(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】補強ブッシュ部付きボールスプライン
(51)【国際特許分類】
F16C 29/06 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
F16C29/06
(21)【出願番号】P 2022567411
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(86)【国際出願番号】 KR2021005281
(87)【国際公開番号】W WO2021225319
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】10-2020-0053621
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519441073
【氏名又は名称】ウォン エスティー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ヒョク ド
(72)【発明者】
【氏名】リ,テク ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ギ ドン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ドン ヒョプ
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01236913(EP,A1)
【文献】特開2011-169437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状を呈し、かつ長手方向に沿って延びた一本以上の軌道溝(111)が形成された棒状のスプライン軸(110)と、前記スプライン軸(110)が挿通されてその長手方向に沿って可動となるように配備されるナット部と、前記ナット部とスプライン軸(110)との間に配備されて循環する複数のボール(150)と、を備え、
前記ナット部は、前記スプライン軸(110)が挿通される中空体であるナット(120)と、前記ナット(120)の長手方向の両側に配備されて前記スプライン軸(110)が挿通される中空体であるリテーナー(130)と、を備え、
前記ナット部には、スプライン部が一つ以上配備され、
前記スプライン部は、前記ナット(120)の内面部(121)に凹状にかつ長手方向に沿って形成されて軌道溝(111)と向かい合う負荷軌道溝(125)と、前記負荷軌道溝(125)と並ぶように長手方向に沿って形成された非負荷循環部(127)と、前記リテーナー(130)に形成されて一方の側は負荷軌道溝(125)の端部と向かい合い、他方の側は非負荷循環部(127)の端部と向かい合う湾曲陥凹状のスプライン循環溝(133)と、を備え、
前記ボール(150)の一部は、長手方向の両側のリテーナー(130)のスプライン循環溝(133)において方向切換が行われ、前記軌道溝(111)と前記負荷軌道溝(125)との間、及び前記非負荷循環部(127)に沿って循環移動し、
前記ナット部には、前記スプライン部と並ぶように一つ以上の補強ブッシュ部がさらに配備され、
前記ボール(150)の残りの一部は、前記スプライン軸(110)の外面に接触して転動しながら補強ブッシュ部に沿って循環移動し、
前記スプライン軸(110)の外面とブッシュ軌道溝(125-1)との間において前記ボール(150)に働く予圧は、前記軌道溝(111)と前記負荷軌道溝(125)との間において前記ボール(150)に働く予圧よりも小さくなるように組み立てられ、
前記負荷軌道溝(125)の長手方向の両方の端部には、広がった軌道拡張部(125a)が形成され、前記ボール(150)が移動しながら前記軌道拡張部(125a)に達すると、前記軌道拡張部(125a)と前記軌道溝(111)との間において前記ボール(150)の遊び量が大きくなることを特徴とする補強ブッシュ部付きボールスプライン(100)。
【請求項2】
前記軌道溝(111)は複数本配備され、前記スプライン部と前記補強ブッシュ部は、それぞれ複数配備され、前記スプライン部と前記補強ブッシュ部は、交互に配備されることを特徴とする請求項1に記載の補強ブッシュ部付きボールスプライン(100)。
【請求項3】
前記軌道溝(111)は、互いに配向して2本配備され、前記スプライン部もまた2つ配備され、前記補強ブッシュ部は、前記スプライン部の間に位置して2つ配備され
、前記軌道溝(111)と前記補強ブッシュ部は90°の位相を有することを特徴とする請求項2に記載の補強ブッシュ部付きボールスプライン(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールスプラインに係り、さらに詳しくは、スプライン軸の剛性を向上させて寿命を延ばす補強ブッシュ部付きボールスプラインに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールスプラインは、自動車産業及び半導体産業の分野において直線運動を正確に伝える直線運動軸受けの一種である。
【0003】
図1に示すように、従来のボールスプライン10は、ボール1が納められてボール1の一方の面が晒されるように負荷軌道溝2を有し、前記負荷軌道溝2に沿って循環するボール1がリテーナー3の循環溝4に沿って非負荷循環孔5に進入しながら無限軌道が形成されてボール1が循環するようにする。
【0004】
ナット6において、ボール1が納められる負荷軌道溝2は、断面の曲率半径がボール1の半径よりも大きな円弧状に形成されてもよいが、中央の円形の中心軸の左右に同一の2つの円弧を形成するように加工した後、ボール1が納められるため、中央の円形の中心軸の左右に形成された2つの接点においてボール1が負荷軌道溝2に接触するようにしてもよい。前記ボール1が負荷軌道溝2に納められる場合にボール1が密着される2つの接点がボール1の中心において広がる角を大きくしながら、ボール1が負荷軌道溝2から抜脱されないようにし、負荷軌道溝2からリテーナー3の循環溝4に沿って非負荷循環孔5へと移動する場合に、ボール1の円滑な循環のために負荷軌道溝2の先端に湾曲面を形成する。ボール1は、移動に際して湾曲面に沿って移動するため、衝撃が生じない結果、騒音や振動が生じない。
【0005】
スプライン軸8がナット6に挿通される場合に、ナット6の内径側に突き出たボール1が嵌め込まれるように、スプライン軸8には軌道溝9が長手方向に沿って延びて凹状に形成されるので、スプライン軸8がナット6において正確にボール1によりソフトな前後運動を行うことが可能になる。ボール1の循環によってスプライン軸8の長さとは無関係に前後進動作を行うことが可能になるのである。
【0006】
スプライン軸8に形成される軌道溝9もまた、断面を円弧状にしてもよいが、負荷軌道溝2の加工方式と同じ方式にて加工することにより、ボール1は4つの接点において接触(4点接触)して転動する。
【0007】
図1において、図面符号7は、ナット6とリテーナー3との間に配備されるシールを示すものであり、4aは、リテーナー3に配備された、内向きに突き出た循環突起を示すものである。
【0008】
図1に示すようなボールスプライン10において、リテーナー3が結合されたナット6は、スプライン軸8に沿ってその長手方向に往復動をすることが可能であるが、スプライン軸8に対して回転することができない。
【0009】
図2は、ボールスプラインのスプライン軸とボールを示す断面図である。
【0010】
従来のボールスプライン10は、
図2における矢印「A」の方向に荷重が加えられると、ナット6の歪み角度が大きくなり、軌道溝9の下部からボール1と軌道溝9との間の接点9aへと圧力が加えられ、スプライン軸8の剛性が弱くなり、ボールスプライン10の揺動が生じ、寿命が短くなるという不都合があった。
【0011】
このような不都合を解決するために、スプライン軸8に軌道溝9をさらに形成すると、スプライン軸8の剛性が弱くなり、軌道溝9を形成するためのコストが高騰してしまうという不都合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような従来の技術が抱えている不都合を解決するために案出されたものであり、補強ブッシュ部を備えてスプライン軸とボールとの接触による軌道溝の損傷を防ぎ、スプライン軸の剛性を高めて寿命を延ばす補強ブッシュ部付きボールスプラインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のような目的を達成するために、本発明は、凹状を呈し、かつ長手方向に沿って延びた一本以上の軌道溝が形成された棒状のスプライン軸と、前記スプライン軸が挿通されてその長手方向に沿って可動となるように配備されるナット部と、前記ナット部とスプライン軸との間に配備されて循環する複数のボールと、を備え、前記ナット部は、スプライン軸が挿通される中空体であるナットと、前記ナットの長手方向の両側に配備されてスプライン軸が挿通される中空体であるリテーナーと、を備え、前記ナット部には、スプライン部が一つ以上配備され、前記スプライン部は、ナットの内面部に凹状にかつ長手方向に沿って形成されて軌道溝と向かい合う負荷軌道溝と、前記負荷軌道溝と並ぶように長手方向に沿って形成された非負荷循環部と、前記リテーナーに形成されて一方の側は負荷軌道溝の端部と向かい合い、他方の側は非負荷循環部の端部と向かい合う湾曲陥凹状のスプライン循環溝と、を備え、前記ボールの一部は、長手方向の両側のリテーナーのスプライン循環溝において方向切換が行われ、軌道溝と負荷軌道溝との間、及び非負荷循環部に沿って循環移動し、前記ナット部には、スプライン部と並ぶように一つ以上の補強ブッシュ部がさらに配備され、前記ボールの残りの一部は、スプライン軸の外面に接触して転動しながら補強ブッシュ部に沿って循環移動することを特徴とする補強ブッシュ部付きボールスプラインを提供する。
【0014】
上記において、軌道溝は複数配備され、スプライン部と補強ブッシュ部は、それぞれ複数配備され、スプライン部と補強ブッシュ部は、交互に配備されることを特徴とする。
【0015】
上記において、軌道溝は、互いに配向して2本配備され、前記スプライン部もまた2つ配備され、前記補強ブッシュ部は、スプライン部の間に位置して2つ配備されることを特徴とする。
【0016】
上記において、補強ブッシュ部は、ナットの内面部に凹状にかつ長手方向に沿って形成されてスプライン軸の外面と向かい合うブッシュ軌道溝と前記ブッシュ軌道溝と並ぶように長手方向に沿って形成されたブッシュ循環部と、前記リテーナーに形成されて一方の側はブッシュ軌道溝の端部と向かい合い、他方の側はブッシュ循環部の端部と向かい合う湾曲陥凹状のブッシュ循環溝と、を備え、補強ブッシュ部に沿って循環移動する複数のボールは、長手方向の両側のリテーナーのブッシュ循環溝において方向切換が行われ、スプライン軸の外面とブッシュ軌道溝との間、及びブッシュ循環部に沿って循環移動することを特徴とする。
【0017】
上記において、スプライン軸の外面とブッシュ軌道溝との間においてボールに働く予圧は、軌道溝と負荷軌道溝との間においてボールに働く予圧よりも小さくなるように組み立てられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る補強ブッシュ部付きボールスプラインは、補強ブッシュ部を備えて補強ブッシュ部のボールがナットの半径方向に加えられる荷重を受け止めて軌道溝とボールとの間に圧力が加えられないことから、スプライン軸とボールとの接触による軌道溝の損傷が防がれ、スプライン軸の歪みが防がれてボールスプラインの寿命が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】従来の技術によるボールスプラインを示す分解斜視図である。
【
図2】従来の技術によるボールスプラインにおけるスプライン軸とボールを示す断面図である。
【
図3】本発明に係る補強ブッシュ部付きボールスプラインを示す一部省略斜視図である。
【
図4】本発明であるボールスプラインに組み込まれたナットを示す斜視図である。
【
図5】本発明であるボールスプラインに組み込まれたリテーナーの斜視図である。
【
図6】本発明であるボールスプラインの変形例を示す一部切欠斜視図である。
【
図7】本発明であるボールスプラインのスプライン軸とボールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に基づいて、本発明の補強ブッシュ部付きボールスプラインについて詳しく説明する。
【0021】
図3は、本発明に係る補強ブッシュ部付きボールスプラインを示す一部省略斜視図であり、
図4は、本発明であるボールスプラインに組み込まれたナットを示す斜視図であり、
図5は、本発明であるボールスプラインに組み込まれたリテーナーの斜視図であり、
図6は、本発明であるボールスプラインの変形例を示す一部切欠斜視図であり、
図7は、本発明であるボールスプラインのスプライン軸とボールを示す断面図である。
【0022】
以下では、
図3のスプライン軸110の延長方向を「長手方向」と記載する。
【0023】
図3に示すように、本発明に係る補強ブッシュ部付きボールスプライン100は、棒状のスプライン軸110と、前記スプライン軸110が挿通されてスプライン軸110の長手方向に沿って可動となるように配備されるナット部と、前記ナット部とスプライン軸110との間に配備されて循環する複数のボール150と、を備える。
【0024】
前記ナット部は、スプライン軸110が挿通される円筒状の中空体であるナット120と、前記ナット120の長手方向の両側に配備されてスプライン軸110が挿通される中空体であるリテーナー130と、を備える。前記ナット部は、ナット120とリテーナー130との間に
図1に示す図面符号7にて示すリング状のシールをさらに備えていてもよい。
【0025】
前記ナット120は、軸受け鋼などの高炭素鋼から製造される。
図4において、図面符号123は、ナット120の長手方向の一方または両方の端部から半径方向の外側へと突き出たつばを示すものである。
【0026】
前記リテーナー130は、円板から内径側の部分が打ち抜かれたドーナツ状を呈する。前記リテーナー130は、エンジニアリングプラスチック(ナイロン6、ナイロン66、またはこれらにガラス繊維が混合されたもの)から製造されてもよく、ナット120と同様に、軸受け鋼などの金属から製造されてもよい。前記ナット120とリテーナー130との間には、図示しない中空体であるシールが介設されてもよい。前記リテーナー130は、
図1に示すように、ボルトによってナット120に結合可能である。
【0027】
前記スプライン軸110には、凹状を呈し、かつ長手方向に沿って延びた一本以上の軌道溝111が形成される。前記スプライン軸110は、断面が円形である棒状の外面に軌道溝111が凹状に加工されて製造されてもよい。前記軌道溝111は、円周方向に沿って互いに離れて複数本形成される。
図2に示すように、前記軌道溝111は、互いに配向する位置に2本配備されてもよい。前記スプライン軸110は、端部に縮径された軸取付部113を備えていてもよい。前記軸取付部113には、キー溝(図示せず)が形成され、ピニオンなどが配設される。
【0028】
前記ナット部には、スプライン部と補強ブッシュ部が一つ以上配備される。
【0029】
前記スプライン部には、前記スプライン軸110が挿通される中空部であるナット120の内面部121に凹状にかつ長手方向に沿って形成された一本以上の負荷軌道溝125と、前記負荷軌道溝125と並ぶように長手方向に沿って形成された一つ以上の非負荷循環部127と、が配備される。前記負荷軌道溝125と非負荷循環部127は、スプライン軸110に配備された軌道溝111と同数に配備される。前記非負荷循環部127は、ナット120にその長手方向に沿って形成された貫通孔として形成されてもよい。前記負荷軌道溝125は、前記軌道溝111と向かい合う位置に形成される。
【0030】
前記リテーナー130のナット120を向く面である内側面には、湾曲状に凹んだスプライン循環溝133が形成される。前記スプライン循環溝133は、一本以上形成される。前記スプライン循環溝133は、軌道溝111と同数に形成される。前記スプライン循環溝133の一方の側は負荷軌道溝125の端部と向かい合い、他方の側は非負荷循環部127の端部と向かい合う。
【0031】
前記複数のボール150の一部は、長手方向の両側のリテーナー130のスプライン循環溝133において方向切換が行われ、軌道溝111と負荷軌道溝125との間に転走し、非負荷循環部127に沿って循環移動する。ボール150の循環は、公知の技術であるため、これについての説明は省略する。
【0032】
ボール150は、軌道溝111に2点接触し、負荷軌道溝125に2点接触して、4点接触しながら転動してもよい。軌道溝111と負荷軌道溝125がボール150の半径よりも大きな曲率半径を有する円弧状に形成されて2点接触しながら転動してもよい。これは、従来の公知の技術であるため、これについての詳しい説明は省略する。
【0033】
図4に示すように、前記負荷軌道溝125の長手方向の両方の端部には、広がった軌道拡張部125aが形成される。ボール150が移動しながら前記軌道拡張部125aに達すると、軌道拡張部125aと軌道溝111との間においてボール150の遊び量が大きくなり、リテーナー130のスプライン循環溝133への移動が円滑に行われ、それにより、ボール150による軌道溝111と負荷軌道溝125の損傷が抑制もしくは防止されることが可能になる。
【0034】
前記補強ブッシュ部は、前記スプライン軸110の軌道溝111の間に配備される。前記補強ブッシュ部は、複数配備される。前記補強ブッシュ部は、前記スプライン部と交互に配備される。
【0035】
以下では、前記軌道溝111が互いに配向して180°の角度をもって離れて2本形成され、前記スプライン部は、2つ配備され、前記補強ブッシュ部は、スプライン部の間に位置して2つ配備されることを例にとって説明する。
【0036】
前記補強ブッシュ部には、ナット120の内面部121に凹状にかつ長手方向に沿って形成される一本以上のブッシュ軌道溝125-1と、前記ブッシュ軌道溝125-1から離れた位置に前記ブッシュ軌道溝125-1と並ぶように長手方向に沿って形成された一つ以上のブッシュ循環部127-1と、が配備される。前記ブッシュ軌道溝125-1は、前記スプライン軸110の外面と向かい合うように配備される。前記ブッシュ循環部127-1は、ナット120にその長手方向に沿って形成された貫通孔として形成されてもよい。
【0037】
前記リテーナー130のナット120を向く面である内側面には、湾曲状に凹んだブッシュ循環溝133-1が形成される。前記ブッシュ循環溝133-1は、一本以上形成される。前記ブッシュ循環溝133-1は、前記スプライン循環溝133の間に形成される。前記ブッシュ循環溝133-1の一方の側はブッシュ軌道溝125-1の端部と向かい合い、他方の側はブッシュ循環部127-1の端部と向かい合う。
【0038】
前記複数のボール150の残りの一部は、長手方向の両側のリテーナー130のブッシュ循環溝133-1において方向切換が行われ、スプライン軸110の外面とブッシュ軌道溝125-1との間に転走し、ブッシュ循環溝133-1において方向切換が行われてブッシュ循環部127-1に導かれてブッシュ循環部127-1に沿って移動して循環する。
【0039】
図4に示すように、前記ブッシュ軌道溝125-1の長手方向の両方の端部には、広がった軌道拡張部が形成される。ボール150が移動しながら前記軌道拡張部に達すると、軌道拡張部125aにおいてボール150の遊び量が大きくなり、リテーナー130のブッシュ循環溝133-1への移動が円滑に行われ、それにより、ボール150によるブッシュ軌道溝125-1の損傷が抑制もしくは防止されることが可能になる。
【0040】
図5に示すように、前記リテーナーの内面部131は、円筒状に形成され、前記スプライン循環溝133とブッシュ循環溝133-1は、リテーナーの内面部131に開口されて、内径側にリテーナーの内面部131に開口された内面開口部135を有する。したがって、前記リテーナー130の半径方向の内側には、リテーナーの内面部131から内向きに突き出た構成要素が配備されず、リテーナー130が移動しながら軌道溝111との干渉が生じないことから、軌道溝111との干渉によるリテーナー130の破損が生じない。
【0041】
本発明に係る補強ブッシュ部付きボールスプライン100に配備されるボール150の直径は、ナット120の負荷軌道溝125と軌道溝111との間の間隔よりも大きく、かつ、ブッシュ軌道溝125-1とスプライン軸110の外面との間の間隔よりも大きく形成される。したがって、前記負荷軌道溝125と軌道溝111との間及びブッシュ軌道溝125-1とスプライン軸110の外面との間には予圧が生じる。
【0042】
前記ブッシュ軌道溝125-1とスプライン軸110の外面との間の間隔は、負荷軌道溝125と軌道溝111との間の間隔よりも大きく形成されることにより、前記スプライン軸110の外面とブッシュ軌道溝125-1との間においてボール150に働く予圧は、軌道溝111と負荷軌道溝125との間においてボール150に働く予圧よりも小さくなるように組み立てられる。前記補強ブッシュ部は、スプライン部よりも小さな予圧にて組み立てられながらも、かつ、予圧が小さくなりながらも、
図7に示すように、スプライン部と90°の位相を有して、直角方向の荷重支持能が最大限に向上し、直角方向への軌道溝111の形成なしに補強ブッシュ部が配備されて支持されるので、軌道溝111の加工によるスプライン軸110の剛性の低下もまた防がれる。
【0043】
したがって、本発明に係るボールスプライン100は、補強ブッシュ部が配備されることにより、ナット120に働く半径方向の荷重(
図7における矢印「A」の方向)に対する剛性が向上し、それにより、ボールスプラインの寿命が向上するという効果がある。
【0044】
以上、本発明に係る補強ブッシュ部付きボールスプラインについて、図示の実施形態に基づいて説明したが、これは、単なる例示的なものに過ぎず、当業者であれば誰でもこれから様々な変形例及び均等な他の実施形態が採用可能であるという点が理解できる筈である。よって、本発明の真の技術的な保護範囲は、添付の特許請求の範囲の技術的思想により定められるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る補強ブッシュ部付きボールスプラインは、大きな剛性を有し、寿命が延びる。