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特許75711472-(ハロゲン化メチル)ナフタレン及び2-ナフチルアセトニトリルの製造方法
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  • 特許-2-(ハロゲン化メチル)ナフタレン及び2-ナフチルアセトニトリルの製造方法 図1
  • 特許-2-(ハロゲン化メチル)ナフタレン及び2-ナフチルアセトニトリルの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】2-(ハロゲン化メチル)ナフタレン及び2-ナフチルアセトニトリルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/14 20060101AFI20241015BHJP
   C07C 22/04 20060101ALI20241015BHJP
   C07C 253/14 20060101ALI20241015BHJP
   C07C 255/33 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
C07C17/14
C07C22/04
C07C253/14
C07C255/33
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022545740
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2021031570
(87)【国際公開番号】W WO2022045304
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2020146244
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】396020464
【氏名又は名称】株式会社エーピーアイ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】辻 駿佑
(72)【発明者】
【氏名】長濱 正樹
(72)【発明者】
【氏名】谷池 裕次
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-039904(JP,A)
【文献】特表2009-511427(JP,A)
【文献】国際公開第2013/047136(WO,A1)
【文献】SASIAMBARRENA, L D et al,Intramolecular sulfonylamidomethylation of 2-(2-naphthyl) and 2-(1-naphthyl)ethanesulfonamides: synt,Tetrahedron Lett,2015年,Vol.56, No.16,p.2054-2058,Supplemental Information S1-S35
【文献】Shu KOBAYASHI,Flow “Fine” Synthesis: High Yielding and Selective Organic Synthesis by Flow Methods,Chemistry An Asian Journal,2015年10月20日,Vol. 11, No. 4,p.425-436
【文献】AMIJS, C H M et al,Carbon tetrachloride free benzylic brominations of methyl aryl halides,Green Chemistry,2003年,Vol.5, No.4,p.470-474
【文献】SHENGJUN N et al,Carbocation Catalyzed Bromination of Alkyl Arenes, a Chemoselective sp3 vs. sp2 C-H functionalizatio,Advanced Synthesis & Catalysis,2018年,Vol.360, No.21,p.4197-4204
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/14
C07C 22/04
C07C 253/14
C07C 255/33
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-メチルナフタレンを、ジクロロメタン、ジクロロエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、及びシクロオクタンから選択される有機溶媒中、触媒の非存在下、光照射下でハロゲン化剤と、-20℃~55℃で、フロー合成反応により反応させるハロゲン化工程を含む、一般式(1):
【化1】

(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
で表される2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンの製造方法。
【請求項2】
ハロゲン化剤が臭素化剤である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
光照射が、280nm~700nmの波長の光を用いて行われる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
2-メチルナフタレンを、ジクロロメタン、ジクロロエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、及びシクロオクタンから選択される有機溶媒中、触媒の非存在下、光照射下でハロゲン化剤と、-20℃~55℃で、フロー合成反応により反応させるハロゲン化工程;及び
ハロゲン化工程で得られる一般式(1):
【化2】

(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
で表される2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンを、シアノ化剤と、溶媒中で反応させるシアノ化工程;
を含む、2-ナフチルアセトニトリルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品等の合成中間体として有用な2-(ハロゲン化メチル)ナフタレン及び2-ナフチルアセトニトリルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンは、様々な医薬品、農薬、化学製品等の合成原料又は合成中間体として有用である。また2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンに類似する化学構造を有するナフタレン化合物も、様々な医薬品、農薬、化学製品の合成原料又は合成中間体としての利用が期待されている。例えば、2-(ハロゲン化メチル)ナフタレン及び類似する化学構造を有する2-ナフチルアセトニトリルは注意欠陥・多動性障害(ADHD)治療薬の合成原料又は合成中間体として有用である。具体的には、例えば、2-(ハロゲン化メチル)ナフタレン及び2-ナフチルアセトニトリルは、(1R,5S)-1-(ナフタレン-2-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン(一般名:センタナファジン)の合成原料又は合成中間体として好適に用いることができる。
従来、2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンの製造方法としては、バッチ式の反応方法が知られている。例えば、2-メチルナフタレン、N-ブロモスクシンイミド、ジクロロメタン、ベンゼン及びフルオロホウ酸トリチルを、バッチ式反応容器に添加し、光照射下、室温で光反応させて、2-(ブロモメチル)ナフタレンを製造する方法が知られている(非特許文献1)。光反応は、光照射により分子にエネルギーを吸収させて、分子をエネルギー準位の高い励起状態とし、励起された分子により反応を起こさせる化学反応全般を指す。光反応は光化学反応とも呼ばれる。
【0003】
【化1】
【0004】
しかしながら、非特許文献1の方法は、ベンゼン溶媒を用いた反応であり、ベンゼン溶媒を工業的に用いることは安全上極めて難しく、また、得られる2-(ブロモメチル)ナフタレンの収率も工業的に満足できるものではない。したがって、より安全で生産性の高い工業的な製造方法が望まれている。
近年では、生産性を高めるために連続式のハロゲン化反応方法が知られている。例えば、4-tertブチルトルエン及びN-ブロモスクシンイミドをアセトニトリル溶媒と混合した溶液を、流通型の光化学反応器中で光照射することにより、4-tertブチルベンジルブロミドを連続的に製造する方法が知られている(非特許文献2)。
【0005】
【化2】
【0006】
しかしながら、後述する比較例1から明らかなように、非特許文献2の基質である4-tertブチルトルエンを2-メチルナフタレンに置き換えて製造しても、目的化合物である2-(ブロモメチル)ナフタレンを高い選択性で得ることができず、望ましくない1-ブロモ-2-メチルナフタレンが主生成物として生成することが分かった。
したがって、2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンを高収率で製造するために、2-メチルナフタレンの2位メチルを高選択的にハロゲン化可能な製造方法が望まれている。
【0007】
また、非特許文献3には、2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンをシアノ化することにより、2-ナフチルアセトニトリルを製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Adv. Synth. Catal. (2018)4197-4204
【文献】JOC. (2014) 223-229
【文献】Tetrahedron Letters 56 (2015) 2054-2058
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、高い選択性と良好な収率のもとに、安全かつ安価に2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンを製造する方法及び2-ナフチルアセトニトリルを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、2-メチルナフタレンを、特定の有機溶媒中、光照射下でハロゲン化剤と反応させることにより、高い選択性と良好な収率で、安全かつ安価に2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンが得られること及び2-ナフチルアセトニトリルが得られることを見出し、本発明を完成させた。また、すなわち本発明は、以下を特徴とするものである。
【0011】
[1] 2-メチルナフタレンを、ハロゲン化炭化水素、脂肪族エステル及び脂肪族炭化水素から選択される有機溶媒中、光照射下でハロゲン化剤と反応させるハロゲン化工程を含む、一般式(1):
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
で表される2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンの製造方法。
[2] ハロゲン化剤が臭素化剤である、上記[1]に記載の製造方法。
[3] 光照射が、280nm~700nmの波長の光を用いて行われる、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 反応が、-20℃~100℃の範囲内で行われる、[1]~[3]のいずれか1項に記載の製造方法。
[5] 反応が、添加剤の非存在下で行われる、[1]~[4]のいずれか1項に記載の製造方法。
[6] 反応が、フロー合成反応により行われる、[1]~[5]のいずれか1項に記載の製造方法。
[7] 2-メチルナフタレンを、ハロゲン化炭化水素、脂肪族エステル及び脂肪族炭化水素から選択される有機溶媒中、光照射下でハロゲン化剤と反応させるハロゲン化工程;及び
ハロゲン化工程で得られる一般式(1):
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
で表される2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンを、シアノ化剤と、溶媒中で反応させるシアノ化工程;
を含む、2-ナフチルアセトニトリルの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンの製造方法によれば、高い選択性と良好な収率で、安全かつ安価に2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンを製造することができる。また、本発明の2-ナフチルアセトニトリルの製造方法によれば、高い選択性と良好な収率で、安全かつ安価に2-ナフチルアセトニトリルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンの製造方法の実施の形態の一例を示すフロー合成反応器の系統図である。
図2】本発明の2-ナフチルアセトニトリルの製造方法の実施の形態の一例(シアノ化工程)を示すフロー合成反応器の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
[2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンの製造方法]
本発明の2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンの製造方法は、2-メチルナフタレンを、ハロゲン化炭化水素、脂肪族エステル及び脂肪族炭化水素から選択される有機溶媒中、光照射下でハロゲン化剤と反応させることにより、2位メチルを選択的にハロゲン化して、一般式(1):
【0020】
【化5】
【0021】
(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
で表される2-(ハロゲン化メチル)ナフタレン(以下、ハロゲン化ナフタレンと称する場合がある。)を製造(以下、この工程を「本発明のハロゲン化工程」と称す場合がある。)する方法である。
「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。「ハロゲン原子」は、好ましくは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、特に好ましくは反応性の観点から臭素原子である。
【0022】
<<ハロゲン化工程>>
本発明のハロゲン化工程の実施方法としては、例えば、バッチ式反応器において、2-メチルナフタレン、ハロゲン化剤及び有機溶媒を混合し、反応条件下で光照射して反応させる方法が挙げられる。また、図1に示すように、本発明の光照射機構4を備える透過性の流通型反応器3に光を照射しながら、調製槽1で調製した2-メチルナフタレン(2MN)と有機溶媒とハロゲン化剤の混合液を連続的にポンプ2によって送液し、流通型反応器3内で2-メチルナフタレンを連続的にハロゲン化反応させ、流通型反応器3から流出する2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンを含む反応液を回収槽5で回収するフロー合成反応器を用いる方法が挙げられる。
本発明のハロゲン化工程は、反応性及び選択性の観点から、フロー合成反応器を用いたフロー合成反応により行うことが好ましい。このフロー合成反応器については後述する。
【0023】
<2-メチルナフタレン>
2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンの製造原料である2-メチルナフタレンは、市販品を用いてもよいし、公知の方法またはそれに準じた方法で得られたものを用いてもよい。
【0024】
<有機溶媒>
本発明に用いる有機溶媒は、ハロゲン化炭化水素、脂肪族エステル及び脂肪族炭化水素から選択されるが、これらは単独又は2種以上を任意の割合で用いてもよい。特に反応性の観点からハロゲン化炭化水素、脂肪族エステルを単独で用いるのが好ましい。
ハロゲン化炭化水素は、1個以上のハロゲン原子で置換された脂肪族炭化水素であり、通常、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~8、特に好ましくは炭素数1~6のハロゲン化脂肪族炭化水素が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロメタン、クロロフォルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロエタン、及び1,1,2,2-テトラクロロエタンが挙げられ、反応性、選択性、安全性及び入手容易性の観点から、好ましくはジクロロメタン及びジクロロエタンであり、特に好ましくはジクロロメタンである。
脂肪族エステルは、1個以上のエステル結合を持つ脂肪族炭化水素であり、通常、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~8、特に好ましくは炭素数1~6の脂肪族エステルが挙げられる。
脂肪族エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸プロピルの酢酸エステルが挙げられ、反応性、選択性及び入手容易性の観点から、好ましくは酢酸メチル及び酢酸エチルであり、安全性の観点から特に好ましくは酢酸メチルである。
脂肪族炭化水素は、環状又は鎖状の脂肪族炭化水素であり、通常、炭素数5~12、好ましくは炭素数5~10、特に好ましくは炭素数5~8の脂肪族炭化水素が挙げられる。
環状脂肪族炭化水素としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2-ジメチルシクロヘキサン、1,3-ジメチルシクロヘキサン、1,4-ジメチルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、n-プロピルシクロヘキサン、t-ブチルシクロヘキサン、n-ブチルシクロヘキサン、及びイソブチルシクロヘキサンが挙げられ、反応性の観点から好ましくはシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、及びシクロオクタン、特に好ましくはシクロペンタン、シクロヘキサン、及びシクロヘプタンである。
鎖状脂肪族炭化水素としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等が挙げられ、反応性の観点から好ましくはn-ヘキサン、及びn-ヘプタンである。
有機溶媒の使用量は、生産性及び反応性の観点から、2-メチルナフタレンに対して、通常1重量倍~200重量倍、好ましくは2重量倍~150重量倍、特に好ましくは3重量倍~100重量倍である。
本発明では、通常、原料となる2-メチルナフタレン及びハロゲン化剤は有機溶媒中に溶解し、均一溶液となって反応が進行することが好ましいが、場合により、前記原料は完全溶解することなくスラリー状となっていても構わない。
【0025】
<ハロゲン化剤>
ハロゲン化剤としては、2-メチルナフタレンをハロゲン化することができるものであれば特に限定されない。ハロゲン化剤としては、臭素化剤、ヨウ素化剤及び塩素化剤が挙げられ、反応性の観点から、臭素化剤を用いるのが好ましい。ハロゲン化剤は2種以上を任意の割合で用いてもよいが、コストと反応性の観点から、単独で用いるのが好ましい。
臭素化剤としては、例えば、N-ブロモスクシンイミド、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、N,N,N’,N’-テトラブロモベンゼン-1,3-ジスルホンアミド、及び分子状臭素が挙げられ、反応性の観点からN-ブロモスクシンイミド、及び1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントインが好ましく、N-ブロモスクシンイミドが特に好ましい。
塩素化剤としては、例えば、N-クロロスクシンイミド、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、及び分子状塩素が挙げられ、反応性の観点からN-クロロスクシンイミドが好ましい。
ヨウ素化剤としては、例えば、N-ヨードスクシンイミド、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン、及び分子状ヨウ素が挙げられ、反応性の観点からN-ヨードスクシンイミドが好ましい。
ハロゲン化剤の使用量は、用いるハロゲン化剤によって異なり、2-メチルナフタレンをハロゲン化することができる量であれば特に限定されないが、通常、2-メチルナフタレン1molに対して、ハロゲン化剤のハロゲン原子含有量が、下限としては通常1mol以上であり、上限としては10mol以下、好ましくは5mol以下、特に好ましくは2mol以下である。
【0026】
<その他添加剤>
本発明では、必要に応じて触媒、光増感剤等の添加剤を用いてもよい。ただし、本発明においては、特に添加剤を用いなくても良好に反応を行うことができるので、通常、添加剤の非存在下で反応を行うことが好ましい。
もし添加剤として光増感剤を用いる場合は、例えば、ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジメトキシ)チオベンゾフェノン、4,4-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジメチルアミノ)チオベンゾフェノン、及び4,4-ビス(ジメトキシ)ベンゾフェノンの公知の光増感剤を単独又はこれらのうち2種以上を任意の割合で用いることができる。
光増感剤の使用量は、2-メチルナフタレン1molに対して、反応性の観点から、通常0.01mol%~10mol%である。
【0027】
<反応条件>
(反応温度)
本発明のハロゲン化工程の反応温度は、反応性及び生産性等の観点から、下限としては通常-20℃以上、好ましくは-10℃以上、特に好ましくは0℃以上であり、上限としては通常100℃以下、好ましくは90℃以下、特に好ましくは80℃以下である。反応温度が低すぎると反応性が低下するおそれがあり、逆に高すぎると副反応が起こり収率及び選択性が低下するおそれがある。
【0028】
(反応圧力)
本発明のハロゲン化工程は常圧又は加圧下で行うことができ、例えば、下限は、通常0.1MPa以上であり、上限は、通常1MPa以下、好ましくは0.8MPa以下、特に好ましくは0.6MPa以下である。本発明においては、使用する反応器の流路に背圧弁等を用いて背圧をかけて圧力調整することにより効率的に反応を行うことができる。
【0029】
(反応時間)
本発明のハロゲン化工程の反応時間は、本発明で使用する光化学反応器内に原料混合物(2-メチルナフタレン、ハロゲン化剤および有機溶媒の混合液)が滞留する時間(滞留時間)を意味する。反応時間は、反応温度や反応圧力によっても異なるが、通常0.1分~240分、好ましくは1分~120分である。なお、光化学反応器としてフロー合成反応器等を用いた連続反応を行う場合、反応時間は光照射下の原料混合物の滞留時間を意味する。
(反応雰囲気)
本発明のハロゲン化工程は、窒素雰囲気下で行ってもよいし、空気雰囲気下等の酸素を含む雰囲気下で行ってもよい。反応性の観点から、酸素を含む雰囲気下でハロゲン化工程を行うことが好ましい。
【0030】
(光の波長)
照射する光は、使用する有機溶媒によって、その波長を適宜選択することができるが、反応性及び選択性の観点から、通常270nm~800nm、好ましくは280nm~700nm、さらに好ましくは290nm~600nm、特に好ましくは300nm~550nmの波長の光を含むものである。なお、本発明において、光の波長とは、光源の発光波長を意味する。
【0031】
(光の放射束)
本発明の光の放射束は、通常1J/秒~4000J/秒、反応性の観点から、好ましくは2J/秒~3000J/秒、特に好ましくは3J/秒~2000J/秒である。
【0032】
(反応方式)
本発明においては、上述の特定の有機溶媒中、2-メチルナフタレンを光照射下でハロゲン化剤と反応させるが、その反応方式は特に限定されない。反応性の観点から、工業的には光照射機構を備えたフロー合成反応器(流通型反応器)を用いて実施することが好ましい。例えば、図1に示すように、調製槽1で2-メチルナフタレン(2MN)、ハロゲン化剤および有機溶媒の混合液を調製し、これをポンプ2によってフロー合成反応器(流通型反応器)3に供給し、光照射機構4による所望の光照射下で、フロー合成反応器3内でハロゲン化反応を行い、反応液を回収槽5で回収する。
【0033】
(光化学反応器)
本発明で使用する光化学反応器の材質は、耐薬品性に優れ、光源の光を透過するものであれば特に限定されないが、例えば、ガラス及び耐薬品性を有する透明合成樹脂等が挙げられる。また、光化学反応器の大きさは生産規模により適宜選択することができる。
光化学反応器の種類としては、特に限定されないが、バッチ式反応器又はフロー合成反応器を使用することができる。
【0034】
(バッチ式反応器)
バッチ式反応器は、基質等を導入及び排出する流路、温度制御可能なジャケット、及び攪拌機等を備えたものを用いることができる。
【0035】
(フロー合成反応器)
フロー合成反応器は、通常、管状のものを使用することができる。管の大きさは生産規模により適宜選択することができ、例えば、内径は通常1mm~20mmである。管の長さは、所望の滞留時間に合わせて適宜選択することができる。管の形状としては、通常直状、曲状又は螺旋状のものが挙げられ、反応性の観点から、特に螺旋状のものが好ましい。
また、フロー合成反応器には温度調節機構を設けてもよい。
フロー合成反応器への基質等の導入及び排出は、シリンジポンプ、ダイヤフラムポンプ、マスコントローラ等を用いた送液により定量的に行うことができる。また、フロー合成反応器からの反応液流出側の流路には背圧弁やインライン分析装置を設けてもよい。
【0036】
(光照射機構)
本発明においては光化学反応器に対して光照射を行う光照射機構を有していることが好ましい。
例えば、光化学反応器がフロー合成反応器の場合は、反応を行う管状部に所定の光照射が可能な構造となっていることが好ましく、例えば、図1に示すように、螺旋状管状反応器の内側に光源を有する光照射機構を設けるのが好ましい。
【0037】
<後処理>
本発明のハロゲン化工程で得られた反応液からの目的物である2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンを常法により単離する。単離は、例えば、得られた反応液と水又はアルカリ水溶液を混合して中和し、これを分液して得られた有機層を濃縮して、目的物を析出させて、固液分離することにより行うことができる。必要に応じて、再結晶やカラムクロマトグラフィー等の公知の精製手段を行ってもよい。
【0038】
<2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンの用途>
本発明で得られた2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンは各種医薬又はその中間体の原料として使用可能である。例えば、本発明で得られた2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンをシアノ化することにより、例えば、注意欠陥・多動性障害(ADHD)治療薬であるセンタナファジンの合成原料又は合成中間体として有用な2-ナフチルアセトニトリルを高収率で製造することができる。
【0039】
[2-ナフチルアセトニトリルの製造方法]
2-ナフチルアセトニトリルは、上記方法で得られた2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンを、シアノ化剤と溶媒中で反応させることにより製造することができる(以下、この工程を「本発明のシアノ化工程」と称す場合がある。)。
【0040】
<<シアノ化工程>>
本発明のシアノ化工程の実施方法としては、例えば、バッチ式反応器中で、2-(ハロゲン化メチル)ナフタレン、シアノ化剤及び溶媒を混合し、反応条件下で反応させる方法が挙げられる。また、図2に示すように、流通型反応器8に、調製槽6で調製した2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンと溶媒とシアノ化剤の混合液を連続的にポンプ7によって送液し、流通型反応器8内で、2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンを連続的にシアノ化反応させ、流通型反応器8から流出する2-ナフチルアセトニトリルを含む反応液を回収槽9で回収する方法が挙げられる。
また、シアノ化工程は、非特許文献3等の公知の方法に従って実施してもよい。
【0041】
<溶媒>
溶媒としては、水等の水性溶媒や、アルコール、ニトリル等の有機溶媒を、単独又はこれらのうち2種以上を任意の割合で用いることができる。溶媒としては、コスト及び反応性の観点から、好ましくは水とニトリルの混合溶媒である。
水性溶媒としては、純水、イオン交換水、及び工業用水等の水や、水にケトン類、アルコール類、グリコールエーテル類等適宜の親水性有機溶媒を混合したものを用いることができる。好ましくは、コスト及び反応性の観点から、水である。
アルコールとしては、炭素数1~10、好ましくは1~8、特に好ましくは炭素数1~6の脂肪族アルコールを用いることができる。アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、及びヘキサノールが挙げられ、コスト及び反応性の観点から、好ましくはメタノール、及びエタノールである。
ニトリルとは、RC≡N(Rは、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~8、特に好ましくは炭素数1~6の脂肪族炭化水素基)で表される構造を持つ有機化合物であって、例えば、アセトニトリル、及びプロピオニトリルが挙げられる。反応性の観点から、好ましくはアセトニトリルである。
有機溶媒は、コスト及び反応性の観点から、好ましくはニトリル、特に好ましくはアセトニトリルである。
溶媒の使用量は、生産性及び反応性の観点から、2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンに対して、通常1重量倍~200重量倍、好ましくは2重量倍~150重量倍、特に好ましくは3重量倍~100重量倍である。
【0042】
<シアノ化剤>
シアノ化剤としては、例えば、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、及びシアン化リチウムの無機シアノ化剤やテトラブチルアンモニウムシアニド等の有機シアノ化剤が挙げられ、反応性の観点から、好ましくは無機シアノ化剤である。無機シアノ化剤としては、好ましくはシアン化ナトリウム、及びシアン化カリウムであり、反応性の観点から、特に好ましくはシアン化ナトリウムである。
シアノ化剤の使用量は、2-(ハロゲン化メチル)ナフタレン1molに対して、反応性の観点から、通常1mol~10mol、好ましくは1mol~5mol、特に好ましくは1mol~2molである。
【0043】
<反応条件>
(反応温度)
本発明のシアノ化工程の反応温度は、反応性及び生産性等の観点から、下限としては通常0℃以上、好ましくは20℃以上、特に好ましくは40℃以上であり、上限としては通常100℃以下、好ましくは90℃以下、特に好ましくは80℃以下である。
【0044】
(反応時間)
本発明のシアノ化工程の反応時間は、通常0.1時間~24時間、好ましくは1時間~12時間である。
【0045】
(反応圧力)
本発明のシアノ化工程の反応圧力の下限は、通常0.1MPa以上であり、上限は、通常1MPa以下である。
【0046】
(供給方法)
2-(ハロゲン化メチル)ナフタレン、シアノ化剤及び溶媒の供給順序は適宜選択することができる。バッチ式反応器を用いる場合、例えば、2-(ハロゲン化メチル)ナフタレン及び溶媒を混合した混合液を敷き液として、シアノ化剤と溶媒を混合した混合液を供給して、反応条件下で反応を行うことができる。
フロー合成反応器を用いる場合は、各原料を一括して供給してもよいし、複数回に分けて供給してもよい。例えば、2-(ハロゲン化メチル)ナフタレン、シアノ化剤及び溶媒を混合した混合液を、反応条件下、フロー合成反応器に供給して反応を行うことができる。また、2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンを溶媒と混合した混合液をフロー合成反応器に循環させながら、シアノ化剤を溶媒と混合した混合液をフロー合成反応器に供給して反応を行うことができる。
【0047】
<反応方式>
反応方式は、上述のバッチ式反応又はフロー式反応で行うことができる。
【0048】
<反応器>
反応器は、上述のフロー合成反応器又はバッチ式反応器を用いることができる。
【0049】
<後処理>
本発明のシアノ化工程で得られた反応液からの目的物である2-ナフチルアセトニトリルを常法により単離する。単離は、例えば、得られた反応液の中和、分液、濃縮、濾過等の処理によって行ってもよく、晶析、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製手段によって行ってもよい。
【実施例
【0050】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例においては、特に断りのない限り、反応時間は光照射時間である。また、転換率、選択率の計算は、以下の計算式に従って計算した。計算式中のA(C)は、化合物Cの分析条件1の分析結果の面積比率(%)を表し、例えば、A(2MN)は分析条件1の分析結果の総面積値に対する2MNの面積値の面積比率(%)を表す。
【0051】
【数1】
【0052】
【数2】
【0053】
[略号]
本明細書において、それぞれの略号は以下の化合物を表す。
2MN :2-メチルナフタレン
2XMN :2-(ハロゲン化メチル)ナフタレン
2BMN :2-(ブロモメチル)ナフタレン
2DBMN :2-(ジブロモメチル)ナフタレン
1BMN :1-ブロモ-2-メチルナフタレン
1B2BMN :2-(ブロモメチル)-1-ブロモナフタレン
NpAN :2-ナフチルアセトニトリル
DCM :ジクロロメタン
DCE :ジクロロエタン
MeCN :アセトニトリル
c-Hex :シクロヘキサン
AT :アセトン
AcOMe :酢酸メチル
IPA :イソプロパノール
NBS :N-ブロモスクシンイミド
DMDBH :1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン
【0054】
[フロー合成反応器]
実施例及び比較例では、図1に示す市販のフロー合成反応器(株式会社朝日ラボ貿易製「Photo Flow System T-1」、容量6mL)を用いた。
【0055】
[光源]
実施例及び比較例において、光照射に用いた光源は表1に示す通りである。なお、発光波長の範囲は±10nm程度の測定誤差を含む。
【0056】
【表1】
【0057】
[分析方法]
以下の実施例及び比較例において、反応液の分析に用いた装置及び条件は表2及び表3の通りである。
【0058】
[分析方法1(HPLC)]
【0059】
【表2】
【0060】
[分析方法2(HPLC)]
【0061】
【表3】
【0062】
[実施例1]
2MNとハロゲン化剤のNBSをDCMに溶解させた混合溶液(2MN:0.1mol/L、NBS:0.105mol/L)を、ジャケット温度20℃に保持したフロー合成反応器に、空気雰囲気下、光源1の光照射下で、反応時間が25分間となるように供給して流通させ、反応を行った。その際、ダイヤフラムポンプを用いて、混合溶液の供給速度を240μL/分に保った。
得られた反応液を分析方法1にて分析した結果を表に示す。得られた反応液には2BMN(化学純度94.2%、選択率100.0%)が含まれていた。
2BMN:
H-NMR(400MHz,CDCL ): δ 7.84-7.80(m,4H), 7.52-7.48(m,3H), 4.67(s,2H)
【0063】
[実施例2~4]
実施例1において、有機溶媒の種類、2MN濃度及びハロゲン化剤の使用量を表に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。得られた反応液を実施例1と同様にして分析した結果を表4に示す。
【0064】
[比較例1~3]
実施例1において、有機溶媒の種類、2MN濃度及びハロゲン化剤の使用量を表に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。得られた反応液を実施例1と同様にして分析した結果を表4に示す。
【0065】
【表4】
【0066】
表4の実施例1~4及び比較例1~3から明らかなように、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素又は脂肪族炭化水素を使用することにより、高い転換率及び選択性で効率よく2BMNを得ることできる。
有機溶媒として非特許文献2で2BMNを得るために使用されていたMeCNを使用した場合、意外なことに目的物である2BMNが得られなかった(比較例1)。有機溶媒としてATを使用した場合、ナフタレン環がブロモ化された1BMNが多く生成するため選択性が良くないことが分かる(比較例2)。有機溶媒としてIPAを使用した場合、反応が進行しなかった(比較例3)。
【0067】
[実施例5~6]
実施例1において、ハロゲン化剤の種類及びその使用量を表5に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。得られた反応液を実施例1と同様にして分析した結果を表5に示す。
【0068】
【表5】
【0069】
表5の実施例5~6から明らかなように、NBS以外の臭素化剤を用いても高い転換率及び選択性で効率よく2BMNを得ることできる。
【0070】
[実施例7~8]
実施例1において、光源を表6に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。得られた反応液を実施例1と同様にして分析した結果を表6に示す。
【0071】
【表6】
【0072】
表6の実施例7~8から明らかなように、光源を変更しても高い転換率及び選択性で効率よく2BMNを得ることできる。
【0073】
[実施例9~10]
実施例1において、反応温度及び滞留時間を表7に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。得られた反応液を実施例1と同様にして分析した結果を表7に示す。
【0074】
【表7】
【0075】
表7の実施例9~10から明らかなように、反応温度は比較的低くても高くても、反応時間を適宜変更することにより、高い転換率及び選択性で効率良く2BMNを得ることできる。
【0076】
[実施例11~13]
実施例1において、溶媒の種類及び反応時間を表8に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。得られた反応液を実施例1と同様にして分析した結果を表8に示す。
【0077】
【表8】
【0078】
表8の実施例11~13から明らかなように、酢酸メチル溶媒を使用した場合でも、高い転換率及び選択性で効率良く2BMNを得ることできる。
【0079】
[実施例14]
実施例12において、反応雰囲気を表9のように変更したこと以外は、実施例12と同様にして反応を行った。得られた反応液を分析方法2にて分析した結果を表9に示す。
【0080】
【表9】
【0081】
表9の実施例12及び14から明らかなように、酸素を含む雰囲気下で反応を行うことにより、高い転換率及び選択性で効率良く2BMNを得ることできる。
【0082】
[実施例15~21]
実施例12において、2MN濃度、ハロゲン化剤使用量、反応温度及び反応時間を表10に示すように変更したこと以外は、実施例12と同様にして反応を行った。得られた反応液を実施例12と同様にして分析した結果を表10に示す。
【0083】
【表10】
【0084】
表10の実施例15~21から明らかなように、反応温度及び反応時間を適宜変更することにより、高い選択性で効率良く2BMNを得ることできる。
【0085】
[実施例22]
冷却凝縮機、加熱ジャケット及び撹拌機を備えた密閉型ガラス製反応器に、アセトニトリル32mL/水8mLの混合溶媒を仕込み、次いで2BMN8.00g(36.18mmol)及びシアン化ナトリウム2.12g(43.42mmol)を添加し、攪拌下、ジャケット温度を60℃に加熱昇温した後、同温度で4時間反応させた。
得られた反応液を分析方法2にて分析した結果、得られた反応液には主生成物としてNpANが含まれていた(転換率99.1%)。
NpAN:
H-NMR(400MHz,CDCL): δ 7.87-7.83(m,4H), 7.54-7.50(m,2H), 7.39(dd, J=6.5Hz,10.5Hz,1H), 3.92(s,2H)
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンの製造方法によれば、安全かつ安価に、高い転換率及び選択性で効率よく2-メチルナフタレンから医薬品の合成原料又は合成中間体として有用な2-(ハロゲン化メチル)ナフタレンを製造することができる。また、本発明の2-ナフチルアセトニトリルの製造方法によれば、安全かつ安価に、高い転換率及び選択性で効率よく、医薬品の合成原料又は合成中間体として有用な2-ナフチルアセトニトリルを高収率で製造することができる。本発明で得られた2-(ハロゲン化メチル)ナフタレン及び2-ナフチルアセトニトリルは、各種医薬品の合成原料又は合成中間体として使用することができるので、産業上有用である。
【符号の説明】
【0087】
1 調製槽
2 ポンプ
3 流通型反応器
4 光照射機構
5 回収槽
6 調製槽(シアノ化工程)
7 ポンプ(シアノ化工程)
8 流通型反応器(シアノ化工程)
9 回収槽(シアノ化工程)
図1
図2