(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 27/00 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
F16K27/00 C
(21)【出願番号】P 2022067677
(22)【出願日】2022-04-15
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100213757
【氏名又は名称】竹内 詩人
(72)【発明者】
【氏名】森 未帆
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-098471(JP,A)
【文献】特開2000-097358(JP,A)
【文献】特開2007-056954(JP,A)
【文献】特開2003-065458(JP,A)
【文献】特開2009-052634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00-27/12
F16K 31/00-31/05
F16B 7/00- 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成され、曲面部において開口した開口部を有する弁ハウジングと、前記弁ハウジングの内側の弁室内に設けられる弁体と、前記開口部に挿通される円筒状の継手部材と、前記弁ハウジングと前記継手部材とを固定するためにろう材が設けられた固定部と、を備えた弁装置であって、
前記継手部材の外周面には、その周方向に沿って複数の突起部が形成され、
前記突起部が、前記開口部の内周面のうち前記継手部材の延在方向における一部に接触することにより、前記内周面と前記外周面とが前記周方向の全体に亘って離隔した間隙部が形成され、
前記間隙部として、前記弁ハウジングの外側に開放されたものを有
し、
前記弁ハウジングの周方向において前記開口部の寸法が最大となるように、前記弁ハウジングを軸方向に直交する面で切断した断面において、前記開口部の内周面の一端部のうち前記弁ハウジングの肉厚方向における中央部と、他端部のうち当該弁ハウジングの肉厚方向における中央部と、を結ぶ仮想線分が、前記弁ハウジングの内周面のうち前記開口部の形成位置に対応する仮想円弧と交差することを特徴とす
る弁装置。
【請求項2】
前記複数の突起部は、前記延在方向における寸法が、前記開口部の形成位置における前記弁ハウジングの肉厚よりも小さいことを特徴とする請求項
1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記間隙部として、前記弁ハウジングの内側に開放されたものを有することを特徴とする請求項
1に記載の弁装置。
【請求項4】
前記複数の突起部は、周方向において等間隔に配置された少なくとも4つの前記突起部を含み、少なくとも2つの前記突起部が前記内周面と接触することを特徴とする請求項
1に記載の弁装置。
【請求項5】
前記弁ハウジング及び前記継手部材は、ステンレス鋼により構成され、
前記ろう材は、銅を主原料とするか、又は、銅及び銀を主原料とすることを特徴とする請求項
1に記載の弁装置。
【請求項6】
前記複数の突起部は、前記内周面に接触する接触突起部と、前記内周面に対して前記弁ハウジングの内側又は外側に配置された離隔突起部と、を有することを特徴とする請求項
1に記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弁装置として、内部に弁室が形成される弁本体部の側面に、冷媒の出入口用の配管が挿入固定される電動弁が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された電動弁では、配管のうち弁本体部の側壁に当接する位置にディンプルを設けることにより、接合の確実化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたようにディンプル(突起部)を設ける場合、ろう付けによる固定作業前の状態においては、突起部の数を増やしたり突起部の寸法を大きくしたりすることで接触面積を大きくすれば、弁本体部(弁ハウジング)と配管(継手部材)との間のガタツキを抑制しやすい。しかしながら、材質の組み合わせや接触圧によっては、接触する領域にろう材が浸透しにくくなることがあり、接触面積を大きくすると流体の漏れの原因となる虞があった。
【0005】
本発明の目的は、弁ハウジングと継手部材との接合部における密封性を向上させることができる弁装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の弁装置は、円筒状に形成され、曲面部において開口した開口部を有する弁ハウジングと、前記弁ハウジングの内側の弁室内に設けられる弁体と、前記開口部に挿通される円筒状の継手部材と、前記弁ハウジングと前記継手部材とを固定するためにろう材が設けられた固定部と、を備えた弁装置であって、前記継手部材の外周面には、その周方向に沿って複数の突起部が形成され、前記突起部が、前記開口部の内周面のうち前記継手部材の延在方向における一部に接触することにより、前記内周面と前記外周面とが前記周方向の全体に亘って離隔した間隙部が形成され、前記間隙部として、前記弁ハウジングの外側に開放されたものを有することを特徴とする。
【0007】
以上のような本発明によれば、間隙部が弁ハウジングの外側に開放されていることで、開口部に対して弁ハウジングの外側に溶融前のろう材を配置して溶融させることにより、間隙部にろう材を充填することができる。この間隙部は、弁ハウジングの開口部の内周面と継手部材の外周面とが周方向の全体に亘って(即ち連続して)離隔したものであることから、ろう材を充填した際にろう付け強度を確保しやすく、且つ、弁ハウジングと継手部材との接合部において周方向の全体に亘って漏れを抑制することができ、密封性を向上させることができる。
【0008】
この際、本発明の弁装置では、前記弁ハウジングの周方向において前記開口部の寸法が最大となるように、前記弁ハウジングを軸方向に直交する面で切断した断面において、前記開口部の内周面の一端部のうち前記弁ハウジングの肉厚方向における中央部と、他端部のうち当該弁ハウジングの肉厚方向における中央部と、を結ぶ仮想線分が、前記弁ハウジングの内周面のうち前記開口部の形成位置に対応する仮想円弧と交差することが好ましい。このような構成によれば、仮想線分と仮想円弧とが交差する場合、即ち弁ハウジングの径に対して開口部の径が比較的大きく、弁ハウジングの肉厚が薄い場合であっても、弁ハウジングと継手部材との接合部における密封性を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の弁装置では、前記突起部の全体が、前記弁ハウジングの外周面よりも内側に設けられていることが好ましい。突起部が、継手部材の延在方向において頂点に近づくにしたがって徐々に突出していく形状(例えば断面山状)である場合、頂点に近づくにしたがって間隙部が小さくなっていき、即ち溶融したろう材を設けるためのスペースが減少していく。突起部の全体が弁ハウジングの外周面よりも内側に位置していれば、継手部材の外周面のうち突起部が形成されていない部分と、開口部の内周面と、の間に間隙部を形成することができ(即ち、突起部によって隙間が徐々に小さくなる領域以外にも隙間を形成することができ)、ろう材を充填しやすくして密封性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の弁装置では、前記複数の突起部は、前記延在方向における寸法が、前記開口部の形成位置における前記弁ハウジングの肉厚よりも小さいことが好ましい。このような構成によれば、突起部及びその周囲を、開口部の内周面に対向する位置に配置しやすくすることができ、突起部を内周面に接触させつつ間隙部を形成しやすくすることができる。従って、弁ハウジングと継手部材との位置関係を容易に調節及び設定することができる。
【0011】
また、本発明の弁装置では、前記間隙部として、前記弁ハウジングの内側に開放されたものを有することが好ましい。このような構成によれば、弁ハウジングの外側だけでなく内側にも間隙部が形成されていることで、内側においてもろう付け強度を確保しやすく、密封性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の弁装置では、前記複数の突起部は、周方向において等間隔に配置された少なくとも4つの前記突起部を含み、少なくとも2つの前記突起部が前記内周面と接触することが好ましい。このような構成によれば、継手部材を開口部に対して所定の深さだけ挿入すれば、少なくとも2つの突起部を開口部の内周面に接触させることができる。従って、突起部を接触させるために継手部材をその延在方向周りに回転させて角度調節する必要がなく、作業性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の弁装置では、前記弁ハウジング及び前記継手部材は、ステンレス鋼により構成され、前記ろう材は、銅を主原料とするか、又は、銅及び銀を主原料とすることが好ましい。このような構成によれば、銅により各部を構成する場合と比較して低コスト化することができる。また、接合される部材とろう材との母材(主原料)が異なり合金が形成されない場合であっても、上記のように間隙部を形成することで密封性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の弁装置では、前記複数の突起部は、前記内周面に接触する接触突起部と、前記内周面に対して前記弁ハウジングの内側又は外側に配置された離隔突起部と、を有していることが好ましい。このような構成によれば、接触突起部に加えて離隔突起部が設けられていることで、離隔突起部を予備の突起部とすることができる。即ち、継手部材の回転角度が当初の角度から変化し、接触突起部とするはずの突起部が実際には内周面に接触しない場合、離隔突起部とするはずの突起部が内周面に接触しやすく、突起部を接触させつつ間隙部を形成しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の弁装置によれば、弁ハウジングと継手部材との接合部における密封性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一例である実施形態にかかる弁装置を示す断面図である。
【
図3】前記弁装置における弁ハウジングと継手部材との接続部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の弁装置としての電動弁1は、例えばパッケージエアコンやルームエアコン、マルチエアコン等の空気調和機の冷凍サイクルシステムに用いられるものであって、
図1に示すように、弁ハウジング2と、ガイド部材3と、主弁体4と、副弁体5と、駆動部6と、を備える。主弁体4及び副弁体5は所定の軸方向に沿って移動するように設けられており、以下では、この軸方向をZ方向とし、Z方向に直交する2方向をX方向及びY方向とし、Z方向における上下は
図1を基準とする。
【0018】
弁ハウジング2は、ステンレス鋼により円筒状に形成されており、その内側に主弁室(弁室)2Rを有している。ここで、「円筒状」とは、断面形状が完全な円となるものだけでなく、完全な円から多少歪んだ形状も含むものとする。弁ハウジング2は、曲面部であるその側面においてX方向の一方側に開口した第1ポート(開口部)21と、Z方向下側に開口した第2ポート22と、を有する。第1ポート21には、X方向を延在方向とする円筒状の第1継手管(継手部材)11が接続され、第2ポート22には、Z方向を延在方向とする円筒状の第2継手管12が接続され、第1継手管11及び第2継手管12は主弁室2Rに連通する。第1継手管11及び第2継手管12は、例えばろう付け等によって弁ハウジング2に対して固着されればよい。以下では、弁ハウジング2を基準として主弁室2R内を「弁ハウジング2の内側」と呼ぶとともに、外部空間を「弁ハウジング2の外側」と呼ぶ。特に、X方向において、弁ハウジング2の壁を挟んで主弁室2R側を内側とし、外部空間側を外側とする。また、弁ハウジング2の周方向は、Z方向に沿った軸線周りの方向である。
【0019】
弁ハウジング2の下端部には、Z方向を軸方向として主弁室2R側に(上側に向かって)突出した円筒状の主弁座23が形成され、この主弁座23の内側が主弁ポート23aとなっており、主弁ポート23aと第2ポート22とが連通する。即ち、第2継手管12が主弁ポート23aを介して主弁室2Rに導通される。本実施形態では、電動弁1は、第1ポート21を一次側とするとともに第2ポート22を二次側とし、第1継手管11から主弁室2Rに流入した流体(冷媒)が第2継手管12から流出するように使用されるものとするが、電動弁1は、双方向に流体が流れ得るサイクルに組み込まれてもよい。
【0020】
ここで、第1ポート21は、円筒状の弁ハウジング2のうち曲面部に形成されたものであり、第1ポート21は、弁ハウジング2の内側又は外側に突出するバーリング内に形成されたものではない。従って、円筒状の弁ハウジング2を、第1ポート21を通過するようにXY平面に沿って切断した際、第1ポート21の内周面のX方向位置は、この断面のZ方向位置に応じて変化する。従って、この第1ポート21に第1継手管11を挿入した際、第1継手管11の外周面11Aのうち第1ポート21の内周面21Aに接触するX方向位置は、Z方向位置によって異なる。より具体的には、外周面11Aのうち最もZ方向上側及び下側の位置においては、接触位置はX方向において
図1中もっとも右側となり、Z方向の中央部においては、接触位置はX方向において
図1中もっとも左側となる。これに対し、バーリングをXY平面に沿って切断した場合、バーリングの内周面のX方向位置はほとんど変化せず、継手管がバーリングの内周面に接触する位置も、Z方向位置によらずほぼ一定となる。
【0021】
上記のように円筒状の弁ハウジング2をXY平面に沿って切断した断面(例えば
図3)において、第1ポート21の内周面21Aの全体は、弁ハウジング2の内周面2Bよりも弁ハウジング2の外側に位置し、且つ、弁ハウジング2の外周面2Aよりも弁ハウジング2の内側に位置する。従って、X方向(第1継手管11の延在方向)における内周面21Aの寸法は、第1ポート21の形成位置における弁ハウジング2の肉厚以下(本実施形態では同等)となっている。これに対し、バーリングが形成されている場合には、継手部材の延在方向におけるバーリングの内側の寸法は、弁ハウジングの肉厚よりも大きくなる。
【0022】
ガイド部材3は、弁ハウジング2の上端の開口部に取り付けられるものであって、弁ハウジング2の内周面内に圧入される圧入部31と、圧入部31の内側に位置する略円柱状のガイド部32と、ガイド部32の上部に延設されたホルダ部33と、ホルダ部33の上方に設けられたストッパ部34と、ガイド部32の外周に位置するリング状のフランジ部35と、を有している。圧入部31、ガイド部32、ホルダ部33及びストッパ部34は樹脂製の一体品として構成されている。また、フランジ部35は、例えば、黄銅やステンレス等により構成された金属板であり、このフランジ部35は、インサート成形により樹脂製の圧入部31及びホルダ部33と共に一体に設けられている。
【0023】
ガイド部材3は、弁ハウジング2に組み付けられ、フランジ部35において弁ハウジング2の上端部に溶接により固定されている。また、ガイド部材3には、Z方向を軸方向とする円筒形状のガイド孔32aがガイド部32に形成され、ガイド孔32aと同軸の挿通孔33aがホルダ部33の中心に形成されている。また、ストッパ部34の中心には、ガイド孔32a及び挿通孔33aと同軸の雌ねじ部(ねじ孔)34aが形成されている。
【0024】
主弁体4は、ホルダ部33のガイド孔32a内に配置されるものであって、全体がZ方向を軸方向とする円筒状に形成されている。主弁体4は、XY平面に沿って延在し副弁体5が接近又は離隔する隔壁部41と、隔壁部41から主弁ポート23aとは反対側(上側)に向かって延びる筒状部42と、主弁座23に対して接近又は離隔する主弁部43と、を一体に有する。
【0025】
隔壁部41は、筒状部42の下端部に設けられた副弁座部であり、所定の板厚(Z方向寸法)を有する板状に形成されている。隔壁部41と筒状部42とによって有底筒状の部分が形成され、この有底筒状の部分の内部が副弁室4Rとなる。隔壁部41の中央部には、貫通孔である副弁ポート41aが形成されている。筒状部42は、円筒状に形成され、その内側に後述する押え部材9が設けられ、押え部材9の内周面がニードルガイド孔として機能する。このニードルガイド孔内には、後述する弁軸51に取り付けられたガイド用ボス部53が挿通されるとともに、この筒状部42の上端にはリング状のリテーナ44が嵌合固着または溶接等により固着されている。また、リテーナ44とガイド孔32aの上端部との間には、主弁ばね4aが配設され、この主弁ばね4aにより主弁体4は主弁座23の方向(Z方向下側;閉方向)に付勢されている。
【0026】
筒状部42には、その内外を連通する複数の連通路421が形成されている。複数の連通路421は、Z方向を中心とする周方向において等間隔で並んでいる。筒状部42に連通路421が形成されていることにより、主弁室2Rと副弁室4Rと副弁ポート41aと主弁ポート23aとが連通するようになっている。
【0027】
主弁部43は、筒状部42を隔壁部41よりも下側に延長するように略円筒状に形成されている。主弁部43は、全閉状態において主弁座23に対して着座(当接)するように設けられている。
【0028】
副弁体5は、ニードル弁であって、後述するロータ軸61の下端部に設けられており、ロータ軸61側に連なる弁軸51と、弁軸51の下端に連なるニードル部52と、を一体に有している。副弁体5は、弁軸51に固着されたガイド用ボス部53をさらに有している。ガイド用ボス部53は弁軸51と別体として固着されているが、ガイド用ボス部53は弁軸51と一体に形成されたものであってもよい。ガイド用ボス部53は、押え部材9によって形成されるニードルガイド孔内に摺動可能に挿通されている。
【0029】
駆動部6は、弁ハウジング2の上端に固定されたケース24の内外に設けられたものであって、ステッピングモータ6Aと、ステッピングモータ6Aの回転により副弁体5を進退させるねじ送り機構6Bと、ステッピングモータ6Aの回転を規制するストッパ機構6Cと、を有する。ケース24は、弁ハウジング2に対して例えば溶接等によって気密に固定されている。
【0030】
ステッピングモータ6Aは、ロータ軸61と、ケース24の内部に回転可能に配設されたマグネットロータ62と、ケース24の外周においてマグネットロータ62に対して対向配置された不図示のステータコイルと、その他、図示しないヨークや外装部材等により構成されている。ロータ軸61はブッシュを介してマグネットロータ62の中心に取り付けられ、このロータ軸61におけるガイド部材3側の外周には雄ねじ部61aが形成されている。この雄ねじ部61aはガイド部材3の雌ねじ部34aに螺合されており、これにより、ガイド部材3はロータ軸61をZ方向に沿った軸線上に支持している。そして、ガイド部材3の雌ねじ部34aとロータ軸61の雄ねじ部61aとが、ねじ送り機構6Bを構成している。
【0031】
本実施形態では、第1消音部材7及び第2消音部材8が設けられている。第1消音部材7は、弁軸51及びニードル部52が通過可能なように全体として円環状に形成され、連通路421から副弁ポート41aまでの流路に配置される。第1消音部材7を筒状部42内に配置するために、押え部材9が設けられている。即ち、押え部材9及び第1消音部材7が、隔壁部41とリテーナ44とによってZ方向から挟み込まれている。
【0032】
第1消音部材7は、線状部材がランダムに屈曲されることで三次元的なメッシュ状に形成されたフィルタである。第1消音部材7は、例えばデミスターであればよい。このようにメッシュ状に形成された第1消音部材7は、流路を細分化するように機能し、流体(冷媒)は、細分化されつつ第1消音部材7を通過する。即ち、気液混合状態の流体が第1消音部材7を通過すると、気泡が細分化される。このとき、第1消音部材7は、線状部材がランダムに屈曲されていることから、流体が通過可能な通過部として様々な大きさの通過可能面積のものを有する。また、流体が第1消音部材7内を所定の通過方向に沿って通過する際、通過方向位置によって通過可能面積が変化する。これにより、様々な大きさの気泡が細分化されるようになっている。
【0033】
第2消音部材8は、副弁ポート41aから主弁ポート23aまでの流路に配置されたものであって、即ち、第1ポート21を一次側とした場合に第1消音部材7よりも下流側に配置されている。第2消音部材8は、第1消音部材7と同様に、線状部材がランダムに屈曲されることで三次元的なメッシュ状に形成されたフィルタであり、例えばデミスターであればよい。第1消音部材7の方が、第2消音部材8よりも高い密度を有していることが好ましいが、これらの密度が同程度となっていてもよい。
【0034】
ここで、電動弁1における主弁体4及び副弁体5の開閉動作の詳細について説明する。ステッピングモータ6Aの駆動によってマグネットロータ62及びロータ軸61が回転すると、ロータ軸61の雄ねじ部61aとガイド部材3の雌ねじ部34aとのねじ送り機構6Bにより、ロータ軸61がZ方向に沿って移動する。これにより、副弁体5がZ方向に進退移動して副弁ポート41aに対して接近又は離隔し、副弁ポート41aの弁開度が制御される(小流量制御)。また、副弁体5のガイド用ボス部53が押え部材9に係合し、主弁体4は副弁体5と共に移動して、主弁座23に対して接近又は離隔する(大流量制御)。これにより、第1継手管11から第2継手管12に向かって流れる冷媒の流量が制御される。なお、本実施形態では、副弁体5がZ方向に進退移動して副弁ポート41aを有する副弁座部に最も接近した状態においても、副弁体5が副弁座部には当接(着座)せず、副弁体5と副弁座部との間に間隙が形成されて副弁ポート41aを流体が通過可能となっているが、副弁体5が副弁座部に着座する構成であってもよい。
【0035】
ガイド部材3のストッパ部34の外周面には、雄ねじ状のガイド溝34bが形成され、このガイド溝34bには、スライダ63が設けられている。スライダ63は、マグネットロータ62に当接し、マグネットロータ62の回転に伴ってガイド溝34bに沿って回転かつ上下動する。そして、スライダ63は、ガイド溝34bの上端または下端に当接することで、マグネットロータ62の回転を規制するストッパ機構6Cを構成している。このストッパ機構6Cにより、ロータ軸61およびマグネットロータ62の最下端位置および最上端位置が規制される。
【0036】
次に、弁ハウジング2と第1継手管11との接続構造の詳細について、
図2~4を参照しつつ説明する。弁ハウジング2には、X方向から見て円状の第1ポート21が形成されていることから、XY平面に沿った面で弁ハウジング2を切断する場合、切断位置がZ方向において変化すると、断面における第1ポート21の開口寸法(Y方向寸法)が変化する。
図3は、第1ポート21の開口寸法が最大となるような断面である。このとき、第1ポート21の内周面21AのうちY方向一方側(図中上側)の端部を一端部211とし、他方側(図中下側)の端部を他端部212とする。一端部211のうち、弁ハウジング2の肉厚方向(
図3においてはX方向)における中央部211Aと、他端部212のうち、弁ハウジング2の肉厚方向における中央部212Aと、を仮想的に結ぶ線分を仮想線分L1とする。また、弁ハウジング2の内周面のうち第1ポート21の形成位置に対応する円弧(第1ポート21が形成される前に存在していた部分であり、弁ハウジング2のうち第1ポート21以外の円弧を延長した部分)を仮想円弧C1とする。仮想線分L1と仮想円弧C1とが交差するようになっている。
【0037】
第1継手管11は、ステンレス鋼により円筒状に形成されており、第1継手管11の周方向は、X方向に沿った軸線周りの方向となる。第1継手管11の外周面11Aには、
図2に示すように、第1継手管11の周方向に沿って4つの突起部111~114が形成されている。4つの突起部111~114は、第1継手管11の周方向に沿って等間隔で配置され、突起部111と突起部113とが径方向に対向し、突起部112と突起部114とが径方向に対向する。
【0038】
本実施形態では、第1継手管11は、突起部112と突起部114とがY方向に対向する回転角度で第1ポート21に挿入されている。このような回転角度において、突起部112,114のX方向中央部が中央部211A,212Aよりも弁ハウジング2の内側の位置において内周面21Aに接触するような挿入深さが、正規の挿入深さとなっている。
【0039】
突起部111~114は、互いに同様の形状を有している。突起部112は、
図4に示すように、所定の寸法を有してX方向に沿って延びる頂点部112Aと、X方向において頂点部112Aに近づくにしたがって第1継手管11の外側に向かうように傾斜した一対の傾斜部112Bと、を有し、XY平面に沿った断面が、頂点が平坦な山状となっている。頂点部112Aと一対の傾斜部112Bとを含む突起部112全体のX方向寸法W1は、第1ポート21の形成位置における弁ハウジング2の肉厚T1よりも小さい。突起部112の全体は、弁ハウジング2の外周面2Aよりも、弁ハウジング2の内側に位置している。即ち、第1継手管11のうち突起部111~114よりも弁ハウジング2の外側において突起部111~114が形成されていない非形成領域115が、第1ポート21の内周面21Aと対向するようになっている。図示の例では、一方の傾斜部112Bの一部が弁ハウジング2の内周面2Bよりも内側(主弁室2R内)に位置している。
【0040】
上記のように非形成領域115が内周面21Aと対向することで、第1ポート21の内周面21Aと第1継手管11の外周面11Aとの間に、互いに離隔した間隙部A1が形成される。間隙部A1は、突起部112よりも弁ハウジング2の外側に形成されたものであり、弁ハウジング2の外側に開放されている。即ち、間隙部A1は、第1ポート21のうち弁ハウジング2の外側の端縁に連続している。
【0041】
突起部114は突起部112と同様に内周面21Aに接触して接触突起部となり、突起部111,113はいずれも内周面21Aに対して弁ハウジング2の内側に配置されて(即ち内周面21Aに接触せず)離隔突起部となる。従って、突起部112,114よりも弁ハウジング2の外側に形成された間隙部A1は、第1継手管11の周方向の全体に亘って形成されており、環状となっている。一方、弁ハウジング2の内側においては、突起部112,114以外の位置では内周面21Aと外周面11Aとが離隔しているものの、このような隙間は突起部112,114において途切れており、環状の間隙部は形成されていない。
【0042】
弁ハウジング2に対して第1継手管11を接合する際、
図1に示すように第1ポート21の周囲且つ弁ハウジング2の外側にろう材を配置し、このろう材を溶融させる。溶融したろう材は、内周面21Aと外周面11Aとの間において浸透する。これにより、弁ハウジング2と第1継手管11とを固定するためにろう材100が設けられた固定部200が形成される。このとき、間隙部A1にろう材が充填されるとともに、突起部112,114以外の部分を通過したろう材が、弁ハウジング2の内側においても固化する。
【0043】
上記では、突起部112,114がY方向に対向しているものとしたが、第1継手管11の回転角度が変化する可能性がある。挿入深さが正規の深さから変化せず、上記角度(基準角度とする)から回転角度が変化すると、突起部112,114が内周面21Aに接触する位置は、回転角度変化に伴って徐々に弁ハウジング2の内側に移動していく。一方、突起部111,113は、内周面21Aに接近していく。基準角度からの変化が45°以内の所定角度において、突起部111,113が内周面21Aに接触するようになっており、変化が45°よりも大きい所定角度において、突起部112,114が内周面21Aに接触しなくなる。即ち、第1継手管11の回転角度によらず、突起部111~114のうち少なくとも2つが内周面21Aに接触するようになっている。また、突起部112,114が内周面21Aに接触する位置は、基準角度において、最も弁ハウジング2の外側となっており(即ち間隙部A1のX方向寸法が最小となっており)、回転角度が変化してもさらに外側に接触することはない。従って、第1継手管11の回転角度によらず、突起部112,114よりも弁ハウジング2の外側に形成された間隙部A1は、第1継手管11の周方向の全体に亘って形成される。
【0044】
上記のろう材は、銅を主原料とするか、又は、銅及び銀を主原料とするものである。ここで、主原料とは、合金を構成する複数の金属のうち、最も重量%が大きいものを指す。
【0045】
以上の本実施形態によれば、間隙部A1が弁ハウジング2の外側に開放されていることで、第1ポート21の外側に溶融前のろう材を配置して溶融させることにより、間隙部A1にろう材100を充填することができる。この間隙部A1は、第1ポート21の内周面21Aと第1継手管11の外周面11Aとが周方向の全体に亘って(即ち連続して)離隔したものであることから、ろう材100を充填した際にろう付け強度を確保しやすく、弁ハウジング2と第1継手管11との接合部において周方向の全体に亘って漏れを抑制することができ、密封性を向上させることができる。
【0046】
また、弁ハウジング2において、仮想線分L1と仮想円弧C1とが交差し、弁ハウジング2の径に対して第1ポート21の径が比較的大きく、弁ハウジング2の肉厚が薄い場合であっても、弁ハウジング2と第1継手管11との接合部における密封性を向上させることができる。
【0047】
また、突起部112の全体が、弁ハウジング2の外周面2Aよりも内側に設けられていることで、傾斜部112Bと内周面21Aとの間だけでなく、非形成領域115と内周面21Aとの間にも間隙部A1を形成することができ、ろう材100を充填しやすくして密封性を向上させることができる。
【0048】
また、突起部112のX方向寸法W1が、第1ポート21の形成位置における弁ハウジング2の肉厚T1よりも小さいことで、突起部112及びその周囲を、第1ポート21の内周面21Aに対向する位置に配置しやすくすることができ、突起部112を内周面21Aに接触させつつ間隙部A1を形成しやすくすることができる。従って、弁ハウジング2と第1継手管11との位置関係を容易に調節及び設定することができる。
【0049】
また、4つの突起部111~114が周方向に等間隔に配置され、これらのうち少なくとも2つが第1ポート21の内周面21Aと接触することで、第1継手管11を第1ポート21に対して正規深さだけ挿入すれば、突起部111~114のうち少なくとも2つを内周面21Aに接触させることができる。従って、突起部111~114を接触させるために第1継手管11をX方向周りに回転させて角度調節する必要がなく、作業性を向上させることができる。
【0050】
また、弁ハウジング2及び第1継手管11がステンレス鋼により構成され、ろう材が銅を主原料とするか、又は、銅及び銀を主原料とすることで、銅により各部を構成する場合と比較して低コスト化することができる。また、接合される部材とろう材との母材(主原料)が異なり合金が形成されない場合であっても、上記のように間隙部A1を形成することで密封性を向上させることができる。
【0051】
また、第1継手管11の回転角度を例えば基準角度とした際に、2つの突起部112,114が内周面21Aに接触する接触突起部となり、2つの突起部111,113が内周面21Aに対して弁ハウジング2の内側に配置された離隔突起部となることで、回転角度が基準角度から変化して接触突起部が内周面21Aに接触しなくなった場合に、非接触突起部を内周面21Aに接触させやすい。即ち、回転角度が変化した場合に備えて、予備の突起部を設けておくことができ、突起部111~114を接触させつつ間隙部A1を形成しやすくすることができる。
【0052】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、仮想線分L1と仮想円弧C1とが交差し、弁ハウジング2の径に対して第1ポート21の径が比較的大きく、弁ハウジング2の肉厚が薄いものとしたが、仮想線分L1と仮想円弧C1とが交差しない構成であってもよい。このような構成であっても、周方向の全体に亘る間隙部A1が弁ハウジング2の外側に開放されていることで、周方向の全体に亘って漏れを抑制することができ、密封性を向上させることができる。
【0053】
また、前記実施形態では、突起部112の全体が弁ハウジング2の外周面2Aよりも内側に設けられているものとしたが、突起部の一部が弁ハウジング2の外周面2Aよりも外側に位置していてもよい。例えば、前記実施形態のような傾斜部112Bが外周面2Aの外側から内側にかけて延びていれば、傾斜部112Bと第1ポート21の内周面21Aとの間に間隙部を形成することができる。
【0054】
また、前記実施形態では、突起部112のX方向寸法W1が、第1ポート21の形成位置における弁ハウジング2の肉厚T1よりも小さいものとしたが、X方向寸法W1は、肉厚T1以上であってもよい。例えば、X方向寸法W1が比較的大きい場合であっても、突起部112が、第1ポート21の内周面21Aに対して充分に弁ハウジング2の内側に配置されていれば、間隙部を形成することができる。
【0055】
また、前記実施形態では、周方向の全体に亘る間隙部A1が弁ハウジング2の外側に開放されており、弁ハウジング2の内側においては環状の間隙部は形成されていないものとしたが、間隙部A1に加え、弁ハウジング2の内側に開放され且つ周方向の全体に亘る間隙部も形成されていてもよい。弁ハウジング2の外側だけでなく内側にも間隙部を形成すれば、内側においてもろう付け強度を確保しやすく、密封性を向上させることができる。
【0056】
また、前記実施形態では、等間隔な4つの突起部111~114のうち少なくとも2つが第1ポート21の内周面21Aと接触するものとしたが、突起部の数及び配置はこれに限定されない。例えば、等間隔に配置された4つの突起部に加えて他の突起部が追加されてもよいし、5つ以上の突起部が等間隔に配置されていてもよいし、複数の突起部同士の間隔が一定でなくてもよい。尚、偶数個の突起部が等間隔で配置されることにより、径方向に対向する突起部の対が形成されていることが好ましい。また、突起部の数は2又は3であってもよく、例えば継手部材の挿入深さ及び回転角度を管理することにより、少なくとも2つの突起部が開口部の内周面に接触するようにしてもよい。
【0057】
また、前記実施形態では、弁ハウジング2及び第1継手管11がステンレス鋼により構成され、ろう材が銅を主原料とするか、又は、銅及び銀を主原料とするものとしたが、各部の材料は、コストや密封性、作業性、これらの組み合わせに応じて適宜に選択されればよい。
【0058】
また、前記実施形態では、突起部111,113が離隔突起部となる場合に弁ハウジング2の内側に配置されるものとしたが、離隔突起部は弁ハウジング2の外側に配置されてもよい。また、複数の突起部の全てが接触突起部となるように、挿入深さ及び回転角度が調整されてもよい。
【0059】
また、前記実施形態では、主弁体4及び副弁体5が設けられ大流量制御及び小流量制御が可能な電動弁1を例示したが、本発明の弁装置は、このような電動弁1に限定されない。例えば、1つの弁体のみが設けられる弁装置において、周方向の全体に亘るとともに弁ハウジングの外側に開放された間隙部が形成されてもよい。また、本発明の弁装置は、電磁弁や多方弁(二方弁、三方弁、四方弁等)であってもよい。このとき、円筒状の弁ハウジングに形成された開口部の周囲にはバーリングが設けられておらず、この開口部に継手部材が挿通されて間隙部が形成されればよい。また、継手部材の複数の突起部は、その少なくとも一部が弁ハウジングの内周面に接触することを目的として設けられたものであり、弁ハウジングに収容される部品(例えば四方弁における弁座部材)に対して接触するために設けられたものではない。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1…電動弁(弁装置)、2…弁ハウジング、2A…外周面、21…第1ポート(開口部)、21A…内周面、211…一端部、211A,212A…中央部、212…他端部、2R…主弁室、4…主弁体、5…副弁体、11…第1継手管(継手部材)、11A…外周面、111~114…突起部、100…ろう材、200…固定部、A1…間隙部、L1…仮想線分、C1…仮想円弧