(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】スライダ
(51)【国際特許分類】
F16H 19/04 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
F16H19/04 E
(21)【出願番号】P 2022174930
(22)【出願日】2022-10-31
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼本 力
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1690476(CN,A)
【文献】特開2015-132336(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0184151(US,A1)
【文献】特開2008-164076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構からの動力を伝達する伝達機構と、
前記伝達機構に一体に取り付けられている被案内部材と、
前記伝達機構に一体に取り付けられているピニオンギアと、
前記ピニオンギアに噛み合う第1ラックギアおよび第2ラックギアと、
前記第1ラックギアに対して固定され、前記被案内部材を案内する第1案内部材と、
前記第2ラックギアに対して固定され、前記第1案内部材に平行な状態で前記被案内部材を案内する第2案内部材と、
前記第1ラックギアおよび前記第1案内部材を保持する第1フレームと、
前記第2ラックギアおよび前記第2案内部材を保持する第2フレームと、を備え、
前記ピニオンギアは、前記伝達機構を介して前記駆動機構から伝達される動力により回転し、
前記第1フレームおよび前記第2フレームは、前記ピニオンギアの回転により、前記第1案内部材および前記第2案内部材に平行な移動軸に沿って互いに相対的に移動し、
前記第1ラックギア、前記第1案内部材および前記第1フレームは、前記移動軸の軸方向の位置が互いに重なり、
前記第2ラックギア、前記第2案内部材および前記第2フレームは、前記移動軸の軸方向の位置が互いに重なり、
前記移動軸の軸方向から見て、前記第1フレームと前記第2フレームとは互いに重ならないスライダ。
【請求項2】
前記第1案内部材は、前記第1ラックギアよりも前記移動軸の軸方向に長く、
前記第2案内部材は、前記第2ラックギアよりも前記移動軸の軸方向に長い、請求項1に記載のスライダ。
【請求項3】
前記ピニオンギアの回転軸の軸方向から見て、前記第1案内部材および前記第2案内部材は、前記第1フレームの内側面と前記第2フレームの内側面との間に位置している、請求項1に記載のスライダ。
【請求項4】
駆動機構からの動力を伝達する伝達機構と、
前記伝達機構に一体に取り付けられている被案内部材と、
前記伝達機構に一体に取り付けられているピニオンギアと、
前記ピニオンギアに噛み合う第1ラックギアおよび第2ラックギアと、
前記第1ラックギアに対して固定され、前記被案内部材を案内する第1案内部材と、
前記第2ラックギアに対して固定され、前記第1案内部材に平行な状態で前記被案内部材を案内する第2案内部材と、
前記第1ラックギアおよび前記第1案内部材を保持する第1フレームと、
前記第2ラックギアおよび前記第2案内部材を保持する第2フレームと、を備え、
前記ピニオンギアは、前記伝達機構を介して前記駆動機構から伝達される動力により回転し、
前記第1フレームおよび前記第2フレームは、前記ピニオンギアの回転により、前記第1案内部材および前記第2案内部材に平行な移動軸に沿って互いに相対的に移動し、
前記移動軸の軸方向から見て、前記第1フレームと前記第2フレームとは互いに重ならず、
前記第1案内部材および前記第2案内部材をそれぞれ複数備え、
前記ピニオンギアの回転軸を含み、かつ前記第1案内部材および前記第2案内部材に平行な平面を中間面と称した場合、
少なくとも1本の前記第1案内部材の中心軸は、前記中間面よりも前記第2ラックギア側に位置し、
少なくとも1本の前記第2案内部材の中心軸は、前記中間面よりも前記第1ラックギア側に位置する
、スライダ。
【請求項5】
駆動機構からの動力を伝達する伝達機構と、
前記伝達機構に一体に取り付けられている被案内部材と、
前記伝達機構に一体に取り付けられているピニオンギアと、
前記ピニオンギアに噛み合う第1ラックギアおよび第2ラックギアと、
前記第1ラックギアに対して固定され、前記被案内部材を案内する第1案内部材と、
前記第2ラックギアに対して固定され、前記第1案内部材に平行な状態で前記被案内部材を案内する第2案内部材と、
前記第1ラックギアおよび前記第1案内部材を保持する第1フレームと、
前記第2ラックギアおよび前記第2案内部材を保持する第2フレームと、を備え、
前記ピニオンギアは、前記伝達機構を介して前記駆動機構から伝達される動力により回転し、
前記第1フレームおよび前記第2フレームは、前記ピニオンギアの回転により、前記第1案内部材および前記第2案内部材に平行な移動軸に沿って互いに相対的に移動し、
前記移動軸の軸方向から見て、前記第1フレームと前記第2フレームとは互いに重ならず、
前記第1フレームおよび前記第2フレームの少なくとも一方は、
該第1フレームまたは該第2フレームの両端それぞれに配された一対のプーリと、 前記一対のプーリ間に懸架されると共に、前記伝達機構に対して固定されているベルトと、
前記ベルトにおける前記ピニオンギアとは反対側の位置に固定されているキャリッジと、をさらに備える
、スライダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式のスライダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンパクトに構成され、かつ変位量を最大限まで確保できる電動アクチュエータ(スライダ)が開示されている。当該スライダにおいては、筐体内の回転駆動源を付勢することによりピニオンを回転させ、これに噛合する第1のラックと第2のラックとをそれぞれ反対方向へと付勢する。この結果、第1のラックに連結されている第1の案内ロッドと第2のラックに連結されている第2の案内ロッドとがそれぞれ反対方向へと伸長し、第1の天板は筐体のほぼ倍のストロークまで移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているスライダでは、第1の天板の変位量自体は筐体の全長程度となる。このため、当該スライダで得られる変位量は十分でないという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、変位量を増大させたスライダを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係るスライダは、駆動機構からの動力を伝達する伝達機構と、前記伝達機構に一体的に取り付けられている被案内部材と、前記伝達機構に一体的に取り付けられているピニオンギアと、前記ピニオンギアに噛み合う第1ラックギアおよび第2ラックギアと、前記第1ラックギアに対して固定され、前記被案内部材を案内する第1案内部材と、前記第2ラックギアに対して固定され、前記第1案内部材に平行な状態で前記被案内部材を案内する第2案内部材と、前記第1ラックギアおよび前記第1案内部材を保持する第1フレームと、前記第2ラックギアおよび前記第2案内部材を保持する第2フレームと、を備え、前記ピニオンギアは、前記伝達機構を介して前記駆動機構から伝達される動力により回転し、前記1フレームおよび前記第2フレームは、前記ピニオンギアの回転により、前記第1案内部材および前記第2案内部材に平行な移動軸に沿って互いに相対的に移動し、前記移動軸の軸方向から見て、前記第1フレームと前記第2フレームとは互いに重ならない。
【0007】
上記の構成によれば、第1フレームおよび第2フレームが移動軸に沿って互いに相対的に移動する場合に、互いに衝突しない。このため、第1フレームおよび第2フレームは、互いに対向する位置から、移動軸に沿う方向における両側へ移動できる。したがって、スライダにおける変位量を増大させることができる。
【0008】
また、本発明の態様2に係るスライダは、態様1において、前記ピニオンギアの回転軸の軸方向から見て、前記第1案内部材および前記第2案内部材は、前記第1フレームの内側面と前記第2フレームの内側面との間に位置してよい。上記の構成によれば、スライダを小型化できる。
【0009】
また、本発明の態様3に係るスライダは、態様1または2において、前記第1案内部材および前記第2案内部材をそれぞれ複数備え、前記ピニオンギアの回転軸を含み、かつ前記第1案内部材および前記第2案内部材に平行な平面を中間面と称した場合、少なくとも1本の前記第1案内部材の中心軸は、前記中間面よりも前記第2ラックギア側に位置し、少なくとも1本の前記第2案内部材の中心軸は、前記中間面よりも前記第1ラックギア側に位置してよい。上記の構成によれば、スライダの剛性が向上する。
【0010】
また、本発明の態様4に係るスライダは、態様1から3のいずれかにおいて、前記第1フレームおよび前記第2フレームの少なくとも一方は、該第1フレームまたは該第2フレームの両端それぞれに配された一対のプーリと、前記一対のプーリ間に懸架されると共に、前記伝達機構に対して固定されているベルトと、前記ベルトにおける前記ピニオンギアとは反対側の位置に固定されているキャリッジと、をさらに備えてよい。上記の構成によれば、さらに大きな変位量を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、変位量を増大させたスライダを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1に係るスライダの構成を示す斜視図である。
【
図2】実施形態1に係るスライダの構成を示す分解斜視図である。
【
図3】実施形態1に係るスライダが備えるセンターブロックの構成を示す斜視図である。
【
図4】実施形態1に係るスライダを第2フレームの移動軸の軸方向から見た平面図である。
【
図5】実施形態1に係るスライダを備える装置の例を示す図である。
【
図6】実施形態2に係るスライダの構成を示す斜視図である。
【
図7】実施形態2に係るスライダが備えるセンターブロックの構成を示す斜視図である。
【
図8】実施形態3に係るスライダの構成を示す図である。
【
図9】実施形態3に係るスライダの動作を示す図である。
【
図10】実施形態3の変形例に係るスライダの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0014】
(スライダの構成)
図1は、実施形態1に係るスライダ1の構成を示す斜視図である。
図2は、スライダ1の構成を示す分解斜視図である。
図1および
図2に示すように、スライダ1は、センターブロック10、第1ラックギア21、第2ラックギア22、ガイドシャフト30、第1フレーム41、および第2フレーム42を備える。
【0015】
図3は、センターブロック10の構成を示す斜視図である。
図3には、センターブロック10の、
図1および
図2に現れている面とは異なる面が現れている。
図3に示すように、センターブロック10は、伝達機構11、ピニオンギア12、軸受13(被案内部材)、およびフィンガーガード14を備える。
【0016】
スライダ1に含まれる各部を構成する材料については特に制限されず、当該各部に要求される強度、重量、および製造コスト等を考慮して適宜決定されればよい。
【0017】
伝達機構11は、駆動機構15からの動力をピニオンギア12に伝達する。駆動機構15は、例えば通常のモーター、またはサーボモーターである。駆動機構15は、スライダ1に含まれる機構であってもよく、スライダ1とは別の機構であってもよい。伝達機構11は、駆動機構15からの駆動力が入力される入力軸(不図示)と、該駆動力を出力する出力軸(不図示)とを有する。ピニオンギア12は、伝達機構11の出力軸に一体的に取り付けられている。ピニオンギア12は、出力軸と一体的に回転する。
【0018】
伝達機構11は、例えば入力される動力の回転数を減少させて出力する減速機であってよい。具体的には、伝達機構11は、例えばウォーム減速機であってよい。伝達機構11がウォーム減速機である場合、伝達機構11の出力軸に外力を加えても、当該出力軸は回転しない。このため、ピニオンギア12に加わる力に起因する、ピニオンギア12の回転を防止できる。したがって、当該回転を防止する為のブレーキ機構が不要となり、スライダ1の構成を簡略化できる。また、伝達機構11として使用するウォーム減速機の特性を異ならせることで、ピニオンギア12の回転速度およびトルクといった特性を異ならせることができる。
【0019】
第1ラックギア21および第2ラックギア22は、ピニオンギア12に噛み合うラックギアである。第1ラックギア21および第2ラックギア22は、互いに対向するように配される。ピニオンギア12は、第1ラックギア21と第2ラックギア22との間に位置する。ピニオンギア12が回転することで、第1ラックギア21および第2ラックギア22は、ピニオンギア12に対して相対的に移動する。
【0020】
ガイドシャフト30は、第1ラックギア21および第2ラックギア22に平行なシャフトである。ガイドシャフト30は、第1ラックギア21に対する相対的な位置が固定されている第1ガイドシャフト31,32,33(第1案内部材)と、第2ラックギア22に対する相対的な位置が固定されている第2ガイドシャフト34,35,36(第2案内部材)とを含む。
【0021】
ガイドシャフト30は、
図1などにおいては中空の円筒形状を有する。ただし、ガイドシャフト30の形状は、軸方向に沿って一様であればよく、例えば中実の円柱形状、または四角柱形状などであってもよい。
【0022】
第1フレーム41は、第1ラックギア21および第1ガイドシャフト31,32,33を保持する。具体的には、第1フレーム41は、ガイドシャフト30に平行な側板41aと、ガイドシャフト30に沿う方向における側板41aの両端に位置する端部板41b,41cとを備える。第1フレーム41は、第1ラックギア21を、側板41aに沿う状態で保持する。第1フレーム41は、第1ガイドシャフト31,32,33を、端部板41b,41c間で保持する。
【0023】
第2フレーム42は、第2ラックギア22および第2ガイドシャフト34,35,36を保持する。具体的には、第2フレーム42は、ガイドシャフト30に平行な側板42aと、ガイドシャフト30に沿う方向における側板42aの両端に位置する端部板42b,42cとを備える。第2フレーム42は、第2ラックギア22を、側板42aに沿う状態で保持する。第2フレーム42は、第2ガイドシャフト34,35,36を、端部板42b,42c間で保持する。
【0024】
軸受13は、伝達機構11に一体的に取り付けられている軸受である。軸受13は、第1ガイドシャフト31,32,33および第2ガイドシャフト34,35,36が挿通される孔部13aを有する板状の部材である。軸受13を含むセンターブロック10は、孔部13aに挿通されたガイドシャフト30に案内されて、第1フレーム41および第2フレーム42に対して相対的に移動する。このとき、第1フレーム41に対する軸受13の移動と、第2フレーム42に対する軸受13の移動とは互いに逆方向である。
【0025】
第1フレーム41および第2フレーム42に対するセンターブロック10の移動について、第1フレーム41を基準とすれば、センターブロック10および第2フレーム42が、ガイドシャフト30に平行な移動軸において、第1フレーム41に対して相対的に移動するものと表現できる。また、当該移動について、センターブロック10の位置を基準とすれば、第1フレーム41および第2フレーム42が、ガイドシャフト30に平行な移動軸において、センターブロック10に対して互いに逆方向に移動するものと表現できる。換言すれば、第1フレーム41および第2フレーム42は、ピニオンギア12の回転により、第1ガイドシャフト31,32,33および第2ガイドシャフト34,35,36に平行な移動軸に沿って互いに相対的に移動する。
【0026】
フィンガーガード14は、ガイドシャフト30に平行な方向におけるセンターブロック10の両端に設けられてよい。フィンガーガード14は、第1ラックギア21および第2ラックギア22とピニオンギア12との噛合部に指が入らないようにする安全のための部材である。
【0027】
この他、センターブロック10は、軸受13とガイドシャフト30との間に潤滑油を供給する潤滑ユニットを備えていてもよい。潤滑ユニットは、例えば、フィンガーガード14の周辺に位置してよい。
【0028】
図4は、スライダ1を第2フレーム42の移動軸の軸方向から見た平面図である。
図4に示すように、第2フレーム42の移動軸の軸方向から見て、第1フレーム41と第2フレーム42とは互いに重ならない。このため、第2フレーム42は、移動軸に沿って移動する場合に、第1フレーム41と衝突しない。したがって、第2フレーム42は、第1フレーム41と対向する位置から、移動軸に沿う方向における両側へ移動できる。
【0029】
第2フレーム42が第1フレーム41と対向する位置から一方向へのみ移動するスライダを、従来のスライダと称する。スライダ1は、従来のスライダと比較して、変位量が2倍近くに増大している。換言すれば、一定の変位量を得るためのスライダ1のサイズは、同じ変位量を得るための従来のスライダのサイズの半分強である。これにより、従来のスライダと比較して、小型化および軽量化されたスライダを実現できる。したがって、スライダ1を設置、輸送および保管するためのコストが低減される。また、スライダ1においては、個々の部材の長さが短くなるため、長い部材を加工するための特殊な工作機を必要とせずスライダ1を製造可能となる。
【0030】
特に、スライダ1においては、ガイドシャフト30および軸受13がシンプルな構造である。このため、スライダ1は、後述するスライダ2等と比較しても、さらに小型化することが可能である。
【0031】
図4に示すように、第1フレーム41の側板41aは、内側面41dと外側面41eとを有する。また、第2フレーム42の側板42aは、内側面42dと外側面42eとを有する。
図4において、第1フレーム41および第2フレーム42は、内側面41dと内側面42dとが互いに対向するように配されている。このため、側板41aの内側面41dは、第1フレーム41の内側面であると言える。また、側板42aの内側面42dは、第2フレーム42の内側面であると言える。
【0032】
図4において、第1ガイドシャフト31,32,33および第2ガイドシャフト34,35,36は、内側面41dと内側面42dとの間に位置している。このため、第1ガイドシャフト31,32,33および第2ガイドシャフト34,35,36のうち1以上が内側面41dと内側面42dとの間の空間の外部に位置する場合と比較して、スライダ1を小型化できる。
【0033】
また、
図4において、センターブロック10は、第1フレーム41および第2フレーム42と隣接している。すなわち、センターブロック10は、第1フレーム41と第2フレーム42との間の空間の外部に位置している。このため、センターブロック10を第1フレーム41と第2フレーム42との間に収容する場合と比較して、第1フレーム41および第2フレーム42を小型化できる。
【0034】
図4において、中間面Cは、ピニオンギア12の回転軸を含み、かつガイドシャフト31~36に平行な平面である。
図4に示すように、第1ガイドシャフト31,32,33のうち、第1ガイドシャフト32の中心軸は、中間面Cよりも第2ラックギア22側に位置する。また、第2ガイドシャフト34,35,36のうち、第2ガイドシャフト35の中心軸は、中間面Cよりも第1ラックギア21側に位置する。
【0035】
ピニオンギア12が回転するとき、ピニオンギア12は、第1ラックギア21および第2ラックギア22に対して、ピニオンギア12から離隔させる方向の力を加える。ガイドシャフト32,35の中心軸が上記のとおり位置することで、ピニオンギア12が第1ラックギア21および第2ラックギア22に加える力に対する、スライダ1の剛性が向上する。
【0036】
第1ガイドシャフト31,32,33を保持するために、端部板41bは、中間面Cよりも第1ラックギア21側の領域と、中間面Cよりも第2ラックギア22側の領域とを有する。また、第2ガイドシャフト34,35,36を保持するために、端部板42bは、中間面Cよりも第2ラックギア22側の領域と、中間面Cよりも第1ラックギア21側の領域とを有する。このため、端部板41bおよび端部板42bは、1枚の板をZ字形状に分割したかのような形状を有する。換言すれば、端部板41bと端部板42bとの境界線は、中間面Cと交差する。同様に、端部板41cおよび端部板42cも、1枚の板をZ字形状に分割したかのような形状を有する。
【0037】
第1フレーム41および第2フレーム42のそれぞれが保持するガイドシャフト30の数は、複数であればよく、3本に限定されない。第1フレーム41および第2フレーム42のそれぞれが保持するガイドシャフト30の数に関わらず、第1フレーム41が保持するガイドシャフト30の少なくとも一本の中心軸は、中間面Cよりも第2ラックギア22側に位置してよい。また、第2フレーム42が保持するガイドシャフトの少なくとも一本の中心軸は、中間面Cよりも第1ラックギア21側に位置してよい。
【0038】
一方で、第1フレーム41が保持するガイドシャフト30の少なくとも一本の中心軸は、中間面Cよりも第1ラックギア21側に位置してよい。また、第2フレーム42が保持するガイドシャフトの少なくとも一本の中心軸は、中間面Cよりも第2ラックギア22側に位置してよい。すなわち、第1フレーム41は、中間面Cよりも第1ラックギア21側に中心軸が位置するガイドシャフト30と、中間面Cよりも第2ラックギア22側に中心軸が位置するガイドシャフト30とを、少なくとも1本ずつ保持していてよい。第2フレーム42も、中間面Cよりも第1ラックギア21側に中心軸が位置するガイドシャフト30と、中間面Cよりも第2ラックギア22側に中心軸が位置するガイドシャフト30とを、少なくとも1本ずつ保持していてよい。
【0039】
ただし、スライダ1の使用目的によっては、ピニオンギア12から第1ラックギア21および第2ラックギア22に加わる力に対するスライダ1の強度があまり必要とされない場合もある。そのような場合であれば、第1フレーム41が保持する全てのガイドシャフト30が、中間面Cよりも第1ラックギア21側に位置してもよい。また、第2フレーム42が保持する全てのガイドシャフト30が、中間面Cよりも第2ラックギア22側に位置してもよい。さらに、そのような場合であれば、第1フレーム41および第2フレーム42が保持するガイドシャフト30の数は、それぞれ2本であってもよい。
【0040】
(スライダを備える装置の例)
図5は、スライダ1を備える装置の例を示す図である。
図5には、スライダ1を備えるリフト100が示されている。
図5において、符号501はリフト100の斜視図である。リフト100は、複数の固定フレーム110と、固定フレーム110に対して移動可能な可動フレーム120とを備える。
【0041】
図5において、符号502は、固定フレーム110に垂直、かつスライダ1の近傍の平面における断面図である。リフト100においては、スライダ1の第1フレーム41が固定フレーム110に取り付けられ、第2フレーム42が可動フレーム120に取り付けられる。第2フレーム42が第1フレーム41に対して移動することで、可動フレーム120が固定フレーム110に対して移動する。
【0042】
リフト100において、スライダ1は、固定フレーム110の間の空間115に位置する。このような空間は、従来のリフトにおいては利用できないデッドスペースとなっていた。リフト100において必要とされる変位量を得るためのスライダ1のサイズは、同じ変位量を得るための従来のスライダよりも小型化されている。小型化されたスライダ1をこのような空間に収容することで、リフト100自体も小型化することができる。また、スライダ1の周囲に生じる余剰空間に、スライダ1の変位量などを検出するセンサを取り付けることができる。
【0043】
リフト100を一般的なリフトとした場合、固定フレーム110の幅は、50mm~60mm程度である。
図5の符号502に示したように、デッドスペースである空間115にスライダ1を完全に収容する場合、移動軸に沿う方向から見たスライダ1の一辺も50mm程度とすればよい。ただし、空間115にスライダ1を完全に収容できず、一部のみを収容する場合であっても、デッドスペースを活用する効果を得ることはできる。
【0044】
(スライダを備える装置の別の例)
上述したとおり、スライダ1によれば、従来のスライダと同じサイズであれば、従来のスライダと比較して大きい変位量を実現できる。このようなスライダ1は、複数の装置間、または隔壁を跨いでの、物資等の搬送に好適に用いることができる。スライダ1は、例えばクリーンルームと外部空間との間のパスボックス、または与圧室と外部空間との間の圧力調整室に設けられてよい。この場合、クリーンルームまたは与圧室と外部空間との間で、スライダ1を用いて部品等を受け渡すことができる距離が長くなる。したがって、隔壁をまたぐレールなどが不要になるので、容易に設置することができる。また、室内及び外部空間の荷受け架台を省略できる。
【0045】
また、上述した例は、第1フレーム41を固定し、第2フレーム42を第1フレーム41に対して移動させるものであった。しかし、スライダ1は、センターブロック10を固定し、第1フレーム41および第2フレーム42の両方を移動させる装置にも適用可能である。そのような適用の例として、両開き式の自動ドアを開閉させる駆動機構、物を掴むチャックもしくはグリッパ、または重量物を昇降させるジャッキなどが挙げられる。
【0046】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0047】
図6は、実施形態2に係るスライダ2の構成を示す斜視図である。
図6に示すように、スライダ2は、センターブロック50、レール60、第1フレーム71および第2フレーム72を備える点で、スライダ1と相違する。
【0048】
レール60は、第1ラックギア21および第2ラックギア22に平行なレールである。レール60は、第1ラックギア21に対して固定されている第1レール61,62(第1案内部材)と、第2ラックギア22に対して固定されている第2レール63,64(第2案内部材)とを含む。
【0049】
第1フレーム71は、第1レール61,62および第1ラックギア21を、互いの位置を固定した状態で保持する。具体的には、第1フレーム71は、側板71aを有する。第1ラックギア21、および第1レール61,62は、側板71aに沿って設けられる。
【0050】
第2フレーム72は、第2レール63,64および第2ラックギア22を、互いの位置を固定した状態で保持する。具体的には、第2フレーム72は、側板72aを有する。第2ラックギア22、および第2レール63,64は、側板72aに沿って設けられる。
【0051】
具体的には、側板71aおよび側板72aはそれぞれ、互いに対向する内側面を有する。側板71aの内側面は、第1フレーム71の内側面であると言える。また、側板72aの内側面は、第2フレーム72の内側面であると言える。第1レール61,62は、側板71aの内側面に沿って設けられる。第2レール63,64は、側板72aの内側面に沿って設けられる。すなわち、レール60は、第1フレーム71の内側面と第2フレーム72の内側面との間に位置している。
【0052】
また、第1フレーム71は、レール60に沿う方向における側板71aの両端に位置する端部板71b,71cを有していてよい。また、第2フレーム72は、レール60に沿う方向における側板72aの両端に位置する端部板72b,72cを有していてよい。
【0053】
ただし、第1フレーム41において第1ガイドシャフト31,32,33の保持に寄与していた端部板41b,41cとは異なり、第1フレーム71において端部板71b,71cは第1レール61,62の保持に寄与しない。また、第2フレーム42において第2ガイドシャフト34,35,36の保持に寄与していた端部板42b,42cとは異なり、第2フレーム72において端部板72b,72cは第2レール63,64の保持に寄与しない。このため、端部板71b,71c,72b,72cは、レール60の配置に無関係にデザインされてよい。または、端部板71b,71c,72b,72cは省略されてもよい。
【0054】
上記の例では、第1フレーム71および第2フレーム72は、それぞれ2本のレール60を保持していた。しかし、第1フレーム71および第2フレーム72が保持するレール60の数は、1本であってもよく、3本以上であってもよい。
【0055】
図7は、センターブロック50の構成を示す斜視図である。
図7に示すように、センターブロック50は、伝達機構51、ピニオンギア52、嵌入部53(被案内部材)、およびフィンガーガード54を備える。伝達機構51、ピニオンギア52、およびフィンガーガード54は、センターブロック10における伝達機構11、ピニオンギア12、およびフィンガーガード14と同じである。
【0056】
嵌入部53は、伝達機構51に一体的に取り付けられている部材である。嵌入部53は、第1レール61,62および第2レール63,64が嵌入される溝部53aを有する。嵌入部53を含むセンターブロック50は、溝部53aに嵌入されたレール60に案内されて、第1フレーム71および第2フレーム72に対して相対的に移動する。レール60と嵌入部53との組み合わせとして、例えばリニアモーションガイド(登録商標)を用いることができる。
【0057】
第1フレーム71および第2フレーム72に対するセンターブロック50の移動について、第1フレーム71を基準とすれば、センターブロック50および第2フレーム72が、レール60に平行な移動軸において、第1フレーム71に対して相対的に移動するものと表現できる。また、当該移動について、センターブロック50の位置を基準とすれば、第1フレーム71および第2フレーム72が、レール60に平行な移動軸において、センターブロック50に対して互いに逆方向に移動するものと表現できる。
【0058】
スライダ1における第1フレーム41および第2フレーム42と同様、スライダ2において、第2フレーム72の移動軸の軸方向から見て、第1フレーム71と第2フレーム72とは互いに重ならない。このため、第2フレーム72は、第1フレーム71と対向する位置から、移動軸に沿う方向における両側へ移動できる。
【0059】
スライダ2によっても、スライダ1と同様、従来のスライダと比較して、小型化および軽量化されたスライダを実現できる。また、スライダ2は、スライダ1と比較して、高剛性、高精度、かつ高速に動作可能である。このため、スライダ2は、特に1m以上の変位量が必要とされるような、中~大型の装置に好適に利用可能である。
【0060】
〔実施形態3〕
図8は、実施形態3に係るスライダ3の構成を示す図である。
図8に示すように、スライダ3は、スライダ1の構成に加えて、プーリ81、ベルト82、およびキャリッジ83を備える。
【0061】
プーリ81は、第2フレーム42の両端それぞれに配された一対のプーリである。ベルト82は、プーリ81間に懸架されているベルトである。ベルト82の両端は、センターブロック10に固定されている。
【0062】
キャリッジ83は、スライダ3による動作の対象が装着される器具である。キャリッジ83は、ベルト82において、ピニオンギア12とは反対側の位置に固定されている。具体的には、キャリッジ83は、ベルト82において、ピニオンギア12とは対称な位置に固定されていてよい。ただし、キャリッジ83の位置は、ピニオンギア12とは反対側と見なすことができる位置であれば、必ずしも対称な位置でなくてもよい。第2フレーム42が第1フレーム41に対して相対的に移動する場合、ピニオンギア12は、第2フレーム42に対して、第1フレーム41に対する第2フレーム42の移動方向とは逆方向に移動する。ベルト82は、センターブロック10に固定されているため、キャリッジ83は、第2フレーム42に対して、第1フレーム41に対する第2フレーム42の移動方向と同じ方向に移動する。
【0063】
図9は、スライダ3の動作を示す図である。
図9において、符号901は、第2フレーム42が第1フレーム41に対して、移動軸に沿う方向における一方の側に移動した状態を示す図である。符号902は、第2フレーム42が第1フレーム41に対して、移動軸に沿う方向における他方の側に移動した状態を示す図である。以下の説明では、符号901における、第1フレーム41に対する第2フレーム42の移動方向を左方向と称する。また、符号902における、第1フレーム41に対する第2フレーム42の移動方向を右方向と称する。
【0064】
図8に示したように、第2フレーム42が第1フレーム41と対向した状態では、センターブロック10およびキャリッジ83は、第2フレーム42の中央部に位置する。
図9の符号901に示すように、第2フレーム42が第1フレーム41に対して左方向へ移動すると、センターブロック10は、第2フレーム42の中央部から右方向へ移動する。その結果、キャリッジ83は、第2フレーム42の中央部から左方向へ移動する。
図9の符号902に示すように、第2フレーム42が第1フレーム41に対して右方向へ移動すると、センターブロック10は、第2フレーム42の中央部から左方向へ移動する。その結果、キャリッジ83は、第2フレーム42の中央部から右方向へ移動する。
【0065】
第1フレーム41に対するキャリッジ83の変位量は、第1フレーム41に対する第2フレーム42の変位量よりも大きい。したがって、スライダ3が備えるキャリッジ83によれば、スライダ1よりもさらに大きな変位量を得ることができる。
【0066】
(変形例)
図10は、実施形態3の変形例に係るスライダ3Aの構成を示す図である。スライダ3においては、第2フレーム42にプーリ81、ベルト82、およびキャリッジ83が設けられていた。スライダ3Aにおいては、第1フレーム41にも、プーリ81、ベルト82、およびキャリッジ83が設けられている。
【0067】
スライダ3Aにおいて、第1フレーム41に設けられたキャリッジ83に対する、第2フレーム42に設けられたキャリッジ83の変位量は、第1フレーム41に対する、第2フレーム42に設けられたキャリッジ83の変位量よりもさらに大きい。したがって、スライダ3Aが備えるキャリッジ83によれば、スライダ3よりもさらに大きな変位量を得ることができる。
【0068】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1,2,3,3A スライダ
11、51 伝達機構
12、52 ピニオンギア
13 軸受(被案内部材)
21 第1ラックギア
22 第2ラックギア
31,32,33 第1ガイドシャフト(第1案内部材)
34,35,36 第2ガイドシャフト(第2案内部材)
41、71 第1フレーム
41d 内側面
42、72 第2フレーム
42d 内側面
53 嵌入部(被案内部材)
61,62 第1レール(第1案内部材)
63,64 第2レール(第2案内部材)
81 プーリ
82 ベルト
83 キャリッジ