(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】音響装置、操作方法及び操作プログラム
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
H04R3/00
(21)【出願番号】P 2022547348
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2020034610
(87)【国際公開番号】W WO2022054264
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】315017409
【氏名又は名称】AlphaTheta株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐川 健太
(72)【発明者】
【氏名】津田 悠佑
【審査官】川▲崎▼ 博章
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-093727(JP,A)
【文献】特開2016-019086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーによるタッチ操作を検出するタッチパネルと、
前記タッチパネルが設けられる表示パネルと、
前記タッチパネルによって検出された前記タッチ操作に基づいてパラメータ値を設定する値設定部と、
前記値設定部によって設定された前記パラメータ値に基づいて、入力される音声を操作して出力する出力制御部と、
前記タッチ操作によって移動されるポインターと、前記ポインターが移動可能な範囲を規定する境界とを前記表示パネルに表示させる表示制御部と、を備え、
前記
表示制御部は、前記タッチパネルにおいて前記タッチ操作が開始されたときのタッチ位置である開始位置から前記タッチ操作が終了されたときのタッチ位置である終了位置までの間のタッチ位置の移動方向及び移動速度に応じて
前記ポインターを移動させ、前記境界に前記ポインターが入射すると、前記境界にて反射される前記ポインターを表示させ、
前記値設定部は、前記ポインターの位置に応じて前記パラメータ値を設定する、音響装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の音響装置において、
前記出力制御部は、前記パラメータ値に応じて、前記音声にエフェクトを付加する、音響装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の音響装置において、
前記エフェクトは、BEAT FX及びSOUND COLOR FXのうち少なくとも一方に分類されるエフェクトである、音響装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の音響装置において、
前記タッチパネルは、互いに直交する二軸を有し、
一方の軸には、BEAT FX及びSOUND COLOR FXのうち一方に分類されるエフェクトが設定され、
他方の軸には、BEAT FX及びSOUND COLOR FXのうち他方に分類されるエフェクトが設定されている、音響装置。
【請求項5】
タッチパネル
と、前記タッチパネルが設けられる表示パネルとを有し、入力される楽曲にエフェクトを付加する音響装置を用いて行われる操作方法であって、
前記タッチパネルにおいてユーザーのタッチ操作
によって移動されるポインターを前記表示パネルに表示し、
前記タッチパネルにおいて前記タッチ操作が開始されたときのタッチ位置である開始位置から前記タッチ操作が終了されたときのタッチ位置である終了位置までの間のタッチ位置の移動方向及び移動速度に応じて
前記ポインターを移動させ、
前記ポインターの位置に応じて前記エフェクトのパラメータ値を設定
し、
前記表示パネルにおいて前記ポインターが移動可能な範囲を規定する境界に前記ポインターが入射すると、前記境界にて反射される前記ポインターを前記表示パネルに表示し、前記ポインターの位置に応じて前記パラメータ値を設定する、操作方法。
【請求項6】
タッチパネル
と、前記タッチパネルが設けられる表示パネルとを有し、入力される楽曲にエフェクトを付加する音響装置により実行される操作プログラムであって、
前記音響装置に、
前記タッチパネルにおいてユーザーのタッチ操作
によって移動されるポインターを前記表示パネルに表示させ、
前記タッチパネルにおいて前記タッチ操作が開始されたときのタッチ位置である開始位置から前記タッチ操作が終了されたときのタッチ位置である終了位置までの間のタッチ位置の移動方向及び移動速度に応じて
前記ポインターを移動させ、
前記ポインターの位置に応じて前記エフェクトのパラメータ値を設定
させ、
前記表示パネルにおいて前記ポインターが移動可能な範囲を規定する境界に前記ポインターが入射すると、前記境界にて反射される前記ポインターを前記表示パネルに表示させ、前記ポインターの位置に応じて前記パラメータ値を設定させる、操作プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音響装置、操作方法及び操作プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平面位置センサーを備え、入力された音声信号に対して、平面位置センサーに対するユーザーの操作に応じたエフェクトを付加するエフェクターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のエフェクターは、操作者による平面位置センサーにおける押圧部位のx座標の変化量及びy座標の変化量に応じて、異なる2つのエフェクトのパラメータを操作できる。例えば、x軸に「レゾナンス」が割り当てられ、y軸に「周波数」が割り当てられている場合には、押圧位置のx座標における変化量に応じて「レゾナンス」を変化させる処理を音声信号に対して施し、押圧位置のy座標における変化量に応じて「周波数」を変化させる処理を音声信号に対して施す。このように、平面位置センサーに対する操作者の操作に応じて、入力された音声信号に2種の効果が付加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のエフェクターでは、平面位置センサーに対する操作者の押圧位置に基づいて効果のパラメータ値が操作される。このため、パラメータ値を変更するためには、平面位置センサーを押圧し続ける必要があり、パラメータ値を変更するための操作が煩雑であるという問題がある。
本開示は、パラメータ値の変更を容易に実施できる音響装置、操作方法及び操作プログラムを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1態様に係る音響装置は、ユーザーによるタッチ操作を検出するタッチパネルと、前記タッチパネルによって検出された前記タッチ操作に基づいてパラメータ値を設定する値設定部と、前記値設定部によって設定された前記パラメータ値に基づいて、入力される音声を操作して出力する出力制御部と、を備え、前記値設定部は、前記タッチパネルにおいて前記タッチ操作が開始されたときのタッチ位置である開始位置から前記タッチ操作が終了されたときのタッチ位置である終了位置までの間のタッチ位置の移動方向及び移動速度に応じて、前記パラメータ値を設定する。
【0006】
本開示の第2態様に係る操作方法は、タッチパネルを有し、入力される楽曲にエフェクトを付加する音響装置を用いて行われる操作方法であって、前記タッチパネルにおいてユーザーのタッチ操作が開始されたときのタッチ位置である開始位置から前記タッチ操作が終了されたときのタッチ位置である終了位置までの間のタッチ位置の移動方向及び移動速度に応じて、前記エフェクトのパラメータ値を設定する値設定手順を含む。
【0007】
本開示の第3態様に係る操作プログラムは、タッチパネルを有し、入力される楽曲にエフェクトを付加する音響装置により実行される操作プログラムであって、前記音響装置に、前記タッチパネルにおいてユーザーのタッチ操作が開始されたときのタッチ位置である開始位置から前記タッチ操作が終了されたときのタッチ位置である終了位置までの間のタッチ位置の移動方向及び移動速度に応じて、前記エフェクトのパラメータ値を設定する値設定ステップを実行させる。
【0008】
上記各態様に係る音響装置、操作方法及び操作プログラムによれば、パラメータ値の変更を容易に実施できる音響装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る音響システムの構成を示す模式図。
【
図2】一実施形態に係るミキサーの構成を示すブロック図。
【
図3】一実施形態に係る操作装置の構成を示すブロック図。
【
図4】一実施形態に係る制御部の構成を示す機能ブロック図。
【
図6】一実施形態に係るピンボールモードでの操作領域の操作方法を説明する図。
【
図7】一実施形態に係るピンボールモードでのポインターの動きの一例を示す図。
【
図8】一実施形態に係るスリングショットモードでの操作領域の操作方法を説明する図。
【
図9】一実施形態に係る操作処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
[音響システムの全体構成]
図1は、本実施形態に係る音響システム1の構成を示す模式図である。
音響システム1は、
図1に示すように、音響装置10と、ターンテーブル2L,2R、楽曲供給装置3及びスピーカーSPL,SPRと、を備える。音響システム1は、楽曲供給装置3から供給される音声を音響装置10のミキサー4にてミックスし、ミックスした音声をスピーカーSPL,SPRから出力する。音響システム1は、DVS(Digital Vinyl System)が組み込まれており、ターンテーブル2L,2Rの操作に応じて、楽曲供給装置3にて再生されている楽曲データのうち、対応するチャンネルの楽曲データの再生状態を操作可能である。
【0011】
[ターンテーブルの構成]
ターンテーブル2L,2Rは、タイムコードが記録されたタイムコードレコード(コントロールバイナル)を再生する。タイムコードレコードには、ユーザーによってスクラッチ等の操作が行われる。ターンテーブル2L,2Rは、タイムコードレコードからタイムコードを読み取り、読み取ったタイムコードを出力する。読み取られたタイムコードは、ミキサー4を介して楽曲供給装置3に入力される。
ターンテーブル2Lは、第1チャンネルの音源である楽曲データの再生状態を操作し、ターンテーブル2Rは、第2チャンネルの音源である楽曲データの再生状態を操作する。すなわち、ターンテーブル2L,2Rが出力するタイムコードは、楽曲供給装置3を操作する操作信号ということができる。
なお、ターンテーブル2L,2Rは、無くてもよい。
【0012】
[楽曲供給装置の構成]
楽曲供給装置3は、第1チャンネルの音声をミキサー4に出力するとともに、第2チャンネルの音声をミキサー4に出力する。楽曲供給装置3は、図示を省略するが、第1楽曲データを再生し、第1楽曲データに基づく第1楽曲を第1チャンネルの音声として出力する第1再生部と、第2楽曲データを再生し、第2楽曲データに基づく第2楽曲を第2チャンネルの音声として出力する第2再生部と、を有する。
第1再生部は、ターンテーブル2Lからタイムコードが入力されると、入力されたタイムコードに基づいて第1楽曲データを再生する。
第2再生部は、ターンテーブル2Rからタイムコードが入力されると、入力されたタイムコードに基づいて第2楽曲データを再生する。
楽曲供給装置3は、DJアプリケーションを実行する情報処理装置によって構成でき、情報処理装置としてはPC(Personal Computer)及びスマートフォンを例示できる。
【0013】
[スピーカーの構成]
スピーカーSPL,SPRは、ミキサー4から入力される音声信号に応じた音声を出力する。スピーカーSPLは、左側音声に応じた音声を出力し、スピーカーSPRは、右側音声に応じた音声を出力する。なお、スピーカーSPL,SPRがアンプ機能を有しない場合には、ミキサー4とスピーカーSPL,SPRとの間に、入力される音声信号を増幅させるアンプが設けられていてもよい。
【0014】
[音響装置の構成]
音響装置10は、楽曲供給装置3から入力される音声をミックスしてスピーカーSPL,SPRに出力するミキサー4と、ユーザーの操作に応じた操作信号をミキサー4に送信する操作装置5と、を備える。詳しくは後述するが、ミキサー4は、操作装置5に対するユーザーの操作に応じて、楽曲供給装置3から入力される音声にエフェクトを付加する。
【0015】
[ミキサーの構成]
ミキサー4は、上記のように、楽曲供給装置3から入力される複数の音声をミックスする他、入力された音声にエフェクトを付加する。本実施形態に係るミキサーは、2チャンネルミキサーであり、第1チャンネルの音声である第1楽曲と第2チャンネルの音声である第2楽曲とをミックスし、ミックスした楽曲に応じた音声信号をスピーカーSPL,SPRに出力する他、第1楽曲及び第2楽曲を操作可能である。
【0016】
図2は、ミキサー4の構成を示すブロック図である。
ミキサー4は、
図2に示すように、入力部41、操作部42、出力制御部43及び出力部44を備える。
入力部41は、楽曲供給装置3から第1楽曲が第1チャンネルの音声として入力される第1入力部411と、楽曲供給装置3から第2楽曲が第2チャンネルの音声として入力される第2入力部412と、を有する。
【0017】
操作部42は、ボタン、つまみ及びフェーダー等の複数の操作子を有し、複数の操作子に対するユーザーの操作に応じた操作信号を出力する。
例えば操作部42は、
図1に示すように、第1チャンネルの音量を調整する第1チャンネルフェーダー421と、第2チャンネルの音量を調整する第2チャンネルフェーダー422と、第1チャンネルの音量と第2チャンネルの音量との割合を調整するクロスフェーダー423と、を有する。
また例えば、操作部42は、第1チャンネルの音声に所定のエフェクトを付加する複数の第1パッド424と、第2チャンネルの音声に所定のエフェクトを付加する複数の第2パッド425と、を有する。
【0018】
また例えば、操作部42は、第1チャンネルの音声を操作する第1チャンネル操作部426と、第2チャンネルの音声を操作する第2チャンネル操作部427と、を有する。
第1チャンネル操作部426及び第2チャンネル操作部427は、図示を省略するが、ソース切替スイッチ、トリムつまみ、3つの周波数変更つまみ及びフィルターつまみを有する。
ソース切替スイッチは、対応するチャンネルの音声の入力ソースを切り替える。
トリムつまみは、対応するチャンネルに入力される音声レベルを調整する。
3つの周波数変更つまみは、対応するチャンネルの高周波数帯域の音量、中周波数帯域の音量、及び、低周波数帯域の音量を増減する。
フィルターつまみは、対応するチャンネルにフィルターエフェクトを付加する。
【0019】
出力制御部43は、入力部41に入力された各チャンネルの音声を操作し、対応するチャンネルの音声の出力を制御する。出力制御部43は、第1出力制御部431及び第2出力制御部432を有する。
第1出力制御部431は、操作部42に対するユーザーの操作に応じて第1チャンネルの音声を操作して、第1チャンネルの音声の出力を制御する。第2出力制御部432は、操作部42に対するユーザーの操作に応じて第2チャンネルの音声を操作して、第2チャンネルの音声の出力を制御する。
【0020】
例えば、第1出力制御部431及び第2出力制御部432は、第1チャンネルフェーダー421、第2チャンネルフェーダー422及びクロスフェーダー423のそれぞれのつまみの位置に応じて、第1チャンネルの音量及び第2チャンネルの音量を調整する。
例えば、第1出力制御部431は、複数の第1パッド424の入力操作、或いは、操作装置5から入力される操作信号に応じて、ユーザーによって予め設定されたエフェクトを第1チャンネルの音声に付加する。また、第2出力制御部432は、複数の第2パッド425の入力操作、或いは、操作装置5から入力される操作信号に応じて、ユーザーによって予め設定されたエフェクトを第2チャンネルの音声に付加する。
更に、第1出力制御部431は、後述する操作装置5から受信される情報に基づいて、第1チャンネルの音声にエフェクトを付加する。第2出力制御部432は、後述する操作装置5から受信される情報に基づいて、第2チャンネルの音声にエフェクトを付加する。
【0021】
出力部44は、第1出力制御部431及び第2出力制御部432から入力される音声信号のうち、左側信号をスピーカーSPLに出力し、右側信号をスピーカーSPRに出力する。
【0022】
[操作装置の構成]
図3は、操作装置5の構成を示すブロック図である。
操作装置5は、ユーザーの操作に応じてミキサー4を操作する。操作装置5は、
図3に示すように、タッチパネル51、表示パネル52、通信部53、記憶部54、メモリー55及び制御部56を有する。操作装置5は、例えばスマートフォン及びタブレット等によって構成できる。
【0023】
タッチパネル51は、ユーザーによるタッチ操作を検出する。詳述すると、タッチパネル51は、2次元のタッチ操作を検出可能な平面位置センサーである。タッチパネル51は、ユーザーのタッチ位置に応じた座標値を制御部56に出力する。
表示パネル52は、液晶パネル及び有機EL(Electro-Luminescence)パネル等の表示パネルである。表示パネル52は、制御部56から入力される画像信号に応じた画像を表示する。表示パネル52は、例えば後述する操作画面PSを表示する。
【0024】
通信部53は、ミキサー4と有線又は無線にて通信する。
記憶部54は、操作装置5の動作に必要なプログラム及びデータを記憶している。例えば、記憶部54は、操作装置5がミキサー4に操作情報を送信するための操作プログラムを記憶している。なお、記憶部54は、楽曲データを記憶し、制御部56が、楽曲データを再生して得られる楽曲を、通信部53を介してミキサー4に出力してもよい。
メモリー55は、制御部56のワークメモリーである。
【0025】
[制御部の構成]
図4は、制御部56の構成を示す機能ブロック図である。
制御部56は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を備えて構成され、操作装置5の動作を制御する。制御部56は、表示制御部561、エフェクト設定部562、チャンネル設定部563、モード設定部564、タッチ判定部565、モード判定部566、操作取得部567、軌跡算出部568、値設定部569及び値送信部570を有する。
【0026】
表示制御部561は、表示パネル52によって表示される画像を生成し、生成した画像を表示パネル52に出力して、表示パネル52に画像を表示させる。このような画像には、図示を省略するが、ミキサー4にて音声に付加するエフェクトを設定するエフェクト設定画面(図示省略)、及び、後述する操作画面PS(
図6参照)が含まれる。
なお、表示制御部561は、後述する操作画面PSの操作領域P1においてタッチパネル51に対するユーザーのタッチ位置に応じた位置に、ポインターPT(
図5参照)を表示させる。操作画面PSの構成については、後に詳述する。
【0027】
エフェクト設定部562は、エフェクト設定画面に対するユーザーの操作に応じて、ミキサー4によって音声に付加されるエフェクトを設定する。詳述すると、エフェクト設定部562は、2つのエフェクトを設定する。2つのエフェクトのうち、一方は、後述する操作領域P1のX軸におけるタッチ位置又はポインターPTの位置に応じてパラメータ値が設定されるエフェクト(X軸エフェクト)であり、他方は、操作領域P1のY軸におけるタッチ位置又はポインターPTの位置に応じてパラメータ値が設定されるエフェクト(Y軸エフェクト)である。
【0028】
なお、X軸エフェクトとして設定可能なエフェクトは、BEAT FX及びSOUND COLOR FXのうち一方に含まれるエフェクトのうちの1つである。Y軸エフェクトとして設定可能なエフェクトは、BEAT FX及びSOUND COLOR FXのうち他方に含まれるエフェクトのうちの1つである。本実施形態では、X軸エフェクトとして設定可能なエフェクトは、BEAT FXに含まれるエフェクトの1つであり、Y軸エフェクトとして設定可能なエフェクトは、SOUND COLOR FXに含まれるエフェクトの1つである。
なお、BEAT FXに含まれるエフェクトとしては、ECHO、ROLL及びTRANS等が例示される。SOUND COLOR FXに含まれるエフェクトとしては、FILTER、NOISE及びDUB ECHO等が例示される。
【0029】
チャンネル設定部563は、エフェクトを付加するチャンネルを設定する。
モード設定部564は、操作装置5の動作モードを設定する。動作モードについては、後に詳述する。
タッチ判定部565は、タッチパネル51から入力される座標値に基づいて、タッチパネル51に対してユーザーがタッチ操作を行ったか否か、及び、ユーザーがタッチ操作を解除したか否かを判定する。
モード判定部566は、現在の操作装置5の動作モードを判定する。
【0030】
操作取得部567及び軌跡算出部568は、操作装置5の動作モードが後述するピンボールモード又はスリングショットモードであるときに機能する。
操作取得部567は、タッチパネル51から入力されるタッチ位置の座標値に基づいて、後述する操作領域P1におけるタッチ操作の開始位置及びタッチ操作の終了位置を取得し、開始位置から終了位置に向かう移動方向及び移動速度を演算により取得する。
軌跡算出部568は、操作取得部567によって取得された開始位置、終了位置、移動方向及び移動速度に基づいて、ポインターPT(
図5参照)が終了位置から移動されるときの移動時間に応じた軌跡を算出する。このとき、軌跡算出部568は、操作装置5の動作モードがピンボールモードである場合には、ポインターPTが、取得された移動方向に終了位置から移動する軌跡を算出し、操作装置5の動作モードがスリングショットモードである場合には、ポインターPTが、取得された移動方向とは反対方向に終了位置から移動する軌跡を算出する。また、軌跡算出部568は、ポインターPTの移動速度が徐々に低下するように、ポインターPTの軌跡を算出する。すなわち、軌跡算出部568は、タッチ操作が終了されてからの経過時間に応じたポインターPTの位置を算出する。
【0031】
値設定部569は、ミキサー4に送信する各エフェクトのパラメータ値を設定する。値設定部569によるパラメータ値の設定方法は、後に詳述する。以下、X軸エフェクトのパラメータ値をX軸パラメータ値といい、Y軸エフェクトのパラメータ値をY軸パラメータ値という。X軸パラメータ値は、X軸エフェクトの付加具合を示し、Y軸パラメータ値は、Y軸エフェクトの付加具合を示す。
値送信部570は、エフェクト設定部562によって設定されたエフェクトの種別と、チャンネル設定部563によって設定されたチャンネルと、値設定部569によって設定されたX軸パラメータ値及びY軸パラメータ値とを、通信部53を介してミキサー4に送信する。
【0032】
[操作画面の構成]
図5は、操作画面PSの一例を示す図である。
ここで、表示制御部561によって表示パネル52に表示される操作画面PSの構成について説明する。
操作画面PSは、エフェクト設定部562によって設定されたX軸エフェクト及びY軸エフェクトのうち少なくとも一方のエフェクトのパラメータ値を操作する画面である。操作画面PSは、
図5に示すように、操作領域P1、エフェクト表示部P2、チャンネル選択ボタンP3,P4、画面切替ボタンP5及びモード選択ボタンP6~P8を含む。
【0033】
操作領域P1は、パラメータ値を変更する操作を受け付ける領域である。操作領域P1は、操作領域PXY、操作領域PX及び操作領域PYを含む。
操作領域PXYは、横軸であるX軸と縦軸であるY軸との直交二軸を有する矩形領域であり、X軸パラメータ値及びY軸パラメータ値を同時に操作可能な領域である。操作領域PXYには、タッチパネル51によって検出されるユーザーのタッチ操作の座標値に応じて、表示制御部561によってポインターPTが移動可能に表示される。上記した値設定部569は、操作領域PXYに対するタッチ位置のX座標値又は操作領域PXYにおけるポインターPTのX座標値に応じてX軸パラメータ値を設定し、操作領域PXYに対するタッチ位置のY座標値又は操作領域PXYにおけるポインターPTのY座標値に応じてY軸パラメータ値を設定する。すなわち、操作領域PXYは、選択されたチャンネルに対する2つのエフェクトのパラメータ値をユーザーが同時に操作可能な領域である。
なお、
図5の例では、ポインターPTの移動軌跡の一部が表示されている。しかしながら、これに限らず、移動軌跡は表示されなくてもよい。
【0034】
操作領域PXは、X軸のみ有する矩形領域であり、X軸パラメータ値を操作可能な領域である。操作領域PXは、操作領域PXYの下方に設けられ、操作領域PXのX軸における寸法は、操作領域PXYのX軸における寸法と同じである。
操作領域PXには、ポインターPTがX軸に沿って移動可能に表示される。値設定部569は、操作領域PXに対するタッチ位置のX座標値又は操作領域PXにおけるポインターPTのX座標値に応じてX軸パラメータ値を設定する。
【0035】
操作領域PYは、Y軸のみ有する矩形領域であり、Y軸パラメータ値を操作可能な領域である。操作領域PYは、操作領域PXYの左方に設けられ、操作領域PYのY軸における寸法は、操作領域PXYのY軸における寸法と同じである。
操作領域PYには、ポインターPTがY軸に沿って移動可能に表示される。値設定部569は、操作領域PYに対するタッチ位置のY座標値又は操作領域PYにおけるポインターPTのY座標値に応じてY軸パラメータ値を設定する。
【0036】
操作領域PXY,PX,PYのそれぞれには、操作領域PXY,PX,PYの境界を示す境界P11が設けられている。詳しくは後述するが、操作装置5の動作モードがピンボールモード及びスリングショットモードであるときに、ポインターPTを境界P11に向かって弾くようなスワイプ操作が行われると、ポインターPTが境界P11にて反射される描画が表示制御部561によってなされる。このときのポインターPTの軌跡の算出は、上記した軌跡算出部568によって行われる。
【0037】
なお、操作領域PXY,PX,PYのうち、どの操作領域をユーザーが操作した場合でも、操作領域PXY,PX,PYのそれぞれに表示されたポインターPTは、互いに連動して移動される。
例えば、操作領域PXYのポインターPT及び操作領域PXのポインターPTのうち、一方のポインターPTがX軸に沿って移動される場合には、当該一方のポインターPTのX座標値に応じて他方のポインターPTがX軸に沿って移動される。このとき、操作領域PXYのポインターPTがY軸に沿って移動されなければ、操作領域PYのポインターPTは移動されない。
一方、操作領域PXYのポインターPT及び操作領域PYのポインターPTのうち、一方のポインターPTがY軸に沿って移動される場合には、当該一方のポインターPTのY座標値に応じて他方のポインターPTがY軸に沿って移動される。このとき、操作領域PXYのポインターPTがX軸に沿って移動されなければ、操作領域PXのポインターPTは移動されない。
また、操作領域PXYのポインターPTがX軸及びY軸のそれぞれに傾斜する方向に移動される場合には、操作領域PXYのポインターPTのX座標値に応じて操作領域PXのポインターPTがX軸に沿って移動されるとともに、操作領域PXYのポインターPTのY座標値に応じて操作領域PYのポインターPTがY軸に沿って移動される。
【0038】
エフェクト表示部P2は、エフェクト設定部562によって設定されたX軸エフェクト及びY軸エフェクトを示す部位である。
図5に示した操作画面PSの例では、Y軸エフェクトとして、SOUND COLOR FXの1つである「FILTER」が表示され、X軸エフェクトとして、BEAT FXの1つである「DUCKING ECHO」が表示されている。
【0039】
チャンネル選択ボタンP3,P4は、第1チャンネル及び第2チャンネルのうち、エフェクトの付加対象のチャンネル(対象チャンネル)を選択するボタンである。チャンネル選択ボタンP3が入力されると、チャンネル設定部563によって対象チャンネルとして第1チャンネルが選択され、チャンネル選択ボタンP4が入力されると、チャンネル設定部563によって対象チャンネルとして第2チャンネルが選択される。
画面切替ボタンP5は、操作画面PSからエフェクト設定画面等の他の画面に切り替えるボタンである。
【0040】
モード選択ボタンP6~P8は、操作装置5の動作モードを選択するボタンである。「NORMAL」と表示されたモード選択ボタンP6が入力されると、モード設定部564によって動作モードがノーマルモードに切り替わる。「PIN BALL」と表示されたモード選択ボタンP7が入力されると、モード設定部564によって動作モードがピンボールモードに切り替わる。「SLINGSHOT」と表示されたモード選択ボタンP8が入力されると、モード設定部564によって動作モードがスリングショットモードに切り替わる。
【0041】
[ノーマルモード]
ここで、操作装置5の動作モードとして選択可能なノーマルモード、ピンボールモード及びスリングショットモードについて説明する。
ノーマルモードは、値設定部569が、操作領域P1に対するタッチ位置に応じてX軸パラメータ値及びY軸パラメータ値を設定する動作モードである。ノーマルモードでは、タッチ位置が検出されると、表示制御部561がタッチ位置に応じてポインターPTを表示させるとともに、値設定部569がタッチ位置に応じたX軸パラメータ値及びY軸パラメータ値を設定する。ノーマルモードでは、タッチ操作が解除された場合、すなわち、ユーザーの指又はスタイラスペンがタッチパネル51から離れた場合に、表示制御部561がポインターPTを非表示とするとともに、値設定部569は、各パラメータ値の設定を停止する。すなわち、ノーマルモードは、タッチ操作が行われている間だけ、X軸パラメータ値及びY軸パラメータ値の設定及び送信が行われるモードである。
なお、ノーマルモードでは、タッチパネル51に対してスワイプ操作が行われた場合には、スワイプ位置に応じたX軸パラメータ値及びY軸パラメータ値が設定される。
【0042】
[ピンボールモード]
図6は、ピンボールモードでの操作領域PXYの操作方法を説明する図であり、
図7は、ピンボールモードでのポインターPTの動きの一例を示す図である。
ピンボールモードは、操作領域P1に対してタッチ操作(詳しくはスワイプ操作)が行われた後にタッチ操作が解除されたときにポインターPTを移動させ、操作領域P1におけるポインターPTの座標値に基づいてX軸パラメータ値及びY軸パラメータ値を設定する動作モードである。ピンボールモードでは、タッチ位置が検出されると、表示制御部561がタッチ位置に応じてポインターPTを表示させる。そして、操作取得部567が、操作領域P1におけるタッチ操作の開始位置及び終了位置を取得するとともに、開始位置から終了位置に向かう移動方向及び移動速度を取得する。
例えば、
図6に示すようにユーザーの指Fが操作領域PXYを操作した場合、操作取得部567は、タッチパネル51から入力する座標値に基づいて、ユーザーがタッチ操作を開始した開始位置SPの座標値、及び、タッチ操作を終了した終了位置EPの座標値を取得し、開始位置SPから終了位置EPに向かうタッチ位置の移動方向D1及びタッチ位置の移動速度を取得する。軌跡算出部568は、取得された開始位置SPの座標値、終了位置EPの座標値、タッチ位置の移動方向D1及びタッチ位置の移動速度に基づいて物理演算を行って、操作領域PXYにおいてポインターPTを、算出された移動速度に基づく速度で、終了位置EPから移動方向D1に移動させた場合のポインターPTの軌跡を算出する。表示制御部561は、
図7に示すように、算出された軌跡に沿ってポインターPTが移動される表示を行う。
【0043】
ここで、ポインターPTが境界P11に入射された場合、表示制御部561によって、境界P11に対するポインターPTの入射角と同じ角度の反射角で、ポインターPTが境界P11にて反射される表示が行われる。このような境界P11での反射は、ポインターPTが、境界P11に入射される毎に行われる。そして、ポインターPTの移動速度は、徐々に低下され、最終的にポインターPTは停止されるとともに、ポインターPTは非表示となる。このようにポインターPTが移動されることから、ピンボールモードは、ビリヤードモードと言い換えることもできる。なお、ポインターPTが移動中であっても、操作領域P1に対するタッチ操作が行われると、ポインターPTは停止されるとともに非表示となる。再度操作領域P1を操作する場合には、ユーザーは、操作領域P1に対するタッチ操作を再度実行すればよい。
なお、このようなポインターPTの移動は、操作領域PX及び操作領域PYが操作された場合も同様である。
【0044】
ピンボールモードでは、値設定部569は、終了位置EPから変化するポインターPTの座標値のうち、X座標値に基づいてX軸パラメータ値を所定のサンプリングレートで設定し、Y座標値に基づいてY軸パラメータ値を所定のサンプリングレートで設定する。そして、ポインターPTが停止されると、値設定部569は、X軸パラメータ値及びY軸パラメータ値の設定を停止し、これにより、各パラメータ値の送信が停止される。すなわち、ピンボールモードは、タッチ操作が解除されてポインターPTが停止されるまでの間に、X軸パラメータ値及びY軸パラメータ値の設定及び送信が行われるモードである。
【0045】
[スリングショットモード]
スリングショットモードは、ピンボールモードと同様に、操作領域P1に対してタッチ操作(詳しくはスワイプ操作)が行われた後にタッチ操作が解除されたときにポインターPTを移動させ、ポインターPTの座標値に基づいてX軸パラメータ値及びY軸パラメータ値を設定する動作モードである。
ピンボールモードでは、ポインターPTは、終了位置EPから移動方向D1に沿って移動されたのに対し、スリングショットモードでは、ポインターPTは、終了位置EPからタッチ位置の移動方向とは反対方向に移動される。
【0046】
図8は、スリングショットモードでの操作領域PXYの操作方法を説明する図である。
具体的に、スリングショットモードでは、タッチ位置が検出されると、表示制御部561がタッチ位置に応じてポインターPTを表示させる。そして、操作取得部567が、操作領域P1におけるタッチ操作の開始位置及びタッチ操作の終了位置に基づいて、開始位置から終了位置に向かう移動方向及び移動速度を取得する。
例えば、
図8に示すようにユーザーの指Fが操作領域PXYを操作した場合、操作取得部567は、タッチパネル51から入力する座標値に基づいて、開始位置SPの座標値及び終了位置EPの座標値を取得し、開始位置SPから終了位置EPに向かうタッチ位置の移動方向D2及びタッチ位置の移動速度を取得する。軌跡算出部568は、取得された開始位置SPの座標値、終了位置EPの座標値、タッチ位置の移動方向D2及びタッチ位置の移動速度に基づいて、操作領域PXYにおいてポインターPTを、算出された移動速度に基づく速度で、終了位置EPから移動方向D2とは反対方向に移動させた場合のポインターPTの軌跡を物理演算によって算出する。表示制御部561は、算出された軌跡に沿ってポインターPTが移動される表示を行う。
【0047】
スリングショットモードにおいても、ポインターPTが境界P11に入射された場合には、境界P11に対する入射角と同じ角度の反射角で、境界P11にて反射される。そして、ポインターPTの移動速度は、徐々に低下され、最終的にポインターPTは停止されるとともに、ポインターPTは非表示となる。ポインターPTが移動中であっても、操作領域P1に対するタッチ操作が行われると、ポインターPTは停止されるとともに非表示となる。再度操作領域P1を操作する場合には、ユーザーは、操作領域P1に対するタッチ操作を再度実行すればよい。
なお、このようなポインターPTの動きは、操作領域PX及び操作領域PYが操作された場合も同様である。
【0048】
スリングショットモードでは、値設定部569は、ピンボールモードと同様に、終了位置EPから変化するポインターPTの座標値のうち、X座標値に基づいてX軸パラメータ値を所定のサンプリングレートで設定し、Y座標値に基づいてY軸パラメータ値を所定のサンプリングレートで設定する。そして、ポインターPTが停止されると、値設定部569は、X軸パラメータ値及びY軸パラメータ値の設定を停止し、これにより、各パラメータ値の送信が停止される。すなわち、スリングショットモードは、タッチ操作が解除されてポインターPTが停止されるまでの間に、X軸パラメータ値及びY軸パラメータ値の設定及び送信が行われるモードである。
【0049】
[操作処理]
図9は、制御部56によって実行される操作処理を示すフローチャートである。
上記のように、制御部56は、記憶部54に記憶された操作プログラムを実行することによって、操作画面PSにおける操作領域P1に対するユーザーのタッチ操作に応じて、ミキサー4により付加されるエフェクトのパラメータ値を送信する操作処理を実行する。
以下、操作処理のフローについて説明する。なお、X軸エフェクト及びY軸エフェクトは、エフェクト設定部562によって予め設定され、エフェクトを付加するチャンネルは、チャンネル設定部563によって予め設定されているものとする。
【0050】
操作処理では、
図9に示すように、まず、制御部56がタッチパネル51からタッチ位置の座標値が入力されることを待機する(ステップS01)。
この後、タッチ判定部565が、入力される座標値に基づいてタッチ操作が行われたか否かを判定する(ステップS02)。
ステップS02の判定処理にて、タッチ操作が行われていないと判定されると(ステップS01:NO)、制御部56は、処理をステップS01に戻す。
【0051】
ステップS02の判定処理にて、タッチ操作が行われたと判定されると(ステップS02:YES)、表示制御部561が、操作領域P1においてタッチ位置に応じた位置にポインターPTを表示させる(ステップS03)。
【0052】
次に、モード判定部566が、操作装置5の動作モードがノーマルモードであるか否かを判定する(ステップS04)。
ステップS04の判定処理にて、動作モードはノーマルモードであると判定されると(ステップS04:YES)、値設定部569は、操作領域P1におけるタッチ位置に基づいて、X軸パラメータ値及びY軸パラメータ値を設定する(ステップS05)。
ステップS05の後、値送信部570が、上記のように、設定されたエフェクトの種別、設定されたチャンネル、X軸パラメータ値及びY軸パラメータ値をミキサー4に送信する(ステップS06)。
ステップS06の後、タッチ判定部565が、タッチ操作が終了されたか否か、すなわち、ユーザーの指F又はスタイラスペンがタッチパネル51から離れて、タッチ操作が解除されたか否かを判定する(ステップS07)。
ステップS07の判定処理にて、タッチ操作は終了されていないと判定されると(ステップS07:NO)、制御部56は、処理をステップS05に戻し、タッチ位置に応じたパラメータ値の設定を引き続き実行させる。
ステップS07の判定処理にて、タッチ操作は終了されたと判定されると(ステップS07:YES)、制御部56は、操作処理を終了する。なお、操作処理は、繰り返し実行される。
【0053】
ステップS04の判定処理にて、動作モードはノーマルモードでないと判定されると(ステップS04:NO)、操作取得部567が、開始位置SPの座標値、終了位置EPの座標値、開始位置SPから終了位置EPに向かうタッチ位置の移動方向D2、及び、タッチ位置の移動速度を取得する(ステップS08)。
次に、モード判定部566が、操作装置5の動作モードがピンボールモードであるか否かを判定する(ステップS09)。
【0054】
ステップS09の判定処理にて、動作モードはピンボールモードであると判定すると、軌跡算出部568が、操作取得部567によって取得された情報に基づいて、開始位置から終了位置に向かう移動方向に沿って終了位置から、算出された移動速度に基づく速度で移動するポインターPTの軌跡を算出し、表示制御部561が、算出された軌跡に沿ってポインターPTを移動させる(ステップS10)。この後、制御部56は、処理をステップS12に移行する。
【0055】
ステップS09の判定処理にて、動作モードはピンボールモードでないと判定した場合、すなわち、動作モードはスリングショットモードであると判定される場合には、軌跡算出部568が、操作取得部567によって取得された情報に基づいて、開始位置から終了位置に向かう移動方向とは反対方向に沿って終了位置から、算出された移動速度に基づく速度で移動するポインターPTの軌跡を算出し、表示制御部561が、算出された軌跡に沿ってポインターPTを移動させる(ステップS11)。この後、制御部56は、処理をステップS12に移行する。
【0056】
ステップS12では、値設定部569が、ステップS10又はステップS11にて軌跡算出部568にて軌跡が算出され、表示制御部561によって操作領域P1を移動するように表示されるポインターPTの位置に基づいて、X軸パラメータ値及びY軸パラメータ値を設定する(ステップS12)。ステップS12は、値設定手順及び値設定ステップに相当する。
ステップS12の後、値送信部570が、ステップS06と同様に、設定されたエフェクトの種別、設定されたチャンネル、X軸パラメータ値及びY軸パラメータ値をミキサー4に送信する(ステップS13)。
【0057】
次に、タッチ判定部565が、ポインターPTの移動中にタッチ操作が行われたか否かを判定する(ステップS14)。
ステップS14の判定処理にて、タッチ操作が行われたと判定されると(ステップS14:YES)、制御部56は、操作処理を終了する。なお、操作処理は、繰り返し実行される。
ステップS14の判定処理にて、タッチ操作は行われていないと判定されると(ステップS14:NO)、制御部56は、ポインターPTが停止されたか否かを判定する(ステップS15)。
ステップS15の判定処理にて、ポインターPTは停止されていないと判定されると(ステップS15:NO)、制御部56は、処理をステップS12に戻し、値設定部569による各パラメータ値の設定及び値送信部570によるミキサー4への送信を継続する。
ステップS15の判定処理にて、ポインターPTは停止されたと判定されると(ステップS14:YES)、制御部56は、操作処理を終了する。なお、操作処理は、繰り返し実行される。
【0058】
[その他の処理]
上記のように、ミキサー4の第1出力制御部431及び第2出力制御部432のうち、操作装置5から対象チャンネルを操作する出力制御部は、対象チャンネルの音声に、操作装置5から受信される種別に応じたエフェクトをX軸パラメータ値及びY軸パラメータ値に基づいて付加する。
この際、出力制御部は、クオンタイズ情報に基づいて、パラメータ値の変化に応じてエフェクトの付加具合を変化させるタイミングを楽曲に合わせてもよい。クオンタイズ情報とは、タイミングを補正する情報である。これにより、ピンボールモード又はスリングショットモードにて適当にポインターPTを操作した場合でも、音楽的に破綻しないようにエフェクトを付加できる。
【0059】
また、付加するエフェクトの種別に応じて、出力制御部が、ポインターPTの移動速度に応じたパラメータ値の変化速度を調整して、対象チャンネルの音声にエフェクトを付加してもよい。
また、ミキサー4にて対象チャンネルのビートが4ビートに設定されている場合、出力制御部は、4ビート分のパラメータ値を保存し、保存された4ビート分のパラメータ値に基づいてエフェクトを繰り返し付加するように構成してもよい。これにより、ランダム性のあるエフェクトを周期的に強めて付加できる。
また、ミキサー4は、シーケンサーでビートを半分にしたときに、後半部分のシーケンサーを消して長さを1/2で再生するか、或いは、再生速度を2倍にすることによってシーケンサーを消さずに長さを1/2で再生するかを選べる機能を有してもよい。この場合、パフォーマンスの幅を持たせることができる。
【0060】
軌跡算出部568は、タッチ位置の移動速度に応じて移動されるポインターPTの位置であってタッチ終了からの経過時間に応じた位置を算出するときに、ミキサー4から受信された対象チャンネルのBPM(Beat Per Minute)に基づいて、ポインターPTの移動速度の最大値を調整してもよい。すなわち、軌跡算出部568は、対象チャンネルのBPMに基づいて、ポインターPTの移動速度を調整してもよい。この場合、楽曲に付加されるエフェクトの変化量を、楽曲の種別等に応じて調整できる。
【0061】
[実施形態の効果]
以上説明した本実施形態に係る音響システム1は、以下の効果を奏し得る。
音響システム1は、ミキサー4及び操作装置5を有する音響装置10を備える。
操作装置5は、ユーザーによるタッチ操作を検出するタッチパネル51と、タッチパネル51によって検出されたタッチ操作に基づいてパラメータ値を設定する値設定部569と、備える。ミキサー4は、値設定部569によって設定されたパラメータ値に基づいて、入力される音声を操作して出力する出力制御部43を備える。
値設定部569は、タッチパネル51においてタッチ操作が開始されたときのタッチ位置である開始位置からタッチ操作が終了されたときのタッチ位置である終了位置までの間のタッチ位置の移動方向及び移動速度に応じて、パラメータ値を設定する。
【0062】
このような構成によれば、タッチパネル51に対するタッチ操作を継続しなくても、パラメータ値を連続して変化させることができる。従って、パラメータ値を変更するユーザーの操作を簡略化できる。
【0063】
音響装置10において、操作装置5は、タッチパネル51が設けられる表示パネル52と、タッチ操作によって移動されるポインターPTを表示パネル52に表示させる表示制御部561と、を備える。詳しくは、表示制御部561は、表示パネル52に表示される操作画面PSの操作領域P1にポインターPTを表示させる。表示制御部561は、タッチ操作の開始位置からタッチ操作の終了位置までの間のタッチ位置の移動方向及び移動速度に応じて、ポインターPTを移動させる。
このような構成によれば、ユーザーは、自身の操作によるパラメータ値の変化を視覚的に把握できる。このため、どのようにポインターPTを操作すれば、どのようにパラメータ値が変化するのかをユーザーに理解させやすくすることができる。
【0064】
音響装置10において、表示制御部561は、表示パネル52によって表示される操作画面PSの操作領域P1に、ポインターPTが移動可能な範囲を規定する境界P11を表示させる。表示制御部561は、境界P11にポインターPTが入射すると、境界P11にて反射されるポインターPTを表示させる。値設定部569は、ポインターPTの位置に応じてパラメータ値を設定する。
このような構成によれば、例えば操作領域PX,PYにてポインターPTが操作される場合のように、X軸パラメータ値及びY軸パラメータ値のうちの一方のみを変化させる場合には、パラメータ値を連続的に容易に増減させることができる。
また、例えば操作領域PXYにてポインターPTが操作される場合のように、X軸パラメータ値及びY軸パラメータ値を同時に変化させる場合には、2つのパラメータ値を連続して容易に増減させることができる。この他、例えば、X軸パラメータ値及びY軸パラメータ値のうち一方のパラメータ値を連続的に増加又は減少させつつ、他方のパラメータ値を連続的に増加させた後に連続的に減少させる操作を容易に実施できる。従って、音響装置10の汎用性を高めることができる。
【0065】
音響装置10では、ミキサー4の出力制御部43は、操作装置5から受信されるパラメータ値に応じて、入力される音声にエフェクトを付加する。
このような構成によれば、パラメータ値が変化するエフェクトを、ミキサー4に入力される音声に容易に付加できる。
【0066】
音響装置10では、操作装置5によってパラメータ値が設定され、ミキサー4によって音声に付加されるエフェクトは、BEAT FX及びSOUND COLOR FXのうち少なくとも一方に分類されるエフェクトである。
このような構成によれば、上記種別のエフェクトのパラメータ値の連続的な変化を生じさせるタッチパネル51の操作を容易に実施できる。
【0067】
音響装置10では、タッチパネル51は互いに直交する二軸を有する。二軸のうち一方の軸であるX軸には、BEAT FXに分類されるエフェクトが設定され、他方の軸であるY軸には、SOUND COLOR FXに分類されるエフェクトが設定されている。
このような構成によれば、タイプの異なる2つのエフェクトのパラメータ値を同時に操作できる。従って、音響装置10の汎用性を高めることができる。
【0068】
音響装置10は、タッチパネル51を有し、入力される楽曲にエフェクトを付加する。音響装置10を用いて行われる操作方法は、値設定手順を含む。値設定手順は、タッチパネル51においてユーザーのタッチ操作が開始されたときのタッチ位置である開始位置からタッチ操作が終了されたときのタッチ位置である終了位置までの間のタッチ位置の移動方向及び移動速度に応じて、エフェクトのパラメータ値を設定する。
このような操作方法を音響装置が実施することにより、上記した音響装置10と同様の効果を奏することができる。
【0069】
音響装置10は、タッチパネル51を有し、入力される楽曲にエフェクトを付加する。
音響装置10によって実行される操作プログラムは、音響装置10に、値設定ステップを実行させる。値設定ステップは、タッチパネル51においてユーザーのタッチ操作が開始されたときのタッチ位置である開始位置からタッチ操作が終了されたときのタッチ位置である終了位置までの間のタッチ位置の移動方向及び移動速度に応じて、エフェクトのパラメータ値を設定する。
このような操作プログラムを音響装置が実行することにより、上記した音響装置10と同様の効果を奏することができる。
【0070】
[実施形態の変形]
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形及び改良等は、本開示に含まれるものである。
上記実施形態では、音響装置10は、それぞれ別体であるミキサー4及び操作装置5を備えるとした。しかしながら、これに限らず、ミキサー4と操作装置5とは一体化されていてもよい。また、音響装置10は、ミキサー4に代えて、エフェクター、オールインワンタイプのDJシステム、或いは、DJアプリケーションを実行する楽曲供給装置3であってもよい。すなわち、操作装置5がパラメータ値を送信する装置は、複数のチャンネルを有するものでなくてもよい。更に、音響装置は、楽曲供給装置であってもよい。
【0071】
上記実施形態では、操作画面PSに設けられた操作領域P1は、ポインターPTを操作することによってX軸パラメータ値及びY軸パラメータ値を操作可能な操作領域PXYと、X軸パラメータ値を操作可能な操作領域PXと、Y軸パラメータ値を操作可能な操作領域PYと、を含むとした。しかしながら、これに限らず、操作領域P1は、操作領域PXY,PX,PYのうち、1つでもよく、2つでもよい。例えば、操作領域PXYが設けられていれば、操作領域PX,PYは無くてもよく、操作領域PX,PYが設けられていれば、操作領域PXYは無くてもよい。
【0072】
上記実施形態では、操作装置5は、タッチパネル51に対するユーザーのタッチ操作に応じた位置にポインターPTを表示する表示パネル52を備えるとした。しかしながら、これに限らず、表示パネル52は、無くてもよい。この場合、表示制御部561を省略できる。
ポインターPTは、円形状に限らず、楕円形状や矩形状等、他の形状であってもよい。また、操作領域PXYは、矩形状に限らず、円形状や他の多角形状であってもよい。
【0073】
上記実施形態では、ミキサー4は、操作装置5から受信されるパラメータ値に基づいて、入力される音声にエフェクトを付加するとした。しかしながら、これに限らず、音響装置10は、タッチパネル51に対するタッチ操作に応じて変化するパラメータ値に応じて、入力される音声を操作できれば、エフェクト以外の操作であってもよい。例えば、本開示の音響装置は、設定されたパラメータ値に基づいて、入力される音声に含まれる特定周波数帯の音量を増減させるものであってもよい。
【0074】
上記実施形態では、X軸エフェクトとしてBEAT FXに分類されるエフェクトの1つを設定し、Y軸エフェクトとしてSOUND COLOR FXに分類されるエフェクトの1つを設定した。しかしながら、これに限らず、X軸エフェクトとしてSOUND COLOR FXに分類されるエフェクトの1つが設定されてもよく、Y軸エフェクトとしてBEAT FXに分類されるエフェクトの1つが設定されてもよい。
また、X軸エフェクト及びY軸エフェクトのそれぞれが、BEAT FXに分類されるエフェクトであってもよく、SOUND COLOR FXに分類されるエフェクトであってもよい。
【0075】
上記実施形態では、操作装置5の動作モードとして、ノーマルモード、ピンボールモード及びスリングショットモードを例示した。しかしながら、操作装置5の動作モードとして選択可能なモードに、ピンボールモード或いはスリングショットモードが含まれていれば、ノーマルモードは含まれていなくてもよい。
【0076】
上記実施形態では、操作装置5の制御部56によって実行される操作プログラムは、記憶部54に記憶されているとした。しかしながら、これに限らず、例えば上記した操作処理の実行時に、記録媒体から読み取って実行する構成としてもよい。このような記録媒体として、例えばディスク型記録媒体や半導体メモリーを例示できる。また、操作プログラムは、ネットワーク上のサーバー等の機器から取得されてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…音響システム、10…音響装置、4…ミキサー、5…操作装置、41…入力部、411…第1入力部、412…第2入力部、42…操作部、43…出力制御部、431…第1出力制御部、432…第2出力制御部、44…出力部、51…タッチパネル、52…表示パネル、53…通信部、54…記憶部、55…メモリー、56…制御部、561…表示制御部、562…エフェクト設定部、563…チャンネル設定部、564…モード設定部、565…タッチ判定部、566…モード判定部、567…操作取得部、568…軌跡算出部、569…値設定部、570…値送信部、D1,D2…移動方向、EP…終了位置、PT…ポインター、SP…開始位置。