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特許7571234光源の光子数統計を決定するための方法およびシステム
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  • 特許-光源の光子数統計を決定するための方法およびシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】光源の光子数統計を決定するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H04L 9/12 20060101AFI20241015BHJP
   H05B 45/12 20200101ALI20241015BHJP
   H05B 45/32 20200101ALI20241015BHJP
   H05B 47/105 20200101ALI20241015BHJP
【FI】
H04L9/12
H05B45/12
H05B45/32
H05B47/105
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023139315
(22)【出願日】2023-08-29
(65)【公開番号】P2024070212
(43)【公開日】2024-05-22
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】2216809.0
(32)【優先日】2022-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス エフ ダインズ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター レイモンド スミス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジェームス シールズ
【審査官】平井 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-044310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 9/12
H05B 45/00-60
H05B 47/00-29
G09C 1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源の光子数統計を決定するためのコンピュータ実装方法であって、
光源によって放射され、単一の光検出器に入射する複数の光パルスのシーケンスに対する強度データを受信することと、
受信した強度データに基づいて、前記シーケンス中の各光パルスに対する個々の強度値を決定することと、
複数の強度値に基づいて、前記複数の光パルスに対する平均強度値を決定することと、
2以上の次数nに対する強度相関を決定することと、ここで、各次数nについて、前記強度相関を決定することは、(i)各個々の強度値がn乗されるときに取得される値の平均と(ii)n乗した平均強度値とを比較することを備え、
2以上の次数nについての強度相関に基づいて、前記光源に対する光子数統計を導出することと、を備える、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記光子数統計は、前記光源によって放射される所定の光のパルスが特定の数の光子を備える確率を規定する、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記光源は、異なる次数に対する強度相関の比較に基づいて、ポアソン光源として動作するか否かを決定することをさらに備える、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記光源がポアソン光源として動作するか否かを決定することは、前記異なる次数に対する強度相関がそれぞれ互いのしきい値距離内にあるか否かを決定することを備える、請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
各次数nについて決定された前記強度相関に基づいて、光子数分布境界を決定することをさらに備える、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記光子数分布境界を決定することは、各次数nについて、各個々の強度値がn乗されるときに取得される値の変化の程度を決定することを備える、請求項5に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
導出された光子数統計に基づいて、前記光源が量子鍵配送システムにおける使用のための基準を満たすか否かを決定することをさらに備える、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
パルス光源の電力を設定するための方法であって、
2以上の異なる出力電力を取得するために前記光源の電力を調節することと、
各出力電力について、
前記光源によって放射される複数の光パルスのシーケンスで検出器を照射することと、
各検出された光パルスについて個々の強度値を決定することと、
複数の強度値に基づいて、前記検出器に入射する前記光パルスに対する平均強度値を決定することと、
2以上の次数nに対する強度相関を決定することと、
ここで、各次数nについて、前記強度相関を決定することは、(i)各個々の強度値がn乗されるときに取得される値の平均と(ii)n乗した平均強度値とを比較することを含み、
前記異なる次数に対する強度相関の比較に基づいて、出力電力を選択することと、を備える、方法。
【請求項9】
前記異なる次数に対する強度相関の比較に基づいて、前記光源がポアソン光源として動作する出力電力を決定することをさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記光源がポアソン光源として動作するか否かを決定することは、前記異なる次数に対する強度相関がそれぞれ互いのしきい値距離内にあるか否かを決定することを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記出力電力は、前記光源がポアソン光源として動作するように決定された最小出力電力であるとして選ばれる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータによって実行されるとき、コンピュータに、請求項1に記載の方法を実行させる、コンピュータ実行可能なコードを備える、コンピュータ読取可能記憶媒体。
【請求項13】
1以上のコンピュータプロセッサと、
請求項12に記載のコンピュータ読取可能記憶媒体と、を備える、システム。
【請求項14】
前記システムは、量子鍵配送システムである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
光源をさらに備え、前記光源は、パルスレーザダイオードまたはパルス発光ダイオードである、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここで説明する実施形態は、光源の光子数統計を決定するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
量子鍵配送(QKD)は、2つのリモートノードにおいて完全にランダムな量子鍵を生成するためのテクノロジーであり、これは、セキュアな通信を保証するためにデータ暗号化に使用されることができる。QKDの基本的な動作原理は、量子状態を符号化及び測定することに依拠し、それには、認証された古典チャネルを通した2つのノード間の話し合いが続き、これは、盗聴者の存在をこれらが検出することを可能にする。
【0003】
QKDのセキュリティに対する鍵となる要件は、状態を送信するために使用される光源がポアソン光子数分布を有することである。多くのケースにおいて、光源は、この仮定がチェックされることなく、ポアソン光子数分布を有するように仮定される。しかしながら、この仮定からの逸脱は、QKDのセキュリティを犯し、盗聴者が活用できる潜在的な隙間を広げることがある。仮定がチェックされるケースにおいて、光源についての光子相関測定が行われる。光子相関は、光源の光子数統計を境界付けるために使用される。測定された相関の程度がより大きいほど、よりきつくこれらの境界が作られ、結果はより正確になる。これらのチェックを行うために必要とされるテクノロジーは、動作が厄介で複雑である。
【0004】
より詳細には、光子相関は、しきい値単一光子検出器または光子数分解検出器のいずれかで通常測定される。光子数分解検出器は、研究室の外部で通常見られる一方で、単一の光子検出器を有する光子相関測定は、Tのようにスケールすることから行うのに時間がかかり、ここで、Tは時間期間でありnは相関の次数である。このような測定は、n個の分離検出器も必要とする。例として、QKDシステムに対する光子数分布の合理的な考えを取得するために、次数n=4まで光子相関を測定することが必要であり、関係付けられた4つのチャネル相関エレクトロニクスとともに、4つの単一の検出器が必要とされることを意味する。このようなセットアップを使用すると、適切な精度でデータを取得するために、何日もかからないが、長い時間がかかるかもしれない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
添付の図面を参照して、例として本発明の実施形態が説明される。
図1図1は、実施形態によるシステムを示している。
図2図2は、実施形態におけるオシロスコープ上で測定されたようなパルスの概略図を示す。
図3図3は、実施形態において実行されるような強度の測定から集められた強度値のマトリックスを示す。
図4図4は、実施形態による異なるレーザバイアス電流に対する強度相関値の比較を示す。
図5図5は、実施形態により導出された光子数分布とポアソン光子数分布の上限と下限との比較を示す。
【発明の概要】
【0006】
第1の実施形態によると、光源の光子数統計を決定するためのコンピュータ実装方法が提供され、方法は、
光源によって放射され、単一の光検出器に入射する複数の光パルスのシーケンスに対する強度データを受信することと、
受信した強度データに基づいて、シーケンス中の各光パルスに対する個々の強度値を決定することと、
複数の強度値に基づいて、複数の光パルスに対する平均強度値を決定することと、
2以上の次数nに対する強度相関を決定することと、ここで、各次数nについて、強度相関を決定することは、(i)各個々の強度値がn乗されるときに取得される値の平均と(ii)n乗した平均強度値とを比較することを備え、
2以上の次数nについての強度相関に基づいて、光源に対する光子数統計を導出することと、を備える。
【0007】
光子数統計は、光源によって放射される所定の光パルスが特定の数の光子を備える確率を規定してもよい。
【0008】
方法は、異なる次数についての強度相関の比較に基づいて、光源がポアソン光子源として動作するか否かを決定してもよい。光源がポアソン光源として動作するか否かを決定することは、異なる次数に対する強度相関がそれぞれ互いのしきい値距離内にあるか否かを決定することを備えていてもよい。
【0009】
方法は、各次数nについて決定された強度相関に基づいて、光子数分布境界を決定することをさらに備えていてもよい。光子数分布境界を決定することは、各次数nについて、各個々の強度値がn乗されるときに取得される値の変化の程度を決定することを備えていてもよい。
【0010】
方法は、導出された光子数統計に基づいて、光源が量子鍵配送システムにおける使用のための基準を満たすか否かを決定することを備えていてもよい。
【0011】
第2の実施形態によると、パルス光源の電力を設定するための方法であって、
2以上の異なる出力電力を取得するために光源の電力を調節することと、
各出力電力について、
光源によって放射される複数の光パルスのシーケンスで検出器を照射することと、
各検出された光パルスについて個々の強度値を決定することと、
複数の強度値に基づいて、検出器に入射する光パルスに対する平均強度値を決定することと、
2以上の次数nに対する強度相関を決定することと、ここで、各次数nについて、強度相関を決定することは、(i)各個々の強度値がn乗されるときに取得される値の平均と(ii)n乗した平均強度値とを比較することを含み、
異なる次数に対する強度相関の比較に基づいて、出力電力を選択することと、を備える。
【0012】
方法は、異なる次数に対する強度相関の比較に基づいて、光源がポアソン光源として動作する出力電力を決定することをさらに備えていてもよい。光源がポアソン光源として動作するか否かを決定することは、異なる次数に対する強度相関がそれぞれ互いのしきい値距離内にあるか否かを決定することを備えていてもよい。
【0013】
出力電力は、光源がポアソン光源として動作するように決定された最小出力電力であるとして選ばれてもよい。
【0014】
第3の実施形態によると、コンピュータによって実行されるとき、コンピュータに、第1の実施形態に記載の方法を実行させる、コンピュータ実行可能なコードを備えるコンピュータ読取可能媒体が提供されてもよい。
【0015】
第4の実施形態によると、システムが提供され、1以上のコンピュータプロセッサと、第3の実施形態に記載のコンピュータ読取可能媒体と、を備えている。
【0016】
システムは、量子鍵配送システムであってもよい。システムは、光源をさらに備えていてもよく、光源は、パルスレーザダイオードまたはパルス発光ダイオードである。
【0017】
ここで説明する実施形態は、光源の光子数分布の境界を配置するために使用されることができる、強度相関を測定するためのデバイスを備えている。例示的な実施形態が、図1に示される。ここで、光源101からの光は、広帯域光フォトダイオード103に向けられる。フォトダイオードは、広帯域オシロスコープ105に接続され、これは、それ自体がコンピュータ107に接続される。
【0018】
光源は、例えば、パルス発光ダイオードまたはパルスレーザダイオードを含む、多数の異なるタイプの光源のうちの1つであってもよい。いくつかの実施形態において、光源は、QKDシステムにおいて使用されるものであってもよい。例えば、光源は、BB84 QKDシステムまたはT12 QKDシステムにおける送信機の一部を形成してもよい。光源は、差動位相シフトQKDシステムまたは連続一方向プロトコルQKDシステムにおける送信機のものであってもよい。
【0019】
光源は、tの最大の半分の幅と反復周期Tを有する光のパルスを出力するように構成される。フォトダイオードは、帯域幅Bを有するように選択され、
【数1】
である。フォトダイオードは、光パルスを電気パルスに変換し、これは、次にオシロスコープを通過し、これは、フォトダイオードと類似した高い帯域幅を有する。オシロスコープは、複数の光パルスの連続した列を測定する。パルス列は、オシロスコープメモリに記憶され、これらは、処理のためにコンピュータによって収集される。コンピュータは、各パルス下のエリアを統合することによってパルス列を処理し、各パルスについて単一の強度値Iを提供する。
【0020】
図2は、オシロスコープで測定されたような、m個のパルスを有する電気パルス列の例を示している。強度値{I,I,I...,I}は、コンピュータメモリ中にリストファイルとして記憶される。これらの強度値を使用して、以下のように強度相関G(n)を計算することが可能である。
【0021】
第1のステップにおいて、コンピュータメモリに記憶されているような値{I,I,I,...,I}のセットは、値nまで、さまざまなべき乗が行われ、nは、考慮している最も高い次数である。そのようにすることにより、コンピュータは、値{I ,I ,I ...I },{I ,I ,I ...I }...,{I ,I ,I ...I }のそれぞれのセットを生成し、値のマトリックスが図3で示すように生成されることを可能にする。
【0022】
セットに対する標準偏差σとともに、値の各セットにおける平均値
【数2】
を取得することができる。したがって、
【数3】
は、値{I ,I ,I ...I }の平均を規定する一方で、σは、これらの値の標準偏差を規定する。
【0023】
次数n、G(n)の強度相関は、以下の式を使用して計算される:
【数4】
ここで、I={I,I,I,...,I}は測定されたパルスの強度、すなわち、図2に示すマトリックスの列1を示す。このアプローチを使用して、迅速かつ効果的に任意次数nまでの強度相関を決定することが可能である。例えば、1GHzパルス光源のケースにおいて、一連の10パルスは単一の検出器のみでマイクロ秒で取得することができ、次数n=10までの強度相関が適正な信頼(confidence)で計算されることを可能にする。対照的に、ビームスプリッタと単一の光子検出器の従来技術を使用する場合、合計10個の検出器が必要とされ、必要とされる時間は、単一検出器で効果的に単一の光子検出を使用する場合は数か月かかるだろう。アバランシェフォトダイオードに基づく単一の光子検出器などの単一の光子検出器の効率性が25%であるとき、必要とされる時間は、何十万年にも長くなる。強度相関G(n)の情報により、光源がポアソン光源として動作するか否かを決定することが可能である。光源がポアソン光源として作動するとき、値G(n)は、約1に一致すべきである。したがって、値G(n)を測定することにより、光源に対する最適な動作電力を識別することが可能である。例として、図4は、レーザバイアス電流の異なるレベルに対するQKD送信機光源の出力を示している。各電流値について、強度相関G(n)は、n=1から9の範囲で決定され、1つだけの自由フィッテイングパラメータで単純なレーザモデルを使用して最小2乗適合を含み描かれている。レーザバイアス電流が増加すると、データにおける傾向は、明らかにモデルによって質的に再生され、それによって、強度相関器の機能も有効にする。電流が増加すると、値G(n)における差はより小さくなり、最終的に、11.9mAの動作電流において、約1に一致することがわかる。
【0024】
計算された強度相関G(n)を有する、いくつかの実施形態において、値G(n)は、光子数分布境界を計算するためにさらに使用されてもよい。光子数分布境界を決定することはQKDシステムのケースにおいて望ましい可能性があり、例えば、光子分布境界の情報は、QKDシステムに対するセキュアビットレートを計算する際に助けとなることがある。
【0025】
光子数分布境界は、各次数G(n)について組み合わされた標準偏差σG(n)を参照することにより規定されてもよい。各強度相関G(n)に対する値σG(n)は、以下のように計算されることができる。
【数5】
ここで、σはパルス{I,I,I,...,I}の測定された強度における標準偏差である。σG(n)に対するこれらの値を使用して、光子数分布境界を以下のように規定することができる。
【数6】
ここで、下線と上線は、それぞれ下限と上限を示す。項γは、G(n)の真の値が信頼区間[G(n)-γσG(n);G(n)+γσG(n)]の外にある確率2εを与える四分位数(quantile)を表し、各値G(n)が正規確率分布を有することを仮定する。所定の次数nについて、G(n)の真値が信頼区間外にあるという合計確率は、制約の合計数に依存する。QKDシステムのケースにおいて、全体の確率がシステムの最終グローバルセキュリティパラメータと一致することを確実にするためにケアがなされなければならない。QKDシステムに対するグローバルセキュリティパラメータは、例えば、30000年に一度未満の鍵失敗確率(a key failure probability)と同じである、約10-10の値を有してもよい。
【0026】
四分位数γは、G(n)に対して決定された値における信頼度を境界づけるための手段を提供し、これは、値G(n)の測定においてエラーがあるかもしれないこと、値(n)はある程度の正確さに決定されることができることを認識する。QKDシステムについて典型的に、四分位数は、約7から10であるべきであるが、それは、これよりも大きいことがある。例として、開始点を正規分布に対する7四分位数とすると、これは、εに対して2.56×10-12の開始値を提供するだろう。簡略化のためにG(4)まで考慮する場合、式
【数7】
から6つの制約が、単一光子収量について追加の6つの制約が、エラーレートに対して更なる制約があるだろう。これらを総合すると、制約の総数は、13となり、εの合計値は13×2.56×10-12=3.33×10-11の合計値となるだろう。その後、最終的な総値εがQKDシステムに対するグローバルセキュリティパラメータよりもはるかに小さいというチェックを行うことができる。
【0027】
値G(n)は、pの値を最小化するための線形最適化における制約、すなわち、所定のパルスが単一の光子のみを備えるという確率として使用されてもよい。光源がポアソン光子数分布を有すると最初に仮定される従来の方法とは対照的に、実施形態は、ポアソン式によって生成されたポアソン光子数分布を強度相関G(n)から導出された測定値と置き換えることにより、この仮定を削除する。最小化は、所定のパルスが単一の光子のみを備える最も低い確率を見つけるために使用され、それによって、セキュリティに関して最も悲観的な状況を仮定する。pの値は、以下に従って最小化される:
【数8】
G(4)、G(5)等続け、G(10)まで:
【数9】
ここで、
【数10】
上記において、値pは、パルス毎のn個の光子を放出する確率を規定し、μは、光信号の平均強度である。値μは、光パワーメーターを使用して、高い精度で、または、較正済みパワーメーターによって測定することができ、その出力は測定された値の高い安定性を保証するためにフィードバックループに供給される。QKDシステムを含む多くの用途に対して、減衰された光信号の平均強度を規定する値μで、光源は単一の光子レベルに減衰される。
【0028】
上記の最小化問題は、コンピュータによって実行されることができる単純な線形プログラミングを解決する。無限和の問題に対処するために、和は、nの特定の値、例えばn=200で切り捨てられてもよく、関心のあるすべての光子数分布を依然としてカバーすることを確実にする。
【0029】
図5は、パルス毎の0.4光子の光子束と(信頼区間2ε=1-3.6x10^-33を与える)γ=12とを使用する結果を示す。見てわかるように、ポアソン光子数分布と導出された光子数分布との上限と下限との間に差はない。
【0030】
強度相関G(n)は、光信号を減衰させる前に決定されてもよく、相関が光源強度から独立していることから、減衰された光を依然として保持する強度相関G(n)を予測することが合理的である。この仮定を使用すると、単一の光子レベルにおける強度に対する単一の光子数分布への境界を計算することが可能になる。原則として、ここで説明する実施形態ではn=10の値は実用的制限として選ばれているが、これは、任意の次数nに対して行うことができる。
【0031】
ここで説明した実施形態は、光源に対する光子数分布の正確な特徴付けを可能にすることがわかるだろう。実施形態は、光源に依存して、動作するのが速く、数分以内で強度相関を決定するための十分なデータを収集することが可能であってもよい。さらに、ここで説明する実施形態は、動作が単純であり、単一の高帯域幅オシロスコープおよび受光器のみを必要とする。
【0032】
実施形態は、量子鍵配送システムより、これらの光源光子数分布を特徴付けるために使用されることができる。そうすることにより、実施形態は、量子鍵配送システムの実装セキュリティを向上させることに役立つことができる。特に、QKDシステムの光源が特徴づけられる場合、光子数境界は、計算され、QKDシステムのセキュアビットレート計算に挿入されることができる。しかしながら、ここで説明したような強度相関を決定する方法は、QKDシステムに独占的に適用可能ではなく、ここで説明した実施形態は、光源がポアソン体制において動作すること確かめる事が望ましい、任意のシステムまたは環境に適用されてもよいをことが理解されるだろう。
【0033】
本明細書で説明した主題事項および動作の実装は、本明細書で開示した構造、これらの構造的均等物、またはこれらのうちの1つ以上の組み合わせを含む、デジタル電子回路、または、コンピュータソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェアにおいて実現できる。本明細書で説明されている主題事項の実装は、データ処理装置による実行のための、またはデータ処理装置の動作を制御するためのコンピュータ記憶媒体上で符号化される、1つ以上のコンピュータプログラム、すなわちコンピュータプログラム命令の1つ以上のモジュールを使用して実現されることができる。代替的または追加的に、プログラム命令は、人工的に生成された伝搬信号、例えばデータ処理装置による実行のために適切な受信装置への送信のために情報を符号化するように生成された、機械によって生成された、電子、光学、または電磁信号で符号化されることができる。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ読取可能記憶デバイス、コンピュータ読取可能な記憶基板、ランダムもしくはシリアルアクセスメモリアレイもしくはデバイス、またはこれらのうちの1つ以上の組み合わせであることがある、または、これらに含まれることがある。さらに、コンピュータ記憶媒体は伝播信号ではないが、コンピュータ記憶媒体は、人工的に生成された伝播信号において符号化されたコンピュータプログラム命令のソースまたは宛先であることができる。コンピュータ記憶媒体もまた、1つ以上の別個の物理コンポーネントまたは媒体(例えば、複数のCD、ディスクまたは他の記憶デバイス)であることがある、またはこれらに含まれることがある。
【0034】
ある特定の実施形態が説明されたが、これらの実施形態は、例としてのみ提示されており、本発明の範囲を限定することを意図されない。実際に、本明細書に説明された、新規の方法、デバイス、及びシステムは、様々な形態で具現化されてもよく、更に、本明細書に説明された方法及びシステムの形態における様々な省略、置換、及び変更が、本発明の趣旨から逸脱することなく行われてもよい。添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物は、本発明の範囲及び趣旨内にあるような形態及び修正をカバーすることを意図される。

図1
図2
図3
図4
図5