(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】除雪車及び除雪車の制御方法
(51)【国際特許分類】
B60K 17/28 20060101AFI20241015BHJP
E01H 5/09 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
B60K17/28 D
E01H5/09 Z
(21)【出願番号】P 2022177560
(22)【出願日】2022-11-04
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591117631
【氏名又は名称】株式会社NICHIJO
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森谷 建
(72)【発明者】
【氏名】西田 佳緒理
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-268535(JP,A)
【文献】特開2001-277879(JP,A)
【文献】国際公開第2019/186822(WO,A1)
【文献】特開2013-124504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/28
E01H 5/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雪を掻き集めるオーガ及び前記オーガによって掻き集められた雪を吐出させるブロワに、原動機からの回転動力が動力伝達経路を介して入力される除雪車であって、
前記動力伝達経路上に位置し、前記原動機からの動力を動力伝達方向下流側に伝達する接続状態と前記原動機からの動力を動力伝達方向下流側に伝達しない切断状態とに切り替え可能な第1クラッチと、
前記第1クラッチの下流側の前記動力伝達経路上に位置し、前記第1クラッチからの動力をオーガ駆動用動力及びブロワ駆動用動力に分割し、前記オーガ駆動用動力を伝達するオーガ駆動用動力伝達経路及び前記ブロワ駆動用動力を伝達するブロワ駆動用動力伝達経路に前記動力伝達経路を分岐させる動力分割器と、
前記オーガ駆動用動力伝達経路上に位置し、前記オーガ駆動用動力を動力伝達方向下流側に伝達する接続状態と前記オーガ駆動用動力を動力伝達方向下流側に伝達しない切断状態とに切り替え可能な第2クラッチと、
前記第1クラッチの前記接続状態と前記切断状態の切り替えを行う第1クラッチアクチュエータと、
前記第2クラッチの前記接続状態と前記切断状態の切り替えを行う第2クラッチアクチュエータと、
前記原動機の回転数を検知する第1センサと、
前記第1クラッチから前記第2クラッチに向かう動力又は前記動力分割器から前記ブロワに向かう動力を伝達する第1回転機械要素の回転数を検知する第2センサと、
前記第2クラッチから前記オーガに向かう動力を伝達する第2回転機械要素の回転数を検知する第3センサと、
前記第1クラッチアクチュエータ及び前記第2クラッチアクチュエータを制御する制御器と、を備え、
前記制御器は、
前記第1クラッチ及び前記第2クラッチが前記接続状態にあるときの前記第1回転機械要素の回転数であって、前記第1センサにより検知される前記原動機の回転数に対応する前記第1回転機械要素の回転数である第1基準回転数と、前記第2センサが検知した前記第1回転機械要素の回転数との差分である第1滑り量が所定の閾値を超過すると前記第1クラッチを前記切断状態に切り替え、
前記第1クラッチ及び前記第2クラッチが前記接続状態にあるときの前記第2回転機械要素の回転数であって、前記第1センサにより検知される前記原動機の回転数に対応する前記第2回転機械要素の回転数である第2基準回転数と、前記第3センサが検知した前記第2回転機械要素の回転数との差分である第2滑り量が所定の閾値を超過すると前記第2クラッチを前記切断状態に切り替える、除雪車。
【請求項2】
前記第1クラッチの下流側且つ前記動力分割器の上流側の前記動力伝達経路上に位置し、作用するトルクが所定の閾値を超過したときはトルクの伝達を抑制し、作用するトルクが所定の閾値に収まるとトルクの伝達の抑制を解除するトルクリミッタを備える、請求項1に記載の除雪車。
【請求項3】
乗務員室と、
前記乗務員室に位置し、前記切断状態にある前記第1クラッチ又は前記第2クラッチを前記接続状態に切り替える復帰指令を受け付けるための入力器と、を更に備え、
前記制御器は、前記入力器が前記復帰指令を受け付けると、前記切断状態にある前記第1クラッチ又は前記第2クラッチを前記接続状態に切り替える、請求項1又は2に記載の除雪車。
【請求項4】
雪を掻き集めるオーガ及び前記オーガによって掻き集められた雪を吐出させるブロワに、原動機からの回転動力が動力伝達経路を介して入力される除雪車の制御方法であって、
前記除雪車は、
前記動力伝達経路上に位置し、前記原動機からの動力を動力伝達方向下流側に伝達する接続状態と前記原動機からの動力を動力伝達方向下流側に伝達しない切断状態とに切り替え可能な第1クラッチと、
前記第1クラッチの下流側の前記動力伝達経路上に位置し、前記第1クラッチからの動力をオーガ駆動用動力及びブロワ駆動用動力に分割し、前記オーガ駆動用動力を伝達するオーガ駆動用動力伝達経路及び前記ブロワ駆動用動力を伝達するブロワ駆動用動力伝達経路に前記動力伝達経路を分岐させる動力分割器と、
前記オーガ駆動用動力伝達経路上に位置し、前記オーガ駆動用動力を動力伝達方向下流側に伝達する接続状態と前記オーガ駆動用動力を動力伝達方向下流側に伝達しない切断状態とに切り替え可能な第2クラッチと、
前記第1クラッチから前記第2クラッチに向かう動力又は前記動力分割器から前記ブロワに向かう動力を伝達する第1回転機械要素と、
前記第2クラッチから前記オーガに向かう動力を伝達する第2回転機械要素と、を備え、
前記原動機、前記第1回転機械要素及び前記第2回転機械要素の回転数を検知し、
前記第1クラッチ及び前記第2クラッチが前記接続状態にあるときの前記第1回転機械要素の回転数であって、検知した前記原動機の回転数に対応する前記第1回転機械要素の回転数である第1基準回転数を算出し、
前記第1基準回転数と検知した前記第1回転機械要素の回転数との差分である第1滑り量を算出し、
前記第1滑り量が所定の閾値を超過すると前記第1クラッチを前記切断状態に切り替え、
前記第1クラッチ及び前記第2クラッチが前記接続状態にあるときの前記第2回転機械要素の回転数であって、検知した前記原動機の回転数に対応する前記第2回転機械要素の回転数である第2基準回転数を算出し、
前記第2基準回転数と検知した前記第2回転機械要素の回転数との差分である第2滑り量を算出し、
前記第2滑り量が所定の閾値を超過すると前記第2クラッチを前記切断状態に切り替える、除雪車の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除雪車及び除雪車の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、除雪車において、シャーピンを使用することなく、異常トルクによるオーガ、ブロア、エンジン等の機械的損傷を防止可能な、変速装置の制御装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この除雪車は、変速機の入力軸の回転数を計測する入力軸回転センサと変速機の出力軸の回転数を計測する出力軸回転センサの計測値に差分がでると、クラッチのギアへの係合を解除する。これによって、異常トルクによるオーガ、ブロア、エンジン等の機械的損傷を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の除雪車は、クラッチのギアへの係合を解除することにより、オーガ及びブロアが同時に停止し、掻き集めた雪が車体内に滞留し易かった。そのため、作業再開前に、滞留した雪の排出を要するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のある態様に係る除雪車は、雪を掻き集めるオーガ及び前記オーガによって掻き集められた雪を吐出させるブロワに、原動機からの回転動力が動力伝達経路を介して入力される除雪車であって、前記動力伝達経路上に位置し、前記原動機からの動力を動力伝達方向下流側に伝達する接続状態と前記原動機からの動力を動力伝達方向下流側に伝達しない切断状態とに切り替え可能な第1クラッチと、前記第1クラッチの下流側の前記動力伝達経路上に位置し、前記第1クラッチからの動力をオーガ駆動用動力及びブロワ駆動用動力に分割し、前記オーガ駆動用動力を伝達するオーガ駆動用動力伝達経路及び前記ブロワ駆動用動力を伝達するブロワ駆動用動力伝達経路に前記動力伝達経路を分岐させる動力分割器と、前記オーガ駆動用動力伝達経路上に位置し、前記オーガ駆動用動力を動力伝達方向下流側に伝達する接続状態と前記オーガ駆動用動力を動力伝達方向下流側に伝達しない切断状態とに切り替え可能な第2クラッチと、前記第1クラッチの前記接続状態と前記切断状態の切り替えを行う第1クラッチアクチュエータと、前記第2クラッチの前記接続状態と前記切断状態の切り替えを行う第2クラッチアクチュエータと、前記原動機の回転数を検知する第1センサと、前記第1クラッチから前記第2クラッチに向かう動力又は前記動力分割器から前記ブロワに向かう動力を伝達する第1回転機械要素の回転数を検知する第2センサと、前記第2クラッチから前記オーガに向かう動力を伝達する第2回転機械要素の回転数を検知する第3センサと、前記第1クラッチアクチュエータ及び前記第2クラッチアクチュエータを制御する制御器と、を備え、前記制御器は、前記第1クラッチ及び前記第2クラッチが前記接続状態にあるときの前記第1回転機械要素の回転数であって、前記第1センサにより検知される前記原動機の回転数に対応する前記第1回転機械要素の回転数である第1基準回転数と、前記第2センサが検知した前記第1回転機械要素の回転数との差分である第1滑り量が所定の閾値を超過すると前記第1クラッチを前記切断状態に切り替え、前記第1クラッチ及び前記第2クラッチが前記接続状態にあるときの前記第2回転機械要素の回転数であって、前記第1センサにより検知される前記原動機の回転数に対応する前記第2回転機械要素の回転数である第2基準回転数と、前記第3センサが検知した前記第2回転機械要素の回転数との差分である第2滑り量が所定の閾値を超過すると前記第2クラッチを前記切断状態に切り替える。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のある態様に係る除雪車の制御方法は、雪を掻き集めるオーガ及び前記オーガによって掻き集められた雪を吐出させるブロワに、原動機からの回転動力が動力伝達経路を介して入力される除雪車の制御方法であって、前記除雪車は、前記動力伝達経路上に位置し、前記原動機からの動力を動力伝達方向下流側に伝達する接続状態と前記原動機からの動力を動力伝達方向下流側に伝達しない切断状態とに切り替え可能な第1クラッチと、前記第1クラッチの下流側の前記動力伝達経路上に位置し、前記第1クラッチからの動力をオーガ駆動用動力及びブロワ駆動用動力に分割し、前記オーガ駆動用動力を伝達するオーガ駆動用動力伝達経路及び前記ブロワ駆動用動力を伝達するブロワ駆動用動力伝達経路に前記動力伝達経路を分岐させる動力分割器と、前記オーガ駆動用動力伝達経路上に位置し、前記オーガ駆動用動力を動力伝達方向下流側に伝達する接続状態と前記オーガ駆動用動力を動力伝達方向下流側に伝達しない切断状態とに切り替え可能な第2クラッチと、前記第1クラッチから前記第2クラッチに向かう動力又は前記動力分割器から前記ブロワに向かう動力を伝達する第1回転機械要素と、前記第2クラッチから前記オーガに向かう動力を伝達する第2回転機械要素と、を備え、前記原動機、前記第1回転機械要素及び前記第2回転機械要素の回転数を検知し、前記第1クラッチ及び前記第2クラッチが前記接続状態にあるときの前記第1回転機械要素の回転数であって、検知した前記原動機の回転数に対応する前記第1回転機械要素の回転数である第1基準回転数を算出し、前記第1基準回転数と検知した前記第1回転機械要素の回転数との差分である第1滑り量を算出し、前記第1滑り量が所定の閾値を超過すると前記第1クラッチを前記切断状態に切り替え、前記第1クラッチ及び前記第2クラッチが前記接続状態にあるときの前記第2回転機械要素の回転数であって、検知した前記原動機の回転数に対応する前記第2回転機械要素の回転数である第2基準回転数を算出し、前記第2基準回転数と検知した前記第2回転機械要素の回転数との差分である第2滑り量を算出し、前記第2滑り量が所定の閾値を超過すると前記第2クラッチを前記切断状態に切り替える。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、第2クラッチを切断してオーガを停止させたときにブロワを作動させたままの状態にすることができる。これによって、雪の滞留を抑制し、除雪作業を迅速に再開することができるという効果を奏する。また、第1センサを第1滑り量の算出及び第2滑り量の算出に用いる入力側のセンサとして共用することができ、トルクリミッタの入力軸及び第2クラッチの入力軸の回転数を検知する構成を簡素にすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る除雪車の構成例を示す側面図である。
【
図3】
図1の除雪車の動力伝達機構の構成例を概略的に示す平面図である。
【
図4】
図1の除雪車のトルクリミッタの構成例を示す断面図である。
【
図5】
図1の除雪車の制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
【
図6】
図1の除雪車の動作例を示すフローチャートであり、第1クラッチの切断制御を示すフローチャートである。
【
図7】
図1の除雪車の動作例を示すフローチャートであり、第2クラッチの切断制御を示すフローチャートである。
【
図8】
図1の除雪車の動作例を示すフローチャートであり、復帰制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0011】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、前記の要素の組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、又は手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、又はユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及びプロセッサの少なくとも1の構成に使用される。
【0012】
図1は、実施の形態に係る除雪車100の構成例を示す側面図である。
図2は、除雪車100の構成例を示す平面図である。
図3は、
図1の除雪車100の動力伝達機構3の構成例を概略的に示す平面図である。以下の説明における方向の概念は、除雪車100の前進方向を前方とし、除雪車100の後進方向を後方とし、前後方向に直交する車両の横方向を左右方向又は車幅方向とする。また、以下では、単位時間あたりの回転数を単に回転数という。
【0013】
除雪車100は、ロータリ除雪車であり、路面に積もった雪を取り除きながら走行する車両である。
図1に示すように、除雪車100は、原動機Eと、車体1と、車体1を支持する車輪Wと、車体1の前側に設けられたロータリ装置2と、
図3に示す動力伝達機構3とを備える。
【0014】
原動機Eは、内燃エンジンである。なお、原動機Eは、電気モータでもよく、内燃エンジン及び電気モータの組合せでもよい。原動機Eは、
図3に示すエンジンコントロールモジュールであるECM5により制御される。ECM5は、電気回路であり、例えば、CPU等の演算器を有するプロセッサと、ROM及びRAM等のメモリとを有する。
【0015】
車体1は、原動機室10と、乗務員室11とを含む。原動機室10には、原動機Eが配置されている。乗務員室11には、作業員が着座する運転席12が設置されている。運転席12の前方には、運転席12に着座した作業者が除雪車100の運転のために操作する運転卓14が設置されている。
【0016】
図1に示すように、ロータリ装置2は、フレーム21と、オーガ22と、ブロワ23と、投雪筒24とを含む。フレーム21は、車体1に接続されている。
【0017】
図2に示すように、オーガ22は、雪を掻き集める機能を果たす螺旋状の回転刃である。
図1に示すように、オーガ22は、回転軸26と、螺旋状の刃27とを含む。オーガ22は、除雪車100の前面に開口する集雪口に回転軸26が左右方向に伸びる姿勢でフレーム21に回転自在に支持されている。オーガ22は、動力伝達経路を介して入力される原動機Eからの回転動力により回転して雪を掻き集める。ブロワ23は、羽根を含み、オーガ22によって掻き集められた雪を吐出させる機能を果たす。ブロワ23は、動力伝達経路を介して入力される原動機Eからの回転動力により回転して、オーガ22により掻き集められた雪を飛ばす。投雪筒24は、フレーム21から上方に突出した状態でフレーム21に支持されている。ブロワ23により飛ばされた雪は、投雪筒24に案内されることで除雪車100から離れた側方に向けて排出され、除雪車100から吐出される。
【0018】
図3に示すように、動力伝達機構3は、原動機Eの回転動力を車輪W、オーガ22及びブロワ23に伝達する機構であり、原動機Eの回転動力を伝達する動力伝達経路を成す。動力伝達機構3は、第1クラッチ61を含むトランスミッション31と、プロペラ軸32と、PTO軸33と、トルクリミッタ34と、動力分割器35と、動力伝達軸36と、伝動機構37と、第2クラッチ62と、第1クラッチアクチュエータ41と、第2クラッチアクチュエータ42とを含む。
【0019】
トランスミッション31は、入力された原動機Eの回転動力を分配し、適切なトルクと回転速度に変速した作業用動力及び走行用動力を出力する機構である。原動機Eの回転動力を作業用動力及び走行用動力に分配する機構は、変速機構の上流側の動力伝達経路に配置される。なお、動力を分配する機構と、変速機構とは、個別の機構としてもよい。作業用動力とは、除雪作業に用いる動力であり、オーガ駆動用動力及びブロワ駆動用動力を含む。トランスミッション31は、ミッションケース55と、ミッションケース55側に軸受装置を介して回転自在に支持された入力軸56、作業用動力出力軸57及び走行用動力出力軸58を含む複数本の軸とを含む。また、トランスミッション31は、入力軸56と作業用動力出力軸57とを連動させる作業用動力伝達セクション48と、入力軸56と走行用動力出力軸58とを連動させる走行用動力伝達セクション49とを有する。
【0020】
作業用動力伝達セクション48は、ギヤ及びクラッチを介して動力を伝達し、クラッチの接続及び切断を選択的に行うことにより、ギヤ比を複数段階で切り替える機構を含む。本実施の形態において、作業用動力伝達セクション48においては、1速、2速、3速の切り替えが可能であり、うち1速用のクラッチは入力軸56に取り付けられている。本実施の形態において、1速用のクラッチが第1クラッチ61を成す。第1クラッチ61は、油圧制御されるクラッチであり、入力軸56に取り付けられている。このように、第1クラッチ61は、オーガ22及びブロワ23への作業用動力伝達経路上に位置し、原動機Eからの動力を作業用動力伝達方向下流側に伝達する接続状態と、原動機Eからの動力を作業用動力伝達方向下流側に伝達しない切断状態とに切り替えることができる。また、第1クラッチ61は、摩擦クラッチであり、過大なトルクが作用すると、摩擦面において滑りが生じる。作業用動力出力軸57は、PTO軸33に接続され、作業用動力出力軸57の回転によりPTO軸33が回転する。なお、原動機Eの回転動力を作業用動力及び走行用動力に分配する機構は、変速機構の上流側の動力伝達経路に配置されるので、作業用動力伝達セクション48のクラッチが接続状態及び切断状態の何れの状態であっても、走行用動力は走行用動力伝達セクション49に入力される。これによって、作業用動力伝達セクション48のクラッチが切断状態であっても除雪車100は走行可能となっている。
【0021】
走行用動力伝達セクション49は、ギヤ及びクラッチに加え、油圧ポンプ65及び油圧モータ66を介して動力を伝達する。作業用動力伝達セクション48と同様に、走行用動力伝達セクション49もクラッチの接続及び切断を選択的に行うことにより、ギヤ比を複数段階で切り替えることができる。油圧ポンプ65は、入力軸からギヤを介して伝達される駆動力により駆動されて油圧を発生する。油圧モータ66は、油圧ポンプ65から供給される油圧により回転動力を発生する。油圧モータ66が発生した回転動力は、走行用動力伝達セクション49のギヤを介して走行用動力出力軸58に伝達され、出力される。走行用動力出力軸58は、プロペラ軸32を介して車輪Wに接続されており、走行用動力出力軸58の回転により、プロペラ軸32及び車輪Wが回転する。
【0022】
図4は、トルクリミッタ34の構成例を示す断面図である。トルクリミッタ34は、PTO軸33に接続され、第1クラッチ61の下流側の作業用動力伝達経路上に位置する。また、トルクリミッタ34は、後述する動力分割器35の上流側の作業用動力伝達経路上に位置する。トルクリミッタ34は、作用するトルクが所定の閾値を超過したときはトルクの伝達を抑制し、作用するトルクが所定の閾値に収まるとトルクの伝達の抑制を解除する機構である。
図4に示すように、本実施の形態において、トルクリミッタ34は、皿ばね式のトルク制限装置であり、入力軸71と、出力軸72と、トルク伝達部材73と、皿ばね74とを含む。トルク伝達部材73は、入力軸71と一体的に回転する。また、トルク伝達部材73は、皿ばね74の付勢力により出力軸72に押し付けられ、摩擦力により出力軸72と係合する。そして、トルクリミッタ34は、過大なトルクが作用しない通常時には、入力軸71から、出力軸72にトルク伝達部材73を介してトルクを伝達する。そして、過大なトルクが入力軸71又は出力軸72に働くと、皿ばね74が弾性変形し、トルク伝達部材73と出力軸72との係合が外れ、トルク伝達部材73と出力軸72との間に滑りが生じ、過大なトルクの伝達を抑制する。トルク伝達部材73と出力軸72との間に滑りが生じると、入力軸71と出力軸72の回転数に差が生じる。
【0023】
図3に示すように、動力分割器35は、ギヤボックスであり、第1クラッチ61の下流側の作業用動力伝達経路上に位置する。動力分割器35は、第1クラッチ61からの作業用動力をオーガ駆動用動力及びブロワ駆動用動力に分割し、オーガ駆動用動力を伝達するオーガ駆動用動力伝達経路及びブロワ駆動用動力を伝達するブロワ駆動用動力伝達経路に作業用動力伝達経路を分岐させる機能を果たす。動力分割器35は、トルクリミッタ34の出力軸72に接続されている入力軸81と、ブロワ駆動用動力伝達経路上に位置し、ブロワ23に接続されている第1出力軸82と、オーガ駆動用動力伝達経路上に位置する第2出力軸83とを含む。
【0024】
動力伝達軸36及び伝動機構37は、第2出力軸83から出力されたオーガ駆動用動力を第2クラッチ62に伝達する機械要素である。動力伝達軸36は、動力分割器35の第2出力軸83の下流側のオーガ駆動用動力伝達経路上に位置し、第2出力軸83に接続されている。伝動機構37は、チェーンスプロケット機構であり、動力伝達軸36の下流側のオーガ駆動用動力伝達経路上に位置し、動力伝達軸36に接続されている。
【0025】
第2クラッチ62は、油圧制御されるクラッチであり、伝動機構37の下流側のオーガ駆動用動力伝達経路上に位置する。第2クラッチ62は、油圧が供給されると、オーガ駆動用動力を動力伝達方向下流側に伝達する接続状態となる。また、第2クラッチ62は、油圧の供給が停止されると、オーガ駆動用動力を動力伝達方向下流側に伝達しない切断状態に切り替えられる。このように、第2クラッチ62は、接続状態と切断状態とに切替可能なクラッチである。また、第2クラッチ62は、摩擦式のクラッチであり、所定の閾値を超えるトルクが作用すると、内部において滑りが生じる。その結果、第2クラッチ62の入力軸及び出力軸の回転数に微小な差が生じる。
【0026】
第1クラッチアクチュエータ41は、第1クラッチ61の接続状態と切断状態の切り替えを行う油圧アクチュエータである。第2クラッチアクチュエータ42は、第2クラッチ62の接続状態と切断状態の切り替えを行う油圧アクチュエータである。
【0027】
そして、除雪車100は、原動機E及び動力伝達経路における回転機械要素の回転数を検知するセンサを有する。
【0028】
原動機Eの回転数は、第1センサ51により検知され、出力される。第1センサ51から出力された信号は、ECM5に入力される。第1センサ51は、原動機Eのフライホイール等の回転機械要素の回転数を検出するエンジン回転センサであり、例えば製造時に原動機Eに備え付けられたセンサである。
【0029】
また、作業用動力伝達経路において、第1クラッチ61から第2クラッチ62に向かう動力又は動力分割器35からブロワ23に向かう動力を伝達するシャフト、ギヤなどの機械要素である第1回転機械要素18の回転数を検知する第2センサ52が設けられている。本実施の形態において、第1回転機械要素18は、平歯車であり動力伝達軸36に固定されている。第2センサ52は、第1回転機械要素18の歯先に近接するように配設され、第1回転機械要素18の歯先の移動を検知し、動力伝達軸36の回転数に比例した周波数成分を有する信号を生成する。そして、第2センサ52は、前記周波数成分を有する信号又は前記周波数成分に基づき算出した回転数情報を含む信号を生成し、出力する。
【0030】
更に、作業用動力伝達経路において、第2クラッチ62からオーガ22に向かう動力を伝達するシャフト、ギヤなどの機械要素である第2回転機械要素28の回転数を検知する第3センサ53が設けられている。本実施の形態において、第2回転機械要素28は、平歯車でありオーガ22の回転軸26に固定されている。第3センサ53は、第2回転機械要素28の歯先に近接するように配設され、第2回転機械要素28の歯先の移動を検知し、回転軸26の回転数に比例した周波数成分を有する信号を生成する。そして、第3センサ53は、前記周波数成分を有する信号又は前記周波数成分に基づき算出した回転数情報を含む信号を生成し、出力する。
【0031】
図5は、除雪車100の制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
図5に示すように、乗務員室11に位置する運転卓14に入力器15が設けられている。入力器15は、切断状態にある第1クラッチ61又は第2クラッチ62を接続状態に切り替える復帰指令を受け付ける機器であり、例えば押しボタンである。
【0032】
制御器4は、電気回路であり、例えば、電気回路であり、例えば、CPU等の演算器を有するプロセッサと、ROM及びRAM等のメモリとを有する。制御器4は、集中制御する単独の制御器で構成してもよく、互いに協働して分散制御する複数の制御器で構成してもよい。
【0033】
制御器4は、ECM5、第2センサ52、第3センサ53、及び入力器15と電気的に接続され、第1センサ51が検知したエンジンの回転数、第2センサ52が検知した第1回転機械要素18の回転数、第3センサ53が検知した第2回転機械要素28の回転数、復帰指令を含む情報を受信する。なお、制御器4は、第1センサ51が検知したエンジンの回転数をCAN(control area network)を介して受信する。
【0034】
更に、制御器4は、第1クラッチアクチュエータ41及び第2クラッチアクチュエータ42を制御し、これによって、第1クラッチ61及び第2クラッチ62の接続及び切断を切り替える。本実施の形態において、制御器4は、第1クラッチアクチュエータ41及び第2クラッチアクチュエータ42のそれぞれに対する油圧の供給及び停止を切り替えるバルブの動作を制御することにより、第1クラッチアクチュエータ41及び第2クラッチアクチュエータ42を制御し、第1クラッチアクチュエータ41及び第2クラッチアクチュエータ42の接続及び解除の切り替えを行う。
【0035】
[動作例]
次に、除雪車100の動作例を説明する。
【0036】
除雪作業においては、原動機Eからの回転動力により車輪Wが回転し除雪車100が前進し、ロータリ装置2の集雪口から雪が取り込まれる。そして、制御器4が第1クラッチ61及び第2クラッチ62を接続状態に切り替えると、原動機Eからの回転動力によりオーガ22が回転し、雪を掻き集める。掻き集められた雪は、原動機Eからの回転動力により回転するブロワ23の羽根により飛ばされ、投雪筒24に案内され、除雪車100から吐出される。
【0037】
上記の状態において、制御器4は、第1クラッチ61の切断制御及び第2クラッチ62の切断制御を行う。なお、第1クラッチ61の切断制御及び第2クラッチ62の切断制御は、並行して実行される。
【0038】
図6は、除雪車100の動作例を示すフローチャートであり、第1クラッチ61の切断制御を示すフローチャートである。第1クラッチ61の切断制御において、制御器4は、まず、第1クラッチ61が接続状態にあるか否かを判定する(ステップS10)。そして、制御器4は、第1クラッチ61が切断状態にあると判定すると(ステップS10においてNo)、第1クラッチ61の切断制御を終了する。
【0039】
一方、制御器4は、第1クラッチ61が接続状態にあると判定すると(ステップS10においてYes)、第1基準回転数を算出する(ステップS11)。第1基準回転数は、第1クラッチ61及び第2クラッチ62が接続状態にあるときの第1回転機械要素18の回転数であって、第1センサ51により検知される原動機Eの回転数に対応する第1回転機械要素18の回転数である。本実施の形態において、制御器4は、第1センサ51が検知した原動機Eの回転数に、トランスミッション31における変速比を含む原動機Eから動力伝達軸36に至るまでの減速比を乗じて第1基準回転数を算出する。
【0040】
次に、制御器4は、第1滑り量を算出する(ステップS12)。第1滑り量は、第1基準回転数と、第2センサ52が検知した第1回転機械要素18の回転数との差分である。
【0041】
次に、制御器4は、第1滑り量が所定の閾値を超過しているか否かを判定する(ステップS13)。ところで、第1基準回転数は、第1クラッチ61及び第2クラッチ62が接続状態にあるときの第1回転機械要素18の回転数である。したがって、除雪作業が順調に進められている通常時においては、第1基準回転数と第2センサ52が検知した第1回転機械要素18の回転数との差はごく僅かなものとなり、第1滑り量は所定の閾値に収まる。その結果、制御器4は、第1滑り量が所定の閾値を超過していないと判定し(ステップS13においてNo)、再びステップS11の判定を行う。
【0042】
一方、ブロワ23の羽根が例えば石や氷塊などを巻き込んで、ブロワ23の羽根の回転が阻害されると、トルクリミッタ34において滑りが生じ、トルクリミッタ34の入力軸71及び出力軸72の回転数に差が生じる。すると、第1滑り量が所定の閾値を超過し、制御器4は、第1滑り量が所定の閾値を超過していると判定する(ステップS13においてYes)。そして、制御器4は、第1クラッチ61を切断状態に切り替える(ステップS14)。これにより、オーガ22及びブロワ23への動力の供給が遮断され、オーガ22及びブロワ23が停止する。そして、制御器4は、第1クラッチ61の切断制御を終了する。なお、上記閾値は、ブロワ23の羽根の回転が阻害されたことに起因してトルクリミッタ34に滑りが生じると直ちに第1クラッチ61を切断状態に切り替えることができる値であり、実験、シミュレーション、計算等によって設定される値である。
【0043】
このように、ブロワ23の羽根の回転が阻害されると、トルクが上昇し、動力伝達経路のうち、原動機Eと第1回転機械要素18との間の区間において滑りが生じ、制御器4は、第1クラッチ61を直ちに切断状態に切り替えて、ブロワ23及びオーガ22を停止させる。これによって、クラッチ板の焼け付き等、動力伝達機構3及び原動機Eに大きな力が掛かることによる故障を防止することができる。
【0044】
また、トルクリミッタ34に滑りが生じたことを契機として、第1クラッチ61を切断状態に切り替えるので、トルクリミッタ34が伝達を抑制するトルクの閾値を適切に設定することができる。これによって、第1クラッチ61の作動条件を適切な条件とすることができる。より具体的には、トランスミッション31の作用動力伝達セクションのクラッチを摩擦式のクラッチとし、このクラッチに滑りが生じたことを契機として第1クラッチ61を切断してもよい。しかし、トランスミッション31のクラッチは、通常、比較的大きなトルクに耐えうるように設計され、ブロワ23が多少大きな石を巻き込んだときでもトランスミッション31に滑りが発生しないことがある。しかし、本実施の形態において、制御器4は、トルクリミッタ34の滑りを用いてブロワ23の羽根の回転が阻害されたと判定しているので、トルクリミッタ34が伝達を抑制するトルクの閾値を適切な値とすることができ、適切な条件で第1クラッチ61を作動させることができる。
【0045】
図7は、除雪車100の動作例を示すフローチャートであり、第2クラッチ62の切断制御を示すフローチャートである。第2クラッチ62の切断制御において、制御器4は、まず、第2クラッチ62が接続状態にあるか否かを判定する(ステップS20)。そして、制御器4は、第2クラッチ62が切断状態にあると判定すると(ステップS20においてNo)、第2クラッチ62の切断制御を終了する。
【0046】
一方、制御器4は、第2クラッチ62が接続状態にあると判定すると(ステップS20においてYes)、第2基準回転数を算出する(ステップS21)。第2基準回転数は、第1クラッチ61及び第2クラッチ62が接続状態にあるときの第2回転機械要素28の回転数であって、第1センサ51により検知される原動機Eの回転数に対応する第2回転機械要素28の回転数である。本実施の形態において、制御器4は、第1センサ51が検知した原動機Eの回転数に、トランスミッション31における変速比を含む原動機Eからオーガ22の回転軸26に至るまでの減速比を乗じて第2基準回転数を算出する。
【0047】
次に、制御器4は、第2滑り量を算出する(ステップS22)。第2滑り量は、第2基準回転数と、第3センサ53が検知した第2回転機械要素28の回転数との差分である。
【0048】
次に、制御器4は、第2滑り量が所定の閾値を超過しているか否かを判定する(ステップS23)。ところで、第2基準回転数は、第1クラッチ61及び第2クラッチ62が接続状態にあるときの第2回転機械要素28の回転数である。したがって、除雪作業が順調に進められている通常時においては、第2基準回転数と第3センサ53が検知した第2回転機械要素28の回転数との差はごく僅かなものとなり、第2滑り量は所定の閾値に収まる。その結果、制御器4は、第2滑り量が所定の閾値を超過していないと判定し(ステップS23においてNo)、再びステップS21の判定を行う。
【0049】
一方、オーガ22が例えば石や氷塊などを噛み込んで、オーガ22の回転が阻害されると、第2クラッチ62において滑りが生じ、第2クラッチ62の入力軸及び出力軸の回転数に差が生じる。すると、第2滑り量が所定の閾値を超過し、制御器4は、第2滑り量が所定の閾値を超過していると判定する(ステップS23においてYes)。そして、制御器4は、第2クラッチ62を切断状態に切り替える(ステップS24)。これにより、オーガ22への動力の供給が遮断され、オーガ22が停止する。そして、制御器4は、第2クラッチ62の切断制御を終了する。なお、上記閾値は、オーガ22の回転が阻害されたことに起因して第2クラッチ62に滑りが生じると直ちに第2クラッチ62を切断状態に切り替えることができる値であり、実験、シミュレーション、計算等によって設定される値である。
【0050】
このように、オーガ22の回転が阻害されると、トルクが上昇し、動力伝達経路のうち、原動機Eと第2回転機械要素28との間の区間において滑りが生じ、制御器4は、第2クラッチ62を直ちに切断状態に切り替えて、オーガ22を停止させる。これによって、クラッチ板の焼け付き等、動力伝達機構3及び原動機Eに大きな力が掛かることによる故障を防止することができる。なお、第2クラッチ62を切断した状態においては、ブロワ23は作動状態にあるので、車体1内の雪は排出される。これにより、車体内に残留し、除雪作業の再開に障害となる雪を掻き出す作業を軽減することができる。よって、除雪作業を迅速に再開することができる。また、第1滑り量の算出及び第2滑り量の算出に用いる入力側のセンサとして第1センサ51を共用しているので、トルクリミッタ34の入力軸71及び第2クラッチ62の入力軸の回転数を検知する構成を簡素にすることができる。
【0051】
第1クラッチ61の切断制御及び第2クラッチ62の切断制御により、第1クラッチ61及び第2クラッチ62の一方又は両方が切断状態にあると、次に、制御器4は、復帰制御を行う。
図8は、除雪車100の動作例を示すフローチャートであり、復帰制御を示すフローチャートである。復帰制御において、制御器4は、まず、第1クラッチ61及び第2クラッチ62の一方又は両方が切断状態にあるか否かを判定する(ステップS30)。そして、制御器4は、第1クラッチ61及び第2クラッチ62の一方又は両方が切断状態にない、すなわち接続状態にあると判定すると(ステップS30においてNo)、復帰制御を終了する。
【0052】
一方、制御器4は、第1クラッチ61及び第2クラッチ62の一方又は両方が切断状態にあると判定すると(ステップS30においてYes)、入力器15をアクティブ化(ステップS31)する。アクティブ化とは、制御器4が入力器15を介して切断状態にある第1クラッチ61又は第2クラッチ62を接続状態に切り替える復帰指令を受付可能とすることである。
【0053】
次に、制御器4は、入力器15が復帰指令を受け付けるまで待機する(ステップS32)。
【0054】
次に、入力器15が復帰指令を受け付けると、第1クラッチ61又は第2クラッチ62を接続状態に切り替える。これにより、オーガ22及びブロワ23が作動する。このように、乗務員室11からの操作により、第1クラッチ61及び第2クラッチ62を接続状態に切り替えることができ、除雪作業を迅速に再開することができる。
【0055】
(変形例)
上記実施の形態において、トランスミッション31のクラッチ、及び第2クラッチ62は、摩擦式のクラッチを用いているが当該構成に限定されない。当該構成の代わりに、遠心クラッチ又は電磁クラッチを用いてもよい。
【0056】
上記実施の形態において、第2クラッチ62は、オーガ駆動用動力の伝達及び遮断を切り替える機能と、クラッチの切り替えの契機となる事象である過負荷による滑りを発生させる機能の両方を果たすが当該構成に限定されない。当該構成の代わりに、例えば、トルクリミッタをオーガ駆動用動力伝達経路に設け、過負荷による滑りを発生させる機能を当該トルクリミッタが担ってもよい。
【0057】
上記実施の形態において、第1センサ51から出力された信号は、ECM5を介して制御器4に入力されているが、当該構成に限定されない。当該構成の代わりに、制御器4に直接入力されてもよい。
【0058】
上記実施の形態において、制御器4及びECM5は、個別の制御器であるが、当該構成に限定されない。当該構成の代わりに、制御器4及びECM5を1つの制御器としてもよい。
【0059】
上記実施の形態において、第1クラッチ61は、トランスミッション31の作業用動力伝達セクション48の1速用のクラッチであるが、当該構成に限定されない。当該構成の代わりに、作業用動力伝達経路のトランスミッション31の入力軸56からトルクリミッタ34の入力軸71に至る範囲の任意の箇所に別個に設けたクラッチとしてもよい。
【0060】
(実施形態の列挙)
実施形態1: 雪を掻き集めるオーガ及び前記オーガによって掻き集められた雪を吐出させるブロワに、原動機からの回転動力が動力伝達経路を介して入力される除雪車であって、
前記動力伝達経路上に位置し、前記原動機からの動力を動力伝達方向下流側に伝達する接続状態と前記原動機からの動力を動力伝達方向下流側に伝達しない切断状態とに切り替え可能な第1クラッチと、
前記第1クラッチの下流側の前記動力伝達経路上に位置し、前記第1クラッチからの動力をオーガ駆動用動力及びブロワ駆動用動力に分割し、前記オーガ駆動用動力を伝達するオーガ駆動用動力伝達経路及び前記ブロワ駆動用動力を伝達するブロワ駆動用動力伝達経路に前記動力伝達経路を分岐させる動力分割器と、
前記オーガ駆動用動力伝達経路上に位置し、前記オーガ駆動用動力を動力伝達方向下流側に伝達する接続状態と前記オーガ駆動用動力を動力伝達方向下流側に伝達しない切断状態とに切り替え可能な第2クラッチと、
前記第1クラッチの前記接続状態と前記切断状態の切り替えを行う第1クラッチアクチュエータと、
前記第2クラッチの前記接続状態と前記切断状態の切り替えを行う第2クラッチアクチュエータと、
前記原動機の回転数を検知する第1センサと、
前記第1クラッチから前記第2クラッチに向かう動力又は前記動力分割器から前記ブロワに向かう動力を伝達する第1回転機械要素の回転数を検知する第2センサと、
前記第2クラッチから前記オーガに向かう動力を伝達する第2回転機械要素の回転数を検知する第3センサと、
前記第1クラッチアクチュエータ及び前記第2クラッチアクチュエータを制御する制御器と、を備え、
前記制御器は、
前記第1クラッチ及び前記第2クラッチが前記接続状態にあるときの前記第1回転機械要素の回転数であって、前記第1センサにより検知される前記原動機の回転数に対応する前記第1回転機械要素の回転数である第1基準回転数と、前記第2センサが検知した前記第1回転機械要素の回転数との差分である第1滑り量が所定の閾値を超過すると前記第1クラッチを前記切断状態に切り替え、
前記第1クラッチ及び前記第2クラッチが前記接続状態にあるときの前記第2回転機械要素の回転数であって、前記第1センサにより検知される前記原動機の回転数に対応する前記第2回転機械要素の回転数である第2基準回転数と、前記第3センサが検知した前記第2回転機械要素の回転数との差分である第2滑り量が所定の閾値を超過すると前記第2クラッチを前記切断状態に切り替える、除雪車。
【0061】
この構成によれば、第2クラッチを切断してオーガを停止させたときに、ブロワを作動させたままの状態にすることができ、掻き集めた雪の車体内への滞留を抑制することができる。これにより、除雪作業を迅速に再開することができる。また、第1滑り量の算出及び第2滑り量の算出に用いる入力側のセンサとして第1センサを共用しているので、構成を簡素にすることができる。
【0062】
実施形態2: 前記第1クラッチの下流側且つ前記動力分割器の上流側の前記動力伝達経路上に位置し、作用するトルクが所定の閾値を超過したときはトルクの伝達を抑制し、作用するトルクが所定の閾値に収まるとトルクの伝達の抑制を解除するトルクリミッタを備える、実施形態1に記載の除雪車。
【0063】
この構成によれば、トルクリミッタが伝達を抑制するトルクの閾値を適切に設定することができ、第1クラッチの作動条件を適切な条件とすることができる。
【0064】
実施形態3: 乗務員室と、
前記乗務員室に位置し、前記切断状態にある前記第1クラッチ又は前記第2クラッチを前記接続状態に切り替える復帰指令を受け付けるための入力器と、を更に備え、
前記制御器は、前記入力器が前記復帰指令を受け付けると、前記切断状態にある前記第1クラッチ又は前記第2クラッチを前記接続状態に切り替える、実施形態1又は2に記載の除雪車。
【0065】
この構成によれば、乗務員室からの操作により、第1クラッチ及び第2クラッチを接続状態に切り替えることができ、除雪作業を迅速に再開することができる。
【0066】
実施形態4: 雪を掻き集めるオーガ及び前記オーガによって掻き集められた雪を吐出させるブロワに、原動機からの回転動力が動力伝達経路を介して入力される除雪車の制御方法であって、
前記除雪車は、
前記動力伝達経路上に位置し、前記原動機からの動力を動力伝達方向下流側に伝達する接続状態と前記原動機からの動力を動力伝達方向下流側に伝達しない切断状態とに切り替え可能な第1クラッチと、
前記第1クラッチの下流側の前記動力伝達経路上に位置し、前記第1クラッチからの動力をオーガ駆動用動力及びブロワ駆動用動力に分割し、前記オーガ駆動用動力を伝達するオーガ駆動用動力伝達経路及び前記ブロワ駆動用動力を伝達するブロワ駆動用動力伝達経路に前記動力伝達経路を分岐させる動力分割器と、
前記オーガ駆動用動力伝達経路上に位置し、前記オーガ駆動用動力を動力伝達方向下流側に伝達する接続状態と前記オーガ駆動用動力を動力伝達方向下流側に伝達しない切断状態とに切り替え可能な第2クラッチと、
前記第1クラッチから前記第2クラッチに向かう動力又は前記動力分割器から前記ブロワに向かう動力を伝達する第1回転機械要素と、
前記第2クラッチから前記オーガに向かう動力を伝達する第2回転機械要素と、を備え、
前記原動機、前記第1回転機械要素及び前記第2回転機械要素の回転数を検知し、
前記第1クラッチ及び前記第2クラッチが前記接続状態にあるときの前記第1回転機械要素の回転数であって、検知した前記原動機の回転数に対応する前記第1回転機械要素の回転数である第1基準回転数を算出し、
前記第1基準回転数と検知した前記第1回転機械要素の回転数との差分である第1滑り量を算出し、
前記第1滑り量が所定の閾値を超過すると前記第1クラッチを前記切断状態に切り替え、
前記第1クラッチ及び前記第2クラッチが前記接続状態にあるときの前記第2回転機械要素の回転数であって、検知した前記原動機の回転数に対応する前記第2回転機械要素の回転数である第2基準回転数を算出し、
前記第2基準回転数と検知した前記第2回転機械要素の回転数との差分である第2滑り量を算出し、
前記第2滑り量が所定の閾値を超過すると前記第2クラッチを前記切断状態に切り替える、除雪車の制御方法。
【0067】
この構成によれば、第2クラッチの作動時にブロワを作動させたままの状態にすることができ、掻き集めた雪の車体内への滞留を抑制することができる。これにより、除雪作業を迅速に再開することができる。また、第1滑り量の算出及び第2滑り量の算出に用いる入力側の情報として原動機の回転数を共用しているので、構成を簡素にすることができる。
【0068】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【符号の説明】
【0069】
E 原動機
W 車輪
1 車体
2 ロータリ装置
3 動力伝達機構
4 制御器
11 乗務員室
15 入力器
18 第1回転機械要素
21 フレーム
22 オーガ
23 ブロワ
24 投雪筒
26 回転軸
27 刃
28 第2回転機械要素
31 トランスミッション
32 プロペラ軸
34 トルクリミッタ
35 動力分割器
36 動力伝達軸
41 第1クラッチアクチュエータ
42 第2クラッチアクチュエータ
46 制御部
47 記憶部
51 第1センサ
52 第2センサ
53 第3センサ
56 入力軸
57 作業用動力出力軸
58 走行用動力出力軸
61 第1クラッチ
62 第2クラッチ
71 入力軸
72 出力軸
73 トルク伝達部材
74 皿ばね
100 除雪車