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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】エレベータのテールコード保護装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/06 20060101AFI20241015BHJP
【FI】
B66B7/06 N
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023213314
(22)【出願日】2023-12-18
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】仲田 友也
(72)【発明者】
【氏名】木内 誠也
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/111208(WO,A1)
【文献】特開2010-189146(JP,A)
【文献】特開2011-102156(JP,A)
【文献】特開2002-137877(JP,A)
【文献】特開2009-220936(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2015-0000510(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内に設けられた乗りかごの昇降を案内するガイドレールと平行に延びる建築立柱同士の継ぎ目を構成するダイヤフラムからテールコードを保護するエレベータのテールコード保護装置であって、
前記ガイドレールから前記建築立柱を横切るように延びる一対の支持体であって、前記建築立柱よりも前記昇降路の内側に配置されるとともに上下方向に異なる位置に配置された一対の支持体と、
対応する前記支持体を前記ガイドレールに取り付けるレールクリップと、
前記一対の支持体に取り付けられた保護金網であって、前記建築立柱と前記テールコードとの間に配置された保護金網と、
前記保護金網に対して前記ガイドレールとは反対側に配置された保護体であって、前記建築立柱よりも前記昇降路の内側に配置され、前記ダイヤフラムを覆う保護体と、
を備え、
前記保護体は、一方の前記支持体に支持された上端部と、他方の前記支持体に支持された下端部と、を含む、
エレベータのテールコード保護装置。
【請求項2】
前記支持体は、横方向に延びる支持体長孔であって、前記保護体を前記支持体に取り付けるためのボルトが挿入される支持体長孔を含む、
請求項1に記載のエレベータのテールコード保護装置。
【請求項3】
前記保護体の前記上端部および前記下端部は、上下方向に延びる保護体長孔であって、前記保護体を前記支持体に取り付けるためのボルトが挿入される保護体長孔を含む、
請求項1に記載のエレベータのテールコード保護装置。
【請求項4】
前記支持体は、前記昇降路の壁面に離間して対向する対向面を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載のエレベータのテールコード保護装置。
【請求項5】
前記支持体は、前記ガイドレールに支持されたアームと、前記アームに支持された第1ブラケットであって、前記アームとの間に前記保護金網を挟持する第1ブラケットと、前記第1ブラケットの先端部に配置された第2ブラケットと、を含み、
前記保護体の前記上端部と対応する前記第1ブラケットとの間、および前記保護体の前記下端部と対応する前記第1ブラケットとの間にそれぞれ、前記第2ブラケットが介在され、
前記保護体の前記上端部および前記下端部は、対応する前記第1ブラケットおよび前記第2ブラケットにボルトを用いて取り付けられ、
前記第2ブラケットは、前記ボルトが螺合するねじ孔を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載のエレベータのテールコード保護装置。
【請求項6】
前記保護体は、前記上端部と前記下端部との間に配置された膨出部を含み、
前記膨出部は、前記昇降路の内側に向かって膨らんでいる、
請求項1~3のいずれか一項に記載のエレベータのテールコード保護装置。
【請求項7】
前記保護体の前記上端部、前記膨出部および前記下端部は、一体に形成されている、
請求項6に記載のエレベータのテールコード保護装置。
【請求項8】
前記膨出部は、前記上端部および前記下端部に取り外し可能に取り付けられている、
請求項6に記載のエレベータのテールコード保護装置。
【請求項9】
前記膨出部は、第1膨出部材と、一対の第2膨出部材と、を含み、
一方の前記第2膨出部材は、前記第1膨出部材と前記上端部との間に配置され、
他方の前記第2膨出部材は、前記第1膨出部材と前記下端部との間に配置され、
前記第1膨出部材は、前記第2膨出部材の各々に取り外し可能に取り付けられている、
請求項8に記載のエレベータのテールコード保護装置。
【請求項10】
前記保護体のうち前記保護金網の側の縁部を覆う保護シート
を更に備えた、請求項1~3のいずれか一項に記載のエレベータのテールコード保護装置。
【請求項11】
複数対の前記支持体と、
前記昇降路の下部において上下方向に互いに異なる位置に配置された複数の前記ダイヤフラムのうち対応する前記ダイヤフラムを覆う複数の前記保護体と、
を備え、
前記保護体は、対応する一対の前記支持体に支持されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のエレベータのテールコード保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、エレベータのテールコード保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの機械室または昇降路内に設けられている制御盤は、昇降路に設けられている中継箱に配線で接続され、中継箱と乗りかごは、テールコードで接続されている。テールコードには、電力供給を目的とする配線と、制御信号を送信する配線とが含まれている。このようにして、制御盤から乗りかごに電力が供給可能であるとともに、制御盤と乗りかごとの間で制御信号の送受信が可能になっている。
【0003】
テールコードは、乗りかごから昇降路の下部に垂れ下がっているため、地震または強風などの自然要因により建築物に揺れが発生した場合、テールコードにも揺れが発生し得る。この場合、テールコードが昇降路内に設置されている構造物などに接触して損傷を受ける場合が考えられる。このことを防止するために、テールコードを保護する保護金網が設けられている。
【0004】
しかしながら、テールコードの揺れの挙動によっては、保護金網ではテールコードを保護することが困難な場合が考えられる。例えば、テールコードが保護金網からはみ出すように大きく揺れた場合には、テールコードが昇降路内の構造物に接触し得る。
【0005】
建築物では、オフィスなどのフロア面積を確保するために、エレベータの設置面積を小さくすることが要求される。このことにより、昇降路面積が小さくなり、上述した保護金網の近傍に建築立柱が配置される場合がある。昇降路内には、複数の建築立柱が上下方向に連結されており、建築立柱同士の継ぎ目を構成するダイヤフラムが、建築立柱から突出するように形成されている。保護金網で覆われない位置にダイヤフラムが配置されている場合には、テールコードのダイヤフラムへの接触が懸念される。機械的強度が問題無い範囲でダイヤフラムが切り欠かれる場合があるが、ダイヤフラムを切り欠かなくてもテールコードを保護できることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-167618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施の形態は、テールコードが昇降路内に設置された建築立柱のダイヤフラムとの接触を防止することができるエレベータのテールコード保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施の形態によるエレベータのテールコード保護装置は、昇降路内に設けられた乗りかごの昇降を案内するガイドレールと平行に延びる建築立柱同士の継ぎ目を構成するダイヤフラムからテールコードを保護する装置である。エレベータのテールコード保護装置は、ガイドレールから建築立柱を横切るように延びる一対の支持体であって、建築立柱よりも昇降路の内側に配置されるとともに上下方向に異なる位置に配置された一対の支持体と、対応する支持体をガイドレールに取り付けるレールクリップと、一対の支持体に取り付けられた保護金網であって、建築立柱とテールコードとの間に配置された保護金網と、保護金網に対してガイドレールとは反対側に配置された保護体であって、建築立柱よりも昇降路の内側に配置され、ダイヤフラムを覆う保護体と、を備えている。保護体は、一方の支持体に支持された上端部と、他方の支持体に支持された下端部と、を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、本実施の形態によるエレベータ装置の概略全体構成を示す正面図であり、図1(b)は、図1(a)の側面図である。
図2図2は、本実施の形態によるテールコード保護装置を示す斜視図である。
図3図3は、図2のA-A線断面図である。
図4図4は、図2に示すテールコード保護装置を示す側面図である。
図5図5は、図2の保護体を示す斜視図である。
図6図6は、図5の保護体の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態におけるエレベータのテールコード保護装置について説明する。ここではまず、本実施の形態によるエレベータ装置について説明する。
【0011】
図1(a)、(b)に示すように、エレベータ装置1は、昇降路2内に配置された乗りかご3および釣合錘4を備えている。乗りかご3と釣合錘4は、主ロープ5を介して連結されている。主ロープ5は、巻上機6に設けられたトラクションシーブ7と反らせシーブ8に巻き掛けられている。巻上機6が主ロープ5を巻き上げることにより、乗りかご3は、かごガイドレール9に沿って昇降するとともに、釣合錘4が図示しない錘ガイドレールに沿って昇降する。かごガイドレール9および錘ガイドレールは、上下方向に延びている。巻上機6は、昇降路2の上方に設けられた機械室10内に設置されている。機械室10には、制御盤11が設置されている。制御盤11は、巻上機6を含むエレベータ装置1の全体を制御する装置である。例えば、制御盤11は、乗場呼び、およびかご呼びに応じて巻上機6の運転を制御し、乗りかご3を呼び登録された階床の乗場に着床させる。
【0012】
なお、エレベータ装置1は、図1(a)、(b)に示す形態に限られることはない。例えば、いわゆる機械室レスのエレベータ装置であってもよい。すなわち、機械室10を設けることなく、巻上機6や制御盤11を昇降路2の上部等に設けるようにしてもよい。また、主ロープ5に釣合錘4が連結されずに、乗りかご3に連結された主ロープ5を巻上機6が巻き上げるまたは繰り出すようにしてもよい。この場合においても、巻上機6は、主ロープ5を介して乗りかご3を昇降させることができる。すなわち、エレベータ装置1は、釣合錘4を備えていないエレベータ装置であってもよい。
【0013】
制御盤11は、昇降路2内に設けられた中継箱12に制御配線13で接続されている。中継箱12と乗りかご3は、テールコード14で接続されている。テールコード14には、電力供給を目的とする配線と、制御信号を送信する配線とが含まれている。このようにして、制御盤11から乗りかご3に電力が供給されるとともに、制御盤11と乗りかご3の間で制御信号の送受信が可能になっている。テールコード14は、図1(a)に示すように、乗りかご3から昇降路2の下部に垂れ下がっている。
【0014】
図1(a)、(b)に示すように、昇降路2内には、複数の建築立柱15が設置されている。図1(a)、(b)では、図面を明瞭にするために建築立柱15は二点鎖線で示されている。建築立柱15は、上下方向に延びており、上述したかごガイドレール9と平行に延びている。複数の建築立柱15は、上下方向に連結されており、建築立柱15同士の継ぎ目において、ダイヤフラム16が形成されている。ダイヤフラム16は、建築立柱15から外側に突出するように形成されているとともに、横方向に延びるように形成されている。より具体的には、建築立柱15の上端および下端にはそれぞれダイヤフラムが形成されており、上下で隣り合う建築立柱15のダイヤフラム同士がボルトなどで締結されている。このため、建築立柱15同士の継ぎ目には、2つのダイヤフラムが重なり合っているが、本明細書では便宜上、2つのダイヤフラムを合わせてダイヤフラム16と称することにする。
【0015】
次に、本実施の形態によるエレベータのテールコード保護装置(以下、単にテールコード保護装置20と記す)について説明する。テールコード保護装置20は、昇降路2内に設けられた乗りかご3の昇降を案内するかごガイドレール9と平行に延びる建築立柱15同士の継ぎ目を構成するダイヤフラム16からテールコード14を保護する装置である。
【0016】
図2に示すように、テールコード保護装置20は、一対の支持体30と、レールクリップ40と、保護金網50と、保護体60と、を備えている。
【0017】
支持体30は、かごガイドレール9から建築立柱15を横切るように延びている。支持体30は、昇降路2の内側から建築立柱15に向かって見たときに、建築立柱15を横切って延びている。支持体30は、水平に延びていてもよい。支持体30は、建築立柱15よりも昇降路2の内側に配置されている。一対の支持体30は、上下方向に異なる位置に配置されている。一方の支持体30が他方の支持体30よりも上方に配置されており、一対の支持体30は上下方向に離間している。一対の支持体30によって、保護体60が支持されている。
【0018】
支持体30は、アーム31と、第1ブラケット32と、第2ブラケット33と、を含んでいる。2つの支持体30は、同一構造を有していてもよい。
【0019】
アーム31は、かごガイドレール9に支持されている。アーム31は、レールクリップ40によって、かごガイドレール9に取り付けられている。この場合、かごガイドレール9に、アーム31を取り付けるためのボルトB1用の孔などが不要となるため、アーム31は、上下方向においてかごガイドレール9の任意の位置に配置することができる。アーム31は、かごガイドレール9から建築立柱15に向かって横方向に延びている。アーム31は、テールコード14との接触を防止するように、折り曲げられていてもよい。
【0020】
第1ブラケット32は、アーム31に支持されている。第1ブラケット32は、アーム31との間に保護金網50を挟持していてもよい。この場合、第1ブラケット32は、保護金網50を介してアーム31に固定されていてもよい。第1ブラケット32は、建築立柱15に向かってアーム31から横方向に延びている。第1ブラケット32は、建築立柱15を越えて横方向に延びていてもよい。第1ブラケット32は、直線状に形成されていてもよく、折り曲げ形状を含んでいなくてもよい。
【0021】
第2ブラケット33は、第1ブラケット32の先端部に配置されている。先端部とは、かごガイドレール9から遠い側の部分である。第2ブラケット33は、第1ブラケット32に支持されており、第1ブラケット32に取り付けられている。保護体60の上端部61と対応する第1ブラケット32との間に、第2ブラケット33が介在されているとともに、保護体60の下端部62と対応する第1ブラケット32との間に、第2ブラケット33が介在されている。
【0022】
第2ブラケット33は、対向面34を含んでいてもよい。図2および図3に示すように、対向面34は、昇降路2の壁面2aに離間して対向している。対向面34は、第2ブラケット33の先端部に位置している。より具体的には、第2ブラケット33は、先端部においてL字状に折り曲げられることにより、昇降路2の壁面2aに対向する対向面34が形成されている。対向面34は、支持体30の熱膨張が大きい場合に昇降路2の壁面2aに当接することができる。対向面34は、地震の揺れが大きい場合に昇降路2の壁面2aに当接することができる。
【0023】
図2に示すように、レールクリップ40は、支持体30のアーム31をかごガイドレール9に取り付けるように構成されている。各々の支持体30は、2つのレールクリップ40でかごガイドレール9に取り付けられている。図2では、かごガイドレール9の奥側に位置するレールクリップ40の図示を省略している。レールクリップ40とアーム31との間にかごガイドレール9の縁部を挟持して、レールクリップ40とアーム31とがボルトB1で締結される。ボルトB1の締付力により、レールクリップ40とアーム31がかごガイドレール9に押圧されて、かごガイドレール9に取り付けられる。ボルトB1はかごガイドレール9を貫通しないため、支持体30の上下方向位置が制限されることを防止できる。かごガイドレール9には、ボルトB1用の孔などを形成することを不要にすることができる。
【0024】
保護金網50は、上述した一対の支持体30に取り付けられている。より具体的には、保護金網50は、アーム31と第1ブラケット32との間に挟持されている。アーム31と第1ブラケット32とがボルトB2で締結されることにより、保護金網50は、アーム31と第1ブラケット32により押圧されて、固定されている。
【0025】
保護金網50は、建築立柱15とテールコード14との間に配置されており、テールコード14が建築立柱15を含む昇降路2内の構造物に接触することを防止している。本実施の形態による保護金網50は、建築立柱15の上述したダイヤフラム16の一部分を覆っている。保護金網50は、ダイヤフラム16との干渉を防止するために、昇降路2の内側であって、乗りかご3の側に向かって膨らむように形成されていてもよい。保護金網50は、上下方向に延びていてもよい。複数の保護金網50が上下方向に連結されていてもよい。図1(b)に示すように、保護金網50は、昇降路2の下半分に配置されていてもよい。このことにより、昇降路2のうち、テールコード14の揺れが発生しやすい位置に保護金網50を配置することができる。
【0026】
図2に示すように、保護体60は、保護金網50に対してかごガイドレール9とは反対側に配置されている。保護体60は、保護金網50よりも昇降路2の壁面2aの側に配置されている。保護体60は、建築立柱15よりも昇降路2の内側であって、乗りかご3の側に配置されている。
【0027】
図2および図4に示すように、保護体60は、昇降路2の内側からダイヤフラム16を覆っている。より具体的には、保護体60は、ダイヤフラム16のうち保護金網50で覆われていない部分を覆っている。
【0028】
保護体60は、上端部61と、下端部62と、を含んでいる。上端部61は、上方に配置された支持体30に支持されている。下端部62は、下方に配置された支持体30に支持されている。
【0029】
保護体60は、膨出部63を含んでいてもよい。膨出部63は、上端部61と、下端部62との間に配置されている。膨出部63は、ダイヤフラム16との干渉を防止するために、昇降路2の内側であって、乗りかご3の側に向かって膨らんでいる。
【0030】
図2図4および図5に示すように、本実施の形態による保護体60の上端部61、下端部62および膨出部63は、一体に、連続状に形成されている。膨出部63は、板状の部材を板金加工することにより折り曲げられていてもよい。膨出部63の形状は、ダイヤフラム16との干渉を防止することができれば、任意である。
【0031】
図2に示すように、支持体30は、横方向に延びる支持体長孔35を含んでいる。支持体30のそれぞれに、複数の支持体長孔35が形成されていてもよい。支持体長孔35は、保護体60を支持体30に取り付けるためのボルトB3が挿入される孔である。本実施の形態においては、支持体30のそれぞれに、2つの支持体長孔35が形成されており、横方向に並んでいる。
【0032】
図5に示すように、保護体60の上端部61および下端部62はそれぞれ、上下方向に延びる保護体長孔64を含んでいる。上端部61および下端部62のそれぞれに、複数の保護体長孔64が形成されていてもよい。保護体長孔64は、保護体60を支持体30に取り付けるためのボルトB3が挿入される孔である。本実施の形態においては、上端部61及び下端部62のそれぞれに、4つの保護体長孔64が形成されており、横方向に並んでいる。4つの保護体長孔64のうち2つの保護体長孔64にボルトB3が挿入される。
【0033】
図2および図3に示すように、保護体60の上端部61および下端部62はそれぞれ、対応する第1ブラケット32および第2ブラケット33にボルトB3を用いて取り付けられている。上端部61を取り付けるためのボルトB3は、第1ブラケット32、第2ブラケット33および上端部61を貫通して延びている。同様に、下端部62を取り付けるためのボルトB3は、第1ブラケット32、第2ブラケット33および下端部62を貫通して延びている。第2ブラケット33は、ボルトB3が螺合するねじ孔36を含んでいる。
【0034】
図5に示すように、保護体60のうち保護金網50の側の縁部が、保護シート70により覆われていてもよい。保護シート70は、上下方向に延びており、保護体60のうち保護金網50の側の縁部を上下方向にわたって保護している。保護シート70は、保護体60の縁部に接触したテールコード14を保護するためのシートである。保護シート70の構成は、テールコード14を保護することができれば任意である。例えば、保護シート70は、ステンレス箔とアクリル系の粘着層と、を含んでいてもよい。
【0035】
図4に示すように、保護体60の裏面に、吸音シート80が貼り付けられていてもよい。吸音シート80は、テールコード14が保護体60に接触して保護体60がダイヤフラム16と接触した場合に衝突音が発生することを防止するためのシートである。吸音シート80の構成は、衝突音が発生することを防止できれば任意である。吸音シート80は、アルミニウム箔とゴム系の粘着層と、を含んでいてもよい。
【0036】
図1(a)、(b)に示すように、本実施の形態によるテールコード保護装置20は、複数対の支持体30と、昇降路2の下部において上下方向に互いに異なる位置に配置された複数のダイヤフラム16のうち対応するダイヤフラム16を覆う複数の保護体60と、を備えていてもよい。各々の保護体60が、対応する一対の支持体30によってかごガイドレール9に支持されていてもよい。昇降路2の下半分に位置する複数のダイヤフラム16が、対応する保護体60で覆われていてもよい。このことにより、昇降路2のうち、テールコード14の揺れが発生しやすい位置に位置している複数のダイヤフラム16を、保護体60で覆うことができる。このため、テールコード14を効果的に保護することができる。
【0037】
このように本実施の形態によれば、かごガイドレール9にレールクリップ40で一対の支持体30が上下方向に異なる位置で取り付けられている。一対の支持体30に取り付けられた保護金網50に対してかごガイドレール9とは反対側に保護体60が配置されている。保護体60は、建築立柱15よりも昇降路2の内側に配置され、ダイヤフラム16を覆っている。保護体60は、一方の支持体30に支持された上端部61と、他方の支持体30に支持された下端部62と、を含んでいる。このことにより、保護体60が、テールコード14の側からダイヤフラム16を覆うことができる。このため、テールコードが、地震または強風などの自然要因によって保護金網50からはみ出すように大きく揺れた場合であっても、テールコード14がダイヤフラム16に接触することを防止できる。この結果、テールコード14が昇降路2内に設置された建築立柱15のダイヤフラム16との接触を防止することができる。
【0038】
また、本実施の形態によれば、保護体60は、一方の支持体30に支持された上端部61と、他方の支持体30に支持された下端部62と、を含んでいる。このことにより、保護体60を、上下方向に異なる位置に配置された一対の支持体30によって支持することができる。このため、保護体60の支持を安定化させることができる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、保護体60を支持する一対の支持体30は、レールクリップ40によってかごガイドレール9に支持される。このことにより、支持体30の位置を、上下方向に容易に調整することができる。このため、保護体60を、ダイヤフラム16を覆う位置に容易に位置づけることができる。また、エレベータ装置1の据付現場で、ダイヤフラム16の位置を確認して保護体60の位置を調整することができ、保護体60の位置を容易に最適化することができる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、支持体30は、横方向に延びる支持体長孔35であって、保護体60を支持体30に取り付けるためのボルトB3が挿入される支持体長孔35を含んでいる。このことにより、保護体60の横方向位置を、支持体長孔35の範囲で容易に調整することができる。このため、保護体60の位置を、より一層最適化することができる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、保護体60は、上下方向に延びる保護体長孔64であって、保護体60を支持体30に取り付けるためのボルトが挿入される保護体長孔64を含んでいる。このことにより、保護体60の上下方向位置を、保護体長孔64の範囲で容易に調整することができる。このため、保護体60の位置を、より一層最適化することができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、支持体30は、昇降路2の壁面2aに離間して対向する対向面34を含んでいる。このことにより、支持体30の熱膨張が大きい場合に対向面34は昇降路2の壁面2aに当接することができる。また、地震の揺れが大きい場合にも対向面34は昇降路2の壁面2aに当接することができる。このため、テールコード保護装置20の破損または変形を防止することができる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、保護体60の上端部61と対応する支持体30の第1ブラケット32との間、および保護体60の下端部62と対応する支持体30の第1ブラケット32との間に、第2ブラケット33が介在されている。上端部61および下端部62は、対応する第1ブラケット32および第2ブラケット33にボルトB3を用いて取り付けられ、第2ブラケット33は、ボルトB3が螺合するねじ孔36を含んでいる。このことにより、第2ブラケット33が保護体60と対応する第1ブラケット32との間に介在されている場合であっても、第2ブラケット33のねじ孔36にボルトB3が螺合していることから、ボルト締結後に第2ブラケット33が位置ズレすることを防止することができる。このため、テールコード保護装置20の信頼性を向上させることができる。例えば、対向面34が位置合わせされた第2ブラケット33を第1ブラケット32とボルトB3で締結し、その後に、保護体60の上端部61または下端部62を、ナットN(図3参照)などを用いて第2ブラケット33に締結することができる。この場合においても、ボルトB3は第2ブラケット33のねじ孔36に螺合するため、保護体60の上端部61または下端部62を第2ブラケット33に締結する際に、第2ブラケット33が位置ズレすることを防止することができる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、保護体60は、昇降路2の内側に向かって膨らむ膨出部63を含んでいる。このことにより、保護体60が、ダイヤフラム16と干渉することを防止できる。このため、エレベータの設置面積が制限されている場合であっても、ダイヤフラム16を覆う保護体60を形成することができ、テールコード14がダイヤフラム16に接触することを防止することができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、保護体60の上端部61、下端部62および膨出部63は、一体に形成されている。このことにより、保護体60を一部品として構成することができ、部品点数を削減することができる。このため、テールコード保護装置20の組立作業性を向上させることができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、保護体60のうち保護金網50の側の縁部が、保護シート70で覆われている。このことにより、テールコード14が保護体60の縁部に接触した場合であってもテールコード14を保護することができる。このため、テールコード保護装置20の信頼性を向上させることができる。
【0047】
なお、上述した本実施の形態においては、保護体60の上端部61、下端部62および膨出部63が、一体に形成されている例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、図6に示すように、保護体60の膨出部63は、上端部61および下端部62のそれぞれに取り外し可能に取り付けられていてもよい。
【0048】
図6に示す例では、保護体60の上端部61、下端部62、膨出部63は、別部品で構成されている。上端部61と膨出部63がボルトB4で取り付けられているとともに、下端部62と膨出部63がボルトB4で取り付けられている。
【0049】
膨出部63は、第1膨出部材65と、一対の第2膨出部材66と、を含んでいてもよい。第1膨出部材65は、上下方向において保護体60の中央に配置されていてもよい。第2膨出部材66は、第1膨出部材65の上方及び下方にそれぞれ配置されている。一方の第2膨出部材66は、第1膨出部材65と上端部61との間に配置され、他方の第2膨出部材66は、第1膨出部材65と下端部62との間に配置されている。第1膨出部材65は、全体的に平坦な板状の部材であり、第2膨出部材66は、板状の部材を板金加工することにより折り曲げられていてもよい。第1膨出部材65と各々の第2膨出部材66は、ボルトB3で取り外し可能に取り付けられている。
【0050】
膨出部63は、一対の第3膨出部材67を更に含んでいてもよい。一方の第3膨出部材67は、上方に配置された第2膨出部材66の上方に配置され、他方の第3膨出部材67は、下方に配置された第2膨出部材66の下方に配置されている。第3膨出部材67は、板状の部材を板金加工することにより折り曲げられていてもよい。上方に配置された第3膨出部材67は、上端部61および対応する第2膨出部材66にボルトB3で取り付けられている。下方に配置された第3膨出部材67は、下端部62および対応する第2膨出部材66にボルトB3で取り外し可能に取り付けられている。
【0051】
このように図6に示すように、膨出部63が、上端部61および下端部62のそれぞれに取り外し可能に取り付けられていることにより、保護体60を複数の部品に分割することができる。このことにより、部品サイズを小さくするとともに軽量化することができ、取り扱い性を向上させることができる。
【0052】
また、膨出部63が、第1膨出部材65と一対の第2膨出部材66と、を含み、第1膨出部材65と各々の第2膨出部材66が、取り外し可能に取り付けられている。このことにより、膨出部63を複数の部品に分割することができる。このことにより、部品サイズをより一層小さくするとともにより一層軽量化することができ、取り扱い性をより一層向上させることができる。
【0053】
以上述べた実施の形態によれば、テールコード14が昇降路2内に設置された建築立柱15のダイヤフラム16との接触を防止することができる。
【符号の説明】
【0054】
1:エレベータ装置、2:昇降路、3:乗りかご、9:かごガイドレール、14:テールコード、15:建築立柱、16:ダイヤフラム、20:テールコード保護装置、30:支持体、31:アーム、32:第1ブラケット、33:第2ブラケット、34:対向面、35:支持体長孔、36:ねじ孔、40:レールクリップ、50:保護金網、60:保護体、61:上端部、62:下端部、63:膨出部、64:保護体長孔、65:第1膨出部材、66:第2膨出部材、70:保護シート、B3:ボルト
【要約】
【課題】テールコードが昇降路内に設置された建築立柱のダイヤフラムとの接触を防止することができるエレベータのテールコード保護装置を提供する。
【解決手段】実施の形態によるエレベータのテールコード保護装置は、ガイドレールから建築立柱を横切るように延びる一対の支持体であって、建築立柱よりも昇降路の内側に配置されるとともに上下方向に異なる位置に配置された一対の支持体と、対応する支持体をガイドレールに取り付けるレールクリップと、一対の支持体に取り付けられた保護金網であって、建築立柱とテールコードとの間に配置された保護金網と、保護金網に対してガイドレールとは反対側に配置された保護体であって、建築立柱よりも昇降路の内側に配置され、ダイヤフラムを覆う保護体と、を備えている。保護体は、一方の支持体に支持された上端部と、他方の支持体に支持された下端部と、を含んでいる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6