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特許7571088活性酸素供給装置及び活性酸素による処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】活性酸素供給装置及び活性酸素による処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20241015BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20241015BHJP
   A61L 9/015 20060101ALI20241015BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20241015BHJP
   C01B 13/10 20060101ALI20241015BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L2/20 100
A61L9/015
C01B13/02 Z
C01B13/10 D
H05H1/24
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022112515
(22)【出願日】2022-07-13
(65)【公開番号】P2023020950
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2021126238
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 匠
(72)【発明者】
【氏名】山内 一浩
(72)【発明者】
【氏名】小澤 雅基
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 健二
(72)【発明者】
【氏名】後藤 東照
(72)【発明者】
【氏名】金子 翔太
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-082359(JP,A)
【文献】特開2002-316112(JP,A)
【文献】特開2006-115973(JP,A)
【文献】特開昭64-025865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10
A61L 2/20
C01B 13/02
A61L 9/015
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性酸素供給装置であって、
少なくとも一つの開口部を有する筐体と、
該筐体内のオゾン発生装置と、
該オゾン発生装置によって該筐体内に発生したオゾンを含み、該開口部に向けて流動し、該開口部から該筐体外に流出する気流を生じさせる手段と、
該開口部から該筐体外に流出する該オゾンを含む該気流に紫外線を照射可能に配置された紫外線光源と、を具備し、
該紫外線光源は、該気流中のオゾンを分解して活性酸素を生じさせるものであり、
該オゾンを含む該気流に該紫外線を照射することによって発生した、活性酸素を含む気流を該筐体外の被処理物に供給する、ことを特徴とする活性酸素供給装置。
【請求項2】
活性酸素供給装置であって、
少なくとも一つの開口部を有する筐体と、
該筐体内のオゾン発生装置と、
該オゾン発生装置によって該筐体内に発生したオゾンを含み、該開口部に向けて流動し、該開口部から該筐体外に流出する気流を生じさせる手段と、
該開口部から該筐体外に流出した該オゾンを含む該気流に紫外線を照射可能に配置された紫外線光源と、を具備し、
該紫外線光源は、該気流中のオゾンを分解して活性酸素を生じさせるものであり、
該オゾンを含む該気流に該紫外線を照射することによって発生した、活性酸素を含む気流を該筐体外の被処理物に供給する、ことを特徴とする活性酸素供給装置。
【請求項3】
前記紫外線光源が、前記筐体の外に配置されている請求項2に記載の活性酸素供給装置。
【請求項4】
前記オゾン発生装置が、放電ワイヤを備えたコロナ放電器である請求項1~3のいずれか一項に記載の活性酸素供給装置。
【請求項5】
前記気流を生じさせる手段が、前記放電ワイヤよりも前記開口部に近い側に配置されたグリッド電極である請求項4に記載の活性酸素供給装置。
【請求項6】
前記気流を生じさせる手段が、送風機である請求項1~3のいずれか一項に記載の活性酸素供給装置。
【請求項7】
前記気流を生じさせる手段が、前記筐体内に前記筐体外の空気を導入し、前記筐体内を正圧にするエアポンプである請求項1~3のいずれか一項に記載の活性酸素供給装置。
【請求項8】
前記気流を生じさせる手段が、前記筐体内の気体の吸引装置である請求項1~3のいずれか一項に記載の活性酸素供給装置。
【請求項9】
前記紫外線光源が発する紫外線のピーク波長が、220nm~310nmである請求項1~3のいずれか一項に記載の活性酸素供給装置。
【請求項10】
前記紫外線光源が、前記開口部を介して前記筐体外の被処理物を照射可能に配置されている請求項1~3のいずれか1項に記載の活性酸素供給装置。
【請求項11】
前記紫外線光源が、LED又は半導体レーザである請求項1~3のいずれか1項に記載の活性酸素供給装置。
【請求項12】
前記活性酸素供給装置をその開口が鉛直上方を向くように配置したときの前記開口部の出口において測定した気流の流速が、0.1m/秒~100m/秒である請求項1~3のいずれか1項に記載の活性酸素供給装置。
【請求項13】
被処理物の表面を活性酸素で処理する処理方法であって、
請求項1~3のいずれか一項に記載の活性酸素供給装置を用意する工程と、
前記活性酸素供給装置と、該被処理物と、を前記開口部から前記気流を流出させたときに該被処理物の表面が曝される相対的な位置に置く工程と、
前記開口部から前記気流を流出させて該被処理物の表面に活性酸素を供給し、該被処理物の表面を活性酸素で処理する工程と、を有することを特徴とする、活性酸素による処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、活性酸素供給装置及び活性酸素による処理方法に向けたものである。
【背景技術】
【0002】
物品等の除菌を行う手段として、紫外線、及び、オゾンが知られている。特許文献1は、紫外線による除菌が、除菌対象物の紫外線が照射される部分に限定されるという課題に対して、オゾン供給装置と紫外線発生ランプと撹拌装置とを有する殺菌装置を用いて、紫外線発生ランプより生成する紫外線をオゾンに照射することにより発生する活性酸素を撹拌して試料の影の部分も殺菌する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平1-25865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが、特許文献1に係る殺菌方法による除菌性能について検討したところ、従来のオゾンのみを用いた除菌方法による除菌性能と同等程度である場合があった。活性酸素の除菌能力は、本来オゾンの除菌能力をはるかに上回ると言われているところ、このような検討結果は予想外のものであった。
本開示の一態様は、被処理物の表面に活性酸素をより効率的に供給し得る活性酸素供給装置、及び、被処理物の表面を活性酸素でより効率的に処理し得る活性酸素による処理方法の提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の少なくとも一つの様態によれば、活性酸素供給装置であって、
少なくとも一つの開口部を有する筐体と、
該筐体内のオゾン発生装置と、
該オゾン発生装置によって該筐体内に発生したオゾンを含み、該開口部に向けて流動し、該開口部から該筐体外に流出する気流を生じさせる手段と、
該開口部から該筐体外に流出する該オゾンを含む該気流に紫外線を照射可能に配置された紫外線光源と、を具備し、
該紫外線光源は、該気流中のオゾンを分解して活性酸素を生じさせるものであり、
該オゾンを含む該気流に該紫外線を照射することによって発生した、活性酸素を含む気流を該筐体外の被処理物に供給する活性酸素供給装置が提供される。
【0006】
また、本開示の少なくとも一つの様態によれば、活性酸素供給装置であって、
少なくとも一つの開口部を有する筐体と、
該筐体内のオゾン発生装置と、
該オゾン発生装置によって該筐体内に発生したオゾンを含み、該開口部に向けて流動し、該開口部から該筐体外に流出する気流を生じさせる手段と、
該開口部から該筐体外に流出した該オゾンを含む該気流に紫外線を照射可能に配置された紫外線光源と、を具備し、
該紫外線光源は、該気流中のオゾンを分解して活性酸素を生じさせるものであり、
該オゾンを含む該気流に該紫外線を照射することによって発生した、活性酸素を含む気流を該筐体外の被処理物に供給する活性酸素供給装置が提供される。
【0007】
さらに、本開示の少なくとも一つの態様によれば、被処理物の表面を活性酸素で処理する処理方法であって、
上記活性酸素供給装置を用意する工程と、
前記活性酸素供給装置と、該被処理物と、を前記開口部から前記気流を流出させたときに該被処理物の表面が曝される相対的な位置に置く工程と、
前記開口部から前記気流を流出させて該被処理物の表面に活性酸素を供給し、該被処理物の表面を活性酸素で処理する工程と、を有する活性酸素による処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、被処理物の表面に活性酸素をより効率的に供給し得る活性酸素供給装置及び被処理物の表面を活性酸素でより効率的に処理し得る活性酸素による処理方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一態様に係る活性酸素供給装置の概略断面図
図2】本開示の他の態様に係る活性酸素供給装置の概略断面図
図3】本開示の他の態様に係る活性酸素供給装置の概略構成図
図4】本開示の他の態様に係る活性酸素供給装置の概略構成図
図5】本開示の他の態様に係る活性酸素供給装置の概略構成図
図6】本開示の他の態様に係る活性酸素供給装置の概略構成図
図7】本開示の他の態様に係る活性酸素供給装置の概略構成図
図8】実施例13で用いた活性酸素供給装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、この開示を実施するための形態を、具体的に例示する。ただし、この形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、開示が適用される部材の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この開示の範囲を以下の形態に限定する趣旨のものではない。
また、本開示において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0011】
また、本開示に係る「除菌」の対象物としての「菌」とは微生物を指し、該微生物には、真菌、細菌、単細胞藻類、ウイルス、原生動物等に加え、動物又は植物の細胞(幹細胞、脱分化細胞、分化細胞を含む。)、組織培養物、遺伝子工学によって得られた融合細胞(ハイブリドーマを含む。)、脱分化細胞、形質転換体(微生物)が含まれる。ウイルスの例としては、例えば、ノロウイルス、ロタウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、HIVウイルスなどが挙げられる。また、細菌の例としては、例えば、ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、緑膿菌、コレラ菌、赤痢菌、炭そ菌、結核菌、ボツリヌス菌、破傷風菌、レンサ球菌などが挙げられる。さらに、真菌の例としては、白癬菌、アスペルギルス、カンジダ等が挙げられる。
さらに、本開示における活性酸素とは、例えば、オゾン(O)の分解によって生じるスーパーオキシド(・O )、ヒドロキシラジカル(・OH)の如きフリーラジカルを含む。
【0012】
以下の説明では、同一の機能を有する構成には図面中に同一の番号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0013】
本発明者らの検討によれば、特許文献1に係る殺菌装置の除菌能力が限定的である理由を以下のように推測している。
特許文献1は、オゾンに対して、紫外線を照射することで、オゾンを励起し、極めて除菌力の高い活性酸素を生成している。ここで、活性酸素とは、スーパーオキシドアニオンラジカル(・О )、ヒドロキシルラジカル(・ОH)等の反応性の高い酸素活性種の総称で、それ自身がもつ高い反応性により、細菌やウイルスを即座に酸化分解できる。
【0014】
しかしながら、オゾンは紫外線を極めてよく吸収するため、特許文献1に係る殺菌装置においては、活性酸素の発生は紫外線発生ランプの近傍に限定されると考えられる。すなわち、紫外線発生ランプから離れた位置に存在するオゾンにまでは紫外線が十分到達せず、紫外線発生ランプから離れたところでは活性酸素は発生し難いと考えられる。
また、活性酸素は非常に不安定であり、・О の半減期は10-6秒、・ОHの半減期は10-9秒と極めて短く、速やかに安定な酸素、水に変換される。そのため、紫外線発生ランプの近傍で生成した活性酸素を、受動的に殺菌装置の本体内部に充満させることは困難であると考えられる。言い換えれば、特許文献1に係る殺菌方法による除菌は、実質的にはオゾンによって行われていると考えられる。そのため、特許文献1に係る殺菌方法による除菌性能が、従来のオゾンのみを用いた除菌方法による除菌性能と同等程度となっているものと考えられる。
このような考察から、本発明者らは、寿命が短い活性酸素を用いて被処理物を処理するうえでは、被処理物や被処理面をより能動的に活性酸素雰囲気下に置くことが必要であることを認識した。そして、かかる認識の下で本発明者らが検討した結果、以下で説明する活性酸素供給装置によれば、被処理物をより能動的に活性酸素雰囲気下に置くことができることを見出した。
【0015】
すなわち、本開示の一態様に係る活性酸素供給装置は、少なくとも一つの開口部を有する筐体と、該筐体内のオゾン発生装置と、該オゾン発生装置によって該筐体内に発生したオゾンを含み、該開口部に向けて流動し、該開口部から該筐体外に流出する気流を生じさせる手段と、該開口部から該筐体外に流出する該オゾンを含む該気流に紫外線を照射可能に配置された紫外線光源と、を具備し、該紫外線光源は、該気流中のオゾンを分解して活性酸素を生じさせるものであり、該オゾンを含む該気流に該紫外線を照射することによって発生した、活性酸素を含む気流を該筐体外の被処理物に供給する、ものである。
【0016】
また、本開示の他の態様に係る活性酸素供給装置は、少なくとも一つの開口部を有する筐体と、該筐体内のオゾン発生装置と、該オゾン発生装置によって該筐体内に発生したオゾンを含み、該開口部に向けて流動し、該開口部から該筐体外に流出する気流を生じさせる手段と、該開口部から該筐体外に流出した該オゾンを含む該気流に紫外線を照射可能に配置された紫外線光源と、を具備し、該紫外線光源は、該気流中のオゾンを分解して活性酸素を生じさせるものであり、該オゾンを含む該気流に該紫外線を照射することによって発生した、活性酸素を含む気流を該筐体外の被処理物に供給する、ものである。
【0017】
なお、本開示において、気流を生じさせる手段とは、本開示に係る活性酸素供給装置の開口が鉛直上方に向くように配置した場合においても、該開口から該筐体内の空気を能動的に流出させることができるものと定義される。
また、本開示において、活性酸素による被処理物の「処理」には、活性酸素による被処理物の被処理面の表面改質(親水化処理)、除菌、消臭、漂白の如き、活性酸素によって達成し得るあらゆる処理を含むものとする。
【0018】
以下、図1Aを用いて本開示の一態様に係る活性酸素供給装置100について説明する。
本開示の一態様に係る活性酸素供給装置100は、少なくとも一つの開口部を有する筐
体101内に紫外線光源としての発光ダイオード(LED)105、及び、放電ワイヤ111とシールド113とから構成されるオゾン発生装置としてのコロナ放電器とを具備する。また、筐体101には、筐体外から空気を筐体内に取り込み、筐体内に開口部から流出する気流を生じさせる手段としてのファン103が設けられている。
【0019】
コロナ放電器を作動させることにより該筐体内にオゾンを生成させるとともにファン103を用いて筐体外の空気を筐体内に導入することで、気流107を生じさせることができる。気流107は、筐体内に発生したオゾンを含みながら筐体内を開口部へ流動し、かつ、開口部から筐体外に流出する。そして、LED105から、筐体外に流出する気流107中のオゾンに紫外線を照射することによって、開口部から流出する気流107中に活性酸素を含ませることができる。そして、活性酸素を含む気流を筐体外の被処理物に供給できる。そのため、開口部に近接して配置した被処理対象物に対して活性酸素を効率よく能動的に供給することができる。その結果として、被処理物109の処理表面109-1は、活性酸素によって処理される。また、活性酸素を含む気流を該筐体外の被処理物に供給することができるため、活性酸素の供給対象の自由度が向上する。活性酸素による処理を行いたい所望の位置に筐体を移動させ、処理することが可能となる。
【0020】
図1Aに示す活性酸素供給装置においては、筐体内に配置した紫外線光源105から、筐体内から開口部に向けて流動し、開口部から筐体外に流出する気流に紫外線を照射している。しかしながら、紫外線光源105の位置は特に制限されない。すなわち、紫外線光源105は、筐体内(以下、筐体の内部ともいう)に配置してもよく、筐体の外に配置してもよく、又は、筐体の内部と筐体の外とに配置してもよい。
筐体の内部に紫外線光源105を配置する場合、紫外線光源105は、筐体内から開口部を通して筐体の外に流出する気流に紫外線を照射できる位置に配置すればよい。また、紫外線光源105を、筐体の外に配置する場合、紫外線光源105は、筐体内から開口部を通して筐体の外に流出した気流に紫外線を照射できる位置に配置すればよい。更に、紫外線光源105を筐体の内部、及び筐体の外側の少なくとも一方に配置する場合において、紫外線光源105は、開口部から筐体外に流出する気流及び開口部から筐体外に流出した気流の両方に紫外線を照射可能に配置してもよい。
【0021】
より具体的には、例えば、図1Bのように、筐体101の外側に紫外線光源105を設けることができる。このような態様であれば、筐体内から開口部を通して筐体の外に流出した気流により確実に紫外線を照射することができる。そのため、被処理物109により近い位置で活性酸素を発生させ得る。
図1Bに示した態様においては、紫外線光源105は、筐体101の内部を照射しないように配置することが好ましい。具体的には、紫外線光源105を、その光軸108が筐体101の内部を通過しないように配置することが好ましい。より被処理物109により近い位置において、より高濃度の活性酸素を発生させ得るためである。なお、図中、紫外線光源105からの矢印108は紫外線光源の光軸の向きを示している。
【0022】
図1A及び図1Bに係る活性酸素供給装置において、ファン103は、例えば、当該活性酸素供給装置の開口を鉛直上方に向けて配置した場合においても、筐体内のオゾンを含む気流を該開口から能動的に流出させることができるように筐体外の空気を筐体内に導入することができるものである。より好適には、ファン103は、当該活性酸素供給装置の開口を鉛直上方に向けて配置した場合において、筐体内のオゾンを含む気流を該開口から筐体外に、少なくとも0.1m/秒以上、特には、2.0m/秒以上の流速で流出させられるような気流を作ることができるものであることが好ましい。
【0023】
<紫外線光源及び紫外線>
活性酸素の寿命は例えば100万分の1秒程度と極めて短いため、処理効率向上の観点
から、被処理物の極近傍で発生させることが好ましい。そのため、紫外線光源としては、指向性の強い紫外光を発光可能なLEDや半導体レーザを用いることが好ましい。指向性の高い紫外光を発光し得る光源を用いることで、開口部から筐体外に流出する直前又は開口部から筐体外に流出した直後の気流中のオゾンを選択的に分解することができる。そのため、開口部から流出した気流中に、活性酸素をより高濃度に含ませることができる。その結果として、開口部の近傍に被処理面109-1を配することで、被処理面を高濃度の活性酸素で処理することができる。
【0024】
また、LEDや半導体レーザは、筐体外に流出する直前又は流出した直後の気流に対して選択的に紫外線を照射しうるため、照射の出力を低くしても、効率的な活性酸素の供給を達成しやすい。さらに、LEDや半導体レーザを用いることで、装置のコンパクト化が可能であり、例えば使用者が手に持った状態で使用するハンディタイプの活性酸素供給装置としやすい。紫外線光源は、LEDであることがより好ましい。
【0025】
紫外線光源は、オゾンを励起し、処理の目的に応じた有効活性酸素濃度又は有効活性酸素量を得るために必要な、紫外線の波長及びその照度を有していれば特に限定されない。
例えば、オゾンの光吸収スペクトルのピーク値が260nmであることから、紫外線光源が発する紫外線のピーク波長は、220nm~310nmであることが好ましく、253nm~285nmであることがより好ましく、253nm~266nmであることがさらに好ましい。紫外線光源としてLEDを用いる場合、その波長は、出力性能の観点から、265nm、275nm、又は280nmから選択することが好ましい。
【0026】
活性酸素供給装置と被処理物との相対的な位置は、特に制限されない。開口部から筐体外に流出する気流中に活性酸素を発生させ、処理の目的に応じた有効活性酸素濃度又は有効活性酸素量が維持された気流に被処理物の表面が曝されるように各々の少なくとも一方が配置されていればよい。
【0027】
また、紫外線光源は、紫外線が被処理物の表面を照射可能な位置に配置されていても、紫外線が被処理物の表面を照射可能でない位置に配置されていてもよい。紫外線光源からの紫外線が被処理物の表面を照射可能でない場合であっても、本態様に係る活性酸素供給装置であれば、気流中の活性酸素に被処理面が曝されることにより処理することが可能である。
【0028】
さらに、紫外線光源105は、その光軸108が、オゾンを含む気流が流出する開口部に向けられていることが好ましい。これにより、筐体外に流出する直前の気流中のオゾンを選択的に分解し、筐体外の被処理物に活性酸素をより効率的に供給することができる。また、光軸を開口部に向けることで、筐体内から開口部を通して筐体の外に流出した気流にも紫外線を照射しうる。そのため、より被処理物の表面に、効率的に活性酸素を供給しやすい。すなわち、図1Aに示すように、筐体101の内部に配置した紫外線光源105は、その光軸108が、筐体101の開口部に向くように配置することが好ましい。さらには、紫外線光源105からの紫外線は、オゾン発生手段を照射しないような構成とすることが好ましい。
【0029】
活性酸素供給装置における紫外線光源105の数は特に制限されず、少なくとも一以上の紫外線光源105を設けることができる。紫外線光源105の数は一つでもよいし、図1Aなどのように二つでもよいし、三つ以上でもよい。紫外線光源105を二つ以上設ける場合、複数の紫外線光源105の光軸を、開口部から流出する気流又は開口部から流出した気流の所望の位置に重ねることもできる。これにより、被処理物の表面近傍の任意の位置で活性酸素を発生させやすくなる。
【0030】
さらに、紫外線による除菌処理においては、除菌されるのは、紫外線が照射された面のみである。しかしながら、本開示に係る活性酸素供給装置による除菌処理においては、活性酸素が到達し得る位置に存在する菌は除菌することができる。従って、例えば、外部からの紫外線照射では除菌が困難な、繊維間に存在する菌であっても除菌し得る。
【0031】
一方、紫外線光源からの紫外線が、開口部を介して筐体外の被処理物の表面を照射可能に配置されていることが好ましい。この場合、開口部から筐体外に流出した気流に存在している未分解のオゾンを、被処理面においてその場的(in situ)に分解し、被処理面上において活性酸素を発生させ得る。その結果、処理の程度や処理の効率をより一層高めることができる。
この場合において、被処理物の表面における紫外線の照度または開口部における紫外線の照度は特に限定されないが、例えば、被処理物の表面または開口部においても、気流に含まれるオゾンを分解し、気流中に活性酸素を発生させ、処理の目的に応じた有効活性酸素濃度又は有効活性酸素量を生じさせうる紫外線の照度に設定することが好ましい。
具体的には、例えば、被処理物の表面における紫外線の照度または開口部における紫外線の照度の具体例として、40μW/cm以上であることが好ましく、100μW/cm以上であることがより好ましく、400μW/cm以上であることがさらに好ましい。該照度の上限は特に制限されないが、例えば10000μW/cm以下とすることができる。上記範囲であれば、気流中に十分な量の活性酸素を発生させ、筐体外の被処理物に供給しうる。
【0032】
さらに、紫外線光源と被処理物の表面との距離も処理の目的によって変化するので、一概には規定できないが、例えば、10mm以下とすることが好ましく、4mm以下とすることがより好ましい。ただし、紫外線光源から10mm程度以内の所に被処理物の処理表面があるように被処理物を置く必要はない。紫外線の照度などとの関係で、被処理物の表面における気流中の活性酸素を処理の目的に応じた有効濃度とすることができれば、紫外線光源と被処理物との距離は特に制限されない。
同様の観点から、筐体内に紫外線光源を設ける場合、紫外線光源と筐体の開口部の出口までの距離は、例えば、10mm以下とすることが好ましく、4mm以下とすることがより好ましい。
また、活性酸素供給装置により被処理物を処理する場合、活性酸素供給装置と被処理物の被処理面との距離Aは、例えば、10mm以下とすることが好ましく、4mm以下とすることがより好ましく、2mm以下とすることがさらに好ましい。距離Aは、例えば図6に示す通り、開口部の被処理物側の先端と、被処理面との距離である。
【0033】
なお、図1に示した活性酸素供給装置においては、オゾン発生装置としてコロナ放電器を用いたが、オゾン発生装置はコロナ放電器に限定されるものではなく、例えば、他のオゾン発生装置(オゾナイザー)など公知のオゾン発生装置を用いることもできる。
【0034】
オゾン発生装置における、紫外線を照射しない状態での単位時間あたりのオゾン発生量は、例えば、2μg/分以上であることが好ましい。より好ましくは4μg/分以上であり、さらに好ましくは5μg/分以上である。上記範囲であることで、気流中に十分な量の活性酸素を発生させ、筐体外に供給しうる。オゾン発生量の上限は特に制限されないが、例えば1000μg/分以下である。
該オゾン発生量は、オゾン発生装置に印可する電圧などによって制御することができる。オゾン発生装置に印可する電圧は特に制限されないが、例えば直流5V~20Vとすることができる。
【0035】
さらに、図1A及び図1Bに示した活性酸素供給装置においては、ファン103を筐体101に組み込み、筐体101外の空気を筐体101内に取り込むことができるような構
成としたが、気流を生じさせる手段(気流発生装置)としてのファン103の配置はこのような構成に限定されるものではない。例えば、図3に示したように、筐体内のオゾン発生装置301の開口部とは反対側に配置してもよい。
気流を生じさせる手段、オゾン発生装置及び開口部の位置関係は、気流を生じさせる手段の構成にもよるため特に制限されないが、気流を生じさせる手段と開口部との間にオゾン発生装置が存在することが好ましい。気流を生じさせる手段は、開口部に向けて気流を生じさせることのできる向きに設けられることが好ましい。また、気流を生じさせる手段、オゾン発生装置及び開口部が直線上に配置されていることが好ましい。
【0036】
図3に示す、本開示の他の態様に係る活性酸素供給装置300は、オゾン発生装置301としてオゾナイザーを用いた例であるが、コロナ放電器など他のオゾン発生装置を用いることもできる。
また、気流を生じさせる手段として、ファンに限られず、ブロワー、エアーコンプレッサーなど公知の送風機を使用することができる。気流を生じさせる手段は、送風機に加え、後述するポンプやグリッド電極など、複数を併用することもできる。気流を生じさせる手段は、筐体に組み込まれているか、又は筐体内に設けられていることが好ましい。送風機は、筐体外から空気を筐体内に取り込む手段を備えることが好ましい。
【0037】
図2に示す、本開示の他の態様に係る活性酸素供給装置200は、図1に示した活性酸素供給装置100における気流発生装置としてのファン103を有さない。図2においては筐体内から流出する気流を発生させる装置を、コロナ放電器の放電ワイヤ111よりも開口部に近い側に配置されたグリッド電極201としている。また、放電ワイヤ111とグリッド電極201との各々には、不図示の電源が接続されている。
【0038】
放電ワイヤ111及びグリッド電極201に高電圧を印加してコロナ放電を発生させることで、放電ワイヤ111からグリッド電極201に向かう、オゾンを含む気流107を生じさせることができる。また、グリッド電極201を放電ワイヤ111の開口部側に配置しているため、当該気流107は、開口部から筐体外に流出する気流となる。
すなわち、本構成においては、放電ワイヤ111とグリッド電極201とが、筐体内の空気を開口から能動的に流出させることができる、気流を生じさせる手段となる。そして、本構成においても、放電ワイヤ開口を鉛直上方に向けて配置した場合においても、筐体内のオゾンを含む気流を該開口から筐体外に、少なくとも0.1m/秒以上、特には、2.0m/秒以上の流速で流出させられるような気流を作ることが好ましい。本構成においては、放電ワイヤ111とグリッド電極201との間の印加電圧を調整することで気流の流速を調整することが可能である。
【0039】
そして、この気流107に対してLED105から紫外線を照射することによって、開口から流出する気流107中に活性酸素を含ませることができる。そのため、開口に近接して配置した被処理物109の被処理面109-1に対して活性酸素を供給することができる。その結果として、被処理物109の処理表面109-1は、活性酸素によって処理される。
【0040】
図4に示す、本開示の他の態様に係る活性酸素供給装置400は、筐体101の開口101-1にメッシュ部材401を配置し、筐体内の空気が開口を通して筐体外に流出する際に流動抵抗を受けるように構成されている。また、活性酸素供給装置400は、エアポンプ403を備え、筐体外から筐体内に空気を導入し、筐体内を正圧にすることが可能に構成されている。
【0041】
この活性酸素供給装置においては、エアポンプ403を動作させて筐体内に空気を注入しても、開口部101-1にメッシュ部材401が設けられていることによって、開口部
と通した筐体内から筐体外への空気の流出が流動抵抗を受けるため、筐体内を正圧とすることができる。そのため、エアポンプ403で筐体内に空気を注入し、筐体内を正圧とすることにより、筐体内には、筐体内から開口部に向けた気流を生じさせることができる。そのため、コロナ放電器を作動させて筐体内にオゾンを発生させた場合、筐体内にはオゾンを含み、開口部に向かって流動し、開口部から筐体外に流出する気流107が生じる。
【0042】
そして、LED105から、筐体外に流出する気流107中のオゾンに紫外線を照射することによって、開口部から流出する気流107中に活性酸素を含ませることができる。そのため、開口に近接して配置した被処理対象物に対して活性酸素を供給することができる。その結果として、図1に示した活性酸素供給装置の場合と同様に、被処理物の処理表面が活性酸素によって処理される。
【0043】
図4では、メッシュ部材401を使用したが、開口部101-1に設けるのは、筐体内を正圧にし、開口部から気流を流出可能なオゾン透過部材であればよい。例えば、パンチング部材のような多孔板、多孔質膜、不織布、織物、網などが例示される。オゾン透過部材の材質としては、オゾンに対する腐食性の低い材質が好ましく、ステンレス、銀、金、アルミニウムなどの金属、ガラス、セラミックスの様な非金属無機材料、フッ素樹脂の様な樹脂などが例示される。
オゾン透過部材の形状は、筐体内を正圧にして気流107を発生させうるものであれば特に制限されない。例えば、オゾン透過部材401の線径は、好ましくは0.01~2mmであり、より好ましくは0.1~0.5mmである。オゾン透過部材401の開口率は、好ましくは1~50%であり、より好ましくは5~40%である。
多孔板の場合、孔径は、好ましくは0.01~2mmであり、開口率は、好ましくは1~50%であり、より好ましくは5~40%である。
オゾン透過部材の材質は特に制限されず、公知の金属や樹脂を採用しうる。紫外線が被処理物の表面を照射可能にする観点から、紫外線透過性の樹脂を用いることが好ましい。
【0044】
また、図4に示す活性酸素供給装置においては、筐体内に配置した紫外線光源105から、筐体内から開口に向けて流動し、開口部から筐体外に流出する気流に紫外線を照射している。しかしながら、図1Bと同様、図5に示すように紫外線光源105を、筐体内から開口を通して筐体の外に流出した気流に紫外線を照射するような構成とすることもできる。この場合、被処理物により近い位置において気流107中のオゾンを分解し、活性酸素を発生させることができるため、被処理面の処理効率をより向上させることができると考えられる。また、この場合、メッシュ部材又はパンチング部材の材質は、筐体内のオゾンに紫外線が届きにくいよう、金属など紫外線を透過しにくい材質にすることが好ましい。材質としては、紫外線の反射率の高い、例えば反射率80%以上のアルミニウムなどを用いることが、紫外線の散乱光などを被処理物に照射できるため、より好ましい。
【0045】
気流を生じさせる手段が、筐体内の気体の吸引装置であることも好ましい態様である。図7に示す、本開示の他の態様に係る活性酸素供給装置700は、筐体101外部に、筐体内の気体の吸引装置としてエアポンプ403を有する。開口部近傍にエアポンプの吸気口が筐体内の気体を吸引可能に設けられている。また、筐体101における開口部の背面には通気孔が設けられることで、筐体内の空気が開口部を通して筐体外に流出するように構成されている。
【0046】
この活性酸素供給装置においては、エアポンプ403で開口部近傍の気体を排気し、筐体上部の通気口から大気を吸気することで、筐体内から開口部に向けた気流を生じさせることができる。そのため、コロナ放電器を作動させて、筐体内にオゾンを発生させた場合、筐体内にはオゾンを含み、開口部に向かって流動し、開口部から筐体外に流出する気流107が生じる。
そして、LED105から、筐体外に流出する気流107中のオゾンに紫外線を照射することによって、開口部から流出する気流107中に活性酸素を含ませることができる。そのため、開口に近接して配置した被処理対象物に対して活性酸素を能動的に供給することができる。その結果として、図1に示した活性酸素供給装置の場合と同様に、被処理物の処理表面が活性酸素によって処理される。
【0047】
本構成においても、エアポンプの吸気口を設けた開口部を鉛直上方に向けて配置した場合においても、筐体内のオゾンを含む気流を該開口から筐体外に、少なくとも0.1m/秒以上、特には、2.0m/秒以上の流速で流出させられるような気流を作ることが好ましい。本構成においては、エアポンプの吸引力、吸気口の向き、開口部の大きさ、通気口の大きさなどを調整することで気流の流速を調整することが可能である。
【0048】
図1図7に示す各々の実施態様に係る活性酸素供給装置において、開口部から筐体外に流出する気流又は開口部から筐体外に流出した気流の、開口部の出口における流速は、該開口部の向きによらず、好ましくは0.1m/秒~100m/秒であり、より好ましくは1.0m/秒~10.0m/秒であり、さらに好ましくは2.0m/秒~9.5m/秒であり、さらにより好ましくは3.0m/秒~9.0m/秒である。具体的には、例えば、活性酸素供給装置をその開口が鉛直上方を向くように配置したときの開口部の出口において測定される気流の流速は、好ましくは0.1m/秒~100m/秒であり、より好ましくは1.0m/秒~10.0m/秒であり、さらに好ましくは2.0m/秒~9.5m/秒であり、さらにより好ましくは3.0m/秒~9.0m/秒である。
気流の流速が上記範囲であると、分解速度の速い活性酸素をより能動的に筐体外に供給することができる。また、紫外線光源に対して効率よくオゾンを含む気流を流動させることができるため、活性酸素をより効率的に被処理物に対して供給することができる。
【0049】
気流の流速は、気流を生じさせる手段に応じて適宜制御しうる。ファンやポンプやブロワーやコンプレッサーを用いる場合はその強度などで制御すればよいし、グリッド電極を用いる場合は印加電圧などで制御すればよい。また、気流の流速は、筐体や開口部のサイズによっても制御しうる。開口部の出口における気流の流速は、熱線式風速計、プロペラ式風速計、PIV等により測定することができる。
【0050】
開口部の形状は特に制限されない。長方形状、正方形状、円形状、楕円形状あるいはこれらの形状の一部が変形したような略長方形状、略正方形状、略円形状、略楕円形状など任意の形状としうる。処理の均一性を得たい場合には、気流の開口部内での均一性が高い円形状が好ましい。
開口部の大きさなどは特に制限されず、活性酸素供給装置の用途や、供給対象のサイズなどに応じて適宜変更すればよい。例えば、開口部の面積は、好ましくは5~2000cm程度であり、より好ましくは10~100cm程度である。
気流の流速を上昇させて活性酸素をより能動的に筐体外に供給する観点から、開口部の面積は、筐体内部における開口部を形成する面と平行な断面の面積の最大値(面積H)よりも小さいことが好ましい。筐体内部における開口部を形成する面と平行な断面の面積の最大値(面積H)の、開口部の面積に対する比の値(面積H/開口部の面積)は、1.5~20であることが好ましく、2~15であることがより好ましく、3~10であることがさらに好ましく、4~7であることがさらにより好ましい。
【0051】
本開示の活性酸素供給装置は、被処理物の除菌用途だけでなく、被処理物に活性酸素を供給することで実施される用途全般に用いることができる。例えば、本開示の活性酸素供給装置は、被処理物の消臭用途、被処理物の漂白用途、被処理物の親水化表面処理などにも用いることができる。
また、本開示の活性酸素供給装置は、被処理物を除菌する処理を行うだけでなく、例え
ば、被処理物を消臭する処理、被処理物を漂白する処理、被処理物を親水化する表面処理などにも用いることができる。
【0052】
なお、本開示において「有効活性酸素濃度又は有効活性酸素量」とは、被処理物に対する目的、例えば、除菌、消臭、漂白又は親水化などを達成するための活性酸素濃度又は活性酸素量をいい、オゾン発生装置における単位時間当たりのオゾン発生量、紫外線の照射位置、照度及び照射時間、気流の流速などを用い、目的に応じて適宜調整ができる。
【0053】
また、本開示は、被処理物の表面を活性酸素で処理する処理方法を提供する。
該処理方法は、上述した活性酸素供給装置を用意する工程と、
活性酸素供給装置と、被処理物と、を開口部から気流を流出させたときに被処理物の表面が曝される相対的な位置に置く工程と、
開口部から気流を流出させて被処理物の表面に活性酸素を供給し、該被処理物の表面を活性酸素で処理する工程と、を有する。
処理時間は、除菌、消臭、漂白又は親水化など目的に応じて適宜設定すればよい。例えば1秒~1000分程度であり、好ましくは5秒~150分程度である。
【実施例
【0054】
以下、実施例及び比較例を用いて本開示をさらに詳細に説明するが、本開示の態様はこれらに限定されない。
【0055】
<実施例1>
実施例1の活性酸素供給装置を図1Aに示す。活性酸素供給装置100の筐体101として、内寸高さ50mm、内寸幅100mm、内寸奥行100mmであるアルミニウム製の直方体形状のケースを用意した。上面にはファン103が設けられ、底面にはΦ50mmの円形状の開口部が設けられ、開口部から流出する気流を生じさせることができる。
さらに、筐体内に、紫外線光源105(UV-C LED、商品名:ZEUBE265-2CA、スタンレー電気株式会社製、ピーク波長=265nm)円形状の90°毎に4個配置した。また、筐体内上面中央にオゾン発生装置として放電ワイヤ111とシールド113からなる電子写真装置の帯電部材として用いられるコロトロンコロナ放電器(直流-8kV印可)を設置した。こうして本実施例に係る活性酸素供給装置を作製した。また、図6における筐体101下面と被処理物109の被処理面109-1との距離Aを1mmとなるように配置した。LEDの光軸は開口部を通過し、被処理面109-1に向けて被処理面109-1を照射できるようにした。
【0056】
この活性酸素供給装置100における活性酸素の発生位置となる被処理面に照度計(商品名:分光放射照度計USR-45D、ウシオ電機社製)の受光面が来るように受光部を置いて紫外線の照度を測定した。紫外線光源105に7Vの電圧をかけたスペクトルの積分値は、630μW/cmであった。このとき、オゾン発生装置から発生するオゾンによる紫外線の遮蔽の影響を受けないように、オゾン発生装置には電源を入れなかった。かかる条件で測定された紫外線の照度を、被処理面のオゾンの励起に寄与する紫外線の照度とみなした。
【0057】
続いて、オゾン発生装置から発生するオゾン量を算出するため、活性酸素供給装置100の筐体101の開口部およびファン103にオゾンの透過性のない蓋をして密閉容器とした。そして、開口部にした蓋の一部にゴム栓で封止可能な孔部(不図示)を設け、該孔部から注射器で内部の気体を吸引できるようにした。そして、放電ワイヤ111に直流-8kVの電圧を印加してシールド113を接地した状態で、1分後に、密閉容器内の気体を100ml採取した。採取した気体をオゾン検知管(商品名:182SB、光明理化学工業社製)に吸引させ、オゾン発生装置より発生する測定オゾン濃度(PPM)を測定し
た。測定されたオゾン濃度の値を用いて、次式により、単位時間あたりのオゾン発生量を求めた。
【0058】
【数1】
【0059】
その結果、単位時間あたりのオゾン発生量は5μg/分であった。このとき、紫外線光源から照射される紫外線によるオゾンの分解の影響を受けないように、紫外線光源には電源を入れなかった。
最後に、オゾン発生装置と紫外線光源105の両方ともが稼働している場合のオゾン発生量を測定した。オゾン発生装置の稼働条件は、オゾン発生装置のみを稼働した場合に5μg/分のオゾンを発生する条件である。また、紫外線光源105の稼働条件は、紫外線光源105のみを稼働した場合に630μW/cmの照射強度になる条件である。その結果、オゾン発生装置と紫外線光源105の両方ともが稼働している場合のオゾン発生量は、2μg/分であった。5μg/分からの減少分の3μg/分が、活性酸素に変化したオゾンの量であると考えられる。
【0060】
2-1.処理(親水化)試験
ポリプロピレン樹脂製板(TP技研社製)を20mm角に切断したものを被処理物109として、活性酸素供給装置100の図6における距離Aが1mmとなるように配置した。次いで、放電ワイヤ111に直流-8kVの電圧を印加するとともに、紫外線光源105に直流7Vの電圧を印可して紫外線を照射し、2時間処理を行った。なお、ファン103の回転数は、開口部を鉛直上方に向くように活性酸素供給装置を配置したときに、開口部における気流の流速が8.2m/秒となるように調整した。
その後、該ポリプロピレン樹脂板の活性酸素で処理した面の水に対する接触角を測定し、処理前の接触角と比較した。接触角の測定は、23℃、50%RHにて、測定器として自動接触角計(商品名:DMo-602、共和界面化学社製)を用い、液滴は0.5μLの水を用い、滴下500m秒後の角度を測定し、5点を平均した値を採用した。当該ポリプロピレン樹脂製板の表面の処理前の接触角は102°であり、処理後の接触角は77°であったため、低下した接触角は25°であった。
【0061】
2-2.処理(除菌)試験
活性酸素供給装置100を用いて、以下の手順にて大腸菌の除菌試験を実施した。なお、本除菌試験に用いる器具は全て、オートクレーブを用いた高圧蒸気滅菌を行ったものを用いた。また、本除菌試験はクリーンベンチ内で行った。
まず、LB培地(トリプトン2g、イーストエクストラクト1g、塩化ナトリウム1gに蒸留水を入れ200mlにしたもの)の入った三角フラスコに、大腸菌(商品名「KWIK-STIK(大腸菌(Escherichia coli)ATCC8739)」、Microbiologics社製)を入れ、温度37℃で48時間、80rpmで振とう培養した。培養後の大腸菌の菌液は9.2×10(CFU/ml)であった。
この培養後の菌液0.010mlを縦3cm、横1cm、厚さ1mmのスライドガラス(松波硝子、型番:S2441)上にマイクロピペットを用いて滴下し、当該マイクロピ
ペットの先端で菌液をスライドガラスの一方の面の全面に塗布して試料No.1を作製した。同様にして試料No.2を作製した。
試料No.1を被処理物109として、被処理面であるスライドガラスの菌液塗布面と活性酸素供給装置100との図6における距離Aが1mmとなるように配置した。
【0062】
次いで、活性酸素供給装置100を作動させ、放電ワイヤ111に直流-8kVの電圧を印加するとともに、紫外線光源105に直流7Vの電圧を印可して紫外線を照射し、該スライドガラスの菌液塗布面を、活性酸素を含む気流で処理した。処理時間は、30秒とした。
次に、試料No.1を、10mlの緩衝液(商品名「Gibco PBS」、 Thermo Fisher Scientific社)を入れた試験管に1時間浸漬した。また、活性酸素供給装置を用いた処理過程で、スライドガラス上の菌液が乾かないように、菌液のスライドガラスへの滴下から、緩衝液への浸漬までの時間を60秒とした。
【0063】
次に、試料No,1を浸漬後の緩衝液(以降、「1/1液」ともいう)1mlを9mlの緩衝液が入った試験管に入れて希釈液(以降、「1/10希釈液」)を調製した。緩衝液での希釈倍率を変更したこと以外は同様にして、1/100希釈液、1/1000希釈液、及び、1/10000希釈液を調製した。
次いで、1/1液から0.050mlを採取し、スタンプ培地(ぺたんチェック25 PT1025 栄研化成社製)に塗抹した。この操作を繰り返して、1/1液が塗抹されたスタンプ培地を2つ(n1、n2)作製した。2つのスタンプ培地を恒温槽(商品名:IS600;ヤマト科学社製)に入れ、温度37℃で24時間培養した。
1/1液と同様に、1/10希釈液、1/100希釈液、1/1000希釈液及び1/10000希釈液についても、希釈液毎に2つの塗抹済スタンプ培地を作製し、培養した。
そして、各希釈液に係るスタンプ培地毎に発生したコロニー数のうち、コロニー数が10以上100以下の範囲内であった1/1液に係る2つのスタンプ培地のコロニー数の平均値である25(CFU)を1/1液の0.050ml中の生菌数とした。
【0064】
【表1】
【0065】
次に試料No.2について、活性酸素供給装置による処理を行わなかった以外は、試料No.1と同様にして1/1液、1/10希釈液、1/100希釈液、1/1000希釈液及び1/10000希釈液を調製し、培養試験を行った。そして、10以上100以下になった2つのスタンプ培地のコロニー数に基づき、試料No.2に係る1/1液中の生菌数を算出した。その結果、試料No.2に係る1/1液の0.0050ml中の生菌数は、595000(CFU)であった。
従って、本試験に係る活性酸素供給装置による大腸菌の除菌率は、99.996%(=(595000-25)/595000×100)であった。
【0066】
2-3.処理(消臭)試験
(1)消臭試験用試料の調製
ファブリックミスト(商品名:ファブリックミスト リネン、サボン社製)に、紙ワイパー(キムワイプS-200、日本製紙クレシア製)を10分間浸漬した後、取り出し、6時間自然乾燥させた。次いで、紙ワイパーを縦10mm、横10mmのサイズに3つ切り取り、消臭試験用試料を得た。
【0067】
(2)消臭試験
3つ消臭試験用試料の1つを、活性酸素供給装置100の開口部と被処理面109-1との距離(図6における距離A)が1mmとなるように設置した。また、被処理物109の幅方向(図6における左右方向)、および、奥行き方向(図6における紙面奥行方向)の中心位置は、活性酸素供給装置100を下面から見た開口部の中央に置いた。
次いで、放電ワイヤ111に直流-8kVの電圧を印加するとともに、紫外線光源105に直流7Vの電圧を印可して紫外線を照射することで被処理面に30分間活性酸素を照射して、被処理面109-1を処理した。
そして、処理された試料の臭気が、活性酸素による処理を行っていない試料との対比においてどの程度残存しているかを下記の強度基準で評価した。なお、評価は5人の被験者に対して行い、少なくとも3名が選択した強度基準を採用した。これを3回繰り返し、3つの処理後の試料を処理前の試料と比較して、どの程度消臭されたかを判定し、以下の基準で評価した。
ランクA:無臭。
ランクB:やっと検知できる臭い(検知閾値)。
ランクC:ファブリックミストの臭いであるとわかる弱い臭い(認知閾値)。
ランクD:未処理の試料と差異がない。
【0068】
2-4.処理(漂白)試験
(1)漂白試験用試料の調製
チリペッパーソース(商品名:タバスコ・ペッパーソース、マキルヘニー社製)を長繊維不織布(商品名:ベンコットM-3II、旭化成社製)でろ過して固形分を除去した。得られた液体中に、紙ワイパー(商品名:キムワイプS-200、日本製紙クレシア社製)を10分間浸した。続いて、紙ワイパーを取り出し、水洗した。水洗は、洗液が目視にて着色しなくなるまで繰り返した。その後、乾燥させた。次いで、該チリソースによって赤色に染められた紙ワイパーから、縦15mm、横15mmの試料を3つ切り出し、漂白試験用試料を得た。
【0069】
(2)漂白試験
3つの漂白試験用試料の1つを、活性酸素供給装置100の開口部と被処理面109-1との距離(図6における距離A)が1mmとなるように設置した。また、被処理物109の幅方向(図6における左右方向)、および、奥行き方向(図6における紙面奥行方向)の中心位置は、活性酸素供給装置を下面から見た中央に置いた。次いで、放電ワイヤ111に直流-8kVの電圧を印加するとともに、紫外線光源105に直流7Vの電圧を印可して紫外線を照射することで被処理面に150分間活性酸素を照射して、被処理面109-1を処理した。これを3回繰り返し、3つの処理後の試料を処理前の試料と比較して、どの程度脱色されたかを目視で観察し、以下の基準で評価した。
ランクA:完全に漂白された。
ランクB:チリペッパーソースの赤色がわずかに残っていた。
ランクC:チリペッパーソースの赤色が多少残っていた。
ランクD:活性酸素が供給されなかった部分の色と差がなかった。
【0070】
実施例1の活性酸素供給装置の装置条件、オゾン発生装置のみを稼働した場合のオゾン
発生量、紫外線光源のみを稼働した場合の紫外線の照度、接触角の低下、除菌/消臭/漂白の各処理の評価結果を表3に示す。
【0071】
<実施例2>
実施例1の紫外線光源105の電圧を7Vから4Vに変更し、UV照度を低下させた以外は実施例1と同様にして活性酸素供給装置を作製し、評価した。
【0072】
<実施例3>
実施例1の放電ワイヤ111に印可する電圧を直流-5kVに変更し、オゾン発生量を低下させた以外は実施例1と同様にして活性酸素供給装置を作製し、評価した。
【0073】
<実施例4>
実施例1の紫外線光源をUV-C LED(型番:LJU1106EAE-275-TR、スタンレー電気株式会社製、ピーク波長=275nm)に変えた以外は実施例1と同様にして活性酸素供給装置を作製し、評価した。
【0074】
<実施例5及び6>
筐体101の下面と被処理面109-1の距離Aを表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして活性酸素供給装置を評価した。
【0075】
<実施例7>
実施例1の図1Aの活性酸素供給装置を図1Bの活性酸素供給装置に変えた以外は実施例1と同様にして、活性酸素供給装置を作製し、評価した。実施例7では紫外線光源105の位置を、図1Aから図1Bの様に筐体101の外に移動している。被処理面109-1と紫外線光源下端との距離を活性酸素供給装置と被処理面との距離Aとした。LEDの光軸は、被処理面109-1に向けて被処理面109-1を照射できるようにした。
【0076】
<実施例8>
実施例1の図1Aの活性酸素供給装置100を図2の活性酸素供給装置200に変えた以外は実施例1と同様にして、活性酸素供給装置を作製し、評価した。すなわち、活性酸素供給装置200では気流を起こす手段として、ファンを使用する代わりに、オゾン発生装置をコロトロンコロナ放電器からグリッド電極201を有するスコロトロンコロナ放電器に変更した。グリッド電極201には、直流1kVを印可した。
【0077】
<実施例9>
実施例1の図1Aの活性酸素供給装置100を図3の活性酸素供給装置300に変えた以外は実施例1と同様にして、活性酸素供給装置を作製し、評価した。すなわち、活性酸素供給装置300ではファンを筐体の内部に設置し、オゾン発生装置をコロトロンコロナ放電器からオゾナイザー301(品番:MHM500-00A、株式会社村田製作所製)に変えた。オゾナイザーには直流8Vを印可した。
なお、本実施例における除菌試験に関して、試料No.1に係る1/1液、1/10希釈液、1/100希釈液、1/1000希釈液及び1/10000希釈液の培養試験の結果、1/1液に係るスタンプ培地(n1、n2)において観察されたコロニー数が共に10個未満であったため、1/1液の0.050ml中の生菌数は10(CFU)として除菌率を算出した。
【0078】
<実施例10>
実施例1の図1Aの活性酸素供給装置100を図4の活性酸素供給装置400に変えた以外は実施例1と同様にして、活性酸素供給装置を作製し、評価した。すなわち、活性酸素供給装置200では気流を起こす手段として、ファンを使用する代わりに、シリコーン
チューブを介してエアポンプ403(型番「β-60」:アズワン株式会社製、吐出風量1.2L/分)を設置し、開口部にはメッシュ部材401(ステンレス製、100メッシュ、線形0.1mm、開口率36%)を設置した。
【0079】
<実施例11>
実施例10の図4の活性酸素供給装置400を図5の活性酸素供給装置500に変えた以外は実施例10と同様にして、活性酸素供給装置を作製し、評価した。活性酸素供給装置500では紫外線光源105の位置を、図4から図5の様に筐体101の外に移動している。被処理面109-1と紫外線光源下端との距離を活性酸素供給装置と被処理面との距離Aとした。LEDの光軸は、被処理面109-1に向けて被処理面109-1を照射できるようにした。
【0080】
<実施例12>
実施例1の図1Aの活性酸素供給装置100を図7の活性酸素供給装置700に変えた以外は実施例1と同様にして、活性酸素供給装置を作製し、評価した。すなわち、活性酸素供給装置700では気流を起こす手段として、ファンを使用する代わりに、シリコーンチューブを介してエアポンプ403(型番「β-60」:アズワン株式会社製、吐出風量1.2L/分)を筐体外部に設置し、吸気口となるシリコーンチューブの先端は開口部と被処理体の間の開口部近傍に設置した。また、開口部の背面に直径5mmの通気口を設けた。
【0081】
<実施例13>
実施例1に用いた活性酸素供給装置において、紫外線光源105であるLEDを、その光軸を、図8に示すように、オゾン発生装置(放電ワイヤ111、シールド113)に向くように配置し、オゾン発生装置が、該LEDから発せられる紫外線によって照射されるようにした。これ以外は、実施例1と同様にして処理を行った。
【0082】
<比較例1~3>
比較例1~3は各々以下のような構成とした以外は実施例1と同様の条件とした。
比較例1:オゾン発生装置に電圧を印加し、紫外線光源に電圧を印可しなかった。
比較例2:オゾン発生装置に電圧を印加せず、紫外線光源に電圧を印可した。
比較例3:図3のファンを駆動しないことで気流を発生させなかった以外は実施例9と同様の条件とした。
【0083】
実施例1~13、比較例1~3の評価結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
表2中、UVは紫外線を表す。また、オゾン発生量は、紫外線光源に電源を入れなかった場合の単位時間当たりのオゾン発生量を示す。また、UV照度は、オゾン発生装置の電源を入れなかった場合のUV照度を示す。さらに、表中の気流の流速は、各態様に係る活性酸素供給装置を、その開口が鉛直上方を向くように配置したときの開口部において測定した値である。
流速の測定は、マルチ環境測定器(商品名:testo435;テストー社製)を用い、開口部の中央に風速計のプローブの中央を合わせて、開口部面から筐体外に流出した直後の気流の流速を測定した。
【0086】
接触角の低下は、比較例2のように紫外線では起こらなかった。また、比較例1のようにオゾンの発生している場合には接触角が低下した。さらに、オゾンの発生と紫外線の照射を両方行っている場合には、活性酸素の反応性の高さによりさらに接触角が低下した。
比較例1では、オゾンによる除菌、消臭、漂白の効果が多少見られたが、実施例1~13には及ばなかった。比較例2では、紫外線による除菌の効果が多少見られたが、消臭、漂白の効果は見られなかった。
【0087】
なお、実施例13については、活性酸素による処理の結果が、比較例1~3と比較すると良好なものの、実施例1と比較すると良好ではなかった。具体的には、実施例13の親水化試験及び除菌試験の結果が、実施例1と比較して相対的に良好ではなかった。その理由は以下のように考えられる。
すなわち、実施例13では、紫外線をオゾン発生装置に照射する構成とした。そのため、被処理物からより離れた位置であるオゾン発生装置の近傍において、オゾンが分解し、活性酸素が発生したものと考えられる。そのため、被処理物に到達する活性酸素の濃度が低下し、活性酸素による処理の程度が相対的に低下したため、上記の結果となったものと考えられる。
【0088】
本開示は、以下の構成及び方法に関する。
(構成1)
活性酸素供給装置であって、
少なくとも一つの開口部を有する筐体と、
該筐体内のオゾン発生装置と、
該オゾン発生装置によって該筐体内に発生したオゾンを含み、該開口部に向けて流動し、該開口部から該筐体外に流出する気流を生じさせる手段と、
該開口部から該筐体外に流出する該オゾンを含む該気流に紫外線を照射可能に配置された紫外線光源と、を具備し、
該紫外線光源は、該気流中のオゾンを分解して活性酸素を生じさせるものであり、
該オゾンを含む該気流に該紫外線を照射することによって発生した、活性酸素を含む気流を該筐体外の被処理物に供給する、活性酸素供給装置。
(構成2)
活性酸素供給装置であって、
少なくとも一つの開口部を有する筐体と、
該筐体内のオゾン発生装置と、
該オゾン発生装置によって該筐体内に発生したオゾンを含み、該開口部に向けて流動し、該開口部から該筐体外に流出する気流を生じさせる手段と、
該開口部から該筐体外に流出した該オゾンを含む該気流に紫外線を照射可能に配置された紫外線光源と、を具備し、
該紫外線光源は、該気流中のオゾンを分解して活性酸素を生じさせるものであり、
該オゾンを含む該気流に該紫外線を照射することによって発生した、活性酸素を含む気流を該筐体外の被処理物に供給する、活性酸素供給装置。
(構成3)
前記紫外線光源が、前記筐体の外に配置されている構成2に記載の活性酸素供給装置。(構成4)
前記オゾン発生装置が、放電ワイヤを備えたコロナ放電器である構成1~3のいずれかに記載の活性酸素供給装置。
(構成5)
前記気流を生じさせる手段が、前記放電ワイヤよりも前記開口部に近い側に配置されたグリッド電極である構成4に記載の活性酸素供給装置。
(構成6)
前記気流を生じさせる手段が、送風機である構成1~5のいずれかに記載の活性酸素供
給装置。
(構成7)
前記気流を生じさせる手段が、前記筐体内に前記筐体外の空気を導入し、前記筐体内を正圧にするエアポンプである構成1~6のいずれかに記載の活性酸素供給装置。
(構成8)
前記気流を生じさせる手段が、前記筐体内の気体の吸引装置である構成1~7のいずれかに記載の活性酸素供給装置。
(構成9)
前記紫外線光源が発する紫外線のピーク波長が、220nm~310nmである構成1~8のいずれかに記載の活性酸素供給装置。
(構成10)
前記紫外線光源が、前記開口部を介して前記筐体外の被処理物を照射可能に配置されている構成1~9のいずれかに記載の活性酸素供給装置。
(構成11)
前記紫外線光源が、LED又は半導体レーザである構成1~10のいずれかに記載の活性酸素供給装置。
(構成12)
前記活性酸素供給装置をその開口が鉛直上方を向くように配置したときの前記開口部の出口において測定した気流の流速が、0.1m/秒~100m/秒である構成1~11のいずれかに記載の活性酸素供給装置。
(方法13)
被処理物の表面を活性酸素で処理する処理方法であって、
構成1~12のいずれかに記載の活性酸素供給装置を用意する工程と、
前記活性酸素供給装置と、該被処理物と、を前記開口部から前記気流を流出させたときに該被処理物の表面が曝される相対的な位置に置く工程と、
前記開口部から前記気流を流出させて該被処理物の表面に活性酸素を供給し、該被処理物の表面を活性酸素で処理する工程と、を有する、活性酸素による処理方法。
【符号の説明】
【0089】
100、200、300、400、500、600、700:活性酸素供給装置、
101:筐体、103:ファン、105:紫外線光源、107:気流、109:被処理物、109-1:被処理面、111:放電ワイヤ、113:シールド、
201:グリッド電極、301:オゾナイザー(オゾン発生装置)
401:メッシュ部材、101-1:開口部、403:エアポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8