IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車体前部構造 図1
  • 特許-車体前部構造 図2
  • 特許-車体前部構造 図3
  • 特許-車体前部構造 図4
  • 特許-車体前部構造 図5
  • 特許-車体前部構造 図6
  • 特許-車体前部構造 図7
  • 特許-車体前部構造 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
B62D25/08 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023021408
(22)【出願日】2023-02-15
(65)【公開番号】P2024115659
(43)【公開日】2024-08-27
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃寛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩之
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-24412(JP,A)
【文献】特開2021-172156(JP,A)
【文献】特開2008-162369(JP,A)
【文献】特開2005-112172(JP,A)
【文献】特開2012-11864(JP,A)
【文献】特開2006-62542(JP,A)
【文献】特開2005-262940(JP,A)
【文献】特開2020-199928(JP,A)
【文献】国際公開第2017/222019(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0213900(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B60R 21/01,21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドライトが固定されるアッパビームと、
前記アッパビームに併設されて車体前方側の端部がバルクヘッドに締結されるとともに車体後方側の端部がロアメンバに締結されるブラケットと、
前記アッパビームと前記ブラケットとの間に挟まれるように配置される衝撃緩和ブラケットと、
前記衝撃緩和ブラケットの近傍に配置されるエアバッグセンサと、
を備えることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記衝撃緩和ブラケットは、側面視でコ字状を呈していることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記衝撃緩和ブラケットは、コ字状の開側の両端部に一対のフランジ部を有し、
一対の前記フランジ部のうち、一方の前記フランジ部は、前記ブラケットの上面又は下面に固定され、他方の前記フランジ部は、前記ブラケットの側面に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記衝撃緩和ブラケットは、金属製であることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記ブラケットは、断面がコ字状を呈していることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記ブラケットは、
車幅方向に平行に延在する第1ブラケットと、
前記第1ブラケットに接合されるとともに前記第1ブラケットとの接合部から車体後方に延在する第2ブラケットと、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項7】
前記第2ブラケットは、前記第1ブラケットよりも脆弱であることを特徴とする請求項6に記載の車体前部構造。
【請求項8】
前記第2ブラケットは、車体前方に向かうほど車幅方向に拡がっていることを特徴とする請求項6に記載の車体前部構造。
【請求項9】
前記衝撃緩和ブラケット及び前記第1ブラケットには孔が設けられ、
前記衝撃緩和ブラケットの孔と前記第1ブラケットの孔とは、車体前後方向に重なるように形成されていることを特徴とする請求項6に記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体前部の初期衝突を受ける部材として、衝突荷重が入力される内方支持部とヘッドランプの固定フレームとが一体成形された樹脂製のバンパ支持ブラケットを有する車体前部構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。このバンパ支持ブラケットは、エアバッグセンサが設けられたラジエータサイドフレームの前面に取り付けられている。
このような車体前部構造によれば、前突時の早期にバンパ支持ブラケットの内方支持部が引裂応力によって破壊される。これにより車体前部構造は、G波にノイズ成分が混入せず、エアバッグセンサの誤動作を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-213185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車体前部構造(例えば、特許文献1参照)においては、バンパ支持ブラケットを構成する内方支持部とヘッドランプの固定フレームとが一体になっているために、バンパ支持ブラケットの取付場所に制限がある。また、このような車体前部構造においては、内方支持部と固定フレームのいずれかが破損し、又は劣化した際にそれらを個別に交換することができず交換コストが嵩む問題もある。したがって、従来の車体前部構造においてはバンパ支持ブラケット(荷重入力部)の取付場所について設計上の自由度が高く、荷重入力部の交換コストを削減することができるものが望まれている。
【0005】
本発明の課題は、荷重入力部の取付場所について設計上の自由度が高く、荷重入力部の交換コストを削減することができる車体前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成した本発明の車体前部構造は、ヘッドライトが固定されるアッパビームと、前記アッパビームに併設されて車体前方側の端部がバルクヘッドに締結されるとともに車体後方側の端部がロアメンバに締結されるブラケットと、前記アッパビームと前記ブラケットとの間に挟まれるように配置される衝撃緩和ブラケットと、前記衝撃緩和ブラケットの近傍に配置されるエアバッグセンサと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車体前部構造は、荷重入力部の取付場所について設計上の自由度が高く、荷重入力部の交換コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る車体前部構造の左側の部分拡大斜視図である。
図2図1の車体前部構造の左側の部分拡大正面図である。
図3図1の車体前部構造の左側の部分拡大平面図である。
図4図1の車体前部構造からヘッドライト及びアッパビームを取り外した際の左側の部分拡大平面図である。
図5図1の車体前部構造を構成するブラケットの全体斜視図である。
図6図5のブラケットの裏面図である。
図7図5のブラケットを構成する第2ブラケットの側面図である。
図8図5のVIII-VIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の車体前部構造を実施するための形態(実施形態)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下の説明における前後左右上下の方向は、車体の前後左右上下と一致させた図1の矢示方向を基準とする。また、本実施形態に係る車体前部構造は、車体中心線を境に左右対称になっており、以下では車体前部構造の左側についてのみ説明し、車体前部構造の右側についての詳細な説明は省略する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る車体前部構造10の左側の部分拡大斜視図である。図2は、図1の車体前部構造10の左側の部分拡大正面図である。図3は、図1の車体前部構造の左側の部分拡大平面図である。なお、図3中、ヘッドライト8は、作図の便宜上、仮想線(二点鎖線)にて表している。
図1に示すように、車体前部構造10は、ヘッドライト8と、ヘッドライト8を固定するアッパビーム4と、エアバッグセンサ3が取り付けられるブラケット1と、を備えている。
【0011】
本実施形態でのヘッドライト8は、横長に形成され、車体前部角隅に位置するバンパビームエクステンション9bの上方に配置されている。
図2に示すように、ヘッドライト8の車幅方向内側の端部は、バルクヘッド5を構成する矩形枠部材のうち、上側横部材5aの車幅方向外側の端部に支持されている。また、ヘッドライト8の車幅方向外側の端部は、フェンダパネル7の係合部7aに係合している。
このようなヘッドライト8の下部は、図1に示すように、その長手方向に沿って複数並ぶように形成される締結部8aを介してアッパビーム4に固定されている。
【0012】
アッパビーム4は、図2に示すように、ヘッドライト8の下方でヘッドライト8の長手方向に沿うように横長に形成されている。なお、図2中、作図の便宜上、第1ブラケット11には網掛けを付している。
具体的には、図3に示すように、アッパビーム4は、アッパビーム4の前面とヘッドライト8の前面とが上下方向に重なるように配置されている。
アッパビーム4は、図3に示す平面視で、前後方向の中央に形成されるくびれ部4cを介して前部4aと後部4bとを有している。
【0013】
図2に示すように、アッパビーム4の前部4aには、後記する衝撃緩和ブラケット2にボルトBにて締結される締結部4a1が形成されている。なお、図2中、衝撃緩和ブラケット2は、隠れ線(点線)にて表している。
アッパビーム4の前部4aは、この衝撃緩和ブラケット2を介してブラケット1に支持されることとなる。
アッパビーム4の後部4bは、図2に示すように、ブラケット1の上方で後方(図2の紙面奥側)に延びてフェンダパネル7の車幅方向内側から前方に延出する接合片7bに接合されている。
【0014】
次に、ブラケット1(図1参照)について説明する。
図4は、図1の車体前部構造10からヘッドライト8(図3参照)及びアッパビーム4(図3参照)を取り外した際の左側の部分拡大平面図である。
図4に示すように、ブラケット1は、第1ブラケット11と第2ブラケット12とが接合されて平面視でくの字形状(chevron-shape)を呈している。
【0015】
第1ブラケット11は、図4に示す平面視で、車幅方向に細長い矩形を呈している。第1ブラケット11は、車幅方向に平行に延在している。
第2ブラケット12は、図4に示す平面視で、前後方向に高さが規定される台形を呈している。具体的には、第2ブラケット12は、前方に向かうほど横幅が徐々に広くなるように、上底よりも長い下底側が前方に位置し、上底側が後方に位置している。
【0016】
第1ブラケット11は、図2に示す正面視で、後記する衝撃緩和ブラケット2に対応する位置を境にして車幅方向内側に向かうほど下方に幅を徐々に拡げる略直角三角形状の基端部13を有している。
また、第1ブラケット11は、基端部13から車幅方向外側に延びてエアバッグセンサ3を支持する延出部14を有している。また、延出部14には、前記の第2ブラケット12が接合される。
【0017】
図5は、ブラケット1の全体斜視図である。図6は、ブラケット1の裏面図である。図7は、第2ブラケット12の側面図である。
図5に示すように、第1ブラケット11は、屈曲した板体で形成されている。第1ブラケット11は、その一部を切り欠いて表したように、長手方向(図5の左右方向)に交差する断面視でコ字状を呈している。具体的には、第1ブラケット11は、上下方向に面する上壁15と、コ字状の開側の前後両端部に形成される一対の側壁16とを備えている。
【0018】
第2ブラケット12は、図5に示すように、屈曲した板体で形成されている。第2ブラケット12は、その一部を切り欠いて表したように、長手方向(図5の前後方向)に交差する断面視でコ字状を呈している。具体的には、第1ブラケット11は、上下方向に面する上壁17と、コ字状の開側の前後両端部に形成される一対の側壁18とを備えている。
【0019】
図6に示すように、第1ブラケット11と第2ブラケット12とは、第1ブラケット11の車幅方向外側における上壁15に第2ブラケット12の前側における上壁17が重ねられることで互いに接合されている。なお、第1ブラケット11と第2ブラケット12との接合部においては、第1ブラケット11の前後一対の側壁16うち、後側の側壁16は省略されている。
【0020】
また、第1ブラケット11との接合部19における第2ブラケット12には、中抜き部12aが形成されている。これによりブラケット1は、軽量化を図りつつ、接合部19における剛性を高めている。なお、本実施形態での第1ブラケット11と第2ブラケット12との接合は、スポット溶接などの溶接によるものを想定しているが、ボルト締結などの他の接合を適用することもできる。
【0021】
第1ブラケット11(図5参照)から後方へと延びる第2ブラケット12(図5参照)の側壁18(図5参照)は、図7に示すように、上方に凹となるようアーチ状に形成されている。すなわち、側壁18の前後方向の中央部18aは、前後方向の両端部18bに比べて上下方向の長さが短くなっている。
これにより第2ブラケット12は、前後方向に掛かる荷重に対して第1ブラケット11(図5参照)よりも脆弱になっている。
【0022】
図6に戻って、第1ブラケット11の基端部13には、補強部材13aが配置されている。この補強部材13aは、図示は省略するが断面コ字状を呈しており、第1ブラケット11の内側に配置されて第1ブラケット11の上壁15と側壁16とに接合されている。
ブラケット1は、このように補強された基端部13を有する第1ブラケット11にてバルクヘッド5の左側縦部材5bに接続されている。具体的には、第1ブラケット11は、図2に示す正面視で、バンパビーム9aの上方にて左側縦部材5bの中程に接続されている。
【0023】
また、ブラケット1は、図4に示すように、第1ブラケット11から延びた第2ブラケット12の後端にてロアメンバ6に形成された接続部6aと接続されている。ちなみに、ロアメンバ6は、フロントサイドフレーム9cの車幅方向外側に配置されている。具体的には、ロアメンバ6は、図1に示すように、フロントサイドフレーム9cと共有する連結プレート9dから上方に凸となる円弧を描きながら後方に延びて、図示しないアッパメンバの前端に接続されている。
そして、図1に示すように、本実施形態での第2ブラケット12とロアメンバ6との接続部6aは、アッパビーム4の後部よりも後方に設定されている。
【0024】
次に、第1ブラケット11(図5参照)に取り付けられるエアバッグセンサ3(図5参照)と衝撃緩和ブラケット2(図5参照)とについて説明する。
なお、図5中、エアバッグセンサ3は、隠れ線(点線)にて表している。
エアバッグセンサ3(FCS:Front Crash Sensor)は、図5に示すように、第2ブラケット12の前方で第1ブラケット11(延出部14)に取り付けられている。具体的には、第1ブラケット11の前側の側面11bにセンサブラケット31にて取り付けられている。
【0025】
センサブラケット31は、図5に示すように、エアバッグセンサ3を後面にて支持する略矩形の支持板31aと、支持板31aの上縁、右縁及び左縁のそれぞれから後方に延出する脚板31bと、各脚板31bの延出端部に形成されるフランジ31cと、を有している。
そして、支持板31aの上縁から延出する脚板31bのフランジ31cは、第1ブラケット11の上面11aにスポット溶接されている。また、支持板31aの左右両縁からそれぞれ延出する脚板31bのフランジ31cは、第1ブラケット11の前側の側面11bにスポット溶接されている。
【0026】
衝撃緩和ブラケット2は、図3に示すように、アッパビーム4とブラケット1との間に挟まれるように配置されている。具体的には、衝撃緩和ブラケット2は、図5に示すように、第1ブラケット11の基端部13と延出部14との境に配置されている。
【0027】
本実施形態での衝撃緩和ブラケット2は、金属板の屈曲体で形成されている。
具体的には、衝撃緩和ブラケット2は、図5に示すように、アッパビーム4(図2参照)が締結される締結板21と、締結板21の上縁から後方に延出する脚板22と、締結板21の下縁から後方に延出する脚板23と、脚板22の延出端部に形成されるフランジ25と、脚板23の延出端部に形成されるフランジ26と、を備えている。すなわち、衝撃緩和ブラケット2は、衝撃緩和ブラケット2を左右方向に見た車体側面視で、締結板21と脚板22と脚板23とによってコ字状を呈している。
【0028】
締結板21は、前後方向に面するように配置されている。締結板21の略中央には後記するボルトB(図8参照)が螺合する締結孔24が形成されている。
この締結孔24は、特許請求の範囲にいう「衝撃緩和ブラケットの孔」に相当する。
締結板21は、正面視で、上部よりも下部の方が右側、すなわち基端部13側に変位している。
脚板22に形成されるフランジ25は、第1ブラケット11の上面11aに沿うように配置されて、上面11aにスポット溶接されている。
脚板23に形成されるフランジ26は、第1ブラケット11の前側の側面11bに沿うように配置されている。具体的には、フランジ26は、締結板21の下部が右側に変位していることで、基端部13の傾斜する下縁に沿って延びて側面11bにスポット溶接されている。
【0029】
図8は、図5のVIII-VIII断面図である。なお、図8中、符号4a1は、仮想線(二点鎖線)にて表した図2に示すアッパビーム4の締結部であり、符号Bは、仮想線(二点鎖線)にて表した締結用のボルトである。符号25は、第1ブラケット11の上面11aに接合されたフランジである。符号26は、第1ブラケット11の前側の側面11bに接合されたフランジである。
【0030】
図8に示すように、衝撃緩和ブラケット2の締結板21には、前記のようにボルトBにてアッパビーム4の締結部4a1が締結される。
本実施形態における第1ブラケット11の前側の側壁16と、この側壁16に重ねられる補強部材13aには、前後方向に貫通する孔Hが形成されている。そして、孔Hは、衝撃緩和ブラケット2の締結板21に形成された締結孔24に対して前後方向に重なるように形成されている。
【0031】
<作用効果>
次に、本実施形態に係る車体前部構造10の奏する作用効果について説明する。
車体前部構造10は、バルクヘッド5とロアメンバ6とに締結されるブラケット1と、アッパビーム4との間に挟まれるように衝撃緩和ブラケット2を備え、エアバッグセンサ3が衝撃緩和ブラケット2の近傍に配置されていることを主な特徴としている。
このような車体前部構造10によれば、前突時の衝撃荷重で後退するアッパビーム4にて衝撃緩和ブラケットが圧壊することで、衝撃緩和ブラケット2の近傍に配置されたエアバッグセンサ3に対する衝撃荷重に基づくノイズ混入を抑制することができる。
また、この車体前部構造10によれば、アッパビーム4から衝撃緩和ブラケット2を介してブラケット1へと伝達した荷重を、バルクヘッド5とロアメンバ6とに分散させることができる。
また、この車体前部構造10によれば、衝撃緩和ブラケット2がブラケット1やアッパビーム4とは別体の単体部品であることから、従来の内方支持部と固定フレームとが一体となっている車体前部構造(例えば、特許文献1参照)と異なって、部品交換を容易にかつ安価に行うことができる。
また、車体前部構造10は、衝撃緩和ブラケット2が単体部品であることから、衝撃緩和ブラケット2の取付場所について設計上の自由度や汎用性が高い。
【0032】
また、車体前部構造10においては、衝撃緩和ブラケット2は、コ字状を呈している。
この車体前部構造10によれば、コ字状の開側の2箇所で衝撃緩和ブラケット2をブラケット1に安定的に取り付けることができる。
また、車体前部構造10によれば、衝撃緩和ブラケット2の取付先であるブラケット1の形状に合わせてコ字状を形成する各部材(締結板21、脚板22,23)の長さや大きさ、形状を簡単かつ自由に設計することができる。
【0033】
また、車体前部構造10においては、衝撃緩和ブラケット2のフランジ25がブラケット1(第1ブラケット11)の上面11aに固定され、フランジ26がブラケット1(第1ブラケット11)の側面11bに固定されている。
この車体前部構造10によれば、衝撃緩和ブラケット2に衝撃荷重が入力した際に、両フランジ25,26とブラケット1(第1ブラケット11)とのそれぞれの接合面において同じ方向にせん断応力が働くことが回避される。これによりブラケット1(第1ブラケット11)に対する両フランジ25,26の接合が強固となって、衝撃緩和ブラケット2における安定した衝撃荷重の吸収が可能となる。
【0034】
また、車体前部構造10の衝撃緩和ブラケット2は、金属にて構成されている。
この車体前部構造10によれば、この衝撃緩和ブラケット2に対応するバンパ支持ブラケットが樹脂製である従来の車体前部構造(例えば、特許文献1参照)と異なって、入力した荷重によって破壊される際に発生する衝撃値をコントロールしやすい。
【0035】
また、車体前部構造10のブラケット1は、断面がコ字状を呈している。
この車体前部構造10によれば、ブラケット1が弾性変形しにくくなってブラケット1の共振固有値を高くすることができる。これによりエアバッグセンサ3の耐ノイズ性(耐振動性)が向上してエアバッグセンサ3の誤検知をより確実に防止することができる。
【0036】
また、車体前部構造10のブラケット1における第1ブラケット11は、車幅方向に平行に延在している。
この車体前部構造10によれば、第1ブラケット11の前側の側壁16に対する衝撃緩和ブラケット2の取り付けが容易になる。
また、車体前部構造10では、アッパビーム4側から入力される衝撃荷重が衝撃緩和ブラケット2を介して第1ブラケット11の前側の側壁16に伝達される。
この車体前部構造10によれば、アッパビーム4と第1ブラケット11の側壁16との間で効率よく、より確実に衝撃緩和ブラケット2を圧壊させることができる。前突時の衝撃荷重は効率よく緩和される。
【0037】
また、車体前部構造10の第2ブラケット12は、第1ブラケット11よりも脆弱となっている。
この車体前部構造10は、第2ブラケット12と比べて相対的に強度及び剛性が高い第1ブラケット11において振動の固有値が高められる。所定の閾値を超える衝撃荷重が入力して第1ブラケット11が後方に変位すると、第1ブラケット11よりも脆弱な第2ブラケット12は早期に破壊される。すなわち、車体前部構造10のブラケット1は、共振固有値の高い第1ブラケット11に担保されてエアバッグセンサ3に対する耐ノイズ性(耐振動性)に優れる。したがって、この車体前部構造10によれば、エアバッグの誤作動を防止してエアバッグの展開に必要な衝突情報をエアバッグセンサ3にて精度よく早期に検知することができる。
【0038】
また、車体前部構造10の第2ブラケット12は、車体前方に向かうほど車幅方向に拡がっている。
この車体前部構造10によれば、第1ブラケット11に対する第2ブラケット12の接合部19の面積が大きくなるとともに、第2ブラケット12は、車両後方に向かうほど車幅方向に細くなる。これにより第2ブラケット12は、第1ブラケット11に入力された荷重の受容量(荷重受容量)が増大するとともに、ロアメンバに対する荷重伝達性が向上する。車体前部構造10は、ブラケット1に入力した荷重を効率よくロアメンバ6へと分散させることができる。
【0039】
また、車体前部構造10においては、衝撃緩和ブラケット2の締結孔24と、第1ブラケット11の側壁16と補強部材13aとを貫通する孔Hとが前後方向に重なるように形成されている。
この車体前部構造10においては前突時に衝撃緩和ブラケット2が後退する際に、締結孔24に締結されたボルトBの後端が第1ブラケット11の孔Hに入り込む。このような車体前部構造10によれば、衝撃緩和ブラケット2の後退ストロークを長く確保することができ、衝撃緩和ブラケットを効率よく圧壊させることができる。前突時の衝撃荷重は効率よく緩和される。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態の車体前部構造10においては、ブラケット1(第1ブラケット11)はコ字状断面を有するように形成されている。ただし、ブラケット1(第1ブラケット11)は、例えば矩形の閉断面を有するように形成することもできる。
そして、車体前部構造10においては、ブラケット1(第1ブラケット11)が少なくとも側壁16と、下面を形成する下壁とを有するように形成されている場合には、衝撃緩和ブラケット2は、この下面に接合されるフランジを、フランジ25に代えて、又はフランジ25とともに有する構成とすることもできる。
【0041】
また、車体前部構造10におけるエアバッグセンサ3及びセンサブラケット31の取付先は、ブラケット11に限定するものではない。エアバッグセンサ3及びセンサブラケット31は、衝撃緩和ブラケット2と直接又は間接的に接続されて、衝撃緩和ブラケット2よりも後に荷重が伝達される部材又は場所に取り付けられる構成とすることもできる。なお、第1ブラケット11にエアバッグセンサ3及びセンサブラケット31が取り付けられた構成によれば、衝撃緩和ブラケット2の近くにエアバッグセンサ3及びセンサブラケット31が配置されるので、より精度よく衝撃荷重を感知することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ブラケット
2 衝撃緩和ブラケット
3 エアバッグセンサ
4 アッパビーム
5 バルクヘッド
6 ロアメンバ
8 ヘッドライト
10 車体前部構造
11 第1ブラケット
12 第2ブラケット
24 締結孔(衝撃緩和ブラケットの孔)
25 衝撃緩和ブラケットのフランジ(一方のフランジ部)
26 衝撃緩和ブラケットのフランジ(他方のフランジ部)
H 第1ブラケットの孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8