(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】ゴム組成物、含フッ素エラストマー及びシール材
(51)【国際特許分類】
C08L 27/12 20060101AFI20241015BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20241015BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20241015BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20241015BHJP
C08J 3/24 20060101ALI20241015BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20241015BHJP
F16J 15/10 20060101ALN20241015BHJP
【FI】
C08L27/12
C08K5/00
C08K5/14
C08K5/3492
C08J3/24 Z CEW
C09K3/10 M
F16J15/10 G
(21)【出願番号】P 2022521924
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2021017845
(87)【国際公開番号】W WO2021230231
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2020084974
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020160380
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 智也
(72)【発明者】
【氏名】尾原 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】松村 岳
(72)【発明者】
【氏名】及川 純
(72)【発明者】
【氏名】寺▲崎▼ 龍之祐
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-052226(JP,A)
【文献】国際公開第2014/167797(WO,A1)
【文献】特開2017-214555(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017187(WO,A1)
【文献】特開2016-145167(JP,A)
【文献】特開2016-145277(JP,A)
【文献】国際公開第2020/129804(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/00-27/24
C08K 3/00-13/08
C09K 3/10
F16J 15/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)架橋反応性含フッ素ゴム;
(b)下記式(b-1)で表される化合物;及び
【化16】
(式(b-1)において、Aは単結合、-O-、-S-、ヘテロ原子含有基、直鎖又は分岐のアルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基であり、これらの基において、水素原子はフッ素原子で置換されていないか、一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されている。R
1は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はフッ化アルキル基であり、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ化アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基である。複数のR
1は同一であるか又は異なる。複数のR
2は同一であるか又は異なる。複数のR
3は同一であるか又は異なる。複数のR
4は同一であるか又は異なる。R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つはフッ素原子又はフッ素原子を含む基である。mは1~5の整数である。nは1~5の整数である。)
(c)下記式(c-1)で表される化合物;
【化17】
(式(c-1)において、n、mはそれぞれ0又は1である。tは2以上の整数である。Zはt価の連結基である。)
を含み、
成分(a)100gに対して成分(b)を5~30mmol含む、ゴム組成物。
【請求項2】
成分(a)100gに対して成分(c)を2~30mmol含む、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
(a)架橋反応性含フッ素ゴム;
(b)下記式(b-1)で表される化合物;及び
【化18】
(式(b-1)において、Aは単結合、-O-、-S-、ヘテロ原子含有基、直鎖又は分岐のアルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基であり、これらの基において、水素原子はフッ素原子で置換されていないか、一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されている。R
1は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はフッ化アルキル基であり、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ化アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基である。複数のR
1は同一であるか又は異なる。複数のR
2は同一であるか又は異なる。複数のR
3は同一であるか又は異なる。複数のR
4は同一であるか又は異なる。R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つはフッ素原子又はフッ素原子を含む基である。mは1~5の整数である。nは1~5の整数である。)
(c)下記式(c-1)で表される化合物;
【化19】
(式(c-1)において、n、mはそれぞれ0又は1である。tは2以上の整数である。Zはt価の連結基である。)
を含み、
成分(a)100gに対して成分(c)を2~30mmol含む、ゴム組成物。
【請求項4】
(d)有機過酸化物をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項5】
(e)パーフルオロ骨格又はシロキサン骨格を有し、反応性基としてアルケニル基を含む反応性化合
物をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
成分(a)100gに対して成分(b)及び成分(c)を合計で7~40mmol含む、請求項1~5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
成分(c)が、トリアリルイソシアヌレート又は1,6-ジビニル(ドデカフルオロヘキサン)である、請求項1~6のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のゴム組成物を架橋してなる、含フッ素エラストマー。
【請求項9】
請求項8に記載の含フッ素エラストマーを含む、シール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的特性に優れ、圧縮永久ひずみを低下でき、耐プラズマ性に優れ、パーティクルの発生を防止できるゴム組成物、含フッ素エラストマー及びシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~4には、含フッ素エラストマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第95/002634号
【文献】特開2000-34380号公報
【文献】特開2006-342241号公報
【文献】特開2019-052226号公報
【発明の概要】
【0004】
例えば半導体製造装置(プラズマ装置、エッチング装置、プラズマ化学気相成長(CVD)装置等)等のためのシール材は、ハンドリング性や摺動時のねじれ防止の観点から機械的特性が必要である。また、シール性の観点から圧縮永久ひずみが小さいことが望まれる。さらに、優れた耐プラズマ性及びパーティクル発生の防止も求められる。
【0005】
特許文献1~4をはじめとする従来の技術は、架橋時の放射線処理や充填材の使用によって、機械的特性及び小さい圧縮永久ひずみを付与している。しかし、そのような手法では、上述した耐プラズマ性やパーティクル発生の防止を両立することが困難であることがわかった。具体的には、特許文献1、2は機械的特性を付与するためにフッ素樹脂やカーボンブラックを配合しているが、プラズマに晒されるとフッ素樹脂やカーボンブラックがパーティクルになることがわかった。また、特許文献3、4では充填材を配合せず、放射線架橋で機械的特性を調整しているが、パーティクルが出ないものの、耐プラズマ性が悪化することがわかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、機械的特性に優れ、圧縮永久ひずみを低下でき、耐プラズマ性に優れ、パーティクルの発生を防止できるゴム組成物、含フッ素エラストマー及びシール材を提供することである。
【0007】
本発明によれば、以下のゴム組成物等が提供される。
1.(a)架橋反応性含フッ素ゴム;
(b)下記式(b-1)で表される化合物;及び
【化1】
(式(b-1)において、Aは単結合、-O-、-S-、ヘテロ原子含有基、直鎖又は分岐のアルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基であり、これらの基において、水素原子はフッ素原子で置換されていないか、一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されている。R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ化アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基である。複数のR
1は同一であるか又は異なる。複数のR
2は同一であるか又は異なる。複数のR
3は同一であるか又は異なる。複数のR
4は同一であるか又は異なる。R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つはフッ素原子又はフッ素原子を含む基である。mは1~5の整数である。nは1~5の整数である。)
(c)下記式(c-1)で表される化合物;
【化2】
(式(c-1)において、n、mはそれぞれ0又は1である。tは2以上の整数である。Zはt価の連結基である。)
を含む、ゴム組成物。
2.(d)有機過酸化物をさらに含む、1に記載のゴム組成物。
3.(e)パーフルオロ骨格又はシロキサン骨格を有する反応性化合物、及びフッ素オリゴマーからなる群から選択される1種以上をさらに含む、1又は2に記載のゴム組成物。
4.成分(a)100gに対して成分(b)を5~30mmol含む、1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
5.成分(a)100gに対して成分(c)を2~30mmol含む、1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
6.成分(a)100gに対して成分(b)及び成分(c)を合計で7~40mmol含む、1~5のいずれかに記載のゴム組成物。
7.成分(c)が、トリアリルイソシアヌレート又は1,6-ジビニル(ドデカフルオロヘキサン)である、1~6のいずれかに記載のゴム組成物。
8.1~7のいずれかに記載のゴム組成物を架橋してなる、含フッ素エラストマー。
9.8に記載の含フッ素エラストマーを含む、シール材。
【0008】
本発明によれば、機械的特性に優れ、圧縮永久ひずみを低下でき、耐プラズマ性に優れ、パーティクルの発生を防止できるゴム組成物、含フッ素エラストマー及びシール材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のゴム組成物、含フッ素エラストマー及びシール材について詳述する。
尚、本明細書において、「x~y」は「x以上、y以下」の数値範囲を表すものとする。数値範囲に関して記載された上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
また、以下に記載される本発明の個々の形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の形態である。
【0010】
本発明の一態様に係るゴム組成物は、
(a)架橋反応性含フッ素ゴム;
(b)下記式(b-1)で表される化合物;及び
【化3】
(式(b-1)において、Aは単結合、-O-、-S-、ヘテロ原子含有基、直鎖又は分岐のアルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基であり、これらの基において、水素原子はフッ素原子で置換されていないか、一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されている。R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ化アルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基である。複数のR
1は同一であるか又は異なる。複数のR
2は同一であるか又は異なる。複数のR
3は同一であるか又は異なる。複数のR
4は同一であるか又は異なる。R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つはフッ素原子又はフッ素原子を含む基である。mは1~5の整数である。nは1~5の整数である。)
(c)下記式(c-1)で表される化合物;
【化4】
(式(c-1)において、n、mはそれぞれ0又は1である。tは2以上の整数である。Zはt価の連結基である。)
を含む。
【0011】
本態様に係るゴム組成物によれば、機械的特性に優れ、圧縮永久ひずみを低下でき、耐プラズマ性に優れ、パーティクルの発生を防止できるという効果が得られる。特に、機械的特性に優れる効果、圧縮永久ひずみを低下できる効果、耐プラズマ性に優れる効果及びパーティクルの発生を防止できる効果をバランスよく発揮することができる。
【0012】
本態様においては、共架橋剤として成分(b)と成分(c)とを併用することにより、ゴム組成物を架橋して得られる架橋体(含フッ素エラストマー)の機械的特性に優れる(例えば硬度が向上する)と共に圧縮永久ひずみを低下できる。また、共架橋剤として成分(c)を単独で使用する場合と比較して、加工性(混練性)を向上できる。
【0013】
本態様においては、放射線処理あるいは充填材の使用に必ずしも依拠せずに機械的特性及び小さい圧縮永久ひずみを達成できる。そのため、耐プラズマ性を損なう原因あるいはパーティクルの発生の原因になる放射線処理あるいは充填材の使用を低減乃至省略できる。
【0014】
本態様に係るゴム組成物は、任意成分として例えば有機過酸化物(成分(d))を配合して架橋することにより、架橋体(含フッ素エラストマー)が得られる。
【0015】
本態様に係るゴム組成物は、任意成分として例えば反応性化合物又はフッ素オリゴマー(成分(e))やその他の成分(成分(f))を配合してもよい。
【0016】
以下に各成分について詳しく説明する。
【0017】
(成分(a):架橋反応性含フッ素ゴム)
成分(a)は、架橋反応性含フッ素ゴムである。
【0018】
「架橋反応性」含フッ素ゴムというのは、架橋反応によって架橋可能な含フッ素ゴムを意味する。架橋反応性含フッ素ゴムは、例えば、含フッ素モノマー由来の繰返し単位を含むことができる。架橋反応性含フッ素ゴムは、1種又は2種以上の含フッ素モノマー由来の繰返し単位を含むことができる。
【0019】
含フッ素モノマーとして、例えば、下記式(a-1)で表されるテトラフルオロエチレン(TFE)、下記式(a-2)で表されるヘキサフルオロプロピレン(HFP)等が挙げられる。
CF2=CF2 (a-1)
CF2=CFCF3 (a-2)
【0020】
また、含フッ素モノマーとして、例えば、好ましくは末端位に、エチレンタイプの1つの不飽和結合を有するパーフルオロオレフィン等が挙げられる。具体例として、下記式(a-3)で表されるパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)、下記式(a-4)で表されるパーフルオロオキシアルキルビニルエーテル、下記式(a-5)で表されるパーフルオロビニルエーテル等が挙げられる。
【0021】
CF2=CFORf1 (a-3)
(式(a-3)において、Rf1は炭素数1~6のパーフルオロアルキル、例えばトリフルオロメチル又はペンタフルオロプロピルである。)
【0022】
CF2=CFORf2 (a-4)
(式(a-4)において、Rf2は1以上のエーテル基を含む炭素数1~12のパーフルオロオキシアルキル、例えばパーフルオロ-2-プロポキシプロピルである。)
【0023】
CF2=CFOCF2ORf3 (a-5)
(式(a-5)において、Rf3は、炭素数2~6の直鎖又は分枝パーフルオロアルキル、炭素数5,6の環状パーフルオロアルキル、又は酸素原子1~3個を含む炭素数2~6の直鎖又は分枝パーフルオロオキシアルキルである。)
【0024】
一実施形態において、式(a-5)で表されるパーフルオロビニルエーテルは、下記式(a-6)又は式(a-7)で表される。尚、式(a-6)で表されるパーフルオロビニルエーテルを「MOVE1」、式(a-7)で表わされるパーフルオロビニルエーテルを「MOVE2」と称する場合がある。
CF2=CFOCF2OCF2CF3 (a-6)
CF2=CFOCF2OCF2CF2OCF3 (a-7)
【0025】
一実施形態において、架橋反応性含フッ素ゴムは、式(a-1)及び式(a-2)からなる群から選択される1種以上の含フッ素モノマーに由来する繰返し単位と、式(a-3)~式(a-5)からなる群から選択される1種以上の含フッ素モノマー(コモノマー)に由来する繰返し単位とを含むコポリマーであり得る。
【0026】
架橋反応性含フッ素ゴムを製造するために用いられる含フッ素モノマーの組成(モル比)は格別限定されない。
【0027】
一実施形態において、架橋反応性含フッ素ゴムは、式(a-1)及び式(a-2)からなる群から選択される1種以上の含フッ素モノマー50~85モル%、及び式(a-3)~式(a-5)からなる群から選択される1種以上の含フッ素モノマー15~50モル%を用いて製造される。
【0028】
一実施形態において、架橋反応性含フッ素ゴムは、TFE 50~85モル%、及びPAVE 15~50モル%を用いて製造される。
【0029】
一実施形態において、架橋反応性含フッ素ゴムは、TFE 50~85モル%、及びMOVE 15~50モル%を用いて製造される。ここで、「MOVE」は、MOVE1及びMOVE2からなる群から選択される1種以上である。
【0030】
一実施形態において、架橋反応性含フッ素ゴムは、フッ化ビニリデン由来のユニットを含むか又は含まない。
【0031】
架橋反応性含フッ素ゴムは、例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(二元系FKM)、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体(三元系FKM)、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン/エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン/2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン等のフッ素ゴム(FKM)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FFKM)等のパーフルオロゴム等であり得る。
【0032】
一実施形態において、架橋反応性含フッ素ゴムは、ヨウ素及び/又は臭素を含む炭素数3~8のフルオロオレフィンに由来するユニットを含むか又は含まない。
【0033】
架橋反応性含フッ素ゴムは、架橋(硬化)の際のラジカルのアタック部位として、好ましくはヨウ素及び/又は臭素、より好ましくはヨウ素を含む。過酸化物により硬化可能な架橋反応性含フッ素ゴムは、例えば特開2006-9010等に記載されている。
【0034】
架橋反応性含フッ素ゴムは一般に、全ポリマー質量に対して0.001質量%~5質量%、好ましくは0.01質量%~2.5質量%でヨウ素を含む。ヨウ素原子は、架橋反応性含フッ素ゴムの鎖に沿って及び/又は末端位に存在し得る。
【0035】
(成分(b):式(b-1)で表される化合物)
成分(b)は、上述した式(b-1)で表される化合物である。
【0036】
一実施形態において、式(b-1)におけるAの直鎖又は分岐のアルキレン基の炭素数は1~15、好ましくは1~6である。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が例示できる。直鎖又は分岐のアルキレン基において、水素原子はフッ素原子で置換されていないか、一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されている。
【0037】
一実施形態において、Aのシクロアルキレン基の炭素数は3~8、好ましくは3~6である。シクロアルキレン基において、水素原子はフッ素原子で置換されていないか、一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されている。
【0038】
一実施形態において、Aのアリーレン基の炭素数は6~18、好ましくは6~12である。アリーレン基として、フェニレン、ナフタレニレン等が例示できる。アリーレン基において、水素原子はフッ素原子で置換されていないか、一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されている。
【0039】
一実施形態において、R1、R2、R3及びR4のアルキル基又はフッ化アルキル基のアルキル基は、直鎖又は分枝であり、炭素数は1~15、より好ましくは1~6である。一実施形態において、フッ化アルキル基は、一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。一実施形態において、フッ化アルキル基は、全部の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(パーフルオロアルキル基)である。
【0040】
一実施形態において、R1、R2、R3及びR4のアリール基の炭素数は6~18、好ましくは6~12である。アリール基として、フェニル、ナフチル等が挙げられる。アリール基の置換基は、フッ素原子、直鎖又は分枝のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基等であり、これらの基において、水素原子はフッ素原子で置換されていないか、一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されている。直鎖又は分枝のアルキル基の炭素数は好ましくは1~15(より好ましくは炭素数1~6)である。シクロアルキル基の炭素数は好ましくは3~8(より好ましくは炭素数3~6)である。アリール基の炭素数は好ましくは6~18(より好ましくは炭素数6~12)である。
【0041】
R1、R2及びR3の「フッ素原子を含む基」として、例えば、フッ化アルキル基、又はフッ素原子又はフッ化アルキル基で置換されたアリール基が挙げられる。
【0042】
式(b-1)の「-CR
1=CR
2R
3」として以下の基を例示できる。複数の-CR
1=CR
2R
3は同一であるか又は異なる。
【化5】
【0043】
一実施形態において、式(b-1)のmは、1、2、3、4又は5であり、好ましくは1である。
【0044】
一実施形態において、式(b-1)のnは、1、2、3、4又は5であり、好ましくは1である。
【0045】
一実施形態において、式(b-1)のnとmとは同一であるか又は異なる。
【0046】
式(b-1)のmが1である場合、mに対応する「-CR1=CR2R3」とAとは、ベンゼン環上においてオルト位、メタ位又はパラ位のいずれであってもよいが、パラ位であることが好ましい。
【0047】
式(b-1)のnが1である場合、nに対応する「-CR1=CR2R3」とAとは、ベンゼン環上においてオルト位、メタ位又はパラ位のいずれであってもよいが、パラ位であることが好ましい。
【0048】
式(b-1)で表わされる化合物の具体例として、下記式(b-2)~(b-4)で表される化合物が挙げられる。
【化6】
【0049】
式(b-2)~(b-4)において、R1、R2及びR3は式(b-1)で定義した通りである。tは好ましくは1~15(より好ましくは2~8、さらに好ましくは3~6)である。
【0050】
式(b-1)で表わされる化合物のさらなる具体的として、以下のような化合物が挙げられる。尚、該化合物は、例えば、WO2014/167797あるいはWO2016/017187を参照することで合成できる。
【化7】
【化8】
【0051】
(成分(c):式(c-1)で表される化合物)
成分(c)は、上述した式(c-1)で表される化合物である。
【0052】
一実施形態において、式(c-1)におけるtは2又は3である。
【0053】
tが2である場合、例えば下記式で表される化合物が挙げられる。
【0054】
CH2=CH-(O)n-Z-(O)n-CH=CH2
CH2=CH-(CH2)m-Z-(CH2)m-CH=CH2
CH2=CH-Z-CH=CH2
(上記式において、Z、m及びnは式(c-1)で定義した通りである。)
【0055】
一実施形態において、Zは、炭素数1~18の直鎖若しくは分枝鎖状のアルキレン基又はシクロアルキレン基である。Zは、酸素原子を含むか又は含まない。Zがアルキレン基又はシクロアルキレン基である場合、これらの基において、水素原子はフッ素原子で置換されていないか、一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されている。Zは、例えば、(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である。
【0056】
一実施形態において、Zは、炭素数4~12、好ましくは炭素数4~8のパーフルオロアルキレン基である。
【0057】
一実施形態において、Zは、以下から選択される1以上の基を含む。
-CF2CF2O-
-CF2CF(CF3)O-
-CF2O-
-CF(CF3)O-
-CF2CF2CF2O-
-CF2-CH2CH2O-
-C3F6O-
【0058】
一実施形態において、Zは、下記式で表わされる基である。
-(Q)p-CF2O-(CF2CF2O)m(CF2O)n-CF2-(Q)p-
(式中、Qは、炭素数1~10のアルキレン又はオキシアルキレン基であり、pは0又は1であり、m/n比は0.2~5である。)
【0059】
一実施形態において、Qは以下から選択される。
-CH2OCH2-
-CH2O(CH2CH2O)sCH2-(式中、sは1~3の整数である。)
【0060】
また、tが3の場合、Zは、好ましくは、トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオンに対応する3価の残基である。
【0061】
式(c-1)で表される化合物の具体例として、以下を例示できる。
CH
2=CH-(CF
2)
x-CH=CH
2
CH
2=CH-CH
2-(CF
2)
x-CH
2-CH=CH
2
CF
2=CH-(CF
2)
x-CH=CF
2
(式中、xは2~24である。)
【化9】
【0062】
(成分(d):有機過酸化物)
ゴム組成物は、成分(d)として、有機過酸化物を含むか又は含まない。
一実施形態においてゴム組成物は成分(d)を含み、これにより、ゴム組成物の架橋を好適に進行できる。
【0063】
成分(d)は格別限定されず、フッ素系エラストマー架橋用の公知のものを用いることができ、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)へキサン等が挙げられる。
【0064】
(成分(e):反応性化合物又はフッ素オリゴマー)
ゴム組成物は、成分(e)として、パーフルオロ骨格又はシロキサン骨格を有する反応性化合物(以下、単に「反応性化合物」ともいう)、及びフッ素オリゴマーからなる群から選択される1種以上を含むか又は含まない。
一実施形態においてゴム組成物は成分(e)を含み、これにより、ゴムの耐プラズマ性が良好になる効果が得られる。
【0065】
「反応性」化合物であるというのは、ゴム組成物の架橋(硬化)時に、反応性化合物同士が反応し得ることを意味する。この反応によって、反応性化合物同士は結合し得る。また、反応性化合物は成分(a)とも反応し得る。この反応によって、反応性化合物は成分(a)に結合し得る。反応性化合物は、そのような反応性を付与する基(反応性基)としてアルケニル基を含むことが好ましい。
【0066】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられる。アルケニル基は、これらのうちのビニル基が好ましい。
【0067】
反応性化合物は、分子内にアルケニル基を2個以上有することが好ましい。2個以上のアルケニル基は、同一であってもよく、また、異なっていてもよい。
【0068】
一実施形態において、反応性化合物は、アルケニル基を有するパーフルオロ骨格の化合物である。分子内にアルケニル基を有するパーフルオロ骨格の化合物は、例えば、2価パーフルオロポリエーテル構造又は2価パーフルオロアルキレン構造を有し得る。
【0069】
一実施形態において、反応性化合物は、2価パーフルオロポリエーテル構造又は2価パーフルオロアルキレン構造を有し、末端あるいは側鎖にアルケニル基を2個以上有する。
そのような反応性化合物は、例えば、特開2003-183402号公報の[0016]~[0022]に記載のフッ素系エラストマー、特開平11-116684号公報又は特開平11-116685号公報[0006]~[0014]に記載のパーフルオロ化合物等と同様のものが使用可能である。
【0070】
一実施形態において、反応性化合物は下記式(e-1)で表される。
CH2=CH-(X)p-(Rf-Q)a-Rf-(X)p-CH=CH2 (e-1)
式(e-1)において、2つのXは、それぞれ独立に、-CH2-、-CH2O-、CH2OCH2-、-Y-NR1SO2-又は-Y-NR1-CO-(但し、Yは-CH2-又は-Si(CH3)2-Ph-(Ph:フェニレン基))である。
R1は水素原子又は置換若しくは無置換の1価炭化水素基)である。
Rfは2価パーフルオロアルキレン基又は2価パーフルオロポリエーテル基である。
2つのpは、それぞれ独立に、0又は1である。
aは0以上の整数である。
また、Qは下記式(e-2)~(e-4)のいずれかで表される2価の基である。
【0071】
【0072】
式(e-2)~(e-4)において、X、p、R1は、式(e-1)で定義した通りである。
R3は、置換又は無置換の2価炭化水素基である。
R4は、結合途中に酸素原子、窒素原子、ケイ素原子及び硫黄原子の1種又は2種以上を介在させてもよい置換又は無置換の2価炭化水素基、あるいは下記式(e-5)又は(e-6)で表される官能基である。
【0073】
【0074】
式(e-5)及び(e-6)において、R5は置換又は無置換の1価炭化水素基、R6は炭素原子、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子及び硫黄原子の1種又は2種以上を主鎖構造中に含む基である。
【0075】
一実施形態において、式(e-1)においてa=0である。この場合、式(e-1)は、下記式(e-7)で表される。
CH2=CH-(X)p-Rf-(X)p-CH=CH2 (e-7)
式(e-7)において、X、p、Rfは式(e-1)で定義した通りある。
【0076】
Rfの具体例として下記の基が挙げられる。
-CmF2n-(m、n:1以上の整数)
-[CF(CF3)OCF2]p-(CF2)r-[CF2OCF(CF3)]q-
-CF2CF2-[OCF2CF2CF2]w-OCF2CF2-
【0077】
一実施形態において、反応性化合物は、アルケニル基を有するシロキサン骨格の化合物である。
分子内にアルケニル基を有するシロキサン骨格の化合物としては、例えば、メチルビニルシロキサンの重合体、ジメチルシロキサンの重合体、ジメチルシロキサンとメチルビニルシロキサンとの共重合体、ジメチルシロキサンとメチルビニルシロキサンとメチルフェニルシロキサンとの共重合体等が挙げられる。その他、付加重合の液状シリコーンゴムである分子中にアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0078】
反応性化合物は、市販品としても入手でき、例えば、信越化学工業株式会社製「SIFEL」(登録商標)等が挙げられる。
【0079】
成分(e)のフッ素オリゴマーは、C、F、Oの元素から構成されるオリゴマーであって、例えば、以下の基本骨格を含むフッ素オリゴマーが挙げられる。
【0080】
【0081】
【0082】
上記式(e-8)~(e-15)で表されるフッ素オリゴマーは、n、mの数により分子量が異なり、分子量が大きくなるほど一般的に粘度及び沸点が高くなる。上記基本骨格を含むフッ素オリゴマーは、合成したものを用いてもよいし、フッ素系溶剤(オイル、グリース)として市販されているものを用いてもよい。市販されているフッ素オリゴマーは、n、mの数により粘性等の特性が異なる様々なグレードの製品が知られている。例えば、デュポン社製のクライトックス(登録商標)シリーズ;ソルベイ社のフォンブリン(登録商標)シリーズ、ガルデン(登録商標)シリーズ;ダイキン社製のデムナムシリーズ;等が挙げられる。なお、上記の製品及び骨格は、単なる例示に過ぎず、水素を含まなければ、その他の骨格、製品であってもよい。また、上記式(e-8)~(e-15)に示すように、フッ素オリゴマーは基本骨格にエーテル結合を含み、また、ゴム組成物の架橋(硬化)時に、フッ素オリゴマー同士は結合(架橋)しない。
【0083】
成分(e)として、以上に説明した1種を単独で用いるか又は2種以上を併用することができる。
【0084】
(成分(f):他の成分)
ゴム組成物は、成分(f)として、上述した成分(a)~(e)以外の他の成分を1種以上含むか又は含まない。
【0085】
成分(f)としては、例えば、充填材、増粘剤、顔料、カップリング剤、酸化防止剤、安定剤等が挙げられる。
【0086】
充填材としては、例えば、フッ素樹脂、カーボンブラック、シリカ等が挙げられる。
一実施形態において、ゴム組成物は、充填材を含まないか、あるいは、成分(a)100質量部に対して、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、5質量部以下、3質量部以下、2質量部以下、1質量部以下又は0.5質量部以下の充填材を含む。
【0087】
(配合量)
一実施形態において、ゴム組成物は、成分(a)100gに対して成分(b)を、1mmol以上、2mmol以上、3mmol以上、4mmol以上又は5mmol以上含み得、また、60mmol以下、50mmol以下、40mmol以下又は30mmol以下含み得る。
ゴム組成物は、成分(a)100gに対して成分(b)を5~30mmol含むことが好ましい。
【0088】
一実施形態において、ゴム組成物は、成分(a)100gに対して成分(c)を、0.5mmol以上、1mmol以上、1.5mmol以上又は2mmol以上含み得、また、60mmol以下、50mmol以下、40mmol以下又は30mmol以下含み得る。
ゴム組成物は、成分(a)100gに対して成分(c)を2~30mmol含むことが好ましい。
【0089】
一実施形態において、ゴム組成物は、成分(a)100gに対して成分(b)及び成分(c)を合計で、1mmol以上、2mmol以上、3mmol以上、4mmol以上、5mmol以上、6mmol以上又は7mmol以上含み得、また、80mmol以下、70mmol以下、60mmol以下、50mmol以下又は40mmol以下含み得る。
ゴム組成物は、成分(a)100gに対して成分(b)及び成分(c)を合計で7~40mmol含むことが好ましい。
【0090】
一実施形態において、ゴム組成物は、成分(a)100質量部に対して成分(d)を0.1~5質量部含み得る。
【0091】
一実施形態において、ゴム組成物は、成分(a)100質量部に対して成分(e)を1~20質量部含み得る。
【0092】
一実施形態において、ゴム組成物の50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、99.8質量%以上又は実質的に100質量%が、
成分(a)~(c)であるか、
成分(a)~(d)であるか、
成分(a)~(e)であるか、
成分(a)~(c)及び(f)であるか、
成分(a)~(d)及び(f)であるか、又は
成分(a)~(e)及び(f)である。
尚、「実質的に100質量%」の場合、不可避不純物を含んでもよい。
【0093】
2.含フッ素エラストマー
本発明の一態様に係る含フッ素エラストマーは、本発明の一態様に係るゴム組成物を架橋してなる。
【0094】
ゴム組成物を架橋する際の条件(架橋条件)は格別限定されず、例えば、ゴム組成物を100~250℃で10分~5時間加熱するのが好ましい。通常、一次架橋として、金型に原料(ゴム組成物)を入れプレス加工しながら架橋する。1次架橋は、例えば、150~200℃で5~60分加熱する。その後、金型から外して、空気中又は不活性ガス雰囲気で、2次架橋する。2次架橋は、例えば、150~300℃で1~100時間加熱する。架橋は電気炉等を用いておこなうことができる。2次架橋で熱履歴を与えることにより、使用中の変形等を防ぐことができる。
架橋に際して放射線処理は必ずしも必要ではなく、放射線処理を省略することは好ましいことである。
【0095】
一実施形態において、含フッ素エラストマーの硬度は、62以上又は63以上である。上限は格別限定されず、例えば90以下である。尚、硬度は、実施例に記載の方法によって測定される値である。
【0096】
一実施形態において、含フッ素エラストマーの圧縮永久ひずみ(150℃×72時間)は、27%以下、25%以下、23%以下又は21%以下である。下限は格別限定されず、例えば5%以上である。尚、圧縮永久ひずみ(150℃×72時間)は、実施例に記載の方法によって測定される値である。
【0097】
3.シール材
本発明の一態様に係るシール材は、本発明の一態様に係る含フッ素エラストマーを含む。
【0098】
シール材の形態は格別限定されず、例えば、ガスケット又はシールリング等の成形体であり得る。
【0099】
シール材の用途は格別限定されず、種々の装置に広く適用でき、例えば半導体製造装置用のシール材として好適である。半導体製造装置としては、例えば、プラズマ装置、エッチング装置、プラズマCVD装置等が挙げられる。
【実施例】
【0100】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。
【0101】
実施例及び比較例に用いた成分は下記の通りである。
成分(a):FKM、ダイエルG912、ダイキン工業株式会社製
成分(b):下記(b-5)で表される化合物
【化14】
成分(c):下記(c-2)で表される化合物、TAIC(トリアリルイソシアヌレート)、三菱ケミカル株式会社製
【化15】
成分(c):下記(c-3)で表される化合物、1,6-ジビニル(ドデカフルオロヘキサン)、東ソー・ファインケム株式会社製
CH
2=CH-(CF
2)
6-CH=CH
2 (c-3)
成分(d):2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)へキサン、パーヘキサ25B、日油株式会社製
成分(e):パーフルオロポリエーテル(反応性化合物)、SIFEL8370A、信越化学株式会社製
成分(e):パーフルオロポリエーテル(反応性化合物)、SIFEL8370B、信越化学株式会社製
成分(e):パーフルオロポリエーテル(フッ素オリゴマー)、KrytoxVPF16256、デュポン社製
成分(f):充填材(カーボンブラック)、サーマックスN990、カンカーブ社製
【0102】
(実施例1~7、比較例1~6)
表1に示す組成のゴム組成物をオープンロールで混練した後、型に入れて大気中で170℃の温度で15分間熱処理して、プレス成形しながら1次架橋した。次いで、型から外して、空気中で200℃10時間2次架橋した。このようにして、含フッ素エラストマーの成形体を得た。成形体の形状はOリング(AS568-214;内径24.99mm、太さ3.53mm)とした。
【0103】
得られた含フッ素エラストマーについて以下の評価をした。
(1)硬度
成形体(Oリング)をBAREISS製マイクロゴム硬度計(型式:HPEII shore AM/M)に設置して硬度を測定した。
【0104】
(2)圧縮永久ひずみ(CS)[%]
成形体(Oリング)を25%圧縮させ150℃×72時間で処理した後、開放し室温に30分放置した。JIS K 6262に準拠して、試験前後の厚さを測定し、以下の式にて圧縮永久ひずみを算出した。
圧縮永久ひずみ[%]=100×[(試験前の厚さ)-(試験後の厚さ)]/[(試験前の厚さ)-(スペーサーの厚さ)]
【0105】
(3)耐プラズマ性
(3-1)重量減少率[%]
成形体(Oリング)に下記条件でプラズマを曝露し、曝露前後での成形体の重量減少率を算出した。
・装置:神港精機製表面波プラズマエッチング装置
・ガス:O2(425sccm)+CF4(425sccm)
・処理圧力:40Pa
・出力:3kW
・曝露時間:2時間
・重量減少率[%]=[(プラズマ曝露前の重量-プラズマ曝露直後の重量)/(プラズマ曝露前の重量)]×100
(3-2)パーティクル
上記のプラズマ曝露に伴うパーティクル発生の有無を目視により観察した。
【0106】
(4)引張特性
卓上形精密万能試験機(株式会社島津製作所製、型式:オートグラフAGS-500NX)を用いて、室温25±2℃、引張速度300mm/minの条件で、成形体(Oリング)の引張強さ[MPa]、切断時伸び[%]及びM100[MPa]を測定した。
【0107】
以上の結果を表1に示す。
【0108】
【0109】
上記に本発明の実施形態及び/又は実施例を幾つか詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施形態及び/又は実施例に多くの変更を加えることが容易である。従って、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
この明細書に記載の文献、及び本願のパリ条約による優先権の基礎となる出願の内容を全て援用する。