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特許7571140表面品質と電気抵抗スポット溶接性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
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  • 特許-表面品質と電気抵抗スポット溶接性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】表面品質と電気抵抗スポット溶接性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20241015BHJP
   C23C 2/06 20060101ALI20241015BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20241015BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20241015BHJP
   C22C 18/04 20060101ALN20241015BHJP
【FI】
C22C38/00 301T
C23C2/06
C22C38/60
C21D9/46 J
C22C38/00 302A
C22C18/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022536982
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 KR2020018680
(87)【国際公開番号】W WO2021125885
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0171690
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】カン、 キ-チョル
(72)【発明者】
【氏名】イ、 チョン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ヨン-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】イ、 カン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 キュ-ヤン
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/145329(WO,A1)
【文献】特表2019-521257(JP,A)
【文献】特開2014-009399(JP,A)
【文献】特開昭61-279311(JP,A)
【文献】特開昭62-063687(JP,A)
【文献】特表2019-532172(JP,A)
【文献】特開2014-122379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00
C23C 2/06
C22C 38/60
C21D 9/46
C22C 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板及び
前記素地鋼板の表面に形成された亜鉛系めっき層を含む亜鉛めっき鋼板であって、
前記素地鋼板の表層部のビッカース硬度(a)と内部のビッカース硬度(b)の比率(a/b)が0.95未満であり、
前記比率(a/b)は幅方向のエッジ部で測定した値を基準とし、
引張強度は978MPa以上であり、
めっき材を90度に曲げた後、テープを曲げた部位に接着した後に剥がしたとき、テープから剥離されるめっき層の長さが10mm以下である、亜鉛めっき鋼板。
【請求項2】
前記亜鉛系めっき層のめっき付着量は、30~70g/mである、請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項3】
前記素地鋼板は、質量%で、C:0.05~1.5%、Si:2.0%以下、Mn:1.0~30%、S-Al(酸可溶性アルミニウム):3%以下、Cr:2.5%以下、Mo:1%以下、B:0.005%以下、Nb:0.2%以下、Ti:0.2%以下、V:0.2%以下、Sb+Sn+Bi:0.1%以下、及びN:0.01%以下を含み、残りの成分は鉄及びその他の不可避不純物からなる組成を有する、請求項1又は請求項2に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項4】
前記素地鋼板の厚さは、1.0~2.0mmである、請求項3に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項5】
表層部が、Si、Mn、Al及びFeのうち少なくとも1種以上を含有する内部酸化物を含む、請求項1又は請求項2に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項6】
鋼スラブを950~1350℃の温度に加熱する段階;
前記鋼スラブを仕上げ圧延開始温度:900~1,150℃並びに仕上げ圧延終了温度:850~1,050℃の条件で熱間圧延して熱延鋼板を得る段階;
前記熱延鋼板を590~750℃の温度で巻き取る段階;
前記熱延鋼板のエッジ部を600~800℃で5~24時間加熱する段階;
前記熱延鋼板を180~250mpmの通板速度で酸洗する段階;
前記熱延鋼板を35~60%の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板を得る段階;
650~900℃で-10~30℃の露点の雰囲気で前記冷延鋼板を再結晶焼鈍する段階;
前記焼鈍後の鋼板を550~750℃の温度まで3~5℃/sの冷却速度で徐冷する段階;
前記徐冷後の鋼板を270~550℃まで12~20℃/sの冷却速度で急冷する段階;及び
前記急冷された冷延鋼板を溶融亜鉛めっきする段階、を含み、
製造された亜鉛めっき鋼板の表層部のビッカース硬度(a)と内部のビッカース硬度(b)の比率(a/b)が0.95未満であり、
引張強度は978MPa以上である、亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項7】
前記再結晶焼鈍する段階は、水素(H)を5~10体積%含む湿窒素ガス雰囲気で行われる、請求項6に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記再結晶焼鈍時の通板速度は、40~130mpmである、請求項6に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項9】
めっき鋼板を480~560℃の温度で合金化する段階をさらに含む、請求項6~請求項8のいずれか一項に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面品質と電気抵抗スポット溶接性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境汚染などの問題で、自動車排出ガスと燃費に対する規制は日々強化されつつある。そのため、自動車鋼板の軽量化による燃料消耗量の減少に対する要求が強くなっており、従って、単位厚さ当たりの強度が高い様々な種類の高強度鋼板が開発され、市販されている。
【0003】
高強度鋼とは、通常490MPa以上の強度を有する鋼を意味するが、必ずしもこれに限定するものではなく、変態有機焼成(Transformation Inducced Plasticity;TRIP)鋼、双晶有機焼成(Twin Induced Plasticity;TWIP)鋼、二相組織(Dual Phase;DP)鋼、複合組織(Complex Phase;CP)鋼などがこれに該当する。
【0004】
一方、自動車鋼材は、耐食性を確保するために表面にめっきを施しためっき鋼板の形態で供給されるが、その中でも、亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)又は合金化亜鉛めっき鋼板(GA)は、亜鉛の犠牲防食特性を利用して高い耐食性を有することから、自動車用の素材として多く使用される。
【0005】
ところが、高強度鋼板の表面を亜鉛でめっきする場合、スポット溶接性に弱くなるという問題がある。すなわち、高強度鋼の場合には、引張強度と共に降伏強度が高いため、溶接中に発生する引張応力を焼成変形を通じて解消し難いことから、表面に微小クラックが生じる可能性が高い。高強度亜鉛めっき鋼板に対して溶接を施すと、融点の低い亜鉛が鋼板の微小クラックへ浸透し、その結果、液相金属脆化(Liquid Metal Embrittlement;LME)という現象が発生して、疲労環境で鋼板が破壊に至る問題が発生する可能性があり、これは、鋼板の高強度化に大きな障害物として作用している。
【0006】
それだけでなく、高強度鋼板に多量に含まれるSi、Al、Mnなどの合金元素は、製造過程で鋼板表面へ拡散して表面酸化物を形成するようになるが、その結果、亜鉛の濡れ性を大きく低下させて未めっきが発生するなど、表面品質を劣化させるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一側面によると、表面品質とスポット溶接性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法が提供される。
【0008】
本発明の課題は、上述した内容に限定されない。本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の明細書の全体内容から本発明の更なる課題を理解するのに何ら困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面による亜鉛めっき鋼板は、素地鋼板及び上記素地鋼板の表面に形成された亜鉛系めっき層を含む亜鉛めっき鋼板であって、上記素地鋼板の表層部の硬度(a)と内部の硬度(b)の比率(a/b)が0.95未満であることができる。
【0010】
本発明の他の一側面である亜鉛めっき鋼板の製造方法は、鋼スラブを950~1350℃の温度に加熱する段階;上記鋼スラブを仕上げ圧延開始温度:900~1,150℃並びに仕上げ圧延終了温度:850~1,050℃の条件で熱間圧延して熱延鋼板を得る段階;上記熱延鋼板を590~750℃の温度で巻き取る段階;上記熱延鋼板を180~250mpmの通板速度で酸洗する段階;上記熱延鋼板を35~60%の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板を得る段階;650~900℃で-10~30℃の露点の雰囲気で上記冷延鋼板を再結晶焼鈍する段階;及び上記焼鈍された冷延鋼板を溶融亜鉛めっきする段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0011】
上述したとおり、本発明の一実施形態で、鋼板表層部の硬度を内部の硬度に比べて低い値に制御することで、スポット溶接時に引張応力が加わるとしてもクラックの発生可能性を低くすることができ、それにより、クラックに沿って溶融亜鉛めっき層が浸透して発生する液相金属脆化(LME)現象を大きく減少させることができる。また、本発明の一実施形態では、鋼板表面に酸化物が形成されることを減少できるため、めっき品質の劣化を抑制できるという効果も有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】表層部と内部領域の硬度を測定した鋼板試験片の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、いくつかの実施形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明において亜鉛めっき鋼板とは、亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)だけでなく、合金化亜鉛めっき鋼板(GA)はもちろん、亜鉛が主に含まれる亜鉛系めっき層が形成される全てのめっき鋼板を含む概念であることに留意する必要がある。亜鉛が主に含まれるとは、めっき層に含まれる元素のうち亜鉛の比率が最も高いことを意味する。ただし、合金化亜鉛めっき鋼板では、亜鉛よりも鉄の比率が高くてもよく、鉄を除いた残りの成分のうち亜鉛の比率が最も高い鋼板までを本発明の範疇として含むことができる。
【0015】
本発明の発明者らは、溶接時に発生する液相金属脆化(LME)は、鋼板の表面から発生する微小クラックにその原因があることに着目して、表面の微小クラックを抑制する手段について研究し、そのためには、鋼板表面を軟質化することが必要であることを見出して、本発明に至った。
【0016】
通常、高強度鋼の場合には、鋼の硬化能やオーステナイトの安定性などを確保するために、炭素(C)、マンガン(Mn)、シリコン(Si)などの元素を多量に含むことができるが、このような元素は、鋼のクラックに対する感受性を高める役割を果たす。従って、このような元素が多量に含まれる鋼は、微小クラックが容易に発生し、最終的には溶接時の液相金属脆化の原因となる。
【0017】
本発明者らの研究結果によると、微小クラックが容易に発生する理由は、鋼板の硬度は大体強度に比例し、硬度の高い鋼板はクラックに対する感受性が高いことにある。従って、本発明者らは、鋼板の強度を確保するために、全体的な硬度は高い水準に維持する一方で、クラックが発生して伝播し始める表層部の硬度のみを低くすることで、クラックに対する感受性を減少できることを見出して、本発明に至った。
【0018】
従って、本発明の一実施形態によると、素地鋼板と、上記素地鋼板の表面に形成された亜鉛系めっき層を含む亜鉛めっき鋼板であって、表層部の硬度(a)と内部の硬度(b)の比率(a/b)が0.95未満に制御される溶融亜鉛めっき鋼板を提供することができる。ここで、表層部とは、鋼板表面から20μmの深さまでの領域を意味し、内部とは、深さが30~100μmの間の領域を意味する。各領域の硬度は、深さ方向へ同一の間隔で測定した値の平均値とすることができる。本発明の一実施形態では、鋼板の表層部の硬度(a)と内部の硬度(b)の比率(a/b)は、表面から5~100μmの深さまで5μm間隔でナノインデンテーションビッカース硬度を荷重5gで加えて硬度を測定し、表層部及び内部領域の深さに該当する地点の硬度測定値の平均値を該当領域の硬度値とすることができる。
【0019】
このようにする場合には、たとえ強度の高い鋼材であっても、表面に作用する応力によりクラックが発生する可能性を画期的に減らすことができる。本発明の一実施形態によると、上記比率(a/b)は、0.90未満であってもよく、他の一実施形態では、上記比率(a/b)は、0.85未満であってもよく、また他の一実施形態では、上記比率(a/b)は、0.80未満であってもよい。
【0020】
表層部の硬度は低いほど有利であるため、上記表層部の硬度(a)と内部の硬度(b)の比率(a/b)の下限は特に限定しない。ただし、鋼板の強度に大きく影響を及ぼすことなく表層部の硬度を効率的に減少できる通常の方法を考慮するとき、上記比率(a/b)は、0.2以上に定めることができる。
【0021】
上述した表層部の硬度と内部の硬度の比率(a/b)は、鋼板の幅方向の任意の位置で測定した値とすることができ、例えば、幅方向の中心部で測定した値を基準とすることができる。ただし、本発明の一実施形態によると、表層部の硬度は、幅方向のエッジ部でさらに高い値を有し、その比率(a/b)が高い値を有することもできるため、上記比率(a/b)は、幅方向のエッジ部で測定した値を基準とすることができる。このとき、エッジ部とは、鋼板の両端部を意味するものであるが、上記地点に汚染が発生するなど、試験片の健全性に問題がある場合には、端部から幅方向へ1mm内側の地点を意味することができる。
【0022】
本発明で対象とする鋼板は、強度490MPa以上の高強度鋼板であれば、その種類を制限しない。ただし、必ずしもこれに制限するものではないが、本発明で対象とする鋼板は、重量比率で、C:0.05~1.5%、Si:2.0%以下、Mn:1.0~30%、S-Al(酸可溶性アルミニウム):3%以下、Cr:2.5%以下、Mo:1%以下、B:0.005%以下、Nb:0.2%以下、Ti:0.2%以下、V:0.2%以下、Sb+Sn+Bi:0.1%以下、N:0.01%以下を含む組成を有することができる。残りの成分は鉄及びその他の不純物であり、その他にも、上記に列挙されてはいないが鋼中に含まれ得る元素を、合計1.0%以下の範囲でさらに含むことまでは排除しない。本発明で各成分元素の含量は、特に別に表現しない限り、重量を基準として表示する。上述した組成は、鋼板のバルク組成、すなわち、鋼板厚さの1/4地点の組成を意味する(以下、同一)。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、上記高強度鋼板として、TRIP鋼などを対象とすることができる。これらの鋼は、細かく区分すると、次のような組成を有することができる。
【0024】
鋼組成1:C:0.05~0.30%(好ましくは0.10~0.25%)、Si:0.5~2.5%(好ましくは1.0~1.8%)、Mn:1.5~4.0%(好ましくは2.0~3.0%)、S-Al:1.0%以下(好ましくは0.05%以下)、Cr:2.0%以下(好ましくは1.0%以下)、Mo:0.2%以下(好ましくは0.1%以下)、B:0.005%以下(好ましくは0.004%以下)、Nb:0.1%以下(好ましくは0.05%以下)、Ti:0.1%以下(好ましくは0.001~0.05%)、Sb+Sn+Bi:0.05%以下、N:0.01%以下、残部Fe及び不可避不純物を含む。場合によって、上記に列挙されていないが鋼中に含まれ得る元素を、合計1.0%以下の範囲までさらに含むことができる。
【0025】
鋼組成2:C:0.05~0.30%(好ましくは0.10~0.2%)、Si:0.5%以下(好ましくは0.3%以下)、Mn:4.0~10.0%(好ましくは5.0~9.0%)、S-Al:0.05%以下(好ましくは0.001~0.04%)、Cr:2.0%以下(好ましくは1.0%以下)、Mo:0.5%以下(好ましくは0.1~0.35%)、B:0.005%以下(好ましくは0.004%以下)、Nb:0.1%以下(好ましくは0.05%以下)、Ti:0.15%以下(好ましくは0.001~0.1%)、Sb+Sn+Bi:0.05%以下、N:0.01%以下、残部Fe及び不可避不純物を含む。場合によって、上記に列挙されていないが鋼中に含まれ得る元素を、合計1.0%以下の範囲までさらに含むことができる。
【0026】
また、上述した各成分元素のうち、その含量の下限を限定していない場合は、これらを任意元素と見なしてもよく、その含量が0%となってもよいことを意味する。
【0027】
必ずしもこれに限定するものではないが、本発明の一実施形態による素地鋼板の厚さは、1.0~2.0mmであってもよい。
【0028】
また、本発明の一実施形態によるめっき鋼板は、素地鋼板の表層部に、Si、Mn、Al及びFeのうち少なくとも1種以上を含有する内部酸化物を含むことで、向上した表面品質を有することができる。すなわち、上記酸化物が表層部内に存在することで、鋼板表面に酸化物が形成されることを抑制することができ、その結果、めっき時に素地鋼板とめっき液との間の濡れ性を確保して、良好なめっき性能を得ることができる。
【0029】
本発明の一実施形態によると、上記鋼板の表面には、一層以上のめっき層を含むことができ、上記めっき層は、GI(Galvanized)又はGA(Galva-annealed)などを含む亜鉛系めっき層であってもよい。本発明では、上述したとおり、表層部の硬度と内部の硬度の比率を適切な範囲に制御したため、亜鉛系めっき層が鋼板の表面に形成されても、スポット溶接時に発生する液相金属脆化の問題を抑制することができる。
【0030】
本発明の一実施形態によって、上記亜鉛系めっき層がGA層である場合には、合金化度(めっき層中のFeの含量を意味する)を8~13重量%、好ましくは10~12重量%に制御することができる。合金化度が充分でない場合には、亜鉛系めっき層中の亜鉛が微小クラックへ浸透して液相金属脆化の問題を起こす可能性が残り、逆に合金化度が過度に高い場合には、パウダーリングなどの問題が発生する可能性がある。
【0031】
また、上記亜鉛系めっき層のめっき付着量は、30~70g/mであってもよい。めっき付着量が過度に少ない場合には、十分な耐食性が得られ難く、一方、めっき付着量が過度に多い場合には、製造原価上昇及び液相金属脆化の問題が発生する可能性があるため、上述した範囲内に制御する。より好ましいめっき付着量の範囲は、40~60g/mであってもよい。本めっき付着量は、最終製品に付着しためっき層の量を意味するものであって、めっき層がGA層の場合には、合金化によりめっき付着量が増加するため、合金化前は、その重量が少し減少する可能性があり、合金化度により変わることから、必ずしもこれに制限するものではないが、合金化前の付着量(すなわち、めっき浴から付着するめっきの量)は、それよりも約10%程度減少した値であってもよい。
【0032】
以下、本発明の鋼板を製造する一実施形態について説明する。ただし、本発明の鋼板は、必ずしも下記の実施形態によって製造される必要はなく、下記の実施形態は、本発明の鋼板を製造する一つの好ましい方法であることに留意する必要がある。
【0033】
まず、上述した組成の鋼スラブを再加熱し、粗圧延及び仕上げ圧延を経て熱間圧延した後、ROT(Run Out Table)冷却を経たのち、巻き取る過程により熱延鋼板を製造することができる。以降、製造された鋼板に対し、酸洗を施して冷間圧延することができ、得られた冷延鋼板を焼鈍してめっきすることができる。ROT冷却などの熱延条件については特に制限しないが、本発明の一実施形態では、スラブ加熱温度、仕上げ圧延開始及び終了温度、巻き取り温度、巻き取られたコイルのエッジ部の加熱条件、酸洗条件、冷間圧延条件、焼鈍条件及びめっき条件などを次のように制限することができる。
【0034】
スラブ加熱温度:950~1,300℃
スラブ加熱は、熱間圧延前に素材を加熱して圧延性を確保するために実施する。スラブ再加熱中、スラブ表層部は、炉内の酸素と結合して酸化物であるスケールを形成する。スケールを形成するとき、鋼中の炭素とも反応して一酸化炭素ガスを形成する脱炭反応を起こし、スラブ再加熱温度が高いほど脱炭量は増加する。スラブ再加熱温度が過度に高いと、脱炭層が過度に形成され、最終製品の材質が軟化する問題点があり、過度に低いと、熱間圧延性が確保できず、エッジクラックが発生する可能性があり、表層部の硬度を充分低くすることができないことから、LME改善が不十分になる。
【0035】
仕上げ圧延開始温度:900~1,150℃
仕上げ圧延開始温度が過度に高いと、表面熱延スケールが過度に発達し、最終製品のスケールに起因した表面欠陥の発生量が増加する可能性があるため、その上限を1,150℃に制限する。また、仕上げ圧延開始温度が900℃未満の場合、温度減少でバーの剛性が増加し、熱間圧延性が大きく減少する可能性があるため、上述した範囲に仕上げ圧延開始温度を制限することができる。
【0036】
仕上げ圧延終了温度:850~1,050℃
仕上げ圧延終了温度が1,050℃を超えると、仕上げ圧延中、デスケーリングで除去したスケールが再度表面に過度に形成され、表面欠陥の発生量が増加し、仕上げ圧延終了温度が850℃未満であると、熱間圧延性が低下するため、仕上げ圧延終了温度は、上述した範囲に制限することができる。
【0037】
巻き取り温度:590~750℃
熱間圧延された鋼板は、以降、コイル形態に巻き取られて保管されるが、巻き取られた鋼板は徐冷過程を経るようになる。このような過程により鋼板の表層部に含まれた硬化性元素が除去されるが、熱延鋼板の巻き取り温度が過度に低い場合には、これらの元素の酸化除去に必要な温度よりも低い温度でコイルが徐冷されるため、十分な効果が得られ難い。
【0038】
熱延コイルのエッジ部の加熱:600~800℃で5~24時間実施
本発明の一実施形態では、エッジ部の表層部の硬度(a)と内部の硬度(b)の比率(a/b)値を調節するために、熱延コイルのエッジ部を加熱することもできる。熱延コイルのエッジ部の加熱とは、巻き取られたコイルの幅方向の両端部、すなわち、エッジ部を加熱することを意味するものであって、エッジ部の加熱により、エッジ部が酸化に適合した温度に先に加熱される。すなわち、本発明の一実施形態では、鋼板の表層の炭素や他の固溶された硬化能元素(Si、Mn、Al)を除去することで、表層部の硬度を減少させることができるが、このような過程は、鋼板表面を内部酸化させることにより行うことができる。ところが、巻き取られたコイルは、内部は高温に維持されるものの、エッジ部は相対的に速かに冷却され、これにより、内部酸化に適合した温度で維持される時間がエッジ部よりも短くなる。従って、幅方向の中心部に比べて、エッジ部での脱炭又は硬化能元素の除去が活発に行われなくなる。エッジ部の加熱は、エッジ部の硬化能元素を除去するための一つの方案として用いることができる。
【0039】
すなわち、エッジ部の加熱を実施する場合、巻き取り後、冷却の場合とは反対にエッジ部が先に加熱され、従って、幅方向のエッジ部の温度が内部酸化に適合するように維持されるが、その結果、エッジ部の内部酸化層の厚さが増加するようになる。このためには、上記エッジ部の加熱温度は、600℃以上(鋼板エッジ部の温度を基準とする)である必要がある。ただし、温度が過度に高い場合には、加熱中にエッジ部にスケールが過度に形成されるか又は多孔質の高酸化スケール(hematite)が形成されて、酸洗後の表面状態が悪くなる可能性があるため、上記エッジ部の温度は、800℃以下であるとよい。より好ましいエッジ部の加熱温度は、600~750℃である。
【0040】
また、巻き取り時に発生した幅方向のエッジ部と中心部の間の鋼板表面20μm以内の領域内のフェライト分率の不均一を解消するためには、上記エッジ部の加熱時間は5時間以上である必要がある。ただし、エッジ部の加熱時間が過度に長い場合には、スケールが過度に形成されるか又は内部の硬度まで減少する可能性がある。従って、エッジ部の加熱時間は24時間以下であるとよい。
【0041】
本発明の一実施形態によると、上記エッジ部の加熱は、空燃費調節による燃焼加熱方式にて行うことができる。すなわち、空燃費調節により雰囲気中の酸素分率が変わるが、酸素分圧が高いほど鋼板の表層と接する酸素濃度が増加して、脱炭や内部酸化が増加する可能性がある。必ずしもこれに限定するものではないが、本発明の一実施形態では、空燃費調節により酸素を1~2%含む窒素雰囲気に制御することができる。本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、特別な困難なしに空燃費調節により酸素分率を制御することができるため、これについては別途に説明しない。
【0042】
酸洗処理:通板速度180~250mpmで実施
上述した過程を経た熱延鋼板に対し、熱延スケールを除去するために、塩酸浴に投入して酸洗処理を実施する。酸洗の際、塩酸浴の塩酸濃度は10~30%の範囲で実施し、酸洗通板速度は180~250mpmで実施する。酸洗速度が250mpmを超える場合は、熱延鋼板表面のscaleが完全に除去されない可能性があり、酸洗速度が180mpmよりも低い場合、素地鉄の表層部が塩酸により腐食する可能性があるため、180mpm以上で実施する。
【0043】
冷間圧延:圧下率35~60%
酸洗を実施した後、冷間圧延を実施する。冷間圧延の際、冷間圧下率は35~60%範囲で実施する。冷間圧下率が35%未満であると、特別な問題はないものの、焼鈍時に再結晶駆動力が足りないことから、微細組織を十分制御し難いことが発生する可能性がある。冷間圧下率が60%を超えると、熱延時に確保した軟質層の厚さが薄くなり、焼鈍後、鋼板表面20μm以内の領域内の硬度を十分低くし難い。
【0044】
上述した冷間圧延過程以降には、鋼板を焼鈍する過程が後続することができる。鋼板の焼鈍過程でも、鋼板表面20μm以内の領域(表層部)内の硬度が大きく変わる可能性があるため、本発明の一実施形態では、鋼板表面20μm以内の領域内の硬度を適切に制御する条件で焼鈍工程を制御することができ、そのうち、通板速度と焼鈍炉内の露点は、次のような条件で制御することができる。
【0045】
通板速度:40~130mpm
十分な生産性を確保するために、上記冷延鋼板の通板速度は40mpm以上である必要がある。ただし、通板速度が過度に速い場合には、材質確保の側面で不利になる可能性があるため、本発明の一実施形態では、上記通板速度の上限を130mpmに定めることができる。
【0046】
焼鈍炉内の露点の制御:650~900℃で-10~30℃の範囲に制御
適切な範囲の表層部の硬度値を得るために、焼鈍炉内の露点を制御することが有利である。露点が過度に低い場合には、内部酸化ではなく表面酸化が発生し、表面にSiやMnなどの酸化物が生成するおそれがある。これらの酸化物は、めっきに悪影響を及ぼす。従って、露点は-10℃以上に制御する必要がある。逆に、露点が過度に高い場合には、Feの酸化が発生するおそれがあるため、露点は30℃以下に制御する必要がある。このように露点制御のための温度は、十分な内部酸化の効果が現れる温度の650℃以上であることができる。ただし、温度が過度に高い場合には、Siなどの表面酸化物が形成されて、酸素が内部へ拡散することを妨害するだけでなく、亀裂帯加熱中にオーステナイトが過度に生じて炭素の拡散速度が低下し、それにより、内部酸化水準が減少する可能性があり、亀裂帯のオーステナイトの大きさが過度に成長して材質軟化を発生させる。また、焼鈍炉の負荷を発生させて設備の寿命を短縮させ、工程コストを増加させる問題点を引き起こす可能性があるため、上記露点を制御する温度は900℃以下であることができる。
【0047】
このとき、露点は、水蒸気を含む含湿窒素(N+HO)を焼鈍炉内に投入することで調節することができる。
【0048】
焼鈍炉内の水素濃度:5~10Vol%
焼鈍炉内の雰囲気は、窒素ガスに5~10Vol%の水素を投入して還元雰囲気を維持する。焼鈍炉内の水素濃度が5Vol%未満である場合、還元能力の低下により表面酸化物が過度に形成され、表面品質及びめっき密着性が劣位になり、表面酸化物が酸素と鋼中炭素との反応を抑制させて、脱炭量が低下し、LME改善水準が低くなる問題点が生じる。水素濃度が高い場合は特に問題点が生じないが、水素ガス使用量の増加による原価上昇、及び水素濃度の増加による炉内爆発危険性のため、水素濃度を制限する。
【0049】
上述した過程により焼鈍処理された鋼板は、徐冷及び急冷段階を経て冷却することができる。
【0050】
徐冷時の徐冷帯の温度:550~750℃
徐冷帯とは、冷却速度が3~5℃/sの区間をいうものであって、徐冷帯の温度が750℃を超えると、徐冷中に軟質のフェライトが過多に形成されて、引張強度が低下し、逆に、徐冷帯の温度が550℃未満であると、ベイナイトが過多に形成されるか又はマルテンサイトが形成されて、引張強度が過度に増加し、延伸率が減少する可能性がある。従って、徐冷帯の温度は、上述した範囲に制限することができる。
【0051】
急冷時の急冷帯の温度:270~550℃
急冷帯とは、冷却速度が12~20℃/sの区間をいうものであって、急冷帯の温度が550℃を超えると、急冷中に適正水準以下のマルテンサイトが形成されて、引張強度が足りず、急冷帯の温度が270℃未満であると、マルテンサイトの形成が多すぎて延伸率が足りない可能性がある。
【0052】
このような過程により焼鈍された鋼板は、直ちにめっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを実施する。もし、鋼板が冷却される場合には、鋼板を加熱する段階をさらに含むことができる。上記加熱温度は、後述する鋼板の引込温度よりも高い必要があり、場合によってはめっき浴の温度よりも高いこともできる。
【0053】
めっき浴鋼板の引込温度:420~500℃
めっき浴中の鋼板の引込温度が低いと、鋼板と液相亜鉛との接触界面内の濡れ性が十分確保されないため、420℃以上を維持しなければならない。過度に高い場合、鋼板と液相亜鉛との反応が過度であることから界面にFe-Zn合金相であるゼタ(Zetta)相が生じて、めっき層の密着性が低下し、めっき浴中の鋼板のFe元素の溶出量が過度になり、めっき浴中にドロスが発生する問題点がある。従って、上記鋼板の引込温度は500℃以下に制限することもできる。
【0054】
めっき浴中のAl濃度:0.10~0.25%
めっき浴中のAl濃度は、めっき層の濡れ性とめっき浴の流動性を確保するために、適正濃度が維持されなければならない。GAの場合は0.10~0.15%、GIは0.2~0.25%に制御することで、めっき浴中のドロス(dross)の形成を適正水準に維持し、めっき表面の品質と性能を確保することができる。
【0055】
上述した過程によりめっきされた溶融亜鉛めっき鋼板は、以降、必要に応じて、合金化熱処理過程を経ることができる。合金化熱処理の好ましい条件は、下記のとおりである。
【0056】
合金化(GA)温度:480~560℃
480℃未満では、Fe拡散量が少なく、合金化度が充分でないことからめっき物性が良好でない可能性があり、560℃を超える場合、過度な合金化によるパウダーリング(powdering)の問題が発生する可能性があり、残留オーステナイトのフェライト変態で材質が劣化する可能性があるため、合金化温度を上述した範囲に定める。
【実施例
【0057】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示して、具体化するためのものにすぎず、本発明の権利範囲を制限するためのものではない点に留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項と、それから合理的に類推される事項によって決定されるものであるためである。
【0058】
(実施例)
下記表1に記載された組成を有する鋼スラブ(表に記載されていない残りの成分は、Fe及び不可避不純物である。また、表において、BとNはppm単位で表示しており、残りの成分は重量%の単位で表示している)を1230℃に加熱し、仕上げ圧延開始温度と終了温度をそれぞれ980℃及び895℃にして熱間圧延した後、熱延コイルに対してエッジ部の加熱を実施し、その後、冷間圧延し、19.2体積%の塩酸溶液で酸洗した後に冷間圧延し、得られた冷延鋼板を焼鈍炉で焼鈍し、620℃の徐冷帯で4.2℃/sで徐冷し、315℃の急冷帯で17℃/sで急冷して、焼鈍された鋼板を得た。以降、得られた鋼板を470℃に加熱し、GAはAl0.13%のめっき浴に、GIはAlを0.24重量%含む456℃の亜鉛系めっき浴に浸漬して、溶融亜鉛めっきを実施した。得られた溶融亜鉛めっき鋼板に、必要に応じて、合金化(GA)熱処理を520℃で実施して、最終的に合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得た。
【0059】
すべての実施例において、溶融亜鉛めっき浴に引込する鋼板の引込温度を475℃にした。その他の各実施例別の条件は、表2に記載したとおりである。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
上述した過程により製造された溶融亜鉛めっき鋼板の特性を測定し、スポット溶接時の液相金属脆化(LME)の発生有無を観察した結果を表3に示した。スポット溶接は、鋼板を幅方向に切断し、各切断された縁部位に沿って実施した。スポット溶接電流を2回加えて、通電後、1cycleのhold timeを維持した。スポット溶接は、二種三重で実施した。評価素材-評価素材-GA 980DP 1.4t材(C 0.12重量%、Si 0.1重量%、Mn 2.2重量%の組成を有する)の順に積層してスポット溶接を実施した。スポット溶接の際、新たな電極を軟質材に15回溶接した後、電極を摩耗させたのち、スポット溶接の対象素材で飛散(expulsion)が発生する上限電流を測定する。上限電流を測定した後、上限電流よりも0.5及び1.0kA低い電流でスポット溶接を溶接電流別に8回実施し、スポット溶接部の断面を放電加工で精密に加工した後、エポキシマウンティングして研磨し、光学顕微鏡でクラックの長さを測定した。光学顕微鏡観察時の倍率は100倍に指定し、当該倍率でクラックが発見されなければ、液相金属脆化が発生していないものと判断し、クラックが発見されれば、イメージ分析ソフトウェアで長さを測定した。スポット溶接部の肩部で発生するB-typeクラックは100μm以下、C-typeクラックは観察されないときに良好なものと判断した。
【0063】
鋼板の表層部の硬度(a)と内部の硬度(b)の比率(a/b)は、図1に図示したとおり、各領域の硬度は、深さ方向へ同一の間隔で測定した値の平均値とすることができる。本発明の一実施形態では、鋼板のエッジから1mm離れた部分の表面から5~100μmの深さまで、5μm間隔で、ナノインデンテーションビッカース硬度を荷重5gで加えて硬度を測定し、表層部及び内部領域の深さに該当する地点の硬度の測定値の平均値をそれぞれ表層部の硬度(a)及び内部の硬度(b)として、これらの比率(a/b)値とした。
【0064】
引張強度は、JIS-5号規格のC方向サンプルを作製し、引張試験により測定した。合金化度とめっき付着量は、塩酸溶液を用いた湿式溶解法を利用して測定した。シーラ密着性は、自動車向け構造用の接着剤D-typeをめっき表面に接着した後、鋼板を90度に曲げてめっきが脱落するかを確認した。Powderingは、めっき材を90度に曲げた後、テープを曲げた部位に接着した後に剥がして、テープにめっき層の脱落物が何mm落ちるかを確認した。テープから剥離されるめっき層の長さが10mmを超える場合、不良と確認した。Flakingは逆「コ」字状に加工した後、加工部にめっき層が脱落するかを確認した。GI鋼板は、自動車用構造用の接着剤を表面に付着して鋼板を90度に曲げたとき、シーラの脱落面にめっき層が剥離して付着しているかを確認するシーラベンディングテスト(Sealer bending test、SBT)を実施した。鋼板の未めっきなどの欠陥があるかを目視で確認して表面品質を確認し、未めっきなどの目視観察時に欠陥が見えると、不良と判定した。
【0065】
【表3】
【0066】
発明例1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10は、鋼組成と製造条件が本発明の条件を満たすものであって、引張強度、めっき品質、めっき付着量及びスポット溶接LMEクラックの長さも良好であった。
【0067】
比較例2と7は、熱延工程中の巻き取り温度が、本発明で提示する範囲を満たしていない。比較例2は、熱延巻き取り温度が、本発明で提示する範囲よりも低く、熱延発生する脱炭の量が充分でないことから、鋼板の表層部の硬度(a)と内部の硬度(b)の比率(a/b)が95%(0.95)以上であって、LMEクラックが基準を満たしていない。比較例7は、本発明で提示する熱延巻き取り温度を超えて作製され、熱延過程中に発生する脱炭の量が充分であり、LME特性が良好であったが、熱延スケールが過度に発生して、スケールが酸洗時に完全に除去されず、未めっきが発生して表面品質が不良であることから、flaking評価時にめっき剥離が発生し、合金化不均一によりパウダーリング性が不良であった。熱延巻き取り温度が過度に高く、熱延材質の軟化が発生して焼鈍後にも回復しないことから、引張強度が劣位であった。
【0068】
比較例15は、エッジ部の加熱温度が、本発明で提示する範囲を超え、熱処理過程中にエッジ部に過酸化が発生して、表面スケールが赤色のhematiteを形成し、厚さが過度に深くなった。熱延後の酸洗過程でエッジ部が過度に酸洗されるにつれて表面粗度が高くなり、めっき後の表面形状が不均一で表面色相が中央部と異なる色相不均一の欠陥が発生し、合金化の不均一によりパウダーリング性が不良であった。熱処理過程中で過度な脱炭が発生し、硬度減少率が基準を満たしてLMEは基準を満たしているものの、材質が劣位であった。
【0069】
比較例8は、エッジ部の加熱温度が、本発明の範囲よりも低く制御された。その結果、熱延中の硬度の比率(a/b)を十分に減少させることができず、スポット溶接時のLMEクラックの評価基準を満たしていない。
【0070】
比較例13は、エッジ部の加熱温度は、本発明の範囲を満たしているものの、加熱時間を超え、熱処理過程中、エッジ部に過酸化が発生して、表面スケールが赤色のhematiteを形成し、スケールの浸透厚さも過度になった。熱延後の酸洗過程でエッジ部が過度に酸洗されるにつれて表面粗度が高くなり、めっき後の表面形状が不均一で表面色相が中央部と異なる色相不均一の欠陥が発生し、合金化の不均一によりパウダーリング性が不良であった。
【0071】
比較例5は、エッジ部の加熱温度は、本発明の範囲を満たしているものの、エッジ部の加熱時間が本発明で提示する範囲よりも低かった。その結果、十分な熱延脱炭層が形成されず、スポット溶接のLMEクラック評価時の基準を満たしておらず、不良であった。
【0072】
比較例1と14は、酸洗速度が本発明で提示する範囲を満たしていない。比較例1は、酸洗速度が基準よりも低く作製されて、酸洗速度が過度に長くなるにつれて、熱延中に形成された脱炭層が酸溶液中に溶解して除去され、鋼板の表層部の硬度(a)と内部の硬度(b)の比率(a/b)が基準よりも高いことから、LMEクラックが発生した。熱延内部酸化粒界が酸溶液により腐食するにつれて粒界健全性が低下し、flaking test時に剥離が発生した。比較例14は、酸洗速度が基準よりも高く作製されて、鋼板表面に熱延スケールが完全に除去されずに残留して、表面品質が劣位であり、GA合金化度の不均一によりパウダーリング性が劣位であった。
【0073】
比較例10では、焼鈍炉内の亀裂帯の温度が、本発明で提示する範囲を超えている。焼鈍温度が過度になるにつれて外部酸化量が増加し、十分な内部酸化量が形成されないことから、鋼板の表層部の硬度(a)と内部の硬度(b)の比率(a/b)が95%以上であり、LMEクラックが基準を満たしていないため、スポット溶接性が不良であった。また、亀裂帯でオーステナイトが過度に形成及び成長し、材質が基準を満たしていないため、不良であった。
【0074】
比較例12では、焼鈍炉内の亀裂帯の温度が、本発明で提示する範囲よりも低く製造された。焼鈍温度が低く水蒸気と鋼板との間の酸化反応が充分でないことから、内部酸化が十分に形成されず、鋼板の表層部の硬度(a)と内部の硬度(b)の比率(a/b)が高く、LMEクラックが基準を満たしていないため、スポット溶接性が不良であった。また、焼鈍中に再結晶が十分に行われず、目標とする微細組織が形成されないことから、材質が基準を満たしていないため、不良であった。
【0075】
比較例6は、焼鈍中の炉内の露点が、本発明で提示する範囲よりも低かった場合である。熱延加熱工程中、全幅に十分な内部酸化層を発生させても、冷間圧延後の焼鈍過程中に露点が十分に高くないことから、脱炭層が十分に形成されず、鋼板の表層部の硬度(a)と内部の硬度(b)の比率(a/b)が95%以上であり、その影響により、スポット溶接のLMEクラックの長さが基準を満たしていない。GI材の場合は、露点が低く、十分な内部酸化を発生させることができず、表面酸化物が過度に発生することから、表面品質が不良であり、SBT剥離が発生した。
【0076】
比較例18では、焼鈍炉内の露点の範囲が、本発明で提示する範囲を超えている。露点が過度に高くなるにつれて脱炭反応が十分に発生し、LMEは満たしているものの、過度な内部酸化により材質が劣化して、基準を満たしておらず、過度な露点により表面酸化物の発生量も多くなり、SBTの結果、めっき剥離が発生した。
【0077】
比較例3は、焼鈍炉内の水素濃度が5Vol%未満であって焼鈍炉内の還元雰囲気の組成が不十分であった。過多な表面酸化物の形成により未めっきが発生することから、表面品質が劣位であり、SBTめっき剥離が発生した。また、過度な酸化物により鋼中の炭素と酸素の物理的接触が難しく、表層部の硬度減少が不十分であるため、LMEクラックが基準を満たしていない。
【0078】
比較例4と11は、焼鈍炉内の通板速度が、本発明で提示する範囲を外れている。比較例4は、通板速度が、本発明で提示する範囲よりも高く製造された。焼鈍炉内の含湿窒素と反応できる十分な時間が確保されず、脱炭水準が不十分であることから、表層部の硬度(a)と内部の硬度(b)の比率(a/b)が95%以上であって、LMEクラックが基準を満たしておらず、焼鈍炉内で十分な再結晶時間を確保できないため、材質(引張強度)が劣位であった。比較例11は、通板速度が、本発明で提示する範囲よりも低く製造されて、焼鈍炉内に十分な脱炭層を確保して、LMEは満たしているものの、過度な脱炭層の形成により材質(引張強度)が劣位であった。
【0079】
このような実施例の結果を通じて、本発明の様々な実施形態の有利な効果を確認することができる。
図1