(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】タービンハウジングをセンタリングするためのセンタリング装置、センタリング装置を含むターボシステム、及びタービンハウジングをセンタリングするための方法
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20241015BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20241015BHJP
F02C 6/12 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
F02B39/00 T
F02B39/00 D
F01D25/24 E
F02C6/12
(21)【出願番号】P 2022533443
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2020084313
(87)【国際公開番号】W WO2021110765
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-10-30
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522066067
【氏名又は名称】ターボ システムズ スウィツァーランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッカ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】リヒナー マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルテル アンチェ
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-168221(JP,A)
【文献】実開昭58-149535(JP,U)
【文献】特開2016-056722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0032768(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104975949(CN,A)
【文献】特開2018-109403(JP,A)
【文献】国際公開第2014/168803(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00-41/10
F01D 25/24
F02C 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボシステムのラジアルタービンの中心軸(33)に対してタービンハウジング(40)をセンタリングするためのセンタリング装置(10)であって、
-外径D1及び内径D2を有し、D1/D2の比が≦2であるリング状本体(11)と、
-軸受ハウジング(20)に設けられたそれぞれの相補的なセンタリング要素(21)と係合するために、前記リング状本体(11)の側面(12)に設けられた2又は3以上のセンタリング要素(16)と、
を備え、
前記2又は3以上のセンタリング要素(16)は、前記それぞれの相補的なセンタリング要素(21)との係合時に、前記リング状本体(11)の半径方向の熱拡張を許容するように構成され
、前記センタリング装置(10)は、前記ラジアルタービン用のノズルリングに接続される、センタリング装置(10)。
【請求項2】
前記2又は3以上のセンタリング要素(16)は、第1の平面案内面(17)を有し、前記それぞれの相補的なセンタリング要素(21)は、前記リング状本体の熱膨張時に前記それぞれの相補的なセンタリング要素(21)に対する前記2又は3以上のセンタリング要素(16)の相対移動を案内するための相補的な第2の平面案内面(18)を有する、請求項1に記載のセンタリング装置(10)。
【請求項3】
前記2又は3以上のセンタリング要素(16)のうちの1又は2以上の前記第1の平面案内面(17)の反対側の面は、互いに対して平行であるかまたは傾斜しており、前記それぞれの相補的なセンタリング要素(21)のうちの1又は2以上の前記相補的な第2の平面案内面(18)の反対側の面は、互いに対して平行であるか又は互いに対して傾斜している、請求項2に記載のセンタリング装置(10)。
【請求項4】
前記2又は3以上のセンタリング要素(16)は、ノッチ及びカムの少なくとも1つであり、前記それぞれの相補的なセンタリング要素(21)は、カム及びノッチの少なくとも1つである、請求項1から3のいずれか1項に記載のセンタリング装置(10)。
【請求項5】
前記センタリング装置(10)は、溶接接続、はんだ付け接続、および1又2以上のファスナーのうちの少なくとも1つによって
前記ノズルリングに接続される、請求項1から4のいずれか1項に記載のセンタリング装置(10)。
【請求項6】
前記センタリング装置(10)は、
前記ノズルリングの一体部分である、請求項1から4のいずれか1項に記載のセンタリング装置(10)。
【請求項7】
前記2又は3以上のセンタリング要素(16)はカムであり、前記カムの少なくとも1つは、熱シート(50)の固定要素(51)を受け入れるための受け部(19)を備える、請求項1から6のいずれか1項に記載のセンタリング装置(10)。
【請求項8】
前記2又は3以上の案内要素(16)は、中央開口部(14)の周りの円周方向に等間隔で離隔する、または前記2又は3以上の案内要素(16)は、前記中央開口部(14)の周りの円周方向に不規則に離隔する、請求項1から7のいずれか1項に記載のセンタリング装置(10)。
【請求項9】
-軸受ハウジング(20)と、
-ラジアルタービンのタービンハウジング(40)と、
-中心軸(33)に沿って延び、前記軸受ハウジング(20)内に取り付けられ、タービンホイール(30)が配置されるシャフト(34)と、
-前記タービンホイール(30)の上流で前記タービンハウジング(40)内に形成された排気ガス入口通路(41)と、
-請求項1から8のいずれか1項に記載のセンタリング装置(10)と、
を備えるターボシステムであって、
前記軸受ハウジング(20)は、前記センタリング装置(10)の前記2又は3以上のセンタリング要素(16)と相補的なセンタリング要素(21)を備え、前記2又は3以上のセンタリング要素(16)は、前記相補的なセンタリング要素(21)のそれぞれと係合する、ターボシステム。
【請求項10】
前記センタリング装置(10)は、溶接接続、はんだ付け接続、および1又は2以上のファスナーのうちの少なくとも1つによって
前記ノズルリングに接続されるか、または前記センタリング装置(10)は、
前記ノズルリングの一体部分である、請求項9に記載のターボシステム。
【請求項11】
前記ノズルリングは、前記センタリング装置(10)の材料と同じ熱膨張係数を有する材料で作られている、請求項10に記載のターボシステム。
【請求項12】
前記センタリング装置(10)は、前記軸受ハウジング(20)と前記タービンハウジング(40)との間に配置され、前記センタリング装置(10)は、ターボシステムの動作中に排気ガスからの熱が前記センタリング装置(10)に伝達され、前記排気ガスから前記センタリング装置への熱流量が連続関数であるように配置及び構成される、請求項9から11のいずれか1項に記載のターボシステム。
【請求項13】
請求項4に記載の前記センタリング装置(10)の前記カムの受け部(19)に配置された固定要素(51)を有する熱シート(50)をさらに備える、請求項9から12のいずれか1項に記載のターボシステム。
【請求項14】
ターボシステムのラジアルタービンの中心軸(33)に対してタービンハウジング(40)をセンタリングする方法であって、
-請求項1から8のいずれか1項に記載のセンタリング装置(10)に排気ガスからの熱を伝達するステップと、
-前記センタリング装置(10)の熱膨張によって前記タービンハウジングをセンタリングするステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記排気ガスから前記センタリング装置へ熱を伝達するステップは、前記排気ガスから前記センタリング装置へ熱流量をもたらすステップを含み、前記熱流量は連続関数である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、タービンハウジングをセンタリングするためのセンタリング装置に関する。さらに、本開示の実施形態は、本開示に記載のセンタリング装置を有するターボシステム、例えば、ターボチャージャー又はターボコンパウンドに関する。加えて、本開示の実施形態は、タービンハウジングをセンタリングする方法、特に本明細書に記載のセンタリング装置を使用することによって、タービンハウジングをセンタリングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なターボシステムは、ターボチャージャーまたはターボコンパウンドである。今日、排気ガスターボチャージャーは、内燃機関の性能を向上させるために広く使用されている。一般的に、排気ガスターボチャージャーは、内燃機関の排気管にタービンを備え、内燃機関の上流に圧縮機を備える。内燃機関の排気ガスは、タービンで膨張される。得られた仕事はシャフトによって圧縮機に伝達され、圧縮機は内燃機関に供給される空気を圧縮する。排気ガスのエネルギーを利用して、内燃機関の燃焼工程に供給する空気を圧縮することで、内燃機関の燃焼工程及び効率を最適化することができる。ターボコンパウンドエンジンは、排気ガスからエネルギーを回収するためにタービンを使用するレシプロエンジンである。排気ガスのエネルギーをターボチャージャーの駆動に使用する代わりに、そのエネルギーは、出力軸に送られ、エンジンによってもたらされる総出力を増大させる。
【0003】
一般に、ターボシステム、例えばターボチャージャー又はターボコンパウンドは、タービンハウジングに収容されたタービン、詳細にはラジアルタービンを含む。タービンハウジングは、ラジアルタービンの中心軸に対してセンタリングさせる必要がある。一般に、タービンハウジングのセンタリングは、例えば、タービンハウジングと軸受ハウジングとの間に設けられた熱シールドまたはノズルリング上で、熱ガスセンタリングによって行われる。従来の熱センタリング方式では、排気ガスから熱シールドなどの熱センタリング要素への均等な高速熱伝達が保証できず、過渡運転条件下ではタービンホイールとタービンケーシングとの間に大きなクリアランスが必要となるという問題があった。しかしながら、タービンホイールとタービンケーシングとの間の大きなクリアランスは、タービン効率に悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、上記に鑑みて、タービンハウジングの改良されたセンタリングを提供することが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に鑑みて、タービンハウジングをセンタリングするためのセンタリング装置、本明細書に記載のセンタリング装置を含むターボシステム、及び独立請求項に係るタービンハウジングをセンタリングする方法が提供される。さらなる態様、利点、および特徴は、従属請求項、明細書、および添付の図面から明らかである。
【0006】
本開示の一態様によれば、ターボシステムのラジアルタービンの中心軸に対してタービンハウジングをセンタリングするためのセンタリング装置が提供される。センタリング装置は、外径D1及び内径D2を有するリング状本体を含み、D1/D2の比は2より小さいか等しい(D1/D2≦2)。加えて、センタリング装置は、リング状本体の側面に設けられた2又は3以上のセンタリング要素を含む。2又は3以上のセンタリング要素は、軸受ハウジングに設けられたそれぞれの相補的なセンタリング要素と係合するように構成される。2又は3以上のセンタリング要素は、2又は3以上のセンタリング要素とそれぞれの相補的なセンタリング要素との係合時に、リング状本体の半径方向の熱膨張を許容するように構成されている。
【0007】
従って、従来技術と比較して、本開示のセンタリング装置は、ラジアルタービンの中心軸に対するタービンハウジングの改良されたセンタリングを提供する。特に、本明細書に記載されるセンタリング装置の実施形態は、過渡運転及び定常運転時にタービンハウジングのセンタリングを実現すること、及びタービンホイールとタービンハウジングとの間の最小クリアランスを実現することを可能にする。従って、従来技術と比較して、本明細書に記載のセンタリング装置を使用することによって、タービン効率を向上させることができる。特に、本明細書に記載されるようなセンタリング装置を使用すると、クリアランスの減少及び高いタービン効率を達成することができることが分かっている。
【0008】
本開示のさらなる態様によれば、ターボシステムが提供される。ターボシステムは、軸受ハウジングと、ラジアルタービンのタービンハウジングと、中心軸に沿って延びるシャフトとを含む。シャフトは、軸受ハウジング内に取り付けられ、タービンホイールは、シャフトに配置される。さらに、ターボシステムは、タービンホイールの上流でタービンハウジング内に形成された排気ガス入口通路を含む。加えて、ターボシステムは、本明細書に記載される実施形態によるセンタリング装置を含む。軸受ハウジングは、センタリング装置の2又は3以上のセンタリング要素と相補的なセンタリング要素を含む。センタリング装置の2又は3以上のセンタリング要素は、軸受ハウジングのそれぞれの相補的なセンタリング要素に係合する。2又は3以上のセンタリング要素は、2又は3以上のセンタリング要素とそれぞれの相補的なセンタリング要素との係合時に、リング状本体の半径方向の熱膨張を許容するように構成される。
【0009】
従って、従来技術と比較して、改良されたターボシステムが提供される。特に、本明細書に記載されるターボシステムの実施形態は、ターボシステム効率を改善できるように、タービンホイールとタービンハウジングとの間の最小クリアランスと合わせて、過渡運転及び定常運転時のタービンハウジングの最適化されたセンタリングを可能にする。
【0010】
本開示の別の態様によれば、ターボシステムのラジアルタービンの中心軸に対してタービンハウジングをセンタリングする方法が提供される。本方法は、排気ガスから本明細書に記載の実施形態によるセンタリング装置に熱を伝達するステップを含む。さらに、本方法は、センタリング装置の熱膨張によってタービンハウジングをセンタリングするステップを含む。
【0011】
従って、従来技術と比較して、本明細書に記載される方法の実施形態は、タービンホイールとタービンハウジングとの間のクリアランスを最小にするとともに、ターボシステム効率を改善することができるように、過渡運転及び定常運転時にタービンハウジングの最適化されたセンタリングを可能にする。
【0012】
本開示の上記で言及された特徴の様式を詳細に理解できるように、上記で簡単に要約された本開示のより詳細な説明は、実施形態を参照することによって得ることができる。添付図面は、本開示の実施形態に関連し、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来技術によるラジアルタービンとタービンハウジングをセンタリングするための熱シールドとを有するターボシステムの一部の断面図である。
【
図2】本明細書に記載される実施形態によるセンタリング装置の概略等角図である。
【
図3】本明細書に記載される実施形態によるセンタリング装置のセンタリング要素に対して相補的なセンタリング要素を含む軸受ハウジングの概略等角図である
【
図4】本明細書に記載される実施形態によるセンタリング装置を含むラジアルタービンを有するターボシステムの一部の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、様々な実施形態を詳細に参照するが、その1又は2以上の実施例が各図面に例示されている。各実施例は説明のために提示され、限定を意味するものではない。例えば、1つの実施形態の一部として図示又は説明された特徴は、さらに別の実施形態をもたらすために、何らかの他の実施形態上で又はそれと共に使用することができる。本開示は、そのような修正及び変形を含むことが意図されている。
【0015】
以下の図面の説明の中で、同じ参照番号は、同じまたは類似の構成要素を指す。一般に、個々の実施形態に関する相違点のみが説明される。特に指定しない限り、1つの実施形態における部分または態様の説明は、他の実施形態における対応する部分または態様にも適用することができる。
【0016】
図1は、従来技術によるラジアルタービン35とタービンハウジング40をセンタリングするための熱シールド62とを有するターボシステム100の断面図である。ラジアルタービン35は、タービンハウジング40と、軸受ハウジング20に取り付けられ、ロータブレード31を有するタービンホイール30が設けられたシャフト34とを含む。加えて、
図1には、タービンハウジング40と軸受ハウジング20との間に配置された熱シールド62及びノズルリング61が示されている。従来技術によれば、
図1に例示的に示すように、タービンハウジングの熱ガスセンタリングは、熱シールドによって行われる。
図1に示すシールドは、低温センタリング要素63と、2つの高温センタリング要素64とを有する。
図1から、低温ではタービンハウジング40は低温センタリング要素63によってセンタリングされるのに対し、高温では、すなわち熱シールド62の熱膨張時には、タービンハウジングは高温センタリング要素64によってセンタリングされることが理解されるであろう。しかしながら、
図1から、過渡的な運転状態、すなわちタービンの始動時には、熱シールド全体の不均一な熱膨張のために、センタリングが最適でない場合があることが理解されるであろう。さらに、
図1の従来技術に例示的に示すように、従来、ノズルリング61と熱シールド62との間に空隙65があり、これは、高温センタリングを実現するための排気ガスから熱シールドへの熱伝達にとって好ましくない場合がある。
【0017】
図2から4を例示的に参照して、ターボシステムのラジアルタービンの中心軸33に対してタービンハウジング40をセンタリングするためのセンタリング装置10を説明する。本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、センタリング装置10は、外径D1及び内径D2を有するリング状本体11を含む。D1/D2の比は、2より小さいか又は2に等しい(D1/D2≦2)。特に、リング状本体11の内径D2は、典型的には、中央開口部14を提供する。典型的には、過渡運転状態及び高温運転状態におけるタービンハウジングのセンタリングは、リング状本体の外側の半径方向シェル面によって、すなわち外径D1において、実現される。
【0018】
典型的には、本明細書に記載されるようなセンタリング装置は、別個の装置であることを理解されたい。換言すると、典型的には、本明細書に記載されるようなセンタリング装置は、軸受ハウジングの一部ではない又はタービンハウジングの一部ではない。より具体的には、典型的には、本明細書に記載される実施形態によるセンタリング装置は、軸受ハウジングの一体部分ではなく又はタービンハウジングの一体部分ではなく、別個の装置である。
【0019】
加えて、センタリング装置10は、
図2に例示的に示すように、リング状本体11の側面12に設けられた2又は3つ以上のセンタリング要素16を含む。典型的には、2又は3以上のセンタリング要素16が設けられたリング状本体11の側面12は、軸受ハウジング側である。2又は3以上のセンタリング要素16は、
図3に例示的に示すように、軸受ハウジング20に設けられたそれぞれの相補的なセンタリング要素21と係合するように構成されている。
【0020】
さらに、2又は3以上のセンタリング要素16は、2又は3以上のセンタリング要素16とそれぞれの相補的なセンタリング要素21の係合時に、リング状本体11の半径方向の熱膨張を許容するように構成されている。換言すると、2又は3以上のセンタリング要素16は、センタリング装置10の熱膨張時に、2又は3以上のセンタリング要素16と相補的なセンタリング要素21との間の接触が保証されるように構成されている。より具体的には、2又は3以上のセンタリング要素16は、リング状本体11の半径方向の熱膨張時に、相補的なセンタリング要素21に対する2又は3以上のセンタリング要素16の案内された移動をもたらすように構成されている。
【0021】
従って、例えば
図4に例示的に示されるようなターボシステムにセンタリング装置10を使用することによって、特に過渡運転状態及び定常運転状態において、タービンハウジングの改善されたセンタリングをもたらすことができる。その結果、タービン効率を改善できるように、タービンホイールブレード31とタービンハウジング40との間のクリアランスRを低減することができる。
【0022】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、2又は3以上のセンタリング要素16は、第1の平面案内面17を有する。
図2及び3に例示的に示すように、それぞれの相補的なセンタリング要素21は、相補的な第2の平面案内面18を有する。特に、第1の平面案内面17及び第2の平面案内面18は、リング状本体11の熱膨張時、特に半径方向の熱膨張時に、2又は3以上のセンタリング要素16のそれぞれの相補的なセンタリング要素21に対する相対移動を案内するように構成されている。
【0023】
例えば、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、2又は3以上のセンタリング要素16の第1の平面案内面17の反対側の面は、互いに平行とすることができる。代替的に、2又は3以上のセンタリング要素16の第1の平面案内面17の各々は、互いに対して傾斜することができる。特に、
図2に例示的に示すように、第1の平面案内面17は、リング状本体11の内径の中心Cに向かって傾斜することができる。
【0024】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一実施例によれば、第1の平面案内面17の各々は、案内要素16の反対側に配置され、第1の平面案内面17の一方は、時計回りの円周方向に向けられた第1の面法線N1を有し、第1の平面案内面17の他方は、リング状本体11の反時計回りの円周方向へ向けられた第2の面法線N2を有する。
【0025】
従って、
図3に例示的に示すように、1又は2以上の相補的なセンタリング要素21それぞれの相補的な第2の平面案内面18の反対側の面(対向する面)は、センタリング装置のリング状本体11の熱膨張時に、それぞれの相補的なセンタリング要素21に対する2又は3以上のセンタリング要素16の相対移動が実現できるように、互いに対して平行であることまたは傾斜することができる。
【0026】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる代替的な実施例によれば、2又は3以上のセンタリング要素16のうちの1又は2以上は、円形形状(明示的に示されていない)を有することができる。特に、2又は3以上のセンタリング要素16のうちの1又は2以上は、リング状本体11の側面12から延びる円筒形状を有することができる(例えば、円形の基部、卵形の基部、又は楕円形の基部を有する)。従って、平面案内面18を有するそれぞれの相補的なセンタリング要素21と係合する丸い形状の、特に円筒形状のセンタリング要素16は、センタリング要素16とそれぞれの相補的なセンタリング要素21との間に2つの反対側の位置に配置された接触点、特に接触線を提供することを理解されよう。従って、リング状本体の熱膨張時のそれぞれの相補的なセンタリング要素21に対する2又は3以上のセンタリング要素16の相対移動は、センタリング装置10の丸い形状または円筒形状のセンタリング要素16でも実現することができる。本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、2又は3以上のセンタリング要素16はノッチおよび/またはカムである。これに対応して、それぞれの2又は3以上の相補的なセンタリング要素21は、カム及び/又はノッチである。換言すると、2又は3以上のセンタリング要素16は、1又は2以上のノッチ及び1又は2以上のカム、2又は3以上のノッチ、又は2又は3以上のカムを含むことができる。それぞれの相補的なセンタリング要素21は、これに対応して構成することができる。換言すると、それぞれの相補的なセンタリング要素21は、1又は2以上のカム及び1又は2以上のノッチ、2又は3以上のカム、又は2又は3以上のノッチを含むことができる。
図2は、2又は3以上のセンタリング要素16が3つのノッチである実施例を示している。
図3は、それぞれの相補的なセンタリング要素21が3つのカムである実施例を示している。
【0027】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、センタリング装置10はノズルリングに接続されるか又はノズルリングの一部である。特に、センタリング装置10は、ノズルリングに溶接接続、はんだ付け接続、及び1又は2以上のファスナーのうちの少なくとも1つを用いて接続することができる。代替的に、センタリング装置10は、ノズルリングの一体部分である。例えば、センタリング装置及びノズルリングは、単一の鋳造又はマシニング加工された要素で作ることができる。
【0028】
図2に例示的に示すように、ガイドベーン15は、リング状本体11のタービン側13の中央開口14の周りに円周方向に設けることができる。
【0029】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる一実施例によれば、2又は3以上のセンタリング要素16は、熱シート50の固定要素51、特にラグを受け入れるための受け部19を有する少なくとも1つのカムを含む。従って、好都合には、2又は3以上のセンタリング要素16は、二重機能をもたらすように、すなわち、一方ではセンタリングを、他方では熱シートの固定をもたらすように構成することができる。
【0030】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、
図2に例示的に示すように、2又は3以上の案内要素16は、中央開口14の周りの円周方向に等間隔に離隔する。代替的に、2又は3以上の案内要素16は、中央開口部14の周りの円周方向に不規則に離隔することができる(明示的に示されていない)。
【0031】
図4を例示的に参照すると、本発明の別の態様によれば、ターボシステムが説明される。ターボシステムは、軸受ハウジング20と、ラジアルタービンのタービンハウジング40と、中心軸33に沿って延びるシャフト34とを含む。シャフトは、軸受ハウジング20に取り付けられ、タービンホイール30は、シャフト上に配置されるか、またはシャフトに取り付けられる。典型的には、シャフト34は、本明細書に記載されるように、センタリング装置10の中央開口部14を貫通して延びる。ターボシステムは、タービンホイール30の上流でタービンハウジング40に形成された排気ガス入口通路41を含む。加えて、ターボシステムは、本明細書に記載される実施形態のいずれかによるセンタリング装置10を含む。軸受ハウジング20は、センタリング装置10の2又は3以上のセンタリング要素16と相補的なセンタリング要素21を含む。2又は3以上のセンタリング要素16は、軸受ハウジング20に設けられたそれぞれの相補的なセンタリング要素21と係合する。
【0032】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるターボシステムの実施形態によれば、センタリング装置10は、特に溶接接続、はんだ付け接続、及び1又は2以上のファスナーのうちの少なくとも1つによってノズルリングに接続される。代替的に、センタリング装置10は、ノズルリングの一体部分である。ノズルリングは、
図2及び4に例示的に示すように、ベーン15を含むことができる。例えば、ガイドベーン15は、軸受ハウジング側12に設けられた第1のリング状シート要素111と、タービンハウジング側13に設けられた第2のリング状シート要素112との間に設けることができる。さらに、第2のリング状シート要素112は、シーリングリング113に接続することができる。
【0033】
代替的に、ノズルリングはベーンレスとすることができる(明示的に図示せず)。
【0034】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、センタリング装置10は、タービンハウジング40の材料及び/又は軸受ハウジング20の材料よりも高い熱膨張係数を有する材料で作られている。
【0035】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、センタリング装置10は、ノズルリングの材料と同じ熱膨張係数を有する材料で作られている。
【0036】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるターボシステムの実施形態によれば、センタリング装置10は、軸受ハウジング20とタービンハウジング40の間に配置される。センタリング装置10は、ターボシステムの動作中に排気ガスからの熱がセンタリング装置10に伝達され、排気ガスからセンタリング装置への熱流量が連続関数であるように配置及び構成されている。熱流量は、ΔQ/Δt=-κ・A・ΔT/Δxであり、ここで、ΔQは正味の熱(エネルギー)移動量、Δtはかかった時間、ΔTは低温側と高温側の温度差、Δxは熱を伝達する物質の厚さ(高温側と低温側の距離)、κは熱伝導率、Aは熱を放出する面の表面積である。従って、熱流の経路上にある熱伝導率κが連続的又は一定である限り、熱流量は連続的な関数となる。
【0037】
換言すれば、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、センタリング装置は、排気ガスからセンタリング装置への熱流経路に沿って熱伝導率の急激な変化がないように、本明細書に記載のターボシステム内に構成及び配置される。例えば、
図1の従来技術に示すように、ノズルリング61と熱シールドとの間の空隙65は、「固体から気体」及び「気体から固体」への界面で熱流路に沿って熱伝導率の変化を示し、従って、熱流量の不連続な関数をもたらす。
【0038】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるターボシステムの実施形態によれば、ターボシステムは、
図4に例示的に示すように、固定要素51を有する熱シート50をさらに含む。特に、典型的には、固定要素51、例えばラグは、センタリング装置10のカムの受け部19に配置される。
【0039】
本発明の別の態様によれば、ターボシステムのラジアルタービンの中心軸33に対してタービンハウジング40をセンタリングする方法が説明される。本方法は、本明細書に記載された何らかの実施形態によるセンタリング装置10に排気ガスから熱を伝達することを含む。加えて、本方法は、センタリング装置10の熱膨張によってタービンハウジングをセンタリングすることを含む。より具体的には、典型的には、排気ガスからセンタリング装置に熱を伝達することは、排気ガスからセンタリング装置に熱流量を提供することを含み、熱流量は連続的な関数である。
【0040】
上記を考慮すると、本明細書に記載の実施形態は、タービンハウジングの最適化された熱センタリングを好都合に提供し、過渡運転及び定常運転時にタービン、特にタービンホイールブレードとハウジングとの間の最小クリアランスを実現することによって最適なタービン効率を保証することが理解されよう。
【0041】
上記は実施形態に向けられているが、基本的な範囲から逸脱することなく他の及びさらなる実施形態を考え出すことができ、その範囲は以下の特許請求の範囲によって決定される。
【符号の説明】
【0042】
10 センタリング装置
11 リング状本体
12 側面
13 タービン側
14 中央開口部
15 ガイドベーン
16 案内要素
17 第1の案内面
18 第2の案内面
19 受け部
20 軸受ハウジング
21 相補的な案内要素
30 タービンホイール
31 タービンブレード
33 中心軸
34 シャフト
35 ラジアルタービン
36 ノズルリング
40 タービンハウジング
41 排気ガス入口通路
50 熱シート
51 ラグ
61 従来技術のノズルリング
62 従来技術の熱シールド
63 低温センタリング要素
64 高温センタリング要素
100 ターボシステム
111 第1のリング状シート要素
112 第2のリング状シート要素
113 シーリングリング
D1 外径
D2 内径
C 中心