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特許7571288特にブレーキパッドを装備するための摩擦材料ブロック及び関連するブレーキパッド並びに方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】特にブレーキパッドを装備するための摩擦材料ブロック及び関連するブレーキパッド並びに方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 69/02 20060101AFI20241015BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
F16D69/02 C
C09K3/14 520C
C09K3/14 520M
C09K3/14 530D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023517959
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 IB2021058480
(87)【国際公開番号】W WO2022058942
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】102020000021919
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514060514
【氏名又は名称】アイティーティー・イタリア・エス.アール.エル
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン・シコーラ、アグスティン
(72)【発明者】
【氏名】イゾアルディ、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】リナルディ、ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ジェンタ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】トロンボット、フラビオ
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-184524(JP,A)
【文献】特開2006-125618(JP,A)
【文献】特開2016-065163(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163256(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00-71/04
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベストを含まない摩擦材料で作られ摩擦ブロック又は層(3)であって、前記アスベストを含まない摩擦材料は、その構成材料として、無機及び/又は有機繊維、少なくとも結合剤、少なくとも摩擦調整剤又は潤滑剤、及び少なくとも充填材又は研磨材を含む、摩擦ブロック又は層(3)において、前記アスベストを含まない摩擦材料はまた、追加の構成材料又は添加材として、疎水性ワックスを含有し、前記疎水性ワックスの相対量は、前記アスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層が、60分を超える、20+/-5μLの蒸留水によって形成された液滴の摩擦材料内での吸収時間として定義される疎水性を有するように、前記アスベストを含まない摩擦材料の他の構成材料の化学的性質及び量に応じて選ばれることを特徴とする、摩擦ブロック又は層。
【請求項2】
前記疎水性ワックスは、固体粉末の形態であり、110℃よりも高い融点を有し、それぞれ摂氏及びkg/cm2の100のオーダーの大きさの高温及び高圧でワックスの分子が分解を受けないことを特徴とする、請求項1に記載のアスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層。
【請求項3】
前記疎水性ワックスは、ポリエチレンワックス、HDPEワックス、ポリプロピレンワックス、微粉化PEワックス、酸化PEワックス、PTFE変性ポリエチレンワックス、微粉化アミドワックス、微粉化ポリプロピレンワックス、特殊ワックスである、結合ワックス、変性PEワックス又はPTFEテクスチャ粉末から成る群から選ばれることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層。
【請求項4】
前記疎水性ワックスが、前記アスベストを含まない摩擦材料の総量に対して計算して0.5体積%~5体積%から成る量で前記アスベストを含まない摩擦材料中に存在することを特徴とする、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のアスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層。
【請求項5】
前記疎水性ワックスが、1.0体積%~2.0体積%から成る量で前記アスベストを含まない摩擦材料中に存在することを特徴とする、請求項4に記載のアスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層。
【請求項6】
前記アスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層は、車両ブレーキパッド(1)の一体部分として提供されるように設計されることを特徴とする、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載のアスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層。
【請求項7】
摩擦ブロック又は層は、その摩擦相手の表面に対してステッチする傾向を全く又はほとんど有さず、前記摩擦ブロック又は層は、鋼、鉄、又は鋳鉄の金属表面に対して前記アスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層を押し付け、その上で腐食現象を引き起こすことによって前記金属表面に対して電気化学的にステッチされた後に、15ニュートン未満の前記金属表面からの剥離力を示すことを特徴とする、請求項1~のうちのいずれか一項に記載のアスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層。
【請求項8】
鉄、鋼、又は鋳鉄で作られた車両ブレーキディスクと使用時に協働するように設計された車両ブレーキパッド(1)であって、アスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層(3)を含む前記車両ブレーキパッドは、前記車両ブレーキディスクと使用時に動作可能に関連付けられる、車両ブレーキパッドにおいて、前記アスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層は、その成分材料のうちの1つとして、110℃よりも高い融点を有する0.5体積%~5体積%の疎水性ワックスを含有することを特徴とする、車両ブレーキパッド。
【請求項9】
前記疎水性ワックスは、ポリエチレンワックス、HDPEワックス、ポリプロピレンワックス、微粉化PEワックス、酸化PEワックス、PTFE変性ポリエチレンワックス、微粉化アミドワックス、微粉化ポリプロピレンワックス、特殊ワックスである、結合ワックス、変性PEワックス又はPTFEテクスチャ粉末から成る群から選ばれ、そのため、前記車両ブレーキパッドは、スティクションの低減された又はゼロの傾向を有する、請求項に記載の車両ブレーキパッド。
【請求項10】
無機及び/又は有機繊維、少なくとも結合剤、少なくとも摩擦調整剤又は潤滑剤、及び少なくとも充填材又は研磨材をその更なる成分材料として含有するアスベストを含まない摩擦材料における疎水性ワックスの使用であって、前記疎水性ワックスは、110℃よりも高い融点を有し、前記アスベストを含まない摩擦材料の全体積に対して計算して0.5体積%~5体積%から成る量で前記アスベストを含まない摩擦材料中に成分材料のうちの1つとして含有され、そのため、前記アスベストを含まない摩擦材料は、スティクションの低減された又はゼロの傾向を示す、使用。
【請求項11】
関連するブレーキディスクの摩擦面に対してステッチする低減された又はゼロの傾向を有する、即ち、スティクションの低減された又はゼロの傾向を有する車両用のブレーキパッド(1)を製造するための方法であって、前記方法は、
i)-少なくとも無機及び/又は有機繊維、少なくとも結合剤、少なくとも摩擦調整剤又は潤滑剤、及び少なくとも充填材又は研磨材を含むそれぞれの成分材料を共に混合することによって、アスベストを含まない摩擦材料の試験量を調製するステップと、
ii)-ステップi)の前記成分材料と共に混合されるように、ステップi)において、更なる成分材料として所定量の疎水性ワックスを添加するステップと、
iii)-パッドを形成するために、成形型中で共に混合された前記成分材料を加圧及び加熱することによって、前記疎水性ワックスを含有する前記アスベストを含まない摩擦材料の固体ブロック又は層を形成するステップと、
iv)-前記パッドに、20+/-5μLの蒸留水によって形成された液滴のその上での吸収時間を測定することから成る疎水性試験を受けさせるステップと、
v)-異なる所定量の前記疎水性ワックスを使用してステップi)~iv)を繰り返すステップと、
vi)-以前のステップi)~v)によって作り出されたそれらの試験摩擦材料と同一の化学組成を有し、ステップiv)において60分を超える水滴吸収時間を示した前記疎水性ワックスを含有するアスベストを含まない摩擦材料を使用してブレーキパッド(1)を工業的に生産するステップと
を備える、方法。
【請求項12】
関連するブレーキディスクの摩擦面に対してステッチする低減された又はゼロの傾向を有する、即ち、スティクションの低減された又はゼロの傾向を有する車両用のブレーキパッド(1)を製造するための方法であって、前記方法は、
i)-少なくとも無機及び/又は有機繊維、少なくとも結合剤、少なくとも摩擦調整剤又は潤滑剤、及び少なくとも充填材又は研磨材を含むそれぞれの成分材料を共に混合することによって、アスベストを含まない摩擦材料を調製するステップと、
ii)-ステップi)の前記成分材料と共に混合されるように、ステップi)において、更なる成分材料としてある量の疎水性ワックスを添加するステップと、ここで、前記疎水性ワックスは、ポリエチレン(PE)ワックス、高密度PE(HDPE)ワックス、ポリプロピレンワックス、微粉化PEワックス、酸化PEワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)変性ポリエチレンワックス、微粉化アミドワックス、微粉化ポリプロピレンワックス、特殊ワックスである、結合ワックス、変性PEワックス又はPTFEテクスチャ粉末から成る群から選ばれ、前記疎水性ワックスは、前記アスベストを含まない摩擦材料の総量に対して計算して0.5体積%~5体積%から成る量で前記アスベストを含まない摩擦材料中に添加され、
iii)-パッドを形成するために、成形型中で共に混合された前記成分材料を加圧及び加熱することによって、前記疎水性ワックスを含有する前記アスベストを含まない摩擦材料の固体ブロック又は層を形成するステップと
を備える、方法。
【請求項13】
前記疎水性ワックスは、1.0体積%~2.0体積%から成る量で前記アスベストを含まない摩擦材料中に添加されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記疎水性ワックスが、ポリエチレンワックス、HDPEワックス、ポリプロピレンワックス、微粉化PEワックス、酸化PEワックス、PTFE変性ポリエチレンワックス、微粉化アミドワックス、微粉化ポリプロピレンワックス、特殊ワックスである、結合ワックス、変性PEワックス又はPTFEテクスチャ粉末から成る群から選ばれ、前記疎水性ワックスは、前記アスベストを含まない摩擦材料の全体積に対して計算して0.5体積%~5体積%から成る量で前記アスベストを含まない摩擦材料中に含有される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本特許出願は、2020年9月17日に出願されたイタリア特許出願第102020000021919号の優先権を主張し、その開示全体が、参照によって本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般に、摩擦材料で作られた摩擦ブロックに関し、ブロックは、ブレーキパッドを装備するように設計され、それにおいて、摩擦材料は、摩擦ブロックがそれと協働する摩擦相手の表面に対してステッチする傾向、即ち「スティクション」として知られている現象を減少させる又は排除することを可能にする配合を有することができる。本開示は、一般に、ブレーキパッドの摩擦ブロックと、車両ディスクブレーキの表面と協働して車両を制動するように設計された関連するブレーキパッドとに関する。本開示はまた、一般に、関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特に、過酷な動作及び/又は環境条件下、例えば、頻繁なオフロード運転及び/又は泥道若しくは汽水空気若しくは酸性雨にさらされたルート上での運転の下では、これは、使用時に、鋳鉄又は鋼で作られた関連するブレーキディスクへの車両のブレーキパッドのうちの1つ以上の「付着」をもたらし得ることが知られている。これは、一般に、ブレーキディスクに影響を及ぼし、制動中にブレーキパッドの摩擦材料と組み合わさってブレーキパッドのブレーキディスクへの偶発的な接着を引き起こす腐食生成物をもたらす腐食現象に起因し、この接着は、車両ブレーキが作動停止されたときでも一時的に維持される。この接着の現象は、「スティクション(stiction)」という英語の技術用語によって知られており、この用語は、「静的(static)」及び「摩擦(friction)」という用語の縮約及び融合、即ち「静的摩擦(static friction)」という用語に由来する。
【0004】
明らかに、使用時の車両におけるスティクション即ち付着現象の発生は、制動中及びその後のブレーキの解放中の衝撃/歪み、増大するエネルギー消費、及び極端な場合には、車両の故障及び/又はブレーキパッドの早期交換の必要性につながるブレーキパッドの摩擦材料の破損などの様々な欠点を伴う。そのため、スティクション現象は、ブレーキパッドの分野でよく知られており、湿った天候条件にさらされたときに、舗装道路を常に走行している車両にも影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0005】
本開示の目的は、摩擦材料で作られた摩擦ブロック又は層の実施形態を提供することであり、それにおいて、摩擦材料は、摩擦ブロックがそれと協働する摩擦相手の表面に対してステッチする傾向を減少させる又は排除することを可能にする配合を有する。
【0006】
特に、本開示の目的は、そのような摩擦ブロックの実施形態を、鋼又は鋳鉄で作られたブレーキディスクと使用時に協働するように設計されたブレーキパッドの一体部分として、又はブレーキパッドに一体化されたものとして提供することである。
【0007】
本開示は、従って、添付の特許請求の範囲に定義されるように、摩擦ブロックがその摩擦相手の表面に対してステッチする傾向を減少させる又は排除するように配合された摩擦材料で作られた摩擦ブロック又は層の実施形態に関する。
【0008】
一般的に言えば、摩擦ブロック又は層は、車両用のブレーキパッドの一体部分であり、鋼又は鋳鉄で作られたブレーキディスクと使用時に協働するように設計され得るか、又は車両用若しくは任意の他の用途用のクラッチディスクの一体部分であり得るか、のうちのいずれかである。
【0009】
本開示は更に、そのような摩擦ブロック又は層を装備されたか、又はその一体化された構成要素として有するブレーキパッドの実施形態に関する。
【0010】
本開示はまた、関連するブレーキディスクの摩擦面に対してステッチする低減された又はゼロの傾向を有する、即ち、特に湿った天候下でのスティクションの低減された又はゼロの傾向を有する車両用のブレーキパッドを製造するための方法の実施形態に関する。
【0011】
その全体が参照によって本明細書に援用されるEP3507587は、それぞれ車両制動要素及び制動される要素から成る第1の機械的要素と第2の機械的要素との間の接着の物理化学的条件を研究及び決定するための方法を開示しており、この方法は、
-第1の機械的要素を第1の支持体に結合し、第2の機械的要素を第2の支持体に結合するステップと、ここで、第1及び第2の支持体は、互いに対向して位置付けられ、相対的に軸方向に移動可能であり、第2の支持体は、第2の支持体によって覆われず、第1の支持体及びそれに結合された第1の機械的要素に面する第2の支持体の前端と同一平面に配置された第2の機械的要素の第1の面を除いて、第2の機械的要素が第2の支持体内に完全に埋め込まれるように、第1の支持体に向かっており、
-第2の機械的要素を、第2の支持体から液密に突出する絶縁電線に電気的に接続するステップと、
-第1及び第2の機械的要素と第1及び第2の支持体とを備えるスティクションセルを実現するように、第1の機械的要素に対して第2の機械的要素の第1の面を接着させ、次いで第1の所定の力によって押圧し、第2の支持体を第1の支持体に向かって押すステップと、
-第2の機械的要素が作用電極を構成する電気化学セルを形成するように、第1及び第2の機械的要素を、第1及び第2の支持体と共に、少なくとも1つの対電極及び基準電極と共に電解質中に浸漬するステップと、
-絶縁電線、対電極、及び基準電極を電位及び/又は電流発生器に電気的に接続するステップと、
-電位及び/又は電流発生器によって電気化学的試験を実施するステップと、ここにおいて、漸進的に可変の電位が作用電極と基準電極との間に印加され、及び/又は漸進的に可変の電流通路が対電極と作用電極との間に確立され、その作用によって、第2の機械的要素と第1の機械的要素との間に腐食現象が引き起こされ、
-電位/電流発生器を用いて、又は別の機器を用いて、第2の機械的要素と対電極との間の電解質を通過する電流を、印加される電位に応じて検出するステップ、又は逆に、第2の機械的要素と基準電極との間に確立される電位を、電位/電流発生器上で設定される所定の電流に応じて検出するステップと
を備える。
【0012】
このようにして、調査中の車両制動要素(ブレーキパッド)と制動される要素(ブレーキディスク)との間の「スティクション」が、制御された条件下で「人工的」に迅速に得られる。次いで、ブレーキディスクから制動要素を剥離させるのに必要な力が測定され、その値は、発生したスティクション現象の実体の正確な推定を与える。
【0013】
ここで、本開示の内容の一部である特徴を非網羅的且つ非限定的に開示することのみを意図された、その実施のいくつかの実用的な実施例を参照して、及び添付の図面の図を参照して、好ましいが非限定的な実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】異なる摩擦材料に対して、EP3507587において議論されている手順に従って実施された一連の実験の結果を示すグラフである。
図2】本開示の追加の成分(添加材)対象物を含む又は含まない同じ摩擦材料に対して、EP3507587において議論されている手順に従って実施された実験の結果を示すグラフである。
図3】本開示の追加の成分(添加材)対象物を含むか又は含まないかのうちのいずれかである同じ摩擦材料で作られたブレーキパッドを使用して、異なる制動条件下で車両に対して実施された制動実験の結果を示すグラフである。
図4A】同じタイプ及び寸法のブレーキパッドであって、同じ組成を有するが、それぞれ、本開示による追加の成分材料又は「添加材」を組み込んでいない及び組み込んでいる摩擦材料ブロックを設けられたブレーキパッドに対して実施されたAK Master標準試験の比較結果を示す。
図4B】同じタイプ及び寸法のブレーキパッドであって、同じ組成を有するが、それぞれ、本開示による追加の成分材料又は「添加材」を組み込んでいない及び組み込んでいる摩擦材料ブロックを設けられたブレーキパッドに対して実施されたAK Master標準試験の比較結果を示す。
図4C】同じタイプ及び寸法のブレーキパッドであって、同じ組成を有するが、それぞれ、本開示による追加の成分材料又は「添加材」を組み込んでいない及び組み込んでいる摩擦材料ブロックを設けられたブレーキパッドに対して実施されたAK Master標準試験の比較結果を示す。
図5A】同じタイプ及び寸法のブレーキパッドであって、同じ組成を有するが、それぞれ、本開示による追加の成分材料又は「添加材」を組み込んでいない及び組み込んでいる摩擦材料ブロックを設けられたブレーキパッドに対して実施されたAK Master標準試験の比較結果を示す。
図5B】同じタイプ及び寸法のブレーキパッドであって、同じ組成を有するが、それぞれ、本開示による追加の成分材料又は「添加材」を組み込んでいない及び組み込んでいる摩擦材料ブロックを設けられたブレーキパッドに対して実施されたAK Master標準試験の比較結果を示す。
図5C】同じタイプ及び寸法のブレーキパッドであって、同じ組成を有するが、それぞれ、本開示による追加の成分材料又は「添加材」を組み込んでいない及び組み込んでいる摩擦材料ブロックを設けられたブレーキパッドに対して実施されたAK Master標準試験の比較結果を示す。
図6】本開示に従って製造されたブレーキパッドの例証的で非限定的な実施形態を示し、その摩擦材料の疎水性をチェックするためのそれぞれの試験エリアが強調されている。
図7】本開示に従って製造されたブレーキパッドの疎水性を決定するための試験方法の実施の実際の例を示す。
図8】本開示に従って製造されたブレーキパッドの疎水性を決定するための試験方法の実施の実際の例を示す。
図9】本明細書で説明する実施形態による摩擦材料を作る方法を図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
いくつかの実施形態では、特に車両ブレーキパッドの一体部分として提供されるように設計された、アスベストを含まない摩擦材料で作られた摩擦ブロック又は層は、その構成材料として、無機及び/又は有機及び/又は金属繊維、少なくとも結合剤、少なくとも摩擦調整剤又は潤滑剤、並びに少なくとも充填材又は研磨材を備える。
【0016】
上記の一般的なカテゴリーに属する材料は、ブレーキ技術においてよく知られており、耐摩耗性、制動中の安定した摩擦係数、フェード、及び制動流体の限定された使用のような特定の特性を得るために、周知の基準に従って選ばれる。
【0017】
繊維成分の例証的な実施形態は、ガラス繊維、ロックウール、珪灰石、海泡石、アタパルジャイトなどの無機繊維、並びに/又はステンレス鋼及び亜鉛のような金属繊維、並びに炭素繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維、フェノール繊維、セルロース及びアクリル繊維若しくはPAN(ポリアクリロニトリル)などの有機繊維であり得るが、これらに限定されない。この繊維質基材は、短繊維又は粉末の形態で利用することができる。
【0018】
当該技術分野で知られている多数の材料を、有機又は無機充填材として使用することができる。例証的な実施形態は、炭酸カルシウム沈殿物、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、フッ化カルシウム、消石灰、滑石、三酸化モリブデン、ケイ酸ジルコニウム、酸化鉄、雲母、硫化鉄、二酸化ケイ素、バーミキュライト、ゴム粉末(ゴム粉末及び顆粒)、ニトリルゴム粉末(加硫生成物)、金属粉末(銅及びその合金を除く)、アクリルゴム粉末(加硫生成物)を含むが、これらに限定されない。これらの材料は、それらだけでも、又はそれらのうちの2つ以上を組み合わせても使用することができる。そのような充填材の充填量は、摩擦材料の全組成物に基づいて、好ましくは2体積%~40体積%から成る。
【0019】
適切な結合剤の例証的な実施形態は、フェノール樹脂、メラミン樹脂、及びエポキシ樹脂;エポキシ変性フェノール樹脂、油変性フェノール樹脂、アルキルベンゼン変性フェノール樹脂、及びアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などの様々な変性フェノール樹脂を含む、これらに限定されない。これらの化合物のうちのいずれか1つ又はそれらのうちの2つ以上の組み合わせが用いられ、使用され得る。結合剤は、摩擦材料の全組成物に基づいて、好ましくは2体積%~30体積%の量で含まれる。
【0020】
摩擦調整剤の例証的な実施形態は、0体積%~10体積%(又は約0体積%~約10体積%)の固体潤滑剤、例えば、SnS及びSnS2のような硫化スズ、カシューナッツ粉末、ゴム粉末(粉砕トレッドゴム粉末)、様々な非加硫ゴム粒子、様々な加硫ゴム粒子、無機充填材、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、バーミキュライト、及び/又は雲母、研磨材、例えば、炭化ケイ素、アルミナ、ケイ酸ジルコニウム、潤滑剤、例えば、二硫化モリブデン、上記で特定されたようなスズの硫化物、硫化亜鉛、鉄及び非鉄硫化物、銅及び銅合金以外の金属粒子、及び/又は上記の全ての組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。
【0021】
いくつかの実施形態では、組成物中にグラファイト及び/又はコークスを含むことも有利であり得る。グラファイト(及び/又はコークス)は、適切に選択された量で添加することができ、それは、好ましくは、摩擦材料の全組成物の2体積%~15体積%から成ることができる。本開示が適用される摩擦材料の実施形態は、非アスベスト有機(NAO)摩擦材料として知られているものを含む。
【0022】
黒鉛(及び/又はコークス)は、適切に選択された量で添加することができ、それは、摩擦材料の全組成物の2体積%~15体積%(又は約2体積%~約15体積%)から成ることができる。
【0023】
繊維は、短繊維又は粉末の形態で利用することができる。いくつかの実施形態では、繊維は、0.5~1.5(又は約0.5~約1.5)mmの総繊維長及び40~150ミクロンの繊維直径を有することができるが、特定の寸法は限定されない。
【0024】
充填材の量は、摩擦材料の全組成物に基づいて、2体積%~40体積%から成ることができる。
【0025】
結合剤は、摩擦材料の全組成物に基づいて、2体積%~30体積%の量で含まれ得る。
【0026】
適切な研磨材の例証的な実施形態は、弱い研磨材、中程度の研磨材、及び強力な研磨材に細分され得、流動素材(flowing materials)のうちの任意の1つ以上から成り得るが、以下のリストは、いかなる形でも網羅的又は限定的であるとは考えられない:
・弱い研磨材(モース1~3):滑石、水酸化カルシウム、チタン酸カリウム、雲母、カオリン、
・中程度の研磨材(モース4~6):硫酸バリウム、酸化マグネシウム、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、珪灰石、ケイ酸カルシウム、酸化鉄、シリカ、クロム鉄鉱、酸化亜鉛、
・強力な研磨材(モース7~9):炭化ケイ素、ジルコニウム砂(酸化ジルコニウム)、ケイ酸ジルコニウム、ジルコニア、コランダム、アルミナ、ムライト。
【0027】
研磨材と潤滑剤との比は、3~10である。いくつかの実施形態では、この比は、6(又は約6)に等しくあり得る。
【0028】
本開示による摩擦材料組成物は、アラミド繊維を備え得、結合剤とアラミド繊維との間の比は、0.5体積%~8体積%(又は約0.5体積%~約8体積%)である。いくつかの実施形態では、この比は、5(又は約5)に等しくあり得る。
【0029】
本開示の実施形態によると、アスベストを含まない摩擦材料はまた、追加の構成材料又は添加材として、疎水性ワックスを含有し、上述の他の材料成分に対する疎水性ワックスの相対量は、アスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層が、形成後に、本明細書で以下に説明する方法によって、60分を超える、20+/-5μLの蒸留水によって形成された液滴の摩擦材料内での吸収時間として定義される疎水性を有するように、アスベストを含まない摩擦材料の他の構成材料の化学的性質及び量に応じて選ばれる。
【0030】
本開示の実施形態によると、アスベストを含まない摩擦材料は、追加の構成材料又は添加材として、疎水性ワックスを含有し、疎水性ワックスは、好ましくは固体粉末の形態であり、110℃よりも高い融点を有し、高温及び高圧で化学的に安定している。
【0031】
化学的に安定しているとは、ワックスの分子が分解を受けないことを意味する。「高温及び高圧」とは、それぞれ、摂氏及びkg/cm2の100のオーダーの大きさの温度及び圧力を意味する。
【0032】
本開示の実施形態によると、アスベストを含まない摩擦材料は、追加の構成材料又は添加材として、ポリエチレン(PE)ワックス、高密度PE(HDPE)ワックス、ポリプロピレンワックス、微粉化PEワックス、酸化PEワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)変性ポリエチレンワックス、微粉化アミドワックス、微粉化ポリプロピレンワックス、特殊ワックス(結合ワックス、変性PEワックス、PTFEテクスチャ粉末)から成る非限定的な群から選ばれる疎水性ワックスを含有する。
【0033】
疎水性ワックスは、アスベストを含まない摩擦材料の総量に対して計算して0.5体積%~5体積%(又は約0.5体積%~約5体積%)から成る量でアスベストを含まない摩擦材料中に存在することができる。いくつかの実施形態では、ワックスは、1.0体積%~2.0体積%(又は約1.0体積%~約2.0体積%)から成る量であり得る。
【0034】
前述の可能な実施形態のうちのいずれによるアスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層も、アスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層がブレーキパッドの一体部分である/ブレーキパッド中に含まれるとき、その摩擦相手、典型的には車両ブレーキディスク、の表面に対して使用時にステッチする傾向を全く又はほとんど有さない場合がある。特に、本開示で詳細に説明する試験の実施形態によると、摩擦ブロック又は層は、金属表面に対してアスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層を押し付け、次いで、電気化学的腐食現象がその上で引き起こされることによって、鋼、鉄、又は鋳鉄の金属表面に対して電気化学的にステッチされる。この試験によると、本開示によるアスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層の実施形態のうちのいずれも、15(又は約15)ニュートン未満の金属表面からの剥離力を示すことができ、スティクションの低い又はゼロの傾向を示す。
【0035】
アスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層は、鉄、鋼、又は鋳鉄で作られた車両ブレーキディスクと使用時に協働するように設計された車両ブレーキパッド中に組み込むことができ、車両ブレーキパッドは、車両ブレーキディスクと使用時に動作可能に関連付けられるが、特定の材料は限定されない。
【0036】
アスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層が、その成分材料として、110℃よりも高い融点を有する0.5体積%~5体積%の疎水性ワックスを含有するとき、車両ブレーキパッド及び車両ブレーキディスクから成る結果として得られる摩擦相手は、使用時にスティクションを受けないか、又は2つの摩擦相手が15ニュートン未満などの低い力で容易に分離されることを可能にする非常に限定されたスティクション現象を受ける。
【0037】
疎水性ワックスは、車両ブレーキパッドが特に湿った天候下でのスティクションの低減された又はゼロの傾向を有するような量で、ポリエチレンワックス、HDPEワックス、ポリプロピレンワックス、微粉化PEワックス、酸化PEワックス、PTFE変性ポリエチレンワックス、微粉化アミドワックス、微粉化ポリプロピレンワックス、特殊ワックス(結合ワックス、変性PEワックス、PTFEテクスチャ粉末)から成る群から選ばれる。
【0038】
本開示はまた、無機及び/又は有機及び/又は金属繊維、少なくとも結合剤、少なくとも摩擦調整剤又は潤滑剤、及び少なくとも充填材又は研磨材をその更なる成分材料として含有するアスベストを含まない摩擦材料における疎水性ワックスの使用に関し、疎水性ワックスは、アスベストを含まない摩擦材料の全体積に対して計算して0.5体積%~5体積%(又は約0.5体積%~約5体積%)から成る量でアスベストを含まない摩擦材料中に含有され、そのため、アスベストを含まない摩擦材料は、特に湿った天候下でのスティクションの低減された又はゼロの傾向を示す。
【0039】
本開示はまた、関連するブレーキディスクの摩擦面に対してステッチする低減された又はゼロの傾向を有する、即ち、特に湿った天候下でのスティクションの低減された又はゼロの傾向を有する車両用のブレーキパッドを製造するための方法に関する。本方法は、
i)-無機及び/又は有機及び/又は金属繊維、少なくとも結合剤、少なくとも摩擦調整剤又は潤滑剤、及び少なくとも充填材又は研磨材を含むそれぞれの成分材料を共に混合することによって、特にNAO類のアスベストを含まない摩擦材料の試験量を調製するステップと、
ii)-ステップi)の成分材料と共に混合されるように、ステップi)において、更なる成分材料として所定量の疎水性ワックスを添加するステップと、
iii)-パッドを形成するために、成形型中で共に混合された成分材料を加圧及び加熱することによって、疎水性ワックスを含有するアスベストを含まない摩擦材料の固体ブロック又は層を形成するステップと、
iv)-パッドに、20+/-5μLの蒸留水によって形成された液滴のその上での吸収時間を測定することから成る疎水性試験を受けさせるステップと、
v)-異なる所定量の疎水性ワックスを使用してステップi)~iv)を繰り返すステップと、
vi)-以前のステップi)~v)によって作り出されたそれらの試験摩擦材料と同一の化学組成を有し、ステップiv)において60分を超える水滴吸収時間を示した疎水性ワックスを含有するアスベストを含まない摩擦材料を使用してブレーキパッドを工業的に生産するステップと
を備える。
【0040】
本開示は更に、関連するブレーキディスクの摩擦面に対するステッチを低減された又はゼロの傾向を有する、即ち、特に湿った天候下でのスティクションの低減された又はゼロの傾向を有する車両用のブレーキパッドを製造するための方法に関し、本方法は、
i)-無機及び/又は有機及び/又は金属繊維、少なくとも結合剤、少なくとも摩擦調整剤又は潤滑剤、及び少なくとも充填材又は研磨材を含むそれぞれの成分材料を共に混合することによって、特にNAO類のアスベストを含まない摩擦材料を調製するステップと、
ii)-ステップi)の成分材料と共に混合されるように、ステップi)において、更なる成分材料としてある量の疎水性ワックスを添加するステップと、ここで、疎水性ワックスは、ポリエチレン(PE)ワックス、高密度PE(HDPE)ワックス、ポリプロピレンワックス、微粉化PEワックス、酸化PEワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)変性ポリエチレンワックス、微粉化アミドワックス、微粉化ポリプロピレンワックス、特殊ワックス(結合ワックス、変性PEワックス、PTFEテクスチャ粉末)から成る群から選ばれ、疎水性ワックスは、アスベストを含まない摩擦材料の総量に対して計算して0.5体積%~5体積%(又は約0.5体積%~約5体積%)から成る量で、好ましくは1.0体積%~2.0体積%(又は約1.0体積%~約2.0体積%)から成る量でアスベストを含まない摩擦材料中に添加され、
iii)-パッドを形成するために、成形型中で共に混合された成分材料を加圧及び加熱することによって、疎水性ワックスを含有するアスベストを含まない摩擦材料の固体ブロック又は層を形成するステップと
を備える、方法。
【0041】
本開示に従って製造されたブレーキパッドの可能な非限定的な実施形態は、図6に概略的に示している。
【0042】
図6は、金属支持体又は「バックプレート」2と、硬化された摩擦材料の少なくとも1つのパッド又はブロック又は層3とを備えるブレーキパッド1の上からの平面図を示す。バックプレートは、鉄系材料、典型的には鉄又は鋼で作られるが、時効硬化Al合金のような軽合金で作ることもできる。
【0043】
示す非限定的な例では、ブレーキパッド1は、並んで配置され、バックプレート2と一体化され、例えばバックプレート2上に共成形されるか、又は硬化後にバックプレート2に付着される摩擦材料の2つのブロック又はパッド3を有する。当然ながら、いくつかの実施形態では、バックプレートと一体化され、ブレーキディスクのような制動される要素に使用時に面するバックプレート2の表面4のほぼ全体を覆うのに十分な大きさの摩擦材料の1つの単一のブロック又はパッド(又は層)を有することが可能であり得、これは知られており、簡単にするために示していない。
【0044】
図6では、ブレーキパッド1は、小さい円によって強調され、10~15の番号が付けられたそれぞれの試験点と共に示している。少なくとも2つの試験点、即ち点10、11は、ブレーキパッド1の中央部分の近く又は中央部分に配置され、その一方で、残りの試験点は、摩擦材料の2つのブロック又はパッド3の両方の上に、好ましくは、図6において点線のオーバルとして強調されたブロック又はパッド3のそれぞれの対向する領域16の近く又は領域16に均等に分散される。
【0045】
点10~15は、摩擦材料のブロック又はパッド3内の蒸留水の液滴の吸収時間を試験するために、本明細書で以下により詳細に説明するように、本出願人の技術者らによって開発された疎水性試験において使用されるが、それは、この測定が、見受けられるように、ブレーキパッド1がスティクション現象を受ける傾向、即ちブレーキパッドの摩擦相手の表面、即ちブレーキディスクの摩擦面に対して使用時にステッチする傾向に関連し得るからである。
【0046】
図7は、説明するように生産され、図6にのみ概略的に示すブレーキパッド1に実質的に対応する実際のブレーキパッドの写真を示し、用いられた試験点は、小さい円として示し、1~6の番号が付けられている。
【0047】
図8は、実施例においてより詳細に見受けられるように、疎水性試験の実行中の図7のブレーキパッドの写真である。
【0048】
図9は、本明細書で説明する実施形態による摩擦材料を作る方法を図示するフローチャートである。上記で簡潔に開示した方法の様々なステップは、順番に配置されたブロックとして示し、各ステップで何が起こるかの説明は、それぞれのブロック内に挿入される。
【0049】
ここで、本開示は、以下の非限定的な実行実施例の内容によって完成されるであろう。
例1
【0050】
摩擦材料の異なる組成物が調製され、これらの摩擦材料は全てが、NAO Cuを含まないタイプであり、それらの全てはアスベストを含まない摩擦材料である。
【0051】
調製された摩擦材料の一般的な包括的組成が表1に与えられるが、示す構成材料は、異なる組み合わせで共に混合され得る。
表1
【0052】
【表1】
【0053】
表1では、弱い研磨材、中程度の研磨材、及び強力な研磨材について、1つ以上の材料が以下に示すように選ばれた:
・弱い研磨材(モース1~3):滑石、水酸化カルシウム、チタン酸カリウム、雲母、カオリン、
・中程度の研磨材(モース4~6):硫酸バリウム、酸化マグネシウム、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、珪灰石、ケイ酸カルシウム、酸化鉄、シリカ、クロム鉄鉱、酸化亜鉛、
・強力な研磨材(モース7~9):炭化ケイ素、ジルコニウム砂(酸化ジルコニウム)、ケイ酸ジルコニウム、ジルコニア、コランダム、アルミナ、ムライト。
【0054】
表1に列挙された一般的な有効な組成物から開始され、摩擦材料組成物が試験量で調製され、パッド中に成形され、その内容が参照によって全体として本明細書に援用されるEP3507587に記載されているようなスティクション試験を受ける。
【0055】
試験結果は、市販のブレーキディスクの断片から検査中の摩擦材料パッドを剥離させるのに必要な力に関して、図1のグラフに示す。
【0056】
摩擦材料組成物#4は、WO2019/171325に記載されているようなクリープグローン現象に対抗するための疎水性添加材を含有する。摩擦材料#2は、スティクション現象が実質的にないことが知られている既知の組成物に対応する。組成物#1は、疎水性ワックスを含有する。最後に、組成物#3は、既知の組成物に対応し、スティクション現象を実質的に受けることが知られている。
【0057】
試験された疎水性ワックスは、以下の非限定的且つ非網羅的なリストに含まれる:
ポリエチレンワックス
HDPEワックス
ポリプロピレンワックス
PEワックス微粉化
PEワックス酸化
PTFE変性ポリエチレンワックス
微粉化アミドワックス
微粉化ポリプロピレンワックス
特殊ワックス(結合ワックス、変性PEワックス、PTFEテクスチャ粉末)
【0058】
見受けられるように、疎水性ワックスを含有する全ての組成物(異なる疎水性ワックスについての結果は、完全に重ね合わせ可能であった)は、15ニュートン未満の剥離力を提示し、それは、低いスティクションリスクに対応し、一般には10未満でさえあり、それは、スティクションのリスクがほとんどゼロであることを意味する。後で説明するように、自動車に取り付けられ、制動作用を受ける実際のブレーキパッドに対して実施された更なる試験によって、15~30から成る剥離力の値は、スティクションが特定の及び/又は厳しい環境条件(即ち、湿度、温度、汚染物質、塩・・・)及びブレーキダイナミクス条件(高温クランプ、等)下で発生し得るという意味で、実際のスティクションリスクに対応することが証明されている。30を超える値は、それほど厳しくない若しくは特定の環境及び/又はブレーキダイナミクス条件下で確実に発生する厳しいスティクションに対応する。
例2
【0059】
更なる摩擦材料組成物が、以下の表2に示すように調製された。
【0060】
表2の材料#1は、表1の材料#1と同じであり、2.0体積%のポリエチレンワックスを含有し、本明細書において以下で「組成物W」とも呼ばれ、その一方で、表2の材料#5は、材料#1の組成物と同一であるが、ワックスを含まない組成物に対応し、中程度の研磨材の含有量は、補償するために2体積%だけ増大している。
表2
【0061】
【表2】
【0062】
同一のブレーキパッドを形成するために、表2の材料#1及び#5が同一の金属基板/支持体上に成形され、従来の方法で硬化された。その唯一の違いは、組成物#5が疎水性ワックスを含有せず、参照として使用されることであり、その一方で、試験下の対応する組成物Wは、対応する量の中程度の研磨材の代わりに、2.0体積%の市販のポリエチレンワックスを含有する。
【0063】
ブレーキパッドの加圧は、60~200℃の温度で、150~1800kg/cm2の圧力で、3~10分の持続時間にわたって実行されたか、さもなければ、ダイ内で混合を予備成形し、その後、130~180℃の温度で、150~500kg/cm2(14.7~49MPa)の圧力で、3~10分の持続時間にわたって加圧した。
【0064】
結果として得られたプレス物品は、典型的には、150~400℃の10分~10時間にわたる熱処理によって後硬化され、次いで、スプレー塗装又は粉体塗装され、キルン乾燥され、ことによると必要に応じて機械加工されて、最終製品が生産される。
【0065】
各単一のパッドの有効制動面積は、26.8cm2である。
例3
【0066】
摩擦材料組成物#5及びWを用いて得られたブレーキパッドは、以下の試験を受けた:
疎水性試験(落水吸収試験)
試験サンプルを構成する各ブレーキパッドに対して、以下の操作が実行された:
・ブレーキパッドの隆起した表面(ブレーキディスクと接触するように意図された表面)を吹き飛ばして洗浄する、
・試料を105℃で2時間にわたって乾燥させる、
・サンプルを10~30℃の温度まで冷却する、
・20+/-5μLの蒸留水をブレーキパッドの同じ点に適用する、
・完全な吸収に必要とされる時間期間を測定する。
【0067】
成形された摩擦材料の可能な異方性とは無関係に、信頼性の高い測定値を得るために、試験は、ブレーキパッドの複数の点、例えば、図6に概略的に示すような点10~15上で実施される。その上、図7を参照すると、分で表される疎水性の総合値は、異なる試験点に対応する測定値間の単なる算術平均値として計算されるのではなく、図7にも図式化されているように、以下のようにして計算される:
・データ1:点1と2との間の平均数である、
・データ2:点3と4との間の平均数である、
・データ3:データ1とデータ2との間の平均数である、
平均吸収時間:点5、点6における測定値とデータ3の値との間の平均として与えられる。
【0068】
結果を表3に報告する:
表3
【0069】
【表3】
【0070】
図8は、試験の瞬間を示し、蒸留水の液滴が、ブレーキパッド摩擦材料ブロック上に注がれている。見受けられるように、液滴は、摩擦材料ブロック又はパッドの表面とある角度を形成し、その測定値は、通常、疎水性についての測定単位として扱われる。しかしながら、この場合、表面の疎水性ではなく、摩擦材料ブロック又はパッド全体の疎水性が測定されることになり、そのため、「従来の」測定ユニットは不適切になるであろう。それ故に、上記で詳細に説明した試験が開発され、簡単に実施され、信頼性が高いことが証明された。
例4
【0071】
摩擦材料組成物#5及びWを用いて得られたいくつかのブレーキパッドは、EP3507587によるスティクション試験を受けた。得られた結果は、図2及び以下の表4に示す:
表4
【0072】
【表4】
【0073】
見受けられるように、試験結果は、図1に報告したものと完全に一致している。特定の組成物への2%の疎水性ワックスの単なる添加は、剥離力を21から13にし、スティクションリスクの状態から非常に低いリスクの状態への移行を示す。
【0074】
簡単にするために詳細には報告していない更なる実験は、図1に示すように、より高い若しくはより低い量のワックスを添加すること、又はワックスのタイプを変化させることが、剥離力値を10未満に低下させることを可能にすることを示した。
例5
【0075】
摩擦材料組成物#5及びWを用いて得られたいくつかのブレーキパッドは、以下のプロトコルに従って実施される車両試験を受けた:
・車両に新しいディスク及びパッドを設置する、
・50km/hから0km/hまでの10回のブレーキ停止適用を伴うベディングを行った、
・各ホイールに2リットルの水を噴霧し、噴霧中にホイールを回転させる、
・6回の夜間駐車後、トルクレンチでトルクを測定する、
・ブレーキパッド及びロータを交換せずに、都市交通において50回のブレーキ適用(50km/hから0km/hまで)を実行する、
・点4及び5を繰り返し、次いで、都市交通におけるリカバリーベディングを実行し、ディスク表面に腐食がないことを検証する。
【0076】
トルクレンチを用いたトルク検証の結果を図3に報告しており、Nm(1メートル当たりのニュートン)で表している。
【0077】
見受けられるように、異なる実験におけるランダムな変動を考慮しても、組成物中に疎水性ワックスを含有する摩擦材料ブロック又はパッドを設けられたブレーキパッド上で測定されたトルクの値は、同じ組成物であるがワックスを含まない摩擦材料ブロックを有するブレーキパッドの値よりも劇的に低い。
例6
【0078】
摩擦材料組成物#5及びWを用いて得られたいくつかのブレーキパッドは、SAE J2522規格による様々な標準AK-Master試験を受けた。
【0079】
実行された試験の概要及び重要なチャートを、ワックスを含まない摩擦材料で作られたブレーキパッドについては図4A、B、Cに、同じ組成であるが2%の疎水性ワックスを含む摩擦材料で作られたブレーキパッドについては図5A、B、Cに示す。
【0080】
直ちに認識することができるように、疎水性ワックスを含むブレーキパッドと疎水性ワックスを含まないブレーキパッドの両方は、同様の制動挙動を示す。これは、標準的な摩擦材料への疎水性ワックスの添加がその制動性能を損なわないことの確認である。
【0081】
ブレーキパッド及びブレーキディスクの摩耗も評価し、AK-Master試験の前後の各成分の重量の差として表した。得られた結果は、以下の表5及び6に報告する。
表5-ワックスなし
【0082】
【表5】
表6-ワックス
【0083】
【表6】
【0084】
見受けられるように、疎水性ワックスを含有する摩擦材料で製造されたブレーキパッドの摩耗は大幅に低減されるが、ディスクの摩耗は、たとえより大きくても、ディスクの質量がかなりより大きいことに起因して、それほど大きくはない。
結論
【0085】
上記の実施例及び開示から、任意の可能な摩擦材料組成物において、本明細書で開示したような疎水性ワックスのうちの1つの低減された量の単なる添加でさえ、同じであるが疎水性ワックスを含有しない摩擦材料組成物と比較したときに、スティクションの傾向を常に低減又は排除することが明らかである。
【0086】
参照によってその全体が本明細書に援用されるWO2019/171325によるもののような、ワックスとは異なる疎水性添加材を含有する摩擦材料は、一般に、スティクションのより低い傾向を有するが、特に、添加材が、使用時に(いかなる添加材もなしで)激しいスティクションを示す摩擦材料と共に使用されるとき、スティクションのリスクをかなりより低くするには十分ではない。
【0087】
シロキサンで被覆されたシリカ粉末は、いずれの疎水性ワックスとも化学的に非相溶性ではないので、2つの添加材(クリープグローン及びスティクションに対する)は、同じ摩擦材料組成物中で共に用いられ得る。
【0088】
従って、本開示の全ての目的が果たされる。
ある特定の専門用語
【0089】
ある特定の制動デバイス、システム、及び方法を、ある特定の実例的な実施形態の文脈で開示しているが、本開示の範囲は、具体的に開示した実施形態を超えて、他の代替の実施形態及び/又は実施形態の使用、並びにそれらのある特定の修正及び均等物にまで及ぶことが当業者によって理解されるであろう。任意の構造体との使用は、明らかに本発明の範囲内である。開示した実施形態の様々な特徴及び態様は、アセンブリの様々なモードを形成するために、互いに組み合わせるか、又は互いに置換することができる。本開示の範囲は、本明細書で説明した特定の開示した実施形態によって限定されるべきではない。
【0090】
別個の実装形態の文脈において本開示で説明するある特定の特徴はまた、単一の実装形態において組み合わせて実装することができる。逆に、単一の実装形態の文脈で説明する様々な特徴はまた、複数の実装形態において別個に、又は任意の適切な部分組み合わせで実装することができる。その上、特徴は、ある特定の組み合わせで作用するものとして上記で説明し得るが、特許請求される組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によっては、その組み合わせから削除され得、その組み合わせは、任意の部分組み合わせ又は任意の部分組み合わせの変形として特許請求され得る。
【0091】
「することができる(can)」、「することができる(could)」、「し得る(might)」、又は「し得る(may)」などの条件付き言語は、別段に明記されていない限り、又は使用されるような文脈内で別段に理解されない限り、一般に、ある特定の実施形態がある特定の特徴、要素、及び/又はステップを含むか、又は含まないことを伝えることを意図される。このことから、そのような条件付き言語は、一般に、特徴、要素、及び/又はステップが1つ以上の実施形態のために何らかの形で必要とされることを暗示することを意図されない。
【0092】
「X、Y、及びZのうちの少なくとも1つ」という句などの接続言語は、別段に明記されていない限り、項目、用語、等がX、Y、又はZのうちのいずれかであり得ることを伝えるために一般に使用されるような文脈を用いて別様に理解される。このことから、そのような接続言語は、一般に、ある特定の実施形態がXのうちの少なくとも1つ、Yのうちの少なくとも1つ、及びZのうちの少なくとも1つの存在を要求することを暗示することを意図されない。
【0093】
別段に記載されていない限り、本明細書で使用される「およそ(approximately)」、「約(about)」、及び「実質的に(substantially)」という用語は、依然として所望の機能を実行するか、又は所望の結果を達成する、記載した量に近い量を表す。例えば、いくつかの実施形態では、文脈が指図し得るように、「およそ(approximately)」、「約(about)」、及び「実質的に(substantially)」という用語は、記載した量の10%以下の範囲内の量を指し得る。本明細書で使用される「一般に(generally)」という用語は、特定の値、量、又は特性を主に含むか、又はそれに向かう傾向がある値、量、又は特性を表す。一例として、ある特定の実施形態では、文脈が指示し得るように、「略平行(generally parallel)」という用語は、20度以下だけ正確な平行から逸脱するものを指すことができる。
【0094】
いくつかの実施形態を、添付の図面に関連して説明してきた。図は一定の縮尺であるが、示しているもの以外の寸法及び比率が企図され、開示した発明の範囲内にあるので、そのような縮尺は限定的であるべきではない。距離、角度、等は、単に例示的なものであり、必ずしも例示したデバイスの実際の寸法及びレイアウトとの正確な関係を有するものではない。構成要素は、追加、除去、及び/又は再配置することができる。更に、様々な実施形態に関連する任意の特定の特徴、態様、方法、特質、特性、品質、属性、要素などの本明細書の開示は、本明細書に記載した全ての他の実施形態において使用することができる。加えて、本明細書で説明した任意の方法は、列挙されるステップを実行するのに適した任意のデバイスを使用して実施され得ることが認識されるであろう。
要約
【0095】
制動デバイス、システム、及び方法の様々な例示的な実施形態を開示してきた。機械、システム、及び方法は、それらの実施形態の文脈で開示しているが、本開示は、具体的に開示した実施形態を超えて、他の代替の実施形態及び/又は実施形態の他の使用、並びにそれらのある特定の修正及び均等物にまで及ぶ。本開示は、開示した実施形態の様々な特徴及び態様を互いに組み合わせるか、又は互いに置換することができることを明示的に企図する。それ故に、本開示の範囲は、上記で説明した特定の開示した実施形態によって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物の全範囲を公正に読むことによってのみ決定されるべきである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] アスベストを含まない摩擦材料で作られ、特に車両ブレーキパッド(1)の一体部分として提供されるように設計された摩擦ブロック又は層(3)であって、前記アスベストを含まない摩擦材料は、その構成材料として、無機及び/又は有機繊維、少なくとも結合剤、少なくとも摩擦調整剤又は潤滑剤、及び少なくとも充填材又は研磨材を含む、摩擦ブロック又は層(3)において、前記アスベストを含まない摩擦材料はまた、追加の構成材料又は添加材として、疎水性ワックスを含有し、その相対量は、前記アスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層が、60分を超える、20+/-5μLの蒸留水によって形成された液滴の摩擦材料内での吸収時間として定義される疎水性を有するように、前記アスベストを含まない摩擦材料の他の構成材料の化学的性質及び量に応じて選ばれることを特徴とする、摩擦ブロック又は層。
[2] 前記疎水性ワックスは、固体粉末の形態であり、110℃よりも高い融点を有し、それぞれ摂氏及びkg/cm 2 の100のオーダーの大きさの高温及び高圧で化学的に安定していることを特徴とする、[1]に記載のアスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層。
[3] 前記疎水性ワックスは、ポリエチレンワックス、HDPEワックス、ポリプロピレンワックス、微粉化PEワックス、酸化PEワックス、PTFE変性ポリエチレンワックス、微粉化アミドワックス、微粉化ポリプロピレンワックス、特殊ワックス(結合ワックス、変性PEワックス、PTFEテクスチャ粉末)から成る群から選ばれることを特徴とする、[1]又は[2]に記載のアスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層。
[4] 前記疎水性ワックスが、前記アスベストを含まない摩擦材料の総量に対して計算して0.5体積%~5体積%から成る量で、好ましくは1.0体積%~2.0体積%から成る量で前記アスベストを含まない摩擦材料中に存在することを特徴とする、[1]~[3]のうちのいずれか一項に記載のアスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層。
[5] 摩擦ブロック又は層は、その摩擦相手の表面に対してステッチする傾向を全く又はほとんど有さず、前記摩擦ブロック又は層は、鋼、鉄、又は鋳鉄の金属表面に対して前記アスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層を押し付け、その上で腐食現象を引き起こすことによって前記金属表面に対して電気化学的にステッチされた後に、15ニュートン未満の前記金属表面からの剥離力を示すことを特徴とする、[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載のアスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層。
[6] 鉄、鋼、又は鋳鉄で作られた車両ブレーキディスクと使用時に協働するように設計された車両ブレーキパッド(1)であって、アスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層(3)を含む前記車両ブレーキパッドは、前記車両ブレーキディスクと使用時に動作可能に関連付けられる、車両ブレーキパッドにおいて、前記アスベストを含まない摩擦材料の摩擦ブロック又は層は、その成分材料のうちの1つとして、110℃よりも高い融点を有する0.5体積%~5体積%の疎水性ワックスを含有することを特徴とする、車両ブレーキパッド。
[7] 前記疎水性ワックスは、ポリエチレンワックス、HDPEワックス、ポリプロピレンワックス、微粉化PEワックス、酸化PEワックス、PTFE変性ポリエチレンワックス、微粉化アミドワックス、微粉化ポリプロピレンワックス、特殊ワックス(結合ワックス、変性PEワックス、PTFEテクスチャ粉末)から成る群から選ばれ、そのため、前記車両ブレーキパッドは、特に湿った天候下でのスティクションの低減された又はゼロの傾向を有する、[6]に記載の車両ブレーキパッド。
[8] 無機及び/又は有機繊維、少なくとも結合剤、少なくとも摩擦調整剤又は潤滑剤、及び少なくとも充填材又は研磨材をその更なる成分材料として含有するアスベストを含まない摩擦材料における疎水性ワックスの使用であって、前記疎水性ワックスは、前記アスベストを含まない摩擦材料の全体積に対して計算して0.5体積%~5体積%から成る量で前記アスベストを含まない摩擦材料中に含有され、そのため、前記アスベストを含まない摩擦材料は、特に湿った天候下でのスティクションの低減された又はゼロの傾向を示す、使用。
[9] 関連するブレーキディスクの摩擦面に対してステッチする低減された又はゼロの傾向を有する、即ち、特に湿った天候下でのスティクションの低減された又はゼロの傾向を有する車両用のブレーキパッド(1)を製造するための方法であって、前記方法は、
i)-少なくとも無機及び/又は有機繊維、少なくとも結合剤、少なくとも摩擦調整剤又は潤滑剤、及び少なくとも充填材又は研磨材を含むそれぞれの成分材料を共に混合することによって、特にNAO類のアスベストを含まない摩擦材料の試験量を調製するステップと、
ii)-ステップi)の前記成分材料と共に混合されるように、ステップi)において、更なる成分材料として所定量の疎水性ワックスを添加するステップと、
iii)-パッドを形成するために、成形型中で共に混合された前記成分材料を加圧及び加熱することによって、前記疎水性ワックスを含有する前記アスベストを含まない摩擦材料の固体ブロック又は層を形成するステップと、
iv)-前記パッドに、20+/-5μLの蒸留水によって形成された液滴のその上での吸収時間を測定することから成る疎水性試験を受けさせるステップと、
v)-異なる所定量の前記疎水性ワックスを使用してステップi)~iv)を繰り返すステップと、
vi)-以前のステップi)~v)によって作り出されたそれらの試験摩擦材料と同一の化学組成を有し、ステップiv)において60分を超える水滴吸収時間を示した前記疎水性ワックスを含有するアスベストを含まない摩擦材料を使用してブレーキパッド(1)を工業的に生産するステップと
を備える、方法。
[10] 関連するブレーキディスクの摩擦面に対してステッチする低減された又はゼロの傾向を有する、即ち、特に湿った天候下でのスティクションの低減された又はゼロの傾向を有する車両用のブレーキパッド(1)を製造するための方法であって、前記方法は、
i)-少なくとも無機及び/又は有機繊維、少なくとも結合剤、少なくとも摩擦調整剤又は潤滑剤、及び少なくとも充填材又は研磨材を含むそれぞれの成分材料を共に混合することによって、特にNAO類のアスベストを含まない摩擦材料を調製するステップと、
ii)-ステップi)の前記成分材料と共に混合されるように、ステップi)において、更なる成分材料としてある量の疎水性ワックスを添加するステップと、ここで、前記疎水性ワックスは、ポリエチレン(PE)ワックス、高密度PE(HDPE)ワックス、ポリプロピレンワックス、微粉化PEワックス、酸化PEワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)変性ポリエチレンワックス、微粉化アミドワックス、微粉化ポリプロピレンワックス、特殊ワックス(結合ワックス、変性PEワックス、PTFEテクスチャ粉末)から成る群から選ばれ、前記疎水性ワックスは、前記アスベストを含まない摩擦材料の総量に対して計算して0.5体積%~5体積%(又は約0.5体積%~約5体積%)から成る量で、好ましくは1.0体積%~2.0体積%(又は約1.0体積%~約2.0体積%)から成る量で前記アスベストを含まない摩擦材料中に添加され、
iii)-パッドを形成するために、成形型中で共に混合された前記成分材料を加圧及び加熱することによって、前記疎水性ワックスを含有する前記アスベストを含まない摩擦材料の固体ブロック又は層を形成するステップと
を備える、方法。
[11] 前記疎水性ワックスが、ポリエチレンワックス、HDPEワックス、ポリプロピレンワックス、微粉化PEワックス、酸化PEワックス、PTFE変性ポリエチレンワックス、微粉化アミドワックス、微粉化ポリプロピレンワックス、特殊ワックス(結合ワックス、変性PEワックス、PTFEテクスチャ粉末)から成る群から選ばれ、前記疎水性ワックスは、前記アスベストを含まない摩擦材料の全体積に対して計算して0.5体積%~5体積%から成る量で前記アスベストを含まない摩擦材料中に含有される、[9]又は[10]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9