(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】量子アニーリング工程のための量子ハードウェアの構築およびプログラミング
(51)【国際特許分類】
G06N 10/40 20220101AFI20241015BHJP
G06N 10/60 20220101ALI20241015BHJP
H10N 60/10 20230101ALI20241015BHJP
【FI】
G06N10/40
G06N10/60
H10N60/10 K
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023064372
(22)【出願日】2023-04-11
(62)【分割の表示】P 2021214391の分割
【原出願日】2014-12-31
【審査請求日】2023-05-11
(32)【優先日】2014-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マソウド・モフセニ
(72)【発明者】
【氏名】ハルトムート・ネーヴェン
【審査官】多賀 実
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-524857(JP,A)
【文献】特表2011-523747(JP,A)
【文献】特表2005-527902(JP,A)
【文献】特表2011-524026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0000666(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0162613(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/00-10/80
H10N 60/00-60/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パウリ演算子σ
sj
iを介してスパン化され得る量子状態をそれぞれ有するように、計算に使用するための論理超伝導ユニットの第1のペアを形成する、第1の論理超伝導ユニットおよび第2の論理超伝導ユニットを構成するステップであって、i = x、yまたはzである、ステップと、
パウリ演算子σ
ck
iを介してスパン化され得る量子状態をそれぞれ有するように、コンピュータユニットにはならずに計算を助けるのに使用される制御超伝導ユニットの第1のペアを形成する、第1の制御超伝導ユニットおよび第2の制御超伝導ユニットを構成するステップであって、i = x、yまたはzである、ステップと、
磁場をz方向に沿って適用することによって、前記第1の論理超伝導ユニットと前記第2の制御超伝導ユニットを結合させるステップと、
磁場を前記z方向に沿って適用することによって、前記第2の論理超伝導ユニットと前記第1の制御超伝導ユニットを結合させるステップと
含む、方法。
【請求項2】
前記磁場を前記第1の論理超伝導ユニットおよび前記第2の制御超伝導ユニットに適用するときに、σ
s1
z σc
2
zによって表される第1の結合において前記第1の論理超伝導ユニットの量子演算子σ
s1
zが前記第2の制御超伝導ユニットの量子演算子σ
c2
zに結合させられ、
前記磁場を前記第2の論理超伝導ユニットおよび前記第1の制御超伝導ユニットに適用するときに、前記磁場が、σ
s2
z σ
c1
zによって表される第2の結合において
前記第2の論理超伝導ユニットの量子演算子σ
s2
zと
前記第1の制御超伝導ユニットの量子演算子σ
c1
zを結合させる
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のおよび第2の論理超伝導ユニットと、第1のおよび第2の制御超伝導ユニットとが、2進量子状態を有する超伝導量子ビットを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記論理超伝導ユニットが、前記制御超伝導ユニットと同じ精度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記制御超伝導ユニットが、前記論理超伝導ユニットより低い精度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記超伝導ユニットおよび前記結合の特徴を示す量子ハミルトニアンが、
【数1】
であり、但し、iは、超伝導ユニットの第iのペアを表し、h
iおよびJ
ijは、前記第1のおよび第2の超伝導ユニットの間の結合強度に関連する実値を有し、I(t)、G(t)、およびP(t)は、時間依存の制御パラメータであるように、前記超伝導ユニットおよび前記結合が構成された、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
パウリ演算子σ
sj
iを介してスパン化され得る量子状態をそれぞれ有するように、但し、i = x、yまたはzである、計算に使用するための論理超伝導ユニットの第1のペアを形成する、第1の論理超伝導ユニットおよび第2の論理超伝導ユニットと、
パウリ演算子σ
ck
iを介してスパン化され得る量子状態をそれぞれ有するように、但し、i = x、yまたはzである、コンピュータユニットにはならずに計算を助けるのに使用される制御超伝導ユニットの第1のペアを形成する、第1の制御超伝導ユニットおよび第2の制御超伝導ユニットと、
前記第1の論理超伝導ユニットと前記第2の制御超伝導ユニットとの間の第1のカプラであって、前記第1のカプラが、磁場がz方向に沿って適用されるときに前記第1の論理超伝導ユニットと前記第2の制御超伝導ユニットを結合させる、第1のカプラと、
前記第2の論理超伝導ユニットと前記第1の制御超伝導ユニットとの間の第2のカプラであって、前記第2のカプラが、磁場がz方向に沿って適用されるときに前記第2の論理超伝導ユニットと前記第1の制御超伝導ユニットを結合させる、第2のカプラと
を備える、装置。
【請求項8】
第1のカプラが、σ
s1
z σc
2
zによって表される第1の結合において前記第1の論理超伝導ユニットの量子演算子σ
s1
zと前記第2の制御超伝導ユニットの量子演算子σ
c2
zを結合させ、
第2のカプラが、σ
s2
z σ
c1
zによって表される第2の結合において
前記第2の論理超伝導ユニットの量子演算子σ
s2
zと
前記第1の制御超伝導ユニットの量子演算子σ
c1
zを結合させる
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1のおよび第2の論理超伝導ユニットと、第1のおよび第2の制御超伝導ユニットとが、2進量子状態を有する超伝導量子ビットを備える、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記論理超伝導ユニットが、前記制御超伝導ユニットと同じ精度を有する、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記制御超伝導ユニットが、前記論理超伝導ユニットより低い精度を有する、請求項7に記載の装置。
【請求項12】
前記超伝導ユニットおよび前記カプラの特徴を示す量子ハミルトニアンが、
【数2】
であり、但し、iは、超伝導ユニットの第iのペアを表し、h
iおよびJ
ijは、前記第1のおよび第2の超伝導ユニットの間の結合強度に関連する実値を有し、I(t)、G(t)、およびP(t)は、時間依存の制御パラメータであるように、前記超伝導ユニットおよび前記カプラが構成された、請求項7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本願は、参照によりその全内容が本明細書に組み込まれている、2014年4月28日に出願した米国特許出願第61/985,348号と、2014年1月6日に出願した第61/924,207号の優先権を米国特許法第119条(e)項に基づいて主張するものである。
【背景技術】
【0002】
本明細書は、量子アニーリング工程のための量子ハードウェアの構築およびプログラミングに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2004/0000666号明細書
【文献】特表2011-523747号公報
【文献】特表2005-527902号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
人工知能タスクは、機械学習最適化問題に変換することができる。人工知能タスクを実行するために、量子ハードウェア、たとえば量子プロセッサは、対応する機械最適化問題の解を量子ハードウェアの特性を示す多体量子ハミルトニアンのエネルギスペクトルにコード化するように構築およびプログラムされる。たとえば、その解は、基底状態のハミルトニアンでコード化される。量子ハードウェアは、既知の初期ハミルトニアンの既知の基底状態で開始する断熱量子計算を実行する。時間とともに、既知の初期ハミルトニアンが、問題を解くためのハミルトニアンに進化するとき、既知の基底状態は、進化し、進化するハミルトニアンの瞬間的基底状態にとどまる。エネルギスペクトルまたは問題を解くための基底状態のハミルトニアンは、ハミルトニアンを対角化することなしに進化の最後に取得される。
時に、量子断熱計算は、たとえば熱変動によって、引き起こされる励起により非断熱曲線になる。瞬間的基底状態にとどまるのではなくて、初期ハミルトニアンの基底状態で最初に開始された進化する量子状態は、進化するハミルトニアンの励起状態に到達し得る。量子ハードウェアは、計算の初期段階の間に瞬間的基底状態から高エネルギ状態へのそのような励起を抑制するように構築およびプログラムされる。加えて、量子ハードウェアはまた、高エネルギ状態から低エネルギ状態または計算の後期の間の基底状態への緩和を助けるように構築およびプログラムされる。問題を解くための基底状態のハミルトニアンの発見の頑強性が改善される。
【0005】
本明細書の主題の1つまたは複数の実施形態の詳細が、添付の図面および以下の記述で説明される。本主題の他の特徴、態様および利点は、本記述、図面、および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】量子プロセッサ内の相互作用する量子ビットの概略的透視図である。
【
図2】量子プロセッサ内の2つの量子ビットの構造および相互作用を示す概略図である。
【
図3】量子アニーリング工程に対する量子ガバナの効果を示す概略図である。
【
図4】初期ハミルトニアン、にニアン、および、量子アニーリング工程中の問題ハミルトニアンについて選択される量子ガバナのハミルトニアンの相互作用を示す概略図である。
【
図5】量子ガバナ分布を判定するための例示的工程の流れ図である。
【
図6】人工知能タスクを実行するための例示的工程の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
概説
困難な組み合わせ問題、たとえば、NP困難な問題および機械学習問題の解は、量子アニーラまたはQAとも呼ばれる多体量子ハミルトニアンシステムの基底状態でコード化することができる。システムのQAは、時に、断熱量子計算を介して取得することができ、そこで、QAは、既知のおよび準備が簡単な初期ハミルトニアンHiの基底状態に初期化される。時間とともに、QAは、問題をコード化する問題ハミルトニアンHPに断熱して導かれる。理論上、断熱量子計算中に、QAは、HiからHPに進化するハミルトニアンHtotalの瞬間的基底状態にとどまることができ、Htotalは:
Htotal = (l-s)Hi+sHP
として表すことができ、但し、sは時間依存の制御パラメータ:
s = t/tT
であり、そして、tTは、断熱量子計算の合計時間である。システムの進化が、そのシステムの固有のエネルギ規模に対して十分に遅い場合、QAは、確実に問題ハミルトニアンHPの基底状態に到達することになる。
【0008】
実際には、量子計算は、完全に断熱でないことがあり、QAは、その計算中にHtotalの励起状態に到達することがあり、これは、量子計算の最後に不正確な結果をもたらし得る。たとえば、多数の困難な組み合わせ最適化問題において、たとえば、決定問題において、問題ハミルトニアンが、その計算の複雑性において相転移を示すとき、励起状態とHtotalの基底状態との間のギャップの大きさは、システムの固有のエネルギ規模に対して小さく、たとえば指数関数的に小さくなり得る。そのような状況では、QAは、量子相転移を受けることがあり、励起状態の大数、たとえば指数関数的に大きな数に到達し得る。加えて、QAはまた、システムとの環境相互作用、および、制御エラーおよび製造欠陥を含む、システム欠陥エラーによって誘発される量子変動などの他の要因によりHtotalの基底状態から外れることがある。本明細書では、Hiの基底状態からHpの基底状態へのQAの推進の工程は、QAスケジュールまたは量子アニーリング工程と呼ばれる。
【0009】
本明細書の、量子プロセッサなど、量子ハードウェアは、進化するハミルトニアンHtotalがHtotになるように、HiおよびHPに加えて量子ガバナ(QG: quantum governor)を定義する量子チップを含む:
Htot = I(t)Hi+G(t)HG+P(t)HP+HAG-B、
但し、I(t)およびP(t)は、それぞれ、初期および問題ハミルトニアン、HiおよびHp、の時間依存性を表し、G(t)は、QG関連のハミルトニアン、HG、の時間依存性を表し、そして、HAG-Bは、一般にバスと呼ばれる、結合されたQA-QGシステムのその周辺環境との相互作用である。一般に、HAG-Bは、ゼロ以外であるが、一定であり、よく特徴付けられると想定することができる。いくつかの実装形態では:
Htot = (1-t)Hi+t(l-t)HG+tHp+HAG-B
【0010】
一般に、QGは、情報関連の自由度の散逸力学を導くように設計することができる非情報関連の自由度のクラスと考えることができる。Htotalの例では、情報関連の自由度は、QAである。具体的には、QGは、独立したテンソル積構造を有する補助的サブシステムとして定義され得る。QGは、情報関連の自由度とQGとの間の相互作用とQGの自由ハミルトニアンとの両方の特性を示す、HGによって特徴を示すことができる。QGは、コヒーレントに、非摂動的な形でQAと相互に作用し得る。その相互作用はまた、強い非マルコフ効果を示し得る。
【0011】
量子ハードウェアは、QGが頑強な形で有限温度で無秩序な量子アニーリングハードウェアの量子進化を導くことを可能にし、断熱量子計算工程を改善するように構築およびプログラムされる。たとえば、QGは、励起状態をQAによって実際にアクセス不可能にすることによって、Htotalの励起状態からQAを分断しながら、QAの量子相転移への推進を円滑に進めることができる。量子相転移の後、QAは、QAが量子局在により励起状態で凍結される可能性がある別の位相に入る。QGは、環境の振動エネルギに合わせてQAのエネルギレベルを調整して、QAの低エネルギ状態または基底状態への緩和を促進することができる。そのような調整は、基底状態忠実度、すなわち、計算の最後にQAが基底状態にある忠実度、を高め、QAが量子局在による準最適な解において早過ぎる凍結を回避することを可能にし得る。
【0012】
一般に、QAは、以下にさらに詳しく説明される、初期化、励起、緩和、および凍結を含む、本明細書の量子アニーリング工程における4つの位相を経験する。QGは、バスの平均フォノンエネルギとHtotの平均エネルギレベルスペーシングとの間のミスマッチを作り出すことによってQAを最初の2つの位相において助けてQA励起を抑制することができる。第3のおよび第4のステージでは、QGは、システムとバスとのスペクトル密度の重複を作り出すことによって、熱変動を強化することができる。強化された熱変動は、高エネルギ状態から低エネルギ状態またはHtotの基底状態への高い緩和率をQAが有することを可能にし得る。具体的には、量子局在により、QAは、非基底状態で凍結され得る。QGは、QAが非基底状態から凍結解除することを可能にし得る。
【0013】
QGは、量子相互作用が、量子ハードウェアの自然のまたは設計された制約のいずれかにより限定されるときに、ユニバーサル断熱量子計算を実現するために使用することができる。たとえば、量子チップは、量子チップ上の量子ビットの相互作用を表すハミルトニアンがk局所確率論的ハミルトニアンになるような工学的制約を有し得る。いくつかの実装形態では、量子ハードウェアは、環境の自由度の何らかの制御なしでも、環境相互作用および無秩序の構造的および動力学的効果を操作するように構築およびプログラムされる。
【0014】
一般に、QGは、問題依存である。本明細書の量子ハードウェアは、異なる問題ハミルトニアンについて異なるQGを提供するようにプログラムすることができる。いくつかの実装形態では、QGは、平均場および顕微手法に基づいて開発された量子制御ストラテジを使用して、所与のHpについて判定することができる。加えて、または別法として、量子制御ストラテジはまた、QCの判定において、ランダム行列理論および機械学習技法を実装することができる。結合されたQAおよびQGは、ポアソン、レヴィ、またはボルツマン分布など、HPのエネルギスペクトルの所望の統計的分布を生成するように調整および訓練することができる。
【0015】
例示的量子ハードウェア
図1に示すように、量子プロセッサにおいて、プログラム可能な量子チップ100は、異なる量子ビットを接続する線によって示されるように、プログラム可能な誘導カプラによって接続された、8量子ビット104の4掛ける4の単位セル102を含む。各線は、量子ビットのペアの間の1つまたは複数のカプラを表し得る。チップ100はまた、より多数の、たとえば、8掛ける8以上の、単位セル102を含み得る。
【0016】
破線で丸く囲まれたセルなどの、量子ビット番号q1からq8を含む、各単位セル102内では、8量子ビット104のうちの1つまたは複数、たとえば、q1、q2、q5、q6のラベルを付された4量子ビット104は、量子プロセッサによって実行される計算で使用するための論理量子ビットである。その他の量子ビット104、たとえば、q3、q4、q7、q8のラベルを付されたその他の4量子ビット、は、本明細書のQGの関数を実行するようにプログラムされることになる制御量子ビットである。制御量子ビットは、論理量子ビットがそのために構成される計算には関与しない。いくつかの実装形態では、各単位セル102において、量子ビットの半分が制御量子ビットとして使用され、量子ビットの他の半分が論理量子ビットとして使用される。QGを実装するチップ100の大きさは、単位セルの数を増やすことによって拡張可能である。
【0017】
いくつかの実装形態では、論理量子ビットおよび制御量子ビットは、同じ構造を有する。他の実装形態では、制御量子ビットは、論理量子ビットよりも単純なまたは正確でない構造を有する。
図2は、チップの同単位セル内の結合された量子ビット200、202の例示的ペアを示す。たとえば、量子ビット200、202は、2つの論理量子ビット、たとえば量子ビットq
1、q
5、2つの制御量子ビット、たとえば量子ビットq
3、q
7、または、論理量子ビット、たとえば量子ビットq
1、および、制御量子ビット、たとえば量子ビットq
7、に対応し得る。この例では、各量子ビットは、超伝導量子ビットであり、2つの並列接続されたジョセフソンボックス204a、204bまたは208a、208bを含む。各ジョセフソンボックスは、キャパシタンス207に並列接続されたジョセフソン接合206を含み得る。量子ビット200、202は、その図が示された紙の表面に垂直のe
3方向に沿って適用される外部磁場Bにさらされ、そのBフィールドは、記号
【0018】
【0019】
のラベルを付される。誘導カプラ210のセットは、量子ビット200、202がe3-e3方向に沿って結合されるように、量子ビット200、202の間に配置される。
【0020】
いくつかの実装形態では、論理量子ビットおよび制御量子ビットは、両方とも、並列接続された2つのジョセフソンボックスを使用し、構築される。しかし、論理量子ビットは、制御量子ビットよりも高い精度で構築され得る。したがって、より低い精度で構築される制御量子ビットは、低いコストでQGの関数を実行することができる。他の実装形態では、論理量子ビットは、
図2に示すように並列接続された2つのジョセフソンボックスを使用して構築され、一方、制御量子ビットは、量子調和振動子など、ジョセフソンボックス以外の構造物を使用して構築され得る。
図1のチップ100では、各単位セル内の制御量子ビットは、互いにおよび論理量子ビットと相互に作用する。これらの相互作用は、QGの機能を果たして、論理量子ビットによって特徴付けられるQAが量子アニーリング工程の最後にH
pの基底状態に到達するのを助ける。
【0021】
一例として、QAのハミルトニアンは:
【0022】
【0023】
のように書くことができ、但し、
【0024】
【0025】
および
【0026】
【0027】
は、パウリ演算子であり、それぞれ、x方向またはz方向に沿った第iの量子ビットのスピンを各々表し、h
iおよびJ
ijは、誘導カプラセット210によって実現される結合を調整することによって異なる問題が解かれるようにプログラムすることができるパラメータである。h
iおよびJ
ijは、実値を有する。Nは、計算のための論理量子ビットの総数である。パラメータJ
ijのスパーシティは、ハードウェア接続、
図1に示す量子ビットの接続性、によって抑制される。接続されていない量子ビットについて、対応するJijは0である。さらに、I(t)およびP(t)は、それぞれ、初期および問題ハミルトニアンの時間依存性を表す。簡単な例では、I(t)は(1-s)に等しく、P(t)はsに等しく、但し、sはt/t
Tに等しい。
【0028】
追加のM制御量子ビット、但し、MはNと同じでもよく、異なってもよい、は、チップ100に追加の量子制御機構を導入する。その制御機構は、HSGまたはHtotalのQAと相互に作用する補助的サブシステムを定義する。その補助的サブシステムは、テンソル積構造を含み、QG-QA相互作用ハミルトニアンHSGと可換であるQGの固有ハミルトニアンを特徴とし得る。その補助的サブシステムは、グローバル時間変動制御ノブG(t)と、場合によっては、環境の巨視的なプログラム可能な制御パラメータのセットとによって、制御することができる。いくつかの実装形態では、その制御ノブはs(1-s)であり、但し、s = t/tT、そして、環境のプログラム可能な制御パラメータは温度Tである。
【0029】
したがって、チップ100内の結合されたQA-QGシステムのハミルトニアンHtotは:
Htot = I(t)Hi+G(t)HG+P(t)HP
但し、I(t)、G(t)、およびP(t)は、グローバル制御パラメータの一般的時間依存性を表す。このハミルトニアンでは、初期ハミルトニアンは:
【0030】
【0031】
問題ハミルトニアンHPは:
【0032】
【0033】
そして、QGハミルトニアンHGは:
【0034】
【0035】
但し、HGFは、QGの自由ハミルトニアン、そして、HGAは、QGおよびQAの相互作用ハミルトニアンである。NGおよびNAは、それぞれ、QGおよびQA量子ビットの総数であることに留意されたい。一例として、全ハミルトニアンは、以下の明示的グローバル時間依存性を有し得る:
Htot = (1-t/tT)Hi+ t/tT(1- t/tT)HG+(t/tT)Hp。
【0036】
量子ハードウェアのプログラミング
所与の問題およびその対応する問題ハミルトニアンHPについて、QGは、HPを対角化することなしに、QAの基底状態忠実度を向上させるように判定される。様々なQG実現が、計算結果に関する知識を向上させるために、繰り返され得る。
【0037】
いくつかの実装形態では、QGは、Htotalを特徴とするシステムが量子相移転を経験する前にQGハミルトニアンHQGがQAの励起を抑制するように動作するように、判定される。具体的には、QGは、無用の励起を減らすために、結合されたQAおよびQGまたはHtotの平均フォノンエネルギと平均エネルギレベルスペーシングとの間のミスマッチを作り出す、バスの平均フォノンエネルギとの共振を脱する。システムが量子相転移を経験した後、QGハミルトニアンHQGは、任意の励起状態からHtotの基底状態にQAの緩和を高めるように動作する。具体的には、Htotの平均エネルギレベルスペーシングは、平均フォノンエネルギと共鳴状態にある。QGは、システムおよびそのバスのスペクトル密度間の重複を作り出すことによって、熱変動を高める。熱変動は、QAが高い緩和率でHtotの基底状態に到達するのを容易にし、QAが量子局在により励起状態で早期に凍結するのを防ぐことができる。
【0038】
所望のQG関数の一例が、
図3に示される。H
totalのエネルギレベルE
0、E
1、E
2、…E
i(図示せず)は、時間tの関数として曲線で表される。t = 0では、H
totalはH
iであり、そして、t = t
Tでは、H
totalはH
Pである。t = 0からt = t
Tまでの量子アニーリング工程中、QAは、ほぼ、t = 0からt = t
1までの初期化位相、t = t
1からt = t
2までの励起位相、t = t
2からt = t
3までの緩和位相、および、t = t
3からt = t
Tまでの凍結位相を経験する。時間t
2は、量子相転移がH
totalを特徴とするシステム内で生じる時間に対応し得る。励起位相中に、QGは、矢印300、302によって示すように、増加したエネルギスペーシングが平均フォノンエネルギよりも遥かに大きくなるように、Δε
i = E
2-E
1およびΔε
0 = E
1-E
0など、隣接するエネルギレベルΔε
iの間のエネルギスペーシングを増やす。緩和位相中に、QGは、エネルギスペーシングΔε
0、Δε
1、…を平均フォノンエネルギに匹敵するように調整して、矢印304、306、308、310によって示すように、励起状態から低エネルギ状態または基底状態へのQAの緩和を促進する。
【0039】
量子アニーリング工程の異なる位相における経時的な3つのハミルトニアン、H
i、H
P、およびH
QGの相互作用が、
図4に概略的に示される。制御パラメータI(t)、P(t)、およびG(t)は、対応するハミルトニアンの曲線の形を制御する。この例では、I(t)およびP(t)は直線状であり、G(t)は放射線状である。
【0040】
加えて、QGは、HtotのQAがQAスケジュールにわたり着実に進化し、Hpの基底状態と最大の重複を有する最終的状態に到達することを可能にするために、選択することができる。理想的には、時間tTでのQAの基底状態忠実度は、1である。しかし、単位元忠実度は、限定された期間内で達成することが難しい。時間0および時間tT以外に、HtotのQAは、結合されたHp、Hi、およびHQGの混合状態にある。QAの進化は:
【0041】
【0042】
として表すことができ、但し、
【0043】
【0044】
は、時間0でのQAの状態であり、
【0045】
【0046】
は、時間tTでのQAの状態であり、そして、ρA(t)は他の時間でのQAの密度関数である。各状態
【0047】
【0048】
に確率を割り当てること、たとえば確率質量関数を使用すること、によって、QAの進化はさらに:
【0049】
【0050】
として表すことができ、但し、fG(k)は、確率質量関数k = 0,1,…であり、量子状態レベル、および
【0051】
【0052】
に対応する。基底状態忠実度が1である場合、そのとき、fG(0) = 1、およびfG(k≠0) = 0である。前述のように、そのような単位元忠実度は、実現が難しい。その代わりに、好ましいQGは:
【0053】
【0054】
のような指数分布関数を提供するように選択することができ、但し、λGは、HPと使用するのに適したQG族の分布を定義する。確率質量関数は、任意の確率分布関数でもよい。例は、ポアソン分布関数、レヴィ分布関数、およびボルツマン分布関数を含む。
【0055】
図3および
図4を参照して前述されたそれらの関数を含む、問題の好ましい関数を有するQGを判定するために、たとえば、オープン量子システムモデル、ランダム行列理論、量子モンテカルロ、および機械学習を含む、1つまたは複数の技法が、使用され得る。古典的コンピュータ、または量子プロセッサ、あるいはそれらの組み合わせなど、古典的プロセッサによって実行することができる、QGを判定するための例示的工程500が、
図5に示される。
【0056】
工程500において、エネルギ状態Htotalに関する情報(502)は、一般に、未知である。したがって、グローバル最適QGの発見は、問題ハミルトニアン自体を解くのと同じくらい難しい。しかし、これに関連してQGの適用は、その微視的自由度の変動に対して非常に頑強である。いくつかの実装形態では、本手法は、いくつかの有効な制御パラメータに依存するランダム行列理論モデルなどのQGの平均場記述を導入することである。その場合、監視されていないおよび監視されている古典的機械学習アルゴリズムのハイブリッドが、QGの巨視的自由度を事前訓練および訓練するために使用され得る。学習ステップのための十分な訓練データを生成するために、経路積分モンテカルロ、拡散モンテカルロ、スピンベクトルモンテカルロ、マルコフ連鎖モンテカルロ、疑似アニーリング、タブー探索、大近傍探索法、およびクラスタ更新などの古典的解法を含み得る、最先端の古典的(メタヒューリスティック)解法が、問題ハミルトニアンのエネルギ固有関数特性からサンプリングするために使用され得る。訓練データはまた、可能であれば、量子アニーラおよびゲートモデル量子コンピュータを含む、前の世代の量子プロセッサによって生成され得る。相転移が起こるansatz時間は、近似式t = tT/2として選択することができ、選択された古典的解法によって既にサンプリングされた問題ハミルトニアンのボルツマン分布とQAのスペクトル特性の忠実度を高めるために、学習工程中にさらに微調整することができる。
【0057】
訓練データ内の所与の問題ハミルトニアンについて、おおよそのエネルギレベルEi、エネルギレベルスペーシングΔεi、エネルギレベルスペーシングの分布、および平均エネルギレベルスペーシング
【0058】
【0059】
を含む、全ハミルトニアンのエネルギスペクトルに関するいくらかの有用な情報が、推定され得る。いくつかの実装形態では、時間tでの平均エネルギレベルスペーシングは:
【0060】
【0061】
のように推定され、但し、εi(t)は、Htotalの第iの瞬間的固有状態エネルギのエネルギであり、そして、Nは、固有状態の総数である。
【0062】
また、工程500では、Htotalを特徴とするシステムがその中に置かれたバスの平均フォノンエネルギが、計算され得る、または実験的に測定され得る(504)。近似値では、平均フォノンエネルギは、kTと考えることができ、但し、kはボルツマン定数であり、Tは温度である。平均フォノンエネルギはまた、より正確な形で計算することができる。たとえば、リンドブラード形式化などの力学のオープン量子システムモデルが、計算のために選択され得る。その選択は、量子プロセッサの較正データまたは量子トモグラフィに基づき得る。オープン量子システムモデルでは、任意の所与の温度Tで、Htotalによって表されるシステムがその中に置かれたバスの平均フォノンエネルギは、次のように定義することができる:
【0063】
【0064】
と定義することができ、但し、J(ω)は、オームのスペクトル密度、すなわち
【0065】
【0066】
、スーパーオームのスペクトル密度、すなわち
【0067】
【0068】
、ドルーデローレンツスペクトル密度、すなわち
【0069】
【0070】
、または、フラットスペクトル分布、すなわち、J(ω)=1でもよい。これらの方程式で、λは再編成エネルギであり、γはバス周波数カットオフである。
【0071】
QAの基底状態忠実度の確率質量関数が、選択される(506)。取得された情報、訓練データ、計算された平均フォノンエネルギ、および選択された確率質量関数に基づいて、工程500は、次いで、HPのQG分布を判定する(508)。たとえば、QG分布は、ランダム行列理論モデルを使用して選択されたランダム行列の、ガウス単位系アンサンブルなど、指数分布族によって表すことができる。QGまたはHQGの平均エネルギレベルスペーシング
【0072】
【0073】
と最大および最小エネルギ固有値とは、QCが要望どおりに機能することを可能にするように判定される。具体的には、QAスケジュールの第2の位相において、たとえば、
図3に示す時間t
1から時間t
2の間に、QGの平均エネルギレベルスペーシングは、
【0074】
【0075】
となるように選択され、但し、
【0076】
【0077】
は、QAおよびQGの修正された平均エネルギレベルである。この選択は、H
totの結合されたエネルギレベルスペーシングが平均フォノンエネルギよりもずっと大きいように、H
totalのエネルギレベルスペーシングを増やす。その結果、熱変動による高エネルギ状態へのQAの起こり得る励起は、抑制される。加えて、QAスケジュールの第3の位相において、たとえば、
図3に示す時間t
2から時間t
3の間に、QGの平均エネルギレベルスペーシングが:
【0078】
【0079】
を満たすように、QGはまた選択される。この選択は、Htotalのエネルギレベルスペーシングが熱変動と同様になることを可能にする。QAは、高い率で低エネルギ状態または基底状態まで緩和することができる。選択された指数分布族は、量子ハードウェアの、量子ビット間の結合など、制御可能なパラメータに関してパラメータ化され得る。
【0080】
いくつかの実装形態では、深いニューラルネットが、QG-QAシステム、またはHtotを特徴とするシステムを表すために使用され、確率論的勾配降下が、QG分布を訓練するために使用される。一例として、その訓練は、目的の所与のHtotalの所望の確率質量関数内で、経路積分モンテカルロ出力を平均で生成することができるパラメータ化された指数分布族からランダム行列の統計的に有意味の数、たとえば1000、を選択することによって、行われる。いくつかの実装形態では、その訓練は、前述の所望の平均の結合されたエネルギレベルスペーシング
【0081】
【0082】
に基づいて選択された初期QG分布で開始することができる。
【0083】
図6は、その中で制御システムが、人工知能タスクを実行するために、QAハードウェアの、量子プロセッサなどの、QAハードウェアをプログラムする、例示的工程600を示す。制御システムは、1つまたは複数の古典的、すなわち非量子、コンピュータを含み、量子コンピュータもまた含み得る。タスクは、機械可読形式で表された、機械学習最適化問題に変換される。
【0084】
制御システムが、機械可読の機械学習最適化問題を受信する(602)。制御システムが、最適化問題を設計されたH
totalのエネルギスペクトルにコード化する(606)。本コード化は、量子ビット間の結合など、QAハードウェアの構造に基づく。H
totalの一例は、イジングハミルトニアンH
SGであり、本コード化は、パラメータh
iおよびJ
ijの値を判定する。h
iおよびJ
ijなどのコード化された情報は、ハードウェアの初期化パラメータとして情報を受信する(620)QAハードウェアに提供される。QAハードウェアによって実行されることになる量子アニーリング工程中にQAを安定させるために、制御システムはさらに、たとえば、
図5の工程500を使用して判定されるQG分布から1つのQGを選択することによって、QGを考案する(608)。考案されたQGは、QAハードウェアをプログラムするためにQAハードウェアに送信されるh
i
G、J
ij
G、I
ij
GAを含む制御パラメータによって特徴を示される。
【0085】
QAハードウェアは、hiおよびJijなどの初期化パラメータを受信し(620)、そしてまた、hi
G、Jij
G、Jij
GAなどのQGの制御パラメータを受信し(622)、受信された初期化パラメータおよびQGパラメータのansatzに従って制御システムによってプログラムおよび初期化される。QAハードウェアは、量子アニーリングスケジュールを実装して(624)、Htotによって特徴を示される結合されたQA-QGシステムの固有状態を取得する。機械学習最適化問題の解は、これらの固有状態においてコード化される。所定の時間の後、QAスケジュールは終了し、QAハードウェアは、固有状態およびそれらの対応するエネルギスペクトルによって表される出力を提供する(626)。その出力は、制御システムによって、または別の古典的コンピュータもしくは量子コンピュータによって、読み取ることができる。所定の時間は、
【0086】
【0087】
程度でもよい。しかし、より短いまたは長い時間が、使用され得る。より短い時間周期は、効率を実現することができ、より長い時間周期は、高い基底状態忠実度を実現することができる。
【0088】
前述のように、QAハードウェアによって提供される出力では、QAの基底状態忠実度は、一般に、1よりも小さい。忠実度が1よりも小さいとき、QAハードウェアによって提供される1回の出力は、問題への解を正確にコード化しないことがある。いくつかの実装形態では、QAハードウェアは、複数の出力を提供するために、その問題について判定された同じQG分布から選択された、hi
G、Jij
G、Iij
GAなど、制御パラメータの異なるセットを有する制御システムによって提供される同じQGまたは異なるQGを使用し、QAスケジュールを複数回実施する。複数の出力は、統計的に分析することができ、問題または人工知能タスクが、その統計結果に基づいて、解決または実行され得る。
【0089】
具体的には、工程600において、制御システムが、QAハードウェアによって提供される出力を受信および記憶した(610)後に、制御システムは、QAハードウェアが、QAスケジュールの所定の数の反復を完了したかどうかを判定する(612)。完了していない場合、次いで、制御システムは、前に使用されたQGと同じまたは前に判定されたQG分布から選択された異なるQGでもよい、別のQGを考案することによって、ステップ608に戻る。QAハードウェアは、QGの別のセットの制御パラメータを受信し(622)、このセットの制御パラメータおよび問題をコード化する、前に判定された初期化パラメータに基づいて、制御システムによって再プログラムされる。QAスケジュールが、再び実装され(624)、別の出力が提供される(626)。QAハードウェアがQAスケジュールの所定の数の反復を完了した場合、次いで、制御システムまたは別のデータ処理システムが、すべての出力を統計的に処理して(614)問題の解を提供する。所定の数の反復は、100回以上の反復、または、1000回以上の反復でもよい。いくつかの実装形態では、工程600が、高効率で実行され、高精度で問題の解を提供することができるように、反復の数は、QAスケジュールの長さに関連して選択され得る。たとえば、各QAスケジュールの長さが比較的短い、たとえば
【0090】
【0091】
より短いとき、反復の所定の数は、比較的大きく、たとえば1000回以上の反復に、なるように選択され得る。他の状況では、各QAスケジュールの長さが、比較的長い、たとえば
【0092】
【0093】
より長いとき、反復の所定の数は、比較的小さく、たとえば1000回未満の反復に、なるように選択され得る。
【0094】
本明細書に記載されるデジタルの、すなわち非量子の、主題およびデジタル関数演算の実施形態は、デジタル電子回路で、有形に実施されたコンピュータソフトウェアまたはファームウェアで、本明細書で開示される構造物およびそれらの構造的同等物を含むコンピュータハードウェアで、または、それらのうちの1つまたは複数の組み合わせで、実装することができる。本明細書に記載されるデジタルの主題の実施形態は、1つまたは複数のコンピュータプログラム、すなわち、データ処理装置によって実行するためのまたはデータ処理装置の動作を制御するための有形の非一時的記憶媒体でコード化されたコンピュータプログラム命令の1つまたは複数のモジュール、として実装され得る。そのコンピュータ記憶媒体は、機械可読ストレージデバイス、機械可読記憶基板、ランダムまたはシリアルアクセスメモリデバイス、あるいは、それらのうちの1つまたは複数の組み合わせでもよい。別法としてまたは加えて、プログラム命令は、データ処理装置によって実行するための適切な受信装置に送信するための情報をコード化するために生成される、人工的に発生させた伝搬信号、たとえば、機械で生成された電気、光、または電磁信号、でコード化され得る。
【0095】
「データ処理装置」という用語は、デジタルデータ処理ハードウェアを示し、例として、プログラム可能なデジタルプロセッサ、デジタルコンピュータ、または複数のデジタルプロセッサもしくはコンピュータを含む、データを処理するためのすべての種類の装置、デバイス、および機械を包含する。その装置はまた、専用論理回路、たとえば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)でもよく、それらをさらに含み得る。その装置は、ハードウェアに加えて、コンピュータプログラムの実行環境を作成するコード、たとえば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、または、それらのうちの1つまたは複数の組み合わせを構成するコード、を任意で含み得る。
【0096】
プログラムとも呼ばれるまたは表されることがある、コンピュータプログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、モジュール、ソフトウェアモジュール、スクリプト、またはコードは、コンパイルされたまたはインタープリタ型言語、もしくは宣言型または手続き型言語を含む、任意の形のプログラミング言語で書くことができ、それは、独立型プログラムとして、あるいは、モジュール、構成要素、サブルーチン、またはデジタルコンピューティング環境で使用するのに適した他のユニットとして含む、任意の形で配置することができる。コンピュータプログラムは、ファイルシステム内のファイルに対応し得るが、対応する必要はない。プログラムは、他のプログラムまたはデータ、たとえば、マークアップ言語文書に、問題のプログラム専用の単一のファイルに、あるいは、複数の調整されたファイル、たとえば、1つまたは複数のモジュール、サブプログラム、またはコードの部分を記憶するファイル、に記憶された1つまたは複数のスクリプト、を保持するファイルの一部に記憶することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータで、あるいは、1つの場所に置かれた、または、複数の場所に分散され、データ通信ネットワークによって相互接続された、複数のコンピュータで実行されるように配備され得る。
【0097】
本明細書に記載される工程および論理の流れは、必要に応じて、入力データで動作し、出力を生成することによって1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行して関数を実行する、1つまたは複数の量子プロセッサで動作する、1つまたは複数のプログラム可能なデジタルコンピュータによって実行することができる。それらの工程および論理の流れはまた、専用論理回路、たとえばFPGAもしくはASIC、によって、または専用論理回路および1つまたは複数のプログラムコンピュータの組み合わせによって、実行することができ、装置もまた、それらとして実装することができる。1つまたは複数のデジタルコンピュータのシステムが特定の動作またはアクションを実行する「ように構成される」ことは、そのシステムが、動作中にその動作またはアクションをそのシステムに実行させるソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせをそこにインストールされてあることを意味する。1つまたは複数のコンピュータプログラムが特定の動作またはアクションを実行するように構成されることは、その1つまたは複数のプログラムが、デジタルデータ処理装置によって実行されるときに、その動作またはアクションをその装置に実行させる命令を含むことを意味する。
【0098】
コンピュータプログラムの実行に適したデジタルコンピュータは、汎用もしくは専用マイクロプロセッサまたはその両方、あるいは任意の他の種類の中央処理装置に基づき得る。一般に、中央処理装置は、読取り専用メモリもしくはランダムアクセスメモリまたはその両方から命令およびデータを受信することになる。コンピュータの必須要素は、命令を遂行または実行するための中央処理装置と、命令およびデータを記憶するための1つまたは複数のメモリデバイスである。中央処理装置およびメモリは、専用論理回路によって補完する、または専用論理回路に組み込むことができる。一般に、デジタルコンピュータはまた、データを記憶するための1つまたは複数のマスストレージデバイス、たとえば、磁気、光磁気ディスク、または光ディスク、を含む、あるいは、そこからデータを受信するために、もしくはそこにデータを転送するために、またはその両方のために動作可能なように結合されることになる。しかし、コンピュータは、そのようなデバイスを有する必要はない。
【0099】
コンピュータプログラム命令およびデータを記憶するのに適したコンピュータ可読媒体は、例として半導体メモリデバイスを含む、不揮発性メモリ、媒体およびメモリデバイス、たとえば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイス、磁気ディスク、たとえば、内部ハードディスクまたは取外し可能ディスク、光磁気ディスク、ならびに、CD-ROMおよびDVD-ROMディスクのすべての形を含む。
【0100】
本明細書に記載される様々なシステムまたはそれらの部分の制御は、1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体に記憶された、そして、1つまたは複数のデジタル処理デバイスで実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品において実装され得る。本明細書に記載されるシステムまたはその部分は、本明細書に記載される動作を実行するための実行可能な命令を記憶するための1つまたは複数のデジタル処理デバイスおよびメモリを含み得る装置、方法、または電子システムとして各々実装され得る。
【0101】
本明細書は、多数の特定の実装詳細を含むが、これらは、特許請求され得る範囲の制限として解釈されるべきではなく、そうではなくて、個々の実施形態に固有であり得る特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施形態との関連で本明細書に記載されたある特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて実装され得る。逆に、単一の実施形態との関連で記載された様々な特徴はまた、複数の実施形態において別個に、または任意の適切な部分的組み合わせで、実装され得る。さらに、特徴は、ある特定の組み合わせで動作するものとして前述されることがあり、そのようなものとして最初に請求されることがあるが、請求された組み合わせからの1つまたは複数の特徴は、ある場合には、その組み合わせから削除されることがあり、請求される組み合わせは、部分的組み合わせまたは部分的組合の変更形態を対象とし得る。
【0102】
同様に、動作は、特定の順番で図面に示されるが、これは、好ましい結果を達成するために、そのような動作が示された特定の順番でまたはシーケンシャルに実行されること、あるいは、すべての図示された動作が実行されることを必要とするものとして理解されるべきではない。ある特定の状況では、マルチタスキングおよび並行処理が、有利であることがある。さらに、前述の実施形態における様々なシステムモジュールおよび構成要素の分離は、すべての実施形態でそのような分離が必要とされるものとして理解されるべきではなく、記載されているプログラム構成要素およびシステムは、一般に、単一のソフトウェア製品においてともに統合されてもよく、または複数のソフトウェア製品にパッケージ化されてもよいことを理解されたい。
【0103】
本主題の特定の実施形態が、説明された。他の実施形態が、以下の特許請求の範囲内にある。たとえば、本特許請求の範囲に列挙されるアクションは、異なる順番で実行され、好ましい結果をやはり達成することがある。一例として、添付の図面に記載された工程は、好ましい結果を達成するために、示された特定の順番、またはシーケンシャルを必ずしも必要としない。ある場合には、マルチタスキングおよび並行処理が有利であることがある。
【符号の説明】
【0104】
100 量子チップ
102 単位セル
104 量子ビット
200 量子ビット
202 量子ビット
204a ジョセフソンボックス
204b ジョセフソンボックス
206 ジョセフソン接合
207 キャパシタンス
208a ジョセフソンボックス
208b ジョセフソンボックス
210 誘導カプラ