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特許7571238情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 31/00 20060101AFI20241015BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20241015BHJP
   G08B 21/10 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
G08B31/00 B
G09B29/00 F
G08B21/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023161823
(22)【出願日】2023-09-26
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】595140170
【氏名又は名称】東京海上日動火災保険株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 優太朗
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-64427(JP,A)
【文献】特開2020-34705(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113793480(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 19/00-31/00
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表の高さを示す標高データを含む地図データを記憶する記憶部と、
土砂の流出が発生する地図上の地点を示す流出発生地点、前記流出発生地点で前記土砂が堆積する高さを示す堆積深、及び、前記土砂が堆積する角度を示す堆積角度の指定を受け付ける受付部と、
前記流出発生地点の高さ方向に前記堆積深を加えた位置を頂点として、前記土砂が前記堆積角度で堆積した場合に、地図上において前記土砂が堆積する範囲を、前記頂点、前記堆積角度及び前記地図データに基づいて推定する推定部と、
前記土砂が堆積する範囲を表す堆積範囲情報を出力する出力部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記頂点を中心として前記堆積角度で地表に向けて線分を引いた場合に、前記線分と前記地図データで表される地表とが交わる範囲を、前記地図上において前記土砂が堆積する範囲であると推定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記頂点から、前記頂点を中心とする所定範囲の地表に向けて線分を引いた場合において、
前記頂点から、前記線分の水平面に対する堆積判定角度が前記堆積角度以上である方向に前記土砂が堆積し、前記頂点から、前記堆積判定角度が前記堆積角度未満である方向には前記土砂は堆積しないと推定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記地図データはメッシュで表現されており、
前記標高データにおける前記地表の高さは、前記メッシュの地表面の標高を表しており、
前記推定部は、前記流出発生地点に対応するメッシュを含む、前記土砂が堆積したメッシュを第1メッシュとした場合における、前記第1メッシュの周囲に存在する複数の第2メッシュの各々について、
前記第1メッシュの地表面の標高に前記堆積深を加えた水平面を堆積面とし、前記第1メッシュの堆積面の中心点及び前記第2メッシュの地表面の中心点を結ぶ線と前記第2メッシュの地表面との堆積判定角度が、前記堆積角度以上である場合、前記第2メッシュに前記土砂が堆積すると推定し、
前記堆積判定角度が前記堆積角度未満である場合、前記第2メッシュに前記土砂が堆積しないと推定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記第2メッシュに前記土砂が堆積すると推定した場合、
前記第2メッシュの地表面の中心点を通る垂線と、前記第1メッシュの堆積面の中心点から前記堆積角度で伸ばした線とが交わる点を算出し、
前記垂線と交わる点を含む水平面を、前記第2メッシュにおける堆積面であると推定する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記流出発生地点から、前記流出発生地点を中心とする所定範囲の地表に沿って前記所定範囲の端である地表点まで線分を引いた場合において、
前記線分の水平面に対する角度である地表斜度が最大になる第1線分について、当該地表斜度が閾値以上であり、かつ、前記頂点から、前記第1線分の地表点に向けて引いた第2線分の水平面に対する堆積判定角度が堆積角度以上である場合、前記流出発生地点から、前記第1線分を水平面に投影した線分の方向を中心とする所定範囲の方向に対して前記土砂が堆積し、前記所定範囲の方向以外の方向には前記土砂は堆積しないと推定し、
前記第1線分の前記地表斜度が前記閾値未満である場合、前記頂点から、前記堆積判定角度が前記堆積角度以上である方向に前記土砂が堆積し、前記頂点から、前記堆積判定角度が前記堆積角度未満である方向には前記土砂は堆積しないと推定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記地図データはメッシュで表現されており、
前記標高データにおける前記地表の高さは、前記メッシュの地表面の標高を表しており、
前記推定部は、前記流出発生地点に対応するメッシュを含む、前記土砂が堆積したメッシュを第1メッシュとした場合における、前記第1メッシュの周囲に存在する複数の第2メッシュの各々について、
前記第1メッシュの地表面の中心点及び前記第2メッシュの地表面の中心点を結ぶ線と前記第2メッシュの地表面との地表斜度を算出し、
前記第1メッシュの地表面の標高に前記堆積深を加えた水平面を堆積面とし、前記第1メッシュの堆積面の中心点及び前記第2メッシュの地表面の中心点を結ぶ線と前記第2メッシュの地表面との堆積判定角度を算出し、
前記複数の第2メッシュの各々の地表斜度のうち最も角度が大きい最大地表斜度が閾値以上である場合、
前記最大地表斜度を有し、かつ、前記堆積判定角度が前記堆積角度以上である第2メッシュに前記土砂が堆積すると推定し、
前記最大地表斜度を有しない第2メッシュ、若しくは、前記堆積判定角度が前記堆積角度未満である第2メッシュには前記土砂が堆積しないと推定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記推定部は、
前記複数の第2メッシュの各々の地表斜度のうち最も角度が大きい最大地表斜度が閾値未満である場合、
前記複数の第2メッシュのうち、前記堆積判定角度が前記堆積角度以上である第2メッシュに前記土砂が堆積すると推定し、前記堆積判定角度が前記堆積角度未満である第2メッシュには前記土砂が堆積しないと推定する、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
地表の高さを示す標高データを含む地図データを記憶部に記憶するステップと、
土砂の流出が発生する地図上の地点を示す流出発生地点、前記流出発生地点で前記土砂が堆積する高さを示す堆積深、及び、前記土砂が堆積する角度を示す堆積角度の指定を受け付けるステップと、
前記流出発生地点の高さ方向に前記堆積深を加えた位置を頂点として、前記土砂が前記堆積角度で堆積した場合に、地図上において前記土砂が堆積する範囲を、前記頂点、前記堆積角度及び前記地図データに基づいて推定するステップと、
前記土砂が堆積する範囲を表す堆積範囲情報を出力するステップと、
を含む、情報処理装置が実行する情報処理方法。
【請求項10】
地表の高さを示す標高データを含む地図データを記憶部に記憶するステップと、
土砂の流出が発生する地図上の地点を示す流出発生地点、前記流出発生地点で前記土砂が堆積する高さを示す堆積深、及び、前記土砂が堆積する角度を示す堆積角度の指定を受け付けるステップと、
前記流出発生地点の高さ方向に前記堆積深を加えた位置を頂点として、前記土砂が前記堆積角度で堆積した場合に、地図上において前記土砂が堆積する範囲を、前記頂点、前記堆積角度及び前記地図データに基づいて推定するステップと、
前記土砂が堆積する範囲を表す堆積範囲情報を出力するステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、線状降水帯の発生等により土砂災害が発生し、多くの被害が生じている。特許文献1には、通信環境が整っていない現場で土砂災害を予測し、土砂災害の警告を発報することができる土砂災害予測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-160537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
土砂災害が生じた場合の堆積範囲を予め予測することができれば、各種の災害予防や保険設計等に役立てることが可能である。ここで、土砂の堆積範囲は、地形の特性、地質及び含水量などにより大きく変化する。このように、土砂災害が生じた場合の堆積範囲をより正確に推定するためには、多数のパラメータを考慮したシミュレーションを行う必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、土砂災害が生じた場合の堆積範囲を、より簡易に推定することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、地表の高さを示す標高データを含む地図データを記憶する記憶部と、土砂の流出が発生する地図上の地点を示す流出発生地点、前記流出発生地点で前記土砂が堆積する高さを示す堆積深、及び、前記土砂が堆積する角度を示す堆積角度の指定を受け付ける受付部と、前記流出発生地点の高さ方向に前記堆積深を加えた位置を頂点として、前記土砂が前記堆積角度で堆積した場合に、地図上において前記土砂が堆積する範囲を、前記頂点、前記堆積角度及び前記地図データに基づいて推定する推定部と、前記土砂が堆積する範囲を表す堆積範囲情報を出力する出力部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、土砂災害が生じた場合の堆積範囲を、より簡易に推定することを可能とする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る災害シミュレーションシステムの構成例を示す図である。
図2】情報処理装置が土砂災害の堆積範囲をシミュレーションする方法の概要を説明するための図である。
図3】情報処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
図4】情報処理装置の機能ブロック構成例を示す図である。
図5】周囲のメッシュに土砂が堆積するか否かを推定するための処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】堆積範囲を推定する方法の具体例を説明するための図である。
図7】堆積判定角度及び堆積面の高さ(堆積深)を算出する方法を説明するための図である。
図8】変形例1の概要を説明するための図である。
図9】メッシュに土砂が堆積するか否かを判定するための処理手順の一例(変形例1)を示すフローチャートである。
図10】堆積範囲を推定する方法の具体例(変形例1)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0010】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る災害シミュレーションシステム1の構成例を示す図である。災害シミュレーションシステム1は、情報処理装置10と、1以上の端末20を有する。情報処理装置10と端末20は無線又は有線の通信ネットワークNを介して接続され、相互に通信を行うことができる。
【0011】
情報処理装置10は、土砂災害が発生した場合に土砂が堆積する範囲(以下、「堆積範囲」という。)をシミュレーションする。
【0012】
端末20は、ユーザが入力した各種データを情報処理装置10に送信するとともに、情報処理装置10が行うシミュレーションの結果を表示する。端末20は、ユーザが操作する端末であり、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話機、パーソナルコンピュータ(PC)、ノートPCなど、通信機能を備えた端末であればあらゆる端末を用いることができる。
【0013】
情報処理装置10は、多数のパラメータを用いて土砂災害の堆積範囲をシミュレーションするのではなく、より簡易な方法で土砂災害の堆積範囲をシミュレーションする。具体的には、情報処理装置10は、土砂の流出が発生する地点(以下「流出発生地点」という。)、流出発生地点における土砂が堆積する高さ(以下、「堆積深」という。)、及び、土砂が堆積する角度(以下、「堆積角度」という)の3つのパラメータと地図データとに基づいて、堆積範囲を推定する。流出発生地点は、緯度及び経度で表されてもよい。なお、堆積深は、土砂が堆積している高さであるから、「堆積高さ」と読み替えてもよい。
【0014】
一般的に、堆積角度は、土砂の含水率、土砂の密度、土砂の流速、土砂に含まれる砂の種類等に基づいて大きく変化する。例えば、含水率が高い土砂の場合、含水率が低い土砂よりも堆積角度は小さくなる。したがって、土砂の堆積範囲をより正確に推定するためには、土砂の含水率、土砂の密度、土砂の流速、土砂に含まれる砂の種類等の多数の特性を考慮する必要があった。一方で、堆積角度は、同一の場所で過去に発生した土砂災害を分析することで、ある程度予測することが可能である。したがって、本実施形態では、これらの複数の特性を堆積角度というパラメータに集約することで、精度を大きく損なうことなく、少ないパラメータでシミュレーションを行うことを可能にする。
【0015】
図2は、情報処理装置10が土砂災害の堆積範囲をシミュレーションする方法の概要を説明するための図である。図2のAは、災害エリアを水平方向から見た状態を表しており、図2のBは、災害エリアを上から見た状態を表している。
【0016】
図2のAにおいて、角度fは堆積角度を示している。図2のAに示すように、情報処理装置10は、流出発生地点Pから高さ方向に堆積深hを加えた位置を頂点Sとして、堆積角度fで土砂が流れ出ると仮定した場合に、どの範囲まで土砂が堆積するのかを推定する。頂点Sから流れ出た土砂は、堆積角度fで上から下に流れていく。したがって、情報処理装置10は、頂点Sから堆積角度fの傾きで線分を引き、当該線分が地表Gと交わる地点Tを地図データを参照することで特定し、流出発生地点Pから地点Tまでの範囲を堆積範囲であると推定するようにしてもよい。
【0017】
情報処理装置10は、頂点Sを中心とする360度の方向に対して、地点Tを推定する。このようにして推定された多数の地点Tを線で結ぶことで、図2のBに示すように、頂点Sから土砂が流出した場合の堆積範囲Zを推定することができる。
【0018】
なお、本実施形態では、上述のとおり、流出発生地点、堆積深及び堆積角度の3つのパラメータを用いて、堆積範囲を簡易に推定することを目的としている。そのため、本実施形態では、流出する土砂の量に制限はないものと仮定して土砂の堆積範囲を推定する。
【0019】
<ハードウェア構成>
図3は、情報処理装置10のハードウェア構成例を示す図である。情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)等のプロセッサ11、メモリ(例えばRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory))、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置12、有線又は無線通信を行うネットワークIF(Network Interface)13、入力操作を受け付ける入力装置14、及び情報の出力を行う出力装置15を有する。入力装置14は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス及び/又はマイク等である。出力装置15は、例えば、ディスプレイ、タッチパネル及び/又はスピーカ等である。情報処理装置10は、1又は複数の物理的なサーバ等から構成されていてもよいし、ハイパーバイザー(hypervisor)上で動作する仮想的なサーバを用いて構成されていてもよいし、クラウドサーバを用いて構成されていてもよい。
【0020】
<機能ブロック構成>
図4は、情報処理装置10の機能ブロック構成例を示す図である。情報処理装置10は、記憶部100と、受付部101と、推定部102と、出力部103とを含む。記憶部100は、情報処理装置10が備える記憶装置12を用いて実現することができる。また、受付部101と、推定部102と、出力部103とは、情報処理装置10のプロセッサ11が、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ又はCD-ROM(Compact Disc Read-Only Memory)等の記憶媒体であってもよい。
【0021】
記憶部100は、海面からの地表の高さを示す標高データを含む地図データを記憶する。なお、地図データは外部サーバに設けられており、情報処理装置10は、当該外部サーバから地図データを取得して記憶部100に一時的に記憶するようにしてもよい。
【0022】
受付部101は、ユーザから、土砂の流出が発生する地図上の地点を示す流出発生地点、当該流出発生地点で土砂が堆積する高さを示す堆積深、及び、土砂が堆積する角度を示す堆積角度の指定を受け付ける。流出発生地点は、例えば、緯度及び経度で指定されてもよい。指定可能な堆積角度の範囲は、0度を超えて90度未満の範囲にしてもよいし、過去の統計データに基づき、2度~45度の範囲に限定するようにしてもよい。なお、堆積深及び堆積角度は、過去の統計データに基づいて自動的に設定されてもよい。
【0023】
推定部102は、流出発生地点の高さ方向に堆積深を加えた位置を頂点として、当該頂点から土砂が流出して堆積角度で堆積した場合に、地図上において土砂が堆積する範囲を、頂点、堆積角度及び地図データに基づいて推定する。
【0024】
また、推定部102は、当該頂点を中心として堆積角度で地表に向けて線分を引いた場合に、当該線分と地図データで表される地表とが交わる範囲を、地図において土砂が堆積する範囲であると推定するようにしてもよい。
また、推定部102は、当該頂点から、当該頂点を中心とする所定範囲の地表に向けて線分を引いた場合において、頂点から、当該線分の水平面に対する堆積判定角度(俯角)が堆積角度以上である方向に土砂が堆積すると推定するようにしてもよい。また、推定部102は、頂点から、当該線分の水平面に対する堆積判定角度が堆積角度未満である方向には土砂は堆積しないと推定するようにしてもよい。なお、堆積判定角度は、土砂が堆積するか否かを判定するための基準となる角度を意味する。
【0025】
出力部103は、土砂が堆積する範囲を表す堆積範囲情報を端末20に出力する。堆積範囲情報は、例えば、土砂が堆積する範囲を識別可能に色分けして表示する地図画面であってもよい。
【0026】
<処理手順>
続いて、情報処理装置10が、土砂災害が発生した場合の堆積範囲をシミュレーションする方法について具体的に説明する。
【0027】
情報処理装置10は、数値標高モデル(DEM: Digital Elevation Model)または数値表層モデル(DSM: Digital Surface Model))のように、地表がメッシュで区切られており、各メッシュの標高を示す標高データを含む地図データを記憶する。つまり、本実施形態において、地図データはメッシュで表現されており、地図データに含まれる標高データはメッシュの標高を示すデータであってもよい。また、メッシュの標高は、海面からの地表の高さと同義であってもよい。
【0028】
情報処理装置10は、流出発生地点から流出した土砂が各メッシュでどの程度堆積するのかを推定することで、堆積範囲をシミュレーションする。まず、情報処理装置10の推定部102は、土砂が堆積したメッシュを第1メッシュとした場合における、第1メッシュの周囲に存在する複数の第2メッシュの各々について、堆積判定角度を算出する。具体的には、推定部102は、第1メッシュの地表面の標高に堆積深を加えた水平面を堆積面とし、第1メッシュの堆積面の中心点及び第2メッシュの地表面中心点を結ぶ線と第2メッシュの地表面との角度を、堆積判定角度として算出する。なお、第1メッシュには、流出発生地点に対応するメッシュも含まれる。また、「堆積面」は、各メッシュにおいて土砂が堆積した面を意味し、メッシュの地表面の標高に、当該メッシュの堆積深を加えた位置に存在する水平面に対応する。続いて、推定部102は、堆積判定角度が堆積角度以上である場合、第2メッシュに土砂が堆積すると推定する。また、推定部102は、堆積判定角度が堆積角度未満である場合、第2メッシュに土砂が堆積しないと推定する。
【0029】
また、推定部102は、第2メッシュに土砂が堆積すると推定した場合、第2メッシュの地表面の中心点を通る垂線と、第1メッシュの堆積面の中心点から堆積角度で伸ばした線とが交わる点を算出し、垂線と交わる点を含む水平面を、第2メッシュにおける堆積面であると推定する。
【0030】
図5は、周囲のメッシュに土砂が堆積するか否かを推定するための処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、以下の説明において、「メッシュ(堆積有り)」は、土砂が堆積すると推定されたメッシュを意味する。「メッシュ(堆積無し)」は、土砂が堆積しないと推定されたメッシュを意味する。なお、メッシュ(堆積有り)には、流出発生地点のメッシュも含まれる。
【0031】
まず、情報処理装置10は、流出発生地点のメッシュの周囲に存在する全メッシュについて、図5の処理手順を実行することで、メッシュ(堆積有り)又はメッシュ(堆積無し)のいずれであるのかを推定する。続いて、情報処理装置10は、メッシュ(堆積有り)であると推定されたメッシュの周囲に存在する全メッシュのうち推定が完了していないメッシュについて、図5の処理手順を実行することで、メッシュ(堆積有り)又はメッシュ(堆積無し)のいずれであるのかを推定する。情報処理装置10は、メッシュ(堆積有り)の周囲に存在する全てのメッシュがメッシュ(堆積無し)と推定されるか、若しくは、予め定められた堆積最大範囲に含まれる全てのメッシュについて推定が完了するかのいずれかに到達するまで、ステップS10~ステップS13の処理手順を繰り返すことで、堆積範囲を推定する。以下詳述する。
【0032】
ステップS10で、推定部102は、メッシュ(堆積有り)の周囲に存在する各メッシュのうち、堆積有り又は堆積無しとの推定がされておらず、かつ、堆積最大範囲内のメッシュについて、堆積判定角度を算出する。堆積判定角度の算出方法は後述する。堆積最大範囲については後述する。堆積最大範囲にする。
【0033】
ステップS11で、推定部102は、堆積判定角度が堆積角度以上であるか否かを判定する。堆積判定角度が堆積角度以上である場合はステップS13に進み、堆積判定角度が堆積角度未満である場合はステップS12に進む。
【0034】
ステップS12で、推定部102は、処理対象のメッシュには土砂が堆積しない(つまり、メッシュ(堆積無し)である)と推定する。また、推定部102は、土砂が堆積しないと推定したメッシュに対して、「メッシュ(堆積無し)」と推定されたことを示すフラグを付与する。
【0035】
ステップS13で、推定部102は、処理対象のメッシュに土砂が堆積する(つまり、メッシュ(堆積有り)である)と推定する。また、推定部102は、土砂が堆積すると推定したメッシュに対して、「メッシュ(堆積有り)」と推定されたことを示すフラグを付与する。続いて、推定部102は、メッシュ(堆積有り)の堆積面の高さ(すなわち堆積深)を算出する。堆積面の高さを算出する方法については後述する。
【0036】
以上説明した処理手順を、具体例を交えて説明する。
【0037】
図6は、堆積範囲を推定する方法の具体例を説明するための図である。図6のA~Eに示す円は、堆積最大範囲を示す。堆積最大範囲は、例えば、過去に発生した土砂災害の統計データ等に基づいて予め決定されていてもよい。また、堆積最大範囲は、土砂が堆積すると推定されるメッシュの最大数で規定してもよい。また、堆積最大範囲は、地形に基づいて決定されてもよい。例えば、海を除く範囲であってもよいし、メッシュの標高が負である場所を除く範囲であってもよい。
【0038】
まず、図6のAに示すように、メッシュ4dで、土砂の流出が発生したと仮定する。推定部102は、メッシュ4dの周辺の8つのメッシュについて、それぞれ、図5の処理手順を実行することで、メッシュ(堆積有り)又はメッシュ(堆積無し)のいずれであるのかを推定する。ここでは、図6のBに示すように、メッシュ3c~3e及び4eはメッシュ(堆積有り)であると推定され、メッシュ4c、5c~5eは、メッシュ(堆積無し)であると推定されたものとする。
【0039】
続いて、推定部102は、図6のCに示すように、メッシュ3c~3e及び4eの周辺に存在するメッシュであって、堆積有り又は堆積無しとの推定がされておらず、かつ、堆積最大範囲に少なくとも一部が含まれるメッシュ3b、4b、2b~2f、3f~5fについて、図5の処理手順を実行することで、メッシュ(堆積有り)又はメッシュ(堆積有り)のいずれであるのかを推定する。ここでは、メッシュ2b~2f、3f~5fはメッシュ(堆積有り)であると推定分類され、メッシュ3b、4bは、メッシュ(堆積無し)であると推定されたものとする。
【0040】
続いて、推定部102は、図6のDに示すように、メッシュ2b~2f、3f~5fの周辺に存在するメッシュであって、堆積有り又は堆積無しとの推定がされておらず、かつ、堆積最大範囲に少なくとも一部が含まれるメッシュ2a、3a、1b~1f、2g~5g、6e~6gについて、図5の処理手順を実行することで、メッシュ(堆積有り)又はメッシュ(堆積有り)のいずれであるのかを推定する。ここでは、メッシュ1b~1eはメッシュ(堆積有り)であると推定され、残りのメッシュはメッシュ(堆積無し)であると推定されたものとする。
【0041】
続いて、推定部102は、メッシュ1b~1eの周辺に存在するメッシュであって、堆積有り又は堆積無しとの推定がされておらず、かつ、堆積最大範囲に少なくとも一部が含まれるメッシュは存在しないことから、処理を終了する。このように処理を行うことで、図6のEに示すように、メッシュ(堆積有り)の範囲を推定することができる。
【0042】
図7は、堆積判定角度及び堆積面の高さ(堆積深)を算出する方法を説明するための図である。図7は、メッシュを垂直方向から見た場合の図である。図7において、メッシュ2xは流出発生地点のメッシュであるとする。まず、推定部102は、図7のAに示すように、メッシュ2xの地表面の中心点B2xの高さ方向に堆積深H2を加えた点T2xを算出する。なお、メッシュ2xは流出発生地点のメッシュであるから、堆積深H2は、ユーザにより指定された値である。
【0043】
続いて、推定部102は、メッシュ2xと、メッシュ2xに隣接するメッシュ3xとの間の堆積判定角度a1を算出する。堆積判定角度は、図7のAに示すように、メッシュ2xの堆積面の中心点T2xとメッシュ3xの地表面の中心点B3xとを結ぶ線分の水平面に対する角度a1である。図6のステップS11で説明したように、堆積判定角度が堆積角度以上である場合、堆積角度以上であるメッシュに土砂が流出して堆積すると推定される。図7のAの例では、堆積判定角度a1は堆積角度以上であるものとする。
【0044】
ここで、図7のAに示すように、メッシュ2xの堆積面は、メッシュ2xの地表面の高さに堆積深H2を加えた水平面を意味する。なお、メッシュの地表面の高さは標高値であるから、メッシュ2xの堆積面の高さは、メッシュ2xの標高値に堆積深H2を加算した値ということもできる。
【0045】
続いて、推定部102は、メッシュ3xの堆積面を算出する。図7のBに示すように、メッシュ3xの場合、メッシュ2xの堆積面の中心点T2xから堆積判定角度fで線分を引いた場合に、当該線分と、メッシュ3xの地表面の中心点B3xからの垂線とが交わる点T3xを含む水平面が、メッシュ3xの堆積面になる。また、メッシュ3xの堆積深は、メッシュ3xの地表面から堆積面までの高さH3になる。
【0046】
続いて、推定部102は、図7のCに示すように、メッシュ3xと、メッシュ3xに隣接するメッシュ4xとの間の堆積判定角度a2を算出する。ここでは、堆積判定角度a2は堆積角度以上であるものとする。続いて、推定部102は、図7のDに示すように、メッシュ3xの堆積面の中心から堆積判定角度fで線分を引いた場合に、当該線分と、メッシュ4xの地表面の中心点B4xからの垂線とが交わる点T4xを含む水平面が、メッシュ4xの堆積面になる。また、メッシュ4の堆積深は、メッシュ4xの地表面から堆積面までの高さH4になる。
【0047】
続いて、推定部102は、図7のEに示すように、メッシュ4xと、メッシュ4xに隣接するメッシュ5xとの間の堆積判定角度a3を算出する。ここでは、堆積判定角度a3は負の値になるから、堆積判定角度a3は堆積角度未満である。したがって、推定部102は、メッシュ4xからメッシュ5xに土砂は流出しないと推定する。
【0048】
(変形例1)
土砂災害において土砂が流れる際、周囲に急に標高が低くなっている方向が存在する場合(例えば渓谷等)、その方向に集中して土砂が流れていくことが想定される。そこで、情報処理装置10は、堆積判定角度が堆積角度以上であるために土砂が流れる方向のうち、地表の高低差が閾値以上である方向が存在する場合、高低差が最大である方向にのみ土砂が流れると推定するようにしてもよい。一方、土砂が流れる方向のうち地表の高低差が閾値以上である方向が存在しない場合、堆積判定角度が堆積角度以上である、あらゆる方向に土砂が流れるものと推定するようにしてもよい。なお、「閾値」の設定角度は任意であるが、ある程度大きな値とすることが望ましい。受付部101は、ユーザから閾値の指定を受け付けるようにしてもよい。この場合、受付部101は、ユーザが指定した閾値の値が、予め定められた角度よりも大きい値である場合に、当該閾値の指定を受け付けるようにしてもよい。もしくは、閾値は、予め固定値に設定されていてもよい。
【0049】
図8は、変形例1の概要を説明するための図である。図8のAは、災害エリアを水平方向から見た状態を表しており、図8のBは、災害エリアを上方向から見た状態を表している。推定部102は、流出発生地点Pから、流出発生地点Pを中心とする所定範囲Mの地表に沿って所定範囲Mの端である地表点まで線分を引いた場合において、線分の水平面に対する俯角である角度r(以下、「地表斜度」という)が最大になる第1線分Kについて、当該地表斜度rが閾値以上であり、かつ、頂点Sから、第1線分Kの地表点Nに向けた引いた第2線分Lの水平面に対する堆積判定角度gが堆積角度以上である場合、流出発生地点Pから、第1線分Kを水平面に投影した線分K’の方向を中心とする所定範囲の方向(つまり、図8のBに示す、線分K’の方向から±j度の方向)に対して土砂が堆積し、当該所定範囲の方向以外の方向には土砂は堆積しないと推定するようにしてもよい。
【0050】
より具体的には、推定部102は、流出発生地点に対応するメッシュを含む、土砂が堆積したメッシュを第1メッシュとした場合における、第1メッシュの周囲に存在する複数の第2メッシュの各々について、第1メッシュの地表面の中心点及び第2メッシュの地表面の中心点を結ぶ線と第2メッシュの地表面との地表斜度を算出する。続いて、推定部102は、第1メッシュの堆積面の中心点及び第2メッシュの地表面の中心点を結ぶ線と、第2メッシュの地表面との堆積判定角度を算出する。続いて、推定部102は、複数の第2メッシュの各々の地表斜度のうち最も角度が大きい地表斜度が閾値以上である場合、当該最大地表斜度を有し、かつ、堆積判定角度が堆積角度以上である第2メッシュに土砂が堆積すると推定するようにしてもよい。また、推定部102は、当該最大地表斜度を有しない第2メッシュ、若しくは、堆積判定角度が堆積角度未満である第2メッシュには土砂が堆積しないと推定するようにしてもよい。
【0051】
また、推定部102は、第1線分Kの水平面に対する地表斜度rが閾値未満である場合、頂点Sから、当該堆積判定角度gが堆積角度以上である方向に土砂が堆積し、当該堆積判定角度gが堆積角度未満である方向には土砂は堆積しないと推定するようにしてもよい。
【0052】
より具体的には、推定部102は、複数の第2メッシュの各々の地表斜度のうち最も角度が大きい最大地表斜度が閾値未満である場合、複数の第2メッシュのうち、堆積判定角度が堆積角度以上である第2メッシュに土砂が堆積すると推定し、堆積判定角度が堆積角度未満である第2メッシュには土砂が堆積しないと推定するようにしてもよい。
【0053】
図9は、メッシュに土砂が堆積するか否かを判定するための処理手順の一例(変形例1)を示すフローチャートである。
【0054】
ステップS20で、推定部102は、メッシュ(堆積有り)の周囲の各メッシュのうち、堆積有り又は堆積無しとの推定がされておらず、かつ、堆積最大範囲内のメッシュについて、メッシュごとの堆積判定角度を算出する。堆積判定角度の算出方法は、図7を用いて説明した方法と同一でよい。続いて、推定部102は、メッシュごとの地表斜度を算出する。地表斜度は、図7のAに示すように、メッシュ2xの地表面の中心点B2xとメッシュ3xの地表面の中心点B3xとを結ぶ線分の水平面に対する角度b1である。また、図7のBの例では、メッシュ3xの地表面の中心点B3xとメッシュ4xの地表面の中心点B4xとを結ぶ線分の水平面に対する角度b2である。図9に戻り説明を続ける。
【0055】
ステップS21で、推定部102は、メッシュごとの地表斜度の中から、最大地表斜度を有するメッシュを選択する。
【0056】
ステップS22で、推定部102は、最大地表斜度が閾値以上であるか否かを判定する。最大地表斜度が閾値以上である場合はステップS23に進み、最大地表斜度が閾値未満である場合はステップS24に進む。
【0057】
ステップS23で、推定部102は、最大地表斜度が閾値以上であり、かつ、堆積判定角度が堆積角度以上であるメッシュにのみ、土砂が堆積すると推定する。また、推定部102は、メッシュ(堆積有り)の周囲の各メッシュのうち、堆積判定角度が堆積角度以上であり、かつ、最大堆積判定角度が閾値以上であるメッシュ以外のメッシュについては、土砂が堆積しないと推定する。また、推定部102は、土砂が堆積すると推定したメッシュについては、堆積深を算出する。堆積深の算出方法は、図7を用いて説明した方法と同一でよい。
【0058】
ステップS24で、推定部102は、メッシュ(堆積有り)の周囲の各メッシュのうち、堆積判定角度が堆積角度以上である全てのメッシュについて、土砂が堆積すると推定する。また、メッシュ(堆積有り)の周囲の各メッシュのうち、堆積判定角度が堆積角度未満であるメッシュについては、土砂は堆積しないと推定する。また、推定部102は、土砂が堆積すると推定したメッシュについては、堆積深を算出する。なお、ステップS24の処理手順は、図5のステップS11~ステップS13の処理手順と同一である。
【0059】
図10は、堆積範囲を推定する方法の具体例(変形例1)を説明するための図である。図10のA~Eに示す円は、堆積最大範囲を示す。
【0060】
まず、図10のAに示すように、メッシュ4dで、土砂の流出が発生したと仮定する。推定部102は、メッシュ4dの周辺の8つのメッシュについて、それぞれ、図9の処理手順を実行することで、メッシュ(堆積有り)又はメッシュ(堆積無し)のいずれであるのかを推定する。ここでは、メッシュ5dが、最大地表斜度が閾値以上であり、かつ、堆積判定角度が堆積角度以上であるメッシュであるものとする。この場合、図10のBに示すように、メッシュ5dのみがメッシュ(堆積有り)であると推定され、その他のメッシュはメッシュ(堆積無し)であると推定されることになる。
【0061】
続いて、推定部102は、図10のCに示すように、メッシュ5dの周辺に存在するメッシュであって、堆積有り又は堆積無しとの推定がされておらず、かつ、堆積最大範囲に少なくとも一部が含まれるメッシュ6c~6eについて、図9の処理手順を実行することで、メッシュ(堆積有り)又はメッシュ(堆積有り)のいずれであるのかを推定する。ここでは、メッシュ6dが、最大地表斜度が閾値以上であり、かつ、堆積判定角度が堆積角度以上であるメッシュであるものとする。この場合、図10のCに示すように、メッシュ6dのみがメッシュ(堆積有り)であると推定され、メッシュ6c及び6eはメッシュ(堆積無し)であると推定されることになる。
【0062】
続いて、推定部102は、図10のDに示すように、メッシュ6dの周辺に存在するメッシュであって、堆積有り又は堆積無しとの推定がされておらず、かつ、堆積最大範囲に少なくとも一部が含まれるメッシュ7c~7eについて、図9の処理手順を実行することで、メッシュ(堆積有り)又はメッシュ(堆積有り)のいずれであるのかを推定する。ここでは、メッシュ7dが、最大地表斜度を有するメッシュであるが、当該最大地表斜度は閾値未満であるものとする。また、メッシュ7c及びメッシュ7dの堆積判定角度は堆積角度以上であるが、メッシュ7eの堆積判定角度は堆積角度未満であるものとする。この場合、図10のDに示すように、メッシュ7c及び7dがメッシュ(堆積有り)であると推定され、メッシュ7eはメッシュ(堆積無し)であると推定されることになる。
【0063】
続いて、推定部102は、図10のEに示すように、メッシュ7c及び7dの周辺に存在するメッシュであって、堆積有り又は堆積無しとの推定がされておらず、かつ、堆積最大範囲に少なくとも一部が含まれるメッシュ6b及び7bについて、図9の処理手順を実行することで、メッシュ(堆積有り)又はメッシュ(堆積有り)のいずれであるのかを推定する。ここでは、メッシュ7bは最大地表斜度を有するメッシュであるが、当該最大地表斜度は閾値未満であるものとする。また、メッシュ6b及び7bの堆積判定角度は堆積角度未満であるものとする。この場合、図10のEに示すように、メッシュ6b及び7bはメッシュ(堆積無し)であると推定されることになる。
【0064】
続いて、推定部102は、メッシュ(堆積有り)の周囲に存在する全てのメッシュがメッシュ(堆積無し)であると推定されたことから、処理を終了する。このように処理を行うことで、図10のEに示すように、メッシュ(堆積有り)の範囲を推定することができる。
【0065】
(変形例2)
地図データには、建物の位置を示すデータ、及び、各建物の属性を示すデータ(例えば、建物が木造なのか鉄筋なのかを示すデータ)が含まれていてもよい。また、推定部102は、推定した堆積範囲と、各建物の位置を示すデータと、各建物の属性を示すデータとを組み合わせることで、土砂災害による被害状況を推定するようにしてもよい。例えば、土砂の堆積範囲のうち木造の建物が占める割合が所定の割合以上であるエリアは被害が大きく、土砂の堆積範囲のうち木造の建物が占める割合が所定の割合未満であるエリアは被害が小さいものと推定するようにしてもよい。これにより、土砂災害による被害状況をシミュレーションすることが可能になる。また、推定部102は、建物の高さを示すデータ取得して、被害状況の推定に用いてもよい。
【0066】
(変形例3)
情報処理装置10は、土砂が堆積する範囲を表す堆積範囲情報を端末20に出力する際、メッシュごとに堆積深を識別可能に表示するようにしてもよい。例えば、堆積深を複数段階に分けておき、堆積深が最も深いメッシュは赤色であり、堆積深が最も浅いメッシュが青色になるように段階的に色分けすることで、堆積範囲情報をリスクマップとして端末20に表示するようにしてもよい。これにより、土砂災害による堆積深が深いエリアと堆積深が浅いエリアを容易に識別することが可能になる。
【0067】
(変形例4)
受付部101は、ユーザから、流出発生地点を複数受け付けるようにしてもよい。また、推定部102は、複数の流出発生地点を受け付けた場合、流出発生地点ごとに、図5又は図9に示す処理手順を実行することで各メッシュの堆積深を算出するようにしてもよい。また、推定部102は、流出発生地点ごとに算出された各メッシュの堆積深をメッシュごとに集計し、最も深い堆積深を、当該メッシュの堆積深と推定するようにしてもよい。
【0068】
例えば、流出発生地点をAとした場合、メッシュXの堆積深は10mと算出され、流出発生地点をBとした場合、メッシュXの堆積深は30mと算出されたとする。この場合、メッシュXの堆積深は30mであると推定されることになる。これにより、広範囲で土砂災害が発生した場合であっても、メッシュごとの堆積深をより適切に算出することが可能になる。
【0069】
<まとめ>
以上説明した実施形態によれば、情報処理装置10は、流出発生地点、堆積深及び堆積角度の3つのパラメータと地図データとに基づいて、堆積範囲を推定するようにした。これにより、土砂災害が生じた場合の堆積範囲を、より簡易に推定することを可能とする技術を提供することが可能になる。
【0070】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 災害シミュレーションシステム、10 情報処理装置、11 プロセッサ、12 記憶装置、13 ネットワークIF、14 入力装置、15 出力装置、20 端末、100 記憶部、101 受付部、102 推定部、103 出力部
【要約】
【課題】土砂災害が生じた場合の堆積範囲を、より簡易に推定すること。
【解決手段】地表の高さを示す標高データを含む地図データを記憶する記憶部と、土砂の流出が発生する地図上の地点を示す流出発生地点、前記流出発生地点で前記土砂が堆積する高さを示す堆積深、及び、前記土砂が堆積する角度を示す堆積角度の指定を受け付ける受付部と、前記流出発生地点の高さ方向に前記堆積深を加えた位置を頂点として、前記土砂が前記堆積角度で堆積した場合に、地図上において前記土砂が堆積する範囲を、前記頂点、前記堆積角度及び前記地図データに基づいて推定する推定部と、前記土砂が堆積する範囲を表す堆積範囲情報を出力する出力部と、を有する情報処理装置を提供する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10