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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】制御方法、制御装置、及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/27 20190101AFI20241015BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20241015BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241015BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20241015BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20241015BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241015BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20241015BHJP
【FI】
B60L58/27
B60H1/22
B60L3/00 S
H01M10/615
H01M10/633
H01M10/625
H01M10/6571
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023052090
(22)【出願日】2023-03-28
(65)【公開番号】P2024140766
(43)【公開日】2024-10-10
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】大垣 徹
(72)【発明者】
【氏名】紀 志築
(72)【発明者】
【氏名】谷 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 和也
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-013726(JP,A)
【文献】特開2019-215139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/27
B60H 1/22
B60L 3/00
H01M 10/615
H01M 10/633
H01M 10/625
H01M 10/6571
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、前記バッテリを加温可能な加温装置と、前記バッテリの廃熱を利用して車室を暖房可能な空調装置と、を備える車両を制御するコンピュータが行う制御方法であって、
前記コンピュータは、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する際の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記車両が前記充電設備に到着する前から前記加温装置により前記バッテリを加温する予加熱制御と、
前記バッテリの温度が所定の廃熱回収温度となったことに基づいて、前記バッテリの廃熱を利用した前記空調装置による暖房を可能とする廃熱回収制御と、を実行可能に構成され、
前記コンピュータが、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行
前記コンピュータが、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行するか否かをユーザに選択させる、処理をさらに行い、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行う、制御方法。
【請求項2】
請求項に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって拒否された場合に、前記予加熱制御を実行せず、前記廃熱回収制御の実行を制限しない、
処理をさらに行う、制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも低い場合に、ユーザへの通知を行わずに前記予加熱制御を実行する、
処理をさらに行う、制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも低い場合に、前記廃熱回収制御を実行し、当該廃熱回収制御後に前記予加熱制御を実行する、
処理をさらに行う、制御方法。
【請求項5】
バッテリと、前記バッテリを加温可能な加温装置と、前記バッテリの廃熱を利用して車室を暖房可能な空調装置と、を備える車両を制御するコンピュータが行う制御方法であって、
前記コンピュータは、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する際の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記車両が前記充電設備に到着する前から前記加温装置により前記バッテリを加温する予加熱制御と、
前記バッテリの温度が所定の廃熱回収温度となったことに基づいて、前記バッテリの廃熱を利用した前記空調装置による暖房を可能とする廃熱回収制御と、を実行可能に構成され、
前記コンピュータが、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行い、
前記コンピュータが、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも低い場合に、前記予加熱制御を実行するかをユーザに選択させる、処理をさらに行い、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合に、前記廃熱回収制御を実行し、当該廃熱回収制御後に前記予加熱制御を実行する、
処理を行う、制御方法。
【請求項6】
請求項に記載の制御方法であって、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって拒否された場合に、前記廃熱回収制御を実行し、前記予加熱制御の実行を抑制する、
処理をさらに行う、制御方法。
【請求項7】
請求項1又は2、又はからのいずれか1項に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する前に前記充電設備における前記バッテリの充電時間の推定値をユーザに通知する、
処理をさらに行う、制御方法。
【請求項8】
バッテリと、前記バッテリを加温可能な加温装置と、前記バッテリの廃熱を利用して車室を暖房可能な空調装置と、を備える車両を制御する制御装置であって、
前記制御装置は、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する際の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記車両が前記充電設備に到着する前から前記加温装置により前記バッテリを加温する予加熱制御と、
前記バッテリの温度が所定の廃熱回収温度となったことに基づいて、前記バッテリの廃熱を利用した前記空調装置による暖房を可能とする廃熱回収制御と、を実行可能に構成され、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行
前記制御装置は、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行するか否かをユーザに選択させる、処理をさらに行い、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行う、制御装置。
【請求項9】
バッテリと、前記バッテリを加温可能な加温装置と、前記バッテリの廃熱を利用して車室を暖房可能な空調装置と、を備える車両を制御する制御装置であって、
前記制御装置は、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する際の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記車両が前記充電設備に到着する前から前記加温装置により前記バッテリを加温する予加熱制御と、
前記バッテリの温度が所定の廃熱回収温度となったことに基づいて、前記バッテリの廃熱を利用した前記空調装置による暖房を可能とする廃熱回収制御と、を実行可能に構成され、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行い、
前記制御装置は、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも低い場合に、前記予加熱制御を実行するかをユーザに選択させる、処理をさらに行い、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合に、前記廃熱回収制御を実行し、当該廃熱回収制御後に前記予加熱制御を実行する、
処理を行う、制御装置。
【請求項10】
バッテリと、前記バッテリを加温可能な加温装置と、前記バッテリの廃熱を利用して車室を暖房可能な空調装置と、制御装置と、を備える車両であって、
前記制御装置は、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する際の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記車両が前記充電設備に到着する前から前記加温装置により前記バッテリを加温する予加熱制御と、
前記バッテリの温度が所定の廃熱回収温度となったことに基づいて、前記バッテリの廃熱を利用した前記空調装置による暖房を可能とする廃熱回収制御と、を実行可能に構成され、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行
前記制御装置は、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行するか否かをユーザに選択させる、処理をさらに行い、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行う、車両。
【請求項11】
バッテリと、前記バッテリを加温可能な加温装置と、前記バッテリの廃熱を利用して車室を暖房可能な空調装置と、制御装置と、を備える車両であって、
前記制御装置は、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する際の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記車両が前記充電設備に到着する前から前記加温装置により前記バッテリを加温する予加熱制御と、
前記バッテリの温度が所定の廃熱回収温度となったことに基づいて、前記バッテリの廃熱を利用した前記空調装置による暖房を可能とする廃熱回収制御と、を実行可能に構成され、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行い、
前記制御装置は、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも低い場合に、前記予加熱制御を実行するかをユーザに選択させる、処理をさらに行い、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合に、前記廃熱回収制御を実行し、当該廃熱回収制御後に前記予加熱制御を実行する、
処理を行う、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御方法、制御装置、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の気候変動に対する具体的な対策として、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化している。自動車等の車両においても、CO2排出量の削減やエネルギー効率の向上が要求され、駆動源の電動化が進んでいる。例えば、駆動輪を駆動する駆動源としてのモータ(「トラクションモータ」とも称される)と、このモータに電力を供給する電源としてのバッテリとを備える電気自動車が開発されている。
【0003】
バッテリの充電時には、バッテリが適切な温度であることが望まれる。例えば、下記特許文献1には、到達可能充電ステーションにおけるバッテリの充電が必要であると判断された場合に、電動車両が当該到達可能充電ステーションに到着した時点におけるバッテリの温度が所定の充電対応温度範囲内となるように、バッテリ温度調節部を作動させる事前温度調節処理を実行するようにした技術が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、電池冷却器で冷却水が電池から吸熱し、電池から吸熱した冷却水がヒータコアで車室内への送風空気を加熱することで、電池の廃熱を回収して車室内の暖房に利用できるようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-014301号公報
【文献】特開2013-230805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術にあっては、車両のエネルギー効率の向上を図りつつも、充電設備におけるバッテリの充電時間が長期化するのを抑制する観点から、改善の余地があった。
【0007】
本発明は、車両のエネルギー効率の向上を図りつつも、充電設備におけるバッテリの充電時間が長期化するのを抑制可能な制御方法、制御装置、及び車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
バッテリと、前記バッテリを加温可能な加温装置と、前記バッテリの廃熱を利用して車室を暖房可能な空調装置と、を備える車両を制御するコンピュータが行う制御方法であって、
前記コンピュータは、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する際の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記車両が前記充電設備に到着する前から前記加温装置により前記バッテリを加温する予加熱制御と、
前記バッテリの温度が所定の廃熱回収温度となったことに基づいて、前記バッテリの廃熱を利用した前記空調装置による暖房を可能とする廃熱回収制御と、を実行可能に構成され、
前記コンピュータが、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行
前記コンピュータが、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行するか否かをユーザに選択させる、処理をさらに行い、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行う、制御方法である。
また、本発明の他の一態様は、
バッテリと、前記バッテリを加温可能な加温装置と、前記バッテリの廃熱を利用して車室を暖房可能な空調装置と、を備える車両を制御するコンピュータが行う制御方法であって、
前記コンピュータは、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する際の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記車両が前記充電設備に到着する前から前記加温装置により前記バッテリを加温する予加熱制御と、
前記バッテリの温度が所定の廃熱回収温度となったことに基づいて、前記バッテリの廃熱を利用した前記空調装置による暖房を可能とする廃熱回収制御と、を実行可能に構成され、
前記コンピュータが、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行い、
前記コンピュータが、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも低い場合に、前記予加熱制御を実行するかをユーザに選択させる、処理をさらに行い、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合に、前記廃熱回収制御を実行し、当該廃熱回収制御後に前記予加熱制御を実行する、
処理を行う、制御方法である。
【0009】
また、本発明の他の一態様は、
バッテリと、前記バッテリを加温可能な加温装置と、前記バッテリの廃熱を利用して車室を暖房可能な空調装置と、を備える車両を制御する制御装置であって、
前記制御装置は、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する際の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記車両が前記充電設備に到着する前から前記加温装置により前記バッテリを加温する予加熱制御と、
前記バッテリの温度が所定の廃熱回収温度となったことに基づいて、前記バッテリの廃熱を利用した前記空調装置による暖房を可能とする廃熱回収制御と、を実行可能に構成され、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行
前記制御装置は、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行するか否かをユーザに選択させる、処理をさらに行い、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行う、制御装置である。
また、本発明の他の一態様は、
バッテリと、前記バッテリを加温可能な加温装置と、前記バッテリの廃熱を利用して車室を暖房可能な空調装置と、を備える車両を制御する制御装置であって、
前記制御装置は、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する際の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記車両が前記充電設備に到着する前から前記加温装置により前記バッテリを加温する予加熱制御と、
前記バッテリの温度が所定の廃熱回収温度となったことに基づいて、前記バッテリの廃熱を利用した前記空調装置による暖房を可能とする廃熱回収制御と、を実行可能に構成され、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行い、
前記制御装置は、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも低い場合に、前記予加熱制御を実行するかをユーザに選択させる、処理をさらに行い、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合に、前記廃熱回収制御を実行し、当該廃熱回収制御後に前記予加熱制御を実行する、
処理を行う、制御装置である。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、
バッテリと、前記バッテリを加温可能な加温装置と、前記バッテリの廃熱を利用して車室を暖房可能な空調装置と、制御装置と、を備える車両であって、
前記制御装置は、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する際の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記車両が前記充電設備に到着する前から前記加温装置により前記バッテリを加温する予加熱制御と、
前記バッテリの温度が所定の廃熱回収温度となったことに基づいて、前記バッテリの廃熱を利用した前記空調装置による暖房を可能とする廃熱回収制御と、を実行可能に構成され、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行
前記制御装置は、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行するか否かをユーザに選択させる、処理をさらに行い、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行う、車両である。
また、本発明の他の一態様は、
バッテリと、前記バッテリを加温可能な加温装置と、前記バッテリの廃熱を利用して車室を暖房可能な空調装置と、制御装置と、を備える車両であって、
前記制御装置は、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する際の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記車両が前記充電設備に到着する前から前記加温装置により前記バッテリを加温する予加熱制御と、
前記バッテリの温度が所定の廃熱回収温度となったことに基づいて、前記バッテリの廃熱を利用した前記空調装置による暖房を可能とする廃熱回収制御と、を実行可能に構成され、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行い、
前記制御装置は、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも低い場合に、前記予加熱制御を実行するかをユーザに選択させる、処理をさらに行い、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合に、前記廃熱回収制御を実行し、当該廃熱回収制御後に前記予加熱制御を実行する、
処理を行う、車両。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両のエネルギー効率の向上を図りつつも、充電設備におけるバッテリの充電時間が長期化するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車両Vの概略構成の一例を示すブロック図である。
図2】温調装置20の構成を示す図である。
図3】車室の暖房前において、バッテリBATに蓄えられる熱の流れを示す図である。
図4】バッテリ吸熱モードにおける車室の暖房時の熱の流れを示す図である。
図5】外気吸熱モードにおける車室の暖房時の熱の流れを示す図である。
図6】制御装置CTRによるバッテリBATの温度管理の一例を示す図である。
図7】予加熱制御を実行するか否かをユーザに選択させる選択画面Gの一例を示す図である。
図8】制御装置CTRが実行可能な制御パターンの一例を示す図である。
図9】制御装置CTRが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の制御方法、制御装置、及び車両の一実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、前後、左右、上下は、車両の乗員(例えば運転者)から見た方向に従い記載する。また、図面は、符号の向きに見るものとする。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、以下では、同一又は類似の要素には同一又は類似の符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化することがある。
【0014】
[車両]
本実施形態の車両Vは、例えば、プラグイン・ハイブリッド車や電気自動車等の電動車両であり、図1に示すように、充電ステーションや自宅等に設けられた外部電源100からの電力により充電可能なバッテリBATを備え、バッテリBATに蓄電された電力によって走行可能に構成される。なお、図1において、太い実線は機械連結を示し、二重線は電気配線を示す。また、図1に示す構成は一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、他の構成が追加されてもよい。
【0015】
バッテリBATは、バッテリセル(不図示)を複数積層して構成され、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池である。また、バッテリBATには、現在のバッテリBATの温度(以下、「バッテリ温度Tbat」とも称する)を検出する温度センサ60が設けられている。温度センサ60は、検出したバッテリ温度Tbatを示す検出信号を後述の制御装置CTRへ出力する。これにより、制御装置CTRは、温度センサ60によって検出されたバッテリ温度Tbatを取得可能である。
【0016】
また、車両Vには、充電口10と、充電口10とバッテリBATとの間に配置される充電器OBC(オンボードチャージャ)とが設けられている。充電口10に外部電源100の充電ケーブル110の充電プラグを接続(プラグイン)すると、充電器OBCは、充電口10を介して外部電源100から導入される電流、例えば普通充電時に交流電流を直流電流に変換し、変換した直流電流をバッテリBATに対して出力する。このようにして、バッテリBATは、外部電源100から供給された電力を蓄電する。なお、外部電源100によるバッテリBATの充電のための構成はこれに限られない。例えば、外部電源100から送電される電力を非接触で受電可能な受電コイル等を車両Vに設ける構成によりバッテリBATを充電してもよい。
【0017】
また、車両Vは、駆動ユニットDUと、温調装置20と、制御装置CTRと、HMI(Human Machine Interface)70と、を備える。
【0018】
駆動ユニットDUは、DC-DCコンバータCONVと、インバータINVと、モータMOTと、を備える。DC-DCコンバータCONVは、バッテリBATから供給される電力を昇圧してインバータINVに出力する。インバータINVは、DC-DCコンバータCONVから供給される直流電流を交流電流に変換してモータMOTに出力する。モータMOTは、例えば三相交流モータであり、DC-DCコンバータCONV及びインバータINVを介してバッテリBATから供給された電力により駆動する。モータMOTの出力は、車両Vの駆動輪DWに伝達され、車両Vが走行する。
【0019】
HMI70は、車両Vの乗員(以下、「ユーザ」とも称する)に対して各種情報を提示するとともに、ユーザによる入力操作を受け付ける。HMI70は、例えば、液晶ディスプレイやOELD(Organic Electro Luminescence Diode)ディスプレイ等によって実現されるタッチパネル式の表示装置とすることができる。HMI70には、例えば、図7を用いて後述する選択画面Gが表示され得る。なお、HMI70には、上記表示装置のほか、スピーカ、ブザー、スイッチ、キー等がさらに含まれてもよい。
【0020】
ナビゲーション装置80は、例えば、車両Vの現在位置を特定可能なGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を含んで構成され、GNSS受信機により特定された現在位置から、ユーザによって設定された目的地までの経路(以下、「誘導経路」とも称する)を、あらかじめ記憶された地図データ等を参照して決定する。このとき、ナビゲーション装置80は、例えば、目的地までの途中でバッテリBATの残容量(以下、「SOC(State Of Charge)」とも称する)が所定値以下となることが予測されると、バッテリBATを充電可能な充電設備(例えば、いわゆる充電ステーション)を経由地として含む誘導経路に決定する。
【0021】
そして、ナビゲーション装置80は、誘導経路を決定すると、決定した誘導経路をHMI70などの表示装置に表示させることによってユーザに案内する。これにより、車両Vは、誘導経路に沿って走行し得る。すなわち、誘導経路は、車両Vが走行する予定の経路(以下、「走行予定経路」とも称する)となる。また、ナビゲーション装置80は、決定した誘導経路、すなわち走行予定経路を示す情報を、後述の制御装置CTRへ出力する。これにより、制御装置CTRは、車両Vの走行予定経路を示す情報を取得でき、当該走行予定経路に応じた制御を行うことが可能となる。例えば、制御装置CTRは、車両Vの走行予定経路に充電設備が経由地として含まれる場合に、当該充電設備にてバッテリBATが充電予定であるものとし、後述する予加熱制御を実行することができる。
【0022】
制御装置CTRは、充電器OBC、バッテリBAT、駆動ユニットDU、温調装置20、及びHMI70を含む車両V全体を制御するコンピュータである。また、制御装置CTRは、後述するバッテリ用ヒータECH1や暖房用ヒータECH2も制御する。制御装置CTRは、例えば、プロセッサ、メモリ、インターフェース等を備えるECU(Electronic Control Unit)によって実現される。なお、制御装置CTRは、複数の制御装置(例えばECU)で構成されてもよく、すなわち、上記の制御対象毎に制御装置を設けてもよい。
【0023】
[温調装置]
温調装置20は、図2に示すように、車室の暖房や冷房等を行う空調装置30と、バッテリBATの加温や冷却を行うバッテリ温調回路40と、空調装置30のヒートポンプ回路31とバッテリ温調回路40との間で熱交換を行う第1熱交換器50と、を備える。バッテリ温調回路40は、バッテリBATを加温可能な加温装置の一例である。
【0024】
[バッテリ温調回路]
バッテリ温調回路40は、内部に液状の冷媒C1(例えば水)が循環しており、バッテリBAT及び充電器OBCとの間で熱交換を行う。
【0025】
具体的に説明すると、バッテリ温調回路40では、車両Vの始動前において外部電源100からの電力によりバッテリBATが充電されると、充電器OBCは発熱し、高温となる。充電器OBCはバッテリ温調回路40を流れる冷媒C1と熱交換を行い、充電器OBCは冷却され、冷媒C1は加温される。加温された冷媒C1は、バッテリ温調回路40を循環してバッテリBATと熱交換を行い、バッテリBATが加温される。図3に示す黒塗りの矢印Y1は、充電器OBCからバッテリBATへの熱の移動を示している。このようにして、バッテリBATは、外部電源100による充電中、冷媒C1を介して充電器OBCからの熱を蓄熱する。
【0026】
また、バッテリ温調回路40には、バッテリ用ヒータECH1が設けられている。バッテリ用ヒータECH1は、例えば電気式のヒータ(Electric Coolant Heater)であり、外部電源100の接続時には外部電源100からの電力により作動し、外部電源100が接続されていないときにはバッテリBATからの電力により作動する。具体的には、冷媒C1はバッテリ用ヒータECH1により加温され、加温された冷媒C1は、バッテリBATと熱交換を行い、バッテリBATが加温される。図3に示す黒塗りの矢印Y2は、バッテリ用ヒータECH1によるバッテリBATへの熱の移動を示している。このようにして、バッテリBATは、冷媒C1を介してバッテリ用ヒータECH1からの熱を蓄熱する。
【0027】
さらに、バッテリBATは、外部電源100による充電中に自己発熱し、自己発熱による熱を蓄熱する。
【0028】
バッテリBATは熱容量が大きく、蓄熱し易いので、前述のとおり、車両Vの使用後、次に車両Vを使用するまでの間に、外部電源100に繋がる充電プラグを車両Vに接続しバッテリBATを充電することで、バッテリBATには、充電器OBCからの熱、バッテリ用ヒータECH1からの熱、及びバッテリBATの自己発熱による熱が蓄えられる。
【0029】
[空調装置]
空調装置30は、ヒートポンプ回路31と、昇温回路32と、ヒートポンプ回路31と昇温回路32との間で熱交換を行う第2熱交換器33と、を備える。ヒートポンプ回路31は、圧縮機や、凝縮器、膨張弁、蒸発器等を有する冷凍サイクルを含み、内部には液状の冷媒C2(例えば、エアコン用冷媒)が流れる。ヒートポンプ回路31の凝縮器(以下、第3熱交換器34と称する)は、外気に晒されており、車室を暖房する際には、低温環境下の外気から吸熱(すなわち、ヒートポンプ)可能に構成される。図4及び図5に示す黒塗りの矢印Y3は、外気から第3熱交換器34への熱の移動を示している。
【0030】
昇温回路32は、内部に液状の冷媒C1(例えば、水)が流れる。昇温回路32の冷媒とバッテリ温調回路40の冷媒は共に冷媒C1であり、共通する。昇温回路32の冷媒C1は、第2熱交換器33を介してヒートポンプ回路31の冷媒C2と熱交換し、昇温される。図4及び図5に示す黒塗りの矢印Y4は、第2熱交換器33を介して、第3熱交換器34から昇温回路32への熱の移動を示している。
【0031】
また、昇温回路32には暖房用ヒータECH2が設けられており、暖房用ヒータECH2による熱によっても昇温回路32の冷媒C1は昇温される。暖房用ヒータECH2は、例えば電気式のヒータ(Electric Coolant Heater)である。図4及び図5に示す黒塗りの矢印Y5は、暖房用ヒータECH2からヒータコア35への熱の移動を示している。
【0032】
昇温回路32の冷媒C1は、ヒートポンプ回路31から第2熱交換器33を介して昇温回路32に伝達された熱、及び、暖房用ヒータECH2による熱により昇温され、ヒータコア35において空調空気と熱交換が行われ、車室が暖房される。
【0033】
[暖房モード]
(バッテリ吸熱モード)
前述したように、ヒートポンプ回路31とバッテリ温調回路40との間には冷媒C1と冷媒C2との間で熱交換可能な第1熱交換器50が設けられている。したがって、充電時における充電器OBCからの熱(図3の矢印Y1)、バッテリ用ヒータECH1からの熱(図3の矢印Y2)、及び充電時におけるバッテリBATの自己発熱によりバッテリBATに蓄えられた熱(不図示)は、第1熱交換器50を介してヒートポンプ回路31に伝達される。図4に示す黒塗りの矢印Y6は、バッテリ温調回路40からヒートポンプ回路31への熱の移動を示している。そして、バッテリBATからの熱(図4の矢印Y6)は、外気からの熱(図4の矢印Y3)とともに、第2熱交換器33を介して昇温回路32に伝達され、暖房用ヒータECH2による熱(図4の矢印Y5)が加わって、車室が暖房される。即ち、この暖房モードでは、外気吸熱に加えて、バッテリBATに蓄えられた熱を吸熱して車室の暖房に利用される。以下、バッテリBATから吸熱することをバッテリ吸熱とも称し、またバッテリ吸熱により車室の暖房を行う動作モードを、バッテリ吸熱モードとも称する。図4は、バッテリ吸熱モードの熱の流れを示す図である。
【0034】
(外気吸熱モード)
これに対し、バッテリBATに蓄えられる熱を利用せずに外気からの吸熱で車室を暖房する動作モードを、外気吸熱モードとも称する。図5は、外気吸熱モードの熱の流れを示す図である。
【0035】
[バッテリの温度管理]
バッテリBATは、入出力できる電力の許容値が温度によって変化する。このため、車両Vの走行や充電に伴ってバッテリBATに要求される入出力(以下、要求入出力とも称する)を確保できる温度域に収まるように、制御装置CTRは、バッテリ温度Tbatを管理する。このことにつき、図6を参照して説明する。
【0036】
図6に示す例では、車両Vは、時期t1において走行中である。そして、車両Vは、時期t1の後の時期t2から時期t3までの間に、充電設備にてバッテリBATを急速充電し、その後、再び走行する予定である。
【0037】
要求入出力を確保できる温度域は、当該要求入出力の大きさに応じた高温側閾値T1と低温側閾値T2との間の温度域である。典型的には、要求入出力が大きいとき(例えば急速充電時)には、当該要求入出力が小さくとき(例えば走行時)に比べて、高温側閾値T1は小さく(換言すると低く)、且つ低温側閾値T2は大きく(換言すると高く)なるため、当該要求入出力を確保できる温度域は狭くなる。
【0038】
図6に示す例では、急速充電の開始時の低温側閾値T2はT10であるが、時期t1におけるバッテリ温度TbatはT10よりも低いT11(すなわちT11<T10)となっている。すなわち、このままのバッテリ温度Tbatでは、時期t2から急速充電を開始してもバッテリ温度が低く急速充電を早く終わらせることができない。
【0039】
このような場合、制御装置CTRは、車両Vが充電設備に到着する前からバッテリ温調回路40によりバッテリBATを加温する予加熱制御を実行する。図6に示す例では、制御装置CTRは、時期t1から時期t2まで予加熱制御を実行することで、時期t2までに、当該時期における低温側閾値T2であるT10を目標温度Ttarとし、当該目標温度(すなわちT10)までバッテリBATを昇温させる。また、その後も、制御装置CTRは、バッテリ温度Tbatが要求入出力を確保できる温度域に収まるように、バッテリBATの温度を管理する。
【0040】
ところで、制御装置CTRは、バッテリ温度Tbatが所定の廃熱回収温度Theatよりも高くなったことに基づいて、前述のバッテリ吸熱モードによる制御、すなわちバッテリBATの廃熱を利用した空調装置30による暖房を可能とする廃熱回収制御も実行し得る。廃熱回収温度Theatは、例えば、車両Vの製造者等によってあらかじめ設定される。
【0041】
外気よりも温度の高いバッテリBATから吸熱するバッテリ吸熱モードでは、外気吸熱モードと比べて、車室の暖房時に空調装置30が消費するバッテリBATの電力量を小さくできる。すなわち、廃熱回収制御が実行されるようにすることで、車両Vにおける電費を向上できる。
【0042】
その一方で、廃熱回収制御が実行されると、バッテリ温度Tbatは低下し得る。このため、仮に、予加熱制御後に廃熱回収制御が実行されると、予加熱制御によってせっかく高めたバッテリ温度Tbatが低下して、バッテリBATの昇温が再度必要となり得る。このように、予加熱制御によってせっかく高めたバッテリ温度Tbatが廃熱回収制御によって低下してバッテリBATを再度昇温させることになると、エネルギー効率の悪化につながり得る。
【0043】
そこで、制御装置CTRは、現在のバッテリ温度Tbatが廃熱回収温度Theatよりも高く、且つ、予加熱制御に用いられる目標温度Ttarが廃熱回収温度Theatよりも高い場合に、予加熱制御を実行して廃熱回収制御の実行を制限する、処理を行う。これにより、制御装置CTRは、廃熱回収温度Theatよりも高い目標温度TtarまでバッテリBATを昇温させる予加熱制御を実行する場合には、「バッテリ温度Tbat>廃熱回収温度Theat」という廃熱回収制御の実行条件が成立したとしても、廃熱回収制御を実行しないようにすることができる。
【0044】
したがって、予加熱制御によってせっかく昇温させたバッテリBATに対して廃熱回収制御が実行されることによりバッテリ温度Tbatが低下し、バッテリBATの昇温が再度必要となるのを抑制できる。よって、充電時間を短縮させる予加熱制御と電費を向上させる廃熱回収制御の両方を行うと全体としてのエネルギー効率が下がる温度関係の場合において、予加熱制御を優先して廃熱回収制御を抑制することで、バッテリBATを再度昇温させることによるエネルギー効率の悪化を抑制しつつ、車両Vが充電設備に到着する前にバッテリBATを適切な温度とすることができる。このため、車両Vのエネルギー効率の向上を図りつつも、充電設備におけるバッテリBATの充電時間が長期化するのを抑制し、車両Vの商品性の向上を図れる。ここで、充電時間は、例えば、バッテリBATを満充電状態とするまでに必要な所要時間である。
【0045】
ところで、廃熱回収制御の実行が制限されると、車両Vの電費が悪化し得る。そして、ユーザが、充電設備における充電時間の短縮よりも電費の向上を望むことも想定される。仮に、このようなユーザの意思に反して、廃熱回収制御の実行を制限してしまうと、車両Vの商品性の低下につながり得る。
【0046】
そこで、制御装置CTRは、現在のバッテリ温度Tbatが廃熱回収温度Theatよりも高く、且つ、予加熱制御に用いられる目標温度Ttarが廃熱回収温度Theatよりも高い場合に、予加熱制御を実行するか否かをユーザに選択させる、処理をさらに行うようにしてもよい。そして、予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合、制御装置CTRは、予加熱制御を実行して廃熱回収制御の実行を制限するようにしてもよい。一方、予加熱制御を実行しないことがユーザによって選択された場合、換言すると、予加熱制御を実行することがユーザによって拒否された場合、制御装置CTRは、予加熱制御を実行せず、また、廃熱回収制御の実行を制限しないようにしてもよい。このようにすれば、ユーザが所望の制御を提供することが可能となり、例えば、ユーザの意思に反して、予加熱制御を実行してしまったり廃熱回収制御の実行を制限してしまったりするのを抑制できる。
【0047】
[予加熱制御を実行するか否かの選択画面]
例えば、制御装置CTRは、図7に示す選択画面Gを所定のタイミングでHMI70に表示させることで、選択画面Gを介して、予加熱制御を実行するか否かをユーザに選択させる。ここで、所定のタイミングは、例えば、充電予定の充電設備までの距離又は所要時間が所定値以下となったタイミング、すなわち充電予定の充電設備に車両Vがある程度近づいたタイミングとすることができる。
【0048】
図7に示すように、選択画面Gには、例えば、予加熱制御を実行する旨、及び予加熱制御の実行により電費が悪化し得る旨をユーザに通知するメッセージMが表示される。図7に示す例では、「急速充電に向けてバッテリ温度を最適化します。この動作により、消費電力は大きくなります。」といったメッセージがメッセージMとして表示されている。
【0049】
また、選択画面Gには、例えば、予加熱制御の実行を許可しない(すなわち廃熱回収制御の実行を制限しない)旨の選択操作を廃熱回収制御選択ボタンB1と、予加熱制御を実行する旨の選択操作を受け付ける予加熱制御選択ボタンB2と、が表示される。ユーザは、廃熱回収制御選択ボタンB1を操作(例えばタップ)することにより、予加熱制御を実行しないように、また、廃熱回収制御の実行を制限しないように、制御装置CTRに対して指示できる。また、ユーザは、予加熱制御選択ボタンB2を操作(例えばタップ)することにより、予加熱制御を実行するように、また、廃熱回収制御の実行を制限するように、制御装置CTRに対して指示できる。
【0050】
さらに、選択画面Gには、予加熱制御を実行した場合(すなわちバッテリ温度Tbatを最適化した場合)と、予加熱制御を実行しなかった場合(すなわちバッテリ温度Tbatを最適化しなかった場合)とのそれぞれの場合の、充電予定の充電設備における充電時間の推定値を示す情報を含む推定値情報Iが表示されるようにしてもよい。
【0051】
図7に示す例では、予加熱制御を実行しなかった場合(すなわちバッテリ温度Tbatを最適化しなかった場合)の「○○SA(サービスエリア)」の充電設備における充電時間の推定値は25[min]であり、予加熱制御を実行した場合(すなわちバッテリ温度Tbatを最適化した場合)の「○○SA」の充電設備における充電時間の推定値は15[min]であることを示す情報を含む推定値情報Iが表示されている。
【0052】
したがって、図7に示す例の場合、ユーザは、予加熱制御を実行させた場合の「○○SA」の充電設備における充電時間の短縮効果が10[min]程度であることを把握したうえで、予加熱制御を実行するか否かを選択することが可能となる。このように、制御装置CTRは、車両Vが充電設備に到着する前に、当該充電設備における充電時間の推定値をユーザに通知することにより、当該充電設備における充電時間を考慮した行動をユーザがとることを可能にし、ユーザの利便性の向上を図れる。なお、制御装置CTRは、例えば、充電予定の充電設備へ車両Vが到着する際のバッテリBATのSOCの予測値や、当該充電設備の出力性能(例えば上限出力)等に基づいて、当該充電設備における充電時間の推定値を導出可能である。
【0053】
[制御装置による制御の具体的な一例]
次に、図8を参照して、制御装置CTRによる制御の具体的な一例について説明する。図8に示すように、制御装置CTRは、第1制御パターンN1から第6制御パターンN6までの6つの制御パターンの制御を実行可能に構成される。そして、制御装置CTRは、バッテリ温度Tbat、予加熱制御の目標温度Ttar、及び廃熱回収温度Theatの温度関係に基づいて、上記6つの制御パターンのうちのいずれかの制御パターンの制御を実行し得る。
【0054】
第1制御パターンN1は、「ユーザへの通知を行わずに予加熱制御を実行する」という制御内容の制御パターンである。本例におけるユーザへの通知は、予加熱制御を実行するか否かをユーザに選択させる通知であり、例えば、図7に示した選択画面Gの表示とすることができる。
【0055】
図8に示すように、制御装置CTRは、目標温度Ttarが廃熱回収温度Theatよりも高く、且つ、廃熱回収温度Theatがバッテリ温度Tbatよりも高い(すなわち目標温度Ttar>廃熱回収温度Theat>バッテリ温度Tbatである)場合に、第1制御パターンN1を選択し、第1制御パターンN1の制御を実行する。
【0056】
より具体的には、第1制御パターンN1を選択した場合、制御装置CTRは、ユーザへの通知(例えば選択画面Gの表示)を行わずに予加熱制御を実行して、バッテリBATを目標温度Ttarまで昇温させた後、車両Vが充電設備に到着するまで目標温度Ttarに維持する。さらに、このとき、制御装置CTRは、廃熱回収制御の実行を制限し、「バッテリ温度Tbat>廃熱回収温度Theat」という廃熱回収制御の実行条件が成立しても廃熱回収制御を実行しないようにする。
【0057】
第2制御パターンN2は、「ユーザへの通知を行い、当該通知に対するユーザの選択結果に応じた制御を実行する」という制御内容の制御パターンである。図8に示すように、制御装置CTRは、目標温度Ttarがバッテリ温度Tbatよりも高く、且つ、バッテリ温度Tbatが廃熱回収温度Theatよりも高い(すなわち目標温度Ttar>バッテリ温度Tbat>廃熱回収温度Theatである)場合に、第2制御パターンN2を選択し、第2制御パターンN2の制御を実行する。
【0058】
より具体的には、第2制御パターンN2を選択した場合、制御装置CTRは、まず、ユーザへの通知(例えば選択画面Gの表示)を行う。そして、この通知に対して予加熱制御を実行することがユーザによって選択されると、制御装置CTRは、予加熱制御を実行して、バッテリBATを目標温度Ttarまで昇温させた後、車両Vが充電設備に到着するまで目標温度Ttarに維持する。さらに、このとき、制御装置CTRは、廃熱回収制御の実行を制限し、廃熱回収制御の実行条件が成立しても廃熱回収制御を実行しないようにする。一方、上記の通知に対して予加熱制御を実行しないことがユーザによって選択されると、制御装置CTRは、予加熱制御を実行せず、また、廃熱回収制御の実行も制限しない。よって、この場合には、制御装置CTRは、廃熱回収制御の実行条件の成立に応じて、廃熱回収制御を適宜実行する。
【0059】
第3制御パターンN3は、「ユーザへの通知を行い、当該通知に対するユーザの選択結果に応じた制御を実行する」という制御内容の制御パターンである。図8に示すように、制御装置CTRは、バッテリ温度Tbatが目標温度Ttarよりも高く、且つ、目標温度Ttarが廃熱回収温度Theatよりも高い(すなわちバッテリ温度Tbat>目標温度Ttar>廃熱回収温度Theatである)場合に、第3制御パターンN3を選択し、第3制御パターンN3の制御を実行する。
【0060】
より具体的には、第3制御パターンN3を選択した場合、制御装置CTRは、まず、ユーザへの通知(例えば選択画面Gの表示)を行う。そして、この通知に対して予加熱制御を実行することがユーザによって選択されると、制御装置CTRは、バッテリ温度Tbatが目標温度Ttarを下回る都度、予加熱制御を適宜実行して、車両Vが充電設備に到着するまでバッテリBATを目標温度Ttarに維持する。さらに、このとき、制御装置CTRは、廃熱回収制御の実行を制限し、廃熱回収制御の実行条件が成立しても廃熱回収制御を実行しないようにする。一方、上記の通知に対して予加熱制御を実行しないことがユーザによって選択されると、制御装置CTRは、予加熱制御を実行せず、また、廃熱回収制御の実行も制限しない。よって、この場合には、制御装置CTRは、廃熱回収制御の実行条件の成立に応じて、廃熱回収制御を適宜実行する。
【0061】
第4制御パターンN4は、「ユーザへの通知を行わずに予加熱制御を実行する」という制御内容の制御パターンである。図8に示すように、制御装置CTRは、廃熱回収温度Theatが目標温度Ttarよりも高く、且つ、目標温度Ttarがバッテリ温度Tbatよりも高い(すなわち廃熱回収温度Theat>目標温度Ttar>バッテリ温度Tbatである)場合に、第4制御パターンN4を選択し、第4制御パターンN4の制御を実行する。
【0062】
より具体的には、第4制御パターンN4を選択した場合、制御装置CTRは、ユーザへの通知(例えば選択画面Gの表示)を行わずに予加熱制御を実行して、バッテリBATを目標温度Ttarまで昇温させた後、車両Vが充電設備に到着するまで目標温度Ttarに維持する。このとき、制御装置CTRは、バッテリBATを廃熱回収温度Theatよりも低い目標温度Ttarに維持することで、廃熱回収制御の実行条件が成立するのを抑制し、廃熱回収制御を実行しないようにする。
【0063】
第5制御パターンN5は、「ユーザへの通知を行わずに予加熱制御を実行する」という制御内容の制御パターンである。図8に示すように、制御装置CTRは、廃熱回収温度Theatがバッテリ温度Tbatよりも高く、且つ、バッテリ温度Tbatが目標温度Ttarよりも高い(すなわち廃熱回収温度Theat>バッテリ温度Tbat>目標温度Ttarである)場合に、第5制御パターンN5を選択し、第5制御パターンN5の制御を実行する。
【0064】
より具体的には、第5制御パターンN5を選択した場合、制御装置CTRは、ユーザへの通知(例えば選択画面Gの表示)を行わず、バッテリ温度Tbatが目標温度Ttarを下回る都度、予加熱制御を適宜実行して、車両Vが充電設備に到着するまでバッテリBATを目標温度Ttarに維持する。このとき、制御装置CTRは、バッテリBATを廃熱回収温度Theatよりも低い目標温度Ttarに維持することで、廃熱回収制御の実行条件が成立するのを抑制し、廃熱回収制御を実行しないようにする。
【0065】
第6制御パターンN6は、「ユーザへの通知を行い、当該通知に対するユーザの選択結果に応じた制御を実行する」という制御内容の制御パターンである。図8に示すように、制御装置CTRは、バッテリ温度Tbatが廃熱回収温度Theatよりも高く、且つ、廃熱回収温度Theatが目標温度Ttarよりも高い(すなわちバッテリ温度Tbat>廃熱回収温度Theat>目標温度Ttarである)場合に、第6制御パターンN6を選択し、第6制御パターンN6の制御を実行する。
【0066】
より具体的には、第6制御パターンN6を選択した場合、制御装置CTRは、まず、ユーザへの通知(例えば選択画面Gの表示)を行う。そして、この通知に対して予加熱制御を実行することがユーザによって選択されると、制御装置CTRは、まず、廃熱回収制御を実行する。そして、廃熱回収制御によって低下したバッテリ温度Tbatが目標温度Ttarを下回ると、制御装置CTRは、予加熱制御を実行して、車両Vが充電設備に到着するまでバッテリBATを目標温度Ttarに維持する。一方、上記の通知に対して予加熱制御を実行しないことがユーザによって選択されると、制御装置CTRは、廃熱回収制御のみを実行して、予加熱制御については実行しないようにする。
【0067】
このように、制御装置CTRは、バッテリ温度Tbat、予加熱制御の目標温度Ttar、及び廃熱回収温度Theatの温度関係に基づいて、第1制御パターンN1から第6制御パターンN6までの6つの制御パターンのうちのいずれかの制御パターンの制御を実行する。これにより、バッテリ温度Tbat、予加熱制御の目標温度Ttar、及び廃熱回収温度Theatの温度関係がいずれの場合にも、制御装置CTRは、適切な制御をユーザに対して提供することが可能となる。
【0068】
例えば、バッテリ温度Tbatが廃熱回収温度Theatよりも高く、且つ、目標温度Ttarが廃熱回収温度Theatよりも高い場合に選択され得る第2制御パターンN2及び第3制御パターンN3によれば、予加熱制御を実行するか否かをユーザに選択させることができる。そして、予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合に、予加熱制御を実行して廃熱回収制御の実行を制限することができる。一方、予加熱制御を実行することがユーザによって拒否された場合には、予加熱制御を実行せず、また、廃熱回収制御の実行を制限しないようにすることができる。すなわち、充電設備における充電時間の短縮を優先するか、電費向上を優先するかをユーザが選択することが可能となる。したがって、ユーザが所望の制御(換言するとユーザの都合に合わせた制御)を提供することが可能となり、例えば、充電時間の短縮をユーザが望んでいるにもかかわらず予加熱制御を実行しないようにしてしまったり、電費向上をユーザが望んでいるにもかかわらず廃熱回収制御の実行を制限してしまったりするのを抑制できる。
【0069】
また、バッテリ温度Tbatが廃熱回収温度Theatよりも低い場合に選択され得る第1制御パターンN1、第4制御パターンN4、及び第5制御パターンN5によれば、ユーザへの通知を行わずに予加熱制御を実行することができる。これにより、バッテリ温度Tbatが廃熱回収温度Theatよりも低く、廃熱回収制御の実行条件が成立していないとき、すなわち車両V的にそもそも電費を優先することができない可能性があるときには、ユーザへの通知を行わずにそのまま予加熱制御を実行することが可能となる。したがって、ユーザに煩わしさを与えてしまったりユーザを混乱させてしまったりするおそれのある過剰な通知を抑制することが可能となる。
【0070】
また、バッテリ温度Tbatが廃熱回収温度Theatよりも高く、且つ、目標温度Ttarが廃熱回収温度Theatよりも低い場合に選択され得る第6制御パターンN6によれば、廃熱回収制御を実行し、当該廃熱回収制御後に予加熱制御を実行することができる。これにより、充電時間を短縮させる予加熱制御と電費を向上させる廃熱回収制御の両方を行っても全体としてのエネルギー効率が下がらない温度関係の場合において、まずは廃熱回収制御を実行することで、当該廃熱回収制御によってバッテリ温度Tbatを目標温度Ttarに近づけつつも電費の向上を図れる。そして、その後、予加熱制御を実行することで、車両Vが充電設備に到着する前にバッテリBATを適切な温度とすることができる。したがって、電費の向上と充電時間の短縮化との両立を図れ、ユーザの利便性が向上する。
【0071】
また、第6制御パターンN6によれば、予加熱制御を実行するか否かをユーザに選択させ、予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合に、廃熱回収制御を実行し、当該廃熱回収制御後に予加熱制御を実行することができる。これにより、ユーザが所望する場合に、廃熱回収制御後に予加熱制御を実行することが可能となる。
【0072】
また、第6制御パターンN6によれば、予加熱制御を実行するか否かをユーザに選択させ、予加熱制御を実行することがユーザによって拒否された場合に、廃熱回収制御を実行し、予加熱制御の実行を抑制することができる。これにより、ユーザの意思に反して、予加熱制御を実行してしまうのを抑制できる。
【0073】
[制御装置が実行する処理の一例]
次に、図9を参照して、制御装置CTRが実行する処理の一例について説明する。制御装置CTRは、例えば、充電予定の充電設備までの距離又は所要時間が所定値以下となったタイミング、すなわち充電予定の充電設備に車両Vがある程度近づいたタイミングで、図9に示す一連の処理を実行する。
【0074】
図9に示すように、制御装置CTRは、まず、現在のバッテリ温度Tbat、予加熱制御の目標温度Ttar、及び廃熱回収温度Theatのそれぞれを取得する(ステップS1)。そして、制御装置CTRは、現在のバッテリ温度Tbat、予加熱制御の目標温度Ttar、及び廃熱回収温度Theatの温度関係に基づいて、第1制御パターンN1から第6制御パターンN6までの6つの制御パターンのうちのいずれかの制御パターンを選択する(ステップS2)。
【0075】
次に、制御装置CTRは、選択した制御パターンが第1制御パターンN1、第4制御パターンN4、又は第5制御パターンN5であるか否かを判定する(ステップS3)。選択した制御パターンが第1制御パターンN1、第4制御パターンN4、又は第5制御パターンN5であると判定した場合(ステップS3:YES)、制御装置CTRは、ユーザへの通知(例えば選択画面Gの表示)を行わずに予加熱制御を実行するとともに、廃熱回収制御の実行を制限して(ステップS4)、図9に示す一連の処理を終了する。
【0076】
一方、選択した制御パターンが第1制御パターンN1、第4制御パターンN4、又は第5制御パターンN5でないと判定した場合(ステップS3:NO)、制御装置CTRは、ユーザへの通知(例えば選択画面Gの表示)を行う(ステップS5)。そして、制御装置CTRは、ステップS5の処理による通知に対して、予加熱制御を実行することがユーザによって選択されたか否かを判定する(ステップS6)。
【0077】
予加熱制御を実行しないことがユーザによって選択された場合(ステップS6:NO)、換言すると、予加熱制御を実行することがユーザによって拒否された場合、制御装置CTRは、予加熱制御を実行せず、廃熱回収制御のみを実行して(ステップS7)、図9に示す一連の処理を終了する。
【0078】
一方、予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合(ステップS6:YES)、制御装置CTRは、選択した制御パターンが第6制御パターンN6であるか否か判定する(ステップS8)。そして、選択した制御パターンが第6制御パターンN6であると判定した場合(ステップS8:YES)、制御装置CTRは、廃熱回収制御を実行し、当該廃熱回収制御後に予加熱制御を実行して(ステップS9)、図9に示す一連の処理を終了する。
【0079】
一方、選択した制御パターンが第6制御パターンN6でないと判定した場合(ステップS8:NO)、選択した制御パターンは第2制御パターンN2又は第3制御パターンN3となるため、制御装置CTRは、前述したステップS4の処理へ進んで予加熱制御を実行して、図9に示す一連の処理を終了する。
【0080】
以上に説明したように、本実施形態によれば、車両Vのエネルギー効率の向上を図りつつも、充電設備におけるバッテリBATの充電時間が長期化するのを抑制することができる。
【0081】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明が前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前述した実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0082】
例えば、バッテリ温調回路40は、冷媒C1が駆動ユニットDUとも熱交換可能なように構成されていてもよい。駆動ユニットDUの駆動時(例えば、車両Vの走行時)には駆動ユニットDUは高温となるが、このような構成によると、駆動ユニットDUは冷媒C1により冷却され、駆動ユニットDUから熱を受け取った冷媒C1は加温される。駆動ユニットDUから熱を受け取った冷媒C1は、第1熱交換器50を介してヒートポンプ回路31に熱を供給できる。すなわち、車室の暖房時、空調装置30は、駆動ユニットDUからの熱も利用することができる。
【0083】
また、バッテリ温調回路40は、開閉バルブを介して昇温回路32に接続されていてもよい。この場合、第1熱交換器50を介さずに、開閉バルブによりバッテリ温調回路40及び昇温回路32を流れる冷媒C1により車室の暖房を行うことができる。
【0084】
また、バッテリ温調回路40の冷媒と昇温回路32の冷媒は、異なる冷媒であってもよい。
【0085】
なお、前述した実施形態では、本発明の制御装置を、車両Vに搭載された制御装置CTRによって実現した例を説明したが、これに限られない。例えば、本発明の制御装置を、制御装置CTRと通信可能なサーバによって実現してもよい。この場合、例えば、前述した制御装置CTRの各処理を、サーバのCPUなどによって実現される処理部が行えばよい。また、本発明の制御装置は、制御装置CTRとサーバとが協働することによって実現されてもよく、例えば、前述した制御装置CTRの処理のうちの一部がサーバによって実行されてもよい。
【0086】
また、前述した実施形態で説明した制御方法は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータで実行することによって実現できる。本プログラム(制御プログラム)は、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶され、記憶媒体から読み出されることによって実行される。また、本プログラムは、フラッシュメモリなどの不揮発性(非一過性)の記憶媒体に記憶された形で提供されてもよいし、インターネットなどのネットワークを介して提供されてもよい。本プログラムを実行するコンピュータは、車両Vに含まれるものであってもよいし、車両Vと通信可能な外部装置(例えばサーバ)に含まれるものでもあってもよい。
【0087】
本明細書等には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、前述した実施形態において対応する構成要素を示しているが、これに限定されるものではない。
【0088】
(1) バッテリ(バッテリBAT)と、前記バッテリを加温可能な加温装置(バッテリ温調回路40、バッテリ用ヒータECH1)と、前記バッテリの廃熱を利用して車室を暖房可能な空調装置(空調装置30)と、を備える車両(車両V)を制御するコンピュータ(制御装置CTR)が行う制御方法であって、
前記コンピュータは、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する際の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記車両が前記充電設備に到着する前から前記加温装置により前記バッテリを加温する予加熱制御と、
前記バッテリの温度が所定の廃熱回収温度となったことに基づいて、前記バッテリの廃熱を利用した前記空調装置による暖房を可能とする廃熱回収制御と、を実行可能に構成され、
前記コンピュータが、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する(ステップS4)、
処理を行う、制御方法。
【0089】
(1)によれば、廃熱回収温度よりも高い目標温度までバッテリを昇温させる予加熱制御が実行される場合には、「バッテリ温度>廃熱回収温度」という廃熱回収制御の実行条件が成立したとしても、廃熱回収制御が実行されないようにすることができる。これにより、予加熱制御によってせっかく昇温させたバッテリに対して廃熱回収制御が実行されることによりバッテリの温度が低下し、バッテリの昇温が再度必要となるのを抑制できる。よって、充電時間を短縮させる予加熱制御と電費を向上させる廃熱回収制御の両方を行うと全体としてのエネルギー効率が下がる温度関係の場合において、予加熱制御を優先して廃熱回収制御を抑制することで、バッテリを再度昇温させることによるエネルギー効率の悪化を抑制しつつ、車両が充電予定の充電設備に到着する前にバッテリを適切な温度とすることができる。したがって、車両のエネルギー効率の向上を図りつつも、充電設備におけるバッテリの充電時間が長期化するのを抑制できる。
【0090】
(2) (1)に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行するか否かをユーザに選択させる(ステップS5)、処理をさらに行い、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する(ステップS4)、
処理を行う、制御方法。
【0091】
(2)によれば、充電時間を短縮させる予加熱制御と電費を向上させる廃熱回収制御の両方を行うと全体としてのエネルギー効率が下がる温度関係の場合において、充電設備における充電時間の短縮(予加熱制御)を優先するか、電費向上(廃熱回収制御)を優先するかをユーザが選択することが可能となり、ユーザが所望の制御(換言するとユーザの都合に合わせた制御)を提供することが可能となる。
【0092】
(3) (2)に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって拒否された場合に、前記予加熱制御を実行せず、前記廃熱回収制御の実行を制限しない(ステップS7)、
処理をさらに行う、制御方法。
【0093】
(3)によれば、充電時間を短縮させる予加熱制御と電費を向上させる廃熱回収制御の両方を行うと全体としてのエネルギー効率が下がる温度関係の場合において、例えば買い物などで、ユーザが充電の完了を急がず、充電設備における充電時間の短縮よりも電費向上を優先するときには、予加熱制御が抑制されるとともに廃熱回収制御の制限がなくなるので、ユーザの意思に合わせて電費を向上させる廃熱回収制御を行うことが可能となる。また、予加熱制御が抑制されるので、予加熱制御によるエネルギー消費を削減でき、電費を向上させることができる。
【0094】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも低い場合に(ステップS3:YES)、ユーザへの通知を行わずに前記予加熱制御を実行する(ステップS4)、
処理をさらに行う、制御方法。
【0095】
(4)によれば、バッテリの温度が廃熱回収温度よりも低く、廃熱回収制御の実行条件が成立していないとき、すなわち車両的にそもそも電費を優先することができない可能性があるときには、ユーザへの通知を行わずにそのまま予加熱制御を実行することが可能となる。これにより、ユーザに煩わしさを与えてしまったりユーザを混乱させてしまったりするおそれのある過剰な通知を抑制することが可能となる。
【0096】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも低い場合に(ステップS8:YES)、前記廃熱回収制御を実行し、当該廃熱回収制御後に前記予加熱制御を実行する(ステップS9)、
処理をさらに行う、制御方法。
【0097】
(5)によれば、充電時間を短縮させる予加熱制御と電費を向上させる廃熱回収制御の両方を行っても全体としてのエネルギー効率が下がらない温度関係の場合において、まずは廃熱回収制御を実行することで、当該廃熱回収制御によってバッテリの温度を目標温度に近づけつつも電費の向上を図れる。そして、その後、予加熱制御を実行することで、車両が充電設備に到着する前にバッテリを適切な温度とすることができる。したがって、電費の向上と充電時間の短縮化との両立を図れ、ユーザの利便性が向上する。
【0098】
(6) (5)に記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも低い場合に、前記予加熱制御を実行するかをユーザに選択させる(ステップS5)、処理をさらに行い、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって選択された場合に、前記廃熱回収制御を実行し、当該廃熱回収制御後に前記予加熱制御を実行する(ステップS9)、
処理を行う、制御方法。
【0099】
(6)によれば、充電時間を短縮させる予加熱制御と電費を向上させる廃熱回収制御の両方を行っても全体としてのエネルギー効率が下がらない温度関係の場合において、ユーザが所望する場合に、廃熱回収制御後に予加熱制御を実行することが可能となる。
【0100】
(7) (6)に記載の制御方法であって、
前記予加熱制御を実行することがユーザによって拒否された場合に、前記廃熱回収制御を実行し、前記予加熱制御の実行を抑制する(ステップS7)、
処理をさらに行う、制御方法。
【0101】
(7)によれば、充電時間を短縮させる予加熱制御と電費を向上させる廃熱回収制御の両方を行っても全体としてのエネルギー効率が下がらない温度関係の場合において、例えば買い物などで、ユーザが充電の完了を急がず、充電設備における充電時間の短縮を求めていないときには、予加熱制御を抑制することで、予加熱制御によるエネルギー消費を削減でき、電費を向上させることができる。
【0102】
(8) (1)から(3)、又は(5)から(7)のいずれかに記載の制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する前に前記充電設備における前記バッテリの充電時間の推定値をユーザに通知する(ステップS5)、
処理をさらに行う、制御方法。
【0103】
(8)によれば、充電予定の充電設備における充電時間を考慮した行動をユーザがとることを可能にし、ユーザの利便性の向上を図れる。
【0104】
(9) バッテリと、前記バッテリを加温可能な加温装置と、前記バッテリの廃熱を利用して車室を暖房可能な空調装置と、を備える車両を制御する制御装置であって、
前記制御装置は、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する際の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記車両が前記充電設備に到着する前から前記加温装置により前記バッテリを加温する予加熱制御と、
前記バッテリの温度が所定の廃熱回収温度となったことに基づいて、前記バッテリの廃熱を利用した前記空調装置による暖房を可能とする廃熱回収制御と、を実行可能に構成され、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行う、制御装置。
【0105】
(9)によれば、廃熱回収温度よりも高い目標温度までバッテリを昇温させる予加熱制御が実行される場合には、「バッテリ温度>廃熱回収温度」という廃熱回収制御の実行条件が成立したとしても、廃熱回収制御が実行されないようにすることができる。これにより、予加熱制御によってせっかく昇温させたバッテリに対して廃熱回収制御が実行されることによりバッテリの温度が低下し、バッテリの昇温が再度必要となるのを抑制できる。よって、充電時間を短縮させる予加熱制御と電費を向上させる廃熱回収制御の両方を行うと全体としてのエネルギー効率が下がる温度関係の場合において、予加熱制御を優先して廃熱回収制御を抑制することで、バッテリを再度昇温させることによるエネルギー効率の悪化を抑制しつつ、車両が充電予定の充電設備に到着する前にバッテリを適切な温度とすることができる。したがって、車両のエネルギー効率の向上を図りつつも、充電設備におけるバッテリの充電時間が長期化するのを抑制できる。
【0106】
(10) バッテリと、前記バッテリを加温可能な加温装置と、前記バッテリの廃熱を利用して車室を暖房可能な空調装置と、制御装置と、を備える車両であって、
前記制御装置は、
前記車両の走行予定経路に含まれる充電設備にて前記バッテリが充電予定の場合に、前記車両が前記充電設備に到着する際の前記バッテリの温度が所定の目標温度となるように前記車両が前記充電設備に到着する前から前記加温装置により前記バッテリを加温する予加熱制御と、
前記バッテリの温度が所定の廃熱回収温度となったことに基づいて、前記バッテリの廃熱を利用した前記空調装置による暖房を可能とする廃熱回収制御と、を実行可能に構成され、
現在の前記バッテリの温度が前記廃熱回収温度よりも高く、且つ、前記目標温度が前記廃熱回収温度よりも高い場合に、前記予加熱制御を実行して前記廃熱回収制御の実行を制限する、
処理を行う、車両。
【0107】
(10)によれば、廃熱回収温度よりも高い目標温度までバッテリを昇温させる予加熱制御が実行される場合には、「バッテリ温度>廃熱回収温度」という廃熱回収制御の実行条件が成立したとしても、廃熱回収制御が実行されないようにすることができる。これにより、予加熱制御によってせっかく昇温させたバッテリに対して廃熱回収制御が実行されることによりバッテリの温度が低下し、バッテリの昇温が再度必要となるのを抑制できる。よって、充電時間を短縮させる予加熱制御と電費を向上させる廃熱回収制御の両方を行うと全体としてのエネルギー効率が下がる温度関係の場合において、予加熱制御を優先して廃熱回収制御を抑制することで、バッテリを再度昇温させることによるエネルギー効率の悪化を抑制しつつ、車両が充電予定の充電設備に到着する前にバッテリを適切な温度とすることができる。したがって、車両のエネルギー効率の向上を図りつつも、充電設備におけるバッテリの充電時間が長期化するのを抑制できる。
【符号の説明】
【0108】
30 空調装置
40 バッテリ温調回路(加温装置)
CTR 制御装置(コンピュータ)
BAT バッテリ
ECH1 バッテリ用ヒータ(加温装置)
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9