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特許7571277温度調整用金型、樹脂製容器の製造装置および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】温度調整用金型、樹脂製容器の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/64 20060101AFI20241015BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
B29C49/64
B29C49/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023502448
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2022007336
(87)【国際公開番号】W WO2022181627
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2021028598
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】島田 清典
(72)【発明者】
【氏名】河村 遼
(72)【発明者】
【氏名】高橋 純治
(72)【発明者】
【氏名】石坂 和也
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-089929(JP,A)
【文献】特開平06-285965(JP,A)
【文献】特公平06-102358(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/64
B29C 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形された有底形状の樹脂製のプリフォームの温度を調整するための温度調整用金型であって、
前記プリフォームの胴部の外周面の一部に臨み、前記プリフォームの周方向の所定部位を局所的に加熱する一以上の調整部と、
前記プリフォームの底部に臨み、前記調整部の下端を支持する下段型と、
前記プリフォームの首部に臨み、前記調整部の上端を支持する上段型と、を備え、
前記調整部は、前記周方向に隙間が形成されるように配置され、前記周方向に取付位置を調整可能であり、
前記調整部は、前記下段型および前記上段型に挟み込まれて位置決めされる
温度調整用金型。
【請求項2】
前記調整部は、前記周方向に隙間をあけて複数配置される
請求項1に記載の温度調整用金型。
【請求項3】
有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
射出成形時の保有熱を含んだ前記プリフォームに対して、請求項1または請求項2に記載の温度調整用金型を用いて、周方向の温度分布を調整する温度調整部と、
温度調整された前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、
を備える樹脂製容器の製造装置。
【請求項4】
有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
射出成形時の保有熱を含んだ前記プリフォームに対して、請求項1または請求項2に記載の温度調整用金型を用いて、周方向の温度分布を調整する温度調整工程と、
温度調整された前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、
を有する樹脂製容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調整用金型、樹脂製容器の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から樹脂製容器の製造装置の一つとして、ホットパリソン式のブロー成形装置が知られている。ホットパリソン式のブロー成形装置は、プリフォームの射出成形時の保有熱を利用して樹脂製容器をブロー成形する構成であり、コールドパリソン式と比較して多様かつ美的外観に優れた樹脂製容器を製造できる点で有利である。
【0003】
一般的に、射出成形直後のプリフォームは、軸方向に延びる低温部が周方向にいくつか存在し、周方向に温度のむら(偏温)が生じている。そのため、ホットパリソン式のブロー成形サイクルでは、プリフォームの偏温の抑制や、あるいは容器の賦形に適した所望の温度分布をプリフォームに付与するために、射出成形工程とブロー成形工程の間にプリフォームの温度調整工程が行われる。
【0004】
この種の温度調整工程では、例えば、プリフォームを内側に収容する円筒状の加熱金型(加熱ポット型)を用いて、加熱ポット型からの放射熱で外周側からプリフォームを加熱して温度調整を行うことがある。この場合、円筒状の加熱ポット型をプリフォームの低温部位に近づけて配置することで、プリフォームの偏温が抑制される。また、扁平容器の成形時において、加熱ブロックと冷却ブロックを一対ずつ周方向に交互に配置した温調装置を用いてプリフォームの温度調整を行うことも提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3595613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の円筒状の加熱ポット型を用いた温度調整では、プリフォームの低温部位以外も加熱されるため、偏温を適切かつ十分に解消することが困難な場合もある。また、扁平容器の成形時には、容器長辺に対応するプリフォームの部位を選択的に加熱できれば、容器の肉厚分布の改善を図ることもできる。そのため、プリフォームの周方向の所定部位を選択的に加熱できる温度調整用金型が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、射出成形された有底形状の樹脂製のプリフォームの温度を調整するための温度調整用金型である。温度調整用金型は、プリフォームの胴部の外周面の一部に臨み、プリフォームの周方向の所定部位を局所的に加熱する一以上の調整部と、プリフォームの底部に臨み、調整部の下端を支持する下段型と、プリフォームの首部に臨み、調整部の上端を支持する上段型と、を備える。調整部は、周方向に隙間が形成されるように配置され、周方向に取付位置を調整可能である。また、調整部は、下段型および上段型に挟み込まれて位置決めされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、プリフォームの周方向の所定部位を選択的に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のブロー成形装置の構成を模式的に示す図である。
図2】温度調整部の縦断面図である。
図3】温度調整部の温度調整用金型の構成例を示す分解斜視図である。
図4】温度調整部の中段型の配置例を示す図である。
図5】ブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0011】
図1は、本実施形態のブロー成形装置20の構成を模式的に示す図である。本実施形態のブロー成形装置20は、プリフォーム10を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用して容器をブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式とも称する)の装置である。
【0012】
ブロー成形装置20は、射出成形部21と、温度調整部22と、ブロー成形部23と、取り出し部24と、搬送機構26とを備える。射出成形部21、温度調整部22、ブロー成形部23および取り出し部24は、搬送機構26を中心として所定角度(例えば90度)ずつ回転した位置に配置されている。
【0013】
(搬送機構26)
搬送機構26は、図1の紙面垂直方向の軸を中心に回転するように移動する移送板28(図1では不図示)を備える。移送板28には、プリフォーム10または樹脂製容器(以下、単に容器と称する)の首部を保持するネック型27(図1では不図示)が、所定角度ごとにそれぞれ1以上配置されている。搬送機構26は、移送板28を90度分ずつ移動させることで、ネック型27で首部が保持されたプリフォーム10(または容器)を、射出成形部21、温度調整部22、ブロー成形部23、取り出し部24の順に搬送する。なお、搬送機構26は、昇降機構(縦方向の型開閉機構)やネック型27の型開き機構をさらに備え、移送板28を昇降させる動作や、射出成形部21等における型閉じや型開き(離型)に係る動作も行う。
【0014】
(射出成形部21)
射出成形部21は、それぞれ図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型を備え、図2に示すプリフォーム10を製造する。射出成形部21には、プリフォーム10の原材料である樹脂材料を供給する射出装置25が接続されている。
【0015】
射出成形部21においては、上記の射出キャビティ型、射出コア型と、搬送機構26のネック型27とを型閉じしてプリフォーム形状の型空間を形成する。そして、このようなプリフォーム形状の型空間内に射出装置25から樹脂材料を流し込むことで、射出成形部21でプリフォーム10が製造される。
例えば、プリフォーム10の全体形状は、一端側が開口され、他端側が閉塞された有底円筒形状である。プリフォーム10の開口側の端部には、首部が形成されている。
【0016】
また、容器およびプリフォーム10の材料は、熱可塑性の合成樹脂であり、容器の用途に応じて適宜選択できる。具体的な材料の種類としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン(登録商標):イーストマンケミカル社製のコポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。
【0017】
なお、射出成形部21の型開きをしたときにも、搬送機構26のネック型27は開放されずにそのままプリフォーム10を保持して搬送する。射出成形部21で同時に成形されるプリフォーム10の数(すなわち、ブロー成形装置20で同時に成形できる容器の数)は、適宜設定できる。
【0018】
(温度調整部22)
温度調整部22は、プリフォーム10を収容可能な温度調整用金型30を備えている。温度調整部22は、温度調整用金型30により射出成形部21で製造されたプリフォーム10の均温化や偏温除去を行い、プリフォーム10の温度をブロー成形に適した温度(例えば約90℃~105℃)かつ賦形される容器形状に適した温度分布に調整する。また、温度調整部22は、射出成形後の高温状態のプリフォーム10を冷却する機能も担う。なお、特に限定するものではないが、温度調整部22は、プリフォーム10の内側に挿入される温度調整用の金型部材(温度調整ロッド:不図示)をさらに備えていてもよい。
【0019】
図2は、温度調整部22の縦断面図である。図3は、温度調整部22の温度調整用金型30の構成例を示す分解斜視図である。
【0020】
温度調整用金型30は、プリフォーム10の軸方向(上下方向)に少なくとも3分割された構成であって、上側から順に、上段型31、中段型32および下段型33を備える。下段型33は、基台29の上に固定された支持台34に載置され、上段型31の上面側には上部支持板35が配置される。支持台34および上部支持板35は、プリフォーム10の軸方向に沿って延びる複数の支柱(不図示)によって連結される。したがって、上段型31、中段型32および下段型33は、支持台34および上部支持板35に挟み込まれることにより、位置決めされた状態で固定される。
【0021】
上段型31は、プリフォーム10の首部近傍の外周面に臨む(対向する)金型であり、プリフォーム10が挿通可能な円形の開口部を有している。上段型31には、バンドヒータ(リング状ヒータ)などの加熱部材(不図示)が取り付けられ、上段型31の温度は加熱部材により所定の温度に調整することができる。また、上段型31は、中段型32の上端に当接して中段型32を支持する。
【0022】
下段型33は、プリフォーム10の底部の外周面に臨む(対向する)金型であり、上面側にプリフォーム10の底部形状に倣った凹曲面33aを有している。下段型33には、バンドヒータなどの加熱部材(不図示)が取り付けられ、下段型33の温度は加熱部材により所定の温度に調整することができる。また、下段型33は、中段型32の下端に当接して中段型32を支持する。
【0023】
中段型32は、調整部(調整部材)の一例であって、上段型31と下段型33の間に配置され、プリフォーム10の胴部の外周面に臨む(対向する)金型である。なお、上段型31の底面と中段型32の上面、ならびに中段型32の底面と下段型33の上面は、例えば、断熱部材をそれらの間に挟み込むようにして、それぞれインロー構造で係合する。
【0024】
図2図3に示すように、中段型32は、平面視の形状が円弧状(少なくともプリフォーム10に臨む内周面が円弧状)であって、軸方向の長さが一定である帯状片で構成される。さらに、中段型32は、径方向の厚みが一定の形状であってもよい。例えば、中段型32は、平面視で四分円の帯状片であって、プリフォーム10の外周の1/4をカバーできる。また、図2に示すように、中段型32にはロッド状ヒータなどの加熱部材32aが内蔵されており、中段型32の温度は加熱部材32aにより所定の温度に調整することができる。
【0025】
中段型32は、プリフォーム10の胴部の外周面を部分的に覆うように、プリフォームの周方向に1以上配置される。つまり、中段型32の配置されていない箇所では、温度調整用金型30の周方向に隙間が形成される。中段型32が周方向に部分的に配置されることで、温度調整用金型30でプリフォーム10の胴部は以下のように温度調整される。
【0026】
まず、周方向において中段型32に臨む部位では、中段型32からの熱でプリフォーム10の胴部が加熱される。一方、周方向において中段型32が配置されていない部位では、プリフォーム10の胴部は加熱されず、空気への放熱で自然冷却される。これにより、温度調整用金型30では、周方向の所望の部位を選択的に加熱しつつ、所望の部位以外が過剰に加熱されることを抑制でき、プリフォーム10の周方向の温度分布を所望の状態に近づけることが容易となる。
【0027】
図4は、温度調整部22の中段型32の配置例を示す図である。
図4(A)は中段型32を1つ配置した例を示す。図4(A)の場合、プリフォーム10の周方向の一部(図中、プリフォーム10に対して左側に位置し、プリフォーム10の周方向における90度の範囲)では中段型32でプリフォーム10の胴部が加熱される。また、プリフォーム10の周方向で中段型32の配置されていない範囲については空気への放熱でプリフォーム10の胴部が自然冷却される。
【0028】
また、図4(B)は、点対称をなすように周方向に隙間をあけて2つの中段型32を対向配置した例を示す。図4(B)の場合、プリフォーム10の周方向の2箇所(図中、プリフォーム10に対して上側および下側に位置し、それぞれプリフォーム10の周方向における90度の範囲)では中段型32でプリフォーム10の胴部がそれぞれ加熱される。一方、プリフォーム10の周方向で中段型32の配置されていない範囲については空気への放熱でプリフォーム10の胴部がそれぞれ自然冷却される。
【0029】
また、図4(C)は、2つの中段型32を隣接させて配置した例を示す。図4(C)の場合、図中左側半分では中段型32でプリフォーム10の胴部が加熱される。一方、図中右側半分では空気への放熱でプリフォーム10の胴部が自然冷却される。
【0030】
なお、図4の各図に示す中段型32の配置はあくまで一例であり、プリフォーム10の偏温の状態や賦形対象の容器の仕様などに応じて中段型32の位置を適宜変更することができる。例えば、2つの中段型32を周方向に隙間をあけて離して配置する場合、中段型32は点対称の位置からずらして配置してもよい。また、中段型32を周方向に3つ配置するようにしてもよい。
【0031】
(ブロー成形部23)
図1に戻って、ブロー成形部23は、温度調整部22で温度調整されたプリフォーム10に対して延伸ブロー成形を行い、容器を製造する。
ブロー成形部23は、容器の形状に対応した一対の割型であるブローキャビティ型と、底型と、延伸ロッドおよびエア導入部材(ブローコア型、いずれも不図示)を備える。ブロー成形部23は、プリフォーム10を延伸しながらブロー成形する。これにより、プリフォーム10がブローキャビティ型の形状に賦形されて容器を製造することができる。
【0032】
(取り出し部24)
取り出し部24は、ブロー成形部23で製造された容器の首部をネック型27から開放し、容器をブロー成形装置20の外部へ取り出すように構成されている。
【0033】
(ブロー成形方法の説明)
次に、本実施形態のブロー成形装置20によるブロー成形方法について説明する。
図5は、ブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。本実施形態では、ブロー成形方法の後述の各工程(S101~S104)が実施される前に、温度調整用金型30を調整する金型調整工程(S100)が行われる。
【0034】
(ステップS100:金型調整工程)
金型調整工程は、プリフォーム10の偏温や賦形する容器の形状に応じて、温度調整部22の温度調整用金型30を調整する工程である。
【0035】
一例として、プリフォーム10の偏温を抑制する場合、金型調整工程では以下の作業が行われる。以下の説明では、周方向におけるプリフォーム10の温度分布や容器の肉厚分布の偏りが小さくなるように調整するものとする。
【0036】
まず、ブロー成形装置20をテスト運転し、調整前におけるプリフォーム10の温度分布の情報または容器の肉厚分布の情報を得る。
【0037】
例えば、プリフォーム10の周方向に温度分布の偏りがある場合、作業者は、温度調整用金型30の中段型32の位置をプリフォーム10の低温部位に臨むように調整する。これにより、プリフォーム10の周方向においてテスト運転時に温度の低い部位が中段型32で局所的に加熱され、プリフォーム10の周方向の偏温が小さくなる。
【0038】
また、テスト運転で製造された容器の肉厚分布に基づいて温度調整用金型30を調整する場合には、以下のように行えばよい。
【0039】
1ステージ方式のブロー成形において、プリフォーム10の高温部位は大きな保有熱を有し、プリフォーム10が延伸されやすくなる。つまり、容器の肉厚が薄い部位は、プリフォーム10の高温高い部位に対応する。一方、プリフォーム10の低温部位は、プリフォーム10の高温部位と比べて保有熱が小さくなり、プリフォーム10が延伸されにくくなる。つまり、容器の肉厚が厚い部位は、プリフォーム10の低温部位に対応する。
【0040】
したがって、容器の肉厚分布に基づいて温度調整用金型30を調整する場合、容器の肉厚が薄い部位はプリフォーム10の高温部位とみなし、容器の肉厚が厚い部位はプリフォーム10の低温部位とみなして上記と同様に中段型32の位置を調整すればよい。
【0041】
また、他の例として、賦形する容器の形状に応じて温度調整用金型30を調整する場合、作業者は、周方向における中段型32の位置を、プリフォーム10の周方向で延伸倍率の高い部位に臨むように調整する。例えば、偏心容器を成形する場合、容器長径側の対応部位に中段型32が臨むように温度調整用金型30を調整する。これにより、延伸倍率の高い部位でのプリフォーム10の保有熱が高くなり、容器形状に適したプリフォーム10の変形が容易となるので容器の肉厚分布を改善することができる。
【0042】
ここで、温度調整用金型30を組み立てるときには、まず支持台34に下段型33を載置する。次に、上段型31と下段型33の間に中段型32を配置するとともに、中段型32を配置しない箇所には上段型31と下段型33の間に柱状の部材(不図示)を配置する。そして、上段型31の上側から上部支持板35を配置し、上部支持板35と支持台34を支柱(不図示)で連結して温度調整用金型30を挟み込んで位置決め固定する。なお、柱状の部材は、上段型31と下段型33の間から取り外してもよい。
上記の金型調整工程が完了すると、以下に示すブロー成形サイクルの各工程が実行される。
【0043】
(ステップS101:射出成形工程)
ステップS101では、射出成形部21において、射出キャビティ型、射出コア型および搬送機構26のネック型27で形成されたプリフォーム形状の型空間に射出装置25から樹脂を射出し、プリフォーム10が製造される。
【0044】
ステップS101において、プリフォーム10の射出成形が完了すると、射出成形部21が型開きされてプリフォーム10が射出キャビティ型、射出コア型から離型される。次に、搬送機構26の移送板28が所定角度分回転するように移動し、ネック型27に保持されたプリフォーム10は温度調整部22に搬送される。
【0045】
(ステップS102:温度調整工程)
続いて、温度調整部22において、プリフォーム10の温度を最終ブローに適した温度に近づけるための温度調整が行われる。
【0046】
図2に示すように、温度調整工程では、プリフォーム10が温度調整用金型30内に収容される。これにより、射出成形後のプリフォーム10は周方向の温度分布が所望の状態になるように温度調整用金型30で温度調整される。
【0047】
温度調整工程の後、搬送機構26の移送板28が所定角度分回転するように移動し、ネック型27に保持された温度調整後のプリフォーム10がブロー成形部23に搬送される。
【0048】
(ステップS103:ブロー成形工程)
続いて、ブロー成形部23において、容器のブロー成形が行われる。
まず、ブローキャビティ型を型閉じしてプリフォーム10を型空間に収容し、エア導入部材(ブローコア)を下降させることで、プリフォーム10の首部にエア導入部材が当接される。そして、延伸ロッド(縦軸延伸部材)を降下させてプリフォーム10の底部を内面から抑えて、必要に応じて縦軸延伸を行いつつ、エア導入部材からブローエアを供給することで、プリフォーム10を横軸延伸する。これにより、プリフォーム10は、ブローキャビティ型の型空間に密着するように膨出して賦形され、容器にブロー成形される。なお、底型は、ブローキャビティ型の型閉じ前はプリフォーム10の底部と接触しない下方の位置で待機し、型閉前または型閉後に成形位置まで素早く上昇する。
【0049】
(ステップS104:容器取り出し工程)
ブロー成形が終了すると、ブローキャビティ型および底型が型開きされる。これにより、ブロー成形部23から容器が移動可能となる。
続いて、搬送機構26の移送板28が所定角度回転するように移動し、容器が取り出し部24に搬送される。取り出し部24において、容器の首部がネック型27から開放され、容器がブロー成形装置20の外部へ取り出される。
【0050】
以上で、ブロー成形サイクルの一連の工程が終了する。その後、搬送機構26の移送板28を所定角度回転するように移動させることで、上記のS101からS104の各工程が繰り返される。ブロー成形装置20の運転時には、1工程ずつの時間差を有する4組分の容器の製造が並列に実行される。
【0051】
以下、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態の温度調整用金型30は、プリフォーム10の胴部の外周面の一部に臨み、周方向の所定部位を局所的に加熱する一以上の中段型32を備える構成である。本実施形態では、プリフォーム10の低温部位に臨むように中段型32の周方向の取付位置を調整することで、プリフォーム10の周方向の偏温を抑制することができる。
また、偏心容器の成形時には、容器長径側に対応する部位に中段型32が臨むように中段型32の周方向の取付位置を調整することで、プリフォーム10の周方向の温度分布を容器の賦形に適した状態にでき、容器の肉厚分布の改善を図ることもできる。
【0052】
本実施形態では、中段型32の配置されていない領域ではプリフォーム10が加熱されずに空気への放熱で自然冷却される。そのため、プリフォーム10の周方向において加熱を要しない部位が過剰に加熱されることを抑制でき、プリフォーム10の周方向の温度分布を適切に制御しやすくなる。また、周方向全体を加熱する構成と比べると、温度調整用金型30での消費エネルギーを抑制できる。
【0053】
ここで、プリフォーム10の材料がポリエチレン(PE)や高密度ポリエチレン(HDPE)の場合、ブロー成形に適する温度が融点に近い。しかも、これらの材料はPETなどと比べてヒズミ硬化特性がなく、ブロー成形時における肉厚調整が難しいことが知られている。ヒズミ硬化特性とは、ブロープロセスの間、まずプリフォームの最も弱い部分(通常、最も高温の部分)が降伏点に達し、次に弱い部分が伸び始めるという形で、肉厚が均一化するまで、分子配向によりその強度を増す特性をいう。そのため、PEやHDPEのプリフォームをブロー成形する場合には、ブロー前の温度調整が非常に重要となるが、本実施形態によれば、PEやHDPEの容器成形に適したプリフォームの温度調整を容易に行うことができる。
【0054】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0055】
上記実施形態では、中段型32の周方向長さがプリフォーム10の周方向長さで90度の範囲(平面視で四半円)である場合を説明したが、中段型32の周方向長さは適宜変更することができる。例えば、プリフォーム10の周方向長さで45度~180度の範囲(好ましくは60度~120度の範囲)に対応する周方向長さの中段型32を用いてもよい。また、周方向長さが異なる複数種類の中段型32から1以上(例えば1つ~4つ)の中段型32を選択して使用することで、プリフォーム10の周方向の温度分布を調整してもよい。この場合には、周方向長さが異なる複数の中段型32を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、横断面が円形状のプリフォーム10を用いる例を説明したが、横断面が円形以外のプリフォームを用いてもよい。例えば、扁平容器を製造する場合、横断面が略矩形状のプリフォームを用いてもよい。
【0057】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
10…プリフォーム、20…ブロー成形装置、21…射出成形部、22…温度調整部、23…ブロー成形部、30…温度調整用金型、31…上段型、32…中段型、33…下段型

図1
図2
図3
図4
図5