(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】カルマン型フィルタを使用する光学計装の測定精度の向上
(51)【国際特許分類】
G01J 9/02 20060101AFI20241015BHJP
G01B 9/02055 20220101ALI20241015BHJP
G01D 5/26 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
G01J9/02
G01B9/02055
G01D5/26 L
(21)【出願番号】P 2023547388
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 CA2022050139
(87)【国際公開番号】W WO2022170418
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-10-03
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521266918
【氏名又は名称】クオンタム ヴァリー アイデアズ ラボラトリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】キーヴニー ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ギレット ジョフリー ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー ジェームズ ピー
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-041547(JP,A)
【文献】特開2016-035443(JP,A)
【文献】特表2018-517896(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0188110(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0736229(KR,B1)
【文献】CHAWAH, P et al.,Amplitude and Phase Drift Correction of EFPI Sensor Systems Using Both Adaptive Kalman Filter and Temperature Compensation for Nanometric Displacement Estimation,JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,2012年04月10日,VOL. 30, NO. 13,pp.2195-2202,Digital Object Identifier 10.1109/JLT.2012.2194476
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 - G01J 3/52
G01J 4/00 - G01J 4/04
G01J 7/00 - G01J 9/04
G01B 9/00 - G01B 9/10
G01D 5/26
G06F 17/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学計器の測定精度を増大するための方法であって、
光学データと環境データに基づいて、前記光学計器によって測定された
光の光学特性の測定値を決定する段階であって、
前記光学計器は、
距離によって分離された2つの反射面と屈折率を有するそれらの間の透過媒質とを有する光学経路、及び
前記距離及び前記屈折率のうちの一方又は両方の大きさに影響を及ぼす環境パラメータを測定するように構成されたセンサ、
を含み、
前記光学データは、前記光学経路を横断する光信号に応答して前記光学計器によって生成され、
前記環境データは、前記環境パラメータを測定する前記センサによって生成される、
決定する段階と、
前記光学計器の時間発展を表すモデルに基づいて前記
光の光学特性の予測値を決定する段階と、
1又は2以上のプロセッサにより、前記
光の光学特性の有効値を、
前記測定値、
前記予測値、及び
前記測定及び予測値のそれぞれの不確実性に基づくカルマン利得であって、前記有効値における前記測定及び予測値の相対的重み付けを定義するカルマン利得、
に基づいて計算する段階と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記カルマン利得は、前記測定値の不確実性が前記予測値の不確実性よりも低いときに前記測定値に向けてバイアスされ、
前記カルマン利得は、前記予測値の不確実性が前記測定値の不確実性よりも低いときに前記予測値に向けてバイアスされる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モデルは、
前記
光の光学特性を表す第1の状態変数と前記環境パラメータを表す第2の状態変数とを含む状態変数と、
前記状態変数に対するそれぞれの状態値を含む状態ベクトルと、
を含み、
前記時間発展は、以前の期間から現在の期間まで発生し、
前記方法は、
測定ノイズ行列と、処理ノイズ行列と、共分散行列とに基づいて前記カルマン利得を決定する段階であって、
前記測定ノイズ行列は、前記光学及び環境データの不確実性を表す値を含み、
前記処理ノイズ行列は、前記モデルの不確実性を表す値を含み、
前記共分散行列は、前記状態値の不確実性を表す値を含む、
決定する段階、
を含む、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
それぞれの期間の複数の反復にわたって、前記測定値を決定する段階と、前記予測値を決定する段階と、前記カルマン利得を決定する段階と、前記有効値を計算する段階との作動を反復する段階、
を含み、
前記測定ノイズ行列、前記処理ノイズ行列、前記共分散行列、又はそのいずれかの組合せの値が、反復ごとに更新される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記モデルは、
前記
光の光学特性を表す第1の状態変数と前記環境パラメータを表す第2の状態変数とを含む状態変数と、
前記状態変数に対するそれぞれの状態値を含む状態ベクトルと、
以前の期間に関連付けられた状態値の第1のセットから現在の期間に関連付けられた状態値の第2のセットへの前記状態値の変化を定義する状態発展関数と、
を含み、
前記時間発展は、前記以前の期間から前記現在の期間まで発生し、
前記予測値を決定する段階は、
前記状態値の第2のセットを生成するために前記状態発展関数を前記状態値の第1のセットに適用する段階であって、前記第1の状態変数に対する前記状態値の第2のセットの値は前記予測値である、適用する段階、
を含む、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記状態発展関数は、複数のシグマ点とそれぞれの重み係数とを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記測定値を決定する段階は、
測定ベクトルのそれぞれの測定変数に対する測定値を取得する段階であって、
前記測定変数は、前記
光の光学特性を表す第1の測定変数と前記環境パラメータを表す第2の測定変数とを含み、
前記第1の測定変数に対して取得された測定値が、前記測定値である、
取得する段階、
を含み、
前記有効値を計算する段階は、
前記測定値と前記状態値の第2のセットとの間の差に基づいて残差ベクトルの残差値を計算する段階と、
前記状態値の第2のセットと、前記カルマン利得と、前記残差値とに基づいて前記状態ベクトルに対する状態値の第3のセットを決定する段階であって、前記状態値の第3のセットは前記有効値を含む、決定する段階と、
を含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記測定変数は、前記測定ベクトルに対する測定ドメインを定義し、前記状態変数は、前記状態ベクトルに対する状態ドメインを定義し、
前記残差値を計算する段階は、
変換された状態値の第2のセットを生成するために測定関数を前記状態値の第2のセットに適用する段階であって、前記測定関数は、前記状態ドメインから前記測定ドメインへの変換時の前記状態値の変化を定義する、適用する段階と、
前記残差ベクトルの前記残差値を計算するために、前記変換された状態値の第2のセットを前記測定値から減算する段階と、
を含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記環境パラメータは、前記透過媒質の温度、前記透過媒質の圧力、前記透過媒質の湿度、又は前記透過媒質内の二酸化炭素の濃度を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記環境パラメータは、前記透過媒質の温度、又は前記2つの反射面を分離するスペーサの長さを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項11】
光の光学特性を測定するように構成され、かつ
距離によって分離された2つの反射面と屈折率を有するそれらの間の透過媒質とを有する光学経路、及び
前記距離及び前記屈折率のうちの一方又は両方の大きさに影響を及ぼす環境パラメータを測定するように構成されたセンサ、
を含む光学計器と、
1又は2以上のプロセッサ及び前記1又は2以上のプロセッサによって実行されたときに作動を実行するように構成された命令を記憶するメモリを含む制御システムであって、前記作動は、
光学データと環境データに基づいて前記
光の光学特性の測定値を決定することであって、
前記光学データは、前記光学経路を横断する光信号に応答して前記光学計器によって生成され、
前記環境データは、前記環境パラメータを測定する前記センサによって生成される、
決定すること、
前記光学計器の時間発展を表すモデルに基づいて前記
光の光学特性の予測値を決定すること、及び
前記
光の光学特性の有効値を、
前記測定値と、
前記予測値と、
前記測定及び予測値のそれぞれの不確実性に基づくカルマン利得であって、前記有効値における前記測定及び予測値の相対的重み付けを定義するカルマン利得と、
に基づいて計算すること、
を含む、制御システムと、
を含む、システム。
【請求項12】
前記カルマン利得は、前記測定値の不確実性が前記予測値の不確実性よりも低いときに前記測定値に向けてバイアスされ、
前記カルマン利得は、前記予測値の不確実性が前記測定値の不確実性よりも低いときに前記予測値に向けてバイアスされる、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記モデルは、
前記
光の光学特性を表す第1の状態変数と前記環境パラメータを表す第2の状態変数とを含む状態変数と、
前記状態変数に対するそれぞれの状態値を含む状態ベクトルと、
を含み、
前記時間発展は、以前の期間から現在の期間まで発生し、
前記作動は、
測定ノイズ行列と、処理ノイズ行列と、共分散行列とに基づいて前記カルマン利得を決定することであって、
前記測定ノイズ行列は、前記光学及び環境データの不確実性を表す値を含み、
前記処理ノイズ行列は、前記モデルの不確実性を表す値を含み、
前記共分散行列は、前記状態値の不確実性を表す値を含む、
決定すること、
を含む、
請求項11又は請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記作動は、
それぞれの期間の複数の反復にわたって、前記測定値を決定することと、前記予測値を決定することと、前記カルマン利得を決定することと、前記有効値を計算することとの前記作動を反復すること、
を含み、
前記測定ノイズ行列、前記処理ノイズ行列、前記共分散行列、又はそのいずれかの組合せの値が、反復ごとに更新される、
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記モデルは、
前記
光の光学特性を表す第1の状態変数と前記環境パラメータを表す第2の状態変数とを含む状態変数と、
前記状態変数に対するそれぞれの状態値を含む状態ベクトルと、
以前の期間に関連付けられた状態値の第1のセットから現在の期間に関連付けられた状態値の第2のセットへの前記状態値の変化を定義する状態発展関数と、
を含み、
前記時間発展は、前記以前の期間から前記現在の期間まで発生し、
前記予測値を決定することは、
前記状態値の第2のセットを生成するために前記状態発展関数を前記状態値の第1のセットに適用することであって、前記第1の状態変数に対する前記状態値の第2のセットの値は前記予測値である、適用すること、
を含む、
請求項11又は請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記状態発展関数は、複数のシグマ点とそれぞれの重み係数とを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記測定値を決定することは、
測定ベクトルのそれぞれの測定変数に対する測定値を取得することであって、
前記測定変数は、前記
光の光学特性を表す第1の測定変数と前記環境パラメータを表す第2の測定変数とを含み、
前記第1の測定変数に対して取得された測定値が、前記測定値である、
取得すること、
を含み、
前記有効値を計算することは、
前記測定値と前記状態値の第2のセットとの間の差に基づいて残差ベクトルの残差値を計算することと、
前記状態値の第2のセットと、前記カルマン利得と、前記残差値とに基づいて前記状態ベクトルに対する状態値の第3のセットを決定することであって、前記状態値の第3のセットは前記有効値を含む、決定することと、
を含む、
請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記測定変数は、前記測定ベクトルに対する測定ドメインを定義し、前記状態変数は、前記状態ベクトルに対する状態ドメインを定義し、
前記残差値を計算することは、
変換された状態値の第2のセットを生成するために測定関数を前記状態値の第2のセットに適用することであって、前記測定関数は、前記状態ドメインから前記測定ドメインへの変換時の前記状態値の変化を定義する、適用することと、
前記残差ベクトルの前記残差値を計算するために、前記変換された状態値の第2のセットを前記測定値から減算することと、
を含む、
請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記環境パラメータは、前記透過媒質の温度、前記透過媒質の圧力、前記透過媒質の湿度、又は前記透過媒質内の二酸化炭素の濃度を含む、請求項11又は請求項12に記載のシステム。
【請求項20】
前記環境パラメータは、前記透過媒質の温度、又は前記2つの反射面を分離するスペーサの長さを含む、請求項11又は請求項12に記載のシステム。
【請求項21】
1又は2以上のプロセッサによって実行されたときに、
光学データと環境データに基づいて、光学計器によって測定された
光の光学特性の測定値を決定することであって、
前記光学計器は、
2つの反射面とそれらの間の透過媒質とを有する光学経路、及び
前記2つの反射面の間の前記透過媒質の環境パラメータを測定するように構成されたセンサ、
を含み、
前記光学データは、前記光学経路を横断する光信号に応答して前記光学計器によって生成され、
前記環境データは、前記環境パラメータを測定する前記センサによって生成される、
決定することと、
前記光学計器の時間発展を表すモデルに基づいて前記
光の光学特性の予測値を決定することと、
前記
光の光学特性の有効値を、
前記測定値と、
前記予測値と、
前記測定及び予測値のそれぞれの不確実性に基づくカルマン利得であって、前記有効値における前記測定及び予測値の相対的重み付けを定義するカルマン利得と、
に基づいて計算することと、
を含む作動を実行するように作動可能である命令、
を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項22】
前記カルマン利得は、前記測定値の不確実性が前記予測値の不確実性よりも低いときに前記測定値に向けてバイアスされ、
前記カルマン利得は、前記予測値の不確実性が前記測定値の不確実性よりも低いときに前記予測値に向けてバイアスされる、
請求項21に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項23】
前記モデルは、
前記
光の光学特性を表す第1の状態変数と前記環境パラメータを表す第2の状態変数とを含む状態変数と、
前記状態変数に対するそれぞれの状態値を含む状態ベクトルと、
を含み、
前記時間発展は、以前の期間から現在の期間まで発生し、
前記作動は、
測定ノイズ行列と、処理ノイズ行列と、共分散行列とに基づいて前記カルマン利得を決定することであって、
前記測定ノイズ行列は、前記光学及び環境データの不確実性を表す値を含み、
前記処理ノイズ行列は、前記モデルの不確実性を表す値を含み、
前記共分散行列は、前記状態値の不確実性を表す値を含む、
決定すること、
を含む、
請求項21又は請求項22に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項24】
前記作動は、
それぞれの期間の複数の反復にわたって、前記測定値を決定することと、前記予測値を決定することと、前記カルマン利得を決定することと、前記有効値を計算することとの前記作動を反復すること、
を含み、
前記測定ノイズ行列、前記処理ノイズ行列、前記共分散行列、又はそのいずれかの組合せの値が、反復ごとに更新される、
請求項23に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項25】
前記モデルは、
前記
光の光学特性を表す第1の状態変数と前記環境パラメータを表す第2の状態変数とを含む状態変数と、
前記状態変数に対するそれぞれの状態値を含む状態ベクトルと、
以前の期間に関連付けられた状態値の第1のセットから現在の期間に関連付けられた状態値の第2のセットへの前記状態値の変化を定義する状態発展関数と、
を含み、
前記時間発展は、前記以前の期間から前記現在の期間まで発生し、
前記予測値を決定することは、
前記状態値の第2のセットを生成するために前記状態発展関数を前記状態値の第1のセットに適用することであって、前記第1の状態変数に対する前記状態値の第2のセットの値は前記予測値である、適用すること、
を含む、
請求項21又は請求項22に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項26】
前記状態発展関数は、複数のシグマ点とそれぞれの重み係数とを含む、請求項25に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項27】
前記測定値を決定することは、
測定ベクトルのそれぞれの測定変数に対する測定値を取得することであって、
前記測定変数は、前記
光の光学特性を表す第1の測定変数と前記環境パラメータを表す第2の測定変数とを含み、
前記第1の測定変数に対して取得された測定値が、前記測定値である、
取得すること、
を含み、
前記有効値を計算することは、
前記測定値と前記状態値の第2のセットとの間の差に基づいて残差ベクトルの残差値を計算することと、
前記状態値の第2のセットと、前記カルマン利得と、前記残差値とに基づいて前記状態ベクトルに対する状態値の第3のセットを決定することであって、前記状態値の第3のセットは前記有効値を含む、決定することと、
を含む、
請求項25に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項28】
前記測定変数は、前記測定ベクトルに対する測定ドメインを定義し、前記状態変数は、前記状態ベクトルに対する状態ドメインを定義し、
前記残差値を計算することは、
変換された状態値の第2のセットを生成するために測定関数を前記状態値の第2のセットに適用することであって、前記測定関数は、前記状態ドメインから前記測定ドメインへの変換時の前記状態値の変化を定義する、適用することと、
前記残差ベクトルの前記残差値を計算するために、前記変換された状態値の第2のセットを前記測定値から減算することと、
を含む、
請求項27に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項29】
前記環境パラメータは、前記透過媒質の温度、前記透過媒質の圧力、前記透過媒質の湿度、又は前記透過媒質内の二酸化炭素の濃度を含む、請求項21又は請求項22に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項30】
前記環境パラメータは、前記透過媒質の温度、又は前記2つの反射面を分離するスペーサの長さを含む、請求項21又は請求項22に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この出願は、2021年9月14日出願の「Increasing the Measurement Precision of Optical Instrumentation using Kalman-Type Filters(カルマン型フィルタを使用する光学計装の測定精度の向上)」という名称の米国出願第17/474,946号及び2021年2月10日出願の「Increasing the Measurement Precision of Optical Instrumentation using Kalman-Type Filters(カルマン型フィルタを使用する光学計装の測定精度の向上)」という名称の米国仮特許出願第63/147,957号に対する優先権を主張するものである。全ての優先権出願の開示は、これによりそれらの全体が本明細書に引用によって組み込まれる。
【0002】
以下の説明は、カルマン型フィルタを使用する光学計装の測定精度の向上に関する。
【背景技術】
【0003】
レーザは、物質を操作するためのかつ干渉計測定を行うための精密ツールとすることができる。一部の場合に、レーザは、それらを商業用途に使用することを可能にするために原子共鳴に対して精密に調整される。そのような用途の例は、時計、比重計、電場及び磁場センサ、及び加速度計を含む。これらの用途は、レーザシステムを所要のレベルに対して測定、調整、及び制御するために正確、精密、かつ安定した計装に依存している。高精密デバイス及び計装は、外部の環境変化に対して本質的に敏感である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1A】カルマン型フィルタを使用して波長測定システムの測定精度を増大するための例示的方法の流れ図である。
【
図1B】カルマン型フィルタを使用して光学計器の測定精度を増大するための例示的方法の流れ図である。
【
図2A】無香料カルマンフィルタが有効及び無効の場合の共通生入力データセットに基づく例示的データを提示するグラフの時間整合群である。
【
図2B】
図2Aの上側パネルに示す光周波数データのアラン偏差のグラフである。
【
図3A】光学計器によって生成された測定値にカルマン型フィルタを適用することによって経時的に決定された光の周波数のグラフである。
【
図3B】
図3Aの光学計器の温度センサによって生成された測定値にカルマン型フィルタを適用することによって経時的に決定された温度のグラフである。
【
図3C】
図3Aの光学計器の圧力センサによって生成された測定値にカルマン型フィルタを適用することによって経時的に決定された圧力のグラフである。
【
図3D】
図3Aの光学計器の湿度センサによって生成された測定値にカルマン型フィルタを適用することによって経時的に決定された相対湿度のグラフである。
【
図4】波長測定のための例示的システムの概略図である。
【
図5A】波長測定のための例示的システムの概略図である。
【
図6】波長測定のためのプロトタイプシステムの上面写真である。
【
図7A】プロトタイプシステム内のカメラによって発生された例示的干渉データを示す図である。
【
図7B】環境影響に対する補償の前後の測定周波数を示すプロットである。
【
図8】波長測定システムを較正するための例示的処理を示す流れ図である。
【
図9】波長測定を実行するための例示的処理を示す流れ図である。
【
図10A】それぞれ
図8及び
図9の例示的処理に使用される反射強度モデルの概略図である。
【
図10B】それぞれ
図8及び
図9の例示的処理に使用される反射強度モデルの概略図である。
【
図10C】それぞれ
図8及び
図9の例示的処理に使用される反射強度モデルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
一般的な態様では、この開示は、光学計器(optical instruments)、特に環境変動に対して感受性を有する光学計器での測定精度(measurement precision)の改善を説明する。この改善は、カルマン型フィルタの実装からもたらされる場合があり、光学計器は、本質的に電気的、機械的、又は光学的なもの(又はそのいずれかの組合せ)とすることができる。環境を制御するのではなく、センサ又はセンサアレイを使用して環境を追跡し、環境が結果にどのように影響を及ぼすかに関するモデルに基づいて測定値を実時間で補正することができる。環境が計器測定値にどのように結合するかに関する処理モデルとセンサデータを組み合わせるカルマン型フィルタを使用して環境変動を補償し、測定ノイズを低減させて測定精度の向上をもたらすことができる。カルマン型フィルタの例は、カルマンフィルタ、又は拡張カルマンフィルタ(EKF)又は無香料カルマンフィルタ(unscented Kalman filter)(UKF)のようなその多くの変形のうちの1つを含む。
【0006】
考えられる用途の例は光学波長計を含み、この場合、光透過媒質(optical transmission medium)の屈折率を通して環境が波長計の性能に強く結合される。光透過媒質の屈折率は、媒質の温度、圧力、湿度、及びガス組成に依存する可能性がある。光学波長計の測定精度は、波長計の内側の光透過媒質の温度、大気圧、CO2濃度、及び相対湿度の能動モニタによって向上させることができる。この能動モニタは、測定光周波数の長期ドリフトを劇的に低減させることができる。しかし、カルマン型フィルタを信号処理チェーンに加えることにより、センサ測定値及び計器出力、例えば波長計の場合の光学波長のノイズが抑制される場合がある。
【0007】
ある一定の他の後処理平滑化又はフィルタリング技術とは異なり、本明細書に説明するカルマン型フィルタは、処理オーバーヘッドをほとんど伴うことなく、到着する未知データをフィルタリングするように実時間で作動する(operate)ことができる。カルマン型フィルタは、既存システムにソフトウェアレベルで追加することができ、従って、フィルタを使用する場合と使用しない場合のシステム性能の直接比較を行うことができる。波長計の場合のカルマン型フィルタの効果の例は、
図2A及び
図2Bに見ることができ、この場合、短期波長精度(アラン偏差によって示している)は、50kHz前後又は約1.4百億分率である。測定精度のこの向上は、フィルタが作動していない場合に優る桁違いの改善に相当する。更に、このフィルタが光学波長計の長期測定安定性に対していずれかの有害な効果を誘発することは認められなかった。
【0008】
多くの実施では、カルマン型フィルタは、レーザによって発生(生成)される光信号と併用することができる。レーザは、物質を操作して干渉計測定を行うための精密ツールになった。多くの場合、レーザは、それらを商業用途に向けて首尾良く使用するために原子共鳴に対して精密に調整される。例えば、レーザは、時計、比重計、電場及び磁場センサ、及び加速度計のようなデバイスに使用することができる。これらの用途は、レーザを所要のレベルに対して測定、調整、及び制御するために正確、精密、かつ安定した計装に依存する。しかし、精密光学計装は、本質的に外部環境変化に対して感受性を有する可能性がある。一部の場合に、この感受性は、現場でのそのような計装の配置を困難にする可能性がある。環境によって誘発される変化は、それが補償されない場合に許容不能なドリフト及びその結果として生じる測定又は処理の精度の喪失を引き起こす恐れがある。
【0009】
測定精度を保持しながら外部環境の効果を軽減する戦略が使用される場合がある。例えば、光学計器をその環境から隔離しようとする試みが為される場合がある。別の例として、光学計器の周囲の環境を能動的に制御しようとする試みが為される場合がある。センサによって環境をモニタし、環境の特性を計器測定に組み込み、環境内のいずれのドリフトもシステムの適切なモデルによって補償する場合もある。しかし、最初の2つの戦略は、それを組み合わせた場合であっても、光学計器の性能をある一定の用途に必要とされるレベルまで改善することができない。しかし、安価で正確な環境センサの開発は、第3の戦略を実行することを可能にするだけではなく、サイズ、重量、電力消費量、及びコスト(SWaP-C)の低減が有益である場所への現場配備を可能にすることもできる。
【0010】
現場計装では、測定性能を維持しながらSWaP-Cを低下させることが顕著な商業的有益性を与える。この場合、測定に対する環境の効果を軽減するための最初の2つの戦略は、多くの場合に不利益を生じる。例えば、環境を隔離する段階は、追加の遮断特徴部を補足することを必要とし、通常はデバイスのサイズ及び重量を嵩増しする可能性がある。環境、特に温度を制御する段階は、多くの場合に法外な量の電力を消費し、光学計器の機械設計の複雑さを増す。より優れた代替戦略は、測定に対する環境の効果をモデル化し(例えば、光学計器のモデルにより)、低電力で低コストのセンサを使用して環境の状態を決定することである。この戦略は、光学計器が環境状態に関して測定データを補正することを可能にする。そのような補正は、光学計器の性能を改善する段階をソフトウェアドメインに移動し、そこで環境が測定システムにどのように結合するかを理解するのに適切なシステムモデルを開発することができる。例えば、構成要素の熱膨張又は光透過媒質の変化は、これらの環境の関数としてモデル化し、ターゲット量の測定に影響を及ぼすこれらの値のシフトをソフトウェア内で補正することができる。ある一定の場合に、誘発される変化の多くは線形である可能性があるので、測定が環境の影響をどのように受けるかに関するモデルは複雑である必要がない。
【0011】
モデルが開発された状態で、環境センサ測定値をシステムにフィード-フォワードすることができ、この場合、計器測定は、このデータを考慮に入れる。センサは、常により良い信号対ノイズ比を有するように開発され続けるが、センサ測定値には一般的にいずれかの本質的なノイズが存在する。従って、センサ測定値は、「真」値にノイズが加わったものという捉え方で表すことができる。計器に環境ドリフトを補正するためのセンサ測定値を含めることにより、ノイズが最終ターゲット測定値に伝達されて有効精度が低下する恐れがある。センサ測定値内のノイズは、環境の状態がどの程度十分に把握されているかを決定し、従って、計器によって行われる測定をどの程度精密に補正することができるかを決定する。
【0012】
一部の実施では、光学計器の測定精度を増大する(increasing)ための方法は、環境センサノイズを抑制して計器測定精度を向上させることができる(例えば、生センサデータのみを使用する場合と比較して)。これらの方法は、一般的に波長計又は干渉計のような様々な光学デバイス及び光学計器に適用可能である。
【0013】
例えば、波長計は、その波長測定において僅かな長期ドリフトのみを有する現場光学計器に対応する場合がある。現場光学計器は、干渉計(例えば、フィゾー干渉計)と制御システムとを含むことができる。上記の僅かな長期ドリフトは、この制御システムの作動(operation)によって干渉データを低コストで低電力の環境センサからのデータと組み合わせることからの結果である。干渉計の内側にある光透過媒質の屈折率を決定し、それによって長期ドリフトの主なソースを補正するために制御システムによって数学モデルが使用される。この手法は、波長計が、それ自体を小型で現場形態で構成することができるレベルまで波長測定値内の長期ドリフトを軽減(又は排除)することを可能にする。この構成では、波長計は、制御された実験室環境に対して設計された市販の波長計を凌駕することができる。波長計の長期性能は、現在の市販のシステムよりも良好とすることができるが、短期精度は、干渉画像内のショット-ツー-ショットノイズ(shot-to-shot noise)及び環境センサ測定値内のノイズによって制限を受ける可能性がある。
【0014】
短期性能を改善するために、カルマン型フィルタは、制御システムによって実行されるソフトウェア作動に追加することができる。本明細書で使用する場合、「カルマン型フィルタ」という用語は、初期カルマンフィルタと、拡張カルマンフィルタ、無香料カルマンフィルタ、及びその他を含む初期カルマンフィルタから開発されたフィルタ群を構成するいずれかのフィルタとを意味する。一般的に、これらの異なるフィルタは、適用されるシステムの非線形性に依存して異なる用途に対して最適化されるが、共通の作動原理セットを共有する。特に、これらのフィルタは、予測-及び-更新反復モデルに基づいており、この場合、いずれかの発展モデルに基づくセンサ/測定値の予測値が、新しい(又は未フィルタリング)測定データと組み合わせられる。これらのデータ及び予測値は、データの過去の履歴に基づいて重み付けされ、システム状態の新しい推定値は、この重み付けに基づいて形成される。従って、フィルタ出力(例えば、状態推定値)は、高ノイズ到着データの効果を低減させる。この予測値が正確である場合に、新しいデータは、この予測値の近くになければならず、測定値は、より大きく重み付けされる可能性が高い。データが予測値から遠い場合に、ノイズに起因してそうである可能性が高く、従って、それほど大きくは重み付けされない。
【0015】
多くの実施では、本明細書に説明する光学計器は、干渉データを環境センサ(例えば、温度、圧力、湿度等を測定するセンサ)からの環境データと組み合わせる。干渉データは、レーザによって発生されるもののような光信号の測定周波数(又は波長)の決定を可能にすることができる。カルマン型フィルタは、環境データ及び光周波数データに適用され、フィルタからの低ノイズ出力は、新しい光周波数測定値である。光学計器の短期測定精度は、カルマン型フィルタを使用しない作動と比較して大幅に向上させることができる。更に、この向上は、長期安定性に影響を及ぼすことなく行うことができる。例えば、
図2A及び
図2Bに関連して以下に説明するように、光学計器の短期測定精度は、光学計器の長期安定性を保持しながら約20倍だけ改善することができる。
【0016】
新しく開発中の多くの量子技術は、光信号が測定処理及び/又は検出処理の一体的部分を形成する光学計器に依存する。これらの技術が実験室環境から自己完結型パッケージ計器へと移行する時に、診断光学計器(例えば、波長計、干渉計、及びその他の能動光学構成要素)の統合に少なからぬ課題が存在する。そのような計器は、その性質により、それが作動する外部環境に対して感受性を有する。これらの計器の多くは、現時点までベンチトップ構成でしか利用可能ではなく、かなり高いSWaP-Cレベルを伴う。
【0017】
統合目的に関して、ベンチトップ計器の絶対確度及び精度は、全面的に物理的サイズ及び電力消費量を低減させながら維持することが望ましい(向上させないまでも)。この判断基準は、計器が位置付けられた環境の精密制御を目的とするベンチトップ計器に共通の能動な物理フィードバック手法を使用しては達成するのが極めて困難な可能性がある。能動フィードバックを使用して安定した測定を実現するために、多くの場合に計器が最初に受動的に隔離される。続いて、トランスデューサ、センサ、及びフィードバックアルゴリズムで構成される能動制御方法が、装置全体が機能することが意味される多種多様な状況での環境変化に応答するように設計されて利用される。ベンチトップ計器の熱質量に起因して、例えば、温度制御を実行するのが困難である可能性があり、大量の電力を必要とする場合がある。
【0018】
環境変動に対する感受性を低減するために、従来の光学計器は、光学構成要素を完全に隔離すること(例えば、光学計器の光学構成要素を固定の背景ガス又は真空の中に配置する)、及び/又は温度及び圧力のフィードバック制御を使用して(例えば、被制御高純度N2雰囲気を使用して)環境を能動的に安定化することのどちらかを行ってきた。しかし、能動フィードバック及び/又は隔離を使用する場合であっても、これらの計器には少量の長期ドリフトが依然として存在する。更に、隔離と能動制御との両方の手法は、小型化及びフォトニック計装への統合を考慮した時にコスト的、電力的、及び/又はサイズ的に法外なものになる。
【0019】
一部の場合に、これらの問題に対するソリューションは、環境外乱を補正すること、例えば、空気圧、空気温度、相対湿度、CO2濃度、及び同様のものを計器の精度を長期にわたって維持する方式で補正することである。最も感受性の高い構成要素(例えば、干渉計)の直近の環境量を測定し、環境パラメータと最終計器測定値との間の結合の正確なモデル、例えば、干渉計の内側にある透過媒質の屈折率の正確なモデルを使用することにより、電力消費量及びコストを低減させながら正確な測定を行うことができる。センサ技術及びコンピューティングパワーの進歩により、そのようなソリューションは、環境安定化戦略及び隔離戦略を精度及び実用性において凌駕することが可能になる。
【0020】
センサ技術の改善にも関わらず、いずれのセンサからの出力も、系統的な偏差を無視した上で真の測定特性値にノイズが加わったものを反映することになる。環境センサを使用してシステムをモデル化することにより、センサ測定値内のノイズが計器による最終測定値(例えば、波長計の場合の周波数測定値又は波長測定値、又はファブリ・ペロー干渉計の場合のキャビティ共振周波数)に直接結合される恐れがある。センサノイズ及び測定ノイズは、長期では平均化されてゼロになるが、短期測定値は、センサフィード-フォワードを使用しない場合に考えられるものよりも精度が低くなるが精度は高くなる。約1一億分率よりも細かい高い相対精度を有する光学計器が非常に望ましく、従って、最終計器測定値に影響を与えないように、センサノイズは、同様の相対レベルにある必要がある。
【0021】
環境センサノイズに加えて、測定値に短期変動を引き起こす光学入力データ(例えば、波長計の場合の干渉画像)内の不可避のショット-ツー-ショット変動が存在する可能性もある。周波数ロック式レーザを使用する干渉計測定等において光学計器が高めの精度で安定していることが既知である場合であっても、測定値は、ショット-ツー-ショットノイズに起因して低めの精度を呈することになる。これらのノイズソースに対処することは軽微なタスクではない。例えば、光学計器の測定値が、大きめのシステムのいずれか他の部分に対するフィードバック要素として使用される時に、例えば、原子時計においてレーザ周波数を制御するために干渉計が使用される場合に特に重要である場合がある時間分解能が失われることになるので、単純に結果を互いに平均化することはできない。計器の測定速度に対して僅かな影響のみを有し、それと同時に高ノイズデータソースを考慮に入れる実時間手法を信号処理に使用することを有用とすることができる。
【0022】
上記の問題に対処するために、カルマン型フィルタ群を構成するフィルタを使用することができる。例えば、このタスクに無香料カルマンフィルタを使用することができ、又はカルマンフィルタ群を構成する他のフィルタも適用可能と考えられる。カルマン型フィルタは、真のシステム状態を予測する上で測定データと処理モデルとの重み付き組合せを使用する信号処理ツールとして実施することができる。カルマン型フィルタは、システムの未来状態を予測するために過去の測定履歴及び/又はシステム動態のいずれかの物理モデルが情報提供することができるシステム発展、例えば光学計器の発展のいずれかの把握情報に依存する。新しいデータが到着する時のようなシステムが更新される時に、予測状態は、次の高ノイズ測定データセットと比較され、続いて真のシステム状態を推定するために予測値及び測定値が重み付けされる。重み付けは、予測値及び測定値の各々においてそのエラーバーによって表されるもののような相対信頼性に依存する。例えば、測定値での誤差が予測値での誤差と比較して小さい場合に、測定値がより大きく重み付けされ、その逆もまた同様である。カルマン型フィルタが適正に設計される時に、この予測-及び-更新ループの継続的な適用は、高ノイズデータと比較したシステム推定値の実時間平滑化をもたらすことができる。
【0023】
カルマン型フィルタは、それらを光学計器の測定精度を向上させるのに適切にする多くの利点を有する。例えば、カルマン型フィルタは、後処理において完全データセットに適用されるのではなく実時間で機能することができる。カルマン型フィルタは、同じパラメータを感知する複数のセンサが利用される時、例えば、センサ融合の場合を含む複数の異なる独立した温度センサが光学計器内で使用される時であっても、多くの異なるソースからのデータを同様に組み合わせることができる。更に、カルマン型フィルタは、低い処理オーバーヘッドで作動することができ、すなわち、総データ処理時間に対してほとんど影響を与えない場合があり、従って、測定速度はそれほど影響を受けない。
【0024】
多くの場合に、光学システムは、非線形かつ非軽微な方式で環境に依存するので、運動力学システム(例えば、ナビゲーション及び方向感知のための)よりもモデル化するのが複雑である。一例は、干渉計長さに依存するファブリ・ペロー干渉計の1又は複数の共振周波数である。この長さは、構築材料、一般的に低膨張のガラスのほぼ非線形の熱膨張による影響を受ける可能性がある。ファブリ・ペロー干渉計の温度は、その環境による影響を強く受ける。ファブリ・ペロー干渉計を高真空システムの内側に隔離した後であっても、外部環境は、放射加熱を通して結合し、この結合自体が非線形であり、干渉計質量、熱容量、特定の幾何学構成、及び同様のもののような多くのシステムパラメータに依存する。カルマン型フィルタをファブリ・ペロー干渉計のような光学計装において使用する時に、予測モデルを用い、それを測定値と比較し、予測モデル及び測定値を重み付けすることにより、光学計装が環境位相空間を通してより正確に追跡され、かつより正確な位相空間状態が生じる。
【0025】
本明細書に説明するカルマン型フィルタは、波長計及び干渉計のような多くの光学計器に適応させることができる。干渉計の例は、ファブリ・ペロー干渉計、フィゾー干渉計、マイケルソン干渉計、及びマッハ・ツェンダー干渉計を含む。一部の実施では、カルマン型フィルタは、光学計器の作動中に制御システムが実行することができるプログラムによって表される。制御システムは、プログラムの実行を容易にするためにプロセッサと、メモリと、通信インターフェースとを含むことができる。一部の場合に、性能を高めるために、光学計器は、様々な特性を有する環境センサ、例えば、光透過媒質の温度を測定するための温度センサ、光透過媒質の圧力を測定するための圧力センサ、及び同様のものを含むことができる。センサの選定において、絶対精度と確度又は時間応答性との間の兼ね合いのような妥協がある場合に、カルマン型フィルタの中で様々なセンサの利点を組み合わせるためのセンサ融合技術を利用することができる。例えば、光学計器は、温度センサを含むことができる。温度センサは、較正後に良好な絶対精度を有するが比較的限られた精度(例えば、10mK)のみを有する固体ダイオードセンサとすることができる。サーミスタは、かなり良好な相対精度(例えば、一般的に1mKよりも細かい)を有することができるが、不十分な絶対精度のみを有する可能性がある。従って、固体ダイオードセンサをサーミスタと組み合わせることは、これらの相対的な利点を算入するようにカルマン型フィルタが適切に設計される限り有益であると考えられる。この場合、不都合な制限を有する2つのセンサを「融合」することにより、優れた総合的温度センサをもたらすことができると考えられる。
【0026】
一部の実施では、光学計器は、ハウジングと二重フィゾー干渉計とを含む波長計とすることができる。この波長計の例については、
図4~
図5に関連して更に詳しく説明する。波長計のセンサは、ハウジングの内側で二重フィゾー干渉計の直近の環境条件、例えば、空気温度、圧力、及び相対湿度(T
air、P、RH)をモニタすることができる。多くの変形では、センサは、2つの反射面の間にある光透過媒質の環境条件をモニタする。干渉計キャビティは、空気に対して開放されたものとすることができ、従って、光透過媒質は空気とすることができる。ハウジングは、粉塵の蓄積を防止するために閉鎖することができるが、気密に密封しないことができる。環境センサ測定値は、波長当て嵌めアルゴリズムに渡すことができ、このアルゴリズムは、測定パラメータに対応する空気の屈折率を使用してレーザによって発生されたもののような光信号の波長を2つのフィゾー干渉計を使用して取得された干渉画像を使用して計算する。
【0027】
図1Aは、カルマン型フィルタを使用して波長測定システムの測定精度を増大するための例示的方法100の流れ図を提示している。波長測定システムは、
図4に関連して説明する例示的波長測定システム400と同様とすることができ、カルマン型フィルタは、無香料カルマンフィルタ(UKF)とすることができる。例示的方法100では、ブロック102で表している第1の作動は、干渉計及びセンサから新しいデータを入手する段階を含む。ブロック104~108で表している第2、第3、及び第4の作動については、
図8及び
図9に関連して説明する例示的処理800、900に関連してより詳細に説明する。
【0028】
例示的方法100は、カルマン型フィルタに対して5次元状態空間を利用することができる。例えば、状態ベクトルを式(1)で表すことができる。
上式中の上付き文字Tは、転置行列を表す。ベクトルの要素0~4は、それぞれ温度T、圧力P、相対湿度RH、光周波数f、及び光周波数の時間微分
を表す。状態ベクトルは、未フィルタリングアルゴリズムを使用して測定値で初期化することができ、
は、0に初期化される。
【0029】
一部の実施では、例示的方法100は、ブロック110によって示すように予測作動を含む。予測作動110は、一部の場合に、次式(2)によって与えられる状態発展行列Fを使用することができる。
予測作動110は、Fを
によって状態ベクトルに適用することができる。線形カルマン型フィルタでは、予測作動110は、次のフィルタ反復に向けて新しい状態予測値を発生する。予測的状態発展の原理は、全てのカルマン型フィルタにわたって共通であり、未来状態の予測が、現在状態に基づいて計算される。
【0030】
カルマン型フィルタが無香料カルマンフィルタに対応する時のような一部の変形では、発展
は、非線形関数
で置き換えられる。しかし、この変形では、発展関数は、変わらずに線形とすることができ、変わらずに行列形式、例えば
で表すことができる。無香料カルマンフィルタでは、状態発展は、シグマ点(sigma points)と呼び、σで表記する試験座標のセットを利用することができる。シグマ点は、Lが、状態ベクトルの次元数(例えば、上記に提示した状態ベクトルでは5)である時に、システムの2L+1個の状態のセットである。2L+1個の状態のセットは、各次元において状態の直前値から変位され、例えばj=0~4である時に
であり、重み係数と併せて使用されて非線形分布の重み付き平均が計算される。例示的方法100が無香料カルマンフィルタを含む変形では、例示的方法100は、次式(3)及び(4)に従って状態発展を計算することができる。
上式中のw
iは、各シグマ点σ
iに伴う重み係数であり、各シグマ点は、時間tでの状態から導出される。非線形モデルを通して伝播されるシグマ点は、状態変数の不確実性(uncertainties in the state variables)を、計器測定に対するこれらの不確実性の効果に変換することを可能にする。例えば、このモデルの非線形性に起因して、温度の変動が、相対湿度よりも大きい効果を計器測定に対して有する可能性がある。これらの差を定量することは、無香料カルマンフィルタを実施する上である役割を果たす。シグマ点は、共分散行列を発生するのに必要とされる。
【0031】
一部の実施では、例示的方法100は、状態予測値の不確実性(uncertainty in the state prediction)を表す共分散行列Pを決定する段階を含む。Pの対角要素は、状態次元の各々での不確実性(例えば、分散)を表し、それに対して非対角要素は、これらの次元間の相関度(例えば、共分散)を表す。共分散行列は、予測作動110の最中に状態発展行列Fを使用して更新することができる。システムが数回の反復にわたって発展する時に、システムモデルの信頼性も同様に発展する可能性がある。一部の変形では、共分散行列は、例えば、初期のシステムの把握情報不足を反映するためにシステムでの最終予測不確実性よりも著しく大きい値に初期化される。これらの変形では、特にカルマン型フィルタが適正に設計される場合に、共分散行列は、その初期値から、システムパラメータでの実際の不確実性を表すものへと急速に収束することになる。
【0032】
一部の実施では、例示的方法100は、システムモデルでの更に別の不確実性を反映する処理ノイズ行列(process noise matrix)Qを決定する段階を更に含む。この更に別の不確実性は、1又は2以上のパラメータ(例えば、時間微分)が算入されない不完全な光学計器システムモデル、実際のシステムでの非ガウスノイズ項に起因する更に別の不確実性、又はモデルがなんらかの形で物理システムを記述しない他の箇所を含む一部の理由に起因する可能性がある。処理ノイズ行列Qは、共分散行列Pが更新される時にそれに一定のオフセットとして追加することができる。処理ノイズ行列Qは、予め決められた大きさを有するように選択することができる。例えば、処理ノイズ行列が過度に小さい場合に、カルマン型フィルタは、光学計器内でモデル化されていない実際の変化を無視してしまう可能性がある。処理ノイズ行列が過度に大きい場合に、高ノイズ測定データが過度に大きく重み付けされてしまうことになるので、カルマン型フィルタの性能が準最適になる。
【0033】
多くの実施では、光学計器(又はシステム)から取得された光学データ及びセンサデータを使用して測定ベクトルzが計算される。光学データは、
図7A~
図7Bに関連して説明するもののような干渉データに対応するものとすることができる。測定ベクトルzは、いずれかの時間インスタンスで取得された実際のセンサデータに従って光学計器(又はシステム)の状態を表す。測定ベクトルzは、状態ベクトルxとは異なるドメインを有し、一般的に異なる次元数を有する。一部の場合に、測定ベクトルの次元は、
である。最後の項
は、入力干渉データと、パラメータT、P、RH、及びfにおいて評価されたシステムの物理モデルとの間の当て嵌めの良さを表すコスト関数
の結果である。コスト関数は、実際には多くのデータ点のアレイである干渉データをフィルタ内に含める手段である。
図1Aのブロック112で示しているように、コスト関数は、干渉データと、センサデータと、光学計器又は光学システムのモデルとに基づいて計算することができる。
【0034】
一部の実施では、例示的方法100は、測定データの不確実性を反映する測定ノイズ行列Rを決定する段階を更に含む。測定ノイズ行列Rは、センサ特性から演繹的に決定することができる。この行列は、特定の測定の信頼性レベル又は重み付けを設定することができる。測定ノイズ行列内の対角要素は、測定パラメータの各々の上のエラーバーに対応するものとすることができ、それに対して非対角項は、これらのパラメータ間の相関度を示す。
【0035】
質問手続き114で示しているように、新しい推定値(又は最終波長推定値)を作り出すためには、ドメインxのフィルタ予測値と、異なるドメインzの測定値とを比較する必要がある。新しい推定値は、光学計器によって測定された有効波長としての役割を果たすことができる。比較を可能にするためには、ドメインxとドメインzが同じドメインを占有しなければならない。一部の変形では、測定関数を使用して状態ドメインが測定ドメインに変換される。例えば、ある一定のカルマン型フィルタ実装では、この変換は、行列演算H・xである。しかし、無香料カルマンフィルタでは、測定関数は、IDが干渉計からの光学データを表す非線形関数
である。この測定関数は、
図5A~
図5Bに関連して説明する例示的波長測定システム500及び
図6に関連して説明するプロトタイプシステム600のような波長計のためのものとすることができる。関数
は、次式(5)で示しているように入力状態を測定空間の中に変換する。
予測値が測定ドメインに変換された後に測定値と予測値との間で残差(residual)yが計算される。状態発展と同様の手法で、シグマ点は、次式(6)及び(7)によって示すように全てのシグマ点にわたる重み付き平均である無香料カルマンフィルタ内での変換に向けて使用される。
シグマ点の更に別の詳細については、下記で式(10)~(26)に関連して説明する。続いて、残差が式(8)を使用して計算される。
【0036】
多くの実施では、状態ベクトルxと測定ベクトルzとを比較する段階は、カルマン利得(Kalman gain)Kを計算する段階を含む。行列とすることができるカルマン利得Kは、共分散行列Pに関連する状態予測値の相対信頼性と、測定ノイズ行列Rに関連する測定値の相対信頼性とに基づいて計算される。続いて、状態推定値は、次式(9)に従って更新される。
この作動は、
図1Aのブロック116によって表している。カルマン利得が高い場合に、測定値(z)は好ましく、それに対してカルマン利得が低い場合に、モデル(x)がより大きく重み付けされる。カルマン利得は、ブロック118によって示すように、例示的方法100が波長(又は周波数)の最終推定値を発生することを可能にすることができる。波長(又は周波数)の最終推定値は、光学計器によって測定された有効波長(又は周波数)としての役割を果たすことができる。
【0037】
新しい推定値が計算された後に、光周波数の推定値が未フィルタリング測定値にどの程度近いかに基づいて処理ノイズ行列が適応化される。この作動は、
図1Aのブロック120で表している。処理ノイズ行列を適応させることにより、フィルタの次の反復に対する予測の相対信頼性が変化し、すなわち、この適応化は、カルマン利得項に影響を及ぼす。従って、処理ノイズ行列は、測定されているレーザの様々な作動モードの間で区別をつけるための手段を与えることができる。
【0038】
一部の実施では、カルマン型フィルタは、本質的にガウス分布のノイズ(例えば、ホワイトノイズ)の存在を仮定する。これらの実施では、カルマン型フィルタの基礎をなす数学は、ガウス関数に基づくことができる。ガウス関数の特性に起因して、線形システムを通るノイズ項(例えば、処理ノイズ、測定ノイズ、及び共分散行列のような)の伝播は、ガウス分布出力を生じる。線形システムの場合に、平均及び(共)分散を計算するのは比較的容易である。更に、ノイズ項の伝播及び組合せは、カルマン型フィルタがモデル及びデータを正しく重み付けすることができることを可能にする。カルマン型フィルタの各新しい時間インスタンスは、新しい状態推定値と(共)分散とを必要とする。しかし、非線形システムは、これらの量を決定する上で異なる手法を必要とする可能性がある。
【0039】
例えば、無香料カルマンフィルタは、カルマン型フィルタを非線形システムに対して使用する実施を可能にする。式(3)及び(4)に関連して上記で説明したように、無香料カルマンフィルタは、状態発展行列(F)及び測定行列(H)に関する線形代数項を非線形問題により一般的に適用可能な等価関数f(…)及びh(…)で置き換えることができる。一般的に、非線形システムを通してガウス分布入力を伝播させることによってはガウス分布出力は生じない。しかし、シグマ点(σi)の使用は、結果として生じる出力分布に関する平均及び共分散の計算を可能にすることができる。
【0040】
シグマ点を使用する実施では、状態ベクトル(x)と共分散行列(P)とによって定義される入力分布を一部の点でサンプリングし、当該サンプルの尤度を表す重み係数を使用することができる。これらのシグマ点は、非線形発展関数に通されて変換点の平均及び共分散を計算することを可能にする。一部の場合に、シグマ点は、下記で説明する方法を使用して効率的にプログラムに従って選択することができる。本方法は、計算すべき平均及び分散の信頼性の高い推定を可能な限り少ない入力点しか用いずに可能にすることができる。
【0041】
一部の変形では、本方法は、Lが状態ベクトルxの次元であり、0≦α≦1、β≧0、及びκ≧0によってパラメータ化される時に、2L+1個のシグマ点に依存する。これらの点は、次式(10)に従って選択することができる。
式(10)では、
は時間tでの状態推定値であり、
は、以下に続く式に従って決定することができる。
式(12)~(13)では、
は、
の平方根行列のi番目の列であり、λは、
であり、
は、時間tでの共分散行列である。これらの点は、式(14)~(16)に示すもののような所与の重み係数を有することができる。
上記の式では、上付き文字(m)及び(c)は、それぞれ平均及び共分散の計算において重み係数が使用されることを示している。α、β、及びκに対する値の選定は、問題に依存する。
【0042】
これらの変形では、変換点の平均及び共分散は、式(17)~(19)を使用して決定することができる。
式(19)では、上付き文字Tは転置行列を表し、Qは処理ノイズ行列である。新しいデータがシステムに追加される本方法の更新作動では、同じ変換は、干渉データIDを有する測定関数h(…)に適用することができ、結果として生じる計算値は、以下に続く式によって左右される。
式(22)では、Rは測定ノイズ行列である。続いて、2つのドメインの間の相互分散は、次式(23)に従って決定することができる。
上式は、後に次式(24)によって示すようにカルマン利得の計算に使用される。
続いて、式(8)に示している
から残差が計算され、状態行列及び共分散行列は、式(25)~(26)に従って更新される。
x及びPに対する更新値は、フィルタの次の反復で
及び
に置き換わる。
【0043】
一部の実施では、光学計器によって測定される光信号は、レーザを使用して発生させることができる。レーザは、それぞれの使用事例に対応する様々なモードで作動することができる。例えば、レーザは、安定した周波数で作動する、又は小さい周波数範囲(数GHz)にわたって走査する、又は様々な波長の間で大まかに同調する(一般的に光周波数は、数十GHzだけ移動する)ことができる。他の作動モードが可能である。しかし、これら3つのモードは、異なるカルマン型フィルタ特性を利用することができ、多くの変形では、これらの異なるフィルタ特性は、処理ノイズ行列Qを調整することによって達成される。
【0044】
一部の場合に、レーザは、能動的にロックされるか又は受動的に非常に低い速度でしかドリフトしないかのどちらかで周波数が安定している。これらの場合に、典型的な挙動が既知であり、予測可能である。光学システムがより正確に予測可能である場合に、有意な変化に対する低い時間応答性という代償を伴って処理ノイズを低減させてより大きい重みをモデルに与え、更に光周波数のより厳密な推定値を与えることができる。
【0045】
一部の場合に、測定値と推定値の間に有意な変動が発生する。そのような変動は、他の作動モードのうちの1つへの遷移を示すことができる。これらの場合に、処理ノイズは、測定値が推定値からどの程度離れているかに依存して閾値レベルセットを使用して適応化される。実際の光周波数の急激な大きい変化、例えば、光周波数が測定間隔よりも短い時間内に数GHzだけ移動する可能性があるモードホップに遭遇するレーザは、カルマン型フィルタを効果的にリセットすることによって管理される。測定値は、新しい状態推定値として受け入れられ、カルマン型フィルタ変数の残りは、初期値にリセットされる。
【0046】
一部の場合に、推定値からの測定値の小さめの偏差は、特に高ノイズのデータ点を示すか又はこれに代えて走査の開始を示す。これらの場合に、処理ノイズは、徐々に増加する。一部のデータ点が連続して推定値から離れる場合に、カルマン型フィルタは、測定値をより大きく重み付けするように適応し、状態ベクトル内の
項(df/dtに関連する)は、非ゼロ値に更新され、従って、光学システムは、走査の傾きを予測する性能が良くなる。この例では、走査は、線形と仮定することができ、この線形性は、光学計器(例えば、波長計のような)にとって適切な近似としての役割を果たすことができる。
【0047】
多くの実施では、新しいシステム状態に関する最終受け入れ値は、新しい推定値又は大きい周波数ジャンプの場合の測定値のどちらであっても、次の反復に向けて光学システムの残りの部分にフィードバックされる。最終受け入れ値は、未フィルタリング測定値アルゴリズムに対する初期推測値になり、フィルタの次の反復での予測作動110の最中に使用される。
【0048】
次に
図1Bを参照すると、カルマン型フィルタを使用して光学計器の測定精度を増大するための例示的方法150の流れ図が提示されている。例示的方法150の一部又は全部は、
図1Aに関連して説明した例示的方法100と同様とすることができる。例示的方法150は、光学計器によって測定された光学特性の測定値を光学データと環境データに基づいて決定する段階152を含む。光学特性の例は、光の波長又は周波数、光の位相、又は光の強度を含む。光学計器は、2つの反射面とこれらの面の間にある透過媒質とを有する光学経路を含む。2つの反射面は、距離(d)だけ分離され、透過媒質は、屈折率(n)を有する。光学計器は、距離及び屈折率のうちの一方又は両方の大きさに影響を及ぼす環境パラメータを測定するように構成されたセンサを更に含む。一部の変形では、距離及び屈折率は、2つの反射面の間の光学経路長(例えば、l=nd)を定義する。光学データは、光学経路を横断する(traversing)光信号(例えば、レーザ光)に応じて光学計器によって発生され、環境データは、環境パラメータを測定するセンサによって発生される。
【0049】
環境パラメータは、光学計器の透過媒質に関係付けることができる。例えば、環境パラメータは、透過媒質の温度(T)、透過媒質の圧力(P)、透過媒質の湿度(例えば、RH)、又は透過媒質内の二酸化炭素の濃度
とすることができる。環境パラメータは、光学計器の機械的特徴に関係付けることもできる。例えば、環境パラメータは、光学計器の2つの反射面を分離するスペーサの長さとすることができる。環境パラメータの組合せを含む他のタイプの環境パラメータが可能である。
【0050】
例示的方法150はまた、光学計器の時間発展(time evolution)を表すモデルに基づいて光学特性の予測値を決定する段階154を含む。例示的方法150は、これに加えて、測定値と、予測値と、カルマン利得とに基づいて光学特性の有効値(effective value)を1又は2以上のプロセッサの作動によって計算する段階156を含む。カルマン利得は、測定値及び予測値のそれぞれの不確実性に基づいている。カルマン利得は、有効値における測定値及び予測値の相対的重み付け(relative weighting)を更に定義する。多くの実施では、カルマン利得は、測定値の不確実性が予測値の不確実性よりも低い時に測定値に向けてバイアスされる(biased)。これらの実施では、同様にカルマン利得は、予測値の不確実性が測定値の不確実性よりも低い時に予測値に向けてバイアスされる。
【0051】
一部の実施では、光学計器の時間発展を表すモデルは、状態変数と状態ベクトルとを含む。時間発展は、以前の期間から現在の期間まで発生する。これらの実施では、状態変数は、光学特性を表す第1の状態変数と、環境パラメータを表す第2の状態変数とを含む。状態ベクトルは、状態変数に対するそれぞれの状態値を含む。更に、本方法は、測定ノイズ行列と、処理ノイズ行列と、共分散行列とに基づいてカルマン利得を決定する段階を含む。測定ノイズ行列は、光学データ及び事象データの不確実性を表す値を含み、処理ノイズ行列は、モデルの不確実性を表す値を含む。共分散行列は、状態値の不確実性を表す値を含む。更に別の実施では、本方法は、それぞれの期間の複数の反復にわたって測定値を決定する段階と、予測値を決定する段階と、カルマン利得を決定する段階と、有効値を計算する段階とを反復する段階を含む。測定ノイズ行列、処理ノイズ行列、共分散行列、又はそのいずれの組合せの値も各反復に向けて更新される。
【0052】
一部の実施では、光学計器の時間発展を表すモデルは、光学特性を表す第1の状態変数と、環境パラメータを表す第2の状態変数とを含む状態変数を含む。モデルは、状態変数に対するそれぞれの状態値を有する状態ベクトルを更に含む。更に、モデルは、以前の期間に関連付けられた状態値の第1のセット(first set of state values)から現在の期間に関連付けられた状態値の第2のセットまでの状態値の変化を定義する状態発展関数(state evolution function)を含む。モデルに関する時間発展は、以前の期間から現在の期間まで発生する。これらの実施では、光学特性の予測値を決定する段階154は、状態発展関数を状態値の第1のセットに適用して状態値の第2のセットを発生させる段階を含む。第1の状態変数に対する状態値の第2のセットの値は、予測値である。一部の変形では、状態発展関数は、複数のシグマ点とそれぞれの重み係数とを含む(例えば、無香料カルマンフィルタを使用する場合のような)。
【0053】
更に別の実施では、光学特性の測定値を決定する段階152は、測定ベクトルのそれぞれの測定変数に対する測定値を取得する段階を含む。測定変数は、光学特性を表す第1の測定変数と、環境パラメータを表す第2の測定変数とを含む。第1の測定変数に対して取得される測定値は、測定された値である。これらの実施では、光学特性の有効値を計算する段階156は、残差ベクトル(residual vector)の残差値(residual values)を測定値と状態値の第2のセットとの間の差に基づいて計算する段階を含む。有効値を計算する段階は、状態ベクトルに対する状態値の第3のセットを状態値の第2のセットとカルマン利得と残差値とに基づいて決定する段階を更に含む。状態値の第3のセットは、光学特性の有効値を含む。
【0054】
測定変数は、測定ベクトルに対する測定ドメインを定義することができ、状態変数は、状態ベクトルに対する状態ドメインを定義する。その場合、光学特性の有効値を計算する段階156は、測定関数を状態値の第2のセットに適用して変換された状態値の第2のセットを発生させる段階を含むことができる。測定関数は、状態ドメインから測定ドメインへの変換時の状態値の変化を定義する。有効値を計算する段階は、測定値から変換された状態値の第2のセットを減算して残差ベクトルの残差値を計算する段階を更に含む。
【0055】
次に
図2Aを参照すると、無香料カルマンフィルタが有効の場合と無効の場合との共通生入力データセットに基づく例示的データを示すグラフの時間整合群が提示されている。これらの例示的データは、
図4~
図6に関連して説明したものと同様の波長測定システムによって発生したものである。測定に向けて光信号を発生させるために、1018.62nmの波長(すなわち光周波数294.31THz)の入力レーザソースは、超安定光学キャビティに対してロックされ、波長の予測変動は、0.2fmよりも小さかった(100kHzよりも小さかった)。
ハッチングされたドットにより示される例示的データは、無効(又は未フィルタリング)の場合に対応し、
実線により示される例示的データは、有効(又はフィルタリング済み)の場合に対応する。無効の場合の例示的データは、
図1Aの作動102~108のみに従って波長測定システムを作動させることによって発生させたものである。明瞭化の目的で、例示的データは、フィルタリング済みデータセットの平均周波数値からの周波数シフトとして提示している。
【0056】
未フィルタリング例示的データとフィルタリング済み例示的データとの間の差は明確であり、フィルタリング済みデータは、未フィルタリングデータの平均値に追従するが、データ点のかなり小さい散乱のみを有する。そのような挙動は、この光周波数において、かつ時間の関数として測定した光周波数差の下方に見られる3つのパネル(すなわち、温度、圧力変化、及びパーセント相対湿度に関係するパネル)に示す3つの環境パラメータにおいても存在する。
図2Bは、
図2Aの上側パネル内の光周波数データのアラン偏差を示している。アラン偏差は、様々な時間目盛りにわたって所与の信号の安定性を評価するために一般的に使用される。フィルタリング済みデータと未フィルタリングデータとに関するアラン偏差の比較は、短期測定精度に対応する最も短い測定時間目盛り上でフィルタリング済みデータが未フィルタリングデータよりも約20倍良好である明確な利点を示している。アラン偏差は、2つの曲線が互いに極めて類似する波長測定システムの長期挙動も示している。この類似性は、フィルタが長めの時間目盛りのところで測定安定性に対して有害な効果を持たないことを示している。言い換えれば、長期ドリフトの低減が維持される。
【0057】
次に
図3Aを参照すると、光学計器によって生成された測定値にカルマン型フィルタを適用することによって経時的に決定された光の周波数のグラフが提示されている。このグラフは、光の周波数に関する測定値、予測値、及び有効値の例を示している。一部の事例では、これらの値は、光学計器のセンサによって測定された環境変数にカルマン型フィルタを適用することに関連して決定される。例えば、
図3Bは、光学計器の温度センサによって生成された測定値にカルマン型フィルタを適用することによって経時的に決定された温度のグラフを提示している。このグラフは、温度に関する測定値、予測値、及び有効値の例を示している。同様に、
図3Cは、光学計器の圧力センサによって生成された測定値にカルマン型フィルタを適用することによって経時的に決定された圧力のグラフを提示している。このグラフは、圧力に関する測定値、予測値、及び有効値の例を示している。
図3Dは、光学計器の湿度センサによって生成された測定値にカルマン型フィルタを適用することによって経時的に決定された相対湿度のグラフを提示している。このグラフは、相対湿度に関する測定値、予測値、及び有効値の例を示している。光の周波数に関する測定値、予測値、及び/又は有効値を発生する時に、温度、圧力、及び/又は相対湿度に関する有効値をカルマン型フィルタが使用することができる。
【0058】
次に
図4を参照すると、例示的波長測定システム400の概略図が提示されている。例示的波長測定システム400は、光学システム402と、環境センサ404と、制御システム406とを含む。しかし、例示的波長測定システム400のための追加の特徴が可能である。
【0059】
一部の実施では、光学システム402は、基準レーザソース及び試験レーザソースのような2又は3以上のレーザソース420に結合することができる。一部の実施では、基準レーザソースは、既知の波長を有する基準レーザビームを発生させるために使用することができる。一部の実施では、基準レーザソースは、波長測定システム400を較正するために使用することができる。一部の実施では、試験レーザソースは、他の用途に使用される前に例示的波長測定システム400が測定することができる不明な波長を有するレーザビームを発生することができる。
【0060】
一部の実施では、光学システム402は、2又は3以上のレーザソース420とカメラシステムとの間に1又は2以上のビーム経路を定義する一連の光学要素を含むことができる。一部の例では、光学システム402内のこれら一連の光学要素は、光スイッチと、1又は2以上のレンズと、1又は2以上のミラーと、ビームスプリッタと、1又は2以上の干渉計とを含むことができる。一部の実施では、光学システム402は、
図5A~
図5Bに示す光学システム504として実施することができる。しかし、光学システム402の他の実施が可能である。一部の実施では、光スイッチは、第1の入力ポートにおいて入力レーザビームを選択し、又は第2の入力ポートにおいて第2のレーザビームを選択し、光スイッチの出力ポートに経路指定するように構成することができる。一部の実施では、光スイッチの出力ポートからのレーザビームが、1又は2以上のレンズによって平行化される。
【0061】
一部の実施では、1又は2以上のレンズを射出した平行化レーザビームは、干渉計の中を通して誘導することができる。一部の事例では、少なくとも2つの異なる干渉計長さを含む干渉計は、試験レーザビームの波長の信頼性の高い効率的な当て嵌めを容易にすることができる。一部の事例では、干渉計は、二重フィゾー干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、マイケルソン干渉計、又はその他のタイプの干渉計を含むことができる。ある一定の実施では、光学システム402は、ある位置で干渉計に光学的に結合するように構成することができるカメラシステムを含む。一部の事例では、カメラシステムは、1又は2以上の干渉画像を検出するために使用することができる。
【0062】
一部の実施では、環境センサ404は、温度センサ、大気圧センサ、及び湿度センサのうちの少なくとも1つを含むことができる。一部の実施では、環境センサ404は、光学システム402内で干渉計に近接するように構成される。一部の実施では、環境センサ404は、干渉計内の透過媒質、例えば空気の屈折率を決定するために干渉計キャビティ内の透過媒質の環境パラメータの原位置モニタに対して構成することができる。一部の実施では、環境パラメータの値を表すセンサデータは、温度(T)と、大気圧(P)と、湿度(H)とを含む環境センサによって生成することができる。一部の実施では、環境センサ404は、透過媒質内のCO2濃度データを含むセンサデータを発生させるための二酸化炭素(CO2)センサを更に含むことができる。一部の実施では、制御システム406が屈折率計算アルゴリズムを使用して屈折率を決定することができる。一部の実施では、環境センサ404は、例えば、干渉計内の熱膨張効果を補償するために干渉計上に位置決めされた追加の温度センサを含むことができる。
【0063】
図4に示す例では、制御システム406は、プロセッサ410と、メモリ412と、通信インターフェース414とを含む。制御システム406は、例えば、入力/出力コントローラ、通信リンク、光学システム又は環境センサのための電源、表示デバイス、及び入力デバイスのような追加の構成要素を含むことができる。一部の例では、制御システム406を使用して、様々な入力レーザソースの間で切り替えを行うように光学システム402内の光スイッチを作動させることができる。一部の例では、制御システム406を使用して、光学システム402のカメラシステム及び環境センサ404と通信インターフェース414を通して通信することができる。例えば、制御システム406は、信号処理(例えば、
図8に関連して説明するように波長測定システムを較正するための例示的処理800を実行する段階、又は
図9に関連して説明するように波長測定のための例示的処理900を実行する段階)に向けてデータ416を受信することができる。一部の事例では、制御システム406を使用して、
図5A~
図9に関して説明するシステム及び技術の1又は2以上の態様を実行することができ、又はその他のタイプの作動を実行することができる。
【0064】
一部の実施では、本明細書に説明する処理及び論理フローのうちの一部は、入力データに対して演算して出力を発生させることによってアクションを実行するための1又は2以上のコンピュータプログラムを実行する1又は2以上のプログラマブルプロセッサ、例えば、プロセッサ410によって実行することができる。例えば、プロセッサ410は、プログラム418内に含まれるスクリプト、関数、実行ファイル、又はその他のモジュールを実行又は解釈することによってプログラム418を実行することができる。一部の実施では、プロセッサ410は、例えば
図8及び
図9に関して説明する作動のうちの1又は2以上を実行することができる。
【0065】
一部の実施では、プロセッサ410は、一例としてプログラマブルデータプロセッサ、システムオンチップ(SoC、又はこれらの複数のもの又は組合せ)を含むデータ処理のための様々なタイプの装置、デバイス、及び機械を含むことができる。ある一定の事例では、プロセッサ410は、特殊目的論理回路、例えばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、ASIC(特定用途向け集積回路)、又はグラフィック処理ユニット(GPU)を含むことができる。一部の事例では、プロセッサ410は、ハードウェアに加えて、当該のコンピュータプログラムのための実行環境を作り出すコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、クロスプラットフォーム実行時環境、仮想機械、又はこれらのうちの1又は2以上の組合せを構成するコード含むことができる。一部の例では、プロセッサ410は、一例として、汎用と専用の両方のマイクロプロセッサ及びいずれかのタイプのデジタルコンピュータのプロセッサを含むことができる。
【0066】
一部の実施では、プロセッサ410は、汎用と専用の両方のマイクロプロセッサ及びいずれかのタイプのデジタルコンピュータのプロセッサを含むことができる。一般的に、プロセッサ410は、読取専用メモリ又はランダムアクセスメモリ又はこれらの両方(例えば、メモリ412)から命令及びデータを受信することになる。一部の実施では、メモリ412は、一例として、半導体メモリデバイス(例えば、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリデバイス、及びその他)、磁気ディスク(例えば、内蔵ハードディスク、取り外し可能ディスク、及びその他)、光磁気ディスク、並びにCD-ROMディスク及びDVD-ROMディスクを含む全ての形態の不揮発性メモリ、媒体、及びメモリデバイスを含むことができる。一部の場合に、プロセッサ410及びメモリ412には、特殊目的論理回路を補足することができ、又は組み込むことができる。
【0067】
一部の実施では、メモリ412内に格納されるデータ416は、光学システム402のカメラシステム及び環境センサ404から受信されるデータを含むことができる。一部の実施では、メモリ412内に格納されるデータ416は、基準レーザビームに関係する情報(例えば、波長又は周波数、ガウス包絡線パラメータのような)を含むこともできる。一部の実施では、プログラム418は、プロセッサ410によって解釈又は実行されるソフトウェアアプリケーション、スクリプト、プログラム、関数、実行ファイル、又はその他のモジュールを含むことができる。一部の事例では、プログラム418は、干渉計内の透過媒質(例えば、空気)の環境パラメータのデータを受信するための及び透過媒質の屈折率を評価する波長測定処理を実行するための機械読取可能命令を含むことができる。一部の事例では、プログラム418は、様々な入力レーザソースの間で切り替えを行うように光学システム402の光スイッチを制御するための機械読取可能命令を含むことができる。
【0068】
一部の事例では、プログラム418は、メモリ412から又は別のローカルソースからのデータ416にアクセスすることができ、又は1又は2以上のリモートソースからのデータ416にアクセスすることができる(例えば、通信リンクを通じて)。一部の事例では、プログラム418は、出力データを発生し、それをメモリ412内又は別のローカル媒体内に格納することができ、又は1又は2以上のリモートデバイス内に格納することができる(例えば、出力データを通信インターフェース414を通じて送ることにより)。一部の例では、プログラム418(ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、又はコードとしても公知)は、コンパイル型又は解釈型の言語、宣言型言語、又は手続き型言語を含むいずれかの形態のプログラミング言語で書くことができる。一部の実施では、プログラム418は、1つのコンピュータ上で又は1つの場所に位置付けられた又は複数の場所にわたって分散されて通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で展開又は実行することができる。例えば、プログラム418は、クラウド内で作動することができ、制御システム406は、インターネット接続を通じてプログラム418にアクセスすることができる。
【0069】
一部の実施では、通信インターフェース414は、いずれのタイプの通信チャネル、コネクタ、データ通信ネットワーク、又はその他のリンクも含むことができる。一部の事例では、通信インターフェース414は、制御システム406と光学システム402、環境センサ404、又はその他のシステム又はデバイスとの間に通信チャネルを提供することができる。一部の事例では、通信インターフェース414は、とりわけ、例えば、Bluetooth、Wi-Fi、近距離無線通信(NFC)、GSM音声通話、SMSメッセージ通信、EMSメッセージ通信、又はMMSメッセージ通信、無線規格(例えば、CDMA、TDMA、PDC、WCDMA(登録商標)、CDMA2000、GPRSのような)のような様々な無線プロトコルの下で無線通信を可能にする無線通信インターフェースを含むことができる。一部の例では、そのような通信は、例えば無線周波数送受信機又は別のタイプの構成要素を通じて行うことができる。一部の事例では、通信インターフェース414は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、スキャナのような入力/出力デバイスに接続することができる又はスイッチ又はルータのようなネットワーク接続デバイスに例えばネットワークアダプタを通じて接続することができる有線通信インターフェース(例えば、USB、イーサネットのような)を含むことができる。
【0070】
図5Aは、光信号の波長(又は周波数)測定のための例示的波長測定システム500の概略図を提示している。
図5Bは、例示的波長測定システム500の干渉計526の詳細図を提示している。例示的波長測定システム500は、波長計に対応するものとすることができ、光信号は、レーザによって発生させることができる。一部の事例では、
図5Aに示す例示的波長測定システム500は、波長測定、例えば
図8及び
図9に関連して説明する処理を実行するために使用することができる。
図5Aに示す例では、波長測定システム500は、制御システム502と、光学システム504と、環境センサ506とを含む。
図5Aに示すように、光学システム504は、1又は2以上のレーザとカメラシステムとの間に1又は2以上のビーム経路を定義する一連の光学要素を含む。図示している例では、光学システム504内の一連の光学要素は、光スイッチ516と、レンズアセンブリ518と、ミラー520と、ビームスプリッタ522と、ビームストップ524と、干渉計526と、カメラシステム528とを含む。一部の例では、波長測定システム500は、追加の又は異なる構成要素を含むことができ、これらの構成要素は、図示しているように又は別の方式で配置することができる。
【0071】
一部の事例では、光学システム504は、基準レーザソース512及び試験レーザソース514からの1又は2以上のレーザビームを受光することができる。
図5Aに示す例では、基準レーザソース512は、既知の周波数を有する基準レーザビームを発生させるために使用することができる。一部の実施では、試験レーザソース514は、他の用途に使用される前に測定する必要がある不明な周波数/波長を有するレーザビームを発生させるために使用することができる。一部の実施では、基準レーザソース512は、例えば、システム500に対して実質的な再構成が実行された後に、再較正又は原位置較正の目的で使用することができる。しかし、基準レーザソースを使用する再較正は、システム500が較正された後に必要とされない場合がある。
【0072】
一部の実施では、基準レーザソース512は、一部の原子遷移間の周波数間隔が高い精度で既知である場合がある原子周波数基準に対して能動的に安定化させることができ、例えば、ロックすることができる。例えば、例示的波長測定システム500を較正するための絶対周波数基準を設けるために、セシウム(Cs)でのD1遷移(62S1/2→62P1/2遷移)又はD2遷移(62S1/2→62P3/2遷移)によって引き起こされる光学吸収を使用することができる。一部の例では、基準レーザソース512は、約300THzの周波数に対して3百億分率よりも良好な精度及び周波数安定性又は100kHz精度を与えることができる。一部の他の例では、基準レーザソース512は、異なる精度を有する別のタイプのレーザソースを含むことができる。例えば、低めの精度を有するHeNeレーザを基準レーザソース512として使用することができる。一例では、基準レーザソース512は、351.722THzの光周波数に対応する852.356nmの波長を有する基準レーザビームを出力することができる。一部の事例では、基準レーザソース512は、超安定光学キャビティを使用して0.2fmよりも小さい波長変動(100kHzよりも小さい周波数変動)しか伴わずにCsの原子遷移にロックされる。
【0073】
一部の実施では、光スイッチ516は、光信号を1つの入力ポートから別の入力ポートへと選択的に切り替えることができる。光スイッチ516は、光学ルータ又は機械作動ミラーとすることができる。一部の変形では、光スイッチ516は、レーザソース(例えば、基準レーザソース512)に結合された1つのファイバから異なるレーザソース(例えば、試験レーザソース514)に結合された別のファイバに移行する段階のような機械的な方法によって作動することができる。しかし、多くの実施では、光スイッチ516は、マイクロ電気機械システム(MEMS)光スイッチを含む。一部の例では、光スイッチ516は、制御システム502がデジタル制御することができる傾斜角を有する1又は2以上のミラーを含むことができる。一部の例では、光スイッチ516は、2又は3以上の入力ポートと1又は2以上の出力ポートとを有することができる。
図5Aに示す例示的システム500では、光スイッチ516は、第1の入力ポート530Aでの第1のレーザビーム又は第2の入力ポート530Bでの第2のレーザビームを出力ポート532に経路指定することができる。一部の例では、光スイッチ516は、入力レーザビームに対して同じ光学ポートを提供することができる。ある一定の例では、光スイッチは、複数のレーザを測定することを可能にすることができる。一部の実施では、光スイッチ516は、様々な光ファイバ、例えば、単一モード光ファイバ、多モード光ファイバ、又は偏光維持光ファイバに結合する能力を有することができる。一部の例では、光スイッチ516は、入力レーザビームの周波数範囲に従って選択することができる。一部の例では、光スイッチ516は、低い挿入損失のみを有することができ、例示的システム500への余分な熱負荷を防止するために低い電圧で作動することができる。
【0074】
一部の実施では、光スイッチ516の出力ポート532からのレーザビームは、レンズアセンブリ518によって平行化することができる。一部の実施では、レンズアセンブリ518は、出力ポート532からのレーザビームの入射方向に対して垂直な方向に向けられた1又は2以上の平行化レンズを含む。一部の実施では、レンズアセンブリ518は、様々な波長でのビームの発散を最小限に抑えるように収色性を有する。
【0075】
一部の実施では、光ファイバを使用してレーザソース512、514からのレーザビームを光スイッチ516に誘導することができる。一部の実施では、光ファイバは、レーザビームの品質を改善するために単一モード光ファイバを含むか又はレーザビームの強度を維持するために多モード光ファイバを含むことができる。一部の実施では、光ファイバを使用して光スイッチ516からのレーザビームをレンズアセンブリ518に誘導することもできる。ある一定の事例では、光ファイバは、偏光維持光ファイバ、フォトニック結晶ファイバ、又は別のタイプの光ファイバとして実施することができる。
【0076】
一部の実施では、レンズアセンブリ518を射出する平行化レーザビームは、続いてビームスプリッタ522を通して誘導される。一部の事例では、平行化レーザビームは、ビームスプリッタ522を通って伝播する前に第1のミラー520によって異なる方向に沿うように経路変更することができる(例えば、水平方向から垂直方向に)。一部の事例では、部分的に反射性を有し、かつ部分的に透過性を有するビームスプリッタ522を使用して、入射レーザビームは、各々が別個の経路(例えば、透過経路と反射経路と)に沿う2つのビームに分割される。一部の例では、ビームストップ524は、ビームスプリッタ522の経路(例えば、反射経路)内に配置することができる。一部の例では、ビームストップ524は、反射経路上のレーザが干渉画像に寄与することを防止するビームダンプである。一部の例では、干渉計526は、ビームスプリッタ522の他方の経路(例えば、透過経路)内に位置決めされる場合がある。
【0077】
一部の実施では、干渉計526は、互いに対面する少なくとも2つのガラス片を含むことができる。一部の事例では、干渉計526は、超低膨張ガラスを含むことができる。
図5Bに示す例では、第1のガラス片540Aは、入射レーザビームに対して垂直に構成され、第2のガラス片540Bは、垂直方向に対して楔角度だけ傾斜する(
図10A~
図10Cに従って概略光線図に示すように)。一部の事例では、入射レーザビームに対面する第1のガラス片
540Aの第1の面は、特定の波長又は波長セットでの作動の向上のための1又は2以上の反射防止コーティングで被覆することができる。一部の事例では、1又は2以上の反射防止コーティングのそれぞれの厚みは、波長範囲と透過媒質及び第1のガラス片
540Aの屈折率とによって決定することができる。一部の事例では、第1のガラス片540Aの第1の面は、広帯域作動に対して未被覆とすることができる。一部の事例では、互いに対面するように構成された第1のガラス片540Aの第2の反対の面と第2のガラス片540Bの第1の面とは、反射コーティングで被覆される。一部の実施では、反射コーティングは、金属、金属合金、又は誘電材料の層を含むことができる。例えば、反射コーティングは、アルミニウム、銀、金、クロム、銅、ニッケル、チタン、及びインコネル、又は二酸化ケイ素(SiO
2)及び二酸化チタン(TiO
2)を含む層状誘電材料を含むことができる。
【0078】
図5Aに示すように、第2のガラス片540Bの第1の面上にステップ544を作製することにより、2つの異なる干渉計長さを有する2つの干渉計キャビティ542A、542Bが作製される。一部の実施では、ビームスプリッタ522からの透過レーザビームの一部分は、ステップ544の楔面546A上に入射し、透過レーザビームの一部分は、底部楔面546B上に入射する。底部楔面546Bは、楔面546Aからステップ544によって変位される。一部の事例では、楔面546Aは、底部楔面546Bからステップ544によって0.39mmだけ変位され、例えば、ステップ544の高さは0.39mmである。楔面546A及び底部楔面546Bからの反射レーザビームは、2つの干渉計キャビティ542A、542B、例えば、二重フィゾー干渉計を効果的に作り出すことができる。一部の例では、二重フィゾー干渉計の干渉計長さの差は、ステップ544の高さである。例えば、2つの干渉計長さは、20.00mm及び19.61mmである。一部の事例では、干渉計からの反射レーザビームは、異なる干渉計長さに起因して異なる周期性及び/又は位相を有することができる2つの別個の干渉パターン(例えば、干渉画像)で空間的にパターン化することができる(
図7Aに示す干渉画像702A、702B)。それに加えて、二重フィゾー干渉計は、例えば、単一のガラス片又は互いに融合されたいくつかのガラス片から単一のモノリシック片として構築することができる。一部の実施では、干渉計は、2よりも多い干渉計キャビティを含むことができ、干渉計キャビティは、別の方式、例えば、異なる楔角で作製することができる。
【0079】
一部の実施では、干渉計526からの干渉画像は、カメラシステム528によって取り込むことができる。一部の事例では、干渉画像の各々は、一連の干渉縞を含むことができる。一次近似では、mが干渉次数を表す整数であり、λがレーザビームの波長であり、干渉計長さがmλ/2と一致する時に、一連の干渉縞が発生される。一部の実施では、干渉計長さが既知である場合に、干渉縞の間隔及び位置を使用してmを推量することによって波長λを計算することができる。一部の事例では、干渉計長さは、較正処理、例えば、
図8に関連して説明する例示的処理800から又は別の方式で決定することができる。
【0080】
一部の実施では、カメラシステム528は、各々を電荷結合デバイス(CCD)センサ及び相補的金属酸化物半導体(CMOS)センサとすることができる画像センサアレイを含むことができる。ある一定の実施では、カメラシステム528は、例示的システム500内のある位置でビームスプリッタ522から結合レーザビームを受光し、ビームスプリッタ522からの干渉画像の完全空間強度プロファイルを記録するように構成することができる。
【0081】
一部の実施では、環境センサ506は、1又は2以上の温度センサと、1又は2以上の大気圧センサと、1又は2以上の湿度センサとを含むことができる。一部の事例では、環境センサ506は、干渉計526に近接するように配置される。一部の実施では、環境センサ506は、干渉計キャビティ542A、542B内の透過媒質の温度(T)と大気圧(P)と湿度(H)とを含む環境パラメータの原位置モニタに対して構成することができる。一部の事例では、環境センサ506によってモニタされる環境パラメータを使用して、干渉計526の干渉計キャビティ542A、542B内の透過媒質(例えば、空気)の屈折率を決定することができる。
【0082】
環境センサ506は、検出範囲、感度、精度、応答時間、反復精度、サイズ、及び電力消費量を含む設計要件に従って選択することができる。一部の実施では、環境センサ506は、正確に較正済みのそれぞれの基準センサと比較することによって作動測定の前に又は原位置で較正される。
【0083】
一部の実施では、環境センサ506は、干渉計の単一モノリシックガラス片の温度を測定するための1又は2以上の別個の温度センサを更に含むことができる。一部の実施では、1又は2以上の別個の温度センサを使用して、第1のガラス片540Aと第2のガラス片540Bとを分離するために使用される干渉計スペーサ550の温度を測定することができる。一部の実施では、1又は2以上の別個の温度センサによって発生された干渉計の温度データは、波長測定に対する熱膨張の効果を補償するために熱膨張モデル内で使用することができる。一部の事例では、熱膨張効果は、干渉計の全体のモノリシック片に関して線形モデル、高次モデルを使用して、又は別の方式でモデル化することができる。ある一定の例では、ΔLが干渉計長さの変化であり、γが熱膨張係数であり、ΔTが温度変化であり、Lが干渉計長さである時に、ΔL=γΔT・Lを使用することができる。一部の事例では、線形モデルでの熱膨張係数は、既知のレーザ周波数を適用し、干渉計を制御された様々な温度に保持し、干渉計の共振が偏移する時の干渉計長さの変化を決定することによって決定することができる。一部の事例では、波長測定の前に熱膨張効果を較正することができ、かつ熱膨張係数を決定することができる。一部の事例では、特に干渉計が別の方式で実行される時の干渉計526の他の幾何学構成に対する熱膨張効果、例えば、第2のガラス片540B上への入射レーザの入射角に対する熱膨張効果は、測定して較正することもできる。
【0084】
一部の実施では、環境センサ506は、粉塵の蓄積を防ぐように例示的システム500を封入するために使用することができる例示的システム500のハウジング(図示していない)内に構成することができる。例示的システム500は、ハウジング内に気密に密封される又はされない場合がある。一部の例では、例示的システム500は、ハウジングを持たず、環境に対して開放されるように構成される。
【0085】
一部の実施では、接触及び非接触温度センサを含む様々なタイプの温度センサを実施することができる。一部の実施では、接触型温度センサは、サーモスタット、サーミスタ、薄膜抵抗センサ、又は熱電対とすることができる。一部の実施では、湿度センサは、静電容量センサ、抵抗センサ、又は熱伝導度センサとすることができる。一部の実施では、大気圧センサは、絶対圧センサ又は差圧センサとすることができる。一部の例では、大気圧センサは、小さい可撓性構造体を使用して大気圧を測定する能力を有するMEMS大気圧センサとすることができる。一部の例では、MEMS大気圧センサを使用して干渉計キャビティ542A、542B内の動的又は静的空気圧を測定することができる。一部の実施では、他のタイプの環境センサを使用することができる。
【0086】
一部の実施では、環境センサ506は、1又は2以上の二酸化炭素(CO2)センサを更に含むことができる。一部の例では、1又は2以上のCO2センサは、化学ガスセンサを含む。一部の事例では、化学CO2ガスセンサは、化学物質感応層を使用して干渉計キャビティ542A、542B内のCO2濃度レベルを測定するMEMS CO2ガスセンサとすることができる。一部の事例では、検出範囲と、他のガス分子と比較しての高い選択性とに従って、他のタイプのCO2ガスセンサを使用することができる。
【0087】
一部の実施では、環境パラメータの値を表すセンサデータは、環境センサ506によって生成することができる。一部の実施では、センサデータは、較正処理及び波長測定処理(例えば、
図8及び
図9に関連して説明する例示的な処理800及び900)で使用することができる。一部の例では、センサデータを使用して干渉計キャビティ542A、542B内の透過媒質(例えば、空気)の屈折率を決定することができる。
図8及び
図9に示すように、較正処理及び波長測定処理は、センサデータと、基準レーザビームの波長と、干渉計キャビティの幾何学パラメータ(例えば、干渉計長さ及び楔角)とを使用して試験レーザビームの絶対波長を決定することができる。しかし、他の環境パラメータも可能である。
【0088】
一部の事例では、制御システム502を使用して、例えば、様々なレーザ入力源を受信する段階の間で切り替えを行うように光学システム504内の光スイッチ516を作動させることができる。一部の実施では、制御システム502は、信号処理に向けてデータを受信する。例えば、制御システム502は、光学システム504のカメラシステム528と通信して干渉データを受信することができる。例えば、制御システム502は、環境センサ506と通信してセンサデータを受信することができる。一部の事例では、制御システム502を使用して、
図8及び
図9に関して説明するシステム及び技術の1又は2以上の態様を実行することができ、又は他のタイプの作動を実行することができる。
【0089】
図6は、波長測定のためのプロトタイプシステム600の上面写真を提示している。一部の事例では、
図6に示すプロトタイプシステム600は、波長測定、例えば、
図8及び
図9に関連して説明する処理を実行するために使用することができる。
図6に示す例では、プロトタイプシステム600は、制御電子機器602と、環境センサ604と、レーザソース(図示していない)とカメラ622との間に1又は2以上のビーム経路を定義する一連の光学要素とを含む。図示している例では、一連の光学要素は、MEMS光ファイバスイッチ610と、ファイバ結合器612と、平行化レンズ614と、ミラー616と、ビームスプリッタ618と、二重フィゾー干渉計620とを含む。プロトタイプシステム600は、プロトタイプシステムのカバー(図示していない)とすることができるビームストップを更に含むことができる。一部の例では、プロトタイプシステム600は、MEMS光ファイバスイッチ610に光学的に結合された光ファイバ628を通じてレーザビームを受光することができる。レーザビームは、レーザソース(図示していない)によって発生させることができる。
図6に示すように、プロトタイプシステム600の物理的フットプリントは、約175mm×175mm×100mm(L×W×H)である。しかし、他の寸法が可能である。
【0090】
一部の実施では、一連の光学要素は、ベースユニット624上に装着され、ベースユニット624は、更に光学台626上に装着される。これらの実施では、制御電子機器602は、いずれか他の場所(リモートに又はベースユニット624上ではない場所)に位置付けることができる。一部の実施では、ベースユニット624の温度は、低電力(<1W)の温度コントローラ(図示していない)を使用して能動的に安定化させることができる。一部の事例では、低電力温度コントローラを使用して、ベースユニット624の温度変動は、±20mKに制限される。一部の実施では、環境センサ604は、作動中に低電力消費量、例えば、約3mWを有する。一部の実施では、本明細書で開示する技術及びシステムは、電力消費量が重要な設計制約条件である携帯可能デバイスに適切である。
【0091】
プロトタイプシステム600では、モノリシックブロック630内にある二重フィゾー干渉計620は、低電力温度コントローラを有するベースユニット624上に更に装着される。一部の実施では、モノリシックブロック630に対する熱効果は、二重フィゾー干渉計620の複数の幾何学構成に同時に影響を及ぼす可能性がある。一部の事例では、二重フィゾー干渉計620の幾何学構成に対する熱効果は、試験レーザビームの波長を決定するために使用されるカメラ622上で収集される干渉画像に影響を及ぼす可能性がある。一部の例では、二重フィゾー干渉計620の幾何学構成の変化は、干渉計の温度をモニタすることによって決定することができる。その温度読取値を使用して波長読取値を補正することができる。
【0092】
図6に示すプロトタイプシステム600では、環境センサ604は、Honeywellから入手したもの(BME280)であり、MEMS光ファイバスイッチ610は、特別仕様コネクタと併せてThorlabsから入手したもの(OSW12-830-SM)であり、カメラ622は、IDS systemsから入手したもの(UI-5290SE)であり、温度コントローラは、Koheronから入手したもの(TEC100L)である。
【0093】
図7Aは、例示的干渉データを示すプロット700を提示している。
図7Aに示すように、例示的干渉データは、波長測定システム、例えば、
図5A~
図6に示すシステム500、600のうちの一方を使用して生成したものである。一部の事例では、2つの干渉計キャビティ(例えば、
図5Aに示す干渉計キャビティ542A、542B)からの2つの完全空間強度プロファイルにある干渉画像702A、702Bは、空間的に分離されてカメラ(例えば、
図5A~
図6に示すカメラシステム528、622のうちの一方)が取り込んだものである。一部の実施では、カメラは、各々を電荷結合デバイス(CCD)センサ及び相補的金属酸化物半導体(CMOS)センサとすることができる画像センサの2次元(2D)アレイを含むことができる。例えば、第1の干渉画像702Aは、カメラの第1の複数のピクセル行(例えば、行0と行180の間にある)によって取り込むことができ、第2の干渉画像702Bは、第2の複数のピクセル行(行420と行600の間にある)によって取り込むことができる。一部の事例では、干渉画像の各々での行のサブセットが、対応する干渉画像の干渉縞を決定するために使用される。
図7Aに示すように、第1の行サブセット704A(例えば、行0と行180の間にある)の同じ列内にある複数のピクセルの強度値の和を使用して第1の干渉画像702Aの第1の強度曲線706Aが決定される。同様に、第2の行サブセット704B(例えば、行420と行600の間にある)の同じ列内にある複数のピクセルの強度値の和を使用して第2の干渉画像702Bの第2の強度曲線706Bが決定される。一部の事例では、カメラは、空間的に分離された2つの干渉画像702A、702Bを取り込むために同じ方向に向けられ、距離によって分離された2つのラインセンサアレイを含むことができる。
【0094】
図7Bは、環境影響に対する補償の前後の測定周波数を示すプロット710を提示している。
図7Bに示すように、周波数測定は、波長測定システム、例えば、
図6に示すプロトタイプシステム600を使用して実行される。
図7Bに示すように、プロット710は、ある期間(6時間)にわたる周波数シフト値(Δf)を示す第1のパネル712と、周波数シフト値(Δf)の範囲にわたる確率密度を示す第2のパネル722と、同じ期間にわたる圧力値を示す第3のパネル730と、同じ期間にわたる温度値を示す第4のパネル732と、同じ期間にわたる相対湿度値を示す第5のパネル734と、第3、第4、及び第5のパネル730、732、及び734に示す測定環境パラメータに従って計算した屈折率を示す第6のパネル736とを含む6つのパネルを含む。プロット710は、波長測定処理、例えば、
図9で説明する例示的処理900を実行することによって取得することができる。
【0095】
一部の事例では、光ファイバ、例えば、
図6の光ファイバ628を通じて光学システムに1018.62nmの波長と294.52THzの光周波数とを有するレーザビームを供給するレーザソースが使用される。このレーザソースは、例えば、100kHzよりも小さい周波数変動と等価である0.2fmよりも小さい波長変動で全体の測定期間にわたって安定化され、超安定光学キャビティにロックされ、これらの変動は、プロトタイプシステム600が与えることができる測定精度よりもかなり小さい。
【0096】
一部の事例では、
図7Bの第1のパネル712内の曲線714は、屈折率に対する環境の影響を補償する前の周波数シフト(Δf)を示している。一部の事例では、レーザビームの1018.62nmの波長での空気の屈折率は、初期環境状態によって決定された値に固定される。曲線714及び対応するヒストグラム724に示すように、周波数シフト(Δf)値は、補償の前に+70MHzと-35MHzの間で幅広く変化する。
【0097】
一部の実施では、補償は、サブパネル730、732,及び734に示すように同じ期間の最中に環境センサによって収集された環境パラメータのデータに基づいて実行される。第3のサブパネル730に示すように、圧力は、1時間目と3時間目の間の期間の最中に1014.5hPaから1015.5hPaまで上昇し、3時間目と5時間目の間に低下し、最終的に5時間目に1014.5hPaを下回る。温度及び相対湿度は、第4及び第5のサブパネル732、734に示すように、信号内に視認可能な変動及びランダムノイズを伴いながら一定に留まる。
【0098】
環境パラメータのデータを使用して、屈折率値が補正される。時間の関数として計算した屈折率値(第6のサブパネル736に示す)は、第3のサブパネル730に示す圧力と同様のほぼ合致した経時的挙動を有する形状を示す。
図7Bの第1のパネル712内の曲線716に示すように、屈折率を補正した後に、周波数シフト(Δf)値は、<2MHzの標準偏差しか伴わずに-5MHzと+5MHzの間の範囲まで低下する。
図7Bの第2のパネル724内の対応するヒストグラム726に示すように、補償後の周波数シフト(Δf)値の確率密度は、周波数の6十億分率の変動に等価の<2MHzの帯域幅のみを有する大体のガウス分布を示している。一部の実施では、本明細書で提示する方法及び技術は、再較正処理を行うことなく波長測定に対する環境の影響を効果的に除去することができる。
【0099】
図8は、波長測定システムを較正するための例示的処理800を示す流れ図を提示している。例示的処理800は、例えば、波長測定システムと既知の周波数を有する基準レーザとによって実施することができる。例えば、処理800での作動は、
図4~
図6に示す波長測定システム400、500、及び600、又は別のタイプのシステム内の構成要素を使用して実行又は実施することができる。例示的処理800は、追加の又は異なる構成要素によって実行される作動を含む追加の又は異なる作動を含むことができ、これらの作動は、図示している順序又は別の順序で実行することができる。
【0100】
一部の実施では、例示的処理800は、波長測定システムの初期設定中に実行することができる。一部の実施では、処理800は、例えば、光学再整合の後に波長測定システムに対する実質的な再構成が行われる時に再較正目的で実行することができる。一部の実施では、例示的処理800は、波長測定システムの少なくとも1つの干渉計の少なくとも1つの干渉計長さを決定するために使用することができる。例示的処理800は、ガウス包絡線パラメータ又は別のパラメータを決定するために使用することもできる。一部の例では、少なくとも1つの干渉計長さ及びガウス包絡線パラメータを波長測定処理(例えば、
図9に関連して説明する処理900)で使用し、試験レーザビームの波長を決定することができる。
【0101】
802では、基準レーザビームの情報が供給される。一部の実施では、例えば、基準レーザビームの波長、周波数、又はその他のパラメータを含む情報を制御システムの中に入力することによって供給することができる。例えば、高い確度及び精度を有する情報を入力デバイスを通して制御システムに入力し、制御システムのメモリ内に格納することができる。一部の事例では、基準レーザビームの波長は、製造者によって供給することができ、理論的計算によって決定することができ、又は別の方式で決定することができる。一部の実施では、例示的処理800の802では、基準レーザビームのみを使用することができる。本明細書に開示する技術及びシステムは、長期ドリフトを補償するための定期的な再較正に向けた永久基準レーザを必要としない。一部の事例では、異なる周波数を有する複数の基準レーザビームを使用することができる。
【0102】
804では、大体の干渉計長さが測定される。一部の実施では、干渉計の大体の干渉計長さは、機械的な方法、例えば、測微計ゲージを使用して測定することができる。一部の例では、測微計は、±10マイクロメートル(μm)の精度を与えることができる。一部の例では、干渉計は、
図5A~
図5Bに示す二重フィゾー干渉計526として又は別の方式で実施される。一部の事例では、大体の干渉計長さは、二重フィゾー干渉計526の対向する2つの端部又は干渉計キャビティに沿ういずれかの場所で測定することができる。一部の事例では、対向する2つの端部で測定された干渉計長さの間の10マイクロメートルよりも小さい差が、傾斜した第2のガラス片540Bによって引き起こされる。一部の実施では、本明細書での測定干渉計長さは、例示的処理800で当て嵌め値を制約するための基準値として使用される。一部の事例では、ステップ544は、390μmの高さを有する。
【0103】
806では、光学システム及び環境センサからのデータが受信される。光学システムは、カメラ(又はカメラシステム)と、それぞれのレーザビームを発生するように構成された2つのレーザとを含むことができる。一部の実施では、カメラは、2つのレーザビームを結合して1又は2以上の干渉画像を作り出すビームスプリッタ(例えば、
図5A及び
図6に示す)の出力で構成することができる。一部の実施では、1又は2以上の干渉画像を検出した時にカメラによって生成されるデータは、干渉データを含む。一部の例では、環境センサは、干渉計に近接して干渉計のキャビティ内の環境パラメータを測定するように構成される。一部の事例では、環境センサは、
図5A及び
図6に示す環境センサとして又は別の方式で実施することができる。一部の例では、環境センサから受信されるデータは、温度、圧力、湿度、及びCO
2濃度レベルのうちの少なくとも1つを含む透過媒質内の環境パラメータの値を表すセンサデータを含むことができる。一部の実施では、センサデータは、
図5A及び
図6に示す制御システム502、602として又は別の方式で実施することができる制御システムによって受信されてメモリ内に格納される。
【0104】
808では、干渉計内の透過媒質の屈折率が計算される。一部の実施では、環境センサから受信されるセンサデータを使用して、干渉計のキャビティ内の透過媒質(例えば、空気)の屈折率を決定することができる。一部の事例では、屈折率は、温度、圧力、湿度、及び基準レーザビームの波長の関数とすることができる。一部の事例では、屈折率は、透過媒質内のCO2濃度レベルの関数とすることもできる。一部の実施では、屈折率は、屈折率計算アルゴリズムに従って制御システムによって決定される。一部の例では、屈折率計算アルゴリズムは、制御システムのメモリ内に格納されたプログラムを実行することによって実施することができる。一部の事例では、屈折率を使用して、干渉計長さと屈折率との積である光学経路長を決定することができる。
【0105】
810では、干渉計長さが当て嵌められる。一部の実施では、干渉計長さは、反射強度モデルをカメラによって受信される干渉データに当て嵌めることによって決定される。例えば、反射強度モデルは、
図10A~
図10Cに関連して説明する反射強度モデル1000A~1000Cとして又は別の方式で実施することができる。一部の事例では、干渉データは、干渉計の内面での反射レーザビーム(例えば、
図10A~
図10Cに関連して説明する0次、1次、及び2次の反射)に関する位相差及び反射電場振幅のようなパラメータを含むことができる。反射強度モデルの幾何学パラメータは、基準レーザビームの既知の波長と環境センサから受信されるセンサデータとを使用して決定することができる。一部の実施では、804で当て嵌め干渉計長さが測定干渉計長さと比較される。一部の実施では、干渉計長さは、最小二乗アルゴリズムを使用して当て嵌められる。一部の例では、最小二乗アルゴリズムは、カイ二乗関数を最小化することによる最小カイ二乗法を使用することができる。
【0106】
812では、基準レーザビームのガウス包絡線パラメータが当て嵌められる。一部の実施では、ガウス包絡線パラメータは、反射強度モデルをカメラから受信された干渉データに当て嵌めることによって決定することができる。例えば、ガウス包絡線パラメータは、屈折率と、当て嵌め干渉計長さと、基準レーザビームの波長とに従って決定することができる。
【0107】
図9は、波長測定を実行するための例示的処理900を示す流れ図を提示している。例示的処理900は、例えば波長測定システムによって実行することができる。例えば、例示的処理900での作動は、
図4~
図6に示す波長測定システム400、500、及び600、又は別のタイプのシステム内の構成要素を使用して実行又は実施することができる。例示的処理900は、追加の又は異なる構成要素によって実行される作動を含む追加の又は異なる作動を含むことができ、これらの作動は、図示している順序又は別の順序で実行することができる。
【0108】
一部の実施では、例示的処理900は、較正処理の後に実行される。一部の事例では、較正処理は、
図8に関連して説明した例示的処理800として又は別の方式で実施することができる。一部の実施では、例示的処理900を実行する前に、試験レーザビームを波長測定システム(例えば、それぞれ
図5A及び
図6に関連して説明する波長測定システム500、600)に向けることができる。
【0109】
902では、光学システム及び環境センサからのデータが受信される。一部の実施では、光学システム及び環境センサは、
図5A及び
図6に示すように又は別の方式で構成することができる。一部の例では、作動902は、
図8の作動806として又は別の方式で実施することができる。
【0110】
904では、干渉計内の透過媒質の屈折率が計算される。一部の例では、作動904は、
図8の作動808として又は別の方式で実施することができる。一部の事例では、屈折率は、試験レーザビームの波長の初期推測値を使用して決定することができる。一部の実施では、試験レーザビームの波長の初期推測値は、光学システムのカメラシステムから受信された干渉データ内の縞の本数から推量することができ、直前の測定結果から又は別の方式で取得することもできる。
【0111】
906では、試験レーザビームの波長の第1の値は、局所最適化モデルを使用して決定される。一部の実施では、カメラシステムから受信された干渉データは、
図10A~
図10Cに関連して説明する反射強度モデル1000A~1000Cのような反射強度モデルに従って当て嵌められる。反射強度モデルは、次式で示すように複数の変数に基づく関数fによって表すことができる。
式(27)では、yは、カメラ又は線形アレイ上のy軸位置又はピクセル位置であり、λは波長であり、Tは温度であり、Pは圧力であり、Hは湿度であり、
はCO
2濃度であり、αは楔角であり、e
1は第1の干渉計長さであり、
は、第1の干渉計キャビティの第1のガウス包絡線パラメータであり、e
2は第2の干渉計長さであり、
は、第2の干渉計キャビティの第2のガウス包絡線パラメータである。一部の実施では、
図5A及び
図5Bに示す二重フィゾー干渉計526内の両方の干渉計に共通の楔角αは、機械的測定法を使用して決定することができる。一部の事例では、干渉計長さ及びガウス包絡線パラメータは、
図8に関連して説明する較正処理中に又は別の方式で決定される。一部の事例では、環境パラメータT、P、RH、及び
は、環境センサからのデータに従って決定される。
【0112】
一部の実施では、局所最適化モデルは、最小二乗アルゴリズムに基づくことができる。一部の例では、最小二乗アルゴリズムは、次式のように定義されるカイ二乗関数を局所的に最小化することによる最小カイ二乗法を使用することができる。
上式中のf(y
i,λ)は、あるy軸位置及び波長での反射強度モデルであり、D
iは、同じy軸位置でカメラによって取り込まれた干渉画像内の実際の強度である。式(28)は、両方の干渉計からの情報を全ての他のパラメータを固定した状態で使用して波長を当て嵌めるために使用される。一部の事例では、干渉画像内の実際の強度が波長の整数倍数に関して周期的であるので、カイ二乗値(χ
2)も、波長の整数倍数に関して周期的であり、波長内で複数の極小値がキャビティ自由スペクトル範囲によって分離される。一部の事例では、キャビティ自由スペクトル範囲は、干渉画像内で連続する極小値間の波長又は光周波数に関する間隔である。一部の事例では、キャビティ自由スペクトル範囲は、光速と干渉計長さとの関数である。一部の事例では、第1の波長値は、カイ二乗値の極小値での波長値である。
【0113】
908では、試験レーザビームの第2の波長値が、広域最適化モデルを使用して決定される。一部の事例では、第2の波長値は、カイ二乗値の広域極小値での波長値である。一部の事例では、広域最適化モデルは、極小値と、隣接する極小値を分離するキャビティ自由スペクトル範囲とを使用して広域極小値を決定するために使用される。一部の事例では、キャビティ自由スペクトル範囲に従って波長を変化させることにより、本方法は、広域極小値を効率的に探索するためにカイ二乗値を更に低減させるための極小値間の「ホッピング」を可能にする。一部の事例では、広域最適化モデルは、波長の真値を決定するための高速、正確、かつ信頼性の高い手法をもたらすことができる。一部の実施では、2つの異なる干渉計長さを有する二重フィゾー干渉計は、信頼性の高い効率的な波長当て嵌めを可能にすることができる。例えば、2つの異なる干渉計長さに対応する極小値は、キャビティ自由スペクトル範囲の整数によって分離される。一部の実施では、最小カイ二乗法は、2つの対応する干渉計キャビティから生成された2つの干渉画像に対して実行することができる。一部の実施では、作動908の最中に取得された第2の波長値を作動906で使用し、試験レーザビームの真の波長の当て嵌めを微調整することを可能にすることができる。一部の実施では、局所最適化モデル又は広域最適化モデルを当て嵌めるための他の方法を使用することができる。
【0114】
一部の実施では、センサデータを熱膨張モデルと一緒に使用して干渉計のガラス片の熱膨張を補正することができる。一部の事例では、熱膨張モデルは、干渉計の構造及び幾何学構成に従って決定することができる。一部の事例では、熱膨張モデルは、温度の線形関数であり、既知の波長を有するレーザを使用して決定することができる。一部の事例では、この熱膨張効果は、
図9に示す波長測定の前に決定される。
【0115】
干渉計の光学特性を表す上でモデル(例えば、反射強度モデル)を使用することができることは認められるであろう。このモデルは、干渉計の構成に基づくことができ、干渉計を通過する光によって発生されたデータを当て嵌めるために使用することもできる。明確に異なる構成を有する干渉計の例は、マイケルソン干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、トワイマン・グリーン干渉計、マッハ・ツェンダー干渉計、サニャック干渉計、及びフィゾー干渉計を含む。他のタイプの干渉計が可能である。上記のモデルは、それぞれの
図8及び
図9の例示的処理800、900に関連して説明したモデルのような光の特性(例えば、光の波長)を決定する処理の一部としての役割を果たすことができる。
【0116】
図10A~
図10Cは、フィゾー干渉計に関する例示的反射強度モデルの概略
図1000A~1000Cを提示している。一部の事例では、
図10A~
図10Cの反射強度モデルは、
図4~
図6に示す波長測定システムを使用する波長測定に使用される。一部の事例では、異なる波長測定システムを使用する時、例えば、マイケルソン干渉計又はファブリ・ペロー干渉計のような異なる干渉計を使用する時の光線光学系に基づいて、異なる反射強度モデルを構築することができる。
図10A~
図10Cの各々では、概略
図1000A~1000Cは、x軸とy軸とz軸とによって定義された基準軸線を含む。x軸は、概略図に対して垂直であり、正の方向は、概略図の中に延びる。y軸及びz軸は、
図10A~
図10Cの概略図に対して平行な平面を定義する。
図10A~
図10Cに示す例では、干渉計内にある2つの内部空気/ガラス界面での0次、1次、及び2次の反射に対応する3つの光線1010、1012、1014が例示目的で評価される。高次の反射を伴う他の全ての光線は、同じ又は異なる方式で決定することができる。一部の実施では、同様の解析は、異なる干渉計長さを有する二重フィゾー干渉計に対して適用することができる。一部の実施では、上記3つの光線の各々の経路長、位相差、及び反射電場振幅のようなパラメータは、概略光線図に従って決定することができる。干渉計をモデル化する上で、波動光学系に基づくより精巧なモデルを使用することもできる。
【0117】
図10Aに示す例では、特定の例を説明する上で光線図を使用する。この例での干渉計は、
図6に示すようなフィゾー干渉計であり、この場合、第1の内面1008A及び第2の内面1008Bがインコネルで被覆され、各面で33%の反射率が生じる。第1の外面1008Cは、反射を最小限に抑えるための広帯域誘電体コーティングを有する。
図6に示す干渉計620の第1の外面の反射率は、800nmと1100nmの間の波長範囲内で0.5%よりも小さい。干渉計の第1の内面1008Aに関して、例示的波長測定システム500内にある検出器、例えば、カメラシステム528によって3つ全ての光線1010、1012、1014が受光されて干渉画像が生成される。一部の実施では、検出器は、干渉計の第1の内面1008Aから距離d 1020だけ分離された検出器平面上に位置付けることができる。一部の事例では、距離d 1020は、第1のガラス片の厚みと、ビームスプリッタの厚みと、検出器と第1のガラス片間の透過媒質の厚みとを含むことができる。距離dは、経路依存の屈折率を伴う物理的距離によって特徴付けることができる。例示的な導出は、間隙1004の屈折率及びd 1020が空気のものであると仮定する。1022が小さく、d 1020が大きい時に、射出光線はほぼ平行であり、dは、異なるビームの間の小さい相対位相シフトしか生じない。一般的に、1010、1012、及び1014のような無限本数の光線が干渉画像に寄与する。多くの場合に、干渉画像を説明するのに有限本数の光線で十分である。各反射は何らかの損失を生じるので、各光線の寄与は、反射回数とともに低下する。
【0118】
一部の実施では、光線の反射の評価は、ある一定の仮定に従って簡素化することができる。例えば、反射防止コーティングを堆積させることによって第1の外面1008Cでの反射損失を無視することができる。一部の例では、これらの仮定は、干渉画像を計算するために使用されるレーザビームの光学経路長差のような量の小さいシフトを生じる可能性がある。例えば、第1のガラス片は、全ての反射レーザビームにほぼ一定の位相差を加え、この位相差は、使用されるd 1020の値に対するオフセットとして作用する。
【0119】
一部の実施では、入射レーザビームは、
方向に進む平面波とすることができ、3つの光線1010、1012、1014は、第1の内面1008Aに達する前に初期位相差を持たない場合がある。一部の例では、第1の内面1008Aは、x-y平面上に位置付けられ、第2の内面1008Bは、x-y平面内で
に対して楔角α1022で傾斜している。
【0120】
図10Aに示す例では、第1及び第2の内面1008A、1008Bの反射率は、次式のように表される。
上式中のRは、界面での反射率であり、nは、ミラーの波長依存の屈折率であり、
は、干渉計ミラー間の間隙の環境依存の屈折率であり、λは波長である。一部の例では、電場反射係数rは、
によって定義され、対応する透過係数tは、t=1-rによって定義される。
【0121】
一部の実施では、第1の内面1008Aからの0次の反射に対応する第1の光線1010の経路長は、距離d 1020に等しく、第1の光線1010の反射電場は、次式ように表される。
上式中のE
0は、0次の反射の反射電場(例えば、第1の光線1010)であり、E
inは入射電場であり、fは光周波数であり、nは、干渉計の反射面間のものと同じと仮定される媒質dの屈折率であり、cは光速である。
【0122】
図10Bに示す第2の光線1012の例示的な
図1000Bによると、第1の内面1008Aと、第2の光線1012が第2の内面1008B上で反射する点との間の
軸に沿う距離e′ 1034は、次式のように表すことができる。
【0123】
カメラ上の点で第1の光線1010と干渉するように第2の光線1012が第2の内面1008B上で反射する点に対応する
軸に沿う距離Δy
1 1042は、次式のように表すことができる。
【0124】
図10Bに示す例では、第2の光線1012に関する全経路長l
1は、次式のように決定することができる。
e′は、式(31)を使用して第2の光線1012の入射点でのフィゾー干渉計の反射面間の間隔であるeと、αと、dとに関して記述することができることに注意されたい。
【0125】
第2の光線1012の反射電場E
1は、次式のように決定することができる。
上式中のE
1は、1次の反射の反射電場(例えば、第2の光線1012)であり、第2の光線1012が低い方の屈折率の側から入射する界面であると仮定される第2の内面1008Bでの1回の内部反射の結果としてこの光線に追加のπ位相差が導入され、この光線が反射される時に光線のπ位相シフトが生じる。この仮定は、空隙としての1004及びインコネル被覆面(例えば、第1及び第2の内面1008A、1008B)を有し、空気よりも大きい屈折率を有する第1及び第2のガラス片1002、1006と矛盾しない。
【0126】
図10Cに示す第3の光線1014の例示的光線図によると、第1の内面1008Aと、第3の光線1014が第2の内面1008B上で反射する第1の点との間の
軸に沿う距離e″ 1036は、次式のように表すことができる。
上式中のg 1038は、第1及び第2の光線1010、1012と結合する第3の光線1014の内面1008B上の第1の反射点と第2の反射点との間で
軸に沿って通過した距離である。
【0127】
z=0が第1の内面1008Aに存在すると定義し、式(31)のα及び2αをそれぞれ2α及び4αで置き換えることによって次式が与えられる。
z及びe″を有する同時方程式を求めることによって次式が生じる。
式(36)を使用して式(37)のzを置き換えることができ、次の書き換え式が生じる。
第3の光線1014の総経路長l
2は、次式のように決定することができる。
2次の反射の電場E
2(例えば、第3の光線1014)は、次式の通りである。
上式では、第1及び第2の内面1008A、1008Bでの3連続の内部反射の結果として追加の3πの位相差が第3の光線1014に導入される。
【0128】
一部の実施では、式(39)によって示すように干渉画像を決定することができる。
式(39)では、I
Rを、e、d、α、n、及びλ又はfに関して表すことができる。一部の事例では、λは、反射強度I
Rを使用して干渉計の幾何学構成(例えば、e、d、及びα)及び屈折率nによって決定することができる。
【0129】
一部の実施では、yが検出器内の各ピクセルを表す点のアレイである時に、上記の式のeをe+ytan(α)で置き換え、全体アレイにガウス包絡線関数を乗算することにより、全体のビームにわたる全反射強度を決定することができる。
上式中のy
c、σ、及びOは、ガウス包絡線パラメータである。例えば、y
c、σ、及びOは、それぞれ、検出器上で検出されるガウス信号の中心、1/e幅、及びオフセット(背景レベル)である。
【0130】
図10A~
図10Cをフィゾー干渉計の関連で提示したが、他のタイプの干渉計が反射強度モデルを決定するための基盤としての役割を果たすことができることは理解されるであろう。例えば、マイケルソン干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、トワイマン・グリーン干渉計、マッハ・ツェンダー干渉計、サニャック干渉計、フィゾー干渉計、又はいずれかその他のタイプの干渉計は、反射強度モデルを発生させるための基盤としての役割を果たすことができる。更に、反射強度モデルを開発する上で光線解析以外の方法を使用することができる。
【0131】
説明したものの一部の態様では、光学計器の測定精度を増大するための方法は、以下に続く実施例によって説明することができる。
【実施例1】
【0132】
光学計器の測定精度を増大するための方法であって、
上記光学計器によって測定された光学特性の測定値を光学データと環境データに基づいて決定する段階であって、
上記光学計器は、
距離によって分離された2つの反射面と、これらの間にあり、屈折率を有する透過媒質とを有する光学経路と、
上記距離及び上記屈折率のうちの一方又は両方の大きさに影響を及ぼす環境パラメータを測定するように構成されたセンサと、
を含み、
上記光学データは、上記光学経路を横断する光信号に応答して上記光学計器によって生成され、
上記環境データは、上記環境パラメータを測定する上記センサによって生成される、
決定する段階と、
上記光学計器の時間発展を表すモデルに基づいて上記光学特性の予測値を決定する段階と、
1又は2以上のプロセッサにより、上記光学特性の有効値を、
上記測定値と、
上記予測値と、
上記測定値及び予測値のそれぞれの不確実性に基づくカルマン利得であって、上記有効値における前記測定値及び予測値の相対的重み付けを定義するカルマン利得と、
に基づいて計算する段階と、
を含む方法。
【実施例2】
【0133】
上記カルマン利得は、上記測定値の不確実性が上記予測値の不確実性よりも低いときに上記測定値に向けてバイアスされ、
上記カルマン利得は、上記予測値の不確実性が上記測定値の不確実性よりも低いときに上記予測値に向けてバイアスされる、
実施例1の方法。
【実施例3】
【0134】
上記モデルは、
上記光学特性を表す第1の状態変数と、上記環境パラメータを表す第2の状態変数とを含む状態変数と、
上記状態変数に対するそれぞれの状態値を含む状態ベクトルと、
を含み、
上記時間発展は、以前の期間から現在の期間まで発生し、
上記方法は、
測定ノイズ行列と、処理ノイズ行列と、共分散行列とに基づいて上記カルマン利得を決定する段階であって、
上記測定ノイズ行列は、上記光学データ及び上記環境データ内の不確実性を表す値を含み、
上記処理ノイズ行列は、上記モデル内の不確実性を表す値を含み、
上記共分散行列は、上記状態値内の不確実性を表す値を含む、
決定する段階、
を含む、
実施例1又は実施例2の方法。
【実施例4】
【0135】
上記測定値を決定する段階と、上記予測値を決定する段階と、上記カルマン利得を決定する段階と、上記有効値を計算する段階との作動をそれぞれの期間の複数の反復にわたって反復する段階、
を含み、
上記測定ノイズ行列、上記処理ノイズ行列、上記共分散行列、又はそのいずれかの組合せの値が、反復ごとに更新される、
実施例3の方法。
【実施例5】
【0136】
上記モデルは、
上記光学特性を表す第1の状態変数と、上記環境パラメータを表す第2の状態変数とを含む状態変数と、
上記状態変数に対するそれぞれの状態値を含む状態ベクトルと、
以前の期間に関連付けられた状態値の第1のセットから現在の期間に関連付けられた状態値の第2のセットへの上記状態値の変化を定義する状態発展関数と、
を含み、
上記時間発展は、以前の期間から現在の期間まで発生し、
上記予測値を決定する段階は、
上記状態値の第2のセットを生成するために上記状態発展関数を上記状態値の第1のセットに適用する段階であって、上記第1の状態変数に対する上記状態値の第2のセットの値は上記予測値である、適用する段階、
を含む、
実施例1又は実施例2から実施例4のうちのいずれか1つの方法。
【実施例6】
【0137】
上記状態発展関数は、複数のシグマ点と、それぞれの重み係数とを含む実施例5の方法。
【実施例7】
【0138】
上記測定値を決定する段階は、
測定ベクトルのそれぞれの測定変数に対する測定値を取得する段階であって、
上記測定変数は、上記光学特性を表す第1の測定変数と、上記環境パラメータを表す第2の測定変数とを含み、
上記第1の測定変数に対して取得された測定値が上記測定値である、
取得する段階、
を含み、
上記有効値を計算する段階は、
上記測定値と上記状態値の第2のセットとの間の差に基づいて残差ベクトルの残差値を計算する段階と、
上記状態値の第2のセットと、上記カルマン利得と、上記残差値とに基づいて上記状態ベクトルに対する状態値の第3のセットを決定する段階であって、上記状態値の第3のセットは上記有効値を含む、決定する段階と、
を含む、
実施例5又は実施例6の方法。
【実施例8】
【0139】
上記測定変数は、上記測定ベクトルに対する測定ドメインを定義し、上記状態変数が、上記状態ベクトルに対する状態ドメインを定義し、
上記残差値を計算する段階は、
変換された状態値の第2のセットを生成するために上記状態値の第2のセットに測定関数を適用する段階であって、上記測定関数は、上記状態ドメインから上記測定ドメインへの変換時の上記状態値の変化を定義する、適用する段階と、
上記残差ベクトルの上記残差値を計算するために、上記測定値から上記変換された状態値の第2のセットを減算する段階と、
を含む、
実施例7の方法。
【実施例9】
【0140】
上記環境パラメータは、上記透過媒質の温度、上記透過媒質の圧力、上記透過媒質の湿度、又は上記透過媒質内の二酸化炭素の濃度を含む実施例1又は実施例2から実施例8のうちのいずれか1つの方法。
【実施例10】
【0141】
上記環境パラメータは、上記透過媒質の温度又は上記2つの反射面を分離するスペーサの長さを含む実施例1又は実施例2から実施例8のうちのいずれか1つの方法。
【実施例11】
【0142】
光学特性を測定するように構成された光学計器であって、
距離によって分離された2つの反射面と、これらの面の間にあり、屈折率を有する透過媒質とを有する光学経路と、
上記距離及び上記屈折率のうちの一方又は両方の大きさに影響を及ぼす環境パラメータを測定するように構成されたセンサと、
を含む上記光学計器と、
作動を実行するように構成された制御システムであって、上記作動は、
上記光学特性の測定値を光学データと環境データに基づいて決定することであって、
上記光学データは、光信号が上記光学経路を横断するのに応答して上記光学計器によって生成され、
上記環境データは、上記センサが上記環境パラメータを測定することによって生成される、
決定することと、
上記光学計器の時間発展を表すモデルに基づいて上記光学特性の予測値を決定することと、
上記光学特性の有効値を、
上記測定値と、
上記予測値と、
上記測定及び予測値のそれぞれの不確実性に基づくカルマン利得であって、上記有効値における上記測定及び予測値の相対的重み付けを定義するカルマン利得と、
に基づいて計算することと、
を含む、制御システムと、
を含むシステム。
【実施例12】
【0143】
上記カルマン利得は、上記測定値の不確実性が上記予測値の不確実性よりも低いときに上記測定値に向けてバイアスされ、
上記カルマン利得は、上記予測値の不確実性が上記測定値の不確実性よりも低いときに上記予測値に向けてバイアスされる、
実施例11のシステム。
【実施例13】
【0144】
上記モデルは、
上記光学特性を表す第1の状態変数と上記環境パラメータを表す第2の状態変数とを含む状態変数と、
上記状態変数に対するそれぞれの状態値を含む状態ベクトルと、
を含み、
上記時間発展は、以前の期間から現在の期間まで発生し、
上記作動は、
測定ノイズ行列と、処理ノイズ行列と、共分散行列とに基づいて上記カルマン利得を決定することであって、
上記測定ノイズ行列は、上記光学及び環境データの不確実性を表す値を含み、
上記処理ノイズ行列は、上記モデルの不確実性を表す値を含み、
上記共分散行列は、上記状態値の不確実性を表す値を含む、
決定すること、
を含む、
実施例11又は実施例12のシステム。
【実施例14】
【0145】
上記作動は、
上記測定値を決定することと、上記予測値を決定することと、上記カルマン利得を決定することと、上記有効値を計算することとの作動をそれぞれの期間の複数の反復にわたって反復すること、
を含み、
上記測定ノイズ行列、上記処理ノイズ行列、上記共分散行列、又はそのいずれかの組合せの値が、反復ごとに更新される、
実施例13のシステム。
【実施例15】
【0146】
上記モデルは、
上記光学特性を表す第1の状態変数と上記環境パラメータを表す第2の状態変数とを含む状態変数と、
上記状態変数に対するそれぞれの状態値を含む状態ベクトルと、
以前の期間に関連付けられた状態値の第1のセットから現在の期間に関連付けられた状態値の第2のセットへの上記状態値の変化を定義する状態発展関数と、
を含み、
上記時間発展は、以前の期間から現在の期間まで発生し、
上記予測値を決定することは、
上記状態値の第2のセットを生成するために上記状態発展関数を上記状態値の第1のセットに適用することであって、上記第1の状態変数に対する上記状態値の第2のセットの値は上記予測値である、適用すること、
を含む、
実施例11又は実施例12から実施例14のうちのいずれか1つのシステム。
【実施例16】
【0147】
上記状態発展関数は、複数のシグマ点と、それぞれの重み係数とを含む実施例15のシステム。
【実施例17】
【0148】
上記測定値を決定することは、
測定ベクトルのそれぞれの測定変数に対する測定値を取得することであって、
上記測定変数は、上記光学特性を表す第1の測定変数と上記環境パラメータを表す第2の測定変数とを含み、
上記第1の測定変数に対して取得された測定値が上記測定値である、
取得することを含み、
上記有効値を計算することは、
上記測定値と上記状態値の第2のセットとの間の差に基づいて残差ベクトルの残差値を計算することと、
上記状態値の第2のセットと、上記カルマン利得と、上記残差値とに基づいて上記状態ベクトルに対する状態値の第3のセットを決定することであって、上記状態値の第3のセットは上記有効値を含む、決定することと、
を含む、
実施例15又は実施例16のシステム。
【実施例18】
【0149】
上記測定変数は、上記測定ベクトルに対する測定ドメインを定義し、上記状態変数が、上記状態ベクトルに対する状態ドメインを定義し、
上記残差値を計算することは、
変換された状態値の第2のセットを生成するために上記状態値の第2のセットに測定関数を適用することであって、上記測定関数は、上記状態ドメインから上記測定ドメインへの変換時の上記状態値の変化を定義する、適用することと、
上記残差ベクトルの上記残差値を計算するために、上記測定値から上記変換された状態値の第2のセットを減算することと、
を含む、
実施例17のシステム。
【実施例19】
【0150】
上記環境パラメータは、上記透過媒質の温度、上記透過媒質の圧力、上記透過媒質の湿度、又は上記透過媒質内の二酸化炭素の濃度を含む、実施例11又は実施例12から実施例18のうちのいずれか1つのシステム。
【実施例20】
【0151】
上記環境パラメータは、上記透過媒質の温度又は上記2つの反射面を分離するスペーサの長さを含む、実施例11又は実施例12から実施例18のうちのいずれか1つのシステム。
【実施例21】
【0152】
1又は2以上のプロセッサによって実行されたときに、
光学計器によって測定された上記光学特性の測定値を光学データと環境データに基づいて決定することであって、
上記光学計器は、
2つの反射面とそれらの間の透過媒質とを有する光学経路と、
上記2つの反射面の間の上記透過媒質の環境パラメータを測定するように構成されたセンサと、
を含み、
上記光学データは、上記光学経路を横断する光信号に応答して上記光学計器によって生成され、
上記環境データは、上記環境パラメータを測定する上記センサによって生成される、
決定することと、
上記光学計器の時間発展を表すモデルに基づいて上記光学特性の予測値を決定することと、
上記光学特性の有効値を、
上記測定値と、
上記予測値と、
上記測定及び予測値のそれぞれの不確実性に基づくカルマン利得であって、上記有効値における上記測定及び予測値の相対的重み付けを定義するカルマン利得と、
に基づいて計算することと、
を含む作動を実行するように作動可能である(operable)命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体。
【実施例22】
【0153】
上記カルマン利得は、上記測定値の不確実性が上記予測値の不確実性よりも低いときに上記測定値に向けてバイアスされ、
上記カルマン利得は、上記予測値の不確実性が上記測定値の不確実性よりも低いときに上記予測値に向けてバイアスされる、
実施例21の非一時的コンピュータ可読媒体。
【実施例23】
【0154】
上記モデルは、
上記光学特性を表す第1の状態変数と上記環境パラメータを表す第2の状態変数とを含む状態変数と、
上記状態変数に対するそれぞれの状態値を含む状態ベクトルと、
を含み、
上記時間発展は、以前の期間から現在の期間まで発生し、
上記作動は、
測定ノイズ行列と、処理ノイズ行列と、共分散行列とに基づいて上記カルマン利得を決定することであって、
上記測定ノイズ行列は、上記光学及び環境データの不確実性を表す値を含み、
上記処理ノイズ行列は、上記モデルの不確実性を表す値を含み、
上記共分散行列は、上記状態値の不確実性を表す値を含む、
決定すること、
を含む、
実施例21又は実施例22の非一時的コンピュータ可読媒体。
【実施例24】
【0155】
上記作動は、
上記測定値を決定することと、上記予測値を決定することと、上記カルマン利得を決定することと、上記有効値を計算することとの作動をそれぞれの期間の複数の反復にわたって反復すること、
を含み、
上記測定ノイズ行列、上記処理ノイズ行列、上記共分散行列、又はそのいずれかの組合せの値が、反復ごとに更新される、
実施例23の非一時的コンピュータ可読媒体。
【実施例25】
【0156】
上記モデルは、
上記光学特性を表す第1の状態変数と上記環境パラメータを表す第2の状態変数とを含む状態変数と、
上記状態変数に対するそれぞれの状態値を含む状態ベクトルと、
以前の期間に関連付けられた状態値の第1のセットから現在の期間に関連付けられた状態値の第2のセットへの上記状態値の変化を定義する状態発展関数と、
を含み、
上記時間発展は、以前の期間から現在の期間まで発生し、
上記予測値を決定することは、
上記状態値の第2のセットを生成するために上記状態発展関数を上記状態値の第1のセットに適用することであって、上記第1の状態変数に対する上記状態値の第2のセットの値は上記予測値である、適用すること、
を含む、
実施例21又は実施例22から実施例24のうちのいずれか1つの非一時的コンピュータ可読媒体。
【実施例26】
【0157】
上記状態発展関数は、複数のシグマ点とそれぞれの重み係数とを含む実施例25の非一時的コンピュータ可読媒体。
【実施例27】
【0158】
上記測定値を決定することは、
測定ベクトルのそれぞれの測定変数に対する測定値を取得することであって、
上記測定変数は、上記光学特性を表す第1の測定変数と上記環境パラメータを表す第2の測定変数とを含み、
上記第1の測定変数に対して取得された測定値が上記測定値である、
取得すること、
を含み、
上記有効値を計算することは、
上記測定値と上記状態値の第2のセットとの間の差に基づいて残差ベクトルの残差値を計算することと、
上記状態値の第2のセットと、上記カルマン利得と、上記残差値とに基づいて上記状態ベクトルに対する状態値の第3のセットを決定することであって、上記状態値の第3のセットは上記有効値を含む、決定することと、
を含む、
実施例25又は実施例26の非一時的コンピュータ可読媒体。
【実施例28】
【0159】
上記測定変数は、上記測定ベクトルに対する測定ドメインを定義し、上記状態変数は、上記状態ベクトルに対する状態ドメインを定義し、
上記残差値を計算することは、
変換された状態値の第2のセットを生成するために上記状態値の第2のセットに測定関数を適用することであって、上記測定関数は、上記状態ドメインから上記測定ドメインへの変換時の上記状態値の変化を定義する、適用することと、
上記残差ベクトルの上記残差値を計算するために、上記測定値から上記変換された状態値の第2のセットを減算することと、
を含む、
実施例27の非一時的コンピュータ可読媒体。
【実施例29】
【0160】
上記環境パラメータは、上記透過媒質の温度、上記透過媒質の圧力、上記透過媒質の湿度、又は上記透過媒質内の二酸化炭素の濃度を含む、実施例21又は実施例22から実施例28のうちのいずれか1つの非一時的コンピュータ可読媒体。
【実施例30】
【0161】
上記環境パラメータは、上記透過媒質の温度又は上記2つの反射面を分離するスペーサの長さを含む、実施例21又は実施例22から実施例28のうちのいずれか1つの非一時的コンピュータ可読媒体。
【0162】
本明細書は、多くの詳細内容を含むが、これらは、請求することができる事物の範囲に対する限定ではなく、特定の例に特有の特徴の説明であると理解すべきである。別々の実施の状況で本明細書に説明する又は図面に示すある一定の特徴は、組み合わせることもできる。それとは逆に、単一の実施の状況で説明する又は図示する様々な特徴は、複数の実施形態に別々の又はいずれかの適切な部分組合せで実施することもできる。
【0163】
同様に、図面に作動を特定の順序で描いているが、このことは、望ましい結果を達成する上でそのような作動を図示する特定の順序又は順番で実行することができる又は例示している全ての作動を実行することを必要とすることと理解すべきではない。ある一定の状況では、マルチタスク処理及び並行処理を有益とすることができる。更に、上記で説明した実施での様々なシステム構成要素の分離は、全ての実施にそのような分離を必要とするものと理解すべきではなく、説明したプログラム構成要素及びシステムは、一般的に単一の製品内に互いに統合すること又は複数の製品の中に詰め込むことができると理解すべきである。いくつかの実施形態を説明した。それにも関わらず、様々な改変を加えることができることは理解されるであろう。従って、他の実施形態は、以下に続く特許請求の範囲内である。
【符号の説明】
【0164】
150 カルマン型フィルタを使用して光学計器の測定精度を増大するための例示的方法
152 光学計器によって測定された光学特性の測定値を光学データと環境データに基づいて決定する段階
154 光学計器の時間発展を表すモデルに基づいて光学特性の予測値を決定する段階
156 測定値と予測値とカルマン利得とに基づいて光学特性の有効値を処理装置の作動によって計算する段階。