照)は、図4に示す第3変形例の原子力発電所の防災用扉構造10Cのように変形することができる。
【0034】
図4に示すように、第3変形例の原子力発電所の防災用扉構造10Cは、第2変形例の原子力発電所の防災用扉構造10B(図3参照)と比較すると、以下の点で相違する。
(1)コンクリート躯体C12の開口部12aが2つの段差を有するとともに、扉C11が幅広部と、幅狭部と、幅広部と幅狭部との間の中間部(中段部)の3つの段差を有する3段構造になっており、扉C11の幅狭部と中間部が開口部12aの2つの段差の内部に収納される構造(つまり、扉C11の幅広部がコンクリート躯体C12に埋め込まない構造)になっている点。
(2)遮蔽材18が、扉C11の幅狭部ではなく、扉C11の中間部に配置されている点。
(3)耐火パッキン13が扉C11の中間部に配置されている点。
なお、扉C11の中間部の裏面において、耐火パッキン13は、端部11cの外周に沿って設けられている。また、遮蔽材18は、扉C11の中間部において、耐火パッキン13よりも表面に近い側の部分に配置されている。なお、扉C11の中間部は、耐火パッキン13の代わりに、又は耐火パッキン13に加えて、水密パッキン14を設けるようにしてもよい。
【0035】
扉C11は、閉鎖時に、幅広部がコンクリート躯体C12の開口部12aの外部に配置されるように構成されている。第3変形例の原子力発電所の防災用扉構造10Cは、扉C11の閉鎖時に、扉C11の幅広部に設けられたパッキンがコンクリート躯体C12の表面で扉枠15に当接するとともに、扉C11の幅広部以外の部位(ここでは、中間部と幅狭部)に設けられたパッキンがコンクリート躯体B12の開口部12aの内部で扉枠15に当接する構造になっている。
【0036】
第3変形例の原子力発電所の防災用扉構造10Cは、扉C11の中間部に耐火パッキン13と水密パッキン14のいずれか一方又は双方をさらに設けることで、耐火性能や水密性能を向上させることができる。
【0037】
[第4変形例]
また、例えば、前記した第3変形例の原子力発電所の防災用扉構造10C(図4参照)は、図5に示す第4変形例の原子力発電所の防災用扉構造10Dのように変形することができる。
【0038】
図5に示すように、第4変形例の原子力発電所の防災用扉構造10Dは、第3変形例の原子力発電所の防災用扉構造10C(図4参照)と比較すると、以下の点で相違する。
(1)コンクリート躯体D12の開口部12aが3つの段差を有するとともに、扉D11の全部が開口部12aの3つの段差の内部に収納される構造(つまり、扉D11の幅広部と中間部と幅狭部がコンクリート躯体D12に埋め込まれる構造)になっている点。
なお、扉D11の中間部の裏面において、耐火パッキン13は、端部11cの外周に沿って設けられている。扉D11の中間部は、耐火パッキン13の代わりに、又は耐火パッキン13に加えて、水密パッキン14を設けるようにしてもよい。
【0039】
扉D11は、閉鎖時に、幅広部がコンクリート躯体D12の開口部12aの内部に入り込むように構成されている。第4変形例の原子力発電所の防災用扉構造10Dは、扉D11の閉鎖時に、耐火パッキン13と水密パッキン14とがコンクリート躯体D12の開口部12aの内部で扉枠15に当接する構造になっている。
【0040】
図5に示すように、コンクリート躯体D12の開口部12aの段差は2段以上設けてもよい。そして、第4変形例の原子力発電所の防災用扉構造10Dは、扉D11の段差も増やし、扉D11の全部が開口部12aの段差の内部に収納される構造にするとともに、耐火パッキン13や水密パッキン14等のパッキンを追加で設けることで、追加したパッキンの種類に応じて耐火性能、水密性能をさらに向上することができる。
【符号の説明】
【0041】
10,10A,10B,10C,10D 防災用扉構造
11,B11,C11,D11 扉
11a 中央部
11b,11c 端部
12,B12,C12,D12 コンクリート躯体
12a 開口部
13 耐火パッキン
14 水密パッキン
15 扉枠
16 ヒンジ
17 断熱材
18 遮蔽材
図1
図2
図3
図4
図5