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特許7571205記録装置、レジストレーション調整方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】記録装置、レジストレーション調整方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 451
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023101323
(22)【出願日】2023-06-21
(62)【分割の表示】P 2019044611の分割
【原出願日】2019-03-12
(65)【公開番号】P2023112061
(43)【公開日】2023-08-10
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川藤 洋志
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-31612(JP,A)
【文献】特開平11-291470(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0100514(US,A1)
【文献】特開2004-1310(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0953452(EP,A2)
【文献】特開2013-240991(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0286075(US,A1)
【文献】特開2004-195704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対してドットを形成して記録画像を記録する記録手段と、
記録媒体に記録された記録画像の光学特性を測定する測定手段と、
記録媒体に対して、前記記録手段および前記測定手段を相対移動させる移動手段と、
前記記録手段、前記測定手段および前記移動手段を制御する制御手段と、
第1条件で記録された記録画像と、前記第1条件と前記記録手段および前記移動手段による制御が異なる第2条件で記録した記録画像とにより構成される第1パターンの前記測定手段による測定結果に基づいて、前記第1条件と前記第2条件とにおける記録位置のずれを解消するための第1調整値を取得する第1取得手段と、
前記第1調整値により調整された状態で、前記第1条件で記録された記録画像と前記第2条件で記録された記録画像とにより前記第1パターンと異なる構成の第2パターンに基づいて、前記ずれを解消するための第2調整値を取得する第2取得手段と、
を有し、前記第1調整値および前記第2調整値に基づいて、前記制御手段が記録位置を調整して記録する記録装置であって、
前記制御手段は、前記測定手段により測定された前記第1パターンの濃度情報に基づいて、前記第1パターンの濃度情報が閾値以上か否かを判断し、該濃度情報が前記閾値未満であれば前記第2パターンを設定濃度よりも高濃度で記録し、該濃度情報が前記閾値以上であれば前記第2パターンを前記設定濃度で記録するように、前記記録手段と前記移動手段とを制御することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第2取得手段は、前記測定手段により測定された前記第2パターンの濃度情報に基づいて、前記第2調整値を取得することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
記録媒体の種類に関する情報を入力可能な入力手段と、
前記入力手段により入力された前記情報に基づいて、前記閾値と前記高濃度とを設定する設定手段と、をさらに有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記第2調整値は、前記第1調整値よりも調整精度が高く、かつ、調整可能な範囲が狭いことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第1パターンは、前記第1条件で記録されたパッチと、前記第2条件で記録されたパッチとが、記録媒体に対する前記記録手段の相対移動方向と直交する方向に、間隔を空けて配置され、
前記第2パターンは、前記第1条件で所定間隔を開けて記録された複数のパッチに対して、前記第2条件で前記所定間隔を空け、前記第1条件で記録されたパッチから前記相対移動方向にずらされ、かつ、前記第1条件で記録されたパッチに重ねて複数のパッチが記録された領域が複数形成され、複数の前記領域では、前記第2条件で記録されるパッチのずらし量が異なる
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記第1取得手段は、前記第1条件で記録されたパッチと前記第2条件で記録されたパッチと間の距離情報に基づいて前記第1調整値を取得し、
前記第2取得手段は、前記領域の濃度情報に基づいて前記第2調整値を取得することを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
情報を入力可能な入力手段をさらに有し、
前記第2取得手段は、前記第2パターンに基づいて入力された入力結果に基づいて、前記第2調整値を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項8】
前記入力手段により入力された記録媒体に関する情報に基づいて、前記閾値と前記高濃度とを設定する設定手段をさらに有することを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記第1パターンは、前記第1条件で記録されたパッチと、前記第2条件で記録されたパッチとが、記録媒体に対する前記記録手段の相対移動方向と直交する方向に、間隔を空けて配置され、
前記第2パターンは、前記第1条件で相対移動方向と直交する方向に延在するライン状に記録された基準画像に対して、前記第2条件で前記基準画像から前記相対移動方向にずらされ、前記直交する方向に延在するライン状に記録される比較画像が、前記直交する方向に連続して形成された領域が複数形成され、複数の前記領域では、前記第2条件で記録される比較画像のずらし量が異なる
ことを特徴とする請求項7または8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記第1取得手段は、前記第1条件で記録されたパッチと前記第2条件で記録されたパッチとの距離情報に基づいて前記第1調整値を取得し、
前記第2取得手段は、前記基準画像に対して前記比較画像をずらしたずらし量に基づいて入力された情報に基づいて前記第2調整値を取得する
ことを特徴とする請求項9に記載の記録装置。
【請求項11】
情報を入力可能な入力手段をさらに有し、
前記第2取得手段において、
前記第2パターンの前記測定手段による測定結果に基づいて、前記第2調整値を取得する第1処理と、
前記第2パターンに基づいて入力された入力結果に基づいて、前記第2調整値を取得する第2処理と
を選択的に実行可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項12】
前記入力手段により入力された記録媒体の種類に関する情報に基づいて、前記第1処理または前記第2処理の一方を通知する通知手段をさらに有することを特徴とする請求項11に記載の記録装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記高濃度の前記第2パターンについて、前記設定濃度の前記第2パターンを記録する際のドット数の2倍のドット数で記録することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項14】
ドットは、前記記録手段に設けられたノズル列を形成する各ノズルから吐出されるインクによって形成され、
前記第1条件では、記録媒体に対して前記記録手段を第1方向に相対移動する際に、第1ノズル列からインクを吐出し、
前記第2条件では、記録媒体に対して前記記録手段を前記第1方向に相対移動する際に、第2ノズル列からインクを吐出する
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項15】
ドットは、前記記録手段に設けられたノズル列を形成する各ノズルから吐出されるインクによって形成され、
前記第1条件では、記録媒体に対して前記記録手段を第1方向に相対移動する際に、第1ノズル列からインクを吐出し、
前記第2条件では、記録媒体に対して前記記録手段を前記第1方向と逆方向の第2方向に相対移動する際に、第1ノズル列からインクを吐出する
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項16】
記録媒体に対して相対移動しながらドットを形成して記録する記録手段によって、第1条件で記録された記録画像と第2条件で記録された記録画像とにより構成される第1パターンを記録する第1記録工程と、
記録画像の光学特性を測定可能な測定手段によって、前記第1パターンを測定する第1測定工程と、
前記第1測定工程での第1の測定結果に基づいて、前記第1条件と前記第2条件とによる記録位置のずれを解消するための第1調整値を取得する第1取得工程と、
前記第1調整値により調整された状態で、記録媒体に対して前記記録手段によって、前記第1条件で記録された記録画像と前記第2条件で記録された記録画像とにより前記第1パターンと異なる構成の第2パターンを記録する第2記録工程と、
前記第2パターンに基づいて、前記ずれを解消するための第2調整値を取得する第2取得工程と、
前記第1調整値と前記第2調整値とに基づいて、記録時の記録位置を調整するレジストレーション調整工程と
を備えたレジストレーション調整方法であって、
前記第2記録工程では、前記測定手段により測定された前記第1パターンの濃度情報に基づいて、前記第1パターンの濃度情報が閾値以上か否かを判断し、該濃度情報が前記閾値未満であれば前記第2パターンを設定濃度よりも高濃度で記録し、該濃度情報が前記閾値以上であれば前記第2パターンを前記設定濃度で記録する
ことを特徴とするレジストレーション調整方法。
【請求項17】
コンピュータに請求項16に記載のレジストレーション調整方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に対してドットを形成して記録する記録装置、記録位置を調整するレジストレーション調整方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、シリアルスキャン方式のインクジェット記録装置において、往方向走査での記録と、復方向走査での記録とで、記録ヘッドから吐出されるインク滴の着弾位置を一致させるため技術が開示されている。即ち、特許文献1の技術では、記録ヘッドから吐出されたインクにより記録されたパターンを読み取り、読み取った結果に基づいてインク滴の着弾位置を一致させるための調整値を取得する。なお、記録されたパターンは、記録パターンの濃度に基づいて読み取られている。一般に、吐出されたインク滴の着弾位置のずれ量はレジストレーションと称される。本願明細書において、吐出されたインク滴の着弾位置のずれ量を一致させるように調整することを「レジストレーション調整」と適宜に称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-240991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクを吐出する記録ヘッドでは、インク特性の製造バラツキ、吐出口の製造公差などによって、吐出されるインク滴の量などが異なっている。また、各吐出口は、インクによる膨潤や経年劣化によって、吐出されるインク滴の量などが変化する。従って、こうした記録ヘッドにより記録されたパターンでは、濃度の低下を招来する虞がある。
【0005】
さらに、記録装置では、インク滴が記録媒体に着弾して形成されるドットの粒状感を低減するために、シアン、マゼンタ、イエローなどのインクについて、淡インクが用いられる場合がある。淡インクやイエローインクは明度が高い。従って、淡インクやイエローインクにより形成されたドットは、マゼンタインクやシアンインクなどの他の色のインクにより形成されたドットと比較して、光の吸収が少ない。このため、淡インクやイエローインクでは、ドットを形成した部分と、ドットを形成していない部分との光学特性測定時のS/N比が低くなる。
【0006】
このため、特許文献1の技術では、インクの吐出状態またはインクの種類によっては、記録されたパターンを正確に読み取ることができずに、正確なレジストレーション調整を実行することができなくなる虞があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、インクの吐出状態やインクの種類によらず、正確なレジストレーション調整を実行することができる記録装置、レジストレーション調整方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、記録媒体に対してドットを形成して記録画像を記録する記録手段と、記録媒体に記録された記録画像の光学特性を測定する測定手段と、記録媒体に対して、前記記録手段および前記測定手段を相対移動させる移動手段と、前記記録手段、前記測定手段および前記移動手段を制御する制御手段と、第1条件で記録された記録画像と、前記第1条件と前記記録手段および前記移動手段による制御が異なる第2条件で記録した記録画像とにより構成される第1パターンの前記測定手段による測定結果に基づいて、前記第1条件と前記第2条件とにおける記録位置のずれを解消するための第1調整値を取得する第1取得手段と、前記第1調整値により調整された状態で、前記第1条件で記録された記録画像と前記第2条件で記録された記録画像とにより前記第1パターンと異なる構成の第2パターンに基づいて、前記ずれを解消するための第2調整値を取得する第2取得手段と、を有し、前記第1調整値および前記第2調整値に基づいて、前記制御手段が記録位置を調整して記録する記録装置であって、前記制御手段は、前記測定手段により測定された前記第1パターンの濃度情報に基づいて、前記第1パターンの濃度情報が閾値以上か否かを判断し、該濃度情報が前記閾値未満であれば前記第2パターンを設定濃度よりも高濃度で記録し、該濃度情報が前記閾値以上であれば前記第2パターンを前記設定濃度で記録するように、前記記録手段と前記移動手段とを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクの吐出状態やインクの種類によらず、適正にレジストレーション調整することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による記録装置の概略構成図。
図2】記録装置の制御系のハードウェア構成を示すブロック図。
図3】キャリッジ近傍の構成を示す模式図。
図4】記録ヘッドにおけるノズル列の構成を説明する図。
図5】反射センサの構成を説明する図。
図6】第1レジストレーション処理の詳細な処理内容を示すフローチャート。
図7】第1粗調整処理の詳細な処理内容を示すフローチャート。
図8】第1粗調整処理で用いる粗調整パターンを示す図。
図9】粗調整パターンにおけるパッチおよびその読み取りを説明する図。
図10】第1微調整処理の詳細な処理内容を示すフローチャート。
図11】第1微調整処理で用いる微調整パターンを説明する図。
図12】微調整パターンの各領域における濃度差を示す図。
図13】第2レジストレーション処理の詳細な処理内容を示すフローチャート。
図14】第2粗調整処理の詳細な処理内容を示すフローチャート。
図15】第2微調整処理の詳細な処理内容を示すフローチャート。
図16】ユーザ判定用の微調整パターンを説明する図。
図17】第3レジストレーション処理の詳細な処理内容を示すフローチャート。
図18】第3微調整処理の詳細な処理内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による記録装置、レジストレーション調整方法およびプログラムの一例を詳細に説明する。なお、本願明細書において、「記録」とは、文字、図形など有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。さらに、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターンなどを形成する、または、媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0012】
「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチックフィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革など、インクを受容可能なものも表すものとする。また、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様、広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターンなどの形成または記録媒体の加工、あるいは、インクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化など)に供され得る液体を表すものとする。さらに、「ノズル」とは、特に断りのない限り、インクを吐出する吐出口、これに連通する液路およびインクの吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括したものを表す。
【0013】
(第1実施形態)
まず、図1乃至図12を参照しながら、本発明による記録装置の第1実施形態について説明する。
【0014】
(記録装置の構成)
図1(a)は、本発明による記録装置の概略構成図である。図1(b)は、図1(a)の記録装置の上部の一部を破断した図である。
【0015】
図1(a)(b)に示す記録装置10は、例えば、A0やB0などのサイズの大きな記録媒体に対して記録画像を記録することができる記録装置である。記録装置10は、前面に手差し挿入口12が設けられ、その下部には前面へ開閉可能なロール紙カセット14が設けられている。記録紙などの記録媒体は、手差し挿入口12またはロール紙カセット14から記録装置10の内部へと供給される。記録装置10は、一対の脚部16に指示された本体部18と、排出された記録媒体を積載して収容可能なスタッカ20と、内部が透視可能であり、かつ、開閉可能なアッパカバー22とを備えている。また、記録装置10は、所定方向に延在する本体部18の一方の端部側に、ユーザにより操作可能な操作部24を備えるとともに、記録ヘッド34(後述する)に供給するためのインクを貯留するインクタンク26が着脱可能に備えられている。
【0016】
記録装置10は、本体部18が延在する所定方向と交差(本実施形態では直交)する矢印B方向に記録媒体を搬送するための搬送ローラ28が設けられている。また、記録装置10は、所定方向と平行な矢印A方向に、往復移動可能に案内支持されたキャリッジ30を備えている。キャリッジ30は、キャリッジモータ54(図2参照)の駆動力により駆動するキャリッジベルト32を介して矢印A方向に往復移動する構成となっている。また、キャリッジ30は、記録媒体に対してインクを吐出するための記録ヘッド34が着脱可能に設けられている。従って、記録ヘッド34は、記録装置10において、キャリッジ30を介して矢印A方向に往復移動可能な構成となっている。さらに、記録装置10は、記録ヘッド34のノズルの目詰まりなどによるインク吐出不良を解消させるための吸引式インク回復ユニット36を備えている。なお、以下の説明において、キャリッジ30が往復移動する矢印A方向を「主走査方向」と称し、矢印A方向と交差する矢印B方向を「副走査方向」と称する。
【0017】
本実施形態では、キャリッジ30において、2つの記録ヘッド34a、34bが矢印A方向に沿って並設されている。記録ヘッド34a、34bはそれぞれ、同じ構成となっており、本実施形態では、6色のインクを吐出する構成となっている。従って、キャリッジ30には、記録媒体に対してカラー記録を行うために、12色のカラーインクを吐出可能な記録ヘッド34が備えられていることとなる。
【0018】
記録装置10において記録媒体に対して記録を行う場合には、まず、搬送ローラ28によって記録媒体を記録開始位置まで搬送する。次に、キャリッジ30を介して記録ヘッド34を主走査方向に走査しながら記録媒体に対する記録動作を行う。その後、搬送ローラ28によって記録媒体を所定量だけ搬送する搬送動作を行う。このようにして、記録動作と搬送動作とを交互に繰り返し実行することによって、記録媒体に対して記録を行うこととなる。記録が終了した記録媒体は、スタッカ20に排出される。記録装置10では、記録ヘッド34が記録部として機能し、搬送ローラ28およびキャリッジ30が記録媒体に対して記録ヘッド34を相対移動させる移動部として機能している。なお、記録装置10では、主走査方向が相対移動方向となっている。
【0019】
(制御系のハードウェア構成)
次に、記録装置10における、記録を実現するための制御系のハードウェア構成をについて説明する。図2は、記録装置10における記録を実現するための制御系のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0020】
記録装置10は、全体の動作を制御するコントローラ40を備えている。コントローラ40は、MPU42と、ROM44と、特殊用途集積回路(ASIC)46と、RAM48と、システムバス50と、A/D変換器52を備えている。ROM44は、種々の処理に対応したプログラム、所要のテーブル、その他の固定データなどを格納する。ASIC46は、キャリッジモータ54の制御、搬送ローラ28を駆動する搬送モータ56の制御および記録ヘッド34の制御のための制御信号などを生成する。RAM48は、画像データの展開領域やプログラム実行のための作業領域などとして用いられる。システムバス50は、MPU42、ASIC46、RAM48を相互に接続してデータの授受を行う。A/D変換器52は、後述するセンサ群70からアナログ信号を入力して、A/D変換し、デジタル信号をMPU42に供給する。
【0021】
記録装置10は、画像データの供給源となるホスト装置58とインタフェース(I/F)60を介して接続されている。ホスト装置58としては、例えば、汎用のパーソナルコンピュータ、画像読み取り用のリーダあるいはデジタルカメラなどを用いることができる。ホスト装置58は、記録装置10との間で、I/F60を介して画像データ、コマンド、ステータス信号などを送受信する。画像データは、例えば、ラスタ形式で入力される。
【0022】
記録装置10には、ユーザからの指示を受けてコントローラ40に対してスイッチ信号を出力する複数のスイッチからなるスイッチ群62が設けられている。スイッチ群62は、例えば、記録装置10に電力を投入するための電源スイッチ64と、記録動作の開始を指示するためのプリントスイッチ66と、記録ヘッド34に対する回復処理の実行を指示するための回復スイッチ68とを有する。また、記録装置10には、記録装置10の状態を検出して検出信号を出力する複数のセンサからなるセンサ群70が設けられている。センサ群70は、例えば、搬送経路における記録媒体の位置を検出する位置センサ72と、記録装置10の温度を検出する温度センサ74とを有する。さらに、記録装置10には、電力供給装置82が設けられている。電力供給装置82は、コントローラ40など、作動に電力を必要とする記録装置10の各構成部材に対して、電力を供給する。
【0023】
コントローラ40は、キャリッジモータドライバ76を介してキャリッジモータ54に対して制御信号を出力して、キャリッジ30の主走査方向における走査を制御する。また、コントローラ40は、搬送モータドライバ78を介して搬送モータ56に対して制御信号を出力して、搬送ローラ28による記録媒体の搬送を制御する。
【0024】
コントローラ40は、ヘッドドライバ80を介して記録ヘッド34に対して制御信号を出力して、記録ヘッド34によるインクの吐出などを制御する。具体的には、コントローラ40では、記録ヘッド34による記録の際に、ASIC46がRAM48の記憶領域に直接アクセスしながら記録ヘッド34に対して、例えば、インク吐出用のヒータなどの記録素子を駆動するための信号を出力する。
【0025】
(キャリッジ周辺の詳細な構成)
次に、記録装置10におけるキャリッジ30周辺の構成について説明する。図3は、記録装置10におけるキャリッジ30周辺の構成を模式的に示す正面図である。キャリッジ30は、主走査方向に延在するシャフト84に往復移動可能に支持されている。キャリッジ30には、記録ヘッド34を着脱可能な装着部30a、30bが設けられている。この装着部30a、30bにそれぞれ、記録ヘッド34a、34bが装着される。また、キャリッジ30には、主走査方向の往方向の下流側に反射センサ86が設けられている。反射センサ86は、記録媒体に記録された記録画像の光学特性を測定可能な構成である。これにより、反射センサ86は、キャリッジ30を介して主走査方向に往復移動可能な構成となっている。記録装置10では、搬送ローラ28とキャリッジ30とが、記録媒体に対して反射センサ86を相対移動させる移動部として機能している。また、図2のように、搬送ローラ28およびキャリッジ30は、コントローラ40によりその動作が制御されている。従って、コントローラ40が上記移動部、つまり、搬送ローラ28、キャリッジ30および記録ヘッド34の移動を制御する制御部として機能している。
【0026】
キャリッジ30には、エンコーダ118(図5(b)参照)が設けられており、エンコーダ118は、主走査方向に沿って設けられたスケール88を読み取る。エンコーダ118において読み取ったカウント値は、キャリッジ30の移動領域の主走査方向における往方向の最上流側に位置する原点センサ90によってリセットされる。従って、エンコーダ118によるカウント値は原点センサ90の位置からのカウント値となる。
【0027】
記録媒体Sは、搬送ローラ28によって搬送され、ピンチローラ(不図示)によって押圧されて平坦なプラテン92上に保持される。本実施形態では、サイズがA0、B0などの大きなサイズの記録媒体Sを記録可能であるため、プラテン92は、主走査方向に長く、かつ、複数に分割されて構成されている。
【0028】
(記録ヘッドの構成)
次に、記録ヘッド34の構成について説明する。図4(a)は、記録ヘッド34の底面図である、図4(b)は、記録ヘッド34に設けられたチップの拡大構成図である。記録ヘッド34a、34bは、互いに同じ構成となっている。従って、以下の説明では、記録ヘッド34aについての構成について詳細に説明し、記録ヘッド34bについては記録ヘッド34aと異なる点についてのみ説明する。
【0029】
記録ヘッド34aは、6つのチップC1~C6が設けられており、各チップからは互いに異なるインクが吐出される。チップC1~C6はそれぞれ同じ構成である。記録装置10では、記録ヘッド34a、34bがキャリッジ30に搭載されているため、合計12色のインクが吐出可能となっている。12色としては、例えば、BK(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、PC(淡シアン)、PM(淡マゼンタ)、GY(グレー)、MBK(顔料ブラック)、PGY(淡グレー)、R(赤)、G(緑)、B(青)である。
【0030】
チップC1~C6は、記録ヘッド34aがキャリッジ30に装着されたときに、副走査方向に延在するように、主走査方向に沿って並設されている。また、チップC1~C6にはそれぞれ、2つのノズル列94、96が設けられている。ノズル列94、96は、複数のノズル98が副走査方向に沿って2列に配置されて形成されている。そして、一方の列に対して他方の列が副走査方向にずれて配置されている。ここで、各ノズル列において、副走査方向の一方の端部から他方の端部に向かって順に番号を付すとき、奇数番号のノズルで構成される列をEven列100、偶数番号のノズルで構成される列をOdd列102と称することとする。なお、ノズル列94、96において、ノズル98の配列方向は、主走査方向と交差していれば良く、副走査方向に限定されるものではない。
【0031】
Even列100に対して、Odd列102は600dpiの解像度に対応する間隔を開けて形成されている。なお、dpi(dots par inch)は、ドット密度、つまり、解像度を意味する。また、Even列100に対して、Odd列102は、副走査方向において1200dpiの解像度に対応する量だけ、他方の端部側にずれて形成されている。さらに、ノズル列94のEven列100、Odd列102に対して、ノズル列96のEven列100、Odd列102は、副走査方向において2400dpiの解像度に対応する量だけ、他方の端部側にずれて形成されている。従って、記録ヘッド34aとしては、副走査方向に2400dpiの解像度で記録することができる。このように、記録ヘッド34では、配列されたノズル列間の相対的な位置がずらされてチップ上に構成されているために、高い解像度で画像を形成することができるようになる。
【0032】
記録ヘッド34a、34bでは、記録の際に、各チップの各ノズル列における同じノズル番号のノズルから吐出されるインクが、記録媒体上で同じ位置に着弾するように、ノズル列間の間隔に応じて吐出タイミングを異ならせて各ノズルが駆動される。ノズル列の間隔としては、例えば、ノズル列94、96におけるEven列100とOdd列102との間隔g1、ノズル列94、96のEven列100間の間隔g2、ノズル列94のEven列100とノズル列96のOdd列102との間隔g3である。
【0033】
しかしながら、製造公差などによって、各記録ヘッド34では、こうしたノズル列間の間隔にバラツキが生じ、その分、吐出したインク滴の着弾位置、つまり、ドットの形成位置である記録位置にずれが生じる。このため、吐出したインク滴の着弾位置のずれをなくすように調整するレジストレーション調整を行う必要がある。レジストレーション調整では、調整値を取得し、取得した調整値を用いてインク滴の吐出タイミングなどを調整することとなる。記録ヘッド34の往復方向での移動時に記録する双方向記録を実行する記録装置では、異なる2つのノズル列間についてのレジストレーション調整を行うだけでなく、所定ノズル列における往方向、復方向間についてのレジストレーション調整を行う必要がある。
【0034】
(レジストレーション調整)
・レジストレーション調整の種類
レジストレーション調整では、対象となるノズル列におけるインク滴の吐出のタイミングを調整することで、基準となるノズル列からのインク滴の着弾位置と、対象となるノズル列からのインク滴の着弾位置とを一致させるように調整可能な調整値を取得する。この調整値は、調整の対象によっていくつかの種類がある。例えば、Even-Odd列間調整値、ノズル列間調整値、往復間調整値、および、チップ間調整値である。
【0035】
Even-Odd列間調整値は、Even列100とOdd列102との間のインク滴の着弾位置のずれを調整するための調整値である。具体的には、Even列100およびOdd列102から吐出したインク滴の記録媒体上の着弾位置が一致するように、例えば、Odd列102におけるインクの吐出タイミングを調整するための調整値である。各チップC1~C6について調整値が取得される。
【0036】
ノズル列間調整値は、ノズル列94とノズル列96との間のインク滴の着弾位置のずれを調整するための値である。具体的には、ノズル列94、96それぞれのEven列100から吐出したインク滴の記録媒体上の着弾位置が一致するように、例えば、ノズル列96のEven列100におけるインクの吐出タイミングを調整するための調整値である。各チップC1~C6について調整値が取得される。Odd列102については、ノズル列間調整値と、ノズル列94、96それぞれのEven-Odd列間調整値とを加算することによって取得することができる。
【0037】
往復間調整値は、往方向での記録時および復方向での記録時のインク滴の着弾位置のずれを調整するための調整値である。具体的には、ノズル列94のEven列100の往方向の記録時および復方向の記録時のインク滴の着弾位置とが一致するように、例えば、復方向の記録時の当該Even列100のインクの吐出タイミングを調整するための調整値である。各チップC1~C6について調整値が取得される。
【0038】
チップ間調整値は、基準となるチップと他のチップとのインク滴の着弾位置のずれを調整するための値である。具体的には、基準とするチップおよび対象とするチップのノズル列94のEven列100のインク滴の着弾位置を一致するように、例えば、対象とするチップのノズル列94のEven列からのインクの吐出のタイミングを調整するための調整値である。例えば、ブラックインクを吐出するチップを基準とするチップとする。
【0039】
・レジストレーション処理のための構成
図5(a)は、レジストレーション調整のための調整値を取得するレジストレーション処理に用いる反射センサ86の構成を示す図である。図5(b)は、反射センサ86の制御系のハードウェア構成を示す図である。
【0040】
記録装置10は、搬送ローラ28とキャリッジ30とによって、反射センサ86を記録媒体に対して相対移動させて、記録媒体上の記録画像を測定する測定動作を行う。反射センサ86は、インクが吐出された記録媒体Sの記録面Sfに光を照射するLED104と、記録面Sfからの反射光を受光するフォトダイオード106とを備えている。LED104による光の照射エリアと、フォトダイオード106による光の検出エリアとは、反射面(記録面Sf)で重なるように検出スポットDsを構成する。本実施形態では、検出スポットDsの大きさは5mm×5mmとするが、検出スポットDsの大きさはこれに限定されるものではない。反射センサ86では、記録面Sfに形成されたパッチP0に光を照射することで、その濃度を反映した反射強度のレベルを検出することができる。例えば、同じ色のパッチP0ではその濃度が、薄いほど反射強度は強くなり、濃いほど反射強度は弱くなる。
【0041】
反射センサ86は、ASIC46によりその動作が制御される。LED104は、R(赤)、G(緑)、B(青)の三原色を選択的に発光することができる。LED104は、LEDドライバ108によって制御され、検出対象となるパッチの色の応じて、発光する色を変更することができる。フォトダイオード106は、受光結果に基づく受光信号をアナログ処理部(AFE:アナログフロントエンド)110に出力する。AFE110では、入力された受光信号に対して、信号増幅処理、ノイズ除去のためのローパスフィルタ処理などを行う。
【0042】
AFE110で処理されたアナログ信号は、ASIC46におけるA/D変換器112を介してデジタル信号に変換されてASIC46に入力される。また、AFE110で処理されたアナログ信号は、コンパレータ114に入力され、コンパレータ114からの出力された信号が割込み信号として、ASIC46における割り込みポート116に入力される。
【0043】
ASIC46は、MPU42と協働して反射センサ86からの出力信号とエンコーダ118からの位置信号の同期をとり、キャリッジ30の位置に対応した濃度検出信号として、反射センサ86からの信号を処理する。ASIC46には、RAM48が接続されており、RAM48において、読み取ったパッチのデータやエンコーダ118から出力されるカウント値を記憶する。記録装置10では、反射センサ86が、記録媒体に記録された記録画像を測定する測定部として機能している。
【0044】
・レジストレーション処理
次に、図6乃至図12を参照しながら、第1実施形態による記録装置で実行する第1レジストレーション処理について説明する。図6は、第1レジストレーション処理の処理内容を示すフローチャートである。図7は、第1レジストレーション処理における第1粗調整処理の処理内容を示すフローチャートである。図8は、粗調整パターンを示す図である。図9(a)は、パッチの狙い位置と検出範囲とを示す図である。図9(b)は、パッチを反射センサ86で検出したときの検出信号の変化を示す図である。図10は、第1レジストレーション処理における第1微調整処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0045】
記録装置10で実行される第1レジストレーション処理では、図6のように、2段階調整によってインク滴の着弾位置の調整を行う。即ち、まず、調整値の調整範囲の広い距離検出方式によって粗調整処理を行う。その後、粗調整処理で取得した調整値を適用した状態で、調整値の調整範囲は狭いが調整精度の高い濃度方式によって微調整処理を行って調整値を取得する。なお、調整値を適用した状態とは、調整値によりインクの着弾位置が調整された状態である。図6の第1レジストレーション処理、図7の第1粗調整処理および図10の第1微調整処理のそれぞれフローチャートで示される一連の処理は、MPU42によりROM44に格納されたプログラムをRAM48に展開し実行される。あるいは、各フローチャートにおけるステップの一部または全部の機能をASICや電子回路などのハードウェアで実行してもよい。
【0046】
ユーザによって、例えば、ホスト装置58を介して、第1レジストレーション処理の開始が指示されると、記録装置10において、図6に示す第1レジストレーション処理が開始される。第1レジストレーション処理が開始されると、まず、第1粗調整処理を行う(S602)。第1粗調整処理では、図7のように、まず、複数のパッチから構成される粗調整パターン(第1パターン)を記録する(S702)。なお、第1粗調整処理が開始される際には、濃度不足フラグを初期化してオフに設定する。粗調整パターンは、行(以下、「Line」とも称する。)ごとに、記録時の走査方向あるいは用いられるノズル列を異ならせた5種類について、それぞれ同一条件で記録された5つのパッチPが形成されている。本実施形態では、Line1では、往方向の移動の際に、ノズル列94のOdd列からインクを吐出して各パッチPが形成される。Line2では、復方向の移動の際に、ノズル列94のEven列からインクを吐出して各パッチPが形成される。Line3では、往方向の移動の際に、ノズル列94のEven列からインクを吐出して各パッチPが形成される。Line4では、往方向の移動の際に、ノズル列96のEven列からインクを吐出して各パッチPが形成される。Line5では、往方向の移動の際に、ノズル列96のOdd列からインクを吐出して各パッチPが形成される。
【0047】
各パッチPは、図9(a)のように、濃度が均一の矩形形状となっている。パッチPの主走査方向の長さは少なくとも反射センサ86の検出スポットDsよりも長くする。また、パッチPの副走査方向の長さは検出スポットDsよりも長くすることが好ましい。パッチPの形状は、反射センサ86で検出する際の信号立ち上がりを急峻とするために、キャリッジ30の移動方向である主走査方向と直交するようにエッジが形成された矩形形状とする。また、濃度が高いほうが、パッチが形成された領域と形成されていない領域とが明確になり、反射センサ86による受光信号のコントラストが高くなる。このため、各パッチPは、濃度均一で高濃度となるように形成される。
【0048】
パッチPは、反射センサ86による主走査方向の狙い位置Qがパッチ中心と一致するように形成される。このとき、レジストレーションによってずれた位置にパッチは形成されることがある。従って、こうした想定されるずれに対して、主走査方向におけるパッチP間の間隔Gは余裕を持って配置される。パッチPの検出の際には、狙い位置Qを中心にした検出範囲Rの中でパッチ位置が検出される。
【0049】
次に、n=1とし(S704)、粗調整パターンにおけるLine「n」のパッチを読み取って(S706)、パッチの位置情報を取得する(S708)。S706では、キャリッジ30を主走査方向に移動することで、反射センサ86によりLine「n」における5つのパッチPを読み取ることができる位置まで、記録媒体Sを副走査方向で移動する。そして、キャリッジ30を主走査方向に移動して、Line「n」の5つのパッチPを読み取る。
【0050】
S708では、反射センサ86の検出信号(受光信号)に基づいて、Line「n」の5つのパッチPの位置情報および濃度情報を取得する。ここで、図9(b)には、反射センサ86によるパッチPの測定結果、具体的には、検出スポットDsの中心位置を基準として検出した検出信号の変化が示されている。この変化によれば、パッチPが検出スポットDsにかかることで、検出した検出信号Si(受光信号)の強度は低下し、検出スポットDsが全てパッチPに入ると、均一なレベルUlで安定する。この際、コンパレータ114において検出信号Siを閾値Thと比較し、検出信号Siの強度が閾値Thを下回った時点で割込み信号を発生させる。閾値Thは、図9(b)では、パッチPが形成された領域での検出値と、パッチPが形成されていない領域での検出値の中間値としている。なお、この閾値Thは、粗調整パターンの各パッチの濃度の測定を事前に行って算出する。このとき測定されたパッチの濃度は、後述するS714における濃度判定の際に用いられる。
【0051】
ASIC46は割込み信号に基づいて、その時点のエンコーダ118によるキャリッジ30の位置を取得する。キャリッジ30が移動しながらパッチPを検出するので、主走査方向と直交するパッチPの両辺であるエッジ位置2点を検出することができる。検出されたエッジ位置2点間の中心をパッチPの位置情報Clとして取得する。また、検出信号Siにおいて、均一となったレベルUl(図9(b)参照)を濃度情報として取得する。取得した位置情報は、主走査方向の原点位置を基準としている。また、取得した位置情報および濃度情報は、パッチ番号と関連付けられてRAM48に記憶される。なお、パッチ番号とは、粗調整パターンにおける各パッチに付された通し番号である。
【0052】
その後、粗調整パターンにおける全てのLineでパッチを読み取ったか否かを判断し(S710)、全てのLineでパッチを読み取っていないと判断されると、nをインクリメントし(S712)、S706に戻る。また、S710において、全てのLineでパッチを読み取ったと判断されると、パッチの濃度情報(以下、単に「濃度」とも称する。)が所定濃度以上か否かを判断する(S714)。所定濃度は、詳細は後述するが、閾値Thを設定する際に取得した粗調整パターンのパッチの濃度に応じて設定されている。S714では、全てのパッチPが所定濃度以上のときには、パッチPの濃度が所定濃度以上であると判断し、それ以外のときには、パッチPの濃度が所定濃度以上でない、つまり、所定濃度未満であると判断する。
【0053】
S714において、パッチPの濃度が所定濃度未満であると判断されると、濃度不足フラグをオンとして(S716)、後述するS718に進む。一方、S714において、パッチPの濃度が所定濃度以上であると判断されると、濃度不足フラグがオフのままS718に進み、m=1とし、対象とする2つのLine間の第m列の位置情報を比較する(S720)。S720では、例えば、往復間調整値を算出する場合は、インクを吐出するノズル列が同じで、記録時の走査方向が異なるLine2の第m列のパッチの位置情報と、Line3の第m列のパッチの位置情報とを比較する。
【0054】
次に、2つの位置情報の差分を取得する(S722)。即ち、第m列の2つのパッチ間の距離情報を取得する。往方向で記録したパッチPを基準とすると、S722では、Line3の第m列のパッチPの位置情報から、Line2の第m列のパッチPの位置情報とを差し引いた値を取得する。取得した差分は、パッチ番号と関連付けられてRAM48に記憶される。その後、全ての列でパッチの比較を行ったか否かを判断し(S724)、全て列でのパッチの比較を行っていないと判断されると、mをインクリメントし(S726)、S720に戻る。一方、S724において、全てのパッチの比較を行ったと判断されると、S722で取得した各列における差分、つまり、距離情報の平均値を第1粗調整処理における調整値(第1調整値)として取得し(S728)、S604に進む。こうした第1粗調整処理はコントローラ40により実行される。即ち、記録装置10では、コントローラ40が、粗調整パターンに基づいて調整値を取得する第1取得部として機能している。
【0055】
図6に戻る。第1粗調整処理が終了すると、S604に進み、記録装置10において、第1粗調整処理で取得した調整値を適用する。具体的には、取得した調整値が往復間調整値であれば、往復間調整値に基づいてインク吐出のタイミングを調整する。インクの吐出は、目標とする着弾位置にインク滴が着弾するように、エンコーダの位置信号に基づいて吐出パルスを生成する。
【0056】
例えば、往復間調整値が、往方向での記録に対して復方向での記録が主走査方向の一方の端部側に「T」だけずれる「+T」であるとする。なお、本実施形態において、往方向(第1方向)は、主走査方向の一方の端部側から他方の端部側に向かう方向であり、往方向と逆方向の復方向(第2方向)は、主走査方向の他方の端部側から一方の端部側に向かう方向である。往復間調整値に基づいて、往方向での記録におけるインク滴の着弾位置と一致するように、復方向での記録において往復間調整値を適用する。具体的には、復方向での記録によるインク滴が「T」だけ一方の端部側に着弾するように、往復間調整値「+T」に対応して遅れた位置にキャリッジ30が達したときに吐出パルスを生成する。復方向での記録では、キャリッジ30が他方の端部側から一方の端部側に向かって移動する。従って、往復間調整値「+T」に対応して遅延して吐出されたインク滴は、往復間調整値が適用せずに吐出されたインク滴の着弾位置よりも、「T」に対応する距離だけ一方の端部側に着弾することとなる。その結果、復方向での記録におけるインク敵の着弾位置と、復方向での記録におけるインク滴の着弾位置とが一致するようになる。
【0057】
その後、第1粗調整処理による調整値を適用した状態で第1微調整処理を行う(S606)。第1微調整処理が開始されると、図10のように、まず、濃度不足フラグがオンか否かを判断する(S1002)。S1002において濃度不足フラグがオフと判断されると、予め設定されている設定濃度で微調整パターンを記録し(S1004)、S1008に進む。一方、S1002において濃度不足フラグがオンと判断されると、予め設定されている設定濃度よりも高濃度となるように、微調整パターンをドット数を増加して記録し(S1006)、S1008に進む。
【0058】
微調整パターン(第2パターン)は、矩形パッチが所定間隔ごとに周期的に繰り返される2つのパターンを重ね合わせて記録される。矩形パッチは、例えば、図11(a)のように、p画素×r画素で、濃度が均一となるように形成される。そして、隣り合う矩形パッチとm画素だけ間隔を空けている。2つのパターンは、基準パターンBPと、基準パターンBPに対して画素数aだけ主走査方向に沿って記録位置がずらされるずらしパターンSPとである。なお、2つのパターンの解像度や、基準パターンBPに対するずらしパターンSPのずらし量は、記録装置の記録解像度に応じて決定する。本実施形態においては、記録解像度は1200dpiとする。また、図11(a)では、理解を容易にするために、重ねて記録される2つのパターンを上下にずらして示している。微調整パターンは、基準パターンBPに対するずらしパターンSPのずらし量aを、主走査方向において変更して、複数並べて記録される。例えば、ずらし量aを-3画素から+3画素まで変えて記録された微調整パターンは、図11(b)のようになる。微調整パターンでは、図11(b)のように、ずらし量に応じた領域S1~S7が主走査方向に並んで複数形成されている。
【0059】
S1004では、予め設定されているドット数で微調整パターンを記録する。一方、S1006では、例えば、予め決められたドット数の2倍のドット数で微調整パターンを記録する。具体的には、S1006では、微調整パターンの画像データはそのままに、微調整パターンを記録する記録走査回数を2倍にする。即ち、同一の画像データに基づく記録を2回実行することで、記録媒体上の同一位置に記録されるドット数を2倍にする。
【0060】
また、微調整パターンを記録する際には、2つのノズル列間のインク滴の着弾位置を一致させる場合には、一方のノズル列によって基準パターンBPを記録し(第1条件)、他方のノズル列によってずらしパターンSPを記録する(第2条件)。また、往復方向でのインク滴の着弾位置を一致させる場合には、調整対象とするノズル列によって、往方向の移動時(第1条件)に基準パターンBPを記録し、復方向の移動時(第2条件)にずらしパターンSPを記録する。
【0061】
微調整パターンを記録すると、次に、記録した微調整パターンを読み取り(S1008)、読み取った情報に基づいて調整値を算出して(S1010)、S608に進む。ここで、微調整パターンの各領域では、2つのパターンのずれ量が変わると、記録媒体上に占める記録領域の面積率が変わる。従って、2つのノズル列間および往復方向でのインク滴の着弾位置を一致させるには、微調整パターンの濃度が最も低くなるずらし量だけインクの吐出タイミングをずらせばよい。
【0062】
S1008では、反射センサ86により、微調整パターンを読み取って、各領域の濃度情報を読み取る。例えば、図11(b)の微調整パターンでは、領域S1~S7の7つの領域における濃度情報を取得する。読み取った濃度は、ずらし量aに対する光学反射率として得られる。ところで、上記したように、微調整パターンの各領域では、基準パターンBPとずらしパターンSPとのずれ量が変わると、記録媒体上に占めるインクの面積率が変わる。濃度は、反射率と反比例の関係にあり、記録媒体上に記録される基準パターンBPとずらしパターンSPとのずれ量が少ないほど濃度が低くなる。従って、図11(b)に示す微調整パターンにおける各領域の濃度は、例えば、図12(a)のようになる。図12(a)は、微調整パターンの各領域S1~S7における光学反射率を示すグラフである。
【0063】
S1010では、読み取った各領域S1~S7の濃度情報の変化から、近似曲線を算出する。その後、算出した近似曲線に基づいて、基準パターンBPとずらしパターンSPとの位置のずれが最も少なくなるずらし量aを特定する。このずらし量aが第1微調整処理による調整値となる。そして、微調整パターン記録時に適用した調整値、つまり、第1粗調整処理による調整値と、第1微調整処理による調整値(第2調整値)とを加算して、最終的な調整値を算出する。なお、算出される調整値は、粗調整パターンおよび微調整パターンの解像度が1200dpiであれば、1200dpi単位もしくはそれ以上の解像度で算出される。こうした第1微調整処理はコントローラ40により実行される。即ち、記録装置10では、コントローラ40が、微調整パターンに基づいて調整値を取得する第2取得部として機能している。
【0064】
ここで、明度が高いインクを用いる場合およびインク吐出量が減少した場合には、ドット数を増加させることなく微調整パターンを記録すると、反射センサ86の検出に基づく各領域S1~S7における濃度は近似してしまう。なお、インク吐出量の減少は、インクの製造バラツキ、吐出口の製造公差、インクによる吐出口の膨潤、吐出口の経年劣化により生じる。
【0065】
図12(b)は、インク吐出量が減少した場合とインク吐出量が減少していない場合との光学反射率の差を示すグラフである。例えば、インク吐出量が減少した場合(図12の●参照)には、インク吐出量が減少していない場合(図12の〇参照)と比較して、全体的に光学反射率が上昇する。こうした現象は、高濃度部分でより顕著に現れている。このため、微調整パターンの各領域S1~S7における光学反射率の変化から算出した近似曲線では、各領域間の濃度差が不足し、反射センサ86の読み取り誤差、測定系の高さ変動、記録媒体の平滑性などの影響が大きくなる。これにより、基準パターンBPとずらしパターンSPとの位置ずれが最も少なくなるずらし量aを正確に取得することができなくなる虞がある。また、濃度差が小さくなることにより、基準パターンBPとずらしパターンSPとの位置のずれが最も少なくなる領域に基づいて、ずらし量aを特定することができなくなる虞がある。
【0066】
このため、この第1微調整処理では、濃度不足フラグがオン、つまり、粗調整パターンの濃度が所定濃度未満であった場合には、S1006において、微調整パターンをドット数を増加して記録するようにしている。即ち、ドット数を増加して微調整パターンを高濃度で記録することにより、反射センサ86の検出に基づく各領域S1~S7間の濃度差を顕著にする。これにより、各領域の濃度に基づく光学反射率の変化から算出した近似曲線では、読み取り誤差などの影響を受け難くなり、ずらし量aを正確に取得することができるようになる。
【0067】
図12(c)は、明度が高いインクにおいて、設定されたドット数で記録した場合の光学反射率と、設定されたドット数の2倍のドット数で記録した場合の光学反射率との差を示すグラフである。明度が高いインクでは、図12(c)の〇で示すように、各領域間の濃度差が小さい。一方、図12(c)の●で示すように、ドット数を2倍に増やすことで、各領域間の濃度差が顕著になって、正確にずらし量aを取得することができるようになる。
【0068】
このように、第1微調整処理では、濃度不足フラグがオンのときに、微調整パターンにおける各領域の濃度差を顕著にするために、高濃度で微調整パターンを記録するようにしている。従って、第1粗調整処理のS714で用いる、粗調整パターンにおけるパッチの濃度情報に対する閾値となる所定濃度は、反射センサ86の読み取り誤差などの影響が小さく、かつ、ずらし量aが特定し難くならない濃度差を確保可能な下限値となる。なお、S714は、濃度不足フラグをオンにするか否かを判断する処理である。
【0069】
図6に戻る。第1微調整処理が終了すると、S608に進み、第1微調整処理で取得した調整値を、例えば、コントローラ40の記憶部に記憶して、第1レジストレーション処理を終了する。なお、第1レジストレーション処理後の記録ジョブに基づく記録動作では、記憶された調整値を適用して記録媒体に対する記録が行われる。
【0070】
以上において説明したように、第1レジストレーション処理では、距離検出方式による粗調整処理の後に、濃度方式による微調整処理を行うようにした。そして、粗調整処理では、粗調整パターンを読み取ったときのパッチの濃度に基づいて、濃度不足フラグのオン/オフを設定するようにした。その後、微調整処理では、濃度不足フラグがオフのときには、予め設定された設定濃度で微調整パターンを記録し、濃度不足フラグがオンのときには、予め設定された設定濃度よりも高濃度で微調整パターンを記録するようにした。これにより、明度が高いインクを用いた場合やインク吐出量が減少した場合でも、微調整パターンの濃度情報に基づいて、調整値を確実に取得することができるようになる。このため、記録装置10では、吐出されたインク滴の着弾位置のずれが一致するように、正確に調整することができるようになる。また、必要なインクのみに限定して濃度を向上させることができるため、レジストレーション処理に要する時間と、インクの消費量とを抑制することができる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、図13乃至図15を参照しながら、本発明による記録装置の第2実施形態を説明する。なお、以下の説明においては、上記第1実施形態による記録装置と同一または相当する構成については、同一の符号を用いることによりその詳細な説明は適宜に省略する。
【0072】
この第2実施形態による記録装置では、使用する記録媒体の種類に応じて、濃度不足フラグをオンに設定するための閾値および微調整パターンを記録する際の濃度を設定するようにした点において、上記第1実施形態による記録装置と異なっている。
【0073】
記録装置10では、種々の記録媒体に対して記録することが可能であり、ユーザは、その目的に応じた記録媒体に対して記録を行うことができる。この場合、使用する記録媒体を用いてレジストレーション処理を行うこととなるが、記録媒体は、その種類によって適切なインク付与量が異なっている。このため、微調整処理において濃度不足フラグがオンのときに、記録媒体の種類を考慮することなく一律にドット数を増加して微調整パターンを記録すると、記録媒体に対するインク付与量が適正量(適正範囲)を超過する虞がある。適正量を超過したインクが付与された記録媒体では、記録媒体が波打つコックリングが生じる。コックリングが生じた記録媒体では、記録ヘッド34のノズル面との距離が変化し、これにより記録位置のずれが生じる。また、コックリングの程度が大きいときには、コックリングが生じた記録媒体とノズル面とが接触し、ノズルを損傷する虞がある。
【0074】
そこで、本実施形態では、濃度不足フラグがオンのときに微調整パターンを記録する際の濃度を、記録媒体の種類に応じて設定するようにした。即ち、濃度不足フラグがオンのときに記録する微調整パターンの濃度を、微調整パターンの各領域間の濃度差を向上させ、かつ、使用する記録媒体においてコックリングが生じない濃度に設定するようにした。
【0075】
また、記録媒体は、その種類に応じて、インク付与量が同一でも発現する濃度が異なる場合がある。このため、濃度不足フラグをオンに設定するための閾値についても、記録媒体の種類に応じて設定するようにした。
【0076】
具体的には、本実施形態では、レジストレーション処理の際に、コントローラ40において、濃度不足フラグをオンに設定する際の閾値および濃度不足フラグがオンのときに記録する微調整パターンの濃度について、記録媒体の種類に関する情報に基づいて設定する。記録媒体の種類に関する情報は、例えば、記録装置10に設けられた操作部24、I/F60を介して記録装置10に接続されるホスト装置58などを介してユーザによって入力される。入力された情報は、例えば、コントローラ40における記憶部(不図示)に記録される。記録装置10では、ホスト装置58や操作部24が種々の情報を入力可能な入力部として機能している。
【0077】
・レジストレーション処理
図13は、第2実施形態による記録装置で実行する第2レジストレーション処理の処理内容を示すフローチャートである。図14は、第2レジストレーション処理における第2粗調整処理の処理内容を示すフローチャートである。図15は、第2レジストレーション処理における第2部調整処理の処理内容を示すフローチャートである。
【0078】
第2レジストレーション処理では、上記第1レジストレーション処理と同様に、距離検出方式によって粗調整処理を行い、粗調整処理で取得した調整値を適用した状態で、濃度方式によって微調整処理を行う。なお、図13の第2レジストレーション処理、図14の第2粗調整処理および図15の第2微調整処理のそれぞれのフローチャートで示される一連の処理は、MPU42によりROM44に格納されたプログラムをRAM48に展開し実行される。あるいは、各フローチャートにおけるステップの一部または全部の機能をASICや電子回路などのハードウェアで実行してもよい。
【0079】
ユーザによって、例えば、ホスト装置58を介して、レジストレーション処理の開始が支持されると、記録装置10において、図13に示す第2レジストレーション処理が開始される。第2レジストレーション処理が開始されると、まず、第2粗調整処理を行う(S1302)。第2粗調整処理では、図14のように、まず、記録媒体の種類に関する情報を取得する(S1402)。即ち、S1402では、ユーザによって入力され、コントローラ40の記憶部に記憶された記録媒体の種類に関する情報を取得する。なお、記録媒体の種類に関する情報を取得できなかった場合、つまり、記憶部に記憶されていない場合などには、ユーザに対して、記録媒体の種類に関する情報の入力を促す通知を行うようにしてもよい。また、S1402では、濃度不足フラグを初期化してオフに設定する。
【0080】
次に、記録媒体の種類に関する情報に基づいて、濃度不足フラグをオンに設定する際の閾値および濃度不足フラグがオンのときに記録する微調整パターンの濃度の設定を行う(S1404)。なお、濃度不足フラグをオンに設定する際の閾値については、記録媒体の種類に応じて当該閾値が対応付けられたテーブルを参照して決定する。また、濃度不足フラグがオンのときに記録する微調整パターンの濃度については、記録媒体の種類に応じて当該濃度が対応付けられたテーブルを参照して決定する。なお、記録媒体の種類に応じて対応付けられた閾値および濃度は、実験的に求められる。これらテーブルは、例えば、ROM44に記憶されている。こうした閾値および濃度の設定は、コントローラ40により実行される。即ち、記録装置10では、コントローラ40が、濃度不足フラグをオンに設定する際の閾値および濃度不足フラグがオンのときに記録する微調整パターンの濃度の設定を行う設定部として機能している。
【0081】
その後、粗調整パターンを記録し(S1406)、n=1とする(S1408)。そして、粗調整パターンにおけるLine「n」のパッチを読み取って(S1410)、パッチの位置情報および濃度情報を取得する(S1412)。次に、粗調整パターンにおける全てのLineでパッチを読み取ったか否かを判断し(S1414)、全てのLineでパッチを読み取っていないと判断されると、nをインクリメントし(S1416)、S1410に戻る。なお、S1406~S1416の具体的な処理内容は、上記第1粗調整処理のS704~S712の処理と同じであるためその説明は省略する。
【0082】
また、S1414において、全てのLineでパッチを読み取ったと判断されると、パッチの濃度が、S1404で設定した閾値以上か否かを判断する(S1418)。S1418では、全てパッチがS1404で設定した閾値以上のときには、パッチの濃度が当該閾値以上であると判断し、それ以外のときには、パッチの濃度が当該閾値未満であると判断する。S1418において、パッチの濃度が閾値未満であると判断されると、濃度不足フラグをオンとし(S1420)、S1422に進む。一方、S1418において、パッチの濃度が閾値以上であると判断されると、濃度不足フラグをオフのままS1422に進み、m=1とし、対象とする2つのLine間の第m列の位置情報を比較する(S1424)。
【0083】
次に、2つのLine間の第m列の2つの位置情報の差分を取得し(S1426)、全ての列でのパッチの比較を行ったか否かを判断する(S1428)。S1428において、全ての列でのパッチの比較を行っていないと判断されると、mをインクリメントし(S1430)、S1424に戻る。一方、S1428において、全ての列でのパッチの比較を行ったと判断されると、S1426で取得した各列における差分の平均値を第2粗調整処理における調整値として取得し(S1432)、S1304に進む。なお、S1420~S1432の具体的な処理内容は、上記第1粗調整処理のS716~S728の処理と同じであるためその説明は省略する。
【0084】
図13に戻る。第2粗調整処理が終了すると、S1304に進み、記録装置10において、第2粗調整処理で取得した調整値を適用する。S1304の具体的な処理内容は、上記第1レジストレーション処理のS604の処理と同じであるためその説明は省略する。その後、第2粗調整処理による調整値を適用した状態で第2微調整処理を行う(S1306)。第2微調整処理では、図15のように、まず、濃度不足フラグがオンか否かを判断する(S1502)。S1502において濃度不足フラグがオフと判断されると、予め設定されている設定濃度で微調整パターンを記録し(S1504)、S1508に進む。S1504では、予め設定されているドット数で微調整パターンを記録する。一方、S1502において濃度不足フラグがオンと判断されると、S1404で設定した濃度で微調整パターンを記録し(S1506)、S1508に進む。S1506では、S1404で設定した濃度に基づいてドット数を増加して微調整パターンを記録する。なお、記録する微調整パターンは、上記した第1微調整処理と同じものとする。
【0085】
次に、S1508では、記録した微調整パターンを読み取り、読み取った情報に基づいて調整値を算出して(S1510)、S1308に進む。S1508、S1510の具体的な処理内容は、上記第1微調整処理のS1008、S1010と同じであるため説明を省略する。
【0086】
図13に戻る。第2微調整処理が終了すると、S1308に進み、第2微調整処理で取得した調整値を、例えば、コントローラ40の記憶部に記憶して、第2レジストレーション処理を終了する。なお、第2レジストレーション処理後の記録ジョブに基づく記録動作では、記憶された調整値を適用して記録媒体に対する記録が行われる。
【0087】
以上において説明したように、第2レジストレーション処理では、記録媒体の種類に応じて、濃度不足フラグをオンに設定するための閾値と、濃度不足フラグがオンのときに微調整パターンを記録する際の濃度とを設定するようにした。これにより、記録媒体の種類に応じて、濃度不足フラグを設定することができ、高濃度で微調整パターンを記録しても記録媒体にコックリングの発生を抑制することができる。このため、吐出されたインク滴の着弾位置のずれが一致するように、正確に調整することができるようになる。
【0088】
(第3実施形態)
次に、図16乃至図18を参照しながら、本発明による記録装置の第3実施形態を説明する。なお、以下の説明においては、上記第1実施形態による記録装置と同一または相当する構成については、同一の符号を用いることによりその詳細な説明は適宜に省略する。
【0089】
この第3実施形態による記録装置では、微調整処理において、ユーザにより調整値を判定し入力するようにした点において、上記第1実施形態、第2実施形態による記録装置と異なっている。
【0090】
具体的には、本実施形態では、レジストレーション処理における微調整処理の際に、ユーザ判定用の微調整パターンを記録する。このとき、濃度不足フラグがオフであれば、予め設定された設定濃度でユーザ判定用の微調整パターンを記録し、濃度不足フラグがオンであれば、予め設定された設定濃度の2倍濃度でユーザ判定用の微調整パターンを記録するようにした。
【0091】
図16は、ユーザ判定用の微調整パターンを示す図である。ユーザ判定用の微調整パターンは、複数の領域S11~S17において、副走査方向に延在するライン200が、主走査方向に沿って並んで記録されている。ライン200は、副走査方向の両端部に、副走査方向に延在するライン状の基準バー(基準画像)202が形成され、中央部に、副走査方向に延在するライン状の比較バー(比較画像)204が、副走査方向に連続するように形成されている。基準バー202と比較バー204との記録条件は異なる。具体的には、基準バー202を基準とする条件、例えば、所定のノズル列から往方向で記録し、比較バー204を対象とする条件、例えば、所定のノズル列から復方向で記録する。ユーザ判定用の微調整パターンは、基準バー202に対する比較バー204のずらし量bを、主走査方向において変更した領域S11~S17が、副走査方向に並べて記録される。例えば、ずらし量bを-3画素から+3画素まで変えて記録されたユーザ判定用の微調整パターンは、図16のようになる。
【0092】
そして、ユーザが目視によって、記録されたユーザ判定用の微調整パターンにおいて、基準バー202と比較バー204とが一致している領域を確認する。そして、ユーザは、一致している領域のずらし量bを、ホスト装置58などを介して入力する。入力された値は、コントローラ40において調整値として記憶される。例えば、図16では、ずらし量bが「+1」の領域で、基準バー202と比較バー204とが一致している。この場合、復方向での記録時には、1画素に対応するタイミング分だけ遅くインクを吐出すべきであることを示している。なお、本実施形態では、理解を容易にするために、ずらし量bを±3としているが、ずらし量bは、インク吐出速度の変動などに基づいて、調整に十分な範囲を持たせて設定される。
【0093】
・レジストレーション処理
図17は、第3実施形態による記録装置で実行する第3レジストレーション処理の処理内容を示すフローチャートである。図18は、第3レジストレーション処理における第3微調整処理の処理内容を示すフローチャートである。図17の第3レジストレーション処理、図18の第3微調整処理のそれぞれのフローチャートで示される一連の処理は、MPU42によりROM44に格納されたプログラムをRAM48に展開して実行される。あるいは、各フローチャートにおけるステップの一部または全部の機能をASICや電子回路などのハードウェアで実行してもよい。
【0094】
ユーザによって、例えば、ホスト装置58を介して、レジストレーション処理の開始が支持されると、記録装置10において、図17に示す第3レジストレーション処理が開始される。第3レジストレーションでは、まず、第1粗調整処理を行い(S1702)、記録装置10において、第1粗調整処理で取得した調整値を適用する(S1704)。S1702、S1704の具体的な処理内容は、上記第1レジストレーション処理のS602、S604の処理と同じであるため説明を省略する。
【0095】
次に、第3微調整処理を行う(S1706)。第3微調整処理では、図18のように、濃度不足フラグがオンか否かを判断する(S1802)。S1802において濃度不足フラグがオフと判断されると、予め設定されている設定濃度でユーザ判定用の微調整パターンを記録し(S1804)、S1808に進む。また、S1802において濃度不足フラグがオンと判断されると、予め設定されている設定濃度より高濃度でユーザ判定用の微調整パターンを記録し(S1806)、S1808に進む。即ち、S1804では、予め設定されているドット数でユーザ判定用の微調整パターンを記録する。また、S1806では、予め設定されているドット数の2倍のドット数でユーザ判定用の微調整パターンを記録する。
【0096】
その後、S1808では、ユーザに対してユーザ判定用の微調整パターンに基づく調整値の入力を促す通知を行い、調整値の入力が終了したか否かを判断する(S1810)。S1810において、調整値が入力されたと判断されると、S1708に進む。
【0097】
図17に戻る。第3微調整処理が終了すると、S1708に進み、第3微調整処理で取得した調整値、つまり、ユーザに入力された入力結果である調整値と、第1粗調整処理で取得した調整値とに基づいて最終的な調整値を取得する。そして、取得した調整値を、例えば、コントローラ40の記憶部に記憶し(S1710)、第3レジストレーション処理を終了する。第3レジストレーション処理後の記録ジョブに基づく記録動作では、記憶された調整値を適用して記録媒体に対する記録が行われる。
【0098】
以上において説明したように、第3レジストレーション処理では、微調整処理での調整値を、ユーザの判定に基づいて取得するようにした。これにより、第1レジストとレーション処理と同様の効果を得ることができるようになる。また、ユーザ判定用の微調整パターンでは、各領域でのパターンがライン状であるため、第1実施形態における微調整パターンよりも使用する単位面積あたりのインク付与量が少ない。このため、コックリングを生じ易い記録媒体に対しては、ユーザ判定用の微調整パターンを用いることで、より確実にコックリングの発生を抑制することができるようになる。
【0099】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下の(1)乃至(5)に示すように変形してもよい。
【0100】
(1)上記第1実施形態および第3実施形態では、高濃度の微調整パターンを記録する際には、微調整パターンの各領域間の濃度差を向上させることができれば、ドット数は2倍に限定されるものではない。また、上記第3実施形態では、第3レジストレーション処理において、粗調整処理を行った後に微調整処理を行うようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、前回実行したレジストレーション処理における濃度不足フラグのオン、オフに基づいて、微調整処理を実行するようにしてもよい。
【0101】
(2)上記実施形態では特に記載しなかったが、ノズル列、チップ数、記録ヘッド34の構成やその個数、さらには、インクの色やその種類などは、あくまで例示であって、適宜に変更するようにしてもよい。また、上記実施形態では、記録装置10としてインクジェット方式の記録装置を例として説明したが、これに限定されるものではない。即ち、記録ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させながらドットを形成して記録を行う構成であれば、どのような記録方式を用いるようにしてもよい。
【0102】
(3)上記実施形態では特に記載しなかったが、記録装置10において、第1~3レジストレーション処理の少なくとも2つを実行可能な構成とし、実行するレジストレーション処理をユーザが選択可能な構成としてもよい。例えば、第1レジストレーション処理(第1処理)と第3レジストレーション処理(第2処理)とを選択的に実行可能とする。この場合、推奨するレジストレーション処理を通知を行うようにしてもよい。即ち、例えば、第3レジストレーション処理を推奨する記録媒体を記憶しておき、使用する記録媒体の種類が記憶された記録媒体であれば、第3レジストレーション処理を推奨する通知を行う。例えば、コックリングを確実に抑制したい記録媒体の場合には、第3レジストレーション処理を推奨する。そして、推奨するレジストレーション処理が、例えば、ホスト装置58や操作部24を介して通知され、ユーザは、ホスト装置58や操作部24などから、実行するレジストレーション処理を選択する。この場合、コントローラ40により、推奨するレジストレーション処理を決定し、決定したレジストレーション処理を、ホスト装置58や操作部24に表示することとなる。従って、この場合には、コントローラ40、ホスト装置58、操作部24などが通知部として機能している。
【0103】
(4)上記実施形態では特に記載しなかったが、使用するインクが明度の高いインクについては、無条件で、高濃度の微調整パターンの記録するようにしてもよい。また、上記実施形態では、レジストレーション処理において粗調整処理を行った後に微調整処理を行うようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、レジストレーション処理は、粗調整処理を実行することなく微調整処理のみを行うようにしてもよい。この場合、前回の微調整処理で調整値を取得できなかったときには、今回の微調整処理において、高濃度の微調整パターンを記録するようにしてもよい。さらに、上記第3実施形態についても、上記第2実施形態のように、記録媒体の種類に基づいて、濃度不足フラグをオンに設定する際の閾値および濃度不足フラグがオンのときに記録する微調整パターンの濃度の設定するようにしてもよい。
【0104】
(5)上記実施形態および上記した(1)乃至(4)に示す各種の形態は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。本発明は、上記実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワークまたは記憶媒体を介してシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0105】
10 記録装置
30 キャリッジ
34 記録ヘッド
40 コントローラ
86 反射センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図18