(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】冷凍ロールキャベツの製造方法及び冷凍ロールキャベツ
(51)【国際特許分類】
A23L 35/00 20160101AFI20241015BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20241015BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20241015BHJP
A23L 13/50 20160101ALI20241015BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20241015BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20241015BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L3/36 A
A23L19/00 Z
A23L19/00 102Z
A23L19/00 101
A23L13/50
A23L13/60 Z
A23L17/00 Z
(21)【出願番号】P 2023120023
(22)【出願日】2023-07-24
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503049036
【氏名又は名称】株式会社大冷
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 正弘
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-138355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉質の中具材をキャベツ質の外皮材で包み込んで成る冷凍ロールキャベツの製造方法であって、
(i) 少なくともキャベツを含む葉物野菜を前処理し、所定サイズ範囲の小片にカッティングすることにより小片状キャベツを作製する工程と、
(ii) 少なくともこんにゃく芋を含む結着剤をペースト状またはゲル状に調整し、ペースト状またはゲル状の前記結着剤を前記小片状キャベツに添加し、前記結着剤と前記小片状キャベツとを混練することにより、前記外皮材の原料を得る工程と、
(iii) 家禽類、家畜類、および魚介類の少なくとも1つを含むひき肉に適量の調味料を調合することにより、前記中具材の原料を作製する工程と、
(iv) 前記中具材の原料を包あん機の第1の供給部に収容するとともに、前記外皮材の原料を前記包あん機の第2の供給部に収容する工程と、
(v) 前記第1の供給部に連通する中央ノズルから前記中具材の原料を押し出しながら、前記第2の供給部に連通する環状ノズルから前記外皮材の原料を同時に押し出すことにより、押し出された前記中具材の原料の外周を同期押し出しされた前記外皮材の原料で被覆する工程と、
(vi) 前記環状ノズルから前記外皮材の原料を供給している間に、前記中央ノズルから押し出される前記中具材の原料を所定長ごとに切断するとともに、その切断面を包着させ、前記中具材の原料を前記外皮材の原料で包み込んで成る包あん品を得る工程と、
(vii) 前記包あん品を凍結処理することにより凍結した冷凍ロールキャベツを得る工程と、
を有することを特徴とする冷凍ロールキャベツの製造方法。
【請求項2】
前記外皮材の原料は、質量%で1.00%以上1.50%以下の前記こんにゃく芋を含む結着剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記外皮材の原料は、質量%で1.00%以上1.50%以下の保形助剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記外皮材の原料において、前記保形助剤の含有量が前記こんにゃく芋を含む結着剤の含有量と実質的に同じである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(iii)では、前記中具材の原料が前記こんにゃく芋を含む結着剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(i)では、直径10mm以下の前記小片状キャベツを作製する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(ii)~(vi)は、前記外皮材の原料および前記中具材の原料を実質的に加熱しない状態で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(v)では、前記外皮材の原料と前記中具材の原料との供給比率を60:40~76:24の範囲に調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記外皮材の原料がピーマンおよびシイタケのうちの一方または両方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法を用いて製造されることを特徴とする冷凍ロールキャベツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家禽類や家畜類の肉を含む中具材をキャベツなどの野菜や椎茸などのキノコ類を含む外皮材で包み込んで成る冷凍ロールキャベツを製造するための冷凍ロールキャベツの製造方法及び冷凍ロールキャベツに関する。
【背景技術】
【0002】
ロールキャベツは比較的大きい葉のキャベツを用いてひき肉類の具材を包み込む調理食品であるが、これを加熱して手軽に食することができる冷凍ロールキャベツ製品がスーパーマーケットやコンビニエンスストア等で販売されている。
このような冷凍ロールキャベツを生産する食品工場では、空調設備が整えられた半自動ベルトコンベアシステムに数人から十数人の作業者や品質管理者等が配置され作業に従事しているが、外皮材料となるキャベツの葉の形状や大きさが不揃いであるために、具材をキャベツで包み込む作業は専ら人手に依存せざるを得ない。すなわち、包み込み作業は機械化することが非常に難しく、人手でなければどうしてもできない難しい作業であり、現状ではこれに多くの作業者が割かれている。
【0003】
近時、世界情勢が急速に変化する状況下において海外から国内への生産拠点の移転、すなわちサプライチェーンの切り替えが必要であると言われている。生産拠点を海外から国内へ移転する際に問題となるのは、現地採用した作業者を日本国内に連れてくることが困難であるため、国内で新たに作業者を募集しなければならない。
しかし、少子高齢化の日本国内では人手不足が非常に深刻であり、日本人ばかりでなく国内に居住する外国人でも多くの企業間で奪い合う状況下にある。このため、食品工場の製造ラインの作業に従事する(パートタイマーを含む)作業者を新規採用することができないか又は非常に困難であるという現実がある。
また、人手によるロールキャベツの包み込み作業には、食中毒防止のための衛生管理上の観点から厳しい検査が課される。日本国内における食品の安全性は、食品衛生法に基づいて外国からの輸入食品であっても国内製造食品とまったく同じ基準(残留農薬、食品添加物、微生物に関する品質基準)が適用されることになっている。このように食料安全保障の観点からも、海外から国内へのサプライチェーンの切り替えが重要になってきている。
【0004】
このような事情からロールキャベツの人手による包み込み作業を機械により自動化することが提案されている。例えば、特許文献1では、キャベツの葉の大小にかかわらず全部の葉を利用することができる機械による連続大量生産可能な冷凍ロールキャベツの製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の従来の冷凍ロールキャベツの製造方法では、前処理された小片状キャベツを隙間なく並べ、その一方の面にでん粉薄膜をローラー圧着してシート状とし、シート状キャベツの他方の面に粉末状結着剤をふり掛け、その上に具材を載せた後にシート状キャベツを具材に巻き付けて円柱状に成形し、これを押圧しつつ又は押圧せずに一定の長さに切断し、加熱殺菌した後に凍結することにより円柱状の冷凍ロールキャベツ製品としている。
【0007】
しかしながら、従来の製造方法では、敷き並べたキャベツの一方の面にでん粉薄膜をローラー圧着してシート状とし、シート状キャベツの他方の面に粉末状結着剤をふり掛け、その上に具材を載せた後にシート状キャベツを具材に巻き付けて円柱状に成形し、長い円柱状成形体の適所を上から抑圧部材で押圧して円柱状成形体の中心部の具材を両側へ押しやり、上面外側端部のシート状キャベツと下面外側端部のシート状キャベツとが具材を挟まない状態で上下から接触し、水に溶けた結着剤により加圧接着され、下降する刃により接着部分の中央で切断する。このため、切断部において具材がそのまま露出した状態となり、最終的にユーザーが加熱調理する際に、外皮で被覆されない切断面から旨味成分が失われてしまうという問題がある。
また、特許文献1の従来の製造方法では、凍結工程の直前の製品を加熱殺菌するためにキャベツ本来の旨味成分が熱変性してしまい、消費されるまでの冷凍保管期間中において味が落ちてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、サプライチェーンの切り替えに対応することができ、求人難であっても安定した品質の製品を生産可能な製造ラインの自動化を実現することができ、消費者が食する賞味期限までの冷凍保管期間中においてロールキャベツ本来の旨味成分と食感や風味を十分に保持することができる冷凍ロールキャベツの製造方法及びそれにより製造された冷凍ロールキャベツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る冷凍ロールキャベツの製造方法は、肉質の中具材をキャベツ質の外皮材で包み込んで成る冷凍ロールキャベツの製造方法であって、
(i) 少なくともキャベツを含む葉物野菜を前処理し、所定サイズ範囲の小片にカッティングすることにより小片状キャベツを作製する工程と、
(ii) 少なくともこんにゃく芋を含む結着剤をペースト状またはゲル状に調整し、ペースト状またはゲル状の前記結着剤を前記小片状キャベツに添加し、前記結着剤と前記小片状キャベツとを混練することにより、前記外皮材の原料を得る工程と、
(iii) 家禽類、家畜類、および魚介類の少なくとも1つを含むひき肉に適量の調味料を調合することにより、前記中具材の原料を作製する工程と、
(iv) 前記中具材の原料を包あん機の第1の供給部に収容するとともに、前記外皮材の原料を前記包あん機の第2の供給部に収容する工程と、
(v) 前記第1の供給部に連通する中央ノズルから前記中具材の原料を押し出しながら、前記第2の供給部に連通する環状ノズルから前記外皮材の原料を同時に押し出すことにより、押し出された前記中具材の原料の外周を同期押し出しされた前記外皮材の原料で被覆する工程と、
(vi) 前記環状ノズルから前記外皮材の原料を供給している間に、前記中央ノズルから押し出される前記中具材の原料を所定長ごとに切断するとともに、その切断面を包着させ、前記中具材の原料を前記外皮材の原料で包み込んで成る包あん品を得る工程と、
(vii) 前記包あん品を凍結処理することにより凍結した冷凍ロールキャベツを得る工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下に列記する種々の効果を奏することができる。
1)最も面倒で熟練を要する包み込み作業が自動化されるため、現場作業者の負担が大幅に軽減され、求人難の状況下であってもサプライチェーンを切り替えることが可能になる。
2)包み込み作業が人による手作業でなく機械化されるため、製造ラインでの雑菌の付着や異物の混入のおそれがなくなり、安心安全な食品を提供することができる。
3)加熱調理中において型崩れせず、外観が損なわれにくい。
4)軟らかい良い食感であり、比較的咀嚼力が弱い幼児や高齢者であっても食べやすい。
5)キャベツと肉類とが調和して肉類特有の生臭さがないので食べやすく、後味がよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、原料の下拵え処理工程を示す工程図。
【
図2】
図2は、下拵え処理後の製造工程を示す工程図。
【
図3】
図3は、包あん機の全体の概略構成を示す正面図。
【
図4】
図4は、包あん機の要部の一部を切り欠いて示す部分断面図。
【
図5】
図5の(a)は開放状態のシャッタ装置を示す平面図、(b)はシャッタ装置/搬送ベルト/昇降機と切断前の円柱状成形体との位置関係を正面から見て示す模式図。
【
図6】
図6の(a)は半開状態のシャッタ装置を示す平面図、(b)はシャッタ装置/搬送ベルト/昇降機と切断中の円柱状成形体との位置関係を正面から見て示す模式図。
【
図7】
図7の(a)は閉鎖状態のシャッタ装置を示す平面図、(b)はシャッタ装置/搬送ベルト/昇降機と切断包着後の包あん品との位置関係を正面から見て示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る冷凍ロールキャベツの製造方法は、肉質の中具材をキャベツ質の外皮材で包み込んで成る冷凍ロールキャベツの製造方法であって、以下の工程(i)-(vii)を含んでいる。
(i) 少なくともキャベツを含む葉物野菜を前処理し、所定サイズ範囲の小片にカッティングすることにより小片状キャベツを作製する工程、
(ii) 少なくともこんにゃく芋を含む結着剤をペースト状またはゲル状に調整し、ペースト状またはゲル状の前記結着剤を前記小片状キャベツに添加し、前記結着剤と前記小片状キャベツとを混練することにより、前記外皮材の原料を得る工程、
(iii) 家禽類、家畜類、および魚介類の少なくとも1つを含むひき肉に適量の調味料を調合することにより、前記中具材の原料を作製する工程、
(iv) 前記中具材の原料を包あん機の第1の供給部に収容するとともに、前記外皮材の原料を前記包あん機の第2の供給部に収容する工程、
(v) 前記第1の供給部に連通する中央ノズルから前記中具材の原料を押し出しながら、前記第2の供給部に連通する環状ノズルから前記外皮材の原料を同時に押し出すことにより、押し出された前記中具材の原料の外周を同期押し出しされた前記外皮材の原料で被覆する工程、
(vi) 前記環状ノズルから前記外皮材の原料を供給している間に、前記中央ノズルから押し出される前記中具材の原料を所定長ごとに切断するとともに、その切断面を包着させ、前記中具材の原料を前記外皮材の原料で包み込んで成る包あん品を得る工程、
(vii) 前記包あん品を凍結処理することにより凍結した冷凍ロールキャベツを得る工程。
【0013】
以下に、上記実施形態の各工程(i)-(vii)をそれぞれ詳細に説明する。
[小片状キャベツの作製]
本発明の工程(i)では、少なくともキャベツを含む葉物野菜を前処理し、所定サイズ範囲の小片にカッティングすることにより小片状キャベツを作製する。作製した小片状キャベツは、次工程(ii)で結着剤を添加して混練されるまでの期間中において冷凍庫内に保管される。
【0014】
(原材料)
原材料となるキャベツには、後述する前処理を除いて、収穫後において実質的に加熱処理または乾燥処理をされたことがないキャベツの生ものを用いる。このようなキャベツには、明確な産地表示が付いた国産品を用いる。但し、トレーサビリティが明確であり、かつ食品衛生法上の基準を十分に満たしていれば、輸入品であっても用いることができる。
キャベツとして、冬キャベツ(寒玉)や春キャベツ(春玉)などの一定レベル以上の含水率をもつキャベツ種を好適に用いることができる。但し、本発明において、例えばケールやサボイキャベツなどのような低含水率の乾燥種はキャベツの原材料には適さない。
キャベツ種以外の他の葉物野菜をキャベツに加えるようにしてもよい。葉物野菜として、白菜、小松菜、チンゲン菜、野沢菜、ほうれん草などをキャベツと組み合わせて用いることができる。
ピーマンのような葉物野菜以外の他の黄緑色野菜をさらに加えることができる。また、シイタケのようなキノコ類をさらに加えることもできる。
【0015】
本発明の冷凍ロールキャベツでは、上述した他の葉物野菜、他の黄緑色野菜、およびキノコ類は、基準となるキャベツ量を超えない量を混合することが望ましい。
【0016】
(前処理)
キャベツの前処理として、解体処理、洗浄処理、ブランチング処理、および水切り処理をそれぞれ実施する。
解体処理では、原材料のキャベツから外側の虫食い葉や堅い葉および芯の部分を取り除いて葉の部分を一枚ずつバラバラに切り離し、切り離した葉に堅くて太い茎が付いている場合にはその茎の部分も取り除くことが望ましい。
洗浄処理では、解体処理されたキャベツ葉をコンベア式シャワー洗浄室に搬送し、キャベツ葉に混入した異物および付着した異物(泥土、雑草、昆虫など)をシャワー流水と手動の組合せによって除去する。
ブランチング処理では、洗浄処理されたキャベツ葉を水蒸気または熱湯と短時間(例えば、95℃×150秒)だけ接触させる。ブランチング処理は、酵素や微生物のはたらきを一時的に停止させるか又は抑制(不活性化)させ、食材の加工または保存中の変化(劣化)を防止する効果がある。
水切り処理では、ブランチング処理されたキャベツ葉の表面に付着した水分を除去する。付着水分の除去方法として、温風の吹き付け、またはブランチング処理後の余熱利用の冷風吹き付けや自然乾燥を用いることができる。
【0017】
(カッティング)
キャベツ葉のカッティングには、シュレッダーのような裁断機能を備えたフードスライサーを用いることができる。カッティングは、キャベツ葉を繊維に沿って所定ピッチ幅に縦切りし、細長く切られたソーメン状のものを所定ピッチ間隔刻みに横切りする。これにより所望サイズの正方形状の小片状キャベツを得ることができる。
カッティングサイズは、包あん機の環状ノズルから外皮材を押し出す際に詰まりを生じることなく環状ノズルを容易に通過できるサイズとする。カッティングサイズは、包あん機の性能に依拠するものであり、現状では例えば最大5.0mm×5.0mm角刻みとすることができるが、近い将来に包あん機の性能が向上する可能性もあるため5.0mm×5.0mm以上10.0mm×10.0mm以下の範囲とすることができる。
【0018】
[外皮材原料の作製]
本発明では、工程(ii)において、少なくともこんにゃく芋を含む結着剤をペースト状またはゲル状に調整し、ペースト状またはゲル状の前記結着剤を前記小片状キャベツに添加し、前記結着剤と前記小片状キャベツとを混練することにより、前記外皮材の原料を得る。
【0019】
外皮材の原料を作製するために上述の小片状キャベツに添加される各種の添加物について以下に説明する。
(結着剤)
外皮材原料に所望の結着性と流動性を持たせて包あん成形できるようにするために、こんにゃく芋を主成分とする結着剤を小片状キャベツに添加する。結着剤は、小片状キャベツを相互に接着し、外皮材の原料にまとまりを持たせるものである。結着剤は、適量の水が添加され、混合攪拌されることにより、所望の粘性と流動性を備えたペースト状またはゲル状の状態にして用いられる。
このようなこんにゃく芋含有結着剤は、小片状キャベツの相互接着ばかりでなく、中具材と外皮材との間を馴染みよく接着させるために、後述する中具材にも添加される。結着剤として、例えば株式会社荻野商店のマジックマンナン(登録商標)を使用することができる。
【0020】
結着剤の添加量は、基準となるキャベツに対する相対含有率(質量%)で1.05~1.45%の範囲が好ましく、1.15~1.35%の範囲がより好ましく、1.22~1.30%の範囲が最も好ましい。
【0021】
(保形助剤)
小片状キャベツ/結着剤の混合物の粘性を安定化させて包あん成形品の形状を崩れ難くするために、小麦粉加工品を主成分とする保形助剤をさらに添加する。保形助剤は、外皮材の粘性を安定化させ、包あん成形時の形状保持性を向上させるばかりでなく、保管中における外皮材の粘性の低下(経年劣化)を防ぐことができる。保形助剤として、例えば日本食研ホールディングス株式会社のハイブリッドアルファ(商品名称)を使用することができる。このような保形助剤は、主成分の小麦粉加工品の他に少量の乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル)を含む。
【0022】
保形助剤の添加量は、上述の結着剤の添加量と実質的に同じにすることができ、基準となるキャベツに対する相対含有率(質量%)で1.05~1.45%の範囲が好ましく、1.15~1.35%の範囲がより好ましく、1.22~1.30%の範囲が最も好ましい。
【0023】
[中具材原料の作製]
本発明では、工程(iii)において、家禽類、家畜類、および魚介類の少なくとも1つを含むひき肉に適量の調味料を調合することにより、前記中具材の原料を作製する。
【0024】
(ひき肉)
中具材の主成分のひき肉には、ニワトリ等の家禽類および/またはブタ等の家畜類および/またはスケソウダラ等の魚介類を使用することができる。例えばニワトリの場合は、鶏むね肉のひき肉、鶏もも肉のひき肉、鶏むね肉とガラミンチとの合いひき肉などを用いることができる。また、例えばブタの場合は、豚ばら肉のひき肉、豚もも肉のひき肉などを用いることができる。また、例えば魚介類の場合は、エビのミンチ、イカのミンチ、スケソウダラのミンチなどを用いることができる。
【0025】
(調味料)
調味料として、上述のひき肉に微塵切り玉ねぎ、すりおろしニンニク、食塩、白コショウなどを添加することができる。玉ねぎの微塵切りは、例えば4.0mm刻みとすることができる。すりおろしニンニクは、調味料としてばかりでなく畜肉の臭みをマスキングするための役割を持っている。すりおろしニンニクとして、例えば株式会社カネカサンスパイスのスリガーリック(商品名称)を使用することができる。
【0026】
中具材の原料を作製するために上述の調味料以外にひき肉に添加される他の添加物について以下に説明する。
(賦形剤)
賦形剤として、パン粉、加工でんぷん、粒状大豆タンパクなどを添加することができる。これらの賦形剤は、包あん成形時の形状保持性および加熱調理時の煮崩れ防止にそれぞれ寄与する。
【0027】
(保水剤)
保水剤として乾燥卵白を添加する。乾燥卵白は、加熱調理時に中具材から旨味成分の肉汁が無駄に出てくるのを防止するために微量添加されるものである。乾燥卵白は、その添加量を含有率で0.01質量%以下の微量に制限しているが、食品表示法によりアレルゲン指定食材の表示が義務付けられているため、製品にその表示を付している。
【0028】
[外皮材原料と中具材原料の仕込み]
本発明では、工程(iv)において、前記中具材の原料を包あん機の第1の供給部に収容するとともに、前記外皮材の原料を前記包あん機の第2の供給部に収容する。
【0029】
図3と
図4を参照して工程(iv)の概要を以下に説明する。
図3に示すように、包あん機1の本体フレーム3の上部には第1の供給部としての中具材フィーダー5および第2の供給部としての外皮材フィーダー7がそれぞれ着脱可能に取り付けられている。中具材フィーダー5には、中具材原料31となるひき肉/調味料/添加物を調合した第1の下拵え材料を収容する。外皮材フィーダー7には、外皮材原料32となる小片状キャベツ/結着剤/保形助剤を調合した第2の下拵え材料を収容する。
【0030】
図4に示すように、中具材フィーダー5には第1のベーンポンプ15Aおよび第1のスクリュウコンベア(図示せず)が取り付けられ、外皮材フィーダー7には第2のベーンポンプ15Bおよび第2のスクリュウコンベア(図示せず)が取り付けられている。
【0031】
第1のベーンポンプ15Aおよび第1のスクリュウコンベアを共に駆動させると、第1のベーンポンプ15Aの吸込み口に第1のスクリュウコンベアの駆動力により中具材原料31が供給されるとともに、第1のベーンポンプ15Aの駆動力により第1のベーンポンプ15Aの吐出口から中央ノズル9A(重合ノズル9の内ノズル)の流路8Aに向けて中具材原料31が所定の圧力で押し出し供給される。
【0032】
第2のベーンポンプ15Bおよび第2のスクリュウコンベアを共に駆動させると、第2のベーンポンプ15Bの吸込み口に第2のスクリュウコンベアの駆動力により外皮材原料32が供給されるとともに、第2のベーンポンプ15Bの吐出口から環状ノズル9B(重合ノズル9の外ノズル)の流路8Bに向けて外皮材原料32が所定の圧力で押し出し供給される。
【0033】
[外皮材原料と中具材原料との重合押し出し]
本発明では、工程(v)において、前記第1の供給部に連通する中央ノズルから前記中具材の原料を押し出しながら、前記第2の供給部に連通する環状ノズルから前記外皮材の原料を同時に押し出すことにより、押し出された前記中具材の原料の外周を同期押し出しされた前記外皮材の原料で被覆する。
【0034】
図4と
図5を参照して工程(v)を以下に説明する。
図4に示すように、中具材原料31を中央ノズル流路8Aに所定圧力で押し出しながら、同時に外皮材原料32を環状ノズル流路8Bに所定圧力で押し出すと、
図5に示すように、中具材原料31の外周面を被覆するように外皮材原料32が付着し、2つの原料が一体化した円柱状成形体33が形成される。この円柱状成形体33は、
図4と
図5(b)に示す重合ノズル9の吐出口の直下に配置されたカッター13の
図5(a)に示す全開したシャッタアセンブリ12の中央開口12Cに挿入される。
【0035】
この重合押し出し工程(v)では、外皮材の原料と中具材の原料との供給比率を60:40~76:24の範囲とすることが好ましく、65:35~74:26の範囲とすることがさらに好ましく、68:32~72:28の範囲とすることが最も好ましい。
【0036】
[切断と包着による包あん成形]
本発明では、工程(vi)において、前記環状ノズルから前記外皮材の原料を供給している間に、前記中央ノズルから押し出される前記中具材の原料を所定長ごとに切断するとともに、その切断面を包着させ、前記中具材の原料を前記外皮材の原料で包み込んで成る包あん品を得る。
【0037】
図4、
図6、
図7を参照して工程(vi)を以下に説明する。
図6の(a)に示すように、全開したシャッタアセンブリ12を閉じ始めて中央開口12Cを縮小するとともに、
図6の(b)に示すように、リフター20の昇降ロッド19を上昇させ、ロッド19の上端に取り付けた突上げ部材19Aでベルトコンベア装置の搬送ベルト16の一部を所定レベル高さまで突上げる。
シャッタアセンブリ中央開口12Cの縮小により円柱状成形体33の適所にシャッタ片11の刃11Aが当たり、
図6(b)に示す包あん前駆体34が形成される。
【0038】
次いで、
図7の(a)に示すように、シャッタアセンブリ12を最後まで閉じて中央開口12Cを完全閉鎖すると、
図7の(b)に示すように、円柱状成形体33から包あん前駆体34の部分が切り離されて包あん品35となり、この包あん品35が突上げられた搬送ベルト16上に落下する。このときリフター20により搬送ベルト16の一部を突上げて、シャッタアセンブリ12から搬送ベルト16までの落下距離を小さくしているので、包あん品35は搬送ベルト16上に軟らかく着地し、包あん品35の潰れや破れ破損などの損傷が発生しない。
【0039】
また、この工程(vi)では、環状ノズル9Bから外皮材原料32を吐出供給している間のタイミングで、中央ノズル9Aから押し出される中具材原料31の切断が完了するため、その切断面に外皮材原料32が直ちに回り込み、回り込んだ外皮材原料32により包あん前駆体34の切断面が包着(完全被覆)される。これにより、ほぼ球形状の包あん品35が得られる。
【0040】
[包あん品の凍結処理]
本発明では、工程(vii)において、前記包あん品を凍結処理することにより凍結した冷凍ロールキャベツを得る。
凍結処理は、作製した包あん品から不良品を除去する選別工程後に実施される。凍結処理では、選別した包あん品を-35℃以下に管理されたスパイラルフリーザーに入れ、表面温度が-18℃以下に保たれるように包あん品を凍結させる。
【0041】
凍結処理された包あん品は、所定の計量検査により規格外品を排除し、袋詰めされ、シール包装され、所定の金属探知検査により不良品を除去し、箱入れされる。入庫直前の最終計量検査により規格外品を排除し、合格品のみを保管用冷凍庫のなかに入れる。そして、製品として出荷されるまでの期間中において、冷凍庫内で包あん品の芯部温度が-18℃以下に維持されるように保管される。
【実施例】
【0042】
以下に、冷凍ロールキャベツの製造方法の一例を説明する。
[原料の下拵え]
図1を参照して外皮材原料と中具材原料の各下拵え工程をそれぞれ説明する。
【0043】
(外皮材原料の下拵え工程)
先ず外皮材原料の下拵え工程S1-1~S1-4から説明する。
収穫された生キャベツを解体処理し、洗浄処理し、ブランチング処理し、一次冷却し(流水冷却による余熱取り)、二次冷却(15℃以下のチラー水冷却による品温20℃以下の冷却)した。
このように前処理されたキャベツをエムラ社のフードスライサー(型番ECD-403)を用いて裁断し、平均サイズ5.0mm×5.0mm角刻みの小片状キャベツを作製した。作製した小片状キャベツを水洗し、水切りした。
上述のように処理された小片状キャベツを-18℃以下の温度になるように冷凍庫内に保存した(工程S1-1)。
【0044】
製造計画に準じてまたは需要に応じて必要なロット量またはロット数を計量し、計量した量だけの冷凍小片状キャベツを冷凍庫から出庫する。出庫した冷凍小片状キャベツを解凍した(工程S1-2)。
【0045】
次いで、解凍した小片状キャベツにこんにゃく芋を含む結着剤および保形助剤を添加し、ミキサーを用いて混合攪拌した(工程S1-3)。
【0046】
本実施例では、基準となる小片状キャベツの量に対してこんにゃく芋を含む結着剤および保形助剤をそれぞれ1.26%の比率で添加した。また、こんにゃく芋を含む結着剤として、株式会社荻野商店のマジックマンナン(登録商標)を用いた。さらに、保形助剤には、日本食研ホールディングス株式会社のハイブリッドアルファ(小麦粉加工品の製品名称)を用いた。ハイブリッドアルファ(商品名)の成分は、小麦粉99.2%と乳化剤0.8%である。
【0047】
小片状キャベツ/結着剤/保形助剤の混合物をミキサーまたは撹拌機により低速回転で5分間撹拌した結果、仕掛り品としての下拵え済みの外皮材原料32が得られた(工程S1-4)。得られた外皮材原料32を冷蔵庫のチルド室あるいはステンレス台車上において、包あん機で使用されるまでの間だけ一時的に保管した。
【0048】
(中具材原料の下拵え工程)
次に、中具材原料の下拵え工程S2-1~S2-7を説明する。
冷凍保管している冷凍肉を必要量だけ取り出し、包あん機に仕込むために冷凍肉の状態(温度と質量)が好適になるように調整した(工程S2-1)。
【0049】
冷凍肉を解凍し、品温2℃にテンパリングした(工程S2-2)。次いで、解凍した肉の大きな塊りをフレーカーで粉砕した(工程S2-3)。次いで、粉砕された肉の小さな塊りをチョッパーで3.2mmピッチ間隔に切り刻み、所望の軟らかさをもつミンチ肉を作製した(工程S2-4)。
【0050】
作製したミンチ肉に、工程S3-1で予め準備しておいた調味料、水、塩、WP、おろしニンニクを添加し、ミキサーまたは撹拌機で混合撹拌した(工程S2-5)。
【0051】
次いで、工程S3-2で予め準備しておいたこんにゃく芋含有結着剤および保形助剤を前工程S2-5の混合撹拌物にさらに添加し、ミキサーまたは撹拌機で混合撹拌した(工程S2-6)。
【0052】
本実施例では、基準となるミンチ肉の量に対してこんにゃく芋を含む結着剤および保形助剤をそれぞれ0.30%の比率で添加した。また、こんにゃく芋を含む結着剤として、株式会社荻野商店のマジックマンナン(登録商標)を用いた。さらに、保形助剤には、日本食研ホールディングス株式会社のハイブリッドアルファ(小麦粉加工品の製品名称)を用いた。
【0053】
ミンチ肉/結着剤/保形助剤の混合物をミキサーまたは撹拌機により低速回転で5分間撹拌した結果、仕掛り品としての下拵え済みの中具材原料31が得られた(工程S2-7)。
【0054】
得られた中具材原料31を冷蔵庫のチルド室あるいはステンレス台車上において、包あん機で使用されるまでの間だけ一時的に保管した。
【0055】
[包あん品の製造]
以下に、
図2~
図7を参照しながら包あん品の製造工程を説明する。
製造工程の説明に入る前に、先ず製造工程中で最も重要である包あん成形加工に使用される包あん機について説明する。
【0056】
図3に示すように、包あん機1は、ストッパー付キャスターで手押し移動可能に支持された本体フレーム3と、フレーム上部に着脱可能に取り付けられた2つのフィーダー5,7と、対応するフィーダーにそれぞれ対応して連通する2つの流路8A,8B(
図4参照)と、対応する流路の終端にそれぞれ対応して連通する内ノズル9Aおよび外ノズル9B(
図4参照)を含む重合ノズル9と、重合ノズルの直下に配設されるシャッタアセンブリ12(
図4~
図7参照)を含むカッター13と、搬送ベルト16を含むベルトコンベア機構17と、シャッタアセンブリを調整するための調整ハンドル28と、を備えている。
【0057】
本体フレーム3の上部には中具材フィーダー5および外皮材フィーダー7が着脱可能に取り付けられている。フィーダー5,7の各容器はフレーム上部から取り外しできるように構成され、中具材フィーダー5の容器には下拵えされた中具材の原料が収容され、外皮材フィーダー7の容器には下拵えされた外皮材の原料が収容されるようになっている。
【0058】
図4に示すように、重合ノズル9は、中具材フィーダー容器の吐出口に連通する流路8Aを含む中央ノズル9A(内ノズル)と、この中央ノズル9Aの外周を取り囲むようにほぼ同軸に配設され、外皮材フィーダー容器の吐出口に連通する流路8Bを含む環状ノズル9B(外ノズル)と、を含む同軸二重構造を成すものである。
【0059】
中具材フィーダー5には第1のベーンポンプ15Aおよび第1のスクリュウコンベア(図示せず)が取り付けられ、外皮材フィーダー7には第2のベーンポンプ15Bおよび第2のスクリュウコンベア(図示せず)が取り付けられている。
【0060】
第1のベーンポンプ15Aおよび第1のスクリュウコンベアを共に駆動させると、第1のベーンポンプ15Aの吸込み口に第1のスクリュウコンベアの駆動力により中具材原料31が供給されるとともに、第1のベーンポンプ15Aの駆動力により第1のベーンポンプ15Aの吐出口から中央ノズル9A(重合ノズル9の内ノズル)の流路8Aに向けて中具材原料31が所定の圧力で押し出し供給されるようになっている。
【0061】
第2のベーンポンプ15Bおよび第2のスクリュウコンベアを共に駆動させると、第2のベーンポンプ15Bの吸込み口に第2のスクリュウコンベアの駆動力により外皮材原料32が押し出し供給されるとともに、第2のベーンポンプ15Bの吐出口から環状ノズル9B(外ノズル)の流路8Bに向けて外皮材原料32が所定の圧力で押し出し供給されるようになっている。
【0062】
図4に示すように、カッター13は、フレーム3に固定されたケーシング22および該ケーシング22に駆動可能に連結されたシャッタアセンブリ12を備えている。ケーシング22内には同一円周上に等間隔に6つの回動軸12Aが回転/スライド移動可能に設けられている。回動軸12Aは、対応するスライダ12Bとともにシャッタ片11のスロット穴11B内に配置されている。
【0063】
シャッタアセンブリ12は、ケーシング22を貫通して下方に延在する重合ノズル9の直下に所定の間隔に離間配置されている。シャッタアセンブリ12のシャッタ片11は、対応する回動軸12Aを介して旋回可能に固定ケーシング22によって支持されている。
【0064】
図5~
図7に示すように、回動軸12Aは、図示しないモータの駆動軸からの回転駆動力が伝達され得るようにモータ駆動軸に連結されている。駆動モータは図示しない可動板に固定され、可動板には2本の垂直軸(図示せず)が取り付けられている。これら2本の垂直軸は、本体フレーム3に取り付けられた固定ブロック(図示せず)に設けられた2つの円筒状孔(図示せず)と篏合し、スライド可能に設けられている。
【0065】
各回動軸12Aを逆回転方向に回転させると、回動軸12Aの上端に軸止されたカム板(図示せず)が回動軸12Aと一緒に回転される。これにより、カム板に取り付けられた偏心突起(図示せず)が回動軸12Aの軸心から偏心した位置で回転(偏心回転)し、
図5(a)に示すように、シャッタアセンブリ12を構成する6つのシャッタ片11が全開する。シャッタアセンブリの全開状態では、周囲をシャッタ片11で取り囲まれた中央部に大きな開口12Cが形成される。全開状態の中央開口12Cの径は、
図5(a)に示すように、円柱状成形体33が十分に余裕をもって通過できるようにするために、円柱状成形体33の直径より十分に大きい。
【0066】
これに対して、各回動軸12Aを正転方向に回転させると、
図6の(a)に示すように、6つのシャッタ片11で取り囲まれた中央開口12Cが徐々に縮小されていく。これにより
図6の(b)に示すように、中央開口12C内に挿入された円柱状成形体33にシャッタ片11の切断刃11Aが食い込み、刃の食い込みにより円柱状成形体33の下端部より少し上部に括れが生じ、括れより下方に包あん前駆体34が暫定的に形成される。
【0067】
さらに各回動軸12Aを正転方向の下死点まで回転させると、
図7の(a)に示すように、各シャッタ片11の内方鋭角部が長手軸の中心に集合して整合し、シャッタアセンブリ12が完全に閉鎖された状態となり、中央開口12Cが無くなる。これにより
図7の(b)に示すように、上方のノズル9に繋がる円柱状成形体33から包あん前駆体34が切り離され、切り離された部分が包あん品35となってリフター20で突上げられた搬送ベルト16上に落下する。
【0068】
図3に示すように、ベルトコンベア機構17がカッター13の下方に配置され、カッター13で切断・包着された包あん品35を着地させた後に、図示しない次工程に搬送するようになっている。
【0069】
ベルトコンベア機構17は、図示しない駆動モータから回転駆動力が伝達される駆動ローラー、ベルト張力を調整するブライドルローラー、ベルトを案内するガイドローラー、およびこれらの各種ローラーによって無限軌道上を移動可能に支持された無端の搬送ベルト16を備えている。
【0070】
カッター13のさらに下方には搬送ベルト16を間に挟んでリフター20が設けられている。リフター20は、カッター13の動作と同期して搬送ベルト16の一部を一時的に持ち上げるための突上げ部材19Aと、この突上げ部材19Aを上下方向に移動可能に支持する昇降ロッド19と、を備えている。すなわち、昇降ロッド19の上端部は突上げ部材19Aの下面に連結され、昇降ロッド19の主要部はガイド18によって案内され、昇降ロッド19の基端部は図示しないカム機構を介して駆動モータによって上下方向に往復運動可能に支持されている。
【0071】
リフター20において、昇降ロッド19の上下動の最下死点は突上げ部材19Aの下面がガイド上板18Aの上面に当接する位置であり、昇降ロッド19の上下動の最上死点は図示しないストッパーがガイド上板18Aの下面に当接する位置である。
【0072】
図3に示すように、本体フレーム3の前面下部には、手動または自動で操作される調整ハンドル28が取り付けられている。調整ハンドル28には、図示しない保護ケーシングで覆われたスクリュウロッドの一端が回転可能に連結されている。スクリュウロッドの他端側には、スクリュウロッドのネジ部に螺合する内ネジ部を備えたスクリュウロッド支持部材(図示せず)が保護ケーシング(図示せず)の内側に摺動可能に支持されている。スクリュウロッド支持部材(図示せず)の一端部はフレーム3の内側においてL字状レバー(図示せず)の一方のアーム(図示せず)に摺動部材(図示せず)を介して連結されている。L字状レバー(図示せず)のほぼ中央部に位置する角部はフレーム3に回動可能に取り付けられ、L字状レバー(図示せず)の他方のアーム(図示せず)は連結部材(図示せず)を介して2つの支持部材(図示せず)が対向配置されている。これら2つの支持部材(図示せず)の先端部の内側にそれぞれカムフォロワー(図示せず)が取り付けられている。このカムフォロワー上にカム(図示せず)の底面が載るようになっている。調整ハンドル28を回転することにより、上記カム(図示せず)の回転に従動して作動する図示しないL字状レバー(図示せず)を介して、カムを上下方向に位置決めできるようになっている。
【0073】
図3に示すように、カッター13のケーシング22内には開閉レバー23を一体的に備えた開閉軸12Aが軸まわりに回転可能に設けられている。この開閉軸12Aとケーシング22の同一円周上に等間隔に配置された複数の枢軸(図示せず)とは、ギア(図示せず)および相互に拘束し合う各シャッタ片11を介して連動するように連結されている。開閉レバー23を揺動させることにより開閉軸12Aを回転させると、各シャッタ片11が軸まわりに旋回してシャッタアセンブリ12の中央開口12Cが開いたり閉じたりするようになっている。
【0074】
包あん機1は、各部の動作を自動制御するためのコントローラ(図示せず)を備えている。コントローラによる自動制御では、
図5の円柱状成形体33→
図6の包あん前駆体34→
図7の包あん品35へと変化する加工時間は、僅かな時間である。すなわち、カッター13のシャッタアセンブリ12の繰り返し開閉サイクル時間は非常に短く設定されている。また、カッター13と連動して駆動されるベルトコンベア機構17の繰り返し搬送/停止サイクル時間も非常に短く設定されている。さらに、ベルトコンベア機構17と連動して駆動されるリフター20の間欠的な突上げサイクル時間も非常に短く設定されている。
【0075】
包あん品の製造工程について説明する。
(包あん機の調整)
上述した包あん機1では、包あん成形工程K2に入る前にその準備として、各部を以下のように調整した(工程K1)。
1) フィーダー5,7、重合ノズル9、シャッタアセンブリ12、搬送ベルト16を洗浄し、各部に付着した異物を除去する。
2)中具材原料31および外皮材原料32をそれぞれ計量し、対応するフィーダー5,7の各容器にそれぞれ収容する。
3)調整ハンドル28を手動または自動で操作して、カッター13の駆動機構を調整する。
4)図示しない他の調整ハンドルレバーを手動または自動で操作して、2つのベーンポンプ15A,15Bからの吐出圧力(原材料の押し出し駆動力)をそれぞれ調整する。
【0076】
本実施例では、調整ハンドル28および/または他の調整ハンドルレバー(図示せず)を操作することにより、中具材原料31と外皮材原料32との供給比率が30:70(中具材30%:外皮材70%)になるように調整した。
【0077】
(原材料の仕込み)
製造計画に準じてまたは需要に応じて必要なロット量またはロット数を計量し、計量した量だけの中具材原料31および外皮材原料32をそれぞれ冷凍庫から出庫した。中具材原料31の塊りと外皮材原料32とをそれぞれ一時的に保管した。
中具材原料31を包あん機の第1のフィーダー5の容器に仕込むとともに、外皮材原料32を包あん機の第2のフィーダー7の容器に仕込んだ(工程K2)。
【0078】
(包あん成形)
図3~
図7を参照して、包あん機1を使用する包あん成形工程K3について説明する。
【0079】
包あん機1のメインスイッチをONにして電動モータを起動し、第1及び第2のスクリュウコンベア、第1及び第2のベーンポンプ15A,15B、カッター13、ベルトコンベア機構17、およびリフター20の駆動をそれぞれ開始する。
これにより、第1のベーンポンプ15Aの吸込み口に第1のスクリュウコンベアの駆動力により中具材原料31が供給されるとともに、第1のベーンポンプ15Aの駆動力により第1のベーンポンプ15Aの吐出口から中央ノズル9Aの流路8Aに向けて中具材原料31が所定の圧力で押し出し供給される。
【0080】
また、第2のベーンポンプ15Bの吸込み口に第2のスクリュウコンベアの駆動力により外皮材原料32が押し出し供給されるとともに、第2のベーンポンプ15Bの吐出口から環状ノズル9Bの流路8Bに向けて外皮材原料32が所定の圧力で押し出し供給される。
これにより、重合ノズル9から同期並列に同軸押出しされる中具材原料31と外皮材原料32とが一体化した円柱状成形体33が形成される。
【0081】
一方では、各回動軸12Aが逆回転方向に回転され、回動軸12Aの上端に軸止されたカム板(図示せず)が回動軸12Aと一緒に回転され、これによりカム板に取り付けられた偏心突起(図示せず)が回動軸12Aの軸心から偏心した位置で回転(偏心回転)し、シャッタアセンブリ12を構成する6つのシャッタ片11が全開する。シャッタアセンブリの全開状態では、周囲をシャッタ片11で取り囲まれた中央部に大きな開口12Cが形成される。
図5(a)に示すように、全開した中央開口12Cのなかに重合ノズル9からの円柱状成形体33が挿入される。
【0082】
次いで、各回動軸12Aが正転方向に回転され、6つのシャッタ片11で取り囲まれた中央開口12Cが縮径されていく。これにより
図6の(b)に示すように、中央開口12C内に挿入された円柱状成形体33にシャッタ片11の切断刃11Aが食い込み、刃の食い込みにより円柱状成形体33の下端部より少し上部に括れが生じ、括れより下方に包あん前駆体34が暫定的に形成される。
【0083】
さらに各回動軸12Aが正転方向の下死点まで回転されると、
図7の(a)に示すように、各シャッタ片11の内方鋭角部が長手軸の中央にて整合し、シャッタアセンブリ12が完全に閉鎖された状態となり、中央開口12Cが無くなる。これにより
図7の(b)に示すように、上方のノズル9に繋がる円柱状成形体33から包あん前駆体34が切り離され、切り離された部分が包あん品35となってリフター20で突上げられた搬送ベルト16上に落下する。
【0084】
次いで、リフター20の突上げ部材19Aが下降して搬送ベルト16が水平に戻ると、一時停止していた搬送ベルト16がベルトコンベア機構17によって駆動され、搬送ベルト16上の包あん品35が次工程に向けて搬送される。
【0085】
上述した工程K2の一連の包あん成形加工は、人手を介することなく、包あん機1により全て機械的に自動で行われる。
【0086】
次いで、作製した包あん品の全数を作業者の肉眼により外観目視検査し、形状不良や破れなどの損傷のある外観不良品を選別して除去する。
【0087】
外観目視検査に合格した包あん品を凍結処理し、凍結した冷凍ロールキャベツを得た(工程K4)。凍結処理では、選別された包あん品を-35℃以下に管理されたスパイラルフリーザーに入れ、表面温度が-18℃以下に保たれるように包あん品を凍結させた。
【0088】
次いで、凍結した包あん品を計量検査し、規格外品を除去した後に、合格品のみを袋詰めし、シール包装した(工程K5)。
次いで、袋詰め包装した冷凍包あん品を金属探知検査し、不良品を除去した(工程K6)。
【0089】
次いで、金属探知検査後の合格品のみを箱入れした(工程K7)。入庫直前の最終計量検査により規格外品を排除し、合格品のみを保管用冷凍庫のなかに入れる。完成品は、品温を-18℃以下に調整して出荷されるまで冷凍庫内に保管される。その保管期間は、最大12ヶ月である。
【0090】
保管中の完成品からサンプリングし、各サンプル試料についてそれぞれ菌検査を実施した。菌検査は、食品衛生法に規定された細菌学的成分規格基準の「冷凍食品(凍結前未加熱・加熱後摂取商品)」に準拠して行なった。この基準では、一般生菌数が300万/g以下で、かつE.coli(大腸菌)が陰性であることを要求している。
【0091】
菌検査の判定基準をクリアしていることを確認したロットの製品から出荷する。
【0092】
[原材料の成分]
表1に外皮材原料に含まれる成分の一例を示す。
【0093】
【0094】
表2に中具材原料に含まれる成分の一例を示す。
【0095】
【0096】
[原料の仕込み]
表3に原料の仕込み条件の一例を示す。
【0097】
【表3】
[包あん成形条件]
表4に包あん成形条件の一例を示す。
【0098】
【0099】
[包あん成形サンプルの作製]
(実施例1)
実施例1として、表4に示す包あん成形条件下で表6に示す成分の外皮材原料を用いて包あん成形サンプルを作製した。実施例1のサンプルでは、質量%でキャベツ97.00%、こんにゃく芋結着剤1.50%、保形助剤1.50%を含む外皮材原料を用いた。
(実施例2)
実施例2として、表4に示す包あん成形条件下で表6に示す成分の外皮材原料を用いて包あん成形サンプルを作製した。実施例2のサンプルでは、質量%でキャベツ97.50%、こんにゃく芋結着剤1.25%、保形助剤1.25%を含む外皮材原料を用いた。
(実施例3)
実施例3として、表4に示す包あん成形条件下で表6に示す成分の外皮材原料を用いて包あん成形サンプルを作製した。実施例3のサンプルでは、質量%でキャベツ98.00%、こんにゃく芋結着剤1.00%、保形助剤1.00%を含む外皮材原料を用いた。
【0100】
(比較例1)
比較例1として、表4に示す包あん成形条件下で表6に示す成分の外皮材原料を用いて包あん成形サンプルを作製した。比較例1のサンプルでは、質量%でキャベツ98.50%、こんにゃく芋結着剤0.75%、保形助剤0.75%を含む外皮材原料を用いた。
(比較例2)
比較例2として、表4に示す包あん成形条件下で表6に示す成分の外皮材原料を用いて包あん成形サンプルを作製した。比較例2のサンプルでは、質量%でキャベツ99.00%、こんにゃく芋結着剤0.50%、保形助剤0.50%を含む外皮材原料を用いた。
【0101】
[粘度測定条件]
作製した各サンプルの包あん成形性を評価するために、表5に示す粘度測定条件で外皮材原料の粘度をそれぞれ測定した。
【0102】
【0103】
[包あん成形性の評価試験結果]
表6に、上記の実施例および比較例の各サンプルの包あん成形性についてそれぞれ評価した試験結果を示す。
【0104】
評価試験は、人の肉眼による外観目視により判定した。包あん品の外観が良好なものを合格品として表中に記号○で示し、潰れや変形などの形状不良があるものおよび外皮材の被覆厚さに偏りがあるものおよび外皮材が破れたものを不良品として表中に記号×で示した。
【0105】
【0106】
実施例1のサンプルは、外観が良好な球状の包あん品であった。
実施例2のサンプルは、外観が良好な球状の包あん品であった。
実施例3のサンプルは、外観が良好な球状の包あん品であった。
比較例1のサンプルでは、外皮材の一部に破れを生じて中具材が露出した。
比較例2のサンプルでは、外皮材の一部に破れを生じて中具材が露出した。
(調理方法)
本発明品の調理方法として、パッケージから出して湯煎、パッケージから出してスチームコンベクションオーブン(SC)加熱、パッケージから出してオーブンレンジ加熱など種々の方法を用いることができる。
【0107】
(加熱調理時の包あん品の形状保持性の評価試験結果)
本発明品をパッケージから取り出して湯煎時間を1時間、3時間、5時間、7時間と種々変えて長時間にわたり湯煎した。その結果、いずれも煮崩れを生じることなく調理することができた。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明により製造される冷凍ロールキャベツは、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等において従来の手巻きロールキャベツの冷凍品とともに併存して販売流通することが大いに期待される冷凍食品である。
【符号の説明】
【0109】
1…包あん機、3…フレーム、5…中具材フィーダー(第1の供給部)、7…外皮材フィーダー(第2の供給部)、9…重合ノズル、9A…中央ノズル(内ノズル)、9B…環状ノズル(外ノズル)、
11…シャッタ片、11A…切断刃、11B…スロット穴、12…シャッタアセンブリ、12A…回動軸、12B…スライダ、12C…開口、13…カッター、
15A,15B…ベーンポンプ、
16…搬送ベルト、17…ベルトコンベア機構、18…ガイド、18A…穴付ガイド上板、19…昇降ロッド、19A…突上げ部、20…リフター、
22…ケーシング、23…開閉レバー、25…連結ロッド、28…調整ハンドル、
31…中具材原料、32…外皮材原料、
33…円柱状成形体、34…包あん前駆体、35…包あん品
【要約】
【課題】求人難であっても安定した品質の製品を生産可能な製造ラインの自動化を実現できる冷凍ロールキャベツの製造方法を提供する。
【解決手段】小片状キャベツを作製し、こんにゃく芋結着剤をペースト状に調整し、この結着剤を小片状キャベツに添加し、結着剤と小片状キャベツとを混練し、外皮材原料を作製し、ひき肉に調味料を調合して中具材原料を作製し、中具材原料および外皮材原料を包あん機に収容し、中央ノズルから中具材原料を押し出しながら、環状ノズルから外皮材原料を同時に押し出すことにより、押し出された中具材原料の外周を同期押し出しされた外皮材原料で被覆し、環状ノズルから外皮材原料を供給している間に、中央ノズルから押し出される中具材原料を切断するとともに、その切断面を包着させ、中具材原料を外皮材原料で包み込んで成る包あん品を作製し、包あん品を凍結処理する。
【選択図】 なし