(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】抗微生物化合物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/426 20060101AFI20241015BHJP
A61K 31/427 20060101ALI20241015BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20241015BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
A61K31/426
A61K31/427
A61P31/00
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2022121250
(22)【出願日】2022-07-29
(62)【分割の表示】P 2018565820の分割
【原出願日】2017-06-12
【審査請求日】2022-08-26
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515134117
【氏名又は名称】ヴェルシテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100163991
【氏名又は名称】加藤 慎司
(72)【発明者】
【氏名】カオ,イーツン,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ヤム,ヒンチェウン,ビル
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ペン
(72)【発明者】
【氏名】イウ,ホーティン
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-508809(JP,A)
【文献】MIAO, J., et al.,Journal of Medical Science Yanbian University,2013年,Vol.36, No.2,pp.104-109.
【文献】SUNDARAM, K., et al.,Research on Chemical Intermediates,2015年,Vol.41, No.2,pp.1011-1021.
【文献】PATEL, B.A., et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2013年,Vol.23, No.20,pp.5523-5527.
【文献】CHEN, Z.-H., et al.,European Journal of Medicinal Chemistry,2010年,Vol.45, No.12,pp.5739-5743.
【文献】ZINGLE, C., et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry,2014年,Vol.22, No.14,pp.3713-3719.
【文献】VILLAIN-GUILLOT, P., et al.,Jounal of Medicinal Chemistry,2007年,Vol.50, No.17,pp.4195-4204.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌中のジヒドロ葉酸レダクタ-ゼの合成を阻害して、それにより、細菌感染を有する対象における細菌の病原性を減少させるための薬学組成物であって、薬学的に許容される担体と、以下からなる群より選択される有効量の化合物と、を含んでいる、薬学組成物。
{5-[4-(ベンジルオキシ)ベンジリデン]-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル}酢酸(化合物3)
【化1】
(5-{4-[(2,4-ジクロロベンゾイル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸(化合物4)
【化2】
(5-{4-[(4-クロロベンジル)オキシ]-3-メトキシベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸(化合物6)
【化3】
{5-[4-(1-ナフチルメトキシ)ベンジリデン]-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル}酢酸(化合物7)
【化4】
(5-{3-[(4-クロロベンジル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸(化合物13)
【化5】
(5-{3-[(2,4-ジクロロベンジル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸(化合物17)
【化6】
(5-{3-[(2,4-ジクロロベンジル)オキシ]-4-メトキシベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸(化合物18)
【化7】
(5-{3-[(2-クロロベンジル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸(化合物19)
【化8】
(5-{4-[(4-クロロベンジル)オキシ]-3-エトキシベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸(化合物20)
【化9】
{5-[4-(ベンジルオキシ)-3-メトキシベンジリデン]-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル}酢酸(化合物22)
【化10】
(5-{2-[(4-クロロベンジル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸(化合物28)
【化11】
(5-{4-[(3-メチルベンゾイル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸(化合物29)
【化12】
{5-[3-フルオロ-4-(1-ピロリジニル)ベンジリデン]-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル}酢酸(化合物30)
【化13】
[5-(4-エトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル]酢酸(化合物31)
【化14】
[4-オキソ-5-(4-プロポキシベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル]酢酸(化合物48)
【化15】
(5-{4-[メチル(フェニル)アミノ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸(化合物49)
【化16】
(5-{4-[(2-クロロ-4-フルオロベンジル)オキシ]-3-メトキシベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸(化合物50)
【化17】
{5-[2-(ベンジルオキシ)ベンジリデン]-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル}酢酸(化合物52)
【化18】
(5-{3-[(2-フルオロベンジル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸(化合物63)
【化19】
4-[(4-{[3-(2-メトキシエチル)-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-5-イリデン]メチル}フェノキシ)メチル]安息香酸(化合物69)
【化20】
(5-{5-ブロモ-2-[(2-クロロベンジル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸(化合物80)
【化21】
(5-{[1-(2-フルオロベンジル)-1H-インド-ル-3-イル]メチレン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸(化合物81)
【化22】
(5-{4-[(4-クロロベンジル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸(化合物82)
【化23】
及び、
3-[5-(4-メトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル]プロパンアミド(化合物87)
【化24】
【請求項2】
感染を引き起こす前記細菌の少なくとも1つが、メチシリン感受性Staphyloccous aureus、Pseudomonas aeruginosa、Listeria monocytogenes、Burkholderia cepacia、Escherichia coli、Enterococcus faecalis、Streptococcus pneumoniae、又はこれらの組合せからなる群より選択される細菌である、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項3】
前記組成物が非経口的又は経口的に投与される、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項4】
感染を引き起こす前記細菌の少なくとも1つが、Streptococcus pneumoniae
、バンコマイシン耐性Staphylococcus aureus(VRSA)、エリスロマイシン耐性A群Streptococcus、クリンダマイシン耐性B群Streptococcus
、腸管病原性E.coli(EPEC)、Pseudomonas aeruginosa
、及び、尿路病原性E.coli(UPEC)からなる群より選択される抗生物質耐性細菌である、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項5】
感染を引き起こす前記細菌が、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)である、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項6】
感染を引き起こす前記細菌が、Listeria monocytogenes、Pseudomonas aeruginosa、Burkholderia cepacia、Enterococcus faecalis、及びStreptococcus pneumoniaeの多剤耐性株である、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項7】
前記感染が、膿痂疹、吹出物、膿瘍、毛包炎、蜂巣炎、壊死性筋膜炎、化膿性筋炎、外科的/外傷性創傷感染症、感染潰瘍及び火傷、骨髄炎、器材関連骨関節感染症、膿痂疹、二次感染皮膚病変、髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、並びに脊髄硬膜外膿瘍からなる群より選択される、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項8】
前記感染が、尿路感染症である、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項9】
前記対象が、入院しているか免疫不全である、請求項1に記載の薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、微生物感染症を治療するための手段に関する。
【背景技術】
【0002】
感染症は、人類が存在して以来、死の主要原因であり、細菌感染は、この医療上の課題において、重要な役割を果たしている。院内感染及び抗生物質耐性細菌関連感染は、過去数十年にわたり、医療分野において大きな課題となっている。ESKAPE病原菌(Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosa、及びEnterobacter種の頭文字をとったもの)に焦点が当てられ、これらの感染毒性における適応又は治療に対する多剤耐性は、治療オプションを非常に限られたものにしている(Khan et al.,Front Microbiol.,7:174(2016))。耐性メカニズムの急速な発展は、使用後短時間での新薬の有効性を低下させる。利益率の低さによる医薬品抗生物質パイプラインの縮小は、この状況をさらに悪化させている(Butler et al.,The Journal of antibiotics,66(10):571-591(2013))。将来的にはより多くの耐性菌が出現し、細菌に対する強力な抗菌剤の欠如が大きな脅威になることが予測されている(Tommasi et al.,Nat Rev Drug Discov.,14(8):529-42(2015))。したがって、細菌に対する新しい抗菌剤/治療方法が必要である。
【0003】
抗生物質耐性は、細菌感染における主要な問題である。細菌増殖の抑制のための新規化合物の開発に対して努力が払われてきた。しかしながら、過去数十年間において、大きな成果は得られていない。抗生物質耐性細菌に対する現在の治療法の選択肢は、依然として、いくつかの第2又は第3ラインの抗生物質の組合せ効果に依拠している。より良い治療の選択肢が依然として必要である。
【0004】
したがって、本発明のひとつの目的は、抗菌活性を有する化合物を提供することである。
本発明の目的はまた、既存の抗生物質の抗菌効果を増強する化合物を提供することである。
本発明の更なる目的は、細菌感染症を治療するための組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、微生物感染を有する対象を治療するための方法を提供することである。
本発明の目的はまた、薬剤耐性細菌感染と戦うために使用可能な抗菌活性を有する化合物を提供することである。
【発明の概要】
【0005】
例えば、微生物感染の治療、表面の消毒、抗生物質の有効性の増大、及び細菌の病原性の減少のための、化合物、組成物、及び方法が開示される。いくつかの形態は、以下に開示される化合物2-4、6-7、10、13、15、17-20、22、24-25、27-31、34-37、42、44、48-50、52-53、56、60、62-63、69、80-82及び87などの、抗菌特性を有する化合物を提供する。いくつかの形態では、化合物は、同時投与されたときに、1つ又は複数の抗菌剤の治療効果を増強する。他の形態では、化合物は、hlaプロモ-タのluxレポ-タアッセイにおける低減及び色素産生の抑制として測定される、抗病原性を有している。
【0006】
薬学的に許容される担体中に本明細書に開示された化合物を含んだ医薬組成物が提供される。好ましい化合物には、化合物2-4、6-7、10、13、15、17-20、22、24-25、27-31、34-37、42、44、48-50、52-53、56、60、62-63、69、80-82及び87が含まれる。この形態では、医薬組成物は、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、ネオマイシン、スペクチノマイシン、ネアミン、又はこれらの任意の組み合わせなどの少なくとも1つの抗生物質を更に含み得る。
【0007】
これらの化合物は、洗浄用組成物に配合することができる。洗浄用組成物は、家庭用洗浄用途(例えば、床、カウンタ-トップ、タブ、皿などの硬い表面、及び、衣類、スポンジ、ペ-パ-タオルなどの柔らかい布材料など)、パ-ソナルケア用途(例えば、ロ-ション、シャワ-ジェル、石鹸、シャンプ-、ワイプ)、工業用及び病院用(例えば、器具、医療機器、手袋の滅菌)に極めて有効である。
【0008】
また、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、Listeria monocytogenes、Burkholderia cepacia、Escherichia coli、Enterococcus faecalis、Streptococcus pneumoniaeなどの微生物に起因した微生物感染を治療若しくは予防する方法、又は、これらの微生物で汚染された表面を消毒する方法も開示される。この方法は、それを必要とする対象に対して、式2-4、6-7、10、13、15、17-20、22、24-25、27-31、34-37、42、44、48-50、52-53、56、60、62-63、69、80-82及び87の何れかに係る1つ又は複数の化合物を有効量処方することを含んでいる。いくつかの形態では、上記方法は、例えば、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、ネオマイシン、スペクチノマイシン、ネアミン、又はこれらの任意の組み合わせなどの少なくとも1つの抗生物質の有効量を投与することを更に含んでいる。
【0009】
抗生物質は、別々に、同時に、又は逐次的に投与することができる。好ましい形態では、別々に、同時に、又は逐次的に投与される1つ又は複数の抗菌剤(1つ又は複数の抗生物質を含む)の量は、開示された化合物を受容していない患者又は動物に処方された場合の1つ又は複数の抗菌剤(1つ又は複数の抗生物質を含む)の治療有効量又は治療最適量より少なくてもよい。
【0010】
式Iで表される化合物が開示される。
【化1】
ここで、X及びYは、独立して、O、S、又はNR
10であり;
Zは、O、S、CR
11R
12、又はNR
13であり;
R
1、R
2、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、及びR
15は、独立して、空位、水素、-C(O)R
18、-C(W)NR
19R
20、又は、置換若しくは無置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、ヘテロサイクリル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリ-ル、ヘテロアリ-ル、アロキシ、アリ-ルアルキル、ヘテロアルキル、アルキルアリ-ル、ハロゲン、アルキルヘテロアリ-ル、-NR
16R
17であり;R
16及びR
17は、独立して、水素、置換若しくは無置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロサイクリル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリ-ル、ヘテロアリ-ル、アリ-ルアルキル、ヘテロアルキル、アルキルアリ-ル、又はアルキルヘテロアリ-ルであり;
R
18は、水素、ヒドロキシル、又は、置換若しくは無置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、ヘテロサイクリル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリ-ル、アロキシ、ヘテロアリ-ル、アリ-ルアルキル、ヘテロアルキル、アルキルアリ-ル、又はアルキルヘテロアリ-ルであり;
Wは、O、S、又はNR
21であり;
R
19、R
20、及びR
21は、独立して、水素、置換若しくは無置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロサイクリル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリ-ル、ヘテロアリ-ル、アリ-ルアルキル、ヘテロアルキル、アルキルアリ-ル、又はアルキルヘテロアリ-ルであり;
Aは、二重結合又は単結合であり;
R
15は、Aが二重結合である場合には存在しない。
【0011】
いくつかの形態では、化合物は、式IIであり得る。
【化2】
ここで、R
1は、-O-R
4、-NR
5R
8、又は-CH
2-R
5であり;R
2は、ハロゲン、空位、-O-CH
3、又は-O-CH
2-CH
3であり;R
9は、-COOH、-CH
2-COOH、-CH
2-O-CH
3、又は-CH
2-CH
2-O-CH
3であり;R
4は、-CH
2-R
5又は-CO-R
5であり;R
5は、
【化3】
であり、ここで、R
6はハロゲン又は空位であり;R
7はハロゲン又は空位である。
【0012】
化合物のいくつかの形態では、R1は、2、3、4、5及び6位からなる群から選択される位置にある。いくつかの形態では、R6は、4位にある。いくつかの形態では、R7は、2又は6位にある。いくつかの形態では、R2は、3、4又は5位にある。いくつかの形態では、R6は4位にあり、R7は2又は6位にあり、R2は、3又は5位にある。
【0013】
いくつかの形態では、化合物は、式IIA:
【化4】
であり、ここで、R
1は、-O-R
4、-NR
5R
8、又は-CH
2-R
5であり;R
2は、ハロゲン、空位、-O-CH
3、又は-O-CH
2-CH
3であり;R
3は、-COOH又は-CH
2-COOHであり;R
4は、-CH
2-R
5又は-CO-R
5であり;R
5は、
【化5】
であり、R
6はハロゲン又は空位であり;R
7はハロゲン又は空位である。
【0014】
いくつかの形態では、R1は2、3、4、5及び6位からなる群から選択される位置にある。いくつかの形態では、R6は、4位にある。いくつかの形態では、R7は、2又は6位にある。いくつかの形態では、R2は、3、4又は5位にある。いくつかの形態では、R6は4位にあり、R7は2又は6位にあり、R2は、3又は5位にある。
【0015】
いくつかの形態では、化合物は、化合物2-4、6-7、10、13、15、17-20、22、24-25、27-31、34-37 42、44、48-50、52-53、56、60、62-63、69、80-82、及び87からなる群より選択される。
【0016】
また、有効量の1つ又は複数の開示化合物と、薬学的に許容される担体とを含んだ組成物も開示される。そのような組成物は、例えば、対象における微生物感染を治療するために有用である。いくつかの形態では、化合物の有効量は、微生物中のジヒドロ葉酸レダクタ-ゼを阻害するのに有効である。
【0017】
いくつかの形態では、組成物は、治療有効量の抗生物質を更に含んでいる。いくつかの形態では、抗生物質は、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、ネオマイシン、スペクチノマイシン、ネアミン及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの形態では、抗生物質の治療有効量は、組成物の非存在下で対象に投与された場合の抗生物質の治療有効量又は治療最適量未満である。
【0018】
1つ又は複数の組成物を対象に投与することを含む、対象における微生物感染症を治療する方法もまた開示される。いくつかの形態では、微生物感染は1つ又は複数の微生物によって引き起こされ、組成物は、感染を引き起こす微生物の少なくとも1つにおいて、ジヒドロ葉酸レダクタ-ゼを阻害するのに有効である。
【0019】
いくつかの形態では、感染を引き起こす微生物の少なくとも1つは、メチシリン感受性Staphyloccous aureus、Pseudomonas aeruginosa、Listeria monocytogenes、Burkholderia cepacia、Escherichia coli、Enterococcus faecalis、Streptococcus pneumoniae又はそれらの組み合わせを含む。
【0020】
いくつかの形態では、感染を引き起こす微生物の少なくとも1つは、Streptococcus pneumoniae、Campylobacter、Neisseria gonorrhoeae、Salmonella(薬物耐性非腸チフスSalmonella及び薬物耐性Salmonella血清型チフスを含む)、Shigella、バンコマイシン耐性Enterococcus(VRE)、バンコマイシン耐性Staphylococcus aureus(VRSA)、エリスロマイシン耐性A群Streptococcus、クリンダマイシン耐性B群Streptococcus、カルバペネム耐性Enterobacteriaceae(CRE)、薬剤耐性結核、拡張型Enterobacteriaceae(ESBL)、多剤耐性Acinetobacter(MRABを含む)、Clostridium difficile、腸管病原性E.coli(EPEC)、Pseudomonas aeruginosa、H.pylori、Streptococcus anginosus、及び、尿路病原性E.coli(UPEC)からなる群より選択される抗生物質耐性微生物である。
【0021】
いくつかの形態では、感染を引き起こす微生物の少なくとも1つは、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)である。
【0022】
いくつかの形態では、感染を引き起こす微生物は、Listeria monocytogenes、Pseudomonas aeruginosa、Burkholderia cepacia、Enterococcus faecalis、及びStreptococcus pneumoniaeの多剤耐性株である
【0023】
いくつかの形態では、感染は、膿痂疹、吹出物、膿瘍、毛包炎、蜂巣炎、壊死性筋膜炎、化膿性筋炎、外科的/外傷性創傷感染症、感染潰瘍及び火傷、骨髄炎、器材関連骨関節感染症、膿痂疹、二次感染皮膚病変、髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、並びに脊髄硬膜外膿瘍からなる群より選択される。
【0024】
いくつかの形態では、感染は、尿路感染症である。いくつかの形態では、組成物は、非経口的に又は経口的に投与される。いくつかの形態では、対象は、入院しているか免疫不全である。
【0025】
必要とする表面を消毒する方法であって、1つ若しくは複数の開示された化合物又は1つ若しくは複数の開示された組成物と表面とを接触させることを含む方法も開示される。
【0026】
いくつかの形態では、化合物は、スプレ-、エアロゾル、又はフォ-ムの形態で前記表面に適用される。いくつかの形態では、化合物は、消毒すべき表面をふき取るのに適した布に吸収される。いくつかの形態では、表面は、手術器具、心臓及び尿カテ-テル、インプラント、並びに滅菌体腔で使用される超音波プロ-ブからなる群より選択される器具の表面である。
【0027】
いくつかの形態では、器具は、内視鏡、喉頭鏡ブレ-ド、食道圧測定プロ-ブ、膀胱鏡、肛門直腸マノメトリカテ-テル、ダイアフラムフィッティングリング、胃鏡、十二指腸鏡、S状結腸鏡、直腸鏡、結腸鏡、気管支鏡、及び喉頭鏡からなる群より選択される。
【0028】
抗生物質の有効性を増加させる方法であって、前記抗生物質と、前記抗生物質の有効性を増加させるのに有効量の1つ若しくは複数の開示された化合物又は1つ若しくは複数の開示された組成物とを共投与することを含んだ方法もまた開示される。
【0029】
いくつかの形態では、化合物又は組成物は、抗生物質とは別個に、同時に、又は逐次的に投与される。いくつかの形態では、前記抗生物質の効力が、前記抗生物質単独に応答するin vitroアッセイにおける微生物の成長の抑制として測定した場合と比較して、前記抗生物質と前記化合物又は組成物との組み合わせに対する前記微生物の成長の抑制が少なくとも2倍に増加する。
【0030】
また、対象における細菌の毒性を低減させる方法であって、前記細菌は、メシチリン耐性Staphyloccous aureus、Pseudomonas aeruginosa、Listeria monocytogenes、Burkholderia cepacia、Escherichia coli、Enterococcus faecalis、Streptococcus pneumoniae、又はこれらの組合せからなる群より選択され、前記方法は、有効量の1つ若しくは複数の開示された化合物又は1つ若しくは複数の開示された組成物を前記対象に処方することを含んだ方法も開示される。
【0031】
いくつかの形態では、化合物は、化合物3、化合物48、化合物49、及び化合物87からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、化合物13とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus Mu3株の成長阻害において、化合物13がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図2】
図2は、化合物13とアミカシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus Mu3株の成長阻害において、化合物13がアミカシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図3】
図3は、化合物13とカナマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus Mu3株の成長阻害において、化合物13がカナマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図4】
図4は、化合物13とネオマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus Mu3株の成長阻害において、化合物13がネオマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図5】
図5は、化合物13とスペクチノマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus Mu3株の成長阻害において、化合物13がスペクチノマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図6】
図6は、化合物13とネアミンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus Mu3株の成長阻害において、化合物13がネアミンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図7】
図7は、化合物13とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus ATCC 29213株の成長阻害において、化合物13がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図8】
図8は、化合物13とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。ヒ-トマッププロットは、ニュ-マンに対する化合物13及びゲンタマイシンのチェッカ-ボ-ドアッセイの正規化された成長を示す。この分析は、S.aureus ニュ-マン株の成長阻害において、化合物13がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図9】
図9は、化合物13とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。ヒ-トマッププロットは、RN4220に対する化合物13及びゲンタマイシンのチェッカ-ボ-ドアッセイの正規化された成長を示す。この分析は、S.aureus RN4220株の成長阻害において、化合物13がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図10】
図10は、化合物13とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。ヒ-トマッププロットは、USA300に対する化合物13及びゲンタマイシンのチェッカ-ボ-ドアッセイの正規化された成長を示す。この分析は、S.aureus USA300株の成長阻害において、化合物13がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図11】
図11は、化合物13とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。ヒ-トマッププロットは、COLに対する化合物13及びゲンタマイシンのチェッカ-ボ-ドアッセイの正規化された成長を示す。この分析は、S.aureus COL株の成長阻害において、化合物13がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図12】
図12は、化合物13とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。ヒ-トマッププロットは、RN6390に対する化合物13及びゲンタマイシンのチェッカ-ボ-ドアッセイの正規化された成長を示す。この分析は、S.aureus RN6390株の成長阻害において、化合物13がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図13】
図13は、化合物13とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus ST45-502株の成長阻害において、化合物13がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図14】
図14は、化合物13とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus AE-052株の成長阻害において、化合物13がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図15】
図15は、化合物13とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus ST239-III-AH-504株の成長阻害において、化合物13がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図16】
図16は、化合物13とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus SST239-IIIA-503株の成長阻害において、化合物13がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図17A】
図17は、S.aureus Mu3に対して50μMの化合物13アナログを種々の濃度のゲンタマイシンと組み合わせた二次スクリ-ニングを示す。この分析は、いくつかの構造類似体が、S.aureus Mu3に対して組み合わせ阻害効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図17B】
図17は、S.aureus Mu3に対して50μMの化合物13アナログを種々の濃度のゲンタマイシンと組み合わせた二次スクリ-ニングを示す。この分析は、いくつかの構造類似体が、S.aureus Mu3に対して組み合わせ阻害効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図17C】
図17は、S.aureus Mu3に対して50μMの化合物13アナログを種々の濃度のゲンタマイシンと組み合わせた二次スクリ-ニングを示す。この分析は、いくつかの構造類似体が、S.aureus Mu3に対して組み合わせ阻害効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図17D】
図17は、S.aureus Mu3に対して50μMの化合物13アナログを種々の濃度のゲンタマイシンと組み合わせた二次スクリ-ニングを示す。この分析は、いくつかの構造類似体が、S.aureus Mu3に対して組み合わせ阻害効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図18A】
図18は、S.aureus Mu3に対して20μMの化合物13アナログを種々の濃度のゲンタマイシンと組み合わせた二次スクリ-ニングを示す。この分析は、いくつかの構造類似体が、S.aureus Mu3に対して組み合わせ阻害効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図18B】
図18は、S.aureus Mu3に対して20μMの化合物13アナログを種々の濃度のゲンタマイシンと組み合わせた二次スクリ-ニングを示す。この分析は、いくつかの構造類似体が、S.aureus Mu3に対して組み合わせ阻害効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図18C】
図18は、S.aureus Mu3に対して20μMの化合物13アナログを種々の濃度のゲンタマイシンと組み合わせた二次スクリ-ニングを示す。この分析は、いくつかの構造類似体が、S.aureus Mu3に対して組み合わせ阻害効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図18D】
図18は、S.aureus Mu3に対して20μMの化合物13アナログを種々の濃度のゲンタマイシンと組み合わせた二次スクリ-ニングを示す。この分析は、いくつかの構造類似体が、S.aureus Mu3に対して組み合わせ阻害効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図19A】
図19は、S.aureus Mu3に対して5μMの化合物13アナログを種々の濃度のゲンタマイシンと組み合わせた二次スクリ-ニングを示す。この分析は、いくつかの構造類似体が、S.aureus Mu3に対して組み合わせ阻害効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図19B】
図19は、S.aureus Mu3に対して5μMの化合物13アナログを種々の濃度のゲンタマイシンと組み合わせた二次スクリ-ニングを示す。この分析は、いくつかの構造類似体が、S.aureus Mu3に対して組み合わせ阻害効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図19C】
図19は、S.aureus Mu3に対して5μMの化合物13アナログを種々の濃度のゲンタマイシンと組み合わせた二次スクリ-ニングを示す。この分析は、いくつかの構造類似体が、S.aureus Mu3に対して組み合わせ阻害効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図19D】
図19は、S.aureus Mu3に対して5μMの化合物13アナログを種々の濃度のゲンタマイシンと組み合わせた二次スクリ-ニングを示す。この分析は、いくつかの構造類似体が、S.aureus Mu3に対して組み合わせ阻害効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図20】
図20は、化合物13とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus Mu3株の成長阻害において、化合物13がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図21】
図21は、化合物17とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus Mu3株の成長阻害において、化合物17がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図22】
図22は、化合物19とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus Mu3株の成長阻害において、化合物19がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図23】
図23は、化合物20とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus Mu3株の成長阻害において、化合物20がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図24】
図24は、化合物36とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus Mu3株の成長阻害において、化合物36がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図25】
図25は、化合物82とゲンタマイシンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、S.aureus Mu3株の成長阻害において、化合物82がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図26】化合物3の処置は、Mu3感染後のBALB/cマウスにおける腎臓の細菌負荷を減少させる。この分析は、化合物3がそれ自体で細菌感染を減少させることができることを示している。
【
図27】化合物3の処置は、Mu3感染後のBALB/cマウスにおける脾臓の細菌負荷を減少させる。この分析は、化合物3がそれ自体で細菌感染を減少させることができることを示している。
【
図28】化合物3の処置は、Mu3感染後のBALB/cマウスにおける肝臓の細菌負荷を減少させる。この分析は、化合物3がそれ自体で細菌感染を減少させることができることを示している。
【
図29】化合物3の処置は、USA300感染後のBALB/cマウスにおける脾臓の細菌負荷を減少させる。この分析は、化合物3がそれ自体で細菌感染を減少させることができることを示している。
【
図30】化合物3の処置は、USA300感染後のBALB/cマウスにおける肝臓の細菌負荷を減少させる。この分析は、化合物3がそれ自体で細菌感染を減少させることができることを示している。
【
図31】ヒ-トマッププロットは、L.monocytogenesに対する化合物82及びゲンタマイシンのチェッカ-ボ-ドアッセイの正規化された成長を示す。この分析は、L.monocytogenes株の成長阻害において、化合物82がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図32】ヒ-トマッププロットは、E.faecalisに対する化合物82及びゲンタマイシンのチェッカ-ボ-ドアッセイの正規化された成長を示す。この分析は、E.faecalis株の成長阻害において、化合物82がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図33】ヒ-トマッププロットは、E.coliに対する化合物82及びゲンタマイシンのチェッカ-ボ-ドアッセイの正規化された成長を示す。この分析は、E.coli株の成長阻害において、化合物82がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図34】ヒ-トマッププロットは、S.pneumoniaeに対する化合物82及びゲンタマイシンのチェッカ-ボ-ドアッセイの正規化された成長を示す。この分析は、S.pneumonia株の成長阻害において、化合物82がゲンタマイシンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【
図35】
図35は、化合物82とネアミンとの併用効果を示す微量希釈チェッカ-ボ-ド分析を示す。この分析は、この分析は、S.aureus Mu3株の成長阻害において、化合物82がネアミンの増強効果を有することを示す。ヒ-トプロットは、反復実験から求められた平均成長を示す。
【0033】
I.定義
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書中に別段の指示がない限り、範囲内の各別個の値を個々に参照する簡易的な方法として役立つことを意図しており、それぞれの個別値は、本明細書中に、個別に列挙されているかのように組み入れられる。
【0034】
用語「約」の使用は、記載された値の上下ほぼ±10%の値を示すことを意図しており、他の形態では、記載された値の上下ほぼ±5%の値を示すことを意図しており、記載された値の上下ほぼ±2%の値を示すことを意図しており、記載された値の上下ほぼ±1%の値を示すことを意図している。前述の範囲は、文脈によって明確にされるべきものであり、更なる限定を示唆するものではない。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で他に指示されない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な用語(例えば「~など」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図しており、特に断らない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に不可欠な請求の範囲外の要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0035】
本明細書で使用される「エアロゾル」は、噴霧剤を使用して製造されたか否かにかかわらず、溶液又は懸濁液中に存在し得る粒子の微細な霧の任意の調製物を指す。
【0036】
「アルキル」という用語は、飽和脂肪族のラジカル(即ち、アルカンから1つの水素原子が除かれたもの)を意味し、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環)基、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アルキル基を含む。
【0037】
本明細書で使用される「両親媒性」は、親水性及び油性(疎水性)特性を併せ持つ分子を指す。
【0038】
「担体」という用語は、化合物及び/又は抗生物質と共に投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、及び/又はビヒクルを指す。
【0039】
本明細書で使用される「洗浄用組成物」は、汚れや油などを除去するための、消毒のための、又はそれらの組合せのための、表面への塗布に適した組成物を意味する。洗浄組成物は、抗バクテリア性、抗微生物性、又はその両方であり得る。洗浄用組成物は、ヒト皮膚に使用するのに適していてもよい。この場合、組成物の全ての成分が、ヒト皮膚に適用された場合に不快感の有意な兆候を示さない程度の濃度で存在する。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「不快感の有意な兆候」は、適用部位における紅斑、発赤、及び/又は注射部位での腫脹、適用部位における壊死、適用部位における剥離性皮膚炎、日常の活動を阻害する及び/又は医療処置若しくは入院を必要とするひどい痛みを含んでいる。
【0041】
「連続相」は、固体が懸濁している液体又は別の液体の小滴が分散している液体を指し、時には外部相と呼ばれる。これは、固体粒子又は流体粒子がその中に分布しているコロイドの流体相も指す。連続相が水(又は別の親水性溶媒)である場合、水溶性又は親水性薬物は、分散されるのではなく、連続相に溶解するであろう。多相配合物(例えばエマルジョン)では、離散相が連続相中に懸濁又は分散される。
【0042】
「クリ-ム」は、「水中油型」又は「油中水型」の粘性液体又は半固体エマルジョンである。
「エマルジョン」は、共に均一に混合された非混和性成分の混合物を含有する組成物である。
本明細書で使用される「ゲル」は、分散相が連続相と組み合わされてゼリ-などの半固体材料を生成するコロイドである。
【0043】
本明細書で使用される「親水性」は、水と容易に相互作用する強極性基を有する物質を指す。
本明細書で使用する「疎水性」は、水に対する親和性を欠いた物質を指し、水と反発すると共に、水を吸収したり、水に溶けたり水と混ざり合ったりしない傾向にある。
本明細書で使用する「親油性」は、脂質に対する親和性を有する化合物を指す。
【0044】
「ロ-ション」は、低粘度から中粘度の液体配合物である。
本明細書で使用される「オイル」は、少なくとも95重量%の親油性物質を含んだ組成物である。親油性物質の例としては、天然及び合成油、脂肪、脂肪酸、レシチン、トリグリセリド、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
「軟膏」は、軟膏基剤及び任意に1つ又は複数の活性剤を含有する半固体製剤である。
【0045】
本明細書で使用される「非経口投与」は、消化管経由又は非侵襲的な局部経路若しくは局所経路以外の任意の方法による投与を意味する。
【0046】
医薬組成物に関して本明細書で使用される用語「薬学的に許容される」は、連邦若しくは州政府の規制機関によって承認されているか、又は、米国薬局方若しくは他の一般的に認識されている動物及び/又はヒトにおける使用のための薬局方においてリストされていることを意味する。
【0047】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」とは、親化合物がその酸又は塩基塩を作製することによって修飾されている、本明細書で定義される化合物の誘導体をいう。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「治療」又は「治療する」は、感染の進展を停止若しくは抑制するか、又は、停止若しくは抑制しようと試みること、及び/又は、感染及び/又はその症状の低減、抑制、退行、若しくは寛解をもたらすか、又は、もたらそうと試みることを指している。当業者には理解されるように、様々な臨床的及び科学的方法論及びアッセイが感染の進展又は進行を評価するのに使用され得る。同様に、様々な臨床的及び科学的方法論及びアッセイが、感染又はその症状の低減、抑制、退行、又は寛解を評価するのに使用され得る。「治療」は、治療的処置、及び、予防的又は抑止的手段の両方を指す。治療が必要な対象には、既に感染している対象だけでなく、感染しやすい対象や、感染を予防すべき対象も含まれる。少なくともいくつかの形態では、治療される感染症は、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、Listeria monocytogenes、Burkholderia cepacia、Escherichia coli、Enterococcus faecalis、Streptococcus pneumoniae感染である。他の形態では、治療される感染症は、微生物感染症である。
【0049】
本明細書中で使用される場合、用語「対象」は、動物を指す。典型的には、「対象」及び「患者」という用語は、本明細書において交換可能に使用され得る。したがって、「対象」には、患者として微生物感染のために治療されているヒトが含まれる。
【0050】
用語「動物」は、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、サル、チンパンジ-、及びヒトを含むが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書に記載の化合物、抗生物質、及び医薬組成物に適用される場合、交換可能に使用される用語「有効量」及び「治療有効量」は、所望の治療結果をもたらすために必要な量を意味する。例えば、有効量は、組成物及び/又は抗生物質又は医薬組成物がそれを目的として投与されている感染症の症状を治療、治癒、又は緩和するのに有効なレベルである。求められる特定の治療目標に有効な量は、治療される感染症、その重篤度、及び/又はその発達/進行の段階;使用される特定の化合物及び/又は抗生物質又は医薬組成物の生物学的利用能及び活性;対象の投与経路又は投与方法及び導入部位;特定の組成物のクリアランス速度及び他の薬物動態特性;治療の持続時間;接種レジメン;特定の組成物と組み合わせて又は同時に使用される薬物;処置される対象の年齢、体重、性別、食事、生理学及び一般的健康;関連する科学技術分野の当業者に周知の同様の要因などを含む様々な要因に依存する。投与量の多少の変動は、治療される対象の状態に依存して必然的に生じるであろうし、医師又は他の投与治療を行う個人は、いずれの場合にも、個々の患者のための適切な投与量を決定するであろう。
【0052】
II.組成
ハイスル-プットスクリ-ニングは、抗菌剤として新しい小分子を発見する良い機会を提供する。
【0053】
逐次スクリ-ニングプロセスにより、抗生物質増強剤の将来的な化学的最適化のためのリ-ド化合物の化合物ライブラリからの同定が確認された。以下に示すように、化合物13は、臨床の場面で一般的に使用されている、アミノグリコシド、ゲンタマイシン、カナマイシン、アミカシン、ネオマイシン、スペクチノマイシン、及びネアミンとの組み合わせにおいて、増強効果を示した。更に、これらの化合物は、約50μMの濃度において、抗生物質のMICを対応する臨床的なブレ-クポイント未満に低下させ、MRSA治療のために無効な抗生物質を再び使用可能にすることが示された。
【0054】
いくつかの形態では、化合物は、それらが同時投与される場合に、1つ又は複数の抗菌剤の治療効果を少なくとも2倍に増強する。増強は、以下の例に示すように、in vitroで、開示された化合物の存在下で抗生物質と共に投与された場合における細菌増殖の阻害を測定することにより、決定することができる。いくつかの形態では、化合物は、ゲンタマイシン単独(ゲンタマイシン+DMSO対照)で得られる阻害よりも、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%有効である。他の形態では、化合物は、ゲンタマイシン+DMSO対照と比較したhlaプロモ-タのluxレポ-タアッセイにおける抑制として測定される、抗病原性を有している。化合物の存在下で、いくつかの色素産生細菌においても、色素生産の抑制が観察された。
【0055】
細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデ-タを使用して、ヒトにおける使用のための投薬量範囲を定めることは、当業者にとって能力の範囲内である。そのような化合物の投与量は、好ましくは、毒性をほとんど又は全く有さないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用される投与形態及び投与経路に依存して、その範囲内で変化し得る。開示された方法で使用される任意の化合物について、治療有効量は、細胞培養アッセイから初期推定され得る。投与量は、動物モデルにおいて、細胞培養中で決定されるIC50(症状の最大の半分の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように定めてもよい。そのような情報は、ヒトにおいて有用な投与量をより正確に決定するために使用され得る。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって測定することができる。一般に、モジュレ-タの用量当量は、典型的な対象について、約1ng/kg~10mg/kgである。
【0056】
したがって、微生物感染に起因する症状を予防、治療、又は改善するための組成物において有効量で使用することができる抗菌活性を有する化合物が開示される。いくつかの形態では、化合物は、抗生物質の抗菌効果を増強する。別の形態では、化合物は、抗病原性を有する。
【0057】
本明細書に開示される化合物は、治療中に、他の生物活性剤、例えば抗生物質と組み合わせて利用することができる。そのような併用治療は、開示された1つ又は複数の化合物による治療の治療効果を更に高め得る。開示された化合物は、抗生物質と、相加的、相乗的、又は増強効果を提供することができる。
【0058】
A.化合物
開示された化合物は、以下の一般式Iによって表される:
【化6】
ここで、X及びYは、独立して、O、S、又はNR
10であり;
Zは、O、S、CR
11R
12、又はNR
13であり;
R
1、R
2、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、及びR
15は、独立して、空位、水素、-C(O)R
18、-C(W)NR
19R
20、又は、置換若しくは無置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、ヘテロサイクリル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリ-ル、ヘテロアリ-ル、アロキシ、アリ-ルアルキル、ヘテロアルキル、アルキルアリ-ル、ハロゲン、アルキルヘテロアリ-ル、-NR
16R
17であり;R
16及びR
17は、独立して、水素、置換若しくは無置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロサイクリル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリ-ル、ヘテロアリ-ル、アリ-ルアルキル、ヘテロアルキル、アルキルアリ-ル、又はアルキルヘテロアリ-ルであり;
R
18は、水素、ヒドロキシル、又は、置換若しくは無置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、ヘテロサイクリル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリ-ル、アロキシ、ヘテロアリ-ル、アリ-ルアルキル、ヘテロアルキル、アルキルアリ-ル、又はアルキルヘテロアリ-ルであり;
Wは、O、S、又はNR
21であり;
R
19、R
20、及びR
21は、独立して、水素、置換若しくは無置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロサイクリル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリ-ル、ヘテロアリ-ル、アリ-ルアルキル、ヘテロアルキル、アルキルアリ-ル、又はアルキルヘテロアリ-ルであり;
Aは、二重結合又は単結合であり;
R
15は、Aが二重結合である場合には存在しない。
【0059】
いくつかの形態では、化合物は、式IIであり得る。
【化7】
ここで、R
1は、-O-R
4、-NR
5R
8、又は-CH
2-R
5であり;R
2は、ハロゲン、空位、-O-CH
3、又は-O-CH
2-CH
3であり;R
9は、-COOH、-CH
2-COOH、-CH
2-O-CH
3、又は-CH
2-CH
2-O-CH
3であり;R
4は、-CH
2-R
5又は-CO-R
5であり;R
5は、
【化8】
であり、ここで、R
6はハロゲン又は空位であり;R
7はハロゲン又は空位である。
【0060】
化合物のいくつかの形態では、R1は、2、3、4、5及び6位からなる群から選択される位置にある。いくつかの形態では、R6は、4位にある。いくつかの形態では、R7は、2又は6位にある。いくつかの形態では、R2は、3、4又は5位にある。いくつかの形態では、R6は4位にあり、R7は2又は6位にあり、R2は、3又は5位にある。
【0061】
いくつかの形態では、化合物は、式IIA:
【化9】
であり、ここで、R
1は、-O-R
4、-NR
5R
8、又は-CH
2-R
5であり;R
2は、ハロゲン、空位、-O-CH
3、又は-O-CH
2-CH
3であり;R
3は、-COOH又は-CH
2-COOHであり;R
4は、-CH
2-R
5又は-CO-R
5であり;R
5は、
【化10】
であり、R
6はハロゲン又は空位であり;R
7はハロゲン又は空位である。
【0062】
いくつかの形態では、R1は、2、3、4、5及び6位からなる群から選択される位置にある。いくつかの形態では、R6は、4位にある。いくつかの形態では、R7は、2又は6位にある。いくつかの形態では、R2は、3、4又は5位にある。いくつかの形態では、R6は4位にあり、R7は2又は6位にあり、R2は、3又は5位にある。
【0063】
いくつかの形態では、R
1は-O-R
4であって3位にあり;R
2は空位であり;R
3は-COOHであり;R
4は-CH
2-R
5であり;R
5は
【化11】
であり、R
6は-Clであって4位にあり;R
7は-Clであって2位にある。
【0064】
いくつかの形態では、R
1は-O-R
4であって3位にあり;R
2は空位であり、R
3は-COOHであり;R
4は-CH
2-R
5であり;R
5は
【化12】
であり、R
6は-Clであり、R
7は空位である。
【0065】
いくつかの形態では、R
1は-O-R
4であって4位にあり;R
2は空位であり;R
3は-COOHであり;R
4は-CH
2-R
5であり;R
5は
【化13】
であり;R
6は-Clであり;R
7は空位である。
【0066】
いくつかの形態では、R
1は-O-R
4であって4位にあり;R
2は-O-CH
2-CH
3であり;R
3は-COOHであり;R
4は-CH
2-R
5であり;R
5は
【化14】
であり、R
6は-Clであり、R
7は空位である。
【0067】
これらの及び他の基を表8に列挙する。
表8:式IIAの置換基の例
【表8A】
【表8B】
【表8C】
【表8D】
【表8E】
【表8F】
【表8G】
【表8H】
【表8I】
【表8J】
【表8K】
【表8L】
【0068】
上で開示されたR1~R7の全ての組合せが企図されている。
【0069】
いくつかの形態において、X及びYは、独立して、O、S、又はNR10であり;Zは、O、S、CR11R12、又はNR13であり;R1、R2、R9、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は、独立して、空位、水素、置換若しくは無置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、ヘテロサイクリル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリ-ル、ヘテロアリ-ル、アロキシ、アリ-ルアルキル、ヘテロアルキル、アルキルアリ-ル、ハロゲン、アルキルヘテロアリ-ル、又は-NR16R17であり;R16及びR17は、独立して、水素、置換若しくは無置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロサイクリル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリ-ル、ヘテロアリ-ル、アリ-ルアルキル、ヘテロアルキル、アルキルアリ-ル、アルキルヘテロアリ-ル、-C(O)R18、又は-C(W)NR19R20であり;R18は、水素、ヒドロキシル、又は、置換若しくは無置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、ヘテロサイクリル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリ-ル、アロキシ、ヘテロアリ-ル、アリ-ルアルキル、ヘテロアルキル、アルキルアリ-ル、又はアルキルヘテロアリ-ルであり;Wは、O、S、又はNR21であり;R19、R20、及びR21は、独立して、水素、置換若しくは無置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロサイクリル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルケニル、アリ-ル、ヘテロアリ-ル、アリ-ルアルキル、ヘテロアルキル、アルキルアリ-ル、又はアルキルヘテロアリ-ルであり;Aは、二重結合又は単結合であり;R15は、Aが二重結合である場合には存在しない。
【0070】
式IIのいくつかの形態において、R
1は-O-R
4又は-NR
5R
8又は-CH
2-R
5であってもよく;R
2はハロゲン又は空位又は-O-CH
3又は-O-CH
2-CH
3であってもよく;R
9は-COOH又は-CH
2-COOH又は-CH
2-O-CH
3又は-CH
2-CH
2-O-CH
3であってもよく;R
4は-CH
2-R
5又は-CO-R
5であってもよく、R
5は、
【化15】
であってもよく;R
6はハロゲン又は空位であってもよく;R
7はハロゲン又は空位であってもよい。
いくつかの形態では、R1は3又は5位にあり;R
1は4位にあり;R
1は2又は6位にあり;いくつかの形態では、R
6は4位にある。いくつかの形態では、R
7は、2又は6位にある。いくつかの形態では、R
2は、3、4又は5位にある。
【0071】
上で開示されたR
1~R
7の全ての組合せが企図されている。
いくつかの形態では、化合物は、式IIAによって表される。
【化16】
これらの形態では、R
1は、-O-R
4又は
-NR
5R
8又は-CH
2-R
5であってもよく;R
2は、ハロゲン又は空位又は-O-CH
3、又は-O-CH
2-CH
3であってもよく;R
3は、-COOH又は-CH
2-COOHであってもよく;R
4は、-CH
2-R
5又は-CO-R
5あってもよく;R
5は、
【化17】
であってもよい。いくつかの形態では、R
6はハロゲン又は空位である。いくつかの形態では、R
7はハロゲン又は空位である。いくつかの形態では、R
1は、3又は5位にある。いくつかの形態では、R
1は、4位にある。いくつかの形態では、R
1は、2又は6位にある。いくつかの形態では、R
6は、4位にある。いくつかの形態では、R
7は、2又は6位にある。いくつかの形態では、R
2は、3、4又は5位にある。
【0072】
上で開示されたR1~R7の全ての組合せが企図されている。
【0073】
特に好ましい化合物の構造及び化学名を以下に示す。
【化18】
化合物2((5-{4-[(4-クロロベンゾイル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化19】
化合物3({5-[4-(ベンジルオキシ)ベンジリデン]-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル}酢酸)
【化20】
化合物4((5-{4-[(2,4-ジクロロベンゾイル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化21】
化合物6((5-{4-[(4-クロロベンジル)オキシ]-3-メトキシベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸
【化22】
化合物7({5-[4-(1-ナフチルメトキシ)ベンジリデン]-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル}酢酸
【化23】
化合物10({5-[4-(ベンゾイルオキシ)ベンジリデン]-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル}酢酸
【化24】
化合物13((5-{3-[(4-クロロベンジル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸
【化25】
化合物15((5-{3-[(4-クロロベンジル)オキシ]-4-メトキシベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化26】
化合物17((5-{3-[(2,4-ジクロロベンジル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸
【化27】
化合物18((5-{3-[(2,4-ジクロロベンジル)オキシ]-4-メトキシベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸
【化28】
化合物19(5-{3-[(2-クロロベンジル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化29】
化合物20((5-{4-[(4-クロロベンジル)オキシ]-3-エトキシベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化30】
化合物22({5-[4-(ベンジルオキシ)-3-メトキシベンジリデン]-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル}酢酸
【化31】
化合物24({5-[3-(ベンジルオキシ)-4-メトキシベンジリデン]-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル}酢酸)
【化32】
化合物25((5-{4-[(2-フルオロベンジル)オキシ]-3-メトキシベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化33】
化合物27((5-{3-[(2-フルオロベンジル)オキシ]-4-メトキシベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化34】
化合物28((5-{2-[(4-クロロベンジル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化35】
化合物29((5-{4-[(3-メチルベンゾイル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化36】
化合物30({5-[3-フルオロ-4-(1-ピロリジニル)ベンジリデン]-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル}酢酸)
【化37】
化合物31([5-(4-エトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル]酢酸)
【化38】
化合物34((5-{4-[(3,4-ジクロロベンジル)オキシ]-3-エトキシベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化39】
化合物35((5-{4-[(4-フルオロベンゾイル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化40】
化合物36((5-{4-[(2-ヨ-ドベンゾイル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化41】
化合物37(2-[5-(4-メトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル]プロパン酸)
【化42】
化合物42({5-[(4-メトキシ-1-ナフチル)メチレン]-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル}酢酸)
【化43】
化合物44((5-{4-[(4-ブロモベンジル)オキシ]-3-メトキシベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化44】
化合物48([4-オキソ-5-(4-プロポキシベンジリデン)-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル]酢酸)
【化45】
化合物49((5-{4-[メチル(フェニル)アミノ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化46】
化合物50((5-{4-[(2-クロロ-4-フルオロベンジル)オキシ]-3-メトキシベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化47】
化合物52({5-[2-(ベンジルオキシ)ベンジリデン]-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル}酢酸)
【化48】
化合物53(2-[5-(4-クロロベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル]プロパン酸)
【化49】
化合物56((5-{5-ブロモ-2-[(4-クロロベンジル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化50】
化合物60({5-[3-(ベンゾイルオキシ)ベンジリデン]-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル}酢酸)
【化51】
化合物62((5-{3-メトキシ-4-[(3-メチルベンゾイル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化52】
化合物63((5-{3-[(2-フルオロベンジル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化53】
化合物69(4-[(4-{[3-(2-メトキシエチル)-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-5-イリデン]メチル}フェノキシ)メチル]安息香酸)
【化54】
化合物80((5-{5-ブロモ-2-[(2-クロロベンジル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化55】
化合物81((5-{[1-(2-フルオロベンジル)-1H-インド-ル-3-イル]メチレン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化56】
化合物82((5-{4-[(4-クロロベンジル)オキシ]ベンジリデン}-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル)酢酸)
【化57】
化合物87(3-[5-(4-メトキシベンジリデン)-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-3-イル]プロパンアミド)
【0074】
1.薬学的に許容される塩
式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩、及びその誘導体、並びにDHFR(ジヒドロ葉酸レダクタ-ゼ)に結合すると判定された他の化合物も本明細書中に開示される。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の無機又は有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ又は有機塩が挙げられるが、これらには限られない。薬学的に許容される塩には、例えば非毒性の無機酸又は有機酸から形成された親化合物の従来の非毒性塩又は第4級アンモニウム塩も含まれる。このような従来の非毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、及び硝酸などの無機酸から誘導されるもの;並びに、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコ-ル酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、及びイセチオン塩などの有機酸から誘導される塩が含まれる。
【0075】
化合物の薬学的に許容される塩は、塩基性又は酸性部分を含む親化合物から、従来の化学的方法によって合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基形態を、化学量論量の適切な塩基又は酸と、水中、有機溶媒中、又はその2種の混合物中で反応させることによって調製することができる。一般に、エ-テル、酢酸エチル、エタノ-ル、イソプロパノ-ル、及びアセトニトリルなどの非水性溶媒が好ましい。適切な塩のリストは、「Remington′s Pharmaceutical Sciences,20th ed.,Lippincott Williams & Wilkins,Baltimore,MD,2000,p.704」及び「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,」P.Heinrich Stahl and Camille G.Wermuth,Eds.,Wiley-VCH,Weinheim,2002.」に見出すことができる。
【0076】
2.中間体
バ-チャルリガンドスクリ-ニングを用いて本明細書で同定された化合物は、出発化合物又は中間化合物として、出発化合物又は中間化合物と比較して、DHFRなどの酵素への結合の増強、又は、DHFRなどの酵素への抑制の増強を示す、最終化合物の産生に使用され得る。本明細書で同定された化合物は、バイオアベイラビリティを増加させ、血流中の半減期を延長し、溶解度を増加させ、親水性を増大させ、疎水性を増加させ、又はこれらの組合せをするために、従来技術を用いて修飾することができる。この化合物は、イオン化するか又は水との分子間力による親和性(水素結合)を比較的強くすることが可能な、アルコ-ル、アミン、アミド、カルボン酸、スルホン酸及びリン酸基などの極性官能基を導入するように修飾してもよく、これにより、通常は、水溶性が増した類似体(アナログ)が得られる。酸性及び塩基性基は、これらの基を用いて塩を形成し、最終製品のためのより広い範囲の剤形が得られるので、特に有用である。しかしながら、塩基又は塩基性基を含む構造に酸性基を導入するか、又は、酸性基を含む構造に塩基性基を導入することによって、両性イオンを形成することにより、水溶性を低下させることもできる。カルボン酸エステル、ハロゲン化アリ-ル、及びハロゲン化アルキルなどの弱極性基の導入は、水溶性を有意には向上させず、脂質溶解性を高めることができる。
【0077】
化合物への酸性残基の導入は、活性のタイプを変化させる可能性は低いが、類似体が溶血特性を示す結果となり得る。更に、芳香族酸基の導入は、通常、抗炎症活性をもたらし、アルファ官能基を有するカルボン酸は、キレ-ト剤として作用し得る。塩基性の水可溶化基は、塩基がしばしば神経伝達物質及びアミンを含む生物学的過程に干渉するので、活性モ-ドを変化させる傾向がある。しかしながら、それらの導入は、類似体が広範囲の酸性塩として処方され得ることを意味する。非イオン化基は、酸性基及び塩基性基の欠点を有さない。
【0078】
反応性の比較的低いC-C、C-O及びC-N結合によってリ-ド化合物の炭素骨格に直接結合している基は、リ-ド構造に不可逆的に結合しやすい。エステル、アミド、ホスフェ-ト、サルフェ-ト、及びグリコシド結合によって化合物に結合している基は、類似体がその投与点からその作用部位に移動するにつれて、得られた類似体から親化合物を再生するために代謝される可能性がより高い。このタイプの可溶化基を有する化合物は、プロドラッグとして作用するので、それらの活性は、親化合物と同じである可能性がより高い。しかしながら、可溶化基のロス速度は伝達経路の性質に依存し、これは薬物の活性に影響を与える可能性がある。
【0079】
化合物によって示される活性のタイプを保存するために、水溶性基は、薬物-受容体相互作用に関与しない構造の部分に結合されるべきである。その結果、新しい水可溶化基を導入するために使用される経路及びリ-ド化合物中のその位置は、化合物及び残りの分子の相対的な反応性に依存するであろう。水可溶化構造及びそれらをリ-ド構造に導入するために使用される経路を例示する。O-アルキル化、N-アルキル化、O-アシル化、及びN-アシル化反応は、酸性及び塩基性基の両方を導入するために使用される。アセチル化による方法は、適切な酸塩化物及び無水物の両方を使用する。
【0080】
水可溶化構造及びそれらをリ-ド化合物に導入するために使用される経路の例には、リン酸基を化合物に導入するためのリン酸ハロゲン化物が含まれるが、これらに限定されない。ヒドロキシ基を含む構造は、対応するモノクロル化ヒドリンの反応及び適切なエポキシドの使用によって導入されている。スルホン酸基は、直接スルホン化又は反応性C=C結合への亜硫酸水素塩の付加の何れかによって導入することができる。
【0081】
B.その他の生物活性剤
本明細書に開示される化合物と共に使用することができる他の生物活性剤には、抗菌剤、特には、抗生物質、消毒剤、抗瘢痕剤、及び抗炎症剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
穿孔コラ-ゲンでコ-ティングされたメッシュに組み込まれていてもよい抗菌剤には、抗バクテリア剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、及び抗虫薬が含まれるが、これらに限定されない。抗菌剤には、殺菌剤及び微生物抑制剤などの微生物を殺す又は増殖を阻害する物質が含まれる。穿孔コラ-ゲンでコ-ティングされたメッシュに組み込まれていてもよい抗菌剤には、リファンピン;ミノサイクリン及びその塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩;トリクロサン;クロルヘキシジン;バンコマイシン及びその塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩;テトラサイクリン及びその塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩、並びに誘導体;ゲンタマイシン;セファロスポリン抗菌剤;アズトレオナム;セフォテタン及びその二ナトリウム塩;ロラカルベフ;セフォキシチン及びそのナトリウム塩;セファゾリン及びそのナトリウム塩;セファクロル;セフチブテン及びそのナトリウム塩;セフチゾキシム;セフチゾキシムナトリウム塩;セフォペラゾン及びそのナトリウム塩;セフロキシム及びそのナトリウム塩;セフロキシムアキセチル;セフプロジル;セフタジジム;セフォタキシム及びそのナトリウム塩;セファドロキシル;セフタジジム及びそのナトリウム塩;セファレキシン;セファマンド-ルナファレ-ト;セフェピム及びその塩酸塩、硫酸塩、及びリン酸塩;セフジニル及びそのナトリウム塩;セフトリアキソン及びそのナトリウム塩;セフィキシム及びそのナトリウム塩;セフポドキシムプロキセチル;メロペネム及びそのナトリウム塩;イミペネム及びそのナトリウム塩;シラスタチン及びそのナトリウム塩;アジスロマイシン;クラリスロマイシン;ジリスロマイシン;エリスロマイシン及び塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩、エチルコハク酸塩及びそのステアリン酸塩形態、クリンダマイシン;クリンダマイシンの塩酸塩、硫酸塩、又はリン酸塩;リンコマイシン及びその塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩;トブラマイシン及びその塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩;ストレプトマイシン及びその塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩;ネオマイシン及びその塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩;アセチルスルフスオキサゾ-ル;コリスチン酸塩及びそのナトリウム塩;キヌプリスチン; ダルホプリスチン;アモキシシリン;アンピシリン及びそのナトリウム塩;クラブラン酸及びそのナトリウム又はカリウム塩;ペニシリンG;ペニシリンGベンザチン、又はプロカイン塩;ペニシリンGのナトリウム又はカリウム塩;カルベニシリン及びその二ナトリウム又はインダニル二ナトリウム塩;ピペラシリン及びそのナトリウム塩;チカルシリン及びその二ナトリウム塩;スルバクタム及びそのナトリウム塩;モキシフロキサシン;シプロフロキサシン; オフロキサシン;レボフロキサシン;ノルフロキサシン;ガチフロキサシン;トロバフロキサシンメシレ-ト;アラトロフロキサシンメシレ-ト;トリメトプリム;スルファメトキサゾ-ル;デメクロサイクリン及びその塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩;ドキシサイクリン及びその塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩;オキシテトラサイクリン及びその塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩;クロルテトラサイクリン及びその塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩;メトロニダゾ-ル;ダプソン;アトバク-ン;リファブチン;リネゾリド;ポリミキシンB及びその塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩;スルファセタミド及びそのナトリウム塩;クラリスロマイシン;ゲンタマイシン;ビグアニド;バシトラシン;銀、銅、亜鉛、及び金イオン、塩、並びに錯体を含むが、これらに限られない。好ましい形態では、インプラントに組み込まれる抗菌剤は、(i)リファンピン、並びに、(ii)ミノサイクリン及びその塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩である。特に好ましい形態では、穿孔コラ-ゲン被覆メッシュは、リファンピン及びミノサイクリン又はその塩酸塩、硫酸塩若しくはリン酸塩を含む。
【0083】
C.製剤
本明細書に記載の化合物は、経腸、非経口、局所、又は肺投与用に製剤化することができる。化合物は、安全かつ有効であると考えられ、望ましくない生物学的副作用又は望ましくない相互作用を引き起こすことなく個体に投与され得る、1つ又は複数の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤と組み合わせることができる。担体は、1つ又は複数の活性成分以外の医薬製剤中に存在する全ての成分である。
【0084】
そのような医薬担体は、水及び油などの滅菌液体であってもよく、例えば、ピ-ナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの、石油、動物、植物又は合成由来のものであってもよい。生理食塩水及びデキストロ-ス及びグリセロ-ル水溶液も、特には注射液のための液体担体として使用することができる。
【0085】
本明細書中に開示される化合物は、例えば病院環境における消毒剤としての使用のためにも配合され得る。
【0086】
これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳液、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、徐放性製剤などの形態を取ることができる。
【0087】
適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコ-ス、スクロ-ス、ゼラチン、ラクト-ス、麦芽、米、小麦粉、チョ-ク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロ-ルモノステアレ-ト、タルク、塩化ナトリウム、グリセロ-ル、プロピレン、グリコ-ル、水、エタノ-ルなどが挙げられる。医薬組成物は、湿潤若しくは乳化剤又は懸濁/希釈剤、又はpH緩衝剤、又は化合物/抗生物質の放出速度を改変又は維持するための成分も含んでいてもよい。これらの全ては、以下において更に開示される。
【0088】
1.非経口製剤
本明細書に記載の化合物は、非経口投与のために製剤化することができる。例えば、非経口投与は、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、静翼内、胸腔内、気管内、硝子体内、腫瘍内、筋肉内、皮下、結膜下、結膜内、嚢内、腔内、注射、及び注入による患者への投与が含まれ得る。
【0089】
非経口製剤は、当該分野で公知の技術を用いて、水性組成物として調製することができる。典型的には、このような組成物は、注射可能な製剤、例えば、溶液又は懸濁液;注射前に再構成媒体を添加したときに溶液又は懸濁液を調製するために使用するのに適した固体形態;油中水型(w/o)エマルジョン、水中油型(o/w)エマルジョン、及びそれらのマイクロエマルジョン、リポソ-ム、又はエマルジョンなどのエマルジョンなどとして調製され得る。
【0090】
静脈内投与の場合、組成物は、滅菌等張水性緩衝液の溶液中に包装される。必要であれば、組成物は、可溶化剤を含んでいてもよい。組成物の成分は、例えば、活性成分の量を示すアンプル又はサシェなどの密閉容器中の乾燥凍結乾燥粉末又は濃縮溶液として、単位剤形において別個に又は一緒に混合して供給される。組成物が注入によって投与される場合、それは、無菌の薬学的等級の水又は生理食塩水を含んだ注入瓶を用いて分配することができる。組成物が注射によって投与される場合、注射前に成分が混合され得るように、滅菌水又は生理食塩水のアンプルが供給され得る。
【0091】
担体は、例えば、水、エタノ-ル、1つ又は複数のポリオ-ル(例えば、グリセロ-ル、プロピレングリコ-ル、及び液体ポリエチレングリコ-ル)、植物油(例えば、ピ-ナッツ油、コ-ン油、ゴマ油)などの油、並びにそれらの組み合わせなどの、溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコ-ティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、及び/又は界面活性剤の使用によって、維持することができる。多くの場合、例えば糖又は塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが好ましいであろう。
【0092】
遊離酸若しくは塩基又はそれらの薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液及び分散液は、界面活性剤、分散剤、乳化剤、pH調整剤、粘度調整剤、及びこれらの組み合わせなどを非限定的に含む、1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤と適切に混合された水又は別の溶媒又は分散媒中で調製され得る。
【0093】
適切な界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性、又は非イオン性界面活性剤であってもよい。適切なアニオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、及び硫酸塩イオンを含むものが挙げられるが、これらに限定されない。アニオン性界面活性剤の例には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの、長鎖アルキルスルホン酸塩及びアルキルアリ-ルスルホン酸塩のナトリウム、カリウム、アンモニウム;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸ナトリウム;ビス-(2-エチルチオキシ)-スルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルナトリウムスルホコハク酸ナトリウム;及びラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セトリモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、ポリオキシエチレン、及びココナッツアミンなどの第4級アンモニウム化合物が挙げられるが、これらに限定されない。非イオン性界面活性剤の例には、エチレングリコ-ルモノステアレ-ト、ミリスチン酸プロピレングリコ-ル、モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、ポリグリセリル-4-オレエ-ト、アシル酸ソルビタン、アシル酸スクロ-ス、ラウリン酸PEG-150、モノラウリン酸PEG-400、モノラウリン酸ポリオキシエチレン、ポリソルベ-ト、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエ-テル、PEG-1000セチルエ-テル、ポリオキシエチレントリデシルエ-テル、ポリプロピレングリコ-ルブチルエ-テル、ポロキサマ-(登録商標)401、ステアロイルモノイソプロパノ-ルアミド、及びポリオキシエチレン水素化タロ-アミドが含まれる。両性界面活性剤の例には、N-ドデシル-β-アラニンナトリウム、N-ラウリル-β-イミノジプロピオネ-トナトリウム、ミリストアンホアセテ-ト、ラウリルベタイン、及びラウリルスルホベタインが含まれる。
【0094】
この製剤は、微生物の増殖を防止するための保存剤を含むことができる。適切な保存剤には、パラベン、クロロブタノ-ル、フェノ-ル、ソルビン酸、及びチメロサ-ルが含まれるが、これらに限定されない。製剤はまた、1つ又は複数の活性成分の分解を防ぐための抗酸化剤を含有していてもよい。
【0095】
製剤は、典型的には、再構成時において、非経口投与のために、3~8のpHに緩衝化される。好適な緩衝液としては、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、及びクエン酸緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
水溶性ポリマ-は、非経口投与のための製剤においてしばしば使用される。適切な水溶性ポリマ-としては、ポリビニルピロリドン、デキストラン、カルボキシメチルセルロ-ス、及びポリエチレングリコ-ルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
滅菌注射溶液は、活性化合物を、適切な溶媒又は分散媒体中に、必要に応じて上記に列挙した賦形剤の1つ以上と共に必要量加え、次いで濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、種々の滅菌された活性成分を、基本的な分散媒体及び上記にリストアップしたもののうち必要な他の成分を含む滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め滅菌濾過したその溶液から有効成分及び任意の追加の所望の成分の粉末を産生する真空乾燥及び凍結乾燥技術である。粉末は、粒子が本質的に多孔質であり、粒子の溶解を増加させることができるように、調製することができる。多孔質粒子を作製するための方法は、当技術分野において周知である。
【0098】
(a)放出制御製剤
本明細書に記載の非経口製剤は、即時放出、遅延放出、延長放出、拍動放出、及びそれらの組み合わせを含む制御放出のために製剤化することができる。
【0099】
1.ナノ粒子及びマイクロ粒子
非経口投与のために、1つ又は複数の化合物及び任意の1つ又は複数の追加の活性成分を、微粒子、ナノ粒子、又はそれらの組み合わせに組み込むことができる。これにより、1つ又は複数の化合物及び/又は1つ又は複数の追加の活性成分の制御された放出が提供される。製剤が2種以上の薬剤を含有する形態では、同じタイプの制御放出(例えば、遅延型、延長型、即時型、又は拍動性)を行うように製剤化することができる。また、この形態では、薬剤を独立に配合して、異なった形態の放出(例えば、即時及び遅延、即時及び拡張、遅延及び拡張、遅延及び脈動など)を行うように製剤化することもできる。
【0100】
例えば、化合物及び/又は1つ若しくは複数の追加の活性成分は、薬剤の制御された放出を提供するポリマ-微粒子に組み込むことができる。薬物の放出は、薬物の微粒子からの拡散、及び/又は、加水分解及び/又は酵素分解によるポリマ-粒子の分解によって制御される。適切なポリマ-には、エチルセルロ-ス及び他の天然又は合成セルロ-ス誘導体が含まれる。
【0101】
ヒドロキシプロピルメチルセルロ-ス又はポリエチレンオキシドなどの、ゆっくりと溶解して水性環境中でゲルを形成するポリマ-もまた、薬剤含有微粒子のための材料として好適であり得る。他のポリマ-としては、ポリ無水物、ポリ(エステル無水物)、ポリヒドロキシ酸、例えば、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシブチラ-ト(PHB)及びそのコポリマ-、ポリ-4-ヒドロキシブチラ-ト(P4HB)及びそのコポリマ-、ポリカプロラクトン及びそのコポリマ-、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
或いは、薬剤は、水溶液に不溶又は水溶液にゆっくりと可溶であるが、酵素分解、胆汁酸の界面活性作用、及び/又は機械的侵食を含む手段によって消化管内で分解することができる物質から調製された微粒子に組み込むことができる。本明細書で使用する場合、用語「水にゆっくりと可溶」は、30分間以内に水に溶解しない物質を指す。好ましい例としては、脂肪、脂肪物質、ワックス、ワックス様物質、及びこれらの混合物が挙げられる。適切な脂肪及び脂肪物質には、脂肪アルコ-ル(ラウリル、ミリスチルステアリル、セチル、又はセトステアリルアルコ-ルなど)、脂肪酸及び誘導体が挙げられ、例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド(モノ、ジ及びトリグリセリド)、及び水素化脂肪を含むが、これらには限られない。具体例としては、水素化植物油、水素化綿実油、水素化ヒマシ油、商品名ステロテックス(登録商標)で入手可能な水素化油、ステアリン酸、カカオバタ-、及びステアリルアルコ-ルが含まれるが、これらに限定されない。適切なワックス及びワックス様物質には、天然又は合成のワックス、炭化水素、及び通常のワックスが含まれる。ワックスの具体例としては、蜜ロウ、グリコワックス、キャスタ-ワックス、カルナウバワックス、パラフィン、及びカンデリラワックスが挙げられる。本明細書では、ワックス様材料は、室温で通常は固体であり、約30~300℃の融点を有する任意の物質として定義される。
【0103】
場合によっては、微粒子への水の浸透速度を変えることが望ましい場合がある。この目的のために、速度制御(ウィッキング)剤を、上記の脂肪又はワックスと共に配合することができる。速度制御剤としては、例えば、ある種のでんぷん誘導体(例えば、ワックス様のマルトデキストリン及びドラム乾燥コ-ンスタ-チ)、セルロ-ス誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロ-ス、ヒドロキシプロピルセルロ-ス、メチルセルロ-ス、及びカルボキシメチルセルロ-ス)、アルギン酸、ラクト-ス、並びにタルクが挙げられる。さらに、そのような微粒子の分解を促進するために、薬学的に許容される界面活性剤(例えば、レシチン)を添加してもよい。
【0104】
ゼインのような水不溶性のタンパク質もまた、薬剤含有微粒子の形成のための材料として使用することができる。さらに、水溶性のタンパク質、多糖類、及びこれらの組み合わせは、薬剤とともに微粒子中に配合され、その後に架橋されて不溶性ネットワ-クを形成することができる。例えば、シクロデキストリンは、個々の薬剤分子と複合体を形成し、続いて架橋することができる。
【0105】
2.ナノ粒子及びマイクロ粒子の製造方法
薬剤含有微粒子を生成するための担体材料へのカプセル化又は薬物の組み込みは、既知の医薬製剤技術によって達成することができる。脂肪、ワックス、又はワックス様物質の製剤の場合、担体物質は、典型的には、その融解温度より上に加熱され、薬剤が添加されて、担体物質中に薬剤粒子が懸濁した混合物、担体物質中に溶解した薬剤、又はこれらの組合せが形成される。マイクロ粒子は、限定するものではないが、凝結、押出、噴霧冷却又は水性分散のプロセスを含むいくつかの方法によって次いで配合され得る。好ましい方法では、ワックスがその融点以上に加熱され、薬剤が加えられ、混合物が冷却するにつれて、溶融したワックス-薬剤混合物が一定の攪拌下で凝固される。或いは、溶融したワックス-薬剤混合物を押し出し、球状化して、ペレット又はビ-ズを形成することができる。これらのプロセスは、当該技術分野で知られている。
【0106】
いくつかの担体物質については、薬剤含有微粒子を生成するために、溶媒蒸発技術を使用することが望ましい場合がある。この場合、薬物及び担体物質は、相互溶媒中に共溶解され、続いて、水又は他の適切な媒体中にエマルジョンを形成する、溶媒をバルク溶液から噴霧乾燥又は蒸発させる、得られた材料を粉砕するなどの種々の技術によって製造され得るが、これらに限定されるものではない。
【0107】
いくつかの形態では、微粒子形態の薬剤は、水不溶性又はゆっくりと水に可溶な材料中に均一に分散される。組成物中の薬物粒子のサイズを最小にするために、製剤の前に、薬剤粉末自体を粉砕して微細粒子を生成させることができる。製薬業界で知られているジェットミリングのプロセスを、この目的のために使用することができる。いくつかの形態では、微粒子形態の薬物は、ワックス又はワックス様物質をその融点以上に加熱し、混合物を撹拌しながら薬物粒子を添加することによって、ワックス又はワックス様物質中に均一に分散される。この場合、薬学的に許容される界面活性剤を混合物に加えて、薬剤粒子の分散を促進することができる。
【0108】
粒子は、1つ又は複数の改質された放出コ-ティングによって被覆することもできる。リパ-ゼによって加水分解される脂肪酸の固体エステルは、微粒子又は薬剤粒子上にスプレ-コ-トすることができる。ゼインは、水不溶性の天然タンパク質の一例である。これは、スプレ-コ-ティング又は湿式造粒技術によって、薬剤含有微粒子又は薬剤粒子上に被覆することができる。天然の水不溶性材料に加えて、消化酵素のいくつかの基質を架橋手順で処理することにより、不溶性ネットワ-クを形成することもできる。化学的及び物理的手段の両方によって開始されるタンパク質架橋の多くの方法が報告されている。架橋を得るための最も一般的な方法の1つは、化学的架橋剤の使用である。化学的架橋剤の例には、アルデヒド(グルタルアルデヒド及びホルムアルデヒド)、エポキシ化合物、カルボジイミド、及びゲニピンが含まれる。これらの架橋剤に加えて、ゼラチンを架橋するために、酸化糖及び天然糖が使用されてきた。架橋は、酵素的手段を用いて達成することもできる。例えば、トランスグルタミナ-ゼは、シ-フ-ド製品を架橋するためのGRAS物質として認可されている。最後に、架橋は、熱処理、UV照射、及びガンマ線照射などの物理的手段によって開始することができる。
【0109】
薬剤含有微小粒子又は薬剤粒子を包囲する架橋タンパク質のコ-ティング層を生成するために、水溶性タンパク質を微粒子上にスプレ-コ-トし、続いて、上記の方法の1つによって架橋させることができる。或いは、薬剤含有微小粒子は、コアセルベ-ション-相分離(例えば、塩の添加による)及びその後の架橋によって、タンパク質内にマイクロカプセル化することができる。この目的のためのいくつかの適切なタンパク質には、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、及びグルテンが含まれる。
【0110】
多糖類もまた、架橋して水不溶性網状構造を形成することができる。多くの多糖類では、これは、主ポリマ-鎖を架橋するカルシウム塩又は多価カチオンとの反応によって達成することができる。ペクチン、アルギン酸塩、デキストラン、アミロ-ス、及びグア-ガムは、多価カチオンの存在下で架橋される。反対に荷電した多糖類の間の複合体も形成することができる。例えば、ペクチン及びキトサンは、静電相互作用を介して複合体化することができる。
【0111】
(b)注射可能な/移植可能な製剤
本明細書に記載の化合物は、ポリマ-インプラントなどの注射可能/移植可能な固体又は半固体のインプラントに組み込むことができる。いくつかの形態では、化合物は、室温で液体又はペ-ストであるポリマ-に組み込まれるが、生理学的流体などの水性媒体と接触すると、粘性の増加を示して、半固体又は固体材料を形成する。代表的なポリマ-には、少なくとも1つの不飽和ヒドロキシ脂肪酸とヒドロキシアルカン酸との共重合に由来する、ヒドロキシアルカン酸ポリエステルが含まれるが、これに限定されない。ポリマ-は、溶融され、活性物質と混合され、キャスティング又は射出成形されて、デバイスに入れることができる。このような溶融製作には、供給されるべき物質及びポリマ-が分解するか又は反応性になる温度よりも低い融点を有するポリマ-が必要である。このデバイスはまた、ポリマ-を溶媒に溶解し、薬剤をポリマ-溶液に溶解又は分散させ、溶媒を蒸発させる、溶媒キャスティングによって調製することもできる。溶媒プロセスは、ポリマ-が有機溶媒に可溶であることを必要とする。別の方法は、ポリマ-と薬剤又は活性剤が充填されたポリマ-粒子との混合粉末の圧縮成形である。
【0112】
或いは、化合物は、ポリマ-マトリックスに組み込まれ、室温で固体であるデバイスに成形、圧縮、又は押出されることができる。例えば、化合物は、ポリ無水物、ポリヒドロアルカン酸(PHA)、PLA、PGA、PLGA、ポリカプロラクトン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、タンパク質及び多糖類、例えばコラ-ゲン、ヒアルロン酸、アルブミン及びゼラチン、並びにこれらの組合せなどの生分解性ポリマ-中に組み込まれ、ディスクなどの固体デバイス中に圧縮されるか、ロッドなどのデバイスに押し出されることができる。
【0113】
インプラントからの1つ又は複数の化合物の放出は、ポリマ-の選択、ポリマ-の分子量、及び/又は、細孔の形成及び/又は加水分解性の架橋の導入などの分解を促進するポリマ-の変性によって、変化させることができる。インプラントからの化合物の放出プロファイルを変化させるために生分解性ポリマ-の特性を改変する方法は、当該技術分野で周知である。
【0114】
2.経腸製剤
経口製剤は、医薬グレ-ドのマンニト-ル、ラクト-ス、ナトリウムサッカリン、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、セルロ-ス、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含むことができる。このような組成物は、使用される投与様式に基づいて患者に適切な形態を提供するために、治療有効量の化合物及び/又は抗生物質を適切な量の担体と一緒に含むであろう。適切な経口剤形には、錠剤、カプセル、溶液、懸濁液、シロップ、及びロゼンジが含まれる。錠剤は、当技術分野で周知の圧縮又は成形技術を用いて作製することができる。ゼラチンカプセル又は非ゼラチンカプセルは、当技術分野で周知の技術を用いて、液体、固体及び半固体の充填材料をカプセル化することができる硬質又は軟質カプセル殻として調製することができる。
【0115】
製剤は、薬学的に許容される担体を用いて調製することができる。本明細書で一般に使用される「担体」には、希釈剤、防腐剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、膨潤剤、充填剤、安定剤、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0116】
キャリアはまた、可塑剤、顔料、着色剤、安定化剤、及び流動促進剤を含み得るコ-ティング組成物の全ての成分を含む。
【0117】
適切なコ-ティング材料の例には、セルロ-スアセテ-トフタレ-ト、ヒドロキシプロピルセルロ-ス、ヒドロキシプロピルメチルセルロ-ス、ヒドロキシプロピルメチルセルロ-スフタレ-ト及びヒドロキシプロピルメチルセルロ-スアセテ-トスクシネ-トなどのセルロ-スポリマ-;ポリ酢酸ビニルフタレ-ト、アクリル酸ポリマ-及びコポリマ-、EUDRAGIT(登録商標)(Roth Pharma、Westerstadt、Germany)の商標名で市販されているメタクリル樹脂、ゼイン、セラック、及びポリサッカライドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
さらに、コ-ティング材料は、可塑剤、顔料、着色剤、流動促進剤、安定剤、細孔形成剤及び界面活性剤などの従来の担体を含有してもよい。
【0119】
「充填剤」とも呼ばれる「希釈剤」は、錠剤の圧縮又はビ-ズ及び顆粒の形成のために実用的なサイズが提供されるように、固体剤形のバルクを増加させるために典型的に必要である。適切な充填剤には、リン酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、ラクト-ス、スクロ-ス、マンニト-ル、ソルビト-ル、セルロ-ス、微結晶性セルロ-ス、カオリン、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、加水分解デンプン、アルファ化デンプン、二酸化ケイ素、酸化チタン、マグネシウムアルミニウムシリケ-ト、及び粉砂糖が含まれるが、これらには限定されない。「バインダ」は、固体投与製剤に凝集性を付与するために使用され、したがって、錠剤又はビ-ズ又は顆粒が剤形の形成後に無傷のままであることを保証する。
【0120】
適切なバインダ材料には、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、糖類(ショ糖、グルコ-ス、デキストロ-ス、ラクト-ス及びソルビト-ルを含む)、ポリエチレングリコ-ル、ワックス、アカシアなどの天然及び合成ガム、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロ-ス、セルロ-ス、ヒドロキシプロピルセルロ-ス、エチルセルロ-スを含むセルロ-ス、ビ-ガム、並びに、メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル共重合体、アミノアルキルメタクリル酸共重合体、ポリアクリル酸/ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドンなどの合成ポリマ-が含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
「潤滑剤」は、錠剤製造を容易にするために使用される。適切な潤滑剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセロ-ル、ポリエチレングリコ-ル、タルク、及び鉱油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
「崩壊剤」は、投与形態の崩壊又は投与後の「崩壊」を促進するために使用され、一般的に、デンプン、グリコ-ル酸ナトリウムデンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、カルボキシメチルセルロ-スナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロ-ス、アルファ化デンプン、粘土、セルロ-ス、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン、アルギニン、ゴム、又は架橋ポリマ-、例えば架橋PVP(GAF Chemical CorpからのPolyplasdone(登録商標)XL)が含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
「安定剤」は、薬剤分解反応を阻害又は遅延させるために使用され、例えば、酸化反応によって行われる。適切な安定剤には、抗酸化剤、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);アスコルビン酸、その塩及びエステル;ビタミンE、トコフェロ-ル及びその塩;メタ重亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩;システイン及びその誘導体;クエン酸;プロピルガレ-ト、及びブチルヒドロキシアニソ-ル(BHA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
(a)制御放出性腸内製剤
カプセル、錠剤、溶液及び懸濁液などの経口剤形は、制御放出のために製剤することができる。例えば、1つ又は複数の化合物及び任意の1つ又は複数の追加の活性成分は、ナノ粒子、マイクロ粒子、及びそれらの組み合わせへと配合され、軟質若しくは硬質ゼラチン又は非ゼラチンカプセルにカプセル化されるか、又は、分散媒体中に分散されて、経口懸濁液又はシロップを形成することができる。粒子は、薬剤及び制御放出ポリマ-又はマトリックスから形成することができる。或いは、薬剤粒子は、最終剤形に組み込む前に、1つ以上の制御放出コ-ティングで被覆することができる。
【0125】
別の形態では、1つ又は複数の化合物及び任意の1つ又は複数の追加の活性成分が、生理学的流体などの水性媒体との接触時にゲル化又は乳化するマトリックス材料に分散される。ゲルの場合、マトリックスは活性成分を捕捉して膨張し、活性成分は、マトリックス物質の拡散及び/又は分解によって時間の経過とともにゆっくりと放出される。そのようなマトリックスは、硬カプセル及び軟カプセルのための錠剤又は充填材料として製剤化することができる。
【0126】
さらに別の形態では、1つ又は複数の化合物及び任意の1つ又は複数の追加の活性成分が、錠剤又はカプセルなどの経口剤形に製剤され、固体剤形は、延放出コ-ティング又は持続放出コ-ティングなどの1つ又は複数の制御放出コ-ティングによって被覆される。1つ又は複数のコ-ティングはまた、化合物及び/又は追加の活性成分を含有してもよい。
【0127】
(1)徐放性製剤
徐放性製剤は、一般に、当該分野で公知の拡散システム又は浸透システムとして調製される。拡散システムは、典型的には、リザ-バとマトリクスとの2種類のデバイスからなる。これは周知であり、当技術分野で説明されている。マトリックスデバイスは、一般に、徐々に溶解するポリマ-担体を用いて薬剤を錠剤の形態に圧縮することによって調製される。マトリックスデバイスの調製に使用される3つの主なタイプの材料は、不溶性プラスチック、親水性ポリマ-、及び脂肪族化合物である。プラスチックマトリックスには、メチルアクリレ-ト-メチルメタクリレ-ト、ポリ塩化ビニル、及びポリエチレンが含まれるが、これらに限定されない。親水性ポリマ-には、メチル及びエチルセルロ-スなどのセルロ-ス系ポリマ-、ヒドロキシプロピルセルロ-ス、ヒドロキシプロピルメチルセルロ-スなどのヒドロキシアルキルセルロ-ス、カルボキシメチルセルロ-スナトリウム、カ-ボポル(登録商標)934、ポリエチレンオキシド、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。脂肪酸化合物には、カルナウバワックス及びグリセリルトリステアレ-トなどの様々なワックス、水素化ヒマシ油又は水素化植物油を含むワックス型物質、又はそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0128】
ある好ましい形態では、プラスチック材料は、薬学的に許容されるアクリルポリマ-であり、アクリル酸及びメタクリル酸コポリマ-、メチルメタクリレ-ト、メチルメタクリレ-トコポリマ-、エトキシエチルメタクリレ-ト、シアノエチルメタクリレ-ト、アミノアルキルメタクリレ-トコポリマ-、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミン共重合体、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸)無水物、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリル酸無水物)及びグリシジルメタクリレ-ト共重合体が含まれるが、これらに限定されない。
【0129】
ある好ましい形態では、アクリルポリマ-は、1種以上のアンモニオメタクリレ-トコポリマ-を含んでいる。アンモノメタクリレ-トコポリマ-は、当該技術分野において周知であり、第4級アンモニウム基の含有量が低いアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの完全に重合したコポリマ-としてNF XVIIに記載されている。
【0130】
1つの好ましい形態では、アクリルポリマ-は、Rohm PharmaからEUDRAGIT(登録商標)の商品名で市販されているアクリル樹脂ラッカ-である。さらに好ましい形態では、アクリルポリマ-は、Rohm PharmaからEUDRAGIT(登録商標)RL30D及びEUDRAGIT(登録商標)RS30Dの商品名でそれぞれ市販されている2つのアクリル樹脂ラッカ-の混合物を含む。EUDRAGIT(登録商標)RL30D及びEUDRAGIT(登録商標)RS30Dは、低含量の第四級アンモニウム基を有するアクリル酸及びメタクリル酸エステルのコポリマ-であり、アンモニウム基と残りの中性(メタ)アクリル酸エステルのモル比は、EUDRAGIT(登録商標)RL30Dでは1:20であり、EUDRAGIT(登録商標)RS30Dでは1:40である。平均分子量は約150、000である。EUDRAGIT(登録商標)S-100及びEUDRAGIT(登録商標)L-100も好ましい。符号の記号RL(高透過性)及びRS(低透過性)は、これらの薬剤の透過性特性を指す。EUDRAGIT(登録商標)RL/RS混合物は、水及び消化液に不溶である。しかしながら、それを含むように形成された多粒子システムは、水溶液及び消化液中で膨潤性であり、透過性である。
【0131】
EUDRAGIT(登録商標)RL/RSのような上記ポリマ-は、所望の溶解プロフィ-ルを有する徐放性製剤を最終的に得るために、任意の所望の比率で一緒に混合することができる。所望の徐放性多粒子システムは、例えば100%EUDRAGIT(登録商標)RL、50%EUDRAGIT(登録商標)RL及び50%EUDRAGIT(登録商標)RS、及び10%EUDRAGIT(登録商標)RL及び90%EUDRAGIT(登録商標)RSから得ることができる。当業者は、例えばEUDRAGIT(登録商標)Lなどの他のアクリルポリマ-も使用できることを認識するであろう。
【0132】
或いは、徐放性製剤は、浸透圧系を用いて、又は剤形に半透過性コ-ティングを適用することによって調製することができる。後者の場合、所望の薬物放出プロフィ-ルは、低透過性及び高透過性コ-ティング材料を適切な割合で組み合わせることによって達成することができる。
【0133】
上述の異なる薬剤放出メカニズムを有するデバイスは、単一又は複数のユニットを含む最終投与形態で組み合わせることができる。複数ユニットの例としては、錠剤、ビ-ズ又は顆粒を含有する多層錠剤及びカプセルが挙げられるが、これらに限定されない。即時放出部分は、コ-ティング又は圧縮プロセスを用いて持続放出層の上に即時放出層を適用するように拡張放出システムに追加されるか、拡張及び即時放出ビ-ズを含有するカプセルなどの複数ユニットシステムに追加され得る。
【0134】
親水性ポリマ-を含有する徐放性錠剤は、直接圧縮、湿式造粒、又は乾式造粒などの当該技術分野において一般的に知られている技術によって調製される。それらの製剤は、通常、ポリマ-、希釈剤、結合剤、及び潤滑剤並びに活性医薬成分を組み込んでいる。通常の希釈剤は、デンプン、粉末セルロ-ス、特に結晶セルロ-ス及び微結晶セルロ-ス、フルクト-ス、マンニト-ル、及びスクロ-スなどの糖、穀粉及び類似の食用粉末などの不活性粉末物質を含む。典型的な希釈剤は、例えば、種々のタイプのデンプン、乳糖、マンニト-ル、カオリン、カルシウムのリン酸塩又は硫酸塩、塩化ナトリウムなどの無機塩、及び粉末糖を含む。粉末セルロ-ス誘導体も有用である。典型的な錠剤結合剤は、デンプン、ゼラチン、並びに、ラクト-ス、フルクト-ス、及びグルコ-スなどの糖類などの物質を含む。アラビアゴム、アルギン酸塩、メチルセルロ-ス、及びポリビニルピロリドンを含む天然及び合成ガムも使用することができる。ポリエチレングリコ-ル、親水性ポリマ-、エチルセルロ-ス、及びワックスもまた結合剤として機能し得る。錠剤及びパンチがダイに粘着するのを防ぐために、錠剤配合物中に潤滑剤が必要である。潤滑剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びカルシウム、ステアリン酸、並びに硬化植物油などの滑りやすい固体から選択される。
【0135】
ワックス材料を含有する徐放性錠剤は、一般に、直接混合法、凝固法、及び水分散法などの当技術分野で公知の方法を用いて調製される。凝固法では、薬物をワックス材料と混合し、噴霧凝固又は凝固させ、ふるい分けして処理する。
【0136】
(2)遅延放出剤形
遅延放出製剤は、固体投与形態を、胃の酸性環境に不溶であり、小腸の中性環境に可溶なポリマ-フィルムで被覆することによって作製することができる。
【0137】
遅延放出投与単位は、例えば、薬剤又は薬剤含有組成物を選択されたコ-ティング材料で被覆することによって調製することができる。薬剤含有組成物は、例えば、カプセルに組み込むための錠剤、「コ-ティングされたコア」剤形の内部コアとして使用するための錠剤、又は、錠剤若しくはカプセルに組み込むための複数の薬剤含有ビ-ズ、粒子、若しくは顆粒であり得る。好ましいコ-ティング材料は、生侵食性、漸次加水分解性、漸次水溶性、及び/又は酵素分解性のポリマ-を含み、従来の「腸溶性」ポリマ-であってもよい。当業者に理解されるように、腸溶性ポリマ-は、下部消化管のより高いpH環境で可溶性になるか、又は剤形が胃腸管を通過するにつれてゆっくり浸食されるが、酵素分解性ポリマ-は、下部消化管、特に結腸に存在するバクテリア酵素によって分解される。遅延放出を実効化するための好適なコ-ティング材料としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロ-スアセテ-トサクシネ-ト、ヒドロキシプロピルメチルセルロ-スフタレ-ト、メチルセルロ-ス、エチルセルロ-ス、酢酸セルロ-ス、酢酸フタル酸セルロ-ス、酢酸トリメリット酸セルロ-ス、及びカルボキシメチルセルロ-スナトリウムなどのセルロ-ス系ポリマ-;好ましくは-スアセテ-トトリメリテ-ト及びカルボキシメチルセルロ-スナトリウム;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、及び/又はメタクリル酸エチルから形成されるアクリル酸ポリマ-又はコポリマ-、Eudragit(登録商標)(Rohm Pharma;Westerstadt、Germany)の商品名で市販されている他のメタクリル樹脂、例えば、EUDRAGIT(登録商標)L30D-55及びL100-55(pH5.5以上で可溶性)、EUDRAGIT(登録商標)L-100(pH6.0以上で可溶性)、EUDRAGIT(登録商標)S(更なるエステル化によってpH7.0以上で可溶性)、EUDRAGITS(登録商標)NE、RL及びRS(浸透性及び膨張性の程度が異なる水不溶性ポリマ-);ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、酢酸フタル酸ビニル、酢酸ビニルクロトン酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのビニル重合体及び共重合体;ペクチン、キトサン、アミロ-ス及びグア-ガムなどの酵素的に分解可能なポリマ-;ゼイン及びシェラックが挙げられるが、これらには限られない。異なるコ-ティング材料の組み合わせを使用することもできる。異なるポリマ-を使用する多層コ-ティングを適用することもできる。
【0138】
特定のコ-ティング材料の好ましいコ-ティング重量は、様々なコ-ティング材料の異なる量で調製された錠剤、ビ-ズ及び顆粒についての個々の放出プロファイルを評価することによって、当業者によって容易に決定され得る。それは、臨床研究からのみ決定することができる、所望の放出特性を生じる物質、方法及び適用形態の組み合わせである。
【0139】
コ-ティング組成物は、慣用的な添加剤、例えば可塑剤、顔料、着色剤、安定剤、流動促進剤などを含んでもよい。可塑剤は、通常、コ-ティングの脆弱性を減少させるために存在し、一般に、ポリマ-の乾燥重量に対して約10wt%~50wt%である。典型的な可塑剤の例には、ポリエチレングリコ-ル、プロピレングリコ-ル、トリアセチン、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、ひまし油、及びアセチル化モノグリセリドが含まれる。分散液中の粒子を安定化させるために、安定剤を使用することが好ましい。典型的な安定剤は、ソルビタンエステル、ポリソルベ-ト、及びポリビニルピロリドンなどの非イオン性乳化剤である。流動促進剤は、フイルム形成及び乾燥中の粘着効果を低減するために推奨され、一般に、コ-ティング溶液中のポリマ-の重量の約25wt%~100wt%である。効果的な流動促進剤の1つはタルクである。ステアリン酸マグネシウム及びモノステアリン酸グリセロ-ルのなどの他の流動促進剤を使用することもできる。二酸化チタンなどの顔料も使用することができる。少量の消泡剤、例えばシリコ-ン(例:シメチコン)をコ-ティング組成物に添加することもできる。
【0140】
3.局所製剤
局所投与のための適切な剤形としては、クリ-ム、軟膏、膏薬、スプレ-、ゲル、ロ-ション、エマルジョン、及び経皮パッチが挙げられる。製剤は、経粘膜、経上皮、経内皮、又は経皮投与のために処方され得る。化合物はまた、鼻腔内送達、肺送達、又は吸入のために処方され得る。組成物は、1つ又は複数の化学的浸透増強剤、膜透過性剤、膜輸送剤、皮膚軟化剤、界面活性剤、安定剤、緩衝剤、及びそれらの組み合わせをさらに含み得る。
【0141】
特定の形態では、1つ又は複数の化合物の持続的送達を、それを必要とする患者に提供することが望ましい場合がある。局所適用のためには、長期間にわたって化合物の連続投与を提供するために、反復適用を行うか、又は、パッチを使用することができる。
【0142】
「緩衝液」は、組成物のpHを制御するために使用される。好ましくは、緩衝液は、約4~約7.5のpH、より好ましくは約4~約7のpH、最も好ましくは約5~約7のpHに組成物を緩衝する。「皮膚軟化剤」は、皮膚を軟化又は軟化させる外用剤であり、当該技術分野で一般的に知られており、“Handbook of Pharmaceutical Excipients”,4th Ed.,Pharmaceutical Press,2003などの便覧にリストされている。これらには、ア-モンド油、ひまし油、セラトニア抽出物、セトステアロイルアルコ-ル、セチルアルコ-ル、セチルエステルワックス、コレステロ-ル、綿実油、シクロメチコン、パルミトステアリン酸エチレングリコ-ル、グリセリンモノステアレ-ト、グリセリルモノオレエ-ト、イソプロピルパルミテ-ト、ラノリンアルコ-ル、大豆油、デンプン、ステアリルアルコ-ル、ヒマワリ油、キシリト-ル及びこれらの組み合わせが非限定的に含まれる。いくつかの形態において、皮膚軟化剤は、エチルヘキシルステアレ-ト及びエチルヘキシルパルミテ-トである。
【0143】
「乳化剤」は、ある液体中の別の液体の懸濁を促進し、油及び水の安定した混合物又はエマルジョンの形成を促進する界面活性物質である。一般的な乳化剤は、金属石鹸、特定の動植物油、及び種々の極性化合物である。好適な乳化剤には、アカシア、アニオン性乳化ワックス、ステアリン酸カルシウム、カルボマ-、セトステアリルアルコ-ル、セチルアルコ-ル、コレステロ-ル、ジエタノ-ルアミン、パルミトステアリン酸エチレングリコ-ル、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルセルロ-ス、ヒアルロン酸、ラノリンアルコ-ル、レシチン、中鎖トリグリセリド、ラノリンアルコ-ル、ラノリンアルコ-ル、ラノリンアルコ-ル、ラノリンアルコ-ル、ラノリンアルコ-ル、アルギン酸、オレイン酸、ポロキサマ-、ポロキサマ-、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアレ-ト、プロピレングリコ-ルアルギン酸塩、自己乳化型 グリセリルモノステアレ-ト、クエン酸ナトリウム二水和物、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル、ステアリン酸、ヒマワリ油、トラガカント、トリエタノ-ルアミン、キサンタンガム、及びこれらの組合せが含まれる。いくつかの形態では、乳化剤は、グリセロ-ルステアレ-トである。
【0144】
「浸透促進剤」は当業者に知られており、脂肪アルコ-ル、脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪アルコ-ルエ-テル、アミノ酸、リン脂質、レシチン、コ-ル酸塩、酵素、アミン及びアミド、錯化剤(リポソ-ム、シクロデキストリン、変性セルロ-ス及びジイミド)、マクロ環状ラクトン、ケトン、及び無水物などのマクロ環状化合物、環状尿素、界面活性剤、N-メチルピロリドン及びその誘導体、DMSO及び関連化合物、イオン性化合物、アゾン及び関連化合物、並びに、アルコ-ル、ケトン、アミド、ポリオ-ル(例えばグリコ-ル)などの溶媒が非限定的に含まれる。これらのクラスの例は、当技術分野で公知である。
【0145】
真菌及び微生物の増殖を防ぐために「防腐剤」を使用することができる。好適な抗真菌剤及び抗菌剤には、安息香酸、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコ-ル、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノ-ル、フェノ-ル、フェニルエチルアルコ-ル、及びチメロサ-ルが含まれるが、これらには限定されない。
【0146】
「界面活性剤」は、表面張力を低下させ、それにより製品の乳化、発泡、分散、広がり及び湿潤特性を増加させる表面活性を有する成分であるである。好適な非イオン性界面活性剤には、乳化ワックス、モノオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリソルベ-ト、ソルビタンエステル、ベンジルアルコ-ル、ベンジルベンゾエ-ト、シクロデキストリン、グリセリンモノステアレ-ト、ポロキサマ-、ポビドン及びこれらの組み合わせが含まれる。いくつかの形態では、非イオン性界面活性剤は、ステアリルアルコ-ルである。
【0147】
(a)エマルジョン
エマルジョンは、第2の液体の全体に小さな球として分布する1つの液体の調製物である。特定の形態では、エマルジョンの非混和性成分は、親油性成分及び水性成分を含む。分散液は不連続相であり、分散媒は連続相である。油が分散液であり、水溶液が連続相である場合、それは水中油型エマルジョンとして知られ、一方、水又は水溶液が分散相であり、油又は油性物質が連続相である場合、それは油中水型エマルジョンとして知られている。油相及び水相のいずれか又は両方は、1つ又は複数の界面活性剤、乳化剤、乳化安定剤、緩衝剤、及び他の賦形剤を含有してもよい。好ましい賦形剤としては、界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤;乳化剤、特に乳化ワックス;液体不揮発性非水性材料、特にプロピレングリコ-ルなどのグリコ-ルが挙げられる。油相は、他の薬学的に認可された油性の賦形剤を含み得る。例えば、ヒドロキシル化ヒマシ油又はゴマ油などの物質は、界面活性剤又は乳化剤として油相に使用され得る。
【0148】
油相は、HFA推進剤などの推進剤によって少なくとも一部を構成されていてもよい。油相及び水相のいずれか又は両方は、1つ又は複数の界面活性剤、乳化剤、乳化安定剤、緩衝剤、及び他の賦形剤を含有してもよい。好ましい賦形剤としては、界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤;乳化剤、特に乳化ワックス;液体不揮発性非水性材料、特にプロピレングリコ-ルなどのグリコ-ルが挙げられる。油相は、他の薬学的に認可された油性の賦形剤を含み得る。例えば、ヒドロキシル化ヒマシ油又はゴマ油などの物質は、界面活性剤又は乳化剤として油相に使用され得る。
【0149】
エマルジョンのサブセットは、自己乳化システムである。これらの薬剤送達システムは、典型的には、界面活性剤と油又は他の水不混和性液体などの親油性液体との混合物中に分散又は溶解した薬剤から構成されるカプセル(硬質シェル又は軟質シェル)である。カプセルが水性環境に曝され、外側のゼラチンシェルが溶解すると、水性媒体とカプセル内容物との接触により、瞬時に非常に小さなエマルジョン液滴が生成される。これらは、典型的には、ミセル又はナノ粒子のサイズ範囲内にある。典型的にはエマルション処方プロセスの場合にそうであるように、エマルジョンを生成するために、混合力は必要とされない。
【0150】
(b)ロ-ション
ロ-ションは、懸濁剤及び分散剤の使用によって分散媒体に可溶性である細かく粉末化された物質を含有することができる。或いは、ロ-ションは、ビヒクルと不混和性の液体物質を分散相として有することができ、通常、乳化剤又は他の適切な安定剤によって分散される。いくつかの形態では、ロ-ションは、100~1000センチスト-クスの粘度を有するエマルジョンの形態である。ロ-ションの流動性は、広い表面積にわたって迅速かつ均一な適用を可能にする。ロ-ションは、典型的には、皮膚上で乾燥させることを意図しており、これにより、医薬成分の薄い被膜が皮膚の表面上に残る。
【0151】
(c)クリ-ム
クリ-ムは、乳化剤及び/又は他の安定化剤を含有してもよい。いくつかの形態では、製剤は、1000センチスト-クスを超える、典型的には20,000~50,000センチスト-クスの範囲の粘度を有するクリ-ムの形態である。クリ-ムは、一般に、より広がりやすく、簡単に取り除くことができるため、軟膏に比べて好まれることがしばしばある。クリ-ムとロ-ションとの違いは粘度であり、これは様々な油の量/使用や製剤を調製するために使用される水の割合に依存する。クリ-ムは、典型的にはロ-ションよりも厚く、様々な用途があり、多くの場合、より多くの様々なオイル/バタ-を使用し、所望の効果を皮膚に与える。クリ-ム処方では、水ベ-スの割合は約60~75%であり、油ベ-スは全体の約20~30%であり、他の割合は乳化剤、防腐剤、及び添加剤であり、合計で100%である。
【0152】
(d)軟膏
適切な軟膏基剤の例には、炭化水素基剤(例えば、ペトロラタム、白色ワセリン、黄色軟膏、及び鉱油);吸収基剤(親水性ペトロラタム、無水ラノリン、ラノリン、及び冷たいクリ-ム);水-除去可能基剤(例えば、親水性軟膏)、及び水溶性基剤(例えば、ポリエチレングリコ-ル軟膏)を含むが、これらに限定されない。ペ-ストは、典型的には、固形分の割合がより多いという点で、軟膏とは異なる。ペ-ストは、典型的には、同じ成分で調製された軟膏よりも吸収性があり、滑りにくい。
【0153】
(e)ゲル
ゲルは、液体ビヒクル中に溶解又は懸濁した増粘剤又はポリマ-材料の作用によって半固体にされる、液体ビヒクル中の小分子又は大分子の分散体を含む半固体システムである。液体は、親油性成分、水性成分、又はその両方を含むことができる。いくつかのエマルジョンはゲルであってもよく、そうでなければゲル成分を含んでいてもよい。しかしながら、一部のゲルは、混和しない成分の均質な混合物を含まないため、エマルジョンではない。適切なゲル化剤としては、ヒドロキシプロピルセルロ-ス及びヒドロキシエチルセルロ-スなどの変性セルロ-ス;カルボポ-ルホモポリマ-及びコポリマ-;並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。液体ビヒクル中の適切な溶媒には、ジグリコ-ルモノエチルエ-テル;プロピレングリコ-ルなどのアルキレングリコ-ル;ジメチルイソソルビド;イソプロピルアルコ-ル及びエタノ-ルアルコ-ルが挙げられるが、これらには限定されない。溶媒は、典型的には、薬剤を溶解する能力のために選択される。製剤の皮膚感触及び/又はエモリエンシ-を改善する他の添加剤も組み込むことができる。このような添加剤の例には、ミリスチン酸イソプロピル、酢酸エチル、C12-C15アルキルベンゾエ-ト、鉱油、スクワラン、シクロメチコン、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。
【0154】
(f)発泡体
発泡体は、エマルジョンとガス状推進剤との組み合わせで構成される。ガス状推進剤は、主としてヒドロフルオロアルカン(HFAs)から構成される。適切な推進剤には、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134a)及び1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227)などのHFAsが含まれるが、医療用途のために現在承認されているか、又は承認されるかもしれない、これらと他のHFAの混合物及び混和物も好適である。推進剤は、好ましくは、噴霧中に可燃性又は爆発性の蒸気を発生させ得る炭化水素推進剤ガスではない。更に、組成物は、好ましくは、使用中に可燃性又は爆発性の蒸気を生成し得る揮発性アルコ-ルを含まない。
【0155】
4.消毒剤
これらの化合物は、洗浄用組成物に配合することができる。清浄用組成物は、家庭用洗浄用途(例えば、床、カウンタ-トップ、タブ、皿などの硬い表面、衣類、スポンジ、ペ-パ-タオルなどの柔らかい布材料)、パ-ソナルケア用途(例えば、ロ-ション、シャワ-ジェル、石鹸、シャンプ-、ワイプ)、工業用及び病院用用途(例えば、器具、医療機器、手袋の滅菌)に非常に有効である。これらの製剤は、グラム陰性細菌及びグラム陽性細菌に感染又は汚染された表面を洗浄するのに有効である。
【0156】
本明細書中に開示される化合物は、スプレ-ボトル中での投与のための適切な溶媒中の溶液に配合することができ、この化合物は、エアロゾル又はフォ-ムの形態として、表面上への噴射や消毒すべき表面をふき取るのに適した適切な布に吸収されるように形成され得る。本明細書に開示される形態の消毒剤として使用するための組成物を製造するための方法は、当技術分野で公知である。
【0157】
いくつかの形態は、NSC309401又はその誘導体を、pH色素指示薬及びアルカリ性物質を含有する組成物中に提供する。pH指示薬染料は、どの表面が消毒されたかを示し、表面を消毒するのに十分な時間が経過したことを保証する。例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許公開第20140057987号を参照のこと。
【0158】
洗浄用組成物は、化合物及び許容される担体を含むことができる。担体は、多種多様な形態であり得る。例えば、担体は、限定するものではないが、水中油型、油中水型、水中油中水型、シリコ-ン中水中油型エマルジョンを非限定的に含む、水ベ-スの溶液又はクレンザ、アルコ-ルベ-スの溶液又はゲル又はエマルジョンキャリアであってもよい。化合物を含有する担体溶液は、処理すべき表面に直接適用するか、又は適切な基材を介して送り届けることができる。
【0159】
洗浄用組成物は、皮膚への使用のために配合することができる。これらの形態では、化合物は、皮膚科学的に許容される担体中に配合することができる。皮膚科学的に許容される担体は、例えば、アルコ-ル又は水ベ-スのハンドクレンザ-、トイレットバ-、液体石鹸、シャンプ-、バスジェル、ヘアコンディショナ-、ヘアトニック、ペ-スト又はム-スとして製剤化することもできる。
【0160】
洗浄用組成物は、1つ又は複数の界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、アニオン性、ノニオン性、双性イオン性、両性及び両性電解界面活性剤、並びにこれらの界面活性剤の混合物から適切に選択される。このような界面活性剤は、洗剤分野の当業者に周知である。可能な界面活性剤の非限定的な例としては、イソセテス-20、メチルココイルタウリンナトリウム、メチルオレオイルタウレ-トナトリウム、及びラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。追加の広範囲の界面活性剤の例は、Allure Publishing Corporationによって出版されたMcCutcheonの「Detergents and Emulsifiers North American Edition(1986)」に記載されている。クレンジング組成物は、必要に応じて、当業者が確立したレベルにおいてクレンジング組成物に従来使用されている他の材料を含むことができる。
【0161】
洗浄用組成物に適した追加のキャリアは、種々の基材ベ-スの製品を含むことができる。このような場合、本発明の組成物は、基材製品の中又は上に含浸されてもよく、湿ったままにされてもよく、又は乾燥プロセスに供されてもよい。例えば、適切なキャリアには、限定されないが、パ-ソナルケア及び家庭用(例えば、不織布ベビ-ワイプ、家庭用クリ-ニングワイプ、外科用準備ワイプなど)に適した乾燥及び湿潤ワイプ;おむつ;幼児の交換パッド;デンタルフロス;パ-ソナルケア及び家庭用ケアスポンジ又は織布(例えば、洗面用品、タオルなど);ティッシュ型製品(例えば、エイシャルティッシュ、ペ-パ-タオルなど);及び使い捨ての衣類(例えば、手袋、縫い物、外科用マスク、幼児用ビブ、靴下、靴のインサ-トなど)が含まれる。洗浄用組成物は、限定されないが、硬質表面洗浄剤(例えば、消毒剤スプレ-、液体又は粉末);皿洗い又は洗濯用洗剤(液体又は固体)、床用ワックス、ガラスクリ-ナなど含む種々の家庭用ケア製品に組み込むことができる。
【0162】
典型的な担体は、例えば組成物の約0~約98.8重量%の水を有する水溶液を含むことができる。更に、担体は、アルコ-ル水溶液を含有してもよい。アルコ-ル溶液中に存在するアルコ-ルの量は、組成物が組み込まれる製品のタイプによって様々であるが、例えばワイプの場合にはアルコ-ルの好ましい量が約0%~約25%であるが、ハンドサニタイザ-の場合には約60%~約95%のアルコ-ルを含有することが好ましい。したがって、皮膚科学的に許容される適切なアルコ-ル溶液又はゲルは、組成物の約0~約95重量%のアルコ-ルを含み得る。
【0163】
担体のアルコ-ル溶液に含めるのに適したアルコ-ルとしては、一価アルコ-ル、二価アルコ-ル、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。より好ましいアルコ-ルは、一価の直鎖状又は分枝状C2-C18アルコ-ルからなる群より選択される。最も好ましいアルコ-ルは、エタノ-ル、イソプロパノ-ル、n-プロパノ-ル、ブタノ-ル、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。アルコ-ル溶液を含む洗浄用組成物は、無水であってもよく、水を含有するものであってもよい。
【0164】
増粘剤は、ゲルを形成するために。水又はアルコ-ルベ-スに添加することができる。適切な増粘剤の例には、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、クインスシ-ドエキス、トラガカントガム、デンプンなどの天然ポリマ-材料、セルロ-スエ-テル(例えば、ヒドロキシエチルセルロ-スカルボキシメチルセルロ-ス、ヒドロキシプロピルメチルセルロ-ス)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコ-ル、グア-ガム、ヒドロキシプロピルグア-ガム、可溶性デンプン、カチオン性セルロ-ス、カチオン性グア-などの半合成ポリマ-材料、カルボキシビニルポリマ-、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコ-ル、ポリアクリル酸ポリマ-、ポリメタクリル酸ポリマ-、ポリ酢酸ビニルポリマ-、ポリ塩化ビニルポリマ-、ポリ塩化ビニリデンポリマ-などの合成材料が挙げられるが、これらには限定されない。無機増粘剤、例えばベントナイトなどのケイ酸アルミニウム、又は、ポリエチレングリコ-ルとポリエチレングリコ-ルステアレ-ト又はジステアレ-トの混合物も使用することができる。
【0165】
洗浄用組成物は、上記の化合物に加えて、1つ又は複数の抗菌剤又は抗真菌剤を含有することができる。そのような薬剤は、微生物を破壊し、微生物の発生を防ぎ、又は微生物の病原性作用を予防することができる。追加の抗菌剤及び抗真菌剤の例には、β-ラクタム剤、キノロン剤、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、アミカシン、2,4,4′-トリクロロ-2′-ヒドロキシジフェニルエ-テル(トリクロサン(登録商標))、フェノキシエタノ-ル、フェノキシプロパノ-ル、フェノキシイソプロパノ-ル、ドキシサイクリン、カプレオマイシン、クロルヘキシジン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クリンダマイシン、エタンブト-ル、ヘキサアミジンイセチオン酸塩、メトロニダゾ-ル、ペンタミジン、ゲンタマイシン、カナマイシン、リネマイシン、メタサイクリン、メテナミン、ミノサイクリン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ミコナゾ-ル、塩酸テトラサイクリン、エリスロマイシン、エリスロマイシン亜鉛、エリスロマイシンエストレ-ト、エリスロマイシンステアレ-ト、硫酸アミカシン、塩酸ドキシサイクリン、硫酸カプロンマイシン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、塩酸クロルテトラサイクリン、塩酸オキシテトラサイクリン、塩酸クリンダマイシン、塩酸エタンブト-ル、塩酸メトロニダゾ-ル、塩酸ペンタミジン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸カナマイシン、塩酸リノマイシン、塩酸メタサイクリン、馬尿酸メテナミン、マンデル酸メテナミン、塩酸ミノサイクリン、硫酸ネオマイシン、硫酸ネチルマイシン、硫酸パロモマイシン、硫酸ストレプトマイシン、硫酸トブラマイシン、塩酸ミコナゾ-ル、ケタコナゾ-ル、塩酸アマンファジン、硫酸アマンファジン、オクトピロックス、パラクロロメタルキシレノ-ル、ナイスタチン、トルナフテ-ト、ピリチオン(特にZPTとしても知られる亜鉛ピリチオン)、ジメチルジメチロ-ルヒダントイン(Glydant(登録商標))、メチルクロロイソチアゾリノン/メチルイソチアゾリノン(Kathon CG(登録商標))、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、イミダゾリジニル尿素(Germall 115(登録商標))、ジアゾリジニル尿素(Germaill II(登録商標))、ベンジルアルコ-ル、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオ-ル(Bronopol(登録商標))、ホルマリン(ホルムアルデヒド)、ヨ-ドプロピニルブチルカルバメ-ト(Polyphase P100(登録商標))、クロロアセトアミド、メタンアミン、メチルジブロモニトリルグルタロニトリル(1,2-ジブロモ-2,4-ジシアノブタン又はTektamer(登録商標))、グルタルアルデヒド、5-ブロモ-5-ニトロ-1,3-ジオキサン(Bronidox(登録商標))、フェネチルアルコ-ル、o-フェニルフェノ-ル/o-フェニルフェノ-ルナトリウム、ヒドロキシメチルグリシン酸ナトリウム(Suttocide A(登録商標))、ポリメトキシ二環式オキサゾリジン(Nuosept C(登録商標))、ジメトキサン、チメロサ-ルジクロロベンジルアルコ-ル、カプラン、クロロヘネネキシン、ジクロロフェン、クロロブタノ-ル、グリセリルラウレ-ト、ハロゲン化ジフェニルエ-テル、例えば2,4,4′-トリクロロ-2′-ヒドロキシ - ジフェニルエ-テル(Triclosan(登録商標)又はTCS)、2,2′-ジヒドロキシ-5,5′-ジブロモジフェニルエ-テル、フェノ-ル、2-メチルフェノ-ル、3-メチルフェノ-ル、4-メチルフェノ-ル、4-エチルフェノ-ル、2、4-ジメチルフェノ-ル、2,5-ジメチルフェノ-ル、3,4-ジメチルフェノ-ル、2,6-ジメチルフェノ-ル、4-n-プロピルフェノ-ル、4-n-ブチルフェノ-ル、4-n-アミルフェノ-ル、4-tert-アミルフェノ-ル、4-n-ヘキシルフェノ-ル、4-n-ヘプチルフェノ-ルなどのフェノ-ル化合物、p-クロロフェノ-ル、p-クロロフェノ-ル、p-クロロフェノ-ル、n-プロピルp-クロロフェノ-ル、n-ブチルp-クロロフェノ-ル、n-アミルp-クロロフェノ-ル、sec-アミルp-クロロフェノ-ル、n-ヘキシルp-クロロフェノ-ル、シクロヘキシルp-クロロフェノ-ル、n-ヘプチルp-クロロフェノ-ル、n-オクチルp-クロロフェノ-ル、o-クロロフェノ-ル、メチルo-クロロフェノ-ル、エチルo-クロロフェノ-ル、n-プロピルo-クロロフェノ-ル、n-ブチルo-クロロフェノ-ル、n-アミルo o-ベンジル-m-メチルp-クロロフェノ-ル、o-ベンジル-m、m-クロロフェノ-ル、tert-アミルo-クロロフェノ-ル、n-ヘキシルo-クロロフェノ-ル、n-ヘプチルo-クロロフェノ-ル、o-ベンジルp-クロロフェノ-ル、ジメチルp-クロロフェノ-ル、o-フェニルエチルp-クロロフェノ-ル、o-フェニルエチル-m-メチルp-クロロフェノ-ル、3-メチルp-クロロフェノ-ル、3、5-ジメチルp-クロロフェノ-ル、6-エチル-3-メチルp-クロロフェノ-ル、6-n-プロピル-3-メチル-p-クロロフェノ-ル、6-イソ-プロピル-3-メチルp-クロロフェノ-ル、2-エチル-3,5-ジメチルp-クロロフェノ-ル、6-sec-ブチル-3-メチルp-クロロフェノ-ル、2-イソプロピル-3、5-ジメチルp-クロロフェノ-ル、6-ジエチルメチル-3-メチルp-クロロフェノ-ル、6-イソプロピル-2-エチル-3-メチルフェノ-ル2-sec-アミル-3,5-ジメチルp-クロロフェノ-ル、2-ジエチルメチル-3,5-ジメチルp-クロロフェノ-ル、6-sec-オクチル-3-メチルp-クロロフェノ-ル、p-クロロ-m-クロロフェノ-ル、p-ブロモフェノ-ル、メチルp-ブロモフェノ-ル、エチルp-ブロモフェノ-ル、n-プロピルp-ブロモフェノ-ル、n-ブチルp-ブロモフェノ-ル、n-アミルp-ブロモフェノ-ル、sec-アミルp-ブロモフェノ-ル、n-ヘキシルp-ブロモフェノ-ル、n-ヘキシルo-ブロモフェノ-ル、n-プロピル-m,m-ジメチルo-ブロモフェノ-ル、2-フェニルフェノ-ル、4-クロロ-2-メチルフェノ-ル、4-クロロ-3-メチルフェノ-ル、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノ-ル、2,4-ジクロロ-3,5-ジメチルフェノ-ル、3,4,5,6-テラブロモ-2-メチルフェノ-ル、5-メチル-2-ペンチルフェノ-ル、4-イソプロピル-3-メチルフェノ-ルなどの、モノ-及びポリ-アルキル並びに芳香族ハロフェノ-ル、パラ-クロロ-メタ-キシレノ-ル(PCMX)、クロロチモ-ル、5-クロロ-2-ヒドロキシジフェニルメタン、メチルレゾルシノ-ル、エチルレゾルシノ-ル、n-プロピルレゾルシノ-ル、n-ブチルレゾルシノ-ル、n-アミルレゾルシノ-ル、n-ヘキシルレゾルシノ-ル、n-ヘプチルレゾルシノ-ル、n-オクチルレゾルシノ-ル、n-ノニルレゾルシノ-ル、フェニルレゾルシノ-ル、ベンジルレゾルシノ-ル、フェニルエチルレゾルシノ-ル、フェニルプロピルレゾルシノ-ル、p-クロロベンジルレゾルシノ-ルを含む、レゾルシノ-ル及びその誘導体、5-クロロ-2,4-ジヒドロキシジフェニルメタン、4′-クロロ-2,4-ジヒドロキシジフェニルメタン、5-ブロモ-2,4-ジヒドロキシジフェニルメタン、4′-ブロモ2,4-ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2′-メチレンビス(4-クロロフェノ-ル)、2,2′-メチレンビス(3,4,6-トリクロロフェノ-ル)、2,2′-メチレンビス(4-クロロ-6-ブロモフェノ-ル)、ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)スルフィド、ビス(2-ヒドロキシ-5-クロロベンジル)スルフィドなどのビスフェノ-ル化合物、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、エチルパラベン、イソプロピルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベン、メチルパラベンナトリウム及びプロピルパラベンナトリウムなどの安息香酸エステル(パラベン)、ハロゲン化カルバニリド(3,4,4′-トリクロロカルバニリド(Triclocarban(登録商標)又はTCC)、3-トリフルオロメチル-4,4′-ジクロロカルバニリド、3,3′,4-トリクロロカルバニリドなど)、塩化ベンザルコニウム及びクロトリマゾ-ルなどのカチオン性活性物質が含まれる。
【0166】
開示された組成物及び方法において有用な別のクラスの抗菌剤(具体的には抗バクテリア剤)は、天然の精油と呼ばれる、いわゆる「ナチュラルな」抗バクテリア活性物質である。典型的な天然エッセンシャルオイル抗バクテリア活性成分には、アニス、レモン、オレンジ、ロ-ズマリ-、ウィンタ-グリ-ン、タイム、ラベンダ-、クロ-ブ、ホップ、ティ-ツリ-、シトロネラ、小麦、大麦、レモングラス、スギの葉、シ-ダ-ウッド、シナモン、フリ-グラス、ゼラニウム、ビャクダン、バイオレット、クランベリ-、ユ-カリ、バ-バイン、ペパ-ミント、ガムベンゾイン、バジル、フェンネル、モミ、バルサム、メント-ル、オクメアオリガヌム、ヒドラスチスカラデンシス、ベルベリダセアダセア、ラタンヒエ、及びウコンが含まれる。
【0167】
洗浄用組成物は、当業者に知られている様々な適切なパッケ-ジングで包装してもよい。液体配合物は、望ましくは、通常は合成有機高分子プラスチック材料で作られた手動操作のスプレ-分配容器に包装されてもよい。したがって、本明細書に記載の化合物を含有し、スプレ-ディスペンサ-、好ましくはトリガ-スプレ-ディスペンサ-又はポンプスプレ-ディスペンサ-に包装された消毒組成物が想定される。スプレ-タイプのディスペンサは、本明細書に記載の液体洗浄用組成物を消毒すべき表面の比較的広い領域に均一に塗布することを可能にする。
【0168】
開示された化合物、例えばNSC309401又はその誘導体は、不織吸収性ワイプに含浸することができる。殺菌剤ウェットワイプも、例えば、米国特許第8,563,017号に開示されている。開示された化合物、例えばNSC309401又はその誘導体は、発泡体を生成することができる特殊な界面活性剤システムを有する水性発泡体中にあってもよい。米国特許第8,097,265号、米国特許第5,891,922号、及び米国特許第4,889,645号を参照のこと。開示される化合物、例えばNSC309401又はその誘導体は、加圧噴霧エアロゾル中に存在し得る。
【0169】
フラッシュ蒸発成分及び有効量の抗菌剤を有するフラッシュ蒸発成分を備えた液体フラッシュドライエアロゾル消毒組成を開示する米国特許公開第20010053333号も参照のこと。
【0170】
例えば、高リスクの病院表面を滅菌する目的で、エアロゾル、泡、溶液又は消毒布に含めるために本明細書に開示される化合物の有効量を決定することは、当業者の能力の範囲内である。
【0171】
III.使用方法
本明細書に開示される方法は、抗バクテリア剤に対する細菌耐性に対抗するための2つのアプロ-チを使用する。第1の方法は、既存の抗生物質と組み合わせて本明細書に開示される化合物を使用する。この戦略は、細菌が生存するのに必要な抵抗因子を獲得するためのハ-ドルを高くし、同時に抵抗性株の上昇を遅らせる。本明細書に記載された方法は、既存の抗生物質の使用を維持し、これにより、これらの抗生物質の臨床寿命を延ばし、新しい世代の抗生物質の開発のための時間をもたらす。この併用療法は、耐性株の出現のためのより大きなハ-ドルを据え付けるのみならず、本明細書中に開示される化合物は、共投与される抗生物質の効果を強化する。第2のアプロ-チは、細菌の病原因子を標的とするものである。病原因子は、細菌の生存のための補助遺伝子であるため、化学遺伝学的方法によって不活性化されたそれらの遺伝子を有することは、細菌に対して直接的な増殖の問題をもたらさないだろう。これは、エスケ-プ突然変異体を発生させる可能性を低減し、耐性株の発生を減少させるであろう。
【0172】
したがって、いくつかの形態は、1つ又は複数の各式に係る化合物(化合物2-82)の有効量を対象に投与することにより、対象において、Staphyloccous aureus、Pseudomonas aeruginosa、Listeria monocytogenes、Burkholderia cepacia、Escherichia coli、Enterococcus faecalis、Streptococcus pneumoniaeを非限定的に含む微生物感染を治療又は予防する方法を開示している。いくつかの形態では、上記方法は、例えば、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、ネオマイシン、スペクチノマイシン、ネアミン、又はこれらの任意の組み合わせなどの少なくとも1つの抗生物質の有効量を投与することを更に含んでいる。抗生物質は、化合物投与と同時に、化合物投与の前に、又は化合物投与の後に投与することができる。更に、抗生物質及び開示された化合物の投与は、処方医薬組成物の形態で同時に行うことができる。
【0173】
投与は、対象において、局所的(単一の細胞又は組織に限定)及び/又は全身的に行われ得る。化合物/抗生物質及び開示された医薬組成物を、治療領域、例えば感染領域に局所的に投与することが望ましい場合がある。この投与方法は、例えば、限定されるものではないが、手術中の局所注入、局所適用(例えば手術後の創傷被覆材との併用)、注射、カテ-テル、又はインプラント(例えば、多孔質膜)によって達成されてもよい。
【0174】
いくつかの形態では、化合物/抗生物質又は医薬組成物は、制御放出システムで送達することができる。そのような方法は、投与のためのポンプの使用(例えば、静脈内点滴の使用)を含み得る。別の形態では、制御放出システムを治療標的(例えば感染部位)の近傍に配置することができる。この場合、全身投与した場合に必要とされる用量のほんの一部しか必要としない。
【0175】
他の形態では、開示された小分子は、より強力で特異的な処理を作り出すためのさらなる修飾のためのリ-ド化合物として役立つ。
【0176】
A.微生物
開示された化合物で阻害することができる例示的な微生物には、限定されるものではないが、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、Burkholderia cepacia Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、及び、Streptococcus pneumoniaeが含まれる。好ましい形態には、Staphylococcus aureusのメチシリン耐性株、及び、多剤耐性のListeria monocytogenes、Pseudomonas aeruginosa、Burkholderia cepacia、Enterococcus faecalis、Streptococcus pneumoniaeが含まれる。
【0177】
治療することができる他の細菌には、限定されないが、Acinteobacter、Antinomies、Anabaena、Bacillus、Bacteroides、Bdellovibrio、Bordetella、Borrelia、Campylobacter、Caulobacter、Chlamydia、Chlorobium、Chromatium、Clostridium、Corynebacterium、Cytophaga、Deinococcus、Enterobacter、Enterococcus、Escherichia、Francisella、Halobacterium、Heliobacter、Haemophilus、Hemophilus influenza type B(HIB)、Hyphomicrobium、Klebsiella、Legionella、Leptspirosis、Listeria、Meningococcus A、B及びC、Methanobacterium、Micrococcus、Myobacterium、Mycoplasma、Myxococcus、Neisseria、Nitrobacter、Oscillatoria、Prochloron、Proteus、Pseudomonas、Phodospirillum、Rickettsia、Salmonella、Shigella、Spirillum、Spirochaeta、Staphylococcus、Streptococcus、Streptomyces、Sulfolobus、Thermoplasma、Thiobacillus、及びTreponema、Vibrio、並びにYersiniaが含まれる。
【0178】
1つの好ましい形態では、本明細書に開示される組成物は、メチシリン耐性Staphylococcus aureusによって引き起こされる皮膚感染のための局所抗バクテリア薬として使用される。メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)は、多くの抗生物質に耐性を示す細菌の一種である。CDCは、臨床医が、特に化膿(変動又は触知可能な体液が充満した腔、黄又は白色の中心、中心点又は「ヘッド」、排液膿、又は、針又は注射器で膿を吸引することが可能)の場合、黄色ブドウ球菌感染と整合する皮膚及び軟部組織感染症(SSTI)の鑑別診断において、MRSAを考慮に入れることを奨励している。患者が「スパイダ-バイト」の苦情を申し立てた場合、黄色ブドウ球菌感染を疑うべきである。コミュニティにおいては、ほとんどのMRSA感染は皮膚感染である。他の形態では、組成物は、入院患者又は免疫不全患者において、メチシリン耐性Staphylococcus aureusによってもたらされる肺又は血液の全身感染を処置するために使用され得る。医療施設では、MRSAは、生命を脅かす血流感染症、肺炎、及び手術部位感染の原因となる。
【0179】
MRSAによって引き起こされる疾患のスペクトルは、コミュニティにおけるStaphylococcus aureusのものと類似しているようにみえる。軟部組織感染症(SSTI)、具体的には、毛包(膿瘍のある毛包又は「吹出物」)、カ-バンクル(膿瘍の合体した腫瘤)及び膿瘍が、最も頻繁に報告されている臨床症状である。コミュニティ関連MRSAの最も一般的な症状は、膿痂疹、吹出物、膿瘍、毛嚢炎、及び蜂巣炎などの単純な皮膚感染である。壊死性筋膜炎及び熱帯性筋炎(熱帯で最も一般的に見られる)、壊死性肺炎、感染性心内膜炎(心臓の弁に影響を及ぼす)、並びに骨及び関節の感染症などの、より稀であるがより重篤な症状が起こり得る。追加の状態には、重篤な若しくは広範囲の疾患(例えば、複数の感染部位を含む)又は関連する蜂巣炎の存在下での急速な進行、全身性疾患の徴候及び症状、関連する併存疾患又は免疫抑制、極端な年齢、排膿困難な領域における膿瘍(例えば、顔、手、及び生殖器)、関連する敗血症性静脈炎、切開及び排膿単独に対する反応の欠如、複雑なSSTI(cSSTI;より深い軟部組織感染症、外科的/外傷性創傷感染症、及び感染した潰瘍及び火傷を有する患者として定義される)を有する入院患者、骨髄炎、デバイス関連の骨関節感染症、軽度の皮膚感染(例えば、膿痂疹)を有する小児、並びに二次感染した皮膚病変(湿疹、潰瘍、又は裂傷)が含まれる。本明細書中に開示される組成物はまた、髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、脊髄硬膜外膿瘍を含むがこれらに限定されないCNSのMRSA感染を治療するために使用することができる(Liu、et al.,Clin Infect Dis.,52(3):e18-55(2011)でレヴュ-されている)。
【0180】
本明細書に開示される組成物はまた、特に免疫不全患者の対象におけるEscherichia coli(薬剤耐性でもそうでなくても)株に起因する感染を治療するために使用され得る。Escherichia coliは、菌血症、菌血症、胆管炎、尿路感染症、並びに、新生児髄膜炎及び肺炎などの他の臨床感染症を含む、多くの一般的な細菌感染症の最も頻繁な原因の1つである。例えば、組成物は、免疫不全患者におけるEscherichia coli(薬剤耐性でもそうでなくても)株に起因するコミュニティ内及び/又は院内感染による尿路感染症(UTI)による症状を治療するために使用され得る。
【0181】
本明細書に開示される化合物で標的とされ得る他の抗生物質耐性微生物には、Streptococcus pneumoniae、Campylobacter、eisseria gonorrhoeae、Salmonella(薬剤耐性非腸チフス性サルモネラ菌及びサルモネラ血清型チフスを含む)、Shigella、バンコマイシン耐性Enterococcus(VRE)、バンコマイシン耐性Staphylococcus aureus(VRSA)、エリスロマイシン耐性A群Streptococcus、クリンダマイシン耐性B群Streptococcus、カルバペネム耐性Enterobacteriaceae(CRE)、薬剤耐性結核、拡張スペクトル Enterobacteriaceae(ESBL)、多剤耐性Acinetobacter(MRABを含む)、Clostridium difficile、腸管病原性E.coli(EPEC)、Pseudomonas aeruginosa、H.pylori、Streptococcus anginosus、並びに、尿路病原性E.coli(UPEC)が含まれる。
【0182】
B.治療法1.感染症
開示された化合物及びその誘導体並びにそれらの組み合わせは、対象、好ましくはヒト対象に感染する上記の微生物によって引き起こされる感染から生じる症状を改善又は治療するのに有効な量で、上述したように投与することができる。感染症は、全身性又は局所性であり得る。感染症は、皮膚、目、喉、鼻、若しくは耳、又は、肺、腸、心臓、脳及び肝臓を含むがこれらに限定されない任意の器官の感染症であり得る。感染症は、膿瘍又は傷であってもよい。
【0183】
ある形態では、1つ又は複数の化合物の持続的送達を、それを必要とする患者に提供することが望ましい場合がある。静脈内又は動脈内経路の場合、静脈内投与などの点滴システムを用いてこれを達成することができる。局所適用のためには、長期間にわたって化合物の連続投与を提供するために、反復適用を行うか、又は、パッチを使用することができる。
【0184】
開示された化合物の増強効果のために、ある形態では、別々に、同時に、又は逐次的に投与される1つ又は複数の抗微生物剤(1つ又は複数の抗生物質を含む)の量は、開示された化合物を受領していない患者又は動物に投与される場合の治療有効量又は治療上最適用量より低くてもよい。いくつかの形態では、投与される1つ又は複数の抗微生物剤は、開示された化合物を受領していない患者又は動物に投与される場合の治療有効量又は治療上最適用量と比較して、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又はそれ以上に少ない量であってもよい。別の形態では、第2の形態の治療又は予防を受ける患者の治療期間は、開示された化合物を受領していない患者又は動物に投与される場合の治療期間と比較して、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又はそれ以上に短くてもよい。
【0185】
2.滅菌剤としての使用
本明細書に開示される化合物は、例えば病院又は医療施設からのハ-ドウェアなどの高リスク環境において、滅菌剤として使用することができる。世界保健機関(WHO)は、いつでも、世界中の140万人以上の人々が病院で得た感染症の影響を受けていると推定している。洗浄、消毒、及び滅菌は命を救い、患者の結果を改善する。先進国の現代病院に入院した患者の5%~10%が、1つ又は複数の医療関連感染症を発症する。疾病管理予防センタ-(CDC)は、米国の病院で毎年約170万件の医療関連感染が発生し、毎年約10万人の死亡に関連していると推定している。医療関連感染症は、介護施設やリハビリテ-ション施設などの介護施設の重要な問題でもある。医療関連病原体の伝達は、様々な患者ケア活動中に不注意に手を汚染する医療従事者の手によって、最も頻繁に起こる。それほど頻繁ではないが、医療施設内の汚染された表面は、医療関連病原体の拡散に寄与する可能性がある。
【0186】
ヘルスケア施設で使用される様々なレベルの消毒は、スパルディングの分類によって定義され得る(Sehulster,et al.,Guidelines for environmental infection control in health-care facilities.Recommendations from CDC and the Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee(HICPAC).Chicago IL;American Society for Healthcare Engineering/merican Hospital Association; 2004)。スパルディングによる、ノンクリティカル、セミクリティカル、及びクリティカルなレベルは、感染症が機器、器具、家具を介して広がる可能性と、それに接触する身体部分に通常必要とされる無菌性のレベルに基づいている。スパルディングの分類と相関する消毒のレベルは、低、中、高、及び滅菌でる。米国疾病対策センタ-(CDC)は、「Guidelines for Environmental Infection Control in Health-Care Facilities」において、環境表面の消毒レベルをさらに詳細に示している。
【0187】
クリティカルな物品は、微生物に汚染されていると、高い感染リスクを有する。したがって、無菌組織又は血管系に入る物体は、微生物汚染が疾患を伝達する可能性があるため、無菌でなければならない。このカテゴリには、無菌体腔で使用される外科用器具、心臓及び尿カテ-テル、インプラント、並びに超音波プロ-ブが含まれる。セミクリティカルな物品は、粘膜又は無傷の皮膚に接触する。このカテゴリには、呼吸療法及び麻酔機器、ある種の内視鏡、喉頭鏡ブレ-ド、食道圧測定プロ-ブ、膀胱鏡、肛門直腸マノメトリカテ-テル、並びにダイアフラムフィッティングリングが含まれる。これらの医療機器は、すべての微生物を含まないべきであるが、少数の細菌胞子は許容される。クリティカル又はセミクリティカルな物品の具体例には、腹腔鏡などの侵襲性内視鏡、及び動作チャンネルのない硬い器具が含まれる。無菌体腔に挿入される関節鏡及び腹腔鏡、並びにアクセサリ-機器は、無菌であるべきである。他の例には、胃鏡、十二指腸内視鏡、S状結腸鏡、直腸鏡、結腸鏡、気管支鏡及び喉頭鏡が含まれる。
【0188】
3.その他の使用方法
さらに、記載された治療方法は、対象における治療に適用されるだけでなく、細胞培養物、器官、組織又は個々の細胞に、in vivo、ex vivo又はin vitroで適用され得ることが、当業者に理解されるであろう。
【0189】
IV.キット
さらに、医薬組成物を包装するために包装材料が利用される場合、それは、プラスチックポリマ-、シリコ-ンなどのように、生物学的に不活性であるか生物活性が欠如していてもよく、化合物/抗生物質の有効性に影響を及ぼすことなく、包装され及び/又はそれと共に運搬される。
【0190】
さらに、化合物及び/又は医薬組成物は、本明細書に開示される抗生物質と共に包装されてもよく、好ましい抗生物質としては、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、ネオマイシン、スペクチノマイシン、ネアミン、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0191】
それ以上の詳述なしに、当業者は、上記の記載を用いて、開示された化合物、組成物、及び方法を最大限に利用することができると考えられる。以下の実施例は、例示の目的で提供されるものであって、本発明を限定するものではない。特定の例が提供されているが、上記の説明は例示的なものであり、限定的なものではない。記載された形態の任意の1つ又は複数の特徴は、任意の他の記載された形態の1つ又は複数の特徴と、任意の方法で組み合わせることができる。さらに、開示された化合物、組成物、及び方法の多くの変形が、本明細書の検討により、当業者に明らかになるであろう。
【0192】
本明細書に記載される方法、化合物、及び組成物は、以下の実施例でさらに説明されるが、これは例示として提供され、限定することを意図するものではない。示された構成要素の成分における比率及び代替の変化は、当業者には明らかであり、開示された形態の範囲内にあることが理解されよう。理論的側面は、出願人が提示された理論に拘泥するつもりはないとの理解のもとに提示されている。特に明記しない限り、すべての部又は量は、重量による。
【実施例】
【0193】
材料及び方法
細菌株:Mu3(ATCC 700698)、USA300、COLは、Staphylococcus aureusのメチシリン耐性株である。Newman、ATCC29213、RN4220、RN6390は、メチシリン感受性株である。AE-052、ST-45-502、ST-239-IIIA-503、ST-239-III-AH-504は、香港のクイ-ン・メアリ-病院の臨床分離株である。Listeria monocytogenes(L.monocytogenes)、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)PA01、Streptococcus pneumoniae(S.pneumonia)R6は、参照株であり、Burkholderia cepacia、Enterococcus faecalis、Escherichia coli(NDM-1)は、香港のクイ-ン・メアリ-病院の多剤耐性臨床分離株であり、Escherichia coli(IMP)は、実験室株である。全ての細菌は、37℃における、対応する増殖培地のブレインハ-トインフュ-ジョン(BHI)ブロス(OXOID)、ミュ-ラ-ヒントン(MH)ブロス(BD)、又はカチオン調整ミュ-ラ-ヒントン(CAMH)ブロス(BD)中の培養である。
【0194】
薬剤ライブラリと化学品:構造的に多様な小分子化合物ライブラリがハイスル-プットスクリ-ニングに使用される。小分子化合物は、Chembridgeから購入した。ゲンタマイシン(Sigma-Aldrich)、カナマイシン(Sigma-Aldrich)、アミカシン(Sigma-Aldrich)、スペクチノマイシン(Sigma-Aldrich)、ネオマイシン(Sigma-Aldrich)、ネアミン(Sigma-Aldrich)が、最小阻害濃度(MIC)テスト、ハイスル-プットスクリ-ニング、ペ-パ-ディスクアッセイ、及びチェッカ-ボ-ドアッセイで使用された。
【0195】
最小阻害濃度(MIC)試験。抗生物質に対する細菌のMICを決定するためのアッセイは、適切な増殖培地ブロスを有する96ウェルマイクロタイタ-プレ-ト中のブロス微量希釈法を用いて実施される。小分子化合物のMICの決定のために、化合物は最初にDMSO中で2倍連続希釈され、各希釈液1μLを96ウェルマイクロタイタ-プレ-トに添加して、所望の濃度を得る。全ての試験は三重反復で実施され、繰り返される。
【0196】
ハイスル-プットスクリ-ニング(HTS)。一次HTSスクリ-ニングは、カスタマイズされたロボティックスクリ-ニングプラットフォ-ム、全自動化されたBeckman Coulter Core system(Fullerton)を用いて行われた。このシステムには、液体ハンドラ、ウォッシャ-、マルチドロップ液体ディスペンサ(Thermo Scientific)、Kendro robotics CO2 インキュベ-タ(Thermo Fisher Scientific)、及びDTX 880マルチモ-ドプレ-トリ-ダ-(Beckman coulter)が統合されている。化学ライブラリを384ウェルマイクロタイタ-プレ-トに予め分注し、スクリ-ニングすると、1ウェルあたり50μLのBHI培地中、20μg/mLの化合物の最終濃度が得られる。すべてのスクリ-ニングは、384ウェルポリスチレンマイクロタイタ-プレ-ト(Greiner Bio-One)で行われる。Mu3の一晩培養物をBHI培地で3回洗浄し、希釈し、プレ-ティングして、1ウェルあたり5×105 CFU /mLの濃度を得る。プレ-トを37℃で16時間インキュベ-トし、自動DTX880マルチモ-ド検出器を用いて、光学濃度を595nmで観察し、成長をモニタリングする。BHI培地を用いたスクリ-ニングは、バックグラウンドスクリ-ニングとして指定される。種々の抗生物質との相乗的特性を示す潜在的な化合物は、サブMIC濃度の抗生物質含有培地を用いてスクリ-ニングされる。スクリ-ニングのために、抗生物質のサブMIC濃度が選択される。156.25μg/mLの最終濃度のゲンタマイシンを含むBHIが、個々の実験に対応して使用される。デ-タ解析は、Capilano UniversityのJason Madarによってプログラムされたカスタム設計のデ-タ解析ソフトウェアによって行われる。様々な抗生物質によるスクリ-ニング結果をバックグラウンドスクリ-ニングで正規化して、増殖阻害のパ-センテ-ジを計算する。潜在的な抗生物質活性増強効果を有する化合物を、ヒットを確認するための二次スクリ-ニングのために選択する。
【0197】
選択された化合物は、一次スクリ-ニング調製物と同様に異なる濃度で調製される。選択された化合物の異なる濃度が試験されることを除いて、同一の実験手順が一次スクリ-ニング手順として実施される。サブMIC抗生物質の存在下で細菌増殖阻害を示す化合物を、より詳細な評価のために選択する。
【0198】
チェッカ-ボ-ドアッセイ。チェッカ-ボ-ドアッセイは、96ウェルマイクロタイタ-プレ-トで実施される。化学物質MICは、先に記載したようにして、最初に決定される。抗生物質は、縦座標に沿って2倍に連続希釈され、化合物は横座標に沿って加えられ、化合物と抗生物質との間にチェッカ-ボ-ド濃度勾配を生成する。細菌培養物をトッピングし、一晩インキュベ-トする。細菌の増殖は、595nmでのOD吸光度によってモニタ-される。
【0199】
細胞毒性アッセイ。MTTアッセイは、製品説明書に従って、Vero細胞上の選択された化合物について実施される。
【0200】
ペ-パ-ディスク拡散アッセイ。ペ-パ-ディスク拡散アッセイは、10μLの5mM化合物又は適切な量の抗生物質を、8mm直径の濾紙ディスクに含浸させることによって実施される。次いで、ディスクを、BHI寒天上の細菌の均一な綿棒菌叢上に置き、37℃で一晩成長させる。より大きな阻害ゾ-ンは、より小さいMICと相関する。
【0201】
ペ-パ-ディスク拡散及びルクスアッセイ。hla-プロモ-タluxレポ-タ系を保有する単一コロニ-の生物発光性 S.aureusを200μlの滅菌水に再懸濁し、0.7%(w/v)BHI寒天中に1000倍に希釈し、BHI寒天プレ-ト上に重層した。DMSOに溶解した50mMの類似体化合物10μlを紙のディスクに含浸させ、バクテリアの菌叢に置いた。プレ-トを37℃で一晩インキュベ-トした。Xenogen IVIS 100 in vivoイメ-ジングシステム(Xenogen、Alameda、CA)を用いて発光を検出した。
【0202】
化合物の選択性の最適化。一次スクリ-ニングからのリ-ド化合物が選択され、化合物の類似体が検索され、より良い成績の化合物がオ-ダ-される。類似体のMIC及びMTTが決定される。選択的指数は、化合物の毒性と化合物の効力とを比較することによって各化合物について計算される。
【0203】
インビボ実験。すべての動物実験は、香港大学規則の実験動物ユニット(LAU)に従って実施した。6-8週齢の雌のBALB/cマウスに、4×108CFUのS.aureusを感染させた。化合物3又は注射緩衝液対照(5%DMSO及び2%Tween80を含むPBS)を感染前日に前処理し、感染後1日に2回投与した。感染の3日後、動物を安楽死させた。腎臓、肝臓及び脾臓をPBS中でホモジナイズし、定量的細菌培養のためにBHI寒天上にプレ-ティングした。
【0204】
結果
MRSA Mu3に対する3種の抗生物質(ゲンタマイシン、セフトリアキソン、及びレボフロキサシン)のMIC値の予備試験を、マイクロブロス希釈法に従って行った。これは、相乗的活性を有するか又は抗生物質の抗菌効果を増強することができる化合物のヒット同定のためにHTSに使用される適切な量の抗生物質についての基準を確立するために行われた。MRSA Mu3に対するゲンタマイシンのMIC値は1000μg/mLであると決定された。抗生物質の調整されたサブMIC濃度をスクリ-ニングに用いた;すなわち、156.25μg/mLの最終濃度のゲンタマイシンを個々のスクリ-ニング実験に用いた。
【0205】
プレ-ンBHI中のMu3株に対して、20μg/mLの最終濃度で構造的に多様な小分子ライブラリのハイスル-プットスクリ-ニングを行った。増殖は、OD読み取り値によってモニタ-した。このスクリ-ニングは、Mu3株に対する各化合物のバックグラウンド抗菌活性を開始するために行った。これは後に、抗生物質のサブMIC濃度を含む個々のスクリ-ニングと比較された。抗生物質増強化合物は、理想的にはバックグラウンドスクリ-ニングにおいてバックグラウンド抗菌活性を有さず、サブMIC濃度の抗生物質の存在下で増殖阻害を示す。主ヒット化合物は、バックグラウンドスクリ-ンを有するサブMICスクリ-ンの標準化後の初期スクリ-ニングを通して分離された。選択された化合物を二次スクリ-ニングに付して、小分子の抗生物質との組合せ効果を精密化及び評価した。
【0206】
そのうち、化合物13は、より深い研究のために最終決定された。この化合物は、未知の濃度までMICの徴候を示さず、化合物の溶解度が試験されるより高い濃度を制限する。
【0207】
チェッカ-ボ-ドアッセイが、ゲンタマイシン(
図1)、及び、他のアミノグリコシド、アミカシン(
図2)、カナマイシン(
図3)、ネオマイシン(
図4)、スペクチノマイシン(
図5)、ネアミン(
図6)に対して、リ-ド化合物である化合物13について実施された。
【0208】
試験した全ての抗生物質は、化合物13によって増強され、組み合わせ改善を示すことができた。
【0209】
化合物13はまた、他の Staphylococcus aureus(S.aureus)株におけるゲンタマイシンとの共同効果も拡張し得る。その効果は、ATCC 29213(
図7)、Newman(
図8)、RN4220(
図9)、USA300(
図10)、COL(
図11)、RN6390(
図12)、ST-45-502(
図13)及び AE-052(
図14)などのゲンタマイシン感受性株、並びに、ST- 239-III-AH-504(
図15)、ST-239-III-AH-503(
図16)などのゲンタマイシン耐性株について、確かめることができる。
【0210】
化合物13は、S.aureusにおいて、アミノグリコシド増強特性を示した。化合物13の構造類似体がリ-ド化合物の最適化のために購入された。異なった濃度の各類似体化合物についての二次様スクリ-ニングが実施され、異なったゲンタマイシン濃度、50μM、20μM及び5μMの化合物濃度が、BHIを含有する0μg/ml、100μg/ml及び200μg/mlのゲンタマイシンに対してテストされた。スクリ-ニングで活性を示す類似体を選択した(
図17、18、19)。これを表1に要約する。
【0211】
表1.種々の濃度のゲンタマイシンを用いた類似体二次スクリ-ニングの数値的相対成長度の要約。
【表1A】
【表1B】
【0212】
*は、相対成長が40%未満であることを示し、**は、化合物配向性成長阻害を示す。+/-は、hlaプロモ-タに対する誘導又は抑制を示す。
【0213】
機能的なコア構造を絞り込むために、構造機能解析を行った(表2、3、4、5)。
【0214】
表2.50μMの化合物濃度及び200μg/mlのゲンタマイシン下で30%以上の増殖阻害を有する化合物の構造機能分析
【表2A】
【表2B】
【表2C】
【0215】
表2は、50μMの化合物濃度及び200μg/mlのゲンタマイシンで30%以上の増殖阻害を有する選択された類似体の構造機能分析を示す。この分析は、いくつかの官能基の組み合わせが増殖阻害効果を改善し、より低い濃度においてS.aureus Mu3 の成長阻害を保持することを示す。
【0216】
表3.50μMの化合物濃度及び200μg/mlのゲンタマイシン下で30%以上の増殖阻害を有する化合物の構造機能分析
【表3】
【0217】
表3は、50μMの化合物濃度及び200μg/mlのゲンタマイシンで30%以上の増殖阻害を有する選択された類似体の構造機能分析を示す。この分析は、いくつかの官能基の組み合わせが増殖阻害効果を改善し、より低い濃度においてS.aureus Mu3 の成長阻害を保持することを示す。
【0218】
表4.50μMの化合物濃度及び200μg/mlのゲンタマイシン下で30%以上の増殖阻害を有する化合物の構造機能分析
【表4A】
【表4B】
【0219】
表4は、50μMの化合物濃度及び200μg/mlのゲンタマイシンで30%以上の増殖阻害を有する選択された類似体の構造機能分析を示す。この分析は、いくつかの官能基の組み合わせが増殖阻害効果を改善し、より低い濃度においてS.aureus Mu3 の成長阻害を保持することを示す。
【0220】
表5.50μMの化合物濃度及び200μg/mlのゲンタマイシン下で30%以上の増殖阻害を有する化合物の構造機能分析
【表5】
【0221】
表5は、50μMの化合物濃度及び200μg/mlのゲンタマイシンで30%以上の増殖阻害を有する選択された類似体の構造機能分析を示す。この分析は、いくつかの官能基の組み合わせが増殖阻害効果を改善し、より低い濃度においてS.aureus Mu3 の成長阻害を保持することを示す。
【0222】
ペ-パ-ディスクアッセイが、強力な活性を有する選択された化合物の増強効果を直接的に評価するために用いられた。選択された化合物、化合物13(
図20)、化合物17(
図21)、化合物19(
図22)、化合物20(
図23)、化合物36(
図24)及び化合物82(
図25)について、チェッカ-ボ-ドアッセイを行った。6つの化合物の細胞傷害性を、Vero細胞におけるMTTアッセイで試験し、結果を表6に要約した。
【0223】
【0224】
試験された類似体化合物のペ-パ-ディスク拡散及びルクスアッセイは、表1にまとめられているいくつかの類似体の抗毒特性を明らかにする。化合物3の他の類似体の試験により、潜在的な毒性因子阻害剤が同定された。
【0225】
表7.選択された化合物のHlaプロモ-タ上における相対ルクス信号、各化合物を25μMで使用。
【表7】
【0226】
処置用に選択された化合物3は、Mu3株によるBALB/cマウス感染モデルにおける、腎臓(
図26)、脾臓(
図27)及び肝臓(
図28)の細菌負荷の減少を示した。同様の結果が、BALB/cマウス感染モデルとUSA300株において、脾臓(
図29)及び肝臓(
図30)の細菌負荷の減少として観察された。
【0227】
選択された化合物82の他の細菌に対する活性を試験した。チェッカ-ボ-ドアッセイを実施して、他のグラム陽性細菌、L.monocytogenes(
図31)、E.faecalis(
図32)、及び、S.pneumoniae(
図34)に対する活性を評価した。化合物82の存在下でのゲンタマイシン増強効果は、L.monocytogenes、E.faecalis及びS.pneumoniaeにおいて観察された。さらに、化合物82はまた、グラム陰性菌、E.coli(
図33)との相乗効果も示した。化合物82はまた、他のグラム陰性菌に対する毒性抑制を示すことができる。これは、P.aeruginosa及びB.cepaciaの色素形成を抑制することによって生じる。最後に、化合物82(
図35)は、ネアミン存在下においてS.aureusに対する増強効果を保持した。
【0228】
議論
以前、本出願人は、ハイスル-プットスクリ-ニングプラットフォ-ムを介して、インフルエンザA核タンパク質を標的とする小分子核種を首尾よく分離した(Kao et al.,Nature biotechnology,28(6):600-605(2010))。構造的に多様な小分子化合物の同じライブラリをスクリ-ニングした。バックグラウンドスクリ-ニング(抗生物質を含まないBHI培地によるスクリ-ニング)を最終濃度20μg/mLで実施することにより、直接細菌阻害を有する小分子化合物をスクリ-ニングから除外した。サブMIC抗生物質の存在下でのスクリ-ニングは、抗生物質と組み合わせて潜在的な細菌増殖阻害効果を有する小分子の同定を可能にする。抗生物質とのコンビナトリアル効果を示す化合物の上位10%をさらなる研究のために選択した。二重濃度二次スクリ-ニングを行った;化合物を100μg/mL及び10μg/mLの最終濃度で添加した。この方法は、一次スクリ-ニングからの偽陽性を減らし、成功の再現性を強化することによってスクリ-ニング結果の精度を高めた。
【0229】
二次スクリ-ンからの最上位の化合物をさらに分析した。Mu3中の化合物(化合物13)のMICを最初に評価した。試験した濃度の範囲は500μM~0.98μMであった。500μMより高いMICは決定されなかった。続いてMICの決定により、異なるアミノグリコシドに対する化合物13のチェッカ-ボ-ドアッセイを行い、アミノグリコシド結合効果を評価した。結合効果を評価するために、通常、部分抑制濃度(FIC)指数が用いられた(Meletiadis et al.,Antimicrobial agents and chemotherapy,54(2):602-609(2010))。0.5以下のFIC指数は相乗的であると考えられるが、実際のMICを決定することができない化合物のMICが500μMより高い場合には、増殖阻害に必要な抗生物質濃度が少なくとも4倍低下した場合、その化合物は増強効果を有すると考えられる。
【0230】
逐次スクリ-ニングプロセスを通じて、本出願人は、抗生物質増強剤の将来の化学的最適化のために、化合物ライブラリをリ-ド化合物に絞り込むことができた。上述したように、化合物13は、臨床設定で一般的に用いられている、アミノグリコシド、ゲンタマイシン、カナマイシン、アミカシン、ネオマイシン及びスペクチノマイシンと組み合わせて増強効果を示した。さらに、約50μMの化合物濃度では、抗生物質MICを、対応する臨床的なブレ-クポイント未満に減少させることができ、無効だった薬物をMRSA治療のために再び使用可能にすることができる。ネアミンは、臨床環境で使用されているすべてのアミノグリコシドに共通のコア構造を表している。さらに、新規なアミノグリコシド抗生物質スクリ-ニングのためのネアミン誘導体ライブラリを構築した。化合物13は、ネアミンでの増強効果は、増強効果がアミノグリコシドファミリ-中における広範なスペクトル特性であることをさらに示した。
【0231】
本出願人は、S.aureusの他の株が化合物13及びゲンタマイシンによる抗生物質増強効果と同様の観察をもたらすことを示した。ゲンタマイシン感受性にかかわらず、試験した全ての株は、化合物13の存在下でのゲンタマイシンに対する感受性の増強を実証した。これは、S.aureus感染に対して有用な抗生物質カクテル治療を提供する 。
【0232】
本出願人は、リ-ド化合物最適化スクリ-ニングにおいて、ゲンタマイシンとの併用によって増強効果をもたらすいくつかの強力な類似化合物を同定した。化合物13、17、36はゲンタマイシンの増強活性を示したが、Vero細胞MTTアッセイからの高い細胞傷害性を伴う。化合物19、20は、ゲンタマイシンによる有望な増強効果を保持しながら、より少ない細胞傷害性を有することが見出された。最後に、化合物82は、低い細胞傷害性を示すだけでなく、S.aureusに対するゲンタマイシンとの良好な増強効果も維持することが見出された。
【0233】
出願人は、化合物82の有効宿主範囲を、グラム陽性L.monocytogenes、E.faecalis及びS.pneumoniae、グラム陽性細菌、E.coliへと拡張した。出願人はまた、ホスト中におけるコロニ-化に重要なP.aeruginosa、及び、B.cepaciaにおける色素形成を抑制することにより、化合物82が、他のグラム陰性菌に対して病原性抑制を誘発することができることを示した。
【0234】
出願人はまた、潜在的な治療選択肢としての現在の抗生物質との併用効果とは別に、化合物のいくつかはそれ自体で毒性活性を抑制することができることも示した。化合物3、48、49は、hlaプロモ-タluxレポ-タアッセイにおいて、有意な抑制を示す。出願人は、化合物3を抗病原性として使用するという概念が、in vivoマウスモデルにおける臓器の最近負荷を抑制することができ、化合物アナログそれ自体もバクテリア感染に対する治療方法となり得ることを示した。化合物87などの化合物3の類似体も、hlaプロモ-タlux抑制を示し、化合物の抗ビルレンス特性を示唆している。
【0235】
出願人は、HTSを使用して細菌に対するアミノグリコシドとの増強効果を有する小分子化合物を単離することの成功を示す。このファミリ-の化合物は、それ自体が細菌の感染力を低下させるための抗ビルレンス剤として作用することもできる。この化合物は、抗生物質との併用効果を増大させ、抗毒性を増強し、細胞傷害性の低下をもたらす下流の化学的最適化に有用である。開示された化合物の生物学的活性は新規であり、抗ビルレンス剤としての使用と共に、一般的に使用される抗生物質の活性を増強するための商業的用途を提供する。
【0236】
上記の明細書において、開示された化合物、組成物及び方法は、その特定の形態に関連して記載されており、多くの詳細が説明のために提示されているが、開示された化合物組成物及び方法は、追加の形態を受け易いこと、並びに、本明細書に記載された詳細のいくつかは、本発明の基本原則から逸脱することなく、かなり変化し得ることを理解されたい。
【0237】
本明細書中に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。開示された化合物、組成物及び方法は、その精神又は本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態で実施することができ、したがって、開示された化合物、組成物及び方法の範囲を示すものとして、前記明細書よりはむしろ、添付の特許請求の範囲を参照すべきである。