(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】光学素子、液晶表示装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20241015BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20241015BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20241015BHJP
C09K 19/08 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
G02F1/1337 515
G02F1/13 500
G02F1/1335 510
C09K19/08
(21)【出願番号】P 2022528501
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2021017813
(87)【国際公開番号】W WO2021246113
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2020098270
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(72)【発明者】
【氏名】八木 寛雄
(72)【発明者】
【氏名】本田 順也
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-264624(JP,A)
【文献】特開2006-030646(JP,A)
【文献】特開昭62-251720(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0014965(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第103724168(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/13
G02F 1/1335
G02F 1/1368
C09K 19/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された画素電極を有する駆動基板と、
駆動基板と対向して配置される対向基板と、
駆動基板と対向基板との間に挟持される液晶材料層と、
を含んでおり、
駆動基板および対向基板の液晶材料層側の面には、無機酸化膜から成る配向膜が形成されており、
配向膜には構造式(1)を有する材料が塗布されることによって表面処理が施されている、
光学素子。
【化1】
ここで、構造式(1)を有する材料はフッ素原子を含まず、
Dは重水素原子を示し、
X
1、X
2およびX
3は、それぞれ、独立して、環式化合物であり、
A
1、A
2は、それぞれ、独立して、C
2H
4、C
4H
8およびエステル結合のいずれかであり、
n
1ないしn
3は、それぞれ独立して、0または1であり、
n
4は、0ないし5のいずれかであり、
R
1は、末端の炭素鎖が2以上のアルキル基、アルケニル基およびアルコキシ基のいずれかである。
【請求項2】
構造式(1)においてn
1が0のとき、R
1の炭素数の値とn
4の値との和が5以上である、
請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
構造式(1)を有する材料において、水素原子のいずれかは重水素原子で置換されている、
請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
配向膜には構造式(1)を有する材料が塗布されることによって表面処理が施された後、更に、シランカップリング材の塗布による表面処理が施されている、
請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
液晶材料層は構造式(2)を有する液晶組成物を含む、
請求項1に記載の光学素子。
【化2】
ここで、構造式(2)を有する液晶組成物において、
Y
1、Y
2、Y
3およびY
4は、それぞれ、独立して、環式化合物であり、少なくとも1つ以上の水素はフッ素原子によって置換されており、
A
1、A
2およびA
3は、それぞれ、独立して、単結合、C
2H
4、C
4H
8、エステル結合およびCF
2Oのいずれかであり、
m
1ないしm
5は、それぞれ独立して、0か1であり、
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基および末端の炭素数が2以上のアルコキシ基のいずれかである。
【請求項6】
構造式(2)を有する液晶組成物において、水素原子のいずれかは重水素原子で置換されている、
請求項5に記載の光学素子。
【請求項7】
マトリクス状に配置された画素電極を有する駆動基板と、
駆動基板と対向して配置される対向基板と、
駆動基板と対向基板との間に挟持される液晶材料層と、
対向基板側に配置される第1偏光子と、
駆動基板側に配置される第2偏光子と、
を含んでおり、
駆動基板および対向基板の液晶材料層側の面には、無機酸化膜から成る配向膜が形成されており、
配向膜には構造式(1)を有する材料が塗布されることによる表面処理が施されている、
液晶表示装置。
【化3】
ここで、構造式(1)を有する材料はフッ素原子を含まず、
Dは重水素原子を示し、
X
1、X
2およびX
3は、それぞれ、独立して、環式化合物であり、
A
1、A
2は、それぞれ、独立して、C
2H
4、C
4H
8およびエステル結合のいずれかであり、
n
1ないしn
3は、それぞれ独立して、0または1であり、
n
4は、0ないし5のいずれかであり、
R
1は、末端の炭素鎖が2以上のアルキル基、アルケニル基およびアルコキシ基のいずれかである。
【請求項8】
マトリクス状に配置された画素電極を有する駆動基板と、
駆動基板と対向して配置される対向基板と、
駆動基板と対向基板との間に挟持される液晶材料層と、
対向基板側に配置される第1偏光子と、
駆動基板側に配置される第2偏光子と、
を含んでおり、
駆動基板および対向基板の液晶材料層側の面には、無機酸化膜から成る配向膜が形成されており、
配向膜には構造式(1)を有する材料が塗布されることによる表面処理が施されている、
液晶表示装置を備えた電子機器。
【化4】
ここで、構造式(1)を有する材料はフッ素原子を含まず、
Dは重水素原子を示し、
X
1、X
2およびX
3は、それぞれ、独立して、環式化合物であり、
A
1、A
2は、それぞれ、独立して、C
2H
4、C
4H
8およびエステル結合のいずれかであり、
n
1ないしn
3は、それぞれ独立して、0または1であり、
n
4は、0ないし5のいずれかであり、
R
1は、末端の炭素鎖が2以上のアルキル基、アルケニル基およびアルコキシ基のいずれかである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学素子、液晶表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の基板の間に液晶材料層を挟んだ構成の光学素子を有する液晶表示装置が知られている。液晶表示装置は、画素を光シャッター(ライト・バルブ)として動作させることによって画像を表示する。
【0003】
近年、大画面の画像を表示可能な表示装置として、液晶表示装置を用いた投射型表示装置(プロジェクタ)の開発が進められている。液晶表示装置を用いた投射型表示装置にあっては、ライトバルブとしての液晶表示装置に対して非常に強い光が入射する。このため、耐熱性等の観点から、このような用途の液晶表示装置にあっては、配向膜として、シリコン酸化物(SiOx)などの無機材料から成る蒸着膜が用いられることが多い。
【0004】
シリコン酸化物の蒸着膜は表面などに水酸基(-OH)を有する。水酸基は、液晶材料層に含まれる液晶材料の分解反応を促進する特性を有する。分解反応においては、主にフッ素の脱離が認められ、また、フッ素を含まない化合物においてもある程度の分解が認められる。
【0005】
このため、無機材料から成る配向膜に対して表面処理を施すといったことが行われている。例えば、特許文献1には、無機材料から成る配向膜にシランカップリング処理を施して表面の水酸基を被覆し、液晶材料の分解反応を抑えるといった技術が開示されている。あるいは又、特許文献2には、直鎖アルコールを用いて無機材料から成る配向膜の表面処理を行い、液晶材料層の配向安定性を向上させるといった技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-22009号公報
【文献】特開平11-160711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
配向膜にシランカップリング処理を施すとき、シランカップリング材はネットワークを作る。このため、配向膜の厚さ方向に対するシランカップリング材の浸透が妨げられるので、配向膜内の水酸基を充分被覆することが難しい。また、直鎖アルコールを用いて配向膜の表面処理を行うと、配向膜に含まれる直鎖アルコールが液晶材料に溶解することが考えられる。これは、屈折率異方性のシフトや透明点の低下などといった液晶材料の特性変化を生ずる要因となる。
【0008】
従って、本開示の目的は、配向膜の水酸基を充分被覆することができ、また、液晶材料の特性への影響も少ない光学素子、係る光学素子を有する液晶表示装置、係る液晶表示装置を有する電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本開示に係る光学素子は、
マトリクス状に配置された画素電極を有する駆動基板と、
駆動基板と対向して配置される対向基板と、
駆動基板と対向基板との間に挟持される液晶材料層と、
を含んでおり、
駆動基板および対向基板の液晶材料層側の面には、無機酸化膜から成る配向膜が形成されており、
配向膜には構造式(1)を有する材料が塗布されることによって表面処理が施されている、
光学素子である。
【化1】
ここで、構造式(1)を有する材料はフッ素原子を含まず、
Dは重水素原子を示し、
X
1、X
2およびX
3は、それぞれ、独立して、環式化合物であり、
A
1、A
2は、それぞれ、独立して、C
2H
4、C
4H
8およびエステル結合のいずれかであり、
n
1ないしn
3は、それぞれ独立して、0または1であり、
n
4は、0ないし5のいずれかであり、
R
1は、末端の炭素鎖が2以上のアルキル基、アルケニル基およびアルコキシ基のいずれかである。
【0010】
上記の目的を達成するための本開示に係る液晶表示装置は、
マトリクス状に配置された画素電極を有する駆動基板と、
駆動基板と対向して配置される対向基板と、
駆動基板と対向基板との間に挟持される液晶材料層と、
対向基板側に配置される第1偏光子と、
駆動基板側に配置される第2偏光子と、
を含んでおり、
駆動基板および対向基板の液晶材料層側の面には、無機酸化膜から成る配向膜が形成されており、
配向膜には上記構造式(1)を有する材料が塗布されることによる表面処理が施されている、
液晶表示装置である。
【0011】
上記の目的を達成するための本開示に係る電子機器は、
マトリクス状に配置された画素電極を有する駆動基板と、
駆動基板と対向して配置される対向基板と、
駆動基板と対向基板との間に挟持される液晶材料層と、
対向基板側に配置される第1偏光子と、
駆動基板側に配置される第2偏光子と、
を含んでおり、
駆動基板および対向基板の液晶材料層側の面には、無機酸化膜から成る配向膜が形成されており、
配向膜には上記構造式(1)を有する材料が塗布されることによる表面処理が施されている、
液晶表示装置を備えた電子機器である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示に係る光学素子を備えた液晶表示装置の模式図である。
【
図2】
図2Aは、液晶表示装置の基本的な構成を説明するための模式的な断面図である。
図2Bは、液晶表示装置における画素を説明するための模式的な回路図である。
【
図3】
図3は、本開示に係る光学素子を備えた液晶表示装置を切断したときの模式的な一部断面図である。
【
図5】
図5は、レンズ交換式一眼レフレックスタイプのデジタルスチルカメラの外観図であり、
図5Aにその正面図を示し、
図5Bにその背面図を示す。
【
図6】
図6は、ヘッドマウントディスプレイの外観図である。
【
図7】
図7は、シースルーヘッドマウントディスプレイの外観図である。
【
図8】
図8は、車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面等を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示に係る、光学素子、液晶表示装置および電子機器、全般に関する説明
2.第1の実施形態
3.評価方法
4.参考例
5.実施例1
6.実施例2
7.実施例3
8.電子機器の説明
9.応用例
10.その他
【0014】
[本開示に係る、光学素子、液晶表示装置および電子機器、全般に関する説明]
以下の説明において、本開示に係る液晶表示装置および本開示に係る電子機器に用いられる液晶表示装置を、単に、「本開示の液晶表示装置」と呼ぶ場合がある。そして、本開示に係る光学素子および本開示の液晶表示装置に用いられる光学素子を、単に、「本開示の光学素子」と呼ぶ場合がある。また、本開示の液晶表示装置、本開示の光学素子および本開示に係る電子機器を、単に「本開示」と呼ぶ場合がある。
【0015】
上述したように、本開示において、配向膜には構造式(1)を有する材料が塗布されることによって表面処理が施されている。この材料はネットワークを形成しないので、配向膜の厚さ方向に対する浸透性に優れており、配向膜の水酸基を充分被覆することができる。従って、液晶材料層に含まれる液晶材料の分解反応を抑制することができる。更には、末端のR1の炭素数を長くすることによって配向膜近傍の液晶分子の配向性を向上させることができるといった特徴を有する。また、構造式(1)を有する材料は液晶性を持つので、例え液晶材料層に溶解したとしても特性変化を生ずる要因とはなり難い。
【0016】
構造式(1)を有する材料の配向膜への塗布は、配向膜上に気相処理によって行ってもよいし、液相処理によって行ってもよい。気相処理の場合、例えば、100Pa、100°Cの環境下で、キャリアとしてのN2ガスとともに蒸気を配向膜に接触させることによって行うことができる。尚、シール材を事後的に塗布する場合には、表面処理がされたシール部の領域をイソプロピルアルコール(IPA)などで洗浄することが好ましい。
【0017】
あるいは又、例えば対向基板のシール部にUV硬化性のシール材を塗布したのち、真空雰囲気内で、駆動基板と対向基板の配向膜上に構造式(1)を有する材料を所定量滴下した後、続けて液晶材料を塗布し、次いで、駆動基板と対向基板とを貼り合わせたのちUV照射を行うといった構成とすることもできる。
【0018】
構造式(1)を有する材料にあっては、重水素原子を有することに基づく同位体効果によって、配向膜表面をキャップした材料自体の分解を抑制することができる。尚、構造式(1)を有する材料であって環数が2のものについては、材料の長さが短く、配向を乱す可能性がある。従って、本開示にあっては、構造式(1)においてn1が0のとき、R1の炭素数の値とn4の値との和が5以上である構成とすることが好ましい。尚、構造式(1)を有する材料において、水素原子のいずれかは重水素原子で置換されている構成であってもよい。
【0019】
上述した各種の好ましい構成を含む本開示において、配向膜には構造式(1)を有する材料が塗布されることによって表面処理が施された後、更に、シランカップリング材の塗布による表面処理が施されている構成とすることができる。シランカップリング材の構成は特に限定するものではなく、トリメトキシデシルシランやシラザンなどといった周知の材料を適宜選択して用いればよい。この構成によれば、構造式(1)を有する材料とシランカップリング材との相乗効果によって、より効果的に配向膜の水酸基を被覆することができる。
【0020】
上述した各種の好ましい構成を含む本開示において、液晶材料層は構造式(2)を有する液晶組成物を含む構成とすることができる。
【化2】
ここで、構造式(2)を有する液晶組成物において、
Y
1、Y
2、Y
3およびY
4は、それぞれ、独立して、環式化合物であり、少なくとも1つ以上の水素はフッ素原子によって置換されており、
A
1、A
2およびA
3は、それぞれ、独立して、単結合、C
2H
4、C
4H
8、エステル結合およびCF
2Oのいずれかであり、
m
1ないしm
5は、それぞれ独立して、0か1であり、
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基および末端の炭素数が2以上のアルコキシ基のいずれかである。また、構造式(2)を有する液晶組成物において、水素原子のいずれかは重水素原子で置換されている構成とすることができる。尚、液晶組成物には,光による分解を抑える添加剤を少量加えても良い。
【0021】
光学素子に用いられる支持基板として、ガラスや石英などの透明材料から成る基板を用いることができる。対向基板に用いられる支持基板についても同様である。対向基板に設けられる対向電極は、インジウムスズ酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電材料を用いて形成することができる。尚、場合によっては、光透過性を有するほどに薄膜化した金属膜を用いることもできる。対向電極は各画素に対する共通電極として機能する。
【0022】
透過型の光学素子を構成する場合、駆動基板に設けられる画素電極は上述した透明導電材料を用いて形成することができる。一方、反射型の光学素子を構成する場合、画素電極は銀(Ag)やアルミニウム(Al)などの金属材料を用いて形成することができる。
【0023】
本開示に用いられる配向膜は、例えば、シリコン酸化物の蒸着膜などによって得ることができる。配向方向は、支持基板に対する蒸着方向によって制御することができる。例えば、シリコン酸化物を支持基板上に斜方蒸着することによって、液晶分子を所定の方向に配向させる配向膜を形成することができる。
【0024】
本開示の光学素子において、スイッチング素子を構成する薄膜トランジスタは、支持基板上に半導体材料層等を形成し加工することによって構成することができる。
【0025】
本開示に用いられる各種の配線やコンタクトを構成する材料は特に限定するものではなく、例えば、アルミニウム(Al)、Al-CuやAl-Si等のアルミニウム合金、タングステン(W)、タングステンシリサイド(WSix)などのタングステン合金といった金属材料を用いることができる。
【0026】
本開示に用いられる絶縁層や絶縁膜を構成する材料は、本開示の実施に支障がない限り、特に限定するものではない。例えば、シリコン酸化物などの無機材料や、ポリイミドなどの有機材料を用いることができる。
【0027】
液晶表示装置は、モノクロ画像を表示する構成であってもよいし、カラー画像を表示する構成であってもよい。液晶表示装置の画素(ピクセル)の値として、U-XGA(1600,1200)、HD-TV(1920,1080)、Q-XGA(2048,1536)の他、(3840,2160)、(7680,4320)等、画像用解像度の幾つかを例示することができるが、これらの値に限定するものではない。
【0028】
また、本開示の液晶表示装置を備えた電子機器として、直視型や投射型の表示装置の他、画像表示機能を備えた各種の電子機器を例示することができる。
【0029】
本明細書における各種の条件は、厳密に成立する場合の他、実質的に成立する場合にも満たされる。設計上あるいは製造上生ずる種々のばらつきの存在は許容される。また、以下の説明において用いる各図面は模式的なものであり、実際の寸法やその割合を示すものではない。
【0030】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、本開示に係る、光学素子、液晶表示装置および電子機器に関する。
【0031】
図1は、本開示に係る光学素子を備えた液晶表示装置の模式図である。
【0032】
第1の実施形態に係る液晶表示装置は、アクティブマトリクス方式の液晶表示装置である。
図1に示すように、液晶表示装置10は、マトリクス状に配置されている画素PX、画素PXを駆動するための水平駆動回路11および垂直駆動回路12といった各種回路を備えている。符号SCLは画素PXを走査するための走査線であり、符号DTLは画素PXに各種の電圧を供給するための信号線である。画素PXは、例えば水平方向にM個、垂直方向にN個、合計M×N個が、マトリクス状に配置されている。
図1に示す対向電極は、各液晶セルについて共通の電極として設けられている。尚、
図1に示す例において、水平駆動回路11および垂直駆動回路12は、それぞれ、液晶表示装置10の一端側に配置されているとしたが、これは例示に過ぎない。
【0033】
図2Aは、液晶表示装置の基本的な構成を説明するための模式的な断面図である。
図2Bは、液晶表示装置における画素を説明するための模式的な回路図である。
【0034】
図2Aに示すように、液晶表示装置10は、
マトリクス状に配置された画素電極を有する駆動基板100と、
駆動基板100と対向して配置される対向基板180と、
駆動基板100と対向基板180との間に挟持される液晶材料層170と、
対向基板180側に配置される第1偏光子201と、
駆動基板100側に配置される第2偏光子202と、
を含んでいる。尚、第1偏光子201と第2偏光子202とは、クロスニコルまたはパラレルニコルの関係となるように配される。偏光子201,202の構成は特に限るものではなく、吸収型の偏光子であってもよいし、ワイヤーグリッド偏光子であってもよい。耐熱性が要求される場合には、偏光子201,202をワイヤーグリッド偏光子とすることが好ましい。
【0035】
駆動基板100と対向基板180とは、シール部190によって封止されている。シール部190は液晶材料層170を囲む環状である。これらによって、光学素子1が形成される。即ち、液晶表示装置10は、第1偏光子201と第2偏光子202とで光学素子1を挟むことによって構成されている。光学素子1は透過する光の偏光状態を制御する位相変換素子として作用する。液晶表示装置10は透過型の液晶表示装置である。
【0036】
駆動基板100には、例えばITOといった透明導電材料膜がパターニングされて成る画素電極が設けられている。より具体的には、駆動基板100は、例えば石英ガラスから成る矩形状の支持基板と、液晶材料層170側の面に設けられたトランジスタおよび画素電極、画素電極上に設けられた配向膜などから構成されている。対向基板180には、例えばITOといった透明導電材料から成る対向電極が設けられている。より具体的には、対向基板180は、例えば石英ガラスから成る矩形状の支持基板と、液晶材料層170側の面に設けられた対向電極、対向電極上に設けられた配向膜などから構成されている。尚、図示の都合上、
図2Aの駆動基板100や対向基板180は簡略化して示した。
【0037】
図2Bに示すように、画素PXを構成する液晶セルは、駆動基板100に設けられる透明画素電極と、透明画素電極に対応する部分の液晶材料層や対向電極によって構成される。液晶材料層の劣化を防ぐために、液晶表示装置10の駆動の際に、対向電極には正極性あるいは負極性の共通電位V
comが交互に印加される。尚、画素PXにおいて液晶材料層と対向電極とを除いた各要素は、
図2Aに示す駆動基板100に形成されている。
【0038】
図2Bに示すように、薄膜トランジスタTRの一方のソース/ドレイン領域は信号線DTLに接続され、他方のソース/ドレイン領域は透明画素電極および容量部CSの一方の電極に接続されている。信号線DTLから供給される画素電圧は、走査線SCLの走査信号によって導通状態とされた薄膜トランジスタTRを介して、透明画素電極に印加される。透明画素電極と容量部CSの一方の電極は導通しているので、画素電圧は、容量部CSの一方の電極にも印加される。尚、容量部の他方の電極には共通電位V
comが印加される。この構成においては、薄膜トランジスタTRが非導通状態とされた後においても、透明画素電極の電圧は、液晶セルの容量および容量部CSによって保持される。
【0039】
次いで、断面図を参照して液晶表示装置10の構造について詳しく説明する。
図3は、本開示に係る光学素子を備えた液晶表示装置を切断したときの模式的な一部断面図である。
【0040】
駆動基板100の構成について説明する。駆動基板100を構成する支持基板101上には、図においてX方向に延びる走査線111(
図1におけるSCLに対応する)が形成されている。走査線111上を含む全面には絶縁膜112が形成されており、その上に、薄膜トランジスタTRを構成する半導体材料層121が形成されている。半導体材料層121上を含む全面にはゲート絶縁膜122が形成されており、その上に、ゲート電極124が形成されている。ゲート絶縁膜122と絶縁膜112には、走査線111が露出する開口が設けられており、この部分にゲート電極124と走査線111とのコンタクト123が形成されている。
【0041】
ゲート電極124上を含む全面には絶縁膜125が形成されている。絶縁膜125上には、薄膜トランジスタTRの上方に位置する遮光膜131などを含む配線層130が形成されている。配線層130は、複数の材料層が積層して構成されており、積層される配線や電極などの間は絶縁層で離隔されている。以下の説明において、配線層130を構成する種々の絶縁層を、符号130Aを用いて表す場合がある。
【0042】
遮光膜131は遮光性を有する導電材料から形成されている。絶縁膜125とゲート絶縁膜122とには図示せぬコンタクトが形成されており、遮光膜131はこのコンタクトを介して、薄膜トランジスタTRの他方のソース/ドレイン領域と導通する。遮光膜131には、導通状態とされた薄膜トランジスタTRを介して、信号線から画素電圧が印加される。
【0043】
遮光膜131の上方には電極132が形成されている。後述するように、電極132には共通電位線から共通電位が印加され、容量部CSの電極として機能する。
【0044】
電極132の上方には、図においてY方向に延びる信号線134(
図1におけるDTLに対応する)が形成されている。配線層130と絶縁膜125とゲート絶縁膜122とには図示せぬコンタクトが形成されており、遮光膜131はこのコンタクトを介して、薄膜トランジスタTRの一方のソース/ドレイン領域と導通する。
【0045】
信号線134の上方には、図においてY方向に延びる共通電位線136が形成されている。配線層130には、電極132が露出する開口が設けられており、この部分にコンタクト135が形成されている。共通電位線136は、コンタクト135を介して、電極132と導通する。電極132と遮光膜131とによって、容量部CSが形成される。
【0046】
共通電位線136の上方には、中継電極138が形成されている。配線層130には、遮光膜131が露出する開口が設けられており、この部分にコンタクト137が形成されている。中継電極138は、コンタクト137を介して、遮光膜131と導通する。
【0047】
中継電極138上を含む全面には配線層130の表層としての絶縁膜が形成されている。絶縁膜上には、透明導電材料膜が所定のピッチで2次元マトリクス状に分割されて成る透明画素電極161が形成されている。符号139は、透明画素電極161と中継電極138とのコンタクトを示す。透明画素電極161には、コンタクト139を介して、容量部CSが保持した画素電圧が供給される。そして、透明画素電極161上を含む全面には平坦化膜162が形成され、その上に無機酸化膜(例えばシリコン酸化物)から成る配向膜163が形成されている。
【0048】
引き続き、対向基板180の構成について説明する。対向基板180は、例えば石英ガラスから成る矩形状の支持基板181と、液晶材料層170側の面に設けられた対向電極182、対向電極182上に設けられた無機酸化膜(例えばシリコン酸化物)から成る配向膜183を含んでいる。対向電極182は共通電極として作用する。
【0049】
液晶材料層170は、駆動基板100の配向膜163と対向基板180の配向膜183とに挟まれている。無電界時の液晶分子171の配向状態は、配向膜163,183によって規定される。液晶表示装置10は、例えば垂直配向(VA)型の液晶表示装置である。
【0050】
以上説明したように、駆動基板100および対向基板180の液晶材料層170側の面には、無機酸化膜から成る配向膜163,183が形成されている。そして、配向膜163,183には構造式(1)を有する材料が塗布されることによって表面処理が施されている。
【化3】
ここで、構造式(1)を有する材料はフッ素原子を含まず、
Dは重水素原子を示し、
X
1、X
2およびX
3は、それぞれ、独立して、環式化合物であり、
A
1、A
2は、それぞれ、独立して、C
2H
4、C
4H
8およびエステル結合のいずれかであり、
n
1ないしn
3は、それぞれ独立して、0または1であり、
n
4は、0ないし5のいずれかであり、
R
1は、末端の炭素鎖が2以上のアルキル基、アルケニル基およびアルコキシ基のいずれかである。例えば、X
1、X
2およびX
3は、それぞれ、独立して、トランスシクロヘキサン、ベンゼン環およびナフタレン環のいずれかを少なくとも含むといった構成とすることができる。
【0051】
構造式(1)においてn1が0のとき、R1の炭素数の値とn4の値との和が5以上であることが好ましい。また、構造式(1)を有する材料において、水素原子のいずれかは重水素原子で置換されていてもよい。
【0052】
構造式(1)を有する材料はネットワークを形成しないので、配向膜の厚さ方向に対する浸透性に優れており、配向膜の水酸基を充分被覆することができる。また、構造式(1)を有する材料は液晶性を持つので、例え液晶材料層に溶解したとしても特性変化を生ずる要因とはなり難い。
【0053】
以下、構造式(1)に示される材料の例を示す。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
駆動基板100の配向膜163と対向基板180の配向膜183とに挟まれている液晶材料層170は構造式(2)を有する液晶組成物を含む。
【化15】
ここで、構造式(2)を有する液晶組成物において、
Y
1、Y
2、Y
3およびY
4は、それぞれ、独立して、環式化合物であり、少なくとも1つ以上の水素はフッ素原子によって置換されており、
A
1、A
2およびA
3は、それぞれ、独立して、単結合、C
2H
4、C
4H
8、エステル結合およびCF
2Oのいずれかであり、
m
1ないしm
5は、それぞれ独立して、0か1であり、
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基および末端の炭素数が2以上のアルコキシ基のいずれかである。構造式(2)を有する液晶組成物において、水素原子のいずれかは重水素原子で置換されていてもよい。
【0066】
以下、後述する参考例および実施例において使用した液晶材料層170の組成表を示す。
【0067】
【0068】
[評価方法]
後述する参考例および実施例に係る液晶表示装置を用いて、耐光性と耐湿性についての評価を行った。
【0069】
耐光性の評価方法について説明する。今回は、照射する光として、410ナノメートルより短い波長をカットした高圧水銀ランプの光を用いた。参考例や実施例に係る液晶表示装置を一定の動作条件で駆動状態とし、温度を一定に保った状態で、照度を一定に保った光を均一に照射した。一定時間ごとに確認を行い、液晶材料が分解して気泡が生ずるまでの経過時間を測定した。参考例の液晶表示装置における経過時間を基準とし、実施例に係る液晶表示装置における経過時間から参考例に対する比を求めた。参考例に対する比が大きいほど、耐光性が優れているといった評価となる。
【0070】
引き続き、耐湿性の評価方法について説明する。参考例や実施例に係る液晶表示装置において、隣り合う画素に電圧差があるように駆動し、相対的に高い電圧が印加された画素から隣接する画素へのリーク量を透過率の変化として検出した。そして、初期状態からの変化量を評価した。具体的には、高温高湿環境(ここでは、温度30°C、湿度80%)の環境下において、一定時間ごとにリーク量の確認を行った。変化が安定したところで、試験期間内の一番大きな差をリーク量とした。
【0071】
[参考例]
参考例の液晶表示装置は、第1の実施形態において説明した液晶表示装置10において構造式(1)を有する材料の塗布を省略したといった構成である。耐光性および耐湿性の結果を以下の表に示す。
【表2】
【0072】
表における「SC処理」は以下の工程で行ったシランカップリング処理を意味する。基板をチャンバー内に並べ、高温化したN2ガスを用いて昇温した後、一定量のN2ガスを流しつつ圧力を100Pa、温度を100°Cに保持する。1-デシル-1,1-ジメチル-N-(トリメチルシリル)シランアミンを毎分0.2グラム気化しチャンバーに流して10分間処理した後、チャンバー内のガスを充分置換してから基板を取り出す。
【0073】
[実施例1]
実施例1の液晶表示装置は、第1の実施形態において説明した液晶表示装置10において配向膜に構造式(1)を有する材料の1つを塗布した構成である。耐光性および耐湿性の結果を以下の表に示す。耐光性は略1.4倍となり、耐湿性は略8ポイント改善されている。
【表3】
【0074】
[実施例2]
実施例2の液晶表示装置は、第1の実施形態において説明した液晶表示装置10において配向膜に構造式(1)を有する材料を2種類塗布した構成である。耐光性および耐湿性の結果を以下の表に示す。実施例1と同様に、耐光性は略1.4倍となり、耐湿性は略8ポイント改善されている。
【表4】
【0075】
[実施例3]
実施例3の液晶表示装置は、第1の実施形態において説明した液晶表示装置10において配向膜に構造式(1)を有する材料を2種類塗布した構成である。但し、実施例2と異なり、一方の化合物はC
3H
7-を有し、他方の化合物はC
7H
15-を有する。耐光性および耐湿性の結果を以下の表に示す。実施例1や実施例2と同様に、耐光性は略1.4倍である。但し、耐湿性は略10ポイント改善されている。
【表5】
【0076】
以上説明したように、本開示によれば、配向膜の水酸基を充分被覆することができるので、耐光性や耐湿性に優れており,液晶組成物の特性への影響も少ない光学素子や液晶表示装置を提供することができる。
【0077】
[電子機器の説明]
以上説明した本開示の光学素子は、光の偏光状態を制御する位相変換素子として利用することができる。また、本開示の液晶表示装置は、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示部(表示装置)として用いることができる。一例として、例えば、テレビジョンセット、デジタルスチルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話機等の携帯端末装置、ビデオカメラ、ヘッドマウントディスプレイ(頭部装着型ディスプレイ)等の表示部として用いることができる。
【0078】
本開示の液晶表示装置は、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。一例として、画素アレイ部に透明なガラス材料等の対向部が貼り付けられて形成された表示モジュールが該当する。尚、表示モジュールには、外部から画素アレイ部への信号等を入出力するための回路部やフレキシブルプリントサーキット(FPC)などが設けられていてもよい。以下に、本開示の液晶表示装置を用いる電子機器の具体例として、投射型表示装置、デジタルスチルカメラ、及び、ヘッドマウントディスプレイを例示する。但し、ここで例示する具体例は一例に過ぎず、これに限られるものではない。
【0079】
(具体例1)
図4は、本開示の液晶表示装置を用いた投射型表示装置の概念図である。投射型表示装置は、光源部300、照明光学系310、液晶表示装置10、液晶表示装置10を駆動する画像制御回路320、投射光学系330、及び、スクリーン340などから構成されている。光源部300は、例えば、キセノンランプ等の各種ランプ、発光ダイオード等の半導体発光素子から構成することができる。照明光学系310は光源部300からの光を液晶表示装置10に導くために用いられ、プリズムやダイクロイックミラーなどの光学素子から構成される。液晶表示装置10はライトバルブとして作用し、投射光学系330を介してスクリーン340に画像が投射される。
【0080】
(具体例2)
図5は、レンズ交換式一眼レフレックスタイプのデジタルスチルカメラの外観図であり、
図5Aにその正面図を示し、
図5Bにその背面図を示す。レンズ交換式一眼レフレックスタイプのデジタルスチルカメラは、例えば、カメラ本体部(カメラボディ)511の正面右側に交換式の撮影レンズユニット(交換レンズ)512を有し、正面左側に撮影者が把持するためのグリップ部513を有している。
【0081】
そして、カメラ本体部511の背面略中央にはモニタ514が設けられている。モニタ514の上部には、ビューファインダ(接眼窓)515が設けられている。撮影者は、ビューファインダ515を覗くことによって、撮影レンズユニット512から導かれた被写体の光像を視認して構図決定を行うことが可能である。
【0082】
上記の構成のレンズ交換式一眼レフレックスタイプのデジタルスチルカメラにおいて、そのビューファインダ515として本開示の液晶表示装置を用いることができる。すなわち、本例に係るレンズ交換式一眼レフレックスタイプのデジタルスチルカメラは、そのビューファインダ515として本開示の液晶表示装置を用いることによって作製される。
【0083】
(具体例3)
図6は、ヘッドマウントディスプレイの外観図である。ヘッドマウントディスプレイは、例えば、眼鏡形の表示部611の両側に、使用者の頭部に装着するための耳掛け部612を有している。このヘッドマウントディスプレイにおいて、その表示部611として本開示の液晶表示装置を用いることができる。すなわち、本例に係るヘッドマウントディスプレイは、その表示部611として本開示の液晶表示装置を用いることによって作製される。
【0084】
(具体例4)
図7は、シースルーヘッドマウントディスプレイの外観図である。シースルーヘッドマウントディスプレイ711は、本体部712、アーム713および鏡筒714で構成される。
【0085】
本体部712は、アーム713および眼鏡700と接続される。具体的には、本体部712の長辺方向の端部はアーム713と結合され、本体部712の側面の一側は接続部材を介して眼鏡700と連結される。なお、本体部712は、直接的に人体の頭部に装着されてもよい。
【0086】
本体部712は、シースルーヘッドマウントディスプレイ711の動作を制御するための制御基板や、表示部を内蔵する。アーム713は、本体部712と鏡筒714とを接続させ、鏡筒714を支える。具体的には、アーム713は、本体部712の端部および鏡筒714の端部とそれぞれ結合され、鏡筒714を固定する。また、アーム713は、本体部712から鏡筒714に提供される画像に係るデータを通信するための信号線を内蔵する。
【0087】
鏡筒714は、本体部712からアーム713を経由して提供される画像光を、接眼レンズを通じて、シースルーヘッドマウントディスプレイ711を装着するユーザの目に向かって投射する。このシースルーヘッドマウントディスプレイ711において、本体部712の表示部に、本開示の液晶表示装置を用いることができる。
【0088】
[応用例]
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0089】
図8は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図8に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、及び統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)又はFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0090】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム又は各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置又はセンサ等との間で、有線通信又は無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。
図8では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680及び記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/F及び記憶部等を備える。
【0091】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)又はESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0092】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数又は車輪の回転速度等を検出するためのセンサのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置又はブレーキ装置等を制御する。
【0093】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0094】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧又はバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御又はバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0095】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410及び車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラ及びその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候又は気象を検出するための環境センサ、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物又は歩行者等を検出するための周囲情報検出センサのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0096】
環境センサは、例えば、雨天を検出する雨滴センサ、霧を検出する霧センサ、日照度合いを検出する日照センサ、及び降雪を検出する雪センサのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサは、超音波センサ、レーダ装置及びLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410及び車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0097】
ここで、
図9は、撮像部7410及び車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910,7912,7914,7916,7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912,7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0098】
なお、
図9には、それぞれの撮像部7910,7912,7914,7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b,cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912,7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910,7912,7914,7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0099】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナ及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930は、例えば超音波センサ又はレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7926,7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920~7930は、主として先行車両、歩行者又は障害物等の検出に用いられる。
【0100】
図8に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサ、レーダ装置又はLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波又は電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧又は路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0101】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等を認識する画像認識処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正又は位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像又はパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0102】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサ又は車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサは、例えば、座面又はステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者又はステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0103】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ又はレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線又はその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話又はPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0104】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び各種パラメータ、演算結果又はセンサ値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0105】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX、LTE(Long Term Evolution)若しくはLTE-A(LTE-Advanced)などのセルラー通信プロトコル、又は無線LAN(Wi-Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワーク又は事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバ又は制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、又はMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0106】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802.11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、又はセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、典型的には、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信及び歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0107】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度及び高度を含む位置情報を生成する。なお、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、又は測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0108】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止め又は所要時間等の情報を取得する。なお、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0109】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インタフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(及び、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、又はMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、又は車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号又はデータ信号を交換する。
【0110】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインタフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0111】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0112】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を作成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接又は通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0113】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図8の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720及びインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタ又はランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果又は他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データ又は音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0114】
なお、
図8に示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部又は全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサ又は装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0115】
本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置の表示部に適用され得る。
【0116】
[その他]
なお、本開示の技術は以下のような構成も取ることができる。
【0117】
[A1]
マトリクス状に配置された画素電極を有する駆動基板と、
駆動基板と対向して配置される対向基板と、
駆動基板と対向基板との間に挟持される液晶材料層と、
を含んでおり、
駆動基板および対向基板の液晶材料層側の面には、無機酸化膜から成る配向膜が形成されており、
配向膜には構造式(1)を有する材料が塗布されることによって表面処理が施されている、
光学素子。
【化16】
ここで、構造式(1)を有する材料はフッ素原子を含まず、
Dは重水素原子を示し、
X
1、X
2およびX
3は、それぞれ、独立して、環式化合物であり、
A
1、A
2は、それぞれ、独立して、C
2H
4、C
4H
8およびエステル結合のいずれかであり、
n
1ないしn
3は、それぞれ独立して、0または1であり、
n
4は、0ないし5のいずれかであり、
R
1は、末端の炭素鎖が2以上のアルキル基、アルケニル基およびアルコキシ基のいずれかである。
[A2]
構造式(1)においてn
1が0のとき、R
1の炭素数の値とn
4の値との和が5以上である、
上記[A1]に記載の光学素子。
[A3]
構造式(1)を有する材料において、水素原子のいずれかは重水素原子で置換されている、
上記[A1]または[A2]に記載の光学素子。
[A4]
配向膜には構造式(1)を有する材料が塗布されることによって表面処理が施された後、更に、シランカップリング材の塗布による表面処理が施されている、
上記[A1]ないし[A3]のいずれかに記載の光学素子。
[A5]
液晶材料層は構造式(2)を有する液晶組成物を含む、
上記[A1]ないし[A4]のいずれかに記載の光学素子。
【化17】
ここで、構造式(2)を有する液晶組成物において、
Y
1、Y
2、Y
3およびY
4は、それぞれ、独立して、環式化合物であり、少なくとも1つ以上の水素はフッ素原子によって置換されており、
A
1、A
2およびA
3は、それぞれ、独立して、単結合、C
2H
4、C
4H
8、エステル結合およびCF
2Oのいずれかであり、
m
1ないしm
5は、それぞれ独立して、0か1であり、
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基および末端の炭素数が2以上のアルコキシ基のいずれかである。
[A6]
構造式(2)を有する液晶組成物において、水素原子のいずれかは重水素原子で置換されている、
上記[A5]に記載の光学素子。
【0118】
[B1]
マトリクス状に配置された画素電極を有する駆動基板と、
駆動基板と対向して配置される対向基板と、
駆動基板と対向基板との間に挟持される液晶材料層と、
対向基板側に配置される第1偏光子と、
駆動基板側に配置される第2偏光子と、
を含んでおり、
駆動基板および対向基板の液晶材料層側の面には、無機酸化膜から成る配向膜が形成されており、
配向膜には構造式(1)を有する材料が塗布されることによる表面処理が施されている、
液晶表示装置。
【化18】
ここで、構造式(1)を有する材料はフッ素原子を含まず、
Dは重水素原子を示し、
X
1、X
2およびX
3は、それぞれ、独立して、環式化合物であり、
A
1、A
2は、それぞれ、独立して、C
2H
4、C
4H
8およびエステル結合のいずれかであり、
n
1ないしn
3は、それぞれ独立して、0または1であり、
n
4は、0ないし5のいずれかであり、
R
1は、末端の炭素鎖が2以上のアルキル基、アルケニル基およびアルコキシ基のいずれかである。
[B2]
構造式(1)においてn
1が0のとき、R
1の炭素数の値とn
4の値との和が5以上である、
上記[B1]に記載の液晶表示装置。
[B3]
構造式(1)を有する材料において、水素原子のいずれかは重水素原子で置換されている、
上記[B1]または[B2]に記載の液晶表示装置。
[B4]
配向膜には構造式(1)を有する材料が塗布されることによって表面処理が施された後、更に、シランカップリング材の塗布による表面処理が施されている、
上記[B1]ないし[B3]のいずれかに記載の液晶表示装置。
[B5]
液晶材料層は構造式(2)を有する液晶組成物を含む、
上記[B1]ないし[B4]のいずれかに記載の液晶表示装置。
【化19】
ここで、構造式(2)を有する液晶組成物において、
Y
1、Y
2、Y
3およびY
4は、それぞれ、独立して、環式化合物であり、少なくとも1つ以上の水素はフッ素原子によって置換されており、
A
1、A
2およびA
3は、それぞれ、独立して、単結合、C
2H
4、C
4H
8、エステル結合およびCF
2Oのいずれかであり、
m
1ないしm
5は、それぞれ独立して、0か1であり、
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基および末端の炭素数が2以上のアルコキシ基のいずれかである。
[B6]
構造式(2)を有する液晶組成物において、水素原子のいずれかは重水素原子で置換されている、
上記[C5]に記載の液晶表示装置。
【0119】
[C1]
マトリクス状に配置された画素電極を有する駆動基板と、
駆動基板と対向して配置される対向基板と、
駆動基板と対向基板との間に挟持される液晶材料層と、
対向基板側に配置される第1偏光子と、
駆動基板側に配置される第2偏光子と、
を含んでおり、
駆動基板および対向基板の液晶材料層側の面には、無機酸化膜から成る配向膜が形成されており、
配向膜には構造式(1)を有する材料が塗布されることによる表面処理が施されている、
液晶表示装置を備えた電子機器。
【化20】
ここで、構造式(1)を有する材料はフッ素原子を含まず、
Dは重水素原子を示し、
X
1、X
2およびX
3は、それぞれ、独立して、環式化合物であり、
A
1、A
2は、それぞれ、独立して、C
2H
4、C
4H
8およびエステル結合のいずれかであり、
n
1ないしn
3は、それぞれ独立して、0または1であり、
n
4は、0ないし5のいずれかであり、
R
1は、末端の炭素鎖が2以上のアルキル基、アルケニル基およびアルコキシ基のいずれかである。
[C2]
構造式(1)においてn
1が0のとき、R
1の炭素数の値とn
4の値との和が5以上である、
上記[C1]に記載の電子機器。
[C3]
構造式(1)を有する材料において、水素原子のいずれかは重水素原子で置換されている、
上記[C1]または[C2]に記載の電子機器。
[C4]
配向膜には構造式(1)を有する材料が塗布されることによって表面処理が施された後、更に、シランカップリング材の塗布による表面処理が施されている、
上記[C1]ないし[C3]のいずれかに記載の電子機器。
[C5]
液晶材料層は構造式(2)を有する液晶組成物を含む、
上記[C1]ないし[C4]のいずれかに記載の電子機器。
【化21】
ここで、構造式(2)を有する液晶組成物において、
Y
1、Y
2、Y
3およびY
4は、それぞれ、独立して、環式化合物であり、少なくとも1つ以上の水素はフッ素原子によって置換されており、
A
1、A
2およびA
3は、それぞれ、独立して、単結合、C
2H
4、C
4H
8、エステル結合およびCF
2Oのいずれかであり、
m
1ないしm
5は、それぞれ独立して、0か1であり、
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基および末端の炭素数が2以上のアルコキシ基のいずれかである。
[C6]
構造式(2)を有する液晶組成物において、水素原子のいずれかは重水素原子で置換されている、
上記[C5]に記載の電子機器。