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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】ピン型ロードセル
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/22 20060101AFI20241015BHJP
   G01G 19/18 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
G01L1/22 G
G01G19/18 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023200757
(22)【出願日】2023-11-28
(62)【分割の表示】P 2019192089の分割
【原出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2024009285
(43)【公開日】2024-01-19
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】西川 和弘
(72)【発明者】
【氏名】河西 貴幸
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-128365(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0305817(US,A1)
【文献】特開平06-313740(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0882485(KR,B1)
【文献】特開2009-052977(JP,A)
【文献】特開2012-233868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0307423(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 19/14-19/18
G01L 1/22
B66C 1/00-25/00
B66D 1/00-5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結ピンと、
前記連結ピンに取り付けられた複数のひずみゲージとを備えるピン型ロードセルであって、
前記連結ピンの外周面に、前記複数のひずみゲージと外部とを接続する配線を収容する溝であって、前記連結ピンの軸方向に延びる溝が形成されており、
前記連結ピンは、前記連結ピンの一端側に位置し且つ第1方向の力が加えられる第1大径部、前記連結ピンの他端側に位置し且つ第1方向の力が加えられる第2大径部、前記連結ピンの軸方向中央部に位置し且つ第1方向とは異なる第2方向の力が加えられる第3大径部、第1大径部と第3大径部との間に位置し且つ第1、第2、第3大径部よりも径が小さい第1小径部、及び第2大径部と第3大径部との間に位置し且つ第1、第2、第3大径部よりも径が小さい第2小径部を有し、
前記複数のひずみゲージは第1小径部に取り付けられた第1ひずみゲージと第2小径部に取り付けられた第2ひずみゲージとを含み、
前記溝が、第1大径部、第1小径部、第3大径部、及び第2小径部を通って延びており、
第1ひずみゲージは、第1小径部に形成された第1凹部の底面に取り付けられており、
第2ひずみゲージは、第2小径部に形成された第2凹部の底面に取り付けられており、
第2大径部の第2小径部とは反対側の端部に、前記連結ピンの軸と平行に延びる方位調整面が形成されており、
第1凹部の底面と、第2凹部の底面と、前記方位調整面とが互いに平行であるピン型ロードセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重検出機構、及びピン型ロードセルに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンやチェーンブロックなどの巻き上げ機においては、荷重検出器を内蔵したものが知られている。
【0003】
特許文献1には、クレーンや係船装置の荷重伝達系をなす第1の連結部材と第2の連結部材とを連結ピンで連結し、第1の連結部材と第2の連結部材との間に付与される逆方向の相対荷重の大きさを、連結ピンに取り付けたひずみゲージにより検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-201192号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような連結ピンを備える機構には、クレーン等の屋外で使用される大型の機構に限られず、室内用の比較的小型の機構などもあり、各機構が備える連結ピンのタイプやサイズは様々である。
【0006】
本発明は、比較的小さいピン型部材を用いて荷重検出を行うことができる荷重検出機構、及び当該機構にも使用できる比較的小さいピン型ロードセルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第の態様に従えば、
連結ピンと、
前記連結ピンに取り付けられた複数のひずみゲージとを備えるピン型ロードセルであって、
前記連結ピンの外周面に、前記複数のひずみゲージと外部とを接続する配線を収容する溝であって、前記連結ピンの軸方向に延びる溝が形成されており、
前記連結ピンは、前記連結ピンの一端側に位置し且つ第1方向の力が加えられる第1大径部、前記連結ピンの他端側に位置し且つ第1方向の力が加えられる第2大径部、前記連結ピンの軸方向中央部に位置し且つ第1方向とは異なる第2方向の力が加えられる第3大径部、第1大径部と第3大径部との間に位置し且つ第1、第2、第3大径部よりも径が小さい第1小径部、及び第2大径部と第3大径部との間に位置し且つ第1、第2、第3大径部よりも径が小さい第2小径部を有し、
前記複数のひずみゲージは第1小径部に取り付けられた第1ひずみゲージと第2小径部に取り付けられた第2ひずみゲージとを含み、
前記溝が、第1大径部、第1小径部、第3大径部、及び第2小径部を通って延びており、
第1ひずみゲージは、第1小径部に形成された第1凹部の底面に取り付けられており、
第2ひずみゲージは、第2小径部に形成された第2凹部の底面に取り付けられており、
第2大径部の第2小径部とは反対側の端部に、前記連結ピンの軸と平行に延びる方位調整面が形成されており、
第1凹部の底面と、第2凹部の底面と、前記方位調整面とが互いに平行であるピン型ロードセルが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の荷重検出機構によれば、比較的小さいピン型部材を用いて荷重検出を行うことができる。また、本発明は、比較的小さいピン型ロードセルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電動バランサの斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る電動バランサの分解斜視図である。なお、図2においては駆動機構、吊下げ部、制御部は図示を省略している。
図3図3は、連結ピンの斜視図である。
図4図4(a)~図4(d)はそれぞれ、連結ピンを中心軸に直交する面で切断した断面図である。図4(a)は前端近傍の方位調整面が形成された部分における断面図、図4(b)は前側小径部の凹部が形成された部分における断面図、図4(c)は中央大径部の中央配線溝が形成された部分における断面図、図4(d)は後側大径部の後側配線溝が形成された部分における断面図である。
図5図5は、電動バランサを連結ピンの中心軸を含み且つ幅方向に直交する面で切断した部分拡大断面図であり、連結ピンが本体部とフック部とを連結する様子を示す。
図6図6は、ピン型ロードセルを用いて荷重を検出する方法を説明するための説明図である。
図7図7は、電動バランサの内部に構成されるホイートストンブリッジ回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
本発明の実施形態の電動バランサ100について、図1図7を参照して説明する。
【0011】
図1図2に示すように、電動バランサ100は、本体部10と、フック部20と、本体部10とフック部20とを連結する2本の連結ピンCP1、CP2と、連結ピンCP1、CP2の各々に貼り付けられた8つのひずみゲージSG1~SG8(図6)と、本体部10に設置された回路基板30とを主に有する。
【0012】
以下の説明においては、本体部10とフック部20とが並ぶ方向を電動バランサ100の上下方向とし、フック部20が位置する側を上側と呼ぶ。また、上下方向に直交する直交面の面内方向のうち、フック部20の上側フック21(詳細後述)の湾曲方向に沿った方向を電動バランサ100の前後方向とし、前後方向に直交する方向を電動バランサ100の幅方向とする。前後方向においては、上側フック21が開口する方向(図1の手前側)を前方とする。前方から後方を見た左側、右側を幅方向の左側、右側とする。
【0013】
本体部10は、移動対象物を吊り下げて、該移動対象物の上昇、降下等を行う部分である。本体部10は、筐体11と、筐体11に収容された駆動機構12と、駆動機構12により駆動される吊下げ部13と、駆動機構12を制御する制御部14とを主に有する。
【0014】
筐体11は、一例として鉄鋼材により形成されており、下方に開口した箱形状を有する。筐体11の内側には駆動機構収容空間11iが画定されており、筐体11の下端部には駆動機構収容空間11iと外部とを繋ぐ開口11aが画定されている。
【0015】
筐体11の上面11tの幅方向中央の左側には、上面11tから直立して前後方向に延びる左凸壁WLが形成されている。左凸壁WLは幅方向に見て台形であり、下底が上面11tの前後方向全域に渡って延びるように形成されている。
【0016】
筐体11の上面11tの幅方向中央の右側には、上面11tから直立して前後方向に延びる右凸壁WRが形成されている。右凸壁WRは左凸壁WLと同一の形状を有し、左凸壁WLと平行に形成され、下底が上面11tの前後方向全域に渡って延びている。
【0017】
左凸壁WLと右凸壁WRとの間には、上面11tから直立して幅方向に延びる前側凸壁WF及び後側凸壁WBが形成されている。前側凸壁WF、後側凸壁WBは互いに同一形状であり、いずれも前後方向に見て略正方形である。前側凸壁WFと後側凸壁WBとは、互いに平行に形成されている。
【0018】
前側凸壁WFの左端部が左凸壁WLの前端近傍に接続しており、前側凸壁WFの右端部が右凸壁WRの前端近傍に接続している。また、後側凸壁WBの左端部が左凸壁WLの後端近傍に接続しており、後側凸壁WBの右端部が右凸壁WRの後端近傍に接続している。
【0019】
前側凸壁WFには、前側凸壁WFを前後方向に貫通する連結孔Hが、幅方向に並んで2つ形成されている。後側凸壁WBにも同様に、後側凸壁WBを前後方向に貫通する連結孔Hが、幅方向に並んで2つ形成されている。前側凸壁WFの連結孔Hの断面形状と後側凸壁WBの連結孔Hの断面形状とは互いに同一であり、円形である。図2に示すように、前側凸壁WFの2つの連結孔Hと後側凸壁WBの2つの連結孔Hとは、前後方向に並んで同軸状に配置されている。
【0020】
前側凸壁WFの前側には、左側凸壁WL、右側凸壁WR、及び前側凸壁WFに囲まれた前側空間FSが画定されている。前側空間FSは、幅方向を軸方向とする三角柱状の空間であり、斜め上前方に開口している。前側空間FSと駆動機構収容空間11iとは、上面11tにより分離されている。
【0021】
前側凸壁WFの前面には、方位調整板11pが固定されている。図2に示す通り、方位調整板11pは略矩形の平板であり、板厚方向に貫通する2つの方位調整孔Hoを有する。なお、方位調整板11pを、「ピン固定板」等と呼称しても良い。後述する如く、このピン固定板は大略、2本の連結ピンCP1、CP2のひずみゲージ貼り付け面(凹部Rb、Rdの底面)を鉛直に揃える機能を担う。
【0022】
2つの方位調整孔Hoの各々の断面は、円周上の2か所を切り欠いて直線部を設けた形状を有する。本実施形態では、方位調整板11pを前側凸壁WFに取り付けた状態において、互いに対向する直線部が上下方向に延びるように形成されている。
【0023】
方位調整板11pは、不図示の取付孔を介してボルト締めすることにより、前側凸壁WFの前面に固定されている。方位調整板11pを前側凸壁WFに取り付けた状態においては、2つの方位調整孔Hoが前側凸壁WFの2つの連結孔Hにそれぞれ重複する。
【0024】
前側凸壁WFの後側には、左側凸壁WL、右側凸壁WR、前側凸壁WF、及び後側凸壁WBに囲まれた中央空間CSが画定されている。中央空間CSは略正方体の空間であり、上方に開口している。中央空間CSと駆動機構収容空間11iとは、上面11tにより分離されている。
【0025】
後側凸壁WBの後側には、左側凸壁WL、右側凸壁WR、及び後側凸壁WBに囲まれた後側空間BSが画定されている。後側空間BSは、幅方向を軸方向とする三角柱状の空間であり、開口部BSaを介して斜め上後方に開口している。後側空間BSと駆動機構収容空間11iとは、上面11tにより分離されている。
【0026】
開口部BSaには、開口部BSaを全体的に塞ぐ保護カバー11cが取り付けられている。保護カバー11cは、一例として筐体11と同様の材料から形成された平板である。保護カバー11cは、ねじ、ボルト等により筐体11に固定されてもよい。
【0027】
駆動機構12は、筐体11の駆動機構収容空間11iに配置されている。駆動機構12は、いずれも不図示のモータ、伝達系、ドラムを主に有しており、モータの回転が伝達系を介してドラムに伝達されるように構成されている。
【0028】
吊下げ部13は、チェーン131と、チェーン131の下端部に連結された下側フック132とを有する。チェーン131の上端部は、筐体11の開口11aを介して、駆動機構12のドラム(不図示)に巻き付けられている。したがって、当該ドラムの回転に応じて、筐体11から下方に垂下するチェーン131の長さが変化し、下側フック132が上下に移動する。
【0029】
制御部14は、筐体11の駆動機構収容空間11iに配置されている。制御部14は、リモコン(不図示)等を介した操作者からの入力や、回路基板30からの入力(詳細後述)に基づいて、駆動機構12のモータの駆動を制御する。
【0030】
フック部20は、電動バランサ100を梁などの固定構造から吊下げるための構造である。フック部20は、一例として鉄鋼材で形成されている。
【0031】
フック部20は、上側フック21と、上側フック21の下端部に接続された連結台22とを主に備える。上側フック21と連結台22とは一体に形成されていてもよい。
【0032】
上側フック21は任意のフックであってよく、ラッチ付きのフックを用いてもよい。
【0033】
連結台22は、略正方体の中実体である。連結台22には、前後方向に連結台22を貫通する連結孔Hが、幅方向に2つ並んで形成されている。2つの連結孔Hの各々の断面形状は円形である。
【0034】
連結台22は、本体部10の筐体11の中央空間CSの内部に配置されている。連結台22は、本体部10に対して、連結台22の2つの連結孔Hが、前側凸壁WFの2つの連結孔H及び後側凸壁WBの2つの連結孔Hと同軸状に並ぶように配置されている。
【0035】
2本の連結ピンCP1、CP2は、直径が8~12mm程度、長さが80~100mm程度の略円柱状であり、本体部10とフック部20とを連結するようにそれぞれの連結孔Hを連通して配置されている。連結ピンCP1、CP2の構成は互いに同一であるため、以下では連結ピンCP1に絞って説明する。
【0036】
連結ピンCP1は、一例として鉄鋼材で形成されており、中心軸AXを有する略円柱形である。連結ピンCP1は、電動バランサ100の内部においては、図3における左側が電動バランサ100の前側に位置するように配置される。そのため、以下の説明では便宜上、図3の左端を連結ピンCP1の前端FEとし、図3の右端を連結ピンCP1の後端BEとする。
【0037】
連結ピンCP1は、前端FEから後端BEに向かって、前側大径部CPa、前側小径部CPb、中央大径部CPc、後側小径部CPd、後側大径部CPeに区画されている。
【0038】
前側大径部CPaの径、中央大径部CPcの径、及び後側大径部CPeの径は互いに等しく、一例として5mm~20mm程度である。前側小径部CPbの径と後側小径部CPdの径とは互いに等しく、一例として、前側大径部CPaの径より1mm~5mm程度小さい。
【0039】
前側大径部CPaの前端FE近傍の領域には、一対のDカット部により、中心軸AXに平行に延びる一対の方位調整面OSが形成されている(図4(a))。
【0040】
前側小径部CPbの軸方向中央には、連結ピンCP1の径方向を深さ方向とする凹部Rbが、径方向に対向して一対形成されている(図4(b))。凹部Rbの各々の形状は、径方向に見て略正方形である。凹部Rbの各々は、凹部Rbの底面が方位調整面OSと平行となるように形成されている。
【0041】
同様に、後側小径部CPdの軸方向中央には、連結ピンCP1の径方向を深さ方向とする凹部Rdが、径方向に対向して一対形成されている。凹部Rdの各々の形状は、径方向に見て略正方形である。凹部Rdの各々は、凹部Rdの底面が方位調整面OSと平行となるように形成されている。
【0042】
連結ピンCP1の外周面には、軸方向に沿って一対の凹部Rbの各々から一対の凹部Rdの各々まで延びる一対の中央配線溝WG1と、軸方向に沿って一対の凹部Rdの各々から後端BEまで延びる一対の後側配線溝WG2とが形成されている。
【0043】
一対の中央配線溝WG1は連結ピンCP1の周方向において180°離間しており、一対の後側配線溝WG2も連結ピンCP1の周方向において180°離間している。一対の中央配線溝WG1の各々と一対の後側配線溝WG2の各々とは、周方向において互いに同じ位置に形成されている。
【0044】
2つの連結ピンCP1、CP2は、前述のように、それぞれ本体部10の筐体11の前側凸壁WFの連結孔H及び後側凸壁WBの連結孔H、及びフック部20の連結台22の連結孔Hに挿通されて、本体部10とフック部20とを連結している(図5)。
【0045】
具体的には、連結ピンCP1、CP2の前側大径部CPaが筐体11の前側凸壁WFの連結孔Hに挿通されて連結孔H内に収容されている。中央大径部CPcが連結台22の連結孔Hに挿通されて連結孔H内に収容されている。後側大径部CPeが後側凸壁WBの連結孔Hに挿通されて連結孔H内に収容されている。この配置において、連結ピンCP1、CP2の前側小径部CPbは、前側凸壁WFの後面と連結台22の前面との間に位置し、後側小径部CPdは、連結台22の後面と後側凸壁WBの前面との間に位置する。
【0046】
連結ピンCP1、CP2は、前側小径部CPbの一対の凹部Rbの底面と、後側小径部CPdの一対の凹部Rdの底面とが上下方向に延びるように配置される。この配置は、前側凸壁WFの前面に取り付けられた方位調整板11pの方位調整孔Hoに、一対の方位調整面OSが形成された連結ピンCP1、CP2の前端FEを篏合させることにより、容易に行うことができる。方位調整板11pを用いることで、本体部10の前側凸壁WFの連結孔Hを方位調整に適した形状とするよりも容易に、方位調整に適した孔形状を形成することができる。
【0047】
8つのひずみゲージSG1~SG8は、連結ピンCP1、CP2のそれぞれに対して取り付けられている。
【0048】
8つのひずみゲージSG1~SG8は、前側小径部CPbの一対の凹部Rbの底面に2つずつ貼り付けられており、後側小径部CPdの一対の凹部Rdの底面に2つずつ貼り付けられている。具体的には、前側小径部CPbの一対の凹部Rbの一方の底面にSG1、SG2が、他方の底面にSG3、SG4が貼り付けられており、後側小径部CPdの一対の凹部Rdの一方の底面にSG5、SG6が、他方の底面にSG7、SG8が貼り付けられている。
【0049】
図6に示す通り、ひずみゲージSG1は、一対の凹部Rbの一方の底面に、受感方向sdが軸方向に対して反時計周りに45°傾斜した方向を向くように貼り付けられている。ひずみゲージSG2は、ひずみゲージSG1に隣接して、受感方向sdが軸方向に対して時計周りに45°傾斜した方向を向くように貼り付けられている。ひずみゲージSG3は、一対の凹部Rbの他方の底面に、その配置及び受感方向sdが、径方向に見てひずみゲージSG1と一致するように貼り付けられている。ひずみゲージSG4は、一対の凹部Rbの他方の底面に、その配置及び受感方向sdが、径方向に見てひずみゲージSG2と一致するように貼り付けられている。
【0050】
同様に、ひずみゲージSG5は、一対の凹部Rdの一方に、受感方向sdが軸方向に対して時計周りに45°傾斜した方向に一致するように貼り付けられている。ひずみゲージSG6は、ひずみゲージSG5に隣接して、受感方向sdが軸方向に対して反時計周りに45°傾斜した方向に一致するように貼り付けられている。ひずみゲージSG7は、一対の凹部Rdの他方の底面に、その配置及び受感方向sdが、径方向に見てひずみゲージSG5と一致するように貼り付けられている。ひずみゲージSG8は、一対の凹部Rdの他方の底面に、その配置及び受感方向sdが、径方向に見てひずみゲージSG6と一致するように貼り付けられている。
【0051】
回路基板30は、絶縁体基板の上に配線がプリントされたプリント基板であり、本体部10の筐体11に形成された後側空間BSの内部において、支持台31を介して上面11t上に設置されている。プリントされた配線は、接続配線CCと増幅回路ACとを含む。
【0052】
回路基板30を保護カバー11cに覆われた閉空間である後側空間BSに配置することで、風や湿度変化の影響による誤差が回路基板30上の回路に生じることを抑制できる。また、後側空間BSは駆動機構収容空間11iから分離された別個の空間であるため、駆動機構収容空間11iに設置されたモータ等の振動により回路基板30に誤差が生じることが防止される。また、回路基板30を支持台31上に設置することで、回路基板30からの放熱を効率よく行うことができる。
【0053】
接続回路CCは、複数のひずみゲージを接続してホイートストンブリッジ回路を構成するための回路である。接続回路CCは、連結ピンCP1に貼り付けられたひずみゲージSG1~SG8、及び連結ピンCP2に貼り付けられたひずみゲージSG1~SG8に配線Wを介して接続されている。これにより、連結ピンCP1に貼り付けられたひずみゲージSG1~SG8、接続回路CC及びこれらを繋ぐ配線Wによりホイートストンブリッジ回路WSB1が構成され、連結ピンCP2に貼り付けられたひずみゲージSG1~SG8、接続回路CC及びこれらを繋ぐ配線Wによりホイートストンブリッジ回路WSB2が構成される(図7)。このように、接続回路CCを、連結ピンCP1、CP2の上ではなく本体部10の上に配置することで、連結ピンCP1、CP2の径を小さくすることができる。
【0054】
配線W(図5)は、ひずみゲージSG1~SG8の各々から、中央配線溝WG1、後側配線溝WG2を通って連結ピンCP1、CP2の後端BEに至り、後端BEから、後側空間BSの内部を通って、回路基板30まで延びている。上面11tに設置されている回路基板30は、後側凸壁WBの連結孔Hに配置されている連結ピンCP1、CP2の後端BEよりも下方に位置するため、連結ピンCP1、CP2からの配線を、回路基板30の上面の接続回路CCに容易につなぐことができる。
【0055】
配線Wをこのように引き回すことにより、即ち、中央配線溝WG1、後側配線溝WG2の内部に配置して、前側凸壁WF、連結台22、後側凸壁WBによって覆うことにより外乱の影響を受け難くし、それにより配線Wにおけるノイズの発生を抑制することができる。
【0056】
増幅回路ACは、ホイートストンブリッジ回路WSB1、WSB2からの出力電圧Eoを増幅する回路である。
【0057】
ホイートストンブリッジ回路WSB1、WSB2の出力側が、回路基板30上で、増幅回路ACの入力側に接続されている。増幅回路ACの出力側は、不図示の配線を介して、本体部10の制御部14に接続されている。
【0058】
次に、本実施形態の電動バランサ100の使用方法を説明する。
【0059】
電動バランサ100を用いた移動対象物の移動は、フック部20の上側フック21を梁などの固定構造に引っ掛けた状態で行う。上側フック21が引っ掛けられる固定構造は、水平方向に移動可能であってもよい。本発明及び本明細書において「固定構造」とは、電動バランサ等の荷重検出構造の使用時に荷重検出構造をその使用に適した態様で保持するための構造を意味し、あらゆる方向への移動が固定された構造を意味するものではない。
【0060】
次に、本体部10の吊下げ部13の下側フック132を移動対象物に引っ掛ける。具体的には例えば、床面に載置された移動対象物に下側フック132を引っ掛けて、不図示のリモコン等を操作して、駆動機構12を介したチェーン131の巻き上げを行う。これにより、下側フック132が上方に移動し、移動対象物も上方に移動する。
【0061】
移動対象物が電動バランサ100によって吊下げられた状態において、移動対象物を更に上方に移動させる場合には、例えば、移動対象物を手で上方に軽く押し上げる。これにより、制御部14が、移動対象部により電動バランサ100に加えられる荷重が小さくなったことを検知し、当該検知に基づいてチェーン131を巻き上げる方向に駆動機構12を駆動する。
【0062】
反対に、移動対象物を下方に移動させる場合には、例えば、移動対象物を手で下方に軽く押し下げる。これにより、制御部14が、移動対象部により電動バランサ100に加えられる荷重が大きくなったことを検知し、当該検知に基づいてチェーン131を繰り出す方向に駆動機構12を駆動する。
【0063】
制御部14は、移動対象物によって電動バランサ100に加えられる荷重の変化を、次のようにして検知する。
【0064】
フック部20の上側フック21を固定構造に引っ掛けた状態で、本体部10に下向きに加えられる荷重の大きさが変化すると、連結ピンCP1、CP2の前側小径部CPb、後側小径部CPdのたわみ量が変化する。これにより、前側小径部CPb、後側小径部CPdに貼り付けられたひずみゲージSG1~SG8からの出力が変化して、ホイートストンブリッジ回路WSB1、WSB2の出力電圧Eoも変化する。
【0065】
制御部14は、増幅回路ACを介して増幅された出力電圧信号を受け取り、出力電圧信号の変化に基づいて、荷重の変化を検知する。
【0066】
次に、本実施形態の電動バランサ100の効果を説明する。
【0067】
本実施形態の電動バランサ100においては、ホイートストンブリッジ回路を構成するための接続回路CCを、連結ピンCP1、CP2の上では形成せず、本体部10の筐体11に配置された回路基板30上に形成している。したがって、小形の連結ピンCP1、CP2を起歪体として使用することができる。
【0068】
このように、小形の連結ピンCP1、CP2を起歪体として使用できることは、次の点で有利である。即ち、起歪体としての使用が予定されておらず、設計上の都合などにより小形に設計されていた連結ピンを、大きな設計変更を施すことなく荷重検出用の起歪体に転用することが可能となり、設計自由度が高まる。
【0069】
なお、回路基板30の位置を、連結ピンCP1、CP2に近くして配線Wを短くすることで、配線Wにおけるノイズの発生を抑制して、検出精度を高めることができる。
【0070】
本実施形態の電動バランサ100においては、連結ピンCP1、CP2の表面上に、中央配線溝WG1、後側配線溝WG2を形成し、ひずみゲージSG1~SG8と接続回路CCとを繋ぐ配線Wを、中央配線溝WG1、後側配線溝WG2の内部に収容している。このように、配線用の溝を連結ピンCP1、CP2の表面上に設けることは次の点において有利である。
【0071】
すなわち、小径のピンの軸心部に配線用の貫通孔を形成する場合、貫通孔を形成する加工は容易ではない。例えば非常に径の小さいドリルを用いて加工する必要があるが、小径のドリル刃は損傷が大きく、頻繁な交換が必要となる。そのため、貫通孔を有する小径のピンを製造するにはコストも手間もかかる。これに対して、外周面に溝を設ける加工は比較的容易であるため、製造コストを抑制することができる。
【0072】
本実施形態の電動バランサ100においては、中央大径部CPcがフック部20の連結台22の連結孔Hの内部に配置されており、中央配線溝WG1に収容された配線Wの大部分が連結台22で覆われている。また、後側大径部CPeが後側凸壁WBの連結孔Hの内部に配置されており、後側配線溝WG2に収容された配線Wの大部分が後側凸壁WBで覆われている。配線Wが長くなると風などの影響により配線W内の信号にノイズが生じやすくなるが、配線Wを連結台22等で覆うことにより配線Wにおけるノイズの発生が抑制され、配線長の大きいホイートストンブリッジWSBを形成しているにも関わらず、ホイートストンブリッジWSBの出力電圧Eoに対するノイズの影響を抑制することができる。
【0073】
本実施形態の電動バランサ100においては、回路基板30が、保護カバー11cで覆われた閉空間である後部空間BSの内部に配置されている。また、連結ピンCP1、CP2の後端BEも後部空間BS内に位置しており、後端BEから回路基板30へと延びる配線Wも後側空間BSの内部に配置されている。したがって、後端BEから回路基板30へと延びる配線Wにおけるノイズの発生が抑制されている。
【0074】
以上をまとめると、本実施形態の電動バランサ100は、接続回路CCを連結ピンCP1、CP2上には設けずに本体部10上の回路基板30に設け、且つ連結ピンCP1、CP2の外周面に配線溝を形成することにより、小型の連結ピンを起歪体として使用するという設計上の選択肢を与えるものである。一方で本実施形態の電動バランサ100は、接続回路CCを連結ピンCP1、CP2から離間した位置に設け、且つひずみゲージSG1~SG8と接続回路とを繋ぐ配線Wを開放溝である中央配線溝WG1、後側配線溝WG2に配置することによる生じ得るノイズを、配線Wを本体部10及びフック部20で覆うことにより抑制するものである。
【0075】
<変形例>
上記実施形態の電動バランサ100において、次の変形態様を用いることもできる。
【0076】
上記実施形態の電動バランサ100においては、本体部10の前側凸壁WF、フック部20の連結台22、本体部10の後側凸壁WBを前後方向においてこの順番に配置し、各々に設けた連結孔Hに連結ピンCP1、CP2を挿通することにより本体部10をフック部20から吊下げているが、これには限られない。
【0077】
具体的には例えば、上側フックが有する前側下垂部、本体部の頂面の凸部、上側フックが有する後側下垂部を前後方向においてこの順番に配置し、各々に設けた連通孔に連結ピンを挿通することにより、本体部をフック部から吊下げることもできる。この態様では、方位調整板11pは上側フックが有する前側下垂部の前面に取り付けてもよい。
【0078】
その他、連結ピンは本体部10とフック部20とを連通する任意の態様で、本体部10とフック部20とを連結し得る。なお、本明細書及び本発明において、ピンがある部材(第1部材)と他の部材(第2部材)を連通するという文言は、ピンが第1部材、第2部材の両方を貫通する態様、ピンが第1部材、第2部材の一方のみを貫通する態様、及びピンが第1部材、第2部材のいずれをも貫通せず第1部材、第2部材に挿入されているのみである態様のすべてを含むものとする。
【0079】
また、本体部10とフック部20とを連結する連結ピンの数は2本には限られず、1本、又は3本以上の任意の数とし得る。
【0080】
上記実施形態の電動バランサ100においては、連結ピンCP1、CP2の各々に8つのひずみゲージSG1~SG8を取り付けていたがこれには限られない。連結ピンCP1、CP2に貼り付けるひずみゲージの数は任意の複数枚とし得る。例えば、連結ピンCP1、CP2の各々に4枚のひずみゲージを貼り付ける場合は、4枚のひずみゲージと、接続回路とにより1つのホイートストンブリッジが形成される。
【0081】
上記実施形態の電動バランサ100においては、回路基板30を、本体部10の筐体11の後側空間BSに配置しているがこれには限られない。回路基板30は、本体部10上の任意の位置に配置することができる。また、後側空間BSに回路基板30を配置する場合も保護カバー11cは必須ではなく省略し得る。その他、保護カバー11cの有無にかかわらず、本体部10に区画された任意の閉空間に回路基板30を配置することで、回路基板30において風や湿度変化による誤差が生じることを抑制し得る。
【0082】
上記実施形態の電動バランサ100においては、連結ピンCP1、CP2の外周面に配線W用に中央配線溝WG1、後側配線溝WG2を配置していたが、これには限られない。具体的には例えば、連結ピンCP1、CP2の軸心に沿った貫通孔を設け、当該貫通孔を配線W用の通路としてもよい。
【0083】
上記実施形態の電動バランサ100において、本体部10及びフック部20の少なくとも一方がシールド線処理により接地されていてもよい。
【0084】
上記実施形態においては、連結ピンCP1、CP2にひずみゲージSG1~SG8を取り付ける態様を備える電動バランサ100を例として説明したがこれには限られない。電動バランサ100とは異なる、チェーンブロックやウインチなどの任意の巻き上げ機において、連結ピンにひずみゲージを取り付けて連結ピン上とは異なる位置に接続回路を配置する上記実施形態の構成を採用することができる。その他、連結ピンにひずみゲージを取り付けて連結ピン上とは異なる位置に接続回路を配置する任意の機構を、荷重検出機構として構成することができる。具体的には例えば、機構を支持するための固定構造に接続される第1部材と、被験体である物体が吊り下げられる第2部材とを備える機構において、第1部材と第2部材を連通することにより第2部材を第1部材に吊下げるピンにひずみゲージを取り付け、第2部材上に配置された回路基板に接続回路を形成する。
【0085】
なお、本発明及び本明細書において第1部材が第2部材を「吊下げる」という文言は、必ずしも重力方向に懸垂することのみを意味するものではなく、第1部材が第2部材の所定方向への移動を規制するように第2部材を支持することを意味する。したがって例えば、第1部材にピンで連結された第2部材がワイヤを介して停泊中の船舶等に係合されており、第2部材が第1部材を斜め下方や斜め上方、横方向等に引っ張った状態で第1部材により移動を規制されている状態も、第1部材が第2部材を吊り下げた状態に含まれる。
【0086】
<第2実施形態>
上記実施形態の電動バランサ100が備える連結ピンCP1、CP2と、連結ピンCP1、CP2に貼り付けられたひずみゲージSG1~SG8とによって、本発明の第2実施形態のピン型ロードセルが構成される。第2実施形態のピン型ロードセルにおいては、連結ピンCP1、CP2は、ピン型起歪体として機能する。また、第2実施形態のピン型ロードセルにおいては、ひずみゲージの数は任意である。
【0087】
第2実施形態のピン型ロードセルは、ひずみゲージからの配線を外部に延ばすための通路を、ピン型起歪体の軸心に沿った貫通孔ではなくピン型起歪体の外周面に設けた溝として形成しているため、ピン型起歪体を小型化でき、より小さいピン型ロードセルを提供することができる。
【0088】
本発明の特徴を維持する限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
10 本体部、11c 保護カバー、11p 方位調整板、20 フック部、21 上側フック、22 連結台、30 回路基板、100 電動バランサ、AC 増幅回路、CC 接続回路、CP1,CP2 連結ピン、SG1~SG8 ひずみゲージ、WSB1,WSB2 ホイートストンブリッジ回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7