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特許7571181付加製造プロセス用の高品質球状粉末及びその形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】付加製造プロセス用の高品質球状粉末及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/14 20060101AFI20241015BHJP
   B22F 1/065 20220101ALI20241015BHJP
   B22F 10/34 20210101ALI20241015BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241015BHJP
【FI】
B22F9/14 Z
B22F1/065
B22F10/34
B33Y10/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023045898
(22)【出願日】2023-03-22
(62)【分割の表示】P 2021169478の分割
【原出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2023082045
(43)【公開日】2023-06-13
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】62/551,981
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/962,216
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ケルカー、ラジェンドラ、マドフカー
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-023873(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105689728(CN,A)
【文献】特開2017-110294(JP,A)
【文献】特開2006-138012(JP,A)
【文献】特開2001-320097(JP,A)
【文献】特開2006-274399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-12/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不規則な非球形の形状を有し粒子上に酸化層(oxidized layer)を有するフィードストック粒子のフィードストック粉末から高品質の球状化粉末を形成する方法であって:
誘導コイルを用いてプラズマチャンバー内にプラズマ場を形成すること、
前記フィードストック粒子が部分的にのみ溶融し前記フィードストック粒子の各表面が軟化して前記フィードストック粒子よりも球形に近い形状を有する処理粒子の処理粉末を形成するように、前記フィードストック粉末に前記プラズマ場を通過させること、ここで、前記プラズマ場は水に曝されていたことによる前記フィードストック粒子の表面上の前記酸化層と反応する一次ガス及び還元性ガスを含前記フィードストック粉末に前記プラズマ場を通過させることは前記フィードストック粒子から前記酸化層を除去する、並びに
前記処理粒子の処理粉末を洗浄すること、を含み、
前記処理粒子には酸素が無視できるほど微量に存在するか完全に存在せず、前記処理粒子は前記フィードストック粒子の平均粒子サイズの10%~90%の平均粒子サイズを有し、前記処理粒子には、酸素が完全に存在しないか又は酸素が0モル%を超え0.01モル%以下の量で存在する、
方法。
【請求項2】
前記フィードストック粉末は、水アトマイズ法、機械的粉砕若しくは細砕、ガスアトマイズ法、及び/又はプラズマアトマイズ法から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィードストック粒子上の前記酸化層は、前記フィードストック粒子を形成した水アトマイズプロセス中に水に曝されていた結果物である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィードストック粉末前記プラズマ場を通過させることは、前記フィードストック粉末を、前記フィードストック粒子の表面が少なくとも部分的に蒸発してより球形に近い形状を形成するように、前記プラズマ場に導入すること、
を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記還元性ガスは、水素、一酸化炭素、又はこれらの混合物を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記フィードストック粒子は、150μmの最大サイズを有する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記フィードストック粒子は、10μm~150μmの平均サイズを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記フィードストック粒子は、金属材料を含む、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記金属材料は、純金属、鉄合金、アルミニウム合金、ニッケル合金、クロム合金、ニッケル系超合金、鉄系超合金、コバルト系超合金、又はこれらの混合物を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記プラズマ場内で、炭素粒子が前記フィードストック粒子と混合される、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の方法により得られた前記洗浄後の処理粉末からコンポーネントを付加製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の情報
本出願は、参照により本明細書に取り込まれる、2017年8月30日に出願された「High Quality Spherical Powders for Additive Manufacturing Processes Along with Methods of Their Formation」と題する米国特許仮出願第62/551,981号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般に金属粉末フィードストックから高品質球状粉末を形成するシステム及び方法に関する。高品質球状粉末は、物体又はパーツの付加製造に特に適している。
【背景技術】
【0003】
付加製造プロセスは、除去製造法とは対照的に、一般に1又は複数の材料を蓄積させてネットシェイプ又はニアネットシェイプ(NNS)物体を作製することを含む。「付加製造」は工業標準用語であるが、自由形状造形、3D印刷、ラピッドプロトタイピング/ツーリング等を含む種々の付加製造用語で知られる種々の製造及びプロトタイピング技術を包含する。付加製造技術により、多種多様な材料から複雑なコンポーネントを作製することが可能である。一般に、自立型物体はコンピュータ支援設計(CAD)モデルから作製することができる。
【0004】
特定のタイプの付加製造プロセスでは、エネルギービーム、例えば電子ビーム又はレーザービーム等の電磁放射線を用いて粉末材料を焼結又は溶融し、粉末材料の粒子同士が接合された固体3次元物体を作製する。異なる材料系、例えばエンジニアリングプラスチック、熱可塑性エラストマー、金属、及びセラミックが用いられる。レーザー焼結又は溶融は、機能プロトタイプ及びツールの高速作製を行うための注目すべき付加製造プロセスでもある。用途としては、インベストメント鋳造用のパターン、射出成形及びダイキャスティング用の金属モールド、並びにサンドキャスティング用のモールド及びコアが含まれる。設計サイクルにおけるコミュニケーションを促進するためのプロトタイプ物体の作製及びコンセプトの検証が付加製造プロセスの他の一般的用途である。
【0005】
レーザー焼結は、レーザービームを用いた微細粉末の焼結又は溶融による3次元(3D)物体の製造を指すのに用いられる一般的な工業用語である。より正確には、焼結は、粉末材料の融点未満の温度で粉末の粒子を融合させる(塊にする)ものであり、溶融は、粉末の粒子を完全に溶融させて固体の均質な塊を形成するものである。レーザー焼結又はレーザー溶融に関連する物理的プロセスには、粉末材料への熱移動とそれに続く粉末材料の焼結又は溶融が含まれる。
【0006】
このプロセスでは、粉末材料の物理的及び化学的特性が、得られる物体の品質に影響を与えることがある。すなわち、付加製造により構築されたコンポーネントの性質は金属粉末そのものに依存し、粉末の品質が高いほど(例えば、より緻密で、より純粋で、より球形に近いほど)ふるまいが予測しやすくなり、その結果より良好なパーツが得られる。したがって、付加製造技術から形成されるコンポーネントには、とりわけガスタービン用及び/又は医療インプラント若しくは装置用のコンポーネントの製造に使用する場合に、高品質な球状粉末が求められる。
【0007】
金属源からの粉末作製方法には、(水素化物/二水素化物法、ボールミリング法、回転電極法、プラズマアトマイズ法のような他の技術も存在するが)ガスアトマイズ法及び水
アトマイズ法が主に含まれる。一般に、ガスアトマイズ法ではより球状に近く形状の揃った粒子が得られる一方、水アトマイズ法では不規則形状の粒子が得られる。更に、水中に酸素が存在するため、水アトマイズ法により形成された粒子の外側には酸化層が形成されることがある。今日では、水アトマイズ法から形成された粉末よりもガスアトマイズ法からの粉末の方が付加製造に好ましく、その理由はガスアトマイズ法から形成された粉末は形状がより規則的であり(例えば、より球状に近い)、粉末上に限られた酸化層しか存在しないためである。
【0008】
しかしながら、ガスアトマイズ法から形成される粉末は、水アトマイズ粉末よりも製造にずっと費用がかかる。従って、ガスアトマイズ粉末から形成されたコンポーネントはコストが高い。このため、粉末材料の物理的及び化学的特性の制御を維持しつつ、付加製造に多用化するために高品質粉末のコストを低減させることが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
態様及び利点が下記記載において部分的に示されるか、本明細書から明白であり得るか、或いは本発明の実施により理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一般に不規則形状を有するフィードストック粒子のフィードストック粉末から高品質粉末を形成する方法が提供される。ある実施形態では、当該方法は、フィードストック粉末をプラズマ場に曝し、フィードストック粒子よりも球形に近い形状を有する処理粒子の処理粉末を形成することを含む。プラズマ場に曝される前、フィードストック粒子は水に曝されていた結果として粒子上に酸化層を有している。プラズマ場に曝された後、処理粒子には実質的に酸化層が存在しない。
【0011】
ある実施形態では、フィードストック粉末は、水アトマイズ法、機械的粉砕若しくは細砕、ガスアトマイズ法、及び/又はプラズマアトマイズ法から形成されてもよい。例えば、フィードストック粒子上の酸化層は、フィードストック粒子を形成した水アトマイズプロセス中に水に曝されていた結果物であってもよいし、機械的細砕中に空気中の水蒸気に曝されていた結果物であってもよい。
【0012】
フィードストック粉末をプラズマ場に曝すために、上記方法は、フィードストック粉末を、フィードストック粒子の表面が溶融及び/又は蒸発してより球形に近い形状を形成するように、プラズマ場に導入することを含んでいてもよい。
【0013】
特定の実施形態では、プラズマ場は、水素、一酸化炭素、又はこれらの混合物など、フィードストック粒子上の酸化層と反応する還元性成分を含む。
【0014】
このような方法により、処理粒子は、フィードストック粒子の平均粒子サイズ未満の平均粒子サイズを有し得る。例えば、処理粒子は、フィードストック粒子の平均粒子サイズの約10%~約90%の平均粒子サイズを有していてもよい。
【0015】
フィードストック粒子は、純金属、鉄合金、アルミニウム合金、ニッケル合金、クロム合金、ニッケル系超合金、鉄系超合金、コバルト系超合金、又はこれらの混合物などの金属材料から形成されていてもよい。ある実施形態では、プラズマ場内で、炭素などの粒子合金化元素(particles an alloying element)がフィードストック粒子と混合されてもよい。
【0016】
ある実施形態では、高品質粉末を形成する方法は:フィードストック粉末を水アトマイ
ズ法によって形成すること、ここで、フィードストック粉末は不規則形状を有するフィードストック粒子を含み、フィードストック粒子は粒子上に酸化層を有する;及び、その後、フィードストック粉末をプラズマ場に曝し、フィードストック粒子の表面を溶融及び/又は蒸発させて、これにより、フィードストック粒子よりも球形に近い形状を有する処理粒子の処理粉末を形成すること、を含んでいてもよい。プラズマ場は、処理粒子に酸化層が実質的に存在しないように、フィードストック粒子上の酸化層と反応する還元性成分(例えば、水素、一酸化炭素、又はこれらの混合物)を含んでいてもよい。ある特定の実施形態では、処理粒子は、フィードストック粒子の平均粒子サイズ未満の平均粒子サイズを有する。
【0017】
上記処理粒子を含む処理粉末はまた、処理粉末からコンポーネントを付加製造する方法と共に本明細書において一般に提供される。
【0018】
これらの及び他の特徴、態様、並びに利点は、下記記載及び添付の特許請求の範囲を参照することにより更に理解が深まるであろう。本明細書に取り込まれ本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を示すものであり、本明細書と共に本発明のある特定の原理を説明する役割を有する。
【0019】
当業者に対する、本発明の最良の形態を含む充分かつ実施可能な程度の開示を添付の図面を参照して以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、粉末材料の性質を改良し付加製造法により適したものにし得る例示的な粉末材料のプラズマ球状化装置を示す。
【0021】
図2A図2Aは、実施例に係る例示的なフィードストック粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0022】
図2B図2Bは、図2Aの例示的なフィードストック粉末の拡大SEM画像である。
【0023】
図3A図3Aは、実施例に係る、図2A及び図2Bに示す洗浄前フィードストック粉末から形成された、例示的な球状化粉末のSEM画像である。
【0024】
図3B図3Bは、図3Aの例示的な球状化粉末の拡大SEM画像である。
【0025】
図4A図4Aは、実施例に係る、図3A及び図3Bに示す例示的な球状化粉末の洗浄後のSEM画像である。
【0026】
図4B図4Bは、図4Aの例示的な洗浄後球状化粉末の拡大SEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書及び図面において繰り返し用いられる符号は、本発明における同様の又は類似の特徴又は要素を表すことを意図している。
【0028】
以下、本発明の実施形態をより具体的に説明する。それらのうち1又は複数の例を図面に示すが、各例は本発明を説明するための手段として示されるものであり、本発明を限定するものではない。実際に、当業者であれば、本発明の範囲又は趣旨から逸脱しない限りにおいて、本発明を種々改変及び変更することができることは明らかである。例えば、ある実施形態の一部として示される又は記載される特徴を別の実施形態と一緒に用いて、更に別の実施形態を得ることができる。したがって、本発明は、そのような改変及び変更を
、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内に含まれるものとして包含することを意図している。
【0029】
本明細書に記載の「第一の」、「第二の」、及び「第三の」との用語は、あるコンポーネントを別のコンポーネントと区別するために用いられ得る互いに置き換え可能な用語であり、個々のコンポーネントの位置又は重要性を示すことを意図するものではない。
【0030】
「上流」及び「下流」との用語は、流体経路における流体流に対する相対的方向を意味する。例えば、「上流」とは流体流が流れて来る方向を意味し、「下流」とは流体流が流れて行く方向を意味する。
【0031】
低品質粉末源(すなわち、フィードストック粉末)から高品質粉末材料(すなわち、処理粉末)を作製するための方法が、当該方法を実施するための装置及び得られる粒子と共に一般に提供される。ある実施形態では、水アトマイズ法から形成され不規則形状を有する粉末(水アトマイズ法から形成されたものなど)がより高品質な粉末となる。ある実施形態では、処理粉末の処理粒子は、不規則で非球形の形状であり得るフィードストック粉末のフィードストック粒子よりも球形に近い形状を有することができる。更に、フィードストック粉末上に存在する任意の酸化層は、(例えば、化学的還元によって)除去することができる。ある実施形態では、処理粉末には、その表面上に実質的に酸化層が全く存在しないことがある。本明細書において、「実質的に存在しない」との用語は、無視できるほど微量に存在することを意味し、完全に存在しないことも包含する(例えば、0モル%~0.01モル%)。
【0032】
ある実施形態では、処理粉末は、高品質粉末を作製するためにプラズマ球状化される(例えば、曝される)。図1に、プラズマ球状化装置10の概略図を示す。(複数のフィードストック粒子13から構成される)フィードストック粉末12は一般に、処理ガス16(物質の状態に関わらず、プラズマガスとも称される)と共にプラズマチャンバー14に導入される。プラズマ場18は、プラズマガス16をガス状態からプラズマ状態に変化させるのに充分な温度まで加熱することにより、プラズマチャンバー14内に形成してもよい。例えば、誘導コイルなどの加熱素子20がプラズマチャンバー14内に含まれていてもよい。
【0033】
上述のように、フィードストック粒子13は、プラズマチャンバー14に導入される際に不規則形状(例えば、非球形状)を有していてもよい。ある実施形態では、フィードストック粒子13は、約150マイクロメートル(μm)の最大サイズを有する。例えば、フィードストック粒子13は、約10μm~約150μm(例えば、約50μm~約100μm)の平均サイズを有していてもよい。
【0034】
一般に、フィードストック粉末12は任意の金属材料であってもよい。ある実施形態では、金属材料は、純金属、鉄合金、アルミニウム合金、ニッケル合金、クロム合金、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、鉄系超合金、又はこれらの混合物を含んでいてもよいが、これらに限定されない。特定の実施形態では、プラズマガス16に曝す前又は曝している間に、合金化元素をフィードストック粉末12と混合してもよい。このようにして、得られる処理粉末の化学組成を調節してもよい。例えば、ある特定の実施形態では、プラズマ場内で、炭素粒子をフィードストック粒子と混合してもよい。
【0035】
フィードストック粉末12がプラズマ状態のプラズマガス16を含むプラズマ場18を進むにつれて、フィードストック粒子13の表面がプラズマ場18を含む溶融ゾーン22内で溶融又は蒸発する。しかしながら、フィードストック粒子13が完全に溶融及び/又は蒸発するわけではなく、寧ろフィードストック粒子13の表面が溶融/軟化して、より
小さくなりながらより規則的な形状(例えば、より球形に近い形状)に変わっていくものと考えられる;但し、いかなる特定の理論によって拘束されるものではない。このように、フィードストック粒子13の表面が少なくとも部分的に溶融ゾーン22内で溶融/軟化する。
【0036】
ある実施形態では、処理ガス16(すなわち、プラズマガス)は、水素、一酸化炭素、又はこれらの混合物などの還元性ガスを含む。還元性ガスは、フィードストック粒子13の表面の、酸化クロム、酸化鉄等の形態であり得る任意の酸化層と反応することが可能である。還元性ガスは、得られる処理粉末24(複数の処理粒子25の形態)の粒子上に酸化層が実質的に存在しないように、酸化物と反応してそれを粒子表面から除去することが可能である。このように、ある特定の実施形態では、還元性成分は、得られる処理粒子上に実質的に酸化層が存在しないように、フィードストック粒子の表面上の任意の酸化層を還元する。
【0037】
プラズマ球状化プロセスにより、フィードストック粒子13のサイズを、得られる処理粒子25がフィードストック粒子13の平均粒子サイズ未満の平均粒子サイズを有するように、小さくすることができる。ある実施形態では、得られる処理粒子25は、フィードストック粒子13の平均粒子サイズの約10%~約90%の平均粒子サイズを有する。ある特定の実施形態では、処理粒子25は、約150μmの最大サイズ(例えば、約10μm~約150μmの平均サイズ)を有する。特定の実施形態では、処理粒子25は、約50μmの最大サイズ(例えば、約10μm~約50μmの平均サイズ)を有する。
【0038】
このような技術は粉末を再コンディショニングするのに用いることもできる。
【0039】
上記のように、フィードストック粉末12のプラズマ球状化によりフィードストック粉末12の性質が改良され、改良粉末材料(すなわち、処理粉末24)は付加製造法に更に適したものとなり得る。本明細書において、「付加製造される」或いは「付加製造技術又はプロセス」という用語は、材料の層がそれぞれの上に連続的に提供されて、3次元コンポーネントを1層ごとに「積層造形」することを一般に指す。連続的な層は通常相互に融合して、種々の一体サブコンポーネントを有することができるモノリシックコンポーネントを形成する。本明細書において、付加製造技術を、ポイントごとに、又は層ごとに、典型的には垂直方向に物体を造形することにより、複雑な物体の製造を可能とするように記載したが、他の製造方法も可能であって、かつ本主題の範囲内である。例えば、本明細書における考察は材料の付加による連続的な層の形成に関するが、当業者であれば、いかなる付加製造法又は製造技術を用いて本明細書に開示の方法及び構造を実施してもよいことが理解される。例えば、本発明の実施形態では、層付加プロセス、層除去プロセス、又はハイブリッドプロセスを用いてもよい。
【0040】
本開示に従う適切な付加製造法には、例えば、熱溶解積層法(FDM)、選択的レーザー焼結(SLS)、インクジェット、レーザージェット、及びバインダージェットなどによる3D印刷、ステレオリソグラフィー(SLA)、直接選択的レーザー焼結(DSLS)、電子ビーム焼結(EBS)、電子ビーム溶融(EBM)、レーザー加工ネットシェイピング(LENS)、レーザーネットシェイプ製造(LNSM)、直接金属堆積(DMD)、デジタルライトプロセス(DLP)、直接選択的レーザー溶融(DSLM)、選択的レーザー溶融(SLM)、直接金属レーザー溶融(DMLM)、及び他の既知のプロセスが含まれる。
【0041】
本明細書に記載の付加製造プロセスは、任意の適切な材料を用いるコンポーネントの形成に使用することが可能である。例えば、材料は、プラスチック、金属、コンクリート、セラミック、ポリマー、エポキシ、フォトポリマー樹脂、又は固体、液体、粉末、シート
材料、ワイヤ又は他の任意の適切な形態であり得る他の任意の適切な材料、或いはこれらの組み合わせであってもよい。より具体的には、本主題の例示的な実施形態によれば、本明細書に記載の付加製造されるコンポーネントは、これらに限るものではないが、純金属、鉄合金、アルミニウム合金、ニッケル合金、クロム合金、及びニッケル系、鉄系、又はコバルト系の超合金(例えば、Special Metals Corporation社から商品名Inconel(登録商標)として入手可能)を含む材料で、部分的又は全体として、或いはその何らかの組み合わせで形成してもよい。これらの材料は、本明細書に記載の付加製造プロセスでの使用に適する材料の例であり、一般に「付加材料」と称されることがある。
【0042】
また、種々の材料及びこれらの材料を接合する方法が使用可能であり、かつ本開示の範囲内にあると考え得ることを当業者は理解するであろう。本明細書において、「融合する(fusing)」ということは、上記材料の任意のものの接合層を作製するための任意の適切なプロセスを指すことが可能である。例えば、物体がポリマーから作製される場合、融合とはポリマー材料間の熱硬化性結合を形成することを指すことが可能である。物体がエポキシの場合、架橋プロセスによって接合が形成されてもよい。材料がセラミックの場合、焼結プロセスによって接合が形成されてもよい。材料が粉末金属の場合、溶融又は焼結プロセスによって接合が形成されてもよい。当業者であれば、付加製造によってコンポーネントを作製するために他の材料融合方法が可能であり、本開示の主題はこれらの方法により実行可能であることを理解するであろう。
【0043】
また、本明細書に記載の付加製造プロセスは、複数の材料から単一のコンポーネントを形成することを可能とする。したがって、本明細書に記載のコンポーネントは上記材料の任意の適切な混合物から形成されてもよい。例えば、コンポーネントは、異なる材料、プロセス、及び/又は異なる付加製造装置を用いて形成される、複数の層、セグメント、又はパーツを含んでいてもよい。このようにして、任意の特定の用途の要求に応じるための、異なる材料及び材料特性を有するコンポーネントを構築することができる。更に、本明細書に記載のコンポーネントは付加製造プロセスによって全体が構築されるが、別の選択肢としての実施形態では、コンポーネントの全体又は一部が、鋳造、機械加工、及び/又は他の任意の適切な製造プロセスによって形成されてもよいことを理解されたい。実際に、材料及び製造方法の任意の適切な組み合わせによりコンポーネントを形成することが可能である。
【0044】
次に、例示的な付加製造プロセスについて説明する。付加製造プロセスでは、コンポーネントの3次元(3D)情報、例えば3次元コンピュータモデルを用いて、コンポーネントが製造される。したがって、コンポーネントの3次元設計モデルを製造前に画定してもよい。これに関して、コンポーネントのモデル又はプロトタイプをスキャンして、コンポーネントの3次元情報を決定してもよい。別の例として、適切なコンピュータ支援設計(CAD)プログラムを用いてコンポーネントのモデルを構築し、コンポーネントの3次元設計モデルを画定してもよい。
【0045】
設計モデルには、コンポーネントの外表面及び内表面の両方を含む、コンポーネントの全体構成の3D数値座標が含まれ得る。例えば、設計モデルは、本体、表面、及び/又は開口部、支持構造などの内部経路を定め得る。ある例示的な実施形態では、3次元設計モデルは、例えばコンポーネントの中心軸(例えば、垂直軸)又は他の任意の適切な軸に沿った、複数の切片又はセグメントに変換される。各切片は、所定の高さの切片に対するコンポーネントの薄い断面を画定することが可能である。連続する断面切片が全体として3Dコンポーネントを形成する。次にコンポーネントは、完了するまで切片ごと又は層ごとに「積層造形」される。
【0046】
このようにして、本明細書に記載のコンポーネントが付加プロセス
を用いて製造され、より具体的には、例えばレーザーエネルギー又は熱を用いてプラスチックを融合又は重合することにより、或いは金属粉末を焼結又は溶融することにより、各層が連続的に形成される。例えば、特定のタイプの付加製造プロセスでは、例えば電子ビーム又はレーザービーム等の電磁放射線等のエネルギービームを用いて粉末材料を焼結又は溶融してもよい。任意の適切なレーザー及びレーザーパラメータを、出力、レーザービームのスポットサイズ、及び走査速度に関する事項を考慮しながら、使用してもよい。造形材料は、特に高温下での強度、耐久性、及び耐用寿命の向上のために選択された任意の適切な粉末又は材料によって形成されてもよい。
【0047】
各連続層は、例えば約10μm~200μmであってよいが、厚さは種々のパラメータに基づいて選択することが可能であり、別の選択肢としての実施形態によれば任意の適切なサイズであってもよい。したがって、上述の付加形成法を用いることで、本明細書に記載のコンポーネントは、付加形成プロセス中に利用される関連する粉末層の1層の厚さ分、例えば10μm程度に薄い断面を有していてもよい。
【0048】
更に、付加プロセスを用いることで、コンポーネントの表面仕上げ及びフィーチャを用途に応じた必要性に従い変化させることができる。例えば、表面仕上げは、付加プロセスの過程において、特にパーツ表面に対応する断面層の外面において適切なレーザースキャンパラメータ(例えば、レーザー出力、スキャン速度、レーザー集光スポットサイズなど)を選択することによって調節(例えば、より平滑に又はより粗く)することができる。例えば、レーザースキャン速度を上昇させる又は形成される溶融プールのサイズを小さくすることによってより粗い仕上げを達成することができ、レーザースキャン速度を低下させる又は形成される溶融プールのサイズの大きくすることによってより平滑な仕上げを達成することができる。また、スキャンパターン及び/又はレーザー出力を変更して選択された領域の表面仕上げを変えてもよい。
【0049】
特に、例示的な実施形態において、本明細書に記載のコンポーネントのいくつかの特徴は、製造上の制約のために以前では実現できなかった。しかし、本発明者らは、付加製造技術の今日の進歩を有利に活用して、一般的に本開示に係るコンポーネントの例示的な実施形態を開発した。本開示は、一般的にコンポーネントを形成するための付加製造の使用に限定されるものではないが、付加製造は、製造の容易さ、コストの削減、精度の向上などを含む種々の製造上の利点を提供する。
【0050】
これに関して、付加製造法を利用することで、マルチパーツコンポーネントでも単一の連続金属片として形成し得て、既知の設計に比べてサブコンポーネント及び/又は接合部が少なくなり得る。付加製造によってマルチパーツコンポーネントを一体形成することは、全体の組み立てプロセスを有利に改善できる可能性がある。例えば、一体形成により、組み立てを必要とする個別パーツ点数が減り、関連する時間と全体の組み立てコストが削減される。また、例えば、漏洩、個別パーツ間の接合品質、及び全体性能に関する既存の問題点を有利に低減できる可能性がある。
【0051】
また、上記の付加製造方法は、本明細書に記載のコンポーネントのはるかに複雑で入り組んだ形状及び輪郭を可能とする。例えば、コンポーネントは、付加製造された薄層及び独自の流体経路を一体装着フィーチャと共に含んでいてもよい。更に、付加製造プロセスにより、コンポーネントの異なる部分が異なる性能特性を示すように、異なる材料を有する単一コンポーネントを製造することも可能となる。連続的な、付加的な性質を有する製造プロセスは、これらの新規フィーチャの構築を可能とする。その結果、本明細書に記載のコンポーネントは、向上した機能性及び信頼性を有し得る。
【実施例
【0052】
実施例として、水アトマイズ粉末は、サイズが-325メッシュ/15ミクロンの品名316粉末のものを購入した。この水アトマイズ粉末は鉄系合金である。水アトマイズ粉末は、2.75(g/cm)の見掛け密度を有し、酸素含有量が0.164%(重量)、窒素含有量が0.047%(重量%)、水素含有量が0.001%(重量%)であることが分かった。任意の処理を行う前の水アトマイズ粉末は、表1に示す粒子サイズ分布を有することが分かった。
【0053】
【表1】


【0054】
図2A及び図2Bは、任意の処理を行う前の水アトマイズ粉末のSEM画像を示す。ここに示されるように、水アトマイズ粉末は様々なサイズ及び形状の粒子を含む。
【0055】
次に、一次ガスとしてアルゴン、二次ガスとして水素を用いて水アトマイズ粉末を球状化した。一次ガスとしてアルゴン、二次ガスとしてヘリウム及び窒素を用いて他の実験も行った。球状化の結果、粉末中により均一なサイズ及び形状の粒子が得られたことが分かった。
【0056】
図3A及び図3Bは、一次ガスとしてアルゴン、二次ガスとして水素を用いて球状化した後の球状化粉末の画像を示す。
【0057】
続いて、工業用洗浄ユニットを用いて球状化粉末を洗浄した。図4A及び図4Bは球状化粉末の画像を示す。ここに見られるように、球状化及び洗浄プロセス後の粉末は、比較的純粋(clean)で均一な粒子により構成されている。
【0058】
球状化粉末は、酸素含有量が0.057%(重量%)、窒素含有量が0.009%(重量%)、水素含有量が0.0007%(重量%)であることが分かった。したがって、球状化粉末では酸素、窒素、及び水素の含有量が著しく低減されていた。
【0059】
表2は、球状化及び洗浄後の粒子サイズ分布を示す。
【0060】
【表2】


【0061】
結論として、水アトマイズ粉末の球状化が奏功し、不規則形状及び高酸素含有量という主要な課題を両方とも解決した。
【0062】
この明細書は、最良の形態を含む本発明を開示するための、また当業者に任意のデバイス又はシステムの作製と使用、及び組み込まれた任意の方法の遂行を含む、本発明の実行を可能とさせるための、実施例を使用する。本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が思いつく他の実施例も含み得る。そのような他の実施例は、もしそれらが請求項の文字通りの言葉に違わない構造要素を有する場合、又は請求項の文字通りの言葉からあまり差異のない、等価な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあることが意図されている。
[付記]
<1>
不規則形状を有するフィードストック粒子のフィードストック粉末から高品質粉末を形成する方法であって:
フィードストック粉末をプラズマ場に曝し、フィードストック粒子よりも球形に近い形状を有する処理粒子の処理粉末を形成すること、を含み、
前記フィードストック粒子は水に曝されていた結果として前記粒子上に酸化層を有し、前記処理粒子には実質的に酸化層が存在しない、
方法。
<2>
前記フィードストック粉末は、水アトマイズ法、機械的粉砕若しくは細砕、ガスアトマイズ法、及び/又はプラズマアトマイズ法から形成される、<1>に記載の方法。
<3>
前記フィードストック粒子上の前記酸化層は、前記フィードストック粒子を形成した水アトマイズプロセス中に水に曝されていた結果物である、<1>に記載の方法。
<4>
前記フィードストック粉末を前記プラズマ場に曝すことは、前記フィードストック粉末を、前記フィードストック粒子の表面が少なくとも部分的に溶融又は蒸発してより球形に近い形状を形成するように、前記プラズマ場に導入すること、
を含む、<1>に記載の方法。
<5>
前記プラズマ場は、前記フィードストック粒子上の前記酸化層と反応する還元性成分を含む、<4>に記載の方法。
<6>
前記還元性成分は、水素、一酸化炭素、又はこれらの混合物を含む、<5>に記載の方
法。
<7>
前記フィードストック粒子は、約150μmの最大サイズを有する、<1>に記載の方法。
<8>
前記フィードストック粒子は、約10μm~約150μmの平均サイズを有する、<7>に記載の方法。
<9>
前記フィードストック粒子は、約50μm~約100μmの平均サイズを有する、<8>に記載の方法。
<10>
前記処理粒子は、前記フィードストック粒子の平均粒子サイズ未満の平均粒子サイズを有する、<1>に記載の方法。
<11>
前記処理粒子は、前記フィードストック粒子の平均粒子サイズの約10%~約90%の平均粒子サイズを有する、<1>に記載の方法。
<12>
前記フィードストック粒子は、金属材料を含む、<1>に記載の方法。
<13>
前記金属材料は、純金属、鉄合金、アルミニウム合金、ニッケル合金、クロム合金、ニッケル系超合金、鉄系超合金、コバルト系超合金、又はこれらの混合物を含む、<12>に記載の方法。
<14>
前記プラズマ場内で、炭素粒子が前記フィードストック粒子と混合される、<1>に記載の方法。
<15>
<1>に記載の方法から形成された前記処理粒子を含む処理粉末。
<16>
<15>に記載の処理粉末からコンポーネントを付加製造する方法。
<17>
高品質粉末を形成する方法であって:
フィードストック粉末を水アトマイズ法によって形成すること、ここで、前記フィードストック粉末は不規則形状を有するフィードストック粒子を含み、前記フィードストック粒子は前記粒子上に酸化層を有する;及び、
その後、前記フィードストック粉末をプラズマ場に曝し、前記フィードストック粒子の表面を少なくとも部分的に溶融又は蒸発させて、これにより、前記フィードストック粒子よりも球形に近い形状を有する処理粒子の処理粉末を形成すること、
を含み、
前記プラズマ場は、前記処理粒子に酸化層が実質的に存在しないように、前記フィードストック粒子上の前記酸化層と反応する還元性成分を含む、
方法。
<18>
前記還元性成分は、水素、一酸化炭素、又はこれらの混合物を含む、<17>に記載の方法。
<19>
前記処理粒子は、前記フィードストック粒子の平均粒子サイズ未満の平均粒子サイズを有する、<17>に記載の方法。
<20>
前記フィードストック粒子は金属材料を含み、前記プラズマ場内で、炭素粒子が前記フィードストック粒子と混合される、<1>に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B